説明

気分障害改善用組成物

【課題】安全性の高い天然物の中から気分障害改善作用を有するものを見出し、それを有効成分とする気分障害改善用組成物を提供する。
【解決手段】本発明の気分障害改善用組成物の有効成分として、リクイリチン、リクイリチゲニン、イソリクイリチン及びイソリクイリチゲニンを含有し、グリチルリチン酸を実質的に含有しない甘草抽出組成物、又はリクイリチゲニン(liquiritigenin)若しくはイソリクイリチゲニン(isoliquiritigenin)を含有させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気分障害改善用組成物に関するものであり、より詳細には、うつ病、躁うつ病、更年期障害又はエストロゲン分泌量低下に起因する気分障害改善用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
身体的・精神的疲労、生活リズム及び人間関係の歪み等のストレスや更年期は、不安感や焦燥感の原因となり、情緒障害、睡眠障害、摂食障害、他人とのコミュニケーション障害等といった症状を呈する気分障害を生じさせることが知られている。特に女性が更年期になると、女性ホルモンの一つであるエストロゲンの分泌量が低下し、それにより気分障害が生じることが知られている。
【0003】
このような気分障害の予防・治療効果を有する物質として、カカオ等由来のトリプタミン誘導体(特許文献1参照)、羅布麻抽出物由来のフラボノイド化合物(特許文献2参照)、ジヒドロピリジン(特許文献3参照)、ムイアプラマエキス(特許文献4参照)等が知られている。また、更年期又はエストロゲン分泌量低下による気分障害をエストロゲン補完療法により治療する方法が知られている。しかし、エストロゲン補完療法は、エストロゲン分泌量低下による気分障害を改善することはできるが、エストロゲンを補完することにより子宮内膜が増殖して子宮重量が増大してしまい、子宮内膜症、子宮体ガン等の一因となるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−137780号公報
【特許文献2】特開2002−201139号公報
【特許文献3】特許第2701042号公報
【特許文献4】特開2000−119187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、安全性の高い天然物の中から気分障害改善作用を有するものを見出し、それを有効成分とする気分障害改善用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の気分障害改善用組成物は、リクイリチン、リクイリチゲニン、イソリクイリチン及びイソリクイリチゲニンを含有し、グリチルリチン酸を実質的に含有しない甘草抽出組成物を有効成分として含有することを特徴とする。また、本発明の気分障害改善用組成物は、リクイリチゲニン(liquiritigenin)及び/又はイソリクイリチゲニン(isoliquiritigenin)を有効成分として含有することを特徴とする。
【0007】
ここで、本明細書において「気分障害」とは、精神障害の1種であり、気分障害の症状としては、例えば、喜怒哀楽の感情表出の異常;憂鬱感、悲壮感、罪責感、絶望感等の抑うつ気分;精神運動制止;不安焦燥感;睡眠障害、食欲不振、性欲減退、便秘、口渇、頭痛等の身体症状等が挙げられ、気分障害を改善することにより、これらの症状を改善することができる。
【0008】
なお、本発明において「グリチルリチン酸を実質的に含有しない」とは、甘草抽出組成物中のグリチルリチン酸含有率が、好ましくは1.0質量%以下であることを意味し、より好ましくは0.8質量%以下であることを意味する。
【0009】
また、本発明において「甘草エキス」とは、甘草を抽出原料として用いて得られた抽出液、当該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、又は当該抽出液を乾燥して得られる乾燥物であって、グリチルリチン酸が実質的に除去されていないものを意味し、「甘草抽出組成物」とは、上記甘草エキスからグリチルリチン酸を実質的に除去し、リクイリチン、リクイリチゲニン、イソリクイリチン及びイソリクイリチゲニンを含有するものを意味する。
【0010】
前記気分障害は、うつ病、躁うつ病、更年期障害、及びエストロゲン分泌量低下からなる群より選ばれる少なくとも1種に起因する気分障害であることが好ましい。また、前記組成物は、医薬組成物、飲食品組成物又は化粧料組成物であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の気分障害改善用組成物は、うつ病、躁うつ病、更年期障害又はエストロゲン分泌量低下に起因する気分障害を、子宮重量を増大させることなく改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本実施形態の気分障害改善用組成物は、リクイリチン、リクイリチゲニン、イソリクイリチン及びイソリクイリチゲニンを含有し、グリチルリチン酸を実質的に含有しない甘草抽出組成物(以下、単に「甘草抽出組成物」という場合がある。)を有効成分として含有する。また、本実施形態の気分障害改善用組成物は、リクイリチゲニン(liquiritigenin)及び/又はイソリクイリチゲニン(isoliquiritigenin)を有効成分として含有する。
【0013】
[甘草抽出組成物の製造]
リクイリチン(liquiritin)、リクイリチゲニン(liquiritigenin)、イソリクイリチン(isoliquiritin)及びイソリクイリチゲニン(isoliquiritigenin)、を含有し、グリチルリチン酸を実質的に含有しない甘草抽出組成物は、植物の抽出処理に一般に用いられている方法によって得ることのできる甘草エキスからグリチルリチン酸を除去することで、得ることができる。
【0014】
甘草は、マメ科グリチルリーザ(Glycyrrhiza)属に属する多年生草本である。甘草には、グリチルリーザ・グラブラ(Glychyrrhiza glabra)、グリチルリーザ・インフラータ(Glychyrrhiza inflata)、グリチルリーザ・ウラレンシス(Glychyrrhiza uralensis)、グリチルリーザ・アスペラ(Glychyrrhiza aspera)、グリチルリーザ・ユーリカルパ(Glychyrrhiza eurycarpa)、グリチルリーザ・パリディフロラ(Glychyrrhiza pallidiflora)、グリチルリーザ・ユンナネンシス(Glychyrrhiza yunnanensis)、グリチルリーザ・レピドタ(Glychyrrhiza lepidota)、グリチルリーザ・エキナタ(Glychyrrhiza echinata)、グリチルリーザ・アカンソカルパ(Glychyrrhiza acanthocarpa)等、様々な種類のものがあり、これらのうち、いずれの種類の甘草を抽出原料として使用してもよいが、特にグリチルリーザ・グラブラ(Glychyrrhiza glabra)、グリチルリーザ・ウラレンシス(Glychyrrhiza uralensis)、及びグリチルリーザ・インフラータ(Glychyrrhiza inflata)を抽出原料として使用することが好ましい。
【0015】
抽出原料として使用し得る甘草の構成部位としては、例えば、葉部、枝部、樹皮部、幹部、茎部、果実部、花部等の地上部、根部、根茎部又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、好ましくは根部又は根茎部である。
【0016】
甘草エキスは、抽出原料としての甘草を乾燥した後、そのまま又は粗砕機を用いて粉砕し、抽出溶媒による抽出に供することにより得ることができる。乾燥は天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を用いて行ってもよい。また、ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、植物の極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。
【0017】
抽出溶媒としては、極性溶媒を使用するのが好ましく、例えば、水、親水性有機溶媒等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて、室温又は溶媒の沸点以下の温度で使用することが好ましい。
【0018】
抽出溶媒として使用し得る水としては、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等のほか、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、濾過、イオン交換、浸透圧調整、酸性化、アルカリ化、緩衝化等が含まれる。したがって、本実施形態において抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、有機酸酸性水、アンモニアアルカリ水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
【0019】
抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコール等が挙げられる。
【0020】
2種以上の極性溶媒の混合液を抽出溶媒として使用する場合、その混合比は適宜調整することができる。例えば、水と低級脂肪族アルコールとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して低級脂肪族アルコール1〜90容量部を混合するのが好ましく、水と低級脂肪族ケトンとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して低級脂肪族ケトン1〜40容量部を混合するのが好ましく、水と多価アルコールとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して多価アルコール10〜90容量部を混合するのが好ましい。
【0021】
抽出処理は、抽出原料に含まれる可溶性成分を抽出溶媒に溶出させ得る限り特に限定はされず、常法に従って行うことができる。例えば、抽出原料の5〜15倍量(質量比)の抽出溶媒に、抽出原料を浸漬し、常温又は還流加熱下で可溶性成分を抽出させた後、濾過して抽出残渣を除去することにより抽出液を得ることができる。得られた抽出液から溶媒を留去するとペースト状の濃縮物が得られ、この濃縮物をさらに乾燥すると乾燥物が得られる。
【0022】
以上のようにして得られた抽出液、当該抽出液の濃縮物又は当該抽出液の乾燥物には、リクイリチン、リクイリチゲニン、イソリクイリチン及びイソリクイリチゲニンのフラボノイド類の他、トリテルペン配糖体であるグリチルリチン酸も含まれているため、これらの抽出液、当該抽出液の濃縮物又は当該抽出液の乾燥物(甘草エキス)からグリチルリチン酸を除去する。
【0023】
甘草エキスからグリチルリチン酸を除去するには、甘草エキスに80〜95容量%のアルコール水溶液を加え、アルコール水溶液中に甘草からの抽出物を分散させ、濾紙で沈殿物を吸引濾過する。グリチルリチン酸は、水溶性であり、アルコールに難溶であるため、甘草エキスに含まれるグリチルリチン酸は、アルコール水溶液にほとんど溶解せず、沈殿物として除去される。一方、リクイリチン、リクイリチゲニン、イソリクイリチン及びイソリクイリチゲニンは、アルコールに可溶であるため、アルコール水溶液に容易に溶解する。
【0024】
分散媒として用いられるアルコールは、特に限定されるものではなく、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級脂肪族アルコールを使用すればよい。
【0025】
得られた濾液から溶媒を留去した残渣に水を加え、シリカゲルやアルミナ等の多孔質物質、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やポリメタクリレート等の多孔性樹脂等を用いたカラムクロマトグラフィーに付して、水、アルコールの順で溶出させる。そして、アルコールで溶出される画分として、リクイリチン、リクイリチゲニン、イソリクイリチン及びイソリクイリチゲニンを含有し、グリチルリチン酸を実質的に含有しない甘草抽出組成物を得ることができる。
【0026】
カラムクロマトグラフィーにて溶出液として用いられるアルコールは、特に限定されるものではなく、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級脂肪族アルコール又はそれらの水溶液等が挙げられる。
【0027】
さらに、カラムクロマトグラフィーにより得られたアルコール画分を、ODSを用いた逆相シリカゲルクロマトグラフィー、再結晶、液−液向流抽出、イオン交換樹脂を用いたカラムクロマトグラフィー等の任意の有機化合物精製手段を用いて精製してもよい。
【0028】
甘草エキスからグリチルリチン酸を除去し、リクイリチン、リクイリチゲニン、イソリクイリチン及びイソリクイリチゲニンを含有し、グリチルリチン酸を実質的に含有しない甘草抽出組成物を得る方法としては、上述した方法以外にも、下記の方法が挙げられる。
【0029】
例えば、甘草エキスに鉱酸(例えば、硫酸、硝酸、塩酸等)を加えてpHを1.0〜3.0程度に調整し、酸性析出(酸析)処理を行う。得られた酸析液を濾過して沈殿物を回収し、30〜90容量%、好ましくは30〜70容量%のアルコール水溶液(例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級脂肪族アルコールの水溶液)を加えて、その後濾過する。
【0030】
このようにして得られた濾液にアンモニア水を加えて濾液のpHを3.0〜5.0程度、好ましくは3.0〜3.5程度に調整し、グリチルリチン酸を析出させ、固液分離する。得られた濾液画分に炭酸ナトリウムを加えて中和し、シリカゲルやアルミナ等の多孔質物質、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やポリメタクリレート等の多孔性樹脂等を用いたカラムクロマトグラフィーに付して、水、アルコールの順で溶出させる。そして、アルコールで溶出される画分として、リクイリチン、リクイリチゲニン、イソリクイリチン及びイソリクイリチゲニンを含み、グリチルリチン酸を実質的に含有しない甘草抽出組成物を得ることができる。なお、カラムクロマトグラフィーにて溶出液として用いられるアルコールは、上述したものと同様のものが挙げられる。
【0031】
さらに、カラムクロマトグラフィーにより得られたアルコール画分を、ODSを用いた逆相シリカゲルクロマトグラフィー、再結晶、液−液向流抽出、イオン交換樹脂を用いたカラムクロマトグラフィー等の任意の有機化合物精製手段を用いて精製してもよい。
【0032】
以上のようにして甘草抽出物からグリチルリチン酸を除去することで、リクイリチン、リクイリチゲニン、イソリクイリチン及びイソリクイリチゲニンを含有し、グリチルリチン酸を実質的に含有しない甘草抽出組成物を得ることができる。かかる甘草抽出組成物中のグリチルリチン酸含量は、1.0質量%以下であるのが好ましく、0.8質量%以下であるのがより好ましい。
【0033】
フラボノイド類は、安全性の高い食用可能な天然物に含有される物質であるので、その製造方法の種類を問わず、長期間服用しても安全である。
【0034】
[リクイリチゲニン及びイソリクイリチゲニンの製造]
リクイリチゲニン(liquiritigenin)は、下記式(I)で表される化学構造を有するフラボノイド誘導体の一種である。
【0035】
【化1】

【0036】
また、イソリクイリチゲニン(isoliquiritigenin)は、下記式(II)で表される化学構造を有するフラボノイド誘導体の一種である。
【0037】
【化2】

【0038】
リクイリチゲニン又はイソリクイリチゲニンは、リクイリチゲニン及び/又はイソリクイリチゲニンを含有する植物抽出物から単離・精製することにより製造することができる。
【0039】
リクイリチゲニン及び/又はイソリクイリチゲニンを含有する植物抽出物は、植物の抽出に一般に用いられている方法によって得ることができる。リクイリチゲニン及び/又はイソリクイリチゲニンを含有する植物としては、例えば、甘草等が挙げられる。
【0040】
甘草には、グリチルリーザ・グラブラ(Glychyrrhiza glabra)、グリチルリーザ・インフラータ(Glychyrrhiza inflata)、グリチルリーザ・ウラレンシス(Glychyrrhiza uralensis)、グリチルリーザ・アスペラ(Glychyrrhiza aspera)、グリチルリーザ・ユーリカルパ(Glychyrrhiza eurycarpa)、グリチルリーザ・パリディフロラ(Glychyrrhiza pallidiflora)、グリチルリーザ・ユンナネンシス(Glychyrrhiza yunnanensis)、グリチルリーザ・レピドタ(Glychyrrhiza lepidota)、グリチルリーザ・エキナタ(Glychyrrhiza echinata)、グリチルリーザ・アカンソカルパ(Glychyrrhiza acanthocarpa)等、様々な種類のものがあり、これらのうち、いずれの種類の甘草を抽出原料として使用してもよいが、特にグリチルリーザ・グラブラ(Glychyrrhiza glabra)、グリチルリーザ・ウラレンシス(Glychyrrhiza uralensis)、及びグリチルリーザ・インフラータ(Glychyrrhiza inflata)を抽出原料として使用することが好ましい。
【0041】
抽出原料として使用し得る甘草の構成部位としては、例えば、葉部、枝部、樹皮部、幹部、茎部、果実部、花部等の地上部、根部、根茎部又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、好ましくは根部又は根茎部である。
【0042】
リクイリチゲニン及び/又はイソリクイリチゲニンを含有する植物抽出物は、抽出原料を乾燥した後、そのまま又は粗砕機を用いて粉砕し、抽出溶媒による抽出に供することにより得ることができる。乾燥は天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を用いて行ってもよい。また、ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、植物の極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。
【0043】
抽出溶媒としては、極性溶媒を使用するのが好ましく、例えば、水、親水性有機溶媒等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて、室温又は溶媒の沸点以下の温度で使用することが好ましい。
【0044】
抽出溶媒として使用し得る水としては、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等のほか、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、濾過、イオン交換、浸透圧調整、緩衝化等が含まれる。したがって、本実施形態において抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
【0045】
抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコール等が挙げられる。
【0046】
2種以上の極性溶媒の混合液を抽出溶媒として使用する場合、その混合比は適宜調整することができる。例えば、水と低級脂肪族アルコールとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して低級脂肪族アルコール1〜90容量部を混合することが好ましく、水と低級脂肪族ケトンとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して低級脂肪族ケトン1〜40容量部を混合することが好ましく、水と多価アルコールとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して多価アルコール10〜90容量部を混合することが好ましい。
【0047】
抽出処理は、抽出原料に含まれる可溶性成分を抽出溶媒に溶出させ得る限り特に限定はされず、常法に従って行うことができる。例えば、抽出原料の5〜15倍量(質量比)の抽出溶媒に、抽出原料を浸漬し、常温又は還流加熱下で可溶性成分を抽出させた後、濾過して抽出残渣を除去することにより抽出液を得ることができる。得られた抽出液から溶媒を留去するとペースト状の濃縮物が得られ、この濃縮物をさらに乾燥すると乾燥物が得られる。
【0048】
以上のようにして得られた抽出液、当該抽出液の濃縮物又は当該抽出液の乾燥物からリクイリチゲニン又はイソリクイリチゲニンを単離・精製する方法は、特に限定されるものではなく、常法により行うことができる。例えば、抽出物を、シリカゲルやアルミナ等の多孔質物質、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やポリメタクリレート等の多孔性樹脂等を用いたカラムクロマトグラフィーに付して、水、アルコール、アセトンの順で溶出させ、アルコールで溶出される画分として得ることができる。カラムクロマトグラフィーにて溶出液として用いられるアルコールは、特に限定されるものではなく、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級脂肪族アルコール又はそれらの水溶液等が挙げられる。さらに、カラムクロマトグラフィーにより得られた画分を、ODSを用いた逆相シリカゲルクロマトグラフィー、再結晶、液−液向流抽出、イオン交換樹脂を用いたカラムクロマトグラフィー等の任意の有機化合物精製手段を用いて精製してもよい。
【0049】
[気分障害改善用組成物]
以上のようにして得られる甘草抽出組成物、並びにリクイリチゲニン及びイソリクイリチゲニンは、優れた気分障害改善作用を有しているため、気分障害改善用組成物の有効成分として用いることができる。
【0050】
本発明の気分障害改善用組成物において、「気分障害」は精神障害の一種であり、気分障害の症状としては、例えば、喜怒哀楽の感情表出の異常;憂鬱感、悲壮感、罪責感、絶望感等の抑うつ気分;精神運動制止;不安焦燥感;睡眠障害、食欲不振、性欲減退、便秘、口渇、頭痛等の身体症状が挙げられ、気分障害を改善することにより、これらの症状を改善することができる。
【0051】
気分障害は、いかなる原因によって生じる気分障害であってもよい。改善の対象となる気分障害としては、例えば、うつ病又は躁うつ病に起因する気分障害、更年期障害に起因する気分障害、エストロゲン分泌量低下に起因する気分障害等が挙げられる。
【0052】
「更年期障害」は、女性が老年期(特に、月経が不規則になり、月経がなくなる閉経期前後の時期)に差しかかるのに伴って生じる様々な身体的・精神的な不調である。更年期障害は、卵巣ホルモン(エストロゲン)の分泌状態が乱れ、このホルモンの分泌の変調により引き起こされるものと考えられており、エストロゲン欠乏が、月経異常;血管反応性の変化によるほてり及びのぼせ;うつ状態、不眠等の精神症状異常;泌尿生殖器異常等の身体的・精神的な不調を生じさせるとともに、骨粗鬆症、高脂血症、動脈硬化等を生じさせるものと考えられる。
【0053】
「エストロゲン分泌量低下」は、例えば、更年期に生じ得るが、エストロゲン分泌量低下の原因はこれに限定されるものではない。
【0054】
更年期障害に起因する気分障害及びエストロゲン分泌量低下に起因する気分障害には、一般にエストロゲン補充療法が利用されるが、エストロゲン補充療法では子宮重量が増大するという問題が生じる。これに対して、甘草抽出組成物、並びにリクイリチゲニン及びイソリクイリチゲニンは、子宮重量を増大させることなく、更年期障害に起因する気分障害及びエストロゲン分泌量低下に起因する気分障害を改善することができる。したがって、本発明の組成物は、エストロゲン補充療法の代替手段として有用である。
【0055】
なお、本実施形態においては、甘草抽出組成物、又はリクイリチゲニン若しくはイソリクイリチゲニンのうちのいずれか一つを上記有効成分として用いてもよいし、これらを混合して上記有効成分として用いてもよい。甘草抽出組成物、又はリクイリチゲニン若しくはイソリクイリチゲニンを混合して上記有効成分として用いる場合、その配合比は、甘草抽出組成物、又はリクイリチゲニン若しくはイソリクイリチゲニンが有する気分障害改善作用の程度等により適宜調整すればよい。
【0056】
本実施形態の気分障害改善用組成物は、甘草抽出組成物、又はリクイリチゲニン若しくはイソリクイリチゲニン及びこれらの混合物のみからなるものでもよいし、甘草抽出組成物、又はリクイリチゲニン若しくはイソリクイリチゲニン及びこれらの混合物を製剤化したものでもよい。
【0057】
なお、本実施形態の気分障害改善用組成物は、必要に応じて、気分障害改善作用を有する他の天然抽出物等を、甘草抽出組成物、又はリクイリチゲニン若しくはイソリクイリチゲニン及びこれらの混合物とともに配合して有効成分として用いることができる。
【0058】
気分障害改善用組成物の形態は、気分障害の改善効果を発揮し得る限り、内用又は外用のいずれの形態であってもよく、その具体例としては、医薬組成物、飲食品組成物、化粧品組成物等が挙げられる。
【0059】
各組成物の組成は、その形態に応じて適宜調節することができる。
医薬品組成物は、例えば、気分障害の改善に有効な量の甘草抽出組成物、又はリクイリチゲニン若しくはイソリクイリチゲニン及びこれらの混合物のみで構成されていてもよいし、薬学的に許容され得る担体及び/又は助剤(例えば、結合剤、吸収促進剤、滑沢剤、乳化剤、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤、着色剤、香料、甘味料、増量剤、希釈剤、分散剤等)を配合することにより製剤化されていてもよい。医薬品組成物の剤形としては、例えば、顆粒剤、細粒剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、軟膏、ゲル、ペースト、クリーム、噴霧剤、溶液剤、懸濁液剤等が挙げられ、その投与経路としては、経口投与の他、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、関節内投与、膣内投与等の非経口投与が挙げられる。
【0060】
本実施形態の気分障害改善用組成物を製剤化した場合、甘草抽出組成物、又はリクイリチゲニン若しくはイソリクイリチゲニン及びこれらの混合物の含有量は、特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜設定することができる。
【0061】
飲食品組成物は、気分障害の改善に有効な量の甘草抽出組成物、又はリクイリチゲニン若しくはイソリクイリチゲニン及びこれらの混合物に、例えば、デキストリン、デンプン等の糖類;ゼラチン、大豆タンパク、トウモロコシタンパク等のタンパク質;アラニン、グルタミン、イソロイシン等のアミノ酸類;セルロース、アラビアゴム等の多糖類;大豆油、中鎖脂肪酸トリグリセリド等の油脂類等を配合することにより製造することができる。
【0062】
また、飲食品組成物は、気分障害の改善に有効な量の甘草抽出組成物、又はリクイリチゲニン若しくはイソリクイリチゲニン及びこれらの混合物を任意の飲食品に配合することにより製造することもできる。ここで、「飲食品」とは、栄養素を1種以上含む天然物及び加工品であり、あらゆる飲食物を含む。甘草抽出組成物、又はリクイリチゲニン若しくはイソリクイリチゲニン及びこれらの混合物を配合し得る飲食品としては、例えば、チョコレート、ビスケット、飴菓子等の菓子類;ジュース等の清涼飲料、牛乳、ヨーグルト等の乳酸飲料等が挙げられる。
【0063】
化粧品組成物は、気分障害の改善に有効な量の甘草抽出組成物、又はリクイリチゲニン若しくはイソリクイリチゲニン及びこれらの混合物に、例えば、収斂剤、殺菌・抗菌剤、美白剤、紫外線吸収剤、保湿剤、細胞賦活剤、消炎・抗アレルギー剤、抗酸化・活性酸素消去剤、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、香料等を配合することにより製造することができる。
【0064】
また、化粧料組成物は、気分障害の改善に有効な量の甘草抽出組成物、又はリクイリチゲニン若しくはイソリクイリチゲニン及びこれらの混合物を任意の化粧料に配合することにより製造することもできる。甘草抽出組成物、又はリクイリチゲニン若しくはイソリクイリチゲニン及びこれらの混合物を配合し得る化粧料は特に限定されないが、その具体例としては、軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、入浴剤、リップクリーム、口紅等の皮膚化粧料が挙げられる。
【0065】
本発明の組成物の投与量及び投与頻度は、年齢、性別、個人差、病状、投与経路等に応じて適宜変更することができるが、本発明の組成物の投与量は、有効成分である甘草抽出組成物、又はリクイリチゲニン若しくはイソリクイリチゲニン及びこれらの混合物の量に換算して、1日あたり通常0.1〜500mg/kg体重、好ましくは0.5〜200mg/kg体重であり、1日量を1回から数回程度投与することができる。
【0066】
さらに、本実施形態の気分障害改善用組成物は、優れた気分障害改善作用を有するので、気分障害に関連する疾患の研究のための試薬としても好適に利用することができる。
【実施例】
【0067】
以下、製造例及び試験例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の各例に何ら制限されるものではない。
〔製造例1〕リクイリチゲニン及びイソリクイリチゲニンの製造
甘草の一つであるグリチルリーザ・インフラータ(Glychyrrhiza inflata)の根部の粗粉砕物500gに50質量%エタノール(水とエタノールとの質量比=1:1)5000mLを加え、穏やかに攪拌しながら80℃にて2時間保ち、熱時濾過した。得られた抽出液を40℃で減圧下にて濃縮し、減圧乾燥機で乾燥して甘草根部50質量%エタノール抽出物(124g)を得た。
【0068】
このようにして得られた甘草50質量%エタノール抽出物100gに水1Lを加えて懸濁させ、多孔性樹脂(商品名:DAIAION HP−20,和光純薬社製)1L上に付し、水2000mL、30質量%エタノール2000mL、70質量%エタノール2000mL、及び99質量%エタノール2000mLの順で溶出させた。
【0069】
このようにして得られた99質量%エタノール画分(固形分:2.8g)を60質量%メタノール(水とメタノールとの質量比=4:6)に溶解し、ODSカラム(商品名:クロマトレックスODS DM1020T,富士シリシア化学社製)に付し、移動相として60質量%メタノール(水とメタノールとの質量比=4:6)を用いて溶出させ、分離することにより、画分1及び画分2を得た。得られた画分1及び画分2を減圧下で濃縮し、画分1の濃縮物(200mg)及び画分2の濃縮物(300mg)を得た。
【0070】
得られた画分1の濃縮物及び画分2の濃縮物のそれぞれに、メタノール10mLと水10mLとを加えて一晩放置し、再結晶させることで、それぞれの精製物(125mg,187mg)を得た。得られた各精製物(試料1,2)を13C−NMRにより分析した結果を下記に示す。
【0071】
<試料1の13C−NMRケミカルシフトδ(帰属炭素):>
43.1(3-C),78.8(2-C),102.4(8-C),110.3(6-C),113.4(10-C),114.9(3',5'-C),127.9(2',6'-C),128.1(5-C),129.1(1'-C),157.3(4'-C),162.9(9-C),164.3(7-C),189.7(4-C)
【0072】
<試料2の13C−NMRケミカルシフトδ(帰属炭素):>
102.4(3'-C),107.9(5'-C),112.8(1'-C),115.6(3,5-C),117.3(α-C),125.6(1-C),130.9(2,6-C),132.5(6'-C),143.9(β-C),160.0(4-C),164.6(2'-C),165.4(4'-C),191.2(C=O)
【0073】
以上の結果から、得られた各精製物のそれぞれが、下記式(I)で表されるリクイリチゲニン(試料1)、及び下記式(II)で表されるイソリクイリチゲニン(試料2)であることが確認された。
【0074】
【化3】

【0075】
【化4】

【0076】
〔製造例2〕甘草抽出組成物の製造
甘草の一つであるグリチルリーザ・インフラータ(Glychyrrhiza inflata)の根茎を粗砕したチップ状物10kgに10Lの水を加え、ゆるく攪拌しながら抽出し、デカンテーションで固液分離して抽出液を得た。得られた抽出液を攪拌しながら、50%硫酸を加えて抽出液のpHを2に調整し、酸性析出処理を行い、ろ過により沈殿物を集めた。得られた沈殿物に水を加え、攪拌して分散させ、静置後上澄みをデカンテーションで除去した。この操作を繰り返して硫酸を除去した後、濾過を行って沈殿物を得た。
【0077】
このようにして得られた沈殿物に90容量%エタノール5Lを加え、常温で1時間攪拌分散させ、珪藻土を用いて吸引濾過した。得られた濾液にアンモニア水を加えて濾液のpHを5に調整し、5℃で2日間静置してグリチルリチン酸を析出させた後、遠心分離により固液分離を行った。濾液画分のエタノールを減圧蒸留して除去し、蒸留残渣に炭酸ナトリウムを加えて中和した。
【0078】
このようにして得られた中和液を、多孔性合成吸着樹脂(ダイアイオンHP−20,三菱化学社製)5Lを充填したカラムにSV=1で通液した。カラムを25Lの水で洗浄したのち、90容量%エタノール水溶液25Lをさらに通液しフラボノイド類を溶離させた。溶離液を集めて減圧蒸留にかけてエタノール水溶液を留去したのち、蒸留残渣を40℃で真空乾燥して粉砕し、293gの黄褐色粉末を得た(試料3)。
【0079】
得られた粉末を下記の条件にて高速液体クロマトグラフ法で分析した結果、グリチルリチン酸含量0.8質量%、リクイリチン含量3.5質量%、イソリクイリチン含量2.8質量%、リクイリチゲニン含量2.5質量%、イソリクイリチゲニン含量1.8質量%であった。
【0080】
<液体クロマトグラフィー条件>
固定相:JAIGEL GS−310(日本分析工業社製)
カラム径:20mm
カラム長:500mm
移動相流量:5mL/min
検出:RI
【0081】
〔試験例1〕マウスの強制遊泳試験
製造例1で得られたリクイリチゲニン(試料1)及びイソリクイリチゲニン(試料2)について、以下のようにして強制遊泳試験を行った。強制遊泳試験は、被験試料(試料1〜2、投与量は下記表1を参照)の水性懸濁液を2週間投与し、Porsolt等の方法(Porsolt et al.,Nature,266:730-732,1977)及び吉村等の方法(吉村・山川,脳の科学,22:49-54,2000)に準拠して行った。
【0082】
試験動物としては、ICR系雌性マウス(9週齢,体重30〜34g)の両側卵巣を摘出した閉経モデル動物を用いた。マウスは、すべて1ゲージに10匹群居飼育し、1週間に1回床敷きを交換した。麻酔下に両側卵巣を摘出後、覚醒したマウスは元のホームゲージに戻した。試験期間中、餌及び水を自由摂取させ、室温23±1℃、12時間の明暗サイクルで一定期間飼育した。
【0083】
実験群として、正常群及び手術群を設定した。
「手術群」とは、ペントバルビタール麻酔下に、マウスの背腹部を約5mm切開し、卵巣及び卵巣周辺部の脂肪組織を一時的に体外に露出させ、卵巣と子宮端部との間で結紮した後、卵巣を切除し、その後、子宮及び周辺組織を体内に戻し、腹壁及び皮膚を縫合した動物群である。
「正常群」は、麻酔及び外科的侵襲を受けない動物群である。
【0084】
手術群のマウスに、卵巣を摘出した日から強制遊泳試験終了までの2週間、毎日1回各試料を経口投与した。正常群には水のみを2週間経口投与した。また、手術群に水のみを経口投与した群を、被検査物質の効果を比較するための対照群とした。
【0085】
強制遊泳試験は、透明のポリカーボネート製のメスシリンダー(内径:10cm,高さ:25cm)に25℃の水を入れ、底面から10cmの位置に水面を合わせた。各実験動物(マウス)を1匹ずつ静かにメスシリンダー内に入れ、6分間遊泳させた。ビデオシステムを用いて記録し、その後、イベントレコーダーを操作することにより2分目から6分目までに不動状態で浮遊している時間を計測した。
結果を表1に示す。
【0086】
【表1】

【0087】
一般に強制遊泳試験は動物の抑うつ状態の程度を判定するのに広く用いられており、不動状態は動物が水からの逃避を放棄した一種の絶望状態を反映するものと考えられ、臨床的に抗うつ効果を発現する薬物は不動時間を短縮することが知られている。
【0088】
表1に示すように、卵巣摘出により惹起されたうつ状態は、リクイリチゲニン(試料1)及びイソリクイリチゲニン(試料2)の投与により有意に抑制された。このことから、リクイリチゲニン及びイソリクイリチゲニンは、うつ状態等に起因する気分障害を改善する作用を有することが確認された。また、リクイリチゲニンの気分障害改善作用は用量依存的であることが確認された。
【0089】
〔試験例2〕マウスの子宮重量の測定
製造例1で得られたリクイリチゲニン(試料1)及びイソリクイリチゲニン(試料2)について、以下のようにして子宮重量を測定した。
【0090】
試験例1にて不動時間の観察を終了した後、マウスを過量のペントバルビタール(100mg/kg以上)を投与して呼吸停止に至らしめ、屠殺し、開腹して子宮を摘出した。摘出した子宮をろ紙上に展開して付着する奨膜及び血管を除去した後、直ちに湿重量を化学天秤にて秤量した。
結果を表2に示す。
【0091】
【表2】

【0092】
表2に示すように、リクイリチゲニン(試料1)及びイソリクイリチゲニン(試料2)を投与した群では、子宮重量の増大は認められなかった。
【0093】
〔試験例3〕マウスの強制遊泳試験
製造例2で得られた甘草抽出組成物(試料3)について、以下のようにして強制遊泳試験を行った。
【0094】
製造例2で得られた甘草抽出組成物(試料3)の水性懸濁液を2週間投与し、試験例1と同様にしてマウスの強制遊泳試験を行った。
結果を表3に示す。
【0095】
【表3】

【0096】
表3に示すように、卵巣摘出により惹起されたうつ状態は、甘草抽出組成物(試料3)の投与により有意に抑制された。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の組成物は、うつ病又は躁うつ病に起因する気分障害、更年期障害に起因する気分障害、エストロゲン分泌量低下に起因する気分障害の改善に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リクイリチン、リクイリチゲニン、イソリクイリチン及びイソリクイリチゲニンを含有し、グリチルリチン酸を実質的に含有しない甘草抽出組成物を有効成分として含有する気分障害改善用組成物。
【請求項2】
リクイリチゲニン(liquiritigenin)及び/又はイソリクイリチゲニン(isoliquiritigenin)を有効成分として含有する気分障害改善用組成物。
【請求項3】
前記気分障害が、うつ病、躁うつ病、更年期障害、及びエストロゲン分泌量低下からなる群より選ばれる少なくとも1種に起因する気分障害であることを特徴とする請求項1又は2に記載の気分障害改善用組成物。
【請求項4】
前記組成物が、医薬組成物、飲食品組成物又は化粧料組成物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の気分障害改善用組成物。

【公開番号】特開2012−62261(P2012−62261A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206322(P2010−206322)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り (1)発行所: 第20回日本臨床精神神経薬理学会 第40回日本神経精神薬理学会 合同年会 刊行物名:第20回日本臨床精神神経薬理学会 第40回日本神経精神薬理学会 合同年会 プログラム・抄録集 発行日: 平成22年8月27日
【出願人】(591082421)丸善製薬株式会社 (239)
【Fターム(参考)】