説明

気泡除去装置及び基板処理装置

【課題】気泡の発生を防止するとともに、仮に供給される塗布液に気泡が混入した場合でも、気泡が混入した状態の塗布液が排出されるのを防止することができる気泡除去装置及びこの気泡除去装置を備える基板処理装置を提供する。
【解決手段】基板上に塗布液を塗布する塗布部に塗布液タンクから供給された塗布液の気泡を除去する気泡除去装置であって、容器部21に、前記容器部の底面部44側とその反対側の上面部43側とに仕切る仕切り板25が傾斜させた状態で設けられ、この仕切り板の最下位置に位置する最下位置端部51には、仕切り板の厚さ方向に貫通する液流通孔25bの少なくとも一部が形成されており、この液流通孔を通じて、前記吐出口45aから吐出された塗布液を最下位置端部に対向する側壁45bに伝わせて落下させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液等の塗布液中に混入する気泡を除去する気泡除去装置及び、この気泡除去装置を備える基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等のフラットパネルディスプレイには、ガラス基板上にレジスト液が塗布されたもの(塗布基板と称す)が使用されている。この塗布基板は、レジスト液や薬液等の塗布液を均一に塗布する基板処理装置によって形成されている。この基板処理装置は、図7に示すように、塗布液の供給源である塗布液タンク104と、塗布液を吐出する塗布装置105とを備えており、塗布液タンク104から送液された塗布液が塗布装置105のポンプ105aに供給され、このポンプ105aを作動させることにより塗布装置105のノズルから基板に塗布液が吐出されることにより、基板上に均一な塗布膜が形成されるようになっている。
【0003】
通常、基板上に塗布膜を形成する場合、塗布液中に気泡が混入することを防止するために、気泡除去装置100が設けられている。一般的には、塗布液タンク104とポンプ105aとの間にバッファタンク等の気泡除去装置100が設けられ、塗布液タンク104から送液された塗布液が一時的にバッファタンクに貯留されることにより、塗布液に混入した気泡を除去できるようになっている。具体的には、図7に示すように、気泡除去装置100には、塗布液を貯留する容器部101と、送液された塗布液を容器部101に供給する液供給チューブ102と、塗布液をポンプ105a側に排出する液排出部103とを有しており、液排出部103が容器部101の底面に設けられることにより塗布液中の気泡wが除去できるようになっている。すなわち、液供給チューブ102から供給された塗布液中に気泡wが存在していても、容器部101に貯留された塗布液中の気泡wは、気泡wに作用する浮力によって底面と反対側の上面に浮上することにより、容器部101の底面付近の塗布液には気泡wが存在しなくなる。したがって、容器部101の底面に設けられた液排出部103から塗布液を排出することにより、気泡wのない塗布液をポンプ105a側に送ることができるようになっている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−304087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の気泡除去装置100では、塗布液中の気泡wを完全には取り除けないという問題があった。すなわち、図8に示すように、液供給チューブ102の先端部分が容器部101の底面に対向しており、さらに底面から一定距離離れた位置に存在しているため、液供給チューブ102から落下する塗布液が容器部101底面又は容器部101に溜まった塗布液表面を叩くことにより、塗布液が泡立ち、気泡wが発生する。すなわち、空の容器部101に塗布液を供給開始した直後等、特に容器部101における塗布液の残量が少ない場合には、図8(a)に示すように、発生した気泡wが容器部101底面にまで存在してしまうため、容器部101底面に設けられた液排出部103から気泡wが混入した塗布液が排出されてしまうという問題があった。
【0006】
一方、図8(b)に示すように、塗布液タンク104内の塗布液の残量が少なくなると、気泡除去装置100に送液される際に塗布液タンク104内の気体も同時に送られてしまうことにより、気泡除去装置100に送液される塗布液中に大量の気泡wが含まれる場合がある。このような場合、大量の気泡wが容器部101内に流れ込むため、気泡除去装置100の容器部101内に十分な塗布液がある場合でも、液供給チューブ102から供給される塗布液の勢いにより、塗布液中の気泡wもその流れに伴って容器部101底面付近にまで到達してしまう。その結果、容器部101底面に設けられた液排出部103から気泡wが混入した塗布液が排出されてしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、気泡の発生を防止するとともに、仮に供給される塗布液に気泡が混入した場合でも、気泡が混入した状態の塗布液が排出されるのを防止することができる気泡除去装置及びこの気泡除去装置を備える基板処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の気泡除去装置は、基板上に塗布液を塗布する塗布部に塗布液タンクから供給された塗布液の気泡を除去する気泡除去装置であって、この気泡除去装置は、塗布液を貯留する容器部と、塗布液タンクから送液された塗布液を容器部に供給する液供給部と、前記容器部の底面部に設けられ、容器部に貯留された塗布液を排出させる液排出部と、容器部の気体を排気する排気部と、を有しており、前記液供給部は、容器部の内部まで管状部材が延伸して設けられ、その先端には塗布液を吐出する吐出口を有しており、前記容器部には、前記吐出口から吐出される塗布液を受ける仕切り板が設けられ、この仕切り板は、前記容器部内で傾斜状に配置されて最下位置に位置する最下位置端部を有しており、この最下位置端部には、仕切り板の厚さ方向に貫通する液流通孔の少なくとも一部が形成されており、この液流通孔を通じて、仕切り板で受けた塗布液を最下位置端部に対向する相手壁に伝わせて落下させることを特徴としている。
【0009】
上記気泡除去装置によれば、液供給部の吐出口から吐出された塗布液を液流通孔を通じて相手壁に伝わせて落下させるため、気泡が発生するのを抑えることができる。すなわち、吐出口から塗布液が吐出されると、塗布液は傾斜させた仕切り板で受けられるとともに、仕切り板の下方向に向かって流れることにより最下位置端部に滞留する。そして、最下位置端部には厚さ方向に貫通する液流通孔の少なくとも一部が形成されているため、この液流通孔から塗布液が流れ出て、その塗布液が最下位置端部に対向する相手壁を伝って落下する。したがって、塗布液が相手壁を伝って落下することにより、特に容器部の塗布液の残量が少ない場合であっても、従来のように、吐出口から吐出された塗布液が容器部の底面部又は塗布液表面を叩くことにより気泡が発生するという問題を回避することができる。また、液供給部から大量の気泡が含まれる塗布液が供給された場合であっても、液排気部から気泡が混入した塗布液が排出されるのを抑えることができる。すなわち、大量の気泡が含まれる塗布液が吐出口から供給されると、塗布液が容器部の底面部に移動しようとする。しかし、容器部に設けられた仕切り板によりその流れが妨げられるため、塗布液中の気泡についても容器部の底面部側に移動するのを抑えることができる。仮に、塗布液が最下位置端部に流れるのに伴って気泡が最下位置端部に流れた場合であっても、仕切り板がない場合に比べて塗布液の流れが最下位置端部の滞留部分で遅くなるため、気泡はその滞留部分に至るまでに浮力により浮かび上がることにより液流通孔と反対側に移動する。したがって、液供給部から大量の気泡が供給されても気泡が仕切り板よりも容器部の底面側に移動するのを抑えることができるため、容器部に貯留される塗布液の量にかかわらず、気泡が底面に設けられた液排出部から排出される塗布液に混入するのを抑えることができる。
【0010】
また、前記液流通孔の具体的な様態としては、液流通孔は、前記最下位置端部と、この最下位置端部に対向する相手壁とによって形成されている構成とすることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、最下位置端部に到達した塗布液が相手壁に接触し、液流通孔を通過した塗布液がそのまま相手壁を伝って落下させやすくすることができる。
【0012】
また、前記液流通孔は、その開口領域が前記最下位置端部に対向する相手壁に沿って延びるように形成されている構成としてもよい。
【0013】
この構成によれば、液流通孔の開口領域が相手壁に沿って形成されているため、底面部側に相手壁を伝って落下させる塗布液量を増加させることができる。
【0014】
また、前記相手壁の具体的な様態としては、前記相手壁は、容器部の側壁、または、液供給部の管状部材の側壁であることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、相手壁を別部材で構成する必要がなく、気泡除去装置に必要な部材の側壁を利用して塗布液を落下させることができる。
【0016】
また、前記仕切り板の最上位置端部には、仕切り板の厚さ方向に貫通する気体通路孔が形成されている構成としてもよい。
【0017】
この構成によれば、容器部の底面部側に存在する気体を上面部側に移動させることにより、底面部側に存在する気体が塗布液中の気泡に変化するのを抑えることができる。すなわち、容器部に塗布液が供給されて貯留されていくと、当初より底面部側に存在する気体は、傾斜させて設けられた仕切り板の最上位位置の底面部側に滞留する。そして、さらに塗布液が貯留されていくことにより、最上位位置の底面部側に滞留する気体は、仕切り板の最上位位置に形成された気体通路孔を通じて上面部側に移動する。すなわち、当初より底面部側に存在する気体が塗布液中の気泡に変化する前に、気体通路孔を通じて気体を排気することにより、底面部側に存在する気体が塗布液中の気泡に変化するのを抑えることができる。
【0018】
上記課題を解決するために本発明の基板処理装置は、上記いずれかに記載の気泡除去装置と、塗布液タンクと、塗布液を基板に塗布する塗布装置とを備えることを特徴としている。
【0019】
上記基板処理装置によれば、上記気泡除去装置により、気泡が除去された塗布液が供給されることにより、塗布装置のポンプの応答性遅れが防止されるため、応答性遅れが要因となる塗布ムラの発生及び、気泡が直接吐出されることによるホール欠点の発生等を抑えることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の気泡除去装置及びこの気泡除去装置を備える基板処理装置によれば、気泡の発生を防止するとともに、仮に供給される塗布液に気泡が混入した場合でも、気泡が混入した状態の塗布液が排出されるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の基板処理装置を示す概略図である。
【図2】本発明の気泡除去装置のバッファタンクを示す概略図である。
【図3】仕切り板を示す図である。
【図4】バッファタンクに塗布液が供給される状態を示す図であり、(a)は塗布液を供給開始した直後の状態を示す図であり、(b)は仕切り板を越えない程度に塗布液が貯留された状態を示す図であり、(c)は仕切り板を越えた程度に塗布液が貯留された状態を示す図である。
【図5】他の実施形態におけるバッファタンクを示す概略図である。
【図6】他の実施形態における仕切り板を示す図である。
【図7】従来の基板処理装置を示す図である。
【図8】従来の基板処理装置を示す図であり、(a)は気泡除去装置に塗布液を供給開始した直後の状態を示す図であり、(b)は塗布液タンクに塗布液の残量が少量になった状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の気泡除去装置及び基板処理装置に係る実施の形態を図面を用いて説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態における基板処理装置を示す概略図であり、図2は、気泡除去装置のバッファタンクを示す図である。
【0024】
図1、図2に示すように、基板処理装置は、塗布液の供給源である塗布液タンク1と、塗布液に含まれる気泡を除去する気泡除去装置2と、基板30に塗布液を塗布する塗布装置3とを有している。そして、塗布液タンク1の塗布液が気泡除去装置2に送液されると、気泡除去装置2において、塗布液に気泡が混入するのを防止しつつ、塗布液に気泡が含まれる場合にはその気泡が除去される。そして、気泡のない塗布液が塗布装置3に供給され、基板30上に塗布液が塗布されることにより、基板30上に均一膜厚の塗布膜が形成されるようになっている。
【0025】
塗布液タンク1は、大量の塗布液を貯留させておくものであり、基板複数枚分の塗布液が貯留されている。この塗布液タンク1は、塗布液タンク本体11と、塗布液タンク本体内にガスを導入するためのガス導入部12と、塗布液を排出する塗布液排出部13とを有しており、この塗布液排出部13と気泡除去装置2とが配管により連結されている。したがって、ガス導入部12から大気等のガスが導入されると、塗布液タンク本体11内の圧力が上昇することにより塗布液タンク本体11内の塗布液が圧力を受け、塗布液が塗布液排出部13から排出される。すなわち、ガス導入部12にガスを供給することにより、塗布液を気泡除去装置2に送液できるようになっている。
【0026】
また、塗布装置3は、例えばスリットノズルコーターやスピンコーターなど、基板30上に塗布液を吐出するための装置である。本実施形態の塗布装置3は、スリットノズルコーターであり、ポンプ31とスリットノズルを有する口金32とを備えている。この口金32は、塗布液を吐出するスリットノズルを備えており、基板30に対して相対的に移動できるように構成されている。また、ポンプ31は、気泡除去装置2と配管により連結されており、気泡除去装置2から気泡wが除去された塗布液が供給されるようになっている。そして、このポンプ31と口金32とが配管により連結されていることにより、ポンプ31を駆動させると、ポンプ31に供給された塗布液が一定の吐出量でスリットノズルから吐出される。これにより、基板30上には、気泡wのない均一厚さの塗布膜が形成されるようになっている。
【0027】
また、気泡除去装置2は、塗布液タンク1から送液された塗布液中の気泡wを除去するものであり、本実施形態では、バッファタンク20と予備タンク50とを有している。
【0028】
バッファタンク20は、塗布液タンク1からの塗布液が最初に供給されて気泡wを除去するものであり、図2に示すように、塗布液を貯留する容器部21と、塗布液タンク1からの塗布液が供給される液供給部22と、塗布液を下流側に排出する液排出部23と、容器部21内の気体を排出する排気部24とを有している。
【0029】
容器部21は、塗布液を貯留できる円筒形状のケース部材である。この容器部21は、上側容器部41と下側容器部42とに分割できるようになっており、上側容器部41のフランジ部41aと下側容器部42のフランジ部42aとがシール部材を介在させた状態で連結固定されている。これにより、容器部21内の塗布液を密封できるようになっている。そして、容器部21は、上側容器部41と下側容器部42とが連結固定された状態では、容器部21の上面部43と底面部44とが対面した状態になり、底面部44が鉛直方向下側に位置した状態で使用される。したがって、塗布液タンク1から塗布液が供給されると塗布液は容器部21の底面部44から順に満たされるようになっている。
【0030】
液排出部23は、容器部21に貯留された塗布液を塗布装置3側に排出するものであり、本実施形態では、排出された塗布液が予備タンク50に送液される。この液排出部23は、底面部44に開口して形成された排出孔である。そして、液排出部23と予備タンク50とが配管によって連結されていることにより、容器部21に貯留された塗布液は、液排出部23から配管を通じて予備タンク50に排出されるようになっている。このように液排出部23が底面部44に設けられることにより、仮に塗布液中に気泡wが存在する場合であっても、気泡wが浮力で上昇するため、塗布液が気泡wとともに排出されるのを抑えることができる。
【0031】
また、排気部24は、容器部21内の気体を排出するものであり、本実施形態では、上側容器部41に設けられている。具体的には、上側容器部41の上面部43に排気孔が開口して形成されており、この排気孔に配管が連通して接続されている。そして、配管にはバルブ(不図示)が設けられており、このバルブの開閉動作により容器部21の気体が排気されるようになっている。
【0032】
また、液供給部22は、容器部21に塗布液を供給するものであり、本実施形態では、容器部21の底面部44から容器部21の内部まで延伸されたチューブ45(本発明の管状部材)で構成されている。具体的には、底面部44には、塗布液タンク1と配管を介して連結される供給孔が形成されており、この供給孔にチューブ45が取付けられている。そして、チューブ45の先端部分には、開口された吐出口45aが形成されており、塗布液タンク1から塗布液が送液されると、吐出口45aを通じて容器部21に塗布液が供給されるようになっている。このチューブ45は、鉛直方向に直立した姿勢を維持できるようになっており、吐出口45aが後述の仕切り板25の最下位置端部51の高さ位置よりも高い位置に位置する状態で固定されている。すなわち、チューブ45が仕切り板25の中央部分を貫通する状態で固定されている。したがって、チューブ45の吐出口45aから塗布液が吐出されると、底面部44に落下する前に、まず仕切り板25によって塗布液が受けられるようになっている。
【0033】
また、容器部21は、仕切り板25が設けられている。この仕切り板25は、容器部21を上面部側43と底面部44側とを間仕切りするものであり、図2、図3に示すように、ほぼ円盤状の薄板部材である。具体的には、仕切り板25は、そのほぼ中央位置には、チューブ45が貫通するチューブ挿通孔25aが形成されており、このチューブ挿通孔25aに向かって傾斜する形状を有している。そして、仕切り板25の外周部分が、上側容器部41と下側容器部42とで挟まれることによって固定されている。具体的には、仕切り板25の外周部分が上側容器部41のフランジ部41aと下側容器部42のフランジ部42aとで挟まれているとともに、仕切り板25の内周部分には、中心方向に突出する爪部25dがチューブ45の側壁に当接した状態で固定されている。そして、本実施形態では、チューブ挿通孔25aに向かって下向きに傾斜した姿勢を維持した状態で固定されている。これにより、仕切り板25は、内周側端部に、仕切り板25のうち最も下位置に位置する最下位置端部51が形成され、外周側端部に、最も上位置に位置する最上位置端部52が形成されている。したがって、チューブ45の吐出口45aから吐出された塗布液は、仕切り板25で受けられると、塗布液が仕切り板25の最下位置端部51側に流れて滞留するようになっている。
【0034】
また、最下位置端部51には、液流通孔25bが形成されている。この液流通孔25bは、上側容器部41に供給された塗布液を下側容器部42に移動させるためのものであり、図3に示す例では、3カ所形成されている。この液流通孔25bは、仕切り板25を厚さ方向に貫通して形成されている。具体的には、最下位置端部51には、液流通孔25bの一部が形成されており、この最下位置端部51の一部がチューブ45の側壁45b(本発明の相手壁)に対向している。すなわち、液流通孔25bは、最下位置端部51の一部とチューブ45の側壁45bとによって形成されており、その開口領域がチューブ45の側壁45bに沿って延びる形状に形成されている。これにより、最下位置端部51に滞留する塗布液は、液流通孔25bを介してチューブ45の側壁45bに伝って下側容器部42に移動することができる。すなわち、最下位置端部51に滞留する塗布液は、液流通孔25bから落下しようとするが、液流通孔25bが最下位置端部51とチューブ45の側壁とで形成されているため、液流通孔25bから抜け出て落下しようとする塗布液は、チューブ45の側壁45bの表面張力により側壁45b側に引き寄せられる。したがって、液流通孔25bから抜け出た塗布液は、チューブ45の側壁45bを伝って下側容器部42に移動する。これにより、仕切り板25の最下位置端部51に滞留した塗布液が下側容器部42に落下する際、下側容器部42の底面部44又は下側容器部42に貯留された塗布液の液面を叩くことなく移動することができるため、塗布液が液流通孔25bから落下することにより気泡wが発生するのを抑えることができる。
【0035】
また、最上位置端部52には、気体通路孔25cが形成されている。この気体通路孔25cは、下側容器部42の気体を上側容器部41に移動させるためのものであり、図3に示す例では、3カ所形成されている。具体的には、3カ所の気体通路孔25cは、仕切り板25の最上位置端部52を貫通して形成されており、容器部21の側壁21aに沿って形成されている。これにより、下側容器部42に存在する気体が上側容器部41に容易に移動させることができる。すなわち、容器部21が空の状態では、容器部全体に気体(大気)が存在している。この状態から塗布液が供給されると、下側容器部42の底面部44から塗布液が満たされ、下側容器部42に存在していた気体が上側に押しやられ、最終的には、仕切り板25の最も高い位置、すなわち、最上位置端部52の裏面側に押しやられる。この最上位置端部52の裏面側に押しやられた気体は、最上位置端部52に形成された気体通路孔25cから上側容器部41に移動し、排気部24から排気される。これにより、下側容器部42に存在する気体は、上側容器部41に容易に移動することができるため、下側容器部42に貯留された塗布液に気泡wとして溶け込んでしまうのを抑えることができる。
【0036】
また、予備タンク50は、塗布液を塗布装置3に供給する前に塗布液を一時的に貯留させるものである。この予備タンク50は、その底面部51に供給部51aと送液部51bとが設けられており、供給部51aと液排出部23とが配管によって連結され、送液部51bとポンプ31とが配管によって連結されている。これにより、バッファタンク20からの塗布液が予備タンク50に供給され、その後、供給された塗布液がポンプ31に送液されるようになっている。この予備タンク50により、気泡を含んだ塗布液が塗布装置3に供給されるのを抑えることができる。すなわち、バッファタンク20における塗布液の残量が少なくなり塗布液がほぼ底面部44付近にしか残ってない状態では、液排出部23から排出される塗布液と一緒に気体も排出されるおそれがある。そのため、バッファタンク20の残量が少なくなっても、予備タンク50に貯留された塗布液がポンプ31に送液されることで、気泡wの混入した塗布液が送液されるのを抑えることができる。なお、バッファタンク20の残量は常時監視されており、バッファタンク20の残量が少なくなった場合には、予備タンク50に気泡wが混入しないような対処が適宜行われる。
【0037】
次に、上記実施形態における気泡除去装置及び基板処理装置の動作について説明する。
【0038】
まず、塗布液タンク1に十分な塗布液が満たされた状態で、ガス導入部12から不活性ガスが導入されると、塗布液タンク1内の圧力が上昇し、塗布液が気泡除去装置2に供給される。すなわち、塗布液タンク1の塗布液排出部13から送液された塗布液がバッファタンク20の液供給部22に供給される。
【0039】
液供給部22に供給された塗布液は、チューブ45を通じて吐出口45aから吐出され、仕切り板25で受けられる。具体的には、図4(a)に示すように、吐出口45aから吐出された塗布液は、チューブ45の側壁45bを伝って仕切り板25に落下する。そして、仕切り板25の液流通孔25bから流れ出る塗布液量よりも吐出口45aから吐出される塗布液量の方が多い場合、仕切り板25の最下位置端部51から徐々に塗布液が滞留される。すなわち、仕切り板25が傾斜させた状態で配置されているため、塗布液が仕切り板25の最下位置端部51に流れ落ち、高さの低い最下位置端部51に滞留される。
【0040】
そして、これと同時に、液流通孔25bから塗布液が下側容器部42に落下する。すなわち、液流通孔25bから抜け出て落下しようとする塗布液は、チューブ45の側壁45bの表面張力により側壁45b側に引き寄せられ、チューブ45の側壁45bを伝って下側容器部42に移動する。これにより、塗布液が下側容器部42に落下する際、下側容器部42の底面部44又は下側容器部42に貯留された塗布液の液面を叩くことなく移動することができ、塗布液が液流通孔25bから落下することにより気泡wが発生するのを抑えることができる。
【0041】
そして、下側容器部42に塗布液が移動することに伴い、下側容器部42に存在していた気体が上側容器部41に移動する。すなわち、図4(b)に示すように、下側容器部42に塗布液が貯留されていくと、下側容器部42に存在していた気体が最上位置端部52の裏面側に押しやられる。そして、押しやられた気体は、最上位置端部52に形成された気体通路孔25cから上側容器部41に移動し、排気部24から排気される。これにより、下側容器部42に存在していた気体がなくなった状態で、下側容器部42は、塗布液で満たされるため、気体が塗布液に気泡wとして混入することを抑えることができる。
【0042】
さらに、塗布液が供給され、図4(c)に示すように、仕切り板25の高さ位置以上に塗布液が供給されると、上側容器部41に存在する気体が排気部24から排気されるとともに、上側容器部41が塗布液で満たされる。その際、仮に塗布液タンク1の塗布液の残量が少量になり液供給部22から気泡wが混入した塗布液が供給された場合でも、塗布液に混入した気泡wが液排出部23から排出されるのを抑えることができる。すなわち、気泡wが混入した塗布液が吐出口45aから吐出されると、塗布液が図4(c)の矢印で示すように上側容器部41に底面部44に向かう流れが形成され、気泡wも塗布液の流れにしたがって上側容器部41を移動する。しかし、塗布液の底面部44に向かう流れは、仕切り板25によって妨げられるため、塗布液の流れが仕切り板25によって妨げられる。すなわち、最下位置端部51で塗布液が滞留することにより塗布液の流れが遅くなるため、気泡wはその最下位置端部51の滞留部分に至るまでに浮力によって浮かび上がり、液流通孔25bと反対側に移動する。したがって、液供給部22から大量の気泡wが供給されても気泡wが仕切り板25よりも容器部21の底面部44に移動するのを抑えることができるため、気泡wが混入した塗布液が液排出部23から排出されるのを抑えることができる。
【0043】
そして、液排出部23から気泡wの混入されていない塗布液が予備タンク50に送液され、ポンプ31が作動して吸引動作を行うことにより、予備タンク50の塗布液がポンプ31に供給される。そして、ポンプ31が吐出動作を行うことにより、塗布液が口金32に供給される。すなわち、塗布液には気泡wがないことによりポンプ31の応答遅れを防止されつつ、口金32のスリットノズルから塗布液が吐出される。これにより、基板30上には気泡w等の混入が抑えられ、塗布ムラのない塗布膜が形成される。
【0044】
このように、上記基板処理装置によれば、上記気泡除去装置により、気泡wが除去された塗布液が供給されることにより、塗布装置のポンプの応答性遅れが防止され、応答性遅れが要因となる塗布ムラの発生及び、気泡wが直接吐出されることによるホール欠点の発生等を抑えることができる。
【0045】
上記実施形態では、最下位置端部51の相手壁がチューブ45の側壁45bであり、最下位置端部51の一部とチューブ45の側壁45bとによって液流通孔25bが形成される場合について説明したが、相手壁が容器部21の側壁21aである場合であってもよい。具体的には、図5に示すように、仕切り板25が外周に向かって傾斜した状態で固定されており、容器部21の側壁21a付近の最下位置端部51に仕切り板25の厚さ方向に貫通した液流通孔25bが形成されている。このような形態であっても、チューブ45の吐出口45aから吐出された塗布液は、下側容器部42の底面部44又は下側容器部42に貯留された塗布液の液面を叩くことなく移動することができるため、塗布液が液流通孔25bから落下することにより気泡wが発生するのを抑えることができる。すなわち、液流通孔25bを通じて下側容器部42に落下しようとすると、塗布液は表面張力により容器部21の側壁21a側に作用する吸引力により側壁21aを伝って落下することができることにより気泡wが発生するのを抑えることができる。
【0046】
また、上記実施形態では、最下位置端部51に液流通孔25bの一部が形成され、この最下位置端部51と相手壁とで液流通孔25bが形成されている例について説明したが、仕切り板25に液流通孔25bの全体が形成されるものであってもよい。具体的には、図6に示すように、チューブ挿通孔25に近接する位置に液流通孔25bが複数設けられており、これらの液流通孔25bがチューブ挿通孔25に沿って配置されている。このような液流通孔25bであっても塗布液をチューブ45の側壁45bを伝わせて落下させることができる。すなわち、液流通孔25bを抜け出る塗布液は、表面張力により仕切り板25の最下位置端部51の裏面に引き寄せられる。そして、液流通孔25bがチューブ挿通孔25に近接する位置に形成されているため、最下位置端部51の裏面に引き寄せられる塗布液がそのままチューブ45の側壁45bに表面張力により引き寄せられ、そのまま側壁45bを伝って落下する。これにより、塗布液が液流通孔25bから落下することにより気泡wが発生するのを抑えることができる。
【0047】
また、上記実施形態では、相手壁が、チューブ45の側壁45b又は、容器部21の側壁21aの場合について説明したが、他の部材の側壁を相手壁としたものであってもよい。具体的には、塗布液を底面部44まで伝わせる棒状部材、板部材等を容器部21内に設ける構成が考えられる。しかし、相手壁を他の部材で構成するよりも、チューブ45の側壁45bや容器部21の側壁21a等、バッファタンク20を構成する部材を利用する構成である方が構成を容易にできるとともに、コストも抑えることができる点で好ましい。
【0048】
なお、上記実施形態では、基板処理装置としてスリットノズルを有する塗布装置を有するものについて説明したが、インクジェット方式や、スピンコーター等、塗布液を塗布する塗布装置であれば特に限定しない。
【符号の説明】
【0049】
1 塗布液タンク
2 気泡除去装置
3 塗布装置
21 容器部
22 液供給部
23 液排出部
24 排気部
25 仕切り板
25a 吐出口
25b 液流通孔
44 底面部
51 最下位置端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に塗布液を塗布する塗布部に塗布液タンクから供給された塗布液の気泡を除去する気泡除去装置であって、この気泡除去装置は、
塗布液を貯留する容器部と、
塗布液タンクから送液された塗布液を容器部に供給する液供給部と、
前記容器部の底面部に設けられ、容器部に貯留された塗布液を排出させる液排出部と、
容器部の気体を排気する排気部と、
を有しており、
前記液供給部は、容器部の内部まで管状部材が延伸して設けられ、その先端には塗布液を吐出する吐出口を有しており、
前記容器部には、前記容器部の底面部側とその反対側の上面部側とに仕切る仕切り板が傾斜させた状態で設けられ、
この仕切り板の最下位置に位置する最下位置端部には、仕切り板の厚さ方向に貫通する液流通孔の少なくとも一部が形成されており、この液流通孔を通じて、前記吐出口から吐出された塗布液を最下位置端部に対向する相手壁に伝わせて落下させることを特徴とする気泡除去装置。
【請求項2】
前記液流通孔は、前記最下位置端部と、この最下位置端部に対向する相手壁とによって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の気泡除去装置。
【請求項3】
前記液流通孔は、その開口領域が前記最下位置端部に対向する相手壁に沿って延びるように形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の気泡除去装置。
【請求項4】
前記相手壁は、容器部の側壁、または、液供給部の管状部材の側壁であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の気泡除去装置。
【請求項5】
前記仕切り板の最上位置端部には、仕切り板の厚さ方向に貫通する気体通路孔が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の気泡除去装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の気泡除去装置と、塗布液タンクと、塗布液を基板に塗布する塗布装置とを備えることを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−139972(P2011−139972A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−495(P2010−495)
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】