気体製造装置、気体製造方法および気体製造装置アレイ
【課題】発生させた気体を簡素化された配管により回収できる気体製造装置を提供する。
【解決手段】本発明の気体製造装置は、受光面およびその裏面を有する光電変換部と、前記裏面の上に並べて設けられ、かつ、電解液に接触可能な面をそれぞれ有する第1および第2電解用電極とを備え、第1および第2電解用電極が電解液と接触するとき、第1および第2電解用電極は、前記光電変換部が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体が発生するように設けられ、前記光電変換部の受光面を水平にしたとき、第1電解用電極と第2電解用電極とは、電解液に接触可能な面と水平な基準面との間の傾斜角が異なることを特徴とする。
【解決手段】本発明の気体製造装置は、受光面およびその裏面を有する光電変換部と、前記裏面の上に並べて設けられ、かつ、電解液に接触可能な面をそれぞれ有する第1および第2電解用電極とを備え、第1および第2電解用電極が電解液と接触するとき、第1および第2電解用電極は、前記光電変換部が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体が発生するように設けられ、前記光電変換部の受光面を水平にしたとき、第1電解用電極と第2電解用電極とは、電解液に接触可能な面と水平な基準面との間の傾斜角が異なることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体製造装置、気体製造方法および気体製造装置アレイに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料資源の枯渇および地球温暖化ガス排出抑制などの観点から、再生可能エネルギーの利用が望まれている。再生可能エネルギー源としては太陽光、水力、風力、地熱、潮力、バイオマスなど多岐にわたるが、その中でも、太陽光は利用可能なエネルギー量が大きいこと、他の再生可能エネルギーに対し地理的制約が比較的少ないことから、太陽光から効率よく利用可能なエネルギーを生み出す技術の早期な開発と普及が望まれている。
【0003】
太陽光から生み出される利用可能なエネルギーの形態としては、太陽電池や太陽光熱タービンを用いて製造される電気エネルギー、太陽光エネルギーを熱媒体に集めることによる熱エネルギー、その他にも太陽光を用いた物質還元による液体燃料や水素などの貯蔵可能な燃料エネルギー等が挙げられる。太陽電池技術および太陽熱利用技術については、すでに実用化されている技術が多いものの、エネルギー利用効率が未だ低いことと、電気および熱を作り出す際のコストが依然高いことから、これらの改善に向けた技術開発が行われている。さらに、これら電気や熱というエネルギー形態は、短期のエネルギー変動を補完するような使用法は実現できるものの、例えば季節変動などの長期での変動を補完することは極めて困難であることや、エネルギー量の増加により発電設備の稼働率低下を招く可能性があることが課題である。これに対し、液体燃料や水素など、エネルギーを物質として蓄えておくことは、長期変動を効率よく補完するとともに発電設備の稼働率を高める技術として極めて有力であり、今後エネルギー利用効率を最大限に高め、二酸化炭素の排出量を徹底的に削減するためには必要不可欠な技術である。
【0004】
貯蔵可能な燃料の形態としては、炭化水素などの液体燃料や、バイオガス、水素などの気体燃料、バイオマス由来の木材ペレットや太陽光で還元された金属などの固体燃料などに大別することができる。インフラ整備の容易性、エネルギー密度の観点では液体燃料、燃料電池などとのトータルの利用効率向上の観点では水素をはじめとする気体燃料、貯蔵可能性とエネルギー密度の観点では固体燃料というように、各形態において長所短所を有するが、原料として容易に入手可能な水を利用できる観点から、太陽光により水を分解することによる水素製造技術が特に注目されている。
【0005】
水を原料として太陽光エネルギーを利用し水素を製造する方法としては、酸化チタン等の光触媒に白金を担持させ、この物質を水中に入れ光照射することにより半導体中で電荷分離を行い、電解液中のプロトンを還元、水を酸化することによる光分解法や、高温ガス炉などの熱エネルギーを利用して水を高温で直接分解する、あるいは金属等の酸化還元と共役させて間接的に分解する熱分解法、藻類など光を利用する微生物の代謝を利用した生物法、太陽電池で発電した電気と水の電気分解水素製造装置を組み合わせた水電気分解法、太陽電池に使用される光電変換材料に水素発生触媒、酸素発生触媒を担持することにより、光電変換で得られる電子と正孔を水素生成触媒、酸素発生触媒で反応に利用する光起電力法等が挙げられる。この中で、光電変換部と水素生成部を一体化することにより、小型の水素製造装置を作製することの可能性を有するものは光分解法、生物法、光起電力法と考えられるが、太陽光エネルギーの変換効率の観点から、光起電力法は実用化に最も近い技術の一つと考えられる。
【0006】
これまでに、光分解法や光起電力法による光電変換と水素発生を一体化した水素製造装置の例が開示されている。光分解法では例えば、特許文献1によると、ルテニウム錯体を吸着させた酸化チタンの光触媒電極と、白金電極、ヨウ素もしくは鉄の酸化還元を利用した装置が開示されている。また、特許文献2、3によると、2層の光触媒をタンデム接続し、白金カウンター電極を接続、間にイオン交換膜を挟むことにより一体化構造を採用している。一方、光起電力法では、光電変換部と水素生成部、酸素生成部を一体化した水素製造装置のコンセプトが発表されている(非特許文献1)。これによると、電荷分離は光電変換部、水素生成と酸素生成はそれぞれに対応する触媒を用いることにより行われる。光電変換部は太陽電池に利用される材料が用いられている。例えば、非特許文献2の場合、3層のシリコンp−i−n層で電荷分離を行った上で、水素発生は白金触媒が担い、酸素発生は酸化ルテニウムが担っている。また、非特許文献3では、異なる波長の光を吸収する多接合光電変換材料を、水素発生触媒にPt、酸素発生触媒にRuO2を用い、高効率化を図っている。また特許文献4や非特許文献3では、基盤上に、水素発生触媒(NiFeO)と、3層のシリコンp−i−nを並列に積層、シリコン層の上にさらに酸素発生触媒(Co−Mo)を担持することにより、一体化水素製造装置を作製している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−89336号公報
【特許文献2】特表2003−504799号公報
【特許文献3】特表2004−504934号公報
【特許文献4】特開2003−288955号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America、2006年、43巻、15729−15735頁
【非特許文献2】Applied Physics Letters、1989年、55巻、386−387頁
【非特許文献3】Journal of Physical Chemistry,2009年、113巻、14575−14581頁
【非特許文献4】International Journal of Hydrogen Energy、2003年、28巻、1167−1169頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来の光電変換装置が受光することにより生じる起電力を利用した気体製造装置では、電解用電極から生じる気体を電解液中の気泡として回収するため、2つの電解用電極から生じる2つの気体の回収口が近接してしまい、配管が複雑になっている。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、発生させた気体を簡素化された配管により回収できる気体製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、受光面およびその裏面を有する光電変換部と、前記裏面の上に並べて設けられ、かつ、電解液に接触可能な面をそれぞれ有する第1および第2電解用電極とを備え、第1および第2電解用電極が電解液と接触するとき、第1および第2電解用電極は、前記光電変換部が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体が発生するように設けられ、前記光電変換部の受光面を水平にしたとき、第1電解用電極と第2電解用電極とは、電解液に接触可能な面と水平な基準面との間の傾斜角が異なることを特徴とする気体製造装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1および第2電解用電極は、光電変換部が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体が発生するように設けられているため、第1電解用電極の表面で第1気体を発生させることができ、第2電解用電極の表面で第2気体を発生させることができる。
本発明によれば、光電変換部の裏面上に第1電解用電極および第2電解用電極を設けるため、光電変換部の受光面に電解液を介さず光を入射させることができ、電解液による入射光の吸収や入射光の散乱を防止することができる。このことにより、光電変換部へ入射光の量を多くすることができ、光利用効率を高くすることができる。
本発明によれば、光電変換部の裏面上に第1電解用電極および第2電解用電極を設けるため、受光面に入射する光が、第1および第2電解用電極、ならびにそこからそれぞれ発生する第1気体及び第2気体により吸収や散乱されることはない。このことにより、光電変換部へ入射光の量を多くすることができ、光利用効率を高くすることができる。
【0012】
本発明によれば、第1電解用電極と第2電解用電極とは、電解液に接触可能な面と水平な基準面との間の傾斜角が異なるため、第1気体が気泡として上昇するときに案内面となる第1電解用電極の電解液に接触可能な面と、第2気体が気泡として上昇するときに案内面となる第2電解用電極の電解液に接触可能な面とをずらして設けることができる。このことにより、第1電解用電極の上端部に近接して設ける第1気体を回収するための配管と、第2電解用電極の上端部に近接して設ける第2気体を回収するための配管とを重なることなく設けることができ、配管を簡素化することができる。特に、気体製造装置が、第1電解用電極および第2電解用電極のうち少なくとも一方が複数設けられた場合や、複数の気体製造装置を並べて設置した場合、複数の第1気体の回収口を接続するための配管と、複数の第2気体の回収口を接続するための配管を重なることなく設けることができ、配管を簡素化することができる。このことにより、第1気体および第2気体を回収するための配管を設けるときの設置コストを低減することができ、配管の接続ミスなどを未然に防ぐことができる。また、第1電解用電極と第2電解用電極とは、電解液に接触可能な面と水平な基準面との間の傾斜角が異なるため、光電変換部の受光面が実質的に水平になるように設置することも可能になり、設置費用を低減することができる。また、気体製造装置を池や海の水面上に設置することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略平面図である。
【図2】図1の一点鎖線A−Aにおける気体製造装置の概略断面図である。
【図3】図1の点線B−Bにおける気体製造装置の概略断面図である。
【図4】図1の点線C−Cにおける気体製造装置の概略断面図である。
【図5】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略裏面図である。
【図6】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図7】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図8】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図9】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図10】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図11】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図12】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図13】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図14】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図15】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図16】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図17】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略平面図である。
【図18】図17の点線A−Aにおける気体製造装置の概略断面図である。
【図19】本発明の一実施形態の気体製造装置アレイの構成を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の気体製造装置は、受光面およびその裏面を有する光電変換部と、前記裏面の上に並べて設けられ、かつ、電解液に接触可能な面をそれぞれ有する第1および第2電解用電極とを備え、第1および第2電解用電極が電解液と接触するとき、第1および第2電解用電極は、前記光電変換部が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体が発生するように設けられ、前記光電変換部の受光面を水平にしたとき、第1電解用電極と第2電解用電極とは、電解液に接触可能な面と水平な基準面との間の傾斜角が異なることを特徴とする。
【0015】
本発明において、傾斜角とは、水平な基準面に対する傾斜角であり、0度以上180度以下の範囲の角度である。2つの面を傾斜角で比較する場合、一方の面が0度より大きく90度よりも小さいx度の傾斜角を有し、他方の面が(180―x)度の傾斜角を有する場合、この2つの面の傾斜角は異なる。
本発明の気体製造装置において、前記光電変換部の受光面を水平にしたとき、第1電解用電極の電解液に接触可能な面の上端に近接して設けられた第1気体排出口と、第2電解用電極の電解液に接触可能な面の上端に近接して設けられた第2気体排出口とをさらに備え、第1電解用電極は、第1気体を第1気体排出口から回収できるように傾斜した電解液に接触可能な面を有し、第2電解用電極は、第2気体を第2気体排出口から回収できるように傾斜した電解液に接触可能な面を有することが好ましい。
このような構成によれば、第1気体を第1気体排出口から回収することができ、第2気体を第2気体排出口から回収することができる。
本発明の気体製造装置において、前記光電変換部は、方形状の受光面を有し、第1および第2気体排出口は、それぞれ前記光電変換部の受光面の対向する辺に近接して設けられたことが好ましい。このような構成によれば、第1気体排出口および第2気体排出口を光電変換部の両側に設けることができ、第1気体を回収するための配管および第2気体を回収するための配管を簡素化することができる。
【0016】
本発明の気体製造装置において、第1および第2電解用電極は、少なくとも一方が複数であり、かつ、それぞれ帯状の電解液に接触可能な面を有し、かつ、この面の長辺が隣接するように交互に設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、第1気体が発生する反応が生じる部分と、第2気体が発生する反応が生じる部分との間の距離を短くすることができ、電解液中で生じるイオン濃度の不均衡をより少なくすることができる。また、電解液に接触可能な面を帯状とすることにより、第1気体および第2気体を容易に回収することができる。
本発明の気体製造装置において、第1電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられた第1型部および第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられた第2型部をさらに備え、第1型部および第2型部は、前記光電変換部の受光面を水平にしたとき、第1電解用電極の電解液に接触可能な面と水平な基準面との間の傾斜角と、第2電解用電極の電解液に接触可能な面と前記基準面との間の傾斜角とが異なるように成形されたことが好ましい。
このような構成によれば、第1電解用電極の電解液に接触可能な面と水平な基準面との間の傾斜角と、第2電解用電極の電解液に接触可能な面と前記基準面との間の傾斜角とを容易に異なるようにすることができる。
【0017】
本発明の気体製造装置において、第1型部および第2型部は、固体樹脂からなることが好ましい。
このような構成によれば、第1型部と第2型部を容易に成形することができる。
本発明の気体製造装置において、第1型部と第1電解用電極との間または第2型部と第2電解用電極との間に第1導電部をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部が受光することにより生じた起電力を第1および第2電解用電極に出力するとき、内部抵抗をより小さくすることができる。
本発明の気体製造装置において、第1および第2電解用電極は、それぞれ電解液に接触可能な面に傾斜方向に伸びる溝状のくぼみを有することが好ましい。
このような構成によれば、第1気体および第2気体をそれぞれ気泡として溝状のくぼみに沿って上昇させることができ、第1気体および第2気体を分離して回収することができる。また、この構成によれば、第1電解用電極と第2電解用電極との間に設ける隔壁も省略可能である。
【0018】
本発明の気体製造装置において、光電変換部の受光面を水平にしたとき、第1電解用電極は、水平な基準面との間の傾斜角が1度以上60度以下の電解液に接触可能な面を有し、第2電解用電極は、前記基準面との間の傾斜角が120度以上179度以下の電解液に接触可能な面を有することが好ましい。
このような構成によれば、第1気体を回収するための回収口と第2気体を回収するための回収口とをそれぞれ気体製造装置の両側に設けることができ、第1気体を回収するための配管と第2気体を回収するための配管をそれぞれ気体製造装置の両側に設けることができる。
本発明の気体製造装置において、前記光電変換部は、受光することによりその受光面と裏面との間に起電力が生じ、第1電解用電極は、前記光電変換部の裏面と電気的に接続し、第2電解用電極は、前記光電変換部の受光面と電気的に接続することが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部に積層構造のものを利用することができる。
【0019】
本発明の気体製造装置において、前記光電変換部の受光面に接触する第1電極をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、内部抵抗を小さくすることができる。
本発明の気体製造装置において、第1電極と第2電解用電極とを電気的に接続する第2導電部をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の受光面と第2電解用電極とを電気的に接続することができる。
本発明の気体製造装置において、第2導電部は、前記光電変換部を貫通するコンタクトホールに設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の受光面と第2電解用電極との間の配線距離を短くすることができ、内部抵抗を小さくすることができる。
【0020】
本発明の気体製造装置において、第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられた第2型部を備え、第2型部は、絶縁性を有し、かつ、前記光電変換部の側面を覆うように設けられ、第2導電部は、第2型部の前記光電変換部の側面を覆う部分の上に設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、第2導電部を少ない工程で設けることができ、製造コストを低減することができる。
本発明の気体製造装置において、第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられた第2型部を備え、第2型部は、絶縁性を有し、かつ、前記光電変換部の側面を覆うように設けられ、第2電解用電極は、第2型部の前記光電変換部の側面を覆う部分の上に設けられ、かつ、第1電極と接触することが好ましい。
このような構成によれば、第2導電部を設けることなく、第1電極と第2電解用電極とを電気的に接続することができる。
【0021】
本発明の気体製造装置において、第1電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられた第1型部と、第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられた第2型部とを備え、前記光電変換部の裏面と第1型部との間および前記光電変換部の裏面と第2型部との間に設けられた第2電極をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部が受光することにより生じる起電力を第1および第2電解用電極に出力するとき、光電変換部の裏面と第1電解用電極との間の内部抵抗をより小さくすることができる。
本発明の気体製造装置において、第2電極と第1電解用電極とを電気的に接続する第3導電部をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の裏面と第1電解用電極とを電気的に接続することができる。
【0022】
本発明の気体製造装置において、第3導電部は、第1型部の側部を覆うように設けられ、かつ、第2電極と接触することが好ましい。
このような構成によれば、容易に光電変換部の裏面と第1電解用電極とを電気的に接続することができる。
本発明の気体製造装置において、前記光電変換部は、受光することにより前記裏面の第1および第2区域間に電位差が生じ、第1区域は、第1電解用電極と電気的に接続し、第2区域は、第2電解用電極と電気的に接続することが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部を第1区域と第2区域との間に起電力が生じるものとすることができる。
【0023】
本発明の気体製造装置において、前記光電変換部は、n型半導体部およびp型半導体部を有する少なくとも1つの半導体材料からなり、第1および第2区域のうち、一方は前記n型半導体部の一部であり、他方は前記p型半導体部の一部であることが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部が受光することにより、光電変換部の裏面の第1および第2区域間に起電力を生じさせることができる。
本発明の気体製造装置において、透光性基板をさらに備え、前記光電変換部は、前記透光性基板の上に設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部を透光性基板の上に形成することができる。
【0024】
本発明の気体製造装置において、透光性基板をさらに備え、前記光電変換部は、前記透光性基板の上に設けられ、前記透光性基板は、前記光電変換部の受光面を水平にしたとき、第1電解用電極の電解液に接触可能な面と水平な基準面との間の傾斜角と、第2電解用電極の電解液に接触可能な面と前記基準面との間の傾斜角とが異なるように成形されたことが好ましい。
このような構成によれば、透光性基板の形により第1および第2電解用電極の電解液に接触可能な面の傾斜角が異なるように、第1および第2電解用電極を設けることができる。
本発明の気体製造装置において、第2電解用電極は、絶縁部を介して前記光電変換部の裏面上に設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、リーク電流が生じることを防止することができる。
本発明の気体製造装置において、前記光電変換部は、p型半導体層、i型半導体層およびn型半導体層からなる光電変換層を有することが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部に光を入射させることにより起電力を生じさせることができる。
【0025】
本発明の気体製造装置において、前記光電変換部は、直列接続した複数の光電変換層を含み、前記複数の光電変換層は、受光することにより生じる起電力を第1電解用電極および第2電解用電極に供給することが好ましい。
このような構成によれば、容易に高電圧の起電力を第1および第2電解用電極に出力することができる。
本発明の気体製造装置において、各光電変換層は、第4導電部により直列接続されたことが好ましい。
このような構成によれば、各光電変換層を並べて設けることができる。
本発明の気体製造装置において、第1電解用電極および第2電解用電極のうち、一方は電解液からH2を発生させる水素発生部であり、他方は電解液からO2を発生させる酸素発生部であり、前記水素発生部および前記酸素発生部は、それぞれ電解液からH2が発生する反応の触媒および電解液からO2が発生する反応の触媒を含むことが好ましい。
このような構成によれば、燃料電池の燃料となる水素を製造することができる。
【0026】
本発明の気体製造装置において、前記水素発生部および前記酸素発生部のうち少なくとも一方は、前記受光面の面積より大きい触媒表面積を有することが好ましい。
このような構成によれば、より効率的に水素および酸素を製造することができる。
本発明の気体製造装置において、前記水素発生部および前記酸素発生部のうち少なくとも一方は、触媒が担持された多孔質の導電体であることが好ましい。
このような構成によれば、水素または酸素が発生する反応の触媒面積を広くすることができる。
本発明の気体製造装置において、前記水素発生部は、水素発生触媒としてPt、Ir、Ru、Pd、Rh、Au、Fe、NiおよびSeのうち少なくとも1つを含むことが好ましい。
このような構成によれば、電解液から水素を効率よく発生させることができる。
【0027】
本発明の気体製造装置において、前記酸素発生部は、酸素発生触媒としてMn、Ca、Zn、CoおよびIrのうち少なくとも1つを含むことが好ましい。
このような構成によれば、電解液から酸素を効率よく発生させることができる。
本発明の気体製造装置において、透光性基板と電解液室とをさらに備え、前記光電変換部は、前記透光性基板の上に設けられ、第1電解用電極および第2電解用電極の上に天板をさらに備え、前記電解液室は、第1電解用電極および第2電解用電極と前記天板との間に設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、第1電解用電極の電解液に接触可能な面と、第2電解用電極の電解液に接触可能な面とを電解液室に面して設けることができ、第1および第2電解用電極を電解液に接触させることができる。
【0028】
本発明の気体製造装置において、第1電解用電極と前記天板との間の電解液室および第2電解用電極と天板との間の電解液室とを仕切る隔壁をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、隔壁により第1気体と第2気体を分離することができる。
本発明の気体製造装置において、前記隔壁は、イオン交換体を含むことが好ましい。
このような構成によれば、電解液中で生じるイオン濃度の不均衡を容易に解消することができる。
また、本発明は、本発明の気体製造装置を前記光電変換部の受光面が実質的に水平となるように設置し、前記気体製造装置は、第1気体を排出する第1気体排出口と、第2気体を排出する第2気体排出口と、電解液室とを備え、前記電解液室に電解液を導入し、太陽光を前記光電変換部の受光面に入射させることにより第1電解用電極および第2電解用電極からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させ、第1気体排出口および第2気体排出口からそれぞれ第1気体および第2気体を排出する気体製造方法も提供する。
本発明の気体製造方法によれば、光電変換部に光を入射させることにより、第1気体および第2気体を製造ことができ、容易に第1気体および第2気体を回収することができる。
【0029】
さらに本発明は、複数の本発明の気体製造装置と、第1気体排出路と、第2気体排出路とを備え、各気体製造装置は、第1気体を排出する第1気体排出口と第2気体を排出する第2気体排出口とを備え、第1気体排出路は、各気体製造装置の第1気体排出口と導通し、第2気体排出路は、各気体製造装置の第2気体排出口と導通する気体製造装置アレイも提供する。
本発明の気体製造装置アレイによれば、第1気体および第2気体の発生量を多くすることができ、第1気体および第2気体を第1気体排出路および第2気体排出路からそれぞれ回収することができる。また、第1気体排出路および第2気体排出路を簡素化して設けることができる。
【0030】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0031】
気体製造装置の構成
図1は本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略平面図である。図2〜4は、それぞれ図1の一点鎖線A−A、点線B−B、点線C−Cにおける気体製造装置の概略断面図である。図5は本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略裏面図である。また図6〜16はそれぞれ本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。なお、図6、13、15の断面図は、図1の点線B−Bにおける気体製造装置の断面図に対応し、図7、8、11、12、14、16の断面図は、図1の点線C−Cにおける気体製造装置の断面図に対応し、図9、10は、図1の一点鎖線A−Aにおける気体製造装置の断面図に対応する。
【0032】
本実施形態の気体製造装置23は、受光面およびその裏面を有する光電変換部2と、光電変換部2の裏面の上に並べて設けられ、かつ、電解液に接触可能な面とをそれぞれ有する第1および第2電解用電極8、7とを備え、第1および第2電解用電極8、7が電解液と接触するとき、第1および第2電解用電極8、7は、光電変換部2が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体が発生するように設けられ、光電変換部2の受光面を水平にしたとき、第1電解用電極8と第2電解用電極7とは、電解液に接触可能な面と水平な基準面との間の傾斜角が異なることを特徴とする。
また、本実施形態の気体製造装置23は、透光性基板1を備えてもよい。
以下、本実施形態の気体製造装置について説明する。
【0033】
1.透光性基板
透光性基板1は、本実施形態の気体製造装置23が備えてもよい。また、光電変換部2は、受光面が透光性基板1側となるように透光性基板1の上に設けられてもよい。なお、光電変換部2が、半導体基板などからなり一定の強度を有する場合、透光性基板1は省略することが可能である。また、光電変換部2が樹脂フィルムなど柔軟性を有する材料の上に形成可能な場合、透光性基板1は省略することができる。
【0034】
また、透光性基板1は、本気体製造装置を構成するための土台となる部材である。また、太陽光を光電変換部2の受光面で受光するためには、透明であり光透過率が高いことが好ましいが、光電変換部2へ効率的な光の入射が可能な構造であれば、光透過率に制限はない。
光透過率が高い基板材料として、例えば、ソーダガラス、石英ガラス、パイレックス(登録商標)、合成石英板等の透明なリジッド材、あるいは透明樹脂板やフィルム材等が好適に用いられる。化学的および物理的安定性を備える点より、ガラス基板を用いることが好ましい。
透光性基板1の光電変換部2側の表面には、入射した光が光電変換部2の表面で有効に乱反射されるように、微細な凹凸構造に形成することができる。この微細な凹凸構造は、例えば反応性イオンエッチング(RIE)処理もしくはブラスト処理等の公知の方法により形成することが可能である。
【0035】
また、透光性基板1は、光電変換部2の受光面を水平にしたとき、第1電解用電極8の電解液に接触可能な面と水平な基準面との間の傾斜角と、第2電解用電極7の電解液に接触可能な面と水平な基準面との間の傾斜角とが異なるように成形されてもよい。このように成形された透光性基板1の上に光電変換部2、第1および第2電解用電極8、7を設けることにより、第1電解用電極8の電解液に接触可能な面と水平な基準面との間の傾斜角と、第2電解用電極7の電解液に接触可能な面と水平な基準面との間の傾斜角とが異なるように設けることができる。たとえば、本実施形態の気体製造装置は、図6、7のような断面を有することができる。なお、図6は、図1の点線B−Bの断面図に対応した断面図であり、図7は、図1の点線C−Cの断面図に対応した断面図である。図6、7のような透光性基板1を用いることにより、第1および第2電解用電極8、7のそれぞれの電解液に接触可能な面の傾斜角を異なるように設けることができ、第1気体回収口20と第2気体回収口19とを気体製造装置の両側に設けることができる。このことにより第1気体を回収するための配管および第2気体を回収するための配管を簡素化することができる。
このような成形された透光性基板1は、ガラスなどを型に流し込むことにより形成してもよく、板状基板を変形させることにより形成してもよく、板状の基板を組み合わせることにより形成してもよい。
【0036】
2.第1電極、第2導電部
第1電極4は、透光性基板1の上に設けることができ、光電変換部2の受光面と接触するように設けることができる。また、第1電極4は透光性を有してもよい。また、第1電極4は、透光性基板1を省略可能の場合、光電変換部2の受光面に直接設けられてもよい。第1電極4は、第2電解用電極7と電気的に接続することができる。第1電極4を設けることにより、光電変換部2の受光面と第2電解用電極7との間に流れる電流を大きくすることができる。また、光電変換部2が図14〜16のように光電変換部2の裏面の第1区域と第2区域との間に起電力が生じるものである場合、第1電極4は不要である。
第1電極4は、図4、7、8、11のように第2導電部10を介して第2電解用電極7と電気的に接続してもよく、図12のように第2電解用電極7と接触してもよい。
第1電極4は、例えば、ITO、SnO2などの透明導電膜からなってもよく、Ag、Auなどの金属のフィンガー電極からなってもよい。
【0037】
以下に第1電極4を透明導電膜とした場合について説明する。
透明導電膜は、光電変換部2の受光面と第2電解用電極7とのコンタクトを取りやすくするために用いている。
一般に透明電極として使用されているものを用いることが可能である。具体的にはIn−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2等を挙げることができる。なお本透明導電膜は、太陽光の光線透過率が85%以上、中でも90%以上、特に92%以上であることが好ましい。このことにより光電変換部2が光を効率的に吸収することができるためである。
透明導電膜の作成方法としては公知の方法を用いることができ、スパッタリング、真空蒸着、ゾルゲル法、クラスタービーム蒸着法、PLD(Pulse Laser Deposition)法などが挙げられる。
【0038】
第2導電部10は、第1電極4と第2電解用電極7とにそれぞれ接触するように設けることができる。第2の導電部10を設けることにより、容易に光電変換部2の受光面に接触した第1電極4と第2電解用電極7とを電気的に接続することができる。
【0039】
また、第2導電部10は、図4、7、8のように光電変換部2または第2型部12を貫通するコンタクトホールに設けられてもよい。このことにより、光電変換部2の受光面と第2電解用電極7との間の電流経路を短くすることができ、より効率的に第1気体および第2気体を発生させることができる。また、第2導電部10が設けられたコンタクトホールは、1つまたは複数でもよく、円形の断面を有してもよい。
また、第2導電部10は、図11のように光電変換部2の側面を覆うように設けられてもよい。
【0040】
第2導電部10の材料は、導電性を有しているものであれば特に制限されない。導電性粒子を含有するペースト、例えばカーボンペースト、Agペースト等をスクリーン印刷法、インクジェット法等で塗布し乾燥もしくは焼成する方法や、原料ガスを用いたCVD法等により製膜する方法、PVD法、蒸着法、スパッタ法、ゾルゲル法、電気化学的な酸化還元反応を利用した方法等が挙げられる。
【0041】
3.光電変換部
光電変換部2は、受光面および裏面を有し、光電変換部2の裏面の上に第1電解用電極8と第2電解用電極7が設けられる。なお、受光面とは、光電変換するための光を受光する面であり、裏面とは、受光面の裏の面である。また、光電変換部2は、第1電極4が設けられた透光性基板1の上に受光面を下にして設けることができる。光電変換部2は、例えば、図2〜4、6〜13のように受光面と裏面との間に起電力が生じるものであってもよく、図14〜16のように裏面の第1区域と第2区域との間に起電力が生じるものであってもよい。図14〜16のような光電変換部2は、n型半導体領域37とp型半導体領域36を形成した半導体基板などにより形成することができる。また、透光性基板1が図6、7のように傾斜角の異なる部分を有している場合、傾斜角の異なる部分の上にそれぞれ光電変換部2を形成し、これらの光電変換部を電気的に接続してもよい。
光電変換部2の形は、特に限定されないが、例えば、方形状とすることができる。
光電変換部2は、入射光により電荷分離することができ、起電力が生じるものであれば、特に限定されないが、例えば、シリコン系半導体を用いた光電変換部、化合物半導体を用いた光電変換部、色素増感剤を利用した光電変換部、有機薄膜を用いた光電変換部などである。
【0042】
第1気体および第2気体が水素および酸素の場合、光電変換部2は、光を受光することにより、第1電解用電極8および第2電解用電極7において水素と酸素が発生するために必要な起電力が生じる材料を使用する必要がある。第1電解用電極8と第2電解用電極7の電位差は、水分解のための理論電圧(1.23V)より大きくする必要があり、そのためには光電変換部2で十分大きな電位差を生み出す必要がある。そのため光電変換部2は、pn接合など起電力を生じさせる部分を二接合以上直列に接続することが好ましい。例えば、図16のように並列に設けられた光電変換層を第4導電部42により接続した構造を有することができる。
【0043】
光電変換を行う材料は、シリコン系半導体、化合物半導体、有機材料をベースとしたものなどが挙げられるが、いずれの光電変換材料も使用することが可能である。また、起電力を大きくするために、これらの光電変換材料を積層することが可能である。積層する場合には同一材料で多接合構造を形成することが可能であるが、光学的バンドギャップの異なる複数の光電変換層を積層し、各々の光電変換層の低感度波長領域を相互に補完することにより、広い波長領域にわたり入射光を効率よく吸収することが可能となる。これらの複数の光電変換層は、それぞれ異なるバンドギャップを有することが好ましい。このような構成によれば、光電変換部2で生じる起電力をより大きくすることができ、電解液をより効率的に電気分解することができる。
【0044】
また、光電変換層間の直列接続特性の改善や、光電変換部2で発生する光電流の整合のために、層間に透明導電膜等の導電体を介在させることが可能である。これにより光電変換部2の劣化を抑制することが可能となる。
光電変換部2の例を以下に具体的に説明する。また、光電変換部2は、これらを組み合わせたものでもよい。また、以下の光電変換部2の例は、矛盾しない限り光電変換層とすることもできる。
【0045】
3−1.シリコン系半導体を用いた光電変換部
シリコン系半導体を用いた光電変換部2は、例えば、単結晶型、多結晶型、アモルファス型、球状シリコン型、及びこれらを組み合わせたもの等が挙げられる。いずれもp型半導体とn型半導体が接合したpn接合を有することができる。また、p型半導体とn型半導体との間にi型半導体を設けたpin接合を有するものとすることもできる。また、pn接合を複数有するもの、pin接合を複数有するもの、pn接合とpin接合を有するものとすることもできる。
シリコン系半導体とは、シリコンを含む半導体であり、例えば、シリコン、シリコンカーバイド、シリコンゲルマニウムなどである。また、シリコンなどにn型不純物またはp型不純物が添加されたものも含み、また、結晶質、非晶質、微結晶のものも含む。
また、シリコン系半導体を用いた光電変換部2は、透光性基板1の上に形成された薄膜または厚膜の光電変換層であってもよく、また、シリコンウェハなどのウェハにpn接合またはpin接合を形成したものでもよく、また、pn接合またはpin接合を形成したウェハの上に薄膜の光電変換層を形成したものでもよい。
【0046】
シリコン系半導体を用いた光電変換部2の形成例を以下に示す。
透光性基板1上に積層した第1電極4上に、第1導電型半導体層をプラズマCVD法等の方法で形成する。この第1導電型半導体層としては、導電型決定不純物原子濃度が1×1018〜5×1021/cm3程度ドープされた、p+型またはn+型の非晶質Si薄膜、または多結晶あるいは微結晶Si薄膜とする。第1導電型半導体層の材料としては、Siに限らず、SiCあるいはSiGe,SixO1-x等の化合物を用いることも可能である。
【0047】
このように形成された第1導電型半導体層上に、結晶質Si系光活性層として多結晶あるいは微結晶の結晶質Si薄膜をプラズマCVD法等の方法で形成する。なお、導電型は第1導電型半導体よりドーピング濃度が低い第1導電型とするか、あるいはi型とする。結晶質Si系光活性層の材料としては、Siに限らず、SiCあるいはSiGe,SixO1-x等の化合物を用いることも可能である。
【0048】
次に、結晶質Si系光活性層上に半導体接合を形成するため、第1導電型半導体層とは反対導電型である第2導電型半導体層をプラズマCVD等の方法で形成する。この第2導電型半導体層としては、導電型決定不純物原子が1×1018〜5×1021/cm3程度ドープされた、n+型またはp+型の非晶質Si薄膜、または多結晶あるいは微結晶Si薄膜とする。第2導電型半導体層の材料としては、Siに限らず、SiCあるいはSiGe,SixO1-x等の化合物を用いることも可能である。また接合特性をより改善するために、結晶質Si系光活性層と第2導電型半導体層との間に、実質的にi型の非単結晶Si系薄膜を挿入することも可能である。このようにして、受光面に最も近い光電変換層を一層積層することができる。
【0049】
続けて第二層目の光電変換層を形成する。第二層目の光電変換層は、第1導電型半導体層、結晶質Si系光活性層、第2導電型半導体層からなり、それぞれの層は、第一層目の光電変換層中の対応する第1導電型半導体層、結晶質Si系光活性層、第2導電型半導体層と同様に形成する。二層のタンデムで水分解に十分な電位を得ることができない場合は、三層あるいはそれ以上の層状構造を取ることが好ましい。ただし第二層目の光電変換層の結晶質Si系光活性層の体積結晶化分率は、第一層目の結晶質Si系光活性層と比較すると高くすることが好ましい。三層以上積層する場合も同様に下層と比較すると体積結晶化分率を高くすることが好ましい。これは、長波長域での吸収が大きくなり、分光感度が長波長側にシフトし、同じSi材料を用いて光活性層を構成した場合においても、広い波長域で感度を向上させることが可能となるためである。すなわち、結晶化率の異なるSiでタンデム構造にすることにより、分光感度が広くなり、光の高効率利用が可能となる。このとき低結晶化率材料を受光面側にしないと高効率とならない。また結晶化率が40%以下に下がるとアモルファス成分が増え、劣化が生じてしまう。
【0050】
次に、シリコン基板を用いた光電変換部2の形成例を以下に示す。
シリコン基板としては、単結晶シリコン基板または多結晶シリコン基板などを用いることができ、p型であっても、n型であっても、i型であってもよい。このシリコン基板の一部にPなどのn型不純物を熱拡散またはイオン注入などによりドープすることによりn型半導体領域37を形成し、シリコン基板のほかの一部にBなどのp型不純物を熱拡散またはイオン注入などによりドープすることによりp型半導体領域36を形成することができる。このことにより、シリコン基板にpn接合、pin接合、npp+接合またはpnn+接合などを形成することができ、光電変換部2を形成することができる。
【0051】
n型半導体領域37およびp型半導体領域36は、図14〜16のようにシリコン基板にそれぞれ1つの領域を形成することができ、n型半導体領域37およびp型半導体領域36のうちどちらか一方を複数形成することもできる。また、図16のようにn型半導体領域37およびp型半導体領域36を形成したシリコン基板を並べて設置し、第4導電部42により直列接続することにより光電変換部2を形成することもできる。
なお、ここではシリコン基板を用いて説明したが、pn接合、pin接合、npp+接合またはpnn+接合などを形成することができる他の半導体基板を用いてもよい。また、n型半導体領域37およびp型半導体領域36を形成することができれば、半導体基板に限定されず、基板上に形成された半導体層であってもよい。
【0052】
3−2.化合物半導体を用いた光電変換部
化合物半導体を用いた光電変換部は、例えば、III−V族元素で構成されるGaP、GaAsやInP、InAs、II−VI族元素で構成されるCdTe/CdS、I−III−VI族で構成されるCIGS(Copper Indium Gallium DiSelenide)などを用いpn接合を形成したものが挙げられる。
【0053】
化合物半導体を用いた光電変換部の製造方法の一例を以下に示すが、本製造方法では、製膜処理等はすべて有機金属気相成長法(MOCVD;Metal Organic Chemical Vapor Deposition)装置を使って連続して行われる。III族元素の材料としては、例えばトリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、トリメチルインジウムなどの有機金属が水素をキャリアガスとして成長装置に供給される。V族元素の材料としては、例えばアルシン(AsH3)、ホスフィン(PH3)、スチビン(SbH3)等のガスが使われる。p型不純物またはn型不純物のドーパントとしては、例えばp型化にはジエチルジンク、またはn型化には、モノシラン(SiH4)やジシラン(Si2H6)、セレン化水素(H2Se)等が利用される。これらの原料ガスを、例えば700℃に加熱された基板上に供給することにより熱分解させ、所望の化合物半導体材料膜をエピタキシャル成長させることが可能である。これら成長層の組成は導入するガス組成により、また膜厚はガスの導入時間によって制御することが可能である。これらの光電変換部を多接合積層する場合は、層間での格子定数を可能な限り合わせることにより、結晶性に優れた成長層を形成することができ、光電変換効率を向上することが可能となる。
【0054】
pn接合を形成した部分以外にも、例えば受光面側に公知の窓層や、非受光面側に公知の電界層等を設けることによりキャリア収集効率を高める工夫を有してもよい。また不純物の拡散を防止するためのバッファ層を有していてもよい。
【0055】
3−3.色素増感剤を利用した光電変換部
色素増感剤を利用した光電変換部は、例えば、主に多孔質半導体、色素増感剤、電解質、溶媒などにより構成される。
多孔質半導体を構成する材料としては、例えば、酸化チタン、酸化タングステン、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、硫化カドミウム等公知の半導体から1種類以上を選択することが可能である。多孔質半導体を基板上に形成する方法としては、半導体粒子を含有するペーストをスクリーン印刷法、インクジェット法等で塗布し乾燥もしくは焼成する方法や、原料ガスを用いたCVD法等により製膜する方法、PVD法、蒸着法、スパッタ法、ゾルゲル法、電気化学的な酸化還元反応を利用した方法等が挙げられる。
【0056】
多孔質半導体に吸着する色素増感剤としては、可視光領域および赤外光領域に吸収を持つ種々の色素を用いることが可能である。ここで、多孔質半導体に色素を強固に吸着させるには、色素分子中にカルボン酸基、カルボン酸無水基、アルコキシ基、スルホン酸基、ヒドロキシル基、ヒドロキシルアルキル基、エステル基、メルカプト基、ホスホニル基等が存在することが好ましい。これらの官能基は、励起状態の色素と多孔質半導体の伝導帯との間の電子移動を容易にする電気的結合を提供する。
【0057】
これらの官能基を含有する色素として、例えば、ルテニウムビピリジン系色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、アゾ系色素、キナクリドン系色素、スクアリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポルフィリン系色素、フタロシアニン系色素、ベリレン系色素、インジゴ系色素、ナフタロシアニン系色素等が挙げられる。
【0058】
多孔質半導体への色素の吸着方法としては、例えば多孔質半導体を、色素を溶解した溶液(色素吸着用溶液)に浸漬する方法が挙げられる。色素吸着用溶液に用いられる溶媒としては、色素を溶解するものであれば特に制限されず、具体的には、エタノール、メタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリル等の窒素化合物類、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル等のエステル類、水等を挙げることができる。
【0059】
電解質は、酸化還元対とこれを保持する液体または高分子ゲル等固体の媒体からなる。
酸化還元対としては一般に、鉄系、コバルト系等の金属類や塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン物質が好適に用いられ、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム等の金属ヨウ化物とヨウ素の組み合わせが好ましく用いられる。さらに、ジメチルプロピルイミダゾールアイオダイド等のイミダゾール塩等を混入することもできる。
【0060】
また、溶媒としては、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、アセトニトリル等のニトリル化合物、エタノール、メタノール等のアルコール、その他、水や非プロトン極性物質等が用いられるが、中でも、カーボネート化合物やニトリル化合物が好適に用いられる。
【0061】
3−4.有機薄膜を用いた光電変換部
有機薄膜を用いた光電変換部2は、電子供与性および電子受容性を持つ有機半導体材料で構成される電子正孔輸送層、または電子受容性を有する電子輸送層と電子供与性を有する正孔輸送層とが積層されたものであってもよい。
電子供与性の有機半導体材料としては、電子供与体としての機能を有するものであれば特に限定されないが、塗布法により製膜できることが好ましく、中でも電子供与性の導電性高分子が好適に使用される。
【0062】
ここで導電性高分子とはπ共役高分子を示し、炭素−炭素またはヘテロ原子を含む二重結合または三重結合が、単結合と交互に連なったπ共役系からなり、半導体的性質を示すものをさす。
【0063】
電子供与性の導電性高分子材料としては、例えばポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリカルバゾール、ポリビニルカルバゾール、ポリシラン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフルオレン、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、およびこれらの誘導体、共重合体、あるいはフタロシアニン含有ポリマー、カルバゾール含有ポリマー、有機金属ポリマー等が挙げられる。中でも、チオフェン−フルオレン共重合体、ポリアルキルチオフェン、フェニレンエチニレン−フェニレンビニレン共重合体、フルオレン−フェニレンビニレン共重合体、チオフェン−フェニレンビニレン共重合体等が好適に利用される。
【0064】
電子受容性の有機半導体材料としては、電子受容体としての機能を有するものであれば特に限定されないが、塗布法により製膜できることが好ましく、中でも電子供与性の導電性高分子が好適に使用される。
電子受容性の導電性高分子としては、例えばポリフェニレンビニレン、ポリフルオレン、およびこれらの誘導体、共重合体、あるいはカーボンナノチューブ、フラーレンおよびこれらの誘導体、CN基またはCF3基含有ポリマーおよびそれらの−CF3置換ポリマー等が挙げられる。
【0065】
また、電子供与性化合物がドープされた電子受容性の有機半導体材料や、電子受容性化合物がドープされた電子供与性の有機半導体材料等を用いることが可能である。電子供与性化合物がドープされる電子受容性の導電性高分子材料としては、上述の電子受容性の導電性高分子材料を挙げることができる。ドープされる電子供与性化合物としては、例えばLi、K、Ca、Cs等のアルカリ金属やアルカリ土類金属のようなルイス塩基を用いることができる。なお、ルイス塩基は電子供与体として作用する。また、電子受容性化合物がドープされる電子供与性の導電性高分子材料としては、上述した電子供与性の導電性高分子材料を挙げることができる。ドープされる電子受容性化合物としては、例えばFeCl3、AlCl3、AlBr3、AsF6やハロゲン化合物のようなルイス酸を用いることができる。なお、ルイス酸は電子受容体として作用する。
【0066】
上記にて示した光電変換部2においては、第一義的には太陽光を受光させ光電変換を行うことを想定しているが、用途により蛍光灯や白熱灯、LED、特定の熱源から発せられる光等の人工光を照射し光電変換を行うことも可能である。
【0067】
4.第2電極、第3導電部
第2電極5は、光電変換部2の裏面と第1型部11との間および光電変換部2の裏面と第2型部12との間に設けることができる。また、第2電極5は、第1電解用電極8と電気的に接続することができる。第2電極5を設けることにより、光電変換部2の裏面と第1電解用電極8との間のオーミックロスを低減することができる。また、第2電極5は、図3、13のように第3導電部17を介して第1電解用電極8と電気的に接続してもよく、第1電解用電極8と接触してもよい。また、第3導電部17は、図3のように第1型部11に設けられたコンタクトホール内に設けられてもよく、図13のように第1型部11の側部を覆うように設けられてもよい。
また、第2電極5は、図6、7のように、光電変換部2の裏面と絶縁部21との間および光電変換部2の裏面と第1電解用電極8との間に設けられてもよい。
また、第2電極5は、電解液に対する耐食性および電解液に対する遮液性を有することが好ましい。このことにより、電解液による光電変換部2の腐食を防止することができる。
第2電極5は、導電性を有すれば特に限定されないが、例えば、金属薄膜であり、また、例えば、Al、Ag、Auなどの薄膜である。これらは、例えば、スパッタリングなどにより形成することができる。また、例えば、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2等の透明導電膜である。
【0068】
また、第3導電部17の材料は、導電性を有しているものであれば特に制限されない。導電性粒子を含有するペースト、例えばカーボンペースト、Agペースト等をスクリーン印刷法、インクジェット法等で塗布し乾燥もしくは焼成する方法や、原料ガスを用いたCVD法等により製膜する方法、PVD法、蒸着法、スパッタ法、ゾルゲル法、電気化学的な酸化還元反応を利用した方法等が挙げられる。
【0069】
5.第1型部、第2型部、第1導電部
第1型部11は、光電変換部2の裏面と第1電解用電極8との間に設けることができ、第2型部12は、光電変換部2の裏面と第2電解用電極7との間に設けることができる。また、第1型部11および第2型部12は、光電変換部2の受光面を水平にしたとき、第1電解用電極8の電解液に接触可能な面と水平な基準面との間の傾斜角と、第2電解用電極7の電解液に接触可能な面と水平な基準面との間の傾斜角とが異なるように成形されたものであってもよい。このように成形された第1型部11および第2型部12を設けることにより、第1電解用電極が電解液に接触する面と第2電解用電極の電解液に接触する面の傾斜角度を調節することができる。
【0070】
また、第1型部11および第2型部12は、例えば、図9、10のように溝状のくぼみを有してもよい。このような第1型部11の上に第1電解用電極8を形成し、第2型部12の上に第2電解用電極7を形成することにより、第1電解用電極8の電解液に接触可能な面、および第2電解用電極7の電解液に接触可能な面に溝状のくぼみを形成することができる。
【0071】
また、第1型部および第2型部は、電気的絶縁性を有してもよい。このことにより、リーク電流を低減することができる。また、この場合、第2型部12は、図11、12のように光電変換部2の側面を覆うように設けることができ、この光電変換部2の側面を覆った第2型部12の上に第2導電部10または第2電解用電極7を設けることができる。このことにより、リーク電流を防止して第2電解用電極7と第1電極4とを電気的に接続することができる。
第1型部11および第2型部12は、例えば、固体樹脂から形成することができる。固体樹脂とすることにより、所望の形状を有する第1型部11および第2型部12を形成することができる。
また、第1型部11は導電性材料からなってもよい。このことにより、第1型部を介して光電変換部2の裏面と第1電解用電極8とを電気的に接続することができる。
【0072】
また、第1型部11と第1電解用電極8との間、または第2型部12と第2電解用電極7との間に第1導電部9を設けることができる。第1導電部9を設けることにより、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極8と第2電解用電極7とに出力するときの内部抵抗を低減することができる。
第1導電部9は、例えば、図8、11、14、16のように第2型部12と第2電解用電極7との間に設けることができ、また、例えば、図13、15のように第1型部11と第1電解用電極8との間に設けることができる。
第1導電部11は、導電性を有すれば特に限定されないが、例えば、金属薄膜であり、また、例えば、Al、Ag、Auなどの薄膜である。これらは、例えば、スパッタリングなどにより形成することができる。また、例えば、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2等の透明導電膜である。
【0073】
6.絶縁部
絶縁部21は、リーク電流の発生を防止するために設けることができる。例えば、図4、7、8のように第2導電部10を光電変換部2を貫通するコンタクトホール内に設ける場合、コンタクトホールの側壁に絶縁部21を設けることができる。また、図7のように第2型部12を設けない場合、第2電解用電極7と光電変換部2の裏面との間に設けることができる。また、第2型部12が導電性を有する場合、第2型部12と光電変換部2の裏面との間に絶縁部21を設けることもできる。
【0074】
絶縁部11としては、有機材料、無機材料を問わず用いることが可能であり、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリアリーレン、芳香族ビニル化合物、フッ素系重合体、アクリル系重合体、ビニルアミド系重合体等の有機ポリマー、無機系材料としては、Al2O3等の金属酸化物、多孔質性シリカ膜等のSiO2や、フッ素添加シリコン酸化膜(FSG)、SiOC、HSQ(Hydrogen Silsesquioxane)膜、SiNx、シラノール(Si(OH)4)をアルコール等の溶媒に溶かし塗布・加熱することにより製膜する方法を用いることが可能である。
【0075】
絶縁部11を形成する方法としては、絶縁性材料を含有するペーストをスクリーン印刷法、インクジェット法、スピンコーティング法等で塗布し乾燥もしくは焼成する方法や、原料ガスを用いたCVD法等により製膜する方法、PVD法、蒸着法、スパッタ法、ゾルゲル法を利用した方法等が挙げられる。
【0076】
7.第1電解用電極、第2電解用電極
第1電解用電極8および第2電解用電極7は、光電変換部2の裏面上にそれぞれ設けられ、かつ、光電変換部2の裏面側の面とその裏面であり電解液に接触可能な面をそれぞれ有する。このことにより、第1電解用電極8は光電変換部2に入射する光を遮ることはない。
また、第1電解用電極8および第2電解用電極7は、電解液と接触するとき、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体を発生するように設けられる。例えば、光電変換部2が受光することにより受光面とその裏面との間に起電力が生じる場合、第1電解用電極8は、図3、6、13のように光電変換部2の裏面と電気的に接続することができ、第2電解用電極7は、図4、7、8、11、12のように光電変換部2の受光面と電気的に接続することができる。また、光電変換部2が受光することによりその裏面の第1区域と第2区域との間に起電力が生じる場合、図14〜16のように第1電解用電極8は第1区域と第2区域のうちどちらか一方と電気的に接続し、第2電解用電極7は第1区域と第2区域のうち他方と電気的に接続することとができる。
【0077】
また、第1電解用電極8および第2電解用電極7は、光電変換部2の受光面を水平にしたとき、第1電解用電極8の電解液に接触可能な面と水平な基準面との間の傾斜角と、第2電解用電極7の電解液に接触可能な面と水平な基準面との間の傾斜角とが異なるように設けられる。このことにより、第1気体が気泡として電解液中を上昇するときに案内面となる第1電解用電極8の電解液に接触可能な面と、第2気体が気泡として電解液中を上昇するときに案内面となる第2電解用電極7の電解液に接触可能な面とをずらして設けることができる。
第1電解用電極8および第2電解用電極7の傾斜角の差は、第1気体および第2気体を回収するための第1気体排出口20および第2気体排出口19が、例えば光電変換部2の受光面を水平にしたときに上下にずれるような差であってもよい。また、たとえば、図1のように気体製造装置23の両側のうち一方に第1気体排出口20が形成され、他方に第2気体排出口19が形成されるように、第1電解用電極8および第2電解用電極7の傾斜角の差がつけられてもよい。
【0078】
光電変換部2の受光面を水平にしたとき、第1電解用電極8の電解液に接触可能な面は、例えば、傾斜角が1度以上60度以下であってもよく、好ましくは5度以上30度以下であってもよい。また、このとき第2電解用電極7の電解液に接触可能な面は、例えば、傾斜角が120度以上179度以下であってもよく、好ましくは150度以上175度以下であってもよい。このことにより、気体製造装置23の両側のうち一方から第1気体を排出することができ、他方から第2気体を排出することができ、第1気体および第2気体を回収するための配管を簡素化することができる。
【0079】
第1電解用電極8の電解液に接触可能な面の傾斜角と、第2電解用電極7の電解液に接触可能な面の傾斜角に差をつける方法は、特に限定されないが、例えば、図2〜4、8〜16のように第1型部11および第2型部12を設けることにより傾斜角の差をつけてもよく、例えば図6、7のように透光性基板1を成形することにより傾斜角の差をつけてもよい。
なお、第1電解用電極8および第2電解用電極7の電解液に接触可能な面は、第1気体または第2気体が電解液中を気泡として上昇するときに案内面となるものであれば、平面であっても曲面であってもよい。また、電解液に接触可能な面が曲面であり、その傾斜角が場所により異なる場合、この曲面の傾斜角はその平均の傾斜角をいう。
【0080】
第1電解用電極8および第2電解用電極7は、それぞれ電解液に接触可能な面に傾斜方向に伸びる溝状のくぼみを有することができる。このことにより、第1気体または第2気体をこの溝状のくぼみに沿って電解液中を気泡として上昇させることができ、第1気体と第2気体とを容易に分離することができる。また、このような溝状のくぼみを形成することにより、第1電解用電極8と第2電解用電極7との間に形成する隔壁13を省略することもできる。溝状のくぼみは、例えば図9のように第1電解用電極8および第2電解用電極7の電解液に接触可能な面にそれぞれ1つ形成されてもよく、図10のように第1電解用電極8および第2電解用電極7の電解液に接触可能な面にそれぞれ複数形成されてもよい。
【0081】
第1電解用電極8および第2電解用電極7は、少なくとも一方が複数であり、かつ、それぞれ帯状の電解液に接触可能な面を有し、かつ、その面の長辺が隣接するように交互に設けられてもよい。図17は、本実施形態の気体製造装置の概略平面図であり、図18は、図17の点線A−Aにおける気体製造装置の概略断面図である。なお、この気体製造装置23の点線A−Aに垂直な方向の断面図は、図3、4のような断面を有している。このように、第1電解用電極8および第2電解用電極7を設けることにより、第1気体が発生する反応が生じる部分と、第2気体が発生する反応が生じる部分との間の距離を短くすることができ、電解液中で生じるイオン濃度の不均衡をより少なくすることができる。また、電解液に接触可能な面を帯状とすることにより、第1気体および第2気体を容易に回収することができる。また、気体製造装置23の両側のうち、一方に複数の第1気体排出口20を形成することができ、他方に複数の第2気体排出口19を形成することができる。このことにより第1気体を回収するための第1気体排出路25と第2気体を回収するための第2気体排出路26を気体製造装置23の両側に設けることができ、配管を簡素化することができる。もしくは、第1気体排出路25、第2気体排出路26を設けずとも、第1気体排出口20あるいは第2気体排出口19から排出される気体を、図示されない気体収集部を介して水上置換法等の方法により気体を収集することが可能である。
【0082】
また、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち少なくとも一方は、前記受光面の面積より大きい触媒表面積を有することが好ましい。このような構成によれば、光電変換部2で生じる起電力により、より効率的に第1気体または第2気体を発生させることができる。
また、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち少なくとも一方は、触媒が担持された多孔質の導電体であることが好ましい。このような構成によれば、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち少なくとも一方の触媒表面積を大きくすることができ、より効率的に第1気体または第2気体を発生させることができる。また、多孔質の導電体を用いることにより、光電変換部2と触媒との間の電流が流れることによる電位の変化を抑制することができ、より効率的に第1気体または第2気体を発生させることができる。
第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち、一方は水素発生部であってもよく、他方が酸素発生部であってもよい。この場合、第1気体および第2気体のうち一方は水素であり、他方は酸素である。
【0083】
9.水素発生部
水素発生部は、電解液からH2を発生させる部分であり、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうちどちらか一方である。
また、水素発生部は、電解液からH2が発生する反応の触媒を含んでもよい。このことにより、電解液からH2が発生する反応の反応速度を大きくすることができる。水素発生部は、電解液からH2が発生する反応の触媒のみからなってもよく、この触媒が担持体に担持されたものであってもよい。また、水素発生部は、光電変換部2の受光面の面積より大きい触媒表面積を有してもよい。このことにより、電解液からH2が発生する反応をより速い反応速度とすることができる。また、水素発生部は、触媒が担持された多孔質の導電体であってもよい。このことにより、触媒表面積を大きくすることができる。また、光電変換部2の受光面または裏面と水素発生部に含まれる触媒との間に電流が流れることによる電位の変化を抑制することができる。さらに、水素発生部は、水素発生触媒としてPt、Ir、Ru、Pd、Rh、Au、Fe、NiおよびSeのうち少なくとも1つを含んでもよい。このような構成によれば、光電変換部2で生じる起電力により、より速い反応速度で水素を発生させることができる。
【0084】
電解液からH2が発生する反応の触媒(水素発生触媒)は、2つのプロトンと2つの電子から1分子の水素への変換を促進する触媒であり、化学的に安定であり、水素生成過電圧が小さい材料を用いることができる。例えば、水素に対して触媒活性を有するPt,Ir,Ru,Pd,Rh,Au等の白金族金属およびその合金あるいは化合物、水素生成酵素であるヒドロゲナーゼの活性中心を構成するFe,Ni,Seの合金あるいは化合物、およびこれらの組み合わせ等を好適に用いることが可能である。中でもPtおよびPtを含有するナノ構造体は水素発生過電圧が小さく好適に用いることが可能である。光照射により水素発生反応が確認されるCdS,CdSe,ZnS,ZrO2などの材料を用いることもできる。
【0085】
水素発生触媒を導電体に担持することができる。触媒を担持する導電体としては、金属材料、炭素質材料、導電性を有する無機材料等が挙げられる。
金属材料としては、電子伝導性を有し、酸性雰囲気下で耐腐食性を有する材料が好ましい。具体的には、Au、Pt、Pd等の貴金属、Ti、Ta、W、Nb、Ni、Al、Cr、Ag、Cu、Zn、Su、Si等の金属並びにこれらの金属の窒化物および炭化物、ステンレス鋼、Cu−Cr、Ni−Cr、Ti−Pt等の合金が挙げられる。金属材料には、Pt、Ti、Au、Ag、Cu、Ni、Wからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を含むことが、他の化学的な副反応が少ないという観点から、より好ましい。これら金属材料は、比較的電気抵抗が小さく、面方向に電流を取り出しても電圧の低下を抑制することができる。また、Cu、Ag、Zn等の酸性雰囲気下での耐腐食性に乏しい金属材料を用いる場合には、Au、Pt、Pd等の耐腐食性を有する貴金属および金属、カーボン、グラファイト、グラッシーカーボン、導電性高分子、導電性窒化物、導電性炭化物、導電性酸化物等によって耐腐食性に乏しい金属の表面をコーティングしてもよい。
【0086】
炭素質材料としては、化学的に安定で導電性を有する材料が好ましい。例えば、アセチレンブラック、バルカン、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、VGCF、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、フラーレン等の炭素粉末や炭素繊維が挙げられる。
【0087】
導電性を有する無機材料としては、例えば、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2、酸化アンチモンドープ酸化スズが挙げられる。
【0088】
なお、導電性高分子としては、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン等が挙げられ、導電性窒化物としては、窒化炭素、窒化ケイ素、窒化ガリウム、窒化インジウム、窒化ゲルマニウム、窒化チタニウム、窒化ジルコニウム、窒化タリウム等が挙げられ、導電性炭化物としては、炭化タンタル、炭化ケイ素、炭化ジルコニウム、炭化チタニウム、炭化モリブデン、炭化ニオブ、炭化鉄、炭化ニッケル、炭化ハフニウム、炭化タングステン、炭化バナジウム、炭化クロム等が挙げられ、導電性酸化物としては、酸化スズ、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化アンチモンドープ酸化スズ等が挙げられる。
【0089】
水素発生触媒を担持する導電体の構造としては、板状、箔状、棒状、メッシュ状、ラス板状、多孔質板状、多孔質棒状、織布状、不織布状、繊維状、フェルト状が好適に使用できる。また、フェルト状電極の表面を溝状に圧着した溝付き導電体は、電気抵抗と電極液の流動抵抗を低減できるので好適である。
【0090】
10.酸素発生部
酸素発生部は、電解液からO2を発生させる部分であり、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうちどちらか一方である。
また、酸素発生部は、電解液からO2が発生する反応の触媒を含んでもよい。このことにより、電解液からO2が発生する反応の反応速度を大きくすることができる。また、酸素発生部は、電解液からO2が発生する反応の触媒のみからなってもよく、この触媒が担持体に担持されたものであってもよい。また、酸素発生部は、光電変換部2の受光面の面積より大きい触媒表面積を有してもよい。このことにより、電解液からO2が発生する反応をより速い反応速度とすることができる。また、酸素発生部は、触媒が担持された多孔質の導電体であってもよい。このことにより、触媒表面積を大きくすることができる。また、光電変換部2の受光面または裏面と酸素発生部に含まれる触媒との間に電流が流れることによる電位の変化を抑制することができる。さらに、酸素発生部は、酸素発生触媒としてMn、Ca、Zn、CoおよびIrのうち少なくとも1つを含んでもよい。このような構成によれば、光電変換部で生じる起電力により、より速い反応速度で酸素を発生させることができる。
【0091】
電解液からO2が発生する反応の触媒(酸素発生触媒)は、2つの水分子から1分子の酸素および4つのプロトンと4つの電子への変換を促進する触媒であり、化学的に安定であり、酸素発生過電圧が小さい材料を用いることができる。例えば、光を用い水から酸素発生を行う反応を触媒する酵素であるPhotosystem IIの活性中心を担うMn,Ca,Zn,Coを含む酸化物あるいは化合物や、Pt,RuO2,IrO2等の白金族金属を含む化合物や、Ti,Zr,Nb,Ta,W,Ce,Fe,Ni等の遷移金属を含む酸化物あるいは化合物、および上記材料の組み合わせ等を用いることが可能である。中でも酸化イリジウム、酸化マンガン、酸化コバルト、リン酸コバルトは、過電圧が小さく酸素発生効率が高いことから好適に用いることができる。
【0092】
酸素発生触媒を導電体に担持することができる。触媒を担持する導電体としては、金属材料、炭素質材料、導電性を有する無機材料等が挙げられる。これらの説明は、「9.水素発生部」に記載した水素発生触媒についての説明が矛盾がない限り当てはまる。
水素発生触媒および酸素発生触媒の単独の触媒活性が小さい場合、助触媒を用いることも可能である。例えば、Ni,Cr,Rh,Mo,Co,Seの酸化物あるいは化合物などが挙げられる。
【0093】
なお、水素発生触媒、酸素発生触媒の担持方法は、導電体もしくは半導体に直接塗布する方法や、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等のPVD法、CVD法等の乾式塗工法、電析法など、材料により適宜その手法を変え作製ことが可能である。光電変換部と触媒の間に適宜導電物質を担持することが可能である。また水素発生および酸素発生のための触媒活性が十分でない場合、金属やカーボン等の多孔質体や繊維状物質、ナノ粒子等に担持することにより反応表面積を大きくし、水素及び酸素発生速度を向上させることが可能である。
【0094】
11.天板、電解液室
天板14は、第1電解用電極8および第2電解用電極7の上に透光性基板1と対向するように設けることができる。また、天板14は、第1電解用電極8および第2電解用電極7と天板14との間に空間が設けられるように設けることができる。この空間を電解液室15とすることができ、電解液室15に電解液を導入することにより、第1電解用電極8および第2電解用電極7を電解液に接触させることができる。また、天板に箱状のものを用いる場合、天板14は箱体の底の部分であってもよい。
【0095】
また、天板14は、電解液室15を構成し、生成した第1気体および第2気体を閉じ込めるために構成される材料であり、機密性が高い物質が求められる。透明なものであっても不透明なものであっても特に限定されるものではないが、第1気体および第2気体が発生していることを視認できる点においては透明な材料であることが好ましい。透明な天板としては特に限定されず、例えば石英ガラス、パイレックス(登録商標)、合成石英板等の透明なリジッド材、あるいは透明樹脂板、透明樹脂フィルムなどを挙げることができる。中でも、ガスの透過性がなく、化学的物理的に安定な物質である点でガラス材を用いることが好ましい。
【0096】
12.隔壁
隔壁13は、第1電解用電極8と第2電解用電極7とを仕切るように設けることができる。また、隔壁13は、第1電解用電極8と天板14との間の空間である電解液室15および第2電解用電極7と天板14との間の空間である電解液室15とを仕切るように設けることができる。このことにより、第1電解用電極8および第2電解用電極7で発生させた第1気体および第2気体が混合することを防止することができ、第1気体および第2気体を分離して回収することができる。
また、隔壁13は、イオン交換体を含んでもよい。このことにより、第1電解用電極8と天板14との間の空間の電解液と第2電解用電極7と天板14との間の空間の電解液でアンバランスとなったイオン濃度を一定に保つことができる。
【0097】
隔壁13は、例えば、多孔質ガラス、多孔質ジルコニア、多孔質アルミナ等の無機膜あるいはイオン交換体を用いることが可能である。
イオン交換体としては、当該分野で公知のイオン交換体をいずれも使用でき、プロトン伝導性膜、カチオン交換膜、アニオン交換膜等を使用できる。
プロトン伝導性膜の材質としては、プロトン伝導性を有しかつ電気的絶縁性を有する材質であれば特に限定されず、高分子膜、無機膜又はコンポジット膜を用いることができる。
【0098】
高分子膜としては、例えば、パーフルオロスルホン酸系電解質膜である、デュポン社製のナフィオン(登録商標)、旭化成社製のアシプレックス(登録商標)、旭硝子社製のフレミオン(登録商標)等の膜や、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン等の炭化水素系電解質膜等が挙げられる。
【0099】
無機膜としては、例えば、リン酸ガラス、硫酸水素セシウム、ポリタングストリン酸、ポリリン酸アンモニウム等からなる膜が挙げられる。コンポジット膜としては、スルホン化ポリイミド系ポリマー、タングステン酸等の無機物とポリイミド等の有機物とのコンポジット等からなる膜が挙げられ、具体的にはゴア社製のゴアセレクト膜(登録商標)や細孔フィリング電解質膜等が挙げられる。さらに、高温環境下(例えば、100℃以上)で使用する場合には、スルホン化ポリイミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、スルホン化ポリベンゾイミダゾール、ホスホン化ポリベンゾイミダゾール、硫酸水素セシウム、ポリリン酸アンモニウム等が挙げられる。
【0100】
カチオン交換膜としては、カチオンを移動させることができる固体高分子電解質であればよい。具体的には、パーフルオロカーボンスルフォン酸膜や、パーフルオロカーボンカルボン酸膜等のフッ素系イオン交換膜、リン酸を含浸させたポリベンズイミダゾール膜、ポリスチレンスルホン酸膜、スルホン酸化スチレン・ビニルベンゼン共重合体膜等が挙げられる。
支持電解質溶液のアニオン輸率が高い場合には、アニオン交換膜の使用が好ましい。アニオン交換膜としては、アニオンの移動可能な固体高分子電解質を使用できる。具体的には、ポリオルトフェニレンジアミン膜、アンモニウム塩誘導体基を有するフッ素系イオン交換膜、アンモニウム塩誘導体基を有するビニルベンゼンポリマー膜、クロロメチルスチレン・ビニルベンゼン共重合体をアミノ化した膜等が挙げられる。
【0101】
13.シール材
シール材16は、透光性基板1と天板14を接着し、気体製造装置23内を流れる電解液および気体製造装置23内で生成した第1気体および第2気体を密閉するための材料である。天板14に箱状のものを用いる場合、この箱体と透光性基板1とを接着するためにシール材16が用いられる。シール材16は、例えば、紫外線硬化性接着剤、熱硬化性接着剤等が好適に使用されるが、その種類は限定されるものではない。紫外線硬化性の接着剤としては、200〜400nmの波長を持つ光を照射することにより重合が起こり光照射後数秒で硬化反応が起こる樹脂であり、ラジカル重合型とカチオン重合型に分けられ、ラジカル重合型樹脂としてはアクリルレート、不飽和ポリエステル、カチオン重合型としては、エポキシ、オキセタン、ビニルエーテル等が挙げられる。また熱硬化性の高分子接着剤としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、熱硬化性ポリイミド等の有機樹脂が挙げられる。熱硬化性の高分子接着剤は、熱圧着時に圧力を掛けた状態で加熱重合し、その後、加圧したまま、室温まで冷却することにより、各部材を良好に接合させるため、締め付け部材等を要しない。また、有機樹脂に加えて、ガラス基板に対して密着性の高いハイブリッド材料を用いることが可能である。ハイブリッド材料を用いることによって、弾性率や硬度等の力学的特性が向上し、耐熱性や耐薬品性が飛躍的に向上する。ハイブリッド材料は、無機コロイド粒子と有機バインダ樹脂とから構成される。例えば、シリカなどの無機コロイド粒子と、エポキシ樹脂、ポリウレタンアクリレート樹脂やポリエステルアクリレート樹脂などの有機バインダ樹脂とから構成されるものが挙げられる。
【0102】
ここではシール材16と記しているが、透光性基板1と天板14を接着させる機能を有するものであれば限定されず、樹脂製あるいは金属製のガスケットを用い外部からネジ等の部材を用いて物理的に圧力を加え機密性を高める方法等を適宜用いることも可能である。
【0103】
14.電解液室
電解液室15は、第1電解用電極8と天板14との間の空間および第2電解用電極7と天板14との間の空間とすることができる。また、電解液室15は、隔壁13により仕切ることができる。
生成した第1気体及び第2気体の気泡が効率よく第1電解用電極8または第2電解用電極7から離れるように、電解液室15の内部で電解液を循環させるような例えばポンプやファン、熱による対流発生装置などの簡易装置を備え付けることも可能である。
【0104】
15.給水口、第1気体排出口、第2気体排出口、第1気体排出路および第2気体排出路
給水口18は、気体製造装置23に含まれるシール材16の一部、もしくは天板14の一部などに開口を作ることにより設けることができる。給水口18は、第1気体及び第2気体へと分解された電解液を補充するために配置され、その配置箇所および形状は、原料となる電解液が効率よく気体製造装置へ供給されさえすれば、特に限定されるものではない。
【0105】
また、第1気体排出口20は、光電変換部2の受光面を上向きの状態で水平にしたとき、第1電解用電極8の電解液に接触可能な面の上端に近接して設けることができる。また、第2気体排出口19は、光電変換部2の受光面を上向きの状態で水平にしたとき、第2電解用電極7の電解液に接触可能な面の上端に近接して設けることができる。このことにより、気体製造装置23を光電変換部2の受光面が上向きの状態で水平になるように設置した場合に、第1電解用電極8で発生させた第1気体を気泡として電解液中を上昇させ第1気体排出口20から回収することができ、第2電解用電極7で発生させた第2気体を気泡として電解液中を上昇させ第2気体排出口19から回収することができる。
【0106】
また、第1気体排出口20は、第1気体排出路25と導通することができ、第2気体排出口19は第2気体排出路26と導通することができる。また、第1気体排出路25は、複数の第1気体排出口20と導通することができ、第2気体排出路26は、複数の第2気体排出口19と導通することができる。このことにより、気体製造装置23で発生させた第1気体および第2気体を回収することができる。
【0107】
16.電解液
電解液は、第1気体および第2気体の原料となるものであれば特に限定されないが、例えば、電解質を含む水溶液であり、例えば、0.1MのH2SO4を含む電解液、0.1Mリン酸カリウム緩衝液などである。この場合、電解液から第1気体および第2気体として水素および酸素を製造することができる。
【0108】
気体製造方法
本実施形態の気体製造方法は、気体製造装置23を前記受光面が実質的に水平となるように設置し、前記気体製造装置は、第1気体を排出する第1気体排出口と、第2気体を排出する第2気体排出口と、電解液室とを備え、前記電解液室に電解液を導入し、太陽光を前記光電変換部の受光面に入射させることにより第1電解用電極および第2電解用電極からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させ、第1気体排出口および第2気体排出口からそれぞれ第1気体および第2気体を排出する。
このことにより第1気体および第2気体を製造することができる。
【0109】
気体製造装置アレイ
本実施形態の気体製造装置アレイは、複数の本実施形態の気体製造装置23と、第1気体排出路25と、第2気体排出路26とを備え、各気体製造装置23は、第1気体を排出する第1気体排出口20と第2気体を排出する第2気体排出口19とを備え、第1気体排出路25は、各気体製造装置23の第1気体排出口20と導通し、第2気体排出路26は、各気体製造装置23の第2気体排出口19と導通する。たとえば、図19のように気体製造装置を配置することにより気体製造装置アレイを形成することができ、この場合、第1気体排出路25と第2気体排出路26とを各気体製造装置23の両側に設けることができるため、配管を簡素化することができる。
【符号の説明】
【0110】
1: 基板 2:光電変換部 4:第1電極 5:第2電極 7:第2電解用電極 8:第1電解用電極 9:第1導電部 10:第2導電部 11:第1型部 12:第2型部 13:隔壁 14:天板 15:電解液室 16:シール材 17:第3導電部 18:給水口 19:第2気体排出口 20:第1気体排出口 21:絶縁部 23:気体製造装置 25:第1気体排出路 26:第2気体排出路 28:光電変換層 33:第3導電部 35:半導体領域 36:p型半導体領域 37:n型半導体領域 40:アイソレーション 42:第4導電部 43:第5導電部 45:気体製造装置アレイ
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体製造装置、気体製造方法および気体製造装置アレイに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料資源の枯渇および地球温暖化ガス排出抑制などの観点から、再生可能エネルギーの利用が望まれている。再生可能エネルギー源としては太陽光、水力、風力、地熱、潮力、バイオマスなど多岐にわたるが、その中でも、太陽光は利用可能なエネルギー量が大きいこと、他の再生可能エネルギーに対し地理的制約が比較的少ないことから、太陽光から効率よく利用可能なエネルギーを生み出す技術の早期な開発と普及が望まれている。
【0003】
太陽光から生み出される利用可能なエネルギーの形態としては、太陽電池や太陽光熱タービンを用いて製造される電気エネルギー、太陽光エネルギーを熱媒体に集めることによる熱エネルギー、その他にも太陽光を用いた物質還元による液体燃料や水素などの貯蔵可能な燃料エネルギー等が挙げられる。太陽電池技術および太陽熱利用技術については、すでに実用化されている技術が多いものの、エネルギー利用効率が未だ低いことと、電気および熱を作り出す際のコストが依然高いことから、これらの改善に向けた技術開発が行われている。さらに、これら電気や熱というエネルギー形態は、短期のエネルギー変動を補完するような使用法は実現できるものの、例えば季節変動などの長期での変動を補完することは極めて困難であることや、エネルギー量の増加により発電設備の稼働率低下を招く可能性があることが課題である。これに対し、液体燃料や水素など、エネルギーを物質として蓄えておくことは、長期変動を効率よく補完するとともに発電設備の稼働率を高める技術として極めて有力であり、今後エネルギー利用効率を最大限に高め、二酸化炭素の排出量を徹底的に削減するためには必要不可欠な技術である。
【0004】
貯蔵可能な燃料の形態としては、炭化水素などの液体燃料や、バイオガス、水素などの気体燃料、バイオマス由来の木材ペレットや太陽光で還元された金属などの固体燃料などに大別することができる。インフラ整備の容易性、エネルギー密度の観点では液体燃料、燃料電池などとのトータルの利用効率向上の観点では水素をはじめとする気体燃料、貯蔵可能性とエネルギー密度の観点では固体燃料というように、各形態において長所短所を有するが、原料として容易に入手可能な水を利用できる観点から、太陽光により水を分解することによる水素製造技術が特に注目されている。
【0005】
水を原料として太陽光エネルギーを利用し水素を製造する方法としては、酸化チタン等の光触媒に白金を担持させ、この物質を水中に入れ光照射することにより半導体中で電荷分離を行い、電解液中のプロトンを還元、水を酸化することによる光分解法や、高温ガス炉などの熱エネルギーを利用して水を高温で直接分解する、あるいは金属等の酸化還元と共役させて間接的に分解する熱分解法、藻類など光を利用する微生物の代謝を利用した生物法、太陽電池で発電した電気と水の電気分解水素製造装置を組み合わせた水電気分解法、太陽電池に使用される光電変換材料に水素発生触媒、酸素発生触媒を担持することにより、光電変換で得られる電子と正孔を水素生成触媒、酸素発生触媒で反応に利用する光起電力法等が挙げられる。この中で、光電変換部と水素生成部を一体化することにより、小型の水素製造装置を作製することの可能性を有するものは光分解法、生物法、光起電力法と考えられるが、太陽光エネルギーの変換効率の観点から、光起電力法は実用化に最も近い技術の一つと考えられる。
【0006】
これまでに、光分解法や光起電力法による光電変換と水素発生を一体化した水素製造装置の例が開示されている。光分解法では例えば、特許文献1によると、ルテニウム錯体を吸着させた酸化チタンの光触媒電極と、白金電極、ヨウ素もしくは鉄の酸化還元を利用した装置が開示されている。また、特許文献2、3によると、2層の光触媒をタンデム接続し、白金カウンター電極を接続、間にイオン交換膜を挟むことにより一体化構造を採用している。一方、光起電力法では、光電変換部と水素生成部、酸素生成部を一体化した水素製造装置のコンセプトが発表されている(非特許文献1)。これによると、電荷分離は光電変換部、水素生成と酸素生成はそれぞれに対応する触媒を用いることにより行われる。光電変換部は太陽電池に利用される材料が用いられている。例えば、非特許文献2の場合、3層のシリコンp−i−n層で電荷分離を行った上で、水素発生は白金触媒が担い、酸素発生は酸化ルテニウムが担っている。また、非特許文献3では、異なる波長の光を吸収する多接合光電変換材料を、水素発生触媒にPt、酸素発生触媒にRuO2を用い、高効率化を図っている。また特許文献4や非特許文献3では、基盤上に、水素発生触媒(NiFeO)と、3層のシリコンp−i−nを並列に積層、シリコン層の上にさらに酸素発生触媒(Co−Mo)を担持することにより、一体化水素製造装置を作製している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−89336号公報
【特許文献2】特表2003−504799号公報
【特許文献3】特表2004−504934号公報
【特許文献4】特開2003−288955号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America、2006年、43巻、15729−15735頁
【非特許文献2】Applied Physics Letters、1989年、55巻、386−387頁
【非特許文献3】Journal of Physical Chemistry,2009年、113巻、14575−14581頁
【非特許文献4】International Journal of Hydrogen Energy、2003年、28巻、1167−1169頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来の光電変換装置が受光することにより生じる起電力を利用した気体製造装置では、電解用電極から生じる気体を電解液中の気泡として回収するため、2つの電解用電極から生じる2つの気体の回収口が近接してしまい、配管が複雑になっている。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、発生させた気体を簡素化された配管により回収できる気体製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、受光面およびその裏面を有する光電変換部と、前記裏面の上に並べて設けられ、かつ、電解液に接触可能な面をそれぞれ有する第1および第2電解用電極とを備え、第1および第2電解用電極が電解液と接触するとき、第1および第2電解用電極は、前記光電変換部が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体が発生するように設けられ、前記光電変換部の受光面を水平にしたとき、第1電解用電極と第2電解用電極とは、電解液に接触可能な面と水平な基準面との間の傾斜角が異なることを特徴とする気体製造装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1および第2電解用電極は、光電変換部が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体が発生するように設けられているため、第1電解用電極の表面で第1気体を発生させることができ、第2電解用電極の表面で第2気体を発生させることができる。
本発明によれば、光電変換部の裏面上に第1電解用電極および第2電解用電極を設けるため、光電変換部の受光面に電解液を介さず光を入射させることができ、電解液による入射光の吸収や入射光の散乱を防止することができる。このことにより、光電変換部へ入射光の量を多くすることができ、光利用効率を高くすることができる。
本発明によれば、光電変換部の裏面上に第1電解用電極および第2電解用電極を設けるため、受光面に入射する光が、第1および第2電解用電極、ならびにそこからそれぞれ発生する第1気体及び第2気体により吸収や散乱されることはない。このことにより、光電変換部へ入射光の量を多くすることができ、光利用効率を高くすることができる。
【0012】
本発明によれば、第1電解用電極と第2電解用電極とは、電解液に接触可能な面と水平な基準面との間の傾斜角が異なるため、第1気体が気泡として上昇するときに案内面となる第1電解用電極の電解液に接触可能な面と、第2気体が気泡として上昇するときに案内面となる第2電解用電極の電解液に接触可能な面とをずらして設けることができる。このことにより、第1電解用電極の上端部に近接して設ける第1気体を回収するための配管と、第2電解用電極の上端部に近接して設ける第2気体を回収するための配管とを重なることなく設けることができ、配管を簡素化することができる。特に、気体製造装置が、第1電解用電極および第2電解用電極のうち少なくとも一方が複数設けられた場合や、複数の気体製造装置を並べて設置した場合、複数の第1気体の回収口を接続するための配管と、複数の第2気体の回収口を接続するための配管を重なることなく設けることができ、配管を簡素化することができる。このことにより、第1気体および第2気体を回収するための配管を設けるときの設置コストを低減することができ、配管の接続ミスなどを未然に防ぐことができる。また、第1電解用電極と第2電解用電極とは、電解液に接触可能な面と水平な基準面との間の傾斜角が異なるため、光電変換部の受光面が実質的に水平になるように設置することも可能になり、設置費用を低減することができる。また、気体製造装置を池や海の水面上に設置することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略平面図である。
【図2】図1の一点鎖線A−Aにおける気体製造装置の概略断面図である。
【図3】図1の点線B−Bにおける気体製造装置の概略断面図である。
【図4】図1の点線C−Cにおける気体製造装置の概略断面図である。
【図5】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略裏面図である。
【図6】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図7】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図8】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図9】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図10】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図11】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図12】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図13】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図14】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図15】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図16】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図17】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略平面図である。
【図18】図17の点線A−Aにおける気体製造装置の概略断面図である。
【図19】本発明の一実施形態の気体製造装置アレイの構成を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の気体製造装置は、受光面およびその裏面を有する光電変換部と、前記裏面の上に並べて設けられ、かつ、電解液に接触可能な面をそれぞれ有する第1および第2電解用電極とを備え、第1および第2電解用電極が電解液と接触するとき、第1および第2電解用電極は、前記光電変換部が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体が発生するように設けられ、前記光電変換部の受光面を水平にしたとき、第1電解用電極と第2電解用電極とは、電解液に接触可能な面と水平な基準面との間の傾斜角が異なることを特徴とする。
【0015】
本発明において、傾斜角とは、水平な基準面に対する傾斜角であり、0度以上180度以下の範囲の角度である。2つの面を傾斜角で比較する場合、一方の面が0度より大きく90度よりも小さいx度の傾斜角を有し、他方の面が(180―x)度の傾斜角を有する場合、この2つの面の傾斜角は異なる。
本発明の気体製造装置において、前記光電変換部の受光面を水平にしたとき、第1電解用電極の電解液に接触可能な面の上端に近接して設けられた第1気体排出口と、第2電解用電極の電解液に接触可能な面の上端に近接して設けられた第2気体排出口とをさらに備え、第1電解用電極は、第1気体を第1気体排出口から回収できるように傾斜した電解液に接触可能な面を有し、第2電解用電極は、第2気体を第2気体排出口から回収できるように傾斜した電解液に接触可能な面を有することが好ましい。
このような構成によれば、第1気体を第1気体排出口から回収することができ、第2気体を第2気体排出口から回収することができる。
本発明の気体製造装置において、前記光電変換部は、方形状の受光面を有し、第1および第2気体排出口は、それぞれ前記光電変換部の受光面の対向する辺に近接して設けられたことが好ましい。このような構成によれば、第1気体排出口および第2気体排出口を光電変換部の両側に設けることができ、第1気体を回収するための配管および第2気体を回収するための配管を簡素化することができる。
【0016】
本発明の気体製造装置において、第1および第2電解用電極は、少なくとも一方が複数であり、かつ、それぞれ帯状の電解液に接触可能な面を有し、かつ、この面の長辺が隣接するように交互に設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、第1気体が発生する反応が生じる部分と、第2気体が発生する反応が生じる部分との間の距離を短くすることができ、電解液中で生じるイオン濃度の不均衡をより少なくすることができる。また、電解液に接触可能な面を帯状とすることにより、第1気体および第2気体を容易に回収することができる。
本発明の気体製造装置において、第1電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられた第1型部および第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられた第2型部をさらに備え、第1型部および第2型部は、前記光電変換部の受光面を水平にしたとき、第1電解用電極の電解液に接触可能な面と水平な基準面との間の傾斜角と、第2電解用電極の電解液に接触可能な面と前記基準面との間の傾斜角とが異なるように成形されたことが好ましい。
このような構成によれば、第1電解用電極の電解液に接触可能な面と水平な基準面との間の傾斜角と、第2電解用電極の電解液に接触可能な面と前記基準面との間の傾斜角とを容易に異なるようにすることができる。
【0017】
本発明の気体製造装置において、第1型部および第2型部は、固体樹脂からなることが好ましい。
このような構成によれば、第1型部と第2型部を容易に成形することができる。
本発明の気体製造装置において、第1型部と第1電解用電極との間または第2型部と第2電解用電極との間に第1導電部をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部が受光することにより生じた起電力を第1および第2電解用電極に出力するとき、内部抵抗をより小さくすることができる。
本発明の気体製造装置において、第1および第2電解用電極は、それぞれ電解液に接触可能な面に傾斜方向に伸びる溝状のくぼみを有することが好ましい。
このような構成によれば、第1気体および第2気体をそれぞれ気泡として溝状のくぼみに沿って上昇させることができ、第1気体および第2気体を分離して回収することができる。また、この構成によれば、第1電解用電極と第2電解用電極との間に設ける隔壁も省略可能である。
【0018】
本発明の気体製造装置において、光電変換部の受光面を水平にしたとき、第1電解用電極は、水平な基準面との間の傾斜角が1度以上60度以下の電解液に接触可能な面を有し、第2電解用電極は、前記基準面との間の傾斜角が120度以上179度以下の電解液に接触可能な面を有することが好ましい。
このような構成によれば、第1気体を回収するための回収口と第2気体を回収するための回収口とをそれぞれ気体製造装置の両側に設けることができ、第1気体を回収するための配管と第2気体を回収するための配管をそれぞれ気体製造装置の両側に設けることができる。
本発明の気体製造装置において、前記光電変換部は、受光することによりその受光面と裏面との間に起電力が生じ、第1電解用電極は、前記光電変換部の裏面と電気的に接続し、第2電解用電極は、前記光電変換部の受光面と電気的に接続することが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部に積層構造のものを利用することができる。
【0019】
本発明の気体製造装置において、前記光電変換部の受光面に接触する第1電極をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、内部抵抗を小さくすることができる。
本発明の気体製造装置において、第1電極と第2電解用電極とを電気的に接続する第2導電部をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の受光面と第2電解用電極とを電気的に接続することができる。
本発明の気体製造装置において、第2導電部は、前記光電変換部を貫通するコンタクトホールに設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の受光面と第2電解用電極との間の配線距離を短くすることができ、内部抵抗を小さくすることができる。
【0020】
本発明の気体製造装置において、第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられた第2型部を備え、第2型部は、絶縁性を有し、かつ、前記光電変換部の側面を覆うように設けられ、第2導電部は、第2型部の前記光電変換部の側面を覆う部分の上に設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、第2導電部を少ない工程で設けることができ、製造コストを低減することができる。
本発明の気体製造装置において、第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられた第2型部を備え、第2型部は、絶縁性を有し、かつ、前記光電変換部の側面を覆うように設けられ、第2電解用電極は、第2型部の前記光電変換部の側面を覆う部分の上に設けられ、かつ、第1電極と接触することが好ましい。
このような構成によれば、第2導電部を設けることなく、第1電極と第2電解用電極とを電気的に接続することができる。
【0021】
本発明の気体製造装置において、第1電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられた第1型部と、第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられた第2型部とを備え、前記光電変換部の裏面と第1型部との間および前記光電変換部の裏面と第2型部との間に設けられた第2電極をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部が受光することにより生じる起電力を第1および第2電解用電極に出力するとき、光電変換部の裏面と第1電解用電極との間の内部抵抗をより小さくすることができる。
本発明の気体製造装置において、第2電極と第1電解用電極とを電気的に接続する第3導電部をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の裏面と第1電解用電極とを電気的に接続することができる。
【0022】
本発明の気体製造装置において、第3導電部は、第1型部の側部を覆うように設けられ、かつ、第2電極と接触することが好ましい。
このような構成によれば、容易に光電変換部の裏面と第1電解用電極とを電気的に接続することができる。
本発明の気体製造装置において、前記光電変換部は、受光することにより前記裏面の第1および第2区域間に電位差が生じ、第1区域は、第1電解用電極と電気的に接続し、第2区域は、第2電解用電極と電気的に接続することが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部を第1区域と第2区域との間に起電力が生じるものとすることができる。
【0023】
本発明の気体製造装置において、前記光電変換部は、n型半導体部およびp型半導体部を有する少なくとも1つの半導体材料からなり、第1および第2区域のうち、一方は前記n型半導体部の一部であり、他方は前記p型半導体部の一部であることが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部が受光することにより、光電変換部の裏面の第1および第2区域間に起電力を生じさせることができる。
本発明の気体製造装置において、透光性基板をさらに備え、前記光電変換部は、前記透光性基板の上に設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部を透光性基板の上に形成することができる。
【0024】
本発明の気体製造装置において、透光性基板をさらに備え、前記光電変換部は、前記透光性基板の上に設けられ、前記透光性基板は、前記光電変換部の受光面を水平にしたとき、第1電解用電極の電解液に接触可能な面と水平な基準面との間の傾斜角と、第2電解用電極の電解液に接触可能な面と前記基準面との間の傾斜角とが異なるように成形されたことが好ましい。
このような構成によれば、透光性基板の形により第1および第2電解用電極の電解液に接触可能な面の傾斜角が異なるように、第1および第2電解用電極を設けることができる。
本発明の気体製造装置において、第2電解用電極は、絶縁部を介して前記光電変換部の裏面上に設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、リーク電流が生じることを防止することができる。
本発明の気体製造装置において、前記光電変換部は、p型半導体層、i型半導体層およびn型半導体層からなる光電変換層を有することが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部に光を入射させることにより起電力を生じさせることができる。
【0025】
本発明の気体製造装置において、前記光電変換部は、直列接続した複数の光電変換層を含み、前記複数の光電変換層は、受光することにより生じる起電力を第1電解用電極および第2電解用電極に供給することが好ましい。
このような構成によれば、容易に高電圧の起電力を第1および第2電解用電極に出力することができる。
本発明の気体製造装置において、各光電変換層は、第4導電部により直列接続されたことが好ましい。
このような構成によれば、各光電変換層を並べて設けることができる。
本発明の気体製造装置において、第1電解用電極および第2電解用電極のうち、一方は電解液からH2を発生させる水素発生部であり、他方は電解液からO2を発生させる酸素発生部であり、前記水素発生部および前記酸素発生部は、それぞれ電解液からH2が発生する反応の触媒および電解液からO2が発生する反応の触媒を含むことが好ましい。
このような構成によれば、燃料電池の燃料となる水素を製造することができる。
【0026】
本発明の気体製造装置において、前記水素発生部および前記酸素発生部のうち少なくとも一方は、前記受光面の面積より大きい触媒表面積を有することが好ましい。
このような構成によれば、より効率的に水素および酸素を製造することができる。
本発明の気体製造装置において、前記水素発生部および前記酸素発生部のうち少なくとも一方は、触媒が担持された多孔質の導電体であることが好ましい。
このような構成によれば、水素または酸素が発生する反応の触媒面積を広くすることができる。
本発明の気体製造装置において、前記水素発生部は、水素発生触媒としてPt、Ir、Ru、Pd、Rh、Au、Fe、NiおよびSeのうち少なくとも1つを含むことが好ましい。
このような構成によれば、電解液から水素を効率よく発生させることができる。
【0027】
本発明の気体製造装置において、前記酸素発生部は、酸素発生触媒としてMn、Ca、Zn、CoおよびIrのうち少なくとも1つを含むことが好ましい。
このような構成によれば、電解液から酸素を効率よく発生させることができる。
本発明の気体製造装置において、透光性基板と電解液室とをさらに備え、前記光電変換部は、前記透光性基板の上に設けられ、第1電解用電極および第2電解用電極の上に天板をさらに備え、前記電解液室は、第1電解用電極および第2電解用電極と前記天板との間に設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、第1電解用電極の電解液に接触可能な面と、第2電解用電極の電解液に接触可能な面とを電解液室に面して設けることができ、第1および第2電解用電極を電解液に接触させることができる。
【0028】
本発明の気体製造装置において、第1電解用電極と前記天板との間の電解液室および第2電解用電極と天板との間の電解液室とを仕切る隔壁をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、隔壁により第1気体と第2気体を分離することができる。
本発明の気体製造装置において、前記隔壁は、イオン交換体を含むことが好ましい。
このような構成によれば、電解液中で生じるイオン濃度の不均衡を容易に解消することができる。
また、本発明は、本発明の気体製造装置を前記光電変換部の受光面が実質的に水平となるように設置し、前記気体製造装置は、第1気体を排出する第1気体排出口と、第2気体を排出する第2気体排出口と、電解液室とを備え、前記電解液室に電解液を導入し、太陽光を前記光電変換部の受光面に入射させることにより第1電解用電極および第2電解用電極からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させ、第1気体排出口および第2気体排出口からそれぞれ第1気体および第2気体を排出する気体製造方法も提供する。
本発明の気体製造方法によれば、光電変換部に光を入射させることにより、第1気体および第2気体を製造ことができ、容易に第1気体および第2気体を回収することができる。
【0029】
さらに本発明は、複数の本発明の気体製造装置と、第1気体排出路と、第2気体排出路とを備え、各気体製造装置は、第1気体を排出する第1気体排出口と第2気体を排出する第2気体排出口とを備え、第1気体排出路は、各気体製造装置の第1気体排出口と導通し、第2気体排出路は、各気体製造装置の第2気体排出口と導通する気体製造装置アレイも提供する。
本発明の気体製造装置アレイによれば、第1気体および第2気体の発生量を多くすることができ、第1気体および第2気体を第1気体排出路および第2気体排出路からそれぞれ回収することができる。また、第1気体排出路および第2気体排出路を簡素化して設けることができる。
【0030】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0031】
気体製造装置の構成
図1は本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略平面図である。図2〜4は、それぞれ図1の一点鎖線A−A、点線B−B、点線C−Cにおける気体製造装置の概略断面図である。図5は本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略裏面図である。また図6〜16はそれぞれ本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。なお、図6、13、15の断面図は、図1の点線B−Bにおける気体製造装置の断面図に対応し、図7、8、11、12、14、16の断面図は、図1の点線C−Cにおける気体製造装置の断面図に対応し、図9、10は、図1の一点鎖線A−Aにおける気体製造装置の断面図に対応する。
【0032】
本実施形態の気体製造装置23は、受光面およびその裏面を有する光電変換部2と、光電変換部2の裏面の上に並べて設けられ、かつ、電解液に接触可能な面とをそれぞれ有する第1および第2電解用電極8、7とを備え、第1および第2電解用電極8、7が電解液と接触するとき、第1および第2電解用電極8、7は、光電変換部2が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体が発生するように設けられ、光電変換部2の受光面を水平にしたとき、第1電解用電極8と第2電解用電極7とは、電解液に接触可能な面と水平な基準面との間の傾斜角が異なることを特徴とする。
また、本実施形態の気体製造装置23は、透光性基板1を備えてもよい。
以下、本実施形態の気体製造装置について説明する。
【0033】
1.透光性基板
透光性基板1は、本実施形態の気体製造装置23が備えてもよい。また、光電変換部2は、受光面が透光性基板1側となるように透光性基板1の上に設けられてもよい。なお、光電変換部2が、半導体基板などからなり一定の強度を有する場合、透光性基板1は省略することが可能である。また、光電変換部2が樹脂フィルムなど柔軟性を有する材料の上に形成可能な場合、透光性基板1は省略することができる。
【0034】
また、透光性基板1は、本気体製造装置を構成するための土台となる部材である。また、太陽光を光電変換部2の受光面で受光するためには、透明であり光透過率が高いことが好ましいが、光電変換部2へ効率的な光の入射が可能な構造であれば、光透過率に制限はない。
光透過率が高い基板材料として、例えば、ソーダガラス、石英ガラス、パイレックス(登録商標)、合成石英板等の透明なリジッド材、あるいは透明樹脂板やフィルム材等が好適に用いられる。化学的および物理的安定性を備える点より、ガラス基板を用いることが好ましい。
透光性基板1の光電変換部2側の表面には、入射した光が光電変換部2の表面で有効に乱反射されるように、微細な凹凸構造に形成することができる。この微細な凹凸構造は、例えば反応性イオンエッチング(RIE)処理もしくはブラスト処理等の公知の方法により形成することが可能である。
【0035】
また、透光性基板1は、光電変換部2の受光面を水平にしたとき、第1電解用電極8の電解液に接触可能な面と水平な基準面との間の傾斜角と、第2電解用電極7の電解液に接触可能な面と水平な基準面との間の傾斜角とが異なるように成形されてもよい。このように成形された透光性基板1の上に光電変換部2、第1および第2電解用電極8、7を設けることにより、第1電解用電極8の電解液に接触可能な面と水平な基準面との間の傾斜角と、第2電解用電極7の電解液に接触可能な面と水平な基準面との間の傾斜角とが異なるように設けることができる。たとえば、本実施形態の気体製造装置は、図6、7のような断面を有することができる。なお、図6は、図1の点線B−Bの断面図に対応した断面図であり、図7は、図1の点線C−Cの断面図に対応した断面図である。図6、7のような透光性基板1を用いることにより、第1および第2電解用電極8、7のそれぞれの電解液に接触可能な面の傾斜角を異なるように設けることができ、第1気体回収口20と第2気体回収口19とを気体製造装置の両側に設けることができる。このことにより第1気体を回収するための配管および第2気体を回収するための配管を簡素化することができる。
このような成形された透光性基板1は、ガラスなどを型に流し込むことにより形成してもよく、板状基板を変形させることにより形成してもよく、板状の基板を組み合わせることにより形成してもよい。
【0036】
2.第1電極、第2導電部
第1電極4は、透光性基板1の上に設けることができ、光電変換部2の受光面と接触するように設けることができる。また、第1電極4は透光性を有してもよい。また、第1電極4は、透光性基板1を省略可能の場合、光電変換部2の受光面に直接設けられてもよい。第1電極4は、第2電解用電極7と電気的に接続することができる。第1電極4を設けることにより、光電変換部2の受光面と第2電解用電極7との間に流れる電流を大きくすることができる。また、光電変換部2が図14〜16のように光電変換部2の裏面の第1区域と第2区域との間に起電力が生じるものである場合、第1電極4は不要である。
第1電極4は、図4、7、8、11のように第2導電部10を介して第2電解用電極7と電気的に接続してもよく、図12のように第2電解用電極7と接触してもよい。
第1電極4は、例えば、ITO、SnO2などの透明導電膜からなってもよく、Ag、Auなどの金属のフィンガー電極からなってもよい。
【0037】
以下に第1電極4を透明導電膜とした場合について説明する。
透明導電膜は、光電変換部2の受光面と第2電解用電極7とのコンタクトを取りやすくするために用いている。
一般に透明電極として使用されているものを用いることが可能である。具体的にはIn−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2等を挙げることができる。なお本透明導電膜は、太陽光の光線透過率が85%以上、中でも90%以上、特に92%以上であることが好ましい。このことにより光電変換部2が光を効率的に吸収することができるためである。
透明導電膜の作成方法としては公知の方法を用いることができ、スパッタリング、真空蒸着、ゾルゲル法、クラスタービーム蒸着法、PLD(Pulse Laser Deposition)法などが挙げられる。
【0038】
第2導電部10は、第1電極4と第2電解用電極7とにそれぞれ接触するように設けることができる。第2の導電部10を設けることにより、容易に光電変換部2の受光面に接触した第1電極4と第2電解用電極7とを電気的に接続することができる。
【0039】
また、第2導電部10は、図4、7、8のように光電変換部2または第2型部12を貫通するコンタクトホールに設けられてもよい。このことにより、光電変換部2の受光面と第2電解用電極7との間の電流経路を短くすることができ、より効率的に第1気体および第2気体を発生させることができる。また、第2導電部10が設けられたコンタクトホールは、1つまたは複数でもよく、円形の断面を有してもよい。
また、第2導電部10は、図11のように光電変換部2の側面を覆うように設けられてもよい。
【0040】
第2導電部10の材料は、導電性を有しているものであれば特に制限されない。導電性粒子を含有するペースト、例えばカーボンペースト、Agペースト等をスクリーン印刷法、インクジェット法等で塗布し乾燥もしくは焼成する方法や、原料ガスを用いたCVD法等により製膜する方法、PVD法、蒸着法、スパッタ法、ゾルゲル法、電気化学的な酸化還元反応を利用した方法等が挙げられる。
【0041】
3.光電変換部
光電変換部2は、受光面および裏面を有し、光電変換部2の裏面の上に第1電解用電極8と第2電解用電極7が設けられる。なお、受光面とは、光電変換するための光を受光する面であり、裏面とは、受光面の裏の面である。また、光電変換部2は、第1電極4が設けられた透光性基板1の上に受光面を下にして設けることができる。光電変換部2は、例えば、図2〜4、6〜13のように受光面と裏面との間に起電力が生じるものであってもよく、図14〜16のように裏面の第1区域と第2区域との間に起電力が生じるものであってもよい。図14〜16のような光電変換部2は、n型半導体領域37とp型半導体領域36を形成した半導体基板などにより形成することができる。また、透光性基板1が図6、7のように傾斜角の異なる部分を有している場合、傾斜角の異なる部分の上にそれぞれ光電変換部2を形成し、これらの光電変換部を電気的に接続してもよい。
光電変換部2の形は、特に限定されないが、例えば、方形状とすることができる。
光電変換部2は、入射光により電荷分離することができ、起電力が生じるものであれば、特に限定されないが、例えば、シリコン系半導体を用いた光電変換部、化合物半導体を用いた光電変換部、色素増感剤を利用した光電変換部、有機薄膜を用いた光電変換部などである。
【0042】
第1気体および第2気体が水素および酸素の場合、光電変換部2は、光を受光することにより、第1電解用電極8および第2電解用電極7において水素と酸素が発生するために必要な起電力が生じる材料を使用する必要がある。第1電解用電極8と第2電解用電極7の電位差は、水分解のための理論電圧(1.23V)より大きくする必要があり、そのためには光電変換部2で十分大きな電位差を生み出す必要がある。そのため光電変換部2は、pn接合など起電力を生じさせる部分を二接合以上直列に接続することが好ましい。例えば、図16のように並列に設けられた光電変換層を第4導電部42により接続した構造を有することができる。
【0043】
光電変換を行う材料は、シリコン系半導体、化合物半導体、有機材料をベースとしたものなどが挙げられるが、いずれの光電変換材料も使用することが可能である。また、起電力を大きくするために、これらの光電変換材料を積層することが可能である。積層する場合には同一材料で多接合構造を形成することが可能であるが、光学的バンドギャップの異なる複数の光電変換層を積層し、各々の光電変換層の低感度波長領域を相互に補完することにより、広い波長領域にわたり入射光を効率よく吸収することが可能となる。これらの複数の光電変換層は、それぞれ異なるバンドギャップを有することが好ましい。このような構成によれば、光電変換部2で生じる起電力をより大きくすることができ、電解液をより効率的に電気分解することができる。
【0044】
また、光電変換層間の直列接続特性の改善や、光電変換部2で発生する光電流の整合のために、層間に透明導電膜等の導電体を介在させることが可能である。これにより光電変換部2の劣化を抑制することが可能となる。
光電変換部2の例を以下に具体的に説明する。また、光電変換部2は、これらを組み合わせたものでもよい。また、以下の光電変換部2の例は、矛盾しない限り光電変換層とすることもできる。
【0045】
3−1.シリコン系半導体を用いた光電変換部
シリコン系半導体を用いた光電変換部2は、例えば、単結晶型、多結晶型、アモルファス型、球状シリコン型、及びこれらを組み合わせたもの等が挙げられる。いずれもp型半導体とn型半導体が接合したpn接合を有することができる。また、p型半導体とn型半導体との間にi型半導体を設けたpin接合を有するものとすることもできる。また、pn接合を複数有するもの、pin接合を複数有するもの、pn接合とpin接合を有するものとすることもできる。
シリコン系半導体とは、シリコンを含む半導体であり、例えば、シリコン、シリコンカーバイド、シリコンゲルマニウムなどである。また、シリコンなどにn型不純物またはp型不純物が添加されたものも含み、また、結晶質、非晶質、微結晶のものも含む。
また、シリコン系半導体を用いた光電変換部2は、透光性基板1の上に形成された薄膜または厚膜の光電変換層であってもよく、また、シリコンウェハなどのウェハにpn接合またはpin接合を形成したものでもよく、また、pn接合またはpin接合を形成したウェハの上に薄膜の光電変換層を形成したものでもよい。
【0046】
シリコン系半導体を用いた光電変換部2の形成例を以下に示す。
透光性基板1上に積層した第1電極4上に、第1導電型半導体層をプラズマCVD法等の方法で形成する。この第1導電型半導体層としては、導電型決定不純物原子濃度が1×1018〜5×1021/cm3程度ドープされた、p+型またはn+型の非晶質Si薄膜、または多結晶あるいは微結晶Si薄膜とする。第1導電型半導体層の材料としては、Siに限らず、SiCあるいはSiGe,SixO1-x等の化合物を用いることも可能である。
【0047】
このように形成された第1導電型半導体層上に、結晶質Si系光活性層として多結晶あるいは微結晶の結晶質Si薄膜をプラズマCVD法等の方法で形成する。なお、導電型は第1導電型半導体よりドーピング濃度が低い第1導電型とするか、あるいはi型とする。結晶質Si系光活性層の材料としては、Siに限らず、SiCあるいはSiGe,SixO1-x等の化合物を用いることも可能である。
【0048】
次に、結晶質Si系光活性層上に半導体接合を形成するため、第1導電型半導体層とは反対導電型である第2導電型半導体層をプラズマCVD等の方法で形成する。この第2導電型半導体層としては、導電型決定不純物原子が1×1018〜5×1021/cm3程度ドープされた、n+型またはp+型の非晶質Si薄膜、または多結晶あるいは微結晶Si薄膜とする。第2導電型半導体層の材料としては、Siに限らず、SiCあるいはSiGe,SixO1-x等の化合物を用いることも可能である。また接合特性をより改善するために、結晶質Si系光活性層と第2導電型半導体層との間に、実質的にi型の非単結晶Si系薄膜を挿入することも可能である。このようにして、受光面に最も近い光電変換層を一層積層することができる。
【0049】
続けて第二層目の光電変換層を形成する。第二層目の光電変換層は、第1導電型半導体層、結晶質Si系光活性層、第2導電型半導体層からなり、それぞれの層は、第一層目の光電変換層中の対応する第1導電型半導体層、結晶質Si系光活性層、第2導電型半導体層と同様に形成する。二層のタンデムで水分解に十分な電位を得ることができない場合は、三層あるいはそれ以上の層状構造を取ることが好ましい。ただし第二層目の光電変換層の結晶質Si系光活性層の体積結晶化分率は、第一層目の結晶質Si系光活性層と比較すると高くすることが好ましい。三層以上積層する場合も同様に下層と比較すると体積結晶化分率を高くすることが好ましい。これは、長波長域での吸収が大きくなり、分光感度が長波長側にシフトし、同じSi材料を用いて光活性層を構成した場合においても、広い波長域で感度を向上させることが可能となるためである。すなわち、結晶化率の異なるSiでタンデム構造にすることにより、分光感度が広くなり、光の高効率利用が可能となる。このとき低結晶化率材料を受光面側にしないと高効率とならない。また結晶化率が40%以下に下がるとアモルファス成分が増え、劣化が生じてしまう。
【0050】
次に、シリコン基板を用いた光電変換部2の形成例を以下に示す。
シリコン基板としては、単結晶シリコン基板または多結晶シリコン基板などを用いることができ、p型であっても、n型であっても、i型であってもよい。このシリコン基板の一部にPなどのn型不純物を熱拡散またはイオン注入などによりドープすることによりn型半導体領域37を形成し、シリコン基板のほかの一部にBなどのp型不純物を熱拡散またはイオン注入などによりドープすることによりp型半導体領域36を形成することができる。このことにより、シリコン基板にpn接合、pin接合、npp+接合またはpnn+接合などを形成することができ、光電変換部2を形成することができる。
【0051】
n型半導体領域37およびp型半導体領域36は、図14〜16のようにシリコン基板にそれぞれ1つの領域を形成することができ、n型半導体領域37およびp型半導体領域36のうちどちらか一方を複数形成することもできる。また、図16のようにn型半導体領域37およびp型半導体領域36を形成したシリコン基板を並べて設置し、第4導電部42により直列接続することにより光電変換部2を形成することもできる。
なお、ここではシリコン基板を用いて説明したが、pn接合、pin接合、npp+接合またはpnn+接合などを形成することができる他の半導体基板を用いてもよい。また、n型半導体領域37およびp型半導体領域36を形成することができれば、半導体基板に限定されず、基板上に形成された半導体層であってもよい。
【0052】
3−2.化合物半導体を用いた光電変換部
化合物半導体を用いた光電変換部は、例えば、III−V族元素で構成されるGaP、GaAsやInP、InAs、II−VI族元素で構成されるCdTe/CdS、I−III−VI族で構成されるCIGS(Copper Indium Gallium DiSelenide)などを用いpn接合を形成したものが挙げられる。
【0053】
化合物半導体を用いた光電変換部の製造方法の一例を以下に示すが、本製造方法では、製膜処理等はすべて有機金属気相成長法(MOCVD;Metal Organic Chemical Vapor Deposition)装置を使って連続して行われる。III族元素の材料としては、例えばトリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、トリメチルインジウムなどの有機金属が水素をキャリアガスとして成長装置に供給される。V族元素の材料としては、例えばアルシン(AsH3)、ホスフィン(PH3)、スチビン(SbH3)等のガスが使われる。p型不純物またはn型不純物のドーパントとしては、例えばp型化にはジエチルジンク、またはn型化には、モノシラン(SiH4)やジシラン(Si2H6)、セレン化水素(H2Se)等が利用される。これらの原料ガスを、例えば700℃に加熱された基板上に供給することにより熱分解させ、所望の化合物半導体材料膜をエピタキシャル成長させることが可能である。これら成長層の組成は導入するガス組成により、また膜厚はガスの導入時間によって制御することが可能である。これらの光電変換部を多接合積層する場合は、層間での格子定数を可能な限り合わせることにより、結晶性に優れた成長層を形成することができ、光電変換効率を向上することが可能となる。
【0054】
pn接合を形成した部分以外にも、例えば受光面側に公知の窓層や、非受光面側に公知の電界層等を設けることによりキャリア収集効率を高める工夫を有してもよい。また不純物の拡散を防止するためのバッファ層を有していてもよい。
【0055】
3−3.色素増感剤を利用した光電変換部
色素増感剤を利用した光電変換部は、例えば、主に多孔質半導体、色素増感剤、電解質、溶媒などにより構成される。
多孔質半導体を構成する材料としては、例えば、酸化チタン、酸化タングステン、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、硫化カドミウム等公知の半導体から1種類以上を選択することが可能である。多孔質半導体を基板上に形成する方法としては、半導体粒子を含有するペーストをスクリーン印刷法、インクジェット法等で塗布し乾燥もしくは焼成する方法や、原料ガスを用いたCVD法等により製膜する方法、PVD法、蒸着法、スパッタ法、ゾルゲル法、電気化学的な酸化還元反応を利用した方法等が挙げられる。
【0056】
多孔質半導体に吸着する色素増感剤としては、可視光領域および赤外光領域に吸収を持つ種々の色素を用いることが可能である。ここで、多孔質半導体に色素を強固に吸着させるには、色素分子中にカルボン酸基、カルボン酸無水基、アルコキシ基、スルホン酸基、ヒドロキシル基、ヒドロキシルアルキル基、エステル基、メルカプト基、ホスホニル基等が存在することが好ましい。これらの官能基は、励起状態の色素と多孔質半導体の伝導帯との間の電子移動を容易にする電気的結合を提供する。
【0057】
これらの官能基を含有する色素として、例えば、ルテニウムビピリジン系色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、アゾ系色素、キナクリドン系色素、スクアリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポルフィリン系色素、フタロシアニン系色素、ベリレン系色素、インジゴ系色素、ナフタロシアニン系色素等が挙げられる。
【0058】
多孔質半導体への色素の吸着方法としては、例えば多孔質半導体を、色素を溶解した溶液(色素吸着用溶液)に浸漬する方法が挙げられる。色素吸着用溶液に用いられる溶媒としては、色素を溶解するものであれば特に制限されず、具体的には、エタノール、メタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリル等の窒素化合物類、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル等のエステル類、水等を挙げることができる。
【0059】
電解質は、酸化還元対とこれを保持する液体または高分子ゲル等固体の媒体からなる。
酸化還元対としては一般に、鉄系、コバルト系等の金属類や塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン物質が好適に用いられ、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム等の金属ヨウ化物とヨウ素の組み合わせが好ましく用いられる。さらに、ジメチルプロピルイミダゾールアイオダイド等のイミダゾール塩等を混入することもできる。
【0060】
また、溶媒としては、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、アセトニトリル等のニトリル化合物、エタノール、メタノール等のアルコール、その他、水や非プロトン極性物質等が用いられるが、中でも、カーボネート化合物やニトリル化合物が好適に用いられる。
【0061】
3−4.有機薄膜を用いた光電変換部
有機薄膜を用いた光電変換部2は、電子供与性および電子受容性を持つ有機半導体材料で構成される電子正孔輸送層、または電子受容性を有する電子輸送層と電子供与性を有する正孔輸送層とが積層されたものであってもよい。
電子供与性の有機半導体材料としては、電子供与体としての機能を有するものであれば特に限定されないが、塗布法により製膜できることが好ましく、中でも電子供与性の導電性高分子が好適に使用される。
【0062】
ここで導電性高分子とはπ共役高分子を示し、炭素−炭素またはヘテロ原子を含む二重結合または三重結合が、単結合と交互に連なったπ共役系からなり、半導体的性質を示すものをさす。
【0063】
電子供与性の導電性高分子材料としては、例えばポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリカルバゾール、ポリビニルカルバゾール、ポリシラン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフルオレン、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、およびこれらの誘導体、共重合体、あるいはフタロシアニン含有ポリマー、カルバゾール含有ポリマー、有機金属ポリマー等が挙げられる。中でも、チオフェン−フルオレン共重合体、ポリアルキルチオフェン、フェニレンエチニレン−フェニレンビニレン共重合体、フルオレン−フェニレンビニレン共重合体、チオフェン−フェニレンビニレン共重合体等が好適に利用される。
【0064】
電子受容性の有機半導体材料としては、電子受容体としての機能を有するものであれば特に限定されないが、塗布法により製膜できることが好ましく、中でも電子供与性の導電性高分子が好適に使用される。
電子受容性の導電性高分子としては、例えばポリフェニレンビニレン、ポリフルオレン、およびこれらの誘導体、共重合体、あるいはカーボンナノチューブ、フラーレンおよびこれらの誘導体、CN基またはCF3基含有ポリマーおよびそれらの−CF3置換ポリマー等が挙げられる。
【0065】
また、電子供与性化合物がドープされた電子受容性の有機半導体材料や、電子受容性化合物がドープされた電子供与性の有機半導体材料等を用いることが可能である。電子供与性化合物がドープされる電子受容性の導電性高分子材料としては、上述の電子受容性の導電性高分子材料を挙げることができる。ドープされる電子供与性化合物としては、例えばLi、K、Ca、Cs等のアルカリ金属やアルカリ土類金属のようなルイス塩基を用いることができる。なお、ルイス塩基は電子供与体として作用する。また、電子受容性化合物がドープされる電子供与性の導電性高分子材料としては、上述した電子供与性の導電性高分子材料を挙げることができる。ドープされる電子受容性化合物としては、例えばFeCl3、AlCl3、AlBr3、AsF6やハロゲン化合物のようなルイス酸を用いることができる。なお、ルイス酸は電子受容体として作用する。
【0066】
上記にて示した光電変換部2においては、第一義的には太陽光を受光させ光電変換を行うことを想定しているが、用途により蛍光灯や白熱灯、LED、特定の熱源から発せられる光等の人工光を照射し光電変換を行うことも可能である。
【0067】
4.第2電極、第3導電部
第2電極5は、光電変換部2の裏面と第1型部11との間および光電変換部2の裏面と第2型部12との間に設けることができる。また、第2電極5は、第1電解用電極8と電気的に接続することができる。第2電極5を設けることにより、光電変換部2の裏面と第1電解用電極8との間のオーミックロスを低減することができる。また、第2電極5は、図3、13のように第3導電部17を介して第1電解用電極8と電気的に接続してもよく、第1電解用電極8と接触してもよい。また、第3導電部17は、図3のように第1型部11に設けられたコンタクトホール内に設けられてもよく、図13のように第1型部11の側部を覆うように設けられてもよい。
また、第2電極5は、図6、7のように、光電変換部2の裏面と絶縁部21との間および光電変換部2の裏面と第1電解用電極8との間に設けられてもよい。
また、第2電極5は、電解液に対する耐食性および電解液に対する遮液性を有することが好ましい。このことにより、電解液による光電変換部2の腐食を防止することができる。
第2電極5は、導電性を有すれば特に限定されないが、例えば、金属薄膜であり、また、例えば、Al、Ag、Auなどの薄膜である。これらは、例えば、スパッタリングなどにより形成することができる。また、例えば、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2等の透明導電膜である。
【0068】
また、第3導電部17の材料は、導電性を有しているものであれば特に制限されない。導電性粒子を含有するペースト、例えばカーボンペースト、Agペースト等をスクリーン印刷法、インクジェット法等で塗布し乾燥もしくは焼成する方法や、原料ガスを用いたCVD法等により製膜する方法、PVD法、蒸着法、スパッタ法、ゾルゲル法、電気化学的な酸化還元反応を利用した方法等が挙げられる。
【0069】
5.第1型部、第2型部、第1導電部
第1型部11は、光電変換部2の裏面と第1電解用電極8との間に設けることができ、第2型部12は、光電変換部2の裏面と第2電解用電極7との間に設けることができる。また、第1型部11および第2型部12は、光電変換部2の受光面を水平にしたとき、第1電解用電極8の電解液に接触可能な面と水平な基準面との間の傾斜角と、第2電解用電極7の電解液に接触可能な面と水平な基準面との間の傾斜角とが異なるように成形されたものであってもよい。このように成形された第1型部11および第2型部12を設けることにより、第1電解用電極が電解液に接触する面と第2電解用電極の電解液に接触する面の傾斜角度を調節することができる。
【0070】
また、第1型部11および第2型部12は、例えば、図9、10のように溝状のくぼみを有してもよい。このような第1型部11の上に第1電解用電極8を形成し、第2型部12の上に第2電解用電極7を形成することにより、第1電解用電極8の電解液に接触可能な面、および第2電解用電極7の電解液に接触可能な面に溝状のくぼみを形成することができる。
【0071】
また、第1型部および第2型部は、電気的絶縁性を有してもよい。このことにより、リーク電流を低減することができる。また、この場合、第2型部12は、図11、12のように光電変換部2の側面を覆うように設けることができ、この光電変換部2の側面を覆った第2型部12の上に第2導電部10または第2電解用電極7を設けることができる。このことにより、リーク電流を防止して第2電解用電極7と第1電極4とを電気的に接続することができる。
第1型部11および第2型部12は、例えば、固体樹脂から形成することができる。固体樹脂とすることにより、所望の形状を有する第1型部11および第2型部12を形成することができる。
また、第1型部11は導電性材料からなってもよい。このことにより、第1型部を介して光電変換部2の裏面と第1電解用電極8とを電気的に接続することができる。
【0072】
また、第1型部11と第1電解用電極8との間、または第2型部12と第2電解用電極7との間に第1導電部9を設けることができる。第1導電部9を設けることにより、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極8と第2電解用電極7とに出力するときの内部抵抗を低減することができる。
第1導電部9は、例えば、図8、11、14、16のように第2型部12と第2電解用電極7との間に設けることができ、また、例えば、図13、15のように第1型部11と第1電解用電極8との間に設けることができる。
第1導電部11は、導電性を有すれば特に限定されないが、例えば、金属薄膜であり、また、例えば、Al、Ag、Auなどの薄膜である。これらは、例えば、スパッタリングなどにより形成することができる。また、例えば、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2等の透明導電膜である。
【0073】
6.絶縁部
絶縁部21は、リーク電流の発生を防止するために設けることができる。例えば、図4、7、8のように第2導電部10を光電変換部2を貫通するコンタクトホール内に設ける場合、コンタクトホールの側壁に絶縁部21を設けることができる。また、図7のように第2型部12を設けない場合、第2電解用電極7と光電変換部2の裏面との間に設けることができる。また、第2型部12が導電性を有する場合、第2型部12と光電変換部2の裏面との間に絶縁部21を設けることもできる。
【0074】
絶縁部11としては、有機材料、無機材料を問わず用いることが可能であり、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリアリーレン、芳香族ビニル化合物、フッ素系重合体、アクリル系重合体、ビニルアミド系重合体等の有機ポリマー、無機系材料としては、Al2O3等の金属酸化物、多孔質性シリカ膜等のSiO2や、フッ素添加シリコン酸化膜(FSG)、SiOC、HSQ(Hydrogen Silsesquioxane)膜、SiNx、シラノール(Si(OH)4)をアルコール等の溶媒に溶かし塗布・加熱することにより製膜する方法を用いることが可能である。
【0075】
絶縁部11を形成する方法としては、絶縁性材料を含有するペーストをスクリーン印刷法、インクジェット法、スピンコーティング法等で塗布し乾燥もしくは焼成する方法や、原料ガスを用いたCVD法等により製膜する方法、PVD法、蒸着法、スパッタ法、ゾルゲル法を利用した方法等が挙げられる。
【0076】
7.第1電解用電極、第2電解用電極
第1電解用電極8および第2電解用電極7は、光電変換部2の裏面上にそれぞれ設けられ、かつ、光電変換部2の裏面側の面とその裏面であり電解液に接触可能な面をそれぞれ有する。このことにより、第1電解用電極8は光電変換部2に入射する光を遮ることはない。
また、第1電解用電極8および第2電解用電極7は、電解液と接触するとき、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体を発生するように設けられる。例えば、光電変換部2が受光することにより受光面とその裏面との間に起電力が生じる場合、第1電解用電極8は、図3、6、13のように光電変換部2の裏面と電気的に接続することができ、第2電解用電極7は、図4、7、8、11、12のように光電変換部2の受光面と電気的に接続することができる。また、光電変換部2が受光することによりその裏面の第1区域と第2区域との間に起電力が生じる場合、図14〜16のように第1電解用電極8は第1区域と第2区域のうちどちらか一方と電気的に接続し、第2電解用電極7は第1区域と第2区域のうち他方と電気的に接続することとができる。
【0077】
また、第1電解用電極8および第2電解用電極7は、光電変換部2の受光面を水平にしたとき、第1電解用電極8の電解液に接触可能な面と水平な基準面との間の傾斜角と、第2電解用電極7の電解液に接触可能な面と水平な基準面との間の傾斜角とが異なるように設けられる。このことにより、第1気体が気泡として電解液中を上昇するときに案内面となる第1電解用電極8の電解液に接触可能な面と、第2気体が気泡として電解液中を上昇するときに案内面となる第2電解用電極7の電解液に接触可能な面とをずらして設けることができる。
第1電解用電極8および第2電解用電極7の傾斜角の差は、第1気体および第2気体を回収するための第1気体排出口20および第2気体排出口19が、例えば光電変換部2の受光面を水平にしたときに上下にずれるような差であってもよい。また、たとえば、図1のように気体製造装置23の両側のうち一方に第1気体排出口20が形成され、他方に第2気体排出口19が形成されるように、第1電解用電極8および第2電解用電極7の傾斜角の差がつけられてもよい。
【0078】
光電変換部2の受光面を水平にしたとき、第1電解用電極8の電解液に接触可能な面は、例えば、傾斜角が1度以上60度以下であってもよく、好ましくは5度以上30度以下であってもよい。また、このとき第2電解用電極7の電解液に接触可能な面は、例えば、傾斜角が120度以上179度以下であってもよく、好ましくは150度以上175度以下であってもよい。このことにより、気体製造装置23の両側のうち一方から第1気体を排出することができ、他方から第2気体を排出することができ、第1気体および第2気体を回収するための配管を簡素化することができる。
【0079】
第1電解用電極8の電解液に接触可能な面の傾斜角と、第2電解用電極7の電解液に接触可能な面の傾斜角に差をつける方法は、特に限定されないが、例えば、図2〜4、8〜16のように第1型部11および第2型部12を設けることにより傾斜角の差をつけてもよく、例えば図6、7のように透光性基板1を成形することにより傾斜角の差をつけてもよい。
なお、第1電解用電極8および第2電解用電極7の電解液に接触可能な面は、第1気体または第2気体が電解液中を気泡として上昇するときに案内面となるものであれば、平面であっても曲面であってもよい。また、電解液に接触可能な面が曲面であり、その傾斜角が場所により異なる場合、この曲面の傾斜角はその平均の傾斜角をいう。
【0080】
第1電解用電極8および第2電解用電極7は、それぞれ電解液に接触可能な面に傾斜方向に伸びる溝状のくぼみを有することができる。このことにより、第1気体または第2気体をこの溝状のくぼみに沿って電解液中を気泡として上昇させることができ、第1気体と第2気体とを容易に分離することができる。また、このような溝状のくぼみを形成することにより、第1電解用電極8と第2電解用電極7との間に形成する隔壁13を省略することもできる。溝状のくぼみは、例えば図9のように第1電解用電極8および第2電解用電極7の電解液に接触可能な面にそれぞれ1つ形成されてもよく、図10のように第1電解用電極8および第2電解用電極7の電解液に接触可能な面にそれぞれ複数形成されてもよい。
【0081】
第1電解用電極8および第2電解用電極7は、少なくとも一方が複数であり、かつ、それぞれ帯状の電解液に接触可能な面を有し、かつ、その面の長辺が隣接するように交互に設けられてもよい。図17は、本実施形態の気体製造装置の概略平面図であり、図18は、図17の点線A−Aにおける気体製造装置の概略断面図である。なお、この気体製造装置23の点線A−Aに垂直な方向の断面図は、図3、4のような断面を有している。このように、第1電解用電極8および第2電解用電極7を設けることにより、第1気体が発生する反応が生じる部分と、第2気体が発生する反応が生じる部分との間の距離を短くすることができ、電解液中で生じるイオン濃度の不均衡をより少なくすることができる。また、電解液に接触可能な面を帯状とすることにより、第1気体および第2気体を容易に回収することができる。また、気体製造装置23の両側のうち、一方に複数の第1気体排出口20を形成することができ、他方に複数の第2気体排出口19を形成することができる。このことにより第1気体を回収するための第1気体排出路25と第2気体を回収するための第2気体排出路26を気体製造装置23の両側に設けることができ、配管を簡素化することができる。もしくは、第1気体排出路25、第2気体排出路26を設けずとも、第1気体排出口20あるいは第2気体排出口19から排出される気体を、図示されない気体収集部を介して水上置換法等の方法により気体を収集することが可能である。
【0082】
また、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち少なくとも一方は、前記受光面の面積より大きい触媒表面積を有することが好ましい。このような構成によれば、光電変換部2で生じる起電力により、より効率的に第1気体または第2気体を発生させることができる。
また、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち少なくとも一方は、触媒が担持された多孔質の導電体であることが好ましい。このような構成によれば、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち少なくとも一方の触媒表面積を大きくすることができ、より効率的に第1気体または第2気体を発生させることができる。また、多孔質の導電体を用いることにより、光電変換部2と触媒との間の電流が流れることによる電位の変化を抑制することができ、より効率的に第1気体または第2気体を発生させることができる。
第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち、一方は水素発生部であってもよく、他方が酸素発生部であってもよい。この場合、第1気体および第2気体のうち一方は水素であり、他方は酸素である。
【0083】
9.水素発生部
水素発生部は、電解液からH2を発生させる部分であり、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうちどちらか一方である。
また、水素発生部は、電解液からH2が発生する反応の触媒を含んでもよい。このことにより、電解液からH2が発生する反応の反応速度を大きくすることができる。水素発生部は、電解液からH2が発生する反応の触媒のみからなってもよく、この触媒が担持体に担持されたものであってもよい。また、水素発生部は、光電変換部2の受光面の面積より大きい触媒表面積を有してもよい。このことにより、電解液からH2が発生する反応をより速い反応速度とすることができる。また、水素発生部は、触媒が担持された多孔質の導電体であってもよい。このことにより、触媒表面積を大きくすることができる。また、光電変換部2の受光面または裏面と水素発生部に含まれる触媒との間に電流が流れることによる電位の変化を抑制することができる。さらに、水素発生部は、水素発生触媒としてPt、Ir、Ru、Pd、Rh、Au、Fe、NiおよびSeのうち少なくとも1つを含んでもよい。このような構成によれば、光電変換部2で生じる起電力により、より速い反応速度で水素を発生させることができる。
【0084】
電解液からH2が発生する反応の触媒(水素発生触媒)は、2つのプロトンと2つの電子から1分子の水素への変換を促進する触媒であり、化学的に安定であり、水素生成過電圧が小さい材料を用いることができる。例えば、水素に対して触媒活性を有するPt,Ir,Ru,Pd,Rh,Au等の白金族金属およびその合金あるいは化合物、水素生成酵素であるヒドロゲナーゼの活性中心を構成するFe,Ni,Seの合金あるいは化合物、およびこれらの組み合わせ等を好適に用いることが可能である。中でもPtおよびPtを含有するナノ構造体は水素発生過電圧が小さく好適に用いることが可能である。光照射により水素発生反応が確認されるCdS,CdSe,ZnS,ZrO2などの材料を用いることもできる。
【0085】
水素発生触媒を導電体に担持することができる。触媒を担持する導電体としては、金属材料、炭素質材料、導電性を有する無機材料等が挙げられる。
金属材料としては、電子伝導性を有し、酸性雰囲気下で耐腐食性を有する材料が好ましい。具体的には、Au、Pt、Pd等の貴金属、Ti、Ta、W、Nb、Ni、Al、Cr、Ag、Cu、Zn、Su、Si等の金属並びにこれらの金属の窒化物および炭化物、ステンレス鋼、Cu−Cr、Ni−Cr、Ti−Pt等の合金が挙げられる。金属材料には、Pt、Ti、Au、Ag、Cu、Ni、Wからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を含むことが、他の化学的な副反応が少ないという観点から、より好ましい。これら金属材料は、比較的電気抵抗が小さく、面方向に電流を取り出しても電圧の低下を抑制することができる。また、Cu、Ag、Zn等の酸性雰囲気下での耐腐食性に乏しい金属材料を用いる場合には、Au、Pt、Pd等の耐腐食性を有する貴金属および金属、カーボン、グラファイト、グラッシーカーボン、導電性高分子、導電性窒化物、導電性炭化物、導電性酸化物等によって耐腐食性に乏しい金属の表面をコーティングしてもよい。
【0086】
炭素質材料としては、化学的に安定で導電性を有する材料が好ましい。例えば、アセチレンブラック、バルカン、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、VGCF、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、フラーレン等の炭素粉末や炭素繊維が挙げられる。
【0087】
導電性を有する無機材料としては、例えば、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2、酸化アンチモンドープ酸化スズが挙げられる。
【0088】
なお、導電性高分子としては、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン等が挙げられ、導電性窒化物としては、窒化炭素、窒化ケイ素、窒化ガリウム、窒化インジウム、窒化ゲルマニウム、窒化チタニウム、窒化ジルコニウム、窒化タリウム等が挙げられ、導電性炭化物としては、炭化タンタル、炭化ケイ素、炭化ジルコニウム、炭化チタニウム、炭化モリブデン、炭化ニオブ、炭化鉄、炭化ニッケル、炭化ハフニウム、炭化タングステン、炭化バナジウム、炭化クロム等が挙げられ、導電性酸化物としては、酸化スズ、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化アンチモンドープ酸化スズ等が挙げられる。
【0089】
水素発生触媒を担持する導電体の構造としては、板状、箔状、棒状、メッシュ状、ラス板状、多孔質板状、多孔質棒状、織布状、不織布状、繊維状、フェルト状が好適に使用できる。また、フェルト状電極の表面を溝状に圧着した溝付き導電体は、電気抵抗と電極液の流動抵抗を低減できるので好適である。
【0090】
10.酸素発生部
酸素発生部は、電解液からO2を発生させる部分であり、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうちどちらか一方である。
また、酸素発生部は、電解液からO2が発生する反応の触媒を含んでもよい。このことにより、電解液からO2が発生する反応の反応速度を大きくすることができる。また、酸素発生部は、電解液からO2が発生する反応の触媒のみからなってもよく、この触媒が担持体に担持されたものであってもよい。また、酸素発生部は、光電変換部2の受光面の面積より大きい触媒表面積を有してもよい。このことにより、電解液からO2が発生する反応をより速い反応速度とすることができる。また、酸素発生部は、触媒が担持された多孔質の導電体であってもよい。このことにより、触媒表面積を大きくすることができる。また、光電変換部2の受光面または裏面と酸素発生部に含まれる触媒との間に電流が流れることによる電位の変化を抑制することができる。さらに、酸素発生部は、酸素発生触媒としてMn、Ca、Zn、CoおよびIrのうち少なくとも1つを含んでもよい。このような構成によれば、光電変換部で生じる起電力により、より速い反応速度で酸素を発生させることができる。
【0091】
電解液からO2が発生する反応の触媒(酸素発生触媒)は、2つの水分子から1分子の酸素および4つのプロトンと4つの電子への変換を促進する触媒であり、化学的に安定であり、酸素発生過電圧が小さい材料を用いることができる。例えば、光を用い水から酸素発生を行う反応を触媒する酵素であるPhotosystem IIの活性中心を担うMn,Ca,Zn,Coを含む酸化物あるいは化合物や、Pt,RuO2,IrO2等の白金族金属を含む化合物や、Ti,Zr,Nb,Ta,W,Ce,Fe,Ni等の遷移金属を含む酸化物あるいは化合物、および上記材料の組み合わせ等を用いることが可能である。中でも酸化イリジウム、酸化マンガン、酸化コバルト、リン酸コバルトは、過電圧が小さく酸素発生効率が高いことから好適に用いることができる。
【0092】
酸素発生触媒を導電体に担持することができる。触媒を担持する導電体としては、金属材料、炭素質材料、導電性を有する無機材料等が挙げられる。これらの説明は、「9.水素発生部」に記載した水素発生触媒についての説明が矛盾がない限り当てはまる。
水素発生触媒および酸素発生触媒の単独の触媒活性が小さい場合、助触媒を用いることも可能である。例えば、Ni,Cr,Rh,Mo,Co,Seの酸化物あるいは化合物などが挙げられる。
【0093】
なお、水素発生触媒、酸素発生触媒の担持方法は、導電体もしくは半導体に直接塗布する方法や、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等のPVD法、CVD法等の乾式塗工法、電析法など、材料により適宜その手法を変え作製ことが可能である。光電変換部と触媒の間に適宜導電物質を担持することが可能である。また水素発生および酸素発生のための触媒活性が十分でない場合、金属やカーボン等の多孔質体や繊維状物質、ナノ粒子等に担持することにより反応表面積を大きくし、水素及び酸素発生速度を向上させることが可能である。
【0094】
11.天板、電解液室
天板14は、第1電解用電極8および第2電解用電極7の上に透光性基板1と対向するように設けることができる。また、天板14は、第1電解用電極8および第2電解用電極7と天板14との間に空間が設けられるように設けることができる。この空間を電解液室15とすることができ、電解液室15に電解液を導入することにより、第1電解用電極8および第2電解用電極7を電解液に接触させることができる。また、天板に箱状のものを用いる場合、天板14は箱体の底の部分であってもよい。
【0095】
また、天板14は、電解液室15を構成し、生成した第1気体および第2気体を閉じ込めるために構成される材料であり、機密性が高い物質が求められる。透明なものであっても不透明なものであっても特に限定されるものではないが、第1気体および第2気体が発生していることを視認できる点においては透明な材料であることが好ましい。透明な天板としては特に限定されず、例えば石英ガラス、パイレックス(登録商標)、合成石英板等の透明なリジッド材、あるいは透明樹脂板、透明樹脂フィルムなどを挙げることができる。中でも、ガスの透過性がなく、化学的物理的に安定な物質である点でガラス材を用いることが好ましい。
【0096】
12.隔壁
隔壁13は、第1電解用電極8と第2電解用電極7とを仕切るように設けることができる。また、隔壁13は、第1電解用電極8と天板14との間の空間である電解液室15および第2電解用電極7と天板14との間の空間である電解液室15とを仕切るように設けることができる。このことにより、第1電解用電極8および第2電解用電極7で発生させた第1気体および第2気体が混合することを防止することができ、第1気体および第2気体を分離して回収することができる。
また、隔壁13は、イオン交換体を含んでもよい。このことにより、第1電解用電極8と天板14との間の空間の電解液と第2電解用電極7と天板14との間の空間の電解液でアンバランスとなったイオン濃度を一定に保つことができる。
【0097】
隔壁13は、例えば、多孔質ガラス、多孔質ジルコニア、多孔質アルミナ等の無機膜あるいはイオン交換体を用いることが可能である。
イオン交換体としては、当該分野で公知のイオン交換体をいずれも使用でき、プロトン伝導性膜、カチオン交換膜、アニオン交換膜等を使用できる。
プロトン伝導性膜の材質としては、プロトン伝導性を有しかつ電気的絶縁性を有する材質であれば特に限定されず、高分子膜、無機膜又はコンポジット膜を用いることができる。
【0098】
高分子膜としては、例えば、パーフルオロスルホン酸系電解質膜である、デュポン社製のナフィオン(登録商標)、旭化成社製のアシプレックス(登録商標)、旭硝子社製のフレミオン(登録商標)等の膜や、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン等の炭化水素系電解質膜等が挙げられる。
【0099】
無機膜としては、例えば、リン酸ガラス、硫酸水素セシウム、ポリタングストリン酸、ポリリン酸アンモニウム等からなる膜が挙げられる。コンポジット膜としては、スルホン化ポリイミド系ポリマー、タングステン酸等の無機物とポリイミド等の有機物とのコンポジット等からなる膜が挙げられ、具体的にはゴア社製のゴアセレクト膜(登録商標)や細孔フィリング電解質膜等が挙げられる。さらに、高温環境下(例えば、100℃以上)で使用する場合には、スルホン化ポリイミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、スルホン化ポリベンゾイミダゾール、ホスホン化ポリベンゾイミダゾール、硫酸水素セシウム、ポリリン酸アンモニウム等が挙げられる。
【0100】
カチオン交換膜としては、カチオンを移動させることができる固体高分子電解質であればよい。具体的には、パーフルオロカーボンスルフォン酸膜や、パーフルオロカーボンカルボン酸膜等のフッ素系イオン交換膜、リン酸を含浸させたポリベンズイミダゾール膜、ポリスチレンスルホン酸膜、スルホン酸化スチレン・ビニルベンゼン共重合体膜等が挙げられる。
支持電解質溶液のアニオン輸率が高い場合には、アニオン交換膜の使用が好ましい。アニオン交換膜としては、アニオンの移動可能な固体高分子電解質を使用できる。具体的には、ポリオルトフェニレンジアミン膜、アンモニウム塩誘導体基を有するフッ素系イオン交換膜、アンモニウム塩誘導体基を有するビニルベンゼンポリマー膜、クロロメチルスチレン・ビニルベンゼン共重合体をアミノ化した膜等が挙げられる。
【0101】
13.シール材
シール材16は、透光性基板1と天板14を接着し、気体製造装置23内を流れる電解液および気体製造装置23内で生成した第1気体および第2気体を密閉するための材料である。天板14に箱状のものを用いる場合、この箱体と透光性基板1とを接着するためにシール材16が用いられる。シール材16は、例えば、紫外線硬化性接着剤、熱硬化性接着剤等が好適に使用されるが、その種類は限定されるものではない。紫外線硬化性の接着剤としては、200〜400nmの波長を持つ光を照射することにより重合が起こり光照射後数秒で硬化反応が起こる樹脂であり、ラジカル重合型とカチオン重合型に分けられ、ラジカル重合型樹脂としてはアクリルレート、不飽和ポリエステル、カチオン重合型としては、エポキシ、オキセタン、ビニルエーテル等が挙げられる。また熱硬化性の高分子接着剤としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、熱硬化性ポリイミド等の有機樹脂が挙げられる。熱硬化性の高分子接着剤は、熱圧着時に圧力を掛けた状態で加熱重合し、その後、加圧したまま、室温まで冷却することにより、各部材を良好に接合させるため、締め付け部材等を要しない。また、有機樹脂に加えて、ガラス基板に対して密着性の高いハイブリッド材料を用いることが可能である。ハイブリッド材料を用いることによって、弾性率や硬度等の力学的特性が向上し、耐熱性や耐薬品性が飛躍的に向上する。ハイブリッド材料は、無機コロイド粒子と有機バインダ樹脂とから構成される。例えば、シリカなどの無機コロイド粒子と、エポキシ樹脂、ポリウレタンアクリレート樹脂やポリエステルアクリレート樹脂などの有機バインダ樹脂とから構成されるものが挙げられる。
【0102】
ここではシール材16と記しているが、透光性基板1と天板14を接着させる機能を有するものであれば限定されず、樹脂製あるいは金属製のガスケットを用い外部からネジ等の部材を用いて物理的に圧力を加え機密性を高める方法等を適宜用いることも可能である。
【0103】
14.電解液室
電解液室15は、第1電解用電極8と天板14との間の空間および第2電解用電極7と天板14との間の空間とすることができる。また、電解液室15は、隔壁13により仕切ることができる。
生成した第1気体及び第2気体の気泡が効率よく第1電解用電極8または第2電解用電極7から離れるように、電解液室15の内部で電解液を循環させるような例えばポンプやファン、熱による対流発生装置などの簡易装置を備え付けることも可能である。
【0104】
15.給水口、第1気体排出口、第2気体排出口、第1気体排出路および第2気体排出路
給水口18は、気体製造装置23に含まれるシール材16の一部、もしくは天板14の一部などに開口を作ることにより設けることができる。給水口18は、第1気体及び第2気体へと分解された電解液を補充するために配置され、その配置箇所および形状は、原料となる電解液が効率よく気体製造装置へ供給されさえすれば、特に限定されるものではない。
【0105】
また、第1気体排出口20は、光電変換部2の受光面を上向きの状態で水平にしたとき、第1電解用電極8の電解液に接触可能な面の上端に近接して設けることができる。また、第2気体排出口19は、光電変換部2の受光面を上向きの状態で水平にしたとき、第2電解用電極7の電解液に接触可能な面の上端に近接して設けることができる。このことにより、気体製造装置23を光電変換部2の受光面が上向きの状態で水平になるように設置した場合に、第1電解用電極8で発生させた第1気体を気泡として電解液中を上昇させ第1気体排出口20から回収することができ、第2電解用電極7で発生させた第2気体を気泡として電解液中を上昇させ第2気体排出口19から回収することができる。
【0106】
また、第1気体排出口20は、第1気体排出路25と導通することができ、第2気体排出口19は第2気体排出路26と導通することができる。また、第1気体排出路25は、複数の第1気体排出口20と導通することができ、第2気体排出路26は、複数の第2気体排出口19と導通することができる。このことにより、気体製造装置23で発生させた第1気体および第2気体を回収することができる。
【0107】
16.電解液
電解液は、第1気体および第2気体の原料となるものであれば特に限定されないが、例えば、電解質を含む水溶液であり、例えば、0.1MのH2SO4を含む電解液、0.1Mリン酸カリウム緩衝液などである。この場合、電解液から第1気体および第2気体として水素および酸素を製造することができる。
【0108】
気体製造方法
本実施形態の気体製造方法は、気体製造装置23を前記受光面が実質的に水平となるように設置し、前記気体製造装置は、第1気体を排出する第1気体排出口と、第2気体を排出する第2気体排出口と、電解液室とを備え、前記電解液室に電解液を導入し、太陽光を前記光電変換部の受光面に入射させることにより第1電解用電極および第2電解用電極からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させ、第1気体排出口および第2気体排出口からそれぞれ第1気体および第2気体を排出する。
このことにより第1気体および第2気体を製造することができる。
【0109】
気体製造装置アレイ
本実施形態の気体製造装置アレイは、複数の本実施形態の気体製造装置23と、第1気体排出路25と、第2気体排出路26とを備え、各気体製造装置23は、第1気体を排出する第1気体排出口20と第2気体を排出する第2気体排出口19とを備え、第1気体排出路25は、各気体製造装置23の第1気体排出口20と導通し、第2気体排出路26は、各気体製造装置23の第2気体排出口19と導通する。たとえば、図19のように気体製造装置を配置することにより気体製造装置アレイを形成することができ、この場合、第1気体排出路25と第2気体排出路26とを各気体製造装置23の両側に設けることができるため、配管を簡素化することができる。
【符号の説明】
【0110】
1: 基板 2:光電変換部 4:第1電極 5:第2電極 7:第2電解用電極 8:第1電解用電極 9:第1導電部 10:第2導電部 11:第1型部 12:第2型部 13:隔壁 14:天板 15:電解液室 16:シール材 17:第3導電部 18:給水口 19:第2気体排出口 20:第1気体排出口 21:絶縁部 23:気体製造装置 25:第1気体排出路 26:第2気体排出路 28:光電変換層 33:第3導電部 35:半導体領域 36:p型半導体領域 37:n型半導体領域 40:アイソレーション 42:第4導電部 43:第5導電部 45:気体製造装置アレイ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光面およびその裏面を有する光電変換部と、前記裏面の上に並べて設けられ、かつ、電解液に接触可能な面をそれぞれ有する第1および第2電解用電極とを備え、
第1および第2電解用電極が電解液と接触するとき、第1および第2電解用電極は、前記光電変換部が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体が発生するように設けられ、
前記光電変換部の受光面を水平にしたとき、第1電解用電極と第2電解用電極とは、電解液に接触可能な面と水平な基準面との間の傾斜角が異なることを特徴とする気体製造装置。
【請求項2】
前記光電変換部の受光面を水平にしたとき、第1電解用電極の電解液に接触可能な面の上端に近接して設けられた第1気体排出口と、第2電解用電極の電解液に接触可能な面の上端に近接して設けられた第2気体排出口とをさらに備え、
第1電解用電極は、第1気体を第1気体排出口から回収できるように傾斜した電解液に接触可能な面を有し、
第2電解用電極は、第2気体を第2気体排出口から回収できるように傾斜した電解液に接触可能な面を有する請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記光電変換部は、方形状の受光面を有し、
第1および第2気体排出口は、それぞれ前記光電変換部の受光面の対向する辺に近接して設けられた請求項2に記載の装置。
【請求項4】
第1および第2電解用電極は、少なくとも一方が複数であり、かつ、それぞれ帯状の電解液に接触可能な面を有し、かつ、この面の長辺が隣接するように交互に設けられた請求項1〜3のいずれか1つに記載の装置。
【請求項5】
第1電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられた第1型部および第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられた第2型部をさらに備え、
第1型部および第2型部は、前記光電変換部の受光面を水平にしたとき、第1電解用電極の電解液に接触可能な面と水平な基準面との間の傾斜角と、第2電解用電極の電解液に接触可能な面と前記基準面との間の傾斜角とが異なるように成形された請求項1〜4のいずれか1つに記載の装置。
【請求項6】
第1型部および第2型部は、固体樹脂からなる請求項5に記載の装置。
【請求項7】
第1型部と第1電解用電極との間または第2型部と第2電解用電極との間に第1導電部をさらに備える請求項5または6に記載の装置。
【請求項8】
第1および第2電解用電極は、それぞれ電解液に接触可能な面に傾斜方向に伸びる溝状のくぼみを有する請求項1〜7のいずれか1つに記載の装置。
【請求項9】
光電変換部の受光面を水平にしたとき、
第1電解用電極は、水平な基準面との間の傾斜角が1度以上60度以下の電解液に接触可能な面を有し、第2電解用電極は、前記基準面との間の傾斜角が120度以上179度以下の電解液に接触可能な面を有する請求項1〜8のいずれか1つに記載の装置。
【請求項10】
前記光電変換部は、受光することによりその受光面と裏面との間に起電力が生じ、
第1電解用電極は、前記光電変換部の裏面と電気的に接続し、
第2電解用電極は、前記光電変換部の受光面と電気的に接続する請求項1〜9のいずれか1つに記載の装置。
【請求項11】
前記光電変換部の受光面に接触する第1電極をさらに備える請求項1〜10のいずれか1つに記載の装置。
【請求項12】
第1電極と第2電解用電極とを電気的に接続する第2導電部をさらに備える請求項11に記載の装置。
【請求項13】
第2導電部は、前記光電変換部を貫通するコンタクトホールに設けられた請求項12に記載の装置。
【請求項14】
第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられた第2型部を備え、
第2型部は、絶縁性を有し、かつ、前記光電変換部の側面を覆うように設けられ、
第2導電部は、第2型部の前記光電変換部の側面を覆う部分の上に設けられた請求項12に記載の装置。
【請求項15】
第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられた第2型部を備え、
第2型部は、絶縁性を有し、かつ、前記光電変換部の側面を覆うように設けられ、
第2電解用電極は、第2型部の前記光電変換部の側面を覆う部分の上に設けられ、かつ、第1電極と接触する請求項11に記載の装置。
【請求項16】
第1電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられた第1型部と、第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられた第2型部とを備え、
前記光電変換部の裏面と第1型部との間および前記光電変換部の裏面と第2型部との間に設けられた第2電極をさらに備える請求項1〜15のいずれか1つに記載の装置。
【請求項17】
第2電極と第1電解用電極とを電気的に接続する第3導電部をさらに備える請求項16に記載の装置。
【請求項18】
第3導電部は、第1型部の側部を覆うように設けられ、かつ、第2電極と接触する請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記光電変換部は、受光することにより前記裏面の第1および第2区域間に電位差が生じ、
第1区域は、第1電解用電極と電気的に接続し、
第2区域は、第2電解用電極と電気的に接続する請求項1〜9のいずれか1つに記載の装置。
【請求項20】
前記光電変換部は、n型半導体部およびp型半導体部を有する少なくとも1つの半導体材料からなり、
第1および第2区域のうち、一方は前記n型半導体部の一部であり、他方は前記p型半導体部の一部である請求項19に記載の装置。
【請求項21】
透光性基板をさらに備え、
前記光電変換部は、前記透光性基板の上に設けられた請求項1〜20のいずれか1つに記載の装置。
【請求項22】
透光性基板をさらに備え、
前記光電変換部は、前記透光性基板の上に設けられ、
前記透光性基板は、記光電変換部の受光面を水平にしたとき、第1電解用電極の電解液に接触可能な面と水平な基準面との間の傾斜角と、第2電解用電極の電解液に接触可能な面と前記基準面との間の傾斜角とが異なるように成形された請求項1〜6のいずれか1つに記載の装置。
【請求項23】
第2電解用電極は、絶縁部を介して前記光電変換部の裏面上に設けられた請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記光電変換部は、p型半導体層、i型半導体層およびn型半導体層からなる光電変換層を有する請求項1〜23のいずれか1つに記載の装置。
【請求項25】
前記光電変換部は、直列接続した複数の光電変換層を含み、
前記複数の光電変換層は、受光することにより生じる起電力を第1電解用電極および第2電解用電極に供給する請求項1〜24のいずれか1つに記載の装置。
【請求項26】
各光電変換層は、第4導電部により直列接続された請求項25に記載の装置。
【請求項27】
第1電解用電極および第2電解用電極のうち、一方は電解液からH2を発生させる水素発生部であり、他方は電解液からO2を発生させる酸素発生部であり、
前記水素発生部および前記酸素発生部は、それぞれ電解液からH2が発生する反応の触媒および電解液からO2が発生する反応の触媒を含む請求項1〜26のいずれか1つに記載の装置。
【請求項28】
前記水素発生部および前記酸素発生部のうち少なくとも一方は、前記受光面の面積より大きい触媒表面積を有する請求項27に記載の装置。
【請求項29】
前記水素発生部および前記酸素発生部のうち少なくとも一方は、触媒が担持された多孔質の導電体である請求項27または28に記載の装置。
【請求項30】
前記水素発生部は、水素発生触媒としてPt、Ir、Ru、Pd、Rh、Au、Fe、NiおよびSeのうち少なくとも1つを含む請求項27〜29のいずれか1つに記載の装置。
【請求項31】
前記酸素発生部は、酸素発生触媒としてMn、Ca、Zn、CoおよびIrのうち少なくとも1つを含む請求項27〜30のいずれか1つに記載の装置。
【請求項32】
透光性基板と電解液室とをさらに備え、
前記光電変換部は、前記透光性基板の上に設けられ、
第1電解用電極および第2電解用電極の上に天板をさらに備え、
前記電解液室は、第1電解用電極および第2電解用電極と前記天板との間に設けられた請求項1〜31のいずれか1つに記載の装置。
【請求項33】
第1電解用電極と前記天板との間の電解液室および第2電解用電極と天板との間の電解液室とを仕切る隔壁をさらに備える請求項32に記載の装置。
【請求項34】
前記隔壁は、イオン交換体を含む請求項33に記載の装置。
【請求項35】
請求項1〜34のいずれか1つに記載の気体製造装置を前記光電変換部の受光面が実質的に水平となるように設置し、
前記気体製造装置は、第1気体を排出する第1気体排出口と、第2気体を排出する第2気体排出口と、電解液室とを備え、
前記電解液室に電解液を導入し、太陽光を前記光電変換部の受光面に入射させることにより第1電解用電極および第2電解用電極からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させ、第1気体排出口および第2気体排出口からそれぞれ第1気体および第2気体を排出する気体製造方法。
【請求項36】
複数の請求項1〜34のいずれか1つに記載の気体製造装置と、第1気体排出路と、第2気体排出路とを備え、
各気体製造装置は、第1気体を排出する第1気体排出口と第2気体を排出する第2気体排出口とを備え、
第1気体排出路は、各気体製造装置の第1気体排出口と導通し、
第2気体排出路は、各気体製造装置の第2気体排出口と導通する気体製造装置アレイ。
【請求項1】
受光面およびその裏面を有する光電変換部と、前記裏面の上に並べて設けられ、かつ、電解液に接触可能な面をそれぞれ有する第1および第2電解用電極とを備え、
第1および第2電解用電極が電解液と接触するとき、第1および第2電解用電極は、前記光電変換部が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体が発生するように設けられ、
前記光電変換部の受光面を水平にしたとき、第1電解用電極と第2電解用電極とは、電解液に接触可能な面と水平な基準面との間の傾斜角が異なることを特徴とする気体製造装置。
【請求項2】
前記光電変換部の受光面を水平にしたとき、第1電解用電極の電解液に接触可能な面の上端に近接して設けられた第1気体排出口と、第2電解用電極の電解液に接触可能な面の上端に近接して設けられた第2気体排出口とをさらに備え、
第1電解用電極は、第1気体を第1気体排出口から回収できるように傾斜した電解液に接触可能な面を有し、
第2電解用電極は、第2気体を第2気体排出口から回収できるように傾斜した電解液に接触可能な面を有する請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記光電変換部は、方形状の受光面を有し、
第1および第2気体排出口は、それぞれ前記光電変換部の受光面の対向する辺に近接して設けられた請求項2に記載の装置。
【請求項4】
第1および第2電解用電極は、少なくとも一方が複数であり、かつ、それぞれ帯状の電解液に接触可能な面を有し、かつ、この面の長辺が隣接するように交互に設けられた請求項1〜3のいずれか1つに記載の装置。
【請求項5】
第1電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられた第1型部および第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられた第2型部をさらに備え、
第1型部および第2型部は、前記光電変換部の受光面を水平にしたとき、第1電解用電極の電解液に接触可能な面と水平な基準面との間の傾斜角と、第2電解用電極の電解液に接触可能な面と前記基準面との間の傾斜角とが異なるように成形された請求項1〜4のいずれか1つに記載の装置。
【請求項6】
第1型部および第2型部は、固体樹脂からなる請求項5に記載の装置。
【請求項7】
第1型部と第1電解用電極との間または第2型部と第2電解用電極との間に第1導電部をさらに備える請求項5または6に記載の装置。
【請求項8】
第1および第2電解用電極は、それぞれ電解液に接触可能な面に傾斜方向に伸びる溝状のくぼみを有する請求項1〜7のいずれか1つに記載の装置。
【請求項9】
光電変換部の受光面を水平にしたとき、
第1電解用電極は、水平な基準面との間の傾斜角が1度以上60度以下の電解液に接触可能な面を有し、第2電解用電極は、前記基準面との間の傾斜角が120度以上179度以下の電解液に接触可能な面を有する請求項1〜8のいずれか1つに記載の装置。
【請求項10】
前記光電変換部は、受光することによりその受光面と裏面との間に起電力が生じ、
第1電解用電極は、前記光電変換部の裏面と電気的に接続し、
第2電解用電極は、前記光電変換部の受光面と電気的に接続する請求項1〜9のいずれか1つに記載の装置。
【請求項11】
前記光電変換部の受光面に接触する第1電極をさらに備える請求項1〜10のいずれか1つに記載の装置。
【請求項12】
第1電極と第2電解用電極とを電気的に接続する第2導電部をさらに備える請求項11に記載の装置。
【請求項13】
第2導電部は、前記光電変換部を貫通するコンタクトホールに設けられた請求項12に記載の装置。
【請求項14】
第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられた第2型部を備え、
第2型部は、絶縁性を有し、かつ、前記光電変換部の側面を覆うように設けられ、
第2導電部は、第2型部の前記光電変換部の側面を覆う部分の上に設けられた請求項12に記載の装置。
【請求項15】
第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられた第2型部を備え、
第2型部は、絶縁性を有し、かつ、前記光電変換部の側面を覆うように設けられ、
第2電解用電極は、第2型部の前記光電変換部の側面を覆う部分の上に設けられ、かつ、第1電極と接触する請求項11に記載の装置。
【請求項16】
第1電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられた第1型部と、第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられた第2型部とを備え、
前記光電変換部の裏面と第1型部との間および前記光電変換部の裏面と第2型部との間に設けられた第2電極をさらに備える請求項1〜15のいずれか1つに記載の装置。
【請求項17】
第2電極と第1電解用電極とを電気的に接続する第3導電部をさらに備える請求項16に記載の装置。
【請求項18】
第3導電部は、第1型部の側部を覆うように設けられ、かつ、第2電極と接触する請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記光電変換部は、受光することにより前記裏面の第1および第2区域間に電位差が生じ、
第1区域は、第1電解用電極と電気的に接続し、
第2区域は、第2電解用電極と電気的に接続する請求項1〜9のいずれか1つに記載の装置。
【請求項20】
前記光電変換部は、n型半導体部およびp型半導体部を有する少なくとも1つの半導体材料からなり、
第1および第2区域のうち、一方は前記n型半導体部の一部であり、他方は前記p型半導体部の一部である請求項19に記載の装置。
【請求項21】
透光性基板をさらに備え、
前記光電変換部は、前記透光性基板の上に設けられた請求項1〜20のいずれか1つに記載の装置。
【請求項22】
透光性基板をさらに備え、
前記光電変換部は、前記透光性基板の上に設けられ、
前記透光性基板は、記光電変換部の受光面を水平にしたとき、第1電解用電極の電解液に接触可能な面と水平な基準面との間の傾斜角と、第2電解用電極の電解液に接触可能な面と前記基準面との間の傾斜角とが異なるように成形された請求項1〜6のいずれか1つに記載の装置。
【請求項23】
第2電解用電極は、絶縁部を介して前記光電変換部の裏面上に設けられた請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記光電変換部は、p型半導体層、i型半導体層およびn型半導体層からなる光電変換層を有する請求項1〜23のいずれか1つに記載の装置。
【請求項25】
前記光電変換部は、直列接続した複数の光電変換層を含み、
前記複数の光電変換層は、受光することにより生じる起電力を第1電解用電極および第2電解用電極に供給する請求項1〜24のいずれか1つに記載の装置。
【請求項26】
各光電変換層は、第4導電部により直列接続された請求項25に記載の装置。
【請求項27】
第1電解用電極および第2電解用電極のうち、一方は電解液からH2を発生させる水素発生部であり、他方は電解液からO2を発生させる酸素発生部であり、
前記水素発生部および前記酸素発生部は、それぞれ電解液からH2が発生する反応の触媒および電解液からO2が発生する反応の触媒を含む請求項1〜26のいずれか1つに記載の装置。
【請求項28】
前記水素発生部および前記酸素発生部のうち少なくとも一方は、前記受光面の面積より大きい触媒表面積を有する請求項27に記載の装置。
【請求項29】
前記水素発生部および前記酸素発生部のうち少なくとも一方は、触媒が担持された多孔質の導電体である請求項27または28に記載の装置。
【請求項30】
前記水素発生部は、水素発生触媒としてPt、Ir、Ru、Pd、Rh、Au、Fe、NiおよびSeのうち少なくとも1つを含む請求項27〜29のいずれか1つに記載の装置。
【請求項31】
前記酸素発生部は、酸素発生触媒としてMn、Ca、Zn、CoおよびIrのうち少なくとも1つを含む請求項27〜30のいずれか1つに記載の装置。
【請求項32】
透光性基板と電解液室とをさらに備え、
前記光電変換部は、前記透光性基板の上に設けられ、
第1電解用電極および第2電解用電極の上に天板をさらに備え、
前記電解液室は、第1電解用電極および第2電解用電極と前記天板との間に設けられた請求項1〜31のいずれか1つに記載の装置。
【請求項33】
第1電解用電極と前記天板との間の電解液室および第2電解用電極と天板との間の電解液室とを仕切る隔壁をさらに備える請求項32に記載の装置。
【請求項34】
前記隔壁は、イオン交換体を含む請求項33に記載の装置。
【請求項35】
請求項1〜34のいずれか1つに記載の気体製造装置を前記光電変換部の受光面が実質的に水平となるように設置し、
前記気体製造装置は、第1気体を排出する第1気体排出口と、第2気体を排出する第2気体排出口と、電解液室とを備え、
前記電解液室に電解液を導入し、太陽光を前記光電変換部の受光面に入射させることにより第1電解用電極および第2電解用電極からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させ、第1気体排出口および第2気体排出口からそれぞれ第1気体および第2気体を排出する気体製造方法。
【請求項36】
複数の請求項1〜34のいずれか1つに記載の気体製造装置と、第1気体排出路と、第2気体排出路とを備え、
各気体製造装置は、第1気体を排出する第1気体排出口と第2気体を排出する第2気体排出口とを備え、
第1気体排出路は、各気体製造装置の第1気体排出口と導通し、
第2気体排出路は、各気体製造装置の第2気体排出口と導通する気体製造装置アレイ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
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【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−107280(P2012−107280A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255976(P2010−255976)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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