説明

気動車

【課題】 車体の床下にエンジンを備えた気動車において、気動車の車室のスペースを小さくすることなく、簡素な構成で、前記エンジンの騒音、振動が前記気動車の車室内に入ることを抑制する。
【解決手段】 車体3の床下にエンジン5を備えた気動車1において、防振性を備えていると共に、前記車体3で前記エンジン5を支持するために前記車体3と前記エンジン5との間に設けられた振動吸収部材11と、前記車体3および前記エンジン5から離れて、前記車体3と前記エンジン5との間に設置された遮音部材13とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気動車に係り、特に、床下に設置されたエンジンの騒音や振動に対して対策を施したものに関する。
【背景技術】
【0002】
気動車の車室内にエンジンや台車の騒音が入り込む経路として、エンジンや台車と車体とを互いに連結している部材と、空気とが考えられる。
【0003】
そこで、従来、たとえば、空気を経路とした車室内の騒音を低減するために、床を二重構造にした気動車が知られている(たとえば特許文献1参照)。
【0004】
また、前記連結している部材を経路とした車室内の騒音を低減するために、梁の上部に床板を設けこの床板の上部に根太を設けこの根太の上に客室や出入り台の床を設け、台車から気動車の車室内に振動が伝達しにくいようにしている気動車が知られている(たとえば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−146209号公報
【特許文献2】特開2002−154430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記従来の気動車のように、床を二重構造にする等の対策を施すと、気動車の構造が複雑になり、また、床を二重構造にしたことにより気動車の車室のスペースが小さくなる場合があるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、車体の床下にエンジンを備えた気動車において、気動車の車室のスペースを小さくすることなく、簡素な構成で、前記エンジンの騒音、振動が前記気動車の車室内に入ることを抑制することができる気動車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、車体の床下にエンジンを備えた気動車において、防振性を備えていると共に、前記車体で前記エンジンを支持するために前記車体と前記エンジンとの間に設けられた振動吸収部材と、前記車体および前記エンジンから離れて、前記車体と前記エンジンとの間に設置された遮音部材とを有する気動車である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の気動車において、複数の前記振動吸収部材を直列的に配置して、前記エンジンを支持している気動車である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の気動車において、前記遮音部材は、直列的に配置されている前記各振動吸収部材の間で前記振動吸収部材に支持されており、または、前記遮音部材は、前記振動吸収部材から離れて、前記車体もしくは前記エンジンに支持されている気動車である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の気動車において、前記振動吸収部材は、バネやゴム等の弾性体で構成されており、または、前記振動吸収部材は、バネやゴム等の弾性体とダンパーとによって構成されている気動車である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車体の床下にエンジンを備えた気動車において、気動車の車室のスペースを小さくすることなく、簡素な構成で、前記エンジンの騒音、振動が前記気動車の車室内に入ることを抑制することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る気動車1の概略構成を示す図である。
【0013】
気動車1は、車体3の床下にエンジン(たとえばディーゼルエンジン)5を備えており、図示しないユニバーサルジョイント等を介し、前記エンジン5で台車7に設置されている車輪9を回転駆動し、レール(図示せず)上を走行することができるようになっている。
【0014】
図2は、エンジン5の設置形態を示す図であり、図1に示すII部の拡大図である。
【0015】
前記エンジン5は、前記気動車1の前後方向の中間部で、前記車体3と前記エンジン5との間に設けられた振動吸収部材11を用いて、車体3の床下に吊り下げられ支持されている。
【0016】
前記振動吸収部材11は、防振性を備えている。また、たとえば、前記振動吸収部材11は、前記エンジン5の前側であって前記エンジン5の幅方向のほぼ中央部と、前記エンジン5の後側であって前記エンジン5の幅方向の両端部側との3カ所で、前記エンジン5を支持している。
【0017】
前記車体3および前記エンジン5から離れて、前記車体3と前記エンジン5との間には、板状の遮音部材13が設置されている。
【0018】
前記気動車1の上から下方向を眺めた場合、前記遮音部材13は、前記エンジン5を覆うような大きさで前記エンジン5を覆うような位置に設けられており、前記遮音部材13で遮られ前記エンジン5が覗けないようになっている。
【0019】
また、前記振動吸収部材11は、複数の振動吸収部材(たとえば2つの振動吸収部材11A、11B)を直列的に配置して構成され、前記エンジン5を支持している(図2参照)。
【0020】
なお、前記振動吸収部材11Aの固有振動数と前記振動吸収部材11Bの固有振動数とは、互いに異なったものであることが望ましい。
【0021】
前記遮音部材13は、たとえば鋼等で構成されており、直列的に配置されている前記各振動吸収部材11A、11Bの間で前記振動吸収部材11に支持されている。
【0022】
なお、前記遮音部材13は、平板状に形成されており、気動車1に設置された場合には、前記遮音部材13の厚さ方向が上下方向になり、前記遮音部材13は水平方向に広がっていることになる。したがって、前記気動車1が走行しているときにおける前記遮音部材13の空気抵抗が小さくなっている。
【0023】
また、前記振動吸収部材11A、11Bは、バネやゴム等の弾性体で構成されており、または、前記振動吸収部材11A、11Bは、バネやゴム等の弾性体と前記バネやゴム等の弾性体に対して並列的に設けられたダンパーとによって構成されている。
【0024】
ここで、前記振動吸収部材11Aについて詳しく説明する。なお、前記振動吸収部材11Bは、前記振動吸収部材11Aと同様に構成されているので、前記振動吸収部材11Bについての説明は省略する。
【0025】
図3は、振動吸収部材11Aの概略構成を示す断面図であり、図2におけるIII部の拡大図である。
【0026】
振動吸収部材11Aは、たとえば、外形が円柱形状に形成されている本体部15を備え、この本体部15の軸方向の一端部(上部)15Aには金属等の部材で構成されたフランジ部17が一体的に設けられ、他端部(下部)15Bにも、金属等の部材で構成されたフランジ部19が一体的に設けられている。
【0027】
前記フランジ部17、19は、前記振動吸収部材11をエンジン5や車体3にボルト等の締結具を用いて固定する場合、また、前記振動吸収部材11同士をボルト等の締結具を用いて連結するときに使用されるものである。
【0028】
なお、図1〜図3に示す状態では、上側(車体3側)に振動吸収部材11Aが、下側に振動吸収部材11Bが設置されている。
【0029】
そして、振動吸収部材11Aの上側のフランジ部17は前記車体3の下面に固定され、振動吸収部材11Bの下側のフランジ部19は前記エンジン5の上面に固定されている。
【0030】
さらに、振動吸収部材11Aの下側のフランジ部19が、振動吸収部材11Bの上側のフランジ部17と、前記遮音部材13を間にして対向して設置されている。すなわち、前記遮音部材13を挟み込んだ状態で、振動吸収部材11Aの下側のフランジ部19と振動吸収部材11Bの上側のフランジ部17とが互いに連結されている。
【0031】
前記振動吸収部材11Aの本体部15は、ゴム等の弾性を備えた部材で構成されており、前記本体部15の内部には、円柱状の空間21が形成されている。
【0032】
前記振動吸収部材11Aの本体部15前記一端部15Aと前記他端部15Bとを互いに結ぶ方向(上下方向)の前記空間21の中間部には、前記空間21を第1の空間21Aと第2の空間21Bとに区切るための遮断板23が設けられている。したがって、前記振動吸収部材11Aを用いて前記エンジン5を前記車体3の下部に設置したときには、前記遮断板23を間にして上側に前記第1の空間21Aが形成され、下側に前記第2の空間21Bが形成されるようになっている。
【0033】
また、前記第1の空間21Aと前記第2の空間21Bとはオイル等の液体で満たされており、前記遮断板23には、小さな貫通穴25が形成されており、前記第1の空間21Aと前記第2の空間21Bとは、前記小さな貫通穴25を介して互いにながっている。
【0034】
前記小さな穴25はオリフィスを構成し、前記第1の空間21Aと前記第2の空間21Bとの間におけるオイルの移動を抑制している。
【0035】
したがって、外観状の構成が簡素であるにもかかわらず、前記振動吸収部材11Aの本体部15には、弾性体とダンパーとが並列的に設けられていることになる。
【0036】
なお、前記振動吸収部材11Aをコイルバネまたはコイルバネとダンパーとを並列的に配置したもので構成してもよい。
【0037】
前記気動車1では、前記遮音部材13が前記各振動吸収部材11に支持されているが、前記遮音部材13を、図4(遮音部材13の別の設置例を示す図)で示すように、前記車体3で直接支持してもよい。
【0038】
ずなわち、図4では、前記遮音部材13は、前記振動吸収部材11とは離れて、バネ27等の弾性体を介して前記車体3で支持されている。なお、バネ27等とダンパーとを並列に配置したもので、前記遮音部材13を支持してもよいし、車体3ではなく、エンジン5で支持するようにしてもよい。さらに、車体3とエンジン5との両方で前記遮音部材13を支持してもよい。
【0039】
ところで、エンジン5の運転時における振動や騒音が、気動車1の車室内に入り込む経路として、エンジン5と車体3とを連結している部材と、空気とが考えられる。
【0040】
前記経路が前記エンジン5と車体3とを連結している部材である場合には、この部材を媒体(媒質)にして、エンジン5の振動が車体に伝わり、車室内に騒音や振動が発生することになる。
【0041】
また、前記経路が空気である場合には、空気を媒体にして、エンジン5で発生した騒音が前記車体3の車室内に入り込むことになる。
【0042】
しかし、気動車1によれば、振動吸収部材11を用いて、車体3でエンジン5を支持しているので、前記エンジン5の振動が前記車体3へ伝達され車体3内の車室内へ入り込むことを抑制することができる。
【0043】
また、車体3とエンジン5との間で、前記車体3や前記エンジン5から離れて遮音部材13を設けてあるので、床を二重構造にした場合に比べ、空間を大きく保持した状態で前記遮音部材13が設置されていることになり(つまり遮音部材13と車体3との間に大きな空間が形成されていることになり、)騒音の透過損失が床を二重構造にした場合よりも大きくなっており、前記エンジン5の騒音が、前記車体3へ到達し前記車室内へ入り込むことを抑制することができる。
【0044】
また、気動車1の床下を二重構造にしなくてもよいので、気動車1の車室のスペースが小さくなることがなく、簡素な構成で、前記エンジン5の騒音や振動が前記気動車1の車室内に入ることを抑制することができる。
【0045】
さらに、床を二重構造にする等の大きな改造を施すことなく、遮音部材13や振動吸収部材11を車体3の外側から後付けで設置することができるので、前記エンジン5の騒音や振動が前記気動車1の車室内に入ることを抑制するための改造工事を、既存の気動車に対して施すことが容易になっている。
【0046】
また、騒音・振動対策のために、エンジン5を覆う必要がないので、エンジン5の保守や点検が容易になる。
【0047】
また、気動車1によれば、振動吸収部材11A、11Bを直列的に配置してあるので、エンジン5の振動が車体3に伝わることを一層抑制することができる。なお、直列に配置してある各振動吸収部材11A、11Bのバネ定数を、互いに異なった適宜の値のものにすれば、広範囲の周波数帯域でエンジン5の振動が発生してもこの振動を吸収することができる。
【0048】
さらに、気動車1によれば、前記遮音部材13が、直列的に配置されている前記各振動吸収部材11A、11Bの間に設置されているので、前記遮音部材13が車体3とエンジン5との中間部に設置されていることになり、前記遮音部材13によって効率良く騒音を遮ることができる。
【0049】
すなわち、エンジン5の騒音ができるだけ発散しないうちに、遮音部材13で音を遮ることが望ましいが、前記遮音部材13が、エンジン5の近傍に設置されているとすると、遮音部材13がエンジン5の振動を拾って騒音を発生してしまう。そこで、車体3とエンジン5との中間部に前記遮音部材13を設置することにより、エンジン5の騒音ができるだけ発散しないうちに騒音を遮ると共に、遮音部材13自体がエンジン5の振動を拾いにくいようにしてある。
【0050】
なお、遮音部材13を、前記振動吸収部材11から離して、バネ27等の弾性体を介して前記車体3で支持するようにすれば、遮音部材13自体がエンジン5の振動を一層拾わないようになる。
【0051】
また、気動車1によれば、前記振動吸収部材11が、バネやゴム等の弾性体で構成されているので、簡素な構成の部材でエンジン5の振動を吸収することができる。また、ダンパーを設けてあるので、前記エンジン5の振動を一層効率良く吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施形態に係る気動車の概略構成を示す図である。
【図2】エンジンの設置形態を示す図であり、図1に示すII部の拡大図である。
【図3】振動吸収部材の概略構成構成を示す断面図であり、図2におけるIII部の拡大図である。
【図4】遮音部材の別の設置例を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1 気動車
3 車体
5 エンジン
11、11A、11B 振動吸収部材
13 遮音部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の床下にエンジンを備えた気動車において、
防振性を備えていると共に、前記車体で前記エンジンを支持するために前記車体と前記エンジンとの間に設けられた振動吸収部材と;
前記車体および前記エンジンから離れて、前記車体と前記エンジンとの間に設置された遮音部材と;
を有することを特徴とする気動車。
【請求項2】
請求項1に記載の気動車において、
複数の前記振動吸収部材を直列的に配置して、前記エンジンを支持していることを特徴とする気動車。
【請求項3】
請求項2に記載の気動車において、
前記遮音部材は、直列的に配置されている前記各振動吸収部材の間で前記振動吸収部材に支持されており、または、前記遮音部材は、前記振動吸収部材から離れて、前記車体もしくは前記エンジンに支持されていることを特徴とする気動車。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の気動車において、
前記振動吸収部材は、バネやゴム等の弾性体で構成されており、または、前記振動吸収部材は、バネやゴム等の弾性体とダンパーとによって構成されていることを特徴とする気動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−27535(P2006−27535A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−212160(P2004−212160)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【出願人】(503132257)新潟トランシス株式会社 (16)