説明

気分障害を治療するためのカルボスチリル誘導体及び気分安定薬

本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される担体中に、ドパミン−セロトニン システム スタビライザーであるカルボスチリル誘導体と気分安定薬とを含有する。カルボスチリル誘導体は、アリピプラゾールであってもその代謝産物であってもよい。気分安定薬としては、リチウム、バルプロ酸、ジバルプロックスナトリウム、カルバマゼピン、オクスカルバマゼピン、ゾニサミド、ラモトリジン、トピラメート、ガバペンチン、レベチラセタムまたはクロナゼパムが挙げられるが、これらに限定されない。これらの組成物は、気分障害、特に精神病的特徴を有するもしくはまたは有さない双極性障害、躁病または混合性エピソードを有する患者を治療するために用いられる。気分障害を有する患者にカルボスチリル誘導体と気分安定薬とを別々に投与するための方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬学的に許容される担体中に、気分安定薬と組み合わせて、ドパミン−セロトニン システム スタビライザーとしての役割を果たすカルボスチリル誘導体を含む医薬組成物を提供する。本発明は、本発明の組成物を用い、またはこれらのカルボスチリル誘導体と気分安定薬とを別個に投与することによる、気分障害(例えば、精神病的特徴を有するもしくは有さない双極性障害、躁病または混合性エピソード)を治療するための方法を提供する。本発明のカルボスチリル誘導体としては、アリピプラゾール及びその代謝産物(例えば、デヒドロアリピプラゾール)が挙げられるがこれらに限定されない。気分安定薬としては、リチウム、バルプロ酸、ジバルプロックスナトリウム、カルバマゼピン、オクスカルバマゼピン(oxcarbamazapine)、ゾニサミド、ラモトリジン(lamotragine)、トピラメート(topiramate)、ガバペンチン(gabapentin)、レベチラセタム(levetiracetam)及びクロナゼパムが挙げられるがこれらに限定されない。
【背景技術】
【0002】
気分障害(例えば、精神病的特徴を有するまたは有さない双極性障害、躁病または混合性エピソード)を有する人の数は、多くの理由から、毎年増加している。1950年代以降、モノアミン再取り込み阻害作用を有する三環系抗鬱剤(例えば、イミプラミン、デシプラミン、アミトリプチリン等)が開発されている。これらは、気分障害に罹患した患者を治療するために頻繁に用いられている。しかし、これらの薬剤は、以下のような副作用を有している:抗コリン作用に基づく口渇、眼のかすみ、排尿障害、便秘、認知障害等;αアドレナリン受容体アンタゴニスト作用に基づく起立性低血圧、頻脈等の循環器系副作用;ヒスタミンH受容体アンタゴニスト作用に基づく過鎮静、体重増加等の副作用。
【0003】
精神病的特徴を有するまたは有しない双極性障害、躁病または混合性エピソードを含む気分障害は、ヘテロジーナスな疾患であり、これらの疾患の原因は完全には理解されていないが、セロトニン、ノルエピネフリン及びドパミン等によるモノアミン作動性中枢神経系異常、各種ホルモン及びペプチド異常ならびに各種ストレス因子が、鬱病及び種々の他の気分障害の原因であるようである(久保田正春他著、臨床精神医学、第29巻、第891〜899頁(2000))。そのため、気分安定薬(例えば、リチウム、バルプロ酸、ジバルプロックスナトリウム、カルバマゼピン、オクスカルバマゼピン、ゾニサミド、ラモトリジン、トピラメート、ガバペンチン、レベチラセタム及びクロナゼパム)が用いられる場合でさえも、これらの薬剤は、全ての患者の治療において必ずしも有効ではない。
【0004】
新規の治療の試みとしては、非定型抗精神病薬(例えば、統合失調症治療薬(抗精神病薬)であるオランゼピンまたはクエチアピン)と気分安定薬(例えば、バルプロエート、リチウムまたはジバルプロックス)との提唱されている併用治療が挙げられる((Arch.Gen.Psychiatry、2002 Jan.59:1):62−69;J Am Acad Child Adolesc Psychiatry 2002 Oct;41(10):1216−23:)。
【0005】
さらに、市販の非定型抗精神病薬は、それらの安全性に関して重大な問題を有している。例えば、クロザピン、オランザピン及びクエチアピンは、体重を増加させ糖尿病のリスクを増加させる(Newcomer,J.W.著(監訳 青葉安里)、臨床精神薬理、第5巻、第911〜925頁(2002))、Haupt,D.W.及びNewcomer,J.W.(翻訳 藤井康男及び三澤史斉)、臨床精神薬理、第5巻、第1063〜1082頁(2002))。実際に、日本ではオランザピン及びクエチアピンにより引き起こされる高血糖、糖尿病性ケトアシドーシス及び糖尿病性昏睡に関連し、これらの薬物が糖尿病の患者、糖尿病の既往歴のある患者に対して投与禁忌であることを示す緊急安全性情報が出された。リスペリドンは血中プロラクチンレベルを上昇させ、そして高用量では錐体外路系副作用を引き起こす。ジプラシドンは心臓QTc延長作用に基づく重症不整脈のリスクを増加させる。さらに、クロザピンは、無顆粒球症を誘発し、その臨床使用が厳密に制限されている(van Kammen, D. P. 著(監修 村崎光邦)、臨床精神薬理、第4巻、第483〜492頁(2001))。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、有効でありかつ従来の化合物に関連する有害な副作用を引き起こさない、気分障害、特に精神病的特徴を有するまたは有さない双極性障害、躁病または混合性エピソードの治療に有用な新規の組成物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の要旨
本発明は、気分障害、特に、双極性障害(双極性障害I、双極性障害II、精神病的特徴を有するまたは有さない双極性障害が挙げられるがこれらに限定されない)、及び躁病、急性躁病、双極性鬱病(bipolar depression)または混合性エピソードを治療するために新規組成物及びこれらの組成物を使用する方法を提供することによって上記の問題を解決する。
【0008】
本発明は、上述の問題の解決法を提供し、そして例えば、双極性障害及び躁病のような気分障害を有する患者に、薬学的に許容される担体中に、少なくとも1種の気分安定薬と組み合わせてドパミン−セロトニン システム スタビライザーである少なくとも1種のカルボスチリル誘導体を含有する組成物を投与することによって、効果的にそのような障害が治療され得ることを実証する。ドパミン−セロトニン システム スタビライザーである本発明の好ましいカルボスチリル誘導体は、アリピプラゾールまたはその代謝産物である。ドパミン−セロトニン システム スタビライザーである本発明の別の好ましいカルボスチリル誘導体は、デヒドロアリピプラゾール(OPC−14857としても公知である)と呼ばれるアリピプラゾールの代謝産物である。本発明に含まれる、他のそのようなアリピプラゾールの代謝産物は、図8に示される。好ましいアリピプラゾール代謝産物は、以下の名称:OPC−14857、DM−1458、DM−1451、DM−1452、DM−1454及びDCPPにより示され、図8に示される。
【0009】
アリピプラゾールは、7−{4−[4−(2,3−ジクロロフェニル)−1−ピペラジニル]ブトキシ}−3,4−ジヒドロ−2(1H)−キノリノンとも呼ばれる、カルボスチリルであり、そして統合失調症を治療するために有用である(特開平2−191256号公報、米国特許第5,006,528号)。アリピプラゾールは、また、7−[4−[4−(2,3−ジクロロフェニル)−1−ピペラジニル]ブトキシ]−3,4−ジヒドロカルボスチリル、Abilify、OPC−14597、OPC−31及びBMS−337039としても公知である。アリピプラゾールは、5−HT1A受容体アゴニスト作用を有し、内因性鬱病(endogenous depression)、大鬱病(major depression)、メランコリー(melancholia)等の鬱病、難治性鬱病等の治療に有用な化合物として知られている(WO 02/060423A2;Jordan et al 米国特許出願2002/0173513A1)。アリピプラゾールは、セロトニン受容体及びドパミン受容体に対するアゴニストとしての活性を有し、セロトニン5HT1A受容体でアゴニストまたはパーシャルアゴニストとして、及び、ドパミンD受容体でアゴニストまたはパーシャルアゴニストとして作用する。アリピプラゾールは、ドパミン−セロトニン システム スタビライザーである。アリピプラゾールの代謝産物は、本発明の範囲内に含まれる。アリピプラゾールの1つのこのような代謝産物は、デヒドロアリピプラゾールと呼ばれる。本発明に含まれるアリピプラゾールの他のこのような代謝産物は、図8に示される。好ましい代謝産物は、以下の表示:OPC−14857、DM−1458、DM−1451、DM−1452、DM−1454及びDCPPによって示され、図8に示される。
【0010】
本発明において使用される少なくとも1つの気分安定薬としては、以下:リチウム、バルプロ酸、ジバルプロックスナトリウム、カルバマゼピン、オクスカルバマゼピン、ゾニサミド、ラモトリジン、トピラメート、ガバペンチン、レベチラセタム及びクロナゼパムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0011】
薬学的に許容される担体中にドパミン−セロトニン システム スタビライザーとしての活性を有するカルボスチリル誘導体と少なくとも1種の気分安定薬とを含有する本発明の新規組成物は、1つの投薬形態中(例えば、丸薬)で組み合わせられてもよい。あるいは、ドパミン−セロトニン システム スタビライザーとしての活性を有するカルボスチリル誘導体と少なくとも1種の気分安定薬とは、各々薬学的に許容される担体中の、別個の投薬形態であってもよい。これらの組成物は、気分障害(例えば、双極性障害または躁病)を有する患者に、その気分障害を治療するのに有効な量及び用法(dose regimen)で投与される。
【0012】
従って、本発明の目的は、気分障害を治療するために有用な組成物を提供することである。
【0013】
本発明の目的は、気分障害(該気分障害が双極性障害である)を治療するために有用な組成物を提供することである。
【0014】
本発明の目的は、気分障害(該気分障害が躁病である)を治療するために有用な組成物を提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、薬学的に許容される担体中にドパミン−セロトニン システム スタビライザーとしての活性を有するカルボスチリル誘導体と少なくとも1種の気分安定薬とを含有する組成物を提供することである。
【0016】
本発明のなお別の目的は、薬学的に許容される担体中にドパミン−セロトニン システム スタビライザーとしての活性を有するカルボスチリル誘導体と少なくとも1種の気分安定薬とを含有する組成物であって、該カルボスチリル誘導体がアリピプラゾールまたはその代謝産物である組成物を提供することである。
【0017】
本発明のなお別の目的は、ドパミン−セロトニン システム スタビライザーとしての活性を有するカルボスチリル誘導体と少なくとも1つの気分安定薬とを含む組成物であって、該ドパミン−セロトニン システム スタビライザーとしての活性を有するカルボスチリル誘導体が、アリピプラゾールの代謝産物であり、そしてOPC−14857、DM−1458、DM−1451、DM−1452、DM−1454またはDCPPである組成物を提供することである。
【0018】
本発明のなお別の目的は、ドパミン−セロトニン システム スタビライザーとしての活性を有するカルボスチリル誘導体と少なくとも1つの気分安定薬とを含む組成物であって、該カルボスチリル誘導体がデヒドロアリピプラゾールである組成物を提供することである。
【0019】
本発明の目的は、気分障害の治療方法を提供することである。
【0020】
本発明の目的は、気分障害の治療方法であって、該気分障害が双極性障害である方法を提供することである。
【0021】
本発明の目的は、気分障害の治療方法であって、該気分障害が躁病である方法を提供することである。
【0022】
本発明の別の目的は、気分障害を有する患者への、薬学的に許容される担体中にドパミン−セロトニン システム スタビライザーとしての活性を有するカルボスチリル誘導体と少なくとも1つの気分安定薬とを含む組成物の投与を含む、気分障害の治療方法を提供することである。
【0023】
本発明のなお別の目的は、気分障害を有する患者への、薬学的に許容される担体中にドパミン−セロトニン システム スタビライザーとしての活性を有するカルボスチリル誘導体を含む組成物と薬学的に許容される担体中に少なくとも1つの気分安定薬を含む組成物との投与を含む、気分障害の治療方法を提供することである。
【0024】
本発明の別の目的は、気分障害を有する患者への、薬学的に許容される担体中にドパミン−セロトニン システム スタビライザーとしての活性を有するカルボスチリル誘導体と少なくとも1つの気分安定薬とを一緒に含む組成物の投与を含む、気分障害の治療方法であって、該カルボスチリル誘導体がアリピプラゾールまたはその代謝産物である方法を提供することである。
【0025】
本発明のなお別の目的は、気分障害を有する患者への、薬学的に許容される担体中にドパミン−セロトニン システム スタビライザーとしての活性を有するカルボスチリル誘導体を含む組成物(ここで該カルボスチリル誘導体がアリピプラゾールまたはその代謝産物である)と薬学的に許容される担体中に少なくとも1つの気分安定薬を含む組成物との投与を含む、気分障害の治療方法を提供することである。
【0026】
本発明のなお別の目的は、気分障害を有する患者への、薬学的に許容される担体中にドパミン−セロトニン システム スタビライザーとしての活性を有するカルボスチリル誘導体と少なくとも1つの気分安定薬とを含む組成物の投与を含む、気分障害の治療方法であって、該カルボスチリル誘導体が、アリピプラゾールの代謝産物であり、デヒドロアリピプラゾール(OPC−14857)、DM−1458、DM−1451、DM−1452、DM−1454またはDCPPである方法を提供することである。
【0027】
本発明のなお別の目的は、気分障害を有する患者への、薬学的に許容される担体中にドパミン−セロトニン システム スタビライザーとしての活性を有するカルボスチリル誘導体を含む組成物(ここで、カルボスチリル誘導体は、アリピプラゾールの代謝産物であり、そしてデヒドロアリピプラゾール(OPC−14857)、DM−1458、DM−1451、DM−1452、DM−1454またはDCPPである)と薬学的に許容される担体中に少なくとも1つの気分安定薬を含む組成物との投与を含む、気分障害の治療方法を提供することである。
【0028】
本発明のなお別の目的は、気分障害を有する患者への、薬学的に許容される担体中にドパミン−セロトニン システム スタビライザーとしての活性を有するカルボスチリル誘導体と少なくとも1つの気分安定薬とを含む組成物の投与を含む、気分障害の治療方法であって、該気分障害が双極性障害である方法を提供することである。
【0029】
本発明のなお別の目的は、気分障害を有する患者への、薬学的に許容される担体中にドパミン−セロトニン システム スタビライザーとしての活性を有するカルボスチリル誘導体を含む組成物と薬学的に許容される担体中に少なくとも1つの気分安定薬を含む組成物との投与を含む、気分障害の治療方法であって、該気分障害が双極性障害である方法を提供することである。
【0030】
本発明のなお別の目的は、気分障害を有する患者への、薬学的に許容される担体中にドパミン−セロトニン システム スタビライザーとしての活性を有するカルボスチリル誘導体と少なくとも1つの気分安定薬とを含む組成物の投与を含む、気分障害の治療方法であって、該気分障害が躁病である方法を提供することである。
【0031】
本発明のなお別の目的は、気分障害を有する患者への、薬学的に許容される担体中にドパミン−セロトニン システム スタビライザーとしての活性を有するカルボスチリル誘導体を含む組成物と薬学的に許容される担体中に少なくとも1つの気分安定薬を含む組成物との投与を含む、気分障害の治療方法であって、該気分障害が躁病である方法を提供することである。
【0032】
本発明の別の目的は、気分障害を有する患者への、薬学的に許容される担体中にドパミン−セロトニン システム スタビライザーとしての活性を有するカルボスチリル誘導体と少なくとも1つの気分安定薬とを含む組成物の投与を含む、気分障害の治療方法を提供することである。
【0033】
本発明の別の目的は、気分障害を有する患者への、薬学的に許容される担体中にドパミン−セロトニン システム スタビライザーとしての活性を有するカルボスチリル誘導体を含む組成物と薬学的に許容される担体中に少なくとも1つの気分安定薬を含む組成物との個別の投与を含む、気分障害の治療方法を提供することである。
【0034】
本発明の別の目的は、気分障害を有する患者への、薬学的に許容される担体と共にドパミン−セロトニン システム スタビライザーとしての活性を有するカルボスチリル誘導体と少なくとも1つの気分安定薬とを含む組成物の投与を含む、気分障害の治療方法であって、該カルボスチリル誘導体がアリピプラゾールまたはその代謝産物である方法を提供することである。
【0035】
本発明のなお別の目的は、気分障害を有する患者への、薬学的に許容される担体中にドパミン−セロトニン システム スタビライザーとしての活性を有するカルボスチリル誘導体と少なくとも1つの気分安定薬とを含む組成物の投与を含む、気分障害の治療方法であって、該カルボスチリル誘導体が、アリピプラゾールの代謝産物であり、そしてOPC−14857、DM−1458、DM−1451、DM−1452、DM−1454またはDCPPである方法を提供することである。
【0036】
本発明のこれら及び他の目的、利点、ならびに使用は、好ましい実施形態の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲を読んだ後、当業者に明らかになる。
【0037】
詳細な説明
本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される担体中に、ドパミン−セロトニン システム スタビライザーとして活性なカルボスチリル誘導体を含む第一成分と、気分安定薬を含む第二成分とを含む。本発明の医薬組成物は、双極性障害及び躁病を含む気分障害の治療に有用である。
【0038】
医薬組成物:第一成分
第一成分は、ドパミン−セロトニン システム スタビライザーとして活性なカルボスチリル誘導体を含む。このようなカルボスチリル誘導体は、いくつかのセロトニン受容体及びいくつかのドパミン受容体でアゴニストまたはパーシャルアゴニストとして、好ましくはセロトニン5HT1A受容体でアゴニストまたはパーシャルアゴニストとしてそしてドパミンD受容体でアゴニストまたはパーシャルアゴニストとしての活性を有する。カルボスチリル誘導体は、米国特許第5,006,528号及び米国公開特許出願第2002/0173513A1に記載されている。本発明の1実施形態において、以下の式(1)によって示されるカルボスチリル誘導体が、使用される:
【0039】
【化1】

【0040】
[式中、カルボスチリル骨格における3位と4位との炭素間結合は、単結合または二重結合である。]
好ましい実施形態において、カルボスチリル誘導体のこの活性は、5HT1A受容体でアゴニストまたはパーシャルアゴニスト、そしてドパミンD受容体サブタイプでアゴニストまたはパーシャルアゴニストとしてのものである。別の好ましい実施形態において、本発明における第一成分として使用されるカルボスチリル誘導体は、アリピプラゾールまたはその代謝産物である。アリピプラゾールの代謝誘導体としては、デヒドロアリピプラゾール(OPC−14857とも呼ばれる)が挙げられるが、これに限定されない。他のアリピプラゾール代謝誘導体としては、OPC−14857、DM−1458、DM−1451、DM−1452、DM−1454及びDCPPのような、図8に示される化学構造体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
図8に示されるアリピプラゾール代謝産物の構造及び名称を以下に提供する:
【0042】
【化2】

【0043】
DCPP:1−(2,3−ジクロロフェニル)ピペラジン、及びN−2,3−ジクロロフェニルピペラジン、
【0044】
【化3】

【0045】
DM−14857、OPC−14857:7−{4−[4−(2,3−ジクロロフェニル)−1−ピペラジニル]ブトキシ}−2−(1H)−キノリノン(デヒドロアリピプラゾールとも呼ばれる)、
【0046】
【化4】

【0047】
DM−1451:7−{4−[4−(2,3−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)−1−ピペラジニル]ブトキシ}−3,4−ジヒドロ−2−(1H)−キノリノン、及びヒドロキシアリピプラゾール、
【0048】
【化5】

【0049】
DM−1458:2,3−ジクロロ−4−{4−[4−(2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−7−イルオキシ)−ブチル]−ピペラジン−1−イル}−フェニルサルフェート、及び硫酸化ヒドロキシアリピプラゾール、
【0050】
【化6】

【0051】
DM−1452:7−{4−[4−(2,3−ジクロロフェニル)−1−ピペラジニル]ブトキシ}−3,4−ジヒドロ−4−ヒドロキシ−2−(1H)−キノリノン、及びベンジルヒドロキシアリピプラゾール、
【0052】
【化7】

【0053】
DM−1454:DM−1454は、DM−1451のグルクロニドである。この構造は以下の名前によっても知られている:
1β−(2,3−ジクロロ−4−{4−[4−(2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−7−イルオキシ)−ブチル]−ピペラジン−1−イル}−フェノキシ)−D−グルコピラヌロニックアシッド(1β-(2,3-dichloro-4-{4-[4-(2-oxo-1,2,3,4-tetrahydroquinolin-7-yloxy)-butyl]-piperazin-1-yl}-phenoxy)-D-glucopyaranuronic acid)、
1β−(2,3−ジクロロ−4−{4−[4−(2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−7−イルオキシ)−ブチル]−ピペラジン−1−イル}−フェニル−ベータ)−D−グルコピラノシドゥロニックアシッド(1β-(2,3-dichloro-4-{4-[4-(2-oxo-1,2,3,4-tetrahydroquinolin-7-yloxy)-butyl]-piperazin-1-yl}-phenyl-beta)-D-glucopyaranosiduronic acid)
1β−(2,3−ジクロロ−4−{4−[4−(2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−7−イルオキシ)−ブチル]−ピペラジン−1−イル}−フェニル)−ベータ)−D−グルクロニド、
1β−(2,3−ジクロロ−4−{4−[4−(2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−7−イルオキシ)−ブチル]−ピペラジン−1−イル}−フェニル−ベータ)−D−グルクロン酸、及びグルクロニドアリピプラゾール。
【0054】
上述のカルボスチリル誘導体の全てが、本発明の実施において第一成分として使用され得る。

アリピプラゾールは、7−{4−[4−(2,3−ジクロロフェニル)−1−ピペラジニル]ブトキシ}−3,4−ジヒドロ−2(1H)−キノリノンとも呼ばれ、統合失調症を治療するための有効成分として有用なカルボスチリル化合物である(特開平2−191256号公報、米国特許第5,006,528号)。アリピプラゾールはまた、7−[4−[4−(2,3−ジクロロフェニル)−1−ピペラジニル]ブトキシ]−3,4−ジヒドロカルボスチリル、Abilify、OPC−14597、OPC−31及びBMS−337039としても公知である。アリピプラゾールは、5−HT1A受容体アゴニスト活性を有し、内因性鬱病(endogenous depression)、大鬱病(major depression)、メランコリー(melancholia)等の鬱病、難治性鬱病等を治療するための有用な化合物として公知である(WO 02/060423A2;Jordan et al. 米国特許出願2002/0173513A1)。アリピプラゾールは、セロトニン受容体及びドパミン受容体に対するアゴニストとして活性を有し、セロトニン5HT1A受容体でアゴニストまたはパーシャルアゴニストとして、そしてドパミンD受容体でアゴニストまたはパーシャルアゴニストとして作用する。
【0055】
アリピプラゾールは、他の非定型抗精神病薬と異なる新しい作用機序を有する抗精神病薬である。既存の定型及び非定型抗精神病薬は、ドパミンD受容体に対してアンタゴニストとして作用する。対照的に、アリピプラゾールはドパミンD受容体に対してパーシャルアゴニストとして作用する(石郷岡純及び稲田健著、臨床精神薬理、第4巻、第1653〜1664頁(2001)、Burris, K. D. et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 302, pp 381-389, 2002)。また、アリピプラゾ−ルは、ドパミンD受容体パーシャルアゴニスト作用に加えて、セロトニン5−HT1A受容体パーシャルアゴニスト作用及びセロトニン5−HT2A受容体アンタゴニスト作用を有している。従って、アリピプラゾールは、ドパミン−セロトニン システム スタビライザー(ドパミン−セロトニン神経系安定剤)として規定される新規カテゴリーに属する薬剤である(Burris, K. D. et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 302, pp381-389, 2002、Jordan, S. et al., Eur. J. Pharmacol., 441, pp137-140, 2002)。
【0056】
アリピプラゾールの調製方法
本発明で使用されるアリピプラゾール及びアリピプラゾール代謝産物は、例えば、遊離塩基、全ての型の結晶多形体、水和物、塩(酸付加塩等)等のいずれの形態であってもよい。これらの形態の中でも、アリピプラゾール無水物B形結晶が好ましい形態である。
【0057】
アリピプラゾール無水物B形結晶の調製方法に関し、例えば、それは、下記に示すようにアリピプラゾール水和物Aを加熱することにより調製される。
【0058】
アリピプラゾール水和物A
アリピプラゾール水和物Aは、下記(1)〜(5)に示す物理化学的性質を有する:
(1)それは、図1に示される熱重量測定/示差熱分析(昇温速度5℃/分)吸熱曲線と実質的に同じ吸熱曲線を有する。具体的には、それは、約71℃に小さなピークを持ち、約60℃〜120℃にかけてなだらかな吸熱ピークを示すことにより特徴付けられる。
【0059】
(2)それは、図2に示されるH−NMRスペクトル(DMSO−d、TMS)と実質的に同じH−NMRスペクトルを有する。具体的には、それは、1.55〜1.63ppm(m,2H)、1.68〜1.78ppm(m,2H)、2.35〜2.46ppm(m,4H)、2.48〜2.56ppm(m,4H +DMSO)、2.78ppm(t,J=7.4Hz,2H)、2.97ppm(brt,J=4.6Hz,4H)、3.92ppm(t,J=6.3Hz,2H)、6.43ppm(d,J=2.4Hz,1H)、6.49ppm(dd,J=8.4Hz,J=2.4Hz,1H)、7.04ppm(d,J=8.1Hz,1H)、7.11〜7.17ppm(m,1H)、7.28〜7.32ppm(m,2H)、及び10.00ppm(s,1H)において特徴的なピークを有する。
【0060】
(3)それは、図3に示される粉末X線回析スペクトルと実質的に同じ粉末X線回析スペクトルを有する。具体的には、それは、2θ=12.6°,15.4°、17.3°,18.0°,18.6°,22.5°及び24.8°において特徴的なピークを有する。
【0061】
(4)それは、IR(KBr)スペクトルにおいて、2951、2822、1692、1577、1447、1378、1187、963及び784cm−1に明確な赤外線吸収バンドを有する。
【0062】
(5)それは、50μm以下の平均粒径を有する。
【0063】
アリピプラゾール水和物Aの調製方法
アリピプラゾール水和物Aは、慣用のアリピプラゾール水和物を粉砕することにより調製される。アリピプラゾール水和物の粉砕には、慣用の粉砕方法を用いることができる。例えば、粉砕機を用いて慣用のアリピプラゾール水和物を粉砕し得る。アトマイザー、ピンミル、ジェットミルまたはボールミル等の広範に使用されている粉砕機を用いることができる。これらの中で、好ましくは、アトマイザーが用いられる。
【0064】
アトマイザーを用いた場合の具体的な粉砕条件に関しては、例えば、送り回転数を10〜30rpm、スクリーンの孔径を1〜5mmとし、主軸には5000〜15000rpmの回転数を用いることができる。
【0065】
粉砕により得られるアリピプラゾール水和物Aの平均粒度は、通常50μm以下、好ましくは30μm以下がよい。平均粒度は、後述する粒度測定方法により求めることができる。
【0066】
アリピプラゾール無水物B形結晶
本発明のアリピプラゾール無水物B形結晶は、下記(6)〜(10)に示す物理化学的性質を有する。
【0067】
(6)これらは、図4に示されるH−NMRスペクトル(DMSO−d、TMS)と実質的に同じH−NMRスペクトルを有する。具体的には、これらは、1.55〜1.63ppm(m,2H)、1.68〜1.78ppm(m,2H)、2.35〜2.46ppm(m,4H)、2.48〜2.56ppm(m,4H +DMSO)、2.78ppm(t,J=7.4Hz,2H)、2.97ppm(brt,J=4.6Hz,4H)、3.92ppm(t,J=6.3Hz,2H)、6.43ppm(d,J=2.4Hz,1H)、6.49ppm(dd,J=8.4Hz,J=2.4Hz,1H)、7.04ppm(d,J=8.1Hz,1H)、7.11〜7.17ppm(m,1H)、7.28〜7.32ppm(m,2H)、及び10.00ppm(s,1H)において特徴的なピークを有している。
【0068】
(7)これらは、図5に示される粉末X線回析スペクトルと実質的に同じ粉末X線回析スペクトルを有する。具体的には、これらは、2θ=11.0°、16.6°、19.3°、20.3°及び22.1°において特徴的なピークを有している。
【0069】
(8)これらは、IR(KBr)スペクトルにおいて、2945、2812、1678、1627、1448,1377、1173,960及び779cm−1に明確な赤外線吸収バンドを有する。
【0070】
(9)これらは、熱重量測定/示差熱分析(昇温速度5℃/分)で約141.5℃付近に吸熱ピークを示す。
【0071】
(10)これらは、示差走査熱量分析(昇温速度5℃/分)で約140.7℃付近に吸熱ピークを示す。
【0072】
錠剤等の固体調製物及び例えばフラッシュメルト製剤を含む他の固形投与製剤用に、小さな粒度が必要な場合には、平均粒度は50μm以下が好ましい。
【0073】
アリピプラゾール無水物B形結晶の調製方法
本発明のアリピプラゾール無水物B形結晶は、例えば、上述のアリピプラゾール水和物Aを90〜125℃で加熱することにより調製される。加熱時間は、一般に、3〜50時間程度であるが、加熱温度により異なり一概には言えない。加熱時間と加熱温度とは相反する関係にあり、例えば、加熱時間が長ければ加熱温度は低く、加熱温度が高ければ加熱時間は短い。具体的には、アリピプラゾール水和物Aの加熱温度が100℃であれば、加熱時間は通常18時間以上、好ましくは24時間程度がよい。また、アリピプラゾール水和物Aの加熱温度を120℃にすると、加熱時間は約3時間でよい。アリピプラゾール水和物Aを温度100℃で約18時間加熱し、次いで温度120℃で約3時間加熱することにより、本発明のアリピプラゾール無水物B形結晶を確実に調製することができる。加熱時間をさらに長くしても本発明のアリピプラゾール無水物B形結晶が得られるが、この方法は、経済的ではない。
【0074】
製剤のために小さな粒度が必要でない場合、例えば薬物が注射剤或いは経口溶液製剤用に調製される場合には、アリピプラゾール無水物B形結晶は以下のプロセスによっても得ることができる。
【0075】
本発明のアリピプラゾール無水物B形結晶は、例えば、慣用のアリピプラゾール無水物結晶を90〜125℃で加熱することにより調製される。加熱時間は、一般に、3〜50時間程度であるが、加熱温度により異なり一概には言えない。加熱時間と加熱温度とは相反する関係にあり、例えば、加熱時間が長ければ加熱温度は低く、加熱時間が短ければ加熱温度は高い。具体的には、アリピプラゾール無水物結晶の加熱温度が100℃であれば、加熱時間は約4時間でよく、加熱温度が120℃であれば、加熱時間は約3時間でよい。
【0076】
また、本発明のアリピプラゾール無水物B形結晶は、例えば、慣用のアリピプラゾール水和物を90〜125℃で加熱することにより調製される。加熱時間は、一般に、3〜50時間程度であるが、加熱温度により異なり一概には言えない。加熱時間と加熱温度とは相反する関係にあり、例えば、加熱時間が長ければ加熱温度は低く、加熱時間が短ければ加熱温度は高い。具体的には、アリピプラゾール水和物の加熱温度が100℃であれば、加熱時間は約24時間でよく、加熱温度が120℃であれば、加熱時間は約3時間でよい。
【0077】
本発明のアリピプラゾール無水物B形結晶を調製するための原料であるアリピプラゾール無水物結晶は、例えば、下記方法Aまたは方法Bにより調製される。
【0078】
方法A:アリピプラゾール粗結晶の調製方法
慣用のアリピプラゾール無水物結晶は、特開平2−191256号公報の実施例1に記載されているような、周知の方法により調製される。7−(4−ブロモブトキシ)−3,4−ジヒドロカルボスチリルと1−(2,3−ジクロロフェニル)ピペラジンとを反応させ、得られる粗アリピプラゾール結晶をエタノールにて再結晶する。
【0079】
方法B:慣用のアリピプラゾール無水物の調製方法
方法Bは、第4回日韓合同分離技術シンポジウム(1996年10月6日〜8日)講演要旨集に記載されている。本発明のアリピプラゾール無水物B形結晶を調製するための原料であるアリピプラゾール水和物は、例えば、下記方法Cにより調製される。
【0080】
方法C:慣用のアリピプラゾール水和物の調製方法
アリピプラゾール水和物は、上記方法Aで得られるアリピプラゾール無水物結晶を含水溶媒に溶解し、得られる溶液を加温した後、冷却することにより容易に得られる。斯かる方法により、アリピプラゾール水和物は、含水溶媒中に結晶として晶析する。
【0081】
含水有機溶媒としては、水を含む溶媒が通常用いられる。有機溶媒は、水と混和性を有している有機溶媒であるのが望ましく、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ジメチルホルムアミドまたはこれらの混合溶媒等、特に好ましくはエタノール等が挙げられる。含水溶媒中の含水量は、溶媒に対して10〜25容量%、好ましくは20容量%付近がよい。
【0082】
アリピプラゾールは、薬学的に許容される酸と容易に酸付加塩を形成し得る。斯かる酸としては、例えば硫酸、硝酸、塩酸、リン酸、臭化水素酸等の無機酸;酢酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸等の有機酸を例示できる。これらの酸付加塩もまた遊離形態のアリピプラゾールと同様に本発明において有効成分化合物として用いることができる。
【0083】
斯くして得られる各々の製造工程での目的化合物は、通常の分離手段により反応系内より分離され、さらに精製することができる。分離及び精製手段としては、例えば蒸留法、溶媒抽出法、希釈法、再結晶法、カラムクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、プレパラティブ薄層クロマトグラフィー等を例示できる。
【0084】
医薬組成物:第二成分
本発明の組成物においては、第二成分として気分安定薬を使用する。気分安定薬としては、気分安定薬として機能する化合物を、広く使用でき、当業者に知られている。
【0085】
本発明において用いられ得る気分安定薬の非限定的なリストとしては、リチウム、バルプロ酸、ジバルプロックスナトリウム、カルバマゼピン、オクスカルバマゼピン、ゾニサミド、ラモトリジン、トピラメート、ガバペンチン、レベチラセタム及びクロナゼパムが挙げられる。
【0086】
気分安定薬は、遊離塩基または塩(酸付加塩等)のいずれの形態でもよい。また、気分安定薬は、ラセミ体であってもよいし、R及びS鏡像異性体であってもよい。気分安定薬としては、単一の気分安定薬を単独で使用しても、必要に応じて、2種またはそれ以上の気分安定薬を組み合わせて使用してもよい。単一の気分安定薬の使用が好ましい。
【0087】
気分安定薬は、薬学的に許容される酸と容易に酸付加塩を形成し得る。斯かる酸としては、例えば硫酸、硝酸、塩酸、リン酸、臭化水素酸等の無機酸;酢酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸等の有機酸を例示できる。これらの酸付加塩もまた遊離形態の再取り込み阻害剤と同様に本発明において有効成分化合物として用いることができる。
【0088】
気分安定薬のうち、酸性基を有する化合物は、これに薬学的に許容される塩基性化合物を反応させることにより容易に塩を形成させることができる。かかる塩基性化合物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸塩または重炭酸塩;ナトリウムメチラート、カリウムエチラート等の金属アルコラート等を例示することができる。
【0089】
斯くして得られる塩形態の気分安定薬は、通常の分離手段により反応系内より分離され、さらに精製することができる。分離及び精製手段としては、例えば蒸留法、溶媒抽出法、希釈法、再結晶法、カラムクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、プレパラティブ薄層クロマトグラフィー等を例示できる。
【0090】
第一成分と第二成分との組み合わせ
ドパミン−セロトニン スタビライザーとしての活性を有するカルボスチリル誘導体と気分安定薬との組み合わせを含む医薬組成物について、本明細書中に、アリピプラゾール及びデヒドロアリピプラゾールの非限定的な例を記載する。本発明は、ドパミン−セロトニン スタビライザーとしての活性を有するカルボスチリル誘導体と、気分安定薬との組み合わせであって、カルボスチリル誘導体が本明細書中に記載されるアリピプラゾールの他の代謝産物であるものも含むことが理解される。
【0091】
アリピプラゾールが少なくとも1種の気分安定薬と組み合わせられる場合、以下は、そのような組み合わせの非限定的な例である:アリピプラゾール/リチウム、アリピプラゾール/バルプロ酸、アリピプラゾール/ジバルプロックスナトリウム、アリピプラゾール/カルバマゼピン、アリピプラゾール/オクスカルバマゼピン、アリピプラゾール/ゾニサミド、アリピプラゾール/ラモトリジン、アリピプラゾール/トピラメート、アリピプラゾール/ガバペンチン、アリピプラゾール/レベチラセタム及びアリピプラゾール/クロナゼパム。これらの組み合わせの中でも、以下のものが特に好ましい:アリピプラゾール/カルバマゼピン、アリピプラゾール/オクスカルバマゼピン、アリピプラゾール/ゾニサミド、アリピプラゾール/ラモトリジン、アリピプラゾール/トピラメート、アリピプラゾール/ガバペンチン、アリピプラゾール/レベチラセタム及びアリピプラゾール/クロナゼパム。上記の好ましい組み合わせを含む医薬組成物は、優れた効果を有する。従って、このような組成物は、より少ない副作用及び優れた安全プロファイルを有する。
【0092】
本発明の別の実施形態において、アリピプラゾール、またはその代謝産物は、1種より多い気分安定薬と組み合わせられ得る。本発明において用いられ得るアリピプラゾールの代謝産物としては、図8に示されるようなOPC−14857、DM−1458、DM−1451、DM−1452、DM−1454及びDCPPが挙げられるがこれらに限定されない。これらの代謝産物のいずれもが、本発明において用いられ得る。以下の文章には、デヒドロアリピプラゾールと特定の気分安定薬との組み合わせが記載されるが、これらの開示された組み合わせにおいて、それは、図8に示されるDM−1458、DM−1451、DM−1452、DM−1454またはDCPPのいずれでもデヒドロアリピプラゾールを置換し得ることが理解される。デヒドロアリピプラゾール(図8においてOPC14857と呼ばれる)は、アリピプラゾールの好ましい代謝産物である。デヒドロアリピプラゾールと1種以上の気分安定薬との組み合わせに関して、以下は、そのような組み合わせの非限定的な例である:デヒドロアリピプラゾール/リチウム、デヒドロアリピプラゾール/バルプロ酸、デヒドロアリピプラゾール/ジバルプロックスナトリウム、デヒドロアリピプラゾール/カルバマゼピン、デヒドロアリピプラゾール/オクスカルバマゼピン、デヒドロアリピプラゾール/ゾニサミド、デヒドロアリピプラゾール/ラモトリジン、デヒドロアリピプラゾール/トピラメート、デヒドロアリピプラゾール/ガバペンチン、デヒドロアリピプラゾール/レベチラセタム及びデヒドロアリピプラゾール/クロナゼパム。これらの組み合わせの中でも、以下のものが特に好ましい:デヒドロアリピプラゾール/カルバマゼピン、デヒドロアリピプラゾール/オクスカルバマゼピン、デヒドロアリピプラゾール/ゾニサミド、デヒドロアリピプラゾール/ラモトリジン、デヒドロアリピプラゾール/トピラメート、デヒドロアリピプラゾール/ガバペンチン、デヒドロアリピプラゾール/レベチラセタム及びデヒドロアリピプラゾール/クロナゼパム。上記の好ましい組み合わせを含む医薬組成物は、優れた効力を有する。従って、そのような組成物は、より少ない副作用及び優れた安全プロファイルを有する。
【0093】
気分障害(特に、双極性障害または躁病)の治療方法
気分障害を呈する患者は、本発明の組成物で治療され得る。そのような気分障害としては、双極性障害、双極性障害I、双極性障害II、精神病的特徴を有する及び有さない双極性障害、躁病、急性躁病、双極性鬱または混合性エピソードが挙げられるがこれらに限定されない。本発明の方法及び組成物で治療される好ましい障害は、双極性障害及び躁病である。治療は、精神病的特徴を有するまたは有さない双極性障害または躁病のような気分障害を有する患者に、該気分障害を治療するのに有効な量及び用法で、本発明の組成物を投与することを包含する。本発明は、上に示される活性を有するカルボスチリル誘導体及び気分安定薬の両方が、組成物中で、薬学的に許容される担体と共に組み合わせられた、気分障害の治療を含む。本発明は、さらに、上に示される活性を有するカルボスチリル誘導体が1つの組成物において薬学的に許容される担体と組み合わせられ、そして気分安定薬が第二の組成物において薬学的に許容される担体と組み合わせられ、そしてこれらの2つの組成物が、所望される治療を提供するために同時または別々に投与される、気分障害の処置を含む。
【0094】
用量
本発明で用いられる薬物の用量は、組み合わせに使用する各構成薬物の性質、組み合わせ後の薬物の性質、患者の病状を考慮して設定される。上に示されるように、カルボスチリル誘導体及び気分安定薬は、1つの組成物中で組み合わされずに別々に投与されてもよい。用量の一般的概略は、例えば以下のガイドラインを適用できる。
【0095】
アリピプラゾールまたは代謝産物(例えば、デヒドロアリピプラゾール、DM−1458、DM−1451、DM−1452、DM−1454またはDCPP):一般的に約0.1〜約100mg/1回/1日(または、約0.05〜約50mg/2回/1日)、好ましくは約1〜約30mg/1回/1日(または、約0.5〜約15mg/2回/1日)。
【0096】
アリピプラゾールまたはその代謝産物は、示される用量範囲の以下の気分安定薬のいずれか少なくとも1つと組み合わされ得、または別々に投与され得る:
リチウム:一般的に約300〜約2400mg/1日、300mg〜1200mg/2回/1日、好ましくは血漿リチウム濃度が約0.8〜1.2mmol/Lになるまで。
【0097】
バルプロ酸:一般的に約750mg〜2000mg/1日、または10〜20mg/kg/1日。
【0098】
ジバルプロックスナトリウム:一般的に、約500〜2500mg/1日。
【0099】
カルバマゼピン:一般的に、約100〜1000mg/1日、好ましくは、血漿レベルが約6.0〜9.0mg/Lの間に達するまで。
【0100】
オクスカルバマゼピン:一般的に、約600〜2100mg/1日。
【0101】
ゾニサミド:一般的に、約100〜500mg/1日。
【0102】
ラモトリジン:一般的に、約50〜500mg/1日、好ましくは100〜400mg/1日。
【0103】
トピラメート:一般的に、約25〜約500mg/1日。
【0104】
ガバペンチン:一般的に、約600〜2400mg/1回/1日。
【0105】
レベチラセタム:一般的に、約250〜約3000mg/1日。
【0106】
クロナゼパム:一般的に、約0.1〜60mg/1日。
【0107】
一般的に、上述のガイドラインに従って第一成分と第二成分との重量割合を選択する。第一成分と第二成分との使用割合としては、第1成分(前者)1重量部に対して、第2成分は約0.01〜約500重量部、好ましくは約0.1〜約100重量部で使用される。
【0108】
薬学的に許容される担体:
薬剤学的に許容される担体としては、医薬製剤に通常使用される充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、界面活性剤、及び滑沢剤のような希釈剤及び賦形剤が挙げられる。
【0109】
本発明の医薬組成物は、一般的な医薬製剤として、例えば錠剤、フラッシュメルト錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤、坐剤または注射剤(液剤、懸濁剤等)、トローチ、鼻腔内スプレー剤、経皮パッチ等の形態で処方され得る。
【0110】
錠剤の形態に成形するに際しては、当該分野でよく知られる各種担体を広く使用することができる。その例としては、例えば乳糖、サッカロース、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、キシリトール、マンニトール、エリスリトール、ソルビトール、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸等の賦形剤;水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドン等の結合剤;乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、乳糖等の崩壊剤;白糖、ステアリン、カカオバター、水素添加油等の崩壊抑制剤;第4級アンモニウム塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤;グリセリン、デンプン等の保湿剤;デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸等の吸着剤;及び精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコール等の滑沢剤等を使用できる。さらに錠剤は必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーティング錠あるいは二重錠、多層錠とすることができる。
【0111】
丸剤の形態に成形するに際しては、当該分野で公知の担体を広く使用できる。その例としては、例えばブドウ糖、乳糖、デンプン、カカオバター、硬化植物油、カオリン、タルク等の賦形剤;アラビアゴム末、トラガント末、ゼラチン、エタノール等の結合剤;ラミナラン、カンテン等の崩壊剤等が挙げられる。
【0112】
坐剤の形態に成形するに際しては、公知の担体を広く使用できる。その例としては、例えばポリエチレングリコール、カカオバター、高級アルコール、高級アルコールのエステル類、ゼラチン、半合成グリセライド等を挙げることができる。
【0113】
カプセル剤は、常法に従い、第一成分としてのアリピプラゾール無水物結晶及び第二成分を上記の各種の担体と混合して硬質ゼラチンカプセル、軟質カプセル、ヒドロキシプロピルメチルセルロースカプセル(HPMCカプセル)等に充填して調製される。
【0114】
さらに、着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤等や他の医薬品を医薬組成物中に含有させることもできる。
【0115】
本発明の医薬組成物中に含有されるべき第一成分及び第二成分の量は、治療しようとする疾患に依存して、広範囲から適宜選択される。一般的に、医薬組成物に対して、総量で約1〜70重量%、好ましくは約1〜30重量%の第一成分及び第二成分が組み合わせられる。
【0116】
本発明の医薬組成物の投与方法は特に制限されない。この組成物は、各々のタイプの製剤形態、ならびに患者の年齢、性別及びその他の条件(疾患の程度及び症状等)に応じて投与される。例えば錠剤、丸剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤及びカプセル剤は、経口投与される。また注射剤の場合には、それは単独でまたはブドウ糖、アミノ酸の溶液等の通常の補液と混合して静脈内投与される。さらに、注射剤は、必要に応じて単独で、皮内、皮下もしくは腹腔内投与される。坐剤の場合には、それは直腸内投与される。
【0117】
本発明の医薬組成物の投与形態は、インビボで同時にアリピプラゾール及び気分安定薬の両方の有効レベルが提供され得る方法であればいずれでもよい。1実施形態において、アリピプラゾールを気分安定薬と共に一つの医薬組成物中に含有させ、そしてこの組成物を投与してもよい。一方、アリピプラゾール及び気分安定薬のうち各々1つをそれぞれ別の医薬製剤中に含有させ、これらを同時にまたは適当な間隔をあけて投与してもよい。
【発明の効果】
【0118】
気分障害を治療及び改善するための本発明の医薬組成物の投与量は、優れた効力を有しているので、比較的少量で使用することができる。従って、この組成物は、少ない副作用及び優れた安全性プロファイルを有する。
【0119】
本発明の医薬組成物は、広範囲な神経伝達調節作用を発現することができる。その結果、本発明の組成物が(パーシャルアゴニスト作用の結果として)、ドパミン及びセロトニンのシュードホメオスタティック(pseudo-homeostatic)な神経伝達を確立した結果、神経病態生理学プロセスは正常に機能しなくなった。本発明の医薬組成物により治療できる気分障害とは、American Psychiatric Association から出版された "Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders" の第4版(DSM-IV)に分類されている気分障害を含む。このような気分障害としては、例えば、双極性障害(例えば、双極性障害IまたはII、精神病的特徴を有するまたは有さない双極性障害)、躁病、急性躁病、双極性鬱または混合性エピソードが挙げられる。
【0120】
さらに、本発明の医薬組成物は、統合失調症等の精神病性障害に対して効果的である。これらの障害としては、例えば、鬱性障害(例えば、大鬱病性障害(major depressive disorder)、内因性鬱病(endogenous depression)、メランコリー(melancholia)、精神病性エピソードと組み合わさった鬱病(depression in combination with psychotic episodes)、難治性鬱病(refractory depression)、抑鬱症状を伴うアルツハイマー型痴呆 (dementia of the Alzheimer's type with depressive symptoms)、抑鬱症状を伴うパーキンソン病、老人性痴呆、脳血管に関連する気分障害、頭部外傷後の気分障害等)、不安障害(例えば、パニック障害、強迫性障害、全般性不安障害、心的外傷後ストレス障害、社会恐怖、特定の恐怖等);摂食障害;睡眠障害;適応障害;人格障害;精神遅滞;学習障害;広汎発達障害;注意欠陥及び破壊的行為障害(disruptive behavior disorder);チック症;せん妄;痴呆;健忘性障害;その他の認知障害;アルコール関連障害;アンフェタミン関連障害;コカイン関連障害;ニコチン関連障害;鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬関連障害;性同一性障害が挙げられる。これらの障害は、American Psychiatric Association から出版された "Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders" の第4版(DSM-IV)に分類されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0121】
参考例、実施例及び製剤例を掲げて、本発明をより詳細に説明する。まず、分析方法について説明する。
【0122】
分析方法
(1)H−NMRスペクトルは、DMSO−d中、TMSを標準として測定した。
【0123】
(2)粉末X線回折
粉末X線回折パターンは、理学電機製のRAD−2B回折計を用いて、室温下、Cu Ka封入管(35kV 20mA)をX線源とし、広角ゴニオメーター、散乱スリット1°、受光スリット0.15mm、グラファイト2次モノクロメ−ターとシンチレーション計数管により測定した。データ収集はスキャンスピード5°/分、スキャンステップ0.02°で、3°から40°までの範囲を2θ連続スキャンモードで行った。
【0124】
(3)IRスペクトルは、KBr法で測定した。
【0125】
(4)熱重量測定/示差熱分析
熱重量測定/示差熱分析は、セイコー製のSSC5200制御装置とTG/DTA220示差熱熱重量同時測定装置を用いて測定した。試料(5〜10mg)を開放アルミニウムパンに入れ、乾燥窒素雰囲気下で20℃から200℃まで昇温速度5℃/分で加熱した。基準物質としてはα−アルミナを用いた。
【0126】
(5)示差走査熱量測定
熱重量測定/示差熱分析はセイコー製のSSC5200制御装置とDSC220C示差走査熱量計を用いて測定した。試料(5〜10mg)をクリンプしたアルミニウムパンに入れ、乾燥窒素雰囲気下で20℃から200℃まで昇温速度5℃/分で加熱した。基準物質としてはα−アルミナを用いた。
【0127】
(6)粒度測定
粒度は、大豆製レシチン0.5gのn−ヘキサン20ml溶液に、測定すべき粒子(0.1g)を懸濁し、粒度分布測定装置(マイクロトラックHRA、マイクロトラック社製)を用いて測定した。
【0128】
参考例1
水140mlに溶解した炭酸カリウム8.39gの溶液に、7−(4−クロロブトキシ)−3,4−ジヒドロカルボスチリル(19.4g)及び1−(2,3−ジクロロフェニル)ピペラジン・1塩酸塩16.2gを加え、撹拌下に約3時間還流した。反応が完了した後、混合物を冷却し、析出した結晶を濾取した。この結晶を酢酸エチル350mlに溶解し、還流下に約210mlの水/酢酸エチル共沸物を留去した。残った溶液を冷却し、析出晶を濾取した。得られた結晶を60℃で14時間乾燥して、粗製のアリピプラゾール20.4g(74.2%)を得た。
【0129】
上記で得られた粗製アリピプラゾール(30g)を、特開平2−191256号公報記載の方法に従い、450mlのエタノールから再結晶し、得られた結晶を80℃で40時間乾燥してアリピプラゾール無水物結晶を得た。収量は29.4g(98.0%)であった。
【0130】
このアリピプラゾール無水物結晶の融点(mp)は140℃であり、これは、特開平2−191256号公報記載のアリピプラゾール無水物結晶の融点と一致する。
【0131】
参考例2
参考例1で得られた粗製アリピプラゾール(6930g)を、第4回日韓合同分離技術シンポジウムで発表された方法に従い、138リットルの含水エタノール(含水量20容量%)中に加熱溶解後、その溶液を室温まで徐冷(2〜3時間)、さらに0℃付近まで冷却した。析出する結晶を濾取して、約7200gのアリピプラゾール水和物(ウェット状態)を得た。
【0132】
上記で得たウェット状態のアリピプラゾール水和物結晶を80℃で30時間乾燥して、アリピプラゾール水和物結晶6480g(93.5%)を得た。この結晶の融点(mp)は139.5℃であった。
【0133】
この結晶の含水量をカールフィッシャー法により確認し、水分値は0.03%を示し、この結晶が無水物であることが確認できた。
【0134】
参考例3
参考例2で得られたウェット状態のアリピプラゾール水和物(820g)を50℃で2時間乾燥すると、アリピプラゾール水和物結晶780gが得られた。この結晶のカールフィッシャー法による水分値は、3.82%を示した。熱重量測定/示差熱分析は、図6に示したように、75.0、123.5及び140.5℃に吸熱ピークを示した。70℃付近から脱水が始まるため、融点(mp)は明確ではない。
【0135】
この方法によって得られるアリピプラゾール水和物の粉末X線回折スペクトルは図7に示したように、2θ=12.6°、15.1°、17.4°,18.2°,18.7°、24.8°及び27.5°に特徴的なピークを示した。
【0136】
このアリピプラゾール水和物の粉末X線回折スペクトルは第4回日韓合同分離技術シンポジウムで発表されたアリピプラゾール水和物の粉末X線回折スペクトルと同一であった。
【0137】
参考例4
参考例3で得られたアリピプラゾール水和物結晶(500.3g)をサンプルミル(小型アトマイザー)を使って粉砕した。この時、主軸回転数を12000rpm、送り回転数を17rpmに設定し、1.0mmヘリボーンスクリーンを用いた。粉砕は3分で終了し、474.6g(94.9%)のアリピプラゾール水和物Aを得た。
【0138】
このようにして得られたアリピプラゾール水和物A(粉末)は20〜25μmの平均粒度を有していた。70℃付近から脱水が観測されるため、融点(mp)は不明瞭であった。
【0139】
上記で得られたアリピプラゾール水和物A(粉末)は、図2に示すH−NMRスペクトルと実質的に同一のH−NMRスペクトル(DMSO−d、TMS)を示した。具体的には、それは、1.55〜1.63ppm(m,2H)、1.68〜1.78ppm(m,2H)、2.35〜2.46ppm(m,4H)、2.48〜2.56ppm(m,4H +DMSO)、2.78ppm(t,J=7.4Hz,2H)、2.97ppm(brt,J=4.6Hz,4H)、3.92ppm(t,J=6.3Hz,2H)、6.43ppm(d,J=2.4Hz,1H)、6.49ppm(dd,J=8.4Hz,J=2.4Hz,1H)、7.04ppm(d,J=8.1Hz,1H)、7.11〜7.17ppm(m,1H)、7.28〜7.32ppm(m,2H)、及び10.00ppm(s,1H)に特徴的なピークを有していた。
【0140】
上記で得られたアリピプラゾール水和物A(粉末)は、図3に示す粉末X線回折スペクトルと実質的に同じ粉末X線回折スペクトルを有していた。具体的には、それは、2θ=12.6°,15.4°、17.3°,18.0°,18.6°,22.5°及び24.8°に特徴的なピークを有していた。このパターンは、図7に示される粉砕前のアリピプラゾール水和物の粉末X線回折スペクトルとは異なる。
【0141】
上記で得られたアリピプラゾール水和物A(粉末)は、IR(KBr)スペクトルにおいて、2951、2822、1692、1577、1447、1378、1187、963及び784cm−1に赤外線吸収バンドを有していた。
【0142】
上記で得られたアリピプラゾール水和物A(粉末)は、図1に示したように、熱重量測定/示差熱分析で71.3℃に弱いピークを有し、60〜120℃にかけてブロードな吸熱ピーク(水1分子に相当する重量減少が観測される)が認められた。このアリピプラゾール水和物A(粉末)の吸熱曲線は、明らかに粉砕前のアリピプラゾール水和物の吸熱曲線(図6参照)とは異なっていた。
【0143】
他の実施形態及び用途が当業者に明らかであること及び本発明がこれらの特定の実施例に限定されないことが理解される。
【0144】
実施例1
参考例で得たアリピプラゾール水和物A(粉末)(44.29kg)を熱風乾燥機を用いて100℃で24時間乾燥し、さらに120℃で3時間加熱して42.46kg(収率99.3%)のアリピプラゾール無水物B形結晶を得た。このアリピプラゾール無水物B形結晶は、139.7℃の融点(mp)を有していた。
【0145】
上記で得られたアリピプラゾール無水物B形結晶は、図4に示されるH−NMRスペクトルと実質的に同じH−NMRスペクトル(DMSO−d、TMS)を有していた。具体的には、これらは、1.55〜1.63ppm(m,2H)、1.68〜1.78ppm(m,2H)、2.35〜2.46ppm(m,4H)、2.48〜2.56ppm(m,4H +DMSO)、2.78ppm(t,J=7.4Hz,2H)、2.97ppm(brt,J=4.6Hz,4H)、3.92ppm(t,J=6.3Hz,2H)、6.43ppm(d,J=2.4Hz,1H)、6.49ppm(dd,J=8.4Hz,J=2.4Hz,1H)、7.04ppm(d,J=8.1Hz,1H)、7.11〜7.17ppm(m,1H)、7.28〜7.32ppm(m,2H)、及び10.00ppm(s,1H)に特徴的なピークを有していた。
【0146】
上記で得られたアリピプラゾール無水物B形結晶は、図5に示される粉末X線回折スペクトルと実質的に同じ粉末X線回折スペクトルを有していた。具体的には、これらは、2θ=11.0°、16.6°、19.3°、20.3°及び22.1°に特徴的なピークを有していた。
【0147】
上記で得られたアリピプラゾール無水物B形結晶は、IR(KBr)スペクトルにおいて、2945、2812、1678、1627、1448,1377、1173,960及び779cm−1に特徴的な赤外線吸収バンドを有していた。上記で得られたアリピプラゾール無水物B形結晶は、熱重量測定/示差熱分析で約141.5℃付近に吸熱ピークを示した。上記で得られたアリピプラゾール無水物B形結晶は、示差走査熱量分析で約140.7℃付近に吸熱ピークを示した。
【0148】
実施例2
5HT1A受容体での受容体結合
1.材料及び方法
1.1 試験化合物
7−{4−[4−(2,3−ジクロロフェニル)−1−ピペラジニル]−ブトキシ}−3,4−ジヒドロカルボスチリル(アリピプラゾール)を、試験化合物として使用した。
【0149】
1.2 参照化合物
セロトニン(5−HT)、及びRBI(Natick, Mass)製の5−HT1A受容体アンタゴニストであるWAY100635 (N−[2−[4−(2−メトキシフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−N−(2−ピリジル)−シクロヘキサンカルボキサミド)を、参照化合物として使用した。
【0150】
1.3 溶媒
シグマ ケミカル社(Sigma Chemical Co.)(St. Louis, Mo)製のジメチルスルホキシド(DMSO)を、溶媒として使用した。
【0151】
1.4 試験及び参照化合物の調製
試験化合物を100%ジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解し、100μMストック溶液(試験化合物を含有する全試験管中のDMSOの最終濃度は、1%(v/v)であった)を得た。全ての他の参照化合物を、DMSOではなく二回蒸留した水を使用して同一方法によって調製した。
【0152】
1.5 [35S]GTPγS結合アッセイのための実験手順
試験及び参照化合物を、h5−HT1A CHO細胞膜へのBasal[35S]GTPγS結合に対するそれらの効果について、10の種々の濃度(0.01、0.1、1、5、10、50、100、1000、10000及び50000nM)で、トリプリケートで試験した。GDP(1μM)、[35S]GTPS(0.1nM)及びh5−HT1ACHO細胞膜(10μg蛋白質/反応;NEN Life Science Products,Boston,Mass.;カタログ番号CRM035、ロット番号501−60024、GenBank番号X13556)を含有する緩衝液792μl(25mM Tris HCl、50mM NaCl、5mM MgCl、0.1mM EGTA、pH=7.4)と混合した、試験/参照薬物8μlを含有する5mlガラス試験管中で、反応を行った。反応を室温で60分間進行させ、そして、Brandelハーベスター及び4×3ml氷冷緩衝液洗浄を用い、Whatman GF/B濾紙を通過させる急速濾過により終了させた。該濾紙に結合されたS放射活性を、液体シンチレーションカウンター(1272 Clinigamma、LKB/Wallach)を使用して測定した。
【0153】
1.6 h5−HT1A受容体での試験化合物アリピプラゾールの結合親和性を測定するための実験手順
試験化合物を、CHO細胞膜(15〜20μg蛋白質;NEN Life Science Products、カタログ番号CRM035、ロット番号501−60024)におけるh5−HT1A受容体への[H]8−OH−DPAT(1nM;NEN Life Sciences;カタログ番号NET929、ロット番号3406035、比活性=124.9Ci/mmol)結合の阻害活性(displacement)を測定するために、10の種々の濃度(0.01、0.1、1、10、50、100、500、1000、5000及び10000nM)で、トリプリケートで試験した。膜(396μl)を、[H]8−OH−DPAT(396μl)、試験化合物またはビヒクル(8μl)及び緩衝液A(50mM Tris HCl、10mM MgSO、0.5mM EDTA、0.1%(w/v)アスコルビン酸、pH=7.4)を含有する5mlガラス試験管中でインキュベートした。全てのアッセイを、室温で60分間進行させ、そしてBrandelハーベスター及び緩衝液Bでの4×1ml氷冷洗浄を用い、Whatman GF/B濾紙[緩衝液B(50mM Tris HCl、pH=7.4)中にプレ浸漬させたもの]を通過させる急速濾過により終了させた。非特異的結合を、10μM(+)8−OH−DPATの存在下で測定した。
【0154】
1.7 測定されるパラメータ
セロトニン(5−HT)は、組換えCHO細胞膜中のh5−HT1A受容体へのBasal[35S]GTPγS結合の増加を亢進する、5−HT1A受容体フルアゴニストである。試験化合物を10の濃度で評価して、10μM 5−HTによって生成されるものと比較した、Basal[35S]GTPγS結合に対する効果を測定した。相対効力(EC50、95%信頼区間)及び固有アゴニスト活性(10μM 5−HTについてのEmaxの%)を、理想的濃度効果データを用いたコンピュータプログラム上の非線形回帰分析によって、各化合物について計算した。h5−HT1A受容体での試験化合物の結合親和性を、この受容体を発現するCHO細胞膜への[H]8−OH−DPAT結合に対する阻害活性によって測定した。競合結合データの非線形回帰分析を使用して、阻害定数(IC50、95%信頼区間)[これは、[H]8−OH−DPATによって特異的に結合されるh5−HT1A部位の半分を占めるような試験化合物の濃度である]を計算した。試験化合物についてのh5−HT1A受容体の親和性(Ki、95%信頼区間)を、等式Ki=(IC50)/(1+([[H]8−OH−DPAT]/Kd)によって計算した。ここで、h5−HT1Aでの[H]8−OH−DPATについてのKdは、0.69nMである(NEN Life Sciences)。h5−HT1A受容体での薬物結合親和性、効力及び固有有効性の全ての見積もりは、Windows用のGraphPad Prism version 3.00(GraphPad Software、San Diego、Calif.)を使用して計算した。
【0155】
2.結果
試験化合物及び5−HTは、Basal[35S]GTPγS結合を超える濃度依存性の増加を示した。試験された1%DMSO単独は、Basalまたは薬物誘発[35S]GTPγS結合に対して影響を与えなかった。
【0156】
試験化合物(EC50=2.12nM)、5−HT(EC50=3.67nM)は、Basal[35S]GTPγS結合を強力に刺激した。効力及び固有アゴニスト活性の見積もりは、非線形回帰分析によって、各々の場合において相関係数(r)>0.98で導き出された(表1)。試験化合物は、65〜70%範囲のパーシャルアゴニスト活性を示した。WAY100635は、全ての試験濃度でBasal[35S]GTPγS結合に有意な変化(対応のないスチューデントt検定)をもたらさなかった(表1)。しかし、WAY100635は、CHO細胞膜中のh5−HT1A受容体への[35S]GTPγS結合に対する5−HT及び試験化合物の効果を、完全に阻害した(表2)。表1及び表2を以下に示す。
【0157】
試験化合物は、CHO細胞膜中のh5−HT1A受容体への高い親和性での結合を示した(IC50 4.03nM、95%信頼区間=2.67〜6.08nM;Ki=1.65nM、95%信頼区間=1.09〜2.48)。
【0158】
【表1】

【0159】
【表2】

【0160】
実施例3
調製例
アリピプラゾールまたはデヒドロアリピプラゾールと気分安定薬とのいくつかの非限定的な調製例を、以下に示す。
【0161】
試料処方例
アリピプラゾール無水物B形結晶 5mg
リチウム 600mg
デンプン 131mg
マグネシウムステアレート 4mg
乳糖 60mg
計 800mg
当業者に周知の調製法により、上述の配合物を含有する錠剤を調製する。
【0162】
試料処方例
アリピプラゾール無水物B形結晶 5mg
バルプロ酸 1000mg
デンプン 131mg
マグネシウムステアレート 4mg
乳糖 60mg
計 1200mg
常法により、上述の配合物を含有する錠剤を調製する。
【0163】
試料処方例
アリピプラゾール無水物B形結晶 5mg
ジバルプロックスナトリウム 750mg
デンプン 131mg
マグネシウムステアレート 4mg
乳糖 60mg
計 950mg
常法により、上述の配合物を含有する錠剤を調製する。
【0164】
試料処方例
アリピプラゾール無水物B形結晶 5mg
カルバマゼピン 500mg
デンプン 131mg
マグネシウムステアレート 4mg
乳糖 60mg
計 700mg
常法により、上述の配合物を含有する錠剤を調製する。
【0165】
試料処方例
アリピプラゾール無水物B形結晶 5mg
オクスカルバマゼピン 800mg
デンプン 131mg
マグネシウムステアレート 4mg
乳糖 60mg
計 1000mg
常法により、上述の配合物を含有する錠剤を調製する。
【0166】
試料処方例
アリピプラゾール無水物B形結晶 5mg
ゾニサミド 300mg
デンプン 131mg
マグネシウムステアレート 4mg
乳糖 60mg
計 500mg
常法により、上述の配合物を含有する錠剤を調製する。
【0167】
試料処方例
アリピプラゾール無水物B形結晶 5mg
ラモトリジン 250mg
デンプン 131mg
マグネシウムステアレート 4mg
乳糖 60mg
計 450mg
常法により、上述の配合物を含有する錠剤を調製する。
【0168】
試料処方例
アリピプラゾール無水物B形結晶 5mg
トピラメート 250mg
デンプン 131mg
マグネシウムステアレート 4mg
乳糖 60mg
計 450mg
常法により、上述の配合物を含有する錠剤を調製する。
【0169】
試料処方例
アリピプラゾール無水物B形結晶 5mg
ガバペンチン 800mg
デンプン 131mg
マグネシウムステアレート 4mg
乳糖 60mg
計 1000mg
常法により、上述の配合物を含有する錠剤を調製する。
【0170】
試料処方例10
アリピプラゾール無水物B形結晶 5mg
レベチラセタム 600mg
デンプン 131mg
マグネシウムステアレート 4mg
乳糖 60mg
計 800mg
常法により、上述の配合物を含有する錠剤を調製する。
【0171】
デヒドロアリピプラゾールと気分安定薬とのいくつかの非限定的な処方例を、以下に示す。図8に示すようなDM−1458、DM−1451、DM−1452、DM−1454またはDCPPのいずれもが、これら開示される処方におけるデヒドロアリピプラゾールと置換され得ることが理解される。
【0172】
試料処方例11
デヒドロアリピプラゾール 5mg
リチウム 600mg
デンプン 131mg
マグネシウムステアレート 4mg
乳糖 60mg
計 800mg
当業者に周知の調製法により、上述の配合物を含有する錠剤を調製する。
【0173】
試料処方例12
デヒドロアリピプラゾール 5mg
バルプロ酸 1000mg
デンプン 131mg
マグネシウムステアレート 4mg
乳糖 60mg
計 1200mg
常法により、上述の配合物を含有する錠剤を調製する。
【0174】
試料処方例13
デヒドロアリピプラゾール 5mg
ジバルプロックスナトリウム 750mg
デンプン 131mg
マグネシウムステアレート 4mg
乳糖 60mg
計 950mg
常法により、上述の配合物を含有する錠剤を調製する。
【0175】
試料処方例14
デヒドロアリピプラゾール 5mg
カルバマゼピン 500mg
デンプン 131mg
マグネシウムステアレート 4mg
乳糖 60mg
計 700mg
常法により、上述の配合物を含有する錠剤を調製する。
【0176】
試料処方例15
デヒドロアリピプラゾール 5mg
オクスカルバマゼピン 800mg
デンプン 131mg
マグネシウムステアレート 4mg
乳糖 60mg
計 1000mg
常法により、上述の配合物を含有する錠剤を調製する。
【0177】
試料処方例16
デヒドロアリピプラゾール 5mg
ゾニサミド 300mg
デンプン 131mg
マグネシウムステアレート 4mg
乳糖 60mg
計 500mg
常法により、上述の配合物を含有する錠剤を調製する。
【0178】
試料処方例17
デヒドロアリピプラゾール 5mg
ラモトリジン 250mg
デンプン 131mg
マグネシウムステアレート 4mg
乳糖 60mg
計 450mg
常法により、上述の配合物を含有する錠剤を調製する。
【0179】
試料処方例18
デヒドロアリピプラゾール 5mg
トピラメート 250mg
デンプン 131mg
マグネシウムステアレート 4mg
乳糖 60mg
計 450mg
常法により、上述の配合物を含有する錠剤を調製する。
【0180】
試料処方例19
デヒドロアリピプラゾール 5mg
ガバペンチン 800mg
デンプン 131mg
マグネシウムステアレート 4mg
乳糖 60mg
計 1000mg
常法により、上述の配合物を含有する錠剤を調製する。
【0181】
試料処方例20
デヒドロアリピプラゾール 5mg
レベチラセタム 600mg
デンプン 131mg
マグネシウムステアレート 4mg
乳糖 60mg
計 800mg
常法により、上述の配合物を含有する錠剤を調製する。
【0182】
試料処方例21
アリピプラゾール無水物B形結晶 5mg
クロナゼパム 600mg
デンプン 131mg
マグネシウムステアレート 4mg
乳糖 60mg
計 800mg
常法により、上述の配合物を含有する錠剤を調製する。
【0183】
試料処方例22
デヒドロアリピプラゾール 5mg
クロナゼパム 600mg
デンプン 131mg
マグネシウムステアレート 4mg
乳糖 60mg
計 800mg
常法により、上述の配合物を含有する錠剤を調製する。
【0184】
実施例4
DSM−IV−Rの基準により規定されるような精神病的特徴を有するまたは有さない双極性障害(IまたはII)、躁病または混合性エピソードの、新たに診断された、再発のまたは難治性エピソードを有する患者の治療法
アリピプラゾール、またはアリピプラゾール代謝産物と、少なくとも1種の気分安定薬との組み合わせを、双極性障害(IまたはII)、急性躁病、または双極性鬱の、新たに診断された、再発のまたは難治性エピソードを有する患者の治療として評価する。双極性障害(IまたはII)、急性躁病、または双極性鬱と診断された18〜65歳の範囲の患者を評価して、彼らが24より大きいベースラインYoung Mania Rating Scale(YMRS)スコアを有することを確認する。このようなYMRSスコアを有する患者のみが治療を受ける。これらの患者に問診して完全な医学的及び精神医学的履歴を得る。アリピプラゾール、またはアリピプラゾール代謝産物を、まず10mg/日の用量で投与し、そして必要に応じて治験担当精神科医の意見を聴いて30mg/日まで増量させる。アリピプラゾール、またはアリピプラゾール代謝産物を、少なくとも4週間、そして最初の4週間の間にこの治療によく応答する患者について8週間まで、10mg/日〜30mg/日の用量でこれらの患者に投与する。アリピプラゾール、またはアリピプラゾール代謝産物を、少なくとも1種の気分安定薬と共に投与する(ここで、気分安定薬は、リチウム、バルプロ酸、ジバルプロックスナトリウム、カルバマゼピン、オクスカルバマゼピン、ゾニサミド、ラモトリジン、トピラメート、ガバペンチン、レベチラセタムもしくはクロナゼパムである)。
【0185】
アリピプラゾール、またはアリピプラゾール代謝産物は、1投薬形態(例えば、錠剤)で投与され得、そして気分安定薬は、別個の1投薬形態(例えば、錠剤)で投与され得る。投与は、1日の間、ほぼ同時または種々の時間になされ得る。用量は、アリピプラゾールまたはアリピプラゾール代謝産物及び気分安定薬の各々について上記で提供される範囲内であり得る。
【0186】
あるいは、アリピプラゾール、またはアリピプラゾール代謝産物を少なくとも1つの気分安定薬及び薬学的に許容される担体と組み合わせて含有する投薬形態が、投与される。このような組み合わせとしては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:アリピプラゾール/リチウム、アリピプラゾール/バルプロ酸、アリピプラゾール/ジバルプロックスナトリウム、アリピプラゾール/カルバマゼピン、アリピプラゾール/オクスカルバマゼピン、アリピプラゾール/ゾニサミド、アリピプラゾール/ラモトリジン、アリピプラゾール/トピラメート、アリピプラゾール/ガバペンチン、アリピプラゾール/レベチラセタム及びアリピプラゾール/クロナゼパム。アリピプラゾール、またはアリピプラゾール代謝産物、及び気分安定薬の投与期間の間及びその後に行う試験の結果によって示されるように、双極性障害(IまたはII)、急性躁病、または双極性鬱の症状の緩和における改善は、アリピプラゾール、またはアリピプラゾール代謝産物、及び1以上の気分安定薬の投与後に、これらの患者において観察される。YMRS及び当業者に公知の他の指標(例えばCGI、AIMS、SAS、シンプソン−アンガス及びバーンズ尺度)が、これらの患者へ与えられる。結果は、気分の正常化を示す。
【0187】
実施例5
バルプロ酸またはリチウムの単独治療に対して部分的に無応答性であった患者の、躁病の治療におけるバルプロ酸またはリチウムと組み合わせたアリピプラゾールの効果
6週間のダブルブラインド、ランダマイズド、プラセボ比較試験を実施して、急性躁病または混合双極性エピソードの治療における、単独のバルプロ酸またはリチウムと比較した、アリピプラゾールとバルプロ酸またはリチウムのいずれかとの組み合わせ治療の有効性を測定する。使用した方法は、一般的に、Tohen et al.,(Arch. Gen. Psychiatry, 2002 Jan; 59(1):62-9)に記載されている通りである。Young Mania Rating Scale(YMRS)スコアの減少によって測定される、実施中の気分安定薬治療に追加した際のアリピプラゾール(1〜30mg/日)対プラセボの効力を評価することが目的である。2週間を超えるリチウム(600mg/日)またはバルプロ酸(500mg/日)治療に十分に応答しなかった双極性障害、躁病または混合性エピソードを有する患者を、無作為に併用治療(アリピプラゾール+気分安定薬)または単独治療(プラセボ+気分安定薬)に供する。結果は、アリピプラゾール併用治療が、単独治療より患者のYMRSトータルスコアを改善することを示す。クリニカルレスポンスレート(Clinical response rate)(YMRSで50%以上の改善)は、併用治療においてより高い。アリピプラゾール併用治療は、単独治療より、21−item Hamilton Depression Rating Scale(HAMD−21)トータルスコアを改善する。中程度〜重症の鬱症状を伴う混合性エピソードを有する患者(DSM−IV混合性エピソード;ベースラインで20以上のHAMD−21スコア)において、アリピプラゾール併用治療は、単独治療と比較して、HAMD−21スコアを改善する。錐体外路症状(Simpson−Angus Scale、Barnes Akathisia Scale、Abnormal Involuntary Movement Scale)は、いずれの治療群においても、最後までベースラインから有意に変化しない。バルプロ酸またはリチウム単独での使用と比較して、アリピプラゾールの追加は、躁病及び混合双極性エピソードの治療において優れた有効性を提供した。
【0188】
実施例6
バルプロ酸またはリチウムの単独治療に対して部分的に無応答性であった患者の、躁病の治療におけるバルプロ酸またはリチウムと組み合わせたデヒドロアリピプラゾールの効力
6週間のダブルブラインド、ランダマイズド、プラセボ比較試験を実施して、急性躁病または混合双極性エピソードの治療における、単独のバルプロ酸またはリチウムと比較した、デヒドロアリピプラゾールとバルプロ酸またはリチウムのいずれかとの組み合わせ治療の有効性を測定する。使用した方法は、一般的に、Tohen et al.,(Arch. Gen. Psychiatry, 2002 Jan; 59(1):62-9)に記載されている通りである。Young Mania Rating Scale(YMRS)スコアの減少によって測定される、実施中の気分安定薬治療に追加した際のデヒドロアリピプラゾール(1〜30mg/日)対プラセボの効力を評価することが目的である。2週間を超えるリチウム(600mg/日)またはバルプロ酸(500mg/日)治療に十分応答しなかった双極性障害、躁病または混合性エピソードを有する患者を、無作為に併用治療(デヒドロアリピプラゾール+気分安定薬)または単独治療(プラセボ+気分安定薬)に供する。結果は、デヒドロアリピプラゾール併用治療が、単独治療より患者のYMRSトータルスコアを改善することを示す。クリニカルレスポンスレート(Clinical response rate)(YMRSで50%以上の改善)は、併用治療においてより高い。デヒドロアリピプラゾール併用治療は、単独治療より、21−item Hamilton Depression Rating Scale(HAMD−21)トータルスコアを改善する。中程度〜重症の鬱症状を伴う混合性エピソードを有する患者(DSM−IV混合性エピソード;ベースラインで20以上のHAMD−21スコア)において、デヒドロアリピプラゾール併用治療は、単独治療と比較して、HAMD−21スコアを改善する。錐体外路症状(Simpson−Angus Scale、Barnes Akathisia Scale、Abnormal Involuntary Movement Scale)は、いずれの治療群においても、最後までベースラインから有意に変化しない。バルプロ酸またはリチウム単独での使用と比較して、デヒドロアリピプラゾールの追加は、躁病及び混合双極性エピソードの治療において優れた効果を提供した。
【0189】
実施例7
青年期の躁病の付加的治療としてのアリピプラゾールのダブルブラインド、ランダマイズド、プラセボ比較試験
このランダマイズド、ダブルブラインド、プラセボ比較試験は、双極性障害を伴う青年期における急性躁病について、ジバルプロックス(DVP)と組み合わせたアリピプラゾールの効果及び忍容性(tolerability)を試験する。使用される方法は、Delbello et al.、(J. Am. Acad. Child Adolesc. Psychiatry, 2002 Oct; 41(10):1216-23)に本質的に記載されている通りである。アリピプラゾールと組み合わせたDVPは、青年期の双極性障害に関連する躁病の治療について、DVP単独より有効であると仮定される。30人の躁病または混合双極性I型青年群(12〜18歳)に20mg/kgの初期DVP用量を与え、そして無作為にアリピプラゾール、約10mg/日またはプラセボとの6週間の組み合わせ治療を割り当てる。第一の効果の尺度は、ベースラインからエンドポイントまでのYoung Mania Rating Scale(YMRS)スコア及びYMRSレスポンスレートである。安全性及び忍容性を、毎週評価する。DVP+アリピプラゾール群は、ベースラインからエンドポイントまで、YMRSスコアの、DVP+プラセボ群より大きい減少を実証する。さらに、YMRSレスポンスレートは、DVP+アリピプラゾール群において、DVP+プラセボ群におけるより有意に高い。ベースラインからエンドポイントまでで、安全性尺度における有意な群間の差異は見られない。マイルドまたは中程度と評価される、鎮静作用は、DVP+プラセボ群よりDVP+アリピプラゾール群においてより一般的である。これらの結果は、DVPと組み合わせたアリピプラゾールが青年期の双極性躁病の治療について、単独のDVPより効果的であることを示す。さらに、これらの結果は、アリピプラゾールが、躁病の治療のためにDVPと組み合わせて用いられた場合に、非常に忍容性があることを示唆している。
【0190】
実施例8
青年期の躁病の付加的治療としてのデヒドロアリピプラゾールのダブルブラインド、ランダマイズド、プラセボ比較試験
このランダマイズド、ダブルブラインド、プラセボ比較試験は、双極性障害を伴う青年期における急性躁病について、ジバルプロックス(DVP)と組み合わせたデヒドロアリピプラゾールの有効性及び忍容性を試験する。使用される方法は、Delbello et al.、(J. Am. Acad. Child Adolesc. Psychiatry, 2002 Oct; 41(10):1216-23)に本質的に記載されている通りである。デヒドロアリピプラゾールと組み合わせたDVPは、青年期の双極性障害に関連する躁病の治療について、DVP単独より有効であると仮定される。30人の躁病または混合双極性I型青年群(12〜18歳)に20mg/kgの初期DVP用量を与え、そして無作為にデヒドロアリピプラゾール、約10mg/日またはプラセボとの6週間の組み合わせ治療を割り当てる。第一の効果の尺度は、ベースラインからエンドポイントまでのYoung Mania Rating Scale(YMRS)スコア及びYMRSレスポンスレートである。安全性及び忍容性を、毎週評価する。DVP+デヒドロアリピプラゾール群は、ベースラインからエンドポイントまで、YMRSスコアにおいて、DVP+プラセボ群より大きい減少を実証する。さらに、YMRSレスポンスレートは、DVP+デヒドロアリピプラゾール群において、DVP+プラセボ群におけるより有意に高い。ベースラインからエンドポイントまでで、安全性尺度における有意な群間の差異は見られない。マイルドまたは中程度と評価される、鎮静作用は、DVP+プラセボ群よりDVP+デヒドロアリピプラゾール群においてより一般的である。これらの結果は、DVPと組み合わせたデヒドロアリピプラゾールが青年期の双極性躁病の治療について、単独のDVPより効果的であることを示す。さらに、これらの結果は、アリピプラゾールが、躁病の治療のためにDVPと組み合わせて用いられた場合に、非常に忍容性があることを示唆している。
【0191】
本明細書中で言及される全ての特許、特許出願、科学及び医学文献は、それらの全体が、本明細書中に参考として援用される。前記は、本発明の好ましい実施形態に関するのみであること及び多数の改変及び変更が、添付の特許請求の範囲に示される本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、その中でなされ得ることが当然に理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0192】
【図1】図1は、参考例4で得られたアリピプラゾール水和物Aの熱重量測定/示差熱分析図である。
【図2】図2は、参考例4で得られたアリピプラゾール水和物AのH−NMRスペクトル(DMSO−d、TMS)である。
【図3】図3は、参考例4で得られたアリピプラゾール水和物Aの粉末X線回折図である。
【図4】図4は、実施例1で得られたアリピプラゾール無水物B形結晶のH−NMRスペクトル(DMSO−d、TMS)である。
【図5】図5は、実施例1で得られたアリピプラゾール無水物B形結晶の粉末X線回折図である。
【図6】図6は、参考例3で得られたアリピプラゾール水和物の熱重量測定/示差熱分析図である。
【図7】図7は、参考例3で得られたアリピプラゾール水和物の粉末X線回折図である。
【図8】図8は、アリピプラゾール及びその代謝産物の化学構造図である。これらの代謝産物のいくつかは、他の可能な経路を経て形成され得る;例えば、DM−1431は、DM−1451及びDM−1459のN−脱アルキル化によって形成され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の気分安定薬(mood stabilizer)と組み合わせて、少なくとも1種のカルボスチリル誘導体を含有する組成物。
【請求項2】
前記カルボスチリル誘導体がドパミン−セロトニン システム スタビライザーである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記カルボスチリル誘導体がアリピプラゾールまたはその代謝産物である請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記アリピプラゾール代謝産物がデヒドロアリピプラゾール、DM−1458、DM−1451、DM−1452、DM−1454またはDCPPである請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの気分安定薬がリチウム、バルプロ酸、ジバルプロックスナトリウム、カルバマゼピン(carbamazapine)、オクスカルバマゼピン(oxcarbamazapine)、ゾニサミド、ラモトリジン(lamotragine)、トピラメート(topiramate)、ガバペンチン(gabapentin)、レベチラセタム(levetiracetam)もしくはクロナゼパム、またはこれらの塩である請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つの気分安定薬がカルバマゼピン、オクスカルバマゼピン、ゾニサミド、ラモトリジン、トピラメート、ガバペンチン、レベチラセタムもしくはクロナゼパム、またはこれらの塩である請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも1つの薬学的に許容される担体をさらに含有する請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
気分障害の治療に有用な医薬の調製における、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項9】
双極性障害の治療に有用な医薬の調製における、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項10】
躁病の治療に有用な医薬の調製における、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項11】
薬学的に許容される担体中の、一定量の請求項1〜7のいずれかの組成物を投与することを含み、該量が患者の気分障害を治療するのに有効なものである、患者の気分障害を治療する方法。
【請求項12】
第一の量のカルボスチリル誘導体と第二の量の気分安定薬の別個の投与を含み、該投与が患者の気分障害を治療するのに有効である、患者の気分障害を治療する方法。
【請求項13】
前記カルボスチリル誘導体がアリピラゾールまたはその代謝産物である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記アリピラゾールの代謝産物がデヒドロアリピプラゾール、DM−1458、DM−1451、DM−1452、DM−1454またはDCPPである請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記気分安定薬がリチウム、バルプロ酸、ジバルプロックスナトリウム、カルバマゼピン、オクスカルバマゼピン、ゾニサミド、ラモトリジン、トピラメート、ガバペンチン、レベチラセタムもしくはクロナゼパム、またはこれらの塩である請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記気分安定薬がカルバマゼピン、オクスカルバマゼピン、ゾニサミド、ラモトリジン、トピラメート、ガバペンチン、レベチラセタムもしくはクロナゼパム、またはこれらの塩である請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−503460(P2007−503460A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532509(P2006−532509)
【出願日】平成16年5月19日(2004.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/013308
【国際公開番号】WO2004/105682
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
【出願人】(000206956)大塚製薬株式会社 (230)
【Fターム(参考)】