説明

気圧変動訓練装置

【課題】 訓練の内容に応じて、安全性を損なうことなく、より簡便な操作によって訓練を行うことができる気圧変動訓練装置を提供する。
【解決手段】主室11および副室12と、主室監視窓22および副室監視窓24と、主室給排気手段14および副室給排気手段14と、主室監視窓近傍に設置され主室給排気手段により主室内を手動制御または自動制御で気圧調整する操作を行うとともに、主室の制御を行うときに同時に副室給排気手段により副室内を遠隔自動制御で気圧調整する操作を行う主室側操作部15と、副室監視窓近傍に設置され副室給排気手段により副室内を手動制御または自動制御で気圧調整する操作とともに、副室の制御を行うときに同時に主室給排気手段により主室内を遠隔自動制御で気圧調整する操作を行う副室側操作部16と、主室側操作部または副室側操作部による操作に基づいて発生する操作信号に基づいて制御部17を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気圧環境の変動を模擬した訓練、研究、体験を行うための気圧変動訓練装置に関し、さらに詳細には、訓練の内容に応じて汎用性の高い操作を行うことができるようにした気圧変動訓練装置に関する。
気圧変動訓練装置は、具体的には、スポーツ選手の高地トレーニング、登山家の登山訓練、研究機関による心肺機能や運動機能の研究、航空機の乗務員や添乗員の飛行訓練等において模擬的に気圧変動を体感する低圧訓練装置、あるいはダイバーの潜水訓練等において模擬的に気圧変動を体感する高圧訓練装置として利用される。
【背景技術】
【0002】
マラソン選手をはじめスポーツ選手は、心肺機能の改善を目的として、減圧下で行う訓練である高地トレーニングを行うことがある。また、登山家は、高地生活に慣れるために、登山前には、高地での訓練を行う。そのような減圧下の訓練を実施するのに適した高地がない日本のような国では、外国に遠征して訓練しなければならない。
これを避けるため、減圧環境のトレーニング空間を作り出して、擬似的に高地訓練を行うようにした減圧訓練施設が開示されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、航空機の乗務員や添乗員は、飛行高度に応じて機内の気圧が変動することを想定し、低圧訓練装置により訓練を行っている。低圧訓練装置は真空ポンプによる排気機構と外気吸入を行う給気機構とが接続された訓練室を有しており、この訓練室を仮想的に航空機の機内を模擬したものとして、排気速度や給気速度を制御して気圧変動を体感することができるようにしてある。そして、訓練室内の被訓練者に対し様々な気圧変動パターンによる訓練を行い、不慮の事故による気圧変動が生じた場合にも適切に対処できるようにしている。
【0004】
また、潜水作業を行うダイバーは、水中に潜るときには水圧によって加圧され、水上に戻るときに減圧されるので、加圧・減圧サイクルに対する訓練を行う必要がある。この場合は、加圧空気を導入する給気機構(加圧機構)と大気圧に戻す排気機構(減圧機構)が接続された訓練室で、気圧変動を体感させる訓練を行っている。
【0005】
低圧訓練装置や高圧訓練装置のような気圧変動訓練装置のなかには、主室と副室との2つの訓練室を有し、訓練室間を扉付きの隔壁で仕切り、それぞれが独立に室内の気圧を制御できるようにした構造の気圧変動訓練装置が利用されている。
2室構造の気圧変動訓練装置では、それぞれの訓練室を独立に使用するようにして、異なる気圧変動パターンの2つの訓練を同時並行して行うことで、効率的に訓練を行うことができるが、それだけではない。2室を有効利用して訓練を行う方法として、例えば、複数の被訓練者が同時に第一の訓練室(主室あるいは副室)に入って訓練を行っている途中で、一部の被訓練者が体調を崩すと、その被訓練者が第二の訓練室(副室あるいは主室)に移動し、第二訓練室を大気圧に戻すことで、体調を崩した被訓練者だけを室外に脱出することができ、残りの被訓練者は訓練を続行することができる。
【0006】
また、航空機の乗務員や添乗員では、航空機の一部が破損して機内が急減圧する場合の訓練(急減圧飛行訓練)が必要になる。急減圧訓練を行うために真空ポンプで急減圧を作り出すとなると、大型の真空ポンプが必要になり、設備が大型化することになる。そこで、第一訓練室と第二訓練室とを、開閉弁付きの連通管で接続し、予め第二訓練室を小型の真空ポンプで時間をかけて真空引きして真空タンクとして利用することで、開閉弁を開くことにより、第一室を急減圧するようにすれば、小型ポンプでも急減圧飛行訓練が可能となる。
【0007】
このように、2室構造の気圧変動訓練装置では、単に2室それぞれに被訓練者が入室して訓練を行う以外に、1室に被訓練者が入室し残り1室を待避用に用いたり、残り1室を真空タンクとして用いたりして利用している。
【特許文献1】特開平H08−112373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
低圧訓練装置や高圧訓練装置のような気圧変動訓練装置では、訓練室は気密構造であることから、操作を誤れば内部の被訓練者は危険になる。そのため、監視員が外部から目視で訓練室内部の被訓練者の様子を監視することができる監視窓が設けられている。
そして、訓練室の気圧等を調整する操作部は監視窓の近傍に設けてあり、必ず監視員が監視窓から内部状況を目視で監視しながら、操作部から原則として手動操作で気圧制御を行うことにより、訓練室内の気圧を変動させたり、気圧を維持したりしている。
【0009】
2室構造の気圧変動訓練装置では、各訓練室(主室、副室)に監視窓が形成してあり、それぞれの訓練室についての気圧等の操作は、各訓練室の監視窓近傍に設けた操作部に監視員を配置して目視で監視しながら手動制御で訓練を行っていた。
そして、低圧環境下での滞在訓練のみ、訓練開始から終了まで長時間を要するため、全工程を自動で行う全自動で行うこととしていた。この場合も、全自動工程中に、何らかの理由で一時的に手動制御を行うと、それ以後は手動制御で訓練を行っている。
【0010】
このように、気圧変動訓練装置は、監視員による手動操作を原則としているので、監視員の負担が大きかった。また、手動操作を行うために、訓練内容にかかわらず2室それぞれの操作部に監視員が必要であった。
また、全自動で行う訓練についても、一旦手動操作が行われると、その後は最後まで手動操作で制御しなければならなかった。
【0011】
そこで、本発明は、訓練の内容に応じて、安全性を損なうことなく、より簡便な操作によって訓練を行うことができる気圧変動訓練装置を提供することを目的とする。
また、本発明は様々な形態での訓練を行うことができる汎用性の高い2室構造の気圧変動装置に適した操作を行うことができる気圧変動訓練装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するためになされた本発明の気圧変動訓練装置は、扉付きの隔壁で仕切られる主室および副室と、主室内および副室内を各々外部から目視で監視するための主室監視窓および副室監視窓と、主室内および副室内を各々独立に給排気する主室給排気手段および副室給排気手段と、主室監視窓近傍に設置され主室給排気手段により主室内を手動制御または自動制御で気圧調整する操作を行うとともに、主室内の気圧調整を行うときに同時に副室給排気手段により副室内を遠隔自動制御で気圧調整する操作を行う主室側操作部と、副室監視窓近傍に設置され副室給排気手段により副室内を手動制御または自動制御で気圧調整する操作とともに、副室内の気圧調整を行うときに同時に主室給排気手段により主室内を遠隔自動制御で気圧調整する操作を行う副室側操作部と、主室側操作部または副室側操作部による操作に基づいて発生する操作信号に基づいて主室給排気手段および副室給排気手段の制御を行う制御部とを備えるようにしている。
【0013】
ここで、主室と副室とは、同じ容積であっても、いずれか一方が他方より大きくてもよい。主室給排気手段と副室給排気手段は、排気用に真空ポンプ、給気用に給気用ポンプを用いることができるが、その際に真空ポンプや給気用ポンプを共用し、これらポンプから各室までを開閉弁を介在した配管で接続してもよい。なお、給気については訓練室の気圧が大気圧以上に加圧する必要がない場合は、給気用ポンプを取り付けなくてもよい。
また、手動制御とは、気圧調整のすべてを手動で行う操作をいい、自動制御とは、操作部近傍の監視窓から目視確認できる側の訓練室内を、その訓練室側の操作部により、内部を監視しながら少なくとも一部の操作を自動で行う操作をいう。遠隔自動制御とは、操作部近傍の監視窓から目視確認できない反対側の訓練室内を、その操作部により、少なくとも一部の操作を自動で行う操作をいう。
【0014】
この発明によれば、主室および副室は、それぞれ主室監視窓、副室監視窓の近傍に主室操作部、副室操作部が設置される。
主室操作部では主室監視窓から主室内を監視しながら、手動制御又は自動制御による気圧調整の操作を行う。さらに、主室操作部で主室を手動制御又は自動制御している場合は、副室について自動制御による気圧調整の操作を行う。すなわち、急減圧訓練のため副室を真空タンク代わりに使用する場合等のように、副室内に被訓練者が入室しておらず、副室内を監視する必要が無い場合(被訓練者が副室に入室していないことから手動制御による細かい気圧制御は必要ない)に限って、遠隔自動操作(副室について主室操作部からの自動操作)を行うことができるようにする。
同様に、副室操作部では、副室監視窓から副室内を監視しながら、手動制御又は自動制御による気圧調整の操作を行う。さらに、副室操作部で副室を手動制御又は自動制御している場合、主室について自動制御による気圧調整の操作を行う。すなわち、主室内に被訓練者が入室しておらず、主室内を監視する必要が無い場合(被訓練者が主質に入室していないことから手動制御による細かい気圧制御は必要ない)に限って、遠隔自動操作(主室について副室操作部からの遠隔自動操作)を行うことができるようにする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、訓練の内容に応じて、安全性を損なうことなく、自動制御を組み込んだ訓練を行うことができ、監視員の負担を大幅に軽減することができる。
また、本発明によれば、様々な形態での訓練を行うことができる汎用性の高い2室構造の気圧変動訓練装置とすることができる。さらに、訓練内容に応じて一部に自動制御を混在した操作や、安全上問題ない場合は他室側の操作部からの遠隔自動操作を行うことができるので、使いやすい気圧変動訓練装置とすることができる。
【0016】
(その他の課題を解決するための手段および効果)
上記発明において、実質的に目標気圧となる値および実質的に気圧変化率となる値を制御パラメータとして設定する制御パラメータ入力部を備え、自動制御および遠隔自動制御を行うときに入力された制御パラメータに基づいて現在の気圧から目標気圧までの気圧変動の自動制御が行われるようにしてもよい。
ここで、実質的に目標気圧になる値、実質的に気圧変化率となる値とは、目標気圧や気圧変化率そのものだけではなく、これらに換算できるパラメータを含むことを意味する。例えば、航空機の訓練であれば、目標気圧や気圧変化率に換算することができる目標高度や高度変化率をパラメータとすることができ、ダイバー訓練であれば、潜水深度や潜水深度変化率をパラメータとすることができる。
【0017】
この発明によれば、ある時点の気圧から次の目標気圧までの気圧変動ごとに自動制御を行うことができるので、自動制御の汎用性を高めることができ、監視員(操作者)の操作負担を軽減することができる。特に、これまでの全自動制御では、途中で一時的に手動制御を行うと、それ以降は、残りの工程すべてを手動制御で行わなければならなかったが、本発明によれば、手動制御後であっても気圧変動工程ごとの自動にすることができるので、監視員(操作者)の操作負担を軽減することができる。
【0018】
また、上記発明において、少なくとも主室側操作部と副室側操作部のいずれかに急減圧操作スイッチを取り付けるとともに、主室と副室とを接続する連通路と、連通路を開閉する連通路開閉弁と、主室と副室とが異なる気圧に調整された状態で急減圧操作スイッチを作動したときに連通路開閉弁を開いていずれか一方の室内を急減圧させる急減圧制御部とを備えるようにしてもよい。
この発明によれば、主室と副室とが異なる気圧に調整された状態のときに急減圧スイッチを作動させることにより、直前の気圧が低い側の訓練室(真空タンクとして用いる側の訓練室)に向けて、直前の気圧が高い側の訓練室(被訓練者が入室している側の訓練室)から一気に空気を移動させることができる。この結果、大型の真空ポンプを用いて排気することなく、急減圧を実現することができる。
【0019】
また、上記発明において、制御部は、自動制御中または遠隔自動制御中に手動制御の操作信号の入力がなされたときに手動制御の操作信号を優先するようにしてもよい。
この発明によれば、制御部は、自動制御中または遠隔自動制御中に手動制御の操作信号の入力がなされたときに手動制御の操作信号を優先して制御することができ、自動制御中であっても手動の操作を行えば、直ちに手動制御に切り換わることができ、迅速な操作を行うことができる。
【0020】
また、上記発明において、制御部は、主室側操作部または副室側操作部からの操作信号の入力があるときに手動制御、自動制御、遠隔自動制御のうちいずれの操作信号であるかを判定する制御モード判定部と、制御モード判定部により判定された制御モードによる操作が現時点で許容できる場合にその操作信号の処理を実行する許容処理実行部とを備えるようにしてもよい。
具体的には、例えば、主室操作部で主室を手動制御又は自動制御していることを条件にして、副室について遠隔自動制御による気圧調整の操作を行うことができるようにする。副室操作部で副室を手動制御又は自動制御していることを条件にして、主室について遠隔自動制御による気圧調整の操作を行うことができるようにする。
これにより、主室、副室を同時に2箇所の操作部から遠隔制御することはできないので、より操作の安全性を高めることができる。
また、何かの操作を行ったり、制御モードの切換を行ったりするときに、安全上問題があるときにはその制御モードによる処理は許容されないので、操作性とともに安全性についても優れた処理にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態である低圧訓練装置(気圧変動訓練装置)の全体構成を示すブロック図、図2はその主室および副室の外観図、図3はその給排気機構の配管系統図、図4は主室側操作部の操作パネル平面図、図5は副室側操作部の操作パネル平面図である。ここでは、航空機の乗務員や添乗員を訓練するための低圧訓練装置を例に説明を行う。
この低圧訓練装置10は、主室11、副室12、連通機構13、給排気機構14、主室側操作部15、副室側操作部16、制御部17により構成される。
【0023】
主室11と副室12とは耐圧性を有する気密構造物であり、主室11には扉21と主室監視窓22が形成してあり、副室12には扉23と副室監視窓24が形成してある。二室間の仕切り壁25には訓練者が室間を移動するための室間扉26が設けられている。
連通機構13は、主室11と副室12の屋根上に設けてあり、口径の大きな配管(例えば内径100mm)からなる連通路27と開閉弁28とにより構成してある。この開閉弁28を開くことにより、二室間が連通して短時間のうちに同圧になるようにしてある。
【0024】
給排気機構14は、排気系配管ラインと給気系配管ラインとから構成される。このうち排気系配管ラインは、真空ポンプ31(バックアップ用に複数備えてもよい)、主室11側を手動操作で排気するときに排気速度を調整する主室手動排気弁32、主室11側を自動操作で排気するときに排気速度を調整する主室自動排気弁33、副室12側を手動操作で排気するときに排気速度を調整する副室手動排気弁34、副室12側を自動操作で排気するときに排気速度を調整する副室自動排気弁35が配管で接続され、2室それぞれを手動操作または自動操作により、独立して真空排気することができるようにしてある。
【0025】
同様に、給気系配管ラインは、主室11側を手動操作で給気するときに給気速度を調整する主室手動給気弁36、主室11側を自動操作で排気するときに給気速度を調整する主室自動給気弁37、副室12側を手動操作で排気するときに排気速度を調整する副室手動給気弁38、副室12側を自動で排気するときに排気速度を調整する副室自動給気弁39が配管で接続され、2室それぞれを手動操作または自動操作により、独立して大気圧まで給気することができるようにしてある。
【0026】
主室操作部15は、主室監視窓23の外側近傍に設置され、主室側操作パネル41と主室側監視卓42とから構成される。主室側操作パネル41は、図4に示すように、主室11に関する操作(手動制御操作、自動制御操作)を行う主室操作領域43、副室12に関する操作(遠隔自動制御操作)を行う副室操作領域44、主室手動給気弁36の開度を手動で調整する給気操作ツマミ45、主室手動排気弁32の開度を手動で調整する排気操作ツマミ46、真空ポンプ31を起動停止する真空ポンプスイッチ47、室間扉26の開閉操作を行う室間扉スイッチ48、開閉弁28を開いて急減圧訓練を行う急減圧スイッチ49、主室の気圧を高度で表示する主室高度表示部50、副室の気圧を高度で表示する副室高度表示部51が設けられている。
【0027】
主室操作部15の主室操作領域43には、手動制御を行うときの手動ボタン52、自動制御を行うときの自動ボタン53、自動制御を開始するためのスタートボタン54、気圧を一定に維持するためのホールドボタン55(これらはONになると点灯し、OFFになると消灯する押しボタン式ランプスイッチにしてある)、自動制御の際の目標気圧を定める目標高度設定部56、気圧変化率を定めるレート設定部57(これらは数値入力ができるようにしてある)が設けられている。
主室操作部15の副室操作領域44には、同様に、遠隔自動制御操作を行うための遠隔ボタン58、遠隔自動制御を開始するためのスタートボタン59、ホールドボタン60、目標高度設定部61、レート設定部62が設けられている。
【0028】
副室操作部16は、副室監視窓24の外側近傍に設置され、副室側操作パネル71と主室側監視卓72とから構成される。副室側操作パネル71は、図5に示すように、副室12に関する操作(手動制御操作、自動制御操作)を行う副室操作領域73、主室11に関する操作(遠隔自動制御操作)を行う主室操作領域74、副室手動給気弁38の開度を手動で調整する給気操作ツマミ75、副室手動排気弁34の開度を手動で調整する排気操作ツマミ76、真空ポンプ31を起動停止する真空ポンプスイッチ77、室間扉26の開閉操作を行う室間扉スイッチ78、副室12の気圧を高度で表示する副室高度表示部80、主室11の気圧を高度で表示する主室高度表示部81が設けられている。なお、急減圧訓練は、本実施形態では主室11側に被訓練者が入室しているときしか行わないようにしているので、副室操作部16には急減圧ボタンを設けていない。
【0029】
副室操作部16の副室操作領域73には、手動ボタン82、自動ボタン83、スタートボタン84、ホールドボタン85(これらはONになると点灯し、OFFになると消灯する押しボタン式ランプスイッチにしてある)、目標高度設定部86、レート設定部87(これらは数値入力ができるようにしてある)が設けられている。
副室操作部16の主室操作領域74には、同様に、遠隔ボタン88、スタートボタン89、ホールドボタン90、目標高度設定部91、レート設定部92が設けられている。
【0030】
図6は、主室操作部15と副室操作部16とにより操作可能な、手動操作、自動操作、遠隔自動操作の組み合わせを説明する図である。
主室操作部15からは、主室11についての自動操作(A)と、主室11についての手動操作(E)と、自動操作(A)または手動操作(E)が行われている場合の副室12についての遠隔自動操作(B)を行うことができるようにしてある。
また、副室操作部16からは、副室12についての自動操作(C)と、副室12についての手動操作(G)と、自動操作(C)または手動操作(G)が行われている場合の主室11についての遠隔自動操作(D)を行うことができるようにしてある。
【0031】
制御部17は、CPU、ROM、RAM、入力装置(キーボード等)、出力装置(液晶パネル等)等のハードウェアと低圧訓練に必要なプログラムが含まれるソフトウェアとからなるコンピュータにより構成される。
制御部17は、低圧訓練装置10全体の制御を行うが、そのうち本発明に関係する制御を機能ごとのブロックに分けて説明すると、操作信号入力部1と、制御パラメータ入力部2と、制御モード判定部3と、許容処理実行部4と、急減圧制御部5とにより構成される。
【0032】
操作信号入力部1は、主室操作部15または副室操作部16により操作がなされ、操作信号が送られてきたときに、その信号を入力する処理を行う。入力処理は、随時行われるようにしてあり、自動制御中に排気操作ツマミ46(76)が操作されて手動操作信号が送られてきた場合のように、たとえ自動制御中であっても操作信号は入力される。
【0033】
制御パラメータ入力部2は、自動制御あるいは遠隔自動制御を実行する際に必要な制御パラメータの入力操作が行われたときに、パラメータを入力する処理を行う。本実施例では目標高度とレートとが制御パラメータとして入力される。
【0034】
制御モード判定部3は、主室操作部15または副室操作部16から操作信号が送られてきたときにその操作信号が手動操作信号であるか、自動操作信号であるか、遠隔自動操作信号であるかを判定する。判定は、手動ボタン52、82が押された状態での操作であるか、自動ボタン53、83が押された状態での操作であるか、遠隔ボタン58、88が押された状態での操作であるかを検出することにより判定される。また、手動の操作ツマミ45、46、75、76による操作がなされたときは、直ちに手動操作信号であると判定される。
【0035】
許容処理実行部4は、入力された操作信号(例えばモード変更操作やスタート操作、ホールド操作等の操作信号)が、予め定めてある判定条件に基づいて現時点で実行してもよいかを判定し、実行しても安全上問題ない操作信号である場合に、その操作信号による処理を実行し、安全上問題ある操作信号である場合は処理を実行しないように処理する。
【0036】
急減圧制御部5は、予め、副室12の気圧を、主室11の気圧より低圧にした状態で、主室側操作部15の急減圧操作ボタン49が押されたときに、主室11と副室12とを接続する連通路27の途中に設けられた連通路開閉弁28を開成し、主室11内の空気を副室12に急激に流出させて主室11の室内を急減圧させる制御を行う。
【0037】
次に、この低圧訓練装置を作動するときの代表的な操作とそのときの動作について説明する。なお、以下の説明では、制御部17、あるいは主室側監視卓42、あるいは副室側監視卓72に付設した図示しないモニタ画面に表示される圧力制御状況の画面表示を参照しつつ説明する。この圧力制御状況表示画面は、図4の主室側操作パネル41や図5の副室側操作パネル71にある操作ボタンや操作ツマミがほぼ同じレイアウトのまま、上下に並べて画面表示してあり、監視員が操作パネルとの対比から容易に制御状況を把握できるようにしてあり、制御モードの状態、弁の開閉状態、現在高度(現在気圧)を把握できるようにしてある(なお、圧力制御状況表示画面の一部には図4、図5に対応するものがないものも表示されているが、これらについては説明を省略する)。
【0038】
(電源投入時)
図示しない電源スイッチをONにすることにより、装置が起動する。このとき、制御モード(手動、自動、遠隔自動)は選択されていない。また、給気弁36〜39、排気弁32〜35はすべて閉じている。これは装置停止時には全ての弁を閉じた状態にしているためである。図7は電源投入直後の画面表示を示す図である。いずれの制御モードも選択されておらず、手動ボタン、自動ボタン、リモートボタン(遠隔自動ボタン)は消灯している。また、給気弁、排気弁は閉じている(画面の左右端に表示されている排気ツマミ、給気ツマミの隣に表示してある丸いランプが点灯している)。
【0039】
(真空ポンプON時)
図8は真空ポンプをONにしたときの画面表示である。主室側真空ポンプ操作ボタン47または副室側真空ポンプ操作ボタン77をONにすることにより、これらのポンプボタンが点灯する。同時に手動ボタン52、82がONになって点灯する。すなわち、手動制御が選択された状態になり、画面上で手動操作ボタンが点灯する。
このとき主室11側は、スタートボタン53、89が押されておらず、制御状態(自動制御状態あるいは遠隔自動制御状態)ではないため、他のモードへ移行することができる。図9は自動ボタン53(図4)を押して自動制御を選択したときの画面表示図、図10は遠隔ボタン88(図5)を押して遠隔自動制御(リモート)を選択したときの画面表示図である。
【0040】
(自動制御中あるいは遠隔自動制御中のモード変更)
図11は主室11を遠隔自動制御中に、図4のスタートボタン54を押して自動制御に移行したときの画面表示図であり、図12は主室11を自動制御中に図5のスタートボタン89を押して遠隔自動制御に移行したときの画面表示図である。このように、自動制御中、遠隔自動制御中における自動、リモート間の移行では、制御自体はそのままで制御モードを切り換えることができる。
図13は、自動制御中に手動ボタン52(図4)を押して手動制御に移行したときの画面表示図である。この場合はそれまでの制御を停止(スタートボタンは消灯)し、制御パラメータである目標高度やレートを消去してから、手動制御に移行する。
【0041】
(室間扉開にした1室状態での自動制御のモード変更)
室間扉ボタン48、78(図4、図5)をONにして扉を開くことにより、両室を連通し、実質的に1室状態にして自動制御を行っている場合に、主室側操作部15からの自動制御を、副室側操作部16からの自動制御に移行する場合は、それまでの制御を停止してからでなければ移行できない。図14は1室状態で主室側操作部15からの自動制御をしているときの画面表示図である。この状態から制御を停止して(スタートボタン消灯)、制御パラメータである目標高度やレートを消去し、図15に示すように副室側操作部16による自動制御に移行する。
【0042】
(真空ポンプOFF時)
手動制御、自動制御、遠隔自動制御のいずれのモードであっても、これまでの制御を停止してモード未選択状態にし、全給気弁、全排気弁を閉じた状態にしてからでなければ真空ポンプをOFFにできない。図16は真空ポンプをOFFにするときの画面表示図である。モードが未選択状態となり、給排気弁は閉じ、真空ポンプが停止(消灯)している。
【0043】
(自動制御中または遠隔自動制御中の排気弁等の手動操作)
自動制御または遠隔自動制御中に手動給気ツマミ45、75、手動排気ツマミ46、76の手動操作を行うことにより、自動給気弁37、39、自動排気弁33、35を閉じ、手動給気弁36、38、手動排気弁32、34が開成される。図17は主室操作部15による自動制御中(図14参照)に、手動排気ツマミ46を操作したときの画面表示図である。主室11側の手動排気弁32(図3)が開いて、排気弁が閉止状態であることを示していたランプ(排気操作ツマミの横の丸いランプ)が消え、主室側操作部15による手動制御に移行する。
【0044】
(自動制御選択時(制御中)または遠隔自動制御選択時(制御中)の設定パラメータの入力)
自動制御選択時、自動制御中、遠隔自動制御時、遠隔自動制御中は、目標高度やレート等の設定パラメータを入力することができる。図18は主室側操作部15による自動制御選択時に目標高度およびレートを入力したときの画面表示図である。
【0045】
(自動制御選択時または遠隔自動制御選択時のスタート)
自動制御または遠隔自動制御を選択し、設定パラメータを入力することにより、制御を開始するスタートボタンを作動することができる。図19は主室側操作部15で自動制御を選択し、目標高度およびレートの入力を終えた後にスタートしたときの画面表示図である。以後、現在高度(現在気圧)から目標高度(目標気圧)までの自動制御が実行される。
【0046】
(自動制御中または遠隔自動制御中の表示およびホールド)
自動制御中または遠隔自動制御中は、主室側操作部15と副室側操作部16との双方で制御中であることを示すスタートボタンが点灯し、設定中の目標高度やレートが表示される。
自動制御により目標高度に到達するとスタートボタンが消灯し、ホールドボタンが点灯する。また、目標高度に達する前にホールドボタン55を押すと、その場合もホールドボタンが点灯する。その後再びホールドボタン55を押してホールド状態を解除すると、再び自動制御に切り換わる。図20は主室側操作部15で主室11を自動制御中に、ホールドボタン55を押したときの画面表示図である。
【0047】
(2室同圧状態で室間扉の開動作)
図21は主室11および副室12をそれぞれ自動制御(もしくは遠隔自動制御)により同圧状態にホールドしているときの表示画面図である。同圧状態になると室間扉26を開いて1室状態に移行することができる。同圧状態で主室側操作部15の室間扉ボタン48を押して室間扉26を開くと、図22の画面表示図に示すように主室11側の自動制御を継続し、副室12側の表示は消灯する。
【0048】
(2室異圧状態で急減圧動作)
図23は主室11および副室12をそれぞれ自動制御により異圧状態にしてホールドしたときの画面表示図である。異なる気圧でホールド状態になると(ただし主室より副室が低圧)連通路開閉弁28を開いて急減圧動作を起こし1室状態に移行することができる。図23の状態から急減圧ボタン49を押すことにより、図24に示すよう自動制御によるホールド状態は解除され、手動制御に移行する。
【0049】
(1室状態から2室状態への移行)
室間扉26を開き、あるいは急減圧動作により、実質的に1室状態にした後、再び2室状態へ移行する場合は、ホールド状態である場合のみ自動制御、遠隔自動制御を継続し、手動制御の場合は、手動制御を継続する。図25は急減圧動作後に元の状態に復帰したときの画面表示図である。急減圧動作は終了し、手動制御を継続している。
【0050】
このように、安全上問題がない場合は、手動操作、自動操作、遠隔自動操作を切り換えることができるようにしてあるので、監視員の操作の負担を軽減するができ、また、汎用性の高い訓練を行うことができるようにしてある
上記実施形態は、低圧訓練装置であるが、高圧訓練装置の場合でも同様である。ただし、この場合は真空ポンプに代えて、加圧ポンプを用いることになる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、気圧変動訓練装置に利用することができ、例えば、航空機の乗務員や添乗員の低圧訓練、ダイバーの高圧訓練に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態である低圧訓練装置(気圧変動訓練装置)の構成を示すブロック図。
【図2】図1の低圧訓練装置の外観図。
【図3】図1の低圧訓練装置の給排気系配管系統図。
【図4】図1の主室操作部の操作パネルを示す平面図。
【図5】図1の副室操作部の操作パネルを示す平面図。
【図6】図1の低圧訓練装置の手動、自動、遠隔自動操作の関係を説明する図。
【図7】モニタ画面に表示される圧力制御状況の画面表示図(電源投入時)。
【図8】モニタ画面に表示される圧力制御状況の画面表示図(真空ポンプON時)。
【図9】モニタ画面に表示される圧力制御状況の画面表示図(自動制御選択)。
【図10】モニタ画面に表示される圧力制御状況の画面表示図(遠隔自動制御選択)。
【図11】モニタ画面に表示される圧力制御状況の画面表示図(自動制御中)。
【図12】モニタ画面に表示される圧力制御状況の画面表示図(遠隔自動制御中)。
【図13】モニタ画面に表示される圧力制御状況の画面表示図(手動制御中)。
【図14】モニタ画面に表示される圧力制御状況の画面表示図(1室状態自動制御中)。
【図15】モニタ画面に表示される圧力制御状況の画面表示図(1室状態操作部切換)。
【図16】モニタ画面に表示される圧力制御状況の画面表示図(真空ポンプOFF)。
【図17】モニタ画面に表示される圧力制御状況の画面表示図(自動制御中手動操作)。
【図18】モニタ画面に表示される圧力制御状況の画面表示図(自動制御時にパラメータ入力操作)。
【図19】モニタ画面に表示される圧力制御状況の画面表示図(パラメータ入力後の自動制御スタート)。
【図20】モニタ画面に表示される圧力制御状況の画面表示図(自動制御中にホールド)。
【図21】モニタ画面に表示される圧力制御状況の画面表示図(同圧状態でホールド)。
【図22】モニタ画面に表示される圧力制御状況の画面表示図(室間扉開いて1室状態に移行)。
【図23】モニタ画面に表示される圧力制御状況の画面表示図(異圧状態でホールド)。
【図24】モニタ画面に表示される圧力制御状況の画面表示図(急減圧後に手動に移行)。
【図25】モニタ画面に表示される圧力制御状況の画面表示図(1室状態から2室状態に手動に移行)。
【符号の説明】
【0053】
1:操作信号入力部
2:制御パラメータ入力部
3:制御モード判定部
4:許容処理実行部
5:急減圧制御部
10:低圧訓練装置(気圧変動訓練装置)
11:主室
12:副室
14:給排気機構(主室給排気手段、副室給排気手段)
15:主室操作部
16:副室操作部
17:制御部
22:主室監視窓
24:副室監視窓
26:室間扉
27:連通路
28:開閉弁
31:真空ポンプ
41:主室操作パネル
45、75:給気操作ツマミ
46、76:排気操作ツマミ
49:急減圧スイッチ
52、82:手動ボタン
53、83:自動ボタン
54、59、84、89:スタートボタン
55、60、85、90:ホールドボタン
56、61、86、91:目標高度設定部
57、62、87、92:レート設定部
58、88:遠隔ボタン
71:副室操作パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉付きの隔壁で仕切られる主室および副室と、
主室内および副室内を各々外部から目視で監視するための主室監視窓および副室監視窓と、
主室内および副室内を各々独立に給排気する主室給排気手段および副室給排気手段と、
主室監視窓近傍に設置され主室給排気手段により主室内を手動制御または自動制御で気圧調整する操作を行うとともに、主室内の気圧調整を行うときに同時に副室給排気手段により副室内を遠隔自動制御で気圧調整する操作を行う主室側操作部と、
副室監視窓近傍に設置され副室給排気手段により副室内を手動制御または自動制御で気圧調整する操作とともに、副室内の気圧調整を行うときに同時に主室給排気手段により主室内を遠隔自動制御で気圧調整する操作を行う副室側操作部と、
主室側操作部または副室側操作部による操作に基づいて発生する操作信号に基づいて主室給排気手段および副室給排気手段の制御を行う制御部とを備えたことを特徴とする気圧変動訓練装置。
【請求項2】
実質的に目標気圧となる値および実質的に気圧変化率となる値を制御パラメータとして設定する制御パラメータ入力部を備え、自動制御および遠隔自動制御を行うときに入力された制御パラメータに基づいて現在の気圧から目標気圧までの気圧変動の自動制御が行われることを特徴とする請求項1に記載の気圧変動訓練装置。
【請求項3】
少なくとも主室側操作部と副室側操作部のいずれかに急減圧操作スイッチを取り付けるとともに、主室と副室とを接続する連通路と、連通路を開閉する連通路開閉弁と、主室と副室とが異なる気圧に調整された状態で急減圧操作スイッチを作動したときに連通路開閉弁を開いていずれか一方の室内を急減圧させる急減圧制御部とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の気圧変動訓練装置。
【請求項4】
制御部は、自動制御中または遠隔自動制御中に手動制御の操作信号の入力がなされたときに手動制御の操作信号を優先することを特徴とする請求項1に記載の気圧変動訓練装置。
【請求項5】
制御部は、主室側操作部または副室側操作部からの操作信号の入力があるときに手動制御、自動制御、遠隔自動制御のうちいずれの操作信号であるかを判定する制御モード判定部と、制御モード判定部により判定された制御モードによる操作が現時点で許容できる場合にその操作信号の処理を実行する許容処理実行部とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の気圧変動訓練装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2007−453(P2007−453A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−185519(P2005−185519)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)