説明

気密端子

【課題】配線ピンが抜脱された後においても気密性を維持することのできる気密端子を提供すること。
【解決手段】気密端子23は、貫通孔25を有する保持体24と、貫通孔25に挿通された配線ピン22と、貫通孔25内に充填された封止材27とを備えてなる。そして、保持体24の一端には、付勢されつつ配線ピン22に掛止されるとともに該配線ピン22の抜脱により移動して貫通孔25を閉塞する閉塞体33を備えたシャッタ機構30が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線の一部を構成する配線ピンの周囲に封止材を充填してなる気密端子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、高圧ガスタンクに取着される弁装置は、ガスタンクの内外を連通するガス流路と、そのガス流路を介した高圧ガスの流通を制御可能な弁機構とを備えている。例えば、特許文献1に記載の弁装置には、そのガス供給の制御に用いる弁機構として電磁弁が設けられている。そして、この弁装置では、そのガスタンクの内部を経由することなく、弁装置の筐体を介して電磁弁の電力供給配線をガスタンクの外部に引き出すことにより、その高い気密性が確保されている。
【0003】
しかしながら、例えば、燃料電池車用の水素ガスタンク等には、タンク内に温度センサが設けられたものがあり、このような用途に用いられる弁装置については、その配線をタンク外に導出するために、ガスタンクの内外を連通する配線通路を形成せざるを得ないのが実情である。そして、従来、こうした配線通路のシーリングには、配線の一部を構成する配線ピンの周囲に封止材を充填してなる気密端子(ハーメチックコネクタ)が用いられている。
【0004】
例えば、図15に示す気密端子91は、配線通路93内に配置された保持体94と、その貫通孔92に挿通された配線ピン95と、保持体94の外周と配線通路93の内周とを気密に封止するシール部材(Oリング)96とを備えている。そして、この気密端子91は、その貫通孔92内に充填された封止材97によって、同貫通孔92の内周と配線ピン95との間を気密に封止する構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−240148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような気密端子の封止材には、通常、セラミックやガラス等といった、硬質素材が用いられる。このため、外部側から配線が過大な力で引っ張られた場合には、その引張力により気密端子の封止材が充填された部分から配線ピンが抜け出てしまう可能性がある。そして、この配線ピンの抜脱により気密性が低下するおそれがある。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、配線ピンが抜脱された後においても気密性を維持することのできる気密端子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、貫通孔を有する保持体と、前記貫通孔に挿通された配線ピンと、前記貫通孔内に充填され、前記保持体及び前記配線ピンを封止する封止材と、付勢されつつ前記配線ピンに掛止され、該配線ピンの抜脱により移動して前記貫通孔を閉塞する閉塞体と、を備えた気密端子であること、を要旨とする。
【0009】
即ち、上記のように、付勢状態で閉塞体を配線ピンに掛止し、当該配線ピンを規制体とすることで、閉塞体は、同配線ピンの抜脱後、速やかに貫通孔を閉塞する位置へと移動する。従って、上記構成によれば、簡素な構成にて、効果的に、その気密性を維持することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記配線ピンが挿通される挿通孔を有して前記貫通孔を覆う蓋体を備え、前記閉塞体は、前記配線ピンの抜脱により前記蓋体に摺接しつつ前記挿通孔を閉塞する位置に移動して前記貫通孔を閉塞すること、を要旨とする。
【0011】
即ち、上記のように、蓋体により予め貫通孔を覆い、配線ピンの抜脱後に閉塞が必要な部分を挿通孔に限定することで、その閉塞体の移動量を低減することができる。そして、これにより、閉塞体の小型化を図ることができる。また、蓋体に閉塞体を摺接させることで、安定的に閉塞体を付勢することができる。そして、これにより、より確実に挿通孔を閉塞することができるとともに、併せて、その高い気密性を確保することができる。従って、上記構成によれば、小型化を図りつつ、より確実且つ効果的に、その気密性を維持することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記蓋体には、複数の前記挿通孔が形成され、各挿通孔には配線ピンが挿通されるとともに、各挿通孔を独立に閉塞可能な複数の前記閉塞体を備えること、を要旨とする。
【0013】
即ち、複数の配線ピンを有する気密端子の場合、全ての配線ピンが同時に抜脱されるとは限らない。この点、上記構成によれば、配線ピンの抜脱後、その対応する挿通孔を、それぞれ、速やかに閉塞することができる。従って、上記構成によれば、より確実且つ効果的に、その気密性を維持することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、配線ピンが抜脱された後においても気密性を維持することが可能な気密端子を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明が適用される弁装置の側面図。
【図2】図1の弁装置の概略構成図。
【図3】第1の実施形態における図1のA−A断面図。
【図4】第1の実施形態におけるシャッタ機構の断面図(図3のB−B断面)。
【図5】第1の実施形態におけるシャッタ機構の平面図。
【図6】第1の実施形態におけるシャッタ機構の概略構成図。
【図7】第1の実施形態におけるシャッタ機構の作用説明図。
【図8】第1の実施形態におけるシャッタ機構の作用説明図。
【図9】第2の実施形態におけるシャッタ機構の断面図(図1のA−A断面)。
【図10】第2の実施形態におけるシャッタ機構の平面図。
【図11】第2の実施形態におけるシャッタ機構の作用説明図。
【図12】別例のシャッタ機構の平面図。
【図13】別例のシャッタ機構の断面図(図1のA−A断面)。
【図14】別例のシャッタ機構の作用説明図。
【図15】従来の気密端子(ハーメチックコネクタ)の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1の実施形態]
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態の弁装置1は、略偏平箱型に形成されたタンク外配置部2と、同タンク外配置部2の底面2aに対して略直交する方向(同図中、下側)に延設された略円柱状のタンク内配置部3とを備えている。そして、弁装置1は、高圧水素ガスが貯留されたガスタンク4の取着口5内に、そのタンク内配置部3を挿入する態様で、同ガスタンク4に取着されている。
【0017】
図2に示すように、弁装置1は、ガスタンク4の内外を連通するガス流路6を備えている。そして、そのガス流路6の途中には、当該ガス流路6を介した高圧水素ガスの流通を制御可能な複数の弁機構が設けられている。
【0018】
詳述すると、タンク外配置部2の内部には、高圧水素ガスの充填口7に連通する充填路8と、高圧水素ガスの送出口9に連通する送出路10とが形成されている。一方、タンク内配置部3の内部には、その軸線に沿うように同タンク内配置部3を貫通してガスタンク4内に開口する接続路11が形成されている。そして、本実施形態の弁装置1では、これらの充填路8、送出路10及び接続路11が接続されることにより、そのガス流路6が形成されている。
【0019】
また、本実施形態の弁装置1では、充填路8の途中には、ガスタンク4内に充填された高圧水素ガスの逆流を防止する逆止弁12が設けられている。そして、送出路10の途中には、送出口9からの高圧水素ガスの供給を制御するための電磁弁13が設けられている。
【0020】
ここで、本実施形態では、ガスタンク4の内部には、同ガスタンク4内に貯留された高圧水素ガスの温度を測定するため温度センサ15が設けられている。そして、本実施形態の弁装置1には、この温度センサ15の配線16をガスタンク4の内部から同ガスタンク4の外部に導出するための配線通路20が設けられている。
【0021】
詳述すると、図1及び図3に示すように、配線通路20は、ガス流路6を構成する上記接続路11と同様に、タンク内配置部3をその軸線に沿うように貫通して同ガスタンク4内に開口するように形成されている。そして、配線通路20のタンク内開口部21には、配線16の一部を構成する配線ピン22を有して配線通路20を気密に封止する気密端子(ハーメチックコネクタ)23が設けられている。
【0022】
図3に示すように、本実施形態では、上記タンク内開口部21は、配線通路20の他の部分よりも大径に形成されている。また、気密端子23は、このタンク内開口部21と略同径に形成された略円筒状の保持体24を備えている。そして、上記配線ピン22は、保持体24に形成された貫通孔25内に挿通されている。
【0023】
また、保持体24の外周には、シール部材としてのOリング26が嵌合されている。そして、上記保持体24内に形成された貫通孔25内には、その貫通孔25の内周と配線ピン22の周囲との間を気密に封止する封止材27が充填されている。
【0024】
更に、配線ピン22の両端には、それぞれ、配線16が接続される。そして、本実施形態の気密端子23は、その保持体24が上記タンク内開口部21に挿入されることにより、配線通路20を気密に封止することが可能となっている。
【0025】
本実施形態の弁装置1は、上記構成により、ガスタンク4内の高圧水素ガスを漏出させることなく、温度センサ15の配線16を同ガスタンク4の外部に引き出すことが可能となっている。尚、図2に示すように、本実施形態では、電磁弁13の電力供給線28もまた、この配線通路20を介してタンク外配置部2の外部に引き出される。そして、これらの配線16及び電力供給線28は、タンク外配置部2の上面2bから突出する接続コネクタ29(図1参照)に接続されるようになっている。
【0026】
(気密端子のシャッタ機構)
次に、本実施形態の気密端子に設けられたシャッタ機構について説明する。
上述のように、配線ピン22の周囲に封止材27を充填してなる気密端子23の構成では、配線16に過大な引張力が作用した場合、その保持体24内から配線ピン22が抜け出てしまう可能性がある。
【0027】
この点を踏まえ、本実施形態の気密端子23には、その保持体24の一端に、貫通孔25を閉塞可能なシャッタ機構30が設けられている。そして、本実施形態の気密端子23は、このシャッタ機構30により、その配線ピン22が抜脱された後の気密性を維持する構成となっている。
【0028】
詳述すると、図4及び図5に示すように、本実施形態のシャッタ機構30は、配線ピン22が挿通される挿通孔31を有して貫通孔25を覆う蓋体32と、コイルバネ41に付勢され配線ピン22の抜脱により移動して貫通孔25を閉塞する閉塞体33と、閉塞体33を保持する保持板38とを備えている。
【0029】
本実施形態の蓋体32は、保持体24と略同径の円板状に形成されている。そして、蓋体32は、タンク内部側の端部(図4中、下側の端部)24aに固定され、保持体24とともに配線通路20のタンク内開口部21に挿入される。
【0030】
また、本実施形態の気密端子23は、2本の配線ピン22a,22bを備えており、蓋体32には、これら各配線ピン22a,22bに対応する二つの挿通孔31a,31bが形成されている。そして、本実施形態のシャッタ機構30は、これらの各挿通孔31a,31bに対応して、当該各挿通孔31a,31bを、それぞれ独立に閉塞することが可能な二つの閉塞体33a,33bを備えている。
【0031】
さらに詳述すると、図4〜図6に示すように、本実施形態では、上記各挿通孔31a,31bは、蓋体32のタンク内部側平面34に設けられた凹部35内に形成されている。具体的には、本実施形態の凹部35は、タンク内部側平面34に略平行する矩形状の底面36を有している。そして、各挿通孔31a,31bは、この底面36の短辺36a,36bに略平行するように、並んで形成されている。
【0032】
一方、各閉塞体33a,33bは、矩形状の閉塞面37を有して平板状に形成されている。そして、各閉塞体33a,33bは、それぞれ、その閉塞面37が底面36に摺接する状態で、それぞれが上記各挿通孔31a,31bに対応するように凹部35内に併置されている。
【0033】
具体的には、図4及び図5に示すように、本実施形態では、凹部35の開口部35aには、保持板38が固定されており、上記各閉塞体33a,33bは、この保持板38と凹部35の底面36との間に挟持されることにより、その閉塞面37が底面36に摺接する状態が保持されている。また、図5及び図6に示すように、本実施形態の凹部35は、底面36の長辺36c,36dに対応する位置において、その長手方向に延設された一対のガイド面39a,39bを備えている。そして、上記各閉塞体33a,33bは、これらのガイド面39a,39bに案内されることにより、互いに摺接しつつ、それぞれ独立に凹部35内を移動することが可能となっている。
【0034】
また、図4〜図6に示すように、本実施形態の凹部35は、その底面36の短辺36bに対応する位置に立設された付勢面40を備えている。そして、この付勢面40と各閉塞体33a,33bとの間には、付勢手段としてのコイルバネ41が、それぞれ、圧縮された状態で介在されている。
【0035】
更に、各閉塞体33a,33bには、当該各閉塞体33a,33bを厚み方向に貫通する円孔43が形成されている。尚、図4及び図5に示すように、上記保持板38には、これら各円孔43に対応する位置に矩形状の角孔44が形成されている。そして、上記各挿通孔31a,31bに挿通された各配線ピン22a,22bは、これらの円孔43を介して、ガスタンク4の内部側(図4中、下側)に導出されるようになっている。
【0036】
即ち、本実施形態のシャッタ機構30において、各閉塞体33a,33bは、その対応するコイルバネ41に付勢されつつ、上記円孔43に挿通された各配線ピン22a,22bに掛止されている。
【0037】
つまり、各閉塞体33a,33bは、各配線ピン22a,22bによって、当該各配線ピン22a,22bに交差する方向の移動が規制されている。しかし、上記のように配線ピン22a,22bが保持体24の貫通孔25から抜脱されることで、その規制は解除される。そして、コイルバネ41に付勢された閉塞体33a,33bは、速やかに、その対応する挿通孔31a,31bを閉塞する位置へと移動する。
【0038】
例えば、図7及び図8に示すように、配線ピン22aが抜脱された場合、当該配線ピン22aによる規制が解除された閉塞体33aは、コイルバネ41の弾性力により、底面36の長手方向、上記付勢面40とは反対側(図8参照、左側)に移動する。そして、その移動により円孔43と挿通孔31aとが非連通となることによって、閉塞体33aは、その挿通孔31aを閉塞する。
【0039】
本実施形態のシャッタ機構30は、配線ピン22a,22bの抜脱後、このようにして各閉塞体33a,33bが独立して動作することにより、速やかに貫通孔25を閉塞する。そして、本実施形態の気密端子23は、これにより、その配線ピン22a,22bが抜脱された後の気密性を維持することが可能となっている。
【0040】
以上、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)気密端子23は、貫通孔25を有する保持体24と、貫通孔25に挿通された配線ピン22と、貫通孔25内に充填された封止材27とを備えてなる。そして、保持体24の一端には、付勢されつつ配線ピン22に掛止されるとともに該配線ピン22の抜脱により移動して貫通孔25を閉塞する閉塞体33を備えたシャッタ機構30が設けられる。
【0041】
即ち、上記のように、付勢状態で閉塞体33を配線ピン22に掛止し、当該配線ピン22を規制体とすることで、閉塞体33は、同配線ピン22の抜脱後、速やかに貫通孔25を閉塞する位置へと移動する。従って、上記構成によれば、簡素な構成にて、効果的に、その気密性を維持することができる。
【0042】
(2)シャッタ機構30は、配線ピン22が挿通される挿通孔31を有して貫通孔25の一端を覆う蓋体32を備える。そして、閉塞体33は、配線ピン22の抜脱により、蓋体32に摺接しつつ挿通孔31を閉塞する位置に移動する。
【0043】
即ち、上記のように、蓋体32により予め貫通孔25を覆い、配線ピン22の抜脱後に閉塞が必要な部分を挿通孔31に限定することで、その閉塞体33の移動量を低減することができる。そして、これにより、小型化を図ることができる。また、蓋体32に閉塞体33を摺接させることで、安定的に閉塞体33を付勢することができる。そして、これにより、より確実に挿通孔31を閉塞することができるとともに、併せて、その高い気密性を確保することができる。従って、上記構成によれば、小型化を図りつつ、より確実且つ効果的に、その気密性を維持することができる。
【0044】
(3)蓋体32には、複数(二つ)の挿通孔31a,31bが形成される。そして、シャッタ機構30は、各挿通孔31a,31bを独立に閉塞可能な複数(二つ)の閉塞体33a,33bを備える。
【0045】
即ち、複数(2本)の配線ピン22a,22bを有する気密端子23の場合、全ての配線ピン22a,22bが同時に抜脱されるとは限らない。この点、上記構成によれば、配線ピン22の抜脱後、各挿通孔31a,31bのそれぞれを、速やかに閉塞することができる。従って、上記構成によれば、より確実且つ効果的に、その気密性を維持することができる。
【0046】
[第2の実施形態]
以下、本発明を具体化した第2の実施形態を図面に従って説明する。尚、上記第1の実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0047】
図9及び図10に示すように、本実施形態のシャッタ機構60は、円板状に形成された二つの閉塞体61a,61bを備えている。また、本実施形態では、蓋体62のタンク内部側平面64には、上記第1実施形態の蓋体32のような凹部は形成されておらず、各挿通孔31a,31bは、その平坦面に形成されている。そして、上記各閉塞体61a,61bは、このタンク内部側平面64に摺接することにより、それぞれ、その対応する挿通孔31a,31bを閉塞することが可能となっている。
【0048】
詳述すると、本実施形態では、タンク内部側平面64には、上記各挿通孔31a,31bの近傍に、それぞれ、回動軸66が設けられている。そして、各閉塞体61a,61bは、これら各回動軸66によって、その閉塞面65がタンク内部側平面64に摺接する状態で回転自在に支承されている。
【0049】
また、上記各回動軸66には、それぞれ、付勢手段としてのねじりコイルバネ67が嵌装されている。そして、各閉塞体61a,61bは、これら各ねじりコイルバネ67の弾性力によって回転方向に付勢されている。
【0050】
具体的には、蓋体62のタンク内部側平面64及び各閉塞体61a,61bの閉塞面65には、それぞれ、ねじりコイルバネ67を収容する凹部68,69が形成されており、各ねじりコイルバネ67は、これら二つの凹部68,69に跨るように圧縮状態(ねじれた状態)で配置されている。そして、本実施形態のシャッタ機構60は、これら各ねじりコイルバネ67が二つの凹部68,69を逆向きに押圧する力を利用して、その回動軸66に支承された各閉塞体61a,61bを回転方向に付勢する構成となっている。
【0051】
更に、各閉塞体61a,61bには、それぞれ、当該各閉塞体61a,61bを厚み方向に貫通して蓋体62の各挿通孔31a,31bに連通する円孔70が形成されている。そして、各挿通孔31a,31bに挿通された各配線ピン22a,22bは、これらの円孔70を介して、ガスタンク4の内部側(図9中、下側)に導出されるようになっている。
【0052】
即ち、本実施形態のシャッタ機構60において、各閉塞体61a,61bは、ねじりコイルバネ67により回転方向に付勢されつつ、各円孔70に挿通された配線ピン22a,22bに掛止されている。
【0053】
つまり、各閉塞体61a,61bは、その対応する各配線ピン22a,22bにより、その回転移動が規制されている。そして、当該配線ピン22a,22bが抜脱され、その規制が解除されることにより、各閉塞体61a,61bは、その円孔70と挿通孔31a,31bとが非連通となる位置に回転移動して、その挿通孔31a,31bを閉塞する。
【0054】
例えば、図11に示すように、配線ピン22aが抜脱された場合、当該配線ピン22aによる規制が解除された閉塞体61aは、ねじりコイルバネ67の弾性力に基づいて、同図中、反時計回りに回転する。そして、その円孔70が、対応する挿通孔31aと非連通となることによって、閉塞体61aは、その閉塞面65により同挿通孔31aを閉塞する。
【0055】
以上、本実施形態によれば、上記第1の実施形態と同様に、配線ピン22の抜脱後、速やかに保持体24の貫通孔25を閉塞して、その気密端子23の気密性を維持することができる。そして、各閉塞体61a,61bの回転移動により、貫通孔25(各挿通孔31)を閉塞する構成とすることで、その更なる構成の簡素化、及び小型化を図ることができる。
【0056】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記各実施形態では、本発明を、高圧水素用のガスタンク4に設けられた弁装置1及び気密端子23に具体化した。しかし、これに限らず、その他の高圧ガスタンク用の弁装置に適用してもよい。また、ガスタンク用弁装置以外に用いられる気密端子に適用してもよい。
【0057】
・上記各実施形態では、気密端子23は、2本の配線ピン22a,22bを備えることとしたが、配線ピン22の数が「1」又は「3以上」の構成に具体化してもよい。そして、複数の配線ピン22を有する場合、閉塞体(33,61)は、その挿通孔(31)の数にあわせて設けるとよい。
【0058】
・また、複数の配線ピン22を有する場合であっても、全ての配線ピン22が略同時に抜脱される状況が起こりやすい用途では、一つの閉塞体によって貫通孔25を閉塞する構成としてもよい。これにより、更なる構成の簡素化、及び小型化を図ることができる。
【0059】
例えば、図12及び図13に示すシャッタ機構80のように、二つの挿通孔31a,31bの間に回動軸66を設ける。更に、この回動軸66により、円板状の閉塞体81を回転自在に支承するとともに、この閉塞体81に各挿通孔31a,31bに連通する二つの円孔70を形成する。そして、同回動軸66に嵌装されたねじりコイルバネ67の弾性力によって、閉塞体81を回転方向に付勢する構成とすればよい。
【0060】
このような構成とすることで、図14に示すように、2本の配線ピン22a,22bが抜脱された場合、その規制が解除されることで、閉塞体81は、同図中、反時計回りに回転する。そして、その回転移動により二つの円孔70が各挿通孔31a,31bと非連通となることによって、閉塞体81は、その二つの挿通孔31a,31bを閉塞する。
【0061】
・また、図12〜図14に例示したシャッタ機構80は、第2の実施形態におけるシャッタ機構60のように、回転移動するように付勢された閉塞体81を有することとした。しかし、これに限らず、第1の実施形態のシャッタ機構30のように、配線ピン22と交差する平面上において直線移動するように付勢された閉塞体33を有するものを基礎としてもよい。例えば、上記第1の実施形態における二つの閉塞体33a,33bを一の閉塞体に置き換える等とすればよい。
【0062】
・上記各実施形態及び図12〜図14に示す別例では、シャッタ機構(30,60,80)は、挿通孔31を有して貫通孔25を覆う蓋体(32,62)を備えることとした。しかし、これに限らず、貫通孔25が形成された保持体24と挿通孔31を有する蓋体(32,62)とが一体に形成される構成としてもよい。また、貫通孔25が十分に小さい場合等には、蓋体(32,62)を廃して、閉塞体(33,61,81)が直接的に貫通孔25を閉塞するようにシャッタ機構(30,60,80)を構成してもよい。
【0063】
・上記各実施形態では、閉塞体(33,61,81)は、その円孔(34,70)内に配線ピン(22)が挿通されることにより、同配線ピン(22)に掛止されることとした。しかし、これに限らず、例えば、切欠きを形成して配線ピンを挿通する構成であってもよく、また、配線ピンに閉塞体の側面を掛止する構成であってもよい。また、閉塞体の形状についても特に限定されるものではない。
【0064】
次に、以上の実施形態から把握することのできる技術的思想を効果とともに記載する。
(イ)前記閉塞体は、前記配線ピンと交差する平面上を直線移動するように付勢されること、を要旨とする。このような構成とすることで、容易に閉塞体を増設することが可能になる。
【0065】
(ロ)前記閉塞体は、平面上において回転移動するように付勢されること、要旨とする。このような構成とすることで、構成の簡素化、及び小型化を図ることができる。
【符号の説明】
【0066】
1…弁装置、2…タンク外配置部、3…タンク内配置部、4…ガスタンク、6…ガス流路、15…温度センサ、16…配線、20…配線通路、22(22a,22b)…配線ピン、23…気密端子、24…保持体、24a…端部、25…貫通孔、27…封止材、30…シャッタ機構、31(31a,31b)…挿通孔、32…蓋体、33(33a,33b)…閉塞体、34…タンク内部側平面、35…凹部、36…底面、36a,36b…短辺、36c,36d…長辺、37…閉塞面、38…保持板、39a,39b…ガイド面、40…付勢面、41…コイルバネ、43…円孔、44…角孔、60…シャッタ機構、61(61a,61b)…閉塞体、62…蓋体、64…タンク内部側平面、65…閉塞面、66…回動軸、67…ねじりコイルバネ、70…円孔、80…シャッタ機構、81…閉塞体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有する保持体と、
前記貫通孔に挿通された配線ピンと、
前記貫通孔内に充填され、前記保持体及び前記配線ピンを封止する封止材と、
付勢されつつ前記配線ピンに掛止され、該配線ピンの抜脱により移動して前記貫通孔を閉塞する閉塞体と、を備えた気密端子。
【請求項2】
請求項1に記載の気密端子において、
前記配線ピンが挿通される挿通孔を有して前記貫通孔を覆う蓋体を備え、前記閉塞体は、前記配線ピンの抜脱により前記蓋体に摺接しつつ前記挿通孔を閉塞する位置に移動して前記貫通孔を閉塞すること、を特徴とする気密端子。
【請求項3】
請求項2に記載の気密端子において、
前記蓋体には、複数の前記挿通孔が形成され、各挿通孔には配線ピンが挿通されるとともに、各挿通孔を独立に閉塞可能な複数の前記閉塞体を備えること、
を特徴とする気密端子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−230817(P2012−230817A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98243(P2011−98243)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】