説明

気泡シート製造装置用のプラグ、及びその製造方法

【課題】気泡シートに良好な視認性を有する識別表示を押印する気泡シート製造装置用のプラグ、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】周面に複数のキャビティが形成された成形ロールに供給され、キャビティにおいてキャビティ形状に対応する突起が真空成形されるキャップフィルムと、キャップフィルムに接合され、前記突起内の空気を封止するバックフィルムと、を備える気泡シートを製造する気泡シート製造装置において、キャビティの底面に連通するキャビティより小径の吸引孔を通気可能に塞ぐプラグ1Aであって、キャビティの底面となるプラグ上面に、真空成形時の吸引力によって所定の識別表示をキャップフィルムの突起頂面に凹設及び/又は凸設成形する印章部2を備え、印章部2は、所定の金属粉末をレーザ照射により焼結させた金属焼結層によって形成された構成としてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の突起が形成された気泡シートを製造する気泡シート製造装置に取り付けられるプラグとその製造方法に関し、特に、突起を真空成形する際に、突起頂面に識別表示を押印するプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、中空状に膨出する複数の突起が形成されたキャップフィルムに、突起内に空気を封入するバックフィルムを積層することによって形成された、独立した複数の気泡を有する気泡シートが、包装用の緩衝材をはじめとする各種の用途に広く利用されている。
【0003】
このような気泡シートは、図9に示すような気泡シート製造装置200により製造される。
この気泡シート製造装置は、溶融状態にある樹脂フィルムを連続的に供給するダイ20、21と、外周面に複数のキャビティ220が設けられた成形ロール22と、加圧ロール23と、剥離ロール24とを備え、成形ロール22の外周面に、ダイ20から供給される樹脂フィルム11を接触させるとともに、キャビティ220において吸引を行い、キャビティ形状に対応した突起11aを真空成形してキャップフィルムとした後に、成形された突起11aの開口側に、ダイ21から供給される樹脂フィルム12をバックフィルムとして加圧ロール22で加圧しつつ熱融着により積層(接合)させ、その後、剥離ロール24で剥離することで気泡シート10が製造されるように構成されている。
【0004】
このようにして製造される気泡シートにおいて、材質や商品名、製造元等を特定可能な識別表示を付したものがある。
例えば、気泡シートの表面に印刷を施すことによって、任意の文字や図形等の識別表示を付した気泡シートが知られている(例えば、特許文献1)。
【0005】
このような印刷による識別表示は、印刷に用いるインクの気泡シートの表面に対する定着性が悪いことから、出願人は、真空成形時の吸引力を利用して識別表示を突起頂面に押印するキャビティを備える気泡シート製造装置を発明した(特願2009−167584)。
【0006】
キャビティは、一般的にその底面に円盤状またはネジ状の金属製プラグが取り付けられている。
キャビティはキャビティ内の空気を成形ロールの軸心側に吸引する吸引孔に連通することから、プラグは、この吸引孔を空気の流路を確保しながら塞ぐように動作する。このように構成されたキャビティにおいて、成形ロールに接触された溶融状態にある樹脂フィルムが吸引されると、キャビティ形状に対応する突起が真空成形されることになる。
【0007】
この突起の真空成形において、突起頂面は、真空成形時の吸引力によってプラグ上面に押し付けられることから、出願人は、このようなプラグの動作に着目して、プラグ上面に所定の文字又は図形を立体的に形成した印章部を設け、真空成形と同時に突起頂面に識別表示を押印する上記気泡シート製造装置の発明に至ったものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−177123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、プラグ径は小さいことから(例えば、約φ5〜φ9)、プラグ上面に所定の文字又は図形を、立体的に、しかもその凹凸及び輪郭が鮮明にでるように形成することは容易なことではなかった。
金属製プラグの上面に所定の文字又は図形を立体的に凹設形成、又は凸設形成する場合、一般的には、切削加工や放電加工、又は化学処理加工により作製することになる。しかしながら、このような加工方法は、多大な時間と労力を費やすにもかかわらず、凸凹のつなぎ目の部分が丸みを帯び、エッジの効いた輪郭を形成することが困難であった。その結果、突起頂面に押印される識別表示の輪郭がぼけてしまい、識別表示としては明りょう性に欠けたものとなっていた。
【0010】
本発明は、上記の事情にかんがみなされたものであり、プラグ上面に、真空成形時の吸引力によって所定の識別表示を突起頂面に押印する印章部を設け、この印章部を、所定の金属粉末をレーザ照射により焼結させた金属焼結層によって形成することで、印章部の簡易かつ精巧な作製と、識別表示の識別性の向上とを両立させた気泡シート製造装置用のプラグ、及びそのプラグの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る気泡シート製造装置用のプラグは、外周面に複数のキャビティが形成された成形ロールに供給され、前記キャビティにおいて前記キャビティ形状に対応する突起が真空成形されるキャップフィルムと、前記キャップフィルムに接合され、前記突起内の空気を封止するバックフィルムと、を備える気泡シートを製造する気泡シート製造装置において、前記キャビティの底面に連通する前記キャビティより小径の吸引孔を通気可能に塞ぐプラグであって、前記キャビティの底面となる前記プラグ上面に、前記真空成形時の吸引力によって所定の識別表示を前記キャップフィルムの前記突起頂面に凹設及び/又は凸設成形する印章部を設け、前記印章部は、所定の金属粉末をレーザ照射により焼結させた金属焼結層によって形成された構成としてある。
【0012】
また、本発明に係る気泡シート製造装置用のプラグの製造方法は、外周面に複数のキャビティが形成された成形ロールに供給され、前記キャビティにおいて前記キャビティ形状に対応する突起が真空成形されるキャップフィルムと、前記キャップフィルムに接合され、前記突起内の空気を封止するバックフィルムと、を備える気泡シートを製造する気泡シート製造装置において、前記キャビティの底面に連通する前記キャビティより小径の吸引孔を通気可能に塞ぐプラグの製造方法であって、前記キャビティの底面となる前記プラグ上面に、前記真空成形時の吸引力によって所定の識別表示を前記キャップフィルムの前記突起頂面に凹設及び/又は凸設成形する印章部を設け、所定の金属粉に所定のレーザを照射して、この金属粉を焼結させるとともに、焼結させた金属粉を積層させて前記印章部を形成する製造方法としてある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、気泡シートに良好な視認性を有する識別表示を押印する気泡シート製造装置用のプラグを簡易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るプラグの外観を示す概略斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るプラグの製造方法を示す概略斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るプラグの製造工程を示す説明図であり、(a)は、印章部を形成する前のプラグの状態を示す図であり、(b)は、金属粉末にレーザ照射している状態を示す図であり、(c)、(d)は、焼結した金属層上に、さらに金属粉末を供給してレーザ照射している状態を示す図であり、(e)は、印章部が形成されたプラグを示す図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係るプラグの外観を示す概略斜視図であり、(a)は、凸設形成された立体図形の外縁に通気孔を形成したプラグの概略斜視図であり、(b)は、凹設形成された立体図形内に通気孔を形成したプラグの概略斜視図であり、(c)は、通気孔を所定の文字又は図形を表す形状に形成したプラグの概略斜視図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係るプラグを示す平面図であり、(a)は、凸設形成された立体図形の外縁に通気孔を形成したプラグの平面図であり、(b)は、凹設形成された立体図形内に通気孔を形成したプラグの平面図であり、(c)は、通気孔を所定の文字又は図形を表す形状に形成したプラグの平面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るプラグとキャビティとの関係を示す断面図であり、プラグ上面がキャビティの底面と面一につながるように配置された状態を示す断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るプラグとキャビティとの関係を示す断面図であり、プラグ上面がキャビティ内に突出する位置に配置された状態を示す断面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るプラグを用いて製造された気泡シートの概略斜視図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る気泡シートの製造装置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
本実施形態に係るプラグ1A〜1Dは、図9に示すように、外周面に複数のキャビティ220が形成された成形ロール22に接触され、キャビティ220においてキャビティ形状に対応する突起11aが真空成形されたキャップフィルム11と、キャップフィルム11に熱融着され、突起内の空気を封止するバックフィルム12と、を備える気泡シート10を製造する気泡シート製造装置200に設けられる、気泡シート製造装置用のプラグとして構成されている。
【0016】
具体的には、プラグ1Aは、図1に示すように、ネジ頭部となる円盤状の印章部2と、印章部2から垂下するネジ部3と、を備えるネジ状プラグとして形成され、ネジ部3がキャビティ220の底面に連通する吸引孔221に螺入されることで、印章部2の上面が該キャビティ220の底面となるように構成されている(図6、図7参照)。
印章部2の上面には、真空成形時の吸引力によって所定の識別表示を突起11a頂面に押印する凹凸部2aが形成され、この凹凸部2aは、所定の文字と図形を立体的に形成した立体図形からなるとともに、所定の金属粉末をレーザ照射により焼結させた金属焼結層によって形成されている。
また、プラグ1Aには、印章部2からネジ部3に渡って所定の幅及び深さを有する溝状の通気孔4が凹設形成され、真空成形時におけるキャビティ220と吸引孔221とを通気可能につなぐ空気流路として機能するようになっている。
この通気孔4は、凹凸部2aを避けつつ、凹凸部2aを挟むように対向配置され、印章部2における凹凸部2a(立体図形)の形状及び大きさ(面積)を最大限に確保しながら、その機能を発揮するように凹設形成されている。これにより、突起11a頂面に押印される識別表示の識別力を損なうことなく、その大きさ(面積)を最大限に確保できるようになっている。
以下、本実施形態に係るプラグ1Aの製造方法について説明する。
【0017】
図2は、本実施形態に係るプラグ1Aの製造方法を示す概略斜視図であり、図3は、本実施形態に係るプラグ1Aの製造工程を示す説明図である。
本実施形態に係るプラグ1Aの製造方法では、図2に示すように、四隅に支柱を有する冶具100に、既成の金属棒材にネジ切り加工を施した複数のネジ部3を取り付け、このネジ部上面3aに印章部2となるネジ頭部を形成することで、ネジ状のプラグ1Aを一度に複数製造するようになっている。
本実施形態のプラグ1Aの製造方法は、ネジ部3をそのネジ部上面3aが冶具100表面に露出するように取り付け、このネジ部上面3aに所定の金属粉末(例えば、ブロンズ材、鉄材)を供給(堆積)するとともに、これにレーザ照射装置101からのレーザ102(例えば、YAGレーザ、又はCO2レーザ)を照射して、レーザ102の熱により焼結させ、この焼結された層を、一層ずつ積み重ねて金属を積層させたネジ頭部となる印章部2と、凹凸部2aを形成する、造形加工法(例えば、光造形金属加工法)を施行して、プラグ1Aを製造するようになっている。
具体的には、図3に示すような工程を経て、プラグ1Aが製造される。
【0018】
図3の(a)は、印章部2(ネジ頭部)を形成する前における冶具100に取り付けられたネジ部3を示し、まず、この状態で、ネジ部上面3aの表面にサンドブラスト加工を行うとともに、脱脂処理を行い、焼結される金属粉末の定着性を高めるための前加工を施す。
次いで、冶具100ごと、図示しない造形加工機に設置し、その後は、以下のような工程を経て、プラグ1Aが自動的に製造される。
具体的には、図3の(b)に示すように、所定量の金属粉末201(例えば、ブロンズ材)をネジ部上面3aに堆積した後、これにレーザ照射装置101からレーザ102(例えば、YAGレーザ、又はCO2レーザ)を照射する。このときレーザ照射装置101は、予め作成された3DCADデータに基づいてネジ頭部を形成しながら、印章部2と凹凸部2aが形成されるように、レーザ102ビームを移動させて、ネジ部上面3aに金属粉末201を溶着させつつ、金属粉末201を焼結させることで、立体モデルを形成する。
そして、さらに、図3の(c)、(d)に示すように、焼結された金属粉末201の上方に、新たな金属粉末201を堆積した後、これにレーザ照射装置101からレーザ102を照射して焼結させる造形加工を繰り返す。
これにより、最終的に、図3の(e)に示すように、金属の焼結層が積層された金属焼結層からなるネジ頭部となる印章部2と、凹凸部2aとが同時に形成され、本実施形態に係るプラグ1Aが製造される。
なお、各工程の途中に、フライス等の切削加工を介在させ、寸法精度や表面粗さを向上させることもできる。
【0019】
以上のような造形加工により製造されたプラグが、図1に示すプラグ1Aであり、本実施形態では、凹凸部2aを「>PE<」からなる文字と図形を左右反転させた立体図形として凸設形成してある。
従来のこのような文字等の複雑な形状を有する金属製品は、切削加工や放電加工により製造していたため、多大な時間と労力を費やすとともに、製品価格も高いものとなっていた。
これに比べ、本実施形態に係るプラグ1Aは、3DCADデータに基づいた造形加工によって、何ら人手を介すことなく非接触で、しかも、一度に大量のプラグを自動で製造できることから、簡易に製造でき、かつ安価なものとすることができる。
また、凹凸部2a上面外縁、及び印章部2の上面と凹凸部2aとのつなぎ目の部分にエッジが形成されていることから、押印される識別表示の輪郭をエッジの効いた明りょうなものとすることができる。
また、本実施形態に係るプラグ1Aは、ネジ状プラグであるものの、ネジ頭部となる印章部2と凹凸部2aのみを金属焼結層で形成し、ネジ部3の部分は既存の金属棒材を用いて製造することから、ネジ状プラグ全体を金属焼結層で形成する場合に比べ、安価にしかも迅速に製造することができる。
【0020】
次に、このような造形加工により製造される他の実施形態のプラグについて、図4及び図5を参照しつつ説明する。
図4は、他の実施形態に係るプラグの外観を示す概略斜視図であり、(a)は、凸設形成された立体図形(凹凸部2a)の外縁に通気孔4を形成したプラグ1Bの概略斜視図であり、(b)は、凹設形成された立体図形(凹凸部2a)内に通気孔4を形成したプラグ1Cの概略斜視図であり、(c)は、通気孔4を所定の文字又は図形を表す形状に形成したプラグ1Dの概略斜視図である。また、図5の(a)〜(c)は、上記各プラグ1B、1C、1Dの平面図である。
これらのプラグ1B、1C、1Dは、ネジ部3を有さない円盤状プラグとして前述の造形加工によって製造されたプラグである。
プラグ1Bは、図4(a)及び図5(a)に示すように、凸設形成された立体図形(凹凸部2a)の外縁に沿って複数の通気孔4を配置してある。プラグ1Cは、図4(b)及び図5(b)に示すように、凹設形成された立体図形(凹凸部2a)内に複数の通気孔4(4a,4b)を配置してあり、特に、通気孔4bは、立体図形(凹凸部2a)の内縁に沿って配置してある。このように、通気孔4を配置することにより、真空成形時の吸引力によって突起11a頂面が凹凸部2aに効率的に押し付けられて密着度が高まることから、凹凸部2aの形状がそのままくっきりと押印されることになり、識別表示の明りょう性が向上する。
また、プラグ1Cは、図4(c)及び図5(c)に示すように、凹凸部2a自体を通気孔4とし、この通気孔4を所定の文字又は図形を表す形状に形成してある。これにより、突起11a頂面はこの形状で吸引されることから、識別表示がさらにくっきりと明りょうになる。
【0021】
このようにして製造されたプラグ1A〜1Dは、前述したように、キャビティ220に取り付けられ、キャビティ220における空気の流路を確保しながら塞ぐように動作する。ここで、キャビティ220の構造とプラグの動作原理について、図6を参照しつつ、以下に説明する。
【0022】
キャビティ220は、成形ロール22の外周面22aに複数形成され、上方側は成形ロール外周面22aとつながり、その底面220aにおいて吸引孔221につながる、突起11aとほぼ同じ形状となる略円錐台形状を有している。
吸引孔221は、図示しない所定の真空ポンプに接続されるキャビティ220より小径の空気の管路であって、キャビティ220の底面220aに連通することで、キャビティ220内の空気を真空吸引するようになっている。
図6に示すプラグ1Aは、ネジ部3が吸引孔221に螺入されるとともに、ネジ頭部となる印章部2が吸引孔221より小さい外形(外径)を有し、印章部2の上面がキャビティ220の底面220aと面一につながる通常位置NPに配置されている。
凹凸部2aが形成されない一般的なプラグ(ネジ状又は円盤状プラグ)は、通常、この通常位置NPに配置される。
ところが、図6に示すプラグ1Aの印章部2には、金属焼結層からなる凹凸部2aが凸設形成され、この凹凸部2aはキャビティ220内に突出するように形成されている。
プラグ1Aは、キャビティ220において、成形ロール22に接触された溶融状態にある樹脂フィルムが真空成形時にA方向に吸引されるときに、通気孔4により空気の流路を確保しながら、吸引孔221を塞ぐように動作する。つまり、印章部2の上面はキャビティ220の底面となり、その結果、キャビティ220形状に対応する突起11aが真空成形されることになる。
【0023】
この突起11aの真空成形時において、突起11a頂面は、真空成形時の吸引力によって印章部2の上面に押し付けられる。図6に示すプラグ1Aは、凹凸部2aがキャビティ220内に突出するように形成されていることから、真空成形と同時に突起11a頂面に凹凸部2aに対応する識別表示を押印(凹設成形)することができる。
凹設成形された識別表示は、立体図形からなる凹凸部2aを左右反転したものとなり、「>PE<」と押印される(図8参照)。このように、左読み又は右読みのように読み方向が定まっている文字や図形を識別表示とする場合には、凹凸部2aを左右反転した立体図形で形成することで、押印される文字や図形が正しい並びや向きとなる。
また、凹凸部2aを所定の文字又は図形を左右反転させた立体図形とすることで、突起11a頂面に押印される識別表示はその文字又は図形となることから、識別力が向上する。
なお、通気孔4は、印章部2からネジ部3に渡って対向位置に凹設形成されていることから、この通気孔4に嵌合する二股形状を有する専用ドライバを挿入するとともに、吸引孔221にネジ溝を形成しておくことで、プラグ1Aをキャビティ220に対して容易に着脱することができる。
なお、上記のプラグの動作では、ネジ状に形成されたプラグ1Aを例に挙げて説明したが、円盤状に形成されたプラグ1B〜1Dを、上記例のプラグ1Aの印章部2と同じ外形(外径)に形成するとともに、プラグ1Aの印章部2と同じ通常位置NPに配置することで、真空成形時により突起11a頂面に凹凸部2aに対応する識別表示を同様に押印することができる。この場合、プラグ1C、1Dによって突起11a頂面に押印される識別表示は、凸設成形されることはいうまでもない。
また、プラグ1B〜1Dは、印章部2を吸引孔221に圧入することで通常位置NPに簡単に取り付けることができる。
【0024】
また、以下に示すように、プラグ1Aの印章部2を上記の例より大きな外形とすることで、突起11a頂面に押印される識別表示の識別力を高めることもできる。
図7は、プラグ1Aのキャビティ220における取り付け状態を示す断面図である。
同図に示すプラグ1Aは、印章部2の外形(外径)を吸引孔221より大きく、キャビティ220より小さく形成し、印章部2がキャビティ220内に突出するように形成されている。
プラグ1Aをこのように形成することにより、印章部2の上面が突出位置EPに位置することになる。すなわち、印章部2が吸引孔221より大きくキャビティ220より小さい外形(外径)を有することから、印章部2が吸引孔221内に収まることができず、キャビティ220内に突出せざるを得ない。
これにより、以下に示すような作用効果を発揮することになる。
【0025】
前述した図6に示すプラグ1Aは、印章部2の上面がキャビティ220の底面220aと面一につながる通常位置NPに位置することから、このような印章部2で形成される突起11aは、キャビティ220に対応する高さを有することになる。ところが、図7に示すプラグ1Aは、キャビティ220内に突出するように印章部2が形成されていることから、印章部2上面の位置が突出位置EPとなり、このような印章部2によって形成される突起11aの高さは、通常位置NPに位置する場合に比べて低くなる。
これにより、例えば、複数のキャビティ220に対して、図7に示すプラグ1Aを取り付けるキャビティ220を限定することで(例えば、100個のキャビティ220に対して、1個のキャビティ220に図5に示すプラグ1Aを取り付ける)、高さの低い突起11aの存在が目立つことになり、識別力を向上させることができる。
また、キャビティ220は略円錐台形状を有するため、印章部2をキャビティ220内に突出させて真空成形した突起11aは、上底部の面積が拡大することから、押印される識別表示を大きなものとすることができる。
なお、上記の図7では、プラグ1Aを例に挙げて説明したが、プラグ1B〜1Dを、上記例のプラグ1Aの印章部2と同じ外形(外径)に形成するとともに、プラグ1Aの印章部2と同じ突出位置EPに配置することで、真空成形時により突起11a頂面に凹凸部2aに対応する識別表示を同様に押印することができる。この場合、プラグ1C、1Dによって突起11a頂面に押印される識別表示は、凸設成形されることはいうまでもない。
また、プラグ1B〜1Dは、印章部2をキャビティ220に圧入することで突出位置EPに簡単に取り付けることができる。
【0026】
このようなプラグ1A又はプラグ1Bを成形ロール22のキャビティ220に取り付けた気泡シート製造装置200にて製造された気泡シート10を図8に示す。
同図に示す、ほぼ中央付近にある識別表示の押印された突起11aは、図7に示すプラグ1A、又は図7に示すプラグ1Aの印章部2の位置に圧入されたプラグ1Bにより真空成形されたもので、他の突起11aは、通常位置NPに印章部2(単なる円盤)が配置され、凹凸部2aの形成されていない一般的なプラグにより真空成形されたものとなっている。
【0027】
識別表示を有する突起11a頂面には、樹脂材質を表す「>PE<」からなる文字と図形が押印されるとともに、この突起11aは他の突起11aに比べて高さが低く形成されている。
また、プラグ1A又はプラグ1Bの凹凸部2aにより押印された識別表示は、突起11a頂面に凹設成形される。突起11aは、常温・常圧時において十分に膨らんでいないことから、凹設成形された識別表示は、内圧を受けてその形が崩されずに明瞭な輪郭を保持できる。その結果、識別表示は、明瞭な識別力を有し、表示内容を容易に視認できるものとなっている。
また、識別表示の押印された突起11aは、他の突起11aに比べて高さが低くため、真空成形された複数の突起11aの中から、識別表示の押印された突起11aを容易に見つけ出すことができる。
これにより、識別表示の押印されていないその他の突起11aにより、気泡シート10の緩衝材としての機能を発揮しつつ、識別表示の押印された突起11aにより、材質や商品名、製造元等を容易に特定することができる。
なお、プラグ1C、1Dによって突起11a頂面に凸設成形される識別表示については特に図示はしないが、プラグ1Cでは、立体図形内又は立体図形内縁に沿って通気孔4を配置し、プラグ1Dでは、凹凸部2a自体を通気孔4とし、この通気孔4を文字又は図形を表す形状に形成してあるため、真空吸引時における突起11a頂面の凹凸部2aへの密着度が高まり、エッジの効いた識別表示が凸設成形されることから、常温・常圧時において突起11aが十分に膨らんでいなくとも、識別表示を明りょうなものとすることができる。
【0028】
なお、気泡シート10の製造に用いる材料樹脂、すなわち、キャップフィルム2、バックフィルム3の材料樹脂としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂を単独で、又は二種以上を混合して用いることができる。
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレンホモポリマー、又はプロピレンと他のオレフィンとの共重合体などが例示できる。プロピレンと共重合される他のオレフィンとしては、エチレン、ブテン−1、イソブチレン、ペンテン−1などのα−オレフィンが挙げられ、これらの他のオレフィンとの共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれであってもよい。
また、ポリエチレン系樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、直鎖状超低密度ポリエチレン(LVLDPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが例示できる。
【0029】
以上説明したように、気泡シート製造装置用のプラグ1A〜1D、及びその製造方法によれば、気泡シート10に良好な視認性を有する識別表示を押印できるとともに、このようなプラグを簡易に製造することができる。
【0030】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることはいうまでもない。
【0031】
例えば、図6に示すプラグ1Aにより真空成形された突起11aについて、具体的に例示しなかったが、この突起11aは、図8に示す、「>PE<」の識別表示が押印された突起11aより、その高さが高く、他の突起11aと同じ高さとなる。
すなわち、図6に示すプラグ1Aにより真空成形された突起11aは、一般的なプラグにより真空成形された他の突起11aと同じ高さでありながら、明りょうな識別表示が押印されるので、気泡シート10の緩衝材としての機能を変えることなく、材質や商品名、製造元等を容易に特定することができる。
また、プラグ1Aは、印章部2をネジ部3の外径より大きく形成したが、ネジ部3の外径とほぼ同じ外径としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、包装用の緩衝材をはじめとする各種の用途に広く利用することができる独立した多数の気泡を有する気泡シートを製造する製造装置に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1A〜1D プラグ
2 印章部
2a 凹凸部(立体図形)
3 ネジ部
4 通気孔
11 キャップフィルム
11a 突起
12 バックフィルム
22 成形ロール
220 キャビティ
221 吸引孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に複数のキャビティが形成された成形ロールに供給され、前記キャビティにおいて前記キャビティ形状に対応する突起が真空成形されるキャップフィルムと、前記キャップフィルムに接合され、前記突起内の空気を封止するバックフィルムと、を備える気泡シートを製造する気泡シート製造装置において、前記キャビティの底面に連通する前記キャビティより小径の吸引孔を通気可能に塞ぐプラグであって、
前記キャビティの底面となる前記プラグ上面に、前記真空成形時の吸引力によって所定の識別表示を前記キャップフィルムの前記突起頂面に凹設及び/又は凸設成形する印章部を設け、
前記印章部は、所定の金属粉末をレーザ照射により焼結させた金属焼結層によって形成されたことを特徴とする気泡シート製造装置用のプラグ。
【請求項2】
前記印章部は、所定の文字又は図形を立体的に形成した立体図形を備え、
凸設形成された前記立体図形の外縁又は凹設形成された前記立体図形内に、前記キャビティと前記吸引孔を通気可能につなぐ通気孔を形成した請求項1記載の気泡シート製造装置用のプラグ。
【請求項3】
前記印章部は、前記キャビティと前記吸引孔を通気可能につなぐ通気孔を備え、
前記通気孔を、所定の文字又は図形を表す形状に形成した請求項1記載の気泡シート製造装置用のプラグ。
【請求項4】
前記プラグは、当該プラグ上面が前記キャビティの底面に面一につながる、前記吸引孔より小さい外形を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の気泡シート製造装置用のプラグ。
【請求項5】
前記プラグは、当該プラグ上面が前記キャビティ内に突出する、前記吸引孔より大きい外形を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の気泡シート製造装置用のプラグ。
【請求項6】
前記プラグは、前記吸引孔に螺入されるネジ部と、前記ネジ部の上面に前記金属粉末をレーザ照射により焼結させた金属焼結層からなるネジ頭部とを有し、
前記ネジ頭部を前記印章部として形成した請求項1〜5のいずれか一項に記載の気泡シート製造装置用のプラグ。
【請求項7】
外周面に複数のキャビティが形成された成形ロールに供給され、前記キャビティにおいて前記キャビティ形状に対応する突起が真空成形されるキャップフィルムと、前記キャップフィルムに接合され、前記突起内の空気を封止するバックフィルムと、を備える気泡シートを製造する気泡シート製造装置において、前記キャビティの底面に連通する前記キャビティより小径の吸引孔を通気可能に塞ぐプラグの製造方法であって、
前記キャビティの底面となる前記プラグ上面に、前記真空成形時の吸引力によって所定の識別表示を前記キャップフィルムの前記突起頂面に凹設及び/又は凸設成形する印章部を設け、
所定の金属粉に所定のレーザを照射して、この金属粉を焼結させるとともに、焼結させた金属粉を積層させて前記印章部を形成する気泡シート製造装置用のプラグの製造方法。
【請求項8】
前記プラグは、前記吸引孔に螺入されるネジ部と、前記ネジ部の上面に前記印章部として形成されるネジ頭部とを有し、
前記ネジ部の上面に所定の金属粉を堆積し、これに所定のレーザを照射して、前記金属粉を焼結させるとともに、焼結させた金属粉を積層させて前記ネジ頭部を形成しながら、前記印章部を形成する請求項7記載の気泡シート製造装置用のプラグの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−16913(P2012−16913A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156362(P2010−156362)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(000199979)川上産業株式会社 (203)
【Fターム(参考)】