説明

気体発生装置

【課題】十分に長期にわたって安定的に気体を生じさせることが可能な気体発生装置を提供すること。
【解決手段】本発明に係る気体発生装置は、第1の液体を収容する第1の容器と、第2の液体を収容する第2の容器と、第1の液体と接触する第1の吸液部、第2の液体と接触する第2の吸液部、及び、第1の液体と第2の液体の化学反応による気体を生じさせる蒸散部を有する吸液材とを備える。第1の吸液部及び第2の吸液部を通じて第1の液体及び第2の液体が蒸散部に染み出すようにして供給され、蒸散部において液−液反応が生じることで十分に安定的に且つ長期にわたって気体を発生させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は気体発生装置に関し、より詳しくは化学反応によって二酸化塩素や二酸化炭素などの気体を発生させる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の化学物質を混合することによって気体を発生させる装置が知られている。例えば、下記特許文献1,2に記載の装置は除菌や、消臭の作用を有する二酸化塩素ガスを発生させるためのものである。特許文献1に記載の装置はゲル状の安定化二酸化塩素と粒状クエン酸を接触させて二酸化塩素ガスを発生させ、他方、特許文献2に記載の装置は亜塩素酸ナトリウムの粉末と酸性液を接触させて二酸化塩素ガスを発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−256141号公報
【特許文献2】特開2009−234887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、除菌等の用途に用いられる二酸化塩素ガスの他にも、日常生活においては種々の目的のために気体が利用されている。例えば、二酸化炭素は蚊を吸引する作用を有し、蚊をおびき寄せて捕獲するのに利用されている。
【0005】
従来、液体同士を混合して液−液反応によって気体を発生させる場合、反応性が高いために気体の発生量をコントロールすることが困難であった。上記特許文献1,2に記載の発明にあっては、混合する化学物質をゲル状、粒状又は粉状としたことで、ある程度は気体の発生量のコントロールが可能となった。
【0006】
しかし、特許文献1に記載の装置は、二酸化塩素ガスを発生させるに際して振動を与えて粒状クエン酸をゲル状の安定化二酸化塩素の上面に落下させる必要がある。他方、特許文献2に記載の装置は、亜塩素酸ナトリウムの粉末を収容した袋を開封して当該粉末を容器に入れ、そこに酸性液を注入するタイプであるため、酸性液の注入直後に多量の気体が発生し、その後は短時間のうちに気体の発生量が低下する。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、従来と比較して長期にわたって安定的に気体を生じさせることが可能な気体発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る気体発生装置は、第1の液体を収容する第1の容器と、第2の液体を収容する第2の容器と、第1の液体と接触する第1の吸液部、第2の液体と接触する第2の吸液部、及び、第1の液体と第2の液体の化学反応による気体を生じさせる蒸散部を有する吸液材とを備える。
【0009】
上記気体発生装置においては、第1の吸液部及び第2の吸液部を通じて第1の液体及び第2の液体が蒸散部に染み出すようにして供給される。このため、振動等を与えなくても蒸散部において第1の液体及び第2の液体による液−液反応が徐々に進行し、十分に安定的に且つ長期にわたって気体を発生させることができる。気体が安定的に発生することで、気体を発生させるべき環境において発生気体の濃度を所望の範囲に十分にコントロールできる。
【0010】
上記気体発生装置の発生気体は二酸化塩素又は二酸化炭素とすることができる。発生気体が二酸化塩素である場合、第1の液体は亜塩素酸塩の水溶液とし、一方、第2の液体は酸性物質の水溶液とすればよい。発生気体が二酸化炭素である場合、第1の液体は炭酸水素ナトリウムの水溶液とし、一方、第2の液体は酸性物質の水溶液とすればよい。
【0011】
上記吸液材は気孔率が20〜80%の多孔性材料からなることが好ましい。かかる構成を採用することにより、吸液部において十分な吸液性を確保できるとともに第1の液体と第2の液体の化学反応によって蒸散部に塩などの反応生成物が蓄積しても目詰まりを十分に防止できる。なお、本発明でいう「気孔率」は、下記式によって算出される値を意味する。
【数1】


式中、W1は水を目一杯吸収させた後の吸液材の質量(g);W0は水を吸収させる前の吸液材の質量(g);ρは水の密度(g/cm);Vは吸液材の見かけ体積(cm)をそれぞれ示す。
【0012】
上記気体発生装置の態様は、いわゆる正立型又は倒立型のいずれであってもよい。正立型の気体発生装置は、第1の容器及び第2の容器を保持する容器保持体を更に備え、第1の容器及び第2の容器は吸液材が挿入される開口を上方にそれぞれ有し、蒸散部が第1の容器及び第2の容器の上方に配置された態様とすることができる。倒立型の気体発生装置は、第1の容器及び第2の容器を保持する容器保持体を更に備え、第1の容器及び第2の容器は液体排出用の開口を下方にそれぞれ有し、蒸散部が第1の容器及び第2の容器の下方に配置された態様とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来と比較して長期にわたって安定的に気体を生じさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る気体発生装置の第一実施形態(正立型)を示す斜視図である。
【図2】図1に示す気体発生装置の構成を示す分解図である。
【図3】本発明に係る気体発生装置の第二実施形態(倒立型)を示す斜視図である。
【図4】図3に示す気体発生装置の構成を示す分解図である。
【図5】本発明に係る気体発生装置に適用可能な容器の他の態様を示す斜視図である。
【図6】実施例及び比較例の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
<第一実施形態>
図1,2に示す気体発生装置10は、第1及び第2の液体をそれぞれ収容する第1及び第2の容器1,2と、第1及び第2の吸液部3a,3b及び気体を発生させる化学反応の反応場をなす蒸散部3cを有する吸液材3と、容器1,2を保持する容器保持体5とを備える。気体発生装置10は、いわゆる正立型であり、蒸散部3cが容器1,2の上方に配置されている。
【0017】
図2に示す容器1,2は、第1及び第2の液体をそれぞれ収容するためのものであり、容器保持体5内に並ぶように配置されている。容器1,2のそれぞれの内容積は、発生させる気体の種類や使用場所などによって適宜設定すればよい。容器1,2に材質としては、液体が漏れないものであれば特に制限はなく、プラスチック、紙、金属、セラミック又はガラス等のいずれであってもよい。ここでは容器1,2として円筒状のものを挙げたが、容器1,2の形状はこれに限定されない。
【0018】
容器1,2は、吸液材3の吸液部3a,3bをそれぞれ挿入するための開口1a,2aを上方に有する。開口1a,2aはキャップ1b,2bでそれぞれ塞ぐことが可能な構成とすることが好ましい(図2参照)。かかる構成を採用することにより、気体発生装置10の製造後、キャップ1b,2bを装着した状態で搬送等を行うことができる。
【0019】
容器1,2にそれぞれ収容する1及び第2の液体は、発生させる気体に応じて適宜選択すればよい。発生させる気体としては、二酸化塩素又は二酸化炭素が挙げられる。
【0020】
二酸化塩素を発生させる場合、第1の液体は亜塩素酸塩の水溶液とし、一方、第2の液体は酸性物質の水溶液とすればよい。亜塩素酸塩の水溶液(第1の水溶液)の具体例としては、亜塩素酸のアルカリ金属塩(例えば亜塩素酸ナトリウム)の水溶液アルカリ土類金属塩(例えば亜塩素酸カルシウム)の水溶液等が挙げられる。酸性物質の水溶液(第2の水溶液)の具体例としては、クエン酸水溶液、リンゴ酸水溶液、酒石酸、リン酸、アスコルビン酸等が挙げられ、これらのうち取扱いの容易性及び安全性の観点からクエン酸水溶液、リンゴ酸水溶液、酒石酸などの食用有機酸の水溶液がより好ましい。
【0021】
亜塩素酸塩の水溶液及び酸性物質の水溶液の濃度は、発生させる二酸化塩素の濃度や持続時間等に応じて適宜設定すればよい。気体発生装置10が例えば家庭や病院などで使用されるものである場合、亜塩素酸塩の水溶液の濃度は0.5〜15質量%程度とすればよく、酸性物質の水溶液の濃度も0.5〜15質量%程度とすればよい。
【0022】
二酸化炭素を発生させる場合、第1の液体は炭酸水素ナトリウムの水溶液とし、一方、第2の液体は酸性物質の水溶液とすればよい。酸性物質の水溶液(第2の水溶液)としては、上述の二酸化塩素を発生させる場合と同様のものを採用すればよい。炭酸水素ナトリウムの水溶液及び酸性物質の水溶液の濃度は、発生させる二酸化炭素の濃度や持続時間等に応じて適宜設定すればよい。気体発生装置10が例えば家庭や病院などで使用されるものである場合、炭酸水素ナトリウムの水溶液の濃度は0.5〜10質量%程度とすればよく、酸性物質の水溶液の濃度も0.5〜10質量%程度とすればよい。
【0023】
吸液材3においては、吸液部3a,3bが容器1,2からそれぞれ液体を吸い上げて蒸散部3cに供給する役割を担うとともに、蒸散部3cが第1及び第2の液体による化学反応の場としての役割を担う。図2に示すように、吸液部3a,3bは平板状の蒸散部3cの一方の面(下面)から当該面の法線方向に延びており、容器1,2の開口1a,2aから挿入されて底面1c,2cにまで至る程度の長さを有する。なお、図1,2に示すように、蒸散部3cを保護するためのフレーム4(例えば、プラスチック製)を蒸散部3cの周縁部に設けてもよい。
【0024】
吸液材3を構成する吸液部3a,3b及び蒸散部3cは同一の材質からなるものであっても、互いに異なる材質であってもよい。更に第1及び第2の液体の特性(例えば、粘度等)に応じて吸液部3a及び吸液部3bの材質を互いに異なるものとしてもよい。
【0025】
吸液部3a,3bの材質としては、毛細管現象によって容器1,2から液体をそれぞれ吸い上げて二種類の液体が蒸散部3cに染み出すように供給できるものであれば特に制限はなく、樹脂、パルプ等の有機材料やガラス等の無機材料の多孔性材料を用いることができる。多孔性材料の好適例としては、パルプもしくは樹脂材料からなる不織布が挙がられる。樹脂材料はポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル樹脂(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)から選ばれる1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0026】
吸液部3a,3bはそれぞれ複数の材質によって構成されてもよい。例えば吸液部3a,3bは、パルプを主原料としバインダーで接着させたものであって、表面の強度、保形性のために表裏面にティッシュ状のパルプ材、不織布などを貼った構成としてもよい。また、吸液部3a,3bにそれぞれ第1及び第2の液体を保持させておくことで、使用開始時と同時に、保持された液体が蒸散部3cにそれぞれ供給されて短時間のうちに蒸散部3cにおいて化学反応が生じるようにしてもよい。
【0027】
吸液部3a,3bをそれぞれ構成する多孔性材料の気孔率、密度又は長手方向に垂直な断面のサイズといったパラメータは、液体の粘度や容器1,2の高さ等の諸条件により適宜設定すればよい。これらのパラメータの数値範囲は、容器1,2から液体を効率的に吸い上げて安定的に蒸散部3cに液体を供給する観点から、以下の程度とすることが好ましい。
【0028】
すなわち、吸液部3a,3bの気孔率は好ましくは20〜80%であり、より好ましくは30〜80%である。吸液部3a,3bの密度は、好ましくは0.15〜0.4g/cmである。吸液部3a,3bの断面サイズは、好ましくは3〜300mmであり、より好ましくは12〜120mmである。なお、吸液部3a,3bの断面形状は円形に限られず、矩形、楕円形又は多角形等であってもよい。
【0029】
蒸散部3cの材質としては、上述の吸液部3a,3bと同様のものを採用することができる。二種類の液体の化学反応によって蒸散部3cに反応生成物が蓄積しても目詰まりが生じないようにする観点から、蒸散部3cの気孔率は好ましくは20〜80%であり、より好ましくは30〜80%である。同様の観点から、蒸散部3cの目付けは好ましくは200〜2000g/mであり、より好ましくは400〜1600g/mであり、厚さは好ましくは2〜20mmであり、より好ましくは2〜16mmである。
【0030】
なお、蒸散部3cは、容器1,2の開口1a,2aに挿入された状態の吸液部3a,3bから脱着自在な構成としてもよい。かかる構成を採用することで、蒸散部3cにおける反応生成物の蓄積が顕著となった場合に新たな蒸散部3cへの交換が可能となる。
【0031】
容器保持体5は、容器1,2を一体的に保持するためのものである。図2に示すように、容器保持体5は容器1,2の外面の形状に応じた形状を有しており、容器1,2を収容した際に容器1,2の位置ズレが生じないようになっている。
【0032】
気体発生装置10によれば、容器1,2にそれぞれ収容された液体が吸液部3a及び吸液部3bを通じて蒸散部3cに染み出すようにして供給されることで、十分に安定的に且つ長期にわたって蒸散部3cにおいて気体を発生させることができる。
【0033】
<第二実施形態>
図3,4に示す気体発生装置20は、第1及び第2の液体をそれぞれ収容する第1及び第2の容器11,12と、吸液材13と、容器11,12を保持する容器保持体15とを備える。気体発生装置20は、いわゆる倒立型であり、吸液材13が容器11,12の下方に配置されている。
【0034】
容器11,12は、第1及び第2の液体をそれぞれ収容するためのものであり、容器保持体15上に並ぶように配置されている。容器11,12のそれぞれの内容積は、発生させる気体の種類や使用場所などによって適宜設定すればよい。容器11,12に材質としては、液体が漏れないものであれば特に制限はなく、プラスチック、紙、金属、セラミック又はガラス等のいずれであってもよい。ここでは容器11,12として半球を更に半分に割ったような形状のものを挙げたが、容器11,12の形状はこれに限定されない。
【0035】
容器11,12は、収容している液を排出して吸液材13に染み込ませるための開口11a,12aを下方に有する。開口11a,12aはキャップ11b,12bでそれぞれ塞ぐことが可能な構成とすることが好ましい(図4参照)。かかる構成を採用することにより、気体発生装置20の製造後、キャップ11b,12bを装着した状態で搬送等を行うことができる。
【0036】
容器11,12にそれぞれ収容する1及び第2の液体は、発生させる気体に応じて適宜選択すればよい。発生させる気体としては、上述の第一実施形態と同様、二酸化塩素又は二酸化炭素が挙げられ、第1及び第2の液体も上述の第一実施形態と同様のものを採用できる。
【0037】
吸液材13は、平板状の形状を有し、容器11,12の開口11a,12aを同時に覆うように配置されている。本実施形態においては、図4においてそれぞれ破線で囲った領域13a,13b及び領域13cが二つの吸液部及び蒸散部に相当する。すなわち、吸液材13における領域13a,13bは、容器11,12の開口11a,12aにそれぞれ対向する領域であり、領域13cは二種類の液体が混ざり合って反応が生じる領域である。
【0038】
吸液材13は、気液の交換が可能な材質からなる。ここでいう「気液の交換が可能な材質」とは、容器11,12内の液体が吸液材13にそれぞれ浸透して容器11,12の外部に排出されるとともに、容器11,12の外部から吸液材13に浸透した空気等の気体が容器11,12にそれぞれ導入され、容器11,12内が過度に負圧になることを抑制可能な材質を意味する。かかる材質の具体例としては、上述の第一実施形態における吸液材3と同様の材質が挙げられ、これらのなかでも、PET又はPAを用いた多孔性材料を採用することが好ましい。
【0039】
吸液材13を構成する多孔性材料の気孔率や目付け、厚さ等は、液体の粘度や容器11,12の内容積等の諸条件により適宜設定すればよい。開口11a,12aから液体が流れ出るのを防止するとともに吸液材13において化学反応を十分に進行せしめる観点から、吸液材13の気孔率は好ましくは20〜80%であり、より好ましくは30〜80%である。かかる観点及び二種類の液体の化学反応によって領域13cに反応生成物が蓄積しても目詰まりが生じないようにする観点から、吸液材13の目付けは好ましくは200〜2000g/mであり、より好ましくは400〜1600g/mであり、厚さは好ましくは2〜20mmであり、より好ましくは2〜16mmである。なお、吸液材13における領域13cの反応生成物の蓄積が顕著となった場合に新たな吸液材13に交換してもよい。
【0040】
吸液材13は、全体が同一の材質からなり略均一な物性を有するものであってもよく、あるいは、特定の領域(領域13a、領域13b又は領域13c)について他の領域と異なる材質を配置したり異なる気孔率や厚さに設定したりしてもよい。例えば、吸液材13の一方面に容器11,12の開口11a,12aの形状に応じた隆起部を二つ設け、これらの隆起部に容器11,12の開口11a,12aを嵌め込むことができるようにしてもよい。
【0041】
容器保持体15は、容器11,12及び吸液材13を一体的に保持するとともに、スタンドとしての役割を担うものである。容器保持体15は容器11,12の底部の形状及び吸液材13の形状に応じた形状を有する保持部15aと、その下部に設けられたスタンド部15bとによって構成される。保持部15a上に吸液材13及び容器11,12を配置することによってこれらの位置ズレが生じないようになっている。保持部15aには複数の貫通孔15cが形成されており、これらを通じて外部に気体が放出される。
【0042】
気体発生装置20によれば、容器11,12にそれぞれ収容された液体が吸液材13に染み出すようにして供給されることで、十分に安定的に且つ長期にわたって吸液材13(特に領域13c)において気体を発生させることができる。
【0043】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記第一実施形態においては平板状の蒸散部3cを例示したが、反応場を十分に確保できる態様であれば蒸散部3cの形状は特に制限はない。例えば、棒状の多孔性材料を逆U字状に加工し、両端から上方に延びる部分を容器1,2内にそれぞれ挿入して吸液部とし、横方向に延びる部分を蒸散部としてもよい。
【0044】
また、上記第一実施形態に係る気体発生装置10は容器保持体5を備える構成としたが、容器1,2を一体的に保持する機能を吸液材3又は保護フレーム4に具備させた場合には容器保持体5を採用しなくてもよい。
【0045】
更に、二つの容器(第1の容器及び第2の容器)は別々のものでなくてもよく、例えば、一つの容器内を仕切ることによってこの容器内に第1の容器及び第2の容器を画成してもよい。図5に示す第1の容器21及び第2の容器22は、装置本体25をなす容器の内部を仕切り板25aで仕切ることによって画成されたものである。図5に示す状態の装置本体25の上方に蒸散部を配置することで正立型の気体発生装置を構成できる。この場合も容器保持体を採用しなくてもよい。図5に示す状態から上下を逆さにして、装置本体25の下方に吸液材及び容器保持体を配置することで倒立型の気体発生装置を構成できる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明について実施例及び比較例によって更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0047】
(実施例1)
図1に示す気体発生装置と同様の構成を有する装置を試作した。一方の容器に亜塩素酸ナトリウム水溶液(濃度13.4質量%、100mL)を入れ、他方の容器にクエン酸水溶液(濃度7.5質量%、100mL)を入れた。吸液材として、PPとPEの複合材料からなる吸液部(2本)と、パルプ製の蒸散紙からなる蒸散部とによって構成された部材を準備した。上記複合材料は直径8mm、気孔率70%であった。上記蒸散紙はハトシートXCA(商品名、王子キノクロス株式会社製)であり、厚さ12mm、目付量1200g/mであった。
【0048】
2つの容器に亜塩素酸ナトリウム及びクエン酸水溶液をそれぞれ収容した後、2つの容器のそれぞれの開口に吸液部を挿入した。その後、この装置を温度約25℃、湿度なりゆき、無風の条件下で保存し、所定の日数経過ごとに二酸化塩素ガスの濃度を測定した。二酸化塩素ガスの濃度は、内容積4Lのデシケータ内に当該装置をその都度収容し、一定の時間静置させた後、デシケータ内の空気をGASTEC(登録商標)GV−100及び気体検知管(No.8H、23M、23L、株式会社ガステック製)を用いて測定した。なお、デシケータ内には当該装置とともに小型ファンを収容し、濃度測定に先立って小型ファンによってデシケータ内の空気を3分間にわたって対流させた。
【0049】
(実施例2,3)
亜塩素酸ナトリウム水溶液及びクエン酸水溶液の濃度を変更したことの他は、実施例1と同様にして装置を試作し、発生する二酸化塩素ガスの濃度を測定した。表1に亜塩素酸ナトリウム水溶液及びクエン酸水溶液の濃度を示す。
【0050】
【表1】

【0051】
(比較例1)
濃度10質量%の亜塩素酸ナトリウム水溶液100mLにクエン酸含有ゲル化剤5.4gを添加することによって二酸化塩素ガスを発生させた。なお、クエン酸含有ゲル化剤は十分量のクエン酸を吸水ポリマーに吸収させることによって調製した。
【0052】
図6に実施例1〜3及び比較例1に係る装置から発生する二酸化塩素ガスの経時変化を示す。
【0053】
実験の結果、実施例1〜3は、14日間にわたり安定した二酸化塩素濃度を維持したのに対して、比較例1では、5日を越えた時点で二酸化塩素濃度が大きく減少し、その後も減少しつづけた。このことから本発明に係る気体発生装置は、十分に長期にわたって安定的に気体を生じさせることが可能であることがわかった。
【符号の説明】
【0054】
1,11,21…第1の容器、2,12,22…第2の容器、1a,11a…第1の容器の開口、2a,12a…第2の容器の開口、3,13…吸液材、3a,3b…吸液部、3c…蒸散部、5,15…容器保持体、10,20…気体発生装置、13a,13b…領域(吸液部)、13c…領域(蒸散部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の液体を収容する第1の容器と、
第2の液体を収容する第2の容器と、
前記第1の液体と接触する第1の吸液部、前記第2の液体と接触する第2の吸液部、及び、前記第1の液体と前記第2の液体の化学反応による気体を生じさせる蒸散部を有する吸液材と、
を備える気体発生装置。
【請求項2】
前記気体は二酸化塩素又は二酸化炭素である、請求項1に記載の気体発生装置。
【請求項3】
前記第1の容器及び前記第2の容器を保持する容器保持体を更に備え、前記第1の容器及び前記第2の容器は前記吸液材が挿入される開口を上方にそれぞれ有し、前記蒸散部が前記第1の容器及び前記第2の容器の上方に配置されている、請求項1又は2に記載の気体発生装置。
【請求項4】
前記第1の容器及び前記第2の容器を保持する容器保持体を更に備え、前記第1の容器及び前記第2の容器は液体排出用の開口を下方にそれぞれ有し、前記蒸散部が前記第1の容器及び前記第2の容器の下方に配置されている、請求項1又は2に記載の気体発生装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate