説明

気体状物質を検出する電気機器

【課題】 簡単に準備可能であり、様々な用途に適用可能なセンサを提供すること。
【解決手段】 半導体材料の層、有機材料の層及び金属材料の層を備える多層構造をなすとともに気体状物質を検出する電気機器であって、前記半導体材料の層が、結晶構造を備え、前記有機材料(2)の層が、1を超えない被覆度を備えるとともに、目的の形態で自立した分子構造を有する物質からなるとともに、前記有機材料の層を構成する分子が前記半導体材料の層を構成する結晶構造の原子と結合するとともに前記検出される気体状物質と相互作用をすることにより前記多層構造内の結合の障壁高さを調整し、前記金属材料(3)の層が、検出される気体状物質を透過可能であるとともに該気体状物質に対して化学的に不活性であることを特徴とする電気機器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体状物質を検出する電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
気体用の化学センサは、気体分子及び誘電体表面間の相互作用の結果生ずる電気反応を改良することに基づくものとして知られている。
これら既知の機器は、主に、銅酸化物、亜鉛酸化物或いはスズ酸化物といった遷移金属酸化物を用いるものである。酸化物の電子密度は、気体の表面吸収によって変動する。これにより、計測可能な電気抵抗率の変動が得られる。この現象は、比較的低い操作温度環境で急速に生ずる。
【0003】
しかしながら、これら既知の電気抵抗率を計測するセンサの感度は、質的或いは量的の両方の面から混合ガス間の差異を見出す能力の面から、十分に高いものといえず、また、センサの感度を予め予測することは困難である。
【0004】
結果として、これらの既知の電気抵抗率センサは、単純な構成の混合ガスや部分的に既知の構成を有する混合ガスをモニタするために用いられるものである。例えば、このような使用形態として、工場から排出される混合ガスをモニタするような場合が挙げられる。しかしながら、複雑な構成を有する大気を監視するシステムにこれら既知の電気抵抗率センサが用いられたとしても、十分な確実性・正確性を保証するものとはなりえず、同様に、有機ガスを解析する際にも十分な確実性・正確性を保証するものとはなりえない。
【0005】
有機材料或いは有機金属材料を用いることに基づく電気抵抗率センサは既知のものである。
例えば、フタロシアニン、ポルフィリン及び他の有機金属は、感受層の形成に用いられる。感受層は、単一の分子或いはポリマ層いずれかからなるものであり、適切な基材上に薄いフィルムとして配される。多様なセルフアセンブリ法を用いた分子の自己組織化によって、目的の有機基材を形成する方法も既知のものである。このような有機基材には、ラングミュア・フィルム(Langmuir Film)から金或いは他の金属上でセルフアセンブリ法により形成されたチオールなどがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
有機金属材料を利用した電気抵抗率センサは、好適な選択感度特性を提供するものであるが、安定性、装置自身の応答の再現性及び装置の準備に関連した新たな問題を生じさせる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は以下に詳述される。本発明の電気機器は以下の構成を備える。
本発明は、半導体材料の層、有機材料の層及び金属材料の層を備える多層構造をなすとともに気体状物質を検出する電気機器であって、前記半導体材料の層が、結晶構造を備え、前記有機材料(2)の層が、1を超えない被覆度を備えるとともに、所定形態で自立した分子構造を有する物質からなるとともに、前記有機材料の層を構成する分子が前記半導体材料の層を構成する結晶構造の原子と結合するとともに前記検出される気体状物質と相互作用をすることにより前記多層構造内の結合の障壁高さを調整し、前記金属材料(3)の層が、検出される気体状物質を透過可能であるとともに該気体状物質に対して化学的に不活性であることを特徴とする電気機器である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の目的は、選択感度、安定性並びにセンサ操作時の再現性に関連する既存の機器の問題を解消することである。本発明は、簡単に準備可能であり、様々な用途に適用可能なセンサを提供することを目的とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態並びに電気機器の準備のいくつかの例について、図面を参照しつつ説明する。尚、以下の実施形態で示される説明は、本発明を何ら限定するものではない。
【0010】
図1を参照すると、本発明は、気体状物質の選択的検出のための多層構造を備える電気機器として定義される。この多層構造は支持層を備え、この支持層は半導体材料(1)からなる。半導体材料(1)は単結晶シリコンのような結晶構造、或いは半導体又は複合半導体の合金からなる。このような合金としては、SiC、Si3N4、又はSixGe1-x合金、或いは元素周期表の第III族及びV族の2種或いは多種化合物又は元素(例えば、GaAs、InSb、InP、AlxGa1-xAs)を例示できる。
【0011】
この支持層上に、自立的物質の分子からなる有機材料(2)の層が形成される。有機材料(2)の層は、半導体層表面上に形成され、1若しくはそれ以上の直接的結合により半導体の結晶構造を構成する表面原子に結合されている。好ましくは、有機材料(2)の層は1原子層以下の層(submonolayer)である。すなわち、有機材料(2)の層は、半導体支持表面を部分的にのみ覆う。例えば、この種の層を作り出すのに好適であるのは、立体的自由度を有さない有機分子である。このような分子は、例えば芳香族環、芳香族複素環(heteroaromatic ring)、或いは多環芳香族環(polyaromatic ring)、若しくは不飽和炭化水素鎖(共役不飽和炭化水素鎖であってもよい)を備える。
【0012】
このような分子は検出される気体状物質と相互作用する。すなわち、この気体状物質の存在が、検出機器の1原子層以下の金属−有機層半導体の接続部の障壁高さを変更する。このことは、機器の動作原理の説明において明らかにされる。
【0013】
自立的有機層を用いると、電界効果デバイス内で分極効果を生み出すことも可能である。このようなデバイスとしては例えば、MISダイオード、MISFET、MOSFET、JFET構造、或いはChemFET及びGASFETデバイスにおいて用いられるのと同様の幾何学的配置が挙げられる。
【0014】
有機材料(2)の単分子膜表面上に、検出される気体状物質に対して透過性を有する金属材料(3)及びこの気体状物質に対して不活性である物質が蒸着される。金属材料(3)からなる層として例えば、金或いはその他の金属の合金又は金属的性質を有する化合物の多孔質層を使用する。
【0015】
本発明の機器は、絶縁性の既知の金属と半導体の接合構造(metal and semiconductor junction、MIS)と幾何学的に同様の構造を備える。本発明の動作を支配する物理的原理は、全く異なるものである。この点において、金属電極(3)と半導体(1)の間に配される有機分子からなる1原子層以下の層(2)は、検出される気体状物質の吸着量に基づいて、接合の障壁高さを動的に変更する。μを1原子層以下の層の構成有機分子断片の電気双極子モーメント、μをこのモーメントの半導体表面に対して直角の成分とすると、障壁高さφは自立的有機層の存在により変更されるとともに、Nμに比例する量Δφにより変更される。ただし、Nは表面のユニット1つあたりに結合される分子断片の数とする。気体存在下では、高感度層が気体状分子と分子間相互作用を確立することが可能である場合(少なくともKTの単位のエネルギーにより特徴付けられる。ただし、Kはボルツマン定数、Tは機器が動作している絶対温度とする。)で、且つ気体状分子と表面に結合された有機断片により形成される複合体の構造が、少なくともKTの単位の相互交換障壁により分離される場合、障壁高さφはχN(μに等しい量Δφにより一様に変更される。ただし、(μは、分子断片上にロックされた気体状分子の双極子モーメントを構成する半導体表面に対して直角である成分、χはガス状分子をロックする断片(fraction)の率とする。χが計測環境内にある気体の分圧の関数であることを示すことも簡単である。
【0016】
上記の動作原理の説明により、機器の動作中、半導体表面において分子の構成成分が整然と配置されていることが非常に重要であることが示されている。高感度層が構造的に無秩序であると、平均値(μの低下を招く。これにより、機器の感度が劇的に低下する、或いは機器が有するべき感度を全く喪失する。
【0017】
本発明の機器は、既知のバイオセンサに使用される原理とは全く異なる原理にしたがって動作する。既知のバイオセンサとしては、ドイツ特許第10,201,653号及び「self-assembled monolayers as a tunable platform for biosensor applications」(N.K.Chaki、K.Vijaohanan著、Biosensors and Bioelectronics、17(1−2)(2002)1−12)の開示するものが挙げられる。また、本発明の機器は、国際公開第WO9937409号公報及び米国特許第US6677163号公報に開示される半導体表面改質工程とは大きく異なる工程により生産される。
【0018】
特に、通常金属或いは双極基板に対して用いられる有機分子の自己組織化過程には、有機分子間に強い分子間相互作用を生み出すことが必要である。炭化水素鎖により特徴付けられる分子の場合、この有機分子がほぼ均一な表面被覆度を有すると同時に、単分子膜のパッキングを阻害する官能基が炭化水素鎖に結合されていないときに限り、これら相互作用が十分な強度で起こる。これは、例えば炭化水素鎖の一端或いは両端以外の位置に官能基を備える分子を用いて、組織化された単分子膜を作り出すことは不可能であることを意味する。更に、単分子膜の強いパッキングが組織化された配置を維持するために必要であるが、このような強いパッキングは単分子膜を介するガス状分子の拡散を大幅に制限する。よって、検出される気体状物質の濃度或いは性質の変化への機器の反応を抑制したり、或いは大幅に遅延させる。
【0019】
更に、基板と化学的に結合可能な末端基を用いて有機層の組織化が促進される場合には、このように改良された表面の時間安定性、すなわち機器の時間安定性は、集合された分子の分離を引き起こすことが可能な化学物質の存在する場合、大幅に低下することがある。例えばシラノール基により作り出される基板との化学結合が存在する場合について、時間安定性の問題は、既知である。シラノール基は、酸化珪素或いはシリコン酸化表面と複数のSi−O−Si結合を形成可能である。水、酸、アルコールなどの化学物質が存在すると、これらの架橋結合は加水分解される。このような加水分解は、分子の部分的分離を招くから、結果的に機器の時間安定性が低下する。
【0020】
本発明の機器を形成するために用いられる単分子膜の製造における別の問題は、有機層を被覆する電極を構成する金属層を蒸着する必要があることである。このような必要性は、ガス状分子を拡散させるとともに高感度有機層と相互作用させる必要性と対立するだけでなく、有機分子自体の熱耐久性が低いこととも対立する。この有機分子は、電極を蒸着するために必要な蒸発或いは陰極スパッタ工程において、深刻な熱劣化を受けることがある。極端な場合には有機層が完全に炭化する。
【0021】
本発明の機器を製造するために、既知の有機分子の自己組織化工程、すなわち半導体表面の表面改質及び金属層の蒸着を用いることの問題点は、本発明に係る特定の種類の有機分子を用いて、有機層(2)を構築し、陰極スパッタにより最終的な金属層(3)が蒸着される条件を制御することにより解決される。
【0022】
本発明の機器内の高感度有機層(2)を構築する有機分子は、有機分子間に強い分子間相互作用が存在しない場合でも組織化された有機層が得られるように選択される。以下、このような能力を有する分子を「自立的」分子と称する。自立的分子は、芳香族環、芳香族複素環(或いは多環芳香族環、若しくは不飽和炭化水素鎖(共役不飽和炭化水素鎖であってもよい)を備え、立体的自由度を有さず、結晶基板の組織化された表面に結合されたとき、自立的に集合して唯一可能な構造をとる。このようにして自立的分子は、基板自体に特徴的な組織化された配置を有機層内で複製する。したがってこの配置は、有機層の分子の稠密なパッキングにより生じるのではなく、分子構造の構成有機分子が有する自立能力により生じる。よって、結果得られる有機層は、被覆度がほぼ1以下である場合にも比較的かさ高いものとなる。これにより、検出されるガス状分子が有機層を介して効果的に拡散することが可能になる。結果として、機器の反応時間が大幅に低減される。
【0023】
有機層(2)と半導体基板(1)の構成分子間の化学結合の性質は、有機層すなわち機器の熱安定性及び化学的安定性を決定する。本発明の機器を形成するために選択された分子の属は、非常に安定したSi−C結合を備える基板を作り出す。Si−C結合は低極性であるから、加水分解物質が存在する場合にも安定している。
【0024】
最後に、自立的有機層上に蒸着される電極(3)は、化学的に無反応性の金属(例えば金)を陰極スパッタすることによる金属フィルム蒸着を用いて製造される。スパッタリングは低い蒸着速度で行われる。これは、下層の有機層を損傷することを防ぐためである。スパッタリングと同時に、多孔質金属フィルムが作り出され、この多孔質金属フィルムは、モニタされる気体状物質が自立的有機層(2)に向かって拡散することを可能にする。
【0025】
(本発明の機器の具体的用途)
用途の一例として、芳香族ニトロ誘導体或いは芳香族複素環ニトロ誘導体に基づく或いはこれを備える民事及び/又は軍事用途の爆発物を検出するための本発明のセンサの製造が挙げられる。芳香族ニトロ誘導体或いは芳香族複素環ニトロ誘導体として、TNT(2,4,6−トリニトロトルエン、2,4,6−trinitrotoluene)、テトリル(2,4,6−トリニトロフェニルメチルニトロアミン、tetryl、trinitro−2,4,6−phenylmethylnitroamine)、テトラニトロジベンゾ−1,3a,4,6a−テトラアザペンタレン(tacot、tetranitrodibenzo−1,3a,4,6a−tetraazapentalene)、或いは2,4,6−トリアジド[1,3,5]トリアジン(2,4,6−triazido[1,3,5]triazine)が例示できる。この用途に対しては、自立的有機層は、以下の化学式1の一般式で示される少なくとも1つの芳香族物質から開始して半導体表面を改質することにより得られる。
【0026】
【化1】

【0027】
ここで、X及びYは遊離要素或いは−NR1R2基である。R1及びR2は同一のものであっても別異のものであってもよく、水素及びC1−C5アルキルラジカルからなる群から独立して選択されるものである。
例えばこの種の分子には、3,5−ジヨードフェニルエチン(3,5−diiodophenylethyne)、3,5−(N,N−ジメチルアミノ)フェニルエチン(3,5−(N,N−dimethylamino)phenylethyne)、3,5−ジアミノフェニルエチン(3,5−diaminophenylethyne)、3−ヨード−5−アミノフェニルエチン(3−iodo−5−aminophenylethyne)などがある。
【0028】
この用途に対して、以下の化学式2の一般式で示される少なくとも1つの置換された2,4フェニルエチンから開始して半導体表面を改質することにより、気体状有機層が選択的に得られる。
【0029】
【化2】

【0030】
ここで、X及びYは遊離要素或いは−NR1R2基である。R1及びR2は同一のものであっても別異のものであってもよく、水素及びC1−C5アルキルラジカルからなる群から独立して選択されるものである。
【0031】
第I及びII群の分子は、互いにメタ位に位置する電子誘引(electron−attractor)官能基の存在により特徴付けられる。第I群の分子については、電子誘引官能基はアセチレン残基に対してもメタ位に位置する。これらの基の存在により、検出されるニトロ誘導体の芳香族環と半導体に結合されるアリル断片の芳香族環の間に、アクセプタ・ドナー(acceptor−donor)型の相互作用を生じ、超分子複合体を作り出すことが可能になる。超分子複合体は、検出機器金属/有機層/半導体接合の障壁高さを変更可能である。アセチレン残基は、アリル環がシリコン表面に直接結合されるのではなく、以下の式で示されるトランス形のエテニル断片によりシリコン表面から適切な間隔を保って結合されることを可能にする。
【0032】
【化3】

【0033】
トランス形のエテニル断片は、アレーンとシリコン表面の間の立体相互作用を低減するとともに、半導体表面上のアリルエテニル(aryl−ethenyl)断片の構造的頑健性を維持するという2つの役割を果たす。
【0034】
結合された断片の芳香族としての特性は、極性分子の半導体表面への拡散を阻害する。これにより、多湿環境において水蒸気により機器が不活性化することが防止される。
【0035】
また、芳香族環は更に、前駆物質中のアセチレン基に対してオルソ、メタ、或いはパラ位に置換される。適切な置換基として、例えば3−ヨード−メチル−5−(N−メチル−N−エチルアミノ)フェニルエチン或いは1−メトキシ−3−ヨード−5−(N−メチル−N−エチルアミノ)フェニルエチンなどの分子におけるメチル、カルボキシル、或いはメトキシ基が例示できる。
【0036】
シリコンに結合されるとともに自立的有機層を構成するアリルエテニル断片は更に元の位置で官能基化される。
【0037】
上記した爆発物を検出する目的で使用可能なセンサを得るための半導体表面改質は、その他の芳香族或いは多環芳香族分子を用いても行うことができる。その他の芳香族或いは多環芳香族分子とは、ヨウ素及び−NR1R2基から独立して選択される置換基を備える分子である。ただし、R1及びR2は水素及びアルキルラジカルからなる群からそれぞれ選択される。この置換基は、互いにメタ位に位置づけされるとともに、一般的な不飽和脂肪族残基に対してメタ位に位置づけされる。この一般的な不飽和脂肪族残基は半導体表面上の分子の自立性を維持する。
【0038】
本発明の機器の別の用途は、民間及び家庭環境において燃料ガスを検知するための安全センサの分野での用途である。この場合、この機器の有機層は、法的な定めにより燃料ガスに含有される付臭ガス(チオ誘導体(thioderivative))を検知するのに適した有機分子から形成される。燃料ガスとしては例えば、メタンガス、天然ガス、或いは「都市ガス」が挙げられる。好ましくは上記の前駆体分子は、以下の一般的構造式の類に関連する分子から選択される。
【0039】
【化4】

【0040】
【化5】

【0041】
【化6】

【0042】
ここで、X及びYは遊離ヨウ素或いはSR基である。Rは水素及びC1−C3アルキルラジカルからなる群から選択されるものである。
【0043】
半導体材料は、単結晶シリコン或いは合金からなる半導体、或いは化合物半導体からなる。
【0044】
金属材料層は、金、金属合金、金属的性質を有する化合物の多孔質層からなる。
【0045】
この用途においては、好ましくはセンサ(4)(図3参照)は第2センサ(5)と結合される。第2センサ(5)は上記の還元ガスの不特定な検出のために用いられる。
【0046】
第2センサ(5)は、抵抗率センサ、半導体、電子化学センサ、表面音波センサのいずれであってもよい。2つのセンサ(4)及び(5)は信号を提供し、この信号は論理比較器(6)を介して処理される。このように2つのセンサを用いる形態は、センサ・マトリックスを制御するために通常産業的に利用されるロジック・ニューロン・ネットワークに基づく複雑な制御システムと比べて優れた経済性を有する。これにより、民間及び家庭のユーザ市場においても、2つのセンサを用いる形態を利用されやすくなる。有効な2つのセンサを用いるシステムが製造されるか否かは、主に本発明の付臭ガス検出センサの特定の選択性及び感度により決まる。このセンサの応答と従来のセンサの応答を組み合わせて用いると、2つのセンサの応答を比較するだけで、両方のセンサが警報状態にある場合に限り、警報状態が作動される。警報状態の作動は、空気中に有機チオ誘導体及び可燃性ガスが同時に存在する場合にのみ起こる。これにより、誤った否定応答状態(すなわち、付臭ガスのための従来のセンサにおいて、感度の低さが原因で必要時に警報状態が起こらないこと。付臭ガスの濃度は通常10億分の1である。)及び誤った肯定応答状態(既知のガス・センサが付臭ガスを選択的に検知できないことにより起こる誤った警報)が大幅に低減される。
【0047】
上記の2つのセンサを用いるシステムは、モニタされるガス状排出物の組成物中に少なくとも1種の別の特徴的な気体状物質とともに含まれる気体状物質の検出のために使用可能である。この意味において、例えば、食品中の香気、或いは爆発物の検出にもこのシステムを使用できる。爆発物の検出には、上記の爆発物のためのセンサと、爆発性調合物に添加される産業的微量化合物のためのセンサを組み合わせて用いる。
【0048】
例えばガスクロマトグラフィの分野において、複合的ガス状排出物或いは混合物中の化合物を同定及び検出するなどのその他の用途も可能であることが予測できる。
【0049】
(実施例)
以下、本発明及び特に本発明のいくつかの用途をよりよく理解するための例を示す。
【0050】
(実施例1)
部分的に2,4−ジアミノフェニルエチン(2,4−diamino−phenylethyne)で被覆することにより単結晶基板表面が改質される。2,4−ジアミノフェニルエチンは基板表面にヒドロシリル化反応により化学的に結合される。ヒドロシリル化反応は、Si−C共有結合の形態を有する遷移金属の有機金属錯体を触媒として行われる。Si−C共有結合は、アリルエテニル断片を基板表面に安定的に結合させる。このような反応は以下の手順にしたがって行われる。
【0051】
p Si型表面(8乃至10Ω×cmの抵抗率)を有する表面(100)から開始する。ウェハをパイレックスガラス(登録商標)から形成されるビーカ内のトリクロロエチレン中で、約80℃で10分間洗浄する。次に、パイレックスガラス(登録商標)から形成されるビーカ内のアセトン中で、約50℃で10分間洗浄する。その後、パイレックスガラス(登録商標)から形成されるビーカ内の2回蒸留水中で室温にて攪拌しながらすすぎ洗いする。続いてこの試料は、以下の工程を経る。
(1)パイレックスガラス(登録商標)から形成されるビーカ内のAPM混合液(NH3(32vol%):H2O2(30vol%):2回蒸留水=1:1:5(体積比))中で、約80℃で10分間エッチングする。その後、パイレックスガラス(登録商標)から形成されるビーカ内の冷却された2回蒸留水中で2分間攪拌下に洗浄する。
(2)テフロン(登録商標)からなるビーカ内のHF希釈溶液(HF(50vol%):HO=1:50(体積比)の溶液)中で、室温にて30秒間攪拌下にエッチングする。その後、パイレックスガラス(登録商標)から形成されるビーカ内の2回蒸留水中で、室温にて2分間攪拌下に洗浄する。
(3)パイレックスガラス(登録商標)から形成されるビーカ内のHPM混合液(HCl(37%):H2O2(30%):H2O=1:1:5(体積比))中で、10分間、約80℃でエッチングする。その後、パイレックスガラス(登録商標)から形成されるビーカ内の2回蒸留水中で、2分間、室温にて攪拌下に洗浄する。
(4)HF希釈溶液(HF(50vol%):H2O=1:50(体積比))中で、室温にて30秒間攪拌下に処理する。その後テフロン(登録商標)からなるビーカ内で2回蒸留水によりすすぎ洗いし、空気中或いは窒素雰囲気下で乾燥させる。
【0052】
このようにして準備された表面は自己組織化反応を受ける。
【0053】
110℃のオーブン内で予め一晩乾燥された反応器内に、試料が配される。窒素フロー下で反応器を調整した後、ヒートガンを用いて加熱を行う。同時に、スクラバー内で50mLの無水塩化メチレンが約30分間脱酸素化される。100mgのRu(CO)HCl(PPh触媒及び210mgの2,4−ジアミノフェニルエチレン前駆体が反応器に加えられる。この手順は、空気の侵入を防ぐために出来る限り素早く行われる。反応器を閉めた後、21mL(試料を被覆するのに必要な量)の塩化メチレンが加えられる。内容物は22時間攪拌下に反応させられる。その後、シリンジを用いて溶液が排出され、試料が無水脱ガスジクロロメタン(CH2Cl2)を用いて乾燥される。この間、反応器を窒素雰囲気下及び攪拌下に保つ。この時点で試料が取り出され、順に塩化メチレン中、水中、再び塩化メチレン中で、5分間、室温にて音波処理される。
【0054】
最後に、金からなる多孔性金属層を蒸着することにより1原子層以下の層が被覆される。この多孔質金属層は検出されるガスに対して透過性の電極として機能する。この電極は金の陰極スパッタにより形成される。このスパッタリングにおいて、圧力4×10−2torrのアルゴン(Ar)を用いて、1kVの蒸着電圧で8分間、金が蒸着される。これにより厚さ80nmのフィルムが得られる。
【0055】
この例のセンサは芳香族ニトロ誘導体を検出するのに適している。図4はこのセンサの2,4−ジニトロトルエン(2,4−dinitrotoluene)に対する抵抗率応答を示す。
【0056】
(実施例2)
単結晶基材の表面は、ベンジル1-エチニル-3,5-(N,N-ジメチルアミノ)-安息香酸エチル(benzyl 1-ethynyl-3,5-(N,N-dimethylamino)-benzoate)で単結晶基材表面の一部を覆うことで改良される。ベンジル1-エチニル-3,5-(N,N-ジメチルアミノ)-安息香酸エチルは、化学的に基材表面と結合する。この結合は、Si-C共有結合の形成を伴う遷移金属の有機金属錯体によって反応促進されたヒドロシリル化反応によって行われる。Si-C共有結合は、アリルエテニルの断片を下記手順に従って安定的に結合させる。
【0057】
まずポリシリコン(type p Si)の表面(抵抗率8−10Ωcm)から開始する。ウェハはトリクロロエチレンで10分間洗浄される。洗浄温度は約80℃であり、洗浄作業はパイレックスガラス(登録商標)で形成されたビーカ内で行われる。その後、約50℃の洗浄温度で、ウェハはアセトンを用いてパイレックスガラス(登録商標)で形成されたビーカ内で洗浄される。そして、室温で、パイレックスガラス(登録商標)内の2回蒸留水でウェハはゆすがれる。
(1)このようにして得られたサンプルは、アンモニア過水混合液(APM混合液)(NH3 (32 vol%) : H2O2 (30 vol %) : 2回蒸留水 体積比は1:1:5)内で10分間エッチングされる。エッチングはパイレックスガラス(登録商標)で形成されたビーカ内で行われ、エッチング温度は約80℃である。その後、2分間、パイレックスガラス(登録商標)で形成されたビーカ内の冷却された2回蒸留水内で撹拌しながら、洗浄が行われる。
(2)HF希釈溶液(HF(50 vol%) : H2O=1:50(体積比))で、30秒間、室温で、テフロン(登録商標)で形成されたビーカ内で撹拌しながらエッチングを行う。その後、パイレックスガラス(登録商標)で形成されたビーカ内の2回蒸留水内において室温下で撹拌しながら2分間洗浄を行う。
(3)HPM混合液(HCl (37%) : H2O2 (30%) : H2O = 1:1:5(体積比))で10分間エッチングを行う。エッチングはパイレックスガラス(登録商標)で形成されたビーカ内で80℃の温度で行われる。その後、室温で、パイレックスガラス(登録商標)で形成されたビーカ内の2回蒸留水で撹拌しながら2分間の洗浄が行われる。
(4)HF希釈溶液(HF(50 vol%) : H2O=1:50(体積比))で、30秒間、室温で撹拌しながら処理(Treatment)を行う。その後、テフロン(登録商標)で形成されたビーカ内の2回蒸留水内において室温下で撹拌しながら2分間サンプルがゆすがれる。そして、空気乾燥される。或いは窒素を流しながら乾燥される。
【0058】
上述の如くして準備された表面は、自己組織化反応に曝される。
サンプルは反応装置に載置される。反応装置は一晩110℃の温度に保たれたオーブン内に載置され、予め乾燥状態にされる。反応装置を窒素雰囲気下においた後、ヒートガンで更に加熱する。同時に、50mLの無水塩化メチレンが30分間ガス洗浄装置内で脱酸化される。94mgの触媒Ru(CO)HCl(PPh3)3が、300mgのベンジル1-エチニル-3,5-(N,N-ジメチルアミノ)-安息香酸エチル(benzyl 1-ethynyl-3,5-(N,N-dimethylamino)-benzoate)前駆体とともに、空気の侵入を防ぐように可能な限り素早く反応装置に投入される。反応装置を閉塞した後、20mLの塩化メチレン(サンプルを覆うのに必要な量である)が追加され、反応装置に投入された内容物は、約22時間撹拌下に置かれ、反応が促される。この撹拌状態に置かれた期間の後、シリンジを用いて、溶液が抽出される。そして、サンプルが、ガス抜きされた無水CH2Cl2で乾燥される。この間、反応装置は窒素雰囲気下におかれ、撹拌が維持される。
そして、サンプルが取り出され、超音波処理がなされる。超音波処理は、まず塩化メチレン内で行われ、次に水中で行われる。そして、再度、超音波処理が、塩化メチレン内で行われる(室温で5分間程度)。
【0059】
上述の如くして得られたサンプルは、乾燥反応装置内に載置される。そして、乾燥反応装置内部に窒素が流される。この状態で、サンプルは、トリフルオロ酢酸とCH2CH2の1:1溶液で覆われる。そして、この状態で24時間反応が促される。
その後、この反応に用いられた溶液は取り除かれ、サンプルが塩化メチレンで洗浄される。最後に、サンプルが、10分間CH2CH2内で超音波処理され、その後10分間水中で超音波処理される。
【0060】
最後に、金からなる多孔質金属層が載置されることにより、サンプルの層が被覆される。この金からなる多孔質金属層は電極の役割を担い、検出されるガスを通過可能とする。電極は金の陰極スパッタにより形成される。この形成は、金属を、1kVの蒸着電圧、圧力4×10−2のAr雰囲気下に8分間置くことで行われ、約80nmの厚さのフィルム状物を得ることとなる。
【0061】
(実施例3)
1,2-(メチレンジオキシ)ベンゼン(1,2-(methylenedioxy)benzene)で単結晶基材表面の一部が被覆されることで、単結晶基材の表面の改良がなされる。1,2-(メチレンジオキシ)ベンゼンは、基材表面に化学的に結合する。この結合は、Si-C共有結合の形態を有する有機金属複合材を用いた求核置換により行われる。有機金属複合体は、アリル断片を基材表面に結合させる。この結合は、以下の手順にしたがって行われる。
【0062】
まずポリシリコン(type p Si)の表面(抵抗率8−10Ωcm)から開始する。ウェハはトリクロロエチレンで10分間洗浄される。洗浄温度は約80℃であり、洗浄作業はパイレックスガラス(登録商標)で形成されたビーカ内で行われる。その後、約50℃の洗浄温度で、ウェハはアセトンを用いてパイレックスガラス(登録商標)で形成されたビーカ内で洗浄される。そして、室温で、撹拌されながら、パイレックスガラス(登録商標)内の2回蒸留水でウェハはゆすがれる。
(1)このようにして得られたサンプルは、アンモニア過水混合液(APM混合液)(NH3 (32 vol%) : H2O2 (30 vol %) : 2回蒸留水 体積比は1:1:5)内で10分間エッチングされる。エッチングはパイレックスガラス(登録商標)で形成されたビーカ内で行われ、エッチング温度は約80℃である。その後、パイレックスガラス(登録商標)で形成されたビーカ内の冷却された2回蒸留水内で撹拌しながら、2分間洗浄が行われる。
(2)冷却されるとともにHF希釈溶液(HF(50 vol%) : H2O=1:50(体積比))で、30秒間、室温で、テフロン(登録商標)で形成されたビーカ内で撹拌しながらエッチングを行う。その後、パイレックスガラス(登録商標)で形成されたビーカ内の2回蒸留水内において室温下で撹拌しながら2分間洗浄を行う。
(3)HPM混合液(HCl (37%) : H2O2 (30%) : H2O = 1:1:5(体積比))で10分間エッチングを行う。エッチングはパイレックスガラス(登録商標)で形成されたビーカ内で80℃の温度で行われる。その後、室温で、パイレックスガラス(登録商標)で形成されたビーカ内の2回蒸留水で撹拌しながら2分間の洗浄が行われる。
(4)HF希釈溶液(HF(50 vol%) : H2O=1:50(体積比))で、30秒間、室温で撹拌しながら処理(Treatment)を行う。その後、テフロン(登録商標)で形成されたビーカ内の2回蒸留水内において室温下で撹拌しながら2分間サンプルがゆすがれる。そして、空気乾燥される。或いは窒素を流しながら乾燥される。
【0063】
上述の如くして準備された表面は、自己組織化反応に曝される。
有機金属反応物を準備するために、2つの首部を有するフラスコが一晩110℃の温度に保たれたオーブン内に載置され、乾燥される。反応装置を窒素雰囲気下においた後、ヒートガンで更に加熱する。
そして、73mgのマグネシウム(チップ状或いは粒状)がフラスコ内に投入される。フラスコの主要首部は、ゴム製のプラグで閉塞される。再度、ヒートガンで15分間の加熱が行われる。
ヨウ素結晶並びに4mgの無水THFがシリンジを用いて追加される。フラスコ内の内容物が磁気撹拌下で還流される。
フラスコに投入されたマグネシウムと等しいモル数の4-ブロモ-1,2-(メチレンジオキシ)ベンゼン(4-bromo-1,2-(methylenedioxy)benzene)がゆっくりと追加される。そして、反応が窒素雰囲気下で2時間行われる。或いは、マグネシウムが完全になくなるまで行われる。そして、溶液がグリニャール試薬の典型的な琥珀色をなすようになる。
【0064】
塩化メチレン(無水或いはNa2SO4を用いて1時間、回転式ゴム製バッフルで閉塞されたフラスコ内で乾燥されたものいずれかの塩化メチレン)がN2を用いてガス洗浄装置内で1時間ガス抜きされる。
20mgのCH2Cl2がサンプルとともにシリンジにより反応装置内に供給される(反応装置は、110℃の温度で一晩予め乾燥されている)。50μLのBr2(純度99%)がシリンジを用いて追加される。そして、反応装置内の内容物が、撹拌下で、300Wのタングステン・フィラメント・ランプを用いて10分間照射される。
その後、シリンジを用いて、臭素処理された混合液を抽出する。窒素雰囲気下にある反応装置内に残るサンプルは、その後、脱酸素処理を施された無水CH2Cl2で洗浄される。
略乾燥状態にされた反応装置(洗浄のために用いられた塩化メチレンを完全に蒸発させた後)を用いて、予め用意されたグリニャール試薬が自己組織化に用いられる。
【0065】
窒素雰囲気下におかれた上記の2つの首部を有するフラスコに残る予め用意されたグリニャール試薬がシリンジを用いて抽出される。そして、このグリニャール試薬が反応装置に投入される。この反応装置は、光臭素化により活性化されたサンプルを含んでいる。
無水THF(シリンジにより追加されたもの)が追加され、サンプルを溶液で完全に覆うようにする。サンプルは撹拌されながら、40℃の窒素雰囲気下で約20時間反応を促される。
この反応の期間の後、溶液がシリンジにより抜き取られる。そして、サンプルはTHFでゆすがれる。サンプルをゆすいでいる間、反応装置は窒素雰囲気状態に保たれ、磁気撹拌されている。
この時点で、サンプルが取り出される。そして、取り出されたサンプルは、まず塩化メチレン内で超音波処理を受ける。そして、水中で超音波処理を受けた後、再度、塩化メチレン内で超音波処理される(5分間、室温)。
【0066】
電極は金の陰極スパッタにより形成される。この形成は、金属を、1kVの蒸着電圧、圧力4×10−2のAr雰囲気下に8分間置くことで行われ、約80nmの厚さのフィルム状物を得ることとなる。
【0067】
上記実施例のサンプルは、還元ガス(メタン、天然ガス或いは都市ガス)の検知に用いられる非選択式の一般的なセンサに結合して好適に用いられる。例えば、一般的なセンサとして、従来型の抵抗率センサ(例えば、MIS)或いは他の電気化学的若しくは音波センサなどが挙げられる。2つのセンサは図4に示すような状態の信号をもたらし、論理比較器により処理される。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、気体成分を検出するセンサに好適に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の電気機器を形成する多層構造の縦断面図である。
【図2】シリコン表面の電気抵抗率応答を示す図である。シリコン表面は、ジアミノ−フェニレンで改質され、図中、「黒丸矢印」で示される部分で、24ppmVの2,4-ジニトロトルエンの導入並びに図中「x−>」で示される部分で24ppmVの2,4-ジニトロトルエンの除去が行われている。
【図3】少なくとも1つの本発明に係る装置と論理比較器からなる二種センサ構造を示す図である。
【図4】図中(a)は、シリコン表面の応答を示す。シリコン表面は、1,2-(メチレンジオキシ)ベンゼンで改質されている。図中(b)は、メタン用の市販のセンサの応答を示す。図中(c)は、二種センサ論理比較器の応答を示す。図中「黒丸矢印」で示される部分で、1vol%のエチレンアルコールが導入され、図中「x−>」で示される部分で、1vol%のエチレンアルコールが除去される。また、図中「黒四角矢印」で示される部分で、0.1vol%の臭い付けされたメタンガスが導入され、図中「x−>」で示される部分で、1vol%の臭い付けされたメタンガスが除去される。
【符号の説明】
【0070】
1・・・・・半導体材料
2・・・・・有機材料
3・・・・・金属材料
4・・・・・センサ
5・・・・・センサ
6・・・・・論理比較器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体材料の層、有機材料の層及び金属材料の層を備える多層構造をなすとともに気体状物質を検出する電気機器であって、
前記半導体材料の層が、結晶構造を備え、
前記有機材料(2)の層が、1を超えない被覆度を備えるとともに、目的の形態で自立した分子構造を有する物質からなるとともに、前記有機材料の層を構成する分子が前記半導体材料の層を構成する結晶構造の原子と結合するとともに前記検出される気体状物質と相互作用をすることにより前記多層構造内の結合の障壁高さを調整し、
前記金属材料(3)の層が、検出される気体状物質を透過可能であるとともに該気体状物質に対して化学的に不活性であることを特徴とする電気機器。
【請求項2】
前記電気機器が芳香族ニトロ誘導体を検出し、
前記多層構造の前記有機材料の層が少なくとも1つの置換されたフェニレジンから生成されてなることを特徴とする請求項1記載の電気機器。
【請求項3】
前記有機材料の層が、以下の化学式1の一般式で示される少なくとも1つの置換された3,5-フェニレジンから生成されてなることを特徴とする請求項2記載の電気機器。
【化1】


ここで、X及びYは遊離ヨウ素或いは-NR1R2基である。R1及びR2は同一のものであっても別異のものであってもよく、水素及びC1-C5アルキルラジカルからなる群から独立して選択されるものである。また、芳香環は更に、アセチレン基に対してオルト位或いはパラ位に置換されてもよい。
【請求項4】
前記半導体材料の層が単結晶シリコンからなることを特徴とする請求項2又は3記載の電気機器。
【請求項5】
前記金属材料の層が、多孔質の金からなることを特徴とする請求項3又は4記載の電気機器。
【請求項6】
前記有機材料の層が、以下の化学式2の一般式で示される少なくとも1つの置換された2,4-フェニレジンから生成されてなることを特徴とする請求項2記載の電気機器。
【化2】


ここで、X及びYは遊離ヨウ素或いは-NR1R2基である。R1及びR2は同一のものであっても別異のものであってもよく、水素及びC1-C5アルキルラジカルからなる群から独立して選択されるものである。また、芳香環は更に、アセチレン基に対してオルト位、メタ位或いはパラ位に置換されてもよい。
【請求項7】
前記半導体材料の層が、Si、SiC、Si3N4或いはSixGe1-X合金或いは或いはGaAs、InSb、InP、AlxGa1-xAsといった周期表のIII及びVの族の二種化合物、多種化合物或いは元素からなることを特徴とする請求項2記載の電気機器。
【請求項8】
前記金属材料の層が、金、白金、パラジウム、これら金属からなる合金或いはこれら金属と他の金属からなる合金から構成されることを特徴とする請求項6又は7記載の電気機器。
【請求項9】
前記電気機器が燃焼混合ガス中の臭いを有する気体成分を検出し、
前記有機材料の層が、以下の化学式3の一般構造式の類に付随する少なくとも1つの前駆体分子から形成されることを特徴とする請求項1記載の電気機器。
【化3】


ここで、X及びYは遊離ヨウ素或いはSR基である。Rは、水素及びC1-C3アルキルラジカルからなる群から選択されるものである。
【請求項10】
前記電気機器が燃焼混合ガス中の臭いを有する気体成分を検出し、
前記有機材料の層が、以下の化学式4の一般構造式の類に付随する少なくとも1つの前駆体分子から形成されることを特徴とする請求項1記載の電気機器。
【化4】


ここで、X及びYは遊離ヨウ素或いはSR基である。Rは、水素及びC1-C3アルキルラジカルからなる群から選択されるものである。
【請求項11】
前記電気機器が燃焼混合ガス中の臭いを有する気体成分を検出し、
前記有機材料の層が、以下の化学式5の一般構造式の類に付随する少なくとも1つの前駆体分子から形成されることを特徴とする請求項1記載の電気機器。
【化5】


ここで、X及びYは遊離ヨウ素或いはSR基である。Rは、水素及びC1-C3アルキルラジカルからなる群から選択されるものである。
【請求項12】
前記電気機器が燃焼混合ガス中の臭いを有する気体成分を検出し、
前記半導体材料が単結晶シリコンからなることを特徴とする請求項1記載の電気機器。
【請求項13】
前記電気機器が燃焼混合ガス中の臭いを有する気体成分を検出し、
前記半導体材料が半導体合金からなることを特徴とする請求項1記載の電気機器。
【請求項14】
前記電気機器が燃焼混合ガス中の臭いを有する気体成分を検出し、
前記半導体材料がSixGe1-x種の合金からなることを特徴とする請求項1記載の電気機器。
【請求項15】
前記電気機器が燃焼混合ガス中の臭いを有する気体成分を検出し、
前記半導体材料が周期表のIII及びVの族の二種化合物、多種化合物或いは元素からなることを特徴とする請求項1記載の電気機器。
【請求項16】
前記電気機器が燃焼混合ガス中の臭いを有する気体成分を検出し、
前記半導体材料の層が、GaAs、InSb、InP或いはAlxGa1-xAsからなる群から選択される半導体材料であることを特徴とする請求項15記載の電気機器。
【請求項17】
前記電気機器が燃焼混合ガス中の臭いを有する気体成分を検出し、
前記金属材料が、金からなる多孔質層であることを特徴とする請求項1記載の電気機器。
【請求項18】
前記電気機器が燃焼混合ガス中の臭いを有する気体成分を検出し、
前記金属材料が、白金からなる多孔質層であることを特徴とする請求項1記載の電気機器。
【請求項19】
前記電気機器が燃焼混合ガス中の臭いを有する気体成分を検出し、
前記金属材料が、パラジウムからなる多孔質層であることを特徴とする請求項1記載の電気機器。
【請求項20】
前記電気機器が燃焼混合ガス中の臭いを有する気体成分を検出し、
前記金属材料が、金属特性を示す化合物からなる多孔質層からなることを特徴とする請求項1記載の電気機器。
【請求項21】
前記電気機器が燃焼混合ガス中の臭いを有する気体成分を検出し、
前記金属材料が、金、白金及びパラジウムからなる群のうち少なくとも1つの金属を含む合金からなる多孔質層からなることを特徴とする請求項1記載の電気機器。
【請求項22】
請求項9乃至21の電気機器を備えるとともに、還元ガスセンサに接続し、電子式論理比較器デバイスにより制御されることを特徴とする請求項1記載の電気機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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