説明

気体製造装置

【課題】気体発生効率の高い気体製造装置を提供する。
【解決手段】本発明の気体製造装置は、受光面とその裏面を有し、かつ、受光することにより前記受光面と前記裏面との間に電位差が生じる光電変換部と、前記光電変換部の裏面側に設けられ、かつ、前記光電変換部の裏面と電気的に接続した第1電解用電極と、前記光電変換部の裏面側に設けられ、かつ、前記光電変換部の受光面と電気的に接続した第2電解用電極と、前記光電変換部の裏面と第1電解用電極または第2電解用電極との間に設けられた熱電変換部とを備え、第1電解用電極および第2電解用電極は、電解液に浸漬可能に設けられ、かつ、前記光電変換部が受光することより生じる起電力により電解液を電気分解しそれぞれ第1気体及び第2気体を発生させることができるように設けられ、前記熱電変換部は、前記光電変換部から吸熱し第1電解用電極または第2電解用電極に放熱することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の懸念から発電に伴いCO2が発生しない太陽電池が普及しつつある。しかし、太陽電池を用いた発電は、時間帯により発電量が変動し、また、季節によっても発電量が変動するという課題がある。この課題を解決するために、太陽電池により発電した電力を水の電気分解により生じる水素として貯蔵し、この水素を燃料とする燃料電池の発電により発電量の変動を解消する発電システムが考えられている。このため、太陽電池と電解槽を組み合わせた様々技術が提案されている。
例えば、特許文献1では、基板上に形成した透明電極膜の上に薄膜太陽電池と電解触媒層を並列に形成し、薄膜太陽電池に光を照射することにより、電解液を電気分解することを可能とする水素製造装置が開示されている。
また、特許文献2では、導電体層上に、p型半導体層とn型半導体層と電極板をこの順で形成した電解室と、前記導電体層上に、n型半導体層とp型半導体層と電極板をこの順で形成した電解質とを備える水素製造装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−288955号公報
【特許文献2】特開2004−197167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の太陽電池と電解槽を組み合わせた装置では、装置内がほぼ同じ温度であるため、気体発生効率が低くなっている。つまり、太陽電池ではより温度が低いほうが光電変換効率が高く、電解槽ではより温度が高いほうが電解液の電気分解の効率が高い。このため、装置内の温度を低くすると太陽電池の光電変化効率は高くなるが、電解液の電気分解の効率は低くなる。また、装置内の温度を高くすると電解液の電気分解の効率は高くなるが、太陽電池の光電変換効率は低下する。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、気体発生効率の高い気体製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、受光面とその裏面を有し、かつ、受光することにより前記受光面と前記裏面との間に電位差が生じる光電変換部と、前記光電変換部の裏面側に設けられ、かつ、前記光電変換部の裏面と電気的に接続した第1電解用電極と、前記光電変換部の裏面側に設けられ、かつ、前記光電変換部の受光面と電気的に接続した第2電解用電極と、前記光電変換部の裏面と第1電解用電極または第2電解用電極との間に設けられた熱電変換部とを備え、第1電解用電極および第2電解用電極は、電解液に浸漬可能に設けられ、かつ、前記光電変換部が受光することより生じる起電力により電解液を電気分解しそれぞれ第1気体及び第2気体を発生させることができるように設けられ、前記熱電変換部は、前記光電変換部から吸熱し第1電解用電極または第2電解用電極に放熱することを特徴とする気体製造装置を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、光電変換部の受光面と電気的に接続する第2電解用電極と、光電変換部の裏面と電気的に接続する第1電解用電極とを電解液に浸漬させることができるため、光電変換部に光を入射させることにより、第1電解用電極および第2電解用電極において電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体を発生させることができる。
本発明によれば、光電変換部の裏面上に第1電解用電極と第2電解用電極を設けるため、光電変換部の受光面に電解液を介さず光を入射させることができ、電解液による入射光の吸収や入射光の散乱を防止することができる。このことにより、光電変換部への入射光の量を多くすることができ、光利用効率を高くすることができる。
【0007】
本発明によれば、光電変換部の裏面上に第1電解用電極および第2電解用電極を設けるため、受光面に入射する光が、第1電解用電極および第2電解用電極、ならびにそこからそれぞれ発生する第1気体及び第2気体により吸収や散乱されることはない。このことにより、光電変換部への入射光の量を多くすることができ、光利用効率を高くすることができる。
本発明によれば、光電変換部の裏面と第1電解用電極または第2電解用電極との間に設けられ、かつ、吸熱面と放熱面とを有する熱電変換部を備えるため、熱電変換部の吸熱面が光電変換部を冷却することができ、熱電変換部の放熱面が第1電解用電極または第2電解用電極を加熱することができる。このことにより、光電変換部の温度を低くすることができ、光電変換部の光電変換効率を高くすることができる。また、第1電解用電極または第2電解用電極の温度を高くすることができ、電解液の電解反応の速度を速くすることができ、第1気体および第2気体の発生量を多くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略平面図である。
【図2】図1の点線A−Aにおける気体製造装置の概略断面図である。
【図3】本発明の一実施形態の気体製造装置の構成を示す概略裏面図である。
【図4】本発明の一実施形態の気体製造装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の気体製造装置は、受光面とその裏面を有し、かつ、受光することにより前記受光面と前記裏面との間に電位差が生じる光電変換部と、前記光電変換部の裏面側に設けられ、かつ、前記光電変換部の裏面と電気的に接続した第1電解用電極と、前記光電変換部の裏面側に設けられ、かつ、前記光電変換部の受光面と電気的に接続した第2電解用電極と、前記光電変換部の裏面と第1電解用電極または第2電解用電極との間に設けられた熱電変換部とを備え、第1電解用電極および第2電解用電極は、電解液に浸漬可能に設けられ、かつ、前記光電変換部が受光することより生じる起電力により電解液を電気分解しそれぞれ第1気体及び第2気体を発生させることができるように設けられ、前記熱電変換部は、前記光電変換部から吸熱し第1電解用電極または第2電解用電極に放熱することを特徴とする。
【0010】
熱電変換部とは、電流が流れることにより吸熱面において熱を吸収し、放熱面において熱を発する部分、または、吸熱面と放熱面との間の温度差により起電力が生じる部分である。
【0011】
本発明の気体製造装置において、前記光電変換部の受光面上に設けられた第1電極と、前記光電変換部の裏面上に設けられた第2電極とをさらに備え、第1電極は、第2電解用電極と電気的に接続し、第2電極は、第1電解用電極と電気的に接続することが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の受光面と第2電解用電極とを電気的に接続することができ、光電変換部の裏面と第1電解用電極とを電気的に接続することができる。このことにより、光電変換部で生じた起電力を効率よく第1電解用電極と第2電解用電極とに出力することができる。
本発明の気体製造装置において、第2電極と前記熱電変換部との間に設けられた第1絶縁層と、前記熱電変換部と第1電解用電極または第2電解用電極との間に設けられた第2絶縁層とをさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、リーク電流が流れることを防止することができる。
【0012】
本発明の気体製造装置において、第1電極と第2電解用電極とを電気的に接続する第1導電部と、第2電極と第1電解用電極とを電気的に接続する第2導電部とをさらに備え、
第1導電部は、前記光電変換部および前記熱電変換部を貫通するコンタクトホール内に設けられ、第2導電部は、前記熱電変換部を貫通するコンタクトホール内に設けられることが好ましい。
このような構成によれば、第1電極と第2電解用電極を効率よく電気的に接続することができ、第2電極と第1電解用電極を効率よく電気的に接続することができる。
本発明の気体製造装置において、前記熱電変換部は、p型半導体部、n型半導体部、第1熱電変換用電極および第2熱電変換用電極を備え、前記p型半導体部および前記n型半導体部は、第1熱電変換用電極および第2熱電変換用電極に挟まれることが好ましい。
このような構成によれば、p型半導体部とn型半導体部とに電流を流すことができ、熱電変換部が吸熱面と放熱面を有することができる。
【0013】
本発明の気体製造装置において、前記p型半導体部および前記n型半導体部は、前記光電変換部が受光することにより生じる起電力により電流が流れるように設けられることが好ましい。
このような構成によれば、熱電変換部に外部から電力を供給することを不要にすることができる。
本発明の気体製造装置において、前記p型半導体部および前記n型半導体部を流れる電流を制御する電流制御手段をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、熱電変換部に流れる電流を制御することができ、吸熱面の吸熱量および放熱面の放熱量を制御することができる。このことにより、熱電変換部による電力消費を抑制することができる。また、光電変換部、第1電解用電極または第2電解用電極の温度を制御することができる。
【0014】
本発明の気体製造装置において、前記熱電変換部は、複数であることが好ましい。
このような構成によれば、気体製造装置が光電変換部から吸熱し電解用電極に放熱する熱電変換部と、光電変換部と電解用電極との温度差により起電力が生じる熱電変換部とを備えることができる。このことにより、光電変換部と電解用電極との温度差を利用して起電力を発生させることができ、この起電力を電解液の分解反応に利用することができる。
本発明の気体製造装置において、透光性基板をさらに備え、前記光電変換部は、前記受光面が前記透光性基板側となるように前記透光性基板上に設けられることが好ましい。
このような構成によれば、透光性基板の上に光電変換部を形成できる。
【0015】
本発明の気体製造装置において、第1電解用電極または第2電解用電極を浸漬させる電解液を貯留可能な電解液室をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、第1電解用電極および第2電解用電極を電解液に浸漬させることができ、それぞれ第1気体および第2気体を発生させることができる。
本発明の気体製造装置において、前記光電変換部の裏面側に背面基板をさらに備え、前記電解液室は、前記光電変換部の裏面と前記背面基板との間に設けられることが好ましい。
このような構成によれば、第1電解用電極および第2電解用電極を浸漬させる電解液を貯留可能な電解液室を形成することができる。
【0016】
本発明の気体製造装置において、第1電解用電極が浸漬する電解液を貯留可能な電解液室と、第2電解用電極が浸漬する電解液を貯留可能な電解液室とを仕切る隔壁をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、第1電解用電極および第2電解用電極でそれぞれ発生した第1気体および第2気体を分離することができ、第1気体および第2気体をより効率的に回収することができる。
本発明の気体製造装置において、前記隔壁は、イオン交換体を含むことが好ましい。
このような構成によれば、第1電解用電極の上部の電解液室に導入された電解液と第2電解用電極の上部の電解液室に導入された電解液との間のイオン濃度の不均衡を解消することができ、安定して第1気体および第2気体を発生させることができる。
【0017】
本発明の気体製造装置において、前記光電変換部は、p型半導体層、i型半導体層およびn型半導体層を備える光電変換層を有することが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部がpin構造を有することができ、効率よく光電変換をすることができる。また、光電変換部で生じる起電力をより大きくすることができ、電解液をより効率的に電気分解することができる。
本発明の気体製造装置において、第1電解用電極および第2電解用電極のうち、一方は、電解液からH2を発生させる水素発生部であり、他方は、電解液からO2を発生させる酸素発生部であり、前記水素発生部および前記酸素発生部は、それぞれ電解液からH2が発生する反応の触媒および電解液からO2が発生する反応の触媒を含むことが好ましい。
このような構成によれば、本発明の気体製造装置により燃料電池の燃料となる水素を製造することができる。また、各触媒を含むことにより、電解液の電気分解反応が進行する速度を速くすることができる。
本発明の気体製造装置において、前記水素発生部および前記酸素発生部のうち少なくとも一方は、触媒が担持された多孔質の導電体から形成されたことが好ましい。
このような構成によれば、水素発生部および酸素発生部のうち少なくとも一方の触媒表面積を大きくすることができ、より効率的に酸素または水素を発生させることができる。また、多孔質の導電体を用いることにより、光電変換部と触媒との間の電流が流れることによる電位の変化を抑制することができ、より効率的に水素または酸素を発生させることができる。
【0018】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0019】
気体製造装置の構成
図1は、本発明の一実施形態の気体製造装置の構造を示す概略平面図である。図2は、図1の点線A−Aにおける気体製造装置の概略断面図である。図3は、本発明の一実施形態の気体製造装置の構造を示す概略裏面図である。なお、図3において背面基板14は省略している。また、図4は、本発明の一実施形態の気体製造装置の概略断面図であり、図1の点線B−Bにおける気体製造装置の概略断面図に対応している。
【0020】
本実施形態の気体製造装置23は、受光面とその裏面を有し、かつ、受光することにより前記受光面と前記裏面との間に電位差が生じる光電変換部2と、光電変換部2の裏面側に設けられ、かつ、光電変換部2の裏面と電気的に接続した第1電解用電極8と、光電変換部2の裏面側に設けられ、かつ、光電変換部2の受光面と電気的に接続した第2電解用電極7と、光電変換部2の裏面と第1電解用電極8または第2電解用電極7との間に設けられた熱電変換部30とを備え、第1電解用電極8および第2電解用電極7は、電解液に浸漬可能に設けられ、かつ、光電変換部2が受光することより生じる起電力により電解液を電気分解しそれぞれ第1気体及び第2気体を発生させることができるように設けられ、熱電変換部30は、光電変換部2から吸熱し第1電解用電極8または第2電解用電極7に放熱することを特徴とする。
【0021】
また、本実施形態の気体製造装置23は、透光性基板1、背面基板14、第1導電部10、第2導電部21、絶縁部11、隔壁13、第1電極4および第2電極5を備えてもよい。以下、本発明の気体製造装置23の各構成要素について説明する。
【0022】
1.透光性基板
透光性基板1は、透光性を有する基板であれば特に限定されない。透光性基板1の材料としては、例えば、ソーダガラス、石英ガラス、パイレックス(登録商標)、合成石英板等の透明なリジッド材、あるいは透明樹脂板やフィルム材等が好適に用いられる。化学的および物理的安定性を備える点より、ガラス基板を用いることが好ましい。
透光性基板1の光電変換部2側の表面には、入射した光が光電変換部2の表面で有効に乱反射されるように、微細な凹凸構造に形成することができる。この微細な凹凸構造は、例えば反応性イオンエッチング(RIE)処理もしくはブラスト処理等の公知の方法により形成することが可能である。
【0023】
2.第1電極
第1電極4は、透光性基板1の上に設けることができ、光電変換部2の受光面と接触するように設けることができる。また、第1電極4は透光性を有してもよい。第1電極4を設けることにより、光電変換部2の受光面と第2電解用電極7との間に流れる電流を大きくすることができる。
第1電極4は、例えば、ITO、SnO2などの透明導電膜からなってもよく、Ag、Auなどの金属のフィンガー電極からなってもよい。
【0024】
以下に第1電極4を透明導電膜とした場合について説明する。
透明導電膜は、光電変換部2の受光面と第2電解用電極7とのコンタクトを取りやすくするために用いている。
一般に透明電極として使用されているものを用いることが可能である。具体的にはIn−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2等を挙げることができる。なお本透明導電膜は、太陽光の光線透過率が85%以上、中でも90%以上、特に92%以上であることが好ましい。このことにより光電変換部2が光を効率的に吸収することができるためである。
透明導電膜の作成方法としては公知の方法を用いることができ、スパッタリング、真空蒸着、ゾルゲル法、クラスタービーム蒸着法、PLD(Pulse Laser Deposition)法などが挙げられる。
【0025】
3.光電変換部
光電変換部2は、透光性基板1上に設けられ、かつ、受光することにより受光面と裏面との間に電位差が生じる。光電変換部2は、例えば、シリコン系半導体を用いた光電変換部、化合物半導体を用いた光電変換部、色素増感剤を利用した光電変換部、有機薄膜を用いた光電変換部などである。
光電変換部2は、熱電変換部30の吸熱面により冷却されることができる。このことにより熱電変換部30の温度上昇を抑制することができ、光電変換効率を高くすることができる。
【0026】
光電変換部2は、受光することにより、第1電解用電極8および第2電解用電極7においてそれぞれ第1気体と第2気体を発生させるために必要な起電力が生じる必要がある。
第1気体および第2気体が水素および酸素である場合、光電変換部2は、第1電解用電極8および第2電解用電極7において電解液に含まれる水を分解し水素と酸素が発生させるために必要な起電力が生じる必要がある。第1電解用電極8と第2電解用電極7の電位差は、水分解のための理論電圧(1.23V)より大きくする必要があり、そのためには光電変換部2で十分大きな電位差を生み出す必要がある。そのため光電変換部2は、pn接合など起電力を生じさせる部分を二接合以上直列に接続することが好ましい。
【0027】
光電変換を行う材料は、シリコン系半導体、化合物半導体、有機材料をベースとしたものなどが挙げられるが、いずれの光電変換材料も使用することが可能である。また、起電力を大きくするために、これらの光電変換材料を積層することが可能である。積層する場合には同一材料で多接合構造を形成することが可能であるが、光学的バンドギャップの異なる複数の光電変換層を積層し、各々の光電変換層の低感度波長領域を相互に補完することにより、広い波長領域にわたり入射光を効率よく吸収することが可能となる。
【0028】
また、光電変換層間の直列接続特性の改善や、光電変換部2で発生する光電流の整合のために、層間に透明導電膜等の導電体を介在させることが可能である。これにより光電変換部2の劣化を抑制することが可能となる。
光電変換部2の例を以下に具体的に説明する。また、光電変換部2は、これらを組み合わせたものでもよい。
【0029】
3−1.シリコン系半導体を用いた光電変換部
シリコン系半導体を用いた光電変換部2は、例えば、単結晶型、多結晶型、アモルファス型、球状シリコン型、及びこれらを組み合わせたもの等が挙げられる。いずれもp型半導体とn型半導体が接合したpn接合を有することができる。また、p型半導体とn型半導体との間にi型半導体を設けたpin接合を有するものとすることもできる。また、pn接合を複数有するもの、pin接合を複数有するもの、pn接合とpin接合を有するものとすることもできる。
シリコン系半導体とは、シリコンを含む半導体であり、例えば、シリコン、シリコンカーバイド、シリコンゲルマニウムなどである。また、シリコンなどにn型不純物またはp型不純物が添加されたものも含み、また、結晶質、非晶質、微結晶のものも含む。
また、シリコン系半導体を用いた光電変換部2は、基板1の上に形成された薄膜または厚膜の光電変換層であってもよく、また、シリコンウェハなどのウェハにpn接合またはpin接合を形成したものでもよく、また、pn接合またはpin接合を形成したウェハの上に薄膜の光電変換層を形成したものでもよい。
【0030】
シリコン系半導体を用いた光電変換部2の形成例を以下に示す。
透光性基板1上に積層した第1電極4上に、第1導電型半導体層をプラズマCVD法等の方法で形成する。この第1導電型半導体層としては、導電型決定不純物原子濃度が1×1018〜5×1021/cm3程度ドープされた、p+型またはn+型の非晶質Si薄膜、または多結晶あるいは微結晶Si薄膜とする。第1導電型半導体層の材料としては、Siに限らず、SiCあるいはSiGe,Six1-x等の化合物を用いることも可能である。
【0031】
このように形成された第1導電型半導体層上に、結晶質Si系光活性層として多結晶あるいは微結晶の結晶質Si薄膜をプラズマCVD法等の方法で形成する。なお、導電型は第1導電型半導体よりドーピング濃度が低い第1導電型とするか、あるいはi型とする。結晶質Si系光活性層の材料としては、Siに限らず、SiCあるいはSiGe,Six1-x等の化合物を用いることも可能である。
【0032】
次に、結晶質Si系光活性層上に半導体接合を形成するため、第1導電型半導体層とは反対導電型である第2導電型半導体層をプラズマCVD等の方法で形成する。この第2導電型半導体層としては、導電型決定不純物原子が1×1018〜5×1021/cm3程度ドープされた、n+型またはp+型の非晶質Si薄膜、または多結晶あるいは微結晶Si薄膜とする。第2導電型半導体層の材料としては、Siに限らず、SiCあるいはSiGe,Six1-x等の化合物を用いることも可能である。また接合特性をより改善するために、結晶質Si系光活性層と第2導電型半導体層との間に、実質的にi型の非単結晶Si系薄膜を挿入することも可能である。このようにして、受光面に最も近い光電変換層を一層積層することができる。
【0033】
続けて第二層目の光電変換層を形成する。第二層目の光電変換層は、第1導電型半導体層、結晶質Si系光活性層、第2導電型半導体層からなり、それぞれの層は、第一層目の光電変換層中の対応する第1導電型半導体層、結晶質Si系光活性層、第2導電型半導体層と同様に形成する。二層のタンデムで水分解に十分な電位を得ることができない場合は、三層あるいはそれ以上の層状構造を取ることが好ましい。ただし第二層目の光電変換層の結晶質Si系光活性層の体積結晶化分率は、第一層目の結晶質Si系光活性層と比較すると高くすることが好ましい。三層以上積層する場合も同様に下層と比較すると体積結晶化分率を高くすることが好ましい。これは、長波長域での吸収が大きくなり、分光感度が長波長側にシフトし、同じSi材料を用いて光活性層を構成した場合においても、広い波長域で感度を向上させることが可能となるためである。すなわち、結晶化率の異なるSiでタンデム構造にすることにより、分光感度が広くなり、光の高効率利用が可能となる。このとき低結晶化率材料を受光面側にしないと高効率とならない。また結晶化率が40%以下に下がるとアモルファス成分が増え、劣化が生じてしまう。
【0034】
3−2.化合物半導体を用いた光電変換部
化合物半導体を用いた光電変換部2は、例えば、III−V族元素で構成されるGaP、GaAsやInP、InAs、II−VI族元素で構成されるCdTe/CdS、I−III−VI族で構成されるCIGS(Copper Indium Gallium DiSelenide)などを用いpn接合を形成したものが挙げられる。
【0035】
化合物半導体を用いた光電変換部2の製造方法の一例を以下に示すが、本製造方法では、製膜処理等はすべて有機金属気相成長法(MOCVD;Metal Organic Chemical Vapor Deposition)装置を使って連続して行われる。III族元素の材料としては、例えばトリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、トリメチルインジウムなどの有機金属が水素をキャリアガスとして成長装置に供給される。V族元素の材料としては、例えばアルシン(AsH3)、ホスフィン(PH3)、スチビン(SbH3)等のガスが使われる。p型不純物またはn型不純物のドーパントとしては、例えばp型化にはジエチルジンク、またはn型化には、モノシラン(SiH4)やジシラン(Si26)、セレン化水素(H2Se)等が利用される。これらの原料ガスを、例えば700℃に加熱された基板上に供給することにより熱分解させ、所望の化合物半導体材料膜をエピタキシャル成長させることが可能である。これら成長層の組成は導入するガス組成により、また膜厚はガスの導入時間によって制御することが可能である。これらの光電変換部を多接合積層する場合は、層間での格子定数を可能な限り合わせることにより、結晶性に優れた成長層を形成することができ、光電変換効率を向上することが可能となる。
【0036】
pn接合を形成した部分以外にも、例えば受光面側に公知の窓層や、非受光面側に公知の電界層等を設けることによりキャリア収集効率を高める工夫を有してもよい。また不純物の拡散を防止するためのバッファ層を有していてもよい。
【0037】
3−3.色素増感剤を利用した光電変換部
色素増感剤を利用した光電変換部は、例えば、主に多孔質半導体、色素増感剤、電解質、溶媒などにより構成される。
多孔質半導体を構成する材料としては、例えば、酸化チタン、酸化タングステン、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、硫化カドミウム等公知の半導体から1種類以上を選択することが可能である。多孔質半導体を基板上に形成する方法としては、半導体粒子を含有するペーストをスクリーン印刷法、インクジェット法等で塗布し乾燥もしくは焼成する方法や、原料ガスを用いたCVD法等により製膜する方法、PVD法、蒸着法、スパッタ法、ゾルゲル法、電気化学的な酸化還元反応を利用した方法等が挙げられる。
【0038】
多孔質半導体に吸着する色素増感剤としては、可視光領域および赤外光領域に吸収を持つ種々の色素を用いることが可能である。ここで、多孔質半導体に色素を強固に吸着させるには、色素分子中にカルボン酸基、カルボン酸無水基、アルコキシ基、スルホン酸基、ヒドロキシル基、ヒドロキシルアルキル基、エステル基、メルカプト基、ホスホニル基等が存在することが好ましい。これらの官能基は、励起状態の色素と多孔質半導体の伝導帯との間の電子移動を容易にする電気的結合を提供する。
【0039】
これらの官能基を含有する色素として、例えば、ルテニウムビピリジン系色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、アゾ系色素、キナクリドン系色素、スクアリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポルフィリン系色素、フタロシアニン系色素、ベリレン系色素、インジゴ系色素、ナフタロシアニン系色素等が挙げられる。
【0040】
多孔質半導体への色素の吸着方法としては、例えば多孔質半導体を、色素を溶解した溶液(色素吸着用溶液)に浸漬する方法が挙げられる。色素吸着用溶液に用いられる溶媒としては、色素を溶解するものであれば特に制限されず、具体的には、エタノール、メタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリル等の窒素化合物類、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル等のエステル類、水等を挙げることができる。
【0041】
電解質は、酸化還元対とこれを保持する液体または高分子ゲル等固体の媒体からなる。
酸化還元対としては一般に、鉄系、コバルト系等の金属類や塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン物質が好適に用いられ、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム等の金属ヨウ化物とヨウ素の組み合わせが好ましく用いられる。さらに、ジメチルプロピルイミダゾールアイオダイド等のイミダゾール塩等を混入することもできる。
【0042】
また、溶媒としては、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、アセトニトリル等のニトリル化合物、エタノール、メタノール等のアルコール、その他、水や非プロトン極性物質等が用いられるが、中でも、カーボネート化合物やニトリル化合物が好適に用いられる。
【0043】
3−4.有機薄膜を用いた光電変換部
有機薄膜を用いた光電変換部は、電子供与性および電子受容性を持つ有機半導体材料で構成される電子正孔輸送層、または電子受容性を有する電子輸送層と電子供与性を有する正孔輸送層とが積層されたものであってもよい。
電子供与性の有機半導体材料としては、電子供与体としての機能を有するものであれば特に限定されないが、塗布法により製膜できることが好ましく、中でも電子供与性の導電性高分子が好適に使用される。
【0044】
ここで導電性高分子とはp共役高分子を示し、炭素−炭素またはヘテロ原子を含む二重結合または三重結合が、単結合と交互に連なったp共役系からなり、半導体的性質を示すものをさす。
【0045】
電子供与性の導電性高分子材料としては、例えばポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリカルバゾール、ポリビニルカルバゾール、ポリシラン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフルオレン、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、およびこれらの誘導体、共重合体、あるいはフタロシアニン含有ポリマー、カルバゾール含有ポリマー、有機金属ポリマー等が挙げられる。中でも、チオフェン−フルオレン共重合体、ポリアルキルチオフェン、フェニレンエチニレン−フェニレンビニレン共重合体、フルオレン−フェニレンビニレン共重合体、チオフェン−フェニレンビニレン共重合体等が好適に利用される。
【0046】
電子受容性の有機半導体材料としては、電子受容体としての機能を有するものであれば特に限定されないが、塗布法により製膜できることが好ましく、中でも電子供与性の導電性高分子が好適に使用される。
電子受容性の導電性高分子としては、例えばポリフェニレンビニレン、ポリフルオレン、およびこれらの誘導体、共重合体、あるいはカーボンナノチューブ、フラーレンおよびこれらの誘導体、CN基またはCF3基含有ポリマーおよびそれらの−CF3置換ポリマー等が挙げられる。
【0047】
また、電子供与性化合物がドープされた電子受容性の有機半導体材料や、電子受容性化合物がドープされた電子供与性の有機半導体材料等を用いることが可能である。電子供与性化合物がドープされる電子受容性の導電性高分子材料としては、上述の電子受容性の導電性高分子材料を挙げることができる。ドープされる電子供与性化合物としては、例えばLi、K、Ca、Cs等のアルカリ金属やアルカリ土類金属のようなルイス塩基を用いることができる。なお、ルイス塩基は電子供与体として作用する。また、電子受容性化合物がドープされる電子供与性の導電性高分子材料としては、上述した電子供与性の導電性高分子材料を挙げることができる。ドープされる電子受容性化合物としては、例えばFeCl3、AlCl3、AlBr3、AsF6やハロゲン化合物のようなルイス酸を用いることができる。なお、ルイス酸は電子受容体として作用する。
【0048】
上記にて示した光電変換部2においては、第一義的には太陽光を受光させ光電変換を行うことを想定しているが、用途により蛍光灯や白熱灯、LED、特定の熱源から発せられる光等の人工光を照射し光電変換を行うことも可能である。
【0049】
4.第2電極
第2電極5は、光電変換部2の裏面上に設けることができる。第2電極5を設けることにより、光電変換部2の裏面の電位と第1電解用電極8の電位をほぼ同じにすることができる。また、光電変換部2の裏面と第1電解用電極8との間に流れる電流を大きくすることができる。このことにより、光電変換部2で生じた起電力により第1気体または第2気体をより効率的に発生させることができる。
第2電極5は、導電性を有すれば特に限定されないが、例えば、金属薄膜であり、また、例えば、Al、Ag、Auなどの薄膜である。これらは、例えば、スパッタリングなどにより形成することができる。また、例えば、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2等の透明導電膜である。
【0050】
5.熱電変換部
熱電変換部30は、光電変換部2の裏面と第1電解用電極8または第2電解用電極7との間に設けられる。また、熱電変換部30は、吸熱面と放熱面とを有することができる。この吸熱面は、熱電変換部の光電変換部側の面とすることができ、放熱面は、熱電変換部30の第1電解用電極8側または第2電解用電極7側とすることができる。このことにより、熱電変換部30は、光電変換部2から吸熱し、第1電解用電極8または第2電解用電極7に放熱することができる。光電変換部2を冷却しこの温度を低くすることにより、光電変換部2の光電変換効率を高くすることができる。また、第1電解用電極8または第2電解用電極7を加熱しこの温度を高くすることにより、第1電解用電極8および第2電解用電極7における電解液の電解反応の速度を速くすることができ、第1気体および第2気体の発生効率を高くすることができる。
【0051】
熱電変換部30は、p型半導体部6a、6b、n型半導体部3a、3b、第1熱電変換用電極26および第2熱電変換用電極27を有してもよい。また、p型半導体部6a、6bおよびn型半導体部3a、3bは、第1熱電変換用電極26および第2熱電変換用電極27に挟まれていてもよい。このことにより、p型半導体部6a、6bおよびn型半導体部3a、3bに電流を流すことができ、熱電変換部30は、第1熱電変換用電極26側と第2熱電変換用電極27側とに吸熱面と放熱面とを有することができる。なお、吸熱面と放熱面は、電流の流れる方向により交換可能である。また、p型半導体部6a、6bおよびn型半導体部3a、3bは、第1熱電変換用電極26および第2熱電変換用電極27を介して交互に直列接続されてもよい。
【0052】
p型半導体部6a、6bおよびn型半導体部3a、3bは、特に限定されないが、例えば、ビスマス(Bi)−テルル(Te)系のn型p型半導体対を用いることができ、Bi−Te成分にアンチモン(Sb)、セレン(Se)などを添加したものとすることができる。
【0053】
熱電変換部30に流す電流は、光電変換部2が受光することにより生じる起電力により流れる電流であってもよく、装置外部から供給される電力により流れる電流であってもよい。
熱電変換部30に光電変換部2の起電力により電流が流れるように構成することにより、熱電変換部に装置外部から電力を供給することなしに熱電変換を行うことができる。光電変換部2が受光することにより生じる起電力により電流が流れるように熱電変換部30を設ける方法は、特に限定されないが、例えば、図2のように第2熱電変換用電極27を第2電極5および第2電解用電極7にそれぞれ電気的に接続させて設ける方法である。
【0054】
また、p型半導体部6a、6bおよびn型半導体部3a、3bを流れる電流を制御する電流制御部を設けることもできる。この電流制御部は特に限定されないが、例えば、熱電変換用電極26、27と第2電極5とを電気的に接続する導電部24に温度より電気抵抗が変化しやすい材料を用いて形成することにより、流れる電流を制御することができる。また、シール材16の外部に電流制御部を設け、電流制御部によりp型半導体部6a、6bおよびn型半導体部3a、3bを流れる電流を制御してもよい。この場合、電流制御部は、熱電変換部30と外部電源とを電気的に接続させる配線を流れる電流を制御するように設けることができる。または電流制御部は、熱電変換部と光電変換部2とを電気的に接続させる配線を流れる電流を制御するように設けることができる。
【0055】
また、熱電変換部30は複数であってもよい。例えば、図4のように熱電変換部30a、30bを設けることができる。また、隣接する2つの熱電変換部30は、吸熱面と放熱面が逆側であってもよい。このことにより、この一方の熱電変換部30aは、光電変換部2を冷却し電解用電極を加熱することができ、もう一方の熱電変換部30bは、光電変換部2と電解用電極との間の温度差を利用して起電力を発生させることができる。この起電力を第1電解用電極8と第2電解用電極7における電解液の電解反応に利用することができ、第1気体および第2気体の発生量を多くすることができる。
【0056】
6.絶縁部
絶縁部11は、光電変換部2の裏面と熱電変換部30との間、熱電変換部30と第1電解用電極8および第2電解用電極7との間、第1導電部10と光電変換部2および熱電変換部30との間、第2導電部21と熱電変換部30との間およびp型半導体部6a、6bとn型半導体部3a、3bとの間に設けることができる。また、複数の熱電変換部30を設ける場合、隣接する2つの熱電変換部30の間に設けることもできる。
絶縁部11を設けることにより、リーク電流をより小さくすることができる。
【0057】
絶縁部11としては、有機材料、無機材料を問わず用いることが可能であり、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリアリーレン、芳香族ビニル化合物、フッ素系重合体、アクリル系重合体、ビニルアミド系重合体等の有機ポリマー、無機系材料としては、Al23等の金属酸化物、多孔質性シリカ膜等のSiO2や、フッ素添加シリコン酸化膜(FSG)、SiOC、HSQ(Hydrogen Silsesquioxane)膜、SiNx、シラノール(Si(OH)4)をアルコール等の溶媒に溶かし塗布・加熱することにより製膜する方法を用いることが可能である。
【0058】
絶縁部11を形成する方法としては、絶縁性材料を含有するペーストをスクリーン印刷法、インクジェット法、スピンコーティング法等で塗布し乾燥もしくは焼成する方法や、原料ガスを用いたCVD法等により製膜する方法、PVD法、蒸着法、スパッタ法、ゾルゲル法を利用した方法等が挙げられる。
【0059】
7.第1導電部、第2導電部
第1導電部10は、第1電極4と第2電解用電極7とにそれぞれ接触するように設けることができる。第1導電部10を設けることにより、容易に光電変換部2の受光面に接触した第1電極4と第2電解用電極7とを電気的に接続することができる。また、第2導電部21は、第2電極5と第1電解用電極8にそれぞれ接触するように設けることができる。
第1導電部10は光電変換部2の受光面と接触した第1電極4と光電変換部2の裏面上に設けられた第2電解用電極7とに接触するため、光電変換部2の受光面と平行な第1導電部の断面積を大きくしすぎると、光電変換部2の受光面の面積を小さくすることにつながる。また、光電変換部2の受光面に平行な第1導電部10の断面積を小さくしすぎると光電変換部2の受光面の電位と第2電解用電極7の電位との間に差が生じ、電解液を分解する電位差が得られなくなる場合もあり、第1気体または第2気体の発生効率の減少につながる場合もある。従って、光電変換部2の受光面と平行な第1導電部の断面積は、一定の範囲である必要がある。例えば、光電変換部2の受光面と平行な第1導電部の断面積(第1導電部が複数の場合、その断面積の総計)は、光電変換部2の受光面の面積を100%としたとき、0.1%以上10%以下とすることができ、好ましくは、0.5%以上8%以下、さらに好ましくは、1%以上6%以下とすることができる。
【0060】
また、第1導電部10は、光電変換部2を貫通するコンタクトホールに設けられてもよい。このことにより、第1導電部10を設けることによる光電変換部2の受光面の面積の減少をより小さくすることができる。また、このことにより、光電変換部2の受光面と第2電解用電極7との間の電流経路を短くすることができ、より効率的に第1気体または第2気体を発生させることができる。また、このことにより、光電変換部2の受光面と平行な第1導電部10の断面積を容易に調節することができる。
また、第1導電部10が設けられたコンタクトホールは、1つまたは複数でもよく、円形の断面を有してもよい。また、光電変換部2の受光面と平行なコンタクトホールの断面積(コンタクトホールが複数の場合、その断面積の総計)は、光電変換部2の受光面の面積を100%としたとき、0.1%以上10%以下とすることができ、好ましくは、0.5%以上8%以下、さらに好ましくは、1%以上6%以下とすることができる。
また、第2導電部21は、熱電変換部30を貫通するコンタクトホールに設けられてもよい。
【0061】
第1導電部10、第2導電部21の材料は、導電性を有しているものであれば特に制限されない。導電性粒子を含有するペースト、例えばカーボンペースト、Agペースト等をスクリーン印刷法、インクジェット法等で塗布し乾燥もしくは焼成する方法や、原料ガスを用いたCVD法等により製膜する方法、PVD法、蒸着法、スパッタ法、ゾルゲル法、電気化学的な酸化還元反応を利用した方法等が挙げられる。
【0062】
8.第1電解用電極
第1電解用電極8は、光電変換部2の裏面側に設けられる。このことにより、第1電解用電極8は光電変換部2に入射する光を遮ることはない。
また、第1電解用電極8は、光電変換部2の裏面と電気的に接続する。このことにより、光電変換部2の裏面の電位と第1電解用電極8の電位をほぼ同じとすることができる。また、第1電解用電極8は、電解液室15に貯留する電解液に浸漬することが可能である。このことにより、第1電解用電極8の表面で電気分解反応を進行させることができる。これらのことから、第1電解用電極8は、光電変換部2の起電力により電解液から第1気体を発生させることができる。
【0063】
また、第1電解用電極8は、熱電変換部30の放熱面により加熱されることができる。このことにより第1電解用電極8の温度を高くすることができ、第1電解用電極8表面における電解液の電気分解反応を活性化することができる。その結果、第1気体を効率よく発生させることができる。
【0064】
また、第1電解用電極8は、第2電解用電極7と接触しないように設けることができる。このことにより、第1電解用電極8と第2電解用電極7との間にリーク電流が流れるのを防止することとができる。
また、第1電解用電極8は、電解液からH2を発生させる水素発生部または電解液からO2を発生させる酸素発生部であってもよい。このことにより、第1気体を水素または酸素とすることができ、本実施形態の気体製造装置により、電解液に含まれる水を分解し、燃料電池の燃料となる水素を製造することができる。
【0065】
9.第2電解用電極
第2電解用電極7は、光電変換部2の裏面側に設けられる。このことにより、第2電解用電極7は光電変換部2に入射する光を遮ることはない。
また、第2電解用電極7は、光電変換部2の受光面と電気的に接続する。このことにより、光電変換部2の受光面の電位と第2電解用電極7の電位をほぼ同じとすることができる。また、第2電解用電極7は、電解液室15に貯留する電解液に浸漬することが可能である。このことにより、第2電解用電極7の表面で電気分解反応を進行させることができる。これらのことから、第2電解用電極7は、光電変換部2の起電力により電解液から第2気体を発生させることができる。
【0066】
また、第2電解用電極7は、熱電変換部30の放熱面により加熱されることができる。このことにより第2電解用電極7の温度を高くすることができ、第2電解用電極7表面における電解液の電気分解反応を活性化することができる。その結果、第2気体を効率よく発生させることができる。
【0067】
また、第2電解用電極7は、第1電解用電極8と接触しないように設けることができる。このことにより、第1電解用電極8と第2電解用電極7との間にリーク電流が流れるのを防止することとができる。
また、第2電解用電極7は、電解液からH2を発生させる水素発生部または電解液からO2を発生させる酸素発生部であってもよい。このことにより、第2気体を水素または酸素とすることができ、本実施形態の気体製造装置により、電解液に含まれる水を分解し、燃料電池の燃料となる水素を製造することができる。
【0068】
10.水素発生部
水素発生部は、電解液からH2を発生させる部分であり、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうちどちらか一方とすることができる。また、水素発生部は、電解液からH2が発生する反応の触媒を含んでもよい。このことにより、電解液からH2が発生する反応の反応速度を大きくすることができる。水素発生部は、電解液からH2が発生する反応の触媒のみからなってもよく、この触媒が担持体に担持されたものであってもよい。また、水素発生部は、光電変換部2の受光面の面積より大きい触媒表面積を有してもよい。このことにより、電解液からH2が発生する反応をより速い反応速度とすることができる。また、水素発生部は、触媒が担持された多孔質の導電体であってもよい。このことにより、触媒表面積を大きくすることができる。また、光電変換部2の受光面または裏面と水素発生部に含まれる触媒との間に電流が流れることによる電位の変化を抑制することができる。また、この水素発生部を第1電解用電極8としたとき、第2電極5を省略しても光電変換部2の裏面と触媒との間に電流が流れることによる電位の変化を抑制することができる。さらに、水素発生部は、水素発生触媒としてPt、Ir、Ru、Pd、Rh、Au、Fe、NiおよびSeのうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0069】
電解液からH2が発生する反応の触媒(水素発生触媒)は、2つのプロトンと2つの電子から1分子の水素への変換を促進する触媒であり、化学的に安定であり、水素生成過電圧が小さい材料を用いることができる。例えば、水素に対して触媒活性を有するPt,Ir,Ru,Pd,Rh,Au等の白金族金属およびその合金あるいは化合物、水素生成酵素であるヒドロゲナーゼの活性中心を構成するFe,Ni,Seの合金あるいは化合物、およびこれらの組み合わせ等を好適に用いることが可能である。中でもPtおよびPtを含有するナノ構造体は水素発生過電圧が小さく好適に用いることが可能である。光照射により水素発生反応が確認されるCdS,CdSe,ZnS,ZrO2などの材料を用いることもできる。
【0070】
水素発生触媒を直接光電変換部2の裏面などに担持することは可能であるが、反応面積をより大きくし気体生成速度を向上させるために、触媒を導電体に担持することができる。触媒を担持する導電体としては、金属材料、炭素質材料、導電性を有する無機材料等が挙げられる。
【0071】
金属材料としては、電子伝導性を有し、酸性雰囲気下で耐腐食性を有する材料が好ましい。具体的には、Au、Pt、Pd等の貴金属、Ti、Ta、W、Nb、Ni、Al、Cr、Ag、Cu、Zn、Su、Si等の金属並びにこれらの金属の窒化物および炭化物、ステンレス鋼、Cu−Cr、Ni−Cr、Ti−Pt等の合金が挙げられる。金属材料には、Pt、Ti、Au、Ag、Cu、Ni、Wからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を含むことが、他の化学的な副反応が少ないという観点から、より好ましい。これら金属材料は、比較的電気抵抗が小さく、面方向に電流を取り出しても電圧の低下を抑制することができる。また、Cu、Ag、Zn等の酸性雰囲気下での耐腐食性に乏しい金属材料を用いる場合には、Au、Pt、Pd等の耐腐食性を有する貴金属および金属、カーボン、グラファイト、グラッシーカーボン、導電性高分子、導電性窒化物、導電性炭化物、導電性酸化物等によって耐腐食性に乏しい金属の表面をコーティングしてもよい。
【0072】
炭素質材料としては、化学的に安定で導電性を有する材料が好ましい。例えば、アセチレンブラック、バルカン、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、VGCF、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、フラーレン等の炭素粉末や炭素繊維が挙げられる。
【0073】
導電性を有する無機材料としては、例えば、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2、酸化アンチモンドープ酸化スズが挙げられる。
【0074】
なお、導電性高分子としては、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン等が挙げられ、導電性窒化物としては、窒化炭素、窒化ケイ素、窒化ガリウム、窒化インジウム、窒化ゲルマニウム、窒化チタニウム、窒化ジルコニウム、窒化タリウム等が挙げられ、導電性炭化物としては、炭化タンタル、炭化ケイ素、炭化ジルコニウム、炭化チタニウム、炭化モリブデン、炭化ニオブ、炭化鉄、炭化ニッケル、炭化ハフニウム、炭化タングステン、炭化バナジウム、炭化クロム等が挙げられ、導電性酸化物としては、酸化スズ、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化アンチモンドープ酸化スズ等が挙げられる。
【0075】
水素発生触媒を担持する導電体の構造としては、板状、箔状、棒状、メッシュ状、ラス板状、多孔質板状、多孔質棒状、織布状、不織布状、繊維状、フェルト状が好適に使用できる。また、フェルト状電極の表面を溝状に圧着した溝付き導電体は、電気抵抗と電極液の流動抵抗を低減できるので好適である。
【0076】
11.酸素発生部
酸素発生部は、電解液からO2を発生させる部分であり、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうちどちらか一方である。また、酸素発生部は、電解液からO2が発生する反応の触媒を含んでもよい。このことにより、電解液からO2が発生する反応の反応速度を大きくすることができる。また、酸素発生部は、電解液からO2が発生する反応の触媒のみからなってもよく、この触媒が担持体に担持されたものであってもよい。また、酸素発生部は、光電変換部2の受光面の面積より大きい触媒表面積を有してもよい。このことにより、電解液からO2が発生する反応をより速い反応速度とすることができる。また、酸素発生部は、触媒が担持された多孔質の導電体であってもよい。このことにより、触媒表面積を大きくすることができる。また、光電変換部2の受光面または裏面と酸素発生部に含まれる触媒との間に電流が流れることによる電位の変化を抑制することができる。また、この酸素発生部を第1電解用電極8としたとき、第2電極5を省略しても光電変換部2の裏面と触媒との間に電流が流れることによる電位の変化を抑制することができる。さらに、酸素発生部は、酸素発生触媒としてMn、Ca、Zn、CoおよびIrのうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0077】
電解液からO2が発生する反応の触媒(酸素発生触媒)は、2つの水分子から1分子の酸素および4つのプロトンと4つの電子への変換を促進する触媒であり、化学的に安定であり、酸素発生過電圧が小さい材料を用いることができる。例えば、光を用い水から酸素発生を行う反応を触媒する酵素であるPhotosystem IIの活性中心を担うMn,Ca,Zn,Coを含む酸化物あるいは化合物や、Pt,RuO2,IrO2等の白金族金属を含む化合物や、Ti,Zr,Nb,Ta,W,Ce,Fe,Ni等の遷移金属を含む酸化物あるいは化合物、および上記材料の組み合わせ等を用いることが可能である。中でも酸化イリジウム、酸化マンガン、酸化コバルト、リン酸コバルトは、過電圧が小さく酸素発生効率が高いことから好適に用いることができる。
【0078】
酸素発生触媒を直接光電変換部2の裏面に担持することは可能であるが、反応面積をより大きくし気体生成速度を向上させるために、触媒を導電体に担持することができる。触媒を担持する導電体としては、金属材料、炭素質材料、導電性を有する無機材料等が挙げられる。これらの説明は、「10.水素発生部」に記載した水素発生触媒についての説明が矛盾がない限り当てはまる。
【0079】
水素発生触媒および酸素発生触媒の単独の触媒活性が小さい場合、助触媒を用いることも可能である。例えば、Ni,Cr,Rh,Mo,Co,Seの酸化物あるいは化合物などが挙げられる。
【0080】
なお、水素発生触媒、酸素発生触媒の担持方法は、導電体もしくは半導体に直接塗布する方法や、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等のPVD法、CVD法等の乾式塗工法、電析法など、材料により適宜その手法を変え作製ことが可能である。光電変換部と触媒の間に適宜導電物質を担持することが可能である。また水素発生および酸素発生のための触媒活性が十分でない場合、金属やカーボン等の多孔質体や繊維状物質、ナノ粒子等に担持することにより反応表面積を大きくし、水素及び酸素発生速度を向上させることが可能である。
【0081】
12.電解液室
電解液室15は、第1電解用電極8および第2電解用電極7が浸漬する電解液を貯留可能に設けることができる。このことにより、第1電解用電極8および第2電解用電極7を電解液に浸漬することができ、第1電解用電極8と第2電解用電極7の表面で電解液の電気分解反応を進行させることができる。電解液室15は、例えば、第1電解用電極8および第2電解用電極7と背面基板14との間に形成される空間とすることができる。
また、電解液室15は、第1電解用電極8から発生させた第1気体および第2電解用電極7から発生させた第2気体を回収するための流路とすることができる。
【0082】
13.背面基板
背面基板14は、第1電解用電極8および第2電解用電極7の上に透光性基板1と対向するように設けることができる。また、背面基板14は、第1電解用電極8および第2電解用電極7と背面基板14との間に空間が設けられるように設けることができる。この空間を電解液室15とすることができる。
また、背面基板14は、光電変換部2、熱電変換部30、第1電解用電極8および第2電解用電極7を収容でき、電解液室15を形成することができる外箱の一部であってもよい。
【0083】
また、背面基板14は、電解液を貯留し、生成した第1気体および第2気体を閉じ込めるための電解液室15を構成するため、機密性が高い物質が求められる。背面基板14は、透明なものであっても不透明なものであっても特に限定されるものではない。背面基板としては、例えば石英ガラス、パイレックス(登録商標)、合成石英板等の透明なリジッド材、あるいは透明樹脂板、透明樹脂フィルムなどを挙げることができる。中でも、ガスの透過性がなく、化学的物理的に安定な物質である点でガラス材を用いることが好ましい。
【0084】
背面基板14に外箱を用いる場合、外箱は、例えばステンレス鋼等の鋼材または、ジルコニア、アルミナ等のセラミック、フェノール樹脂、メラミン樹脂(MF)、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂等の合成樹脂からなることが好ましい。
【0085】
14.隔壁
隔壁13は、第1電解用電極8と背面基板14との間の空間および第2電解用電極7と背面基板14との間の空間とを仕切るように設けることができる。このことにより、第1電解用電極8および第2電解用電極7で発生させた第1気体および第2気体が混合することを防止することができ、第1気体および第2気体を分離して回収することができる。
また、隔壁13は、イオン交換体を含んでもよい。このことにより、第1電解用電極8と背面基板14との間の空間の電解液と第2電解用電極7と背面基板14との間の空間の電解液でアンバランスとなったイオン濃度を一定に保つことができる。つまり、第1電解用電極8および第2電解用電極7における電気分解反応により生じたイオン濃度の不均衡が、イオンが隔壁9を介してイオンの移動が起こることにより解消することができる。なお、第1電解用電極8および第2電解用電極7においてH2Oの電気分解反応により水素と酸素を発生させる場合、隔壁13がイオン交換体を含むことにより、プロトン濃度の不均衡を解消することができる。
【0086】
電解液を電気分解し、水素および酸素を発生させる場合、電解液からの水素発生量および酸素発生量の割合は、2:1のモル比であり、第1電解用電極8と第2電解用電極7により、気体発生量が異なる。このため、装置内の含水量を一定量にする目的から、隔壁13は水を透過する材料であることが好ましい。
隔壁13は、例えば、多孔質ガラス、多孔質ジルコニア、多孔質アルミナ等の無機膜あるいはイオン交換体を用いることが可能である。イオン交換体としては、当該分野で公知のイオン交換体をいずれも使用でき、プロトン伝導性膜、カチオン交換膜、アニオン交換膜等を使用できる。
【0087】
プロトン伝導性膜の材質としては、プロトン伝導性を有しかつ電気的絶縁性を有する材質であれば特に限定されず、高分子膜、無機膜又はコンポジット膜を用いることができる。
【0088】
高分子膜としては、例えば、パーフルオロスルホン酸系電解質膜である、デュポン社製のナフィオン(登録商標)、旭化成社製のアシプレックス(登録商標)、旭硝子社製のフレミオン(登録商標)等の膜や、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン等の炭化水素系電解質膜等が挙げられる。
【0089】
無機膜としては、例えば、リン酸ガラス、硫酸水素セシウム、ポリタングストリン酸、ポリリン酸アンモニウム等からなる膜が挙げられる。コンポジット膜としては、スルホン化ポリイミド系ポリマー、タングステン酸等の無機物とポリイミド等の有機物とのコンポジット等からなる膜が挙げられ、具体的にはゴア社製のゴアセレクト膜(登録商標)や細孔フィリング電解質膜等が挙げられる。さらに、高温環境下(例えば、100℃以上)で使用する場合には、スルホン化ポリイミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、スルホン化ポリベンゾイミダゾール、ホスホン化ポリベンゾイミダゾール、硫酸水素セシウム、ポリリン酸アンモニウム等が挙げられる。
【0090】
カチオン交換膜としては、カチオンを移動させることができる固体高分子電解質であればよい。具体的には、パーフルオロカーボンスルフォン酸膜や、パーフルオロカーボンカルボン酸膜等のフッ素系イオン交換膜、リン酸を含浸させたポリベンズイミダゾール膜、ポリスチレンスルホン酸膜、スルホン酸化スチレン・ビニルベンゼン共重合体膜等が挙げられる。
【0091】
支持電解質溶液のアニオン輸率が高い場合には、アニオン交換膜の使用が好ましい。アニオン交換膜としては、アニオンの移動可能な固体高分子電解質を使用できる。具体的には、ポリオルトフェニレンジアミン膜、アンモニウム塩誘導体基を有するフッ素系イオン交換膜、アンモニウム塩誘導体基を有するビニルベンゼンポリマー膜、クロロメチルスチレン・ビニルベンゼン共重合体をアミノ化した膜等が挙げられる。
水素発生、酸素発生がそれぞれ水素発生触媒、酸素発生触媒にて選択的に行われ、これに伴うイオンの移動が起こる場合、必ずしもイオン交換のための特殊な膜等の部材を配置する必要はない。ガスを物理的に隔離することのみの目的であれば、後述のシール剤に記載の紫外線硬化性樹脂あるいは熱硬化性樹脂を用いることが可能である。
【0092】
15.シール材
シール材16は、透光性基板1と背面基板14を接着し、電解液室15を構成するための材料である。また、背面基板14に箱状のものを用いた場合、シール材16は、箱状のものと透光性基板1とを接着するための材料である。シール材16は、例えば、紫外線硬化性接着剤、熱硬化性接着剤等が好適に使用されるが、その種類は限定されるものではない。紫外線硬化性の接着剤としては、200〜400nmの波長を持つ光を照射することにより重合が起こり光照射後数秒で硬化反応が起こる樹脂であり、ラジカル重合型とカチオン重合型に分けられ、ラジカル重合型樹脂としてはアクリルレート、不飽和ポリエステル、カチオン重合型としては、エポキシ、オキセタン、ビニルエーテル等が挙げられる。また熱硬化性の高分子接着剤としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、熱硬化性ポリイミド等の有機樹脂が挙げられる。熱硬化性の高分子接着剤は、熱圧着時に圧力を掛けた状態で加熱重合し、その後、加圧したまま、室温まで冷却することにより、各部材を良好に接合させるため、締め付け部材等を要しない。また、有機樹脂に加えて、ガラス基板に対して密着性の高いハイブリッド材料を用いることが可能である。ハイブリッド材料を用いることによって、弾性率や硬度等の力学的特性が向上し、耐熱性や耐薬品性が飛躍的に向上する。ハイブリッド材料は、無機コロイド粒子と有機バインダ樹脂とから構成される。例えば、シリカなどの無機コロイド粒子と、エポキシ樹脂、ポリウレタンアクリレート樹脂やポリエステルアクリレート樹脂などの有機バインダ樹脂とから構成されるものが挙げられる。
【0093】
ここではシール材16と記しているが、基板1と背面基板14などを接着させる機能を有するものであれば限定されず、樹脂製あるいは金属製のガスケットを用い外部からネジ等の部材を用いて物理的に圧力を加え機密性を高める方法等を適宜用いることも可能である。
【0094】
16.給水口、第1気体排出口および第2気体排出口
給水口18は、例えば、気体製造装置23に含まれるシール材16の一部に開口を作ることにより設けることができる。給水口18は、電解液室15に電解液を供給するために設置され、その配置箇所および形状は、電解液が効率よく気体製造装置へ供給されさえすれば、特に限定されるものではないが、流動性および供給の容易性の観点から、傾斜して設置した気体製造装置の下部に設けることが好ましい。
【0095】
また、第1気体排出口20および第2気体排出口19は、気体製造装置23を傾斜させて設置したとき、気体製造装置23の上側の部分のシール材16に開口を作ることにより設けることができる。また、第1気体排出口20と第2気体排出口19は、それぞれ隔壁13を挟んで第1電解用電極側と第2電解用電極側に設けることができる。
【0096】
このように給水口18、第1気体排出口20および第2気体排出口19を設けることにより、気体製造装置23を光電変換部2の受光面が上向きの状態で水平面に対し傾斜し、給水口18が下側になり第1気体排出口20および第2気体排出口19が上側になるように設置することができる。このように設置することにより、給水口18から電解液を気体製造装置23内に導入し、電解液室15を電解液で満たすことができる。この状態で、気体製造装置23に光を入射させることにより、第1電解用電極および第2電解用電極でそれぞれ、連続して第1気体および第2気体を発生させることができる。この発生した第1気体および第2気体は、隔壁13により分離することができ、第1気体及び第2気体は気体製造装置23の上部へ上昇し、第1気体排出口20および第2気体排出口19から回収することができる。
【0097】
17.電解液
電解液は、電解質を含む水溶液であり、例えば、0.1MのH2SO4を含む電解液、0.1Mリン酸カリウム緩衝液などであるが、気体発生反応のためのイオン移動が起これば電解質の種類は問われず、電解質濃度は限定されない。
【符号の説明】
【0098】
1: 透光性基板 2:光電変換部 3a、3b、3c:n型半導体部 4:第1電極 5:第2電極 6a、6b、6c:p型半導体部 7:第2電解用電極 8:第1電解用電極 10:第1導電部 11a、11b、11c、11d、11e、11f、11g、11h、11i:絶縁層 13:隔壁 14:背面基板 15a、15b:電解液室 16:シール材 18:給水口 19:第2気体排出口 20:第1気体排出口 21:第2導電部 23:気体製造装置 24、24a、24b、28、28a、28b:導電部 26、26a、26b:第1熱電変換用電極 27、27a、27b:第2熱電変換用電極 30、30a、30b:熱電変換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光面とその裏面を有し、かつ、受光することにより前記受光面と前記裏面との間に電位差が生じる光電変換部と、
前記光電変換部の裏面側に設けられ、かつ、前記光電変換部の裏面と電気的に接続した第1電解用電極と、
前記光電変換部の裏面側に設けられ、かつ、前記光電変換部の受光面と電気的に接続した第2電解用電極と、
前記光電変換部の裏面と第1電解用電極または第2電解用電極との間に設けられた熱電変換部とを備え、
第1電解用電極および第2電解用電極は、電解液に浸漬可能に設けられ、かつ、前記光電変換部が受光することより生じる起電力により電解液を電気分解しそれぞれ第1気体及び第2気体を発生させることができるように設けられ、
前記熱電変換部は、前記光電変換部から吸熱し第1電解用電極または第2電解用電極に放熱することを特徴とする気体製造装置。
【請求項2】
前記光電変換部の受光面上に設けられた第1電極と、前記光電変換部の裏面上に設けられた第2電極とをさらに備え、
第1電極は、第2電解用電極と電気的に接続し、第2電極は、第1電解用電極と電気的に接続する請求項1に記載の装置。
【請求項3】
第2電極と前記熱電変換部との間に設けられた第1絶縁層と、前記熱電変換部と第1電解用電極または第2電解用電極との間に設けられた第2絶縁層とをさらに備える請求項2に記載の装置。
【請求項4】
第1電極と第2電解用電極とを電気的に接続する第1導電部と、第2電極と第1電解用電極とを電気的に接続する第2導電部とをさらに備え、
第1導電部は、前記光電変換部および前記熱電変換部を貫通するコンタクトホール内に設けられ、
第2導電部は、前記熱電変換部を貫通するコンタクトホール内に設けられた請求項2または3に記載の装置。
【請求項5】
前記熱電変換部は、p型半導体部、n型半導体部、第1熱電変換用電極および第2熱電変換用電極を備え、
前記p型半導体部および前記n型半導体部は、第1熱電変換用電極および第2熱電変換用電極に挟まれた請求項1〜4のいずれか1つに記載の装置。
【請求項6】
前記p型半導体部および前記n型半導体部は、前記光電変換部が受光することにより生じる起電力により電流が流れるように設けられた請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記p型半導体部および前記n型半導体部を流れる電流を制御する電流制御手段をさらに備える請求項5または6に記載の装置。
【請求項8】
前記熱電変換部は、複数である請求項1〜7のいずれか1つに記載の装置。
【請求項9】
透光性基板をさらに備え、
前記光電変換部は、前記受光面が前記透光性基板側となるように前記透光性基板上に設けられた請求項1〜8のいずれか1つに記載の装置。
【請求項10】
第1電解用電極または第2電解用電極を浸漬させる電解液を貯留可能な電解液室をさらに備える請求項1〜9のいずれか1つに記載の装置。
【請求項11】
前記光電変換部の裏面側に背面基板をさらに備え、
前記電解液室は、前記光電変換部の裏面と前記背面基板との間に設けられた請求項10に記載の装置。
【請求項12】
第1電解用電極が浸漬する電解液を貯留可能な電解液室と、第2電解用電極が浸漬する電解液を貯留可能な電解液室とを仕切る隔壁をさらに備える請求項10または11に記載の装置。
【請求項13】
前記隔壁は、イオン交換体を含む請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記光電変換部は、p型半導体層、i型半導体層およびn型半導体層を備える光電変換層を有する請求項1〜13のいずれか1つに記載の装置。
【請求項15】
第1電解用電極および第2電解用電極のうち、一方は、電解液からH2を発生させる水素発生部であり、他方は、電解液からO2を発生させる酸素発生部であり、
前記水素発生部および前記酸素発生部は、それぞれ電解液からH2が発生する反応の触媒および電解液からO2が発生する反応の触媒を含む請求項1〜14のいずれか1つに記載の装置。
【請求項16】
前記水素発生部および前記酸素発生部のうち少なくとも一方は、触媒が担持された多孔質の導電体から形成された請求項15に記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−21197(P2012−21197A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160748(P2010−160748)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】