説明

気体測定用装置

【課題】放散物質の低減手段の評価、測定が可能で、測定に要する所定の必要条件を維持可能とする安価な構成の期待測定用装置を提供する。
【解決手段】第1容器1内部が所定温度に制御され、安定した清浄空気が連続供給されるので、被測定物からの揮発性物質が第1出口3より第3容器19に供給され、第3容器19内での化学測定が可能な気体測定用装置ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は物体表面および内部から空気中に放散される揮発性化合物量を測定するための気体測定用装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の揮発性化合物量の測定は、被測定物を一定容積の空間に設定し、所定の温湿度において流通させる気体中の有機化合物量を定性定量分析することで行われ、これに必要な気体捕集用装置は、温度や不純物濃度などの所定の測定条件を満足するために、測定対象となる物体(被測定物)を設置する容器を備え、また容器と容器を設置する空間の気体浄化や温湿度制御が可能な手段を有している。(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
図4は、非特許文献1に記載された従来の気体測定用装置を示すものである。図4に示すように、所定の内部体積を有する容器29と、空気供給装置30と、空気清浄装置31と、流量制御装置32、温度制御装置33、空調装置34などから構成されている。被測定物からの揮発性化合物の放散量は、温度によって変化するため、測定時の温度は重要な要因であり、可能な限り一定に維持しなければならない。従って、気体測定用装置において温度制御手段は重要な構成要素となっている。
【非特許文献1】監修 村上周三、編集委員長 田辺新一「シックハウス対策に役立つ小型チャンバー法 解説[JIS A 1901]」日本規格協会発行、2003年4月21日、P.37−51
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成では、空気中への物質の放散量の測定は可能であるが、放散された物質の低減手段を評価、測定する構成には至っていない。また、放散源となる被測定物体が大きい場合には、それに適合する測定用装置も各構成要素が大型化され高価になるという課題を有していた。特に、内部容積が数m程度以上になると、例えば温度制御手段は気体測定用装置の設置空間全体を温度制御するために能力の大きな空調機器を必要とした。
【0005】
前記従来の課題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、放散物質の低減手段の評価、測定が可能で、測定に要する所定の必要条件を維持可能とする安価な構成の気体測定用装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、本発明の気体測定用装置は、被測定物を設置する任意体積の空洞を有する第1容器と、前記第1容器に配置した気体の第1入口および第1出口と、前記第1容器の壁面に配置した面状発熱体を有する第1温度制御手段と、前記面状発熱体からの熱損失を抑制する第1断熱手段と、前記第1容器を覆う第2容器と、前記第2容器に配置した気体の第2入口および第2出口と、前記第2容器の壁面に配置した面状発熱体を有する第2温度制御手段と、前記第1入口の上流側に配置した第1浄化手段と、前記第2入口の上流側に配置した第2浄化手段と、前記第1浄化手段を介して気体を第1容器内に供給する第1供給手段と、前記第2浄化手段を介して気体を第2容器内に供給する第2供給手段と、前記第1容器と前記第2容器を設置する設置面との間に設けた第2断熱手段と、前記第1出口から流出する気体を流入させる第3容器と、前記第3容器に配置した気体の第3入口および第3出口と、前記第3容器に流入する気体の流量制御手段と、前記第3容器を所定温度に維持する発熱体を有する第3温度制御手段を備える構成としたもの
である。
【0007】
これによって、第3容器は、放散源から放散された揮発性化合物の低減手段を評価、測定する反応容器として使用できる。また、面状発熱体を有する第1温度制御手段が第1容器を直接加熱し、さらに第1容器を第2容器で覆い、第1断熱手段および第2断熱手段で面状発熱体からの熱損失を抑制するため、第1容器の安定した温度制御が可能となり、大型かつ高価な空調機器による第1容器の温度制御が不要なため、気体測定用装置が小型化され、装置作成に必要な費用が削減できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の気体測定用装置は、揮発性化合物の低減化手段の動的測定が可能となり、個別の放散源に対応した低減化手段の開発を通して、環境保全分野での有効な技術開発を促進することができる。また、高価な温度制御手段が不要かつ小型化可能で、気体測定用装置を安価に調達できるようになり、効率的な揮発性化合物の測定を可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1の発明は、被測定物を設置する任意体積の空洞を有する第1容器と、前記第1容器に配置した気体の第1入口および第1出口と、前記第1容器の壁面に配置した面状発熱体を有する第1温度制御手段と、前記面状発熱体からの熱損失を抑制する第1断熱手段と、前記第1容器を覆う第2容器と、前記第2容器に配置した気体の第2入口および第2出口と、前記第2容器の壁面に配置した面状発熱体を有する第2温度制御手段と、前記第1入口の上流側に配置した第1浄化手段と、前記第2入口の上流側に配置した第2浄化手段と、前記第1浄化手段を介して気体を第1容器内に供給する第1供給手段と、前記第2浄化手段を介して気体を第2容器内に供給する第2供給手段と、前記第1容器と前記第2容器を設置する設置面との間に設けた第2断熱手段と、前記第1出口から流出する気体を流入させる第3容器と、前記第3容器に配置した気体の第3入口および第3出口と、前記第3容器に流入する気体の流量制御手段と、前記第3容器を所定温度に維持する発熱体を有する第3温度制御手段を備える構成とすることにより、第3容器内部は、放散源からの揮発性化合物を含む気体により占められ、第3容器に流入する気体は、第3温度制御手段と流量制御手段により温度と流量が任意設定できる。従って、予め第3容器に揮発性化合物の低減化手段、一例として触媒や吸着剤を配置することで、低減化手段と揮発性化合部との間における化学反応を動的に評価できる。
【0010】
また、第1供給手段が第1容器に気体を供給している状態において、面状発熱体を有する第1温度制御手段が第1容器を直接加熱し、任意の設定温度に制御している時、第1断熱手段および第2断熱手段が面状発熱体から周辺への熱損失を抑制し、併せて第2容器が第1容器との間に形成する空気層の断熱効果で熱損失を抑制するので、第1容器の温度変動幅が小さくなり、第1容器の温度を安定して維持できるようになる。
【0011】
また、測定時に第1容器内に供給される気体は、室内あるいは室外の空気を供給源とするが、第1浄化手段により清浄化されるため、不純物濃度は一定水準以下に抑制されている。更に、第1容器内部への不純物の混入を抑制するために、第2容器と第1容器の間に形成された空気層に、第2浄化手段を通した空気を連続供給することにより、第1容器内の空気中の不純物濃度を抑制している。
【0012】
また、第2温度制御手段により第2容器壁面の温度を必要な温度範囲に維持し、第1容器と第2容器の間に形成された空気層の温度が、所定の温度範囲に制御可能となることから、第1容器壁面および第1容器内の気体の温度をより安定化させる。
【0013】
第2の発明は、特に、第1の発明の気体測定用装置で、面状発熱体が自己温度制御性を
有する温度制御手段を備える構成とすることにより、自己温度制御性を有する発熱体は、周囲温度との相対関係において抵抗体の発熱量が一定の値で安定するため、発熱体としての温度が一定の値を保つようになり、非自己制御性の発熱体と比較して、温度制御に必要な部材を削減できる。
【0014】
第3の発明は、特に、第1の発明の気体測定用装置で、第3容器の第3温度制御手段が、面状発熱体を備える構成とすることにより、第3容器が均一に加熱されることとなり、動的な測定に必要な反応温度の安定性を確保できる。
【0015】
第4の発明は、特に、第1の発明の気体測定用装置で、第3容器の第3温度制御手段が、気体が流通する第1出口および第3入口の間において、気体温度を加熱する発熱体を備える構成とすることにより、第3入口上流での気体の温度制御が可能となり、上記の動的な測定に必要な反応温度の安定化が容易となる。
【0016】
第5の発明は、特に、第1〜第4のいずれか1つの発明の気体測定用装置で、第3容器を、第1出口の下流側に複数備える構成とすることにより、同質の気体空間を複数作り出すこととなり、一つの放散源に対して、複数の低減化手段を同時に評価できるようになる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における気体測定用装置の概略構成図で、図2は、同気体測定用装置の第1容器の概略外観図で、図3は、同気体測定用装置の第2容器の概略外観図である。
【0019】
図1において、第1容器1は、内部に任意体積の空洞を有し、気体を流通させる第1入口2および第1出口3と、外周側の壁面および外底に配置した面状発熱体4aおよび4bを有する第1温度制御手段5aおよび5bと、第1容器1の天井壁と面状発熱体4aを覆った第1断熱手段6を備える。第2容器7は、天井および外周側と所定の空気層26を有して第1容器1を覆い、気体を流通させる第2入口8と第2出口9と、外周側の壁面に面状発熱体10を有する第2温度制御手段11を備えている。第1入口2の上流には、第1容器1に供給する気体を浄化する第1浄化手段12、第2入口8の上流には第2容器7に供給する気体を浄化する第2浄化手段13が配置されている。
【0020】
さらに、第1入口2の上流には第1浄化手段12を介して第1容器1に気体を供給する第1供給手段14を設け、第2入口7の上流には第2浄化手段13を介して第2容器7に気体を供給する第2供給手段15が設けられている。第1容器1の外底および第2容器7の外底と、設置面である設置室内の床面との間には、面状発熱体4bを覆って第2断熱手段16を設けている。第1容器1に供給する気体の流量は、流量制御手段17により制御を行う。
【0021】
さらに、第1温度制御手段5aは、第1容器1の温度を検知する温度検知手段18aを備え、これの検知信号に基づき面状発熱体4aを制御し、測定に必要な第1容器1の温度環境を保っている。第1温度制御手段5bは、面状発熱体4b近傍の温度を検知する温度検知手段18bを備え、これの検知信号に基づき面状発熱体4bを制御し、測定に必要な第1容器1の温度環境を保っている。面状発熱体10を有する第2温度制御手段11は、温度検知手段18cを備え、これの検知信号に基づき、上記した面状発熱体4aおよび第1温度制御手段5aと同様に作用する。尚、面状発熱体10の外側には、断熱手段6´が
配置されている。
【0022】
さらに、第3容器19は、気体を流通させる第3入口20および第3出口21と、第3容器19に流入する気体の流量制御手段22と、第3容器19の外壁面に配置された発熱体23を有する第3温度制御手段24を設けている。そして、第3温度制御手段24は、図示していないが、第3容器19壁面あるいは内部の温度を検知する温度検知手段や発熱体23を覆う断熱手段を有する。
【0023】
第1容器1の内部体積は、約1m、形状は直方体とした。1辺が約1mのステンレス板を6枚組合せている。そして、第1容器1の接合部分は、図示されていないが、化学的に不活性なテフロン(登録商標)の板をパッキンとして、接合部分からの空気の漏れ量が少なくなるような封止構造とした。接合は、ねじ締めによるが、これに限定されるものではない。第1入口2および第1出口3は、ステンレス管を用いた。一般的に、入口側には整流板25を設けるのが好ましい。
【0024】
供給する気体の供給源は室内空気もしくは室外空気とし、第1供給手段14によって第1入口2から流入させ第1出口3から流出させる。第1供給手段14は、市販されているエアポンプでよいが、供給する空気中に揮発成分などが混入しないような処置を施すことが必要であり、空気が第1入口2からの流入前に、第1浄化手段12により空気中の不純物である不要な揮発成分を除去する。
【0025】
これには、活性炭を用いた揮発成分の吸着除去が効果的であり、第1浄化手段12は、必要量の活性炭を保持固定する容器と、空気を通過させる配管とで構成している。通常、空気浄化には第1浄化手段12で十分であるが、空気が極度に汚染されている時は、予め空気浄化を行うなどの手段を講じておく。この場合の空気浄化も、第1浄化手段12と同様の方法でよい。流量制御手段17は、フロート式流量計などでよいが、空気汚染の原因とならないように処置する。流量の設定値は、第1容器1における所定の換気回数から必然的に求められる。
【0026】
面状発熱体4a、4b、10は、市販されているシートヒーターや面状発熱体とされている発熱体でよい。面状発熱体4bは、設置面との間に配置されるので、家庭用電気暖房器具である電気カーペットでもよい。容器の側面に設置するときは、柔軟性の高いものであることが好ましい。いずれの場合も、気体測定用装置に配置する前に、面状発熱体を加熱処理することが必要で、これは面状発熱体4a、4b、10から放散される揮発性有機化合物を予め除去する操作である。
【0027】
面状発熱体4a、4b、10は、自己温度制御性を有する発熱体であってもよい。この発熱体は、電気抵抗の温度特性が正温度係数(PTC)を示し、入力電圧一定の時に、発熱体とその周囲の空気温度などとの熱的平衡によって、発熱体の温度が一定に維持されるものである。従って、発熱体温度が必要な温度になるような条件で用いると、発熱体の制御が殆ど不要になる。発熱体の材料は、例えば、結晶性樹脂と非結晶性樹脂と導電性カーボンの混合物のような有機化合物からなるものが多数考案され、市販されている。
【0028】
各温度制御手段5a、5b、11、24は、比例制御などができる市販の温度制御装置を用いてよい。第1容器1の壁面や内部温度を検知するためには、温度検知手段18a、18bは、折り曲げ可能な熱電対が適しているが、これに限定するものではない。温度検知手段18aは、第1容器1の壁面や、第1容器1の内部に配置してよい。温度検知手段18bは、第1容器1と面状発熱体4bの間に配置するか、面状発熱体4b近傍の任意の部位に配置する。
【0029】
本実施形態では、熱電対である温度検知手段18aを第1容器1の内部に配置した状態を示している。温度制御手段5a、5bは、熱電対の温度出力をもとに面状発熱体4aおよび4bに通電する電源のオンオフなどによる所定の温度制御を行う。設定温度は、非特許文献1では、28℃の例がある。
【0030】
第1断熱手段6は、発泡体など市販の断熱材料でよく、面状発熱体と同様に、発泡体から放散される揮発性有機化合物を予め除去する操作が必要である。また、第1断熱手段6は、第1容器1と第2容器7の間に形成された空気層26への熱放散を抑制する。そして、 第1断熱手段6と同様に第2断熱手段16も、発泡体など市販の断熱材料でよく、面状発熱体と同様に、発泡体から放散される揮発性有機化合物を予め除去する操作が必要である。第2断熱手段16は、設置面と第1容器1および第2容器7の間を熱的に遮断する。
【0031】
第2容器7は、内部体積を約2m、形状は直方体とし、約1.2m×1.5mおよび1.2m×1.2mのステンレス板を、それぞれ3枚および2枚を組合せている。そして、第2容器7の接合部分は、必ずしも第1容器1のような封止構造にしなくてもよいが、接合部からの漏れは少ない方がよい。前記接合は、ねじ締めによるが、これに限定するものではない。
【0032】
第2供給手段15は、第2容器7の内部に、第2入口8から空気を流入させ、第2出口9から流出させる。第2浄化手段13は、第1浄化手段12と同様の構成による空気浄化を行う。第2供給手段15は、市販されているエアポンプでよいが、供給する空気中に揮発成分などが混入しないような処置を施すことが必要である。
【0033】
第2入口8および第2出口9は、ステンレス管を用いた。そして、第2出口9は、図1では、第2容器7の上部に設けられているが、配置箇所を限定するものではない。尚、第2入口は複数設けることが望ましく、この場合、供給手段も同数とするのが好ましいが、これに限るものではない。
【0034】
第3容器19は、内部に触媒などの揮発性化合物の除去効果を持つ物質等を設置することができる。そして、第3容器19を構成する材料は、ステンレス製あるいはガラス製のいずれでもよい。また、第3容器19の形状は、箱型あるいは管状等、測定に適した形状であれば制約を持つものではなく、その体積も任意に設定してよい。揮発化合物の低減効果を測定するために、流量制御手段22と第3温度制御手段24によって所定の温度や気体流量を実現できる。
【0035】
第3温度制御手段24に備える発熱体23の種類は、第3容器19の形状や必要とする温度範囲に合わせて任意に選択できる。すなわち、例えば第3容器19の第3温度制御手段24が、気体が流通する第1出口3および第3入口20の間において、気体温度を加熱する発熱体を備える構成(図示していない)とすることにより、第3入口20上流での気体の温度制御が可能となり、上記の動的な測定に必要な反応温度の安定化が容易となる。また、発熱体は面状発熱体が、好ましいがこれに限るものではなく、例えば自己温度制御性の発熱体でもよいが、この場合、既述したような特徴がある。
【0036】
図2において、第1容器1の任意の一面には、約0.6m×0.6mの取外し可能な被測定物の設置用窓27を設けている。設置用窓27と第1容器1の接合部分は、化学的に不活性なテフロン(登録商標)の板をパッキンとして、接合部分からの空気の漏れ量が少なくなるような封止構造とし、接合はねじ締めによる。
【0037】
図3において、第2容器7の任意の一面には、約0.8m×0.8mの取外し可能な被
測定物の設置用窓28を設けている。設置用窓28と第2容器7の接合部分は、必ずしも第1容器1のような封止構造にしなくてもよいが、接合部からの漏れは少ない方がよい。前記接合は、ねじ締めによるが、これに限定するものではない。そして、自明であるが、設置用窓27と設置用窓28は、同一の部位になければならない。
【0038】
以上のように構成された気体測定用装置について、以下その動作、作用を説明する。まず、第1容器1に配置された面状発熱体4aおよび4bは電気的に独立しており、温度制御手段5aおよび5bにより第1容器1の側壁、外底の壁面を加熱する。そして、温度制御手段5aおよび5bは、面状発熱体4a、4bの動作を制御して、第1容器1の内部を所定温度(例えば、28℃±1℃)に維持する。この時、局部加熱であれば容器内部に温度ムラや温度変動が生じ、所定温度から外れるが、発熱体が面状であること、面状発熱体を複数の壁面に配置していること、第1容器1と第2容器7の間に形成された空気層26の断熱効果や、第1断熱手段6および第2断熱手段16により、面状発熱体が周囲の熱負荷の影響を受けにくくなり、効率的に第1容器1を加熱できるため、第1容器内部とその周囲において熱平衡状態が形成され易くなり、面状発熱体のような薄型軽量の発熱体であっても、温度ムラが解消され、所定温度に維持できるとともに、熱負荷が大きくならないので、省電力化ができる。
【0039】
上記のように、熱平衡状態が形成され易いため、温度検知手段18aは、第1容器1の壁面あるいは第1容器1の内部のいずれに配置しても良好な温度制御を可能とする。また、例えば第1容器1の壁面に設置すれば、温度検知手段18aによって第1容器内部の空気が汚染されることがない。
【0040】
第2容器7は、第2温度制御手段11により温度制御される。第2容器7の壁面の温度を必要な温度範囲に維持し、第1容器1と第2容器7の間に形成された空気層26の温度が、所定の温度範囲に制御可能となることから、第1容器1壁面および第1容器1の内部温度をより安定化させる。
【0041】
第1浄化手段12は、活性炭の吸着作用により、供給源の空気中の総揮発性有機化合物濃度が約300μg/mで、流量が約15L/minのときに、95%以上を除去した。非特許文献1に示されている試験条件の例は、第1容器1内部の総揮発性有機化合物濃度は20μg/m以下であるので、第1浄化手段12は、これを満足し、良好な試験条件を作り出す。
【0042】
第2浄化手段13は、第1浄化手段12と同様の構成であり、第1容器1と第2容器7の間に形成された空気層26の揮発性有機化合物濃度を、気体捕集用装置の設置空間よりも低減させ、第1容器1内部の清浄状態を維持するように作用する。第2浄化手段13の浄化率は、高くすることが好ましいものの、第1浄化手段12に比較して低くても構わない。
【0043】
そして、第2浄化手段13は、気体測定用装置を定まった室内に設置固定し、室内空気を供給源とし、その室内にも第1浄化手段12と同様の浄化手段を設けることで、供給源である室内空気の総揮発性有機化合物濃度を低減化できる。これによって、第1浄化手段12を通過した後の供給空気中の総揮発性有機化合物濃度は、さらに低下し、第1容器1内部をより清浄化できる。
【0044】
上記状態としたときの、第1容器1内部の総揮発性有機化合物濃度は数μg/m以下であった。このことは、被測定物を第1容器内部に設置するときには好適である。
【0045】
第3容器19は、揮発性化合物とその除去効果を持つ触媒などとの反応を動的に測定で
きる構成で、流量や温度や触媒量などを変化させるなどして、反応条件を任意に変えることができる。
【0046】
また、第1出口3からの流出気体を、第3容器19が接続された流路を含む、図示していない複数に分岐した流路にそれぞれの下流に第3容器19と同等の容器および、それに必要な気体の入口および出口と流量制御手段と温度制御手段を配置すると、一つの放散源から得られる揮発性化合物を含有する気体に対して、複数の動的評価が可能になる。そして、複数の第3容器19は、必ずしも同一容量にしなくても良い。図中、35はオーバーフロー管である。
【0047】
以上の状態にして、被測定物からの揮発性有機化合物の放散量測定を、非特許文献1記載の方法に準拠して行うと同時に、揮発性化合物の低減手段についての評価を行う。特に、被測定物を第1容器1内に設置する時、注意を要する。そして、汚染成分の混入を抑制するため、短時間の内に設置用窓の開閉を行うようにする。多くの場合、このようにして設置した直後で、第1容器1内の総揮発性有機化合物濃度は、20μg/m以下であった。第1容器1内の空気は、空気塊としての挙動を有し、設置室内の空気との拡散混合が、短時間の内に生じにくいことによると思われる。
【0048】
以上のように、本実施の形態では、面状発熱体や断熱材など比較的安価で簡単な構造のもので容器を所定の温度に設定維持し、浄化手段による供給空気の浄化を効果的に行うことで、測定に適した清浄な空間を提供できる。また、第3容器19を備えたことにより、揮発性化合物の低減手段の評価が可能となり、環境保全分野での有効な技術開発を促進することができるようになる。
【0049】
すなわち、第3容器19内部は、放散源からの揮発性化合物を含む気体により占められ、第3容器19に流入する気体は、第3温度制御手段24と流量制御手段22により温度と流量が任意設定できる。従って、予め第3容器19に揮発性化合物の低減化手段、一例として触媒や吸着剤を配置することで、低減化手段と揮発性化合部との間における化学反応を動的に評価できる。
【0050】
また、第1供給手段14が第1容器1に気体を供給している状態において、面状発熱体4aを有する第1温度制御手段5bが第1容器1を直接加熱し、任意の設定温度に制御している時、第1断熱手段6および第2断熱手段16が面状発熱体4aから周辺への熱損失を抑制し、併せて第2容器7が第1容器1との間に形成する空気層26の断熱効果で熱損失を抑制するので、第1容器1の温度変動幅が小さくなり、第1容器1の温度を安定して維持できるようになる。
【0051】
また、測定時に第1容器1内に供給される気体は、室内あるいは室外の空気を供給源とするが、第1浄化手段12により清浄化されるため、不純物濃度は一定水準以下に抑制されている。更に、第1容器1内部への不純物の混入を抑制するために、第2容器7と第1容器1の間に形成された空気層26に、第2浄化手段13を通した空気を連続供給することにより、第1容器1内の空気中の不純物濃度を抑制している。
【0052】
また、第2温度制御手段11により第2容器7の壁面の温度を必要な温度範囲に維持し、第1容器1と第2容器7の間に形成された空気層26の温度が、所定の温度範囲に制御可能となることから、第1容器1の壁面および第1容器1内の気体温度をより安定化させる。
【0053】
また、第3容器19の第3温度制御手段24が、面状の発熱体23を備える構成とすることにより、第3容器19が均一に加熱されることとなり、動的な測定に必要な反応温度
の安定性を確保できる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上のように、本発明にかかる気体測定用装置は、被測定物を設置する第1容器内部を所定の状態に維持し、揮発性化合物を含む気体を所定の状態に維持する第3容器を備えているので、物体表面および内部から空気中に放散される揮発性化合物量の測定と同時に揮発性化合物の低減手段の評価が可能となり、被測定物と物体周囲の気体等の間における化学反応の測定や環境保全技術の評価等、種々の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態1における気体測定用装置の概略構成図
【図2】同実施の形態1における気体測定用装置の第1容器の概略外観図
【図3】同実施の形態1における気体測定用装置の第2容器の概略外観図
【図4】従来の気体測定用装置の概略構成図
【符号の説明】
【0056】
1 第1容器
2 第1入口
3 第1出口
4a、4b、10 面状発熱体
5a、5b 第1温度制御手段
6 第1断熱手段
7 第2容器
8 第2入口
9 第2出口
11 第2温度制御手段
12 第1浄化手段
13 第2浄化手段
14 第1供給手段
15 第2供給手段
16 第2断熱手段
19 第3容器
20 第3入口
21 第3出口
22 流量制御手段
23 発熱体
24 第3温度制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物を設置する任意体積の空洞を有する第1容器と、前記第1容器の壁面に配置した気体の第1入口および第1出口と、前記第1容器の壁面に配置した面状発熱体を有する第1温度制御手段と、前記面状発熱体からの熱損失を抑制する第1断熱手段と、前記第1容器を覆う第2容器と、前記第2容器に配置した気体の第2入口および第2出口と、前記第2容器の壁面に配置した面状発熱体を有する第2温度制御手段と、前記第1入口の上流側に配置した第1浄化手段と、前記第2入口の上流側に配置した第2浄化手段と、前記第1浄化手段を介して気体を前記第1容器内に供給する第1供給手段と、前記第2浄化手段を介して気体を前記第2容器内に供給する第2供給手段と、前記第1容器と前記第2容器を設置する設置面との間に設けた第2断熱手段と、前記第1出口から流出する気体を流入させる第3容器と、前記第3容器に配置した気体の第3入口および第3出口と、前記第3容器に流入する気体の流量制御手段と、前記第3容器を所定温度に維持する発熱体を有する第3温度制御手段を備えた気体測定用装置。
【請求項2】
第1容器および第2容器の温度制御手段は、自己温度制御性を有する面状発熱体を備えた請求項1に記載の気体測定用装置。
【請求項3】
第3温度制御手段の発熱体は、面状発熱体とした請求項1に記載の気体測定用装置。
【請求項4】
第3温度制御手段は、気体が流通する第1出口および第3入口の間において、気体温度を加熱する発熱体を備えた請求項1に記載の気体測定用装置。
【請求項5】
第3容器を、第1出口の下流側に、複数備えた請求項1〜4のいずれか1項に記載の気体測定用装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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