説明

気液分離器

【課題】液体のミストが排気口に向けて流れる気体に混入することを防止でき、ひいては容器の小型化を図ることができる、気液分離器を提供する。
【解決手段】気液分離器18には、気体および液体の混合流体を容器31内に導入するための導入管43と、容器31内で液体から分離される気体を容器31外に排出するための排気管46とが備えられている。また、容器31内には、集液部35が設けられている。集液部35は、円形の開口40と、この開口40の周縁から離れるにつれて窄まる形状の集液面41とを有している。そして、導入管43は、混合流体を集液面41に向けて噴出する噴出口44を有している。また、排気管46は、容器31内において噴出口44よりも上方に配置される排気口47を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気液分離器に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムでは、燃料電池の燃料供給口および燃料排出口に、それぞれ燃料循環ラインの一端および他端が接続されている。燃料循環ラインから燃料供給口を介して燃料電池に燃料が供給され、燃料電池における電気化学反応により起電力が発生する。電気化学反応により生じる生成物は、未反応の燃料とともに、燃料電池から燃料排出口を介して燃料循環ラインに排出される。
【0003】
燃料循環ラインの途中部には、気液分離器が介裝されている。気液分離器において、燃料循環ラインを流れてくる液体と気体とが互いに分離され、燃料は、気液分離器から燃料循環ラインに戻される。
【0004】
従来から提案されている気液分離器の一例では、ケースの側壁に、液体および気体をケース内に導入するためのインレットが形成されている。この提案に係る気液分離器は、水素燃料電池システム用の気液分離器であり、ケース内には、燃料である水素および電気化学反応により生じる生成物である水がインレットから導入される。ケースの底部は、水を貯留するための貯水部とされている。ケース内には、インレットに対してインレットからの水素および水の噴出方向に対向する位置に、貯水部を上方から覆う覆い部が形成されている。覆い部の上面は、インレット側が下がるように傾斜している。そして、ケースの底部の側壁には、貯水部から水を排出するための排水口が形成されている。また、ケースの上壁には、ケース内から水素を排出するためのアウトレットが形成されている。
【0005】
インレットに流れてくる水素および水は、インレットからケース内に噴出されて、ケース内で互いに分離される。水素は、ケース内で上昇気流となり、アウトレットを介して排出される(燃料循環ラインに戻される)。一方、水は、覆い部の上面を伝って貯水部へと流れ、貯水部に溜められる。貯水部に溜められた水は、排水口を開閉する排水バルブが開かれると、排水口を介して排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−158157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、インレットと覆い部とがインレットからの水素および水の噴出方向に対向しているので、インレットから噴出される水が覆い部の上面を伝って流れる水と衝突し、この衝突により水のミスト(霧状の水滴)が発生する。水のミストが発生すると、その水のミストがアウトレットに向けて流れる水素に混入する。
【0008】
水のミストの発生を防止するためには、インレットから噴出される水が覆い部の上面を伝って流れる水に勢いよく衝突しないように、インレットと覆い部との間の間隔を空ければよい。しかしながら、インレットと覆い部との間の距離を大きくすると、気液分離器(ケース)のサイズが大型化してしまう。
【0009】
本発明の目的は、液体のミストが排気口に向けて流れる気体に混入することを防止でき、ひいては容器の小型化を図ることができる、気液分離器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するため、本発明は、気体と液体とを分離するための気液分離器において、容器と、前記容器内に設けられ、円形の開口および前記開口の周縁から離れるにつれて窄まる形状の集液面を有する集液部と、気体および液体の混合流体を前記集液面に向けて噴出する噴出口を有し、その混合流体を前記容器内に導入するための導入部と、前記容器内において前記噴出口よりも上方に配置される排気口を有し、前記容器内で液体から分離される気体を前記排気口を介して前記容器外に排出するための排気部とを備えることを特徴としている。
【0011】
この気液分離器では、気体および液体の混合流体を容器内に導入するための導入部と、容器内で液体から分離される気体を容器外に排出するための排気部とが備えられている。また、容器内には、集液部が設けられている。集液部は、円形の開口と、この開口の周縁から離れるにつれて窄まる形状の集液面とを有している。そして、導入部は、混合流体を集液面に向けて噴出する噴出口を有している。また、排気部は、容器内において噴出口よりも上方に配置される排気口を有している。
【0012】
混合流体は、噴出口から集液面に向けて噴出される。集液面に入射する混合流体中の液体は、集液面に沿って下方に流れ、集液面上の最下部に集まる。そして、その液体は、集液面の最下部上をその勾配により開口側へ流れ、開口の周縁から容器の底部へと流下する。その結果、混合流体中の液体が容器の底部に集められる。一方、液体から分離した気体は、容器内を排気口に向けて流れる。
【0013】
集液面が円形の開口の周縁から離れるにつれて窄まる形状をなしているので、液体が集液面で反射しても、この反射により生じる液体のミストは、集液面に囲まれる空間内において径方向の内側に向けて飛散する。すなわち、集液面が円形の開口の周縁から離れるにつれて窄まる形状に形成されることにより、集液面での液体の反射により生じるミストの飛散方向が集液面に囲まれる空間内における径方向の内側に向かう方向に制御されている。その結果、排気口に向けて流れる気体に液体のミストが混入することを抑制できる。
【0014】
よって、噴出口と集液部(集液面)とを大きく離す必要がないので、気液分離器の容器の小型化を図ることができる。
【0015】
前記集液面は、半球面であることが好適である。この場合、集液面での液体の反射により生じるミストの飛散方向が集液面の中心に向かう方向に制御されるので、排気口に向けて流れる気体に液体のミストが混入することを一層抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、噴出口から集液面に向けて気体と液体との混合流体が噴出される。集液面が円形の開口の周縁から離れるにつれて窄まる形状をなしているので、液体が集液面で反射しても、この反射により生じる液体のミストは、集液面に囲まれる空間内において径方向の内側に向けて飛散する。これにより、排気口に向けて流れる気体に液体のミストが混入することを抑制できる。その結果、気液分離器の容器の小型化を図ることができるので、気液分離器が用いられる燃料電池システムの小型化を図ることができる。ひいては、燃料電池システムが搭載される自動車などの車両の小型化および軽量化を図ることができる。また、気液分離器の小型化に伴い、燃料電池システムおよび車両のコストの低減を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る気液分離器が用いられる燃料電池システムの構成図である。
【図2】図2は、図1に示される気液分離器の図解的な断面図である。
【図3】図3は、図2に示される切断線A−Aにおける気液分離器の図解的な断面図である。
【図4】図4は、第1変形例(導入管の位置が変更された構成)に係る気液分離器の図解的な断面図である。
【図5】図5は、第2変形例(排気管の位置が変更された構成)に係る気液分離器の図解的な断面図である。
【図6】図6は、第3変形例(ミストトラップが設けられた構成)に係る気液分離器の図解的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る燃料電池システムの構成図である。
【0020】
燃料電池システム1は、たとえば、自動車に駆動源として搭載される。
【0021】
燃料電池システム1は、燃料電池2を備えている。燃料電池2は、アノード(燃料極)3およびカソード(酸素極)4が電解質体5を挟んで対向配置された構造のセルを複数備えている。複数のセルは、各セルの間にセパレータを介在させて積層され、セルスタックを構成している。電解質体5は、たとえば、アニオン(OH)を透過させる性質を有する固体高分子膜である。
【0022】
アノード3には、燃料流路6が形成されている。燃料流路6は、燃料循環ライン7の一端と他端との間に介装されている。具体的には、燃料流路6の一端は、燃料供給口8をなし、この燃料供給口8には、燃料循環ライン7の一部をなす燃料供給ライン9が接続されている。燃料流路6の他端は、燃料排出口10をなし、この燃料排出口10には、燃料循環ライン7における燃料供給ライン9以外の部分からなる燃料排出ライン11が接続されている。
【0023】
燃料供給ライン9および燃料排出ライン11には、それぞれ燃料供給バルブ12および燃料排出バルブ13が介装されている。
【0024】
燃料供給ライン9には、燃料供給バルブ12よりも燃料排出ライン11側において、燃料タンク14から延びる燃料補給管15が接続されている。燃料タンク14には、液体燃料の一例である水加ヒドラジン(NHNH・HO)が貯留されている。燃料補給管15の途中部には、燃料補給ポンプ16が介装されている。燃料補給ポンプ16が駆動されることにより、燃料タンク14から燃料補給管15およびサブタンク28を通して燃料供給ライン9に液体燃料が供給される。
【0025】
また、燃料供給ライン9において、燃料補給管15が接続される部分と燃料供給バルブ12との間には、燃料循環ポンプ17が介装されている。燃料供給バルブ12および燃料排出バルブ13が開かれた状態で、燃料循環ポンプ17が駆動されると、液体燃料が燃料供給ライン9を燃料循環ポンプ17から燃料流路6に向けて流れ、燃料供給口8から燃料流路6に液体燃料が供給される。燃料流路6に供給される液体燃料は、燃料流路6を流れ、燃料排出口10から燃料排出ライン11に排出される。このように、燃料供給バルブ12および燃料排出バルブ13が開けられた状態で、燃料循環ポンプ17が駆動されると、燃料流路6および燃料循環ライン7(燃料供給ライン9および燃料排出ライン11)を液体燃料が循環する。
【0026】
燃料供給ライン9と燃料排出ライン11との間には、気液分離器18が介装されている。燃料排出口10から燃料排出ライン11には、液体燃料を主として含む液体とともに気体が排出される。液体燃料および気体は、燃料排出ライン11から気液分離器18内に流入する。そして、気液分離器18内において、液体と気体とが互いに分離される。分離された液体は、気液分離器18内から燃料供給ライン9に流出する(燃料循環ライン7に戻される)。
【0027】
気液分離器18には、ガス放出ライン19が接続されている。ガス放出ライン19には、ガス放出バルブ20が介装されている。ガス放出バルブ20が開かれると、気液分離器18内のガスがガス放出ライン19を通して大気に放出される。
【0028】
カソード4には、気体流路21が形成されている。気体流路21の一端は、気体供給口22をなし、この気体供給口22には、エアコンプレッサ23から延びる空気供給ライン24が接続されている。気体流路21の他端は、気体排出口25をなし、この気体排出口25には、一端が開放される気体排出ライン26の他端が接続されている。気体排出ライン26の途中部には、気体流路21を流れる空気の圧力を調節するための圧力調節バルブ27が介装されている。
【0029】
燃料電池システム1の運転時には、燃料供給バルブ12および燃料排出バルブ13が開かれ、燃料循環ポンプ17が駆動されて、アノード3の燃料流路6に液体燃料が供給される。その一方で、エアコンプレッサ23が駆動されるとともに、圧力調節バルブ27の開度が調節されることにより、カソード4の気体流路21に空気が供給される。
【0030】
これにより、燃料電池2において、電気化学反応が生じ、その電気化学反応による起電力が発生する。
【0031】
具体的には、アノード3において、反応式(1)で示される反応が生じ、窒素ガス(N)、水(HO)および電子(e)が生成される。電子は、外部回路(図示せず)を介して、カソード4に移動する。窒素ガスおよび水は、未反応の液体燃料とともに、燃料流路6から燃料排出口10を介して燃料排出ライン11に排出される。一方、カソードでは、反応式(2)で示される反応が生じ、アニオン(OH)が生成される。アニオンは、電解質体5を透過して、アノード3に移動する。
【0032】
NHNH+4OH→N+4HO+4e ・・・(1)
+2HO+4e→4OH ・・・(2)
この結果、アノード3とカソード4との間に、電気化学反応による起電力が発生する。
【0033】
燃料補給ポンプ16は、燃料循環ライン7(燃料供給ライン9)に液体燃料を補給する必要が生じたとき(燃料循環ライン7を流れる液体燃料の濃度が所定濃度より低下したとき)に駆動される。
【0034】
ガス放出バルブ20は、通常の運転時には開かれている。
【0035】
図2は、図1に示される気液分離器の図解的な断面図である。図3は、図2に示される切断線A−Aにおける気液分離器の図解的な断面図である。
【0036】
気液分離器18は、容器31を備えている。容器31は、中空円柱状(両端が閉塞された円筒状)をなしている。具体的には、容器31は、円筒状の側壁32と、側壁32の下端を閉塞する底壁33と、側壁32の上端を閉塞する天壁34とを備えている。
【0037】
容器31内には、集液部35が設けられている。集液部35は、底壁33上に立設され、略半円柱状をなしている。具体的には、集液部35は、側壁32の内周面に沿う略半円弧面状の周側面36と、その周側面36の周方向の両端縁間を連結する平板状の平側面37と、周側面36および平側面37の各上端縁間に架設された上面38とを有している。
【0038】
上面38は、平側面37側に下り勾配となる傾斜面をなしている。
【0039】
そして、集液部35には、平側面37において開放される略半球状の集液凹部39が形成されている。これにより、集液部35は、平側面37に形成された円形の開口40と、その開口40の周縁から離れるにつれて窄まる略半球面状の集液面41とを有している。
【0040】
また、集液凹部39の下方には、貫通部42が集液部35を平側面37と直交する方向に貫通する空間として形成されている。
【0041】
側壁32の上下方向の中央部には、導入管43が挿通されている。導入管43は、容器31内で側壁32の径方向かつ側壁32と直交する方向に延びている。導入管43の基端部には、燃料排出ライン11が接続されている。導入管43の先端部(容器31内に配置される端部)は、集液部35の集液凹部39内において、開口40の近傍であって、開口40の中心よりも上方の位置に配置されている。そして、導入管43の先端面には、燃料排出ライン11から導入管43に送られてくる液体燃料、窒素ガスおよび水の混合流体を集液面41に向けて噴出する噴出口44が形成されている、
また、側壁32には、貫通部42に臨む部分に、排液管45が接続されている。排液管45の先端部(容器31外に配置される端部)には、燃料供給ライン9が接続されている。
【0042】
天壁34の中央部には、排気管46が挿通されている。排気管46は、上下方向に延びている。排気管46の上端部(排気管46における容器31外に配置される端部)には、ガス放出ライン19が接続されている。排気管46の下端部は、容器31内にわずかに突出し、その端面には、容器31内から気体を排出するための排気口47が形成されている。
【0043】
導入管43の噴出口44から噴出される混合流体は、集液面41の上部に入射する。集液面41に入射する混合流体中の液体(液体燃料および水を主として含む。)は、集液面41に沿って下方に流れ、集液面41上の最下部に集まる。そして、その液体は、集液面41の最下部上をその勾配により開口40側へ流れ、開口40の周縁から容器31の底部へと流下する。その結果、混合流体中の液体が容器31の底部に集められる。一方、液体から分離した気体、つまり窒素は、容器31内を排気口47に向けて流れる。
【0044】
集液面41が円形の開口40の周縁から離れるにつれて窄まる形状をなしているので、液体が集液面41で反射しても、この反射により生じる液体のミストは、集液面41に囲まれる空間、つまり集液凹部39内において径方向の内側に向けて飛散する。具体的には、集液面41が円形の開口40の周縁から離れるにつれて窄まる半球面に形成されることにより、集液面41での液体の反射により生じるミストの飛散方向が集液面41の中心に向かう方向に制御されている。その結果、排気口47に向けて流れる気体に液体のミストが混入することを抑制できる。
【0045】
よって、噴出口44と集液部35(集液面41)とを大きく離す必要がないので、気液分離器18の容器31の小型化を図ることができる。
【0046】
また、集液面41で液体の反射によるミストの発生が可及的に抑えられているので、容器31内における導入管43よりも上方の空間に存在する液体のミストには、重力および気体の上昇気流による抗力が作用し、それら以外の力は作用しないと仮定することができる。そして、その仮定に基づいて、液体のミストが気体の上昇気流により排気口47に向けて運ばれることを防止するために必要な容器31の内径Φの最小値を求めることができる。その結果、容器31の最小サイズの設計が可能となり、容器31の小型化を図ることができる。
【0047】
すなわち、導入管43よりも上方の空間に存在する液体のミストに重力および気体の上昇気流による抗力のみが作用する状況下では、その重力が抗力よりも大きければ、液体のミストが気体の上昇気流に運ばれることを防止できる。ここで、気体の上昇気流の風速をV(m/sec)とし、液体の比重をρL(kg/m)とし、気体の比重をρV(kg/m)とすると、ストークスの沈降速度式より、次式(3)が成立する。
【0048】
V=K{(ρL−ρV)/ρV}/2 ・・・(3)
K:定数(m/sec)
液体および気体がそれぞれ水および窒素であると仮定して、比重ρL=979.8(kg/m)および比重ρV=1.970(kg/m)を前記式(3)に代入するとともに、定数K=0.06(m/sec)を前記式(3)に代入すると、風速V=1.34(m/sec)が得られる。したがって、風速Vが1.34(m/sec)以下であれば、液体のミストが気体の上昇気流に運ばれることを防止できる。たとえば、容器31内を流れる気体の基準状態(0℃、1atm)下での流量を155L/minとすると、風速V≦1.34(m/sec)の不等式を満たすことができる容器31の内径Φは、Φ=49.5(mm)以上となる。よって、液体のミストが気体の上昇気流により排気口47に向けて運ばれることを防止するために必要な容器31の内径Φの最小値は、49.5(mm)であり、これに基づいて、容器31の最小サイズの設計が可能となる。
【0049】
ただし、液体のミストが排気口47を介して容器31外に流出することを確実に防止するため、容器31内を流れる気体の基準状態下での流量が155L/minである場合、容器31の内径Φは、Φ=100(mm)以上とされることが好ましい。また、容器31の底部に貯留した液体の液面と天壁34の内面(下面)との間隔Hは、内径Φの最小値の3倍以上、つまり150(mm)以上とされることが好ましい。
【0050】
このように、気液分離器18の容器31の小型化を図ることができるので、気液分離器18が用いられる燃料電池システム1の小型化を図ることができる。ひいては、燃料電池システム1が搭載される自動車などの車両の小型化および軽量化を図ることができる。また、気液分離器18の小型化に伴い、燃料電池システム1および車両のコストの低減を図ることもできる。
【0051】
さらに、集液面41が半球面に形成されているので、集液面41の最下部上を開口40側に流れる液体は、開口40付近でその流れの勢いが弱まり、開口40の周縁から容器31の底部に溜められた液体の液面に穏やかに流入する。よって、このときに液体のミストが発生することを防止でき、排気口47に向けて流れる気体に液体のミストが混入することを一層防止できる。
【0052】
また、集液部35の上面38に平側面37側に下り勾配となる傾斜がつけられているので、上面38に液体が付着しても、その液体は、上面38上を平側面37に向けて流れ、平側面37を伝って流下する。よって、上面38に付着した液体を容器31の底部に集めることができ、液体を燃料循環ライン7(燃料供給ライン9)に効率よく戻すことができる。
【0053】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0054】
たとえば、導入管43の位置および姿勢は、気液分離器18の設計に応じて適宜変更することができる。すなわち、前述の実施形態では、導入管43が容器31内で側壁32の径方向かつ側壁32と直交する方向に延び、導入管43の先端部が開口40の中心よりも上方の位置に配置される構成を取り上げた。しかしながら、図4に示されるように、導入管43が容器31内で側壁32の径方向かつ側壁32と直交する方向に延び、導入管43の先端部が開口40の中心とほぼ同じ高さの位置に配置されてもよい。また、噴出口44が集液面41に向いていれば、導入管43が側壁32に対して傾斜する方向に延びる姿勢をなしてもよい。さらには、導入管43の先端部が集液部35の集液凹部39外に配置されてもよい。
【0055】
また、排気管46は、天壁34の中央部に限らず、図5に示されるように、平面視で天壁34の中央部に対して導入管43と反対側に片寄った位置に配置されてもよい。この配置により、導入管43から排気口47までの距離を稼ぐことができ、液体のミストが排気口47に到達することを一層防止することができる。
【0056】
さらに、以上の構成によれば、液体のミストを捕獲するためのミストトラップを必要としないので、そのミストトラップの省略により、気液分離器18の小型化および低コスト化を図ることができる。しかしながら、液体のミストが排気口47を介して容器31外に流出することをより確実に防止するため、図6に示されるように、集液部35と天壁34との間において、排気口47の下方に、SUS(ステンレス)のメッシュ構造体からなるミストトラップ51が設けられてもよい。
【0057】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0058】
18 気液分離器
31 容器
35 集液部
40 開口
41 集液面
43 導入管(導入部)
44 噴出口
46 排気管(排気部)
47 排気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体と液体とを分離するための気液分離器であって、
容器と、
前記容器内に設けられ、円形の開口および前記開口の周縁から離れるにつれて窄まる形状の集液面を有する集液部と、
気体および液体の混合流体を前記集液面に向けて噴出する噴出口を有し、その混合流体を前記容器内に導入するための導入部と、
前記容器内において前記噴出口よりも上方に配置される排気口を有し、前記容器内で液体から分離される気体を前記排気口を介して前記容器外に排出するための排気部とを備える、気液分離器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−24717(P2012−24717A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−167049(P2010−167049)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】