説明

気泡除去装置

【課題】大型で高価な装置を使用することなく液体中の気泡を除去できる気泡除去装置を提供する。
【解決手段】液体貯槽から続く配管に接続する液体入口部と、送液ポンプに続く配管に接続する液体出口部と、気体を排出する気体出口部と、液面センサーとを有するトラップ容器を有し、前記トラップ容器は、密閉型であって内容積が可変であり、前記液面センサーと連動して、トラップ容器内の液体の液面が一定の高さ未満である場合には、トラップ容器の内容積を小さくして気体出口部から気体を排出し、トラップ容器内の液体の液面が一定の高さ以上である場合には、内容積を所定の大きさに戻す機能を有する気泡除去装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型で高価な装置を使用することなく液体中の気泡を除去できる気泡除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試料を分析する際、分析に用いる液体成分に気泡が混入することで、正確な測定結果が得られない場合がある。例えば、高速液体クロマトグラフィーにおいて、液体試料、移動相等の液体の送液を行う際、送液ポンプへ気体が混入することによって送液量や送液圧力が変化し、検出する成分の溶出時間が変動したり、分離用カラムへ気体が混入することによって溶出ピークが変形したり、検出器へ気体が混入することによって得られるクロマトグラムのベースラインが変動したりすることがあり、正確な測定結果を得られないという問題がある。
【0003】
従来、液体に混在する気体を除去するために、様々な方法が提案されている。例えば、特許文献1には、超音波振動によって液体内の気泡を除去する方法が開示されている。また、特許文献2には、耐圧容器内にて液体を常時ヘリウムガスによる一定圧力下に保持することにより液体中への気体の混入を防止する方法が開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された方法は、超音波振動を発生させるための超音波発振器を必要とし、特許文献2に開示された方法は、耐圧容器やヘリウムボンベ等を必要とするため、いずれの場合も大型で高価な装置が必要となるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−185892号公報
【特許文献2】特開2003−107063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、大型で高価な装置を使用することなく液体中の気泡を除去できる気泡除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、液体が流入可能な液体入口部と、液体を排出可能な液体出口部と、密閉状態と開放状態とを切り換え可能な気体出口部と、液体の液面を検知する液面センサーとを有するトラップ容器、上記トラップ容器の液体入口部から延び、液体貯槽に接続される液体入口側配管、及び上記トラップ容器の液体出口部から延び、送液ポンプに接続される液体出口側配管を備え、上記気体出口部は、開放状態においてトラップ容器内部の気体を外部に排出可能であり、上記トラップ容器は、トラップ容器本体内に液体を収容可能であるとともに、内容積が可変であり、さらに、上記液面センサーと連動して、トラップ容器本体内の液体の液面が所定の高さ未満である場合には、気体出口部を開放状態にするとともに、トラップ容器の内容積を小さくして気体出口部から気体を排出し、トラップ容器本体内の液体の液面が所定の高さ以上である場合には、気体出口部を密閉状態にするとともに、トラップ容器の内容積を所定の大きさに保持する内容積調整機能を有する気泡除去装置である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、液面センサーと連動して、トラップ容器内の液体の液面が所定の高さ未満である場合には、トラップ容器の内容積を小さくして気体出口部から気体を排出し、トラップ容器内の液体の液面が所定の高さ以上である場合には、内容積を所定の大きさに保持する機能を有するトラップ容器を備える気泡除去装置を用いることにより、大型で高価な装置を使用することなく液体中の気泡を除去できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の気泡除去装置は、液体中の気泡をトラップするためのトラップ容器を有する。
トラップ容器の各部分を構成する材質は、送液する液体と反応しないものであれば特に限定されず、例えば、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂等の合成樹脂、ガラス、金属等が挙げられる。
【0010】
トラップ容器は、液体入口部と、液体出口部と、気体出口部と、液面センサーとを少なくとも有しており、トラップ容器本体内に液体を収容可能とされている。
トラップ容器は、液体入口部、液体出口部、気体出口部、及び液面センサーを、それぞれ少なくとも1つ有していればよく、それぞれを複数有していてもよい。例えば、複数の液体貯槽と接続するために複数の液体入口部を有していてもよいし、複数の送液ポンプと接続するために複数の液体出口部を有していてもよい。
【0011】
液体入口部は、後述する液体入口側配管を通して液体貯留に接続され、トラップ容部本体内に液体を流入させる。
液体入口部の形成位置は、トラップ容器の本体内に液体を流入可能な位置であれば特には限定されないが、トラップ容器本体内に収容される液体の液面よりも上部が好ましい。
【0012】
液体入口部から流入してきた液体は、液体出口部から排出されるまでトラップ容器本体に収容される。トラップ容器本体内に液体が収容されている間に、液体に混入している気泡がトラップされ、トラップされた気泡はトラップ容器内の上部に移動し、所定の体積に達するまでトラップ容器内の上部に留まる。
トラップ容器本体は、所定量の液体を収容できる形状及び大きさであれば特には限定されない。
【0013】
液体出口部は、後述する液体出口側配管を通して送液ポンプに接続され、トラップ容器から送液ポンプに向けて液体を排出する。
液体出口部は、トラップ容器本体内の液体の液面よりも下部に形成される。例えば、トラップ容器の底部に形成されていてもよいし、トラップ容器の側面に形成されていてもよい。
【0014】
気体出口部は、密閉状態と開放状態が切り換え可能な構成とされている。密閉状態とは、トラップ容器が晒される内圧範囲内において気体を透過しない気密状態であり、開放状態とは、トラップ容器の内部から外部へ気体を排出可能な状態である。このような構成としては、密閉状態と開放状態とを切り替え可能な弁構造が挙げられる。気体出口部は、液面センサーからの情報に応じて、密閉状態と開放状態とを自動で切り換え可能にされているのが好ましい。
気体出口部は、トラップ容器本体内の液体の液面よりも上部に形成されている。例えば、トラップ容器の天井部に形成されていてもよいし、トラップ容器の側面に形成されていてもよい。
また、気体出口部は、気体の排出を促進させるための吸引ポンプ等に接続されていてもよい。
【0015】
液面センサーは、トラップ容器本体内に収容された液体の液面を検知するものであり、液面が所定の高さ以上、又は、所定の高さ未満であることを検知できるものであればよい。例えば、トラップ容器の所定の高さに電極を配置させ、電極間に流れる電流を測定することにより、該高さにおける液体の有無を検知するものや、トラップ容器の所定の高さにおける光透過性を測定することにより、該高さにおける液体の有無を検知するもの等が挙げられる。
【0016】
トラップ容器は、内容積が可変となるように構成されている。なお、トラップ容器は、必要に応じて、一定の内容積を維持できる構成が好ましい。即ち、トラップ容器の内圧の変動に伴い自動的にトラップ容器の内容積が可変するものではなく、一定の内容積を維持できる構成のトラップ容器において、内容積を変動させる機構を有するものが好ましい。
例えば、トラップ容器の形状は、底部が可動とされているシリンジ状であることが好ましく、シリンジ状のトラップ容器の底部を上下に移動させることでトラップ容器の内容積を変動させる構造が好ましい。
トラップ容器の内容積を変動させる構造は、後述するように液面センサーと連動している。
【0017】
また、トラップ容器は、液体入口部、液体出口部、及び気体出口部以外は密閉されているのが好ましい。液体入口部には、液体入口側配管が接続されており、液体入口側配管の一端は液体貯槽の液体中に接続されている。液体出口部は、後述する液体出口側配管により送液ポンプに接続されている。従って、気体出口部を密閉状態としている場合には、液体貯槽の液体中に接続している液体入口部、及び送液ポンプに接続している液体出口部を除いて、トラップ容器は密閉されており、送液ポンプの送液力により、トラップ容器本体内の液体が液体出口部から送液(排出)されると、それに伴い、液体貯槽中の液体が液体入口部からトラップ容器内に流入するように構成されている。
【0018】
本発明の気泡除去装置は、トラップ容器に接続されている液体入口側配管及び液体出口側配管を備えている。
液体入口側配管は、トラップ容器の液体入口部に接続された配管であり、液体入口部と、送液する液体が貯留された液体貯槽とを接続する。
液体出口側配管は、トラップ容器の液体出口部に接続された配管であり、液体出口部と送液ポンプとを接続する。
【0019】
本発明の気泡除去装置は、液面センサーと連動している内容積調整機能を有する。
内容積調整機能は、液面センサーがトラップ容器本体内の液体の液面が所定の高さ未満であることを検知した場合は、トラップ容器の気体出口部を開放状態にするとともに、トラップ容器の内容積を小さくし、気体出口部からトラップ容器内の気体を排出させる。
例えば、気体出口部が、液面センサーからの信号に応じて密閉状態と開放状態とを切り換える開閉弁である場合は、液面センサーからの信号に応じて自動的に気体出口部の開閉ができるので好ましい。
また、例えば、トラップ容器がシリンジ状であり、トラップ容器の底部が可動である場合は、内容積調整機能は、液面センサーと連動して、トラップ容器本体内の液体の液面が一定の高さ未満である場合には、気体出口部を開放状態とし、かつ、トラップ容器の底部を押し上げて気体出口部から気体を排出するようにし、トラップ容器本体内の液体の液面が一定の高さ以上である場合には、気体出口部は密閉状態で、トラップ容器の底部を所定位置に固定させて、トラップ容器の内容積を一定に保持するようにするのが好ましい。なお、トラップ容器から気体を排出した後は、先に気体出口部を密閉状態とし、その後、トラップ容器の内容積を大きく(気体を排出させる前の内容積に戻す)して所定位置に固定させることで、内容積を変動させた分の液体が液体貯槽からトラップ容器に流入し、トラップ容部本体内に収容されている液体を常に所定範囲の量とすることができるので好ましい。
【0020】
液体貯槽からトラップ容器に続く液体入口側配管は、配管内を送液される液体の温度を変化させる温度調整機能を有することが好ましい。送液される液体に、液体組成等に影響を及ぼさない程度の温度変化を与えることにより、トラップ容器内における気体の除去効率を向上させることができる。配管内を送液される液体の温度を変化させる方法としては、配管に設置したヒーター等により配管内を流れる液体を加熱する方法等が挙げられる。
【0021】
本発明の気泡除去装置は、液面センサーから液面が所定の高さ未満になったことを示す信号が所定回数以上連続して発せられた際に、警報を発する警報機能を有することが好ましい。警報機能としては、例えば、音を発する機能、光を発する機能、所定の表示を示す機能等が好ましい。警報機能を備えることにより、トラップ容器本体内の液体量が少なくなったことを事前に検知することができ、液切れを防止することができる。
【0022】
本発明の気泡除去装置は、特に、液体クロマトグラフィーに好適に用いられる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、大型で高価な装置を使用することなく液体中の気泡を除去できる気泡除去装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の気泡除去装置の構成の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の気泡除去装置の構成の別の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に図面を用いて本発明の実施形態を更に詳しく説明するが、本発明はこれら図面で示した実施形態のみに限定されない。
【0026】
図1は、本発明の気泡除去装置の構成の一例を示す模式図である。
本発明の気泡除去装置1は、上流の液体貯槽と下流の送液ポンプとの間に設置される。
本発明の気泡除去装置1は、底部が上下に可動であるシリンジ状のトラップ容器2を有する。トラップ容器2は、液体入口部3、液体出口部4、気体出口部6、及び液面センサー5を有し、トラップ容器2の本体内部は液体を収容可能とされている。
液体入口部3に接続された配管は、液体貯槽とトラップ容器2とを接続する液体入口側配管であり、液体出口部4に接続された配管は、トラップ容器2と送液ポンプとを接続する液体出口側配管である。
液体貯槽中の液体は、液体貯槽から続く液体入口側配管を通り、液体入口部3からトラップ容器2の本体内に送られる。その際、液体中に気泡として混入していた気体は、液体がトラップ容器2本体内に収容されている間に、トラップ容器2の上部に移動する。即ち、気体はトラップ容器2本体内の上部に分離され、トラップ容器2本体内の下部に液体が溜まる。トラップ容器2の下部に溜まった液体は、トラップ容器2の底部に位置する液体出口部4から液体出口側配管を通って送液ポンプに送液される。トラップ容器2の上部に分離された気体は、液体貯槽から送られた液体の量に応じて増加していき、その結果、トラップ容器2本体内の液体の液面が低下する。トラップ容器2本体内の液体の液面が一定の高さ未満となったことを液面センサー5が検知すると、液面センサー5から液面低下を示す信号が発せられ、気体出口部6の弁が開き、トラップ容器2の底部が押し上げられ、トラップ容器2の上部に溜まった気体が気体出口部6から排出される。トラップ容器2の底部が押し上げられることで、トラップ容器2本体内に収容された液体の見かけの液面は上昇する。液体の液面が一定の高さ以上に上昇したことを液面センサー5が検知すると、液面センサー5から液面上昇を示す信号が発せられ、気体出口部6の弁が閉じる。その後、トラップ容器2の底部は、押し上げられる前の位置に移動する。この間、送液ポンプは一定の流速で液体の送液を継続している。
【0027】
図2は、本発明の気泡除去装置の構成の別の一例を示す模式図である。
図2では、液体出口部4はトラップ容器2の側面に位置する。液体出口部4がトラップ容器2の側面に位置することによって、トラップ容器の内容積が変動する際に液体出口部4の位置が移動することがなく、液体出口部4と送液ポンプとの距離を一定に保つことができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明によれば、大型で高価な装置を使用することなく液体中の気泡を除去できる気泡除去装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 気泡除去装置
2 トラップ容器
3 液体入口部
4 液体出口部
5 液面センサー
6 気体出口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が流入可能な液体入口部と、液体を排出可能な液体出口部と、密閉状態と開放状態とを切り換え可能な気体出口部と、液体の液面を検知する液面センサーとを有するトラップ容器、
前記トラップ容器の液体入口部から延び、液体貯槽に接続される液体入口側配管、及び前記トラップ容器の液体出口部から延び、送液ポンプに接続される液体出口側配管を備え、
前記気体出口部は、開放状態においてトラップ容器内部の気体を外部に排出可能であり、
前記トラップ容器は、トラップ容器本体内に液体を収容可能であるとともに、内容積が可変であり、
さらに、前記液面センサーと連動して、トラップ容器本体内の液体の液面が所定の高さ未満である場合には、気体出口部を開放状態にするとともに、トラップ容器の内容積を小さくして気体出口部から気体を排出し、トラップ容器本体内の液体の液面が所定の高さ以上である場合には、気体出口部を密閉状態にするとともに、トラップ容器の内容積を所定の大きさに保持する内容積調整機能を有する
ことを特徴とする気泡除去装置。
【請求項2】
トラップ容器の形状は、シリンジ状であることを特徴とする、請求項1記載の気泡除去装置。
【請求項3】
液体貯槽からトラップ容器に続く入口側配管は、送液される液体の温度を変化させる温度調整機能を有することを特徴とする、請求項1又は2記載の気泡除去装置。
【請求項4】
液面センサーから、液面が所定の高さ未満になったことを示す信号が所定回数以上連続して発せられた際に、警報を発する警報機能を有することを特徴とする、請求項1、2又は3記載の気泡除去装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−215450(P2012−215450A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80372(P2011−80372)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(390037327)積水メディカル株式会社 (111)