説明

気流式粉砕装置

【目的】 製品の粒度分布を自由に調整できる気流式粉砕装置の提供。
【構成】 気流式粉砕機1の分級室12や粉砕室11の側壁から1本以上の粗粉出口管42,43を室外へ連通している。粗粉出口管はいずれも気流分級機3の排出側に接続した微粉出口管41と室外で合流し製品捕集機4と連結している。粗粉出口管は合流前に流量を調整する絞り弁44,45を具えている。
【作用】 流量調整された粗粉R1 ,R2 が微粉Fと合流し捕集機へ到達するまでには完全な均質となるよう混合する。絞り弁の開度によって粒度分布は自由に選択できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は広汎な分野で使用される気流式粉砕装置に係る。
【0002】
【従来の技術】図3は従来から広く使用されている気流式粉砕装置の一例を示す。図において、原料ビン21aへ貯蔵された原料Mは駆動モータの起動により、原料供給機2aから定量ずつ切り出され、供給管23aを経て粉砕室11aの中に投入される。一方、高圧流体発生機13aで発生させた高圧流体は導管を介して破砕ノズル14aへ導かれ、該破砕ノズル14aから粉砕室11aの中心に向けて噴射するとともに、駆動モータ31aの起動により分級ロータ32aを高速回転させ、さらに排気ブロア48aを起動すると、原料は噴射されたジェット噴流に巻き込まれて加速され、速度エネルギーをもって相互に衝突や摩擦を繰り返すうちに粉砕され、粉砕室内を浮遊しつつ上昇する。このように粉砕されて浮遊状態にある微粉Fは、分級ロータ32aの高速回転による遠心力によって、所定の分級点で分級される。分級ロータを通過した微粉Fは、気流とともに微粉排出管41aを経て製品捕集機4aに導かれ、ここで微粉と気流とに分離され、微粉は製品Pとして下部より排出され、気流は排気ブロア48aにより大気に放出される。一方、前記分級ロータを通過しない粗粉Rは下降し、再度ジェット噴流による解砕作用を受ける。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】気流式粉砕装置の特徴は非常に高い効率で微粉が得られる点が挙げられ、この特徴に着目して食品添加物、有機顔料その他の有機化合物など従来アトマイザーなどを適用していた超微粉、あるいは気相法、液相法で生産されるセラミックス、合成シリカなどの超微粉の生産に採用されるようになっている。品質的に見ても超微粉であるうえ、その粒度分布がシャープに分級されているので分布の範囲が狭く、粒度のばらつきの小さい微粉の得られることが確かめられている。たとえば図4,図5はそれぞれ異なる粉砕条件および分級条件で得られた炭化硅素製品の粒度分布を示した図であるが、図4については粒径が3.90〜11.0μmの間で合計72%を超え、図5についても粒径が44.0〜125μmの間の合計が54%は超え、明確なピークがそれぞれ5.50〜7.80μmおよび62.0〜88μmに認められる。このようにシャープなピークを形成することが超微粉の品質を保証するうえで大きな貢献をしている。
【0004】一方、セラミックスやカーボンの粉末を成形して耐火物などの高級成形体を製造する場合には、逆にこのことが一つの課題となる。粉末を凝集成形する場合には、ほぼ一定の狭い粒度範囲内に集中していると凝集後の成形体強度が却って高いレベルに到達しないという性質がある。たとえばカーボン粉末を成形した電極の強度は、カーボンの粒度が揃い過ぎると高くは望めず、荷重が加わると折損するおそれがある。むしろ粗粉と微粉とが適当な割合で混合している方が、微粉が一種の粘結剤の働きを果たして成形後の強度を大幅に向上することができる。したがって粉末を成形体の原料として使用する部門では、微粉と粗粉とがある割合で均等に混合し、成形後に最も高い強度が得られる粒度分布を要望し、そのために幅広い粒度分布、または2〜3点以上のピークが並存する粒度分布を指定し、自由に粒度の拡がりを選択できる粉砕装置を求める声が高い。
【0005】この要望に応えるためには、(1)微粉Fと粗粉Rを別々に製造して所定の割合で両者を混合する。
(2)微粉Fを製造しながら分級室の外側へ開口部を設けて粗粉Rを取り出し、所定の割合で両者を混合する。
(3)粉砕室に開口部を設けここから二次空気を吸引して微粉Fと同時に粗粉Rを取り出す。
という3通りの手段も考えられるが、そのうち(1),(2)はホッパーと定量供給機、混合機が必要であり経済的に好ましくなく、また(3)については二次空気分だけ捕集機と排気ブロアを能力アップしなければならず、これも経済的に好ましくない。またいずれの手段においても均等に混合するという点で難点が残っている。
【0006】本発明は以上に述べた課題を解決するために、気流式粉砕機の特徴である超微粉を高能率で製造するとともに、粉末を成形した後の強度が最高となるような粒度分布が自由に調整できる気流式粉砕装置の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明に係る気流式粉砕装置は、粉砕室の側壁に複数個の破砕ノズル及び該破砕ノズルより上部に原料供給シュートを開口した気流式粉砕機と、前記原料供給シュートに接続した原料供給機と、前記粉砕室内上部の分級室中央に設けた気流式分級機と、該分級機の排出側に接続した製品捕集機及び排気ブロアからなり、分級機の排出側と接続し室外へ連通する微粉出口管と、分級室および/または粉砕室の側壁から室外へ連通する粗粉出口管を少なくとも1ケ具え、かつ該粗粉出口管はそれぞれ流量の調整自在に前記微粉出口管と合流して製品捕集機へ連結していることによって前記の課題を解決した。
【0008】
【作用】本発明に係る気流式粉砕装置は、気流式分級機によって選別された微粉と、粉砕室・分級室から適宜取り出してきた粗粉を、所望の割合に応じて合流した出口管内で混合しつつ吸引させて、製品捕集機へ到達したときは完全な均質に混合した所要の粒度分布を形成した製品として捕集される。図2は本発明を実施した製品の粒度分布の一例を示し、広い範囲に拡散した粒度によって製品が形成されている。この粒度分布は、成形体となった後に求められる強度や微粉と粗粉間の凝集力の相互関係など複雑な要素を組み合わせて経験的、または実験的に把握して決定されるものであり、技術上の重要なノウハウとしてそれぞれ独自に知得されるものである。
【0009】
【実施例】図1は本発明の実施例を示す縦断正面図である。図3に示した従来技術と同様、気流式粉砕機1は竪型円筒形の粉砕室11およびその上方の分級室12とからなり、エアコンプレッサー13で圧縮した空気Aは、給気管14を通って粉砕室11の下方において筒芯へ向けて複数個水平に取り付けた破砕ノズル14から噴射される。原料供給機2は原料ホッパー21,原料フィーダー22,原料供給シュート23からなり、原料ホッパー21へ装入された原料Mは、定量ずつ粉砕室11の下方へ供給され、噴き上げる空気に乗って原料同士が激しく衝突し粉砕されつつ上昇気流とともに分級室12へ達する。
【0010】分級室12の中央付近に気流分級機3が配置されている。分級機ではインバータモーター31によって所望の回転数になるよう調整された分級ローター32が回転し、微粉Fは連通する製品捕集機4の負圧に吸引されて微粉出口管41へ案内されて室外へ排出される。一方粗粉Rはこの負圧よりも分級ローターの回転によって生じる遠心力の方が勝り、分級ローター外へ撥き飛ばされて自重に従って分級室,粉砕室の側壁に沿って自然落下しようとする。
【0011】本実施例では粉砕室11から一ケ所、分級室12から一ケ所、合計二ケ所の粗粉出口管42,43を取り付け、粗粉出口管42からは比較的細かい粗粉R1 を、また、粗粉出口管43からは比較的粗い粗粉R2 をそれぞれ負圧によって室外へ吸引排出する。その排出される量は管路の途中にそれぞれ介装した絞り弁(ダンパーが実際的である。)44,45によって求める粒度分布が得られるように調整する。出口管41,42,43は微粉出口管41の管端において合流し、微粉と粗粉の混合した製品Pは捕集管46へ集合して捕集本体47で分離回収され、清浄な空気Aは排気ブロア48から大気中へ放出される。
【0012】
【発明の効果】本発明の気流式粉砕装置は、以上述べたように多様化する需要者の要求に応え、所望の粒度分布を形成する粉砕製品を必要量だけ製造することができる。また、供給する原料に超微粉を入れておくと、直ちに微粉Fとなって捕集機へ送られるので、異なる成分の原料を均等に付加したいときには即時に対応することができる。
【0013】またこの異なる成分の原料が表面処理剤であるときは、粉砕室、分級室、出口管の経路を流動中に粗粉Rが表面処理されることとなり、表面処理剤が液状、固状を問わず粗粉は粉砕されつつ表面処理を同時に受け、能率的に均質な製品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示す縦断正面図である。
【図2】本発明の実施例における製品の粒度分布を示す。
【図3】従来技術の一例を示す縦断正面図である。
【図4】従来技術による製品の粒度分布を示す。
【図5】従来技術による製品の別の粒度分布を示す。
【符号の説明】
1 気流式粉砕機
2 原料供給機
3 気流分級機
4 製品捕集機
11 粉砕室
12 分級室
14 破砕ノズル
23 原料供給シュート
41 微粉出口管
42 粗粉出口管
43 粗粉出口管
M 原料
F 微粉
R 粗粉
A 空気
P 製品

【特許請求の範囲】
【請求項1】 粉砕室の側壁に複数個の破砕ノズル及び該破砕ノズルより上部に原料供給シュートを開口した気流式粉砕機と、前記原料供給シュートに接続した原料供給機と、前記粉砕室内上部の分級室中央に設けた気流式分級機と、該分級機の排出側に接続した製品捕集機及び排気ブロアからなる微粉体の気流式粉砕装置において、分級機の排出側と接続し室外へ連通する微粉出口管と、分級室および/または粉砕室の側壁から室外へ連通する粗粉出口管を少なくとも1ケ具え、かつ該粗粉出口管はそれぞれ流量の調整自在に前記微粉出口管と合流して製品捕集機へ連結していることを特徴とする気流式粉砕装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開平5−212307
【公開日】平成5年(1993)8月24日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−56379
【出願日】平成4年(1992)2月5日
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)