気体清浄器及びその再生方法、並びに、喫煙ホルダー
【課題】 光触媒の光触媒活性(光触媒能)の状態を目視にて判別可能であり、気体中の有害成分に対する優れた分解除去作用を有する気体清浄器等の提供。
【解決手段】 気体が流通可能な流路を有し、かつ該流路の少なくとも一部を遮蔽するようにして光触媒を保持してなり、該光触媒の少なくとも一部が視認可能である光触媒保持部を少なくとも備えた気体清浄器である。前記光触媒保持部が流路の入口及び出口にガス透過手段を配してなり、光触媒が該ガス透過手段により前記光触媒保持部に脱落不能に保持された態様、前記光触媒が少なくとも可視光により光触媒活性を発現可能である態様、等が好ましい。前記気体洗浄器における、光触媒保持部に保持された光触媒を、該光触媒保持部から取り出して焼成することにより、該光触媒の光触媒活性を発現乃至活性化させた後、前記光触媒保持部に戻す気体洗浄器の再生方法である。前記気体洗浄器を備えた喫煙ホルダーである。
【解決手段】 気体が流通可能な流路を有し、かつ該流路の少なくとも一部を遮蔽するようにして光触媒を保持してなり、該光触媒の少なくとも一部が視認可能である光触媒保持部を少なくとも備えた気体清浄器である。前記光触媒保持部が流路の入口及び出口にガス透過手段を配してなり、光触媒が該ガス透過手段により前記光触媒保持部に脱落不能に保持された態様、前記光触媒が少なくとも可視光により光触媒活性を発現可能である態様、等が好ましい。前記気体洗浄器における、光触媒保持部に保持された光触媒を、該光触媒保持部から取り出して焼成することにより、該光触媒の光触媒活性を発現乃至活性化させた後、前記光触媒保持部に戻す気体洗浄器の再生方法である。前記気体洗浄器を備えた喫煙ホルダーである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気等の気体中に含まれる有害物質を分解除去可能であり、喫煙ホルダー、マスク、フィルター等として好適な気体清浄器及びその効率的な再生方法、並びに、該気体清浄器を備えた喫煙ホルダーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、空気中に含まれる有害成分を除去等するための簡単な構造の空気清浄器の代表的なものとして、例えば、ホルダー本体内部に活性炭を充填したシガレットホルダーなどが提案されている(特許文献1〜2参照)。これらのシガレットホルダーによれば、前記活性炭が吸着能に富むことから、該活性炭によって、喫煙時のタバコ等からの煙中に含まれるタール成分、アルデヒド等の有害物質をある程度吸着することが可能である。
しかし、前記シガレットホルダーの場合、繰返し使用により、前記活性炭の有害成分に対する吸着能が徐々に低下乃至消失してしまうという問題がある。そして、該シガレットホルダーの場合、前記活性炭の有害成分に対す吸着能がどのような状態にあるのかの判別ができず、吸着能の低下乃至消失した前記活性炭を使用し続けると、前記有害成分を体内に吸引し続けてしまうという問題がある。
【0003】
一方、酸化分解作用、抗菌作用、防汚作用等を発揮する、酸化チタン(TiO2)等の一部の半導体物質の有する光触媒活性が注目されている。光触媒活性を有する前記半導体物質においては、一般に、その価電子帯と伝導帯との間のバンドギャップに相当するエネルギーを有する光を吸収すると、前記価電子帯に存在していた電子が前記伝導帯へと遷移する。前記伝導帯へと遷移した電子は、前記光触媒活性を有する半導体物質の表面に吸着している物質に移動する性質があり、該半導体物質の表面に物質が吸着されている場合には、該物質は前記電子により還元される。一方、前記価電子体に存在していた電子が前記伝導体に遷移すると、前記価電子帯には正孔が生ずる。そして、該価電子帯に生じた正孔は、前記光触媒活性を有する半導体物質の表面に吸着している物質から電子を奪い取る性質があり、該半導体物質の表面に物質が吸着されている場合には、該物質は前記正孔に電子を奪い取られて酸化される。以上の現象を具体的に説明すると、例えば、特に優れた光触媒活性を有する酸化チタンについてみれば、その価電子帯と伝導帯との間のバンドギャップに相当するエネルギーを有する光を酸化チタンが吸収すると、該酸化チタンにおける前記価電子帯に存在していた電子が前記伝導帯へと遷移し、遷移した該電子は、空気中の酸素を還元してスーパーオキシドアニオン(・O2−)を生成させる一方、前記電子の遷移の結果、前記価電子帯には正孔が生じ、生じた該正孔は、前記酸化チタン表面に吸着している水を酸化してヒドロキシラジカル(・OH)を生成させる。このとき、該ヒドロキシラジカルは、非常に強い酸化力を有しているため、前記酸化チタンの表面に有機物等が吸着している場合には、該有機物等は前記ヒドロキシラジカルの作用によって分解され、最終的には水と二酸化炭素とにまで分解される。以上のように、酸化チタン等の、前記光触媒活性を有する半導体物質に対し、該半導体物質の価電子帯と伝導帯との間のバンドギャップに相当するエネルギーを有する光が照射されると、該半導体物質が該光を吸収して、その表面に吸着されている有機物等を分解する結果、酸化分解作用、抗菌作用、防汚作用等が発現されるのである。
【0004】
近時、前記光触媒活性を有する半導体物質の中でも、特に光触媒活性に優れる酸化チタンは、例えば、エアコンや空気清浄機におけるフィルター等に利用されてきている(特許文献3〜5参照)。
しかし、前記酸化チタン等の前記半導体物質の場合、その物質に対する吸着能に乏しく、その光触媒機能に基づく十分な分解作用、抗菌作用、防汚作用等が得られ難いという問題がある。また、前記酸化チタン等の前記半導体物質の場合、一般に紫外光に対しては非常に強い光触媒活性を示すものの、可視光に対しては殆ど光触媒活性を示さないため、これをエアコンや空気清浄機等に内蔵させて使用する場合には更に紫外光照射のための光源が必要になり、シガレットホルダー等の簡易で小型の構造物には適用し難いという問題がある。
【0005】
したがって、紫外光照射のための特別な光源等が不要であり、低コストで量産可能であり、取扱性に極めて優れ、気体中の有害成分に対する分解除去能に優れ、光触媒の光触媒活性(光触媒能)の状態を目視にて容易に判別可能な気体清浄器等及びその取扱乃至使用に関する優れた提案はいまだ提供されていないのが現状である。
【0006】
【特許文献1】特開平6−105675号公報
【特許文献2】特開2000−236864号公報
【特許文献3】特開平11−47635号公報
【特許文献4】特開平11−179118号公報
【特許文献5】特開平11−262618号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、気体中の有害成分に対する分解除去能に優れ、光触媒の光触媒活性(光触媒能)の状態を目視にて容易に判別可能で、低コストで量産可能であり、取扱性に極めて優れた気体清浄器及びその効率的な再生方法、並びに、前記気体清浄器を備え、気体中の有害成分に対する分解除去能に優れ、光触媒の光触媒活性(光触媒能)の状態を目視にて容易に判別可能で、低コストで量産可能であり、取扱性に極めて優れた喫煙ホルダーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段としては、後述する付記に列挙した通りである。
本発明の気体清浄器は、気体が流通可能であり、かつ該気体の流通を遮蔽するように配された光触媒を保持してなり、該光触媒の少なくとも一部が視認可能である光触媒保持部を少なくとも備えたことを特徴とする。
該気体清浄器においては、前記光触媒保持部において前記気体が流通可能である。このとき、前記光触媒保持部には、前記気体の流通を遮蔽するようにして前記光触媒が保持されている。そして、該光触媒は、視認可能に前記光触媒保持部に保持されており、即ち、該光触媒は光が照射可能に前記光触媒保持部に保持されている。このため、前記気体が流通する際、該気体は前記光触媒に接触しながら前記光触媒保持部を流通する。該光触媒は、光の照射により活性化されているので、該光触媒に前記気体が接触すると、該光触媒の光触媒能により該気体中に含まれる有害成分が分解除去される。その結果、前記光触媒と接触しながら該光触媒を保持する前記光触媒保持部を通過した気体中からは、前記有害成分が分解除去され、該気体は清浄状態となっている。本発明の気体清浄器における前記光触媒保持部を流通(通過)した前記気体は、清浄であり、吸気として安全に利用可能である。
【0009】
本発明の前記気体清浄器においては、前記光触媒保持部が、前記気体の流入側及び流出側にガス透過手段を配してなり、光触媒が該ガス透過手段により前記光触媒保持部に脱落不能に保持された態様が好ましい。この態様の場合、前記光触媒保持部内において、前記気体の流入側及び流出側に配された前記ガス透過手段によって画成された空間に前記光触媒が脱落不能に保持される。このため、前記光触媒が該空間内において密に充填されることが可能であり、前記流入側に配された前記気体透過手段を透過(通過)した気体は、該光触媒に効率的に接触しながら移動し、前記流出側に配された前記気体透過手段まで向かい、該気体透過手段にまで到達すると、該気体透過手段を透過(透過)する。このとき、前記光触媒に接触した前記気体は、前記光触媒の光触媒能により、効率的に、該気体中に含まれる有害成分が分解除去されて、清浄化される。
また、本発明の気体清浄器においては、前記光触媒が少なくとも可視光により光触媒活性を発現可能である態様が好ましい。この態様の場合、太陽光、室内灯などを含む人間の生活空間において、前記光触媒は光触媒活性を示すため、効率的に前記気体中に含まれる有害成分を分解除去可能である。
【0010】
本発明の気体清浄器の再生方法は、本発明の前記気体清浄器における、光触媒保持部に保持された光触媒を、該光触媒保持部から取り出して焼成することにより、該光触媒の光触媒活性(吸着活性、分解活性等を含む)を発現させた後、前記光触媒保持部に戻すことを特徴とする。
前記気体清浄器の再生方法においては、本発明の前記気体清浄器における、前記光触媒保持部に保持された光触媒を、該光触媒保持部から取り出して焼成する。すると、該光触媒の光触媒活性(吸着活性、分解活性等を含む)が再生(再活性化)される。このため、前記光触媒保持部内に保持された前記光触媒が、使用によりその光触媒活性が低下乃至焼失した際に、該光触媒保持部から前記光触媒を取り出し、焼成するだけで、該光触媒が再生(再活性化)される。そして、再活性化された該光触媒を再利用するために前記光触媒保持部に戻すことにより、低コストで簡便に前記気体清浄器を再生し、再利用することができる。
【0011】
本発明の喫煙ホルダーは、本発明の前記気体清浄器を備えたことを特徴とする。このため、該喫煙ホルダーを用いて喫煙を行うと、タバコ、バイプ、葉巻等からの煙中に含まれる有害成分、例えば、アセトアルデヒド等のアルデヒド成分などを効率的に分解除去しつつ喫煙を行うことができる。このため、喫煙者の健康維持に有効である。そして、しかも該喫煙ホルダーにおける、光触媒活性を有する光触媒は視認可能であり、目視にてその光活性(光触媒能)の状態を判別可能であるため、取扱性に優れる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、従来における前記問題を解決することができ、気体中の有害成分に対する分解除去能に優れ、光触媒の光触媒活性(光触媒能)の状態を目視にて容易に判別可能で、低コストで量産可能であり、取扱性に極めて優れた気体清浄器及びその効率的な再生方法、並びに、前記気体清浄器を備え、気体中の有害成分に対する分解除去能に優れ、光触媒の光触媒活性(光触媒能)の状態を目視にて容易に判別可能で、低コストで量産可能であり、取扱性に極めて優れた喫煙ホルダーを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(気体清浄器)
本発明の気体清浄器は、光触媒保持部を少なくとも備えてなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材等を有してなる。
【0014】
−光触媒保持部−
前記光触媒保持部は、気体が流通可能であり、光触媒を保持(収容)することができる限り、その形状、構造、大きさ、材質等については特に制限はなく、用途、目的等に応じて適宜選択することができる。
【0015】
前記光触媒保持部の形状としては、例えば、筒状(円筒、角筒など)、管状(円管、角管など)、板状、シート状などが好適に挙げられ、前記気体清浄器を喫煙ホルダー、吸気マスクと送気管との接続具等として使用する場合には、筒状、管状などが好ましく、前記気体清浄器をフィルター等として使用する場合には、板状、フィルターなどが好ましい。なお、前記形状が筒状、管状等である場合、これらは、直線状であってもよいし、曲線状であってもよく、あるいはこれらの結合形状であってもよい。
【0016】
前記光触媒保持部の構造としては、例えば、単一空間構造、空間が複数に分割された複数空間構造、などが挙げられ、また、単一の部材で形成されていてもよいし、2以上の部材が組み合わされた構造であってもよい。
【0017】
前記光触媒保持部の大きさとしては、例えば、前記気体清浄器を喫煙ホルダー、吸気マスクと送気管との接続具等として使用する場合には、タバコ、パイプ、葉巻等の吸口側の大きさと略同等かやや大きめ大きさが好ましく、このとき前記光触媒保持部内における、前記光触媒が収容された部分の長さ(触媒長)が長い方が光触媒能に優れる点で有利であり、前記気体清浄器をフィルター等として使用する場合には、吸気部乃至排気部の大きさと略同等の大きさであるのが好ましい。
【0018】
前記光触媒保持部の大きさの具体例としては、前記気体清浄器を喫煙ホルダー等として使用する場合には、その長さをT(cm)とし、その最大径をD(cm)としたとき、次式、T>D、を充たすのが好ましく、次式、T>D×2、を充たすのがより好ましい。前記式を充たす場合には、該光触媒保持部に流入する前記気体が該光触媒保持部内に保持された前記光触媒と接触する距離と時間とを長くすることができ、該光触媒による前記気体中に含まれる有害成分の分解除去能に優れる点で有利である。また、前記光触媒保持部の大記載の具体例としては、前記気体清浄器を空気清浄器等におけるフィルター等として使用する場合には、その長さ(厚み)が1cm以下であり、その軸方向に略直交する断面積(フェイルター面の面積)が25cm2以上であるが好ましく、500〜900cm2がより好ましい。前記長さ(厚み)が1cmを超えると、フィルター等として取扱性に劣ることがあり、また、前記断面積(フィルター面の面積)が25cm2未満であると、前記気体中に含まれる有害成分の分解除去能が十分でないことがある。
【0019】
なお、前記気体としては、特に制限はなく、用途、目的等に応じて適宜選択することができ、例えば、前記気体清浄器をマスク、フィルター等に使用する場合には、空気、排ガス、循環ガスなどが好適に挙げられ、前記気体清浄器を喫煙ホルダー、吸気マスクと送気管との接続具等に使用する場合には、タバコの煙等の含煙気体、酸素ガス、蒸気などが挙げられる。
前記気体中の有害成分(分解対象物)としては、特に制限はなく、用途、目的等に応じて異なるが、例えば、タール成分、アルデヒド成分(壁紙等から放出されるホルムアルデヒド、タバコ等の煙中に含まれるアセトアルデヒドなど)、フェノール成分(煙等に含まれるフェノール)、ウイルス(DNAウイルス、RNAウイルスなど、具体的にはインフルエンザウイルスなど)、などが挙げられる。これらは、前記気体中に、1種単独で含まれていることもあれば、2種以上が同時に含まれていることもある。
【0020】
前記光触媒保持部は、前記光触媒の少なくとも一部が視認可能に設計されている。このため、本発明の気体清浄器においては、前記光触媒保持部に保持された前記光触媒を目視にてその光触媒活性(光触媒能)の状態を把握することができる。
前記光触媒保持部を、その内部に保持(収容)した前記光触媒を視認可能にする方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、該光触媒保持部の少なくとも一部を透明に設計する方法、などが好適に挙げられる。この場合、無色としては、有色透明であってもよいし、無色透明であってもよいが、前記光触媒の光触媒活性(光触媒能)の状態の把握が容易な点で、無色透明であるのが特に好ましい。
前記光触媒保持部の少なくとも一部を透明に設計する場合、前記光触媒の光触媒活性を向上させる観点からは、前記光触媒を保持(収容)する部分の総てが透明に設計されているのが好ましい。
【0021】
前記光触媒保持部の光透過性としては、内部に保持(収容)する前記光触媒の光触媒活性を向上させる観点からは高い方が好ましく、そのためには、前記光触媒の吸収可能な光に対する光吸収率が低く、即ち該光に対する透過率に優れていることが好ましく、例えば、前記光触媒が紫外光を吸収して光触媒活性を発現可能な場合には該紫外光の透過率に優れていることが好ましく、また、前記光触媒が可視光を吸収して光触媒活性(光触媒能)を発現可能な場合には該可視光の透過率に優れていることが好ましい。
前記光触媒保持部の光透過性としては、具体的には、例えば、波長380nm以上の光の光透過率が、70%以上であるのが好ましく、80%以上であるのがより好ましい。
前記光触媒保持部の光透過性が、70%未満であると、前記光触媒の光触媒活性が十分ではなく、気体中に含まれる前記有害成分の分解除去を十分に行うことができないことがある。
【0022】
前記光触媒保持部の材質(材料)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記光触媒が吸収する波長域の光に対する透過率が高い材料であるのが好ましく、更に透明であるのがより好ましく、更に無色透明であるのが特に好ましいが、具体的には、樹脂、セラミックスなどが挙げられ、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、これらの中でも、成形性、低コスト性、取扱性等の観点からは、樹脂が好ましい。
【0023】
なお、前記光触媒保持部の材質(材料)が前記樹脂である場合には、該樹脂が適宜選択した公知の添加剤等を含有していてもよい。
この場合、該添加剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、充填材、難燃剤、抗菌剤、可塑剤、などが挙げられる。
【0024】
前記光触媒保持部の成形方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、該光触媒保持部が前記樹脂で形成されている場合には、例えば、フィルム成形、押出成形、射出成形、ブロー成形、圧縮成形、トランスファー成形、カレンダー成形、熱成形、流動成形、積層成形、などが挙げられる。
【0025】
前記樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、合成樹脂、生分解性樹脂、などが好適に挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
前記合成樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、などが好適に挙げられ、これらの具体例としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、フッ素系樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アミノ樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル樹脂、シリコーン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン樹脂、トルエン樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン樹脂、メチルメタクリレート−ブタジエン樹脂、変性メチルメタクリレート−ブタジエン樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、などが挙げられる。これらの中でも、成形性、透明性等の点で、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、などが好ましい。
【0027】
前記生分解性樹脂としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、天然物由来生分解性樹脂、化学合成生分解性樹脂、その他のものなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記天然物由来生分解性樹脂としては、例えば、キチン、キトサン、アルギン酸、グルテン、コラーゲン、ポリアミノ酸、バクテリアセルロース、プルラン、カードラン、多糖類系副産物、デンプン、変性デンプン、微生物産生ポリエステル(バイオポリエステル)、などが挙げられる。
前記化学合成生分解性樹脂としては、例えば、脂肪族ポリエステル、脂肪族・芳香族ポリエステル、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリウレタン(PU)、などが挙げられる。前記脂肪族ポリエステルとしては、例えば、ポリ3−ヒドロキシブチレート(PHB)、ポリ3−ヒドロキシバレエート等のポリヒドロキアルカノエート系、ポリカプロラクトン(PCL)系、ポリブチレンサクシネート(PBS)系、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)系、ポリエチレンサクシネート(PES)系、ポリグリコール酸(PGA)系、ポリ乳酸(PLA)系、などが挙げられる。
前記その他のものとしては、例えば、脂肪族ポリエステルのカーボネート共重合体、脂肪族ポリエステルとポリアミドとの共重合体、などが挙げられる。
【0028】
前記生分解性樹脂の中でも、成形性・耐熱性・耐衝撃性等に優れる点で脂肪族系ポリエステル樹脂が好ましく、その中でもポリ乳酸(PLA)系脂肪族系ポリエステル樹脂がより好ましく、環境面の観点からはポリ乳酸が特に好ましい。
前記ポリ乳酸(PLA)系脂肪族系ポリエステル樹脂としては、例えば、乳酸、りんご酸、グルコース酸等のオキシ酸の重合体、これらの共重合体などが挙げられる。これらの中でも、ポリ乳酸に代表されるヒドロキシカルボン酸系脂肪族系ポリエステル樹脂が特に好適に挙げられる。
【0029】
前記ヒドロキシカルボン酸系脂肪族系ポリエステル樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、環状ジエステルであるラクチド及び対応するラクトン類の開環重合によるラクチド法、乳酸直接脱水縮合法、などが挙げられる。また、製造時に使用する触媒としては、錫、アンチモン、亜鉛、チタン、鉄、アルミニウム化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、錫、アルミニウム化合物などが好ましく、オクチル酸錫、アルミニウムアセチルアセトネートがより好ましい。
【0030】
前記光触媒保持部における前記光触媒の充填率としては、特に制限はなく、前記光触媒の形態、例えば、粉状、粒状等に応じて異なり一概に規定することはできないが、該光触媒の充填率が高くなるほど、前記気体中に含まれる前記有害成分の分解除去能に優れるが、該気体が該光触媒保持部内を流通し難くなる傾向がある。
【0031】
前記光触媒保持部においては、脱落不能に、かつ前記気体が流通する際に該気体が接触可能に前記光触媒が保持されているが、該光触媒は、ガス透過手段により前記光触媒保持部に脱落不能に保持されるのが好ましい。この場合、該光触媒は、前記光触媒保持部に安定した状態で保持され、該ガス透過手段を透過(通過)してくる前記気体中に含まれる前記有害成分と安定な状態でかつ効率的に接触可能である点で好ましい。
【0032】
前記ガス透過手段が配される箇所乃至部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記光触媒保持部に保持された前記光触媒の全部(全表面)であってもよいし、一部(一表面)であってもよいが、前記気体が流入する側に位置する前記光触媒の表面及び前記気体が流出する側に位置する前記光触媒の表面の少なくともいずれかであるのが好ましい。この場合、該光触媒保持部に保持された前記光触媒と接触しながら前記気体が流通可能であり、該気体中に含まれる前記有害成分の分解除去能に優れる点で有利である。
【0033】
前記ガス透過手段としては、前記光触媒保持部に固定的に配されていてもよいし、着脱自在に配されていてもよいが、該ガス透過手段が複数(2以上)である場合には、その少なくとも一つが着脱自在に前記光触媒保持部に配されているのが好ましい。この場合、着脱自在に配された前記ガス透過手段を前記光触媒保持部から取り外すことにより、容易に該光触媒保持部内に保持されている前記光触媒を取り出すことができ、該光触媒の交換乃至再生等が可能となる点で有利である。
【0034】
前記ガス透過手段としては、前記気体を透過可能である限り、特に制限はなく、例えば、格子状構造物、網状構造物、膜状構造物などを少なくとも有する構造物が好適に挙げられる。
前記格子状構造物又は前記網状構造物の場合、前記光触媒を脱落不能に保持する観点からは、これらの格子状構造部分の格子間隔乃至網状構造部分の網目径よりも前記光触媒の粒径等が大きいことが好ましい。前記膜状構造物の場合、その膜状構造部分の膜に設けらている微細孔よりも前記光触媒の粒径乃至粉径等が大きいことが好ましい。
なお、前記ガス透過手段の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜することができるが、例えば、1種単独の部材で形成されていてもよいし、2種以上の部材で形成ていてもよく、また、前記膜状構造物である場合には、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
【0035】
前記ガス透過手段を前記格子状構造物、前記網状構造物、前記膜状構造物などを少なくとも有する構造物として設計した場合、これらの少なくとも1つを前記光触媒保持部に螺合、嵌合等により着脱自在に設計するのが好ましい。そして、例えば、前記気体清浄器をそのまま喫煙ホルダーとする場合、前記気体清浄器を用いて喫煙ホルダーを形成する場合においては、該喫煙ホルダーの吸口部を着脱自在に設計し、該吸口部における吸口端とは反対側の端部に前記ガス透過手段を配しておくのが好ましい。この場合、該喫煙ホルダーの吸口部を取り外すことにより、前記光触媒保持部内に保持された前記光触媒を外部に取り出すことができる。このため、前記光触媒保持部内に保持された前記光触媒の光触媒活性が低下乃至消失した場合に、該光触媒を前記光触媒保持部内から取り出して再生処理を適宜行うことができる点で有利である。
【0036】
前記ガス透過手段におけるガス透過性としては、前記気体の前記光触媒保持部内での流通を阻害しない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記ガス透過手段の形状、構造、大きさ、厚み等については、特に制限はなく、前記光触媒保持部の形状や、用途、目的等に応じて適宜選択することができ、例えば、前記構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、また、1種単独の部材で形成された構造であってもよいし、2種以上の部材で形成された構造であってもよい。
【0037】
−−光触媒−−
前記光触媒は、前記光触媒保持部において流通する前記気体を遮蔽するように保持(収容)されている。
前記光触媒の形態としては、特に制限はなく、前記光触媒保持部の形状、大きさ等に応じて適宜選択することができるが、例えば、粒子状(粒状)、粉状、多孔質固形状、などが好適に挙げられる。これらの中でも、前記光触媒保持部への充填等が容易であり、該光触媒保持部に充填した際(保持させた際)に該光触媒保持部を流通する前記気体との接触効率に優れ、また、該光触媒保持部から前記光触媒を取り出して焼成等の再生処理を行うのが容易である点で、粒子状(粒状)であるのが特に好ましい。
前記光触媒の大きさとしては、特に制限はなく、前記光触媒保持部の大きさ、該光触媒保持部への前記光触媒の充填率等に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記光触媒が前記粉状乃至粒子状(粒状)である場合には、該光触媒の平均粒径としては、3〜8μmであるのが好ましい。
【0038】
前記光触媒が前記粉状乃至粒子状(粒状)である場合、該光触媒の粒度分布としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記粒度分布がシャープである(狭くなる)程、前記光触媒保持部に該光触媒を均一な状態で充填させる(保持させる)ことができ、即ち、該光触媒保持部に充填(保持)された前記光触媒どうしの間隙を均一な大きさにすることができる傾向があり、一方、前記粒度分布がブロードになる(広くなる)程、前記光触媒保持部に前記光触媒を密に充填させる(保持させる)ことができる傾向があり、即ち、前記光触媒どうしの間隙を小さくすることができる傾向がある。
前記光触媒の粒度分布としては、例えば、2×10−6〜1×10−5であるのが好ましい。
【0039】
本発明においては、前記光触媒保持部が前記光触媒の少なくとも一部が視認可能に設計されているため、前記光触媒は、前記光触媒保持部において、その少なくとも一部が視認可能に保持される。このため、該光触媒の状態を目視にて把握することができ、該光触媒の光触媒活性が低下乃至消失等した場合に、適切なタイミングで、該光触媒を前記光触媒保持部から取り出して交換したり、該光触媒を焼成等して再生させることができる点で有利である。
【0040】
本発明においては、前記光触媒は、該光触媒における光触媒活性の変化を把握可能に設計されているのが好ましく、視認可能に設計されているのがより好ましい。このような光触媒としては、該光触媒における光触媒活性が低下乃至消失した際に、変色するように設計されているものが好ましい。前記光触媒がこのように変色可能に設計されていると、該光触媒の交換乃至再生時期の把握が容易であり、かつ前記気体中の有害成分の分解除去が不十分になることがない点で、該気体の清浄効率、安全面等において特に有利である。
このような変色可能な光触媒としては、特に制限はなく、目的に応じて選択することができるが、例えば、前記気体中に含まれる有害成分を分解すると変色可能であるものが好ましい。この場合、変色の態様としては、無色から有色への変色、有色から無色への変色、ある有色から他の有色への変色、のいずれであってもよい。このような変色の一例としては、前記光触媒が、前記気体中に含まれる有害成分を分解前から分解後において、淡黄色から淡青色への変色、などが好適に挙げられる。なお、前記光触媒の変色の態様は、該光触媒中に含まれる金属原子の種類、量によって調節することができ、例えば、前記淡黄色から淡青色への変色の場合には、前記光触媒中にクロム(Cr)を含ませておくことにより達成することができる。
【0041】
前記光触媒の光触媒活性の発現に必要な光の波長としては、特に制限はなく、前記気体清浄器の用途等に応じて目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記気体清浄器が太陽光照射条件下で主に使用するものである場合には、紫外光乃至可視光等の広帯域の光に対して吸収性を示し、光触媒活性を発現可能であるのが好ましく、また、前記気体清浄器が室内で主に使用されるものである場合には、可視光の波長域の光に対して吸収性を示し、光触媒活性を発現可能であるのが好ましく、多くの用途に適用可能であり、多様な環境下で良好な光触媒活性が得られる点で、少なくとも可視光の波長域の光に吸収性を示し、可視光により光触媒活性を発現可能であるのが好ましい。
【0042】
前記光触媒の具体的な材質乃至組成としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、光触媒活性(光触媒能)を有するアパタイトなどが特に好適に挙げられる。該光触媒が、光触媒活性を有するアパタイトであると、該アパタイトの優れた吸着特性により、前記気体中に含まれる前記有害成分に対する吸着特性に優れる点で有利であり、また、その光触媒活性(光触媒能)により、吸着した前記有害成分を効率的に光触媒活性により分解除去可能である点で有利である。
これらの光触媒の中でも、光触媒活性を有するアパタイトと、可視光吸収性金属原子とを少なくとも含んでなるものが好ましく、更に紫外光吸収性金属原子を含んでなるものがより好ましい。前記光触媒が、前記可視光吸収性金属原子を含んでなる場合には、蛍光灯下の日常使用条件下での使用に好適な点で有利であり、前記紫外光吸収性金属原子を更に含んでいると、太陽光等の紫外光を含む光の照射条件下での使用に好適な点で有利である。
なお、本発明においては、前記光触媒は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
前記光触媒活性(光触媒能)を有するアパタイトとしては、光触媒活性を有する限り特に制限は無く、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アパタイトが、光触媒活性を有するのに必要な金属原子(以下、光触媒活性を発現可能な金属原子と称することがある。)を有してなるものなどが好適に挙げられる。前記アパタイトが該光触媒活性を有するのに必要な金属原子を有すると、該アパタイトに光が照射されると、該光触媒活性を有するのに必要な金属原子の作用により該アパタイトが活性化され、該アパタイトの表面に吸着している前記有害成分(分解対象物)から電子を奪い取ることができ、該有害成分を酸化し、分解させることができる。
【0044】
前記アパタイトとしては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、下記一般式(1)で表されるもの、などが好適に挙げられる。
【0045】
【化1】
【0046】
前記一般式(1)において、Aは、金属原子を表し、該金属原子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、ランタン(La)、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、鉛(Pb)、カドミウム(Cd)、ユウロピウム(Eu)、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、などが挙げられる。これらの中でも、吸着性に優れる点で、カルシウム(Ca)が特に好ましい。
Bは、リン原子(P)及び硫黄原子(S)のいずれかを表し、これらの中でも、生体親和性に優れる点で、リン原子(P)が好ましい。
Oは、酸素原子を表す。
Xは、水酸基(OH)、CO3、及びハロゲン原子のいずれかを表し、これらの中でも、前記Aの金属原子と共に金属酸化物型の光触媒性部分構造を形成可能な点で、水酸基(OH)が特に好ましい。なお、前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、などが挙げられる。
m、n、z、及びsは、整数を表し、例えば、電荷バランスが良好な点で、mは8〜10が好ましく、nは3〜4が好ましく、zは5〜7が好ましく、sは1〜4が好ましい。
【0047】
前記一般式(1)で表されるアパタイトとしては、例えば、ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト若しくはクロロアパタイト、又は、これらの金属塩、リン酸三カルシウム若しくはリン酸水素カルシウム、などが挙げられる。これらの中でも、上記一般式(1)における、Xが水酸基(OH)であるハイドロキシアパタイトが好ましく、上記一般式(1)における、Aがカルシウム(Ca)であり、Bがリン原子(P)であり、かつXが水酸基(OH)であるカルシウムハイドロキシアパタイト(CaHAP)、即ち、Ca10(PO4)6(OH)2が特に好ましい。
【0048】
前記カルシウムハイドロキシアパタイト(CaHAP)は、カチオンに対してもアニオンに対してもイオン交換し易いため、各種の有害成分(分解対象物)に対する吸着特性に優れ、特にタンパク質等の有機物に対する吸着特性に優れており、加えて、ウイルス、カビ、細菌等の微生物等に対する吸着特性にも優れ、これらの増殖を阻止乃至抑制し得る点で好ましい。
【0049】
前記アパタイトの前記光触媒における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、85〜97mol%であるのが好ましく、85〜90mol%であるのがより好ましい。
前記アパタイトの含有量が、85mol%未満であると、前記光触媒の光触媒活性が十分でないことがあり、97mol%を超えても、それに見合う効果が得られず、また、該光触媒の前記有害成分(分解対象物)に対する吸着特性や光触媒活性等が低下することがある。
なお、前記アパタイトの前記光触媒における含有量は、例えば、ICP−AESによる定量分析を行うことにより測定することができる。
【0050】
前記光触媒活性を有するのに必要な金属原子としては、光触媒中心として機能し得る限り特に制限はなく、光触媒活性を有するものとして公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、光触媒活性に優れる点で、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、スズ(Sn)、インジウム(In)、鉄(Fe)、などから好適に選択される少なくとも1種が好適に挙げられる。これらの中でも、特に前記光触媒活性(光触媒能)に優れる点で、チタン(Ti)が好ましい。
【0051】
前記光触媒活性を有するのに必要な金属原子の前記光触媒における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記光触媒における全金属原子に対し、5〜15mol%であるのが好ましく、8〜12mol%であるのがより好ましい。
前記光触媒活性を有するのに必要な金属原子の含有量が、5mol%未満であると、前記光触媒の光触媒活性が十分でないことがあり、15mol%を超えても、それに見合う効果が得られず、また、該光触媒の分解対象物に対する吸着特性や光触媒活性等が劣化することがある。
なお、前記光触媒活性を有するのに必要な金属原子の前記光触媒における含有量は、例えば、ICP−AESによる定量分析を行うことにより測定することができる。
【0052】
前記光触媒活性を有するのに必要な金属原子が、前記アパタイトの結晶構造を構成する金属原子の一部として該アパタイトの結晶構造中に取り込まれる(置換等される)ことによって、該アパタイトの結晶構造内に、光触媒機能を発揮し得る「光触媒性部分構造」が形成される。
このような光触媒性部分構造を有する前記アパタイトは、光触媒活性を有し、また、アパタイト構造部分が吸着特性に優れ、光触媒活性を有する公知の金属酸化物よりも、前記有害成分(分解対象物)に対する吸着特性に優れるため、分解作用、抗菌作用、防汚作用、カビや細菌等の増殖阻止乃至抑制作用に優れる。
【0053】
前記光触媒活性を有するアパタイトとしては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
前記光触媒活性を有するアパタイトの合成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、公知の共沈法が好適に挙げられるが、具体的には、例えば、前記カルシウムハイドロキシアパタイトの場合、以下のようにして合成することができる。即ち、まず、前記アパタイトの原料であるカルシウム原子(Ca)を含む硝酸カルシウムを、脱炭酸ガス処理した純水中に溶解し、マグネティックスターラー等を用いて攪拌しながら、アパタイトの原料となる燐原子(P)を含む燐酸水溶液を滴下する。次に、アンモニア水等を加えてpHを9に調整した後、100℃にて5時間熟成を行い、濾過し、純水で洗浄し、乾燥させること、等により合成することができる。
前記光触媒活性を有するアパタイトの市販品としては、例えば、前記カルシウム・チタンハイドロキシアパタイトでは、太平化学産業株式会社製の商品名「PCAP−100」などが好適に挙げられる。
【0054】
前記可視光吸収性金属原子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、波長400nm以上の光に対し、吸収特性を有するもの、などが好適に挙げられ、具体的には、クロム(Cr)及びニッケル(Ni)から選択される少なくとも1種などがより好ましく、前記光触媒の光触媒活性の状態を目視にて視認可能にする観点からは、その光触媒活性の状態により、淡黄色から淡青色へと、更に淡青色から濃青色へと変色可能なクロム(Cr)が好ましい。
【0055】
前記可視光吸収性金属原子の前記光触媒における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、全金属原子に対し、0.001〜1mol%であるのが好ましく、0.01〜1mol%がより好ましい。
前記可視光吸収性金属原子の含有量が、0.001mol%未満であると、前記光触媒の可視光の吸収能が十分でないことがあり、1mol%を超えてもそれに見合う効果が得られず、前記光触媒の前記有害成分(分解対象物)に対する吸着性能が低下等してしまうことがある。
なお、前記可視光吸収性金属原子の前記光触媒における含有量は、例えば、ICP−AESによる定量分析を行うことにより測定することができる。
【0056】
前記紫外光吸収性金属原子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記光触媒の可視光吸収性及び紫外光吸収性を飽和させない点で、タングステン(W)及びバナジウム(V)の少なくともいずれかであるのが好ましい。これらは、前記光触媒中に、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。
【0057】
前記紫外光吸収性金属原子の含有量としては、全金属原子に対し、0.001〜0.1mol%であるのが好ましい。
前記紫外光吸収性金属原子の含有量が、0.001mol%未満であると、前記光触媒の紫外光の吸収能が十分でないことがあり、0.1mol%を超えてもそれに見合う効果が得られず、前記光触媒の前記有害成分(分解対象物)に対する吸着性能が低下したり、可視光の吸収能が低下等してしまうことがある。
なお、前記紫外光吸収性金属原子の前記光触媒における含有量は、例えば、ICP−AESによる定量分析を行うことにより測定することができる。
【0058】
前記光触媒においては、前記光触媒活性を有するのに必要な金属原子と、前記紫外光吸収性金属原子と、前記可視光吸収性金属原子との含有量の合計としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、15mol%以下が好ましく、3〜15mol%がより好ましい。
前記含有量の合計が、15mol%を超えてもそれに見合う光触媒活性の向上効果が得られず、却って光触媒活性が低下することがある。
【0059】
前記光触媒の具体例としては、前記光触媒活性を有するのに必要な金属原子がチタン(Ti)であり、前記アパタイトがカルシウムハイドロキシアパタイト(CaHAP):Ca10(PO4)6(OH)2であり、前記可視光吸収性金属原子がクロム(Cr)であるものが好ましく、更に、前記紫外光吸収性金属原子を含み、該紫外光吸収性金属原子がタングステン(W)及びバナジウム(V)の少なくともいずれかであるものがより好ましい。
このような光触媒は、該光触媒の光触媒活性の状態を目視にて視認(把握)することができ、該光触媒の交換乃至再生時期を容易に判断することができ、前記気体中に含まれる前記有害成分(分解対象物)の分解除去等が不十分になることがない点が有利であり、また、前記光触媒が前記紫外光吸収性金属原子も含む場合には、可視光のみならず紫外光をも吸収可能であり広帯域な光吸収性を示し、光の利用効率に優れ、各種光の照射条件下、例えば、太陽光照射条件下における用途に好適に使用可能である。そして、該光触媒は、可視光及び紫外光のいずれを照射した場合においても光触媒活性が飽和することがなく、長期間にわたって優れた光触媒活性を示し、特に紫外光を長期間にわたって照射した場合においても光触媒活性が飽和することがなく優れた光触媒活性(光触媒能)を維持可能な点で有利である。
【0060】
前記光触媒の構造としては、例えば、単層構造、積層構造、多孔質構造、コア・シェル構造、などが挙げられる。
なお、前記光触媒の同定・形態等の観察は、例えば、TEM、XRD、XPS、FT−IR等に行うことができる。
【0061】
前記光触媒としては、焼成により、その光触媒活性を再生(発現乃至再活性)可能であり、繰返し使用可能である。
前記光触媒の光触媒活性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記紫外光吸収性金属原子を含む場合には、同条件下で紫外光(UV光)を連続2時間照射時の光触媒活性(A2)と連続5時間照射時の光触媒活性(A5)との比(A5/A2)が、1.3以上であるのが好ましく、2.2以上であるのがより好ましい。
前記比(A5/A2)が、1.3未満であると、紫外光を長時間照射すると光触媒活性が飽和してしまい、紫外光照射条件下での前記有害成分(分解対象物)に対する光触媒活性が十分でなく、分解能向上効果が十分でないことがある。
【0062】
なお、前記光触媒活性は、前記有害成分(分解対象物)の濃度、有害成分(分解生成物)の濃度等を測定することにより評価することができる。前記分解対象物が例えばアルデヒドガスである場合には、評価対象となる前記光触媒に対し、可視光及び紫外光の少なくともいずれかを特定条件下で照射して、該アセトアルデヒドガスの濃度(ppm)及びその分解生成物である炭酸ガス濃度(ppm)を分析し、モニターすることにより、該広帯域光吸収性光触媒の光触媒活性を評価することができる。
なお、前記有害成分(分解対象物)又は前記分解性生物がガスである場合には、例えば、アセトアルデヒドガス等である場合には、その濃度は、ガスクロマトグラフィー等により測定することができる。
【0063】
前記光触媒の好ましい光触媒活性としては、該光触媒を表面積が85.5m2となる量だけ、容量500mlの密閉容器に入れ、酸素30容量%及び窒素70容量%を含むガスで該容器内部を置換した後、アセトアルデヒドを14000ppm含む前記ガス12mlをシリンジで前記容器内部に注入し、該アセトアルデヒドガスが前記光触媒と吸着平衡に達するまで暗所で放置した後、更に暗所で1時間放置後、波長380nm以下の紫外光を前記広帯域光吸収性光触媒に連続照射した際における、連続2時間照射後に減少したアセトアルデヒド濃度C2(ppm)と連続5時間照射後に減少したアセトアルデヒド濃度C5(ppm)との比(C5/C2)が、1.3以上であることであり、2.2以上であることがより好ましい。
前記比(C5/C2)が、1.3未満であると、紫外光を長時間照射すると光触媒活性が飽和してしまい、紫外光照射条件下での前記分解対象物に対する光触媒活性が十分でなく、分解能向上効果が十分でないことがある。
なお、前記アセトアルデヒドガス濃度又は炭酸ガス濃度は、上述したガスクロマトグラフィー等により測定することができる。
【0064】
前記光触媒は、それ自体単独で使用してもよいし、目的、用途等に応じて適宜選択することができ、例えば、活性炭等の公知の吸着剤などと併用してもよい。この場合、前記光触媒の作用のみならず、他の公知の吸着剤等の作用とにより、効率的に前記有害成分(分解対象物)の分解除去を行うことができる点で有利である。
【0065】
前記光触媒は、公知の方法に従って製造することができ、例えば、前記光触媒活性を有するアパタイト中に、上述した可視光吸収性金属原子と、更に必要に応じて上述した紫外光吸収性金属原子とをドープさせることにより製造することができる。
【0066】
前記ドープの態様としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、置換、化学結合、吸着などが挙げられるが、これらの中でも、反応の制御が容易であり、ドープされた後で前記可視光吸収性金属原子等が脱離等することがなく、これらを前記光触媒中を安定に保持させることができる点で、置換が好ましい。
前記置換の態様としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記光触媒活性を有するアパタイトとして、前記光触媒活性を有するのに必要な金属原子を有してなるアパタイトを用いた場合、該金属原子の少なくとも一部を、前記可視光吸収性金属原子等により置換させる態様、などが好適に挙げられる。この態様の場合には、前記可視光吸収性金属原子等が、前記アパタイトに脱落不能に保持される点で有利である。
【0067】
前記可視光吸収性金属原子等による置換の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イオン交換、などが好適に挙げられる。該置換がイオン交換の場合には、置換効率に優れる点で有利である。
【0068】
前記ドープの具体的な方法、即ち前記光触媒活性を有するアパタイト中への前記可視光吸収性金属原子等のドープの具体的な方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記可視光吸収性金属原子を含む化合物等を溶解させた(共存させた)水溶液中に、前記光触媒活性を有するのに必要な金属原子を有してなるアパタイトを浸漬させることにより行う浸漬法、前記光触媒活性を有するのに必要な金属原子を有してなるアパタイトの原料と、前記可視光吸収性金属原子を含む化合物等を溶解させた(共存させた)水溶液中で、該原料と該可視光吸収性金属原子等を共沈させる共沈法、などが好適に挙げられる。
なお、前記水溶液は、静置しておいてもよいが、攪拌した方が前記置換が効率的に行われる点で好ましい。なお、該攪拌は、公知の装置、手段を用いて行うことができ、例えば、マグネチックスターラーを用いてもよいし、攪拌装置を用いてもよい。これらの方法の中でも、簡便に操作可能な点で、浸漬法がより好ましい。
【0069】
なお、前記浸漬法においては、上述のように、前記可視光吸収性金属原子を含む化合物等を溶解させた(共存させた)水溶液中に、前記光触媒活性を有するのに必要な金属原子を有してなるアパタイトを浸漬させてもよいし、逆に、前記光触媒活性を有するのに必要な金属原子を有してなるアパタイトを分散させた水溶液中に、前記可視光吸収性金属原子等を含む化合物とを前記水溶液中に溶解させてもよい。
【0070】
また、上述の製造例では、前記光触媒活性を有するアパタイトを出発物質として用いているが、これに代えて、上述したアパタイトと、上述した光触媒活性を有するのに必要な金属原子とを出発物質として用いて、前記可視光吸収性金属原子等のドープと同時に、あるいはそれに先立って、前記光触媒活性を有するのに必要な金属原子を、前記アパタイトにドープさせてもよい。この場合には、前記可視光吸収性金属原子等のドープと、前記光触媒活性を有するアパタイトの形成とを同時に行うことになり、あるいは、前記光触媒活性を有するアパタイトを形成してから、次に、前記可視光吸収性金属原子等のドープを行うことになる。
なお、前記光触媒活性を有するアパタイトを出発物質として用いる態様の場合には、予めNiがドープされているカルシウム・チタンハイドロキシアパタイト(TiHAP)を、前記光触媒活性を有するアパタイトとして好適に使用することができる。
【0071】
前記ドープの際の前記水溶液中での前記光触媒活性を有するのに必要な金属原子を有してなるアパタイトの濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.3〜1.0質量%が好ましく、0.4〜0.6質量%がより好ましい。
前記アパタイトの濃度が、0.3質量%未満であると、光触媒活性が低下することがあり、1.0質量%を超えても、それに見合う光触媒活性の向上効果が得られず、却って光触媒活性が低下することがある。
【0072】
前記ドープの際の前記水溶液中での前記可視光吸収性金属原子の濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1×10−4〜1×10−3Mが好ましく、1×10−4〜5×10−4Mがより好ましい。
前記可視光光吸収性金属原子の濃度が、1×10−4M未満であると、可視光応答性が低下することがあり、1×10−3Mを超えても、それに見合う可視光応答性の向上効果が得られず、却って可視光応答性が低下することがある。
【0073】
前記ドープの際の前記水溶液中での前記紫外光吸収性金属原子の濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1×10−3〜1×10−2Mが好ましく、9×10−3〜1×10−2Mがより好ましい。
前記紫外光吸収性金属原子の濃度が、1×10−3M未満であると、紫外光に対する光触媒活性が低下することがあり、1×10−2Mを超えても、それに見合う光触媒活性の向上効果が得られず、却って紫外光に対する活性が低下することがある。
【0074】
前記ドープの際における、前記水溶液中に浸漬させる前記可視光吸収性金属原子の形態としては、該水溶液中への溶解容易性、該水溶液中での該紫外光吸収性金属原子の濃度調整の容易性等の点で、該可視光吸収性金属原子の塩又は水和物の形態であるのが好ましい。
該塩又は水和物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記可視光吸収性金属原子が、クロム(Cr)及びニッケル(Ni)である場合には、これらから選択される少なくとも1種を含む塩であるのが好ましく、塩化物や硫酸塩では光触媒活性を低下させることがあるため、硝酸塩やアンモニウム塩であるのが特に好ましい。
【0075】
前記ドープを行う反応系としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、液中、空気中、などで行うことができるが、液中で行うのが好ましい。
この場合、該液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水乃至水を主体にした液が好ましい。
なお、該液を収容する容器としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、ラージスケールであれば混合器、攪拌器などが挙げられ、スモールスケールであればビーカーなどが好適に挙げられる。
【0076】
前記ドープの際の条件としては、特に制限はなく、温度、時間、圧力等については目的に応じて適宜選択することができる。
前記温度としては、特に制限はなく、材料の種類や量比等に応じて異なり、一概に規定することはできないが、例えば、通常、0℃〜100℃程度であり、室温(20℃〜30℃)が好ましい。前記時間としては、特に制限はなく、材料の種類や量比に応じて異なり、一概に規定することはできないが、通常、10秒〜30分間程度であり、1〜10分間がより好ましい。前記圧力としては、特に制限はなく、材料の種類や量比等に応じて異なり、一概に規定することはできないが、通常、大気圧であるが好ましい。
なお、前記光触媒における、前記光触媒活性を有する金属、前記可視光吸収性金属原子等の量は、これらの添加量(M)、あるいは前記条件を適宜調整することにより、所望に制御することができる。
【0077】
前記焼成は、前記光触媒活性を有するアパタイト中に、前記可視光吸収性金属原子等をドープさせた後(前記ドープ工程の後)、ドープが完了した該アパタイトを600〜800℃で焼成する工程である。
前記焼成の温度が、600℃未満であると、光触媒活性が最大とならないことがあり、800℃を超えると、分解が生ずることがある。
【0078】
前記焼成の条件、例えば、時間、雰囲気、圧力、装置等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記時間としては、前記ドープが完了したアパタイトの量等に応じて異なり、一概に規定することはできないが、例えば、1時間以上が好ましく、1〜2時間がより好ましい。前記雰囲気としては、例えば、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気、大気雰囲気などが挙げられるが、大気雰囲気が好ましい。前記圧力としては、例えば、大気圧などが挙げられる。前記装置としては、公知の焼成装置を使用することができる。
前記焼成を行うことにより、前記可視光吸収性金属原子等をドープした、前記光吸収活性を有するアパタイトの結晶性を高めることができ、前記光触媒における光触媒能(吸着特性、光触媒活性などを含む)をより高めることができる。
【0079】
ここで、前記光触媒の製造方法の一例について説明する。前記ドープを前記置換で行う場合、具体的には前記置換をイオン交換により共沈法で行う場合には、まず、脱炭酸ガス処理をした純水に、例えば、前記アパタイトとしてカルシウムハイドロキシアパタイト(CaHAP)の硝酸カルシウムの水溶液と、該CaHAPに前記光触媒活性を有する金属としてチタンをドープさせるための、該チタンを含む硫酸チタンの水溶液と、前記可視光吸収性金属原子であるクロムを含む硝酸クロムの水溶液と、前記紫外光吸収性金属原子である短癖点を含む12タングストリン酸n水和物の水溶液とを所定量で混合する。次いで、得られた混合物に燐酸を添加し、更にアンモニア水を添加してpHを9に調整する。得られた懸濁液を、100℃にて6時間エージング(熟成、結晶成長)し、ろ過する。ろ別した沈殿を純水で洗浄し、乾燥する。その後、650℃まで1時間かけて昇温して焼成する。以上により、前記紫外光吸収性原子としてバナジウム(V)を、前記可視光吸収性金属原子としてクロム(Cr)を、それぞれドープしたTiHAP粉体(光触媒)が製造される。
【0080】
また、前記ドープを前記置換で行う場合、具体的には前記置換をイオン交換により浸漬法で行う場合には、まず、前記可視光吸収性金属原子としてクロムを含む硝酸クロム(III)九水和物を純水に溶解し、硝酸クロム水溶液を調製する。ビーカーに前記光触媒活性を有するのに必要な金属原子(チタン)を有してなるアパタイトとしてのカルシウム・チタンハイドロキシアパタイト(TiHAP)を秤量し、そこに前記硝酸クロム水溶液を添加する。この混合液をマグネティックスターラーで5分間攪拌した後、濾紙でアスピレータを使用して吸引濾過を行い、純水で洗浄し、100℃のオーブンで2時間乾燥することにより、前記可視光クロムをドープさせたTiHAP粉体を得た。次に、前記紫外光吸収性金属原子としてのバナジウムを含むバナジン酸アンモニウムを純水に溶解し、バナジウム酸アンモニウム水溶液を調製した。ビーカーに上記クロムドープTiHAPを秤量し、前記バナジウム酸アンモニウム水溶液を添加する。この混合溶液をマグネティックスターラーで攪拌した後、濾紙でアスピレータを使用して吸引濾過を行い、純水で洗浄し、100℃のオーブンで2時間乾燥した。その後、マッフル炉で650℃にて1時間の焼成(大気雰囲気)を行った。以上により、前記可視光吸収性金属原子であるクロム及び前記紫外光吸収性金属原子であるバナジウムをドープさせたTiHAP粉体(光触媒活性を有するのに必要な金属原子を有してなるアパタイト)からなる光触媒が製造される。
【0081】
−その他の部材−
前記その他の部材としては、特に制限はなく、用途、目的等に応じて適宜選択することができ、例えば、公知のフィルター等が挙げられ、また、該気体清浄器を喫煙ホルダー等として使用する場合には、例えば、吸口部などが挙げられ、該気体清浄器を空気清浄器におけるフィルター等として使用する場合には、本体への取付用構造部、などが挙げられる。
なお、前記その他の部材として、公知のフィルター(メンブレンフィルタ、ガラス繊維フィルタなど)等を有していると、前記気体清浄器においては、前記光触媒保持部内に保持された前記光触媒の光触媒活性により前記気体中に含まれる有害成分を分解除去し、更に前記フィルター等により前記有害成分や、前記気体中の塵や埃などを除去等することができる点で有利である。
【0082】
−用途等−
本発明の気体清浄器は、各種分野に好適に使用することができるが、例えば、シガレットホルダー、パイプホルダー、酸素吸引具、防護マスク、防塵マスク、防臭マスク、スポーツ用マスクなど、あるいは、排気装置におけるフィルター、及び、排気管の少なくとも一部の少なくともいずれか、などに特に好適に使用することができる。
【0083】
本発明の気体清浄器における前記光触媒保持部に保持される前記光触媒は、その光触媒活性が低下乃至消失した場合には、前記光触媒保持部から取り出し、再生(再活性化)することができる。前記光触媒の再生方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、以下の本発明の気体清浄器の再生方法により好適に再生させることができる。
【0084】
(気体清浄器の再生方法)
本発明の気体清浄器の再生方法は、本発明の前記気体清浄器における、前記光触媒保持部に保持された前記光触媒を、該光触媒保持部から取り出して焼成することにより、該光触媒の光触媒活性を再生(再活性化)させた後、前記光触媒保持部に戻すことを含み、更に必要に応じて適宜選択した処理を含む。
【0085】
前記焼成を行う時期(タイミング)としては、前記気体清浄器における前記光触媒の光触媒活性が低下乃至消失した際に行うのが好ましい。なお、本発明の前記気体清浄器においては、該光触媒の光触媒活性が低下乃至消失したか否かは、該光触媒の色を目視にて視認することにより判断することができる。
【0086】
前記焼成としては、特に制限はなく、目的に応じてその温度、時間、雰囲気等の条件を適宜選択することができる。
前記焼成の温度としては、600〜800℃が好ましく、600〜650℃がより好ましい。前記温度が、600℃未満であると、前記光触媒の光触媒活性の再生(再活性化)が十分でないことがあり、800℃を超えると、分解が生ずることがある。
前記焼成の時間としては、例えば、1時間以上が好ましく、1〜2時間がより好ましい。前記時間が、1時間未満であると、前記光触媒の光触媒活性の再生(再活性化)が十分でないことがある。
前記焼成の雰囲気としては、例えば、大気雰囲気、不活性ガス雰囲気、などが挙げられ、前記不活性ガス雰囲気としては、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気、などが挙げられる。これらの中でも、特殊な設備が不要な点で雰囲気が特に好ましい。
【0087】
前記焼成を行う装置としては、加熱を行う機能を有していれば特に制限はなく、例えば、公知の加熱装置などが好適に挙げられる。前記加熱装置に前記光触媒を入れる際には、公知の容器などに収容させることができ、該容器としては、例えば、デシケータ等の密閉容器であってもよいし、シャーレなどの非密閉容器であってもよい。なお、前記焼成により再生(再活性化)した前記光触媒を直ちには使用せず、一定期間保存する場合には、その光触媒活性を直ぐに低下させないようにし、長期に活性状態を維持する観点からは、前記デシケータ等の密閉容器を使用し、前記焼成後の前記光触媒をそのまま該デシケータ等の密閉容器中で保存するのが好ましい。
【0088】
前記焼成の後、再生(再活性化)した前記光触媒を直ちに使用せず、保存等する場合には、該光触媒の光触媒活性の低下乃至消失等を防止する観点からは、該光触媒を、例えば、デシケータ等の密閉容器内で暗所に保存しておくことが好ましい。なお、前記デシケータ等の密閉容器には、シリカゲル等の乾燥剤等を収容させておいてもよい。
【0089】
本発明の気体清浄器の再生方法によると、前記光触媒保持部内に保持された前記光触媒の光触媒活性を容易にかつ効率的に再生(再活性化)することができる。その結果、該気体清浄器による前記気体中の有害成分(分解対象物)の分解除去効率を高くかつ低コストで維持することができ、安全で清浄な気体を吸引等することが可能となる。
【実施例】
【0090】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0091】
前記光触媒として、前記光触媒活性を有するのに必要な金属原子と、前記可視光吸収性金属原子と、前記紫外光吸収性金属原子とを含むアパタイト(光触媒1及び2)を以下のようにして製造した。該光触媒1及び2は、前記可視光吸収性金属原子と前記紫外光吸収性金属原子とを含むため、可視光及び紫外光を吸収可能であり、広帯域の光を吸収し利用可能であるので、太陽光照射条件下において光触媒活性を示す。
【0092】
−光触媒Aの製造−
前記可視光吸収性金属原子であるクロムを含む硝酸クロム(III)九水和物(和光純薬工業株式会社製)を純水に溶解し、該クロムの濃度が1×10−4Mである硝酸クロム水溶液を調製した。次に、300mlビーカーに、前記光触媒活性を有する金属としてチタンを有してなるアパタイトとして、カルシウム・チタンハイドロキシアパタイト(TiHAP;太平化学産業株式会社製、PCAP−100)1.5gを秤量し、前記硝酸クロム水溶液を添加し、混合液を調製した。該混合液をマグネティックスターラーで5分間攪拌した後、ワットマンNo.5の濾紙でアスピレータを使用して、該混合液の吸引濾過を行った。次いで、4〜5リットルの純水で洗浄した後、100℃のオーブンで2時間乾燥して、クロムをドープしたTiHAP粉体を得た。次に、前記紫外光吸収性金属原子であるタングステン(W)を含む12タングストリン酸n水和物(関東化学株式会社製)を純水に溶解し、該タングステンの濃度が1×10−2Mであるタングステン塩水溶液を調製した。次に、300mlビーカーに、先に得たクロムをドープしたTiHAPの1.5gを秤量し、前記タングステン塩水溶液を添加した。該混合液をマグネティックスターラーで5分間攪拌した。その後、ワットマンNo.5の濾紙でアスピレータを使用して、前記混合液の吸引濾過を行い、ろ過物を4〜5リットルの純水で洗浄した。次に、該ろ過物を100℃のオーブンで2時間乾燥した。その後、マッフル炉(株式会社ケイデン製)で650℃にて1時間の焼成(大気雰囲気)を行った。以上により、前記可視光吸収性金属であるクロム及び前記紫外光吸収性金属であるタングステンをドープしたTiHAP粉体(光触媒活性を有する金属(チタン)を含有してなるアパタイト)からなる粒状(平均粒径:5μm、粒度分布:2×10−6〜1×10−5)の光触媒A(広帯域光吸収性光触媒)を製造した。
【0093】
上記光触媒Aをシャーレに表面積が85.5m2となるように秤量し、前記気体清浄器としての喫煙ホルダーにおける光触媒保持部に入れ、合成空気(酸素30容量%−窒素70容量%)で該光触媒保持部内を置換した。次に、アセトアルデヒドガス濃度が約14000ppm(残りは合成空気)のガス12mlをシリンジで前記光触媒保持部内に注入し、アセトアルデヒドガスが前記光触媒Aと吸着平衡に達するまで暗所で放置した(約2時間)。その後、暗所で1時間放置後、可視光を照射し、その1時間後、2時間後及び3時間後、並びに、紫外光を照射し、その1時間後及び2時間後において、前記光触媒保持部内のガスをシリンジで抜き取り、ガスクロマトグラフィー(GC−390B、GLサイエンス社製)を用いて、アセトアルデヒドガス濃度と、アセトアルデヒドガスの分解により発生する炭酸ガス濃度とを計測した。結果を図10に示した。なお、可視光の照射には林時計工業株式会社製のキセノン光源「LA−251Xe」とL−42フィルタを組み合わせて紫外光をカットした光(39500ルクス)を用いた。また紫外光の照射にはブラックライト(1mW/cm2)を用いた。
【0094】
−光触媒Bの製造−
上記光触媒Aの製造において、前記紫外光吸収性金属原子である、タングステン(W)を含む12タングストリン酸n水和物(関東化学株式会社製)を、バナジウムを含むバナジウム酸アンモニウム(関東化学株式会社製)に変えた以外は、上記光触媒Aの製造と同様にして、前記可視光吸収性金属錯体であるクロム及び前記紫外光吸収性金属錯体であるバナジウムをドープしたTiHAP粉体(光触媒活性を有するのに必要な金属(チタン)を含有してなるアパタイト)からなる粒状(平均粒径:5μm、粒度分布:2×10−6〜1×10−5)の光触媒B(広帯域光吸収性光触媒)を製造した。
【0095】
上記光触媒Bをシャーレに表面積が85.5m2となるように秤量し、前記気体清浄器としての喫煙ホルダーにおける光触媒保持部に入れ、合成空気(酸素30%−窒素70%)で該光触媒容器内を置換した。次に、アセトアルデヒド濃度が約14000ppm(残りは合成空気)のガス12mlをシリンジで該光触媒容器内に注入し、アセトアルデヒドガスが粉体と吸着平衡に達するまで暗所で放置した(約2時間)。その後、暗所で1時間放置後、可視光を照射し、その1時間後、2時間後、3時間後、4時間後及び5時間後に前記光触媒保持部内のガスをシリンジで抜き取り、ガスクロマトグラフィー(GC−390B、GLサイエンス社製)を用いて、アセトアルデヒドガス濃度と、アセトアルデヒドガスの分解により発生する炭酸ガス濃度とを計測した。結果を図11に示した。
【0096】
なお、図10及び11において、「暗所1h」とは、暗所に1時間静置したことを意味し、「Vis」とは、可視光を照射したことを意味し、「Vis−1h」とは、可視光を1時間照射したことを意味し、「UV」とは、紫外光を照射したことを意味し、「1h」とは、1時間照射したことを意味する。各図において、右側の縦軸は、前記分解対象物としての「アセトアルデヒドガス」の濃度(ppm)を表し、左側の縦軸は、該アセトアルデヒドガスの分解産物である「炭酸ガス」(二酸化炭素)の濃度(ppm)を表す。
【0097】
(実施例1)
−喫煙ホルダー−
図1は、本発明の前記気体清浄器を本発明の前記喫煙ホルダーとして用いた場合の該喫煙ホルダーの一外観例を示す概略説明図である。図1に示す喫煙ホルダー10は、光触媒保持部1と、吸口部4とを有する。
【0098】
光触媒保持部1は、円筒状に形成されている。光触媒保持部1の一端開口部は、タバコの吸口部、パイプの吸口部、葉巻の吸口部などが挿入可能な挿入部3が設けられている。光触媒保持部1の該一端開口部に設けられた挿入部3の大きさ、形状等は、そこに挿入されるタバコ、パイプ、葉巻等の種類に応じて適宜設計することができ、図2に示すようにタバコ6の吸口部が挿入部3に挿入された際、あるいは図3に示すようにパイプ7の吸口部8が挿入部3に挿入された際、挿入部3は、タバコ6やパイプ7を落下させないように保持する。また、光触媒保持部1の他端開口部には、吸口部4が螺合可能に設けられており、着脱自在となっている。吸口部4の形状、構造等としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、図1〜3に示すように、光触媒保持部1から離れるに従って漸次縮径されて、吸引に適した扁平形状であるのが好ましい。
【0099】
光触媒保持部1は、透明樹脂(ポリカーボネート、可視光透過率=95%)製であり、外部からその内部を視認可能である。光触媒保持部1における、前記一端開口部に設けられた挿入部3の内側端部には、前記ガス透過手段としてのガス透過膜5が固定的に配されている。また、吸口部4における、光触媒保持部4内に挿入される側の端部にも、ガス透過膜5が固定的に配されている。
【0100】
光触媒保持部1における、2つのガス透過膜5により挟まれた空間内に、上記光触媒A(クロムイオンをドープしたカルシウムチタンハイドロキシアパタイト)としての光触媒2が収容(充填)されている。
【0101】
光触媒保持部1に設けられた吸口部4は、光触媒保持部1との螺合を解く方向に回転させることにより、光触媒保持部1から取り外すことができる。吸口部4を光触媒保持部1から取り外すと、光触媒保持部1における内部の空間が露出する。このとき、光触媒2を該空間内に収容(充填)又は取出しした後、吸口部4を光触媒保持部1に取り付けることにより、光触媒2を光触媒保持部1の内部の空間内に保持(収容)させることができ、あるいは該空間内から取り出すことができる。
【0102】
光触媒活性が低下乃至消失等していない光触媒2(クロムイオンをドープしたカルシウムチタンハイドロキシアパタイト)は、淡黄色である。淡黄色の光触媒2を光触媒保持部1内に収容(充填)させた後、光触媒保持部1の一端開口部に設けられた挿入部3に、図2に示すようにタバコ6の吸口部、あるいは図3に示すようにパイプ7の吸口部を挿入する。この状態で、光触媒保持部1の他端開口部に設けられた吸口部4からタバコ6やパイプ7を吸引すると、タバコ6やパイプ7の煙は、タバコ6やパイプ7の吸口部(フィルター部など)を通過して、挿入部4における内側端部に配されているガス透過フィルター5を通過する。そして、タバコ6やパイプ7の煙は、光触媒2と接触しながら、吸口部4側に吸引され、流れていく。このとき、タバコ6やパイプ7の煙中に含まれる、アルデヒド等の有害成分は、光触媒2のアパタイトに吸着される。このため、光触媒2を通過した前記煙は、光触媒保持部1の他端開口部に設けられた、吸口部4の端部に設けられたガス透過膜5を通過する際には、その中に含まれていた前記有害成分が除去された状態となっており、吸口部4から人体に吸い込まれる際には前記有害成分が除去された状態となっている。喫煙ホルダー10を用いて喫煙を行うと、タバコ等の煙中に含まれる有害成分を効率的に分解除去することができる。
【0103】
そして、喫煙後に、喫煙ホルダー10を、少なくとも可視光照射条件下(例えば、太陽光照射条件下、蛍光灯照射条件下など)に放置しておくと、透明樹脂で形成された光触媒保持部1を通して、その内部に保持(収容)された光触媒2に対し、可視光域の波長の光を含む光が照射される。すると、光触媒2においては、前記可視光吸収性金属原子(クロム)が可視光を吸収することにより活性化され、光触媒2の光触媒活性により、光触媒2の表面に吸着した前記有害成分(アルデヒド等)が分解される。このとき、図5に示すように、光触媒2に含まれる前記クロムが還元されるため、光触媒2が淡黄色から淡青色に変化する。その結果、光触媒2の色が淡黄色から淡青色に変化したのを目視にて視認することにより、光触媒2により前記有害成分(アルデヒド等)が分解されているかどうかを判断することができる。
【0104】
また、光触媒2は、繰返し使用していくと、図6に示すように、その色が徐々に淡青色から濃青色に変化し、その光触媒活性も低下乃至消失していく。光触媒2を目視にて視認することにより、その色が濃青色になっている場合には、光触媒2の再生(再活性化)乃至交換が必要な時期にきていることが目視にて容易に判断することができる。このため、喫煙ホルダー10によれば、光触媒2の光触媒活性が十分でないにもかかわらず使用しつづけることがなく、前記有害成分(アルデヒド等)が分解除去されていない前記煙等を吸引してしまうことがない。
【0105】
そして、光触媒2の交換乃至再生(再活性化)を行う場合には、吸口部4を螺合を解く方向に回転させて(螺子式で取付けられていた吸口部4を回転させて)光触媒保持部1から取り外す。すると、光触媒保持部1内に保持されていた光触媒2が露出し、外部に取り出すことが可能となる。
光触媒活性が低下乃至消失等した光触媒2は、本発明の前記気体清浄器の再生方法により再生(再活性化)することができる。即ち、光触媒保持部1から取り出した光触媒2を、図7に示すように、デシケータ9内に収容して、650℃にて2時間加熱することにより、焼成する。該焼成により、光触媒2は、濃青色から元の淡黄色にその色調が戻り、その光触媒活性も再生(再活性化)される。
【0106】
こうして再生(再活性化)した光触媒2は、光触媒保持部1に再充填し、吸口部4を再び光触媒保持部1に螺合させることにより、喫煙ホルダー10を繰り返し使用することができる。この喫煙ホルダー10によれば、タバコ等の煙中に含まれているアルデヒド等の前記有害成分を常に安定かつ効率的に除去することができ、また、たとえ光触媒2の光触媒能(吸着特性、光触媒活性等を含む)が低下してきても、それを取り出して再生(再活性化)するだけで再使用することができるため、使い捨てる必要がなく、低コストで何度でも繰り返して使用することができる。
【0107】
(実施例2)
−酸素吸引具−
図8及び図9は、病院などで患者に酸素ガスを補給するための酸素吸引具に本発明の吸気清浄具を適用した場合の一例を示す概略説明図である。
図8及び図9に示す酸素吸引具20は、マスク部11と、酸素ボンベ12と、チューブ13と、気体清浄器10とを有してなる。
マスク部11には、酸素の流入側に気体清浄器10が設けられている。気体清浄器10における、マスク部10との接続部側とは反対側に位置する酸素の流入側には、酸素ボンベ12からの酸素を移送するためのチューブ13が接続されている。マスク部11には、それを顔に装着するための止め紐14が設けられている。
なお、気体清浄器10は、実施例1の喫煙ホルダーと同様の構造を有しており、実施例1の喫煙ホルダーにおいて、挿入されるタバコ等の吸口部が、ここではチューブ13の一端となり、光触媒保持部1に螺合する吸口部4が、ここではマスク部11における酸素流入端部となっている点で、実施例1の喫煙ホルダーと相違している。気体清浄器10の作用効果は、実施例1の喫煙ホルダーと同様である。
【0108】
酸素ガスの患者への供給は、マスク部11を、口の周りを覆うようにして配置させ、止め紐14を後頭部にまわすことにより装着し、酸素ボンベ12のバルブを開くことにより、チューブ13を介して所定量の酸素ガスが該患者に供給される。この際、チューブ13の先端には気体清浄器10が設けられ、気体清浄器10を介してマスク部11に酸素ガスが供給されるので、酸素ガス中にたとえ誤って有害物質が混入していたとしても、該有害成分は吸気清浄具10の光触媒保持部1内に保持されている光触媒2により、吸着され、分解除去される。このため、安全性に優れる。なお、気体清浄器10の繰り返しの使用により、光触媒2の再生が必要になった場合には、実施例1と同様にして再生(再活性化)することにより、光触媒を再生することができる。
【0109】
本発明の好ましい態様を付記すると、以下の通りである。
(付記1) 気体が流通可能であり、かつ該気体の流通を遮蔽するように配された光触媒を保持してなり、該光触媒の少なくとも一部が視認可能である光触媒保持部を少なくとも備えたことを特徴とする気体清浄器。
(付記2) 光触媒が、流通する気体と接触可能に光触媒保持部材に保持された付記1に記載の付記1に記載の気体清浄器。
(付記3) 光触媒保持部が、気体の流入側及び流出側にガス透過手段を配してなり、光触媒が該ガス透過手段により前記光触媒保持部に脱落不能に保持された付記1から2のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記4) 気体の流入側及び流出側に配されたガス透過手段の少なくとも1つが、ガス透過膜である付記3に記載の気体清浄器。
(付記5) 気体の流入側及び流出側に配されたガス透過手段の少なくとも1つが、着脱自在に光触媒保持部に配された付記3から4のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記6) 光触媒保持部における、長さをT(cm)とし、最大径をD(cm)としたとき、次式、T>D、を充たす付記1から5のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記7) 光触媒保持部における、長さをT(cm)とし、最大径をD(cm)としたとき、次式、T>D×2、を充たす付記1から6のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記8) 光触媒保持部における、長さが1cm以下であり、軸方向に略直交方向の断面積が25cm2以上である付記1から7のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記9) 光触媒保持部が無色透明に形成された付記1から8のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記10) 光触媒保持部の波長380nm以上の光の光透過率が、70%以上である付記1から9のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記11) 光触媒保持部が樹脂で形成された付記1から10のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記12) 樹脂が、合成樹脂及び生分解性樹脂の少なくともいずれかである付記11に記載の気体清浄器。
(付記13) 合成樹脂が、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、及びスチレン系樹脂から選択され、生分解性樹脂が、ポリ乳酸から選択される付記12に記載の気体清浄器。
(付記14) 光触媒が、粒子状である付記1から13のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記15) 光触媒の平均粒径が、3〜8μmである付記1から14のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記16) 光触媒の粒度分布が、2×10−6〜1×10−5である付記1から15のいずれかである気体清浄器。
(付記17) 光触媒が、少なくとも可視光により光触媒活性を発現可能である付記1から16のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記18) 光触媒が、気体中に含まれる分解対象物を分解すると変色可能である付記1から17のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記19) 光触媒が、気体中に含まれる分解対象物を分解すると、淡黄色から淡青色に変色可能である付記1から18のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記20) 光触媒が、光触媒活性を有するアパタイトと、可視光吸収性金属原子とを少なくとも含んでなる付記1から19のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記21) 光触媒活性を有するアパタイトが金属原子を有してなり、該金属原子の少なくとも一部が、可視光吸収性金属原子により置換されてなる付記19に記載の気体清浄器。
(付記22) 可視光吸収性金属原子が、波長400nm以上の光に対し、吸収特性を有する付記20から21のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記23) 可視光吸収性金属原子が、クロム(Cr)である付記20から22のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記24) 可視光吸収性金属原子の含有量が、全金属原子に対し、0.001〜1mol%である付記20から23のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記25) 光触媒活性を有するアパタイトが、光触媒活性を有するのに必要な金属原子を有してなる付記20から24のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記26) 光触媒活性を有するのに必要な金属原子が、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、スズ(Sn)、インジウム(In)、及び鉄(Fe)から選択される少なくとも1種である付記25に記載の気体清浄器。
(付記27) 光触媒活性を有するのに必要な金属原子の含有量が、全金属原子に対し、5〜15mol%である付記25から26のずれかに記載の気体清浄器。
(付記28) アパタイトが、下記一般式(1)で表される付記20から27のいずれかに記載の気体清浄器。
【化2】
ただし、前記一般式(1)中、Aは、金属原子を表す。Bは、リン原子(P)及び硫黄原子(S)のいずれかを表す。Oは、酸素原子を表す。Xは、水酸基、CO3、及びハロゲン原子のいずれかを表す。m、n、z、及びsは、整数を表す。
(付記29) Aが、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、ランタン(La)、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、鉛(Pb)、カドミウム(Cd)、ユウロピウム(Eu)、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、ナトリウム(Na)、及びカリウム(K)から選択される少なくとも1種である付記28に記載の気体清浄器。
(付記30) Aがカルシウム(Ca)であり、Bがリン原子(P)であり、かつXが水酸基であり、光触媒性能を有するアパタイトがカルシウムハイドロキシアパタイトCa10(PO4)6(OH)2である付記28から29のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記31) 光触媒活性を有するのに必要な金属原子が、チタン(Ti)である付記25から30のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記32) 光触媒が、紫外光吸収性金属原子を含む付記20から31のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記33) 紫外光吸収性金属原子の含有量が、全金属原子に対し、0.001〜0.1mol%である付記32に記載の気体清浄器。
(付記34) 光触媒活性を有するのに必要な金属原子と紫外光吸収性金属原子と可視光吸収性金属原子との合計の含有量が、15mol%以下である付記32から33のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記35) 光触媒が、焼成により光触媒活性を発現可能であり、繰返し使用可能である付記1から34のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記36) 気体が、吸気のための気体であり、シガレットホルダー、パイプホルダー、酸素吸引具、防護マスク、防塵マスク、防臭マスク及びスポーツ用マスクのいずれかに用いられる付記1から35のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記37) 気体が、煙を含む付記1から36のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記38) 気体が、アルデヒド成分を含む付記1から37のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記39) 排気装置におけるフィルター、及び、排気管の少なくとも一部、の少なくともいずれかとして用いられる付記1から38のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記40) 気体の流路に、更に活性炭を保持してなる付記1から39のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記41) 付記1から40のいずれかに記載の気体清浄器における、光触媒保持部に保持された光触媒を、該光触媒保持部から取り出して焼成することにより、該光触媒の光触媒活性を発現乃至活性化させた後、前記光触媒保持部に戻すことを特徴とする気体清浄器の再生方法。
(付記42) 焼成が、600〜700℃にて1時間以上で行われる付記41に記載の気体清浄器の再生方法。
(付記43) 付記1から40のいずれかに記載の気体清浄器を備えたことを特徴とする喫煙ホルダー。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の気体清浄器は、喫煙ホルダー(タバコの吸口側に挿入された状態で該タバコを保持するシガレットホルダー、パイプの吸口側に挿入された状態で該パイプを保持するパイプホルダー、葉巻の吸口側に挿入された状態で該葉巻を保持する葉巻ホルダーなど)、吸気管接続器(酸素マスク(酸素吸引具)、蒸気マスク等のマスク部と酸素供給管との接続部に使用されるもの)、マスク(酸素マスク、防護マスク、防塵マスク、防臭マスク、スポーツ用マスクなど)、フィルター(エアコン用、空気清浄器用、排気用、換気用、排煙用、排気口用、換気口用など)、などに好適に適用することができる。
本発明の気体清浄器の再生方法は、本発明の前記気体清浄器の再生に好適に使用することができる。
本発明の喫煙ホルダーは、タバコの吸口側に挿入された状態で該タバコを保持するシガレットホルダー、パイプの吸口側に挿入された状態で該パイプを保持するパイプホルダー、葉巻の吸口側に挿入された状態で該葉巻を保持する葉巻ホルダーなどとして特に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】図1は、本発明の吸気清浄具としてのシガレットホルダーの一例を示す概略図である。
【図2】図2は、図1のシガレットホルダーに煙草を装着した状態を示す概略図である。
【図3】図3は、図1のシガレットホルダーにパイプを装着した状態を示す概略図である。
【図4】図4は、本発明の吸気清浄具としてのシガレットホルダーを使用して喫煙した後の状態を示す概略図である。
【図5】図5は、本発明の吸気清浄具としてのシガレットホルダーを使用して喫煙し、可視光を照射した後の状態を示す概略図である。
【図6】図6は、本発明の吸気清浄具としてのシガレットホルダーを繰り返し使用した後の状態を示す概略図である。
【図7】図7は、繰り返し使用後の劣化した光触媒を再生処理している状態を示す概略図である。
【図8】図8は、本発明の吸気清浄具を用いた酸素吸引具の一例を示す概略図である。
【図9】図9は、図8の酸素吸引具におけるマスク部の拡大図である。
【図10】図10は、可視光を照射した後に紫外光を照射した場合における光触媒の光触媒活性の評価結果を示すグラフである。
【図11】図11は、可視光及び紫外光を照射後における光触媒の光触媒活性の評価結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0112】
1 光触媒保持部
2 光触媒
3 先端開口部
4 吸口部
5 ガス透過手段(ガス透過性フィルタ)
6 煙草
7 パイプ
8 パイプの吸口部
9 デシケータ
10 気体清浄器
11 マスク部
12 酸素ボンベ
13 チューブ
14 止め紐
20 酸素吸引器
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気等の気体中に含まれる有害物質を分解除去可能であり、喫煙ホルダー、マスク、フィルター等として好適な気体清浄器及びその効率的な再生方法、並びに、該気体清浄器を備えた喫煙ホルダーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、空気中に含まれる有害成分を除去等するための簡単な構造の空気清浄器の代表的なものとして、例えば、ホルダー本体内部に活性炭を充填したシガレットホルダーなどが提案されている(特許文献1〜2参照)。これらのシガレットホルダーによれば、前記活性炭が吸着能に富むことから、該活性炭によって、喫煙時のタバコ等からの煙中に含まれるタール成分、アルデヒド等の有害物質をある程度吸着することが可能である。
しかし、前記シガレットホルダーの場合、繰返し使用により、前記活性炭の有害成分に対する吸着能が徐々に低下乃至消失してしまうという問題がある。そして、該シガレットホルダーの場合、前記活性炭の有害成分に対す吸着能がどのような状態にあるのかの判別ができず、吸着能の低下乃至消失した前記活性炭を使用し続けると、前記有害成分を体内に吸引し続けてしまうという問題がある。
【0003】
一方、酸化分解作用、抗菌作用、防汚作用等を発揮する、酸化チタン(TiO2)等の一部の半導体物質の有する光触媒活性が注目されている。光触媒活性を有する前記半導体物質においては、一般に、その価電子帯と伝導帯との間のバンドギャップに相当するエネルギーを有する光を吸収すると、前記価電子帯に存在していた電子が前記伝導帯へと遷移する。前記伝導帯へと遷移した電子は、前記光触媒活性を有する半導体物質の表面に吸着している物質に移動する性質があり、該半導体物質の表面に物質が吸着されている場合には、該物質は前記電子により還元される。一方、前記価電子体に存在していた電子が前記伝導体に遷移すると、前記価電子帯には正孔が生ずる。そして、該価電子帯に生じた正孔は、前記光触媒活性を有する半導体物質の表面に吸着している物質から電子を奪い取る性質があり、該半導体物質の表面に物質が吸着されている場合には、該物質は前記正孔に電子を奪い取られて酸化される。以上の現象を具体的に説明すると、例えば、特に優れた光触媒活性を有する酸化チタンについてみれば、その価電子帯と伝導帯との間のバンドギャップに相当するエネルギーを有する光を酸化チタンが吸収すると、該酸化チタンにおける前記価電子帯に存在していた電子が前記伝導帯へと遷移し、遷移した該電子は、空気中の酸素を還元してスーパーオキシドアニオン(・O2−)を生成させる一方、前記電子の遷移の結果、前記価電子帯には正孔が生じ、生じた該正孔は、前記酸化チタン表面に吸着している水を酸化してヒドロキシラジカル(・OH)を生成させる。このとき、該ヒドロキシラジカルは、非常に強い酸化力を有しているため、前記酸化チタンの表面に有機物等が吸着している場合には、該有機物等は前記ヒドロキシラジカルの作用によって分解され、最終的には水と二酸化炭素とにまで分解される。以上のように、酸化チタン等の、前記光触媒活性を有する半導体物質に対し、該半導体物質の価電子帯と伝導帯との間のバンドギャップに相当するエネルギーを有する光が照射されると、該半導体物質が該光を吸収して、その表面に吸着されている有機物等を分解する結果、酸化分解作用、抗菌作用、防汚作用等が発現されるのである。
【0004】
近時、前記光触媒活性を有する半導体物質の中でも、特に光触媒活性に優れる酸化チタンは、例えば、エアコンや空気清浄機におけるフィルター等に利用されてきている(特許文献3〜5参照)。
しかし、前記酸化チタン等の前記半導体物質の場合、その物質に対する吸着能に乏しく、その光触媒機能に基づく十分な分解作用、抗菌作用、防汚作用等が得られ難いという問題がある。また、前記酸化チタン等の前記半導体物質の場合、一般に紫外光に対しては非常に強い光触媒活性を示すものの、可視光に対しては殆ど光触媒活性を示さないため、これをエアコンや空気清浄機等に内蔵させて使用する場合には更に紫外光照射のための光源が必要になり、シガレットホルダー等の簡易で小型の構造物には適用し難いという問題がある。
【0005】
したがって、紫外光照射のための特別な光源等が不要であり、低コストで量産可能であり、取扱性に極めて優れ、気体中の有害成分に対する分解除去能に優れ、光触媒の光触媒活性(光触媒能)の状態を目視にて容易に判別可能な気体清浄器等及びその取扱乃至使用に関する優れた提案はいまだ提供されていないのが現状である。
【0006】
【特許文献1】特開平6−105675号公報
【特許文献2】特開2000−236864号公報
【特許文献3】特開平11−47635号公報
【特許文献4】特開平11−179118号公報
【特許文献5】特開平11−262618号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、気体中の有害成分に対する分解除去能に優れ、光触媒の光触媒活性(光触媒能)の状態を目視にて容易に判別可能で、低コストで量産可能であり、取扱性に極めて優れた気体清浄器及びその効率的な再生方法、並びに、前記気体清浄器を備え、気体中の有害成分に対する分解除去能に優れ、光触媒の光触媒活性(光触媒能)の状態を目視にて容易に判別可能で、低コストで量産可能であり、取扱性に極めて優れた喫煙ホルダーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段としては、後述する付記に列挙した通りである。
本発明の気体清浄器は、気体が流通可能であり、かつ該気体の流通を遮蔽するように配された光触媒を保持してなり、該光触媒の少なくとも一部が視認可能である光触媒保持部を少なくとも備えたことを特徴とする。
該気体清浄器においては、前記光触媒保持部において前記気体が流通可能である。このとき、前記光触媒保持部には、前記気体の流通を遮蔽するようにして前記光触媒が保持されている。そして、該光触媒は、視認可能に前記光触媒保持部に保持されており、即ち、該光触媒は光が照射可能に前記光触媒保持部に保持されている。このため、前記気体が流通する際、該気体は前記光触媒に接触しながら前記光触媒保持部を流通する。該光触媒は、光の照射により活性化されているので、該光触媒に前記気体が接触すると、該光触媒の光触媒能により該気体中に含まれる有害成分が分解除去される。その結果、前記光触媒と接触しながら該光触媒を保持する前記光触媒保持部を通過した気体中からは、前記有害成分が分解除去され、該気体は清浄状態となっている。本発明の気体清浄器における前記光触媒保持部を流通(通過)した前記気体は、清浄であり、吸気として安全に利用可能である。
【0009】
本発明の前記気体清浄器においては、前記光触媒保持部が、前記気体の流入側及び流出側にガス透過手段を配してなり、光触媒が該ガス透過手段により前記光触媒保持部に脱落不能に保持された態様が好ましい。この態様の場合、前記光触媒保持部内において、前記気体の流入側及び流出側に配された前記ガス透過手段によって画成された空間に前記光触媒が脱落不能に保持される。このため、前記光触媒が該空間内において密に充填されることが可能であり、前記流入側に配された前記気体透過手段を透過(通過)した気体は、該光触媒に効率的に接触しながら移動し、前記流出側に配された前記気体透過手段まで向かい、該気体透過手段にまで到達すると、該気体透過手段を透過(透過)する。このとき、前記光触媒に接触した前記気体は、前記光触媒の光触媒能により、効率的に、該気体中に含まれる有害成分が分解除去されて、清浄化される。
また、本発明の気体清浄器においては、前記光触媒が少なくとも可視光により光触媒活性を発現可能である態様が好ましい。この態様の場合、太陽光、室内灯などを含む人間の生活空間において、前記光触媒は光触媒活性を示すため、効率的に前記気体中に含まれる有害成分を分解除去可能である。
【0010】
本発明の気体清浄器の再生方法は、本発明の前記気体清浄器における、光触媒保持部に保持された光触媒を、該光触媒保持部から取り出して焼成することにより、該光触媒の光触媒活性(吸着活性、分解活性等を含む)を発現させた後、前記光触媒保持部に戻すことを特徴とする。
前記気体清浄器の再生方法においては、本発明の前記気体清浄器における、前記光触媒保持部に保持された光触媒を、該光触媒保持部から取り出して焼成する。すると、該光触媒の光触媒活性(吸着活性、分解活性等を含む)が再生(再活性化)される。このため、前記光触媒保持部内に保持された前記光触媒が、使用によりその光触媒活性が低下乃至焼失した際に、該光触媒保持部から前記光触媒を取り出し、焼成するだけで、該光触媒が再生(再活性化)される。そして、再活性化された該光触媒を再利用するために前記光触媒保持部に戻すことにより、低コストで簡便に前記気体清浄器を再生し、再利用することができる。
【0011】
本発明の喫煙ホルダーは、本発明の前記気体清浄器を備えたことを特徴とする。このため、該喫煙ホルダーを用いて喫煙を行うと、タバコ、バイプ、葉巻等からの煙中に含まれる有害成分、例えば、アセトアルデヒド等のアルデヒド成分などを効率的に分解除去しつつ喫煙を行うことができる。このため、喫煙者の健康維持に有効である。そして、しかも該喫煙ホルダーにおける、光触媒活性を有する光触媒は視認可能であり、目視にてその光活性(光触媒能)の状態を判別可能であるため、取扱性に優れる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、従来における前記問題を解決することができ、気体中の有害成分に対する分解除去能に優れ、光触媒の光触媒活性(光触媒能)の状態を目視にて容易に判別可能で、低コストで量産可能であり、取扱性に極めて優れた気体清浄器及びその効率的な再生方法、並びに、前記気体清浄器を備え、気体中の有害成分に対する分解除去能に優れ、光触媒の光触媒活性(光触媒能)の状態を目視にて容易に判別可能で、低コストで量産可能であり、取扱性に極めて優れた喫煙ホルダーを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(気体清浄器)
本発明の気体清浄器は、光触媒保持部を少なくとも備えてなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材等を有してなる。
【0014】
−光触媒保持部−
前記光触媒保持部は、気体が流通可能であり、光触媒を保持(収容)することができる限り、その形状、構造、大きさ、材質等については特に制限はなく、用途、目的等に応じて適宜選択することができる。
【0015】
前記光触媒保持部の形状としては、例えば、筒状(円筒、角筒など)、管状(円管、角管など)、板状、シート状などが好適に挙げられ、前記気体清浄器を喫煙ホルダー、吸気マスクと送気管との接続具等として使用する場合には、筒状、管状などが好ましく、前記気体清浄器をフィルター等として使用する場合には、板状、フィルターなどが好ましい。なお、前記形状が筒状、管状等である場合、これらは、直線状であってもよいし、曲線状であってもよく、あるいはこれらの結合形状であってもよい。
【0016】
前記光触媒保持部の構造としては、例えば、単一空間構造、空間が複数に分割された複数空間構造、などが挙げられ、また、単一の部材で形成されていてもよいし、2以上の部材が組み合わされた構造であってもよい。
【0017】
前記光触媒保持部の大きさとしては、例えば、前記気体清浄器を喫煙ホルダー、吸気マスクと送気管との接続具等として使用する場合には、タバコ、パイプ、葉巻等の吸口側の大きさと略同等かやや大きめ大きさが好ましく、このとき前記光触媒保持部内における、前記光触媒が収容された部分の長さ(触媒長)が長い方が光触媒能に優れる点で有利であり、前記気体清浄器をフィルター等として使用する場合には、吸気部乃至排気部の大きさと略同等の大きさであるのが好ましい。
【0018】
前記光触媒保持部の大きさの具体例としては、前記気体清浄器を喫煙ホルダー等として使用する場合には、その長さをT(cm)とし、その最大径をD(cm)としたとき、次式、T>D、を充たすのが好ましく、次式、T>D×2、を充たすのがより好ましい。前記式を充たす場合には、該光触媒保持部に流入する前記気体が該光触媒保持部内に保持された前記光触媒と接触する距離と時間とを長くすることができ、該光触媒による前記気体中に含まれる有害成分の分解除去能に優れる点で有利である。また、前記光触媒保持部の大記載の具体例としては、前記気体清浄器を空気清浄器等におけるフィルター等として使用する場合には、その長さ(厚み)が1cm以下であり、その軸方向に略直交する断面積(フェイルター面の面積)が25cm2以上であるが好ましく、500〜900cm2がより好ましい。前記長さ(厚み)が1cmを超えると、フィルター等として取扱性に劣ることがあり、また、前記断面積(フィルター面の面積)が25cm2未満であると、前記気体中に含まれる有害成分の分解除去能が十分でないことがある。
【0019】
なお、前記気体としては、特に制限はなく、用途、目的等に応じて適宜選択することができ、例えば、前記気体清浄器をマスク、フィルター等に使用する場合には、空気、排ガス、循環ガスなどが好適に挙げられ、前記気体清浄器を喫煙ホルダー、吸気マスクと送気管との接続具等に使用する場合には、タバコの煙等の含煙気体、酸素ガス、蒸気などが挙げられる。
前記気体中の有害成分(分解対象物)としては、特に制限はなく、用途、目的等に応じて異なるが、例えば、タール成分、アルデヒド成分(壁紙等から放出されるホルムアルデヒド、タバコ等の煙中に含まれるアセトアルデヒドなど)、フェノール成分(煙等に含まれるフェノール)、ウイルス(DNAウイルス、RNAウイルスなど、具体的にはインフルエンザウイルスなど)、などが挙げられる。これらは、前記気体中に、1種単独で含まれていることもあれば、2種以上が同時に含まれていることもある。
【0020】
前記光触媒保持部は、前記光触媒の少なくとも一部が視認可能に設計されている。このため、本発明の気体清浄器においては、前記光触媒保持部に保持された前記光触媒を目視にてその光触媒活性(光触媒能)の状態を把握することができる。
前記光触媒保持部を、その内部に保持(収容)した前記光触媒を視認可能にする方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、該光触媒保持部の少なくとも一部を透明に設計する方法、などが好適に挙げられる。この場合、無色としては、有色透明であってもよいし、無色透明であってもよいが、前記光触媒の光触媒活性(光触媒能)の状態の把握が容易な点で、無色透明であるのが特に好ましい。
前記光触媒保持部の少なくとも一部を透明に設計する場合、前記光触媒の光触媒活性を向上させる観点からは、前記光触媒を保持(収容)する部分の総てが透明に設計されているのが好ましい。
【0021】
前記光触媒保持部の光透過性としては、内部に保持(収容)する前記光触媒の光触媒活性を向上させる観点からは高い方が好ましく、そのためには、前記光触媒の吸収可能な光に対する光吸収率が低く、即ち該光に対する透過率に優れていることが好ましく、例えば、前記光触媒が紫外光を吸収して光触媒活性を発現可能な場合には該紫外光の透過率に優れていることが好ましく、また、前記光触媒が可視光を吸収して光触媒活性(光触媒能)を発現可能な場合には該可視光の透過率に優れていることが好ましい。
前記光触媒保持部の光透過性としては、具体的には、例えば、波長380nm以上の光の光透過率が、70%以上であるのが好ましく、80%以上であるのがより好ましい。
前記光触媒保持部の光透過性が、70%未満であると、前記光触媒の光触媒活性が十分ではなく、気体中に含まれる前記有害成分の分解除去を十分に行うことができないことがある。
【0022】
前記光触媒保持部の材質(材料)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記光触媒が吸収する波長域の光に対する透過率が高い材料であるのが好ましく、更に透明であるのがより好ましく、更に無色透明であるのが特に好ましいが、具体的には、樹脂、セラミックスなどが挙げられ、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、これらの中でも、成形性、低コスト性、取扱性等の観点からは、樹脂が好ましい。
【0023】
なお、前記光触媒保持部の材質(材料)が前記樹脂である場合には、該樹脂が適宜選択した公知の添加剤等を含有していてもよい。
この場合、該添加剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、充填材、難燃剤、抗菌剤、可塑剤、などが挙げられる。
【0024】
前記光触媒保持部の成形方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、該光触媒保持部が前記樹脂で形成されている場合には、例えば、フィルム成形、押出成形、射出成形、ブロー成形、圧縮成形、トランスファー成形、カレンダー成形、熱成形、流動成形、積層成形、などが挙げられる。
【0025】
前記樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、合成樹脂、生分解性樹脂、などが好適に挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
前記合成樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、などが好適に挙げられ、これらの具体例としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、フッ素系樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アミノ樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル樹脂、シリコーン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン樹脂、トルエン樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン樹脂、メチルメタクリレート−ブタジエン樹脂、変性メチルメタクリレート−ブタジエン樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、などが挙げられる。これらの中でも、成形性、透明性等の点で、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、などが好ましい。
【0027】
前記生分解性樹脂としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、天然物由来生分解性樹脂、化学合成生分解性樹脂、その他のものなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記天然物由来生分解性樹脂としては、例えば、キチン、キトサン、アルギン酸、グルテン、コラーゲン、ポリアミノ酸、バクテリアセルロース、プルラン、カードラン、多糖類系副産物、デンプン、変性デンプン、微生物産生ポリエステル(バイオポリエステル)、などが挙げられる。
前記化学合成生分解性樹脂としては、例えば、脂肪族ポリエステル、脂肪族・芳香族ポリエステル、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリウレタン(PU)、などが挙げられる。前記脂肪族ポリエステルとしては、例えば、ポリ3−ヒドロキシブチレート(PHB)、ポリ3−ヒドロキシバレエート等のポリヒドロキアルカノエート系、ポリカプロラクトン(PCL)系、ポリブチレンサクシネート(PBS)系、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)系、ポリエチレンサクシネート(PES)系、ポリグリコール酸(PGA)系、ポリ乳酸(PLA)系、などが挙げられる。
前記その他のものとしては、例えば、脂肪族ポリエステルのカーボネート共重合体、脂肪族ポリエステルとポリアミドとの共重合体、などが挙げられる。
【0028】
前記生分解性樹脂の中でも、成形性・耐熱性・耐衝撃性等に優れる点で脂肪族系ポリエステル樹脂が好ましく、その中でもポリ乳酸(PLA)系脂肪族系ポリエステル樹脂がより好ましく、環境面の観点からはポリ乳酸が特に好ましい。
前記ポリ乳酸(PLA)系脂肪族系ポリエステル樹脂としては、例えば、乳酸、りんご酸、グルコース酸等のオキシ酸の重合体、これらの共重合体などが挙げられる。これらの中でも、ポリ乳酸に代表されるヒドロキシカルボン酸系脂肪族系ポリエステル樹脂が特に好適に挙げられる。
【0029】
前記ヒドロキシカルボン酸系脂肪族系ポリエステル樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、環状ジエステルであるラクチド及び対応するラクトン類の開環重合によるラクチド法、乳酸直接脱水縮合法、などが挙げられる。また、製造時に使用する触媒としては、錫、アンチモン、亜鉛、チタン、鉄、アルミニウム化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、錫、アルミニウム化合物などが好ましく、オクチル酸錫、アルミニウムアセチルアセトネートがより好ましい。
【0030】
前記光触媒保持部における前記光触媒の充填率としては、特に制限はなく、前記光触媒の形態、例えば、粉状、粒状等に応じて異なり一概に規定することはできないが、該光触媒の充填率が高くなるほど、前記気体中に含まれる前記有害成分の分解除去能に優れるが、該気体が該光触媒保持部内を流通し難くなる傾向がある。
【0031】
前記光触媒保持部においては、脱落不能に、かつ前記気体が流通する際に該気体が接触可能に前記光触媒が保持されているが、該光触媒は、ガス透過手段により前記光触媒保持部に脱落不能に保持されるのが好ましい。この場合、該光触媒は、前記光触媒保持部に安定した状態で保持され、該ガス透過手段を透過(通過)してくる前記気体中に含まれる前記有害成分と安定な状態でかつ効率的に接触可能である点で好ましい。
【0032】
前記ガス透過手段が配される箇所乃至部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記光触媒保持部に保持された前記光触媒の全部(全表面)であってもよいし、一部(一表面)であってもよいが、前記気体が流入する側に位置する前記光触媒の表面及び前記気体が流出する側に位置する前記光触媒の表面の少なくともいずれかであるのが好ましい。この場合、該光触媒保持部に保持された前記光触媒と接触しながら前記気体が流通可能であり、該気体中に含まれる前記有害成分の分解除去能に優れる点で有利である。
【0033】
前記ガス透過手段としては、前記光触媒保持部に固定的に配されていてもよいし、着脱自在に配されていてもよいが、該ガス透過手段が複数(2以上)である場合には、その少なくとも一つが着脱自在に前記光触媒保持部に配されているのが好ましい。この場合、着脱自在に配された前記ガス透過手段を前記光触媒保持部から取り外すことにより、容易に該光触媒保持部内に保持されている前記光触媒を取り出すことができ、該光触媒の交換乃至再生等が可能となる点で有利である。
【0034】
前記ガス透過手段としては、前記気体を透過可能である限り、特に制限はなく、例えば、格子状構造物、網状構造物、膜状構造物などを少なくとも有する構造物が好適に挙げられる。
前記格子状構造物又は前記網状構造物の場合、前記光触媒を脱落不能に保持する観点からは、これらの格子状構造部分の格子間隔乃至網状構造部分の網目径よりも前記光触媒の粒径等が大きいことが好ましい。前記膜状構造物の場合、その膜状構造部分の膜に設けらている微細孔よりも前記光触媒の粒径乃至粉径等が大きいことが好ましい。
なお、前記ガス透過手段の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜することができるが、例えば、1種単独の部材で形成されていてもよいし、2種以上の部材で形成ていてもよく、また、前記膜状構造物である場合には、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
【0035】
前記ガス透過手段を前記格子状構造物、前記網状構造物、前記膜状構造物などを少なくとも有する構造物として設計した場合、これらの少なくとも1つを前記光触媒保持部に螺合、嵌合等により着脱自在に設計するのが好ましい。そして、例えば、前記気体清浄器をそのまま喫煙ホルダーとする場合、前記気体清浄器を用いて喫煙ホルダーを形成する場合においては、該喫煙ホルダーの吸口部を着脱自在に設計し、該吸口部における吸口端とは反対側の端部に前記ガス透過手段を配しておくのが好ましい。この場合、該喫煙ホルダーの吸口部を取り外すことにより、前記光触媒保持部内に保持された前記光触媒を外部に取り出すことができる。このため、前記光触媒保持部内に保持された前記光触媒の光触媒活性が低下乃至消失した場合に、該光触媒を前記光触媒保持部内から取り出して再生処理を適宜行うことができる点で有利である。
【0036】
前記ガス透過手段におけるガス透過性としては、前記気体の前記光触媒保持部内での流通を阻害しない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記ガス透過手段の形状、構造、大きさ、厚み等については、特に制限はなく、前記光触媒保持部の形状や、用途、目的等に応じて適宜選択することができ、例えば、前記構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、また、1種単独の部材で形成された構造であってもよいし、2種以上の部材で形成された構造であってもよい。
【0037】
−−光触媒−−
前記光触媒は、前記光触媒保持部において流通する前記気体を遮蔽するように保持(収容)されている。
前記光触媒の形態としては、特に制限はなく、前記光触媒保持部の形状、大きさ等に応じて適宜選択することができるが、例えば、粒子状(粒状)、粉状、多孔質固形状、などが好適に挙げられる。これらの中でも、前記光触媒保持部への充填等が容易であり、該光触媒保持部に充填した際(保持させた際)に該光触媒保持部を流通する前記気体との接触効率に優れ、また、該光触媒保持部から前記光触媒を取り出して焼成等の再生処理を行うのが容易である点で、粒子状(粒状)であるのが特に好ましい。
前記光触媒の大きさとしては、特に制限はなく、前記光触媒保持部の大きさ、該光触媒保持部への前記光触媒の充填率等に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記光触媒が前記粉状乃至粒子状(粒状)である場合には、該光触媒の平均粒径としては、3〜8μmであるのが好ましい。
【0038】
前記光触媒が前記粉状乃至粒子状(粒状)である場合、該光触媒の粒度分布としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記粒度分布がシャープである(狭くなる)程、前記光触媒保持部に該光触媒を均一な状態で充填させる(保持させる)ことができ、即ち、該光触媒保持部に充填(保持)された前記光触媒どうしの間隙を均一な大きさにすることができる傾向があり、一方、前記粒度分布がブロードになる(広くなる)程、前記光触媒保持部に前記光触媒を密に充填させる(保持させる)ことができる傾向があり、即ち、前記光触媒どうしの間隙を小さくすることができる傾向がある。
前記光触媒の粒度分布としては、例えば、2×10−6〜1×10−5であるのが好ましい。
【0039】
本発明においては、前記光触媒保持部が前記光触媒の少なくとも一部が視認可能に設計されているため、前記光触媒は、前記光触媒保持部において、その少なくとも一部が視認可能に保持される。このため、該光触媒の状態を目視にて把握することができ、該光触媒の光触媒活性が低下乃至消失等した場合に、適切なタイミングで、該光触媒を前記光触媒保持部から取り出して交換したり、該光触媒を焼成等して再生させることができる点で有利である。
【0040】
本発明においては、前記光触媒は、該光触媒における光触媒活性の変化を把握可能に設計されているのが好ましく、視認可能に設計されているのがより好ましい。このような光触媒としては、該光触媒における光触媒活性が低下乃至消失した際に、変色するように設計されているものが好ましい。前記光触媒がこのように変色可能に設計されていると、該光触媒の交換乃至再生時期の把握が容易であり、かつ前記気体中の有害成分の分解除去が不十分になることがない点で、該気体の清浄効率、安全面等において特に有利である。
このような変色可能な光触媒としては、特に制限はなく、目的に応じて選択することができるが、例えば、前記気体中に含まれる有害成分を分解すると変色可能であるものが好ましい。この場合、変色の態様としては、無色から有色への変色、有色から無色への変色、ある有色から他の有色への変色、のいずれであってもよい。このような変色の一例としては、前記光触媒が、前記気体中に含まれる有害成分を分解前から分解後において、淡黄色から淡青色への変色、などが好適に挙げられる。なお、前記光触媒の変色の態様は、該光触媒中に含まれる金属原子の種類、量によって調節することができ、例えば、前記淡黄色から淡青色への変色の場合には、前記光触媒中にクロム(Cr)を含ませておくことにより達成することができる。
【0041】
前記光触媒の光触媒活性の発現に必要な光の波長としては、特に制限はなく、前記気体清浄器の用途等に応じて目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記気体清浄器が太陽光照射条件下で主に使用するものである場合には、紫外光乃至可視光等の広帯域の光に対して吸収性を示し、光触媒活性を発現可能であるのが好ましく、また、前記気体清浄器が室内で主に使用されるものである場合には、可視光の波長域の光に対して吸収性を示し、光触媒活性を発現可能であるのが好ましく、多くの用途に適用可能であり、多様な環境下で良好な光触媒活性が得られる点で、少なくとも可視光の波長域の光に吸収性を示し、可視光により光触媒活性を発現可能であるのが好ましい。
【0042】
前記光触媒の具体的な材質乃至組成としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、光触媒活性(光触媒能)を有するアパタイトなどが特に好適に挙げられる。該光触媒が、光触媒活性を有するアパタイトであると、該アパタイトの優れた吸着特性により、前記気体中に含まれる前記有害成分に対する吸着特性に優れる点で有利であり、また、その光触媒活性(光触媒能)により、吸着した前記有害成分を効率的に光触媒活性により分解除去可能である点で有利である。
これらの光触媒の中でも、光触媒活性を有するアパタイトと、可視光吸収性金属原子とを少なくとも含んでなるものが好ましく、更に紫外光吸収性金属原子を含んでなるものがより好ましい。前記光触媒が、前記可視光吸収性金属原子を含んでなる場合には、蛍光灯下の日常使用条件下での使用に好適な点で有利であり、前記紫外光吸収性金属原子を更に含んでいると、太陽光等の紫外光を含む光の照射条件下での使用に好適な点で有利である。
なお、本発明においては、前記光触媒は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
前記光触媒活性(光触媒能)を有するアパタイトとしては、光触媒活性を有する限り特に制限は無く、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アパタイトが、光触媒活性を有するのに必要な金属原子(以下、光触媒活性を発現可能な金属原子と称することがある。)を有してなるものなどが好適に挙げられる。前記アパタイトが該光触媒活性を有するのに必要な金属原子を有すると、該アパタイトに光が照射されると、該光触媒活性を有するのに必要な金属原子の作用により該アパタイトが活性化され、該アパタイトの表面に吸着している前記有害成分(分解対象物)から電子を奪い取ることができ、該有害成分を酸化し、分解させることができる。
【0044】
前記アパタイトとしては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、下記一般式(1)で表されるもの、などが好適に挙げられる。
【0045】
【化1】
【0046】
前記一般式(1)において、Aは、金属原子を表し、該金属原子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、ランタン(La)、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、鉛(Pb)、カドミウム(Cd)、ユウロピウム(Eu)、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、などが挙げられる。これらの中でも、吸着性に優れる点で、カルシウム(Ca)が特に好ましい。
Bは、リン原子(P)及び硫黄原子(S)のいずれかを表し、これらの中でも、生体親和性に優れる点で、リン原子(P)が好ましい。
Oは、酸素原子を表す。
Xは、水酸基(OH)、CO3、及びハロゲン原子のいずれかを表し、これらの中でも、前記Aの金属原子と共に金属酸化物型の光触媒性部分構造を形成可能な点で、水酸基(OH)が特に好ましい。なお、前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、などが挙げられる。
m、n、z、及びsは、整数を表し、例えば、電荷バランスが良好な点で、mは8〜10が好ましく、nは3〜4が好ましく、zは5〜7が好ましく、sは1〜4が好ましい。
【0047】
前記一般式(1)で表されるアパタイトとしては、例えば、ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト若しくはクロロアパタイト、又は、これらの金属塩、リン酸三カルシウム若しくはリン酸水素カルシウム、などが挙げられる。これらの中でも、上記一般式(1)における、Xが水酸基(OH)であるハイドロキシアパタイトが好ましく、上記一般式(1)における、Aがカルシウム(Ca)であり、Bがリン原子(P)であり、かつXが水酸基(OH)であるカルシウムハイドロキシアパタイト(CaHAP)、即ち、Ca10(PO4)6(OH)2が特に好ましい。
【0048】
前記カルシウムハイドロキシアパタイト(CaHAP)は、カチオンに対してもアニオンに対してもイオン交換し易いため、各種の有害成分(分解対象物)に対する吸着特性に優れ、特にタンパク質等の有機物に対する吸着特性に優れており、加えて、ウイルス、カビ、細菌等の微生物等に対する吸着特性にも優れ、これらの増殖を阻止乃至抑制し得る点で好ましい。
【0049】
前記アパタイトの前記光触媒における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、85〜97mol%であるのが好ましく、85〜90mol%であるのがより好ましい。
前記アパタイトの含有量が、85mol%未満であると、前記光触媒の光触媒活性が十分でないことがあり、97mol%を超えても、それに見合う効果が得られず、また、該光触媒の前記有害成分(分解対象物)に対する吸着特性や光触媒活性等が低下することがある。
なお、前記アパタイトの前記光触媒における含有量は、例えば、ICP−AESによる定量分析を行うことにより測定することができる。
【0050】
前記光触媒活性を有するのに必要な金属原子としては、光触媒中心として機能し得る限り特に制限はなく、光触媒活性を有するものとして公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、光触媒活性に優れる点で、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、スズ(Sn)、インジウム(In)、鉄(Fe)、などから好適に選択される少なくとも1種が好適に挙げられる。これらの中でも、特に前記光触媒活性(光触媒能)に優れる点で、チタン(Ti)が好ましい。
【0051】
前記光触媒活性を有するのに必要な金属原子の前記光触媒における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記光触媒における全金属原子に対し、5〜15mol%であるのが好ましく、8〜12mol%であるのがより好ましい。
前記光触媒活性を有するのに必要な金属原子の含有量が、5mol%未満であると、前記光触媒の光触媒活性が十分でないことがあり、15mol%を超えても、それに見合う効果が得られず、また、該光触媒の分解対象物に対する吸着特性や光触媒活性等が劣化することがある。
なお、前記光触媒活性を有するのに必要な金属原子の前記光触媒における含有量は、例えば、ICP−AESによる定量分析を行うことにより測定することができる。
【0052】
前記光触媒活性を有するのに必要な金属原子が、前記アパタイトの結晶構造を構成する金属原子の一部として該アパタイトの結晶構造中に取り込まれる(置換等される)ことによって、該アパタイトの結晶構造内に、光触媒機能を発揮し得る「光触媒性部分構造」が形成される。
このような光触媒性部分構造を有する前記アパタイトは、光触媒活性を有し、また、アパタイト構造部分が吸着特性に優れ、光触媒活性を有する公知の金属酸化物よりも、前記有害成分(分解対象物)に対する吸着特性に優れるため、分解作用、抗菌作用、防汚作用、カビや細菌等の増殖阻止乃至抑制作用に優れる。
【0053】
前記光触媒活性を有するアパタイトとしては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
前記光触媒活性を有するアパタイトの合成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、公知の共沈法が好適に挙げられるが、具体的には、例えば、前記カルシウムハイドロキシアパタイトの場合、以下のようにして合成することができる。即ち、まず、前記アパタイトの原料であるカルシウム原子(Ca)を含む硝酸カルシウムを、脱炭酸ガス処理した純水中に溶解し、マグネティックスターラー等を用いて攪拌しながら、アパタイトの原料となる燐原子(P)を含む燐酸水溶液を滴下する。次に、アンモニア水等を加えてpHを9に調整した後、100℃にて5時間熟成を行い、濾過し、純水で洗浄し、乾燥させること、等により合成することができる。
前記光触媒活性を有するアパタイトの市販品としては、例えば、前記カルシウム・チタンハイドロキシアパタイトでは、太平化学産業株式会社製の商品名「PCAP−100」などが好適に挙げられる。
【0054】
前記可視光吸収性金属原子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、波長400nm以上の光に対し、吸収特性を有するもの、などが好適に挙げられ、具体的には、クロム(Cr)及びニッケル(Ni)から選択される少なくとも1種などがより好ましく、前記光触媒の光触媒活性の状態を目視にて視認可能にする観点からは、その光触媒活性の状態により、淡黄色から淡青色へと、更に淡青色から濃青色へと変色可能なクロム(Cr)が好ましい。
【0055】
前記可視光吸収性金属原子の前記光触媒における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、全金属原子に対し、0.001〜1mol%であるのが好ましく、0.01〜1mol%がより好ましい。
前記可視光吸収性金属原子の含有量が、0.001mol%未満であると、前記光触媒の可視光の吸収能が十分でないことがあり、1mol%を超えてもそれに見合う効果が得られず、前記光触媒の前記有害成分(分解対象物)に対する吸着性能が低下等してしまうことがある。
なお、前記可視光吸収性金属原子の前記光触媒における含有量は、例えば、ICP−AESによる定量分析を行うことにより測定することができる。
【0056】
前記紫外光吸収性金属原子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記光触媒の可視光吸収性及び紫外光吸収性を飽和させない点で、タングステン(W)及びバナジウム(V)の少なくともいずれかであるのが好ましい。これらは、前記光触媒中に、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。
【0057】
前記紫外光吸収性金属原子の含有量としては、全金属原子に対し、0.001〜0.1mol%であるのが好ましい。
前記紫外光吸収性金属原子の含有量が、0.001mol%未満であると、前記光触媒の紫外光の吸収能が十分でないことがあり、0.1mol%を超えてもそれに見合う効果が得られず、前記光触媒の前記有害成分(分解対象物)に対する吸着性能が低下したり、可視光の吸収能が低下等してしまうことがある。
なお、前記紫外光吸収性金属原子の前記光触媒における含有量は、例えば、ICP−AESによる定量分析を行うことにより測定することができる。
【0058】
前記光触媒においては、前記光触媒活性を有するのに必要な金属原子と、前記紫外光吸収性金属原子と、前記可視光吸収性金属原子との含有量の合計としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、15mol%以下が好ましく、3〜15mol%がより好ましい。
前記含有量の合計が、15mol%を超えてもそれに見合う光触媒活性の向上効果が得られず、却って光触媒活性が低下することがある。
【0059】
前記光触媒の具体例としては、前記光触媒活性を有するのに必要な金属原子がチタン(Ti)であり、前記アパタイトがカルシウムハイドロキシアパタイト(CaHAP):Ca10(PO4)6(OH)2であり、前記可視光吸収性金属原子がクロム(Cr)であるものが好ましく、更に、前記紫外光吸収性金属原子を含み、該紫外光吸収性金属原子がタングステン(W)及びバナジウム(V)の少なくともいずれかであるものがより好ましい。
このような光触媒は、該光触媒の光触媒活性の状態を目視にて視認(把握)することができ、該光触媒の交換乃至再生時期を容易に判断することができ、前記気体中に含まれる前記有害成分(分解対象物)の分解除去等が不十分になることがない点が有利であり、また、前記光触媒が前記紫外光吸収性金属原子も含む場合には、可視光のみならず紫外光をも吸収可能であり広帯域な光吸収性を示し、光の利用効率に優れ、各種光の照射条件下、例えば、太陽光照射条件下における用途に好適に使用可能である。そして、該光触媒は、可視光及び紫外光のいずれを照射した場合においても光触媒活性が飽和することがなく、長期間にわたって優れた光触媒活性を示し、特に紫外光を長期間にわたって照射した場合においても光触媒活性が飽和することがなく優れた光触媒活性(光触媒能)を維持可能な点で有利である。
【0060】
前記光触媒の構造としては、例えば、単層構造、積層構造、多孔質構造、コア・シェル構造、などが挙げられる。
なお、前記光触媒の同定・形態等の観察は、例えば、TEM、XRD、XPS、FT−IR等に行うことができる。
【0061】
前記光触媒としては、焼成により、その光触媒活性を再生(発現乃至再活性)可能であり、繰返し使用可能である。
前記光触媒の光触媒活性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記紫外光吸収性金属原子を含む場合には、同条件下で紫外光(UV光)を連続2時間照射時の光触媒活性(A2)と連続5時間照射時の光触媒活性(A5)との比(A5/A2)が、1.3以上であるのが好ましく、2.2以上であるのがより好ましい。
前記比(A5/A2)が、1.3未満であると、紫外光を長時間照射すると光触媒活性が飽和してしまい、紫外光照射条件下での前記有害成分(分解対象物)に対する光触媒活性が十分でなく、分解能向上効果が十分でないことがある。
【0062】
なお、前記光触媒活性は、前記有害成分(分解対象物)の濃度、有害成分(分解生成物)の濃度等を測定することにより評価することができる。前記分解対象物が例えばアルデヒドガスである場合には、評価対象となる前記光触媒に対し、可視光及び紫外光の少なくともいずれかを特定条件下で照射して、該アセトアルデヒドガスの濃度(ppm)及びその分解生成物である炭酸ガス濃度(ppm)を分析し、モニターすることにより、該広帯域光吸収性光触媒の光触媒活性を評価することができる。
なお、前記有害成分(分解対象物)又は前記分解性生物がガスである場合には、例えば、アセトアルデヒドガス等である場合には、その濃度は、ガスクロマトグラフィー等により測定することができる。
【0063】
前記光触媒の好ましい光触媒活性としては、該光触媒を表面積が85.5m2となる量だけ、容量500mlの密閉容器に入れ、酸素30容量%及び窒素70容量%を含むガスで該容器内部を置換した後、アセトアルデヒドを14000ppm含む前記ガス12mlをシリンジで前記容器内部に注入し、該アセトアルデヒドガスが前記光触媒と吸着平衡に達するまで暗所で放置した後、更に暗所で1時間放置後、波長380nm以下の紫外光を前記広帯域光吸収性光触媒に連続照射した際における、連続2時間照射後に減少したアセトアルデヒド濃度C2(ppm)と連続5時間照射後に減少したアセトアルデヒド濃度C5(ppm)との比(C5/C2)が、1.3以上であることであり、2.2以上であることがより好ましい。
前記比(C5/C2)が、1.3未満であると、紫外光を長時間照射すると光触媒活性が飽和してしまい、紫外光照射条件下での前記分解対象物に対する光触媒活性が十分でなく、分解能向上効果が十分でないことがある。
なお、前記アセトアルデヒドガス濃度又は炭酸ガス濃度は、上述したガスクロマトグラフィー等により測定することができる。
【0064】
前記光触媒は、それ自体単独で使用してもよいし、目的、用途等に応じて適宜選択することができ、例えば、活性炭等の公知の吸着剤などと併用してもよい。この場合、前記光触媒の作用のみならず、他の公知の吸着剤等の作用とにより、効率的に前記有害成分(分解対象物)の分解除去を行うことができる点で有利である。
【0065】
前記光触媒は、公知の方法に従って製造することができ、例えば、前記光触媒活性を有するアパタイト中に、上述した可視光吸収性金属原子と、更に必要に応じて上述した紫外光吸収性金属原子とをドープさせることにより製造することができる。
【0066】
前記ドープの態様としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、置換、化学結合、吸着などが挙げられるが、これらの中でも、反応の制御が容易であり、ドープされた後で前記可視光吸収性金属原子等が脱離等することがなく、これらを前記光触媒中を安定に保持させることができる点で、置換が好ましい。
前記置換の態様としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記光触媒活性を有するアパタイトとして、前記光触媒活性を有するのに必要な金属原子を有してなるアパタイトを用いた場合、該金属原子の少なくとも一部を、前記可視光吸収性金属原子等により置換させる態様、などが好適に挙げられる。この態様の場合には、前記可視光吸収性金属原子等が、前記アパタイトに脱落不能に保持される点で有利である。
【0067】
前記可視光吸収性金属原子等による置換の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イオン交換、などが好適に挙げられる。該置換がイオン交換の場合には、置換効率に優れる点で有利である。
【0068】
前記ドープの具体的な方法、即ち前記光触媒活性を有するアパタイト中への前記可視光吸収性金属原子等のドープの具体的な方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記可視光吸収性金属原子を含む化合物等を溶解させた(共存させた)水溶液中に、前記光触媒活性を有するのに必要な金属原子を有してなるアパタイトを浸漬させることにより行う浸漬法、前記光触媒活性を有するのに必要な金属原子を有してなるアパタイトの原料と、前記可視光吸収性金属原子を含む化合物等を溶解させた(共存させた)水溶液中で、該原料と該可視光吸収性金属原子等を共沈させる共沈法、などが好適に挙げられる。
なお、前記水溶液は、静置しておいてもよいが、攪拌した方が前記置換が効率的に行われる点で好ましい。なお、該攪拌は、公知の装置、手段を用いて行うことができ、例えば、マグネチックスターラーを用いてもよいし、攪拌装置を用いてもよい。これらの方法の中でも、簡便に操作可能な点で、浸漬法がより好ましい。
【0069】
なお、前記浸漬法においては、上述のように、前記可視光吸収性金属原子を含む化合物等を溶解させた(共存させた)水溶液中に、前記光触媒活性を有するのに必要な金属原子を有してなるアパタイトを浸漬させてもよいし、逆に、前記光触媒活性を有するのに必要な金属原子を有してなるアパタイトを分散させた水溶液中に、前記可視光吸収性金属原子等を含む化合物とを前記水溶液中に溶解させてもよい。
【0070】
また、上述の製造例では、前記光触媒活性を有するアパタイトを出発物質として用いているが、これに代えて、上述したアパタイトと、上述した光触媒活性を有するのに必要な金属原子とを出発物質として用いて、前記可視光吸収性金属原子等のドープと同時に、あるいはそれに先立って、前記光触媒活性を有するのに必要な金属原子を、前記アパタイトにドープさせてもよい。この場合には、前記可視光吸収性金属原子等のドープと、前記光触媒活性を有するアパタイトの形成とを同時に行うことになり、あるいは、前記光触媒活性を有するアパタイトを形成してから、次に、前記可視光吸収性金属原子等のドープを行うことになる。
なお、前記光触媒活性を有するアパタイトを出発物質として用いる態様の場合には、予めNiがドープされているカルシウム・チタンハイドロキシアパタイト(TiHAP)を、前記光触媒活性を有するアパタイトとして好適に使用することができる。
【0071】
前記ドープの際の前記水溶液中での前記光触媒活性を有するのに必要な金属原子を有してなるアパタイトの濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.3〜1.0質量%が好ましく、0.4〜0.6質量%がより好ましい。
前記アパタイトの濃度が、0.3質量%未満であると、光触媒活性が低下することがあり、1.0質量%を超えても、それに見合う光触媒活性の向上効果が得られず、却って光触媒活性が低下することがある。
【0072】
前記ドープの際の前記水溶液中での前記可視光吸収性金属原子の濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1×10−4〜1×10−3Mが好ましく、1×10−4〜5×10−4Mがより好ましい。
前記可視光光吸収性金属原子の濃度が、1×10−4M未満であると、可視光応答性が低下することがあり、1×10−3Mを超えても、それに見合う可視光応答性の向上効果が得られず、却って可視光応答性が低下することがある。
【0073】
前記ドープの際の前記水溶液中での前記紫外光吸収性金属原子の濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1×10−3〜1×10−2Mが好ましく、9×10−3〜1×10−2Mがより好ましい。
前記紫外光吸収性金属原子の濃度が、1×10−3M未満であると、紫外光に対する光触媒活性が低下することがあり、1×10−2Mを超えても、それに見合う光触媒活性の向上効果が得られず、却って紫外光に対する活性が低下することがある。
【0074】
前記ドープの際における、前記水溶液中に浸漬させる前記可視光吸収性金属原子の形態としては、該水溶液中への溶解容易性、該水溶液中での該紫外光吸収性金属原子の濃度調整の容易性等の点で、該可視光吸収性金属原子の塩又は水和物の形態であるのが好ましい。
該塩又は水和物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記可視光吸収性金属原子が、クロム(Cr)及びニッケル(Ni)である場合には、これらから選択される少なくとも1種を含む塩であるのが好ましく、塩化物や硫酸塩では光触媒活性を低下させることがあるため、硝酸塩やアンモニウム塩であるのが特に好ましい。
【0075】
前記ドープを行う反応系としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、液中、空気中、などで行うことができるが、液中で行うのが好ましい。
この場合、該液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水乃至水を主体にした液が好ましい。
なお、該液を収容する容器としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、ラージスケールであれば混合器、攪拌器などが挙げられ、スモールスケールであればビーカーなどが好適に挙げられる。
【0076】
前記ドープの際の条件としては、特に制限はなく、温度、時間、圧力等については目的に応じて適宜選択することができる。
前記温度としては、特に制限はなく、材料の種類や量比等に応じて異なり、一概に規定することはできないが、例えば、通常、0℃〜100℃程度であり、室温(20℃〜30℃)が好ましい。前記時間としては、特に制限はなく、材料の種類や量比に応じて異なり、一概に規定することはできないが、通常、10秒〜30分間程度であり、1〜10分間がより好ましい。前記圧力としては、特に制限はなく、材料の種類や量比等に応じて異なり、一概に規定することはできないが、通常、大気圧であるが好ましい。
なお、前記光触媒における、前記光触媒活性を有する金属、前記可視光吸収性金属原子等の量は、これらの添加量(M)、あるいは前記条件を適宜調整することにより、所望に制御することができる。
【0077】
前記焼成は、前記光触媒活性を有するアパタイト中に、前記可視光吸収性金属原子等をドープさせた後(前記ドープ工程の後)、ドープが完了した該アパタイトを600〜800℃で焼成する工程である。
前記焼成の温度が、600℃未満であると、光触媒活性が最大とならないことがあり、800℃を超えると、分解が生ずることがある。
【0078】
前記焼成の条件、例えば、時間、雰囲気、圧力、装置等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記時間としては、前記ドープが完了したアパタイトの量等に応じて異なり、一概に規定することはできないが、例えば、1時間以上が好ましく、1〜2時間がより好ましい。前記雰囲気としては、例えば、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気、大気雰囲気などが挙げられるが、大気雰囲気が好ましい。前記圧力としては、例えば、大気圧などが挙げられる。前記装置としては、公知の焼成装置を使用することができる。
前記焼成を行うことにより、前記可視光吸収性金属原子等をドープした、前記光吸収活性を有するアパタイトの結晶性を高めることができ、前記光触媒における光触媒能(吸着特性、光触媒活性などを含む)をより高めることができる。
【0079】
ここで、前記光触媒の製造方法の一例について説明する。前記ドープを前記置換で行う場合、具体的には前記置換をイオン交換により共沈法で行う場合には、まず、脱炭酸ガス処理をした純水に、例えば、前記アパタイトとしてカルシウムハイドロキシアパタイト(CaHAP)の硝酸カルシウムの水溶液と、該CaHAPに前記光触媒活性を有する金属としてチタンをドープさせるための、該チタンを含む硫酸チタンの水溶液と、前記可視光吸収性金属原子であるクロムを含む硝酸クロムの水溶液と、前記紫外光吸収性金属原子である短癖点を含む12タングストリン酸n水和物の水溶液とを所定量で混合する。次いで、得られた混合物に燐酸を添加し、更にアンモニア水を添加してpHを9に調整する。得られた懸濁液を、100℃にて6時間エージング(熟成、結晶成長)し、ろ過する。ろ別した沈殿を純水で洗浄し、乾燥する。その後、650℃まで1時間かけて昇温して焼成する。以上により、前記紫外光吸収性原子としてバナジウム(V)を、前記可視光吸収性金属原子としてクロム(Cr)を、それぞれドープしたTiHAP粉体(光触媒)が製造される。
【0080】
また、前記ドープを前記置換で行う場合、具体的には前記置換をイオン交換により浸漬法で行う場合には、まず、前記可視光吸収性金属原子としてクロムを含む硝酸クロム(III)九水和物を純水に溶解し、硝酸クロム水溶液を調製する。ビーカーに前記光触媒活性を有するのに必要な金属原子(チタン)を有してなるアパタイトとしてのカルシウム・チタンハイドロキシアパタイト(TiHAP)を秤量し、そこに前記硝酸クロム水溶液を添加する。この混合液をマグネティックスターラーで5分間攪拌した後、濾紙でアスピレータを使用して吸引濾過を行い、純水で洗浄し、100℃のオーブンで2時間乾燥することにより、前記可視光クロムをドープさせたTiHAP粉体を得た。次に、前記紫外光吸収性金属原子としてのバナジウムを含むバナジン酸アンモニウムを純水に溶解し、バナジウム酸アンモニウム水溶液を調製した。ビーカーに上記クロムドープTiHAPを秤量し、前記バナジウム酸アンモニウム水溶液を添加する。この混合溶液をマグネティックスターラーで攪拌した後、濾紙でアスピレータを使用して吸引濾過を行い、純水で洗浄し、100℃のオーブンで2時間乾燥した。その後、マッフル炉で650℃にて1時間の焼成(大気雰囲気)を行った。以上により、前記可視光吸収性金属原子であるクロム及び前記紫外光吸収性金属原子であるバナジウムをドープさせたTiHAP粉体(光触媒活性を有するのに必要な金属原子を有してなるアパタイト)からなる光触媒が製造される。
【0081】
−その他の部材−
前記その他の部材としては、特に制限はなく、用途、目的等に応じて適宜選択することができ、例えば、公知のフィルター等が挙げられ、また、該気体清浄器を喫煙ホルダー等として使用する場合には、例えば、吸口部などが挙げられ、該気体清浄器を空気清浄器におけるフィルター等として使用する場合には、本体への取付用構造部、などが挙げられる。
なお、前記その他の部材として、公知のフィルター(メンブレンフィルタ、ガラス繊維フィルタなど)等を有していると、前記気体清浄器においては、前記光触媒保持部内に保持された前記光触媒の光触媒活性により前記気体中に含まれる有害成分を分解除去し、更に前記フィルター等により前記有害成分や、前記気体中の塵や埃などを除去等することができる点で有利である。
【0082】
−用途等−
本発明の気体清浄器は、各種分野に好適に使用することができるが、例えば、シガレットホルダー、パイプホルダー、酸素吸引具、防護マスク、防塵マスク、防臭マスク、スポーツ用マスクなど、あるいは、排気装置におけるフィルター、及び、排気管の少なくとも一部の少なくともいずれか、などに特に好適に使用することができる。
【0083】
本発明の気体清浄器における前記光触媒保持部に保持される前記光触媒は、その光触媒活性が低下乃至消失した場合には、前記光触媒保持部から取り出し、再生(再活性化)することができる。前記光触媒の再生方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、以下の本発明の気体清浄器の再生方法により好適に再生させることができる。
【0084】
(気体清浄器の再生方法)
本発明の気体清浄器の再生方法は、本発明の前記気体清浄器における、前記光触媒保持部に保持された前記光触媒を、該光触媒保持部から取り出して焼成することにより、該光触媒の光触媒活性を再生(再活性化)させた後、前記光触媒保持部に戻すことを含み、更に必要に応じて適宜選択した処理を含む。
【0085】
前記焼成を行う時期(タイミング)としては、前記気体清浄器における前記光触媒の光触媒活性が低下乃至消失した際に行うのが好ましい。なお、本発明の前記気体清浄器においては、該光触媒の光触媒活性が低下乃至消失したか否かは、該光触媒の色を目視にて視認することにより判断することができる。
【0086】
前記焼成としては、特に制限はなく、目的に応じてその温度、時間、雰囲気等の条件を適宜選択することができる。
前記焼成の温度としては、600〜800℃が好ましく、600〜650℃がより好ましい。前記温度が、600℃未満であると、前記光触媒の光触媒活性の再生(再活性化)が十分でないことがあり、800℃を超えると、分解が生ずることがある。
前記焼成の時間としては、例えば、1時間以上が好ましく、1〜2時間がより好ましい。前記時間が、1時間未満であると、前記光触媒の光触媒活性の再生(再活性化)が十分でないことがある。
前記焼成の雰囲気としては、例えば、大気雰囲気、不活性ガス雰囲気、などが挙げられ、前記不活性ガス雰囲気としては、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気、などが挙げられる。これらの中でも、特殊な設備が不要な点で雰囲気が特に好ましい。
【0087】
前記焼成を行う装置としては、加熱を行う機能を有していれば特に制限はなく、例えば、公知の加熱装置などが好適に挙げられる。前記加熱装置に前記光触媒を入れる際には、公知の容器などに収容させることができ、該容器としては、例えば、デシケータ等の密閉容器であってもよいし、シャーレなどの非密閉容器であってもよい。なお、前記焼成により再生(再活性化)した前記光触媒を直ちには使用せず、一定期間保存する場合には、その光触媒活性を直ぐに低下させないようにし、長期に活性状態を維持する観点からは、前記デシケータ等の密閉容器を使用し、前記焼成後の前記光触媒をそのまま該デシケータ等の密閉容器中で保存するのが好ましい。
【0088】
前記焼成の後、再生(再活性化)した前記光触媒を直ちに使用せず、保存等する場合には、該光触媒の光触媒活性の低下乃至消失等を防止する観点からは、該光触媒を、例えば、デシケータ等の密閉容器内で暗所に保存しておくことが好ましい。なお、前記デシケータ等の密閉容器には、シリカゲル等の乾燥剤等を収容させておいてもよい。
【0089】
本発明の気体清浄器の再生方法によると、前記光触媒保持部内に保持された前記光触媒の光触媒活性を容易にかつ効率的に再生(再活性化)することができる。その結果、該気体清浄器による前記気体中の有害成分(分解対象物)の分解除去効率を高くかつ低コストで維持することができ、安全で清浄な気体を吸引等することが可能となる。
【実施例】
【0090】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0091】
前記光触媒として、前記光触媒活性を有するのに必要な金属原子と、前記可視光吸収性金属原子と、前記紫外光吸収性金属原子とを含むアパタイト(光触媒1及び2)を以下のようにして製造した。該光触媒1及び2は、前記可視光吸収性金属原子と前記紫外光吸収性金属原子とを含むため、可視光及び紫外光を吸収可能であり、広帯域の光を吸収し利用可能であるので、太陽光照射条件下において光触媒活性を示す。
【0092】
−光触媒Aの製造−
前記可視光吸収性金属原子であるクロムを含む硝酸クロム(III)九水和物(和光純薬工業株式会社製)を純水に溶解し、該クロムの濃度が1×10−4Mである硝酸クロム水溶液を調製した。次に、300mlビーカーに、前記光触媒活性を有する金属としてチタンを有してなるアパタイトとして、カルシウム・チタンハイドロキシアパタイト(TiHAP;太平化学産業株式会社製、PCAP−100)1.5gを秤量し、前記硝酸クロム水溶液を添加し、混合液を調製した。該混合液をマグネティックスターラーで5分間攪拌した後、ワットマンNo.5の濾紙でアスピレータを使用して、該混合液の吸引濾過を行った。次いで、4〜5リットルの純水で洗浄した後、100℃のオーブンで2時間乾燥して、クロムをドープしたTiHAP粉体を得た。次に、前記紫外光吸収性金属原子であるタングステン(W)を含む12タングストリン酸n水和物(関東化学株式会社製)を純水に溶解し、該タングステンの濃度が1×10−2Mであるタングステン塩水溶液を調製した。次に、300mlビーカーに、先に得たクロムをドープしたTiHAPの1.5gを秤量し、前記タングステン塩水溶液を添加した。該混合液をマグネティックスターラーで5分間攪拌した。その後、ワットマンNo.5の濾紙でアスピレータを使用して、前記混合液の吸引濾過を行い、ろ過物を4〜5リットルの純水で洗浄した。次に、該ろ過物を100℃のオーブンで2時間乾燥した。その後、マッフル炉(株式会社ケイデン製)で650℃にて1時間の焼成(大気雰囲気)を行った。以上により、前記可視光吸収性金属であるクロム及び前記紫外光吸収性金属であるタングステンをドープしたTiHAP粉体(光触媒活性を有する金属(チタン)を含有してなるアパタイト)からなる粒状(平均粒径:5μm、粒度分布:2×10−6〜1×10−5)の光触媒A(広帯域光吸収性光触媒)を製造した。
【0093】
上記光触媒Aをシャーレに表面積が85.5m2となるように秤量し、前記気体清浄器としての喫煙ホルダーにおける光触媒保持部に入れ、合成空気(酸素30容量%−窒素70容量%)で該光触媒保持部内を置換した。次に、アセトアルデヒドガス濃度が約14000ppm(残りは合成空気)のガス12mlをシリンジで前記光触媒保持部内に注入し、アセトアルデヒドガスが前記光触媒Aと吸着平衡に達するまで暗所で放置した(約2時間)。その後、暗所で1時間放置後、可視光を照射し、その1時間後、2時間後及び3時間後、並びに、紫外光を照射し、その1時間後及び2時間後において、前記光触媒保持部内のガスをシリンジで抜き取り、ガスクロマトグラフィー(GC−390B、GLサイエンス社製)を用いて、アセトアルデヒドガス濃度と、アセトアルデヒドガスの分解により発生する炭酸ガス濃度とを計測した。結果を図10に示した。なお、可視光の照射には林時計工業株式会社製のキセノン光源「LA−251Xe」とL−42フィルタを組み合わせて紫外光をカットした光(39500ルクス)を用いた。また紫外光の照射にはブラックライト(1mW/cm2)を用いた。
【0094】
−光触媒Bの製造−
上記光触媒Aの製造において、前記紫外光吸収性金属原子である、タングステン(W)を含む12タングストリン酸n水和物(関東化学株式会社製)を、バナジウムを含むバナジウム酸アンモニウム(関東化学株式会社製)に変えた以外は、上記光触媒Aの製造と同様にして、前記可視光吸収性金属錯体であるクロム及び前記紫外光吸収性金属錯体であるバナジウムをドープしたTiHAP粉体(光触媒活性を有するのに必要な金属(チタン)を含有してなるアパタイト)からなる粒状(平均粒径:5μm、粒度分布:2×10−6〜1×10−5)の光触媒B(広帯域光吸収性光触媒)を製造した。
【0095】
上記光触媒Bをシャーレに表面積が85.5m2となるように秤量し、前記気体清浄器としての喫煙ホルダーにおける光触媒保持部に入れ、合成空気(酸素30%−窒素70%)で該光触媒容器内を置換した。次に、アセトアルデヒド濃度が約14000ppm(残りは合成空気)のガス12mlをシリンジで該光触媒容器内に注入し、アセトアルデヒドガスが粉体と吸着平衡に達するまで暗所で放置した(約2時間)。その後、暗所で1時間放置後、可視光を照射し、その1時間後、2時間後、3時間後、4時間後及び5時間後に前記光触媒保持部内のガスをシリンジで抜き取り、ガスクロマトグラフィー(GC−390B、GLサイエンス社製)を用いて、アセトアルデヒドガス濃度と、アセトアルデヒドガスの分解により発生する炭酸ガス濃度とを計測した。結果を図11に示した。
【0096】
なお、図10及び11において、「暗所1h」とは、暗所に1時間静置したことを意味し、「Vis」とは、可視光を照射したことを意味し、「Vis−1h」とは、可視光を1時間照射したことを意味し、「UV」とは、紫外光を照射したことを意味し、「1h」とは、1時間照射したことを意味する。各図において、右側の縦軸は、前記分解対象物としての「アセトアルデヒドガス」の濃度(ppm)を表し、左側の縦軸は、該アセトアルデヒドガスの分解産物である「炭酸ガス」(二酸化炭素)の濃度(ppm)を表す。
【0097】
(実施例1)
−喫煙ホルダー−
図1は、本発明の前記気体清浄器を本発明の前記喫煙ホルダーとして用いた場合の該喫煙ホルダーの一外観例を示す概略説明図である。図1に示す喫煙ホルダー10は、光触媒保持部1と、吸口部4とを有する。
【0098】
光触媒保持部1は、円筒状に形成されている。光触媒保持部1の一端開口部は、タバコの吸口部、パイプの吸口部、葉巻の吸口部などが挿入可能な挿入部3が設けられている。光触媒保持部1の該一端開口部に設けられた挿入部3の大きさ、形状等は、そこに挿入されるタバコ、パイプ、葉巻等の種類に応じて適宜設計することができ、図2に示すようにタバコ6の吸口部が挿入部3に挿入された際、あるいは図3に示すようにパイプ7の吸口部8が挿入部3に挿入された際、挿入部3は、タバコ6やパイプ7を落下させないように保持する。また、光触媒保持部1の他端開口部には、吸口部4が螺合可能に設けられており、着脱自在となっている。吸口部4の形状、構造等としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、図1〜3に示すように、光触媒保持部1から離れるに従って漸次縮径されて、吸引に適した扁平形状であるのが好ましい。
【0099】
光触媒保持部1は、透明樹脂(ポリカーボネート、可視光透過率=95%)製であり、外部からその内部を視認可能である。光触媒保持部1における、前記一端開口部に設けられた挿入部3の内側端部には、前記ガス透過手段としてのガス透過膜5が固定的に配されている。また、吸口部4における、光触媒保持部4内に挿入される側の端部にも、ガス透過膜5が固定的に配されている。
【0100】
光触媒保持部1における、2つのガス透過膜5により挟まれた空間内に、上記光触媒A(クロムイオンをドープしたカルシウムチタンハイドロキシアパタイト)としての光触媒2が収容(充填)されている。
【0101】
光触媒保持部1に設けられた吸口部4は、光触媒保持部1との螺合を解く方向に回転させることにより、光触媒保持部1から取り外すことができる。吸口部4を光触媒保持部1から取り外すと、光触媒保持部1における内部の空間が露出する。このとき、光触媒2を該空間内に収容(充填)又は取出しした後、吸口部4を光触媒保持部1に取り付けることにより、光触媒2を光触媒保持部1の内部の空間内に保持(収容)させることができ、あるいは該空間内から取り出すことができる。
【0102】
光触媒活性が低下乃至消失等していない光触媒2(クロムイオンをドープしたカルシウムチタンハイドロキシアパタイト)は、淡黄色である。淡黄色の光触媒2を光触媒保持部1内に収容(充填)させた後、光触媒保持部1の一端開口部に設けられた挿入部3に、図2に示すようにタバコ6の吸口部、あるいは図3に示すようにパイプ7の吸口部を挿入する。この状態で、光触媒保持部1の他端開口部に設けられた吸口部4からタバコ6やパイプ7を吸引すると、タバコ6やパイプ7の煙は、タバコ6やパイプ7の吸口部(フィルター部など)を通過して、挿入部4における内側端部に配されているガス透過フィルター5を通過する。そして、タバコ6やパイプ7の煙は、光触媒2と接触しながら、吸口部4側に吸引され、流れていく。このとき、タバコ6やパイプ7の煙中に含まれる、アルデヒド等の有害成分は、光触媒2のアパタイトに吸着される。このため、光触媒2を通過した前記煙は、光触媒保持部1の他端開口部に設けられた、吸口部4の端部に設けられたガス透過膜5を通過する際には、その中に含まれていた前記有害成分が除去された状態となっており、吸口部4から人体に吸い込まれる際には前記有害成分が除去された状態となっている。喫煙ホルダー10を用いて喫煙を行うと、タバコ等の煙中に含まれる有害成分を効率的に分解除去することができる。
【0103】
そして、喫煙後に、喫煙ホルダー10を、少なくとも可視光照射条件下(例えば、太陽光照射条件下、蛍光灯照射条件下など)に放置しておくと、透明樹脂で形成された光触媒保持部1を通して、その内部に保持(収容)された光触媒2に対し、可視光域の波長の光を含む光が照射される。すると、光触媒2においては、前記可視光吸収性金属原子(クロム)が可視光を吸収することにより活性化され、光触媒2の光触媒活性により、光触媒2の表面に吸着した前記有害成分(アルデヒド等)が分解される。このとき、図5に示すように、光触媒2に含まれる前記クロムが還元されるため、光触媒2が淡黄色から淡青色に変化する。その結果、光触媒2の色が淡黄色から淡青色に変化したのを目視にて視認することにより、光触媒2により前記有害成分(アルデヒド等)が分解されているかどうかを判断することができる。
【0104】
また、光触媒2は、繰返し使用していくと、図6に示すように、その色が徐々に淡青色から濃青色に変化し、その光触媒活性も低下乃至消失していく。光触媒2を目視にて視認することにより、その色が濃青色になっている場合には、光触媒2の再生(再活性化)乃至交換が必要な時期にきていることが目視にて容易に判断することができる。このため、喫煙ホルダー10によれば、光触媒2の光触媒活性が十分でないにもかかわらず使用しつづけることがなく、前記有害成分(アルデヒド等)が分解除去されていない前記煙等を吸引してしまうことがない。
【0105】
そして、光触媒2の交換乃至再生(再活性化)を行う場合には、吸口部4を螺合を解く方向に回転させて(螺子式で取付けられていた吸口部4を回転させて)光触媒保持部1から取り外す。すると、光触媒保持部1内に保持されていた光触媒2が露出し、外部に取り出すことが可能となる。
光触媒活性が低下乃至消失等した光触媒2は、本発明の前記気体清浄器の再生方法により再生(再活性化)することができる。即ち、光触媒保持部1から取り出した光触媒2を、図7に示すように、デシケータ9内に収容して、650℃にて2時間加熱することにより、焼成する。該焼成により、光触媒2は、濃青色から元の淡黄色にその色調が戻り、その光触媒活性も再生(再活性化)される。
【0106】
こうして再生(再活性化)した光触媒2は、光触媒保持部1に再充填し、吸口部4を再び光触媒保持部1に螺合させることにより、喫煙ホルダー10を繰り返し使用することができる。この喫煙ホルダー10によれば、タバコ等の煙中に含まれているアルデヒド等の前記有害成分を常に安定かつ効率的に除去することができ、また、たとえ光触媒2の光触媒能(吸着特性、光触媒活性等を含む)が低下してきても、それを取り出して再生(再活性化)するだけで再使用することができるため、使い捨てる必要がなく、低コストで何度でも繰り返して使用することができる。
【0107】
(実施例2)
−酸素吸引具−
図8及び図9は、病院などで患者に酸素ガスを補給するための酸素吸引具に本発明の吸気清浄具を適用した場合の一例を示す概略説明図である。
図8及び図9に示す酸素吸引具20は、マスク部11と、酸素ボンベ12と、チューブ13と、気体清浄器10とを有してなる。
マスク部11には、酸素の流入側に気体清浄器10が設けられている。気体清浄器10における、マスク部10との接続部側とは反対側に位置する酸素の流入側には、酸素ボンベ12からの酸素を移送するためのチューブ13が接続されている。マスク部11には、それを顔に装着するための止め紐14が設けられている。
なお、気体清浄器10は、実施例1の喫煙ホルダーと同様の構造を有しており、実施例1の喫煙ホルダーにおいて、挿入されるタバコ等の吸口部が、ここではチューブ13の一端となり、光触媒保持部1に螺合する吸口部4が、ここではマスク部11における酸素流入端部となっている点で、実施例1の喫煙ホルダーと相違している。気体清浄器10の作用効果は、実施例1の喫煙ホルダーと同様である。
【0108】
酸素ガスの患者への供給は、マスク部11を、口の周りを覆うようにして配置させ、止め紐14を後頭部にまわすことにより装着し、酸素ボンベ12のバルブを開くことにより、チューブ13を介して所定量の酸素ガスが該患者に供給される。この際、チューブ13の先端には気体清浄器10が設けられ、気体清浄器10を介してマスク部11に酸素ガスが供給されるので、酸素ガス中にたとえ誤って有害物質が混入していたとしても、該有害成分は吸気清浄具10の光触媒保持部1内に保持されている光触媒2により、吸着され、分解除去される。このため、安全性に優れる。なお、気体清浄器10の繰り返しの使用により、光触媒2の再生が必要になった場合には、実施例1と同様にして再生(再活性化)することにより、光触媒を再生することができる。
【0109】
本発明の好ましい態様を付記すると、以下の通りである。
(付記1) 気体が流通可能であり、かつ該気体の流通を遮蔽するように配された光触媒を保持してなり、該光触媒の少なくとも一部が視認可能である光触媒保持部を少なくとも備えたことを特徴とする気体清浄器。
(付記2) 光触媒が、流通する気体と接触可能に光触媒保持部材に保持された付記1に記載の付記1に記載の気体清浄器。
(付記3) 光触媒保持部が、気体の流入側及び流出側にガス透過手段を配してなり、光触媒が該ガス透過手段により前記光触媒保持部に脱落不能に保持された付記1から2のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記4) 気体の流入側及び流出側に配されたガス透過手段の少なくとも1つが、ガス透過膜である付記3に記載の気体清浄器。
(付記5) 気体の流入側及び流出側に配されたガス透過手段の少なくとも1つが、着脱自在に光触媒保持部に配された付記3から4のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記6) 光触媒保持部における、長さをT(cm)とし、最大径をD(cm)としたとき、次式、T>D、を充たす付記1から5のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記7) 光触媒保持部における、長さをT(cm)とし、最大径をD(cm)としたとき、次式、T>D×2、を充たす付記1から6のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記8) 光触媒保持部における、長さが1cm以下であり、軸方向に略直交方向の断面積が25cm2以上である付記1から7のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記9) 光触媒保持部が無色透明に形成された付記1から8のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記10) 光触媒保持部の波長380nm以上の光の光透過率が、70%以上である付記1から9のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記11) 光触媒保持部が樹脂で形成された付記1から10のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記12) 樹脂が、合成樹脂及び生分解性樹脂の少なくともいずれかである付記11に記載の気体清浄器。
(付記13) 合成樹脂が、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、及びスチレン系樹脂から選択され、生分解性樹脂が、ポリ乳酸から選択される付記12に記載の気体清浄器。
(付記14) 光触媒が、粒子状である付記1から13のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記15) 光触媒の平均粒径が、3〜8μmである付記1から14のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記16) 光触媒の粒度分布が、2×10−6〜1×10−5である付記1から15のいずれかである気体清浄器。
(付記17) 光触媒が、少なくとも可視光により光触媒活性を発現可能である付記1から16のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記18) 光触媒が、気体中に含まれる分解対象物を分解すると変色可能である付記1から17のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記19) 光触媒が、気体中に含まれる分解対象物を分解すると、淡黄色から淡青色に変色可能である付記1から18のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記20) 光触媒が、光触媒活性を有するアパタイトと、可視光吸収性金属原子とを少なくとも含んでなる付記1から19のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記21) 光触媒活性を有するアパタイトが金属原子を有してなり、該金属原子の少なくとも一部が、可視光吸収性金属原子により置換されてなる付記19に記載の気体清浄器。
(付記22) 可視光吸収性金属原子が、波長400nm以上の光に対し、吸収特性を有する付記20から21のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記23) 可視光吸収性金属原子が、クロム(Cr)である付記20から22のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記24) 可視光吸収性金属原子の含有量が、全金属原子に対し、0.001〜1mol%である付記20から23のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記25) 光触媒活性を有するアパタイトが、光触媒活性を有するのに必要な金属原子を有してなる付記20から24のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記26) 光触媒活性を有するのに必要な金属原子が、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、スズ(Sn)、インジウム(In)、及び鉄(Fe)から選択される少なくとも1種である付記25に記載の気体清浄器。
(付記27) 光触媒活性を有するのに必要な金属原子の含有量が、全金属原子に対し、5〜15mol%である付記25から26のずれかに記載の気体清浄器。
(付記28) アパタイトが、下記一般式(1)で表される付記20から27のいずれかに記載の気体清浄器。
【化2】
ただし、前記一般式(1)中、Aは、金属原子を表す。Bは、リン原子(P)及び硫黄原子(S)のいずれかを表す。Oは、酸素原子を表す。Xは、水酸基、CO3、及びハロゲン原子のいずれかを表す。m、n、z、及びsは、整数を表す。
(付記29) Aが、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、ランタン(La)、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、鉛(Pb)、カドミウム(Cd)、ユウロピウム(Eu)、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、ナトリウム(Na)、及びカリウム(K)から選択される少なくとも1種である付記28に記載の気体清浄器。
(付記30) Aがカルシウム(Ca)であり、Bがリン原子(P)であり、かつXが水酸基であり、光触媒性能を有するアパタイトがカルシウムハイドロキシアパタイトCa10(PO4)6(OH)2である付記28から29のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記31) 光触媒活性を有するのに必要な金属原子が、チタン(Ti)である付記25から30のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記32) 光触媒が、紫外光吸収性金属原子を含む付記20から31のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記33) 紫外光吸収性金属原子の含有量が、全金属原子に対し、0.001〜0.1mol%である付記32に記載の気体清浄器。
(付記34) 光触媒活性を有するのに必要な金属原子と紫外光吸収性金属原子と可視光吸収性金属原子との合計の含有量が、15mol%以下である付記32から33のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記35) 光触媒が、焼成により光触媒活性を発現可能であり、繰返し使用可能である付記1から34のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記36) 気体が、吸気のための気体であり、シガレットホルダー、パイプホルダー、酸素吸引具、防護マスク、防塵マスク、防臭マスク及びスポーツ用マスクのいずれかに用いられる付記1から35のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記37) 気体が、煙を含む付記1から36のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記38) 気体が、アルデヒド成分を含む付記1から37のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記39) 排気装置におけるフィルター、及び、排気管の少なくとも一部、の少なくともいずれかとして用いられる付記1から38のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記40) 気体の流路に、更に活性炭を保持してなる付記1から39のいずれかに記載の気体清浄器。
(付記41) 付記1から40のいずれかに記載の気体清浄器における、光触媒保持部に保持された光触媒を、該光触媒保持部から取り出して焼成することにより、該光触媒の光触媒活性を発現乃至活性化させた後、前記光触媒保持部に戻すことを特徴とする気体清浄器の再生方法。
(付記42) 焼成が、600〜700℃にて1時間以上で行われる付記41に記載の気体清浄器の再生方法。
(付記43) 付記1から40のいずれかに記載の気体清浄器を備えたことを特徴とする喫煙ホルダー。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の気体清浄器は、喫煙ホルダー(タバコの吸口側に挿入された状態で該タバコを保持するシガレットホルダー、パイプの吸口側に挿入された状態で該パイプを保持するパイプホルダー、葉巻の吸口側に挿入された状態で該葉巻を保持する葉巻ホルダーなど)、吸気管接続器(酸素マスク(酸素吸引具)、蒸気マスク等のマスク部と酸素供給管との接続部に使用されるもの)、マスク(酸素マスク、防護マスク、防塵マスク、防臭マスク、スポーツ用マスクなど)、フィルター(エアコン用、空気清浄器用、排気用、換気用、排煙用、排気口用、換気口用など)、などに好適に適用することができる。
本発明の気体清浄器の再生方法は、本発明の前記気体清浄器の再生に好適に使用することができる。
本発明の喫煙ホルダーは、タバコの吸口側に挿入された状態で該タバコを保持するシガレットホルダー、パイプの吸口側に挿入された状態で該パイプを保持するパイプホルダー、葉巻の吸口側に挿入された状態で該葉巻を保持する葉巻ホルダーなどとして特に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】図1は、本発明の吸気清浄具としてのシガレットホルダーの一例を示す概略図である。
【図2】図2は、図1のシガレットホルダーに煙草を装着した状態を示す概略図である。
【図3】図3は、図1のシガレットホルダーにパイプを装着した状態を示す概略図である。
【図4】図4は、本発明の吸気清浄具としてのシガレットホルダーを使用して喫煙した後の状態を示す概略図である。
【図5】図5は、本発明の吸気清浄具としてのシガレットホルダーを使用して喫煙し、可視光を照射した後の状態を示す概略図である。
【図6】図6は、本発明の吸気清浄具としてのシガレットホルダーを繰り返し使用した後の状態を示す概略図である。
【図7】図7は、繰り返し使用後の劣化した光触媒を再生処理している状態を示す概略図である。
【図8】図8は、本発明の吸気清浄具を用いた酸素吸引具の一例を示す概略図である。
【図9】図9は、図8の酸素吸引具におけるマスク部の拡大図である。
【図10】図10は、可視光を照射した後に紫外光を照射した場合における光触媒の光触媒活性の評価結果を示すグラフである。
【図11】図11は、可視光及び紫外光を照射後における光触媒の光触媒活性の評価結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0112】
1 光触媒保持部
2 光触媒
3 先端開口部
4 吸口部
5 ガス透過手段(ガス透過性フィルタ)
6 煙草
7 パイプ
8 パイプの吸口部
9 デシケータ
10 気体清浄器
11 マスク部
12 酸素ボンベ
13 チューブ
14 止め紐
20 酸素吸引器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体が流通可能であり、かつ該気体の流通を遮蔽するように配された光触媒を保持してなり、該光触媒の少なくとも一部が視認可能である光触媒保持部を少なくとも備えたことを特徴とする気体清浄器。
【請求項2】
光触媒保持部が、気体の流入側及び流出側にガス透過手段を配してなり、光触媒が該ガス透過手段により前記光触媒保持部に脱落不能に保持された請求項1に記載の気体清浄器。
【請求項3】
光触媒が、少なくとも可視光により光触媒活性を発現可能である請求項1から2のいずれかに記載の気体清浄器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の気体清浄器における、光触媒保持部に保持された光触媒を、該光触媒保持部から取り出して焼成することにより、該光触媒の光触媒活性を発現乃至活性化させた後、前記光触媒保持部に戻すことを特徴とする気体清浄器の再生方法。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載の気体清浄器を備えたことを特徴とする喫煙ホルダー。
【請求項1】
気体が流通可能であり、かつ該気体の流通を遮蔽するように配された光触媒を保持してなり、該光触媒の少なくとも一部が視認可能である光触媒保持部を少なくとも備えたことを特徴とする気体清浄器。
【請求項2】
光触媒保持部が、気体の流入側及び流出側にガス透過手段を配してなり、光触媒が該ガス透過手段により前記光触媒保持部に脱落不能に保持された請求項1に記載の気体清浄器。
【請求項3】
光触媒が、少なくとも可視光により光触媒活性を発現可能である請求項1から2のいずれかに記載の気体清浄器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の気体清浄器における、光触媒保持部に保持された光触媒を、該光触媒保持部から取り出して焼成することにより、該光触媒の光触媒活性を発現乃至活性化させた後、前記光触媒保持部に戻すことを特徴とする気体清浄器の再生方法。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載の気体清浄器を備えたことを特徴とする喫煙ホルダー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−197837(P2006−197837A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−12139(P2005−12139)
【出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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