気化装置用ジェットノズル及び気化装置
【課題】より簡易且つ高精度に液体材料の気化量を制御することのできる気化装置及び気化装置用ジェットノズルを提供する。
【解決手段】ジェットノズルを構成するノズル単体22は、液体材料を充填する充填室25と、ピエゾ素子28を収容する作動室27とを備え、これら充填室25及び作動室27はダイアフラム26にて仕切られている。充填室25は、開口部24へ向けてテーパ状に延びている。ピエゾ素子28が伸長すると、ダイアフラム26により充填室25の容積の一部が排除される。これにより、充填室25内の液体材料が開口部24を介して噴出気化される。
【解決手段】ジェットノズルを構成するノズル単体22は、液体材料を充填する充填室25と、ピエゾ素子28を収容する作動室27とを備え、これら充填室25及び作動室27はダイアフラム26にて仕切られている。充填室25は、開口部24へ向けてテーパ状に延びている。ピエゾ素子28が伸長すると、ダイアフラム26により充填室25の容積の一部が排除される。これにより、充填室25内の液体材料が開口部24を介して噴出気化される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体材料を気化させる気化装置、及び同気化装置用のジェットノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体装置の製造に際しては、常温常圧で液体として存在する材料(液体材料)を気化させて用いる処理が行われている。ここで、液体材料を気化させる気化装置としては、例えば下記特許文献1に見られるように、流量制御装置を介して流量が調節された液体材料をキャリアガスと混合することで、液体材料を気化させる装置も提案されている。これによれば、流量制御装置によって液体材料の流量を調節することで、所望の量の液体材料を気化させることができる。
【0003】
上記流量制御は、通常、熱式マスフローセンサを用いて検出される液体材料の検出値を要求量にフィードバック制御することでなされる。このため、流量制御精度は、マスフローセンサの抵抗体の温度特性の検出精度に依存することとなり、通常、「μl/分」程度の精度が限界となる。そして、更に高精度の流量制御装置を得るためには、センサの精密化が要求され、気化装置の製造工数の煩雑化が避けられない。
【0004】
更に、上記気化装置には、流量制御装置の下流側に、液体材料をキャリアガスへと案内する通路が設けられることとなる。このため、流量制御装置によって流量が変更されたとしても上記通路内を既に流通する液体材料についてはその流量の変更を行うことができない。したがって、流量制御装置による流量の変更に対する液体材料の気化量の応答性が低下する。
【0005】
特に近年では、半導体装置の微細化に伴い、気化される液体材料の量をより高精度に制御することが要求されてきているため、気化装置の制御精度が問題となってきている。
【0006】
なお、気化装置としては、上記特許文献1の他、例えば下記特許文献2、3に記載されたものがある。
【特許文献1】特開平9−36108号公報
【特許文献2】特開平7−47201号公報
【特許文献3】特開平5−337357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、より簡易且つ高精度に液体材料の気化量を制御することのできる気化装置及び気化装置用ジェットノズルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0009】
手段1は、液体材料が充填されて且つ開口部を有する充填室と、該充填室内に充填可能な液体材料の物質量を、前記充填室内の容積及び温度の少なくとも一方の変化によって減少及び増加させる物質量可変手段とを備え、前記物質量の減少によって前記充填室に充填される液体材料が押しのけられることで前記開口部を介して前記液体材料を噴出気化させることを特徴とする気化装置用ジェットノズル。
【0010】
上記構成では、物質量可変手段によって充填室内に充填可能な液体材料の物質量が減少されることで、充填室に充填される液体材料は、押しのけられ、開口部を介して噴出気化される。このため、上記構成によれば、減少する物質量に応じた量の液体材料を開口部を介して噴出気化させることができる。そして、物質量の減少及び増加の一回の操作に伴う噴出気化量を単位量として、物質量可変手段による物質量の減少及び増加の回数によって、液体材料の気化量を制御することができる。
【0011】
手段2は、前記物質量可変手段が、充填室のうち開口部近傍に設けられて且つ前記充填室内の容積を縮小及び拡大させる容積可変手段であり、前記容積の縮小によって前記充填室に充填される液体材料が押しのけられることで前記開口部を介して前記液体材料を噴出気化させることを特徴とする手段1記載の気化装置用ジェットノズル。
【0012】
上記構成では、容積可変手段によって充填室の容積が縮小されることで、充填室に充填される液体材料は、押しのけられ、開口部を介して噴出気化される。このため、上記構成によれば、容積可変手段によって排除される充填室内の容積に応じた量の液体材料を開口部を介して噴出気化させることができる。そして、一回の容積の縮小操作に伴う噴出気化量を単位量として、容積可変手段による充填室内の容積の縮小及び拡大回数によって、液体材料の気化量を制御することができる。
【0013】
手段3は、前記容積可変手段は、アクチュエータと、該アクチュエータ及び前記充填室を仕切る可撓性部材とを備えることを特徴とする手段2記載の気化装置用ジェットノズル。
【0014】
上記構成では、可撓性部材によってアクチュエータと充填室とが仕切られることから、アクチュエータが充填室内の液体材料に曝されることを回避することができる。このため、簡易な構成にてアクチュエータの劣化を抑制することができる。
【0015】
手段4は、前記アクチュエータがピエゾ素子からなることを特徴とする手段3記載の気化装置用ジェットノズル。
【0016】
上記構成では、操作信号に対する伸縮の応答性に優れたピエゾ素子をアクチュエータとして用いるため、充填室内の容積の縮小及び拡大を高速で行うことができる。
【0017】
手段5は、前記開口部を複数備えることを特徴とする手段2〜4のいずれかに記載の気化装置用ジェットノズル。
【0018】
上記構成では、複数の開口部を備えることで、容積可変手段による充填室内の容積の縮小及び拡大の周期の割に、噴出気化量を増加させることができる。また、様々な液体材料を噴出気化させることもできる。
【0019】
手段6は、前記複数の開口部のそれぞれと対応する充填室同士が互いに仕切られて且つこれら各充填室同士で充填される前記液体材料が相違することを特徴とする手段5記載の気化装置用ジェットノズル。
【0020】
上記構成では、互いに仕切られた充填室同士で充填される液体が相違するために、複数の液体材料を噴出気化させることができる。
【0021】
手段7は、手段2〜6のいずれかに記載の気化装置用ジェットノズルと、前記気化させる液体材料の要求量に応じて、前記容積可変手段による容積の縮小及び拡大の操作を行なう操作手段とを備えることを特徴とする気化装置。
【0022】
上記構成では、操作手段によって容積可変手段による容積の縮小及び拡大の操作がなされることで、液体材料の実際の気化量を要求量に制御することができる。
【0023】
手段8は、前記ジェットノズルは、キャリアガス中に前記液体を噴出気化させるものであり、前記操作手段は、前記キャリアガス中の液体材料の要求濃度と前記キャリアガスの流量とに基づき、前記容積可変手段による容積の縮小及び拡大の操作を含む処理の周期を可変設定することを特徴とする手段7記載の気化装置。
【0024】
上記構成では、容積可変手段による容積の縮小及び拡大の操作を含む処理の周期によって、単位時間あたりの噴出気化量を制御することができる。このため、上記周期によって、キャリアガス中の液体材料の量、すなわち、キャリアガス中の液体材料の濃度を要求濃度とすることができる。
【0025】
手段9は、前記充填室内の圧力を調節する圧力調節手段を更に備えることを特徴とする手段7又は8記載の気化装置。
【0026】
ジェットノズルの外部の圧力や、ジェットノズルの開口部の配置態様によっては、容積可変手段による容積の縮小の有無にかかわらず、充填室内の液体材料が開口部を介して外部へと漏れ出たり、容積の縮小に伴う開口部からの液体材料の噴出気化が困難となったりする可能性がある。この点、上記構成では、充填室内の圧力を調節する圧力調節手段を備えることで、充填室内の液体材料が外部へと流出することや、噴出気化が困難となることを好適に回避することができる。
【0027】
手段10は、前記圧力調節手段は、前記充填室内の圧力を減圧する手段であることを特徴とする手段9記載の気化装置。
【0028】
上記構成では、充填室内の圧力を減圧する手段を備えることで、容積の縮小の有無にかかわらず液体材料が開口部から流出することを回避することができる。このため、ジェットノズルの開口部が減圧された空間に置かれる場合や、開口部が鉛直下方とされる場合等であっても、液体材料の気化量の制御を適切に行うことができる。
【0029】
なお、手段1〜6のいずれかに記載の気化装置用ジェットノズル又は手段6〜10のいずれかに記載の気化装置は、前記気化された液体材料が、半導体装置の製造に用いられるものとしてもよい。
【0030】
このように、半導体装置の製造装置として気化装置や気化装置用ジェットノズルを用いることで、半導体装置の製造における液体材料の気化量を高精度に制御することができる。このため、半導体装置の微細加工を好適に行うことができる。
【0031】
また、手段1の質量可変手段を、前記充填室内の液体材料を局所的に加熱する加熱手段を備えて構成し、前記加熱手段による局所的且つ瞬間的な加熱によって前記充填室に充填される液体材料が押しのけられることで前記開口部を介して液体材料を断続的に噴出気化させるようにしてもよい(手段11)。
【0032】
こうした構成によれば、液体材料の局所的且つ瞬間的な加熱によって、加熱された液体材料が膨張し、周囲の液体材料を押しのける。これにより、開口部近傍の液体材料は外部へ押し出される。しかし、加熱が瞬間的なものであることから、膨張した液体材料は周囲の液体材料によって冷却され速やかに縮小する。ただし、開口部の外部に一旦押し出された液体材料は、慣性力によって外部方向への変位を継続する。このため、局所的且つ瞬間的な加熱によって開口部の外部へと押し出された液体材料は開口部を介して噴出気化される。
【0033】
なお、手段11のジェットノズルは、手段5又は6記載の事項を有して構成してもよい。また、手段11や、これに手段5又は手段6の事項を有して構成されるジェットノズルに、手段7〜手段10記載の事項を加えて気化装置を構成してもよい。ただしこの際、操作手段は、容積の縮小及び拡大にかかる操作に代えて、加熱手段の加熱操作を行なう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる気化装置及び同気化装置用ジェットノズルを半導体装置の製造装置に適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0035】
図1に、本実施形態の気化装置の全体構成を示す。
【0036】
本実施形態では、液体材料としてのヘキサメチルジシラザン液(HMDS液)を気化させて半導体ウェハ10の表面に塗布することにより、半導体ウェハ10へのレジスト液の付着性の向上を図る処理をする際に、気化装置を用いる。詳しくは、図示されるように、半導体ウェハ10を収納するチャンバ12には、配管14が接続されている。配管14は、例えばSUS配管等からなる。配管14内には、ジェットノズル20が設けられている。そして、配管14には、キャリアガスが導入され、ジェットノズル20から噴出気化される上記液体材料がキャリアガスと混合される。そして、気化された液体材料とキャリアガスとの混合気が、チャンバ12内に供給される。なお、ジェットノズル20には、液体材料が蓄えられるタンク30が接続されている。
【0037】
一方、マイクロコンピュータ(マイコン40)は、チャンバ12内に供給される上記混合気内の液体材料の濃度を制御する装置である。マイコン40は、キャリアガスの流量を調節する流量コントローラ32やジェットノズル20を操作することで、上記混合気内の液体材料の濃度を制御する。
【0038】
上記ジェットノズル20は、タンク30内に蓄えられる液体材料を噴出させる開口部を複数備えて構成される。以下、ジェットノズル20について詳述する。
【0039】
図2(a)は、ジェットノズル20の拡大図である。図示されるように、ジェットノズル20は、収容部21と、行方向に一列に配置された複数のノズル単体22とを備えて構成されている。収容部21には、タンク30と接続される供給経路23が設けられている。また、各ノズル単体22には、液体材料を噴出気化させる開口部24が設けられている。図2(b)は、図2(a)のA−A断面図である。図示されるように、供給経路23は、各ノズル単体22の充填室25と接続されている。これにより、供給経路23から供給される液体材料が充填室25に充填される。
【0040】
図3に、ノズル単体22について、先の図2(a)のA−A断面と平行な断面であって且つ開口部24を含む断面の構成を示す。図示されるように、ノズル単体22の充填室25は、開口部24の近傍においてテーパ状に延びることで開口部24と接続されている。また、充填室25は、可撓性部材としてのダイアフラム26によって、作動室27と仕切られている。そして、作動室27には、ピエゾ素子28が設けられている。ピエゾ素子28は、充填室25のうち、開口部24の近傍の容積を縮小及び拡大させるための電子制御式のアクチュエータである。
【0041】
図4に、上記ピエゾ素子28の伸縮による充填室25内の液体材料の噴出気化の手法を示す。図4(a)は、ピエゾ素子28が基準位置にある状態を示す。この状態では、充填室25内の液体材料は、開口部24の外部へと噴出していない。一方、図4(b)は、ピエゾ素子28が伸長している状態を示す。この状態では、ピエゾ素子28の伸長に伴ってダイアフラム26が充填室25内の容積の一部を排除する。これにより、充填室25内の容積が縮小するため、上記排除された容積に応じた充填室25内の液体材料が、開口部24の外部へと押し出される。そして、図4(c)に示すように、ピエゾ素子28が再度基準位置まで縮小すると、充填室25内の液体材料は、開口部24よりも内側に吸引される。しかし、このとき、開口部24から押し出された液体材料は、慣性力によって開口部24の外部方向へ変位し続ける。このため、開口部24の外部へと一旦押し出された液体材料が開口部24から噴出され気化される。
【0042】
上記ジェットノズル20によれば、ピエゾ素子28の伸長に伴いダイアフラム26が排除する充填室25内の容積(容積の縮小量)や開口部24の開口面積に応じて、ピエゾ素子28の一回の伸長に伴う液体材料の噴出気化量(単位気化量)を調節することができる。本実施形態では、この単位気化量を、例えば「数〜数十ピコリットル」としている。
【0043】
上記ピエゾ素子28の伸縮操作は、ピエゾ素子28に対する充電処理及び放電処理によって行われる。すなわち、ピエゾ素子28の充電処理によってピエゾ素子28を伸長操作し、ピエゾ素子28の放電処理によってピエゾ素子28を縮小操作する。ここで、ピエゾ素子28の伸長量は、ピエゾ素子28の電気的な状態量と相関を有する。このため、本実施形態では、ピエゾ素子28の電圧を、ピエゾ素子28の伸長量を表すパラメータとして用いる。すなわち、ピエゾ素子28が所定の電圧となるまで充電することで、ピエゾ素子28の伸長量を所望の伸長量に制御する。
【0044】
上記ピエゾ素子28を所望の伸長量とするためには、ピエゾ素子28の電圧を例えば数百ボルト程度の高電圧とする必要がある。このため、先の図1に示すように、マイコン40は、ドライバ34を介してピエゾ素子28を操作する。ここで、ドライバ34は、高電圧をピエゾ素子28に印加する構成を有する。このドライバ34としては、例えばトランスを備えて、その2次側に生じる電圧をピエゾ素子28に印加する構成とすればよい。また、これに代えて、昇圧電源及びチョッパ回路を備え、昇圧電源の電力を降圧チョッパ制御によりピエゾ素子28に充電する構成としてもよい。
【0045】
図5に、マイコン40によるキャリアガス内の液体材料の濃度の制御の処理手順を示す。この処理は、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0046】
この一連の処理では、まずステップS10において、キャリアガスの要求流量を取得する。この要求流量は、流量コントローラ32に要求される流量であり、外部からの指示等によって定まる量である。一方、ステップS12においては、キャリアガス中の液体材料の要求濃度を取得する。この要求濃度は、外部からの指示によって定まる量である。続くステップS14においては、キャリアガスの要求流量と要求濃度とから、単位時間あたりの液体材料の要求量を算出する。ここで、要求量は、「(要求流量)×(要求濃度)」によって算出すればよい。
【0047】
続くステップS16においては、ピエゾ素子28の単位時間あたりの充電処理及び放電処理を含む単位処理の回数INを設定する。この回数INは、ノズル単体22の数Nと、ノズル単体22の単位噴出気化量qと、要求量QDとを用いて、「QD/(q×N)」と算出される。そして、ステップS18においては、ピエゾ素子28の伸長処理及び縮小処理を、単位時間あたりに上記回数INだけ行う。
【0048】
詳しくは、図6(a)に示されるように、ピエゾ素子28の電圧が所定の電圧Vaとなるまで充電する処理が完了すると、直ちにピエゾ素子28の電圧がゼロとなるまで放電する。ここで、電圧Vaは、ピエゾ素子28の伸長量が所望の伸長量となるときの電圧である。そして、充電処理の期間T1と放電処理の期間T2との経過後、待機期間T3が経過すると、再度充電処理を行う。ここで、充電処理の期間T1と放電処理の期間T2と待機期間T3との合計の期間Tは、「(単位時間)/IN」となっている。
【0049】
上記期間Tは、最小期間Tmin(=T1+T2)以上でなければならない。したがって、上記回数INは、「(単位時間)/Tmin」以下でなければならない。なお、期間Tを、最小期間Tmin以上とするとの条件に代えて、待機期間T3を、所定時間以上とするとの条件を課してもよい。ここで、所定時間は、ピエゾ素子28が基準位置まで縮小した後、開口部24近傍の充填室25内の液体材料の脈動が単位気化量の精度に顕著な影響を及ぼすことがなくなると想定される時間以上とする。
【0050】
図6(b)に、上記期間Tの逆数にて定義される充放電の周波数fと液体材料の要求量との関係を示す。図示されるように、充放電の周波数fが大きくなるほど要求量が大きくなる。
【0051】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0052】
(1)充填室25内の容積の縮小によって充填室25に充填される液体材料が押しのけられることで開口部24を介して液体材料を噴出気化させた。これにより、充填室25内の容積の縮小量に応じた量の液体材料を開口部24を介して噴出気化させることができる。そして、一回の容積の縮小操作に伴う噴出気化量を単位量として、縮小及び拡大回数によって、液体材料の気化量を制御することができる。
【0053】
(2)作動室27及び充填室25を仕切るダイアフラム26を備えた。これにより、作動室27が充填室25内の液体材料に曝されることを回避することができるため、簡易な構成にてアクチュエータの劣化を抑制することができる。
【0054】
(3)アクチュエータとして、ピエゾ素子28を用いた。ピエゾ素子28は応答性に優れているため、充填室25内の容積の縮小及び拡大を高速で行うことができる。
【0055】
(4)液体材料の要求量に応じてピエゾ素子28の伸縮操作を行なうマイコン40を備えることで、液体材料の実際の気化量を要求量に制御することができる。
【0056】
(5)キャリアガス中の液体材料の要求濃度とキャリアガスの流量とに基づき、ピエゾ素子28の伸長操作及び縮小操作を含む処理の周期を可変設定した。これにより、単位時間あたりの噴出気化量を制御することができ、ひいては、キャリアガス中の液体材料の濃度を制御することができる。
【0057】
(6)ノズル単体22を複数備えることで、ピエゾ素子28の伸縮周期の割に、噴出気化量を増加させることができる。
【0058】
(7)半導体装置の製造工程において、特にHMDS液を気化して半導体ウェハ10に塗布する際に、ジェットノズル20を備える気化装置を用いた。これにより、HMDS液の気化量を高精度に制御することができるため、半導体ウェハ10の微細加工を好適に行うことができる。
【0059】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0060】
図7(a)に、本実施形態にかかる配管14の断面図を示す。本実施形態では、ジェットノズル20を構成するノズル単体22を、その開口部24が配管14の内側に突出するようにして配置する。図7(b)は、図7(a)のB−B断面図である。図示されるように、ノズル単体22は、配管14の周方向に沿って複数(ここでは、4個を例示)設けられている。
【0061】
上記ノズル単体22の開口部24は、キャリアガスの進行方向に向いている。そして、ジェットノズル20は、キャリアガスの流動方向よりわずかに配管14の中心方向に向けて液体材料を噴出させるように設定されている。これは、例えば先の図3に示したノズル単体22の開口部24側の面に対する充填室25のテーパの角度を、図3に示す角度(90°)よりもやや鋭角とすることで行うことができる。この際、ピエゾ素子28の伸長方向をこれに対応して先の図3に示したものに対してずらすことが望ましい。これは、液体材料が配管14の内壁やノズル単体22に付着することを回避するための設定である。すなわち、例えば図7(a)の左側に開口部24を設けると、噴出される液体材料がキャリアガスの流れによってノズル単体22の左側の面側に押し戻され、同面に付着するおそれがある。また、配管14の中心に向けて開口部24を設ける場合にも、キャリアガスの流れのために、開口部24から噴出する液体材料がノズル単体22に付着するおそれがある。これに対し、キャリアガスの流れに逆らわないように液体材料を吐出気化させることで、配管14の内壁やノズル単体22に液体材料が付着することを好適に回避することができる。特に、本実施形態では、キャリアガスに液体材料を好適に混合させるべく、噴出気化方向をわずかに配管14の中心側に傾ける。この傾斜角は、噴出される液体材料がノズル単体22や配管14の内壁に付着することのない角度とされる。
【0062】
なお、上記傾斜を設ける代わりに、開口部24と配管14の内壁との距離を十分に長くしてもよい。
【0063】
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記(1)〜(7)の効果に加えて、更に以下の効果が得られるようになる。
【0064】
(8)ジェットノズル20の開口部24を配管14の内部に突出させる態様にて配置することで、ジェットノズル20によって配管14内の流路が極力妨げられないようにすることができる。
【0065】
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0066】
図8に示されるように、本実施形態では、ノズル単体22のそれぞれと各別のタンク30a,30b,30cとが接続されている。そして、各タンク30a,30b,30cには、各別の液体材料が蓄えられている。これにより、各ノズル単体22の開口部24から噴出気化される液体材料を互いに相違させることができる。このため、同時に複数種の液体材料を噴出気化させたり、複数種の液体材料を交互に噴出気化させたりすることができる。
【0067】
なお、本実施形態の液体材料は、例えば、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)や、BSTO(Ba、St、Tiの酸化物)等とすればよい。
【0068】
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記(1)〜(7)の効果に加えて、更に以下の効果を得ることができる。
【0069】
(9)複数のノズル単体22の充填室25同士で充填される液体材料が相違するために、複数の液体材料を噴出気化させることができる。
【0070】
(第4の実施形態)
以下、第4の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0071】
図9に、本実施形態にかかる気化装置の全体構成を示す。なお、図9において、先の図1に示した部材と同様の機能を有する部材には、便宜上、同一の符号を付している。
【0072】
本実施形態では、キャリアガスを用いずに、ジェットノズル20から液体材料をチャンバ12内に直接噴出気化させる。すなわち、図示されるように、ノズル単体22側をチャンバ12内に突出させて配置し、ピエゾ素子28の伸縮によってチャンバ12内に液体材料を噴出気化させる。ここで、ノズル単体22から一回で噴出される液体材料量は、噴出された液体材料が気化することなく、チャンバ12の内壁や半導体ウェハ10に付着することのない微少量に設定される。
【0073】
また、本実施形態では、チャンバ12内を真空にする等、チャンバ12内の圧力を外部に対して減圧して使用する。この場合、ピエゾ素子28の伸長の有無にかかわらず開口部24を介して充填室25内の液体材料がチャンバ12へと漏れ出るおそれがある。
【0074】
そこで本実施形態では、タンク30内の圧力を調節する圧力調節装置36を備える。そして、マイコン40により圧力調節装置36を操作することで、タンク30内の圧力を減圧する。これにより、充填室25内の圧力も減圧される。このため、液体材料は、その表面張力によってチャンバ12内にとどまるようになる。したがって、液体材料が開口部24を介して漏れ出ることを回避することができる。
【0075】
以上説明した本実施形態によっても、先の第1の実施形態の上記(1)〜(4)、(6)、(7)の効果に加えて、更に以下の効果を得ることができる。
【0076】
(10)圧力調節装置36を備えることで、ピエゾ素子28の縮小の有無にかかわらず液体材料が開口部24を介して漏れ出ることを好適に回避することができる。
【0077】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0078】
・例えば第1の実施形態や第2の実施形態において、ジェットノズル20がキャリアガスの流動を極力妨げないようにすべく、ジェットノズル20やノズル単体22を流線形の形状に構成してもよい。
【0079】
・ノズル単体22を複数用いる際の配置態様としては、上記各実施形態で例示したものに限らない。例えば、第1の実施形態では、ノズル単体22を1次元的に複数配置したが、これに代えて、ノズル単体22を行方向及び列方向の2次元的に複数配置してもよい。また、例えば、ジェットノズル20を、ノズル単体の集合体とすることなく、円柱状の単一の部材として且つ円柱の底面に複数の開口部24を同心円状に設けて構成してもよい。
【0080】
・例えば先の第1の実施形態等においても、重力等の影響により、ピエゾ素子28の伸長の有無にかかわらずジェットノズル20の開口部24を介して充填室25内の液体材料が漏れ出るおそれがある場合には、圧力調節装置36を設けてもよい。この際、圧力調節装置36としてはタンク30に接続されるものに限らず、充填室25に接続されるものとしてもよい。これにより、開口部24を介して液体材料が漏れ出ることをより好適に回避することができる。更に、圧力調節装置としては、液体材料を減圧するものに限らず、加圧するものであってもよい。これは、例えば、開口部24がキャリアガスの流通経路の上流側に面していたり、開口部24が加圧された雰囲気中に曝されている場合に有効である。
【0081】
・ピエゾ素子28の伸縮操作は、ピエゾ素子28の電圧に基づき行うものに限らない。例えば、ピエゾ素子28の充電電荷量や充電エネルギ量もピエゾ素子28の伸長量と相関を有するために、これらに基づき伸縮操作をしてもよい。
【0082】
・ジェットノズル20によって液体材料を噴出気化させる手法としては、上記各実施形態で例示したものに限らない。例えば、図10(a)、図10(b)に例示されるように、ジェットノズル20から噴出する液体材料を加熱することで気化させてもよい。図10(a)、図10(b)において、先の図1に示した部材と同様の機能を有する部材には便宜上同一の符号を付している。図10(a)、図10(b)に示されるように、ノズル単体22側にはヒータ50によって加熱された伝熱板52が設けられている。このため、ジェットノズル20から吐出される液体材料は、伝熱板52によって加熱され気化される。
【0083】
・ジェットノズル20の備えるアクチュエータとしては、ピエゾ素子28を用いるものに限らない。例えば電磁ソレノイドを用いるものであってもよい。また、容積可変手段としては、アクチュエータと充填室とがダイアフラムによって仕切られる構造に限らない。アクチュエータに液体材料に対する耐性が備わっているなら、ダイアフラムを備えず、アクチュエータが液体材料に曝される構成であってもよい。
【0084】
・ジェットノズルとしては、容積可変手段を備えるものに限らない。例えば、図11にジェットノズルを構成する単一のノズル単体22について示すように、開口部24と対抗する側の面にヒータ60を設け、充填室25内の液体材料を局所的且つ瞬間的に加熱膨張させるものとしてもよい。ここで、図11(a)は、ヒータ60による加熱がなされていないときを示す。一方、図11(b)に、ヒータ60による加熱がなされているときを示す。ヒータ60による加熱がなされると、ヒータ60近傍の液体材料が膨張する。これにより、開口部24の近傍の液体材料が押し出される。ヒータ60の加熱を瞬間的なものとすると、加熱終了により、図11(c)に示されるように膨張した液体材料は周囲の液体材料によって冷やされ、その体積が縮小する。ただし、一旦開口部25の外部へと押し出された液体材料は、慣性力によって外部方向へ変位し続ける。このため、開口部25へと一旦押し出された液体材料が、開口部25から噴出され気化されることとなる。
【0085】
・上記各実施形態では、本発明にかかる気化装置を半導体装置の製造装置に適用したがこれに限らない。液体材料を気化させるに際して気化量を高精度に制御する必要があるときには、本発明は特に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】第1の実施形態にかかる気化装置の全体構成を示す図。
【図2】ジェットノズルの拡大斜視図及び断面図。
【図3】ジェットノズルのノズル単体の断面図。
【図4】ノズル単体の動作を示す断面図。
【図5】上記実施形態にかかるキャリアガス中の液体材料の濃度制御の処理手順を示すフローチャート。
【図6】同処理によるピエゾ素子の充放電の態様を示すタイムチャート。
【図7】第2の実施形態にかかるジェットノズルの配置態様を示す図。
【図8】第3の実施形態にかかるジェットノズルを示す斜視図。
【図9】第4の実施形態にかかるジェットノズルを示す側面図。
【図10】上記各実施形態の変形例を示す断面図。
【図11】ジェットノズルの変形例を示す図。
【符号の説明】
【0087】
20…ジェットノズル、22…ノズル単体、24…開口部、25…充填室、26…ダイアフラム、28…ピエゾ素子、30…タンク、32…圧力調節装置、40…マイコン(操作手段の一実施形態)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体材料を気化させる気化装置、及び同気化装置用のジェットノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体装置の製造に際しては、常温常圧で液体として存在する材料(液体材料)を気化させて用いる処理が行われている。ここで、液体材料を気化させる気化装置としては、例えば下記特許文献1に見られるように、流量制御装置を介して流量が調節された液体材料をキャリアガスと混合することで、液体材料を気化させる装置も提案されている。これによれば、流量制御装置によって液体材料の流量を調節することで、所望の量の液体材料を気化させることができる。
【0003】
上記流量制御は、通常、熱式マスフローセンサを用いて検出される液体材料の検出値を要求量にフィードバック制御することでなされる。このため、流量制御精度は、マスフローセンサの抵抗体の温度特性の検出精度に依存することとなり、通常、「μl/分」程度の精度が限界となる。そして、更に高精度の流量制御装置を得るためには、センサの精密化が要求され、気化装置の製造工数の煩雑化が避けられない。
【0004】
更に、上記気化装置には、流量制御装置の下流側に、液体材料をキャリアガスへと案内する通路が設けられることとなる。このため、流量制御装置によって流量が変更されたとしても上記通路内を既に流通する液体材料についてはその流量の変更を行うことができない。したがって、流量制御装置による流量の変更に対する液体材料の気化量の応答性が低下する。
【0005】
特に近年では、半導体装置の微細化に伴い、気化される液体材料の量をより高精度に制御することが要求されてきているため、気化装置の制御精度が問題となってきている。
【0006】
なお、気化装置としては、上記特許文献1の他、例えば下記特許文献2、3に記載されたものがある。
【特許文献1】特開平9−36108号公報
【特許文献2】特開平7−47201号公報
【特許文献3】特開平5−337357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、より簡易且つ高精度に液体材料の気化量を制御することのできる気化装置及び気化装置用ジェットノズルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0009】
手段1は、液体材料が充填されて且つ開口部を有する充填室と、該充填室内に充填可能な液体材料の物質量を、前記充填室内の容積及び温度の少なくとも一方の変化によって減少及び増加させる物質量可変手段とを備え、前記物質量の減少によって前記充填室に充填される液体材料が押しのけられることで前記開口部を介して前記液体材料を噴出気化させることを特徴とする気化装置用ジェットノズル。
【0010】
上記構成では、物質量可変手段によって充填室内に充填可能な液体材料の物質量が減少されることで、充填室に充填される液体材料は、押しのけられ、開口部を介して噴出気化される。このため、上記構成によれば、減少する物質量に応じた量の液体材料を開口部を介して噴出気化させることができる。そして、物質量の減少及び増加の一回の操作に伴う噴出気化量を単位量として、物質量可変手段による物質量の減少及び増加の回数によって、液体材料の気化量を制御することができる。
【0011】
手段2は、前記物質量可変手段が、充填室のうち開口部近傍に設けられて且つ前記充填室内の容積を縮小及び拡大させる容積可変手段であり、前記容積の縮小によって前記充填室に充填される液体材料が押しのけられることで前記開口部を介して前記液体材料を噴出気化させることを特徴とする手段1記載の気化装置用ジェットノズル。
【0012】
上記構成では、容積可変手段によって充填室の容積が縮小されることで、充填室に充填される液体材料は、押しのけられ、開口部を介して噴出気化される。このため、上記構成によれば、容積可変手段によって排除される充填室内の容積に応じた量の液体材料を開口部を介して噴出気化させることができる。そして、一回の容積の縮小操作に伴う噴出気化量を単位量として、容積可変手段による充填室内の容積の縮小及び拡大回数によって、液体材料の気化量を制御することができる。
【0013】
手段3は、前記容積可変手段は、アクチュエータと、該アクチュエータ及び前記充填室を仕切る可撓性部材とを備えることを特徴とする手段2記載の気化装置用ジェットノズル。
【0014】
上記構成では、可撓性部材によってアクチュエータと充填室とが仕切られることから、アクチュエータが充填室内の液体材料に曝されることを回避することができる。このため、簡易な構成にてアクチュエータの劣化を抑制することができる。
【0015】
手段4は、前記アクチュエータがピエゾ素子からなることを特徴とする手段3記載の気化装置用ジェットノズル。
【0016】
上記構成では、操作信号に対する伸縮の応答性に優れたピエゾ素子をアクチュエータとして用いるため、充填室内の容積の縮小及び拡大を高速で行うことができる。
【0017】
手段5は、前記開口部を複数備えることを特徴とする手段2〜4のいずれかに記載の気化装置用ジェットノズル。
【0018】
上記構成では、複数の開口部を備えることで、容積可変手段による充填室内の容積の縮小及び拡大の周期の割に、噴出気化量を増加させることができる。また、様々な液体材料を噴出気化させることもできる。
【0019】
手段6は、前記複数の開口部のそれぞれと対応する充填室同士が互いに仕切られて且つこれら各充填室同士で充填される前記液体材料が相違することを特徴とする手段5記載の気化装置用ジェットノズル。
【0020】
上記構成では、互いに仕切られた充填室同士で充填される液体が相違するために、複数の液体材料を噴出気化させることができる。
【0021】
手段7は、手段2〜6のいずれかに記載の気化装置用ジェットノズルと、前記気化させる液体材料の要求量に応じて、前記容積可変手段による容積の縮小及び拡大の操作を行なう操作手段とを備えることを特徴とする気化装置。
【0022】
上記構成では、操作手段によって容積可変手段による容積の縮小及び拡大の操作がなされることで、液体材料の実際の気化量を要求量に制御することができる。
【0023】
手段8は、前記ジェットノズルは、キャリアガス中に前記液体を噴出気化させるものであり、前記操作手段は、前記キャリアガス中の液体材料の要求濃度と前記キャリアガスの流量とに基づき、前記容積可変手段による容積の縮小及び拡大の操作を含む処理の周期を可変設定することを特徴とする手段7記載の気化装置。
【0024】
上記構成では、容積可変手段による容積の縮小及び拡大の操作を含む処理の周期によって、単位時間あたりの噴出気化量を制御することができる。このため、上記周期によって、キャリアガス中の液体材料の量、すなわち、キャリアガス中の液体材料の濃度を要求濃度とすることができる。
【0025】
手段9は、前記充填室内の圧力を調節する圧力調節手段を更に備えることを特徴とする手段7又は8記載の気化装置。
【0026】
ジェットノズルの外部の圧力や、ジェットノズルの開口部の配置態様によっては、容積可変手段による容積の縮小の有無にかかわらず、充填室内の液体材料が開口部を介して外部へと漏れ出たり、容積の縮小に伴う開口部からの液体材料の噴出気化が困難となったりする可能性がある。この点、上記構成では、充填室内の圧力を調節する圧力調節手段を備えることで、充填室内の液体材料が外部へと流出することや、噴出気化が困難となることを好適に回避することができる。
【0027】
手段10は、前記圧力調節手段は、前記充填室内の圧力を減圧する手段であることを特徴とする手段9記載の気化装置。
【0028】
上記構成では、充填室内の圧力を減圧する手段を備えることで、容積の縮小の有無にかかわらず液体材料が開口部から流出することを回避することができる。このため、ジェットノズルの開口部が減圧された空間に置かれる場合や、開口部が鉛直下方とされる場合等であっても、液体材料の気化量の制御を適切に行うことができる。
【0029】
なお、手段1〜6のいずれかに記載の気化装置用ジェットノズル又は手段6〜10のいずれかに記載の気化装置は、前記気化された液体材料が、半導体装置の製造に用いられるものとしてもよい。
【0030】
このように、半導体装置の製造装置として気化装置や気化装置用ジェットノズルを用いることで、半導体装置の製造における液体材料の気化量を高精度に制御することができる。このため、半導体装置の微細加工を好適に行うことができる。
【0031】
また、手段1の質量可変手段を、前記充填室内の液体材料を局所的に加熱する加熱手段を備えて構成し、前記加熱手段による局所的且つ瞬間的な加熱によって前記充填室に充填される液体材料が押しのけられることで前記開口部を介して液体材料を断続的に噴出気化させるようにしてもよい(手段11)。
【0032】
こうした構成によれば、液体材料の局所的且つ瞬間的な加熱によって、加熱された液体材料が膨張し、周囲の液体材料を押しのける。これにより、開口部近傍の液体材料は外部へ押し出される。しかし、加熱が瞬間的なものであることから、膨張した液体材料は周囲の液体材料によって冷却され速やかに縮小する。ただし、開口部の外部に一旦押し出された液体材料は、慣性力によって外部方向への変位を継続する。このため、局所的且つ瞬間的な加熱によって開口部の外部へと押し出された液体材料は開口部を介して噴出気化される。
【0033】
なお、手段11のジェットノズルは、手段5又は6記載の事項を有して構成してもよい。また、手段11や、これに手段5又は手段6の事項を有して構成されるジェットノズルに、手段7〜手段10記載の事項を加えて気化装置を構成してもよい。ただしこの際、操作手段は、容積の縮小及び拡大にかかる操作に代えて、加熱手段の加熱操作を行なう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる気化装置及び同気化装置用ジェットノズルを半導体装置の製造装置に適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0035】
図1に、本実施形態の気化装置の全体構成を示す。
【0036】
本実施形態では、液体材料としてのヘキサメチルジシラザン液(HMDS液)を気化させて半導体ウェハ10の表面に塗布することにより、半導体ウェハ10へのレジスト液の付着性の向上を図る処理をする際に、気化装置を用いる。詳しくは、図示されるように、半導体ウェハ10を収納するチャンバ12には、配管14が接続されている。配管14は、例えばSUS配管等からなる。配管14内には、ジェットノズル20が設けられている。そして、配管14には、キャリアガスが導入され、ジェットノズル20から噴出気化される上記液体材料がキャリアガスと混合される。そして、気化された液体材料とキャリアガスとの混合気が、チャンバ12内に供給される。なお、ジェットノズル20には、液体材料が蓄えられるタンク30が接続されている。
【0037】
一方、マイクロコンピュータ(マイコン40)は、チャンバ12内に供給される上記混合気内の液体材料の濃度を制御する装置である。マイコン40は、キャリアガスの流量を調節する流量コントローラ32やジェットノズル20を操作することで、上記混合気内の液体材料の濃度を制御する。
【0038】
上記ジェットノズル20は、タンク30内に蓄えられる液体材料を噴出させる開口部を複数備えて構成される。以下、ジェットノズル20について詳述する。
【0039】
図2(a)は、ジェットノズル20の拡大図である。図示されるように、ジェットノズル20は、収容部21と、行方向に一列に配置された複数のノズル単体22とを備えて構成されている。収容部21には、タンク30と接続される供給経路23が設けられている。また、各ノズル単体22には、液体材料を噴出気化させる開口部24が設けられている。図2(b)は、図2(a)のA−A断面図である。図示されるように、供給経路23は、各ノズル単体22の充填室25と接続されている。これにより、供給経路23から供給される液体材料が充填室25に充填される。
【0040】
図3に、ノズル単体22について、先の図2(a)のA−A断面と平行な断面であって且つ開口部24を含む断面の構成を示す。図示されるように、ノズル単体22の充填室25は、開口部24の近傍においてテーパ状に延びることで開口部24と接続されている。また、充填室25は、可撓性部材としてのダイアフラム26によって、作動室27と仕切られている。そして、作動室27には、ピエゾ素子28が設けられている。ピエゾ素子28は、充填室25のうち、開口部24の近傍の容積を縮小及び拡大させるための電子制御式のアクチュエータである。
【0041】
図4に、上記ピエゾ素子28の伸縮による充填室25内の液体材料の噴出気化の手法を示す。図4(a)は、ピエゾ素子28が基準位置にある状態を示す。この状態では、充填室25内の液体材料は、開口部24の外部へと噴出していない。一方、図4(b)は、ピエゾ素子28が伸長している状態を示す。この状態では、ピエゾ素子28の伸長に伴ってダイアフラム26が充填室25内の容積の一部を排除する。これにより、充填室25内の容積が縮小するため、上記排除された容積に応じた充填室25内の液体材料が、開口部24の外部へと押し出される。そして、図4(c)に示すように、ピエゾ素子28が再度基準位置まで縮小すると、充填室25内の液体材料は、開口部24よりも内側に吸引される。しかし、このとき、開口部24から押し出された液体材料は、慣性力によって開口部24の外部方向へ変位し続ける。このため、開口部24の外部へと一旦押し出された液体材料が開口部24から噴出され気化される。
【0042】
上記ジェットノズル20によれば、ピエゾ素子28の伸長に伴いダイアフラム26が排除する充填室25内の容積(容積の縮小量)や開口部24の開口面積に応じて、ピエゾ素子28の一回の伸長に伴う液体材料の噴出気化量(単位気化量)を調節することができる。本実施形態では、この単位気化量を、例えば「数〜数十ピコリットル」としている。
【0043】
上記ピエゾ素子28の伸縮操作は、ピエゾ素子28に対する充電処理及び放電処理によって行われる。すなわち、ピエゾ素子28の充電処理によってピエゾ素子28を伸長操作し、ピエゾ素子28の放電処理によってピエゾ素子28を縮小操作する。ここで、ピエゾ素子28の伸長量は、ピエゾ素子28の電気的な状態量と相関を有する。このため、本実施形態では、ピエゾ素子28の電圧を、ピエゾ素子28の伸長量を表すパラメータとして用いる。すなわち、ピエゾ素子28が所定の電圧となるまで充電することで、ピエゾ素子28の伸長量を所望の伸長量に制御する。
【0044】
上記ピエゾ素子28を所望の伸長量とするためには、ピエゾ素子28の電圧を例えば数百ボルト程度の高電圧とする必要がある。このため、先の図1に示すように、マイコン40は、ドライバ34を介してピエゾ素子28を操作する。ここで、ドライバ34は、高電圧をピエゾ素子28に印加する構成を有する。このドライバ34としては、例えばトランスを備えて、その2次側に生じる電圧をピエゾ素子28に印加する構成とすればよい。また、これに代えて、昇圧電源及びチョッパ回路を備え、昇圧電源の電力を降圧チョッパ制御によりピエゾ素子28に充電する構成としてもよい。
【0045】
図5に、マイコン40によるキャリアガス内の液体材料の濃度の制御の処理手順を示す。この処理は、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0046】
この一連の処理では、まずステップS10において、キャリアガスの要求流量を取得する。この要求流量は、流量コントローラ32に要求される流量であり、外部からの指示等によって定まる量である。一方、ステップS12においては、キャリアガス中の液体材料の要求濃度を取得する。この要求濃度は、外部からの指示によって定まる量である。続くステップS14においては、キャリアガスの要求流量と要求濃度とから、単位時間あたりの液体材料の要求量を算出する。ここで、要求量は、「(要求流量)×(要求濃度)」によって算出すればよい。
【0047】
続くステップS16においては、ピエゾ素子28の単位時間あたりの充電処理及び放電処理を含む単位処理の回数INを設定する。この回数INは、ノズル単体22の数Nと、ノズル単体22の単位噴出気化量qと、要求量QDとを用いて、「QD/(q×N)」と算出される。そして、ステップS18においては、ピエゾ素子28の伸長処理及び縮小処理を、単位時間あたりに上記回数INだけ行う。
【0048】
詳しくは、図6(a)に示されるように、ピエゾ素子28の電圧が所定の電圧Vaとなるまで充電する処理が完了すると、直ちにピエゾ素子28の電圧がゼロとなるまで放電する。ここで、電圧Vaは、ピエゾ素子28の伸長量が所望の伸長量となるときの電圧である。そして、充電処理の期間T1と放電処理の期間T2との経過後、待機期間T3が経過すると、再度充電処理を行う。ここで、充電処理の期間T1と放電処理の期間T2と待機期間T3との合計の期間Tは、「(単位時間)/IN」となっている。
【0049】
上記期間Tは、最小期間Tmin(=T1+T2)以上でなければならない。したがって、上記回数INは、「(単位時間)/Tmin」以下でなければならない。なお、期間Tを、最小期間Tmin以上とするとの条件に代えて、待機期間T3を、所定時間以上とするとの条件を課してもよい。ここで、所定時間は、ピエゾ素子28が基準位置まで縮小した後、開口部24近傍の充填室25内の液体材料の脈動が単位気化量の精度に顕著な影響を及ぼすことがなくなると想定される時間以上とする。
【0050】
図6(b)に、上記期間Tの逆数にて定義される充放電の周波数fと液体材料の要求量との関係を示す。図示されるように、充放電の周波数fが大きくなるほど要求量が大きくなる。
【0051】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0052】
(1)充填室25内の容積の縮小によって充填室25に充填される液体材料が押しのけられることで開口部24を介して液体材料を噴出気化させた。これにより、充填室25内の容積の縮小量に応じた量の液体材料を開口部24を介して噴出気化させることができる。そして、一回の容積の縮小操作に伴う噴出気化量を単位量として、縮小及び拡大回数によって、液体材料の気化量を制御することができる。
【0053】
(2)作動室27及び充填室25を仕切るダイアフラム26を備えた。これにより、作動室27が充填室25内の液体材料に曝されることを回避することができるため、簡易な構成にてアクチュエータの劣化を抑制することができる。
【0054】
(3)アクチュエータとして、ピエゾ素子28を用いた。ピエゾ素子28は応答性に優れているため、充填室25内の容積の縮小及び拡大を高速で行うことができる。
【0055】
(4)液体材料の要求量に応じてピエゾ素子28の伸縮操作を行なうマイコン40を備えることで、液体材料の実際の気化量を要求量に制御することができる。
【0056】
(5)キャリアガス中の液体材料の要求濃度とキャリアガスの流量とに基づき、ピエゾ素子28の伸長操作及び縮小操作を含む処理の周期を可変設定した。これにより、単位時間あたりの噴出気化量を制御することができ、ひいては、キャリアガス中の液体材料の濃度を制御することができる。
【0057】
(6)ノズル単体22を複数備えることで、ピエゾ素子28の伸縮周期の割に、噴出気化量を増加させることができる。
【0058】
(7)半導体装置の製造工程において、特にHMDS液を気化して半導体ウェハ10に塗布する際に、ジェットノズル20を備える気化装置を用いた。これにより、HMDS液の気化量を高精度に制御することができるため、半導体ウェハ10の微細加工を好適に行うことができる。
【0059】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0060】
図7(a)に、本実施形態にかかる配管14の断面図を示す。本実施形態では、ジェットノズル20を構成するノズル単体22を、その開口部24が配管14の内側に突出するようにして配置する。図7(b)は、図7(a)のB−B断面図である。図示されるように、ノズル単体22は、配管14の周方向に沿って複数(ここでは、4個を例示)設けられている。
【0061】
上記ノズル単体22の開口部24は、キャリアガスの進行方向に向いている。そして、ジェットノズル20は、キャリアガスの流動方向よりわずかに配管14の中心方向に向けて液体材料を噴出させるように設定されている。これは、例えば先の図3に示したノズル単体22の開口部24側の面に対する充填室25のテーパの角度を、図3に示す角度(90°)よりもやや鋭角とすることで行うことができる。この際、ピエゾ素子28の伸長方向をこれに対応して先の図3に示したものに対してずらすことが望ましい。これは、液体材料が配管14の内壁やノズル単体22に付着することを回避するための設定である。すなわち、例えば図7(a)の左側に開口部24を設けると、噴出される液体材料がキャリアガスの流れによってノズル単体22の左側の面側に押し戻され、同面に付着するおそれがある。また、配管14の中心に向けて開口部24を設ける場合にも、キャリアガスの流れのために、開口部24から噴出する液体材料がノズル単体22に付着するおそれがある。これに対し、キャリアガスの流れに逆らわないように液体材料を吐出気化させることで、配管14の内壁やノズル単体22に液体材料が付着することを好適に回避することができる。特に、本実施形態では、キャリアガスに液体材料を好適に混合させるべく、噴出気化方向をわずかに配管14の中心側に傾ける。この傾斜角は、噴出される液体材料がノズル単体22や配管14の内壁に付着することのない角度とされる。
【0062】
なお、上記傾斜を設ける代わりに、開口部24と配管14の内壁との距離を十分に長くしてもよい。
【0063】
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記(1)〜(7)の効果に加えて、更に以下の効果が得られるようになる。
【0064】
(8)ジェットノズル20の開口部24を配管14の内部に突出させる態様にて配置することで、ジェットノズル20によって配管14内の流路が極力妨げられないようにすることができる。
【0065】
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0066】
図8に示されるように、本実施形態では、ノズル単体22のそれぞれと各別のタンク30a,30b,30cとが接続されている。そして、各タンク30a,30b,30cには、各別の液体材料が蓄えられている。これにより、各ノズル単体22の開口部24から噴出気化される液体材料を互いに相違させることができる。このため、同時に複数種の液体材料を噴出気化させたり、複数種の液体材料を交互に噴出気化させたりすることができる。
【0067】
なお、本実施形態の液体材料は、例えば、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)や、BSTO(Ba、St、Tiの酸化物)等とすればよい。
【0068】
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記(1)〜(7)の効果に加えて、更に以下の効果を得ることができる。
【0069】
(9)複数のノズル単体22の充填室25同士で充填される液体材料が相違するために、複数の液体材料を噴出気化させることができる。
【0070】
(第4の実施形態)
以下、第4の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0071】
図9に、本実施形態にかかる気化装置の全体構成を示す。なお、図9において、先の図1に示した部材と同様の機能を有する部材には、便宜上、同一の符号を付している。
【0072】
本実施形態では、キャリアガスを用いずに、ジェットノズル20から液体材料をチャンバ12内に直接噴出気化させる。すなわち、図示されるように、ノズル単体22側をチャンバ12内に突出させて配置し、ピエゾ素子28の伸縮によってチャンバ12内に液体材料を噴出気化させる。ここで、ノズル単体22から一回で噴出される液体材料量は、噴出された液体材料が気化することなく、チャンバ12の内壁や半導体ウェハ10に付着することのない微少量に設定される。
【0073】
また、本実施形態では、チャンバ12内を真空にする等、チャンバ12内の圧力を外部に対して減圧して使用する。この場合、ピエゾ素子28の伸長の有無にかかわらず開口部24を介して充填室25内の液体材料がチャンバ12へと漏れ出るおそれがある。
【0074】
そこで本実施形態では、タンク30内の圧力を調節する圧力調節装置36を備える。そして、マイコン40により圧力調節装置36を操作することで、タンク30内の圧力を減圧する。これにより、充填室25内の圧力も減圧される。このため、液体材料は、その表面張力によってチャンバ12内にとどまるようになる。したがって、液体材料が開口部24を介して漏れ出ることを回避することができる。
【0075】
以上説明した本実施形態によっても、先の第1の実施形態の上記(1)〜(4)、(6)、(7)の効果に加えて、更に以下の効果を得ることができる。
【0076】
(10)圧力調節装置36を備えることで、ピエゾ素子28の縮小の有無にかかわらず液体材料が開口部24を介して漏れ出ることを好適に回避することができる。
【0077】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0078】
・例えば第1の実施形態や第2の実施形態において、ジェットノズル20がキャリアガスの流動を極力妨げないようにすべく、ジェットノズル20やノズル単体22を流線形の形状に構成してもよい。
【0079】
・ノズル単体22を複数用いる際の配置態様としては、上記各実施形態で例示したものに限らない。例えば、第1の実施形態では、ノズル単体22を1次元的に複数配置したが、これに代えて、ノズル単体22を行方向及び列方向の2次元的に複数配置してもよい。また、例えば、ジェットノズル20を、ノズル単体の集合体とすることなく、円柱状の単一の部材として且つ円柱の底面に複数の開口部24を同心円状に設けて構成してもよい。
【0080】
・例えば先の第1の実施形態等においても、重力等の影響により、ピエゾ素子28の伸長の有無にかかわらずジェットノズル20の開口部24を介して充填室25内の液体材料が漏れ出るおそれがある場合には、圧力調節装置36を設けてもよい。この際、圧力調節装置36としてはタンク30に接続されるものに限らず、充填室25に接続されるものとしてもよい。これにより、開口部24を介して液体材料が漏れ出ることをより好適に回避することができる。更に、圧力調節装置としては、液体材料を減圧するものに限らず、加圧するものであってもよい。これは、例えば、開口部24がキャリアガスの流通経路の上流側に面していたり、開口部24が加圧された雰囲気中に曝されている場合に有効である。
【0081】
・ピエゾ素子28の伸縮操作は、ピエゾ素子28の電圧に基づき行うものに限らない。例えば、ピエゾ素子28の充電電荷量や充電エネルギ量もピエゾ素子28の伸長量と相関を有するために、これらに基づき伸縮操作をしてもよい。
【0082】
・ジェットノズル20によって液体材料を噴出気化させる手法としては、上記各実施形態で例示したものに限らない。例えば、図10(a)、図10(b)に例示されるように、ジェットノズル20から噴出する液体材料を加熱することで気化させてもよい。図10(a)、図10(b)において、先の図1に示した部材と同様の機能を有する部材には便宜上同一の符号を付している。図10(a)、図10(b)に示されるように、ノズル単体22側にはヒータ50によって加熱された伝熱板52が設けられている。このため、ジェットノズル20から吐出される液体材料は、伝熱板52によって加熱され気化される。
【0083】
・ジェットノズル20の備えるアクチュエータとしては、ピエゾ素子28を用いるものに限らない。例えば電磁ソレノイドを用いるものであってもよい。また、容積可変手段としては、アクチュエータと充填室とがダイアフラムによって仕切られる構造に限らない。アクチュエータに液体材料に対する耐性が備わっているなら、ダイアフラムを備えず、アクチュエータが液体材料に曝される構成であってもよい。
【0084】
・ジェットノズルとしては、容積可変手段を備えるものに限らない。例えば、図11にジェットノズルを構成する単一のノズル単体22について示すように、開口部24と対抗する側の面にヒータ60を設け、充填室25内の液体材料を局所的且つ瞬間的に加熱膨張させるものとしてもよい。ここで、図11(a)は、ヒータ60による加熱がなされていないときを示す。一方、図11(b)に、ヒータ60による加熱がなされているときを示す。ヒータ60による加熱がなされると、ヒータ60近傍の液体材料が膨張する。これにより、開口部24の近傍の液体材料が押し出される。ヒータ60の加熱を瞬間的なものとすると、加熱終了により、図11(c)に示されるように膨張した液体材料は周囲の液体材料によって冷やされ、その体積が縮小する。ただし、一旦開口部25の外部へと押し出された液体材料は、慣性力によって外部方向へ変位し続ける。このため、開口部25へと一旦押し出された液体材料が、開口部25から噴出され気化されることとなる。
【0085】
・上記各実施形態では、本発明にかかる気化装置を半導体装置の製造装置に適用したがこれに限らない。液体材料を気化させるに際して気化量を高精度に制御する必要があるときには、本発明は特に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】第1の実施形態にかかる気化装置の全体構成を示す図。
【図2】ジェットノズルの拡大斜視図及び断面図。
【図3】ジェットノズルのノズル単体の断面図。
【図4】ノズル単体の動作を示す断面図。
【図5】上記実施形態にかかるキャリアガス中の液体材料の濃度制御の処理手順を示すフローチャート。
【図6】同処理によるピエゾ素子の充放電の態様を示すタイムチャート。
【図7】第2の実施形態にかかるジェットノズルの配置態様を示す図。
【図8】第3の実施形態にかかるジェットノズルを示す斜視図。
【図9】第4の実施形態にかかるジェットノズルを示す側面図。
【図10】上記各実施形態の変形例を示す断面図。
【図11】ジェットノズルの変形例を示す図。
【符号の説明】
【0087】
20…ジェットノズル、22…ノズル単体、24…開口部、25…充填室、26…ダイアフラム、28…ピエゾ素子、30…タンク、32…圧力調節装置、40…マイコン(操作手段の一実施形態)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体材料が充填されて且つ開口部を有する充填室と、
該充填室内に充填可能な液体材料の物質量を、前記充填室内の容積及び温度の少なくとも一方の変化によって減少及び増加させる物質量可変手段とを備え、
前記物質量の減少によって前記充填室に充填される液体材料が押しのけられることで前記開口部を介して前記液体材料を噴出気化させることを特徴とする気化装置用ジェットノズル。
【請求項2】
前記物質量可変手段が、前記充填室のうち開口部近傍に設けられて且つ前記充填室内の容積を縮小及び拡大させる容積可変手段であり、
前記容積の縮小によって前記充填室に充填される液体材料が押しのけられることで前記開口部を介して前記液体材料を噴出気化させることを特徴とする請求項1記載の気化装置用ジェットノズル。
【請求項3】
前記容積可変手段は、アクチュエータと、該アクチュエータ及び前記充填室を仕切る可撓性部材とを備えることを特徴とする請求項2記載の気化装置用ジェットノズル。
【請求項4】
前記アクチュエータがピエゾ素子からなることを特徴とする請求項3記載の気化装置用ジェットノズル。
【請求項5】
前記開口部を複数備えることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の気化装置用ジェットノズル。
【請求項6】
前記複数の開口部のそれぞれと対応する充填室同士が互いに仕切られて且つこれら各充填室同士で充填される前記液体材料が相違することを特徴とする請求項5記載の気化装置用ジェットノズル。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれかに記載の気化装置用ジェットノズルと、
前記気化させる液体材料の要求量に応じて、前記容積可変手段による容積の縮小及び拡大の操作を行なう操作手段を備えることを特徴とする気化装置。
【請求項8】
前記ジェットノズルは、キャリアガス中に前記液体を噴出気化させるものであり、前記操作手段は、前記キャリアガス中の液体材料の要求濃度と前記キャリアガスの流量とに基づき、前記容積可変手段による容積の縮小及び拡大の操作を含む処理の周期を可変設定することを特徴とする請求項7記載の気化装置。
【請求項9】
前記充填室内の圧力を調節する圧力調節手段を更に備えることを特徴とする請求項7又は8記載の気化装置。
【請求項10】
前記圧力調節手段は、前記充填室内の圧力を減圧する手段であることを特徴とする請求項9記載の気化装置。
【請求項1】
液体材料が充填されて且つ開口部を有する充填室と、
該充填室内に充填可能な液体材料の物質量を、前記充填室内の容積及び温度の少なくとも一方の変化によって減少及び増加させる物質量可変手段とを備え、
前記物質量の減少によって前記充填室に充填される液体材料が押しのけられることで前記開口部を介して前記液体材料を噴出気化させることを特徴とする気化装置用ジェットノズル。
【請求項2】
前記物質量可変手段が、前記充填室のうち開口部近傍に設けられて且つ前記充填室内の容積を縮小及び拡大させる容積可変手段であり、
前記容積の縮小によって前記充填室に充填される液体材料が押しのけられることで前記開口部を介して前記液体材料を噴出気化させることを特徴とする請求項1記載の気化装置用ジェットノズル。
【請求項3】
前記容積可変手段は、アクチュエータと、該アクチュエータ及び前記充填室を仕切る可撓性部材とを備えることを特徴とする請求項2記載の気化装置用ジェットノズル。
【請求項4】
前記アクチュエータがピエゾ素子からなることを特徴とする請求項3記載の気化装置用ジェットノズル。
【請求項5】
前記開口部を複数備えることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の気化装置用ジェットノズル。
【請求項6】
前記複数の開口部のそれぞれと対応する充填室同士が互いに仕切られて且つこれら各充填室同士で充填される前記液体材料が相違することを特徴とする請求項5記載の気化装置用ジェットノズル。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれかに記載の気化装置用ジェットノズルと、
前記気化させる液体材料の要求量に応じて、前記容積可変手段による容積の縮小及び拡大の操作を行なう操作手段を備えることを特徴とする気化装置。
【請求項8】
前記ジェットノズルは、キャリアガス中に前記液体を噴出気化させるものであり、前記操作手段は、前記キャリアガス中の液体材料の要求濃度と前記キャリアガスの流量とに基づき、前記容積可変手段による容積の縮小及び拡大の操作を含む処理の周期を可変設定することを特徴とする請求項7記載の気化装置。
【請求項9】
前記充填室内の圧力を調節する圧力調節手段を更に備えることを特徴とする請求項7又は8記載の気化装置。
【請求項10】
前記圧力調節手段は、前記充填室内の圧力を減圧する手段であることを特徴とする請求項9記載の気化装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−326071(P2007−326071A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−160738(P2006−160738)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【出願人】(000106760)シーケーディ株式会社 (627)
【出願人】(502128800)株式会社オクテック (83)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【出願人】(000106760)シーケーディ株式会社 (627)
【出願人】(502128800)株式会社オクテック (83)
【Fターム(参考)】
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