説明

気体発生装置

【課題】気体の混合を防止しつつ電解反応を安定に進行させることが可能な気体発生装置を提供する。
【解決手段】液体隔壁13bには複数の円形の貫通孔Hが形成される。各貫通孔Hは、陽極室14a側の端部から陰極室14b側の端部まで斜め上方に延びる上面L1を有する。貫通孔Hの陽極側端の上下方向の径D1は、電解液が通過可能でかつフッ素ガスおよび水素ガスの泡が通過しないような大きさに設定される。貫通孔Hの陰極側端の上下方向の径D2は、径D1よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体を発生する気体発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体の製造工程等において、材料の洗浄および表面改質等の種々の用途でフッ素ガスが用いられている。この場合、フッ素ガス自体が用いられることもあり、フッ素ガスを基に合成されたNF(三フッ化窒素)ガス、CF(四フッ化炭素)ガスおよびC(六フッ化エタン)ガス等の種々のフッ素系ガスが用いられることもある。
【0003】
フッ素ガスを安定に供給するために、HF(フッ化水素)を電気分解してフッ素ガスを発生する気体発生装置が用いられる。このような気体発生装置では、例えば、電解槽内にKF−HF(カリウム−フッ化水素)系の混合溶融塩からなる電解液が収容される。電解槽内の電解液が電気分解されることによりフッ素ガスが発生される。
【0004】
電解槽内においては、フッ素ガスとともに水素ガスが発生される。そのため、電解槽内には、発生されるフッ素ガスと水素ガスとを分離するための隔壁が設けられる。特許文献1に記載される電解槽では、ガスの混合を防止するために、多孔性または繊維状の構成を有する隔板が用いられる。この場合、電解液が隔板を透過することが可能となる。そのため、電解槽内に配置される陽極と陰極との間の通電抵抗の増加が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−104187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者は、特許文献1の電解槽では、発生したガスの泡が隔板の孔を塞ぐことによって電解液の透過が妨げられることを見出した。それにより、電解液の電解反応を安定に進行させることができない。
【0007】
本発明の目的は、気体の混合を防止しつつ電解反応を安定に進行させることが可能な気体発生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る気体発生装置は、電解液を収容する電解槽と、電解槽内を陽極室と陰極室とに区画するように設けられ、電解液中のイオンが通過可能な開口を有する隔壁と、電解槽の陽極室に設けられる陽極と、電解槽の陰極室に設けられる陰極とを備え、隔壁の開口は、陽極室および陰極室の少なくとも一方に向かって斜め上方に延びる上面を有するものである。
【0009】
その気体発生装置においては、隔壁により電解槽内が陽極室と陰極室とに区画される。陽極室に設けられた陽極と陰極室に設けられた陰極との間に電圧が印加されることにより、電解槽内の電解液が電気分解される。それにより、陽極室および陰極室において気体が発生する。
【0010】
隔壁には、電解液中のイオンが通過可能な開口が設けられる。開口は、陽極室および陰極室の少なくとも一方に向かって斜め上方に延びる上面を有する。そのため、発生される気体の泡が陽極室および陰極室の上記の少なくとも一方から開口内に進入しても、その泡は開口の上面に沿って陽極室または陰極室に戻される。したがって、発生される気体の泡が通過しないように開口の大きさを設定することにより、陽極室で発生される気体と陰極室で発生される気体とが混合されることを防止しつつ、発生される気体の泡によって開口が塞がれることを防止することができる。その結果、気体の混合を防止しつつ電解液の電解反応を安定に進行させることができる。
【0011】
(2)陽極室においてフッ素ガスが発生され、陰極室において水素ガスが発生され、開口の上面は、陰極室側に向かって斜め上方に延びるように設けられてもよい。
【0012】
水素ガスはフッ素ガスに比べて電解液に溶解しにくいので、水素ガスの泡は開口内に滞留して開口を塞ぎやすい。そこで、開口の上面が陰極室側に向かって斜め上方に延びるように設けられることにより、陰極室で発生される水素ガスの泡が開口内に進入しても、その泡は開口の上面に沿って陰極室に戻される。それにより、水素ガスによって開口が塞がれることが防止される。
【0013】
(3)陽極室側における開口の端部の面積は、陰極室側における開口の端部の面積よりも小さくてもよい。
【0014】
この場合、陽極室において発生されるフッ素ガスが開口内に進入することが防止される。それにより、フッ素ガスが陰極室に移動することが防止され、フッ素ガスと水素ガスとが混合されることが防止される。
【0015】
(4)隔壁は、電解液に浸漬する液体隔壁を含み、開口は液体隔壁に設けられ、液体隔壁は、パーフルオロ樹脂により形成されてもよい。
【0016】
この場合、電解液により液体隔壁が腐食することが防止される。また、開口を形成する際の液体隔壁の加工が容易になる。さらに、液体隔壁の材料コストが低減される。
【0017】
(5)陽極の表面に導電性ダイヤモンドコーティングが施されてもよい。この場合、陽極に分極が発生しにくくなるため、気体の発生効率が向上される。気体の発生量が多くなっても、隔壁の開口が泡によって塞がれることが防止されるので、電解反応を安定に進行させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、気体の混合を防止しつつ電解反応を安定に進行させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態に係る気体発生装置の模式的断面図である。
【図2】液体隔壁の外観斜視図である。
【図3】液体隔壁に形成される貫通孔の拡大図である。
【図4】液体隔壁に形成される貫通孔の他の例を示す図である。
【図5】液体隔壁の他の例について説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態に係る気体発生装置について図面を参照しながら説明する。
【0021】
(1)気体発生装置の構成
図1は、本発明の一実施の形態に係る気体発生装置の模式的断面図である。図1の気体発生装置10は、フッ素ガスを発生する気体発生装置である。図1に示すように、気体発生装置10は電解槽11を備える。電解槽11は、電解槽本体11aおよび上部蓋体11bを含む。
【0022】
電解槽本体11aおよび上部蓋体11bは、例えばNi(ニッケル)、モネル、純鉄もしくはステンレス鋼等の金属または合金により形成される。電解槽本体11aは、底面部および側面部を有し、上部に開口を有する。底面部の上面を覆うように、絶縁部材11cが配置される。側面部の上端面上には、絶縁部材11dが取り付けられる。絶縁部材11c,11dは、樹脂等の絶縁材料からなる。電解槽本体11aの開口を閉塞するように、絶縁部材11d上に上部蓋体11bが配置される。それにより、電解槽本体11aと上部蓋体11bとが絶縁部材11dにより互いに電気的に絶縁される。
【0023】
電解槽11内には、KF−HF(カリウム−フッ化水素)系混合溶融塩からなる電解液12が収容される。上部蓋体11bの下面から下方に延びるように、円筒状の隔壁13が設けられる。隔壁13は、円筒状の気体隔壁13aおよび円筒状の液体隔壁13bからなる。気体隔壁13aは上部蓋体11bに一体的に設けられる。気体隔壁13aの下端部の高さは、電解液12の液面の高さと略等しくなるように設定される。気体隔壁13aの材料としては、Ni(ニッケル)、Ni合金、モネル、純鉄もしくはステンレス鋼等の金属または合金が用いられることが好ましい。この場合、フッ素ガスおよびフッ化水素蒸気による気体隔壁13aの腐食が抑制される。気体隔壁13aは、上部蓋体11bから取り外し可能に設けられてもよい。
【0024】
液体隔壁13bは、電解液12に浸漬するように気体隔壁13aの下端部に取り付けられる。液体隔壁13bには、電解液12の透過性を確保するための複数の貫通孔H(後述の図2)が形成される。液体隔壁13bの詳細については後述する。液体隔壁13bの材料としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)またはPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)等のパーフルオロ樹脂が用いられることが好ましく、特にPTFEが用いられることが好ましい。この場合、液体隔壁13bの材料として金属が用いられる場合に比べて、電解液12による液体隔壁13bの腐食が抑制される。また、上記の貫通孔Hを形成する際の加工が容易になる。さらに、液体隔壁13bの材料コストが低減される。
【0025】
電解槽11内において、隔壁13の内側に陽極室14aが形成され、隔壁13の外側に陰極室14bが形成される。陽極室14a内で電解液12に浸漬するように陽極15aが配置される。陽極15aの材料としては、例えば低分極性炭素電極を用いることが好ましい。
【0026】
陽極15aの表面には、導電性ダイヤモンドコーティングが施されることが好ましい。具体的には、ダイヤモンド原料として水素ガスおよび炭素源の混合ガスを用いるとともに、その混合ガスに炭素と原子価が異なる元素(以下、ドーパントと呼ぶ)を微量添加することにより、導電性を有するダイヤモンドコーティング層を形成することができる。ドーパントとしては、硼素、リンまたは窒素を用いることが好ましく、特に硼素を用いることが好ましい。添加されるドーパントの重量は、ダイヤモンドコーティング層の全重量に対して、1ppm以上30000ppm以下であることが好ましく、100ppm以上10000ppm以下であることがより好ましい。陽極15aの表面に導電性ダイヤモンドコーティングが施されることにより、陽極15aで分極が発生しにくくなる。そのため、フッ素ガスの生成効率が向上される。本実施の形態では、電解槽本体11aの側面部が陰極として機能する。
【0027】
電解槽11内にHFを供給するためのHF供給ライン18aが上部蓋体11bに接続される。HF供給ライン18aは温度調整用ヒータ18bで覆われる。これにより、HF供給ライン18aでHFが液化することが防止される。電解液12の液面の高さは液面検出装置(図示せず)により検出される。液面検出装置により検出される液面の高さが所定値よりも低くなると、HF供給ライン18aを通して電解槽11内にHFが供給される。
【0028】
上部蓋体11bには、ガス排出口16a,16bが設けられる。ガス排出口16aには排気管17aが接続され、ガス排出口16bには排気管17bが接続される。ガス排出口16aは陽極室14aに連通し、ガス排出口16bは陰極室14bに連通する。
【0029】
陽極15aと電解槽本体11aとの間に電圧が印加されることにより、電解液12が電気分解される。この場合、陽極15aの表面上でフッ素ガスが発生し、電解槽本体11aの側面部の内面上で水素ガスが発生する。電解槽本体11aの底面部の上面は絶縁部材11cにより覆われるので、底面部の上面上では電解液12の電解反応が進行せず、水素ガスが発生しない。
【0030】
陽極室14aで発生したフッ素ガスは、ガス排出口16aから排気管17aを通して電解槽11の外部に導かれる。陰極室14bで発生した水素ガスは、ガス排出口16bから排気管17bを通して電解槽11の外部に導かれる。
【0031】
(2)液体隔壁の詳細
図2は液体隔壁13bの外観斜視図であり、図3は液体隔壁13bに形成される貫通孔Hの拡大図である。図3(a)は貫通孔Hの縦断面図であり、図3(b)は陽極室14aから見た貫通孔Hの側面図であり、図3(c)は陰極室14bから見た貫通孔Hの側面図である。図3(a)は、図3(b)および図3(c)のA−A線断面を示す。
【0032】
図2に示すように、液体隔壁13bには複数の円形の貫通孔Hが形成される。図2の例では、複数の貫通孔Hが、液体隔壁13bの周方向に沿って2列をなす。この場合、電解液12中のイオンが複数の貫通孔Hを通って陽極室14aと陰極室14bとの間で移動可能となる。これにより、陽極室14aおよび陰極室14bにおいて電解反応が安定にかつ円滑に進行する。
【0033】
この場合、電解反応により発生したフッ素ガスおよび水素ガスが貫通孔Hを通って移動すると、陽極室14aまたは陰極室14bにおいてフッ素ガスと水素ガスとが混合される。それにより、フッ素ガスと水素ガスとが反応してフッ素ガスの生成効率が低下するとともに、フッ素ガスおよび水素ガスの比によっては爆発性の混合ガスが生成される可能性も考えられる。
【0034】
そこで、各貫通孔Hの径は、フッ素ガスおよび水素ガスの泡が通過しないような大きさに設定される。しかしながら、これによって泡が貫通孔H内に滞留し、貫通孔Hが塞がれることがある。特に、水素ガスはフッ素ガスに比べて電解液12に溶解しにくいので、水素ガスの泡は、貫通孔H内に滞留しやすく、貫通孔Hを塞ぎやすい。貫通孔Hが塞がれると、電解液12が貫通孔Hを通って移動することができない。それにより、安定に電解反応を進行させることができない。
【0035】
そこで、本実施の形態では、図3に示すように、各貫通孔Hが、陽極室14a側の端部から陰極室14b側の端部まで斜め上方に延びる上面L1を有する。以下、陽極室14a側における貫通孔Hの端部を陽極側端と呼び、陰極室14b側における貫通孔Hの端部を陰極側端と呼ぶ。貫通孔Hの下面L2は、陽極側端から陰極側端まで水平に延びる。ここで、貫通孔Hの上面とは、貫通孔Hの内周面のうち、下方を向く領域をいい、貫通孔Hの下面とは、貫通孔Hの内周面のうち、上方を向く領域をいう。
【0036】
貫通孔Hの陽極側端の上下方向の径D1は、電解液が通過可能でかつフッ素ガスおよび水素ガスの泡が通過しないような大きさに設定される。径D1は、例えば1mm以上3mm以下であり、1mm以上2mm以下であることが好ましい。貫通孔Hの陰極側端の上下方向の径D2は、D1よりも大きい。径D2は、例えば5mm以上10mm以下であり、5mm以上8mm以下であることが好ましい。液体隔壁13bの厚みTHは、例えば5mm以上10mm以下であり、5mm以上8mm以下であることが好ましい。
【0037】
本実施の形態に係る気体発生装置10においては、陰極室14bから水素ガスの泡が貫通孔H内に進入しても、その泡は、貫通孔Hの上面に沿って陰極室14bに戻り、液面に浮上する。したがって、陰極室14bから貫通孔H内に進入した水素ガスの泡が貫通孔Hを塞ぐことが防止される。
【0038】
また、陽極室14a側における貫通孔Hの上下方向の径は、陰極室14b側における貫通孔Hの上下方向の径よりも小さい。さらに、上記のように、フッ素ガスは、水素ガスに比べて電解液12中に溶解しやすい。そのため、フッ素ガスの泡が陽極室14aから貫通孔H内に進入することが防止される。
【0039】
このように、フッ素ガスおよび水素ガスの泡が貫通孔Hを通って移動することが防止されつつ、フッ素ガスおよび水素ガスの泡が貫通孔Hを塞ぐことが防止される。それにより、フッ素ガスの生成効率を低下させることなく、電解反応を安定にかつ円滑に進行させることができる。
【0040】
(3)貫通孔の他の例
(3−1)
液体隔壁13bの貫通孔Hの形状は、図2および図3の例に限らない。図4は、液体隔壁13bに形成される貫通孔Hの他の例を示す図である。図4(a)および図4(b)の例について、図2および図3の例と異なる点を説明する。
【0041】
図4(a)の例では、貫通孔Hの上面L1が、陽極側端から陽極側端と陰極側端との中間点P1まで水平に延び、中間点P1から陰極側端まで斜め上方に延びる。この場合も、陰極室14bから貫通孔H内に進入した水素ガスの泡が貫通孔Hを塞ぐことが防止されるとともに、フッ素ガスの泡が陽極室14aから貫通孔H内に進入することが防止される。
【0042】
図4(b)の例では、貫通孔Hの上面L1が、陽極側端から中間点P1まで斜め下方に延び、中間点P1から陰極側端まで斜め上方に延びる。この場合も、陰極室14bから貫通孔H内に進入した水素ガスの泡が貫通孔Hを塞ぐことが防止される。また、陽極室14aから貫通孔H内にフッ素ガスの泡が進入しても、その泡は、貫通孔Hの上面L1に沿って陽極室14aに戻り、液面に浮上する。したがって、陽極室14aから貫通孔H内に進入したフッ素ガスの泡が貫通孔Hを塞ぐことが防止される。
【0043】
(3−2)
上記の例では、貫通孔Hが円形の縦断面を有するが、貫通孔Hが楕円形状、三角形または四角形等の他の形状の縦断面を有してもよい。
【0044】
(3−3)
上記の例では、貫通孔Hの上面L1が陰極側端に向かって斜め上方に直線状に延びるように設けられるが、これに限らず、例えば貫通孔Hの上面L1が陰極側端に向かって斜め上方に湾曲して延びるように設けられてもよい。
【0045】
(4)液体隔壁の他の例
図5は、液体隔壁13bの他の例について説明するための断面図である。図5には、気体隔壁13aの下端部および液体隔壁13bの上端部が示される。図5の例について、図2および図3の例と異なる点を説明する。
【0046】
図5の例では、液体隔壁13bの上端部が、気体隔壁13aの外周面(陰極室14b側の面)の下端部を覆うように設けられる。気体隔壁13aの下端部が電解液12に浸漬する状態で電解液12の電解反応が進行する場合、電解液12内で気体隔壁13aが分極し、気体隔壁13aの外周面が正の電荷を帯びる。その場合、正の電荷を帯びた気体隔壁13aの外周面から金属がイオン化して電解液12中に溶出し、気体隔壁13aの外周面が腐食されやすくなる。そこで、本例では、電解液12に浸漬する気体隔壁13aの外周面の部分が液面隔壁13bにより覆われる。それにより、気体隔壁13aの外周面に電解液12が接触することが防止され、電解液12に浸漬する気体隔壁13aの外周面の部分が腐食することが防止される。
【0047】
また、液面隔壁13bの上端部は、電解液12の液面の上方まで延びることが好ましい。この場合、気体隔壁13aの外周面に電解液12が接触することを確実に防止することができる。なお、液面隔壁13bの上端部は陰極室14b側に位置するので、液面隔壁13bの上端部が電解液12の液面の上方まで延びていても、液面隔壁13bにフッ素ガスおよびフッ化水素蒸気が接触することはない。そのため、液面隔壁13bの腐食が防止される。
【0048】
(5)他の実施の形態
(5−1)
上記実施の形態では、気体隔壁13aと液体隔壁13bとが別体として設けられるが、気体隔壁13aおよび液体隔壁13bの腐食が防止される場合または気体隔壁13aおよび液体隔壁13bの腐食が問題とならない場合には、気体隔壁13aおよび液体隔壁13bが一体的に設けられてもよい。
【0049】
(5−2)
上記実施の形態では、気体隔壁13aおよび液体隔壁13bがそれぞれ円筒状であるが、これに限らず、気体隔壁13aおよび液体隔壁13bがそれぞれ角筒状または平板状等の他の形状であってもよい。
【0050】
(5−3)
上記実施の形態は、フッ素ガスを発生する気体発生装置に本発明を適用した例であるが、酸素ガス等の他の気体を発生する気体発生装置にも本発明を同様に適用することができる。
【0051】
(6)請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0052】
上記実施の形態では、電解液12が電解液の例であり、電解槽11が電解槽の例であり、貫通孔Hが開口の例であり、上面L1が上面の例であり、隔壁13が隔壁の例であり、陽極室14aが陽極室の例であり、陽極15aが陽極の例であり、陰極室14bが陰極室の例であり、陰極15bが陰極の例であり、液体隔壁13aが液体隔壁の例である。
【0053】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、種々の気体発生装置に有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
10 電解装置
11 電解槽
11a 電解槽本体
11b 上部蓋体
11c,11d 絶縁部材
12 電解液
13 隔壁
13a 気体隔壁
13b 液体隔壁
14a 陽極室
14b 陰極室
15a 陽極
16a,16b ガス排出口
17a,17b 排気管
18a HF供給ライン
18b 温度調整用ヒータ
H 貫通孔
L1 上面
L2 下面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液を収容する電解槽と、
前記電解槽内を陽極室と陰極室とに区画するように設けられ、前記電解液中のイオンが通過可能な開口を有する隔壁と、
前記電解槽の前記陽極室に設けられる陽極と、
前記電解槽の前記陰極室に設けられる陰極とを備え、
前記隔壁の前記開口は、前記陽極室および前記陰極室の少なくとも一方に向かって斜め上方に延びる上面を有することを特徴とする気体発生装置。
【請求項2】
前記陽極室においてフッ素ガスが発生され、前記陰極室において水素ガスが発生され、
前記開口の前記上面は、前記陰極室側に向かって斜め上方に延びるように設けられることを特徴とする請求項1記載の気体発生装置。
【請求項3】
前記陽極室側における前記開口の端部の面積は、前記陰極室側における前記開口の端部の面積よりも小さいことを特徴とする請求項2記載の気体発生装置。
【請求項4】
前記隔壁は、前記電解液に浸漬する液体隔壁を含み、
前記開口は前記液体隔壁に設けられ、
前記液体隔壁は、パーフルオロ樹脂により形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の気体発生装置。
【請求項5】
前記陽極の表面に導電性ダイヤモンドコーティングが施されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の気体発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−19035(P2013−19035A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155066(P2011−155066)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000222842)東洋炭素株式会社 (198)
【Fターム(参考)】