説明

気泡含有菓子生地の製造法

【課題】本発明の目的は、スポンジ生地に類する成型できる状態を維持し、オーブンで直焼きすることが可能で、さらに焼成冷却後の気泡含有菓子生地が保形性を有するにもかかわらず、スフレ様に食感がふんわりとしてしっとりしており、口溶けの良い気泡含有菓子生地を、平易かつ安定的に、さらには大量生産をすることができる気泡含有菓子生地の製造法を提供する事にある。
【解決手段】本発明は、油脂類及び蛋白類を含む塑性状態の乳化物(A)に、卵類及び澱粉性原料を加配してなる生地(B)とメレンゲ生地を混合し、混合後の生地(C)を焼成することを特徴とする気泡含有菓子生地の製造法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡含有菓子生地の製造法に関し、更に詳しくはスポンジに類する保形性を有しているにもかかわらず、スフレ様に食感がふんわりとしてしっとりしており、口溶けに優れた新規な気泡含有菓子生地の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、気泡含有菓子生地としてはスポンジ、スフレ等が広く知られている。
スポンジは卵類、砂糖、小麦粉(薄力粉)を主原料とし、その他油脂、乳製品などを添加することもあるが、基本的には卵類と砂糖を混合して含気させ、薄力粉を混合して焼成してなるものである。その時、卵中の卵黄と卵白を一緒に含気させるか、卵黄と卵白を別々に含気させるかによって製法が区別されており、前者は共立て法、後者は別立て法とされている(非特許文献1、2)。
何れにしても、スポンジ生地は、生地安定性が高く、絞るなどの成型作業ができ、また耐熱保形性も強いためオーブンで直焼きすることができる。さらに焼成冷却後のスポンジは保形性があって、フィリングを塗布して巻いてロールケーキにしたり、フィリングをサンドしたりと、加工することができる。しかしながら、小麦粉などの穀物粉類が多く、骨格がしっかりしているために食感はやや硬く、しっとり感に乏しく、口溶けの良さに欠ける。そのためこれらの食感をカバーするためにシロップが塗布されることも多い。
【0003】
スフレは、カスタードクリーム生地、あるいはシュー生地にメレンゲを混合して生地を作り、これをスフレ型に入れ焼成することにより得ることができる。カスタードクリーム生地は、牛乳、卵、砂糖、小麦粉を加熱して得られる。シュー生地はバターと牛乳、水、小麦粉を沸騰させ、卵を加えて得られる。こうして得られたスフレ生地は、食感はふんわりして、しっとりしており、非常に口溶けの良好なものである。
しかしカスタードクリーム生地やシュー生地を作成することは手間であり、さらにそれらをスフレ生地にとって望ましい状態に調整することが難しく熟練を要する。また、生地安定性が低く、成型できる状態にもない。加えて、このスフレ生地は、耐熱保形性が弱いため、焼成は型に入れて湯せんで行う必要がある。また焼成冷却後のスフレは保形性が弱く、ふっくらとした食感を長時間維持することは難しい。そのためスポンジの様にフィリングを塗布して巻いてロールケーキにしたり、フィリングをサンドしたりというような加工は不可能であった。
【0004】
特許文献1では、シュー生地とメレンゲを含有することを特徴とするケーキ菓子生地が提案されているが、シュー生地を炊くという手間のかかる工程があり、かつシュー生地の調製が難しい。また、温かいシュー生地にメレンゲを添加するため(混合する際のシュー生地の温度は概ね50℃)、メレンゲの気泡が消えやすいという難点があった。
特許文献2では、直焼きで安定したスフレが得られる製造法が提案されているが、型焼きを前提とした、容器を限定する製造法であって、生地安定性や焼成冷却後の気泡含有菓子生地の保形性についての記載はなく、容器のまま食するスフレに関するものである。
特許文献3では、スフレ様食品の安定且つ大量生産を可能にするためにネイティブジェランガムを添加することでメレンゲの含気を安定化し長時間保持させる方法が提案されているが、ネイティブジェランガムを添加することによる風味または食感への影響がある。さらにメレンゲの安定性についての記載はあるが、メレンゲ混合後の生地安定性や焼成冷却後の気泡含有菓子生地の保形性についての記載はない。
その他にも、卵由来の原料と乳由来の原料を混合して含気させることで、冷蔵または冷凍耐性のあるスフレ様食品ベースを簡便に得ることができる製造法が提案されているが(特許文献4)、これは容器に入れて焼成することが前提であり、やはり生地安定性や焼成冷却後の気泡含有菓子生地の保形性についての記載はない。
【0005】
【非特許文献1】「プロのためのわかりやすいフランス菓子」、2004年4月1日発行、34頁、株式会社柴田書店
【非特許文献2】「プロのためのわかりやすいフランス菓子」、2004年4月1日発行、50頁、株式会社柴田書店
【特許文献1】特開2005−151924号公報
【特許文献2】特開平7−298825号公報
【特許文献3】特開平10−165082号公報
【特許文献4】特開2005−218407号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、スポンジ生地に類する成型できる状態を維持し、オーブンで直焼きすることが可能で、さらに焼成冷却後の気泡含有菓子生地が保形性を有するにもかかわらず、スフレ様に食感がふんわりとしてしっとりしており、口溶けの良い気泡含有菓子生地を、平易かつ安定的に、さらには大量生産をすることができる気泡含有菓子生地の製造法を提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意研究を行った結果、油脂類及び蛋白類を含む塑性状態の乳化物(A)に、卵類、澱粉性原料を混合し、そこにメレンゲを加えるだけで、スポンジに類する生地が得られ、当該生地が成型できる状態にあって、オーブンで直焼きすることが可能で、さらに焼成冷却後の気泡含有菓子生地が保形性を有するにもかかわらず、スフレ様に食感がふんわりとしてしっとりしており、口溶けの良い気泡含有菓子生地が得られるという知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の第1は、油脂類及び蛋白類を含む塑性状態の乳化物(A)に、卵類及び澱粉性原料を加配してなる生地(B)とメレンゲ生地を混合し、混合後の生地(C)を焼成することを特徴とする気泡含有菓子生地の製造法である。第2は、生地(B)とメレンゲ生地を混合する際の生地(B)の温度が5〜40℃である、第1記載の気泡含有菓子生地の製造法である。第3は、混合後の生地(C)が成型できる状態である、第1又は第2記載の気泡含有菓子生地の製造法である。第4は、生地(B)とメレンゲ生地の混合が重量比で80:20〜30:70である、第1〜第3何れか1に記載の気泡含有菓子生地の製造法である。第5は、乳化物(A)が5〜35℃の範囲において、塑性状態である、第1記載の気泡含有菓子生地の製造法である。第6は、乳化物(A)が、油脂分0.1〜50重量%、蛋白質分1〜30重量%である、第5記載の気泡含有菓子生地の製造法である。第7は、乳化物(A)が、pH 4.0〜6.5に調製されたものである、第5又は第6記載の気泡含有菓子生地の製造法である。第8は、第1〜第7何れか1に記載の気泡含有菓子生地を使用してなる菓子である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によって、スポンジ生地に類する成型状態を維持し、澱粉性原料の加配量が少ないにもかかわらずオーブンで直焼きすることが可能で、さらに焼成冷却後の気泡含有菓子生地が保形性を有しており、スフレ様に食感がふんわりとしてしっとりしており、口溶けの良い気泡含有菓子生地を、平易な手法、安定した品質で量産可能であって、また特別な乳化剤や添加物を使用する必要がないため、風味にも優れた、気泡含有菓子生地を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の気泡含有菓子生地の製造法としては、油脂類及び蛋白類を含む塑性状態の乳化物(A)に、卵類及び澱粉性原料を加配してなる生地(B)とメレンゲ生地を混合し、混合後の生地(C)を焼成する製造法である。
生地(B)とメレンゲ生地を混合する際の生地(B)の温度が5〜40℃、好ましくは10〜35℃、さらに好ましくは10〜30℃であるのが望ましい。
温度が低すぎると、乳化物(A)の組成によっては、生地(B)が硬すぎて、メレンゲ生地との混合が難くなったり、乳化が不安定になる。温度が高すぎると、メレンゲ生地中の気泡が壊れやすく、安定した生地状態、成型できる状態を保つことが難くなる。
気泡含有菓子生地を製造するに際して、上記方法により生地(C)を調製するのであるが、混合後の生地(C)は、比重0.3〜0.7の範囲、好ましくは0.35〜0.65の範囲で含気しており、生地状態が安定しており、成型できる状態であるのが好ましい。
成型できる状態とは混合直後の生地を絞った際にその状態が維持されていることをいう。
【0011】
本発明の生地(B)は、油脂類及び蛋白類を含む塑性状態の乳化物(A)に、卵類及び澱粉性原料を加配して調製する。
油脂類としては、食用のものであれば特に制限なく自由に選択でき、種類は問わない。融点が少なくとも5℃以上、好ましくは15〜40℃程度のものが好適であり、油脂原料としては、例えば、菜種油、大豆油、ひまわり種子油、綿実油、落花生油、米糠油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、カポック油、ゴマ油、月見草油、パーム油、パーム核油、ヤシ油等の植物性油脂ならびに乳脂、牛脂、豚脂、魚油、鯨油等の動物性油脂が例示でき、これらの油脂類の単独または混合油あるいはそれらの硬化分別油、ならびに酵素エステル交換、触媒によるランダムエステル交換等を施した加工油脂が使用できる。
【0012】
蛋白類としては、牛乳、脱脂乳、加糖練乳、無糖練乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、バターミルク、バターミルクパウダー、ホエー、ホエーパウダー、カゼイン、カゼインナトリウム、ラクトアルブミン、生クリーム、バター、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ、ヨーグルト、サワークリーム等乳由来の蛋白質が例示でき、乳以外の蛋白質として卵蛋白質、大豆蛋白質も例示できる。卵蛋白質としては、液状あるいは乾燥された卵黄、卵白、全卵及びこれらより分離される単一( 単純) 蛋白質、例えばオボアルブミン、コンアルブミン、オボムコイド、オボグロブリン等がある。大豆蛋白質としては、豆乳、脱脂大豆粉、濃縮大豆蛋白、分離大豆蛋白、脱脂豆乳粉末、大豆蛋白加水分解物等がある。
【0013】
卵類としては、生卵、凍結卵、加糖加塩卵、加熱卵、酵素処理卵、粉末卵、卵黄油などが例示できる。それらは全卵で用いることも、卵黄、卵白に分けて用いることもでき、1種または2種以上を組み合わせて用いることも可能である。卵は鶏、アヒル、うずら等の卵も使用可能である。
澱粉性原料としては、小麦粉類(強力粉、中力粉、薄力粉)、米粉類、そば粉類及びライ麦粉類の穀物粉類並びにコーンスターチ、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉及びタピオカ澱粉の澱粉類が例示でき、これらのものから1以上選択して使用することができる。
澱粉の量としては、スポンジ生地に比較して少ないのが好ましく、生地(C)全体に対して2〜12重量%、更に3〜10重量%が好ましい。澱粉量が少なすぎると、混合後の生地(C)が成型できる状態を得難くなり、多すぎるとしっとり感が弱まり、口溶けの良さに欠けスポンジ様の食感に近づく。
【0014】
本発明の生地(B)は、油脂類、蛋白類、卵類、澱粉性原料を主原料とする以外に特に限定はなく、他の原料として、例えば糖類、塩類、増粘剤、安定剤、乳化剤、保存料、酸化防止剤、着色料、香料、チョコレート、ココア、アーモンド、ピーナッツ、イチゴ粉末、胡麻、各種フルーツピューレ等の風味剤、各種可食物などが挙げられ、1種または2種以上を使用することが出来る。
【0015】
本発明の生地(C)は、上記方法で得られた生地(B)とメレンゲ生地を混合し調製する。混合する際の温度は、生地(B)の温度が5〜40℃の範囲で実施するのが好ましく、混合生地(C)の比重、生地状態、成型状態が安定化するので好ましい。
その際の生地(B)とメレンゲ生地の重量比が80:20〜30:70、好ましくは78:22〜40:60、最も好ましくは78:22〜50:50が良い。生地(B)の割合が多いと焼成した際の気泡含有菓子生地がしっとりとして重い食感となり、少ない場合はふんわりとするが硬めの食感になる。
【0016】
メレンゲ生地は、卵白と糖類を混合して得ることが出来る。卵白としては、生卵白、加糖卵白、乾燥卵白、凍結卵白、凍結加糖卵白などが挙げられ、1種または2種以上を使用することが出来る。
糖類としては、単糖類、オリゴ糖類、糖アルコールが挙げられ、具体的には蔗糖、マルトース、ブドウ糖、ラクトース、ソルビトール、グルコース、転化糖、果糖等が例示できる。糖類の一部又は全部をデキストリン類、加工澱粉類を使用することによりメレンゲ生地の気泡を安定化することが出来る。加工澱粉としてはアルファー化澱粉、エーテル架橋澱粉、リン酸架橋澱粉、アルファー化架橋澱粉が例示できる。
本発明のメレンゲ生地に用いられる原料としては卵白、糖類を主原料とする以外に特に限定はないが、必要により、レモン果汁、L−酒石酸水素カリウム、DL酒石酸水素カリウムを使用することが出来、その他にも塩類、増粘剤、安定剤、乳化剤など1種、または2種以上を使用することが出来る。
【0017】
本発明の乳化物(A)は、油脂類及び蛋白類を含む乳化物であって5〜35℃の範囲において、塑性状態であるのが好ましい。
塑性状態とは具体的には品温5℃において粘度400cP〜10万cPの範囲のものであり、品温35℃において粘度400cP〜10万cPの範囲のものであって、5〜35℃の広い温度帯において上記の粘度を有するものである。
そして粘度はBM型、BH型(東京計器製)の粘度計を用いて測定した。
塑性状態であることによって、乳化物(A)が卵類及び澱粉性原料と混合しやすくなって、卵類及び澱粉性原料と添加混合する際に、混合生地(B)の硬さの状態が良好な状態に調製でき、更にメレンゲ生地と混合した際に、混合生地(C)の比重、生地状態、成型できる状態が安定化するので好ましい。乳化物(A)が液状の場合、混合後の生地(C)が、気泡の抜けやすい不安定な生地となり、成型できる状態にもならない。また、硬すぎると卵類及び澱粉性原料との混合が難くなる。
乳化物(A)が塑性状態を得るためには、油脂分0.1〜50重量%、蛋白質分1〜30重量%の乳化物であるのが好ましい。更に乳化物(A)は、pH 4.0〜6.5に調製されたものが好ましい。
具体的には、油脂類及び蛋白類を含む乳化物に有機酸、醸造酢、果汁などを添加したり、乳酸発酵して得ることも出来る。有機酸としては、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸等、及びそれら有機酸の塩などが挙げられる。
また、乳化物(A)としては、市販のチーズ類、ヨーグルト類、サワークリームも例示できる。
【0018】
本発明の乳化物(A)は、油脂類及び蛋白類を含む塑性状態の乳化物であって、油脂分0.1〜50重量%が好ましく、更に好ましくは1〜45重量%、最も好ましくは1〜42重量%がよい。油脂分が少ない場合は、混合後の生地(C)の乳化が不安定になり、また乳化物(A)の風味もコク味の弱いものとなるので好ましくない。油脂分が多い場合は、混合後の生地(C)の耐熱保形性が弱くなったり、乳化物(A)の安定な乳化が維持し難くなる。
本発明の乳化物(A)は、油脂類及び蛋白類を含む塑性状態の乳化物であって、蛋白質分1〜30重量%が好ましく、更に好ましくは1〜20重量%、最も好ましくは2〜15重量%がよい。蛋白質分が少ない場合は、混合後の生地(C)の生地安定性が弱くなり、成型状態になり難くなる。また、耐熱保形性も弱くなるため好ましくない。蛋白質分が多い場合は、冷却後の菓子生地の食感が硬くなり、ふんわり感が損なわれる。また、乳化物(A)の安定な乳化が維持し難くなる。
【0019】
本発明における塑性状態の乳化物(A)の最も好ましい態様は、油脂分1〜42重量%であり、蛋白質分2〜15重量%であって、pHが4.0〜6.5に調製されたものであり、且つ、油脂分が15重量%以下の低油脂分の場合は相対的に蛋白質分が多く(蛋白質分÷油脂分)の値が0.7〜3.0であり、油脂分が15重量%を超える油脂分の場合は相対的に蛋白質分が少なく(蛋白質分÷油脂分)の値が0.05〜0.7が良い。
【0020】
本発明の気泡含有菓子生地は、油脂類及び蛋白類を含む塑性状態の乳化物(A)に、卵類及び澱粉性原料を加配してなる生地(B)とメレンゲ生地を混合し、混合後の生地(C)を焼成して得るのであるが、その焼成方法は、従来の様に湯煎焼きに限られることなく、直焼きすることもできる。また、型や天板に流し込んで焼成するだけでなく、型に入れず、絞った形のまま焼成することも出来る。
【0021】
本発明の気泡含有菓子生地は、油脂類及び蛋白類を含む塑性状態の乳化物(A)に、卵類及び澱粉性原料を加配してなる生地(B)とメレンゲ生地を混合し、混合後の生地(C)を焼成して得たものであって、当該気泡含有菓子生地は、通常のスポンジと同様な使用が可能である。
本発明の菓子とは当該気泡含有菓子生地を使用するものであって、スポンジと同様な使用において、例としてロールケーキ、ブッセ、オムレット、ショートケーキなどに利用することが出来る。
そして、本発明の気泡含有菓子生地は、従来のスポンジに比較して澱粉性原料の加配量が少なくても焼成冷却後の保形性がスポンジと同等なものが得られるので口溶けの良いものとなる。
スポンジはふんわりとしているがしっとり感はない。これは骨格となる小麦粉によりふんわりするが配合的に水分量が少なく、焼成もしっかり焼き込むため水分も飛散しパサパサする食感になると推察している。
他方、スフレは食感がふんわりとしてしっとりしているがふんわりとした食感を長時間維持することは難しい。
本発明の気泡含有菓子生地は、スフレ様に食感がふんわりとしてしっとりしており、骨格もしっかりしているためふんわり感も維持できているため新規な菓子生地として多用途に期待できる。
【実施例】
【0022】
以下に本発明の実施例を示し本発明をより詳細に説明するが、本発明の精神は以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、%及び部は、いずれも重量基準を意味する。また、結果については以下の方法で評価した。
【0023】
A,混合後の生地(C)の評価
(1)、比重
(2)、生地安定性
混合直後から1時間後の生地状態について4段階で評価した。
◎非常に安定している ○安定している △やや不安定 ×非常に不安定
(3)、成型状態
成型状態は混合直後の生地を絞った時の状態について4段階で評価した。
◎非常に良好 ○良好 △ややだれ気味 ×成型不可能
(4)、耐熱保形性
耐熱保形性は焼成時の状態について4段階で評価した。
◎全く焼きダレなし ○ほぼ焼きダレなし △やや焼きダレあり ×焼きダレあり
【0024】
B,焼成冷却後の気泡含有菓子生地の評価
(1)、保形性
焼成冷却後の気泡含有菓子生地を加工する際の生地の状態について4段階で評価した。
◎非常にしっかりしている ○しっかりしている △やや弱い ×弱い
(2)、食感
スフレ様食感を5とし、スポンジ様食感を1として5段階で評価した。
(3)、口溶け
非常に良いを5とし、非常に悪いを1として5段階で評価した。
(4)、風味
官能評価を行った。
【0025】
実施例1
表1の配合に従い、脱脂粉乳(雪印乳業株式会社製 水分3.8重量%、蛋白質分34.0重量%、油脂分1重量%)14部に精製パーム油(不二製油株式会社製)20部と水66部を混合、ホモミキサーで攪拌しながら加熱、70℃で30分予備乳化し、次いでホモゲナイザーで100Kg/cm2の圧力下に均質化した後、20℃まで急冷して水中油型乳化物を調製した。この様に調製した水中油型乳化物100部に対して乳酸菌バルクスターター1部(ラクトコッカス・ラクティスssp.クレモリス菌とラクトコッカス・ラクティスssp.ラクティス菌の混合菌)を添加し、20℃で発酵を行い、pH5.8となった時点で5℃まで急冷、発酵停止させた。この発酵物を80℃にて殺菌処理を行い5℃まで冷却して、油脂分20.0重量%、蛋白質分5.0重量%、水分70.0重量%の乳化物(A)を得た。この乳化物(A)を評価したところ、自然で豊かな乳風味とコク味を有しており、粘度は5℃において5000cPで適度な塑性状態であった。
さらに表1の配合に従い、卵黄25部とグラニュー糖4部、薄力粉5部を混合したものに、上記乳化物(A)34部を加えて混合し、そこに卵白20部、グラニュー糖12部で作成したメレンゲを加えて、混合後の生地(C)を得た。混合する際の生地(B)の品温は15℃であった。そして生地(C)を180℃のオーブンにて20分焼成し、冷却後に実施例1に基づく気泡含有菓子生地を得た。
この混合後の生地(C)は、生地安定性が良好で、絞ることやシート状に伸ばすことができる成型できる状態にあり、焼成時のダレもなかった。また冷却後の気泡含有菓子生地は、適度な可塑性があり、フィリングをサンドしたり、ロールケーキにしたりできる保形性を有していた。食感はスフレの様なふんわり感としっとり感があり、口溶けも非常に良く、風味は素直なミルク風味であった。口溶けが非常に良いのは焼成前の混合生地(C)中に占める薄力粉の配合量が5重量%(澱粉量として3.8重量%)であって少ないためであった。これらの結果を表1にまとめた。
【0026】
実施例2
表1の配合に従い、脱脂粉乳(雪印乳業株式会社製 水分3.8重量%、蛋白質分34.0重量%、油脂分1重量%)13部に生クリーム(よつ葉乳業株式会社製 水分49.5重量%、蛋白質分2.0重量%、油脂分45.0重量%)5部と乳蛋白(サンラクトN5 太陽化学株式会社製 水分7.4重量%、蛋白質分78.0重量%、油脂分3.9重量%)2部と水80部を混合、ホモミキサーで攪拌しながら加熱、70℃で30分予備乳化し、次いでホモゲナイザーで100Kg/cm2の圧力下に均質化した後、20℃まで急冷して水中油型乳化物を調製した。この様に調製した水中油型乳化物100部に対して乳酸菌バルクスターター1部(ラクトコッカス・ラクティスssp.クレモリス菌とラクトコッカス・ラクティスssp.ラクティス菌の混合菌)を添加し、20℃で発酵を行い、pH5.8となった時点で5℃まで急冷、発酵停止させた。この発酵物を80℃にて殺菌処理を行い5℃まで冷却して実施例2で使用する、油脂分2.5重量%、蛋白質分6.1重量%、水分83.1重量%の乳化物(A)を得た。
この乳化物(A)を評価したところ、実施例1で使用した乳化物(A)よりはややあっさり傾向であるが、良好な乳味を有しており、粘度は5℃において500cPでやや粘性低めの塑性状態であった。
さらに表1の配合に従い、実施例1と同様の配合、方法で混合後の生地(C)と、それを焼成、冷却し実施例2に基づく気泡含有菓子生地を得た。
この混合後の生地(C)は、生地安定性が良好で、絞ることやシート状に伸ばすことができる成型できる状態にあり、焼成時のダレもなかった。また冷却後の気泡含有菓子生地は、適度な可塑性があり、フィリングをサンドしたり、ロールケーキに加工可能な保形性を有していた。食感はやや実施例1よりはしっとり感にかけるものの、スフレの様なふんわり感があり、口溶けも良く、風味は素直なミルク風味であった。口溶けが良いのは焼成前の混合生地(C)中に占める薄力粉の配合量が5重量%(澱粉量として3.8重量%)であって少ないためであった。これらの結果を表1にまとめた。
【0027】
実施例3
表1の配合に従い、脱脂粉乳(雪印乳業株式会社製 水分3.8重量%、蛋白質分34.0重量%、油脂分1重量%)5部に生クリーム(よつ葉乳業株式会社製 水分49.5重量%、蛋白質分2.0重量%、油脂分45.0重量%)20部と精製パーム油(不二製油株式会社製)30部と水45部を混合、ホモミキサーで攪拌しながら加熱、70℃で30分予備乳化し、次いでホモゲナイザーで100Kg/cm2の圧力下に均質化した後、20℃まで急冷して水中油型乳化物を調製した。この様に調製した水中油型乳化物100部に対して乳酸菌バルクスターター1部(ラクトコッカス・ラクティスssp.クレモリス菌とラクトコッカス・ラクティスssp.ラクティス菌の混合菌)を添加し、20℃で発酵を行い、pH5.8となった時点で5℃まで急冷、発酵停止させた。この発酵物を80℃にて殺菌処理を行い5℃まで冷却して、実施例3で使用する、油脂分39.1重量%、蛋白質分2.1重量%、水分55.1重量%の乳化物(A)を得た。
この乳化物(A)を評価したところ、非常に濃厚な乳味を有しており、粘度は15℃において10000cPでやや固めの塑性状態であった。
さらに表1の配合に従い、実施例1と同様の配合、方法で混合後の生地(C)と、それを焼成、冷却し実施例3に基づく気泡含有菓子生地を得た。
この混合後の生地(C)は、生地安定性が非常に良好で、絞ることやシート状に伸ばすことができる成型できる状態にあった。焼成時にややダレる傾向にあったが、冷却後の気泡含有菓子生地は、適度な可塑性があり、フィリングをサンドしたり、ロールケーキに加工可能な保形性を有していた。食感はスフレの様なふんわり感としっとり感があり、口溶けも非常に良く、風味は素直なミルク風味であった。口溶けが非常に良いのは焼成前の混合生地(C)中に占める薄力粉の配合量が5重量%(澱粉量として3.8重量%)であって少ないためであった。これらの結果を表1にまとめた。
【0028】
実施例4
表1の配合に従い、脱脂粉乳(雪印乳業株式会社製 水分3.8重量%、蛋白質分34.0重量%、油脂分1重量%)20部に精製パーム油(不二製油株式会社製)5部と乳蛋白(サンラクトN5 太陽化学株式会社製 水分7.4重量%、蛋白質分78.0重量%、油脂分3.9重量%)6部と水69部を混合、ホモミキサーで攪拌しながら加熱、70℃で30分予備乳化し、次いでホモゲナイザーで100Kg/cm2の圧力下に均質化した後、20℃まで急冷して水中油型乳化物を調製した。この様に調製した水中油型乳化物100部に対して乳酸菌バルクスターター1部(ラクトコッカス・ラクティスssp.クレモリス菌とラクトコッカス・ラクティスssp.ラクティス菌の混合菌)を添加し、20℃で発酵を行い、pH5.8となった時点で5℃まで急冷、発酵停止させた。この発酵物を80℃にて殺菌処理を行い5℃まで冷却して、実施例4で使用する、油脂分5.4重量%、蛋白質分11.5重量%、水分70.2重量%の乳化物(A)を得た。
この乳化物(A)を評価したところ、良好な乳味と強いコク味を有しており、粘度は5℃において30000cPで粘性高めの塑性状態であった。
さらに表1の配合に従い、実施例1と同様の配合、方法で混合後の生地(C)と、それを焼成、冷却し実施例4に基づく気泡含有菓子生地を得た。
この混合後の生地(C)は、生地安定性が良好で、絞ることやシート状に伸ばすことができる成型できる状態にあり、焼成時のダレもなかった。また冷却後の気泡含有菓子生地は、適度な可塑性があり、フィリングをサンドしたり、ロールケーキに加工可能な保形性を有していた。食感はやや実施例1よりはしっとり感にかけるものの、スフレの様なふんわり感があり、口溶けも良く、風味は素直でコクのあるミルク風味であった。口溶けが良いのは焼成前の混合生地(C)中に占める薄力粉の配合量が5重量%(澱粉量として3.8重量%)であって少ないためであった。これらの結果を表1にまとめた。
【0029】
実施例1〜実施例4の配合と結果を表1にまとめた。
【表1】

【0030】
実施例5
クリームチーズ(油脂分33.5重量%、蛋白質分9.0重量%、水分55.5重量%:キリ社製)を実施例5で使用する乳化物(A)とした。クリームチーズは30℃において、粘度は50000cPで粘性が高め塑性状態であった。
表2の配合に従い、実施例1と同様の方法で混合後の生地(C)と、それを焼成、冷却し実施例5に基づく気泡含有菓子生地を得た。混合する際の生地(B)の品温は20℃であった。
この混合後の生地(C)は、生地安定性が良好で、絞ることやシート状に伸ばすことができる成型できる状態にあった。焼成時にややダレが見られたが、冷却後の気泡含有菓子生地は、適度な可塑性があり、フィリングをサンドしたり、ロールケーキに加工可能な保形性を有していた。食感はスフレの様なふんわり感としっとり感があり、口溶けも良く、風味はコクのあるチーズ風味であった。口溶けが良いのは焼成前の混合生地(C)中に占める薄力粉の配合量が6重量%(澱粉量として4.6重量%)であって少ないためであった。これらの結果を表2にまとめた。
【0031】
実施例6
マスカルポーネチーズ(油脂分41.5重量%、蛋白質分4.8重量%、水分48.9重量%:ガルバニ社製)を実施例6で使用する乳化物(A)とした。マスカルポーネチーズは20℃において、粘度は25000cPで適度な塑性状態であった。
表2の配合に従い、実施例1と同様の方法で混合後の生地(C)と、それを焼成、冷却し実施例6に基づく気泡含有菓子生地を得た。混合する際の生地(B)の品温は17℃であった。
この混合後の生地(C)は、生地安定性が良好で、絞ることやシート状に伸ばすことができる成型できる状態にあった。焼成時にややダレが見られたが、冷却後の気泡含有菓子生地は、適度な可塑性があり、フィリングをサンドしたり、ロールケーキに加工可能な保形性を有していた。食感はスフレの様なふんわり感としっとり感があり、口溶けも良く、風味はまろやかな酸味のチーズ風味であった。口溶けが良いのは焼成前の混合生地(C)中に占める薄力粉の配合量が6重量%(澱粉量として4.6重量%)であって少ないためであった。これらの結果を表2にまとめた。
【0032】
実施例7
カッテージチーズ(油脂分4.5重量%、蛋白質分13.3重量%、水分79.0重量%:メイトー株式会社製)を実施例7で使用する乳化物(A)とした。カッテージチーズは30℃において、粘度は30000cPでやや固めの塑性状態であった。
表2の配合に従い、実施例1と同様の方法で混合後の生地(C)と、それを焼成、冷却し実施例7に基づく気泡含有菓子生地を得た。混合する際の生地(B)の品温は20℃であった。
この混合後の生地(C)は、生地安定性が非常に良好で、絞ることやシート状に伸ばすことができる成型できる状態にあり、焼成時のダレも全く見られなかった。また、冷却後の気泡含有菓子生地は、適度な可塑性があり、フィリングをサンドしたり、ロールケーキに加工可能な保形性を有していた。ややしっかりした食感であったが、スフレの様なふんわり感としっとり感があり、口溶けも良く、風味は非常にコクのあるチーズ風味であった。口溶けが良いのは焼成前の混合生地(C)中に占める薄力粉の配合量が6重量%(澱粉量として4.6重量%)であって少ないためであった。これらの結果を表2にまとめた。
【0033】
実施例8
リコッタチーズ(油脂11.0重量%、蛋白質分8.0重量%、水分77.2重量%:ガルバニ社製)を実施例8で使用する乳化物(A)とした。リコッタチーズは30℃において、粘度は10000cPでやや固めのの塑性状態であった。
表2の配合に従い、実施例1と同様の方法で混合後の生地(C)と、それを焼成、冷却し実施例8に基づく気泡含有菓子生地を得た。混合する際の生地(B)の品温は20℃であった。
この混合後の生地(C)は、生地安定性が非常に良好で、絞ることやシート状に伸ばすことができる成型できる状態にあり、焼成時のダレも全く見られなかった。また、冷却後の気泡含有菓子生地は、適度な可塑性があり、フィリングをサンドしたり、ロールケーキに加工可能な保形性を有していた。ややしっかりした食感であったが、スフレの様なふんわり感としっとり感があり、口溶けも良く、風味はやや酸味のあるチーズ風味であった。口溶けが良いのは焼成前の混合生地(C)中に占める薄力粉の配合量が6重量%(澱粉量として4.6重量%)であって少ないためであった。これらの結果を表2にまとめた。
【0034】
実施例9
サワークリーム(油脂分40.0重量%、蛋白質分2.0重量%、水分54.8重量%:中沢乳業株式会社製)を実施例9で使用する乳化物(A)とした。サワークリームは20℃において、粘度は15000cPで適度な塑性状態であった。
表2の配合に従い、実施例1と同様の方法で混合後の生地(C)と、それを焼成、冷却し実施例9に基づく気泡含有菓子生地を得た。混合する際の生地(B)の品温は16℃であった。
この混合後の生地(C)は、生地安定性はやや弱く、絞ることやシート状に伸ばすことができる成型できる状態にはあるが、やや流動性のある生地であった。焼成時にもややダレが見られたが、冷却後の気泡含有菓子生地は、適度な可塑性があり、フィリングをサンドしたり、ロールケーキに加工可能な保形性を有していた。食感はスフレの様なふんわり感としっとり感があり、口溶けも良く、風味はやや酸味が強めのあっさり傾向であった。口溶けが良いのは焼成前の混合生地(C)中に占める薄力粉の配合量が6重量%(澱粉量として4.6重量%)であって少ないためであった。これらの結果を表2にまとめた。
【0035】
実施例5〜実施例9の配合と結果を表2にまとめた。
【表2】

【0036】
実施例10
脱脂粉乳(雪印乳業株式会社製 水分3.8重量%、蛋白質分34.0重量%、油脂分1重量%)15部に生クリーム(よつ葉乳業株式会社製 水分49.5重量%、蛋白質分2.0重量%、油脂分45.0重量%)15部と乳蛋白(サンラクトN5 太陽化学株式会社製 水分7.4重量%、蛋白質分78.0重量%、油脂分3.9重量%)3部と水67部を混合したものに乳酸を添加し、pHを5.0に調整した後、ホモミキサーで攪拌しながら加熱、70℃で30分予備乳化し、次いでホモゲナイザーで100Kg/cm2の圧力下に均質化した後、20℃まで急冷して水中油型乳化物を調製した。この様に調製した水中油型乳化物100部に対して、pH5.8となった時点で5℃まで急冷して、実施例10で使用する、油脂分7.0重量%、蛋白質分7.7重量%、水分75.2重量%の乳化物(A)を得た。
この乳化物(A)を評価したところ、良好な乳味を有しており、物性は5℃においてやや粘性高めの塑性状態であった。
さらに、卵黄20部とグラニュー糖10部、薄力粉7部を混合したものに、上記乳化物(A)38部を加えて混合し、そこに卵白18部、グラニュー糖7部で作成したメレンゲを加えて、混合後の生地(C)を得た。混合する際の生地(B)の品温は14℃であった。
この混合後の生地(C)は、生地安定性が良好で、成型状態にあったため、天板に20gずつ丸く絞り、180℃のオーブンにて13分焼成し、焼成時のダレもなかった。これを冷却して、実施例10に基づく気泡含有菓子生地を得た。冷却後の気泡含有菓子生地は、適度な可塑性があり、フィリングをサンドすることができる保形性を有していたため、カスタードクリームをサンドしてブッセとした。食感はスフレの様なふんわり感としっとり感があり、口溶けも非常に良く、風味も良好であった。 口溶けが良いのは焼成前の混合生地(C)中に占める薄力粉の配合量が7重量%(澱粉量として5.3重量%)であって少ないためであった。
【0037】
比較例1(スポンジの調製)
比較例1として、共立て法によるスポンジを調製し、実施例1と同様に評価した。 表3の配合に従い、全卵150部とグラニュー糖90部を混合し、含気させたものに、薄力粉90部、溶解したバター30部を加えて、混合後、焼成、冷却しスポンジを得た。
この混合後の生地は、生地安定性が良好で、絞ることやシート状に伸ばすことができる成型状態にあり、焼成時のダレも全く見られなかった。また、冷却後のスポンジは、適度な可塑性があり、フィリングをサンドしたり、ロールケーキに加工可能な保形性を有していた。食感はしっかりしており、実施例1〜9と比較すると、ふんわり感はあるものの、しっとり感に欠け、やや口溶けも悪い傾向にある。風味は卵の風味がするものであった。焼成前の混合生地中に占める薄力粉の配合量が25重量%であった。これらの結果を表3にまとめた。
【0038】
比較例2(スポンジの調製)
比較例2として、別立て法によるスポンジを調製し、実施例1と同様に評価した。 表3の配合に従い、卵黄60部とグラニュー糖30部を混合し、含気させたものに、卵白90部とグラニュー糖60部を混合して含気させたものを合わせる。合わせたものに薄力粉90部を加えて、混合後、焼成、冷却しスポンジを得た。
この混合後の生地は、生地安定性が非常に良好で、絞ることやシート状に伸ばすことができる成型状態にあり、焼成時のダレも全く見られなかった。また、冷却後のスポンジは、可塑性があり、フィリングをサンドしたり、ロールケーキに加工可能な保形性を有していた。食感はやや固めでしっかりしており、実施例1〜9と比較すると、しっとり感に欠け、やや口溶けも悪い傾向にある。風味は卵の風味がするものであった。焼成前の混合生地中に占める薄力粉の配合量が27重量%であった。これらの結果を表3にまとめた。
【0039】
比較例3(スフレの調製)
比較例3として、スフレを調製し、実施例1と同様に評価した。表3の配合に従い、卵黄80部とグラニュー糖30部を混合し、温めた牛乳を加え、さらに加熱してカスタードクリーム状になったらバターを加える。そこに卵白150部と残りのグラニュー糖40部を含気させたメレンゲを加えて、スフレ型に入れ、焼成し、スフレを得た。
この混合後の生地は、生地安定性が弱かった。焼成直後はボリュームがあり、ふんわりとした食感であったが、経時でボリュームが落ち、ふんわり感は損なわれた。冷却後の気泡含有菓子生地は、気泡がつぶれ、可塑性も保形性も有していない、商品価値のないものであった。焼成前の混合生地中に占める薄力粉の配合量が7.7重量%であった。これらの結果を表3にまとめた。
【0040】
比較例1〜比較例3の配合と結果を表3にまとめた。
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、気泡含有菓子生地の製造法に関し、更に詳しくはスポンジに類する保形性を有しているにもかかわらず、スフレ様に食感がふんわりとしてしっとりしており、口溶けに優れた新規な気泡含有菓子生地の製造法に関するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂類及び蛋白類を含む塑性状態の乳化物(A)に、卵類及び澱粉性原料を加配してなる生地(B)とメレンゲ生地を混合し、混合後の生地(C)を焼成することを特徴とする気泡含有菓子生地の製造法。
【請求項2】
生地(B)とメレンゲ生地を混合する際の生地(B)の温度が5〜40℃である、請求項1記載の気泡含有菓子生地の製造法。
【請求項3】
混合後の生地(C)が成型できる状態である、請求項1又は請求項2記載の気泡含有菓子生地の製造法。
【請求項4】
生地(B)とメレンゲ生地の混合が重量比で80:20〜30:70である、請求項1〜請求項3何れか1項に記載の気泡含有菓子生地の製造法。
【請求項5】
乳化物(A)が5〜35℃の範囲において、塑性状態である、請求項1記載の気泡含有菓子生地の製造法。
【請求項6】
乳化物(A)が、油脂分0.1〜50重量%、蛋白質分1〜30重量%である、請求項5記載の気泡含有菓子生地の製造法。
【請求項7】
乳化物(A)が、pH 4.0〜6.5に調製されたものである、請求項5又は請求項6記載の気泡含有菓子生地の製造法。
【請求項8】
請求項1〜請求項7何れか1項に記載の気泡含有菓子生地を使用してなる菓子。

【公開番号】特開2008−54583(P2008−54583A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−235506(P2006−235506)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000236768)不二製油株式会社 (386)
【Fターム(参考)】