説明

気泡塔及び気泡塔の運転方法

【課題】比較的簡単な装置により、気泡塔内の液面付近における液の異常発泡を迅速かつ確実に検知することができるという優れた特徴を有する気泡塔及び該気泡塔の運転方を提供する。
【解決手段】気泡塔内の液面の上部の気相部分の位置に発泡検知のための差圧式液面計を有する気泡塔。差圧式液面計の出力を連続的に測定し、測定された指示計の変化により、気泡塔内の液面付近における液の異常発泡の発生を検知する。たとえば気液反応装置、排水・排ガス処理装置、発酵槽・培養槽などのバイオリアクター等に適用できる。発泡検知のための差圧式液面計の設計比重ρ1が気液分離後の液比重ρ0よりも小さいことが適切に発泡を検知する観点から好ましく、さらに差圧式液面計の設計比重ρ1と気液分離後の液比重ρ0が下記式(1)を満足することが好ましい。
0.01×ρ0≦ρ1≦0.7×ρ0 (1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡塔及び気泡塔の運転方法に関するものである。更に詳しくは、本発明は、比較的簡単な装置により、気泡塔内の液面付近における液の異常発泡を迅速かつ確実に検知することができるという優れた特徴を有する気泡塔及び該気泡塔の運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
気泡塔とは、液を保持した塔型容器の液中に気体を吹き込んで液中に気泡を形成させ、気液接触させる装置である(たとえば、非特許文献1参照。)。そして、塔型容器の底部付近から液中に気体を吹き込み、塔の中間付近または頂上付近に液面を有して気液分離を行なうことが多い。
【0003】
このような気泡塔を用いた場合、異常な発泡が発生して液面が上昇し、該気泡とともに内液が塔頂から塔外に散逸し、安定で正常な運転が継続できないとことがある。例えば、特許文献2には、工業的にクメンを酸化するための気泡塔反応器において、気泡塔塔頂の液面付近での発泡が大きくなり条件によっては運転不能となることが記されている。したがって、液面付近において異常発泡による液面変動の発生を迅速かつ確実に検知し、液面を低下させる、気体の吹き込み量を減少させる、消泡剤を添加する等の処置をとる必要がある。
【0004】
【非特許文献1】「化学工学便覧(改定六版)」発行所 丸善株式会社。編者 財団法人 化学工学会。612ページ 図11、図19
【特許文献1】特開2003−231674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる状況において、本発明が解決しようとする課題は、比較的簡単な装置により、気泡塔内の液面付近における液の異常発泡を迅速かつ確実に検知することができるという優れた特徴を有する気泡塔及び該気泡塔の運転方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明のうち第一の発明は、気泡塔であって、気泡塔内の液面の上部の気相部分の位置に発泡検知のための差圧式液面計を有する気泡塔に係るものである。
また、本発明のうち第二の発明は、第一の発明の気泡塔の運転方法であって、差圧式液面計の出力を連続的に測定し、測定された指示計の変化により、気泡塔内の液面付近における液の異常発泡の発生を検知する気泡塔の運転方法に係るものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、比較的簡単な装置により、気泡塔内の液面付近における液の異常発泡を迅速かつ確実に検知することができるという優れた特徴を有する気泡塔及び該気泡塔の運転方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の気泡塔とは、液を保持した塔型容器の底部付近から液中に気体を吹き込んで液中に気泡を形成させ、気液接触させる装置であり、詳細な構造に限定されない。
【0009】
本発明の気泡塔は、気泡塔内の液面の上部の気相部分の位置に発泡検知のための差圧式液面計を有するものである。なお、本発明において差圧式液面計の測定対象は液面と記載した場合でも気液混相においては気泡面高さの意味である。
【0010】
差圧式液面計とは、測定範囲となる上下2点の差圧を測定し、設計に用いた流体の比重から換算された液高さを液面高さとして測定する液面計である。
【0011】
所定の液面限界高さに1点の圧力計等を設置し、オンオフスイッチとして発泡検知する方法では、気泡塔運転圧力の変更や飛沫、液垂れによる受圧部への影響によっても異常発泡を誤検知する可能性があるため好ましくなく、このような差圧式液面計を用いるのである。
【0012】
本発明においては、発泡検知のための差圧式液面計の設計比重ρ1が気液分離後の液比重ρ0よりも小さいことが適切に発泡を検知する観点から好ましく、さらに差圧式液面計の設計比重ρ1と気液分離後の液比重ρ0が下記式(1)を満足することが好ましい。
【0013】
0.01×ρ0≦ρ1≦0.7×ρ0 (1)
ρ1が過小であると差圧測定部への飛沫や液垂れによる影響や差圧を伝達するための導圧配管や封液管(一般にシリコン等を封入したキャピラリー管)の温度変化等による指示誤差の影響を大きく受け、指示値が不要に大きく変化したり、真の異常発泡を正しく検知できない場合があり、一方ρ1が過大であると気泡塔のガス負荷によっては、測定流体の比重が設計比重よりも大きくなり、液面高さを過小に評価して異常発泡を正しく検知できない場合がある。
【0014】
なお、差圧式液面計の設計比重ρ1とは、測定された2点間の差圧を液面高さに換算する際に用いられる測定流体の比重のことである。
【0015】
本発明の気泡塔の運転方法としては、本発明の差圧式液面計の出力を連続的に測定し、測定された指示計の変化により、気泡塔内の液面付近における液の異常発泡の発生を検知する方法をあげることができる。すなわち、通常の管理液面であれば、本発明の発泡検知のための差圧式液面計の指示はゼロまたは測定範囲となる上下2点間の設備上の特性に起因する一定の値を安定的に示しているが、異常発泡が生じると顕著な指示値の上昇が見られ、気泡塔内の液面付近における液の異常発泡の発生が検知されるのである。
【0016】
本発明の発泡検知のための差圧式液面計は、通常の管理液面よりも高い位置、すなわち定常状態では気相部を測定するように設置することが必要である。通常の管理液面とは、通常運転中に定常的に測定液が存在する液面高さのことである。
【0017】
通常の管理液面を一定に保つ方法としては、発泡検知のための差圧式液面計とは別の液面計を設置して、気泡塔に供給あるいは抜き出される液体や気体の量を制御したり、オーバーフローパイプを設置する方法を例示することができる。
【0018】
本発明の気泡塔は、たとえば気液反応装置、排水・排ガス処理装置、発酵槽・培養槽などのバイオリアクター等に適用できる。
【0019】
本発明の気泡塔を適用する具体例として、アルキルベンゼンを空気酸化することによりアルキルベンゼンハイドロパーオキサイドに変換するための気液反応装置をあげることができる。より具体的には、アルキルベンゼンがクメンであり、アルキルベンゼンハイドロパーオキサイドがクメンハイドロパーオキサイドである例をあげることができる。
【0020】
本発明の気泡塔は、差圧式液面計の出力を連続的に測定し、測定された指示計の変化により、気泡塔内の液面付近における液の異常発泡の発生を検知する運転方法を用いることができる。
【実施例】
【0021】
次に本発明を実施例により説明する。
実施例1
図1は、クメンを空気酸化してクメンハイドロパーオキサイドに変換するための気泡塔である。塔型容器(1)の底部付近から液中に気体(2)を吹き込んで液中に気泡を形成させ、気液接触させる装置である。気泡塔内の液面(4)の上部の気相部分(5)の位置に発泡検知のための差圧式液面計(6)が設けられている。また差圧式液面計(7)は液面の位置を検知するために、運転中の液面(8)を挟んで設けられたものである。差圧式液面計は、隔膜(ダイアフラム)で受圧する形式のものを用いた。
差圧式液面計の設計比重ρ1は160kg/m3であり、気液分離後の液比重ρ0は約800kg/m3であった。
本気泡塔を用いた場合、差圧式液面計の出力を連続的に測定し、測定された指示計の変化により、気泡塔内の液面付近における液の異常発泡の発生を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1の気泡塔の概略を示す図である。
【符号の説明】
【0023】
1 塔型容器
2 液中に吹き込まれる気体
3 塔型容器に供給される液体
4 液面
5 気相
6 気相部分に設けられた差圧式液面計
7 通常の液面付近に設けられた差圧式液面計
8 液相
9 気体出口
10 液体出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気泡塔であって、気泡塔内の液面の上部の気相部分の位置に発泡検知のための差圧式液面計を有する気泡塔。
【請求項2】
発泡検知のための差圧式液面計の設計比重ρ1と気液分離後の液比重ρ0が下記式(1)を満足する請求項1記載の気泡塔。
0.01×ρ0≦ρ1≦0.7×ρ0 (1)
【請求項3】
気泡塔が、アルキルベンゼンを空気酸化することによりアルキルベンゼンハイドロパーオキサイドに変換するためのものである請求項1記載の気泡塔。
【請求項4】
アルキルベンゼンがクメンであり、アルキルベンゼンハイドロパーオキサイドがクメンハイドロパーオキサイドである請求項1記載の気泡塔。
【請求項5】
請求項1記載の気泡塔の運転方法であって、請求項1記載の差圧式液面計の出力を連続的に測定し、測定された指示計の変化により、気泡塔内の液面付近における液の異常発泡の発生を検知する気泡塔の運転方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−100572(P2010−100572A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274078(P2008−274078)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】