気体製造装置および気体製造方法
【課題】電解液から発生させた気体の反応面における滞留を抑制することができ、気体生成効率の高い気体製造装置を提供する。
【解決手段】受光面および裏面を有する光電変換部2と、前記裏面と電気的に接続しかつ前記光電変換部2が受光することにより生じる起電力を用いて電解液から第1気体を発生させる第1気体発生部8と、前記受光面と電気的に接続しかつ前記光電変換部2が受光することにより生じる起電力を用いて電解液から第2気体を発生させる第2気体発生部7と、気体流路17と、気体排出口とを備え、前記気体流路17は、第1気体発生部8および第2気体発生部7のうち少なくとも一方と前記光電変換部2の裏面との間に設けられ、前記気体流路17は、第1気体または第2気体を前記気体排出口へと導通させることを特徴とする気体製造装置。
【解決手段】受光面および裏面を有する光電変換部2と、前記裏面と電気的に接続しかつ前記光電変換部2が受光することにより生じる起電力を用いて電解液から第1気体を発生させる第1気体発生部8と、前記受光面と電気的に接続しかつ前記光電変換部2が受光することにより生じる起電力を用いて電解液から第2気体を発生させる第2気体発生部7と、気体流路17と、気体排出口とを備え、前記気体流路17は、第1気体発生部8および第2気体発生部7のうち少なくとも一方と前記光電変換部2の裏面との間に設けられ、前記気体流路17は、第1気体または第2気体を前記気体排出口へと導通させることを特徴とする気体製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体製造装置および気体製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料の使用に伴う地球温暖化および化石燃料資源自体の枯渇の懸念から、環境に優しく、かつ無尽蔵なエネルギー供給の可能性を持つ再生可能エネルギーの利用が注目を集め、開発も盛んに行われている。再生可能エネルギーとしては太陽光、風力、水力、地熱等があり、これらのエネルギーにより電力を作り出す技術は実用化もされてきている。中でも太陽光は地上において、どこでも得ることが可能なエネルギー源であり、太陽光により電力を作る太陽電池は世界各地に設置され、現在ではまだ少数ではあるが、一般家庭にも普及しつつある。しかし、太陽光によるエネルギー供給は季節や、気候の変動により一定しないという欠点があり、この変動を平滑化することが課題である。この課題を解決するための方法のひとつとして、太陽から得たエネルギーを別の物質、例えば液体燃料や、水素等のガスに変換して、保存するという方法が考えられている。
【0003】
これらの太陽光エネルギーからの変換物質の中でも水素は燃やすと水が出来るだけで、地球温暖化の原因となる二酸化炭素や有害な窒素酸化物などを排出しない為、将来のエネルギーとして期待されている。水素ガス生成については、メタン等の化石燃料から生成する方法と水を電気分解して生成する方法が試みられているが、CO2の排出を伴わない後者が最終的な手段であり、中でも安定的かつ地域普遍的な手段としては太陽光発電を利用した水の電気分解による水素ガス生成がもっとも確実な手段であると言われている。これにより太陽光エネルギーは化学的なエネルギーとして貯蔵出来ることとなり、太陽光エネルギーの利用範囲を大きく広げることになる。
【0004】
なお、太陽光エネルギーからより直接的に水素を生成する方法として光触媒(本多藤島効果)による水素ガス生成も研究されているが、現在まだ太陽エネルギーのわずか3%程度を占めるに過ぎない紫外線領域の光しか利用できない等の問題があり実用化の目処は立っていない。その他原子力を利用した水の熱分解による水素の生成やバイオマスを利用した水素ガス生成が試みられているが、まだ研究段階である。
【0005】
従来、太陽光を利用した水電解システムには例えば特許文献1に示されるようなものがある。この水電解システムは光電変換半導電体に光触媒の層を積層した光電気化学セルを鉛直に設置し、光を照射することで直接水分解をすることを可能としている。また、特許文献2においては導電体上にp型半導体とn型半導体を積層し、絶縁部材で隔てて同一面上に前記半導体を逆順に積層することにより、水素、酸素をともに非受光面側で生成することが可能であることが示されている。他にも、特許文献3に示されるようなものがある。この水電解システムは光触媒層と対極がイオン伝導膜を介して設けられている。また、水電解セルの外壁に流通孔を設け、前記流通孔を介して隣接する水電解セル同士で電解液が流通可能となるように構成され、隣接する水電解セル同士の電気的導通を防止するようしている。この水分解セルを傾けた状態で設置し、光を照射することにより水を分解している。また、水分解セルを傾けた状態で設置することにより、太陽光の利用効率を高くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2004−504934公報
【特許文献2】特開2004−197167公報
【特許文献3】特開2008−75097公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の水分解システムでは、水分解反応面が鉛直な面に設置した場合、発生した気体は気泡として浮上しにくく、水分解反応面に滞留しやすい。また、太陽光の利用効率を高くするために、水分解反応面を斜めに設置した場合、受光面側の水分解反応面で発生した気体は、気泡として浮上しやすく、水分解反応面に滞留しにくいが、受光面の反対側の水分解反応面では、発生した気体が気泡として浮上しにくく、発生した気体が滞留しやすい。このため、水と接触する水分解反応面の面積が減少し、水分解効率を低下させている。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、電解液から発生させた気体の反応面における滞留を抑制することができ、気体生成効率の高い気体製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、受光面および裏面を有する光電変換部と、前記裏面と電気的に接続しかつ前記光電変換部が受光することにより生じる起電力を用いて電解液から第1気体を発生させる第1気体発生部と、前記受光面と電気的に接続しかつ前記光電変換部が受光することにより生じる起電力を用いて電解液から第2気体を発生させる第2気体発生部と、気体流路と、気体排出口とを備え、前記気体流路は、第1気体発生部および第2気体発生部のうち少なくとも一方と前記光電変換部の裏面との間に設けられ、前記気体流路は、第1気体または第2気体を前記気体排出口へと導通させることを特徴とする気体製造装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、前記気体流路は、第1気体発生部および第2気体発生部のうち少なくとも一方と前記光電変換部の裏面との間に設けられ、前記気体流路は、第1気体または第2気体を前記気体排出口へと導通させるため、第1気体の第1気体発生部の表面での滞留または第2気体の第2気体発生部の表面での滞留を抑制することができる。また、第1気体または第2気体を気体排出口から迅速に排出することができ、回収することができる。つまり、本発明の気体製造装置を斜め設置した場合、受光面の反対側の第1気体発生部または第2気体発生部において電解液から発生させた第1気体または第2気体は、その浮力により浮上する。この浮力により第1気体または第2気体は、気体流路に流入することができ、第1気体または第2気体は、気体流路を導通し、気体排出口から回収することができる。このため、第1気体が第1気体発生部の表面に滞留することまたは第2気体が第2気体発生部の表面に滞留することを抑制することができ、電解液を効率よく分解し第1気体または第2気体を発生させることができる。また、発生させた第1気体または第2気体を迅速に回収することができ、光の照射から生成気体回収までの応答性をよくすることができる。
本発明によれば、第1気体流路を設けることにより気体の滞留を抑制することができるため、電解液を対流させるための付加装置や装置全体を振動させるための付加装置を取り付ける必要がなく、気体製造装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略平面図である。
【図2】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略裏面図である。
【図3】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図4】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図5】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図6】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図7】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図8】図7の点線で囲んだ範囲Dの拡大図である。
【図9】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図10】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図11】図10の点線で囲んだ範囲Eの拡大図である。
【図12】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図13】図12の点線で囲んだ範囲Fの拡大図である。
【図14】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図15】図14の点線で囲んだ範囲Gの拡大図である。
【図16】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図17】図16の点線で囲んだ範囲Jの拡大図である。
【図18】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略平面図である。
【図19】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図20】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図21】図20の点線で囲んだ範囲Mの拡大図である。
【図22】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図23】図22の点線で囲んだ範囲Nの拡大図である。
【図24】比較例で作成した気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の気体製造装置は、受光面および裏面を有する光電変換部と、前記裏面と電気的に接続しかつ前記光電変換部が受光することにより生じる起電力を用いて電解液から第1気体を発生させる第1気体発生部と、前記受光面と電気的に接続しかつ前記光電変換部が受光することにより生じる起電力を用いて電解液から第2気体を発生させる第2気体発生部と、気体流路と、気体排出口とを備え、前記気体流路は、第1気体発生部および第2気体発生部のうち少なくとも一方と前記光電変換部の裏面との間に設けられ、前記気体流路は、第1気体または第2気体を前記気体排出口へと導通させることを特徴とする。
【0012】
気体製造装置とは、電解液から第1気体および第2気体を製造することができる装置である。
光電変換部とは、光を受光し起電力が生じる部分である。
受光面とは、光が入射する光電変換部の面である。
裏面とは、受光面の裏の面である。
【0013】
本発明の気体製造装置において、第1導電部をさらに備え、第1気体発生部および第2気体発生部は、前記光電変換部の裏面上に設けられ、前記気体流路は、第1気体発生部と前記裏面との間および第2気体発生部と前記裏面との間にそれぞれ設けられ、第2気体発生部は、第1導電部を介して前記受光面と電気的に接続することが好ましい。
このような構成によれば、受光面に電解液を介さず光を入射させることができ、電解液による入射光の吸収や入射光の散乱を防止することができる。このことにより、光電変換部へ入射光の量を多くすることができ、光利用効率を高くすることができる。また、受光面に入射する光が、第1気体発生部、第2気体発生部、第1気体および第2気体により吸収や散乱されることはない。このことにより、光電変換部へ入射光の量を多くすることができ、光利用効率を高くすることができる。
本発明の気体製造装置において、絶縁部をさらに備え、第2気体発生部は、絶縁部を介して前記光電変換部の裏面上に設けられることが好ましい。
このような構成によれば、このような構成によれば、第2気体発生部と光電変換部の裏面との間にリーク電流が流れることを防止することができる。
【0014】
本発明の気体製造装置において、第1導電部は、前記光電変換部の受光面に接触する第1電極と、第1電極および第2気体発生部にそれぞれ接触する第2導電部とを含むことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の受光面と第2気体発生部を電気的に接続させることができ、より効率的に第2気体を発生させることができる。
本発明の気体製造装置において、光電変換部は、裏面から受光面へ貫通する第1コンタクトホールを有し、第2導電部は、前記光電変換部を貫通する第1コンタクトホールに設けられることが好ましい。
このような構成によれば、第1電極と第2気体発生部を電気的に接続させることができ、第2導電部を設けたことによる光電変換部の受光面の面積の減少を少なくすることができる。
【0015】
本発明の気体製造装置において、透光性基板をさらに備え、前記光電変換部は、透光性基板の上に設けられることが好ましい。
このような構成によれば、基板上に形成する必要がある光電変換部を本発明の気体製造装置に適用することができる。また、本発明の気体製造装置を取り扱いやすくすることができる。
本発明の気体製造装置において、気体支流路をさらに備えることが好ましく、気体支流路は、第1気体発生部および第2気体発生部のうちどちら一方により形成され、かつ、気体流路に繋がり、気体支流路は、第1気体または第2気体を気体流路へ導通させることが好ましい。
このような構成によれば、第1気体発生部で発生させた第1気体または第2気体発生部で発生させた第2気体を気体支流路を導通させ、気体流路に流入させることができる。その結果、第1気体の第1気体発生部の表面での滞留または第2気体の第2気体発生部の表面での滞留を抑制することができ、電解液を効率よく分解し第1気体および第2気体を発生させることができる。また、第1気体発生部または第2気体発生部が金属板などの気体を透過させない材料により構成された場合でも第1気体または第2気体を気体流路に流入させることができ、第1気体または第2気体の滞留を抑制することができる。
【0016】
本発明の気体製造装置において、第1気体発生部または第2気体発生部は複数であり、気体支流路は、隣接する2つの第1気体発生部の間または隣接する2つの第2気体発生部の間に設けられることが好ましい。
このような構成によれば、隣接する2つの第1気体発生部を形成することまたは隣接する2つの第2気体発生部を形成することでその間に気体支流路を容易に形成することができる。または、1つの第1気体発生部または1つの第2気体発生部を形成し、分割溝を形成することにより、容易に気体支流路を形成することができる。
本発明の気体製造装置において、気体支流路は、両端に第1開口と第2開口とを有し、第1開口は、第1気体発生部および第2気体発生部のうちどちらか一方の気体流路側の面に設けられ、第2開口は、第1開口が設けられた面と反対側の面に設けられ、第2開口は、高さの異なる第1縁部および第2縁部を有し、第1縁部は、第2縁部より高い第2開口の縁であり、かつ、第1気体または第2気体を気体支流路に流入させることが好ましい。
このような構成によれば、気体支流路が第1開口と第2開口を有するため、第1気体発生部または第2気体発生部の気体流路側の面と反対側の面付近で発生させた第1気体または第2気体も気体支流路を導通させ、気体流路に流入させることができる。また、第2開口は、高さの異なる第1縁部および第2縁部を有し、第1縁部は第2縁部より高い第2開口の縁であるため、第1気体発生部または第2気体発生部の気体流路側の面と反対側の面付近で発生させた第1気体または第2気体が気体支流路により流入しやすくなる。このことにより第1気体または第2気体の滞留を抑制することができ、電解液の分解効率を高くすることができる。
【0017】
本発明の気体製造装置において、第1気体および第2気体のうち一方は、H2であり、他方は、O2であることが好ましい。
このような構成によれば、電解液に含まれる水を分解し、燃料となるH2を製造することができる。
本発明の気体製造装置において、前記気体流路は、前記光電変換部の裏面に沿うように設けられることが好ましい。
このような構成によれば、気体流路に第1気体または第2気体を流入しやすくすることができ、第1気体または第2気体を気体排出口から回収しやすくすることができる。
【0018】
本発明の気体製造装置において、電解液チェンバーをさらに備え、第1気体発生部および第2気体発生部のうち少なくとも一方は、前記光電変換部の裏面と前記電解液チェンバーとの間に設けられ、かつ、電解液に浸漬可能であることが好ましい。
このような構成によれば、第1気体発生部または第2気体発生部を電解液に浸漬することができ、第1気体発生部または第2気体発生部において、電解液から第1気体または第2気体を発生させることができる。
【0019】
本発明の気体製造装置において、前記気体流路は、第1気体および第2気体のいずれか1つがその浮力により流入することができるように設けられることが好ましい。
このような構成によれば、第1気体または第2気体を気体流路に流入させることができ、第1気体の第1気体発生部の表面での滞留または第2気体の第2気体発生部の表面での滞留を抑制することができる。
【0020】
本発明の気体製造装置において、第1気体発生部および第2気体発生部のうち少なくとも一方と前記光電変換部との間に気体導通部をさらに備えることが好ましく、前記気体導通部は、気体流路を有することが好ましい。
このような構成によれば、気体流路を容易に設けることができる。
本発明の気体製造装置において、前記気体導通部は、多孔性材料から形成されることが好ましい。
このような構成によれば、多孔性材料が有する孔を気体流路とすることができる。
本発明の気体製造装置において、前記気体導通部は、疎水性の表面を有することが好ましい。
このような構成によれば、第1気体または第2気体の滞留を抑制することができ、電解液の分解効率を高くすることができる。
【0021】
本発明の気体製造装置において、前記気体導通部は、超疎水性多孔質膜から形成されることが好ましい。
このような構成によれば、疎水性多孔質膜が有する電解液が流入しない孔を気体流路とすることができる。この電解液が満たされていない孔を気体流路とすることにより、第1気体または第2気体を気泡ではない状態で気体流路を迅速に導通させることができる。その結果、第1気体または第2気体の滞留を抑制することができ、電解液の分解効率を高くすることができる。また、このことにより、光電変換部への光の照射から第1気体および第2気体を回収するための時間を短縮することができ応答性をよくすることができ、第1気体および第2気体の回収効率を向上させることができる。
本発明の気体製造装置において、第1気体発生部および第2気体発生部は、前記裏面上に設けられ、前記気体導通部は、前記裏面と第1気体発生部および第2気体発生部との間に設けられ、かつ、前記電解液に対する耐食性および遮液性を有することが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部と電解液とを気体導通部により分離することができ、光電変換部が電解液と接触することを防止することができる。このことにより、例えば、光電変換部が電解液により腐食されることを防止することができ、また、光電変換部への電解液の流入などによる光電変換効率の低下を防止することができる。
【0022】
本発明の気体製造装置において、前記気体導通部は、前記光電変換部を覆うように設けられることが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部と電解液とを気体導通部により分離することができる。
本発明の気体製造装置において、前記気体導通部は、導電性を有することが好ましい。
このような構成によれば、第1気体発生部と光電変換部の裏面とをほぼ同じ電位とすることができ、または、第2気体発生部と光電変換部の受光面とをほぼ同じ電位にすることができる。このことにより、電解液の分解効率を高くすることができる。
【0023】
本発明の気体製造装置において、第1気体発生部および第2気体発生部は、前記裏面上に設けられ、前記裏面と第1気体発生部とを電気的に接続する第3導電部をさらに備え、前記気体導通部は、前記裏面と第1気体発生部との間に設けられ、かつ、前記気体導通部を貫通する第2コンタクトホールを有し、第3導電部は、第2コンタクトホールに設けられることが好ましい。
このような構成によれば、気体導通部に絶縁体や半導体をもちいた場合でも、光電変換部の裏面と第1気体発生部とをほぼ同じ電位にすることができ、電解液の分解効率を高くすることができる。
本発明の気体製造装置において、前記光電変換部は、p型半導体層、i型半導体層およびn型半導体層からなる光電変換層を有することが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部がpin構造を有することができ、効率よく光電変換をすることができる。また、光電変換部で生じる起電力をより大きくすることができ、電解液をより効率的に電気分解することができる。
【0024】
本発明の気体製造装置において、第1気体発生部および第2気体発生部のうち、一方は、電解液からH2を発生させる水素発生部であり、他方は、電解液からO2を発生させる酸素発生部であり、前記水素発生部および前記酸素発生部は、それぞれ電解液からH2が発生する反応の触媒および電解液からO2が発生する反応の触媒を含むことが好ましい。
このような構成によれば、第1気体発生部および第2気体発生部のうちの一方である水素発生部における電解液からH2が発生する反応の反応速度を増大させることができ、第1気体発生部および第2気体発生部のうちの他方である酸素発生部における電解液からO2が発生する反応の反応速度を増大させることができる。このことにより、光電変換部で生じた起電力により、より効率的にH2を製造することができ、光の利用効率を向上させることができる。
本発明の気体製造装置において、前記水素発生部および前記酸素発生部のうち少なくとも一方は、触媒が担持された多孔質の導電体であることが好ましい。
このような構成によれば、このような構成によれば、第1気体発生部および第2気体発生部のうち少なくとも一方の触媒表面積を大きくすることができ、より効率的に酸素または水素を発生させることができる。また、多孔質の導電体を用いることにより、光電変換部と触媒との間の電流が流れることによる電位の変化を抑制することができ、より効率的に水素または酸素を発生させることができる。また、触媒表面で発生させた水素または酸素を水素発生部または酸素発生部が有する孔を導通させて気体流路に流入させることができる。このことにより、水素発生部における水素の滞留または酸素発生部での酸素の滞留を抑制することができる。
【0025】
本発明の気体製造装置において、前記水素発生部および前記酸素発生部は、親水性の表面を有することが好ましい。
このような構成によれば、水素発生部および酸素発生部と電解液との接触面積を広くすることができ、電解液をより効率的に分解することができる。また、このような構成によれば、水素発生部および酸素発生部でそれぞれ発生させた水素および酸素を気泡の状態で長時間滞留することを抑制することができ、気体流路への水素及び酸素の送達効率を向上させることができる。
本発明の気体製造装置において、第1気体発生部および第2気体発生部は、前記光電変換部の裏面上に設けられ、前記光電変換部は、透光性基板の上に設けられ、第1気体発生部および第2気体発生部の上に前記透光性基板に対向する天板をさらに備え、第1気体発生部と前記天板との間および第2気体発生部と前記天板との間にそれぞれ電解液チェンバーが設けられることが好ましい。
このような構成によれば、第1気体発生部および第2気体発生部と前記天板との間の電解液チェンバーに電解液を導入することができ、第1気体発生部および第2気体発生部において電解液からより効率的に第1気体および第2気体を発生させることができる。
【0026】
本発明の気体製造装置において、第1気体発生部と前記天板との間の電解液チェンバーおよび第2気体発生部と天板との間の電解液チェンバーとを仕切る隔壁をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、第1気体発生部および第2気体発生部でそれぞれ発生した第1気体および第2気体を分離することができ、第1気体および第2気体をより効率的に回収することができる。
本発明の気体製造装置において、前記隔壁は、イオン交換体を含むことが好ましい。
このような構成によれば、第1気体発生部の上部の空間に導入された電解液と第2気体発生部の上部の空間に導入された電解液との間のプロトン濃度の不均衡を解消することができ、安定して第1気体および第2気体を発生させることができる。
【0027】
さらに本発明では、本発明の気体製造装置を前記受光面が水平面に対し傾斜するように設置し、前記気体製造装置の下部から前記気体製造装置に電解液を導入し、太陽光を前記受光面に入射させることにより第1気体発生部および第2気体発生部からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させ、前記気体製造装置の上部から第1気体および第2気体を排出する気体製造方法も提供する。
本発明の気体製造方法によれば、太陽光を利用して、低コストで第1気体および第2気体を製造することができる。また、気体製造装置を前記受光面が水平面に対し傾斜するように設置することにより、高効率で太陽光を利用し電解液を分解をさせることができ、また、気体製造装置を建造物の傾斜の付いた屋根等に設置することができる。
【0028】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0029】
気体製造装置の構成
図1は、本発明の一実施形態の気体製造装置の概略平面図である。なお、透光性基板は省略している。図2は、本発明の一実施形態の気体製造装置の概略裏面図である。なお、外箱の底板は省略している。図3〜6は、それぞれ本発明の一実施形態の気体製造装置の概略断面図であり、図1に示した気体製造装置の点線A−Aの断面図に対応している。図7は、本発明の一実施形態の気体製造装置の概略断面図であり、図1に示した気体製造装置の点線C−Cの断面図に対応している。図8は、図7の点線で囲んだ範囲Dの拡大図である。図9は、本発明の一実施形態の気体製造装置の概略断面図である。
【0030】
本実施形態の気体製造装置23は、受光面および裏面を有する光電変換部2と、前記裏面と電気的に接続しかつ光電変換部2が受光することにより生じる起電力を用いて電解液から第1気体を発生させる第1気体発生部8と、前記受光面と電気的に接続しかつ光電変換部2が受光することにより生じる起電力を用いて電解液から第2気体を発生させる第2気体発生部7と、気体流路17と、気体排出口19、20とを備え、気体流路17は、第1気体発生部8および第2気体発生部7のうち少なくとも一方と光電変換部2の裏面との間に設けられ、気体流路17は、第1気体または第2気体を気体排出口19、20へと導通させることを特徴とする。
【0031】
また、本実施形態の気体製造装置23は、さらに透光性基板1、第1導電部9、第2電極5、絶縁部11、隔壁13、電解液チェンバー15、外箱16、給水口18、第1気体排出口20、第2気体排出口19、気体導通部21、第3導通部22および気体支流路29を有してもよい。
第1導電部9は、第1電極4および第2導電部10を有してもよい。また、外箱16は天板14を有してもよい。
以下、本実施形態の気体製造装置23について説明する。
【0032】
1.透光性基板
透光性基板1は、本実施形態の気体製造装置23が備えてもよい。また、例えば、図3のように光電変換部2は、受光面が透光性基板1側となるように透光性基板1の上に設けられてもよい。なお、光電変換部2が、半導体基板などからなり一定の強度を有する場合、透光性基板1は省略することが可能である。また、光電変換部2が樹脂フィルムなど柔軟性を有する材料の上に形成可能な場合、透光性基板1は省略することができる。また、例えば、図9のように第1気体発生部8および第2気体発生部7がそれぞれ光電変換部2の裏面上および受光面上に設けられている場合、透光性基板1は、光電変換部2などとの間に電解液チェンバー15を挟んで設けられてもよい。
【0033】
また、透光性基板1は、本気体製造装置を構成するための土台となる部材であってもよい。また、太陽光を光電変換部2の受光面で受光するためには、透明であり光透過率が高いことが好ましいが、光電変換部2へ効率的な光の入射が可能な構造であれば、光透過率に制限はない。
光透過率が高い基板材料として、例えば、ソーダガラス、石英ガラス、パイレックス(登録商標)等のホウケイ酸ガラス、合成石英板等の透明なリジッド材、あるいはポリブチレンテレフタラート(PBT)製の板などの透明樹脂板やフィルム材等が好適に用いられる。化学的および物理的安定性および耐熱性を備える点より、石英ガラス、パイレックス(登録商標)等のガラス基板を用いることが好ましい。また、集光度を高めるためにフレネルレンズ等、集光用に加工されたものを用いても良い。
透光性基板1の光電変換部2側の表面には、入射した光が光電変換部2の表面で有効に乱反射されるように、微細な凹凸構造に形成することができる。この微細な凹凸構造は、例えば反応性イオンエッチング(RIE)処理もしくはブラスト処理等の公知の方法により形成することが可能である。
【0034】
2.第1導電部
第1導電部9は、第2気体発生部7と光電変換部2の受光面とを電気的に接続させることができる。また、第1導電部9は、1つの部材からなってもよく、第1電極4と第2導電部10からなってもよい。第1導電部9を設けることにより、光電変換部2の受光面の電位と第2気体発生部7の電位をほぼ同じにすることができ、第2気体発生部7で第2気体を発生させることができる。
第1導電部9が1つの部材からなる場合としては、例えば、光電変換部2の受光面と第2気体発生部7を電気的に接続させる金属配線などである。また、例えば、Agからなる金属配線である。また、この金属配線は、光電変換部2に入射する光を減少させいないように、フィンガー電極のような形状を有してもよい。第1導電部9は、透光性基板1の光電変換部2側に設けられてもよく、光電変換部2の受光面に設けられてもよい。
また、本実施形態の気体製造装置23が図9のような断面を有する場合、第1導電部9は省略することもできる。
【0035】
3.第1電極
第1電極4は、透光性基板1の上に設けることができ、光電変換部2の受光面と接触するように設けることができる。また、第1電極4は透光性を有してもよい。また、第1電極4は、透光性基板1を省略可能の場合、光電変換部2の受光面に直接設けられてもよい。第1電極4を設けることにより、光電変換部2の受光面と第2気体発生部7との間に流れる電流を大きくすることができる。
また、本実施形態の気体製造装置23が図9のような断面を有する場合、第1電極4を第2気体発生部7と光電変換部2との間に設けることもできる。
【0036】
第1電極4は、例えば、SnO2、ZnO、In2O3またはITO(In2O3―SnO2)、IZO(InSnO2―ZnO)などの透明導電膜からなってもよく、Ag、Auなどの金属のフィンガー電極からなってもよい。
【0037】
以下に第1電極4を透明導電膜とした場合について説明する。
透明導電膜は、光電変換部2の受光面と第2気体発生部7とのコンタクトを取りやすくするために用いている。
一般に透明電極として使用されているものを用いることが可能である。具体的にはIn−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2等を挙げることができる。なお本透明導電膜は、太陽光の光線透過率が85%以上、中でも90%以上、特に92%以上であることが好ましい。このことにより光電変換部2が光を効率的に吸収することができるためである。
透明導電膜の作成方法としては公知の方法を用いることができ、スパッタリング、真空蒸着、ゾルゲル法、クラスタービーム蒸着法、PLD(Pulse Laser Deposition)法などが挙げられる。
【0038】
4.光電変換部
光電変換部2は、受光面および裏面を有し、光電変換部2の裏面の上に第1気体発生部8と第2気体発生部7を設けることができる。なお、受光面とは、光電変換するための光を受光する面であり、裏面とは、受光面の裏の面である。また、光電変換部2は、第1電極4が設けられた透光性基板1の上に受光面を下にして設けることができる。
光電変換部2は、入射光により電荷分離することができ、受光面と裏面との間に起電力が生じるものであれば、特に限定されないが、例えば、シリコン系半導体を用いた光電変換部、化合物半導体を用いた光電変換部、色素増感剤を利用した光電変換部、有機薄膜を用いた光電変換部などである。また、光電変換部2は、第1気体発生部と第2気体発生部に電解液の分解のために必要な正孔および電子を供給する。光電変換部2が受光することにより生じる受光面と裏面との間の電位差は、第1気体発生部から第1気体を発生させることができ、第2気体発生部から第2気体を発生させることができれば特に限定されないが、電解液を分解するための理論電圧よりも十分に大きくすることができる。
【0039】
第1気体発生部および第2気体発生部がそれぞれ水素発生部および酸素発生部であり、電解液に含まれる水を分解しから水素を及び酸素を発生させる場合、光電変換部2は、光を受光することにより、水素発生部と酸素発生部において水素と酸素が発生するために必要な起電力が生じる材料を使用する必要がある。水素発生部と酸素発生部の電位差は、水分解のための理論電圧(1.23V)より十分に大きくする必要がある。これは、水素発生部おける水素発生反応と酸素発生部における酸素発生反応の過電圧を加味する必要があるためである。そのためには光電変換部2で十分大きな電位差を生み出す必要がある。また、そのため光電変換部2は、pn接合など起電力を生じさせる部分を二接合以上直列に接続することが好ましい。
【0040】
光電変換を行う材料は、シリコン系半導体、化合物半導体、有機材料をベースとしたものなどが挙げられるが、いずれの光電変換材料も使用することが可能である。また、起電力を大きくするために、これらの光電変換材料を積層することが可能である。積層する場合には同一材料で多接合構造を形成することが可能であるが、光学的バンドギャップの異なる複数の光電変換層を積層し、各々の光電変換層の低感度波長領域を相互に補完することにより、広い波長領域にわたり入射光を効率よく吸収することが可能となる。
【0041】
また、光電変換層間の直列接続特性の改善や、光電変換部2で発生する光電流の整合のために、層間に透明導電膜等の導電体を介在させることが可能である。これにより光電変換部2の劣化を抑制することが可能となる。
光電変換部2の例を以下に具体的に説明する。また、光電変換部2は、これらを組み合わせたものでもよい。
【0042】
4−1.シリコン系半導体を用いた光電変換部
シリコン系半導体を用いた光電変換部2は、例えば、単結晶型、多結晶型、アモルファス型、球状シリコン型、及びこれらを組み合わせたもの等が挙げられる。いずれもp型半導体とn型半導体が接合したpn接合を有することができる。また、p型半導体とn型半導体との間にi型半導体を設けたpin接合を有するものとすることもできる。また、pn接合を複数有するもの、pin接合を複数有するもの、pn接合とpin接合を有するものとすることもできる。
シリコン系半導体とは、シリコンを含む半導体であり、例えば、シリコン、シリコンカーバイド、シリコンゲルマニウムなどである。また、シリコンなどにn型不純物またはp型不純物が添加されたものも含み、また、結晶質、非晶質、微結晶、多結晶のものも含む。
また、シリコン系半導体を用いた光電変換部2は、透光性基板1の上に形成された薄膜または厚膜の光電変換層であってもよく、また、シリコンウェハなどのウェハにpn接合またはpin接合を形成したものでもよく、また、pn接合またはpin接合を形成したウェハの上に薄膜の光電変換層を形成したものでもよい。
【0043】
シリコン系半導体を用いた光電変換部の作製方法としては、多結晶シリコンの場合はシリコンのシート化もしくはアモルファスの熱処理、アモルファスシリコンの場合はシランガス等を原料とするプラズマCVD法がある。
シリコン系半導体を用いた光電変換部2の形成例を以下に示す。
透光性基板1上に積層した第1電極4上に、第1導電型半導体層をプラズマCVD法等の方法で形成する。この第1導電型半導体層としては、導電型決定不純物原子濃度が1×1018〜5×1021/cm3程度ドープされた、p+型またはn+型の非晶質Si薄膜、または多結晶あるいは微結晶Si薄膜とする。第1導電型半導体層の材料としては、Siに限らず、SiCあるいはSiGe,SixO1-x等の化合物を用いることも可能である。
【0044】
このように形成された第1導電型半導体層上に、結晶質Si系光活性層として多結晶あるいは微結晶の結晶質Si薄膜をプラズマCVD法等の方法で形成する。なお、導電型は第1導電型半導体よりドーピング濃度が低い第1導電型とするか、あるいはi型とする。結晶質Si系光活性層の材料としては、Siに限らず、SiCあるいはSiGe,SixO1-x等の化合物を用いることも可能である。
【0045】
次に、結晶質Si系光活性層上に半導体接合を形成するため、第1導電型半導体層とは反対導電型である第2導電型半導体層をプラズマCVD等の方法で形成する。この第2導電型半導体層としては、導電型決定不純物原子が1×1018〜5×1021/cm3程度ドープされた、n+型またはp+型の非晶質Si薄膜、または多結晶あるいは微結晶Si薄膜とする。第2導電型半導体層の材料としては、Siに限らず、SiCあるいはSiGe,SixO1-x等の化合物を用いることも可能である。また接合特性をより改善するために、結晶質Si系光活性層と第2導電型半導体層との間に、実質的にi型の非単結晶Si系薄膜を挿入することも可能である。このようにして、受光面に最も近い光電変換層を一層積層することができる。
【0046】
続けて第二層目の光電変換層を形成する。第二層目の光電変換層は、第1導電型半導体層、結晶質Si系光活性層、第2導電型半導体層からなり、それぞれの層は、第一層目の光電変換層中の対応する第1導電型半導体層、結晶質Si系光活性層、第2導電型半導体層と同様に形成する。二層のタンデムで水分解に十分な電位を得ることができない場合は、三層あるいはそれ以上の層状構造を取ることが好ましい。ただし第二層目の光電変換層の結晶質Si系光活性層の体積結晶化分率は、第一層目の結晶質Si系光活性層と比較すると高くすることが好ましい。三層以上積層する場合も同様に下層と比較すると体積結晶化分率を高くすることが好ましい。これは、長波長域での吸収が大きくなり、分光感度が長波長側にシフトし、同じSi材料を用いて光活性層を構成した場合においても、広い波長域で感度を向上させることが可能となるためである。すなわち、結晶化率の異なるSiでタンデム構造にすることにより、分光感度が広くなり、光の高効率利用が可能となる。このとき低結晶化率材料を受光面側にしないと高効率とならない。また結晶化率が40%以下に下がるとアモルファス成分が増え、劣化が生じてしまう。
【0047】
4−2.化合物半導体を用いた光電変換部
化合物半導体を用いた光電変換部は、例えば、III−V族元素で構成されるGaP、GaAsやInP、InAs、II−VI族元素で構成されるCdTe/CdS、II−VI族の変
形であるカルコパイライト系化合物(I―III―VI2等)の化合物半導体などを用いたものが挙げられる。化合物半導体はシリコンに比べて光吸収係数が1〜2桁大きい。このため薄膜セルとして利用するのに適しており、軽量化、低コスト化につなげることが可能である。
III―V族化合物については例えば、p型ドープしたGaAsウェハ表面にn型層をエピタキシャル成長させることで太陽電池セルが作製される。また、GaAsとの格子整合がよく、GaAsを汚染しないGaInP2を用いてGaAs―GaInP2ヘテロ構造とし、さらに変換効率を高めることも可能である。
II―VI族化合物については例えば、CdTe−CdSヘテロ構造が、低価格で工業化されている。作製法としては、ガラス基板上にペースト塗布した後、焼成をするという工程を繰り返すスクリーン方式により作製される。ガラス基板上にCdS膜を形成した後、櫛形にCdTeを堆積させて作製する。CdTeはバンドギャップが1.44eVの理想的な太陽電池材料であり、CdSはバンドギャップが2.42eVで太陽光の大部分を透過する窓材である。ワイドギャップ層を窓材とするヘテロ接合は光が窓材を透過して接合界面で光の吸収が起こるため、発生したキャリアが接合界面付近で効率よく分離・吸収される。
カルコパイライト系化合物については例えば、Cu(In, Ga)Se2(CIGS)(Copper Indium Gallium DiSelenide)やCuIn(S,Se)2(CISS)がある。CIGSについてはバンドギャップが1.55eV〜1.6eVであり、作製法としては3元または4元蒸着法によりMo膜を被覆したガラス板上に製膜させる方法もしくはCu−In膜を製膜した後でSeを含む雰囲気中で熱処理を行うセレン化法が用いられている。
【0048】
化合物半導体を用いた光電変換部の製造方法の一例を以下に示すが、本製造方法では、製膜処理等はすべて有機金属気相成長法(MOCVD;Metal Organic Chemical Vapor Deposition)装置を使って連続して行われる。III族元素の材料としては、例えばトリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、トリメチルインジウムなどの有機金属が水素をキャリアガスとして成長装置に供給される。V族元素の材料としては、例えばアルシン(AsH3)、ホスフィン(PH3)、スチビン(SbH3)等のガスが使われる。p型不純物またはn型不純物のドーパントとしては、例えばp型化にはジエチルジンク、またはn型化には、モノシラン(SiH4)やジシラン(Si2H6)、セレン化水素(H2Se)等が利用される。これらの原料ガスを、例えば700℃に加熱された基板上に供給することにより熱分解させ、所望の化合物半導体材料膜をエピタキシャル成長させることが可能である。これら成長層の組成は導入するガス組成により、また膜厚はガスの導入時間によって制御することが可能である。これらの光電変換部を多接合積層する場合は、層間での格子定数を可能な限り合わせることにより、結晶性に優れた成長層を形成することができ、光電変換効率を向上することが可能となる。
【0049】
pn接合を形成した部分以外にも、例えば受光面側に公知の窓層や、非受光面側に公知の電界層等を設けることによりキャリア収集効率を高める工夫を有してもよい。また不純物の拡散を防止するためのバッファ層を有していてもよい。
【0050】
4−3.色素増感剤を利用した光電変換部
色素増感剤を利用した光電変換部は、例えば、主に多孔質半導体、色素増感剤、電解質、溶媒などにより構成される。
多孔質半導体を構成する材料としては、例えば、酸化チタン、酸化タングステン、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、硫化カドミウム等公知の半導体から1種類以上を選択することが可能である。多孔質半導体を基板上に形成する方法としては、半導体粒子を含有するペーストをスクリーン印刷法、インクジェット法等で塗布し乾燥もしくは焼成する方法や、原料ガスを用いたCVD法等により製膜する方法、PVD法、蒸着法、スパッタ法、ゾルゲル法、電気化学的な酸化還元反応を利用した方法等が挙げられる。
【0051】
多孔質半導体に吸着する色素増感剤としては、可視光領域および赤外光領域に吸収を持つ種々の色素を用いることが可能である。ここで、多孔質半導体に色素を強固に吸着させるには、色素分子中にカルボン酸基、カルボン酸無水基、アルコキシ基、スルホン酸基、ヒドロキシル基、ヒドロキシルアルキル基、エステル基、メルカプト基、ホスホニル基等が存在することが好ましい。これらの官能基は、励起状態の色素と多孔質半導体の伝導帯との間の電子移動を容易にする電気的結合を提供する。
【0052】
これらの官能基を含有する色素として、例えば、ルテニウムビピリジン系色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、アゾ系色素、キナクリドン系色素、スクアリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポルフィリン系色素、フタロシアニン系色素、ベリレン系色素、インジゴ系色素、ナフタロシアニン系色素等が挙げられる。
【0053】
多孔質半導体への色素の吸着方法としては、例えば多孔質半導体を、色素を溶解した溶液(色素吸着用溶液)に浸漬する方法が挙げられる。色素吸着用溶液に用いられる溶媒としては、色素を溶解するものであれば特に制限されず、具体的には、エタノール、メタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリル等の窒素化合物類、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル等のエステル類、水等を挙げることができる。
【0054】
電解質は、酸化還元対とこれを保持する液体または高分子ゲル等固体の媒体からなる。
酸化還元対としては一般に、鉄系、コバルト系等の金属類や塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン物質が好適に用いられ、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム等の金属ヨウ化物とヨウ素の組み合わせが好ましく用いられる。さらに、ジメチルプロピルイミダゾールアイオダイド等のイミダゾール塩等を混入することもできる。
【0055】
また、溶媒としては、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、アセトニトリル等のニトリル化合物、エタノール、メタノール等のアルコール、その他、水や非プロトン極性物質等が用いられるが、中でも、カーボネート化合物やニトリル化合物が好適に用いられる。
【0056】
4−4.有機薄膜を用いた光電変換部
有機薄膜を用いた光電変換部は、電子供与性および電子受容性を持つ有機半導体材料で構成される電子正孔輸送層、または電子受容性を有する電子輸送層と電子供与性を有する正孔輸送層とが積層されたものであってもよい。
電子供与性の有機半導体材料としては、電子供与体としての機能を有するものであれば特に限定されないが、塗布法により製膜できることが好ましく、中でも電子供与性の導電性高分子が好適に使用される。
【0057】
ここで導電性高分子とはπ共役高分子を示し、炭素−炭素またはヘテロ原子を含む二重結合または三重結合が、単結合と交互に連なったπ共役系からなり、半導体的性質を示すものをさす。
【0058】
電子供与性の導電性高分子材料としては、例えばポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリカルバゾール、ポリビニルカルバゾール、ポリシラン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフルオレン、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、およびこれらの誘導体、共重合体、あるいはフタロシアニン含有ポリマー、カルバゾール含有ポリマー、有機金属ポリマー等が挙げられる。中でも、チオフェン−フルオレン共重合体、ポリアルキルチオフェン、フェニレンエチニレン−フェニレンビニレン共重合体、フルオレン−フェニレンビニレン共重合体、チオフェン−フェニレンビニレン共重合体等が好適に利用される。
【0059】
電子受容性の有機半導体材料としては、電子受容体としての機能を有するものであれば特に限定されないが、塗布法により製膜できることが好ましく、中でも電子供与性の導電性高分子が好適に使用される。
電子受容性の導電性高分子としては、例えばポリフェニレンビニレン、ポリフルオレン、およびこれらの誘導体、共重合体、あるいはカーボンナノチューブ、フラーレンおよびこれらの誘導体、CN基またはCF3基含有ポリマーおよびそれらの−CF3置換ポリマー等が挙げられる。
【0060】
また、電子供与性化合物がドープされた電子受容性の有機半導体材料や、電子受容性化合物がドープされた電子供与性の有機半導体材料等を用いることが可能である。電子供与性化合物がドープされる電子受容性の導電性高分子材料としては、上述の電子受容性の導電性高分子材料を挙げることができる。ドープされる電子供与性化合物としては、例えばLi、K、Ca、Cs等のアルカリ金属やアルカリ土類金属のようなルイス塩基を用いることができる。なお、ルイス塩基は電子供与体として作用する。また、電子受容性化合物がドープされる電子供与性の導電性高分子材料としては、上述した電子供与性の導電性高分子材料を挙げることができる。ドープされる電子受容性化合物としては、例えばFeCl3、AlCl3、AlBr3、AsF6やハロゲン化合物のようなルイス酸を用いることができる。なお、ルイス酸は電子受容体として作用する。
【0061】
上記にて示した光電変換部2においては、第一義的には太陽光を受光させ光電変換を行うことを想定しているが、用途により蛍光灯や白熱灯、LED、特定の熱源から発せられる光等の人工光を照射し光電変換を行うことも可能である。
【0062】
5.第2電極
第2電極5は、光電変換部2と第1気体発生部8との間に設けることができる。第2電極5を設けることにより、光電変換部2の裏面の電位と第1気体発生部8の電位をほぼ同じにすることができる。また、光電変換部2の裏面と第1気体発生部8との間に流れる電流を大きくすることができる。このことにより、光電変換部2で生じた起電力により第1気体をより効率的に発生させることができる。また、例えば、図9のように第1気体発生部8と光電変換部2との間に導電性の気体導通部21を設ける場合、第2電極5は省略することができ、気体導通部21を設けることにより第2電極5を設けることと同様の効果を得ることができる。
【0063】
また、例えば、図6のように光電変換部2の裏面と第1気体発生部8とを第3導通部22により電気的に接続する場合、第3導通部22と光電変換部2の裏面とにそれぞれ接触する第2電極を設けることができる。この構成により、絶縁性の気体導通部21を設けた場合でも、光電変換部2の裏面の電位と第1気体発生部8の電位をほぼ同じにすることができる。
第2電極5は、導電性を有すれば特に限定されないが、例えば、金属薄膜であり、また、例えば、Al、Ag、Auなどの薄膜である。これらは、例えば、スパッタリングなどにより形成することができる。また、例えば、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2等の透明導電膜である。
【0064】
6.絶縁部
絶縁部11は、光電変換部2の裏面と第2気体発生部7との間に設けることができる。また、絶縁部11は、第1気体発生部8と第2気体発生部7との間に設けることもできる。さらに、絶縁部11は、第1導電部9と光電変換部2との間、第2導電部10と光電変換部2との間、および第2導電部10と第2電極5との間に設けることができる。また、本実施形態の気体製造装置23が図9のような断面を有する場合、絶縁部11は省略することができる。
絶縁部11を設けることにより、光電変換部2で生じた起電力により、光電変換部2の受光面と第2気体発生部7との間に電流を流し、光電変換部2の裏面と第1気体発生部8との間に電流を流すことができる。また、リーク電流をより小さくすることができる。このことにより、光電変換部2の受光面の電位と第2気体発生部7の電位をほぼ同じにすることができ、また、光電変換部2の裏面の電位と第1気体発生部8の電位をほぼ同じにすることができ、より効率的に第1気体および第2気体を発生させることができる。
また、例えば、図6のように第2気体発生部7と光電変換部2との間に絶縁性の気体導通部21を設ける場合、第2気体発生部7と光電変換部2との間の絶縁部11は省略することができる。
【0065】
絶縁部11としては、有機材料、無機材料を問わず用いることが可能であり、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリアリーレン、芳香族ビニル化合物、フッ素系重合体、アクリル系重合体、ビニルアミド系重合体等の有機ポリマー、無機系材料としては、Al2O3等の金属酸化物、多孔質性シリカ膜等のSiO2や、フッ素添加シリコン酸化膜(FSG)、SiOC、HSQ(Hydrogen Silsesquioxane)膜、SiNx、シラノール(Si(OH)4)をアルコール等の溶媒に溶かし塗布・加熱することにより製膜する方法を用いることが可能である。
【0066】
絶縁部11を形成する方法としては、絶縁性材料を含有するペーストをスクリーン印刷法、インクジェット法、スピンコーティング法等で塗布し乾燥もしくは焼成する方法や、原料ガスを用いたCVD法等により製膜する方法、PVD法、蒸着法、スパッタ法、ゾルゲル法を利用した方法等が挙げられる。
【0067】
7.第2導電部
第2導電部10は、第1電極4と第2気体発生部7とにそれぞれ接触するように設けることができる。第2導電部10を設けることにより、容易に光電変換部2の受光面に接触した第1電極4と第2気体発生部7とを電気的に接続することができる。また、本実施形態の気体製造装置23が図9のような断面を有する場合、第2導電部10は省略することができる。
第2導電部10は光電変換部2の受光面と接触した第1電極4と光電変換部2の裏面上に設けられた第2気体発生部7とに接触するため、光電変換部2の受光面と平行な第2導電部の断面積を大きくしすぎると、光電変換部2の受光面の面積を小さくすることにつながる。また、光電変換部2の受光面に平行な第2導電部10の断面積を小さくしすぎると光電変換部2の受光面の電位と第2気体発生部7の電位との間に差が生じ、電解液を分解する電位差が得られなくなる場合もあり、第1気体または第2気体の発生効率の減少につながる場合もある。従って、光電変換部2の受光面と平行な第2導電部の断面積は、一定の範囲である必要がある。例えば、光電変換部2の受光面と平行な第2導電部の断面積(第2導電部が複数の場合、その断面積の総計)は、光電変換部2の受光面の面積を100%としたとき、0.1%以上10%以下とすることができ、好ましくは、0.5%以上8%以下、さらに好ましくは、1%以上6%以下とすることができる。
【0068】
また、第2導電部10は、光電変換部2を貫通するコンタクトホールに設けられてもよい。このことにより、第2導電部10を設けることによる光電変換部2の受光面の面積の減少をより小さくすることができる。また、このことにより、光電変換部2の受光面と第2気体発生部7との間の電流経路を短くすることができ、より効率的に第2気体を発生させることができる。また、このことにより、光電変換部2の受光面と平行な第2導電部10の断面積を容易に調節することができる。
また、第2導電部10が設けられたコンタクトホールは、1つまたは複数でもよく、円形の断面を有してもよい。また、光電変換部2の受光面と平行なコンタクトホールの断面積(コンタクトホールが複数の場合、その断面積の総計)は、光電変換部2の受光面の面積を100%としたとき、0.1%以上10%以下とすることができ、好ましくは、0.5%以上8%以下、さらに好ましくは、1%以上6%以下とすることができる。
【0069】
第2導電部10の材料は、導電性を有しているものであれば特に制限されない。導電性粒子を含有するペースト、例えばカーボンペースト、Agペースト等をスクリーン印刷法、インクジェット法等で塗布し乾燥もしくは焼成する方法や、原料ガスを用いたCVD法等により製膜する方法、PVD法、蒸着法、スパッタ法、ゾルゲル法、電気化学的な酸化還元反応を利用した方法等が挙げられる。
【0070】
8.気体流路
気体流路17は、第1気体発生部8および第2気体発生部7のうち少なくとも一方と光電変換部2との間に設けられる。また、気体流路17は、第1気体発生部8で発生させた第1気体または第2気体発生部7で発生させた第2気体を気体排出口へと導通させる。また、気体流路17は、気体が導通することができる空洞であり、電解液で満たされてもよく、電解液で満たされなくてもよい。
気体流路17は、発生させた第1気体または第2気体を導通させることができれば、特に限定されないが、例えば、第1気体発生部8または第2気体発生部7と光電変換部2との間に形成された空洞部や気体導通部21が有する空洞部であってもよい。なお、気体導通部21についての説明は後述する。
気体流路17を設けることにより、第1気体の第1気体発生部8における滞留または第2気体の第2気体発生部7における滞留を抑制することができる。このことを図面を使って説明する。
【0071】
図10および図12は、図4のような断面を有する気体製造装置を斜めに設置し、電解液チェンバー15に電解液25を満たし、受光面側から光を照射したときの概略断面図である。なお、図10は、図1に示した気体製造装置23の一点鎖線B−Bの概略断面図に対応し、図12は、図1に示した気体製造装置23の点線C−Cの概略断面図に対応している。また、図11は、図10の点線で囲んだ範囲Eの拡大図であり、図13は、図12の点線で囲んだ範囲Fの拡大図である。
【0072】
図10および図12に示した気体製造装置に含まれる光電変換部2に光を照射すると、光電変換部2の受光面と裏面との間に電位差が生じ、前記受光面と電気的に接続した第2気体発生部7と前記裏面と電気的に接続した第1気体発生部8の間にも電位差が生じる。この電位差により、電解液25の分解反応が生じ、第1気体発生部8において第1気体が発生し、第2気体発生部7において第2気体が発生する。発生した第1気体または第2気体である発生気体27には、図11または図13のようにその浮力により上昇し、第1気体発生部8または第2気体発生部7の隙間を導通し、気体流路17に流入させることができる。気体流路17に流入した発生気体27は、気体流路17を導通し、第1気体排出口20および第2気体排出口19から気体製造装置23の外部に取り出すことができ、回収することができる。なお、図10〜13に示した気体製造装置23の場合、気体流路17は、気体導通部21に含まれている。
【0073】
気体流路17は、図10〜13のように気体導通部21に含まれてもよいが、例えば、図3に示した気体製造装置23の断面図のように、第1気体発生部8と光電変換部2間または第2気体発生部7と光電変換部2との間に形成された溝状の空洞部であってもよい。図3のような気体製造装置の場合、気体導通部21は形成されず、気体流路17は、例えば、光電変換部2、絶縁部11、第1気体発生部8または第2気体発生部7に溝状に形成された空洞部であってもよい。また、この空洞部は、第1気体排出口20または第2気体排出口19に繋がるように形成されてもよい。
【0074】
また、例えば、図5のようにこのような第1気体排出口20または第2気体排出口19に繋がる溝状に形成された空洞部は、気体導通部21に設けられていてもよい。
図14は、図5のような断面を有する気体製造装置を斜めに設置し、電解液チェンバー15に電解液25を満たし、受光面側から光を照射したときの概略断面図である。なお、図14は、図1に示した気体製造装置23の一点鎖線B−Bの概略断面図に対応している。また、図15は、図14の点線で囲んだ範囲Gの拡大図である。
図14のような気体製造装置23の場合、第1気体発生部8で発生した発生気体27は、図15のようにその浮力により上昇し、第1気体発生部8の隙間を導通し、気体流路17に流入させることができる。気体流路17に流入した発生気体27は、気体流路を導通し、第1気体排出口20から気体製造装置23の外部に取り出すことができ、回収することができる。
また、溝状の気体流路17は、図5、14のように気体導通部21の端部から第1気体排出口20に向かうように設けることができる。又、同様に気体導通部21の端部から第2気体排出口19に向かうように設けることができる。このことにより、気体回収効率をより高めることができる。溝状の気体流路17の断面形状は、層の強度の点から円形もしくは円弧形とするのが望ましいが、第1気体発生部8または第2気体発生部7から回収された気体を第1気体排出口20または第2気体排出口19まで円滑に送達することが可能であれば特に限定はしない。
【0075】
また、気体流路17は、光電変換部2の裏面と第1気体発生部8との間および光電変換部2の裏面と第2気体発生部7との間にそれぞれ設けることができ、この2つの気体流路17は、お互いに導通させないことができる。このことにより、第1気体発生部8と第2気体発生部7とでそれぞれ発生させた気体を混合させずに回収することができる。第1気体発生部8と前記裏面との間の気体流路17および第2気体発生部7と前記裏面との間の気体流路17をお互いに導通させない手段は特に限定されないが、例えば、2つの気体流路17の間に隔壁13または絶縁部11を設けることにより、導通させないことができる。
【0076】
また、例えば、図9のように第2気体発生部7と第1気体発生部8がそれぞれ光電変換部2の受光面側と裏面側に設けられている場合、気体流路17は、第1気体発生部8と光電変換部2の裏面との間に設けることができる。
図16は、図9のような断面を有する気体製造装置を斜めに設置し、電解液チェンバー15に電解液25を満たし、受光面側から光を照射したときの概略断面図である。また、図17は、図16の点線で囲んだ範囲Jの拡大図である。
図16のような気体製造装置23の場合、第1気体発生部8で発生した発生気体27は、図17のようにその浮力により上昇し、第1気体発生部8の隙間を導通し、気体流路17に流入させることができる。気体流路17に流入した発生気体27は、気体流路17を導通し、第1気体排出口20から気体製造装置23の外部に取り出すことができ、回収することができる。なお、第2気体発生部7で発生した発生気体27は、その浮力により第2気体発生部7から気泡として脱離することができ、第2気体排出口19から回収することができる。
【0077】
気体流路17は、親水性または疎水性の内壁を有することができる。気体流路17が電解液で満たされた場合であって、気体流路17の内壁が親水性の場合、気泡として導通する発生気体27は、気体流路17の内壁に吸着しにくく、気体流路17を導通させることができる。このことにより、発生気体27を第1気体排出口20または第2気体排出口19から応答性よく回収することができる。この場合、発生気体27が気泡として導通しやすいように、気体流路の直径を大きくすることができ、また、気体流路を溝状にすることができる。
【0078】
また、気体流路17が電解液で満たされた場合であって、気体流路17の内壁が疎水性の場合、発生した発生気体27が電解液を押し出し気体流路17を発生気体27で満たすことができる。気体流路17が発生気体27で満たされると、第1気体発生部8または第2気体発生部7で発生した発生気体27は、気体流路を満たした発生気体27中を導通することができ、迅速に第1気体排出口20または第2気体排出口19から回収することができる。この場合、気体流路17の容積を小さくすることができる。このことにより、気体流路17を迅速に発生気体27で満たすことができ、発生気体をより迅速に回収することができる。
【0079】
また、気体流路17の内壁が疎水性であって、気体流路17が電解液で満たされていない場合、第1気体発生部8または第2気体発生部7で発生した発生気体27は、気体流路17の空洞を導通して迅速に回収することができる。例えば、疎水性多孔質膜で気体導通部21を形成することにより、このような気体流路17を形成することができる。
【0080】
9.気体導通部
気体導通部21は、第1気体発生部8および第2気体発生部7のうち少なくとも一方と光電変換部2との間に設けることができる。また、気体導通部21は、気体流路17を有する。
気体導通部21は、気体流路17を有すれば特に限定されないが、例えば、多孔質材料により構成することができる。この場合、多孔質材料の孔が気体流路17となる。また、気体導通部21は、格子状構造、微小な粒子を充填させた構造とすることもできる。この場合これらの構造の隙間が気体流路17となる。また、気体導通部21は、図5、図14、図15のように溝状の気体流路17を形成したものであってもよい。
【0081】
気体導通部21は、導電性を有しても有さなくてもよいが、導電性を有することが好ましい。気体導通部21が導電性を有することが好ましい。導電性を有する気体導通部21を光電変換部2と第2気体発生部7との間に設けることにより、光電変換部2の受光面と第2気体発生部7とをほぼ同じ電位とすることができる。また、導電性を有する気体導通部21を光電変換部2と第1気体発生部8との間に設けることにより、光電変換部2の裏面と第1気体発生部8とをほぼ同じ電位とすることができる。
【0082】
気体導通部21が導電性を有さない場合、気体導通部21を貫通する第2コンタクトホールに第3導電部22を形成し、光電変換部2の裏面と第1気体発生部8とを電気的に接続することができる。例えば、図6に示したような断面を有する気体製造装置とすることができる。このことにより、気体導通部21が導電性を有さない場合でも、光電変換部2の裏面と第1気体発生部8の電位をほぼ同じにすることができ、効率よく電解液を分解することができる。また、気体導通部21が絶縁性を有する場合、図6のように第2気体発生部7と光電変換部2との間の絶縁部11を省略することができる。
【0083】
また、気体導通部21は、親水性の表面を有する材料から形成されてもよく、また、親水性の表面を有するように表面処理されていてもよい。このことにより、親水性の内壁を有する気体流路17を設けることができるからである。また、気体導通部21は、疎水性の表面を有する材料から形成されてもよく、また、疎水性の表面を有するように表面処理されていてもよい。このことにより、疎水性の内壁を有する気体流路17を設けることができるからである。
【0084】
また、第1気体発生部8および第2気体発生部7が前記裏面上に設けられた気体製造装置において、気体導通部21は、光電変換部2の裏面と第1気体発生部8および第2気体発生部7との間に設けられ、かつ、電解液に対する耐食性および遮液性を有してもよい。また、気体導通部21は、光電変換部2を覆うように設けられてもよい。このことにより、光電変換部2と電解液の接触を防止することができ、光電変換部2に電解液により腐食されやすい光電変換材料や電解液が流入することにより光電変換効率が低下するような光電変換材料を用いることができる。
【0085】
気体導通部21としては、例えば、導電性のあるカーボン製やアルミニウム、タングステン、鉄等の金属製の多孔質材料を用いることが好ましい。しかし、図6のように第3導電部22を設けることにより、ポリエチレン、エチレンプロピレンゴム(EPR)等の非導電性の高分子もしくはアルミナ、ジルコニア等のセラミック製の多孔質材料を用いることも可能である。また、気体導通部21はポリビニリデンフルオライド(PVDF)からなるMillipore社製Durapel膜(登録商標)等の超疎水性多孔質膜を使用することも可能である。これにより、気体導通部21が有する気体流路17内への電解液の浸透を遮断し、気体流路17内を電解液で満たされていない状態とすることができる。このことにより、第1気体発生部8で発生した第1気体または第2気体発生部7で発生した第2気体を電解液のない気体流路17を導通させることができ、気体回収をより効率よく行うことが可能となる。
【0086】
また、気体導通部21としては、例えば、非導電性の金属酸化物や高分子又は天然由来の材料であってもよい。前記金属酸化物の多孔質材料の例は、周期表の2、3、4 、12、13 及び14族の元素の酸化物のような多孔質酸化物であり、例えばアルミニウム、ジルコニウム、ケイ素、マグネシウム及びそれらの混合物の酸化物、特に陽極酸化軽金属、特にアルミニウム又はその合金である。多孔質合成材料は、例えばフッ素系樹脂や、ポリエチレン、エチレンプロピレンゴム(EPR)、多孔質ポリアミド充填剤である。特にポリアミド充填剤はポリアミド−12 、ポリアミド−6 又はコーポリアミド−6/12 充填剤であり、商品名Orgasol(登録商標) でAtofina社により販売されている。更に、天然由来の多孔質材料としては、白亜、軽石、焼成クレー、素焼きセラミック、石膏、コンクリート、キーゼルグール、シリカゲル、ゼオライト、及び毛等も使用可能である。
【0087】
10.第1気体発生部
第1気体発生部8は、光電変換部2の裏面の上に設けられてもよい。このことにより、第1気体発生部8は光電変換部2に入射する光を遮ることはない。また、第1気体発生部8は、光電変換部2の裏面と電気的に接続することができる。このことにより、光電変換部2の裏面の電位と第1気体発生部8の電位をほぼ同じとすることができ、光電変換部2で生じた起電力により電解液を分解し、第1気体を発生させることができる。また、第1気体発生部8は、第2気体発生部7と接触しないように設けることができる。このことにより、第1気体発生部8と第2気体発生部7との間にリーク電流が流れるのを防止することとができる。さらに、第1気体発生部8は、電解液チェンバー15に露出してもよい。このことにより、第1気体発生部8の表面で電解液から第1気体を発生させることができる。また、第1気体発生部8は複数設けられてもよい。
また、第1気体発生部8は、水素発生部および酸素発生部のいずれか一方とすることができる。このことにより、第1気体発生部において電解液に含まれる水を分解し、水素または酸素を発生させることができる。
【0088】
11.第2気体発生部
第2気体発生部7は、光電変換部2の裏面の上に設けられてもよい。このことにより、第2気体発生部7は光電変換部2に入射する光を遮ることはない。また、第2気体発生部7は、光電変換部2の受光面と第1導電部9を介して電気的に接続する。このことにより、光電変換部2の受光面の電位と第2気体発生部7の電位をほぼ同じにすることができ、光電変換部2で生じた起電力により電解液を分解し第2気体を発生させることができる。また、第2気体発生部7は、絶縁部11を介して光電変換部2の裏面の上に設けられてもよい。また、第2気体発生部7は、第1気体発生部8と接触しないように設けることができる。このことによりリーク電流が流れることを防止することができる。また、第2気体発生部7は、電解液チェンバー15に露出してもよい。このことにより、第2気体発生部7の表面で電解液から第2気体を発生させることができる。また、第2気体発生部8は複数設けられてもよい。
また、第2気体発生部8は、水素発生部および酸素発生部のいずれか一方とすることができる。このことにより、第2気体発生部において電解液に含まれる水を分解し、水素または酸素を発生させることができる。
【0089】
第1気体発生部8および第2気体発生部7は、気体透過性を有してもよい。このことにより、第1気体発生部8で発生させた第1気体または第2気体発生部7で発生させた第2気体は、その浮力により上昇し、気体流路17に流入することができる。このことにより、第1気体または第2気体の滞留を抑制することができる。
気体透過性を持たせる方法は、特に限定されないが、多孔質材料を用いて第1気体発生部8および第2気体発生部7を形成してもよいし、第1気体発生部8および第2気体発生部7がそれぞれ隙間を有するようにまばらに設けてもよい。
また、第1気体発生部8および第2気体発生部7が気体透過性を有さない場合、後述する気体支流路29を形成することにより、気体透過性を持たせてもよい。
【0090】
多孔質材料からなる第1気体発生部および第2気体発生部としては、例えば、カーボンクロス、カーボンペーパー等のカーボン多孔質体またはアルミニウム、チタン、ニオブ、タンタル等を主とする多孔質の弁金属等を担体として用いて、触媒を担持法により担持させたものが挙げられる。
【0091】
第1気体発生部8および第2気体発生部7は、親水性の表面を有してもよい。このことにより、第1気体発生部8および第2気体発生部7への電解液の浸透性を向上させることができる。その結果、電解液から第1気体および第2気体を発生させる反応を活性化することができ、気体発生効率を向上することができる。
【0092】
また、第1気体発生部8および第2気体発生部7が親水性の表面を有することにより、気泡として発生した第1気体または第2気体が、第1気体発生部8または第2気体発生部7の表面に吸着しにくくすることができる。つまり、気泡と第1気体発生部8または第2気体発生部7との間に電解液が入りやすくなるため、気泡が吸着しにくくなる。その結果、発生した気泡は、その浮力により上昇し、気体流路に流入しやすくすることができる。従って、発生した第1気体の第1気体発生部8における滞留または第2気体の第2気体発生部7における滞留を抑制することができ、発生した第1気体または第2気体を気体流路17を経由して迅速に回収することができる。
【0093】
第1気体発生部8および第2気体発生部7に親水性の表面を持たせる方法は、特に限定されないが、例えば、親水性の表面を有する材料を用いて第1気体発生部8および第2気体発生部7を形成してもよく、また、親水化処理を施して第1気体発生部8および第2気体発生部7が親水性の表面を有するようにしてもよい。親水化処理は、例えば、イオンスパッタリングなどにより施すことが可能である。
【0094】
また、図18は、本発明の一実施形態の気体製造装置の概略平面図である。図19は、本発明の一実施形態の気体製造装置の概略断面図であり、図19の点線K−Kの断面図に対応している。第1気体発生部8と第2気体発生部7は、光電変換部2の裏面の上に並列に配置されてもよい。さらに、第1気体発生部8と第2気体発生部7のうち少なくとも一方は複数であり、交互に配置されてもよい。例えば、図18、19のような構成を有してもよい。このことにより、光電変換部2の受光面と第2気体発生部7との間の電流経路をより短くすることができ、より効率的に第2気体を発生させることができる。このことにより第1気体発生部8と第2気体発生部9とが隣接する部分が増加し、第1気体発生部8付近の電解液と第2気体発生部9付近の電解液との間のイオンがイオン伝導する距離を短くすることができる。また、このイオンがイオン伝導する電解液またはイオン交換体のイオン伝導経路が多くすることができ、イオン伝導領域の比率を大きくすることができる。この結果、伝導イオンの濃度を小さくすることができる。イオンは、例えばプロトンである。
このことにより、イオンが第1気体発生部8付近の電解液と第2気体発生部9付近の電解液において移動しやすくなり、イオン濃度の不均衡を小さくすることができる。その結果、気体発生速度の低下を防止することができる。
【0095】
また、第1気体発生部8および第2気体発生部7は、それぞれ光電変換部2の裏面上および光電変換部2の受光面上に設けてもよい。この構成により、第2導電部10を省略することができる。本実施形態の気体製造装置は、例えば、図16のような断面を有してもよい。
図16のような断面を有する気体製造装置は、受光面と裏面を有する光電変換部2を有し、前記裏面上に気体導通部21が積層され、さらにその上に第1気体発生部8が積層されている。例えば、図16に示すように受光面側から順に第2気体発生部7、光電変換部2、気体導通部21、第1気体発生部8の順に積層され、受光面を水平面に対して傾けて設置される際、第1気体発生部8が光電変換部2の下側となる構造を取る。なお、図16に示すような気体製造装置は、光電変換部2、第2気体発生部7、第1気体発生部8、および気体導通部21、隔壁13、透光性基板1、外箱16、第1気体排出口20、第2気体排出口19、給水口18により構成され、構成要素は他の実施形態と同様のものを使用することが可能である。ただし、第2気体発生部7については、受光面側に配置するため光電変換部2にまで光を透過させる必要がある。そのため触媒を半導電体太陽電池からなる光電変換部2に直接、またはSnO2、ZnO、TiO2、In2O3またはITO(In2O3―SnO2)、IZO(InSnO2―ZnO)等の透明導電性を有する第1電極4に、イオンスパッタリング法、スプレー法、CVD法、ゾル―ゲル法、電解析出等の方法を用いて担持させることが好ましい。
【0096】
12.水素発生部
水素発生部は、電解液からH2を発生させる部分であり、第1気体発生部8および第2気体発生部7のうちどちらか一方とすることができる。また、水素発生部は、電解液からH2が発生する反応の触媒(水素発生触媒)を含んでもよい。このことにより、電解液からH2が発生する反応の反応速度を大きくすることができる。水素発生部は、電解液からH2が発生する反応の触媒のみからなってもよく、この触媒が担体に担持されたものであってもよい。また、水素発生部は、光電変換部2の受光面の面積より大きい触媒表面積を有してもよい。このことにより、電解液からH2が発生する反応をより速い反応速度とすることができる。また、水素発生部は、触媒が担持された多孔質の導電体であってもよい。このことにより、触媒表面積を大きくすることができる。また、光電変換部2の受光面または裏面と水素発生部に含まれる触媒との間に電流が流れることによる電位の変化を抑制することができる。また、この水素発生部を第1気体発生部8としたとき、第2電極を省略しても光電変換部2の裏面と触媒との間に電流が流れることによる電位の変化を抑制することができる。
【0097】
電解液からH2が発生する反応の触媒(水素発生触媒)は、2つのプロトンと2つの電子から1分子の水素への変換を促進する触媒であり、化学的に安定であり、水素生成過電圧が小さい材料を用いることができる。例えば、水素に対して触媒活性を有するPt、Ir、Ru、Pd、Rh、Os、Au等の白金族金属およびその合金あるいは化合物、水素生成酵素であるヒドロゲナーゼの活性中心を構成するFe,Ni,Seの合金あるいは化合物、およびこれらの組み合わせ等を好適に用いることが可能である。中でもPtおよびPtを含有するナノ構造体は水素発生過電圧が小さく好適に用いることが可能である。光照射により水素発生反応が確認されるCdS,CdSe,ZnS,ZrO2などの材料を用いることもできる。なお、水素発生触媒は水素発生の理論過電圧が低いものを用いることが好ましいが、前記過電圧が低いものであれば特に限定はしない。
【0098】
水素発生触媒を直接光電変換部2の裏面などに担持することは可能であるが、反応面積をより大きくし気体生成速度を向上させるために、触媒を導電体に担持することができる。触媒を担持する導電体としては、金属材料、炭素質材料、導電性を有する無機材料等が挙げられる。
【0099】
金属材料としては、電子伝導性を有し、酸性雰囲気下で耐腐食性を有する材料が好ましい。具体的には、Au、Pt、Pd等の貴金属、Ti、Ta、W、Nb、Ni、Al、Cr、Ag、Cu、Zn、Su、Si等の金属並びにこれらの金属の窒化物および炭化物、ステンレス鋼、Cu−Cr、Ni−Cr、Ti−Pt等の合金が挙げられる。金属材料には、Pt、Ti、Au、Ag、Cu、Ni、Wからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を含むことが、他の化学的な副反応が少ないという観点から、より好ましい。これら金属材料は、比較的電気抵抗が小さく、面方向に電流を取り出しても電圧の低下を抑制することができる。また、Cu、Ag、Zn等の酸性雰囲気下での耐腐食性に乏しい金属材料を用いる場合には、Au、Pt、Pd等の耐腐食性を有する貴金属および金属、カーボン、グラファイト、グラッシーカーボン、導電性高分子、導電性窒化物、導電性炭化物、導電性酸化物等によって耐腐食性に乏しい金属の表面をコーティングしてもよい。
【0100】
炭素質材料としては、化学的に安定で導電性を有する材料が好ましい。例えば、アセチレンブラック、バルカン、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、VGCF、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、フラーレン等の炭素粉末や炭素繊維が挙げられる。
【0101】
導電性を有する無機材料としては、例えば、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2、酸化アンチモンドープ酸化スズが挙げられる。
【0102】
なお、導電性高分子としては、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン等が挙げられ、導電性窒化物としては、窒化炭素、窒化ケイ素、窒化ガリウム、窒化インジウム、窒化ゲルマニウム、窒化チタニウム、窒化ジルコニウム、窒化タリウム等が挙げられ、導電性炭化物としては、炭化タンタル、炭化ケイ素、炭化ジルコニウム、炭化チタニウム、炭化モリブデン、炭化ニオブ、炭化鉄、炭化ニッケル、炭化ハフニウム、炭化タングステン、炭化バナジウム、炭化クロム等が挙げられ、導電性酸化物としては、酸化スズ、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化アンチモンドープ酸化スズ等が挙げられる。
【0103】
水素発生触媒を担持する導電体の構造としては、板状、箔状、棒状、メッシュ状、ラス板状、多孔質板状、多孔質棒状、織布状、不織布状、繊維状、フェルト状が好適に使用できる。また、フェルト状電極の表面を溝状に圧着した溝付き導電体は、電気抵抗と電極液の流動抵抗を低減できるので好適である。
【0104】
13.酸素発生部
酸素発生部は、電解液からO2を発生させる部分であり、第1気体発生部8および第2気体発生部7のうちどちらか一方とすることができる。また、酸素発生部は、電解液からO2が発生する反応の触媒(酸素発生触媒)を含んでもよい。このことにより、電解液からO2が発生する反応の反応速度を大きくすることができる。また、酸素発生部は、電解液からO2が発生する反応の触媒のみからなってもよく、この触媒が担体に担持されたものであってもよい。また、酸素発生部は、光電変換部2の受光面の面積より大きい触媒表面積を有してもよい。このことにより、電解液からO2が発生する反応をより速い反応速度とすることができる。また、酸素発生部は、触媒が担持された多孔質の導電体であってもよい。このことにより、触媒表面積を大きくすることができる。また、光電変換部2の受光面または裏面と酸素発生部に含まれる触媒との間に電流が流れることによる電位の変化を抑制することができる。また、この水素発生部を第1気体発生部8としたとき、第2電極を省略しても光電変換部2の裏面と触媒との間に電流が流れることによる電位の変化を小さくすることができる。さらに、酸素発生部は、酸素発生触媒としてMn、Ca、Zn、CoおよびIrのうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0105】
電解液からO2が発生する反応の触媒(酸素発生触媒)は、2つの水分子から1分子の酸素および4つのプロトンと4つの電子への変換を促進する触媒であり、化学的に安定であり、酸素発生過電圧が小さい材料を用いることができる。例えば、光を用い水から酸素発生を行う反応を触媒する酵素であるPhotosystem IIの活性中心を担うMn,Ca,Zn,Coを含む酸化物あるいは化合物や、Pt,RuO2,IrO2等の白金族金属を含む化合物や、Ti,Zr,Nb,Ta,W,Ce,Fe,Ni等の遷移金属を含む酸化物あるいは化合物、および上記材料の組み合わせ等を用いることが可能である。中でも酸化イリジウム、酸化マンガン、酸化ルテニウム、酸化コバルト、リン酸コバルトは、過電圧が小さく酸素発生効率が高いことから好適に用いることができる。
【0106】
酸素発生触媒を直接光電変換部2の受光面または裏面に担持することは可能であるが、反応面積をより大きくし気体生成速度を向上させるために、触媒を導電体に担持することができる。触媒を担持する導電体としては、金属材料、炭素質材料、導電性を有する無機材料等が挙げられる。これらの説明は、「12.水素発生部」に記載した水素発生触媒についての説明が矛盾がない限り当てはまる。
【0107】
水素発生触媒および酸素発生触媒の単独の触媒活性が小さい場合、助触媒を用いることも可能である。例えば、Ni,Cr,Rh,Mo,Co,Seの酸化物あるいは化合物などが挙げられる。
【0108】
なお、水素発生触媒、酸素発生触媒の担持方法は、導電体もしくは半導体に直接塗布する方法や、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等のPVD法、CVD法等の乾式塗工法、電析法など、材料により適宜その手法を変え作製ことが可能である。光電変換部と触媒の間に適宜導電物質を担持することが可能である。また水素発生および酸素発生のための触媒活性が十分でない場合、金属やカーボン等の多孔質体や繊維状物質、ナノ粒子等に担持することにより反応表面積を大きくし、水素及び酸素発生速度を向上させることが可能である。
【0109】
14.気体支流路
気体支流路29は、第1気体発生部8および第2気体発生部7のうちどちらか一方により形成され、かつ、気体流路17に繋がる。また、気体支流路29は、第1気体発生部で発生させた第1気体または第2気体発生部で発生させた第2気体を気体流路17へ導通させることができる。このことにより、第1気体または第2気体を迅速に気体流路17に流入させることができ、第1気体発生部8における第1気体の滞留および第2気体発生部7における第2気体の滞留を抑制することができる。
また、気体支流路29は、2つの第1気体発生部8の間に形成された隙間であってもよく、また、2つの第2気体発生部7の間に形成された隙間であってもよい。また、気体支流路29は、2つの帯状の第1気体発生部8の間に形成された隙間であってもよく、また、2つの帯状の第2気体発生部7の間に形成された隙間であってもよい。また、気体支流路29は、発生させた気泡が浮上する方向に対して垂直な方向に伸びるように形成されてもよい。
このことにより、第1気体発生部8または第2気体発生部7の気体流路17側と反対側の表面付近で発生した第1気体または第2気体を気体支流路29を導通させて気体流路17に流入させることができる。また、気体支流路29を備えることにより、第1気体発生部8または第2気体発生部7に金属板などの気体透過性を有さない材料を用いることができる。
このことを図面を用いて説明する。
【0110】
図20は、気体支流路29を有する気体製造装置を斜めに設置し、電解液チェンバー15に電解液25を満たし、受光面側から光を照射したときの概略断面図である。なお、図20は、図1に示した気体製造装置23の点線C−Cの断面図に対応している。また、図21は、図20の点線で囲んだ範囲Mの拡大図である。
第1気体発生部8または第2気体発生部7の気体流路17側と反対側の表面付近で発生した第1気体または第2気体の気泡は、図21のように気体支流路29に流入することができ、この気泡は、気体流路17に流入することができる。このことにより、発生した第1気体が第1気体発生部8に滞留することまたは第2気体が第2気体発生部7に滞留することを抑制することができる。
【0111】
また、図22は、図7のような断面を有する気体製造装置を斜めに設置し、電解液チェンバー15に電解液25を満たし、受光面側から光を照射したときの概略断面図である。なお、図22は、図1に示した気体製造装置23の点線C−Cの断面図に対応している。また、図23は、図22の点線で囲んだ範囲Nの拡大図である。
【0112】
気体支流路29は、第1開口31と第2開口32とを有し、第1開口31は、第1気体発生部8および第2気体発生部7のうちどちらか一方の気体流路17側の面に設けられ、第2開口32は、第1開口31が設けられた面と反対側の面に設けられ、第2開口29は、高さの異なる第1縁部33および第2縁部34を有し、第1縁部33は、第2縁部34より高い第2開口32の縁であり、第1縁部33において第1気体発生部において発生させた第1気体または第2気体発生部において発生させた第2気体を気体支流路29に流入させてもよい。このような構成を有することにより、第1気体発生部8または第2気体発生部7の気体流路17側と反対側の表面付近で発生した第1気体又は第2気体を気体支流路29に流入しやすくすることができる。図23を用いてより具体的に説明すると、第2気体発生部7の電解液25側を浮上する発生気体27は、より高い縁である第1縁部33にぶつかり、気体支流路29に流入することができる。
【0113】
第1縁部33と第2縁部34を形成する方法は特に限定されないが、例えば、図7、図22のように複数の第2気体発生部7を隙間を置いて設け、それぞれの第2気体発生部の電解液チェンバー側の面を第1縁部33と第2縁部34ができるように光電変換部2の裏面に対して傾斜させることができる。このように傾斜させることにより、傾斜の下側の角部が第2縁部34となり、傾斜の上側の角部が第1縁部33とすることができる。このことにより、発生気体が気泡として第2気体発生部7の表面に沿って上昇した際、該第2気体発生部7の上部に隣接する第2気体発生部7の第1縁部33に止められ、気泡は気体支流路29に流入する。このことにより、気泡は、気体支流路29を導通し気体流路17に流入することができる。そのため、発生気体がより上方に配置された第2気体発生部7の表面に滞留することを抑制することができる。
また、第1気体発生部8および第2気体発生部7に設ける傾斜角度は特に限定さらないが反応面における気体滞留を少量に抑えるためには、光電変換部2の裏面に対して30度以上とすることが望ましい。
【0114】
次に気体支流路29についてより具体的に説明する。
2つの第1気体発生部8および2つの第2気体発生部7は、それぞれ数百μm〜2mm程度の隙間を設けて積層される。この構造を取ることにより、第1気体発生部8または第2気体発生部7に金属板やSnO2、ITO等の透明導電性酸化被膜のような、電解液が透過しない非多孔質の導電性材料を用いることができる。また、第1気体発生部8または第2気体発生部7を多孔質材料を用いて形成する場合でも、多孔質材料が有する孔を介して発生気体27を気体流路17に流入させるだけではなく、電解液25と第1気体発生部8または第2気体発生部7の界面付近にわずかに滞留する発生気体27を気体支流路29を介して気体流路17に流入させ回収することも可能となる。
また、第1気体発生部8または第2気体発生部7のサイズに関して、1つの第1気体発生部8または第2気体発生部7の電解液との反応面がより小さくなるほど発生気体27の滞留を少なくすることが可能となるため、1つの第1気体発生部8または第2気体発生部7の縦方向の幅は2〜5cm程度とすることが好ましい。
【0115】
15.外箱
外箱16は、光電変換部2、第1気体発生部8、第2気体発生部7などを収容することができ、電解液チェンバー15を形成することができるものであれば特に限定されない。また、外箱16は天板14を有することができる。
外箱16は耐熱性、および耐食性を備えていることが望ましい。外箱16は例えばステンレス鋼等の鋼材または、ジルコニア、アルミナ等のセラミック、フェノール樹脂、メラミン樹脂(MF)、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂等の合成樹脂を用いることが好ましい。
【0116】
16.天板
天板14は、第1気体発生部8および第2気体発生部7の上に透光性基板1と対向するように設けることができる。また、天板14は、第1気体発生部8および第2気体発生部7と天板14との間に電解液チェンバーが設けられるように設けることができる。また、天板14は、外箱16の一部であってもよい。
【0117】
また、天板14は、電解液チェンバーを構成し、生成した第1気体および第2気体を閉じ込めるために構成される材料であり、機密性が高い物質が求められる。透明なものであっても不透明なものであっても特に限定されるものではないが、第1気体および第2気体が発生していることを視認できる点においては透明な材料であることが好ましい。透明な天板としては特に限定されず、例えば石英ガラス、パイレックス(登録商標)、合成石英板等の透明なリジッド材、あるいは透明樹脂板、透明樹脂フィルムなどを挙げることができる。中でも、ガスの透過性がなく、化学的物理的に安定な物質である点でガラス材を用いることが好ましい。
【0118】
17.隔壁
隔壁13は、第1気体発生部8と天板14との間の電解液チェンバーおよび第2気体発生部7と天板14との間の電解液チェンバーとを仕切るように設けることができる。また、隔壁13は、光電変換部2の裏面と第1気体発生部8との間に設けられた気体導通部21および光電変換部2の裏面と第2気体発生部7との間に設けられた気体導通部21を仕切るように設けることができる。
このことにより、第1気体発生部8で発生させた第1気体および第2気体発生部7で発生させた第2気体が混合することを防止することができ、第1気体および第2気体を分離して回収することができる。
また、隔壁13は、イオン交換体を含んでもよい。このことにより、第1気体発生部8と天板14との間の電解液チェンバーの電解液と第2気体発生部7と天板14との間の電解液チェンバーの電解液でアンバランスとなったイオン濃度を一定に保つことができる。つまり、イオンが隔壁9を介してイオン移動が起こることによりイオン濃度のアンバランスを解消することができる。イオンは、例えば、プロトンである。
【0119】
電解液に含まれる水から水素および酸素を発生させる場合、水素発生量および酸素発生量の割合は、2:1のモル比であり、第1気体発生部8と第2気体発生部7により、気体発生量が異なる。このため、装置内の含水量を一定量にする目的から、隔壁13は電解液を透過する材料であることが好ましい。隔壁13は、例えば、多孔質ガラス、多孔質ジルコニア、多孔質アルミナ等の無機膜あるいはイオン交換体を用いることが可能である。
イオン交換体としては、当該分野で公知のイオン交換体をいずれも使用でき、プロトン伝導性膜、カチオン交換膜、アニオン交換膜等を使用できる。
【0120】
プロトン伝導性膜の材質としては、プロトン伝導性を有しかつ電気的絶縁性を有する材質であれば特に限定されず、高分子膜、無機膜又はコンポジット膜を用いることができる。
【0121】
高分子膜としては、例えば、パーフルオロスルホン酸系電解質膜である、デュポン社製のナフィオン(登録商標)、旭化成社製のアシプレックス(登録商標)、旭硝子社製のフレミオン(登録商標)等の膜や、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン等の炭化水素系電解質膜等が挙げられる。
【0122】
無機膜としては、例えば、リン酸ガラス、硫酸水素セシウム、ポリタングストリン酸、ポリリン酸アンモニウム等からなる膜が挙げられる。コンポジット膜としては、スルホン化ポリイミド系ポリマー、タングステン酸等の無機物とポリイミド等の有機物とのコンポジット等からなる膜が挙げられ、具体的にはゴア社製のゴアセレクト膜(登録商標)や細孔フィリング電解質膜等が挙げられる。さらに、高温環境下(例えば、100℃以上)で使用する場合には、スルホン化ポリイミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、スルホン化ポリベンゾイミダゾール、ホスホン化ポリベンゾイミダゾール、硫酸水素セシウム、ポリリン酸アンモニウム等が挙げられる。
【0123】
カチオン交換膜としては、カチオンを移動させることができる固体高分子電解質であればよい。具体的には、パーフルオロカーボンスルフォン酸膜や、パーフルオロカーボンカルボン酸膜等のフッ素系イオン交換膜、リン酸を含浸させたポリベンズイミダゾール膜、ポリスチレンスルホン酸膜、スルホン酸化スチレン・ビニルベンゼン共重合体膜等が挙げられる。
【0124】
支持電解質溶液のアニオン輸率が高い場合には、アニオン交換膜の使用が好ましい。アニオン交換膜としては、アニオンの移動可能な固体高分子電解質を使用できる。具体的には、ポリオルトフェニレンジアミン膜、アンモニウム塩誘導体基を有するフッ素系イオン交換膜、アンモニウム塩誘導体基を有するビニルベンゼンポリマー膜、クロロメチルスチレン・ビニルベンゼン共重合体をアミノ化した膜等が挙げられる。
水素発生、酸素発生がそれぞれ水素発生触媒、酸素発生触媒にて選択的に行われ、これに伴うイオンの移動が起こる場合、必ずしもイオン交換のための特殊な膜等の部材を配置する必要はない。ガスを物理的に隔離することのみの目的であれば、後述のシール材に記載の紫外線硬化性樹脂あるいは熱硬化性樹脂を用いることが可能である。
【0125】
18.シール材
シール材は、透光性基板1と天板14または外箱16を接着し、気体製造装置23内を流れる電解液および気体製造装置23内で生成した第1気体および第2気体を密閉するための材料である。シール材は、例えば、紫外線硬化性接着剤、熱硬化性接着剤等が好適に使用されるが、その種類は限定されるものではない。紫外線硬化性の接着剤としては、200〜400nmの波長を持つ光を照射することにより重合が起こり光照射後数秒で硬化反応が起こる樹脂であり、ラジカル重合型とカチオン重合型に分けられ、ラジカル重合型樹脂としてはアクリルレート、不飽和ポリエステル、カチオン重合型としては、エポキシ、オキセタン、ビニルエーテル等が挙げられる。また熱硬化性の高分子接着剤としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、熱硬化性ポリイミド等の有機樹脂が挙げられる。熱硬化性の高分子接着剤は、熱圧着時に圧力を掛けた状態で加熱重合し、その後、加圧したまま、室温まで冷却することにより、各部材を良好に接合させるため、締め付け部材等を要しない。また、有機樹脂に加えて、ガラス基板に対して密着性の高いハイブリッド材料を用いることが可能である。ハイブリッド材料を用いることによって、弾性率や硬度等の力学的特性が向上し、耐熱性や耐薬品性が飛躍的に向上する。ハイブリッド材料は、無機コロイド粒子と有機バインダ樹脂とから構成される。例えば、シリカなどの無機コロイド粒子と、エポキシ樹脂、ポリウレタンアクリレート樹脂やポリエステルアクリレート樹脂などの有機バインダ樹脂とから構成されるものが挙げられる。
【0126】
ここではシール材と記しているが、透光性基板1と天板14または外箱16を接着させる機能を有するものであれば限定されず、樹脂製あるいは金属製のガスケットを用い外部からネジ等の部材を用いて物理的に圧力を加え機密性を高める方法等を適宜用いることも可能である。
【0127】
19.電解液チェンバー
電解液チェンバー15は、第1気体発生部8と天板14との間の空間および第2気体発生部7と天板14との間の空間とすることができる。また、電解液チェンバー15は、隔壁13により仕切ることができる。
【0128】
20.給水口、第1気体排出口および第2気体排出口
給水口18は、気体製造装置23に含まれるシール材または外箱16の一部に開口を作ることにより設けることができる。給水口18は、第1気体及び第2気体へと分解された電解液を補充するために配置され、その配置箇所および形状は、原料となる電解液が効率よく気体製造装置へ供給されさえすれば、特に限定されるものではないが、流動性および供給の容易性の観点から、気体製造装置下部に設置することが好ましい。
【0129】
また、第1気体排出口20および第2気体排出口19は、給水口18を下側にして気体製造装置23を設置したとき、気体製造装置23の上側の部分のシール材または外箱16に開口を作ることにより設けることができる。また、第1気体排出口20と第2気体排出口19は、それぞれ隔壁13を挟んで第1気体発生部20側と第2気体発生部19側に設けることができる。また、第1気体排出口20および第2気体排出口19は、気体流路17の一端と隣接して設けることもできる。また、外部に設置した吸引機等と第1気体排出口20または第2気体排出口19を接続することにより気体回収の効率を高めることも可能である。
【0130】
このように給水口18、第1気体排出口20および第2気体排出口19を設けることにより、気体製造装置23を光電変換部2の受光面が上向きの状態で水平面に対し傾斜し、給水口18が下側になり第1気体排出口20および第2気体排出口19が上側になるように設置することができる。このように設置することにより、給水口18から電解液を気体製造装置23内に導入し、電解液チェンバー15を電解液で満たすことができる。この状態で、気体製造装置23に光を入射させることにより、第1気体発生部および第2気体発生部でそれぞれ、連続して第1気体および第2気体を発生させることができる。この発生した第1気体および第2気体は、隔壁13により分離することができ、第1気体及び第2気体は気体流路17を導通し、第1気体排出口20および第2気体排出口19から回収することができる。
【0131】
21.電解液
電解液は、電解質を含む水溶液であり、例えば、0.1MのH2SO4電解液、0.1Mリン酸カリウム緩衝液などである。
【0132】
実施例
本発明を以下に示す実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
図4のような断面を有する気体製造装置を次の条件にて作製した。
光電変換部2にはn型ドープしたGaAsおよびGaInP2と、p型ドープしたGaAsおよびGaInP2と積層させた化合物半導電体太陽電池を使用した。透光性基板1に光透過性および耐熱性、耐腐食性に優れる石英ガラス基板を使用した。作製方法としては、二酸化スズ(SnO2)からなる第1電極4が被膜されたガラス基板の表面にMOCVD法(有機金属気相堆積法)により、p型GaInP2を膜厚0.1μm、更にその上にp型GaAsを膜厚3.0μm、n型GaAsを膜厚0.1μm、n型GaInP2を0.05μmで順に堆積させた。その後、n型GaInP2層の表面に基板温度250℃でスパッタリング法により0.1μmの膜厚でITOを積層させた。以上により透光性基板1上にGaAsのpn接合の両側をGaInP2で挟んだヘテロ構造の半導電体太陽電池が作製できた。
【0133】
次に、第1気体発生部8である水素発生部は、触媒に白金を使用し、第2気体発生部7である酸素発生部は、触媒にはRuO2(二酸化ルテニウム)粒子を使用し、それぞれゾル―ゲル法により多孔質カーボン板に担持させた。また、光電変換部2と酸素発生部の間に挟みこむ気体導通部21には発泡ニッケルを用いた。
次に、第2導電部10であるコンタクトホールと酸素発生部の間に配置する気体導通部21を光電変換部2から絶縁するための絶縁部11を形成するために、スピンコート法にて原料の塗布、焼成を行うことによりポリイミド膜を作製した。続けて、Agペーストをスクリーン印刷法にて基板上に塗布することにより第2導電部10を形成し、その上に発泡ニッケルおよび二酸化ルテニウムを担持させた多孔質カーボンシートを配置し、加熱処理を行った。このことにより第2導電部10上に気体導通部21および酸素発生部を形成した。同様にガラスフィルタからなる隔膜13で隔てて水素発生部および気体導通部21を光電変換部2の裏面上に積層した。
【0134】
外箱16はステンレス板を所望のサイズにプレス加工して成型した後、第1気体排出口19、第2気体排出口19および給水口18をそれぞれ設けた。前記外箱16に光電変換部2などを形成した透光性基板1をシール材(エポキシ系樹脂)で接合し、気体製造装置を作成した。
【0135】
(実施例2)
図20に示すような断面を有する気体製造装置を次の条件にて作製した。
装置の各構成要件の構成材料および規格は基本的に実施例1の気体製造装置と同様である。しかし、以下の点で異なっている。まず、水素発生部および酸素発生部は本実施例においては、縦方向の幅を3cmに加工した厚さ3mmのアルミニウム板を複数作成し、その表面に水素発生触媒であるPtまたは酸素発生触媒であるRuO2を実施例1と同様の方法で担持させ作成した。次に、水素発生部および酸素発生部は、図20ように複数設けた。2つの水素発生部の間および2つの酸素発生部の間には、気体支流路29となる2mmの隙間を置いて設けた。
【0136】
(実施例3)
図7に示すような断面を有する気体製造装置を次の条件にて作製した。
装置の各構成要件の構成材料および規格は基本的に実施例2の気体製造装置と同様である。しかし、図7に示すように水素発生部および酸素発生部の気体導通部側の面と反対側の面(反応面)に気体導通部の面に対して角度が設けられている点で異なっている。水素発生部および酸素発生部は、縦方向の幅を3cmに加工した厚さ2cmのアルミニウム板それぞれの反応面が気体導通部21の表面に対して30度の角度がつくように切削加工した。その後、アルミニウム板の表面に実施例1と同様の方法で水素発生触媒であるPtおよび酸素発生触媒であるRuO2(膜厚1μm)を担持させた。気体導通部21上に水素発生部または酸素発生部を積層する際は、2つの水素発生部の間および2つの酸素発生部の間には、2mmの隙間を設けた。
【0137】
(実施例4)
実施例1において作製した気体製造装置を太陽光が透光性基板1に対して垂直に照射されるように装置を水平面に対して斜めに設置した。給水口18より0.1MのH2SO4電解液を給水して電解液チェンバー15内を満たした後、太陽光を照射した。
また、太陽光の照射開始から2時間後までの第1気体排出口20および第2気体排出口19から回収された気体量を蛍光センサー分析にて定量したところ、それぞれから水素、酸素が回収されていることが確認できた。また、それぞれの気体量は以下に示す表1に示すとおり、水素0.41mol、酸素0.19molであった。
【0138】
【表1】
【0139】
(実施例5)
実施例2において作製した気体製造装置を太陽光が透光性基板1に対して垂直に照射されるように装置を水平面に対して斜めに設置した。給水口18より0.1MのH2SO4電解液を給水して電解液チェンバー15を満たした後、太陽光を照射した。
また、太陽光の照射開始から2時間後までに第1気体排出口20および第2気体排出口19から回収された気体量を蛍光センサー分析にて定量したところ、それぞれから水素、酸素が回収されていることが確認できた。また、それぞれの気体量は表1に示すとおり、水素0.47mol、酸素0.23molであった。
【0140】
(実施例6)
実施例3において作製した気体製造装置を太陽光が透光性基板1に対して垂直に照射されるように装置を水平面に対して斜めに設置した。給水口18より0.1MのH2SO4電解液を給水して電解液チェンバーを満たした後、太陽光を照射した。
また、太陽光の照射開始から2時間後までに第1気体排出口20および第2気体排出口19から回収された気体量を蛍光センサー分析にて定量したところ、それぞれから水素、酸素が回収されていることが確認できた。また、それらの気体量は表1に示すとおり、水素0.54mol、酸素0.26molであった。
【0141】
(比較例1)
実施例1の気体製造装置において、気体導通部21を積層せずに水素発生部は水素発生触媒である白金を光電変換部2の裏面に直接担持し、また酸素発生部は絶縁部11上に酸素発生触媒であるRuO2をCVD法により1μmの膜厚で積層し、図24に示すような気体製造装置を作製した。
上記のようにして作製した気体製造装置を太陽光が透光性基板1に対して垂直に照射されるように装置を水平面に対して斜めに設置した。給水口18より0.1MのH2SO4電解液を給水して電解液チェンバー15を満たした後、太陽光を照射したところ、水素発生部の表面から気体が発生していることが確認できた。
また、太陽光の照射開始から2時間後までに第1気体排出口20および第2気体排出口19から回収された気体量を蛍光センサー分析にて定量したところ、それぞれから水素、酸素が回収されていることが確認できた。また、それらの気体量は表1に示すとおり、水素0.31mol、酸素0.14molであった。
【0142】
以上により、反応面が下向きの第1気体発生部8および第2気体発生部7から発生させた気体を気体導通部21に含まれる気体流路17を介して回収することにより、水素の発生効率を高めることが可能となることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明の気体製造装置は太陽光エネルギーにより水の分解反応を起こし、燃料として活用できる水素および酸素の製造を可能とする。この装置を設置することにより集中的な大規模燃料製造はもちろんのこと、工場、家庭等における分散型の燃料製造も可能となる。
【符号の説明】
【0144】
1:透光性基板 2:光電変換部 4:第1電極 5:第2電極 7:第2気体発生部 8:第1気体発生部 9:第1導電部 10:第2導電部 11:絶縁部 13:隔壁 14:天板 15:電解液チェンバー 16:外箱 17:気体流路 18:給水口 19:第2気体排出口 20:第1気体排出口 21:気体導通部 22:第3導電部 23:気体製造装置 25:電解液 27:発生気体 29:気体支流路 31:第1開口 32:第2開口 33:第1縁部 34:第2縁部
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体製造装置および気体製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料の使用に伴う地球温暖化および化石燃料資源自体の枯渇の懸念から、環境に優しく、かつ無尽蔵なエネルギー供給の可能性を持つ再生可能エネルギーの利用が注目を集め、開発も盛んに行われている。再生可能エネルギーとしては太陽光、風力、水力、地熱等があり、これらのエネルギーにより電力を作り出す技術は実用化もされてきている。中でも太陽光は地上において、どこでも得ることが可能なエネルギー源であり、太陽光により電力を作る太陽電池は世界各地に設置され、現在ではまだ少数ではあるが、一般家庭にも普及しつつある。しかし、太陽光によるエネルギー供給は季節や、気候の変動により一定しないという欠点があり、この変動を平滑化することが課題である。この課題を解決するための方法のひとつとして、太陽から得たエネルギーを別の物質、例えば液体燃料や、水素等のガスに変換して、保存するという方法が考えられている。
【0003】
これらの太陽光エネルギーからの変換物質の中でも水素は燃やすと水が出来るだけで、地球温暖化の原因となる二酸化炭素や有害な窒素酸化物などを排出しない為、将来のエネルギーとして期待されている。水素ガス生成については、メタン等の化石燃料から生成する方法と水を電気分解して生成する方法が試みられているが、CO2の排出を伴わない後者が最終的な手段であり、中でも安定的かつ地域普遍的な手段としては太陽光発電を利用した水の電気分解による水素ガス生成がもっとも確実な手段であると言われている。これにより太陽光エネルギーは化学的なエネルギーとして貯蔵出来ることとなり、太陽光エネルギーの利用範囲を大きく広げることになる。
【0004】
なお、太陽光エネルギーからより直接的に水素を生成する方法として光触媒(本多藤島効果)による水素ガス生成も研究されているが、現在まだ太陽エネルギーのわずか3%程度を占めるに過ぎない紫外線領域の光しか利用できない等の問題があり実用化の目処は立っていない。その他原子力を利用した水の熱分解による水素の生成やバイオマスを利用した水素ガス生成が試みられているが、まだ研究段階である。
【0005】
従来、太陽光を利用した水電解システムには例えば特許文献1に示されるようなものがある。この水電解システムは光電変換半導電体に光触媒の層を積層した光電気化学セルを鉛直に設置し、光を照射することで直接水分解をすることを可能としている。また、特許文献2においては導電体上にp型半導体とn型半導体を積層し、絶縁部材で隔てて同一面上に前記半導体を逆順に積層することにより、水素、酸素をともに非受光面側で生成することが可能であることが示されている。他にも、特許文献3に示されるようなものがある。この水電解システムは光触媒層と対極がイオン伝導膜を介して設けられている。また、水電解セルの外壁に流通孔を設け、前記流通孔を介して隣接する水電解セル同士で電解液が流通可能となるように構成され、隣接する水電解セル同士の電気的導通を防止するようしている。この水分解セルを傾けた状態で設置し、光を照射することにより水を分解している。また、水分解セルを傾けた状態で設置することにより、太陽光の利用効率を高くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2004−504934公報
【特許文献2】特開2004−197167公報
【特許文献3】特開2008−75097公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の水分解システムでは、水分解反応面が鉛直な面に設置した場合、発生した気体は気泡として浮上しにくく、水分解反応面に滞留しやすい。また、太陽光の利用効率を高くするために、水分解反応面を斜めに設置した場合、受光面側の水分解反応面で発生した気体は、気泡として浮上しやすく、水分解反応面に滞留しにくいが、受光面の反対側の水分解反応面では、発生した気体が気泡として浮上しにくく、発生した気体が滞留しやすい。このため、水と接触する水分解反応面の面積が減少し、水分解効率を低下させている。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、電解液から発生させた気体の反応面における滞留を抑制することができ、気体生成効率の高い気体製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、受光面および裏面を有する光電変換部と、前記裏面と電気的に接続しかつ前記光電変換部が受光することにより生じる起電力を用いて電解液から第1気体を発生させる第1気体発生部と、前記受光面と電気的に接続しかつ前記光電変換部が受光することにより生じる起電力を用いて電解液から第2気体を発生させる第2気体発生部と、気体流路と、気体排出口とを備え、前記気体流路は、第1気体発生部および第2気体発生部のうち少なくとも一方と前記光電変換部の裏面との間に設けられ、前記気体流路は、第1気体または第2気体を前記気体排出口へと導通させることを特徴とする気体製造装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、前記気体流路は、第1気体発生部および第2気体発生部のうち少なくとも一方と前記光電変換部の裏面との間に設けられ、前記気体流路は、第1気体または第2気体を前記気体排出口へと導通させるため、第1気体の第1気体発生部の表面での滞留または第2気体の第2気体発生部の表面での滞留を抑制することができる。また、第1気体または第2気体を気体排出口から迅速に排出することができ、回収することができる。つまり、本発明の気体製造装置を斜め設置した場合、受光面の反対側の第1気体発生部または第2気体発生部において電解液から発生させた第1気体または第2気体は、その浮力により浮上する。この浮力により第1気体または第2気体は、気体流路に流入することができ、第1気体または第2気体は、気体流路を導通し、気体排出口から回収することができる。このため、第1気体が第1気体発生部の表面に滞留することまたは第2気体が第2気体発生部の表面に滞留することを抑制することができ、電解液を効率よく分解し第1気体または第2気体を発生させることができる。また、発生させた第1気体または第2気体を迅速に回収することができ、光の照射から生成気体回収までの応答性をよくすることができる。
本発明によれば、第1気体流路を設けることにより気体の滞留を抑制することができるため、電解液を対流させるための付加装置や装置全体を振動させるための付加装置を取り付ける必要がなく、気体製造装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略平面図である。
【図2】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略裏面図である。
【図3】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図4】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図5】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図6】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図7】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図8】図7の点線で囲んだ範囲Dの拡大図である。
【図9】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図10】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図11】図10の点線で囲んだ範囲Eの拡大図である。
【図12】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図13】図12の点線で囲んだ範囲Fの拡大図である。
【図14】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図15】図14の点線で囲んだ範囲Gの拡大図である。
【図16】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図17】図16の点線で囲んだ範囲Jの拡大図である。
【図18】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略平面図である。
【図19】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図20】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図21】図20の点線で囲んだ範囲Mの拡大図である。
【図22】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図23】図22の点線で囲んだ範囲Nの拡大図である。
【図24】比較例で作成した気体製造装置の構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の気体製造装置は、受光面および裏面を有する光電変換部と、前記裏面と電気的に接続しかつ前記光電変換部が受光することにより生じる起電力を用いて電解液から第1気体を発生させる第1気体発生部と、前記受光面と電気的に接続しかつ前記光電変換部が受光することにより生じる起電力を用いて電解液から第2気体を発生させる第2気体発生部と、気体流路と、気体排出口とを備え、前記気体流路は、第1気体発生部および第2気体発生部のうち少なくとも一方と前記光電変換部の裏面との間に設けられ、前記気体流路は、第1気体または第2気体を前記気体排出口へと導通させることを特徴とする。
【0012】
気体製造装置とは、電解液から第1気体および第2気体を製造することができる装置である。
光電変換部とは、光を受光し起電力が生じる部分である。
受光面とは、光が入射する光電変換部の面である。
裏面とは、受光面の裏の面である。
【0013】
本発明の気体製造装置において、第1導電部をさらに備え、第1気体発生部および第2気体発生部は、前記光電変換部の裏面上に設けられ、前記気体流路は、第1気体発生部と前記裏面との間および第2気体発生部と前記裏面との間にそれぞれ設けられ、第2気体発生部は、第1導電部を介して前記受光面と電気的に接続することが好ましい。
このような構成によれば、受光面に電解液を介さず光を入射させることができ、電解液による入射光の吸収や入射光の散乱を防止することができる。このことにより、光電変換部へ入射光の量を多くすることができ、光利用効率を高くすることができる。また、受光面に入射する光が、第1気体発生部、第2気体発生部、第1気体および第2気体により吸収や散乱されることはない。このことにより、光電変換部へ入射光の量を多くすることができ、光利用効率を高くすることができる。
本発明の気体製造装置において、絶縁部をさらに備え、第2気体発生部は、絶縁部を介して前記光電変換部の裏面上に設けられることが好ましい。
このような構成によれば、このような構成によれば、第2気体発生部と光電変換部の裏面との間にリーク電流が流れることを防止することができる。
【0014】
本発明の気体製造装置において、第1導電部は、前記光電変換部の受光面に接触する第1電極と、第1電極および第2気体発生部にそれぞれ接触する第2導電部とを含むことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の受光面と第2気体発生部を電気的に接続させることができ、より効率的に第2気体を発生させることができる。
本発明の気体製造装置において、光電変換部は、裏面から受光面へ貫通する第1コンタクトホールを有し、第2導電部は、前記光電変換部を貫通する第1コンタクトホールに設けられることが好ましい。
このような構成によれば、第1電極と第2気体発生部を電気的に接続させることができ、第2導電部を設けたことによる光電変換部の受光面の面積の減少を少なくすることができる。
【0015】
本発明の気体製造装置において、透光性基板をさらに備え、前記光電変換部は、透光性基板の上に設けられることが好ましい。
このような構成によれば、基板上に形成する必要がある光電変換部を本発明の気体製造装置に適用することができる。また、本発明の気体製造装置を取り扱いやすくすることができる。
本発明の気体製造装置において、気体支流路をさらに備えることが好ましく、気体支流路は、第1気体発生部および第2気体発生部のうちどちら一方により形成され、かつ、気体流路に繋がり、気体支流路は、第1気体または第2気体を気体流路へ導通させることが好ましい。
このような構成によれば、第1気体発生部で発生させた第1気体または第2気体発生部で発生させた第2気体を気体支流路を導通させ、気体流路に流入させることができる。その結果、第1気体の第1気体発生部の表面での滞留または第2気体の第2気体発生部の表面での滞留を抑制することができ、電解液を効率よく分解し第1気体および第2気体を発生させることができる。また、第1気体発生部または第2気体発生部が金属板などの気体を透過させない材料により構成された場合でも第1気体または第2気体を気体流路に流入させることができ、第1気体または第2気体の滞留を抑制することができる。
【0016】
本発明の気体製造装置において、第1気体発生部または第2気体発生部は複数であり、気体支流路は、隣接する2つの第1気体発生部の間または隣接する2つの第2気体発生部の間に設けられることが好ましい。
このような構成によれば、隣接する2つの第1気体発生部を形成することまたは隣接する2つの第2気体発生部を形成することでその間に気体支流路を容易に形成することができる。または、1つの第1気体発生部または1つの第2気体発生部を形成し、分割溝を形成することにより、容易に気体支流路を形成することができる。
本発明の気体製造装置において、気体支流路は、両端に第1開口と第2開口とを有し、第1開口は、第1気体発生部および第2気体発生部のうちどちらか一方の気体流路側の面に設けられ、第2開口は、第1開口が設けられた面と反対側の面に設けられ、第2開口は、高さの異なる第1縁部および第2縁部を有し、第1縁部は、第2縁部より高い第2開口の縁であり、かつ、第1気体または第2気体を気体支流路に流入させることが好ましい。
このような構成によれば、気体支流路が第1開口と第2開口を有するため、第1気体発生部または第2気体発生部の気体流路側の面と反対側の面付近で発生させた第1気体または第2気体も気体支流路を導通させ、気体流路に流入させることができる。また、第2開口は、高さの異なる第1縁部および第2縁部を有し、第1縁部は第2縁部より高い第2開口の縁であるため、第1気体発生部または第2気体発生部の気体流路側の面と反対側の面付近で発生させた第1気体または第2気体が気体支流路により流入しやすくなる。このことにより第1気体または第2気体の滞留を抑制することができ、電解液の分解効率を高くすることができる。
【0017】
本発明の気体製造装置において、第1気体および第2気体のうち一方は、H2であり、他方は、O2であることが好ましい。
このような構成によれば、電解液に含まれる水を分解し、燃料となるH2を製造することができる。
本発明の気体製造装置において、前記気体流路は、前記光電変換部の裏面に沿うように設けられることが好ましい。
このような構成によれば、気体流路に第1気体または第2気体を流入しやすくすることができ、第1気体または第2気体を気体排出口から回収しやすくすることができる。
【0018】
本発明の気体製造装置において、電解液チェンバーをさらに備え、第1気体発生部および第2気体発生部のうち少なくとも一方は、前記光電変換部の裏面と前記電解液チェンバーとの間に設けられ、かつ、電解液に浸漬可能であることが好ましい。
このような構成によれば、第1気体発生部または第2気体発生部を電解液に浸漬することができ、第1気体発生部または第2気体発生部において、電解液から第1気体または第2気体を発生させることができる。
【0019】
本発明の気体製造装置において、前記気体流路は、第1気体および第2気体のいずれか1つがその浮力により流入することができるように設けられることが好ましい。
このような構成によれば、第1気体または第2気体を気体流路に流入させることができ、第1気体の第1気体発生部の表面での滞留または第2気体の第2気体発生部の表面での滞留を抑制することができる。
【0020】
本発明の気体製造装置において、第1気体発生部および第2気体発生部のうち少なくとも一方と前記光電変換部との間に気体導通部をさらに備えることが好ましく、前記気体導通部は、気体流路を有することが好ましい。
このような構成によれば、気体流路を容易に設けることができる。
本発明の気体製造装置において、前記気体導通部は、多孔性材料から形成されることが好ましい。
このような構成によれば、多孔性材料が有する孔を気体流路とすることができる。
本発明の気体製造装置において、前記気体導通部は、疎水性の表面を有することが好ましい。
このような構成によれば、第1気体または第2気体の滞留を抑制することができ、電解液の分解効率を高くすることができる。
【0021】
本発明の気体製造装置において、前記気体導通部は、超疎水性多孔質膜から形成されることが好ましい。
このような構成によれば、疎水性多孔質膜が有する電解液が流入しない孔を気体流路とすることができる。この電解液が満たされていない孔を気体流路とすることにより、第1気体または第2気体を気泡ではない状態で気体流路を迅速に導通させることができる。その結果、第1気体または第2気体の滞留を抑制することができ、電解液の分解効率を高くすることができる。また、このことにより、光電変換部への光の照射から第1気体および第2気体を回収するための時間を短縮することができ応答性をよくすることができ、第1気体および第2気体の回収効率を向上させることができる。
本発明の気体製造装置において、第1気体発生部および第2気体発生部は、前記裏面上に設けられ、前記気体導通部は、前記裏面と第1気体発生部および第2気体発生部との間に設けられ、かつ、前記電解液に対する耐食性および遮液性を有することが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部と電解液とを気体導通部により分離することができ、光電変換部が電解液と接触することを防止することができる。このことにより、例えば、光電変換部が電解液により腐食されることを防止することができ、また、光電変換部への電解液の流入などによる光電変換効率の低下を防止することができる。
【0022】
本発明の気体製造装置において、前記気体導通部は、前記光電変換部を覆うように設けられることが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部と電解液とを気体導通部により分離することができる。
本発明の気体製造装置において、前記気体導通部は、導電性を有することが好ましい。
このような構成によれば、第1気体発生部と光電変換部の裏面とをほぼ同じ電位とすることができ、または、第2気体発生部と光電変換部の受光面とをほぼ同じ電位にすることができる。このことにより、電解液の分解効率を高くすることができる。
【0023】
本発明の気体製造装置において、第1気体発生部および第2気体発生部は、前記裏面上に設けられ、前記裏面と第1気体発生部とを電気的に接続する第3導電部をさらに備え、前記気体導通部は、前記裏面と第1気体発生部との間に設けられ、かつ、前記気体導通部を貫通する第2コンタクトホールを有し、第3導電部は、第2コンタクトホールに設けられることが好ましい。
このような構成によれば、気体導通部に絶縁体や半導体をもちいた場合でも、光電変換部の裏面と第1気体発生部とをほぼ同じ電位にすることができ、電解液の分解効率を高くすることができる。
本発明の気体製造装置において、前記光電変換部は、p型半導体層、i型半導体層およびn型半導体層からなる光電変換層を有することが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部がpin構造を有することができ、効率よく光電変換をすることができる。また、光電変換部で生じる起電力をより大きくすることができ、電解液をより効率的に電気分解することができる。
【0024】
本発明の気体製造装置において、第1気体発生部および第2気体発生部のうち、一方は、電解液からH2を発生させる水素発生部であり、他方は、電解液からO2を発生させる酸素発生部であり、前記水素発生部および前記酸素発生部は、それぞれ電解液からH2が発生する反応の触媒および電解液からO2が発生する反応の触媒を含むことが好ましい。
このような構成によれば、第1気体発生部および第2気体発生部のうちの一方である水素発生部における電解液からH2が発生する反応の反応速度を増大させることができ、第1気体発生部および第2気体発生部のうちの他方である酸素発生部における電解液からO2が発生する反応の反応速度を増大させることができる。このことにより、光電変換部で生じた起電力により、より効率的にH2を製造することができ、光の利用効率を向上させることができる。
本発明の気体製造装置において、前記水素発生部および前記酸素発生部のうち少なくとも一方は、触媒が担持された多孔質の導電体であることが好ましい。
このような構成によれば、このような構成によれば、第1気体発生部および第2気体発生部のうち少なくとも一方の触媒表面積を大きくすることができ、より効率的に酸素または水素を発生させることができる。また、多孔質の導電体を用いることにより、光電変換部と触媒との間の電流が流れることによる電位の変化を抑制することができ、より効率的に水素または酸素を発生させることができる。また、触媒表面で発生させた水素または酸素を水素発生部または酸素発生部が有する孔を導通させて気体流路に流入させることができる。このことにより、水素発生部における水素の滞留または酸素発生部での酸素の滞留を抑制することができる。
【0025】
本発明の気体製造装置において、前記水素発生部および前記酸素発生部は、親水性の表面を有することが好ましい。
このような構成によれば、水素発生部および酸素発生部と電解液との接触面積を広くすることができ、電解液をより効率的に分解することができる。また、このような構成によれば、水素発生部および酸素発生部でそれぞれ発生させた水素および酸素を気泡の状態で長時間滞留することを抑制することができ、気体流路への水素及び酸素の送達効率を向上させることができる。
本発明の気体製造装置において、第1気体発生部および第2気体発生部は、前記光電変換部の裏面上に設けられ、前記光電変換部は、透光性基板の上に設けられ、第1気体発生部および第2気体発生部の上に前記透光性基板に対向する天板をさらに備え、第1気体発生部と前記天板との間および第2気体発生部と前記天板との間にそれぞれ電解液チェンバーが設けられることが好ましい。
このような構成によれば、第1気体発生部および第2気体発生部と前記天板との間の電解液チェンバーに電解液を導入することができ、第1気体発生部および第2気体発生部において電解液からより効率的に第1気体および第2気体を発生させることができる。
【0026】
本発明の気体製造装置において、第1気体発生部と前記天板との間の電解液チェンバーおよび第2気体発生部と天板との間の電解液チェンバーとを仕切る隔壁をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、第1気体発生部および第2気体発生部でそれぞれ発生した第1気体および第2気体を分離することができ、第1気体および第2気体をより効率的に回収することができる。
本発明の気体製造装置において、前記隔壁は、イオン交換体を含むことが好ましい。
このような構成によれば、第1気体発生部の上部の空間に導入された電解液と第2気体発生部の上部の空間に導入された電解液との間のプロトン濃度の不均衡を解消することができ、安定して第1気体および第2気体を発生させることができる。
【0027】
さらに本発明では、本発明の気体製造装置を前記受光面が水平面に対し傾斜するように設置し、前記気体製造装置の下部から前記気体製造装置に電解液を導入し、太陽光を前記受光面に入射させることにより第1気体発生部および第2気体発生部からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させ、前記気体製造装置の上部から第1気体および第2気体を排出する気体製造方法も提供する。
本発明の気体製造方法によれば、太陽光を利用して、低コストで第1気体および第2気体を製造することができる。また、気体製造装置を前記受光面が水平面に対し傾斜するように設置することにより、高効率で太陽光を利用し電解液を分解をさせることができ、また、気体製造装置を建造物の傾斜の付いた屋根等に設置することができる。
【0028】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0029】
気体製造装置の構成
図1は、本発明の一実施形態の気体製造装置の概略平面図である。なお、透光性基板は省略している。図2は、本発明の一実施形態の気体製造装置の概略裏面図である。なお、外箱の底板は省略している。図3〜6は、それぞれ本発明の一実施形態の気体製造装置の概略断面図であり、図1に示した気体製造装置の点線A−Aの断面図に対応している。図7は、本発明の一実施形態の気体製造装置の概略断面図であり、図1に示した気体製造装置の点線C−Cの断面図に対応している。図8は、図7の点線で囲んだ範囲Dの拡大図である。図9は、本発明の一実施形態の気体製造装置の概略断面図である。
【0030】
本実施形態の気体製造装置23は、受光面および裏面を有する光電変換部2と、前記裏面と電気的に接続しかつ光電変換部2が受光することにより生じる起電力を用いて電解液から第1気体を発生させる第1気体発生部8と、前記受光面と電気的に接続しかつ光電変換部2が受光することにより生じる起電力を用いて電解液から第2気体を発生させる第2気体発生部7と、気体流路17と、気体排出口19、20とを備え、気体流路17は、第1気体発生部8および第2気体発生部7のうち少なくとも一方と光電変換部2の裏面との間に設けられ、気体流路17は、第1気体または第2気体を気体排出口19、20へと導通させることを特徴とする。
【0031】
また、本実施形態の気体製造装置23は、さらに透光性基板1、第1導電部9、第2電極5、絶縁部11、隔壁13、電解液チェンバー15、外箱16、給水口18、第1気体排出口20、第2気体排出口19、気体導通部21、第3導通部22および気体支流路29を有してもよい。
第1導電部9は、第1電極4および第2導電部10を有してもよい。また、外箱16は天板14を有してもよい。
以下、本実施形態の気体製造装置23について説明する。
【0032】
1.透光性基板
透光性基板1は、本実施形態の気体製造装置23が備えてもよい。また、例えば、図3のように光電変換部2は、受光面が透光性基板1側となるように透光性基板1の上に設けられてもよい。なお、光電変換部2が、半導体基板などからなり一定の強度を有する場合、透光性基板1は省略することが可能である。また、光電変換部2が樹脂フィルムなど柔軟性を有する材料の上に形成可能な場合、透光性基板1は省略することができる。また、例えば、図9のように第1気体発生部8および第2気体発生部7がそれぞれ光電変換部2の裏面上および受光面上に設けられている場合、透光性基板1は、光電変換部2などとの間に電解液チェンバー15を挟んで設けられてもよい。
【0033】
また、透光性基板1は、本気体製造装置を構成するための土台となる部材であってもよい。また、太陽光を光電変換部2の受光面で受光するためには、透明であり光透過率が高いことが好ましいが、光電変換部2へ効率的な光の入射が可能な構造であれば、光透過率に制限はない。
光透過率が高い基板材料として、例えば、ソーダガラス、石英ガラス、パイレックス(登録商標)等のホウケイ酸ガラス、合成石英板等の透明なリジッド材、あるいはポリブチレンテレフタラート(PBT)製の板などの透明樹脂板やフィルム材等が好適に用いられる。化学的および物理的安定性および耐熱性を備える点より、石英ガラス、パイレックス(登録商標)等のガラス基板を用いることが好ましい。また、集光度を高めるためにフレネルレンズ等、集光用に加工されたものを用いても良い。
透光性基板1の光電変換部2側の表面には、入射した光が光電変換部2の表面で有効に乱反射されるように、微細な凹凸構造に形成することができる。この微細な凹凸構造は、例えば反応性イオンエッチング(RIE)処理もしくはブラスト処理等の公知の方法により形成することが可能である。
【0034】
2.第1導電部
第1導電部9は、第2気体発生部7と光電変換部2の受光面とを電気的に接続させることができる。また、第1導電部9は、1つの部材からなってもよく、第1電極4と第2導電部10からなってもよい。第1導電部9を設けることにより、光電変換部2の受光面の電位と第2気体発生部7の電位をほぼ同じにすることができ、第2気体発生部7で第2気体を発生させることができる。
第1導電部9が1つの部材からなる場合としては、例えば、光電変換部2の受光面と第2気体発生部7を電気的に接続させる金属配線などである。また、例えば、Agからなる金属配線である。また、この金属配線は、光電変換部2に入射する光を減少させいないように、フィンガー電極のような形状を有してもよい。第1導電部9は、透光性基板1の光電変換部2側に設けられてもよく、光電変換部2の受光面に設けられてもよい。
また、本実施形態の気体製造装置23が図9のような断面を有する場合、第1導電部9は省略することもできる。
【0035】
3.第1電極
第1電極4は、透光性基板1の上に設けることができ、光電変換部2の受光面と接触するように設けることができる。また、第1電極4は透光性を有してもよい。また、第1電極4は、透光性基板1を省略可能の場合、光電変換部2の受光面に直接設けられてもよい。第1電極4を設けることにより、光電変換部2の受光面と第2気体発生部7との間に流れる電流を大きくすることができる。
また、本実施形態の気体製造装置23が図9のような断面を有する場合、第1電極4を第2気体発生部7と光電変換部2との間に設けることもできる。
【0036】
第1電極4は、例えば、SnO2、ZnO、In2O3またはITO(In2O3―SnO2)、IZO(InSnO2―ZnO)などの透明導電膜からなってもよく、Ag、Auなどの金属のフィンガー電極からなってもよい。
【0037】
以下に第1電極4を透明導電膜とした場合について説明する。
透明導電膜は、光電変換部2の受光面と第2気体発生部7とのコンタクトを取りやすくするために用いている。
一般に透明電極として使用されているものを用いることが可能である。具体的にはIn−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2等を挙げることができる。なお本透明導電膜は、太陽光の光線透過率が85%以上、中でも90%以上、特に92%以上であることが好ましい。このことにより光電変換部2が光を効率的に吸収することができるためである。
透明導電膜の作成方法としては公知の方法を用いることができ、スパッタリング、真空蒸着、ゾルゲル法、クラスタービーム蒸着法、PLD(Pulse Laser Deposition)法などが挙げられる。
【0038】
4.光電変換部
光電変換部2は、受光面および裏面を有し、光電変換部2の裏面の上に第1気体発生部8と第2気体発生部7を設けることができる。なお、受光面とは、光電変換するための光を受光する面であり、裏面とは、受光面の裏の面である。また、光電変換部2は、第1電極4が設けられた透光性基板1の上に受光面を下にして設けることができる。
光電変換部2は、入射光により電荷分離することができ、受光面と裏面との間に起電力が生じるものであれば、特に限定されないが、例えば、シリコン系半導体を用いた光電変換部、化合物半導体を用いた光電変換部、色素増感剤を利用した光電変換部、有機薄膜を用いた光電変換部などである。また、光電変換部2は、第1気体発生部と第2気体発生部に電解液の分解のために必要な正孔および電子を供給する。光電変換部2が受光することにより生じる受光面と裏面との間の電位差は、第1気体発生部から第1気体を発生させることができ、第2気体発生部から第2気体を発生させることができれば特に限定されないが、電解液を分解するための理論電圧よりも十分に大きくすることができる。
【0039】
第1気体発生部および第2気体発生部がそれぞれ水素発生部および酸素発生部であり、電解液に含まれる水を分解しから水素を及び酸素を発生させる場合、光電変換部2は、光を受光することにより、水素発生部と酸素発生部において水素と酸素が発生するために必要な起電力が生じる材料を使用する必要がある。水素発生部と酸素発生部の電位差は、水分解のための理論電圧(1.23V)より十分に大きくする必要がある。これは、水素発生部おける水素発生反応と酸素発生部における酸素発生反応の過電圧を加味する必要があるためである。そのためには光電変換部2で十分大きな電位差を生み出す必要がある。また、そのため光電変換部2は、pn接合など起電力を生じさせる部分を二接合以上直列に接続することが好ましい。
【0040】
光電変換を行う材料は、シリコン系半導体、化合物半導体、有機材料をベースとしたものなどが挙げられるが、いずれの光電変換材料も使用することが可能である。また、起電力を大きくするために、これらの光電変換材料を積層することが可能である。積層する場合には同一材料で多接合構造を形成することが可能であるが、光学的バンドギャップの異なる複数の光電変換層を積層し、各々の光電変換層の低感度波長領域を相互に補完することにより、広い波長領域にわたり入射光を効率よく吸収することが可能となる。
【0041】
また、光電変換層間の直列接続特性の改善や、光電変換部2で発生する光電流の整合のために、層間に透明導電膜等の導電体を介在させることが可能である。これにより光電変換部2の劣化を抑制することが可能となる。
光電変換部2の例を以下に具体的に説明する。また、光電変換部2は、これらを組み合わせたものでもよい。
【0042】
4−1.シリコン系半導体を用いた光電変換部
シリコン系半導体を用いた光電変換部2は、例えば、単結晶型、多結晶型、アモルファス型、球状シリコン型、及びこれらを組み合わせたもの等が挙げられる。いずれもp型半導体とn型半導体が接合したpn接合を有することができる。また、p型半導体とn型半導体との間にi型半導体を設けたpin接合を有するものとすることもできる。また、pn接合を複数有するもの、pin接合を複数有するもの、pn接合とpin接合を有するものとすることもできる。
シリコン系半導体とは、シリコンを含む半導体であり、例えば、シリコン、シリコンカーバイド、シリコンゲルマニウムなどである。また、シリコンなどにn型不純物またはp型不純物が添加されたものも含み、また、結晶質、非晶質、微結晶、多結晶のものも含む。
また、シリコン系半導体を用いた光電変換部2は、透光性基板1の上に形成された薄膜または厚膜の光電変換層であってもよく、また、シリコンウェハなどのウェハにpn接合またはpin接合を形成したものでもよく、また、pn接合またはpin接合を形成したウェハの上に薄膜の光電変換層を形成したものでもよい。
【0043】
シリコン系半導体を用いた光電変換部の作製方法としては、多結晶シリコンの場合はシリコンのシート化もしくはアモルファスの熱処理、アモルファスシリコンの場合はシランガス等を原料とするプラズマCVD法がある。
シリコン系半導体を用いた光電変換部2の形成例を以下に示す。
透光性基板1上に積層した第1電極4上に、第1導電型半導体層をプラズマCVD法等の方法で形成する。この第1導電型半導体層としては、導電型決定不純物原子濃度が1×1018〜5×1021/cm3程度ドープされた、p+型またはn+型の非晶質Si薄膜、または多結晶あるいは微結晶Si薄膜とする。第1導電型半導体層の材料としては、Siに限らず、SiCあるいはSiGe,SixO1-x等の化合物を用いることも可能である。
【0044】
このように形成された第1導電型半導体層上に、結晶質Si系光活性層として多結晶あるいは微結晶の結晶質Si薄膜をプラズマCVD法等の方法で形成する。なお、導電型は第1導電型半導体よりドーピング濃度が低い第1導電型とするか、あるいはi型とする。結晶質Si系光活性層の材料としては、Siに限らず、SiCあるいはSiGe,SixO1-x等の化合物を用いることも可能である。
【0045】
次に、結晶質Si系光活性層上に半導体接合を形成するため、第1導電型半導体層とは反対導電型である第2導電型半導体層をプラズマCVD等の方法で形成する。この第2導電型半導体層としては、導電型決定不純物原子が1×1018〜5×1021/cm3程度ドープされた、n+型またはp+型の非晶質Si薄膜、または多結晶あるいは微結晶Si薄膜とする。第2導電型半導体層の材料としては、Siに限らず、SiCあるいはSiGe,SixO1-x等の化合物を用いることも可能である。また接合特性をより改善するために、結晶質Si系光活性層と第2導電型半導体層との間に、実質的にi型の非単結晶Si系薄膜を挿入することも可能である。このようにして、受光面に最も近い光電変換層を一層積層することができる。
【0046】
続けて第二層目の光電変換層を形成する。第二層目の光電変換層は、第1導電型半導体層、結晶質Si系光活性層、第2導電型半導体層からなり、それぞれの層は、第一層目の光電変換層中の対応する第1導電型半導体層、結晶質Si系光活性層、第2導電型半導体層と同様に形成する。二層のタンデムで水分解に十分な電位を得ることができない場合は、三層あるいはそれ以上の層状構造を取ることが好ましい。ただし第二層目の光電変換層の結晶質Si系光活性層の体積結晶化分率は、第一層目の結晶質Si系光活性層と比較すると高くすることが好ましい。三層以上積層する場合も同様に下層と比較すると体積結晶化分率を高くすることが好ましい。これは、長波長域での吸収が大きくなり、分光感度が長波長側にシフトし、同じSi材料を用いて光活性層を構成した場合においても、広い波長域で感度を向上させることが可能となるためである。すなわち、結晶化率の異なるSiでタンデム構造にすることにより、分光感度が広くなり、光の高効率利用が可能となる。このとき低結晶化率材料を受光面側にしないと高効率とならない。また結晶化率が40%以下に下がるとアモルファス成分が増え、劣化が生じてしまう。
【0047】
4−2.化合物半導体を用いた光電変換部
化合物半導体を用いた光電変換部は、例えば、III−V族元素で構成されるGaP、GaAsやInP、InAs、II−VI族元素で構成されるCdTe/CdS、II−VI族の変
形であるカルコパイライト系化合物(I―III―VI2等)の化合物半導体などを用いたものが挙げられる。化合物半導体はシリコンに比べて光吸収係数が1〜2桁大きい。このため薄膜セルとして利用するのに適しており、軽量化、低コスト化につなげることが可能である。
III―V族化合物については例えば、p型ドープしたGaAsウェハ表面にn型層をエピタキシャル成長させることで太陽電池セルが作製される。また、GaAsとの格子整合がよく、GaAsを汚染しないGaInP2を用いてGaAs―GaInP2ヘテロ構造とし、さらに変換効率を高めることも可能である。
II―VI族化合物については例えば、CdTe−CdSヘテロ構造が、低価格で工業化されている。作製法としては、ガラス基板上にペースト塗布した後、焼成をするという工程を繰り返すスクリーン方式により作製される。ガラス基板上にCdS膜を形成した後、櫛形にCdTeを堆積させて作製する。CdTeはバンドギャップが1.44eVの理想的な太陽電池材料であり、CdSはバンドギャップが2.42eVで太陽光の大部分を透過する窓材である。ワイドギャップ層を窓材とするヘテロ接合は光が窓材を透過して接合界面で光の吸収が起こるため、発生したキャリアが接合界面付近で効率よく分離・吸収される。
カルコパイライト系化合物については例えば、Cu(In, Ga)Se2(CIGS)(Copper Indium Gallium DiSelenide)やCuIn(S,Se)2(CISS)がある。CIGSについてはバンドギャップが1.55eV〜1.6eVであり、作製法としては3元または4元蒸着法によりMo膜を被覆したガラス板上に製膜させる方法もしくはCu−In膜を製膜した後でSeを含む雰囲気中で熱処理を行うセレン化法が用いられている。
【0048】
化合物半導体を用いた光電変換部の製造方法の一例を以下に示すが、本製造方法では、製膜処理等はすべて有機金属気相成長法(MOCVD;Metal Organic Chemical Vapor Deposition)装置を使って連続して行われる。III族元素の材料としては、例えばトリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、トリメチルインジウムなどの有機金属が水素をキャリアガスとして成長装置に供給される。V族元素の材料としては、例えばアルシン(AsH3)、ホスフィン(PH3)、スチビン(SbH3)等のガスが使われる。p型不純物またはn型不純物のドーパントとしては、例えばp型化にはジエチルジンク、またはn型化には、モノシラン(SiH4)やジシラン(Si2H6)、セレン化水素(H2Se)等が利用される。これらの原料ガスを、例えば700℃に加熱された基板上に供給することにより熱分解させ、所望の化合物半導体材料膜をエピタキシャル成長させることが可能である。これら成長層の組成は導入するガス組成により、また膜厚はガスの導入時間によって制御することが可能である。これらの光電変換部を多接合積層する場合は、層間での格子定数を可能な限り合わせることにより、結晶性に優れた成長層を形成することができ、光電変換効率を向上することが可能となる。
【0049】
pn接合を形成した部分以外にも、例えば受光面側に公知の窓層や、非受光面側に公知の電界層等を設けることによりキャリア収集効率を高める工夫を有してもよい。また不純物の拡散を防止するためのバッファ層を有していてもよい。
【0050】
4−3.色素増感剤を利用した光電変換部
色素増感剤を利用した光電変換部は、例えば、主に多孔質半導体、色素増感剤、電解質、溶媒などにより構成される。
多孔質半導体を構成する材料としては、例えば、酸化チタン、酸化タングステン、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、硫化カドミウム等公知の半導体から1種類以上を選択することが可能である。多孔質半導体を基板上に形成する方法としては、半導体粒子を含有するペーストをスクリーン印刷法、インクジェット法等で塗布し乾燥もしくは焼成する方法や、原料ガスを用いたCVD法等により製膜する方法、PVD法、蒸着法、スパッタ法、ゾルゲル法、電気化学的な酸化還元反応を利用した方法等が挙げられる。
【0051】
多孔質半導体に吸着する色素増感剤としては、可視光領域および赤外光領域に吸収を持つ種々の色素を用いることが可能である。ここで、多孔質半導体に色素を強固に吸着させるには、色素分子中にカルボン酸基、カルボン酸無水基、アルコキシ基、スルホン酸基、ヒドロキシル基、ヒドロキシルアルキル基、エステル基、メルカプト基、ホスホニル基等が存在することが好ましい。これらの官能基は、励起状態の色素と多孔質半導体の伝導帯との間の電子移動を容易にする電気的結合を提供する。
【0052】
これらの官能基を含有する色素として、例えば、ルテニウムビピリジン系色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、アゾ系色素、キナクリドン系色素、スクアリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポルフィリン系色素、フタロシアニン系色素、ベリレン系色素、インジゴ系色素、ナフタロシアニン系色素等が挙げられる。
【0053】
多孔質半導体への色素の吸着方法としては、例えば多孔質半導体を、色素を溶解した溶液(色素吸着用溶液)に浸漬する方法が挙げられる。色素吸着用溶液に用いられる溶媒としては、色素を溶解するものであれば特に制限されず、具体的には、エタノール、メタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリル等の窒素化合物類、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル等のエステル類、水等を挙げることができる。
【0054】
電解質は、酸化還元対とこれを保持する液体または高分子ゲル等固体の媒体からなる。
酸化還元対としては一般に、鉄系、コバルト系等の金属類や塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン物質が好適に用いられ、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム等の金属ヨウ化物とヨウ素の組み合わせが好ましく用いられる。さらに、ジメチルプロピルイミダゾールアイオダイド等のイミダゾール塩等を混入することもできる。
【0055】
また、溶媒としては、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、アセトニトリル等のニトリル化合物、エタノール、メタノール等のアルコール、その他、水や非プロトン極性物質等が用いられるが、中でも、カーボネート化合物やニトリル化合物が好適に用いられる。
【0056】
4−4.有機薄膜を用いた光電変換部
有機薄膜を用いた光電変換部は、電子供与性および電子受容性を持つ有機半導体材料で構成される電子正孔輸送層、または電子受容性を有する電子輸送層と電子供与性を有する正孔輸送層とが積層されたものであってもよい。
電子供与性の有機半導体材料としては、電子供与体としての機能を有するものであれば特に限定されないが、塗布法により製膜できることが好ましく、中でも電子供与性の導電性高分子が好適に使用される。
【0057】
ここで導電性高分子とはπ共役高分子を示し、炭素−炭素またはヘテロ原子を含む二重結合または三重結合が、単結合と交互に連なったπ共役系からなり、半導体的性質を示すものをさす。
【0058】
電子供与性の導電性高分子材料としては、例えばポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリカルバゾール、ポリビニルカルバゾール、ポリシラン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフルオレン、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、およびこれらの誘導体、共重合体、あるいはフタロシアニン含有ポリマー、カルバゾール含有ポリマー、有機金属ポリマー等が挙げられる。中でも、チオフェン−フルオレン共重合体、ポリアルキルチオフェン、フェニレンエチニレン−フェニレンビニレン共重合体、フルオレン−フェニレンビニレン共重合体、チオフェン−フェニレンビニレン共重合体等が好適に利用される。
【0059】
電子受容性の有機半導体材料としては、電子受容体としての機能を有するものであれば特に限定されないが、塗布法により製膜できることが好ましく、中でも電子供与性の導電性高分子が好適に使用される。
電子受容性の導電性高分子としては、例えばポリフェニレンビニレン、ポリフルオレン、およびこれらの誘導体、共重合体、あるいはカーボンナノチューブ、フラーレンおよびこれらの誘導体、CN基またはCF3基含有ポリマーおよびそれらの−CF3置換ポリマー等が挙げられる。
【0060】
また、電子供与性化合物がドープされた電子受容性の有機半導体材料や、電子受容性化合物がドープされた電子供与性の有機半導体材料等を用いることが可能である。電子供与性化合物がドープされる電子受容性の導電性高分子材料としては、上述の電子受容性の導電性高分子材料を挙げることができる。ドープされる電子供与性化合物としては、例えばLi、K、Ca、Cs等のアルカリ金属やアルカリ土類金属のようなルイス塩基を用いることができる。なお、ルイス塩基は電子供与体として作用する。また、電子受容性化合物がドープされる電子供与性の導電性高分子材料としては、上述した電子供与性の導電性高分子材料を挙げることができる。ドープされる電子受容性化合物としては、例えばFeCl3、AlCl3、AlBr3、AsF6やハロゲン化合物のようなルイス酸を用いることができる。なお、ルイス酸は電子受容体として作用する。
【0061】
上記にて示した光電変換部2においては、第一義的には太陽光を受光させ光電変換を行うことを想定しているが、用途により蛍光灯や白熱灯、LED、特定の熱源から発せられる光等の人工光を照射し光電変換を行うことも可能である。
【0062】
5.第2電極
第2電極5は、光電変換部2と第1気体発生部8との間に設けることができる。第2電極5を設けることにより、光電変換部2の裏面の電位と第1気体発生部8の電位をほぼ同じにすることができる。また、光電変換部2の裏面と第1気体発生部8との間に流れる電流を大きくすることができる。このことにより、光電変換部2で生じた起電力により第1気体をより効率的に発生させることができる。また、例えば、図9のように第1気体発生部8と光電変換部2との間に導電性の気体導通部21を設ける場合、第2電極5は省略することができ、気体導通部21を設けることにより第2電極5を設けることと同様の効果を得ることができる。
【0063】
また、例えば、図6のように光電変換部2の裏面と第1気体発生部8とを第3導通部22により電気的に接続する場合、第3導通部22と光電変換部2の裏面とにそれぞれ接触する第2電極を設けることができる。この構成により、絶縁性の気体導通部21を設けた場合でも、光電変換部2の裏面の電位と第1気体発生部8の電位をほぼ同じにすることができる。
第2電極5は、導電性を有すれば特に限定されないが、例えば、金属薄膜であり、また、例えば、Al、Ag、Auなどの薄膜である。これらは、例えば、スパッタリングなどにより形成することができる。また、例えば、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2等の透明導電膜である。
【0064】
6.絶縁部
絶縁部11は、光電変換部2の裏面と第2気体発生部7との間に設けることができる。また、絶縁部11は、第1気体発生部8と第2気体発生部7との間に設けることもできる。さらに、絶縁部11は、第1導電部9と光電変換部2との間、第2導電部10と光電変換部2との間、および第2導電部10と第2電極5との間に設けることができる。また、本実施形態の気体製造装置23が図9のような断面を有する場合、絶縁部11は省略することができる。
絶縁部11を設けることにより、光電変換部2で生じた起電力により、光電変換部2の受光面と第2気体発生部7との間に電流を流し、光電変換部2の裏面と第1気体発生部8との間に電流を流すことができる。また、リーク電流をより小さくすることができる。このことにより、光電変換部2の受光面の電位と第2気体発生部7の電位をほぼ同じにすることができ、また、光電変換部2の裏面の電位と第1気体発生部8の電位をほぼ同じにすることができ、より効率的に第1気体および第2気体を発生させることができる。
また、例えば、図6のように第2気体発生部7と光電変換部2との間に絶縁性の気体導通部21を設ける場合、第2気体発生部7と光電変換部2との間の絶縁部11は省略することができる。
【0065】
絶縁部11としては、有機材料、無機材料を問わず用いることが可能であり、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリアリーレン、芳香族ビニル化合物、フッ素系重合体、アクリル系重合体、ビニルアミド系重合体等の有機ポリマー、無機系材料としては、Al2O3等の金属酸化物、多孔質性シリカ膜等のSiO2や、フッ素添加シリコン酸化膜(FSG)、SiOC、HSQ(Hydrogen Silsesquioxane)膜、SiNx、シラノール(Si(OH)4)をアルコール等の溶媒に溶かし塗布・加熱することにより製膜する方法を用いることが可能である。
【0066】
絶縁部11を形成する方法としては、絶縁性材料を含有するペーストをスクリーン印刷法、インクジェット法、スピンコーティング法等で塗布し乾燥もしくは焼成する方法や、原料ガスを用いたCVD法等により製膜する方法、PVD法、蒸着法、スパッタ法、ゾルゲル法を利用した方法等が挙げられる。
【0067】
7.第2導電部
第2導電部10は、第1電極4と第2気体発生部7とにそれぞれ接触するように設けることができる。第2導電部10を設けることにより、容易に光電変換部2の受光面に接触した第1電極4と第2気体発生部7とを電気的に接続することができる。また、本実施形態の気体製造装置23が図9のような断面を有する場合、第2導電部10は省略することができる。
第2導電部10は光電変換部2の受光面と接触した第1電極4と光電変換部2の裏面上に設けられた第2気体発生部7とに接触するため、光電変換部2の受光面と平行な第2導電部の断面積を大きくしすぎると、光電変換部2の受光面の面積を小さくすることにつながる。また、光電変換部2の受光面に平行な第2導電部10の断面積を小さくしすぎると光電変換部2の受光面の電位と第2気体発生部7の電位との間に差が生じ、電解液を分解する電位差が得られなくなる場合もあり、第1気体または第2気体の発生効率の減少につながる場合もある。従って、光電変換部2の受光面と平行な第2導電部の断面積は、一定の範囲である必要がある。例えば、光電変換部2の受光面と平行な第2導電部の断面積(第2導電部が複数の場合、その断面積の総計)は、光電変換部2の受光面の面積を100%としたとき、0.1%以上10%以下とすることができ、好ましくは、0.5%以上8%以下、さらに好ましくは、1%以上6%以下とすることができる。
【0068】
また、第2導電部10は、光電変換部2を貫通するコンタクトホールに設けられてもよい。このことにより、第2導電部10を設けることによる光電変換部2の受光面の面積の減少をより小さくすることができる。また、このことにより、光電変換部2の受光面と第2気体発生部7との間の電流経路を短くすることができ、より効率的に第2気体を発生させることができる。また、このことにより、光電変換部2の受光面と平行な第2導電部10の断面積を容易に調節することができる。
また、第2導電部10が設けられたコンタクトホールは、1つまたは複数でもよく、円形の断面を有してもよい。また、光電変換部2の受光面と平行なコンタクトホールの断面積(コンタクトホールが複数の場合、その断面積の総計)は、光電変換部2の受光面の面積を100%としたとき、0.1%以上10%以下とすることができ、好ましくは、0.5%以上8%以下、さらに好ましくは、1%以上6%以下とすることができる。
【0069】
第2導電部10の材料は、導電性を有しているものであれば特に制限されない。導電性粒子を含有するペースト、例えばカーボンペースト、Agペースト等をスクリーン印刷法、インクジェット法等で塗布し乾燥もしくは焼成する方法や、原料ガスを用いたCVD法等により製膜する方法、PVD法、蒸着法、スパッタ法、ゾルゲル法、電気化学的な酸化還元反応を利用した方法等が挙げられる。
【0070】
8.気体流路
気体流路17は、第1気体発生部8および第2気体発生部7のうち少なくとも一方と光電変換部2との間に設けられる。また、気体流路17は、第1気体発生部8で発生させた第1気体または第2気体発生部7で発生させた第2気体を気体排出口へと導通させる。また、気体流路17は、気体が導通することができる空洞であり、電解液で満たされてもよく、電解液で満たされなくてもよい。
気体流路17は、発生させた第1気体または第2気体を導通させることができれば、特に限定されないが、例えば、第1気体発生部8または第2気体発生部7と光電変換部2との間に形成された空洞部や気体導通部21が有する空洞部であってもよい。なお、気体導通部21についての説明は後述する。
気体流路17を設けることにより、第1気体の第1気体発生部8における滞留または第2気体の第2気体発生部7における滞留を抑制することができる。このことを図面を使って説明する。
【0071】
図10および図12は、図4のような断面を有する気体製造装置を斜めに設置し、電解液チェンバー15に電解液25を満たし、受光面側から光を照射したときの概略断面図である。なお、図10は、図1に示した気体製造装置23の一点鎖線B−Bの概略断面図に対応し、図12は、図1に示した気体製造装置23の点線C−Cの概略断面図に対応している。また、図11は、図10の点線で囲んだ範囲Eの拡大図であり、図13は、図12の点線で囲んだ範囲Fの拡大図である。
【0072】
図10および図12に示した気体製造装置に含まれる光電変換部2に光を照射すると、光電変換部2の受光面と裏面との間に電位差が生じ、前記受光面と電気的に接続した第2気体発生部7と前記裏面と電気的に接続した第1気体発生部8の間にも電位差が生じる。この電位差により、電解液25の分解反応が生じ、第1気体発生部8において第1気体が発生し、第2気体発生部7において第2気体が発生する。発生した第1気体または第2気体である発生気体27には、図11または図13のようにその浮力により上昇し、第1気体発生部8または第2気体発生部7の隙間を導通し、気体流路17に流入させることができる。気体流路17に流入した発生気体27は、気体流路17を導通し、第1気体排出口20および第2気体排出口19から気体製造装置23の外部に取り出すことができ、回収することができる。なお、図10〜13に示した気体製造装置23の場合、気体流路17は、気体導通部21に含まれている。
【0073】
気体流路17は、図10〜13のように気体導通部21に含まれてもよいが、例えば、図3に示した気体製造装置23の断面図のように、第1気体発生部8と光電変換部2間または第2気体発生部7と光電変換部2との間に形成された溝状の空洞部であってもよい。図3のような気体製造装置の場合、気体導通部21は形成されず、気体流路17は、例えば、光電変換部2、絶縁部11、第1気体発生部8または第2気体発生部7に溝状に形成された空洞部であってもよい。また、この空洞部は、第1気体排出口20または第2気体排出口19に繋がるように形成されてもよい。
【0074】
また、例えば、図5のようにこのような第1気体排出口20または第2気体排出口19に繋がる溝状に形成された空洞部は、気体導通部21に設けられていてもよい。
図14は、図5のような断面を有する気体製造装置を斜めに設置し、電解液チェンバー15に電解液25を満たし、受光面側から光を照射したときの概略断面図である。なお、図14は、図1に示した気体製造装置23の一点鎖線B−Bの概略断面図に対応している。また、図15は、図14の点線で囲んだ範囲Gの拡大図である。
図14のような気体製造装置23の場合、第1気体発生部8で発生した発生気体27は、図15のようにその浮力により上昇し、第1気体発生部8の隙間を導通し、気体流路17に流入させることができる。気体流路17に流入した発生気体27は、気体流路を導通し、第1気体排出口20から気体製造装置23の外部に取り出すことができ、回収することができる。
また、溝状の気体流路17は、図5、14のように気体導通部21の端部から第1気体排出口20に向かうように設けることができる。又、同様に気体導通部21の端部から第2気体排出口19に向かうように設けることができる。このことにより、気体回収効率をより高めることができる。溝状の気体流路17の断面形状は、層の強度の点から円形もしくは円弧形とするのが望ましいが、第1気体発生部8または第2気体発生部7から回収された気体を第1気体排出口20または第2気体排出口19まで円滑に送達することが可能であれば特に限定はしない。
【0075】
また、気体流路17は、光電変換部2の裏面と第1気体発生部8との間および光電変換部2の裏面と第2気体発生部7との間にそれぞれ設けることができ、この2つの気体流路17は、お互いに導通させないことができる。このことにより、第1気体発生部8と第2気体発生部7とでそれぞれ発生させた気体を混合させずに回収することができる。第1気体発生部8と前記裏面との間の気体流路17および第2気体発生部7と前記裏面との間の気体流路17をお互いに導通させない手段は特に限定されないが、例えば、2つの気体流路17の間に隔壁13または絶縁部11を設けることにより、導通させないことができる。
【0076】
また、例えば、図9のように第2気体発生部7と第1気体発生部8がそれぞれ光電変換部2の受光面側と裏面側に設けられている場合、気体流路17は、第1気体発生部8と光電変換部2の裏面との間に設けることができる。
図16は、図9のような断面を有する気体製造装置を斜めに設置し、電解液チェンバー15に電解液25を満たし、受光面側から光を照射したときの概略断面図である。また、図17は、図16の点線で囲んだ範囲Jの拡大図である。
図16のような気体製造装置23の場合、第1気体発生部8で発生した発生気体27は、図17のようにその浮力により上昇し、第1気体発生部8の隙間を導通し、気体流路17に流入させることができる。気体流路17に流入した発生気体27は、気体流路17を導通し、第1気体排出口20から気体製造装置23の外部に取り出すことができ、回収することができる。なお、第2気体発生部7で発生した発生気体27は、その浮力により第2気体発生部7から気泡として脱離することができ、第2気体排出口19から回収することができる。
【0077】
気体流路17は、親水性または疎水性の内壁を有することができる。気体流路17が電解液で満たされた場合であって、気体流路17の内壁が親水性の場合、気泡として導通する発生気体27は、気体流路17の内壁に吸着しにくく、気体流路17を導通させることができる。このことにより、発生気体27を第1気体排出口20または第2気体排出口19から応答性よく回収することができる。この場合、発生気体27が気泡として導通しやすいように、気体流路の直径を大きくすることができ、また、気体流路を溝状にすることができる。
【0078】
また、気体流路17が電解液で満たされた場合であって、気体流路17の内壁が疎水性の場合、発生した発生気体27が電解液を押し出し気体流路17を発生気体27で満たすことができる。気体流路17が発生気体27で満たされると、第1気体発生部8または第2気体発生部7で発生した発生気体27は、気体流路を満たした発生気体27中を導通することができ、迅速に第1気体排出口20または第2気体排出口19から回収することができる。この場合、気体流路17の容積を小さくすることができる。このことにより、気体流路17を迅速に発生気体27で満たすことができ、発生気体をより迅速に回収することができる。
【0079】
また、気体流路17の内壁が疎水性であって、気体流路17が電解液で満たされていない場合、第1気体発生部8または第2気体発生部7で発生した発生気体27は、気体流路17の空洞を導通して迅速に回収することができる。例えば、疎水性多孔質膜で気体導通部21を形成することにより、このような気体流路17を形成することができる。
【0080】
9.気体導通部
気体導通部21は、第1気体発生部8および第2気体発生部7のうち少なくとも一方と光電変換部2との間に設けることができる。また、気体導通部21は、気体流路17を有する。
気体導通部21は、気体流路17を有すれば特に限定されないが、例えば、多孔質材料により構成することができる。この場合、多孔質材料の孔が気体流路17となる。また、気体導通部21は、格子状構造、微小な粒子を充填させた構造とすることもできる。この場合これらの構造の隙間が気体流路17となる。また、気体導通部21は、図5、図14、図15のように溝状の気体流路17を形成したものであってもよい。
【0081】
気体導通部21は、導電性を有しても有さなくてもよいが、導電性を有することが好ましい。気体導通部21が導電性を有することが好ましい。導電性を有する気体導通部21を光電変換部2と第2気体発生部7との間に設けることにより、光電変換部2の受光面と第2気体発生部7とをほぼ同じ電位とすることができる。また、導電性を有する気体導通部21を光電変換部2と第1気体発生部8との間に設けることにより、光電変換部2の裏面と第1気体発生部8とをほぼ同じ電位とすることができる。
【0082】
気体導通部21が導電性を有さない場合、気体導通部21を貫通する第2コンタクトホールに第3導電部22を形成し、光電変換部2の裏面と第1気体発生部8とを電気的に接続することができる。例えば、図6に示したような断面を有する気体製造装置とすることができる。このことにより、気体導通部21が導電性を有さない場合でも、光電変換部2の裏面と第1気体発生部8の電位をほぼ同じにすることができ、効率よく電解液を分解することができる。また、気体導通部21が絶縁性を有する場合、図6のように第2気体発生部7と光電変換部2との間の絶縁部11を省略することができる。
【0083】
また、気体導通部21は、親水性の表面を有する材料から形成されてもよく、また、親水性の表面を有するように表面処理されていてもよい。このことにより、親水性の内壁を有する気体流路17を設けることができるからである。また、気体導通部21は、疎水性の表面を有する材料から形成されてもよく、また、疎水性の表面を有するように表面処理されていてもよい。このことにより、疎水性の内壁を有する気体流路17を設けることができるからである。
【0084】
また、第1気体発生部8および第2気体発生部7が前記裏面上に設けられた気体製造装置において、気体導通部21は、光電変換部2の裏面と第1気体発生部8および第2気体発生部7との間に設けられ、かつ、電解液に対する耐食性および遮液性を有してもよい。また、気体導通部21は、光電変換部2を覆うように設けられてもよい。このことにより、光電変換部2と電解液の接触を防止することができ、光電変換部2に電解液により腐食されやすい光電変換材料や電解液が流入することにより光電変換効率が低下するような光電変換材料を用いることができる。
【0085】
気体導通部21としては、例えば、導電性のあるカーボン製やアルミニウム、タングステン、鉄等の金属製の多孔質材料を用いることが好ましい。しかし、図6のように第3導電部22を設けることにより、ポリエチレン、エチレンプロピレンゴム(EPR)等の非導電性の高分子もしくはアルミナ、ジルコニア等のセラミック製の多孔質材料を用いることも可能である。また、気体導通部21はポリビニリデンフルオライド(PVDF)からなるMillipore社製Durapel膜(登録商標)等の超疎水性多孔質膜を使用することも可能である。これにより、気体導通部21が有する気体流路17内への電解液の浸透を遮断し、気体流路17内を電解液で満たされていない状態とすることができる。このことにより、第1気体発生部8で発生した第1気体または第2気体発生部7で発生した第2気体を電解液のない気体流路17を導通させることができ、気体回収をより効率よく行うことが可能となる。
【0086】
また、気体導通部21としては、例えば、非導電性の金属酸化物や高分子又は天然由来の材料であってもよい。前記金属酸化物の多孔質材料の例は、周期表の2、3、4 、12、13 及び14族の元素の酸化物のような多孔質酸化物であり、例えばアルミニウム、ジルコニウム、ケイ素、マグネシウム及びそれらの混合物の酸化物、特に陽極酸化軽金属、特にアルミニウム又はその合金である。多孔質合成材料は、例えばフッ素系樹脂や、ポリエチレン、エチレンプロピレンゴム(EPR)、多孔質ポリアミド充填剤である。特にポリアミド充填剤はポリアミド−12 、ポリアミド−6 又はコーポリアミド−6/12 充填剤であり、商品名Orgasol(登録商標) でAtofina社により販売されている。更に、天然由来の多孔質材料としては、白亜、軽石、焼成クレー、素焼きセラミック、石膏、コンクリート、キーゼルグール、シリカゲル、ゼオライト、及び毛等も使用可能である。
【0087】
10.第1気体発生部
第1気体発生部8は、光電変換部2の裏面の上に設けられてもよい。このことにより、第1気体発生部8は光電変換部2に入射する光を遮ることはない。また、第1気体発生部8は、光電変換部2の裏面と電気的に接続することができる。このことにより、光電変換部2の裏面の電位と第1気体発生部8の電位をほぼ同じとすることができ、光電変換部2で生じた起電力により電解液を分解し、第1気体を発生させることができる。また、第1気体発生部8は、第2気体発生部7と接触しないように設けることができる。このことにより、第1気体発生部8と第2気体発生部7との間にリーク電流が流れるのを防止することとができる。さらに、第1気体発生部8は、電解液チェンバー15に露出してもよい。このことにより、第1気体発生部8の表面で電解液から第1気体を発生させることができる。また、第1気体発生部8は複数設けられてもよい。
また、第1気体発生部8は、水素発生部および酸素発生部のいずれか一方とすることができる。このことにより、第1気体発生部において電解液に含まれる水を分解し、水素または酸素を発生させることができる。
【0088】
11.第2気体発生部
第2気体発生部7は、光電変換部2の裏面の上に設けられてもよい。このことにより、第2気体発生部7は光電変換部2に入射する光を遮ることはない。また、第2気体発生部7は、光電変換部2の受光面と第1導電部9を介して電気的に接続する。このことにより、光電変換部2の受光面の電位と第2気体発生部7の電位をほぼ同じにすることができ、光電変換部2で生じた起電力により電解液を分解し第2気体を発生させることができる。また、第2気体発生部7は、絶縁部11を介して光電変換部2の裏面の上に設けられてもよい。また、第2気体発生部7は、第1気体発生部8と接触しないように設けることができる。このことによりリーク電流が流れることを防止することができる。また、第2気体発生部7は、電解液チェンバー15に露出してもよい。このことにより、第2気体発生部7の表面で電解液から第2気体を発生させることができる。また、第2気体発生部8は複数設けられてもよい。
また、第2気体発生部8は、水素発生部および酸素発生部のいずれか一方とすることができる。このことにより、第2気体発生部において電解液に含まれる水を分解し、水素または酸素を発生させることができる。
【0089】
第1気体発生部8および第2気体発生部7は、気体透過性を有してもよい。このことにより、第1気体発生部8で発生させた第1気体または第2気体発生部7で発生させた第2気体は、その浮力により上昇し、気体流路17に流入することができる。このことにより、第1気体または第2気体の滞留を抑制することができる。
気体透過性を持たせる方法は、特に限定されないが、多孔質材料を用いて第1気体発生部8および第2気体発生部7を形成してもよいし、第1気体発生部8および第2気体発生部7がそれぞれ隙間を有するようにまばらに設けてもよい。
また、第1気体発生部8および第2気体発生部7が気体透過性を有さない場合、後述する気体支流路29を形成することにより、気体透過性を持たせてもよい。
【0090】
多孔質材料からなる第1気体発生部および第2気体発生部としては、例えば、カーボンクロス、カーボンペーパー等のカーボン多孔質体またはアルミニウム、チタン、ニオブ、タンタル等を主とする多孔質の弁金属等を担体として用いて、触媒を担持法により担持させたものが挙げられる。
【0091】
第1気体発生部8および第2気体発生部7は、親水性の表面を有してもよい。このことにより、第1気体発生部8および第2気体発生部7への電解液の浸透性を向上させることができる。その結果、電解液から第1気体および第2気体を発生させる反応を活性化することができ、気体発生効率を向上することができる。
【0092】
また、第1気体発生部8および第2気体発生部7が親水性の表面を有することにより、気泡として発生した第1気体または第2気体が、第1気体発生部8または第2気体発生部7の表面に吸着しにくくすることができる。つまり、気泡と第1気体発生部8または第2気体発生部7との間に電解液が入りやすくなるため、気泡が吸着しにくくなる。その結果、発生した気泡は、その浮力により上昇し、気体流路に流入しやすくすることができる。従って、発生した第1気体の第1気体発生部8における滞留または第2気体の第2気体発生部7における滞留を抑制することができ、発生した第1気体または第2気体を気体流路17を経由して迅速に回収することができる。
【0093】
第1気体発生部8および第2気体発生部7に親水性の表面を持たせる方法は、特に限定されないが、例えば、親水性の表面を有する材料を用いて第1気体発生部8および第2気体発生部7を形成してもよく、また、親水化処理を施して第1気体発生部8および第2気体発生部7が親水性の表面を有するようにしてもよい。親水化処理は、例えば、イオンスパッタリングなどにより施すことが可能である。
【0094】
また、図18は、本発明の一実施形態の気体製造装置の概略平面図である。図19は、本発明の一実施形態の気体製造装置の概略断面図であり、図19の点線K−Kの断面図に対応している。第1気体発生部8と第2気体発生部7は、光電変換部2の裏面の上に並列に配置されてもよい。さらに、第1気体発生部8と第2気体発生部7のうち少なくとも一方は複数であり、交互に配置されてもよい。例えば、図18、19のような構成を有してもよい。このことにより、光電変換部2の受光面と第2気体発生部7との間の電流経路をより短くすることができ、より効率的に第2気体を発生させることができる。このことにより第1気体発生部8と第2気体発生部9とが隣接する部分が増加し、第1気体発生部8付近の電解液と第2気体発生部9付近の電解液との間のイオンがイオン伝導する距離を短くすることができる。また、このイオンがイオン伝導する電解液またはイオン交換体のイオン伝導経路が多くすることができ、イオン伝導領域の比率を大きくすることができる。この結果、伝導イオンの濃度を小さくすることができる。イオンは、例えばプロトンである。
このことにより、イオンが第1気体発生部8付近の電解液と第2気体発生部9付近の電解液において移動しやすくなり、イオン濃度の不均衡を小さくすることができる。その結果、気体発生速度の低下を防止することができる。
【0095】
また、第1気体発生部8および第2気体発生部7は、それぞれ光電変換部2の裏面上および光電変換部2の受光面上に設けてもよい。この構成により、第2導電部10を省略することができる。本実施形態の気体製造装置は、例えば、図16のような断面を有してもよい。
図16のような断面を有する気体製造装置は、受光面と裏面を有する光電変換部2を有し、前記裏面上に気体導通部21が積層され、さらにその上に第1気体発生部8が積層されている。例えば、図16に示すように受光面側から順に第2気体発生部7、光電変換部2、気体導通部21、第1気体発生部8の順に積層され、受光面を水平面に対して傾けて設置される際、第1気体発生部8が光電変換部2の下側となる構造を取る。なお、図16に示すような気体製造装置は、光電変換部2、第2気体発生部7、第1気体発生部8、および気体導通部21、隔壁13、透光性基板1、外箱16、第1気体排出口20、第2気体排出口19、給水口18により構成され、構成要素は他の実施形態と同様のものを使用することが可能である。ただし、第2気体発生部7については、受光面側に配置するため光電変換部2にまで光を透過させる必要がある。そのため触媒を半導電体太陽電池からなる光電変換部2に直接、またはSnO2、ZnO、TiO2、In2O3またはITO(In2O3―SnO2)、IZO(InSnO2―ZnO)等の透明導電性を有する第1電極4に、イオンスパッタリング法、スプレー法、CVD法、ゾル―ゲル法、電解析出等の方法を用いて担持させることが好ましい。
【0096】
12.水素発生部
水素発生部は、電解液からH2を発生させる部分であり、第1気体発生部8および第2気体発生部7のうちどちらか一方とすることができる。また、水素発生部は、電解液からH2が発生する反応の触媒(水素発生触媒)を含んでもよい。このことにより、電解液からH2が発生する反応の反応速度を大きくすることができる。水素発生部は、電解液からH2が発生する反応の触媒のみからなってもよく、この触媒が担体に担持されたものであってもよい。また、水素発生部は、光電変換部2の受光面の面積より大きい触媒表面積を有してもよい。このことにより、電解液からH2が発生する反応をより速い反応速度とすることができる。また、水素発生部は、触媒が担持された多孔質の導電体であってもよい。このことにより、触媒表面積を大きくすることができる。また、光電変換部2の受光面または裏面と水素発生部に含まれる触媒との間に電流が流れることによる電位の変化を抑制することができる。また、この水素発生部を第1気体発生部8としたとき、第2電極を省略しても光電変換部2の裏面と触媒との間に電流が流れることによる電位の変化を抑制することができる。
【0097】
電解液からH2が発生する反応の触媒(水素発生触媒)は、2つのプロトンと2つの電子から1分子の水素への変換を促進する触媒であり、化学的に安定であり、水素生成過電圧が小さい材料を用いることができる。例えば、水素に対して触媒活性を有するPt、Ir、Ru、Pd、Rh、Os、Au等の白金族金属およびその合金あるいは化合物、水素生成酵素であるヒドロゲナーゼの活性中心を構成するFe,Ni,Seの合金あるいは化合物、およびこれらの組み合わせ等を好適に用いることが可能である。中でもPtおよびPtを含有するナノ構造体は水素発生過電圧が小さく好適に用いることが可能である。光照射により水素発生反応が確認されるCdS,CdSe,ZnS,ZrO2などの材料を用いることもできる。なお、水素発生触媒は水素発生の理論過電圧が低いものを用いることが好ましいが、前記過電圧が低いものであれば特に限定はしない。
【0098】
水素発生触媒を直接光電変換部2の裏面などに担持することは可能であるが、反応面積をより大きくし気体生成速度を向上させるために、触媒を導電体に担持することができる。触媒を担持する導電体としては、金属材料、炭素質材料、導電性を有する無機材料等が挙げられる。
【0099】
金属材料としては、電子伝導性を有し、酸性雰囲気下で耐腐食性を有する材料が好ましい。具体的には、Au、Pt、Pd等の貴金属、Ti、Ta、W、Nb、Ni、Al、Cr、Ag、Cu、Zn、Su、Si等の金属並びにこれらの金属の窒化物および炭化物、ステンレス鋼、Cu−Cr、Ni−Cr、Ti−Pt等の合金が挙げられる。金属材料には、Pt、Ti、Au、Ag、Cu、Ni、Wからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を含むことが、他の化学的な副反応が少ないという観点から、より好ましい。これら金属材料は、比較的電気抵抗が小さく、面方向に電流を取り出しても電圧の低下を抑制することができる。また、Cu、Ag、Zn等の酸性雰囲気下での耐腐食性に乏しい金属材料を用いる場合には、Au、Pt、Pd等の耐腐食性を有する貴金属および金属、カーボン、グラファイト、グラッシーカーボン、導電性高分子、導電性窒化物、導電性炭化物、導電性酸化物等によって耐腐食性に乏しい金属の表面をコーティングしてもよい。
【0100】
炭素質材料としては、化学的に安定で導電性を有する材料が好ましい。例えば、アセチレンブラック、バルカン、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、VGCF、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、フラーレン等の炭素粉末や炭素繊維が挙げられる。
【0101】
導電性を有する無機材料としては、例えば、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2、酸化アンチモンドープ酸化スズが挙げられる。
【0102】
なお、導電性高分子としては、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン等が挙げられ、導電性窒化物としては、窒化炭素、窒化ケイ素、窒化ガリウム、窒化インジウム、窒化ゲルマニウム、窒化チタニウム、窒化ジルコニウム、窒化タリウム等が挙げられ、導電性炭化物としては、炭化タンタル、炭化ケイ素、炭化ジルコニウム、炭化チタニウム、炭化モリブデン、炭化ニオブ、炭化鉄、炭化ニッケル、炭化ハフニウム、炭化タングステン、炭化バナジウム、炭化クロム等が挙げられ、導電性酸化物としては、酸化スズ、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化アンチモンドープ酸化スズ等が挙げられる。
【0103】
水素発生触媒を担持する導電体の構造としては、板状、箔状、棒状、メッシュ状、ラス板状、多孔質板状、多孔質棒状、織布状、不織布状、繊維状、フェルト状が好適に使用できる。また、フェルト状電極の表面を溝状に圧着した溝付き導電体は、電気抵抗と電極液の流動抵抗を低減できるので好適である。
【0104】
13.酸素発生部
酸素発生部は、電解液からO2を発生させる部分であり、第1気体発生部8および第2気体発生部7のうちどちらか一方とすることができる。また、酸素発生部は、電解液からO2が発生する反応の触媒(酸素発生触媒)を含んでもよい。このことにより、電解液からO2が発生する反応の反応速度を大きくすることができる。また、酸素発生部は、電解液からO2が発生する反応の触媒のみからなってもよく、この触媒が担体に担持されたものであってもよい。また、酸素発生部は、光電変換部2の受光面の面積より大きい触媒表面積を有してもよい。このことにより、電解液からO2が発生する反応をより速い反応速度とすることができる。また、酸素発生部は、触媒が担持された多孔質の導電体であってもよい。このことにより、触媒表面積を大きくすることができる。また、光電変換部2の受光面または裏面と酸素発生部に含まれる触媒との間に電流が流れることによる電位の変化を抑制することができる。また、この水素発生部を第1気体発生部8としたとき、第2電極を省略しても光電変換部2の裏面と触媒との間に電流が流れることによる電位の変化を小さくすることができる。さらに、酸素発生部は、酸素発生触媒としてMn、Ca、Zn、CoおよびIrのうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0105】
電解液からO2が発生する反応の触媒(酸素発生触媒)は、2つの水分子から1分子の酸素および4つのプロトンと4つの電子への変換を促進する触媒であり、化学的に安定であり、酸素発生過電圧が小さい材料を用いることができる。例えば、光を用い水から酸素発生を行う反応を触媒する酵素であるPhotosystem IIの活性中心を担うMn,Ca,Zn,Coを含む酸化物あるいは化合物や、Pt,RuO2,IrO2等の白金族金属を含む化合物や、Ti,Zr,Nb,Ta,W,Ce,Fe,Ni等の遷移金属を含む酸化物あるいは化合物、および上記材料の組み合わせ等を用いることが可能である。中でも酸化イリジウム、酸化マンガン、酸化ルテニウム、酸化コバルト、リン酸コバルトは、過電圧が小さく酸素発生効率が高いことから好適に用いることができる。
【0106】
酸素発生触媒を直接光電変換部2の受光面または裏面に担持することは可能であるが、反応面積をより大きくし気体生成速度を向上させるために、触媒を導電体に担持することができる。触媒を担持する導電体としては、金属材料、炭素質材料、導電性を有する無機材料等が挙げられる。これらの説明は、「12.水素発生部」に記載した水素発生触媒についての説明が矛盾がない限り当てはまる。
【0107】
水素発生触媒および酸素発生触媒の単独の触媒活性が小さい場合、助触媒を用いることも可能である。例えば、Ni,Cr,Rh,Mo,Co,Seの酸化物あるいは化合物などが挙げられる。
【0108】
なお、水素発生触媒、酸素発生触媒の担持方法は、導電体もしくは半導体に直接塗布する方法や、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等のPVD法、CVD法等の乾式塗工法、電析法など、材料により適宜その手法を変え作製ことが可能である。光電変換部と触媒の間に適宜導電物質を担持することが可能である。また水素発生および酸素発生のための触媒活性が十分でない場合、金属やカーボン等の多孔質体や繊維状物質、ナノ粒子等に担持することにより反応表面積を大きくし、水素及び酸素発生速度を向上させることが可能である。
【0109】
14.気体支流路
気体支流路29は、第1気体発生部8および第2気体発生部7のうちどちらか一方により形成され、かつ、気体流路17に繋がる。また、気体支流路29は、第1気体発生部で発生させた第1気体または第2気体発生部で発生させた第2気体を気体流路17へ導通させることができる。このことにより、第1気体または第2気体を迅速に気体流路17に流入させることができ、第1気体発生部8における第1気体の滞留および第2気体発生部7における第2気体の滞留を抑制することができる。
また、気体支流路29は、2つの第1気体発生部8の間に形成された隙間であってもよく、また、2つの第2気体発生部7の間に形成された隙間であってもよい。また、気体支流路29は、2つの帯状の第1気体発生部8の間に形成された隙間であってもよく、また、2つの帯状の第2気体発生部7の間に形成された隙間であってもよい。また、気体支流路29は、発生させた気泡が浮上する方向に対して垂直な方向に伸びるように形成されてもよい。
このことにより、第1気体発生部8または第2気体発生部7の気体流路17側と反対側の表面付近で発生した第1気体または第2気体を気体支流路29を導通させて気体流路17に流入させることができる。また、気体支流路29を備えることにより、第1気体発生部8または第2気体発生部7に金属板などの気体透過性を有さない材料を用いることができる。
このことを図面を用いて説明する。
【0110】
図20は、気体支流路29を有する気体製造装置を斜めに設置し、電解液チェンバー15に電解液25を満たし、受光面側から光を照射したときの概略断面図である。なお、図20は、図1に示した気体製造装置23の点線C−Cの断面図に対応している。また、図21は、図20の点線で囲んだ範囲Mの拡大図である。
第1気体発生部8または第2気体発生部7の気体流路17側と反対側の表面付近で発生した第1気体または第2気体の気泡は、図21のように気体支流路29に流入することができ、この気泡は、気体流路17に流入することができる。このことにより、発生した第1気体が第1気体発生部8に滞留することまたは第2気体が第2気体発生部7に滞留することを抑制することができる。
【0111】
また、図22は、図7のような断面を有する気体製造装置を斜めに設置し、電解液チェンバー15に電解液25を満たし、受光面側から光を照射したときの概略断面図である。なお、図22は、図1に示した気体製造装置23の点線C−Cの断面図に対応している。また、図23は、図22の点線で囲んだ範囲Nの拡大図である。
【0112】
気体支流路29は、第1開口31と第2開口32とを有し、第1開口31は、第1気体発生部8および第2気体発生部7のうちどちらか一方の気体流路17側の面に設けられ、第2開口32は、第1開口31が設けられた面と反対側の面に設けられ、第2開口29は、高さの異なる第1縁部33および第2縁部34を有し、第1縁部33は、第2縁部34より高い第2開口32の縁であり、第1縁部33において第1気体発生部において発生させた第1気体または第2気体発生部において発生させた第2気体を気体支流路29に流入させてもよい。このような構成を有することにより、第1気体発生部8または第2気体発生部7の気体流路17側と反対側の表面付近で発生した第1気体又は第2気体を気体支流路29に流入しやすくすることができる。図23を用いてより具体的に説明すると、第2気体発生部7の電解液25側を浮上する発生気体27は、より高い縁である第1縁部33にぶつかり、気体支流路29に流入することができる。
【0113】
第1縁部33と第2縁部34を形成する方法は特に限定されないが、例えば、図7、図22のように複数の第2気体発生部7を隙間を置いて設け、それぞれの第2気体発生部の電解液チェンバー側の面を第1縁部33と第2縁部34ができるように光電変換部2の裏面に対して傾斜させることができる。このように傾斜させることにより、傾斜の下側の角部が第2縁部34となり、傾斜の上側の角部が第1縁部33とすることができる。このことにより、発生気体が気泡として第2気体発生部7の表面に沿って上昇した際、該第2気体発生部7の上部に隣接する第2気体発生部7の第1縁部33に止められ、気泡は気体支流路29に流入する。このことにより、気泡は、気体支流路29を導通し気体流路17に流入することができる。そのため、発生気体がより上方に配置された第2気体発生部7の表面に滞留することを抑制することができる。
また、第1気体発生部8および第2気体発生部7に設ける傾斜角度は特に限定さらないが反応面における気体滞留を少量に抑えるためには、光電変換部2の裏面に対して30度以上とすることが望ましい。
【0114】
次に気体支流路29についてより具体的に説明する。
2つの第1気体発生部8および2つの第2気体発生部7は、それぞれ数百μm〜2mm程度の隙間を設けて積層される。この構造を取ることにより、第1気体発生部8または第2気体発生部7に金属板やSnO2、ITO等の透明導電性酸化被膜のような、電解液が透過しない非多孔質の導電性材料を用いることができる。また、第1気体発生部8または第2気体発生部7を多孔質材料を用いて形成する場合でも、多孔質材料が有する孔を介して発生気体27を気体流路17に流入させるだけではなく、電解液25と第1気体発生部8または第2気体発生部7の界面付近にわずかに滞留する発生気体27を気体支流路29を介して気体流路17に流入させ回収することも可能となる。
また、第1気体発生部8または第2気体発生部7のサイズに関して、1つの第1気体発生部8または第2気体発生部7の電解液との反応面がより小さくなるほど発生気体27の滞留を少なくすることが可能となるため、1つの第1気体発生部8または第2気体発生部7の縦方向の幅は2〜5cm程度とすることが好ましい。
【0115】
15.外箱
外箱16は、光電変換部2、第1気体発生部8、第2気体発生部7などを収容することができ、電解液チェンバー15を形成することができるものであれば特に限定されない。また、外箱16は天板14を有することができる。
外箱16は耐熱性、および耐食性を備えていることが望ましい。外箱16は例えばステンレス鋼等の鋼材または、ジルコニア、アルミナ等のセラミック、フェノール樹脂、メラミン樹脂(MF)、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂等の合成樹脂を用いることが好ましい。
【0116】
16.天板
天板14は、第1気体発生部8および第2気体発生部7の上に透光性基板1と対向するように設けることができる。また、天板14は、第1気体発生部8および第2気体発生部7と天板14との間に電解液チェンバーが設けられるように設けることができる。また、天板14は、外箱16の一部であってもよい。
【0117】
また、天板14は、電解液チェンバーを構成し、生成した第1気体および第2気体を閉じ込めるために構成される材料であり、機密性が高い物質が求められる。透明なものであっても不透明なものであっても特に限定されるものではないが、第1気体および第2気体が発生していることを視認できる点においては透明な材料であることが好ましい。透明な天板としては特に限定されず、例えば石英ガラス、パイレックス(登録商標)、合成石英板等の透明なリジッド材、あるいは透明樹脂板、透明樹脂フィルムなどを挙げることができる。中でも、ガスの透過性がなく、化学的物理的に安定な物質である点でガラス材を用いることが好ましい。
【0118】
17.隔壁
隔壁13は、第1気体発生部8と天板14との間の電解液チェンバーおよび第2気体発生部7と天板14との間の電解液チェンバーとを仕切るように設けることができる。また、隔壁13は、光電変換部2の裏面と第1気体発生部8との間に設けられた気体導通部21および光電変換部2の裏面と第2気体発生部7との間に設けられた気体導通部21を仕切るように設けることができる。
このことにより、第1気体発生部8で発生させた第1気体および第2気体発生部7で発生させた第2気体が混合することを防止することができ、第1気体および第2気体を分離して回収することができる。
また、隔壁13は、イオン交換体を含んでもよい。このことにより、第1気体発生部8と天板14との間の電解液チェンバーの電解液と第2気体発生部7と天板14との間の電解液チェンバーの電解液でアンバランスとなったイオン濃度を一定に保つことができる。つまり、イオンが隔壁9を介してイオン移動が起こることによりイオン濃度のアンバランスを解消することができる。イオンは、例えば、プロトンである。
【0119】
電解液に含まれる水から水素および酸素を発生させる場合、水素発生量および酸素発生量の割合は、2:1のモル比であり、第1気体発生部8と第2気体発生部7により、気体発生量が異なる。このため、装置内の含水量を一定量にする目的から、隔壁13は電解液を透過する材料であることが好ましい。隔壁13は、例えば、多孔質ガラス、多孔質ジルコニア、多孔質アルミナ等の無機膜あるいはイオン交換体を用いることが可能である。
イオン交換体としては、当該分野で公知のイオン交換体をいずれも使用でき、プロトン伝導性膜、カチオン交換膜、アニオン交換膜等を使用できる。
【0120】
プロトン伝導性膜の材質としては、プロトン伝導性を有しかつ電気的絶縁性を有する材質であれば特に限定されず、高分子膜、無機膜又はコンポジット膜を用いることができる。
【0121】
高分子膜としては、例えば、パーフルオロスルホン酸系電解質膜である、デュポン社製のナフィオン(登録商標)、旭化成社製のアシプレックス(登録商標)、旭硝子社製のフレミオン(登録商標)等の膜や、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン等の炭化水素系電解質膜等が挙げられる。
【0122】
無機膜としては、例えば、リン酸ガラス、硫酸水素セシウム、ポリタングストリン酸、ポリリン酸アンモニウム等からなる膜が挙げられる。コンポジット膜としては、スルホン化ポリイミド系ポリマー、タングステン酸等の無機物とポリイミド等の有機物とのコンポジット等からなる膜が挙げられ、具体的にはゴア社製のゴアセレクト膜(登録商標)や細孔フィリング電解質膜等が挙げられる。さらに、高温環境下(例えば、100℃以上)で使用する場合には、スルホン化ポリイミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、スルホン化ポリベンゾイミダゾール、ホスホン化ポリベンゾイミダゾール、硫酸水素セシウム、ポリリン酸アンモニウム等が挙げられる。
【0123】
カチオン交換膜としては、カチオンを移動させることができる固体高分子電解質であればよい。具体的には、パーフルオロカーボンスルフォン酸膜や、パーフルオロカーボンカルボン酸膜等のフッ素系イオン交換膜、リン酸を含浸させたポリベンズイミダゾール膜、ポリスチレンスルホン酸膜、スルホン酸化スチレン・ビニルベンゼン共重合体膜等が挙げられる。
【0124】
支持電解質溶液のアニオン輸率が高い場合には、アニオン交換膜の使用が好ましい。アニオン交換膜としては、アニオンの移動可能な固体高分子電解質を使用できる。具体的には、ポリオルトフェニレンジアミン膜、アンモニウム塩誘導体基を有するフッ素系イオン交換膜、アンモニウム塩誘導体基を有するビニルベンゼンポリマー膜、クロロメチルスチレン・ビニルベンゼン共重合体をアミノ化した膜等が挙げられる。
水素発生、酸素発生がそれぞれ水素発生触媒、酸素発生触媒にて選択的に行われ、これに伴うイオンの移動が起こる場合、必ずしもイオン交換のための特殊な膜等の部材を配置する必要はない。ガスを物理的に隔離することのみの目的であれば、後述のシール材に記載の紫外線硬化性樹脂あるいは熱硬化性樹脂を用いることが可能である。
【0125】
18.シール材
シール材は、透光性基板1と天板14または外箱16を接着し、気体製造装置23内を流れる電解液および気体製造装置23内で生成した第1気体および第2気体を密閉するための材料である。シール材は、例えば、紫外線硬化性接着剤、熱硬化性接着剤等が好適に使用されるが、その種類は限定されるものではない。紫外線硬化性の接着剤としては、200〜400nmの波長を持つ光を照射することにより重合が起こり光照射後数秒で硬化反応が起こる樹脂であり、ラジカル重合型とカチオン重合型に分けられ、ラジカル重合型樹脂としてはアクリルレート、不飽和ポリエステル、カチオン重合型としては、エポキシ、オキセタン、ビニルエーテル等が挙げられる。また熱硬化性の高分子接着剤としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、熱硬化性ポリイミド等の有機樹脂が挙げられる。熱硬化性の高分子接着剤は、熱圧着時に圧力を掛けた状態で加熱重合し、その後、加圧したまま、室温まで冷却することにより、各部材を良好に接合させるため、締め付け部材等を要しない。また、有機樹脂に加えて、ガラス基板に対して密着性の高いハイブリッド材料を用いることが可能である。ハイブリッド材料を用いることによって、弾性率や硬度等の力学的特性が向上し、耐熱性や耐薬品性が飛躍的に向上する。ハイブリッド材料は、無機コロイド粒子と有機バインダ樹脂とから構成される。例えば、シリカなどの無機コロイド粒子と、エポキシ樹脂、ポリウレタンアクリレート樹脂やポリエステルアクリレート樹脂などの有機バインダ樹脂とから構成されるものが挙げられる。
【0126】
ここではシール材と記しているが、透光性基板1と天板14または外箱16を接着させる機能を有するものであれば限定されず、樹脂製あるいは金属製のガスケットを用い外部からネジ等の部材を用いて物理的に圧力を加え機密性を高める方法等を適宜用いることも可能である。
【0127】
19.電解液チェンバー
電解液チェンバー15は、第1気体発生部8と天板14との間の空間および第2気体発生部7と天板14との間の空間とすることができる。また、電解液チェンバー15は、隔壁13により仕切ることができる。
【0128】
20.給水口、第1気体排出口および第2気体排出口
給水口18は、気体製造装置23に含まれるシール材または外箱16の一部に開口を作ることにより設けることができる。給水口18は、第1気体及び第2気体へと分解された電解液を補充するために配置され、その配置箇所および形状は、原料となる電解液が効率よく気体製造装置へ供給されさえすれば、特に限定されるものではないが、流動性および供給の容易性の観点から、気体製造装置下部に設置することが好ましい。
【0129】
また、第1気体排出口20および第2気体排出口19は、給水口18を下側にして気体製造装置23を設置したとき、気体製造装置23の上側の部分のシール材または外箱16に開口を作ることにより設けることができる。また、第1気体排出口20と第2気体排出口19は、それぞれ隔壁13を挟んで第1気体発生部20側と第2気体発生部19側に設けることができる。また、第1気体排出口20および第2気体排出口19は、気体流路17の一端と隣接して設けることもできる。また、外部に設置した吸引機等と第1気体排出口20または第2気体排出口19を接続することにより気体回収の効率を高めることも可能である。
【0130】
このように給水口18、第1気体排出口20および第2気体排出口19を設けることにより、気体製造装置23を光電変換部2の受光面が上向きの状態で水平面に対し傾斜し、給水口18が下側になり第1気体排出口20および第2気体排出口19が上側になるように設置することができる。このように設置することにより、給水口18から電解液を気体製造装置23内に導入し、電解液チェンバー15を電解液で満たすことができる。この状態で、気体製造装置23に光を入射させることにより、第1気体発生部および第2気体発生部でそれぞれ、連続して第1気体および第2気体を発生させることができる。この発生した第1気体および第2気体は、隔壁13により分離することができ、第1気体及び第2気体は気体流路17を導通し、第1気体排出口20および第2気体排出口19から回収することができる。
【0131】
21.電解液
電解液は、電解質を含む水溶液であり、例えば、0.1MのH2SO4電解液、0.1Mリン酸カリウム緩衝液などである。
【0132】
実施例
本発明を以下に示す実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
図4のような断面を有する気体製造装置を次の条件にて作製した。
光電変換部2にはn型ドープしたGaAsおよびGaInP2と、p型ドープしたGaAsおよびGaInP2と積層させた化合物半導電体太陽電池を使用した。透光性基板1に光透過性および耐熱性、耐腐食性に優れる石英ガラス基板を使用した。作製方法としては、二酸化スズ(SnO2)からなる第1電極4が被膜されたガラス基板の表面にMOCVD法(有機金属気相堆積法)により、p型GaInP2を膜厚0.1μm、更にその上にp型GaAsを膜厚3.0μm、n型GaAsを膜厚0.1μm、n型GaInP2を0.05μmで順に堆積させた。その後、n型GaInP2層の表面に基板温度250℃でスパッタリング法により0.1μmの膜厚でITOを積層させた。以上により透光性基板1上にGaAsのpn接合の両側をGaInP2で挟んだヘテロ構造の半導電体太陽電池が作製できた。
【0133】
次に、第1気体発生部8である水素発生部は、触媒に白金を使用し、第2気体発生部7である酸素発生部は、触媒にはRuO2(二酸化ルテニウム)粒子を使用し、それぞれゾル―ゲル法により多孔質カーボン板に担持させた。また、光電変換部2と酸素発生部の間に挟みこむ気体導通部21には発泡ニッケルを用いた。
次に、第2導電部10であるコンタクトホールと酸素発生部の間に配置する気体導通部21を光電変換部2から絶縁するための絶縁部11を形成するために、スピンコート法にて原料の塗布、焼成を行うことによりポリイミド膜を作製した。続けて、Agペーストをスクリーン印刷法にて基板上に塗布することにより第2導電部10を形成し、その上に発泡ニッケルおよび二酸化ルテニウムを担持させた多孔質カーボンシートを配置し、加熱処理を行った。このことにより第2導電部10上に気体導通部21および酸素発生部を形成した。同様にガラスフィルタからなる隔膜13で隔てて水素発生部および気体導通部21を光電変換部2の裏面上に積層した。
【0134】
外箱16はステンレス板を所望のサイズにプレス加工して成型した後、第1気体排出口19、第2気体排出口19および給水口18をそれぞれ設けた。前記外箱16に光電変換部2などを形成した透光性基板1をシール材(エポキシ系樹脂)で接合し、気体製造装置を作成した。
【0135】
(実施例2)
図20に示すような断面を有する気体製造装置を次の条件にて作製した。
装置の各構成要件の構成材料および規格は基本的に実施例1の気体製造装置と同様である。しかし、以下の点で異なっている。まず、水素発生部および酸素発生部は本実施例においては、縦方向の幅を3cmに加工した厚さ3mmのアルミニウム板を複数作成し、その表面に水素発生触媒であるPtまたは酸素発生触媒であるRuO2を実施例1と同様の方法で担持させ作成した。次に、水素発生部および酸素発生部は、図20ように複数設けた。2つの水素発生部の間および2つの酸素発生部の間には、気体支流路29となる2mmの隙間を置いて設けた。
【0136】
(実施例3)
図7に示すような断面を有する気体製造装置を次の条件にて作製した。
装置の各構成要件の構成材料および規格は基本的に実施例2の気体製造装置と同様である。しかし、図7に示すように水素発生部および酸素発生部の気体導通部側の面と反対側の面(反応面)に気体導通部の面に対して角度が設けられている点で異なっている。水素発生部および酸素発生部は、縦方向の幅を3cmに加工した厚さ2cmのアルミニウム板それぞれの反応面が気体導通部21の表面に対して30度の角度がつくように切削加工した。その後、アルミニウム板の表面に実施例1と同様の方法で水素発生触媒であるPtおよび酸素発生触媒であるRuO2(膜厚1μm)を担持させた。気体導通部21上に水素発生部または酸素発生部を積層する際は、2つの水素発生部の間および2つの酸素発生部の間には、2mmの隙間を設けた。
【0137】
(実施例4)
実施例1において作製した気体製造装置を太陽光が透光性基板1に対して垂直に照射されるように装置を水平面に対して斜めに設置した。給水口18より0.1MのH2SO4電解液を給水して電解液チェンバー15内を満たした後、太陽光を照射した。
また、太陽光の照射開始から2時間後までの第1気体排出口20および第2気体排出口19から回収された気体量を蛍光センサー分析にて定量したところ、それぞれから水素、酸素が回収されていることが確認できた。また、それぞれの気体量は以下に示す表1に示すとおり、水素0.41mol、酸素0.19molであった。
【0138】
【表1】
【0139】
(実施例5)
実施例2において作製した気体製造装置を太陽光が透光性基板1に対して垂直に照射されるように装置を水平面に対して斜めに設置した。給水口18より0.1MのH2SO4電解液を給水して電解液チェンバー15を満たした後、太陽光を照射した。
また、太陽光の照射開始から2時間後までに第1気体排出口20および第2気体排出口19から回収された気体量を蛍光センサー分析にて定量したところ、それぞれから水素、酸素が回収されていることが確認できた。また、それぞれの気体量は表1に示すとおり、水素0.47mol、酸素0.23molであった。
【0140】
(実施例6)
実施例3において作製した気体製造装置を太陽光が透光性基板1に対して垂直に照射されるように装置を水平面に対して斜めに設置した。給水口18より0.1MのH2SO4電解液を給水して電解液チェンバーを満たした後、太陽光を照射した。
また、太陽光の照射開始から2時間後までに第1気体排出口20および第2気体排出口19から回収された気体量を蛍光センサー分析にて定量したところ、それぞれから水素、酸素が回収されていることが確認できた。また、それらの気体量は表1に示すとおり、水素0.54mol、酸素0.26molであった。
【0141】
(比較例1)
実施例1の気体製造装置において、気体導通部21を積層せずに水素発生部は水素発生触媒である白金を光電変換部2の裏面に直接担持し、また酸素発生部は絶縁部11上に酸素発生触媒であるRuO2をCVD法により1μmの膜厚で積層し、図24に示すような気体製造装置を作製した。
上記のようにして作製した気体製造装置を太陽光が透光性基板1に対して垂直に照射されるように装置を水平面に対して斜めに設置した。給水口18より0.1MのH2SO4電解液を給水して電解液チェンバー15を満たした後、太陽光を照射したところ、水素発生部の表面から気体が発生していることが確認できた。
また、太陽光の照射開始から2時間後までに第1気体排出口20および第2気体排出口19から回収された気体量を蛍光センサー分析にて定量したところ、それぞれから水素、酸素が回収されていることが確認できた。また、それらの気体量は表1に示すとおり、水素0.31mol、酸素0.14molであった。
【0142】
以上により、反応面が下向きの第1気体発生部8および第2気体発生部7から発生させた気体を気体導通部21に含まれる気体流路17を介して回収することにより、水素の発生効率を高めることが可能となることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明の気体製造装置は太陽光エネルギーにより水の分解反応を起こし、燃料として活用できる水素および酸素の製造を可能とする。この装置を設置することにより集中的な大規模燃料製造はもちろんのこと、工場、家庭等における分散型の燃料製造も可能となる。
【符号の説明】
【0144】
1:透光性基板 2:光電変換部 4:第1電極 5:第2電極 7:第2気体発生部 8:第1気体発生部 9:第1導電部 10:第2導電部 11:絶縁部 13:隔壁 14:天板 15:電解液チェンバー 16:外箱 17:気体流路 18:給水口 19:第2気体排出口 20:第1気体排出口 21:気体導通部 22:第3導電部 23:気体製造装置 25:電解液 27:発生気体 29:気体支流路 31:第1開口 32:第2開口 33:第1縁部 34:第2縁部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光面および裏面を有する光電変換部と、前記裏面と電気的に接続しかつ前記光電変換部が受光することにより生じる起電力を用いて電解液から第1気体を発生させる第1気体発生部と、前記受光面と電気的に接続しかつ前記光電変換部が受光することにより生じる起電力を用いて電解液から第2気体を発生させる第2気体発生部と、気体流路と、気体排出口とを備え、
前記気体流路は、第1気体発生部および第2気体発生部のうち少なくとも一方と前記光電変換部の裏面との間に設けられ、
前記気体流路は、第1気体または第2気体を前記気体排出口へと導通させることを特徴とする気体製造装置。
【請求項2】
第1導電部をさらに備え、
第1気体発生部および第2気体発生部は、前記光電変換部の裏面上に設けられ、
前記気体流路は、第1気体発生部と前記裏面との間および第2気体発生部と前記裏面との間にそれぞれ設けられ、
第2気体発生部は、第1導電部を介して前記受光面と電気的に接続する請求項1に記載の装置。
【請求項3】
絶縁部をさらに備え、
第2気体発生部は、前記絶縁部を介して前記光電変換部の裏面上に設けられた請求項2に記載の装置。
【請求項4】
第1導電部は、前記光電変換部の受光面に接触する第1電極と、第1電極および第2気体発生部にそれぞれ接触する第2導電部とを含む請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記光電変換部は、裏面から受光面へ貫通する第1コンタクトホールを有し、
第2導電部は、第1コンタクトホールに設けられた請求項4に記載の装置。
【請求項6】
透光性基板をさらに備え、
前記光電変換部は、前記透光性基板の上に設けられた請求項2〜5のいずれか1つに記載の装置。
【請求項7】
気体支流路をさらに備え、
前記気体支流路は、第1気体発生部および第2気体発生部のうちどちら一方により形成され、かつ、前記気体流路に繋がり、
前記気体支流路は、第1気体または第2気体を前記気体流路へと導通させる請求項1〜6のいずれか1つに記載の装置。
【請求項8】
第1気体発生部または第2気体発生部は複数であり、
前記気体支流路は、隣接する2つの第1気体発生部の間または隣接する2つの第2気体発生部の間に設けられた請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記気体支流路は、両端に第1開口と第2開口とを有し、
第1開口は、第1気体発生部および第2気体発生部のうちどちらか一方の前記気体流路側の面に設けられ、
第2開口は、第1開口が設けられた面と反対側の面に設けられ、
第2開口は、高さの異なる第1縁部および第2縁部を有し、
第1縁部は、第2縁部より高い第2開口の縁であり、かつ、第1気体または第2気体を前記気体支流路に流入させる請求項7または8に記載の装置。
【請求項10】
第1気体および第2気体のうち一方は、H2であり、他方は、O2である請求項1〜9のいずれか1つに記載の装置。
【請求項11】
前記気体流路は、前記光電変換部の裏面に沿うように設けられた請求項1〜10のいずれか1つに記載の装置。
【請求項12】
電解液チェンバーをさらに備え、
第1気体発生部および第2気体発生部のうち少なくとも一方は、前記光電変換部の裏面と前記電解液チェンバーとの間に設けられ、かつ、電解液に浸漬可能である請求項1〜11のいずれか1つに記載の装置。
【請求項13】
前記気体流路は、第1気体および第2気体のいずれか1つがその浮力により流入することができるように設けられた請求項1〜12のいずれか1つに記載の装置。
【請求項14】
第1気体発生部および第2気体発生部のうち少なくとも一方と前記光電変換部との間に気体導通部をさらに備え、
前記気体導通部は、前記気体流路を有する請求項1〜13のいずれか1つに記載の装置。
【請求項15】
前記気体導通部は、多孔性材料から形成される請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記気体導通部は、疎水性の表面を有する請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記気体導通部は、超疎水性多孔質膜から形成される請求項14〜16のいずれか1つに記載の装置。
【請求項18】
第1気体発生部および第2気体発生部は、前記光電変換部の裏面上に設けられ、
前記気体導通部は、前記光電変換部の裏面と第1気体発生部および第2気体発生部との間に設けられ、かつ、前記電解液に対する耐食性および遮液性を有する請求項14〜17のいずれか1つに記載の装置。
【請求項19】
前記気体導通部は、前記光電変換部を覆うように設けられた請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記気体導通部は、導電性を有する請求項14〜19のいずれか1つに記載の装置。
【請求項21】
第1気体発生部および第2気体発生部は、前記光電変換部の裏面上に設けられ、
前記光電変換部の裏面と第1気体発生部とを電気的に接続する第3導電部をさらに備え、
前記気体導通部は、前記光電変換部の裏面と第1気体発生部との間に設けられ、かつ、前記気体導通部を貫通する第2コンタクトホールを有し、
第3導電部は、第2コンタクトホールに設けられた請求項14〜19のいずれか1つに記載の装置。
【請求項22】
前記光電変換部は、p型半導体層、i型半導体層およびn型半導体層を備える光電変換層を有する請求項1〜21のいずれか1つに記載の装置。
【請求項23】
第1気体発生部および第2気体発生部のうち、一方は、電解液からH2を発生させる水素発生部であり、他方は、電解液からO2を発生させる酸素発生部であり、
前記水素発生部および前記酸素発生部は、それぞれ電解液からH2が発生する反応の触媒および電解液からO2が発生する反応の触媒を含む請求項1〜22のいずれか1つに記載の装置。
【請求項24】
前記水素発生部および前記酸素発生部のうち少なくとも一方は、触媒が担持された多孔質の導電体から形成される請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記水素発生部および前記酸素発生部は、親水性の表面を有する請求項23または24に記載の装置。
【請求項26】
第1気体発生部および第2気体発生部は、前記光電変換部の裏面上に設けられ、
前記光電変換部は、透光性基板の上に設けられ、
第1気体発生部および第2気体発生部の上に前記透光性基板に対向する天板をさらに備え、
第1気体発生部と前記天板との間および第2気体発生部と前記天板との間にそれぞれ電解液チェンバーが設けられた請求項1〜25のいずれか1つに記載の装置。
【請求項27】
第1気体発生部と前記天板との間の電解液チェンバーおよび第2気体発生部と天板との間の電解液チェンバーとを仕切る隔壁をさらに備える請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記隔壁は、イオン交換体を含む請求項27に記載の装置。
【請求項29】
請求項26〜28のいずれか1つに記載の気体製造装置を前記受光面が水平面に対し傾斜するように設置し、
前記気体製造装置の下部から前記気体製造装置に電解液を導入し、太陽光を前記受光面に入射させることにより第1気体発生部および第2気体発生部からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させ、前記気体製造装置の上部から第1気体および第2気体を排出する気体製造方法。
【請求項1】
受光面および裏面を有する光電変換部と、前記裏面と電気的に接続しかつ前記光電変換部が受光することにより生じる起電力を用いて電解液から第1気体を発生させる第1気体発生部と、前記受光面と電気的に接続しかつ前記光電変換部が受光することにより生じる起電力を用いて電解液から第2気体を発生させる第2気体発生部と、気体流路と、気体排出口とを備え、
前記気体流路は、第1気体発生部および第2気体発生部のうち少なくとも一方と前記光電変換部の裏面との間に設けられ、
前記気体流路は、第1気体または第2気体を前記気体排出口へと導通させることを特徴とする気体製造装置。
【請求項2】
第1導電部をさらに備え、
第1気体発生部および第2気体発生部は、前記光電変換部の裏面上に設けられ、
前記気体流路は、第1気体発生部と前記裏面との間および第2気体発生部と前記裏面との間にそれぞれ設けられ、
第2気体発生部は、第1導電部を介して前記受光面と電気的に接続する請求項1に記載の装置。
【請求項3】
絶縁部をさらに備え、
第2気体発生部は、前記絶縁部を介して前記光電変換部の裏面上に設けられた請求項2に記載の装置。
【請求項4】
第1導電部は、前記光電変換部の受光面に接触する第1電極と、第1電極および第2気体発生部にそれぞれ接触する第2導電部とを含む請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記光電変換部は、裏面から受光面へ貫通する第1コンタクトホールを有し、
第2導電部は、第1コンタクトホールに設けられた請求項4に記載の装置。
【請求項6】
透光性基板をさらに備え、
前記光電変換部は、前記透光性基板の上に設けられた請求項2〜5のいずれか1つに記載の装置。
【請求項7】
気体支流路をさらに備え、
前記気体支流路は、第1気体発生部および第2気体発生部のうちどちら一方により形成され、かつ、前記気体流路に繋がり、
前記気体支流路は、第1気体または第2気体を前記気体流路へと導通させる請求項1〜6のいずれか1つに記載の装置。
【請求項8】
第1気体発生部または第2気体発生部は複数であり、
前記気体支流路は、隣接する2つの第1気体発生部の間または隣接する2つの第2気体発生部の間に設けられた請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記気体支流路は、両端に第1開口と第2開口とを有し、
第1開口は、第1気体発生部および第2気体発生部のうちどちらか一方の前記気体流路側の面に設けられ、
第2開口は、第1開口が設けられた面と反対側の面に設けられ、
第2開口は、高さの異なる第1縁部および第2縁部を有し、
第1縁部は、第2縁部より高い第2開口の縁であり、かつ、第1気体または第2気体を前記気体支流路に流入させる請求項7または8に記載の装置。
【請求項10】
第1気体および第2気体のうち一方は、H2であり、他方は、O2である請求項1〜9のいずれか1つに記載の装置。
【請求項11】
前記気体流路は、前記光電変換部の裏面に沿うように設けられた請求項1〜10のいずれか1つに記載の装置。
【請求項12】
電解液チェンバーをさらに備え、
第1気体発生部および第2気体発生部のうち少なくとも一方は、前記光電変換部の裏面と前記電解液チェンバーとの間に設けられ、かつ、電解液に浸漬可能である請求項1〜11のいずれか1つに記載の装置。
【請求項13】
前記気体流路は、第1気体および第2気体のいずれか1つがその浮力により流入することができるように設けられた請求項1〜12のいずれか1つに記載の装置。
【請求項14】
第1気体発生部および第2気体発生部のうち少なくとも一方と前記光電変換部との間に気体導通部をさらに備え、
前記気体導通部は、前記気体流路を有する請求項1〜13のいずれか1つに記載の装置。
【請求項15】
前記気体導通部は、多孔性材料から形成される請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記気体導通部は、疎水性の表面を有する請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記気体導通部は、超疎水性多孔質膜から形成される請求項14〜16のいずれか1つに記載の装置。
【請求項18】
第1気体発生部および第2気体発生部は、前記光電変換部の裏面上に設けられ、
前記気体導通部は、前記光電変換部の裏面と第1気体発生部および第2気体発生部との間に設けられ、かつ、前記電解液に対する耐食性および遮液性を有する請求項14〜17のいずれか1つに記載の装置。
【請求項19】
前記気体導通部は、前記光電変換部を覆うように設けられた請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記気体導通部は、導電性を有する請求項14〜19のいずれか1つに記載の装置。
【請求項21】
第1気体発生部および第2気体発生部は、前記光電変換部の裏面上に設けられ、
前記光電変換部の裏面と第1気体発生部とを電気的に接続する第3導電部をさらに備え、
前記気体導通部は、前記光電変換部の裏面と第1気体発生部との間に設けられ、かつ、前記気体導通部を貫通する第2コンタクトホールを有し、
第3導電部は、第2コンタクトホールに設けられた請求項14〜19のいずれか1つに記載の装置。
【請求項22】
前記光電変換部は、p型半導体層、i型半導体層およびn型半導体層を備える光電変換層を有する請求項1〜21のいずれか1つに記載の装置。
【請求項23】
第1気体発生部および第2気体発生部のうち、一方は、電解液からH2を発生させる水素発生部であり、他方は、電解液からO2を発生させる酸素発生部であり、
前記水素発生部および前記酸素発生部は、それぞれ電解液からH2が発生する反応の触媒および電解液からO2が発生する反応の触媒を含む請求項1〜22のいずれか1つに記載の装置。
【請求項24】
前記水素発生部および前記酸素発生部のうち少なくとも一方は、触媒が担持された多孔質の導電体から形成される請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記水素発生部および前記酸素発生部は、親水性の表面を有する請求項23または24に記載の装置。
【請求項26】
第1気体発生部および第2気体発生部は、前記光電変換部の裏面上に設けられ、
前記光電変換部は、透光性基板の上に設けられ、
第1気体発生部および第2気体発生部の上に前記透光性基板に対向する天板をさらに備え、
第1気体発生部と前記天板との間および第2気体発生部と前記天板との間にそれぞれ電解液チェンバーが設けられた請求項1〜25のいずれか1つに記載の装置。
【請求項27】
第1気体発生部と前記天板との間の電解液チェンバーおよび第2気体発生部と天板との間の電解液チェンバーとを仕切る隔壁をさらに備える請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記隔壁は、イオン交換体を含む請求項27に記載の装置。
【請求項29】
請求項26〜28のいずれか1つに記載の気体製造装置を前記受光面が水平面に対し傾斜するように設置し、
前記気体製造装置の下部から前記気体製造装置に電解液を導入し、太陽光を前記受光面に入射させることにより第1気体発生部および第2気体発生部からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させ、前記気体製造装置の上部から第1気体および第2気体を排出する気体製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2011−184767(P2011−184767A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53105(P2010−53105)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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