説明

気泡質のポリウレタンエラストマー、その製造方法及びその使用

本発明は、気泡質のアミン架橋ポリウレタンエラストマー、その製造方法、及び靴部品及び靴底を製造するためのその使用、を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡質のアミン架橋ポリウレタンエラストマー、その製造方法、及び靴部品及び靴底を製造するためのその使用、を提供する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン(PUR)発泡材料を製造するためには、ポリイソシアネート又はポリイソシアネートプレポリマー、ポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオール、連鎖延長剤、発泡剤及び他の添加剤が用いられる。従来の連鎖延長剤は、グリコール、アミノアルコール又はジアミン型のものである。EP-A 1 182 219は、靴底として使用するためのPUR成形品を開示する。この場合には、芳香族ジアミンを連鎖延長剤として使用して、固体成形品を得ている。これらの成形品の密度は、950〜1200 kg/m3であって非常に高い。例えば靴底などのある用途にとって、良好なゴム状弾性並びに気泡質構造(即ち、低嵩密度)を有する成形部品を有することは有利である。連鎖延長剤としてジアミンを用い、発泡剤として水を用いてそのような気泡質エラスマーを製造する場合、発泡と架橋の反応の間のバランスは、驚くほど悪い。水を存在させると、事実上固体の反応生成物が得られる。水による発泡反応は、CO2の生成を伴い、連鎖延長剤としてのアミン化合物の存在下で、女房役のみを演じることは明らかである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、本発明の目的は、気泡質であるが、またアミン架橋されたポリウレタンエラストマー、並びにその製造方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
驚くべきことに、1分子あたり少なくとも2個の第一級アミン基を有する芳香族アミン、第四級アンモニウム塩、及び任意に分子量が≦400のジオールを連鎖延長剤として使用した場合、水及び/又は物理発泡剤による発泡反応プロセスが起こることが判明した。例えば靴底として使用し得る気泡質エラストマーは、このようにして製造することが可能である。
【0005】
本発明は、
A)ポリイソシアネート、ポリイソシアネートプレポリマー及び変性ポリイソシアネートを含んでなる群からの一種以上の化合物、
B)ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールを含んでなる群からの一種以上のポリオール、及び
C)連鎖延長剤、
を、
D)水及び/又は物理発泡剤、
E)触媒、及び任意に
F)更なる補助物質及び/又は添加剤、
の存在下で反応させることによって得ることができ、
(C1)1分子あたり少なくとも2個の第一級アミン基を有する芳香族アミン、
(C2)第四級アンモニウム塩、及び任意に、
(C3)分子量が≦400 g/mol、好ましくは60〜400 g/mol、特に好ましくは60〜150 g/molの短鎖ジオール、
を連鎖延長剤C)として使用することを特徴とする気泡質のアミン架橋ポリウレタンエラストマーを提供する。
【0006】
少なくとも2個の第一級アミン基を有する特に好ましい芳香族アミンC1)は、例えば、1,3,5-トリエチル-2,4-ジアミノベンゼン、1-メチル-3,5-ジエチル-2,6-ジアミノベンゼン、1-メチル-3,5-ジエチル-2,4-ジアミノベンゼン、3,5,3',5'-テトライソプロピル-4,4'-ジアミノ-ジフェニル-メタン及び2,4-ジアミノメシチレンである。
【0007】
第四級アンモニウム塩C2)は、テトラ-アルキル-アリール-アンモニウム構造を有するカチオン、及び例えばクロリド、フルオリド、ブロミド、スルフェート、モノアルキルスルフェート、アリールスルフェート、ホスフェート、ジアルキルホスフェート、モノアルキルホスフェート、スルフォネート及びホスホネートなどのアニオン、例えば:トリメチルベンジルアンモニウムメチルスルフェート、トリメチルベンジルアンモニウムクロリド、トリメチルオクチルアンモニウムエチルスルフェート、テトラブチルアンモニウムクロリド、トリエチルベンジルアンモニウムジエチルホスフェート、トリメチルドデシルアンモニウムエチルスルフェート、ジメチルエチルドデシルアンモニウムエチルスルフェート、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、メチルトリオクチルアンモニウムクロリド及びテトラブチルアンモニウムジエチルホスフェートから、好適に組み立てられる。
【0008】
連鎖延長剤C1)は、成分B)、C)、D)及びE)の合計100重量部に対して、好ましくは1〜15重量部、特に好ましくは2〜12重量部の量で用いられる。
第四級アンモニウム塩C2)は、成分B)、C)、D)及びE)の合計100重量部に対して、好ましくは0.25〜12重量部の量で、特に好ましくは0.5〜8重量部の量で用いられる。
水は、成分B)、C)、D)及びE)の合計100重量部に対して、好ましくは0.01〜0.8重量部、特に好ましくは0.1〜0.6重量部の量で、成分D)として用いられる。
【0009】
気泡質のポリウレタンエラストマーは、250〜800 kg/m3の連続気泡嵩密度(Freischaum-Rohdichte)を有し、嵩密度が300〜900 kg/m3のフォーム成形部品を与えるように緻密化してよい。PUエラストマーの硬度は、45〜70(ショアーA型)であることが好ましい。
【0010】
任意の物理発泡剤又は発泡剤混合物を発泡剤として使用し得、例えば、炭化水素(例えば、ブタン、イソ-ブタン、n-ペンタン、イソ-ペンタン、シクロペンタン、n-ヘキサン、イソ-ヘキサン、シクロヘキサンなど)、クロロフルオロカーボン(例えば、Freon R 141bなど)及びフルオロカーボン(例えば、134a、R365mfc及びR227eaなど)並びにこれらの混合物をベースとする発泡剤などが挙げられる。高分子マイクロカプセル(発泡ガス、例えばイソ-ブタンで満たされた発泡性プラスチック中空球)中に、発泡剤を封入してよい。
【0011】
ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及びこれらの混合物は、成分B)として用いられる。ポリエーテルポリオールは、好適には少なくとも80%の第一級OH基を含有し、好適にはOH価が18〜112である。
ポリエステルポリオールは、好適にはOH価が28〜112である。
【0012】
液化MDI生成物(ジイソシアナトジフェニルメタン = MDI)をベースとするポリイソシアネート又はポリイソシアネートプレポリマーは、成分A)として好適である。
【0013】
グリコール架橋ポリウレタンエラストマーと比較する場合、本発明による気泡質のアミン架橋ポリウレタンエラストマーは、広範な動作温度範囲にわたって格別の機械的性質を有する。
【0014】
本発明はまた、
A)ポリイソシアネート、ポリイソシアネートプレポリマー及び変性ポリイソシアネートを含んでなる群からの一種以上の化合物、
B)ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールを含んでなる群からの一種以上の化合物、及び
C)連鎖延長剤、
を、
D)水及び/又は物理発泡剤、
E)触媒、及び任意に
F)更なる補助物質及び/又は添加剤、
の存在下で反応させることを含む、本発明による気泡質のアミン架橋ポリウレタンエラストマーの製造方法であって、
成分C)は、1分子あたり少なくとも2個の第一級アミン基を有する芳香族アミン(C1)、第四級アンモニウム塩(C2)及び任意に、分子量が≦400 g/mol、好ましくは60〜400 g/mol、特に好ましくは60〜150 g/molの短鎖ジオール(C3)を含んでなることを特徴とする製造方法を提供する。
【0015】
気泡質のポリウレタンエラストマー(PURフォーム)は、一般的に既知の方法、例えば、マニュアル処理により、低圧又は、好ましくは高圧の設備を用いて、又は開放又は、好ましくは密閉モールド、例えば金型内でのRIM法において、調製し得る。従って、例えば靴底を、単層又は多層様式で製造してよく、次いで、直接靴底法によって対応する靴を製造し得る。
【0016】
非常に低いガラス転移温度に起因する非常に良好な低温特性と、約160℃までの耐熱性を有する気泡質エラスマーは、例えば靴底用途において、長期にわたり使用し得る。靴部品、とりわけ靴底は、2成分の低圧又は高圧ユニット中で好適に製造される。
【実施例1】
【0017】
以下の実施例において、本発明をより詳細に記載する。

出発原料:

B1:OH価が28で90%の第一級OH基を有し、80%プロピレンオキシド(PO)と20%エチレンオキシド(EO)の添加により得られる、始動材としてのプロピレングリコールをベースとするポリエーテルポリオール。
B2:OH価が28で90%の第一級OH基を有し、83%POと17%EOの添加により得られる、始動材としてのグリセリンをベースとするポリエーテルポリオール。
B3:OH価が56である、アジピン酸、エチレングリコール、1,4-ブタンジオールをベースとするポリエステルポリオール。
【0018】
A1:部分カルボジイミド化によって調製される4,4'-MDI66部及び変性MDI5部(NCO含量は30重量%)と、プロピレングリコール及びプロピレンオキシドから作成されるポリオール20部(OH価は56)、トリメチロールプロパン及びプロピレンオキシドから作成されるポリオール3部(OH価は56)及びトリプロピレングリコール6部のポリオール混合物を、反応させることにより調製されるポリイソシアネート1)(ここで、ポリイソシアネート1)のNCO含量19.8%が得られる)。
A2:部分カルボジイミド化によって調製される4,4'-MDI55部及び変性MDI6部(NCO含量は30重量%)と、ポリエステルポリオール39部(OH価は56)を、反応させることにより調製されるポリイソシアネート2)(ここで、ポリイソシアネート2)のNCO含量19.0%が得られる)。
【0019】
芳香族アミンC1):2,4-ジアミノ-3,5-ジエチルトルエン80重量%及び2,6-ジアミノ-3,5-ジエチルトルエン20重量%の混合物。
第四級アンモニウム塩C2):ジメチルエチルドデシルアンモニウムエチルスルフェート
第四級アンモニウム塩C2'):テトラブチルアンモニウムジエチルホスフェート
DABCO:1,4-ジアザビシクロ-[2.2.2]-オクタン
DBTDL:ジブチル錫ジラウレート
安定剤:DC 193(Air Productsから)
【0020】
[処理例]
以下の配合物(表1)をマニュアル処理によって反応させた:
【0021】
【表1】

【0022】
(C) = 比較例; * = 本発明による実施例
全てのデータは重量部として記載されている。
【0023】
【表2】

【0024】
実施例1、4、6、8及び10から、水及び水/発泡剤混合物は、これらの配合物における嵩密度に対して少しだけ寄与しか与えないことがわかる。本発明に従う芳香族アミン及び第四級アンモニウム塩の組合せを用いる場合のみ、CO2の生成とフォームが得られ、そのことは嵩密度の低下から明らかである。従って、発泡剤収率における大きな改善が得られる。
【0025】
この効果は、実施例5を実施例4と比較すると特に明白である。4と比較する場合、5における嵩密度は、ほぼ2のファクターによって低下している。物理発泡剤を用いる場合には、実施例8よりも実施例9において実質的により良い発泡剤収率が得られることも、驚くべき事実である。実施例8と比較する場合、実施例9でもまた、ほぼ2のファクターによって嵩密度は低下している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)ポリイソシアネート、ポリイソシアネートプレポリマー及び変性ポリイソシアネートを含んでなる群からの一種以上の化合物、
B)ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールを含んでなる群からの一種以上のポリオール、
C)連鎖延長剤、
を、
D)水及び/又は物理発泡剤、
E)触媒、及び任意に
F)更なる補助物質及び/又は添加剤、
の存在下で反応させることによって得ることができ、
成分C)は、(C1)1分子あたり少なくとも2個の第一級アミン基を有する芳香族アミン、(C2)第四級アンモニウム塩及び任意に、(C3)分子量が≦400 g/molの短鎖ジオール、の混合物である、
気泡質のアミン架橋ポリウレタンエラストマー。
【請求項2】
A)ポリイソシアネート、ポリイソシアネートプレポリマー及び変性ポリイソシアネートを含んでなる群からの一種以上の化合物、
を、
B)ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールを含んでなる群からの一種以上の化合物、及び
C)連鎖延長剤、
と、
D)水及び/又は物理発泡剤、
E)触媒、及び任意に
F)更なる補助物質及び/又は添加剤、
の存在下で反応させることを含む、気泡質のアミン架橋ポリウレタンエラストマーの製造方法であって、
成分C)は、1分子あたり少なくとも2個の第一級アミン基を有する芳香族アミン(C1)、第四級アンモニウム塩(C2)及び任意に、分子量が≦400の短鎖ジオール(C3)、の混合物を含んでなることを特徴とする製造方法。
【請求項3】
靴部品及び靴底を製造するための、請求項1に記載のエラストマー及び請求項2に記載の方法で製造されるエラストマーの使用。

【公表番号】特表2006−503132(P2006−503132A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−544057(P2004−544057)
【出願日】平成15年10月1日(2003.10.1)
【国際出願番号】PCT/EP2003/010896
【国際公開番号】WO2004/035648
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】