説明

気液接触方法及びそれを応用した水の脱酸素方法

【課題】一般産業用において実用的であると考えられる窒素置換−多段接触法において、3段以上の多段処理を行っても、窒素消費量があまり減少せず、窒素消費量の削減に限界がある。
【解決手段】本発明の気液接触方法は、溶存気体の過飽和を各段において、完全に解消することができるので、3段以上の多段処理においても理論効率に近い窒素消費量に抑制できることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中の溶存酸素等を窒素やアルゴン等の不活性ガスと置換することで除去するストリッピング技術による気液接触方法、及びそれを応用した水の脱酸素方法に関する。
【背景技術】
【0002】
〔ガスストリッピング技術〕
ガスストリッピング技術とは、液相と気相のガス組成の比率を等しくすることで、液体中のガス成分の調整を行う方法である。
〔脱酸素技術〕
(蒸気式脱気法)
従来からボイラの給水の脱気で実施されていた方法であり、高所に設置された脱気槽中に、蒸気を吹込み、給水を大気圧下で沸点付近の温度に保つことにより、水中のガス成分を脱気する。
(真空脱気法)
水を沸点に保つに当たり、大気圧よりも低い圧力中で実施する方法である。
(膜脱気法)
酸素透過膜と呼ばれる酸素が溶解しやすい膜を用い、膜の反対側を低圧にすることで、水中の溶存酸素が膜を通過して、低圧側に移行することを利用して脱酸素を行う方法である。
【0003】
(窒素置換法)
リアクターと呼ばれる接触器若しくはエアレーターと呼ばれる散水器等を用いて、水中の溶存酸素と窒素をヘンリーの法則に従って置換することにより、水中の溶存酸素を減少させる方法で、ガスストリッピング技術の一形態である。
(窒素置換−気中水滴接触型)
静止型リアクターや分散板等を配置した接触塔の上部から水を散水し、塔内に窒素を吹き込むことで、霧状になった水滴と気液接触させる方法である。
(窒素置換−水中気泡接触型)
エアレーターと呼ばれる機械式の攪拌機により水を運動させると供に、水中に微細気泡を分散させるものや、圧縮気体を水中に噴出させる際に微細気泡を発生させる方法である。
(窒素置換−単段接触法)
窒素ガスと水との接触を1つの接触装置で行い、純度の低下した窒素ガスを外部に排出する方法である。
装置がコンパクトになり、装置も簡単に構成できるが、水中の酸素濃度を低下させる為には、大量の窒素が必要になる。
(窒素置換−多段接触法)
窒素ガスと水との接触を複数の接触装置で行い、最終段の接触装置の窒素ガスをその前段の接触装置のガスとして再利用することで、窒素の消費量を抑制できるが、装置が大型化し装置も複雑化する(例えば、特許文献1)。
【0004】
〔過飽和〕
溶液の中に溶質が過剰に含まれた状態を言い、本発明においては、水の中にその温度及び圧力条件下でヘンリーの法則に従った溶存気体の存在量より過剰に溶存気体が含まれている状態を言う。
例えば、廃水処理等で用いられる加圧浮上法は、高圧水の中に空気を溶存させ、常圧に戻すことで、過飽和状態の空気が微細気泡を発生する原理を利用している。
エネルギーの出入りが無い安定状態では、過飽和を解消することは熱吸収反応である為、10倍程度までの過飽和状態は比較的安定しやすい特徴を持つ。
〔気体の溶解性〕
気体の種類に応じて、水に対する溶解度が異なる。一般に20℃1気圧におけるガスが1mlの水に溶解する体積を溶解度と言い、最も少ないHeが0.009(ml/ml)で、窒素0.016、酸素0.031等となり、CO2では0.88と大きくなる。本発明において対象となるガスは、概ね炭酸ガスよりも溶解度が低いガス成分(難溶解性ガス)を対象とする。
〔インゼクター/エゼクター〕
高速の流体のエネルギーを利用して、負圧を生み出すことの出来る器具のことを言う。例えば、空気や蒸気等を駆動気体として用いる気体インゼクター(エゼクター)や、アスピレーターと呼ばれる水を駆動流体とした負圧発生装置が一般的である。
〔液体霧化装置〕
気体のエネルギーを利用して、液体を霧状に霧化させる装置のことを言う。液体燃料燃焼の場合には、蒸気噴霧式や空気噴霧式のバーナーを採用する例が少なくない。水でも同様の原理にて、蒸気若しくは空気等の圧縮気体を利用して、液体を霧化させることができる。
【0005】
〔気体混合手段〕
気体混合手段とは、2つ以上の気体を混合する為の装置や機構である。
気体は分子の運動量が大きいので、密度や温度が極端に違わない限り、閉空間に閉じ込めた状態で混合状態となる。
しかし、温度や密度が異なる場合には、完全に混合するには時間がかかるので、一般には管路内を乱流状態の速度まで上昇させたり、オリフィスで絞ったり、スタティックミキサーと呼ばれる螺旋羽根を持つ管路内を通過させたり、動力式の羽根を持つ攪拌機等で混合する等の方法がある。
又、送風機やコンプレッサー、真空ポンプ等の圧縮や膨張を行う装置を通過させることでも、気体混合は可能である。
〔水中への気体噴射手段〕
水中への気体噴霧手段は、一般的には、(i)細孔を持つ金属板や、微細な粒子を結合させた焼結体、気泡が連続した構造を持つ発泡体、微細な穴を有する有機質膜等を解して気体を水中に噴射する水中気泡型噴射方法、(ii)気体をノズル状の噴射管から噴射し、噴射の運動エネルギーにより気泡を水中で微細化させ、更に周囲の水を循環させ混合促進を図る水中気流型噴射方法、(iii)回転羽根等を水中で回転させ、遠心力により負圧になった中心部分から気体をいれることで水中に気泡を拡散させるエアレーターやポンプ等のサクション側に気体を入れる動力併用水中気流型噴射方法等がある。
【0006】
〔液体噴射手段〕
液体噴射手段は、一般的には、(i)圧力水をノズルから噴霧させる方法、(ii)多孔板等を介して水を散水する方法、(iii)動力による回転円盤等の遠心力を利用する方法、(iv)前述の気体のエネルギーを利用した2流体ノズル等を利用する方法等の噴霧式液体噴射方法、(v)流下エネルギーを利用して、障害物と衝突させ水滴を飛散させる方法、(vi)固体表面の濡れ性を利用して、固体表面を流下させ接触面積と接触時間を拡大する流下式液体噴射方法等がある。
〔ボイラの給水予熱〕
ボイラは、近年高効率化が進み、エコノマイザーと呼ばれる排ガスを給水と熱交換することで、効率を上昇させる機能が併設される場合が殆どである。
エコノマイザーは、給水温度が低いほど熱交換効率が上昇し、ボイラ効率の上昇に繋がるが、水温が低すぎる場合には排ガス中の水分が結露してしまう。
結露自体は潜熱の回収になるので、効率的には望ましいが、排ガス中に含まれている硫酸分により低温腐食の原因になったり、結露水がボイラ運用の妨げになる場合があり、適正な水温に保つことが望ましい。
使用する燃料中の硫黄濃度や排ガス中の水分比率により異なるが、液体燃料として一般的な低硫黄A重油の場合で約40℃、気体燃料の13Aガスの場合には約30℃が適正水温と考えられている。
【0007】
〔不活性ガス〕
不活性ガスとは、対象となる環境下において、酸化や還元或いは酸性やアルカリ性等を示さず、且つ他の元素等との結合等を行うことの無いガスを示し、代表的なガスはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガス族元素であるが、窒素ガスも一般的な環境下においては、不活性ガスとして用いることができる。
〔気体圧縮手段〕
気体圧縮手段とは、一般的には回転動力を利用したコンプレッサー(レシプロ式、スクリュー式、スクロール式等)を示すが、流体の持つエネルギーを利用して、ダイヤフラムやピストン等の往復動を直接利用するものやインゼクターも低圧領域ではあるが、気体の圧縮作用を持たせることが可能である。
〔流体吸引手段〕
気体吸引手段とは、一般的には回転動力を利用した真空ポンプ(水流式、レシプロ式、スクリュー式、スクロール式等)を示すが、流体の持つエネルギーを利用して、ダイヤフラムやピストン等の往復動を直接利用するものや、インゼクターも性能の優れた気体吸引手段である。
【0008】
〔液体移送手段〕
液体移送手段とは、一般的に回転動力により駆動されるポンプを示すが、気体エネルギーを利用したダイヤフラムやピストン等の往復動を利用したポンプや高速気流による吸引力を利用したインゼクター等も液体移送能力を持つ。
〔液体攪拌手段〕
液体攪拌手段とは、一般的に攪拌機、ミキサー等と呼ばれる回転動力で駆動される液体同士、或いは液体と気体の攪拌を行う装置であるが、静止型ミキサーと呼ばれる液体の流速を利用して混合させる装置や、液体中に、高圧気体や高圧液体等を吹き込んで水流や乱流を発生させる方法もある。
〔温度検出手段〕
温度検出手段としては、白金測温対、熱電対、サーミスター等の温度センサーとそのアンプから構成され、温度信号を電気的な信号に変換したり、予め設定された温度に到達した時にON・OFFする信号を出力するタイプの電気的検出手段の他、バイメタルや流体の温度膨張を利用した機械的動作により、予め設定された温度に到達した時にON・OFFの信号を出力する機械的検出手段等がある。
【0009】
〔蒸気検出手段〕
蒸気検出手段としては、一般的には圧力スイッチの接点信号や、圧力センサーからのアナログ信号により一定圧力を検出する手段の他、温度検出手段により検出する手段がある。
〔流量検出手段〕
流量検出手段としては、流体の差圧、流速、容積、質量等を検出して電気的な信号に変換する流量計と呼ばれるものの他、一定容量のタンクの減量や増量を検出したり、ポンプの規定流量から作動時間等により流量を推定する方法によるもの等がある。
〔流体制御手段〕
流体制御手段としては、流体を弁の開閉によりコントロールする電磁弁やモーター弁・空気作動等のON・OFF制御のものと、電気的空気計装的信号により弁開度をリニアーに制御する制御弁方式のものがある。
【0010】
〔流体切替手段〕
流体切替手段は、通常は三方弁と呼ばれる1の入口と2の出口を持つ弁の出口を切り替えることで実現する。しかし、バルブを2ケ用意し、片方を閉止、片方を開とすることでも同様の機能が実現できる。
それらを、空気や電気的に遠隔で切り替えたり、手動で切替を行う。
その他、出口の片側を安全弁の様にクラッキング圧が必要なバルブにして、片方の弁の開閉のみで、切り替える方法等もある。
〔ガス混合手段〕
ガス混合手段としては、2種以上のガスを、オリフィス部を通過させたり、スタティックミキサー等のミキサーにより混合させる方法によるものが一般的である。
その他、インゼクターを利用すると、高圧気体と、低圧気体を中圧にして混合させることも可能である。
【0011】
〔蒸気供給手段〕
蒸気供給手段とは、元蒸気を受け入れた後、スチームトラップや減圧弁、安全弁、ストレーナーの他、手動弁や電磁弁やモーター弁、制御弁等を組み合わせ、手動若しくは自動的に蒸気を供給する為の装置一式を指すが、元蒸気圧や使用する側の蒸気圧等により機器構成等が異なる場合もある。
〔水蒸気凝縮手段〕
水蒸気凝縮手段は、水蒸気を水と接触させて凝縮させる為の手段の総称であり、アスピレーターと呼ばれるインゼクターと同様であるが、駆動流体が水である装置の吸引口から蒸気を吸わせることで、温水とする方法が一般的である。
その他、水中に蒸気をオリフィスを経由させて凝縮させたり、流下水に蒸気を吸収させる方法、蒸気中に水を噴霧する方法、水と蒸気の接触表面を増やす方法であれば、水蒸気凝縮を行うことができる。
〔ポンプの吸込み能力〕
ポンプの吸込み能力とは、どの程度の高低差のある液面から液体をくみ上げることができるかの能力のことを言う。
水蒸気圧、若しくは対象液体の蒸気圧を無視すれば、大気圧を液体の密度で除した値が対象とする液体の最大の吸込み能力となる。
100000(Pa)÷1000(kg/m)÷9.8(m/s)=10.2(m)
これは、蒸気圧を無視した値であるので、これに吸込む液温における蒸気圧を減じた値を密度で除した値が、吸込み能力の理論値となる。
実際には、ポンプ内部で発生するキャビテーションにより、前記の能力より+50KPa以上高い値が、実用上の吸込み能力である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−106943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
〔脱気方法の分類〕
(蒸気式脱気法)
蒸気式脱気法は、歴史の古い信頼性の高いシステムであるが、非連続操業の場合には熱効率が悪いことや脱気タンクの設置等に特別なスペースが必要となる為、現在では大型のボイラに採用されるだけで、汎用のボイラに使われるケースは少ない。
(真空脱気法)
真空脱気法は、常温付近の給水を脱気することも可能であるが、脱気効率を上げようとすると、大量の水蒸気を真空ポンプが吸い込む必要があり、真空ポンプに大きな動力を必要とする。
(膜脱気法)
膜脱気法は、酸素が選択的に透過しやすい膜を用い、水と接触する反対側を真空とすることで、水中の溶存酸素を除去する方法であり、理論上では真空ポンプは水中に溶け込んでいる酸素を排出するだけであるので、小型で動力も少なくなる。
しかし、気体透過膜は微細な分子レベルの細孔を経由して気体のみを通過させる方法であるので、原理上汚染や温度変化に弱く、蒸気のドレンを回収する場合の給水には適用が出来ない等の課題がある。
(窒素置換−気中水滴接触型)
気中水滴接触型は、気体分子の運動量が、気中では早く水中では遅いことから、微細水滴とすることで、置換効率を上昇させる特徴を持つが、微細水滴を発生させる為に、処理水量に対して大きな接触空間が必要であることから装置が大型化することがある。
又、水量に対する窒素の使用量が少ないことから、大きな容積空間を持つ接触装置内の窒素の純度管理が難しく、特に水量を低下させたり、装置を停止させた場合に、接触装置内の窒素純度が低下し溶存酸素の除去効率が十分では無くなる。
【0014】
(窒素置換−水中気泡接触型)
水中気泡接触型は、微細気泡を水中に分散させる方法であるが、水中気泡型は、気体の運動量の大きい微細気泡中の気体が、気泡周辺の溶存気体と直ちに飽和されてしまい、より遠くの水中の溶存気体と飽和するには時間がかかる。
(窒素置換−単段接触法)
単段接触法では、装置がコンパクトになり、制御も容易であるが、10ppmの溶存酸素を含んだ1mの水中の溶存酸素を0.5ppm以下に低下させるには、接触効率を100%と仮定しても、窒素純度99.9%の窒素を用いた場合凡そ700Lもの大量の窒素を必要とする。
(窒素置換−多段接触法)
前記の問題を解決する方法として、最終段の置換ガスをその前段の塔で用いる多段式の場合には、前記と同様の条件で、理論上2段式では140L、3段式では80L、4段式では60L程度まで窒素量を削減可能である。しかし、実際には2段以上の多段で処理を行っても、置換ガス量が200L以下になると、処理効率が頭打ちになり、2段以上に段数を増やしても装置が複雑化するだけでメリットが無いと判断され、実用装置として2段を超えるストリッピング装置は今まで存在していない。
【0015】
〔解決しようとする課題〕
脱酸素方法を検討した場合に、清浄な水質である場合には、処理効率、部分負荷での運用、窒素等の置換ガスが不要なことを考慮すると膜脱気装置が有利である。
しかし、一般産業用で用いられる水質では水に含まれる様々な不純物により膜の性能が劣化したり、温水では使用できないなどの制約があり、普及は極めて限定的である。
従って、一般産業用レベルの脱酸素プロセスにおいては、ガスストリッピング技術を応用した窒素置換による多段接触法が有利である。
本発明は、このガス置換の多段接触法の置換ガス量減少に伴う処理効率の悪化と、それを改善しながら装置をコンパクト化し、安価で高性能なガスストリッピング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
〔窒素置換−多段接触法の接触効率の向上〕
(接触効率の向上の目的)
本発明においては、一般産業用において実用的であると考えられる窒素置換−多段接触法の前記の課題を克服し、置換ガスの消費量を抑制しコンパクトな脱酸素技術を提供することにある。
(窒素置換による脱酸素作用の課題)
ヘンリーの法則に基づく、脱酸素を行う為に窒素ガスを用いたストリッピングを行う時、通常は気液接触部において、ヘンリーの法則に基づく気液交換が行われ、水側と気体側のバランス比に従って、水側の溶解ガス比率が決定されると考えられていた。
しかし、従来方法の気液接触を行い、多段構成を行った試験装置にて、ガス量を減少させ、水1m当たり200L以下のガス量になると、処理効率が大幅に低下することが判った。
その理由を説明する為に、ヘンリーの法則に従った窒素置換による脱酸素の理論計算を行うと、常温(15℃)状態の水に対する空気バランスした酸素と窒素の溶解度は、次の様になる。
酸素:10.15ppm(7.1NL)
窒素:16.7ppm(13.4NL)
単段処理で、溶存酸素を0.5ppm以下に低下させる理論的な窒素必要量は、気相中の酸素濃度を1%にすることで、達成できるので下記の式で求められる。
1(%)=溶存酸素体積/(溶存酸素体積+溶存窒素体積+必要窒素量)*100
これを必要窒素量を求める式とすると
必要窒素量=(溶存酸素体積−(溶存酸素体積+溶存窒素体積)/100)*100
=688.9NL
ところが、純度の高い窒素ガスが溶存酸素量に対して十分な存在比である場合、窒素ガスの過飽和が解消される際に、気泡周囲の溶存酸素との局部的なヘンリーの法則によるガス置換が行われる。これを、仮に窒素パージと言う。
このパージ後の溶存酸素を1ppm(0.71NL)程度まで減少させれば、窒素ガスが10倍過飽和になっていることで、過飽和が解消され易くなり、過飽和解消される際に、処理水中から分離する気体の酸素濃度は0.3%まで低下し、溶存酸素も0.17ppm程度まで低下させることができる。
即ち、従来の気液接触方法で、単段や2段程度の処理段数の場合には、気相全体とバランスするマクロ的なヘンリーの法則に従ったガス交換を行うより、ミクロ的なヘンリーの法則に従ったパージを利用することで、窒素ガスの消費量が減少し、見かけの処理効率が向上することになる。
しかし、3段以上の処理段数となると、事情は全く異なるものになることが判った。
下記は4段処理の効率100%の理論値の、各段の溶存酸素と処理ガス酸素濃度を示している。
前提条件:
水温:15.5℃
溶存酸素:10.04ppm(7NL)
溶存窒素:16.64ppm(13.3NL)
理論窒素ガス量:60NL
水一段目出口 溶存酸素:5.4ppm、処理ガス酸素11.25%
水二段目出口 溶存酸素:2.8ppm 処理ガス酸素5.8%
水三段目出口 溶存酸素:1.3ppm 処理ガス酸素2.8%
水四段目出口 溶存酸素:0.5ppm 処理ガス酸素1.1%
即ち、
(i)処理ガス量が溶存窒素の5倍以下であり、過飽和状態になると全て吸収されてしまいパージ効果が期待できない。
(ii)水一段目出口を考えると、酸素濃度は11.25%にも上昇し、これは2倍過飽和しただけで、原水の溶存酸素を上回る処理水を後段に送ることになりあり得ない。
従来方法で実用的な4段処理設備が無かったのは、純度の高い最後段のガスが処理水に過飽和して流出し、前断の処理水には後段処理ガスが供給され難くなることにより処理効率が急激に悪化することに起因する。
つまり、多段処理において処理ガス量を200NL以下に抑制しようとすると、それ以上の使用量の場合には、有用であった窒素パージ効果が期待できず、各処理段にて確実に過飽和解消を行い、マクロ的なヘンリーの法則により忠実な処理方法にする必要があった。
200NL以下と言う値は、一般的な水質の難溶解性成分である溶存酸素と溶存窒素の総量20.3NLの約10倍に相当し、その量を下回るガスでストリッピングを行おうとすると、過飽和状態が解消され難くなる為と考えられる。
【0017】
(過飽和解消の条件)
過飽和は、急速な気液接触を行おうとした場合には、必ず生じてしまう現象であると言える。
気体が水に吸収される状況は、水が熱を受け取る反応であり、気体の運動エネルギーが水中でほぼゼロになる値と等しいエネルギーが水に吸収される。
これは、対象気体の凝縮熱とほぼ等しい。
この為、水に対して熱の出入りが殆ど無い場合には、気体が吸収された熱エネルギーが逆に液体中の気体放出エネルギーとなり、気相と水相の濃度バランスが平衡すると考えられる。この場合、気液バランスする為に泡などの発生は無く、気液接触面で直接ガス交換が行われる。
しかし、より大きなエネルギーを加えて気液接触を行うと、その加えたエネルギーは水が蒸発することで相殺され、気液接触の運動が収まった状態では、過飽和となった気体分子の運動エネルギーが安定してしまう。
つまり、過飽和状態の溶存気体が気体になる為にはエネルギーが必要になるが、水の蒸発により温度が低下すると、そのエネルギーを受け取ることが難しくなる為である。
従って、過飽和を解消する為には、運動エネルギーを与えて、過飽和気体が気体となる為に必要な運動エネルギーを与える必要があることが判る。
(過飽和解消の手段)
過飽和の解消には、過飽和を超える気体を泡として水中に存在させると共に、特定のトリガーで、過飽和状態の気体を微細気泡として分離させ、それを親となる気泡に吸収させることで、効率よく過飽和の解消を行うことができる。
この為、まず親となる泡を存在させる為には、200NL(全難溶解性気体の10倍)以上のガスを接触させる必要があるが、多段処理とすることで、供給されるガス量がこれを下回るので、気液分離したガスを繰り返し利用することが不可欠となる。
しかし、これは前述の様に、処理水の溶存酸素濃度を下げる為には、リスクの高い方法であり、僅かでも過飽和状態で後段処理やプロセスに供給されると、後段に送る処理水の溶存酸素濃度を上昇させてしまうこととなる。
【0018】
(気液接触における気圧変動効果)
気圧変動効果とは、気液接触部及びそれと連通する処理水槽の気圧を±10KPa程度振らせ、且つ常温水温の場合には、大気圧に対して最も低い場合の気圧を−10Kpa以下に下げる。この様な気液接触条件下では、水中の気泡も含めた気室は相対湿度がほぼ100%の状態であることが特徴である。この為、加圧時には、親となる気泡の周囲で中の気体成分が過飽和となると同時に、気室側で飽和状態にある水蒸気が、圧縮により水に凝縮するので、そのエネルギーを過飽和気体の運動エネルギーとし、次の減圧過程で親となる気泡の体積が増加すると共に、微小気泡を生じるのであるが、その時に親となる気泡間隔も狭まるので、大きな気泡に微小気泡が吸収されやすくなるのである。
この程度の気圧変化で生じる微細気泡は、通常条件では次の加圧時には消滅してしまうのであるが、水蒸気の凝縮熱を与えられ、且つ周囲に大きな気泡が存在することで、僅かな気圧変化でも効率的に過飽和を解消することができる。
【0019】
(気液接触における水蒸気凝縮効果)
又、もう一つの解決方法として、気液接触部を水蒸気過飽和とすることで、次の理由により溶存気体の過飽和を防止することが可能であることが判った。
ここで言う水蒸気過飽和とは、処理水に対する水蒸気の過飽和のことを指し、その温度における処理ガスとバランスする飽和蒸気圧よりも、高い水蒸気圧を気相に加えることで実現できる。
(i)気液接触部において、水蒸気が過飽和状態であると、処理水と接触した蒸気は直ちに凝縮し、処理水に熱エネルギーを伝える。この熱は溶存気体が気相に移行する為に必要な熱量を大幅に上回るので、過飽和状態で不安定な溶存気体にエネルギーを与えることが出来、過飽和気体は液体から分離可能なエネルギーを持つことができる。
(ii)凝縮された熱により処理水温度が上昇し、溶存気体の溶解度を低下させるので、必要ガス量を抑制することができる。
(iii)蒸気の急激な凝縮に伴い気液接触面では微細な気圧変化を生じ、接触面から離れた位置にある気泡に対しても前記の気圧変動効果を与えることで、気液接触の促進効果がある。
(iv)処理水に熱的なアンバランスが生じることにより、処理水に対流が生じ、気液接触が促進される。
これらの効果を総称して、気液接触における水蒸気凝縮効果と言う。
(水蒸気凝縮効果と気圧変動効果)
上記の水蒸気凝縮効果は、気圧変動効果と組み合わせることにより、更に効果的に過飽和を解消することができる。
即ち、水中に過溶解している溶存気体は、気圧変動効果の加圧工程においては溶解を生じやすい条件になるが、水蒸気凝縮効果により運動エネルギーが与えられているので、微細気泡は吸収され難く、親となる気泡が存在しなくても、減圧工程における微細気泡の結合を促進させる為である。これは、気圧変化を与えずに微細気泡が成長する時間より短時間に気泡の成長を促進できる。
勿論、対象気体を循環利用し、親となる気泡が存在した状況下においても、水蒸気凝縮効果と気圧変動効果は夫々相乗して、過飽和を防止することができる。
【0020】
(窒素ガス以外のガスへの応用)
この方法による過飽和の解消による多段処理における気液接触効率の改善効果は、ヘンリーの法則に従うガスのストリッピングにも有効である。
(過飽和解消の手段のまとめ)
前記の気圧変動効果は、処理ガスの処理水に対する容積比が20%以上の処理系においては、単独で用いても効果があるが、それ以下の容積比の場合には処理ガスの循環利用を行うことで効果が期待できる。
水蒸気凝縮効果は、単独に用いても効果があるが、気圧変動効果や処理ガスの循環利用を組み合わせることで、相乗効果により、更に高い処理効率が期待できる。
【0021】
(水蒸気のエネルギーと特徴)
気液接触部において水蒸気過飽和の条件を達成するのに一番容易な方法は、気液接触部に水蒸気を供給することである。
処理水が、ボイラ用給水である場合には、発生した水蒸気により給水温度を高くすることは、蒸気の持つエネルギーをそのまま回収できるので、給水予熱と言う方法で従来から一般的に実施されている。
給水予熱を行うことで、ボイラの排気ガスの熱回収を行うエコノマイザーと言う給水加熱器のガス側の結露が防止できる他、水温の上昇と共に溶存酸素濃度も低下する。
この様に、ボイラ給水に水蒸気を使用して予熱を行うことは一般的である。
しかし、この使用方法では水蒸気の持つ運動エネルギーと凝縮効果と言う2つの効果を有効利用していない。
水蒸気は、僅か質量1kg圧力0.5MPaの水蒸気でも、コンプレッサー換算で0.3kwの圧縮空気と同等の運動エネルギーを持つ。
又、冷却されると急激に体積を失い凝縮し、大量の凝縮熱を発生する特殊な気体である。
(水蒸気の気液接触効率改善への利用)
不活性ガス気体と溶存酸素の水中接触法においては、水蒸気中に予め必要量の不活性ガスを混合した混合気体を、水中に吹き込むことで、水蒸気の運動エネルギーと熱エネルギーにより、水の混合が良好になると共に、水蒸気が急激に体積を失う際に、予め混合されていた不活性ガスが、水蒸気気泡の周りの処理水のウォーターハンマーの様な衝撃的な圧縮を受け、処理水中に過飽和状態で溶け込む作用がある。
同時に、この時に吸収された熱は周囲の溶存気体にエネルギーを与え、過飽和を解消する為のエネルギーを与える凝縮効果を期待できる。
又、気中接触法においては、流下する水流に水蒸気を噴射したり、処理水を水蒸気を用いて霧化させたりする運動エネルギーとして使用できる他、水蒸気が不活性ガスの温度を上げることにより分子運動が活発になる効果、水蒸気が凝縮する際に、水蒸気混合気体中の不活性ガス分子を水との界面に集め効率よく気液接触させる効果、気体側に含まれる除去ガスの分圧が、水蒸気により希釈される効果、水蒸気が急激に体積を失うことによる気圧の変化が、周囲の処理水と不活性ガス接触面に振動を与え、前述の凝縮効果と相乗して気液接触効率を高め極めて短時間に気液接触を完了できることが判った。
【0022】
(水蒸気の動力源としての積極利用)
水蒸気を動力源とする機関は、インゼクターと呼ばれる流体吸引装置や、液体霧化装置と、蒸気タービン機関、蒸気ピストン機関、蒸気モーター機関等がある。
蒸気インゼクターや液体霧化装置は前述しているが、他の機関においては、電気動力と同様に回転や往復等の機械的運動が可能である。
ただ、一般的に低圧飽和蒸気を動力源とする機械的な運動機関は、低圧蒸気の持つエネルギーの大半が熱エネルギーである為、エネルギー効率が極めて低いので、現在の様に電気的エネルギーが普及している状況下では採用例は殆ど考えられない。
しかし、残余の熱エネルギーの有効利用が可能な場合には、発電を行う場合熱エネルギーからの電気的エネルギーへの転換効率が最高でも50%程度であることを考慮すると極めて高効率である。
そして、蒸気機関は排気側を低温の水と熱交換させ凝縮させることで減圧し、作動媒体である気体の体積が増加するので、常圧の外気に放出するよりも、機械的エネルギーをより多く取り出すことが可能になる。
【0023】
本発明の請求項1にかかる気液接触方法は、気液接触装置の気液接触部にて、対象ガスと処理水とを接触させる気液接触方法において、新たに供給される対象ガス量が処理水に含まれる難溶解性ガス総量の10倍以下である場合に、下記処理(i)〜(iii):
(i)気液接触部の気相を水蒸気過飽和とする処理、
(ii)分離ガスを循環利用し、処理水に対する気体の容積混合比を20%とする処理、
(iii)気液接触部及びそれと連通した貯留槽の気相圧力を、処理水の平均水温における水蒸気圧に95KPaを加えた圧力よりも下回る減圧工程と、その減圧工程圧力よりも少なくとも10KPa望ましくは20KPa以上高い加圧工程を1サイクルとして、処理水が各単位の気液接触部及び貯留槽に存在している間に1サイクル以上行う処理、
の内、前記処理(i)については単独で又は前記処理(ii)若しくは(iii)と併せて実施するか、前記処理(ii)については前記処理(iii)と併せて実施するか、或いは、前記処理(i)〜(iii)の全てを実施することを特徴とする。
【0024】
本発明によれば、上記のように、対象ガスの過飽和状態を解消できるので、多段処理で対象ガス量が少なくなった場合でも、処理効率を向上させることができる。なお、処理(i)によって水蒸気凝縮効果を利用でき、処理(ii)によってガス循環利用ができ、処理(iii)によって気圧変動効果を利用できる。
【0025】
本発明の請求項2にかかる気液接触方法は、請求項1に記載の気液接触方法において、前記処理(iii)を実施する場合、前記気液接触装置は、一次側の圧力が二次側の圧力より高くなるか、予め設定された圧力になると処理ガスを系外に排出し、それ以下の圧力では処理ガスの排出及び逆流を防止する逆流防止手段若しくは圧力調整逆流防止手段を備えた排気手段を持つ気密型の気液接触部を備え、該気液接触部の原水入口部に原水制御手段を備えるか、給水源の圧力を下限圧力以下とした原水供給手段を備え、該処理水出口部には、吸込み能力が1m以上の給水移送手段を備え、給水移送手段の最大流量より多い流量と、最小流量より少ない流量か遮断する様に原水流量を、前記原水制御手段若しくは原水供給手段でコントロールすることで、前記気液接触部における気相と水相の容積比を変化させ、気圧変化を生じさせることを特徴とする。
【0026】
本発明では、取扱が難しく高価な真空ポンプやコンプレッサーを用いずに処理(iii)を実施(気圧変動効果の利用)に必要な減圧工程と加圧工程を実現できる。
【0027】
本発明の請求項3にかかる気液接触方法は、請求項1及び2に記載の気液接触方法において、前記気液接触部と、前記気液接触部に前記処理水を供給する処理水供給手段と、前記気液接触部に前記対象ガスを供給する対象ガス供給手段と、前記気液接触部から前記処理水を外部に流出させる処理水取水手段と、前記気液接触部から前記対象ガスを排出する対象ガス排出手段と、から構成される気液接触手段を1構成要素とし、その処理水ラインを複数段直列に接続し、処理水の最後段の構成要素に高純度の対象ガスを供給し、そこで排出された対象ガスを前段の構成要素の供給ガスとすることで、対象ガスの消費量を削減する多段気液接触処理において、前記処理水の原水に含まれる溶存気体が、原水温度の飽和状態と概ね一致し、かつ、原水の平均温度が比較的安定している場合には、前記平均温度が55℃以下である場合には4段、前記平均温度が55℃超80℃以下である場合には3段、前記平均温度が80℃超90℃未満である場合には2段、前記平均温度が90℃以上である場合には多段処理を選択しない、と言う処理段数基準に基づいて、処理段数を調整し、前記処理水の原水の平均温度の変化が大きい場合には、最低温度から前記処理段数基準に基づく処理段数の設備とし、各処理段の処理水流路をバイパスするバイパス手段、及び、気液接触の為の動力源遮断手段のうちの少なくとも一つと、前記処理水の温度を検出する温度検出手段と、を備え、該温度検出手段で検出された前記処理水の温度が予め設定された水温に達した場合に、前記バイパス手段及び前記動力源遮断手段のうちの少なくとも一つを制御し、処理段数を調整することを特徴とする。
【0028】
本発明によれば、処理水の温度の上昇と共に気体溶解度が減少することで、対象ガスの使用量も減少するので、処理段数を増加させても対象ガスの使用量の削減効果が少なく、同時に水温が高い場合には処理段数が増加することで、放熱面積も増加し熱エネルギーの損失が大きくなる。
その為、水温が安定している場合には平均温度に応じてランニングコストとイニシャルコストから判断して最もパフォーマンスの良い処理段数決定が可能となる。
しかし、季節変動等により平均水温が変化する様な場合には、最低水温を基準として処理段数を決定した設備とし、水温に応じて処理段数を動的に変化させることで、動力の無駄と放熱損失を低減できるので、経済的効果が高いシステムとなる。
【0029】
本発明の請求項4にかかる気液接触方法は、請求項1乃至3に記載の気液接触方法において、前記処理(i)を実施する場合、前記気液接触装置は、前記水蒸気を供給する水蒸気供給手段と、外部より供給される対象ガス、又は気液分離した接触済み対象ガスのうちの少なくとも一つを供給する対象ガス供給手段と、を備え、さらに、前記水蒸気供給手段及び前記対象ガス供給手段からの水蒸気及び対象ガスを予め混合する水蒸気対象ガス混合手段、並びに、該水蒸気対象ガス混合手段からの混合蒸気を、前記気液接触部内の処理水に吸収させる混合蒸気凝縮手段を備えるか、処理水と対象ガスが前記気液接触部において予め混合状態である場合には、前記水蒸気供給手段からの水蒸気を、混合状態である処理水及び対象ガスに吸収させる水蒸気凝縮手段を備えるか、或いは、前記両方の蒸気凝縮手段を備え、前記気液接触部内の処理水に、前記混合蒸気または前記水蒸気を凝縮させることを特徴とする。
【0030】
本発明によれば、水蒸気が凝縮する際に、水蒸気凝縮効果に加えて流体の攪拌効果、気体分圧低下効果、気体分子の巻き込み効果等が複合的に作用し、極めて高い接触効率を得られることと、目的が脱酸素である場合には、水温の上昇効果により対象ガス消費量を抑制することができるので、コンパクトで経済性に優れた気液接触方法を実現できる。
【0031】
本発明の請求項5にかかる気液接触方法は、請求項1乃至3に記載の気液接触方法において、前記処理(i)〜(iii)の全てを実施する場合、前記気液接触装置は、前記気液接触部内へ処理水を供給する液体移送手段として、水蒸気を駆動エネルギーとする蒸気駆動液体移送手段を備えるか、前記気液接触部内の対象ガスの移送手段として、水蒸気を駆動エネルギーとする蒸気駆動ガス移送手段を備えるか、或いは、前記気液接触部内の処理水と対象ガスの攪拌手段として、水蒸気を駆動エネルギーとする蒸気駆動攪拌手段を備え、さらに、前記蒸気駆動液体移送手段、前記蒸気駆動ガス移送手段及び前記蒸気駆動攪拌手段のうちの少なくとも一つの水蒸気駆動手段からの運動エネルギーの低下した水蒸気を処理水に吸収させる蒸気凝縮手段を備え、下記(i)〜(iii)の方法:
(i)駆動用の水蒸気に予め対象ガスを混合する方法、
(ii)前記蒸気凝縮手段に流入する前に対象ガスを混合する方法、
(iii)水蒸気を吸収させる処理水を対象ガスと予め混合状態にしておく方法、
のうちのいずれかの方法で、前記気液接触部内に、水蒸気過飽和の状態を存在させることを特徴とする。
【0032】
本発明によれば、ガス循環利用を行う為に蒸気の持つ運動エネルギーを利用した後の、運動エネルギーの低下した水蒸気の蒸気凝縮効果により気液接触効率を上昇させることが出来、更に水温の上昇効果により、目的が脱酸素である場合には、対象ガスの消費量を抑制することができるので、極めてエネルギー効率に優れた気液接触方法を実現できる。
更に、蒸気の動力エネルギーを利用することで、圧力の低い状態にある処理済みガスを、高い状態の位置に供給できるので、ガスの循環利用に関しても、気圧変動効果との併用をより確実に実現することができる。
【0033】
本発明の請求項6にかかる気液接触方法は、請求項5に記載の気液接触方法において、前記気液接触装置は、処理水の流路の一部に、温度を検出できる温度検出手段、及び、処理水の流量を検出できる流量検出手段のうちの少なくとも一つの検出手段を備え、さらに、前記検出手段で検出された処理水の温度または流量に基づいて、前記水蒸気駆動手段への水蒸気の供給を制御する駆動用水蒸気制御手段、或いは、前記検出手段で検出された処理水の温度または流量に基づいて、前記蒸気凝縮手段への運動済み水蒸気の供給を制御する凝縮用水蒸気制御手段を備え、処理水の温度が予め設定された規定の温度以下である場合か、処理水の流量が予め規定された流量以上である場合、或いは、両方の条件を満たす場合に、前記水蒸気駆動手段への水蒸気の供給、若しくは運動済み水蒸気の処理水への凝縮を行うことを特徴とする。
【0034】
本発明によれば、元々水温が高い場合や、処理水流量が少なく、蒸気動力による気液接触処理が困難な場合に、水蒸気動力を停止し、処理ガスの循環利用と気圧変動効果による過飽和解消手段に変更することで、処理水への蒸気吸収を防止できるので、安全性が高い気液接触方法を実現できる。
【0035】
本発明の請求項7にかかる気液接触方法は、請求項1乃至6に記載の気液接触方法において、前記気液接触装置は、処理水の流路若しくは前記気液接触部に、温度を検出できる温度検出手段と、処理水の流量を検出できる流量検出手段と、を備え、さらに、水蒸気を使用する場合には、処理設備への供給蒸気の蒸気検出手段、循環対象ガス流量検出手段、及び凝縮蒸気流量検出手段のうちの少なくとも一つから判断されるシステム動作正常検出手段と、前記温度検出手段からの信号から飽和酸素濃度を求める飽和酸素濃度演算手段と、前記飽和酸素濃度、気液接触の処理段数、対象ガス純度、及び、システムの動作が正常である場合の気液接触処理効率から単位流量当たりに必要な対象ガス量を演算する必要対象ガス量演算手段と、該必要対象ガス量演算手段からの信号と、前記流量検出手段からの信号により処理水流量に応じて対象ガスの必要量を演算する比例演算手段と、該比例演算手段からの信号により、処理水流量に応じた対象ガス流量に調整する対象ガス流量調整手段と、を備え、処理水の流量、温度、処理段数、システム状態、ガス純度に応じて、対象ガス流量を自動調整することを特徴とする。
【0036】
本発明によれば、水温の変化や、処理段数、蒸気供給の有無に合わせて、必要な対象ガス量を得ることができるので、対象ガスの過不足の無い効率的な運用が可能である。
【0037】
本発明の請求項8にかかる気液接触方法は、請求項7に記載の気液接触方法において、前記システム動作正常検出手段からの信号により水蒸気凝縮効果を期待出来ない場合には、処理ガスの循環利用及び気圧変動効果のみで対応できる単位時間当たりの処理水量に応じて、前記必要対象ガス量演算手段の気液接触効率の値をシステムが正常な場合より少ない値に調整することを特徴とする。
【0038】
本発明によれば、ボイラの起動前の水張り等、小流量の処理水利用用途においては、蒸気が無くても、規定の溶存酸素濃度の処理水を供給できるので、蒸気を使用しない脱気装置等を備える必要が無く、経済的である。
【0039】
本発明の請求項9にかかる気液接触方法は、請求項7または請求項8に記載の気液接触方法において、前記気液接触装置は、垂直に配置された気液接触部と、該気液接触部の最上部よりも低い液面を持つ貯留槽から構成される気液接触手段において、該気液接触部処理水立下り部と貯留槽の気室を連通させたガス循環管路を備え、後段の気液接触手段若しくは処理水利用設備へ処理水を供給する処理水供給手段出口に、該処理水供給手段の処理水出口と気液接触手段への処理水入口を連通させる切替手段を備えるか、気液接触手段に処理水を供給する処理水供給手段の入口に、前段の気液接触手段からの処理水若しくは原水入口と、気液接触手段からの処理水出口を連通させる切替手段を備え、前記システム動作正常検出手段からの信号により蒸気供給が無い場合や、処理水の温度や流量が少なく、蒸気動力を遮断する場合には、前記切替手段により前記処理水供給手段の液体移送能力を利用して前記気液接触手段内の処理水を循環させ、且つ各段の気室圧力を前段からの切替手段及び後段への切替手段の調整により気圧変動を行い、気液接触部の立下り部に形成されるサイホン作用により分離済み処理ガスを循環させることを特徴とする。
【0040】
本発明によれば、蒸気動力が無い場合や、水温が高い場合、水流量が少なく蒸気動力の使用が困難な場合に、接触効率の低下を補う為に処理水の循環を行うことで、気圧変動効果と分離ガスの循環利用を行うことで、処理効率の低下を防止でき、対象ガスの使用量を削減でき経済的である。
【0041】
本発明の請求項10にかかる気液接触方法は、請求項7乃至請求項9の気液接触装置において、前記気液接触装置は、原水入口から処理水出口までが連通した流路を備え、該連通流路の上流側に液体循環手段入口を連通し、気液接触部を経由して処理水槽に貯留した処理水を、該液体移送手段入口の下流側に戻す循環流路を備え、該気液接触装置の最大給水の流量より移送能力の大きい液体循環手段を備えた循環型気液接触装置を一段とし、該循環型気液接触装置を多段に構成し、該処理水槽の少なくとも一つに、液面検出手段を備え、該連通流路の再上流に流量制御手段を備えることを特徴とする
本発明によれば、水面制御が簡略化できること、処理段数の調整が液体循環手段のON/OFFのみで制御できることで装置を簡略化することができる。
【0042】
本発明の請求項11にかかる水の脱酸素方法は、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の気液接触方法において、前記対象ガスとして不活性ガスを用い、前記処理水中のガス組成を前記不活性ガスのガス組成に置換させることを特徴とする。
本発明によれば、上記のように、対象ガスの過飽和による影響を排除できるので、置換ガスの利用効率が高くコンパクトな脱酸素技術を提供することができる。
更に、副次的な効果として、一般水中には遊離炭酸と呼ばれる過飽和状態の炭酸ガスが含まれている。これは炭酸イオンや重炭酸イオンとは異なり、本来はヘンリーの法則に従い、大気中の炭酸ガス濃度(約0.04%)と平衡して、1ppm以下の値である筈であるが、水源での過飽和を維持しやすく、地下水等では20〜50ppm程度含まれている場合が多い。
本発明は、ストリッピングを行う過程で過飽和を解消する技術でもある為、この過飽和状態の遊離炭酸も同時に過飽和解消する効果がり、特に蒸気ボイラの給水用途には好適である。
【0043】
本発明の請求項12にかかる脱酸素方法は前記請求項11において、前段の処理単位から次段の処理単位に供給される排ガス若しくは大気に排出される排ガスの酸素濃度を計測する酸素濃度検出手段と、請求項7記載の処理ガス量演算手段(必要対象ガス量演算手段)に、予想される処理ガス中の酸素濃度演算回路を少なくとも一段分を備え、該酸素濃度検出手段の酸素濃度値と、同一場所の予想される酸素濃度演算値の比較を行う酸素濃度比較演算回路とを備え、該酸素濃度比較演算回路で、酸素濃度が高すぎる場合、酸素濃度が低すぎる場合に、何れか一方、若しくは両方の警報を出力することを特徴とする。
本発明によれば、水温が上昇すると計測を行うことが困難な水中溶存酸素計を用いること無く、信頼性の高いジルコニア式或いは磁気ダンベル式等の気体用の酸素濃度計を用いることができるので、装置の異常、即ち酸素濃度が高い場合には窒素ガスの不足や装置内への外気の混入、酸素濃度が低い場合には、窒素ガスの過剰や接触効率の低下等を間接的に監視でき、信頼性の高い装置を提供することができる。
【0044】
〔処理水に対する水蒸気量の適正比率〕
(給水予熱が有用でないケース)
水道水供給系や冷水供給系の様に、水温を上昇させることが望ましく無い場合には、水蒸気の使用量は必要最低限に留めることが望ましく、処理水量に対して、0.005〜0.1倍程度の蒸気使用量が適正値である。
(給水予熱が有用なケース)
蒸気ボイラ、温水系統への給水等の場合は、水温を上げることが無駄にならないので、蒸気の利用比率を上げても、蒸気エネルギーが有効に利用できる。
この様な用途の場合には、本発明に係わる給水ラインの放熱を抑制することで、蒸気使用量を増加させても、エネルギーを再利用できるので、蒸気の使用量のエネルギー的な制約は少なくなる。
しかしながら、概ね処理水の水温が100℃を超える様な蒸気量の使用は、蒸気による脱気法に近くなることと、水温が飽和温度近くになると、ポンプ類の吸込み効率が悪くなったり、停止時の放熱ロスが大きくなるので経済的効果が低下する。
従って、水温20℃の処理水の場合の処理水に対する適正蒸気使用量は、質量比で、0.01〜20%が望ましい。
【0045】
〔窒素ガス必要量の計算〕
本発明の第一の目的である脱酸素処理を行う場合の窒素ガスの必要量を求める計算式は次の様に求めることができる。
(溶存酸素を求める計算式)
酸素溶解度(mol)は下記式で求めることができる。
酸素溶解度=EXP(A+B/((温度(℃)+273)/100)+C*LN((温度(℃)+273)/100))
A:−66.73538
B:87.47547
C:24.45264
酸素溶解量(容量ppm)は下記式で求めることができる。
酸素溶解量=酸素溶解度*1000000*0.21*32/18
水蒸気分圧考慮酸素溶解量(容量ppm)は下記式で求めることができる。
水蒸気分圧考慮酸素溶解量=酸素溶解量*(1.033−水蒸気分圧(bar))/1.033
ここで、水蒸気分圧は蒸気表より求める。
(処理段数に応じて理論窒素消費量を求める計算方法)
これは、単段処理の場合であれば、処理水に含まれる溶存酸素濃度、窒素ガス純度、及び窒素ガス量の3点のパラメーターにより、処理水に含まれる、水酸素ガス容積及び水窒素ガス容積を求め、窒素ガス純度から、ガス酸素ガス容積及びガス窒素ガス容積を求め、さらに、全酸素ガス容積と全窒素容積を求める。
窒素溶解度(mol)は下記式で求めることができる。
窒素溶解度=EXP(A+B/((温度(℃)+273)/100)+C*LN((温度(℃)+273)/100))
A:−67.38765
B:86.32129
C:24.79808
窒素溶解量=窒素溶解度*1000000*0.79*28/18
水蒸気分圧考慮窒素溶解量=窒素溶解量*(1.033−水蒸気分圧)/1.033
処理後溶存酸素濃度(容量ppm)は下記式で求めることができる。
処理後溶存酸素濃度=初期溶存酸素濃度*(全酸素/(全酸素+全窒素))/(21/100)
処理後の窒素ガス純度(容量%)は下記式で求めることができる。
処理後の窒素ガス純度=(1−全酸素/(全酸素+全窒素))*100
2段以上の処理の場合には、各段の処理毎に上記の試算を行うが、前段の窒素ガス純度が後段の処理済みの窒素ガス純度となり、後段に送られる溶存酸素が前段の処理後の溶存酸素となる様に、再帰的に演算を行うと、排出される窒素ガス濃度及び処理水溶存酸素濃度が収束する。
窒素ガス量を変化させて、その収束した時の溶存酸素濃度が再帰演算により求められるので、窒素ガス量を変化させながら、溶存酸素濃度を試算することで、多段処理の場合の必要窒素ガス量を求めることができる。
しかし、制御上で用いるには、この演算方法は演算処理系統に負担が大きいので、それらをプロットした値から近似式を求めて利用したり、プロット点間を区間比例法等により求めることが一般的である。
参考に、図6a〜図6gに窒素純度99.9%における理論窒素消費量のグラフを記している。
【0046】
(処理効率を加味した実際必要窒素量の算定方法)
目標とする溶存酸素濃度に必要な窒素ガス量を、処理効率を加味して求めることは、前記の再帰演算の中で処理効率を加味して演算する必要があり、動的に求めることはやはり演算処理系統に負担が大きいので、処理条件に応じて接触率を加味した値を試算しておき、やはり処理パターンに応じて、プロット済みのデータを近似処理や比例法等により求めることが一般的である。
(必要窒素量を求めることの重要性)
窒素置換による脱酸素方法を初め、ガスストリッピング技術を利用する気液接触方法では、水温によって原水に含まれているガス成分濃度が大きく変化し、それに伴う対象ガス消費量も大きく変化する。
特に多段法においては、理論値や装置の性能に基づく実際必要量等が、水温によって大きく変化しやすいので、この様な演算に基づき管理することが装置の保守管理上も重要である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1a】タンク内の水中噴霧式の窒素置換法の一例を示す説明図。
【図1b】管路内の水中噴霧式の窒素置換法の一例を示す説明図。
【図2a】水蒸気窒素混合ガスを用いた気中接触型の窒素置換法の一例を示す説明図。
【図2b】水蒸気窒素分離型気中接触型の窒素置換法の一例を示す説明図。
【図2c】水蒸気窒素ガス混合噴霧式水ノズルを用いた気中接触型の窒素置換法の一例を示す説明図。
【図2d】水蒸気噴霧式水ノズルを用いた気中接触型の窒素置換法の一例を示す説明図。
【図2e】槽内対向流式気中接触型への応用の一例を示す説明図。
【図2f】処理水ポンプの吸込み能力と給水制御弁を用いて、気圧変動効果を実現するフローの一例を示す説明図。
【図2g】給水源の圧力が、気圧変動効果に必要な下限圧よりも低い場合の、気圧変動効果を実現するフローの一例を示す説明図。
【図3a】インゼクター式の水蒸気混合気体生成器の一例を示す説明図。
【図3b】蒸気噴射ノズルの一例を示す説明図((A)側面図、(B)正面図)。
【図3c】水蒸気噴霧式水ノズルの一例を示す説明図((A)一部断面側面図、(B)正面図)。
【図4a】多段式脱酸素装置のフローの一例を示す説明図。
【図4b】水温による処理段数の動的変更を行う多段式脱酸素装置のフローの一例を示す説明図。
【図4c】水蒸気駆動機関を用いた多段式脱酸素装置のフローの一例を示す説明図。
【図4d】連通管式循環型気液接触装置を持つ多段式脱酸素装置のフローの一例を示す説明図。
【図4e】連通管式循環型気液接触装置を持つ多段式脱酸素装置のフローにおいて、連通管が処理水槽の一部を兼ねるフローの一例を示す説明図。
【図4f】連通管式循環型気液接触装置を持つ多段式脱酸素装置のフローにおいて、連通管に逆止弁を備え、処理水槽間の逆流を防止する一例を示す説明図。
【図5】水温検出式窒素量調整型の多段式脱酸素装置のフローの一例を示す説明図。
【図6a】溶存酸素濃度2%の原水の理論窒素消費量を示すグラフ。
【図6b】溶存酸素濃度4%の原水の理論処理消費量を示すグラフ。
【図6c】溶存酸素濃度6%の原水の理論処理消費量を示すグラフ。
【図6d】溶存酸素濃度8%の原水の理論処理消費量を示すグラフ。
【図6e】溶存酸素濃度10%の原水の理論処消費量を示すグラフ。
【図6f】溶存酸素濃度12%の原水の理論処消費量を示すグラフ。
【図6g】溶存酸素濃度14%の原水の理論処消費量を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0048】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1aは、本実施形態に係わる水中噴霧式の窒素置換脱酸素装置の一例である。
処理水槽(1)の下部には、蒸気インゼクター(24)と緩衝室(27)が配置されており、蒸気インゼクター(24)には蒸気管(21)と窒素配管(11)が接続されている。
緩衝室(27)と処理水槽(1)は、スクリーン(28)で仕切られている。
スクリーン(28)は、微細な穴を持った焼結体や金属の多穴板等で作られているが、蒸気の熱に耐えられることと、スクリーン(28)から噴出した蒸気が体積を失う時に発生する振動に耐えられる構造であることが必要である。
原水配管(31)から流入した原水は、スクリーン出口を取り囲む様に設置されている内管(9)に流入する。
蒸気インゼクター(24)には、原水の流入と同時に蒸気と窒素を吹き込む、窒素量は原水の溶存酸素濃度と処理後の処理水に求められる溶存酸素濃度に応じて決定され、蒸気量は窒素量の50倍程度(質量比)を供給する。尚、蒸気量は窒素量の5〜200倍が好ましい。
スクリーン(28)から水蒸気混合ガスが噴霧されると、内管(9)の中に流入した原水と熱交換され、蒸気は微細穴出口付近で消滅する。
内管(9)に流れる原水の流速は10cm/s程度の低速な流量で良く、噴出蒸気による攪拌効果で、内管内の原水は均等に過飽和状態となり、処理水槽(1)内を上昇する。
内管(9)を出た辺りから微細な気泡が発生し、結合しながら気液分離が行われる。発生した置換済みのガスは、逆止弁(13)を経由して窒素排気管(12)から外部に排出され、処理水は処理水配管(32)を経由して脱酸素水利用機器へ供給される。
緩衝室(27)は、蒸気インゼクター(24)が噴出する蒸気の流速を落とすことにより、運動エネルギーを圧力に変換する為に必要な空間で、この緩衝室(27)により窒素配管部分を負圧に保つことも可能になる。
【0049】
図1bは、配管中でガス交換を行う場合の窒素置換脱酸素装置の一例である。
接触管(66)の上流側にスクリーン(28)で仕切られた緩衝室(27)とその緩衝室内に水蒸気のエネルギーにより窒素を吸入しながら緩衝室(27)に水蒸気混合ガスを供給する蒸気インゼクター(24)が配置されている。
処理水は、原水配管(31)を経由して接触管内を通過し、ガス分離室(29)を経由して、処理水配管(32)を通じて処理水が流出する。
ガス分離室上部には、自動ガス抜き弁(25)を経由して、窒素排気管(12)が連通している。
処理水は、接触管入口部で、スクリーン(28)を通過した水蒸気混合ガスと接触し、水蒸気が凝縮する際の気体の圧縮作用と、接触管内に伝わる衝撃により窒素ガスと処理水との気液混合が促進される。
蒸気接触点から距離が離れると、水中から分離した微細気泡同士が結合を始め、ガス分離室付近で上部にガスを分離し、分離されたガスは自動ガス抜き弁(25)を経由して系外に排気される。
尚、図1aにおいても、図1bにおいても、図面上は明記されていないが、窒素排気管(12)と窒素配管(11)を接続し、水中に吹き込まれる窒素ガスの体積を増加させながら、一部のガスを系外に排出する様なガスの循環利用を行うことも可能である。
この場合には、水蒸気の凝縮による水蒸気凝縮効果と同時に、水中に放出されたガスの運動効果と、核となる気泡が存在することにより、更に効率的に気液接触を行うことができる。
これは、エアレーターと呼ばれる回転式の羽根を持ち、その中心部を負圧として、エアレーションを行う装置と同様の効果であるが、負圧発生構造が簡単で、水流の拡散方向を一方向に限定することができるので小型化や高流速化が容易で、多段に構成しても設備コストを抑制することができる。
図3aは、本実施形態等で使用する蒸気インゼクターの構造図である。蒸気入口(61)から流入した蒸気が蒸気ノズル(62)で高速流となり、ディフューザ部(63)で速度が低下し圧力を取り戻し、出口部(64)を経由して排気される。
この時、吸込部(65)には負圧が発生し、気体や液体を吸引し、出口部から蒸気と共に排出される。
尚、水蒸気を使用した気液接触においては、水蒸気の運動エネルギーが大きい為、特別な接触板や接触材等の接触助材を用いること無く十分な接触効率を得ることができるが、それら気液の接触効率を高める効果のある機構を備えても、特に問題なく使用することができる。
【0050】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。
図2aは、本実施形態に係わる気中接触式の窒素置換脱酸素装置のフロー図である。
処理水槽(1)上部には、接触塔(6)が配置されており、接触塔下部は処理水槽の水面下で開放されている。
接触塔(6)には気体混合器(26)が接続されており、気体混合器(26)には蒸気配管(21)と窒素配管(11)が接続されている。
接触塔上部には散水板(7)を介して原水配管(31)が接続されている。
原水配管(31)から原水が通水されると、散水板(7)で分散された水流が、接触塔内に流下する。同時に、蒸気配管(21)と窒素配管(11)を経由して、蒸気と窒素が第1実施形態と同様の混合ガスが混合器内で生成され、接触塔(6)に供給される。尚、蒸気量は窒素量の5〜100倍(質量比)が好ましい。
流下した水流と水蒸気が接触すると、水蒸気は凝縮し体積を失うので、混合ガスは滴下された水滴に向かって高速流を形成する。
従って、水滴表面には窒素ガスが高濃度で滞留するが、水蒸気が凝縮することによる高速流で、気体分子の運動方向が制限され、過飽和状態で水滴に溶け込むことになる。
しかし、同時に水中の溶存気体分子は、水蒸気の凝縮熱により、過飽和を解消するのに十分なエネルギーを与えられており、
窒素ガスが過飽和状態で溶け込んだ水滴は、接触塔下部に落下し、気相中の水蒸気の過飽和度が低下し、水蒸気凝縮が弱まると直ちに気泡は処理水槽内で分離される。
気液分離された処理済みのガスは、窒素排気管(12)から排出される。
処理水は処理水配管(32)を経由して、脱酸素水利用機器へ供給される。
この場合の水蒸気の使用率は、単段で処理水1m当たり凡そ5kgである。
【0051】
図2bは、図2aとほぼ同様の構成であるが、窒素ガスの流入点が接触塔(6)上部の散水板(7)手前の原水配管(31)であり、水滴状に落下する処理水の中段付近で蒸気ノズル(62)から蒸気を噴射することで、蒸気の運動効果と、蒸気が処理水に凝縮する際の周囲の不活性ガスの巻き込み効果により気液接触を促進させる。
図2bで使用する蒸気ノズル(62)は、図3bの様に、横型にスリットの入った扇型のスプレーパターンを持つノズルであると、円形の接触塔内を落下する処理水に均等に水蒸気が接触するので効率が良い。
この場合の蒸気の使用率は、単段で処理水1m当たり凡そ2kgである。
【0052】
図2cは、蒸気インゼクター(24)を処理水の吸引と、窒素ガスの吸引に使用し、霧状になった処理水と窒素ガスを、水蒸気の凝縮作用により気液促進させる方法の一例である。
この実施例では、処理水を移送するポンプと窒素ガスを移送するコンプレッサーの両機能を一台の蒸気インゼクター(24)で行うことができ、インゼクター内でも処理水と窒素ガスの気液接触が行われ、接触塔内では水蒸気の凝縮作用により気液接触が促進される。
この場合には、水蒸気の使用量が多くなり、単段で水1m当たり凡そ30kgの水蒸気が必要になるので、給水予熱効果も期待できる。
【0053】
図2dは、噴霧部により微細な水粒子を形成する蒸気式液体噴霧ノズル(70)を使用した例である。
数μmの微霧を形成し、窒素ガスと気液接触を行うと同時に、水蒸気凝縮に伴う促進効果で短時間に処理が可能である。
図3cは、蒸気式液体噴霧ノズル(70)の構造の一例である。蒸気入口部(61)から供給された蒸気は噴射穴(71)の入口部で高速流となり、原水配管(31)から供給される原水を霧吹きの原理で霧化させ、噴射穴(71)から微細な霧として噴霧される。
尚、この噴霧ノズル(70)の場合には、流体の吸引能力は無くポンプにて凡そ0.3MPaに上昇させる必要がある。又、蒸気の消費量は最も多く、単段で1m当たり凡そ50kgの0.5MPa程度の圧力の水蒸気が必要である。又、窒素ガスを予め蒸気の中に混合しておくことも可能である。
尚、この様な構成で、接触塔上部が処理水槽水面より低く設定されると、蒸気が無い場合に、原水又は処理水のみを供給すると、窒素配管(11)はサイホン作用で負圧となり、窒素排気管(12)と連通させることで、分離ガスの再循環が可能となる。
【0054】
図2eは、接触塔内対向流型の実施例である。
窒素は窒素配管(11)から貯留槽(1)上部に供給され通気管(8)を逆流しながら窒素排気管(12)を経由して系外に排気される。
原水は原水配管(31)から塔内に供給され、散水板(7)を経由して、窒素ガスとは逆に貯留槽(1)に流下する。
流下する処理水と上昇する窒素ガスが存在する空間に、蒸気ノズル(62)により蒸気を噴霧することで気液接触効率を上昇させる。
対向流型の特徴は、定格運転時には接触塔内で、窒素ガスと処理水との濃度勾配が出来ることで、多段構成と同様のガス利用の向上効果が期待できることである。
しかし、従来型の静止型リアクタータイプ(散水板)の場合には、静止型リアクターと呼ばれる流下水と上昇する気体とを対抗的に流通させる接触器が必要な為、処理水の流速を上げるのが困難で、装置が大型化すると同時に、十分な置換効率を得ることが難しかった。
本実施例では、流下する水流と上昇する窒素ガスに水蒸気を噴霧することで、運動エネルギーと水蒸気凝縮効果により処理効率が向上するので、流速を早めることが出来、装置をコンパクトに設計できる。
又、蒸気ノズル(62)を蒸気エゼクターに変更し通気管(8)を無くすことも出来、この場合下段の処理ガスを吸込み、蒸気エゼクターから混合ガスを吹き込む様に構成する、この場合には散水板の細孔を処理ガスが逆流し易くなる為、接触効率が向上し、処理室内が負圧傾向となるので、より過飽和の生じ難い条件となる。更に、蒸気を間欠的に供給することで、気圧変動効果を与えることもできる。
【0055】
図2fは、気圧変動効果を与える為の基本構成であり、原水タンク(2)の水面レベルが、接触塔(6)の最上部よりも高い場合を示している。尚、水面レベルの変動がある場合等は適宜ポンプを追加する場合も同一の効果が期待できる。
原水は、原水配管(3)を経由して、原水制御弁(45)において、フロートスイッチ(43)の処理水槽高液面(9a)で遮断し、処理水槽低液面(9b)で開となる制御になっている。
窒素ガス若しくは前段の処理済みガスは窒素配管(11)から、逆止弁(13)を経由して接触塔に供給される。
又、処理済みのガスは、窒素排気管(12)に接続された逆止弁(13)を経由し、外気若しくは次段の接触塔に排気される。
窒素ガスの供給量は、本発明の場合には処理水量の容積比20%以下であるので、処理水ポンプの水量が2t/hである場合、最大でも400NL/hであり、原水制御弁が閉じて、原水の補給が無い場合には、処理ガスの供給が不足するので、処理塔及び処理水槽の気室の圧力は低下する。
処理水槽低液面となって、原水制御弁が開いた時に、処理水ポンプの能力より大きい4t/hの水量が補給されると、気室が圧縮されることになり、気室の圧力は上昇し、外気に排気する場合には、窒素排気管に接続されている逆止弁を開弁させる為に必要な静圧より高くなると、外気に排気される。
この窒素排気管に接続された逆止弁を、安全弁の様に一定圧力で開弁することのできる圧力調整弁に変更すると、大気圧より高い圧力で処理ガスを排出する様にコントロールすることも可能である。
この様に大気圧より高い圧力で排出する場合は、水温が高くなることで、処理水ポンプの吸込み能力が低下することを防止する効果があり、水温に応じて圧力設定された複数の圧力調整弁を切替たり、圧力を温度信号等により制御できる制御弁等に変更することで、常温の水から高温水まで、ポンプに負担を掛けずに、気圧変動効果を得ることができる。
気圧変動の幅は、フロートスイッチの間隔と、気室容積で計算できるが、フロートスイッチの様なポイント式の液面検出器の代わりに、リニアーな水面検出を行う水面センサー等を用いて、自動制御で気圧変動の差圧をコントロールすることもできる。
【0056】
図2gは、図2fと同様に気圧変動効果を与える為の基本構成であるが、原水タンク(2)の水面が、処理水槽(1)の水面より低い位置にある為、原水配管(3)には制御弁は不要で、逆止弁(13)があれば気圧変動効果を得ることができる。
原水補給が必要になった時点で、原水ポンプ(42)を運転し、上限水位になった場合に、原水ポンプを停止することで、原水ポンプ停止中は、原水タンクの水位に相当する圧力に減圧されるまでは新たな原水が供給されない為である。
尚、給水ポンプにスクリュー式やプランジャー式等の容積式ポンプを用いた場合には、ポンプと制御弁の両方の機能を一台の容積式ポンプで実現することもできる。
【0057】
〔実施形態3〕
図4aは、インゼクター式気体混合器を用い、気液分離機構を多段に構成し、窒素の利用効率を高めた脱酸素装置のフロー図である。
本実施形態の特徴部分を明確化にする為に、本発明に関して付随的な制御関連の機能については図面上では省いてあり、動作説明として記載している。
(多段処理と処理段数)
本実施形態においては、窒素の有効利用を図る為、4段の処理段数としている。窒素過飽和を防止する手段としては、蒸気の凝縮効果と処理ガスの循環利用及び気圧変動効果を行っている。多段処理とは、純度の高い窒素ガスを最終段である四段目処理水槽(1d)で使用し、その使用済みの窒素ガスを三段目処理水槽(1c)に用いると言う様に、多段で処理することで少ない窒素ガス量で、脱酸素効率を向上させる為に有効な方法である。
ここで、単段処理の場合と2〜6段の場合の理論窒素必要量を記載すると表1の様になる。
前提条件としては、窒素ガスの純度99.9%、処理後の処理水の溶存酸素濃度0.5ppmとして計算してある。数値は処理水1mあたりに必要な窒素ガス量(NL)であり、単位はNL/mである。
【0058】
【表1】

処理段数が増加するに従い理論窒素量は減少するが、4段を超えた辺りから1段辺りの減少量が少なくなる。
又、初期の溶存酸素濃度が低下すると、窒素使用量も減少し、水温55℃付近では3段と4段処理の場合の使用量の差が小さくなり、水温80℃付近では、2段と3段との差が少なくなる。
【0059】
(給水系統の説明)
給水系統は、原水タンク(2)に貯留されている原水を一段流路切替弁(33a)を経由して、一段目処理水槽ポンプ(41a)で吸込み、一段目処理塔(6a)に給水する。 一段目処理水槽(1a)にはフロートスイッチ(43)があり、その上限信号で一段流路切替弁が一段目処理水槽からの流路に切り替わる。
流入した原水は一段目接触塔(6a)に流入する。図では表記されていないが、接触塔上部には実施形態2の様な散水板が設置されており、原水を滴下させ接触効率を上昇させている。
水蒸気凝縮効果による接触効率は極めて高いので、特別な散水機構や、気液接触機構を設けなくても、十分な効果が期待できるが、水蒸気の無い場合の気液接触効率を向上させる為には、使用頻度や処理水量に応じて、性能の良い気液接触部を設けることも有効である。
流下した水は、一段目処理水槽(1a)に貯留される。
一段目処理水槽に貯留した水は、二段目流路切替弁(33b)から二段目処理水槽ポンプ(41b)により一段目処理水配管(31a)を経由して二段目処理水槽(1b)に移送される。
二段目処理水槽が上限となった場合か、一段目処理水槽が下限になった場合には、二段目流路切替弁の流路を二段目処理水槽(1b)からの流路に切り替えることで、タンクの液面制御が実現できる。
三段目流路切替弁(32c)も同様な制御を行い、三段目処理水槽(1c)の液面制御を行う。
四段目処理水槽(1d)は、外部に処理水を供給するバッファタンクを兼ねているので容量を大きくする為に、接触塔では無くタンク内処理としている。
尚、四段目処理水槽のフロートスイッチ(43)においては、極低水面になった時に外部に警報を送る等の方法で、ボイラが低水位にならない様な保護回路を設けることも出来る。
三段目処理水槽から四段目処理水槽への水移送に関しては、窒素ガスの圧力が高く、蒸気と窒素を予混合した上で、四段目蒸気エゼクター(24d)の駆動エネルギーにすることができるので、液体と気体を同時に吸入できるタイプに変更して、エゼクターにより移送を行っている。
この場合、四段目処理水槽の水面制御は、四段目蒸気遮断弁(22d)で行うことができる。
【0060】
(窒素系統の説明)
窒素ラインの系統は、窒素ボンベ(14)に貯留されている窒素ガスを調圧後、窒素遮断弁(16)を経由して四段目蒸気遮断弁以降の蒸気管に供給される。
これは、初段の窒素はボンベから供給されるので圧力が高く、エゼクター作動のエネルギーとして利用する方が蒸気の消費量を減少させることができることと、エゼクター動作の際に、一部の蒸気が処理水に吸収されるが、その際にも気液接触を行うことが出来、処理効率が向上する為である。
尚、四段目処理ガス循環管(17d)は、四段目処理水槽で気液分離されたガスを再度、エゼクター部に戻すことにより気液接触を高める手段であるが、これは処理段数が四段程度になり、各段の処理効率が向上すると、窒素の処理系統への供給量が極端に減少する(1mの処理水に対して、窒素の処理系統への供給量が5容量%程度の量に低減する。)。気体量が減少すると、液相の容積が増加して気液接触の効率が悪くなる為、繰り返し循環を行うことで処理効率の低下を防止することが可能となる。
窒素ガス循環量は、概ね気体が液体の容積比で20%以上が適当である。
四段目処理水槽排気管(11c)は逆止弁(13)を経由して、三段目処理水槽ポンプ(41c)の出口に接続されている。
四段目処理水槽への処理水の流入により、四段目処理水槽の気圧が上昇すると、処理済みの窒素ガスは、三段目側に送られるが、処理水の補給が無く処理水が供給されると、水位は低下し、四段目処理水槽の気室圧力が低下するので、気圧変動効果を与えることができる。
接続点が、この位置にある理由は、三段目蒸気インゼクター(24c)が常に作動している場合には、三段目処理ガス循環管(17c)と接続しても全く問題無いが、水温の上昇やポンプ停止等により蒸気の供給を停止すると、三段目処理水槽排気管(11b)を経由して排気されてしまい、三段目接触塔内に供給されなくなる為である。
この様な経路を、二段目、一段目と純度の低下した窒素ガスが逆流して行き、窒素排気管(12)を経由して外気に排気される。
【0061】
(蒸気系統の説明)
蒸気系統は、ボイラ(51)から発生した水蒸気を蒸気配管(21)を経由して、調圧された蒸気が、一段目蒸気遮断弁(22a)〜四段目蒸気遮断弁(22d)に並列に供給される。
蒸気遮断弁の開閉タイミングは、例えば一段目蒸気遮断弁(22a)の場合、原水ポンプ(42)が停止した場合や、一段目処理水槽(1a)の水温が上昇した場合等に停止を行う。
二段目〜三段目蒸気遮断弁もこれと同様の動作であるが、四段目蒸気遮断弁(22d)では、四段目蒸気インゼクター(24d)がポンプ機能も持っているので、水位制御動作に伴い開閉動作を行う。
本実施形態は、常温の原水をボイラ用給水として脱気することを想定している。
その為、給水予熱を行うことはボイラ運用有益であると共に、蒸気熱量の損失も無い。
四段目処理水槽(1d)は、ボイラ(51)に直接給水されるので、この水温を上記の基準に従い適正水温に保つことで、給気予熱効果を併用出来ることと、水温が上昇することによるヘンリーの法則に従った処理効率のアップを期待することが可能になる。
尚、使用済み蒸気のドレンを原水タンク(2)に回収する等の利用形態で、水温が上記の適正水温を超えている設備の場合には、四段目処理水槽(1d)を一段目〜三段目と同様の気中水滴型の気液接触方法に変更したり、水温上昇により溶存酸素が低下し、必要窒素量も減少するので、4段処理では無く3段処理等に変更することも可能である。
(窒素の供給形態)
本実施形態においては、窒素供給を窒素ボンベ(14)としているが、液体窒素や、窒素分離膜や分子篩活性炭を利用した窒素発生器からの窒素ガスを利用すること等も効果は同等である。
【0062】
(処理性能)
本実施形態による脱酸素処理の緒元は下記である。
一段目処理水槽〜三段目処理水槽有効容積:51L
四段目処理水槽有効容積:71L
処理流量:2500L/h
定格時通過時間:108秒
一段通過時間(平均):27秒
定格時蒸気使用量:10kg/h
窒素純度:99.9容量%
性能は下記の様な実測値が得られた。
入口水温:25℃
出口水温:27℃
入口溶存酸素:8.5容量ppm
処理水溶存酸素:0.5容量ppm
理論窒素消費量:48L/m
窒素消費量:50L/m
処理効率:98%
最終段出口排気酸素濃度:10.5容量%
尚、この時処理効率100%における予想最終段出口排気酸素濃度は、11.1容量%であり、処理効率を加味するとほぼ適正な酸素濃度であることが判る。
因みに処理効率が悪化すると、酸素濃度は更に低下し、外気混入等を生じると酸素濃度は上昇し、何れも溶存酸素の上昇要因となる。その為、酸素濃度が9容量%以下と酸素濃度が12容量%以上で警報を出すことで、信頼性や温度条件に制約のある溶存酸素計を用いること無く、ジルコニア式酸素濃度計や磁気ダンベル式酸素濃度計を用いて、異常の発見を迅速に行うことができる。
【0063】
(水温による動的処理段数変更の一例)
図4bは、図4aの脱酸素装置に水温に応じて、処理段数を動的に変更する場合のフローの一例である。
変更されている部分のみを説明する。
原水配管(3)の経路上に原水温度センサー(80)が設置されており、この水温が概ね50℃以下である場合には、一段バイパス切替弁(34a)、は一段処理水槽と二段流路切替弁を連通する流路を形成している。
水温が55℃を超えると、一段バイパス切替弁の流路が一段バイパス配管(35a)側に切り替わると共に、一段目蒸気遮断弁(22a)と一段目処理水槽ポンプ(41a)が動作を停止し、一段流路切替弁(33a)は一段目処理槽(1a)からの流路に切り替わる。
更に温度が上昇する場合には、二段目処理槽と三段目処理槽の間にバイパス切替弁を備えることで、更に処理段数を減らすことができる。
この様に構成されることで、水温が上昇し気体の溶解度が減少した場合に、多段処理によるメリットが少ない場合、接触塔や貯留槽からの無駄な放熱を防止することにより熱の損失を防止することができる。
水温が低い場合には、処理段数を増加させても放熱に伴う熱損失は少なく、逆に窒素ガスを減少させることによる多段処理のメリットが勝る。
尚、三段目処理水槽排気管(11b)のラインはそのままが望ましい。
即ち、処理段数の少ない場合の処理済みガスは、酸素濃度が低く処理塔及び処理水槽を通過して、外気に排出される過程で、休止中の塔内の処理水の溶存酸素濃度を低く保つことができる為である。
【0064】
(処理ガス循環ラインに蒸気動力機器を利用する場合の一例)
図4cは、図4aの蒸気インゼクターを蒸気式ターボコンプレッサーに変更した場合の一例を示し、説明を簡略化する為に一段目処理水槽部の構成要素のみを記載している。
給水系は、図4aと同一である。窒素ガス系統もほぼ同様であるが、蒸気式ターボコンプレッサー(72)を用いることができるので、圧力の高い原水出口に窒素ガスを注入することができる。
この為、二段目処理水槽排気管(11a)と一段目処理ガス循環管(17a)を合流させても、蒸気式ターボコンプレッサー(72)が停止時にもショートパスは生じない。
蒸気ラインは、一段目蒸気遮断弁(22a)を経由した蒸気が蒸気式ターボコンプレッサー(72)で処理ガスを循環させる動力となるが、その排気は蒸気排気切替弁(73)を経由して通常は、蒸気吸収管(74)を経由して一段目接触塔(6a)内を流下する原水に処理ガスが混合した流体に吸収される。
この部分は、サイホンを形成している為、圧力は負圧になっており、ここに排気蒸気が流入すると、負圧下で蒸気凝縮するので、気液接触効率が向上すると同時に、蒸気式コンプレッサーの効率も、大気中に排気するよりも取り出せるエネルギーが大きくなる。
しかし、水温が高い場合や原水供給が無い場合等は、蒸気排気切替弁(73)で蒸気排気管(75)側に排気することで、コンプレッサー機能のみを利用することもできる。
この他に、スクリュー、ピストン、ダイヤフラム等を駆動側とし、蒸気を利用した蒸気機関で、エアレーターを作動させたり、処理水ポンプを運転する等で、電気エネルギーの消費を抑えながら、処理効率の向上を実現することができる。
尚、蒸気が無い場合等は、本実施例の蒸気の変わりに、圧縮空気を用いて、外部排気することで蒸気の無い場合でも、窒素ガスの循環を行うことができるし、蒸気が無い場合や蒸気を用いたくない用途では、電動ファンや電動コンプレッサー等を用いて循環を行うことも可能である。
【0065】
図4dは、図4bの機能を処理水連通管(37)と一段目処理水槽ポンプ(41a)〜四段目処理水槽ポンプ(41d)を用いて、簡略化したものである。
処理水連通管は、一段目処理水槽(1a)からの一段目処理水配管(31a)と接続され、その上流側で一段目処理水槽ポンプが接続される一段目処理水循環配管(36a)と接続されると言う構成になっており、これが二段目以降も同様の接続となり、処理水ポンプ(46)に接続されて、プロセスに供給される。
原水は、原水ポンプ(42)で加圧され、原水制御弁(45)で水流制御される構成となっている。
この実施例の特徴は、一段目処理水槽ポンプ〜四段目処理水槽ポンプの循環流量が、処理水ポンプの吐出量及び原水制御弁の最大流量より大きいことである。
この為、各処理水槽ポンプが運転中は、処理水連通管の流れの方向は、各処理水循環配管に向かう流れとなり、原水若しくは前段からの水は処理水槽ポンプ、接触塔、処理水槽を経由して処理水配管へ流出すると言う経路を辿ることになり、ショートパスが発生しない。
つまり、後段へ処理水が供給される分だけ、処理水配管の接続点から、連通管を逆流する量が少なくなることで各処理槽の水位がバランスする。
この為、処理水槽のレベルのコントロールは、4段処理の場合でも、どれか一つの処理槽のレベルを検出してコントロールすることで良く、制御が簡略化できる。
又、原水温度センサー(80)からの信号により、処理段数を動的に増減させる場合でも、例えば一段目処理水槽ポンプを停止すると、一段目接触塔(6a)及び一段目処理水槽(1a)をバイパスして二段目処理水槽(41b)に直接給水されるので、バイパス回路も簡略化できる。
バイパスされる際には、一段目蒸気遮断弁(22a)を停止すれば、無駄な蒸気の消費が防止できるが、二段目処理水槽排気管(11a)は、一段目処理水槽の気相を経由して系外に排気されるので、一段目処理水槽の溶存酸素濃度を低めに保つことが出来、次の運用開始にも溶存酸素濃度の上昇等のリスクがなくなる。
処理済みガスの最終段は、窒素排気管(12)を経由して外部に排出されるが、排気電磁弁(47)により、排気圧力調整弁(48)経由か、直接排気かを制御できる様になっている。
これは、水温が上昇し水蒸気圧が上昇すると、処理水ポンプ(46)の吸込み能力が不足することによるキャビテーションを防止するもので、この様に二段でコントロールする他、水温から計算される水蒸気圧に応じて、リニアーに設定圧力を変更することも可能である。
水面コントロールは、フロートスイッチ(43)の上限で原水制御弁を閉として、下限で開とすることで、水位が変化することで気圧変動効果を与えることができる。
図4eは、図4dのフローと同様であるが、連通管が処理水槽の一部となっている構成である。図4dと同様、処理水ポンプが運転する時のみ気液接触動作が行われるが、処理水ポンプが動作していない場合でも、原水若しくは前段の処理水が処理槽内に流通する構成になっている。
この様な構成とすることで、バイパス動作が頻繁に生じる用途の場合には、処理を行わない処理水槽の水温と処理中の水温との温度差を小さくすることができるので、処理水の溶存酸素濃度を安定させることができる。
図4fは、図4dの連通管の経路の途中に逆止弁を配置したものである。この様に連通管の処理水配管接続部と次段の処理水ポンプの間に逆止弁を入れることにより、停止中や処理水流量が低い場合に、後段の処理水の逆流が防止できるので、処理水の供給が間欠的な場合や、供給を休止する場合に処理水の純度を保つことができる。
ただ、この様に処理水連通管(37)の経路上に逆止弁を入れると、循環ポンプが処理塔を経由して処理水槽に戻る圧力損失分だけ、後段の処理水槽の水位が上昇し、それが固定されてしまう。つまり一段目処理水槽の水位が最も低くなる状態になるので、この様な場合、水位の変動が許容できる様タンクの深さを調整するか、レベル調整排気電磁弁(49)で次段に供給される処理ガス量を調整することで、各段の水位を適正に保つことが可能になる。
レベル調整排気電磁弁は、小さな電磁弁で良いので設備コストは、水量調整弁を設けるより極めて低コストである。
【0066】
〔実施形態4〕
以下、本発明の第4実施形態を図面に基づいて説明する。
図5は、処理水温度に応じて窒素ガス量を自動調整すると共に、蒸気が使用できないボイラの起動前にボイラに給水補給を行える機能を有するシステムの実施形態である。
尚、説明を簡単にする為に二段式の脱酸素装置のフローを示しているが、それ以上の段数で実施しても、全く問題なく、窒素ガスの消費量低減効果はより大きくなる。
(給水系)
給水系は、実施形態3の場合とほぼ同様であるが、蒸気ラインが使えない場合及び部分負荷時の処理効率を高くする為に、一段目処理水槽ポンプ(41a)の出口に、処理水循環弁(44)が設置されており、二段目処理水槽(1b)に補給する場合には、一段目処理水配管(31a)側に、循環が必要な場合には、処理水循環配管(36)側に流路が切り替わる様に構成されている。
尚、脱気装置への給水流量を出力する給水流量計(5)がユニットの入口に設置されている。
(窒素系)
窒素系配管は、窒素タンク(14)から窒素電磁弁(16)、窒素流量計(15)を経由して二段目接触塔(6b)に供給されている。
二段目処理水槽(1b)から排気された窒素ガスは二段目処理水槽排気管(11a)を経由して、一段目蒸気インゼクター(24a)に接続されている。
又、一段目処理水槽(1a)から分離されたガスは、一段目処理ガス循環管(17a)を経由してやはり、一段目蒸気インゼクター(24a)に接続されている。その為、二段目処理水槽(1b)の圧力が、一段目処理水槽(1a)の圧力より高くなると、その分の窒素ガスが一段目接触塔(6a)に供給されることになる。
【0067】
(水温度自動調整制御)
演算制御回路(82)には、予め使用する窒素ガスの純度及び目標とする処理水の溶存酸素濃度の値が設定されている。
処理水温度センサー(83)の温度が、演算制御回路(82)に送られると、内部で温度から換算した飽和溶存酸素濃度を求める計算を行い、さらにこのシステムの場合には二段処理であるので、二段処理の場合の当該原水溶存酸素から処理水溶存酸素にする為の、データーテーブルから、必要な理論窒素量を求めることができる。
蒸気圧スイッチ(23)も正常である場合には、処理効率が98%程度を想定して、目標とする窒素注入率を求める。
原水が、給水流量計(5)を通過すると、通過量に応じて流量信号が演算制御回路(82)に送られるので、一定の流量が流れた時に、目標とする注入率となる様に、窒素電磁弁を開にすることで目標とする窒素ガス注入率で、二段目処理塔に窒素ガスを注入できる。
窒素の様な少量のガスの場合には、直動式電磁弁を開閉することで、比例的な制御を行うことが可能であるが、これは制御弁等のリニアーコントロールのできるものに変更しても良い。
窒素流量計(15)は、窒素ガス量が正しく制御出来ているかを監視する為に設けられており、より正確な流量制御を行うこともできるし、窒素ガスが空になった場合に警報を出すことも可能である。
尚、給水流量計(5)はより安価に構成した場合には、フロートスイッチ(43)の開閉信号等で代用することも可能である。
その場合には、原水ポンプ(42)と一段目処理水槽ポンプ(41a)を同時に運転しない様にすると、より正確に流量検出が可能になる。
【0068】
(蒸気が無い場合の処理)
蒸気圧力スイッチ(23)がOFFである場合には、蒸気が無い状態であるので、その場合には、前記の目標とする窒素注入率を、システムの蒸気が無い場合の気液接触効率に基づいて、算定を行う必要がある。
しかし、この様な場合には、処理水流量が定格より少ない場合が多いので、処理水循環弁(44)を処理水循環配管(36)側に変更し、繰り返し処理水を一段目処理塔と一段目処理水槽間を循環させることで、気液接触効率の低下を補うことができる。
尚、蒸気が無い場合には、一段目蒸気インゼクター(24a)による吸引効果が無くなり、一段目処理ガス循環管(17a)を用いた処理済みガスの再利用が困難と思われるが、一段目蒸気インゼクターの設置位置が、原水配管(3)の最上部に配置されている為、緩衝室(27)に蒸気が供給されない場合には、一段目接触塔(6a)内は循環水で満たされることになり、サイホンを形成するので、ガス循環を行うことが出来、蒸気が無い状態でも処理済みガスの循環利用が可能である。
又、この循環は部分負荷となって、蒸気を使用すると水温が上昇し過ぎる様な場合に、蒸気弁を閉止した状態で、処理効率を維持する場合にも利用できる。
原水は、一段目処理水槽(1a)のフロートスイッチ(43)の高レベルで、原水制御弁(45)が閉となり、低レベルで開となる様にコントロールされることで、一段目処理水槽に気圧変動効果を与えることができる。
この気圧変動効果は、二段目処理水槽排気管(11a)で連通している二段目処理水槽(6b)にも気圧変動効果を与えることで、過飽和状態を解消できる。
この様に本実施形態においては、蒸気が無い状況であっても、処理ガスの循環利用と気圧変動効果を与えることができるので、溶存酸素濃度を抑えた処理水をボイラ(51)へ供給することができるので、実用性の高い脱酸素装置を構成できる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
〔対象ガスの利用範囲〕
本発明において利用される代表的な対象ガスは、脱酸素処理を目的とした窒素ガスである。
しかし、本発明による気液接触方法は極めて高効率である為、次の様な用途での利用も期待できる。
(酸素高濃度水)
酸素富加膜等を利用した酸素濃度の高い気体を本装置により処理することで、同一温度における溶存酸素濃度より高い処理水を得ることができる。
高溶存酸素水は、一般の養魚場等の酸素供給用途にも利用可能であるし、活性汚泥処理や湖沼の富栄養化対策などにも利用できる。
(オゾン高濃度水)
オゾン発生器等が発生するオゾンガスから、高オゾン含有水を効率的に製造することができる。
高オゾン含有水は、各種殺菌用途に利用できる。
(希ガス含有水)
超純水等を利用して、半導体プロセスや化学合成等を行う用途の場合には、窒素であっても不純物となる場合があり、He、Ne、Ar等の希ガス類を含有させた処理水が必要になる場合がある。
この様な用途においても、本発明は少量の対象ガスで処理できるので、コストダウンが可能である。
以上の他に、ヘンリーの法則に従った気液溶解特性を示す対象ガスを用い、目的とする濃度の処理水を得たい用途に広く応用が可能である。
【0070】
〔脱酸素技術〕
(蒸気ボイラ用)
ボイラ用給水の脱酸素は、古典的な蒸気式脱気装置や膜脱気や窒素脱気等が既に実用化されており、利用分野は極めて広い。
特に、食品や医薬品分野等で蒸気中の化学物質等の不純物を嫌う用途には、物理的脱酸素方法が好適である。
しかし、従来の方法では夫々課題があり更に高効率且つ信頼性の高いシステムが求められている。
(密閉水系)
密閉水系は、冷温水等をユースポイントにて熱交換し、空気調和等に使用する系統であるが、防食が大きな課題になっている。
本発明の様に、窒素の利用効率が高くコンパクトなシステムが提供できれば、この様な用途でも、利用用途を広げることができる。
(給湯系統)
給湯系統では、薬品による防食が極めて制限されることや、通水が1パスである為、窒素の利用効率の低い従来型のシステムの場合、ランニングコストが嵩むことで普及が進んでいない。
本方式と窒素が安価に供給出来る窒素発生器等と組み合わせることで、処理コストを抑えた防食が可能となり、普及を促進することができる。
【0071】
〔蒸気エネルギーの有効利用〕
本発明で使用する蒸気は、次の4項目の効果があり、更に投入した蒸気エネルギーは、ボイラ用の給水や温水供給等の場合には給水予熱と同様に熱回収が可能であるので、非常にエネルギーの利用効率が高い処理方法である。
(水蒸気凝縮効果)
水蒸気が凝縮する際に、水中の過飽和気体にエネルギーを与え、溶存気体の気中への分離を促進する。
(水温上昇による対象ガスの削減効果)
水温上昇に伴い、ヘンリーの法則に従い気体の溶解度が減少するので、特に脱酸素目的の場合には、処理ガスの削減効果が期待できる。
(水蒸気の運動エネルギーの利用)
高圧蒸気の持つ運動エネルギーを利用して、負圧を作ることができるので、コンプレッサー等の特別な装置を用いずに、再利用ガスを高圧部に移送することが出来る他、ポンプや攪拌器等の動力も電気エネルギーを使用せずに用いることができる。
(蒸気エネルギーの回収)
ボイラ用給水の場合には、次の二通りの条件が考えられる。
ケース1:ボイラ室内温度よりも給水温度が低い場合。
ボイラ室内温度25℃、給水温度20℃の場合
1mの処理水に必要な窒素ガス量が60Lと仮定し、当該処理に使用する蒸気を10kgとした場合に、処理水の温度上昇は4℃程度であるので、配管系統は放熱傾向ではなく、蒸気の熱量は全て回収可能である。
ケース2:ボイラ室内温度よりも給水温度が高い場合。
この様なケースでは、給水ラインは保温されているケースが多く、数度程度の温度上昇では、保温を経由した熱損失は極めて少ないので、投入熱量の殆どが回収可能である。
〔給水ポンプのエネルギーの有効利用〕
本発明の気圧変動効果で用いる微小な気圧変動は、コンプレッサーや真空ポンプ等の特別な機器を用いること無く実現できる技術である為、従来の給水ポンプの持つ吸込み能力を利用することで、無駄な動力を用いること無く過飽和気体の気液分離を促進することができる。
特に、液体を利用した圧力変化は、キャビテーションや気泡圧縮等の気体運動を伴わなければ、非圧縮性流体であるので、容積効率が高くエネルギー的にも有利である。
【符号の説明】
【0072】
1…処理水槽
1a…一段目処理水槽
1b…二段目処理水槽
1c…三段目処理水槽
1d…四段目処理水槽
2…原水タンク
3…原水配管
3a…原水配管バイパス弁二次側
4…処理水
5…給水流量計
6…接触塔
6a…一段目接触塔
6b…二段目接触塔
6c…三段目接触塔
6d…四段目接触塔
7…散水板
8…通気管
9…内管
10a…処理水槽高液面
10b…処理水槽低液面
11…窒素配管
11a…二段目処理水槽排気管
11b…三段目処理水槽排気管
11c…四段目処理水槽排気管
12…窒素排気管
13…逆止弁
14…窒素ボンベ
15…窒素流量計
16…窒素遮断弁
17a…一段目処理ガス循環管
17b…二段目処理ガス循環管
17c…三段目処理ガス循環管
17d…四段目処理ガス循環管
20…蒸気源
21…蒸気配管
22a…一段目蒸気遮断弁
22b…二段目蒸気遮断弁
22c…三段目蒸気遮断弁
22d…四段目蒸気遮断弁
23…蒸気圧スイッチ
24…蒸気インゼクター
24a…一段目蒸気インゼクター
24b…二段目蒸気インゼクター
23c…三段目蒸気インゼクター
24d…四段目蒸気インゼクター
25…自動ガス抜き弁
26…気体混合器
27…緩衝室
28…スクリーン
29…ガス分離室
31…原水配管
31a…一段目処理水配管
31b…二段目処理水配管
31c…三段目処理水配管
32…処理水配管
33a…一段流路切替弁
33b…二段流路切替弁
33c…三段流路切替弁
33d…四段流路切替弁
34a…一段バイパス切替弁
34b…二段バイパス切替弁
35a…一段バイパス配管
35b…二段バイパス配管
36…処理水循環配管
36a…一段目処理水循環配管
36b…二段目処理水循環配管
36c…三段目処理水循環配管
36d…四段目処理水循環配管
37…処理水連通管
41a…一段目処理水槽ポンプ
41b…二段目処理水槽ポンプ
41c…三段目処理水槽ポンプ
41d…四段目処理水槽ポンプ
42…原水ポンプ
43…フロートスイッチ
44…処理水循環弁
45…原水制御弁
46…処理水ポンプ
47…排気電磁弁
48…排気圧力調整弁
49…レベル調整排気電磁弁
61…蒸気入口部
62…蒸気ノズル
63…ディフューザ部
64…出口部
65…吸込部
66…接触管
67…蒸気穴
70…蒸気式液体噴霧ノズル
71…噴射穴
72…蒸気式ターボコンプレッサー
73…蒸気排気切替弁
74…蒸気吸収管
75…蒸気排気管
80…原水温度センサー
82…演算制御回路
83…処理水温度センサー
84…制御配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気液接触装置の気液接触部にて、対象ガスと処理水とを接触させる気液接触方法において、新たに供給される対象ガス量が処理水に含まれる難溶解性ガス総量の10倍以下である場合に、下記処理(i)〜(iii):
(i)気液接触部の気相を水蒸気過飽和とする処理、
(ii)分離ガスを循環利用し、処理水に対する気体の容積混合比を20%とする処理、
(iii)気液接触部及びそれと連通した貯留槽の気相圧力を、処理水の平均水温における水蒸気圧に95KPaを加えた圧力よりも下回る減圧工程と、その減圧工程圧力よりも少なくとも10KPa望ましくは20KPa以上高い加圧工程を1サイクルとして、処理水が各単位の気液接触部及び貯留槽に存在している間に1サイクル以上行う処理、
の内、前記処理(i)については単独で又は前記処理(ii)若しくは(iii)と併せて実施するか、前記処理(ii)については前記処理(iii)と併せて実施するか、或いは、前記処理(i)〜(iii)の全てを実施することを特徴とする気液接触方法。
【請求項2】
請求項1に記載の気液接触方法において、
前記処理(iii)を実施する場合、
前記気液接触装置は、
一次側の圧力が二次側の圧力より高くなるか、予め設定された圧力になると処理ガスを系外に排出し、それ以下の圧力では処理ガスの排出及び逆流を防止する逆流防止手段若しくは圧力調整逆流防止手段を備えた排気手段を持つ気密型の気液接触部を備え、
該気液接触部の原水入口部に原水制御手段を備えるか、給水源の圧力を下限圧力以下とした原水供給手段を備え、
該処理水出口部には、吸込み能力が1m以上の給水移送手段を備え、給水移送手段の最大流量より多い流量と、最小流量より少ない流量か遮断する様に原水流量を、前記原水制御手段若しくは原水供給手段でコントロールすることで、前記気液接触部における気相と水相の容積比を変化させ、気圧変化を生じさせる
ことを特徴とする気液接触方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の気液接触方法において、
前記気液接触部と、
前記気液接触部に前記処理水を供給する処理水供給手段と、
前記気液接触部に前記対象ガスを供給する対象ガス供給手段と、
前記気液接触部から前記処理水を外部に流出させる処理水取水手段と、
前記気液接触部から前記対象ガスを排出する対象ガス排出手段と、から構成される気液接触手段を1構成要素とし、
その処理水ラインを複数段直列に接続し、処理水の最後段の構成要素に高純度の対象ガスを供給し、そこで排出された対象ガスを前段の構成要素の供給ガスとすることで、対象ガスの消費量を削減する多段気液接触処理において、
前記処理水の原水に含まれる溶存気体が、原水温度の飽和状態と概ね一致し、かつ、原水の平均温度が比較的安定している場合には、
前記平均温度が55℃以下である場合には4段、
前記平均温度が55℃超80℃以下である場合には3段、
前記平均温度が80℃超90℃未満である場合には2段、
前記平均温度が90℃以上である場合には多段処理を選択しない、
と言う処理段数基準に基づいて、処理段数を調整し、
前記処理水の原水の平均温度の変化が大きい場合には、
最低温度から前記処理段数基準に基づく処理段数の設備とし、
各処理段の処理水流路をバイパスするバイパス手段、及び、気液接触の為の動力源遮断手段のうちの少なくとも一つと、前記処理水の温度を検出する温度検出手段と、を備え、
該温度検出手段で検出された前記処理水の温度が予め設定された水温に達した場合に、前記バイパス手段及び前記動力源遮断手段のうちの少なくとも一つを制御し、処理段数を調整する
ことを特徴とする気液接触方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の気液接触方法において、
前記処理(i)を実施する場合、
前記気液接触装置は、
前記水蒸気を供給する水蒸気供給手段と、
外部より供給される対象ガス、又は気液分離した接触済み対象ガスのうちの少なくとも一つを供給する対象ガス供給手段と、を備え、さらに、
前記水蒸気供給手段及び前記対象ガス供給手段からの水蒸気及び対象ガスを予め混合する水蒸気対象ガス混合手段、並びに、該水蒸気対象ガス混合手段からの混合蒸気を、前記気液接触部内の処理水に吸収させる混合蒸気凝縮手段を備えるか、
処理水と対象ガスが前記気液接触部において予め混合状態である場合には、前記水蒸気供給手段からの水蒸気を、混合状態である処理水及び対象ガスに吸収させる水蒸気凝縮手段を備えるか、或いは、
前記両方の蒸気凝縮手段を備え、
前記気液接触部内の処理水に、前記混合蒸気または前記水蒸気を凝縮させる
ことを特徴とする気液接触方法。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の気液接触方法において、
前記処理(i)〜(iii)の全てを実施する場合、
前記気液接触装置は、
前記気液接触部内へ処理水を供給する液体移送手段として、水蒸気を駆動エネルギーとする蒸気駆動液体移送手段を備えるか、
前記気液接触部内の対象ガスの移送手段として、水蒸気を駆動エネルギーとする蒸気駆動ガス移送手段を備えるか、或いは、
前記気液接触部内の処理水と対象ガスの攪拌手段として、水蒸気を駆動エネルギーとする蒸気駆動攪拌手段を備え、さらに、
前記蒸気駆動液体移送手段、前記蒸気駆動ガス移送手段及び前記蒸気駆動攪拌手段のうちの少なくとも一つの水蒸気駆動手段からの運動エネルギーの低下した水蒸気を処理水に吸収させる蒸気凝縮手段を備え、
下記(i)〜(iii)の方法:
(i)駆動用の水蒸気に予め対象ガスを混合する方法、
(ii)前記蒸気凝縮手段に流入する前に対象ガスを混合する方法、
(iii)水蒸気を吸収させる処理水を対象ガスと予め混合状態にしておく方法、
のうちのいずれかの方法で、前記気液接触部内に、水蒸気過飽和の状態を存在させる
ことを特徴とする気液接触方法。
【請求項6】
請求項5に記載の気液接触方法において、
前記気液接触装置は、
処理水の流路の一部に、温度を検出できる温度検出手段、及び、処理水の流量を検出できる流量検出手段のうちの少なくとも一つの検出手段を備え、さらに、
前記検出手段で検出された処理水の温度または流量に基づいて、前記水蒸気駆動手段への水蒸気の供給を制御する駆動用水蒸気制御手段、或いは、前記検出手段で検出された処理水の温度または流量に基づいて、前記蒸気凝縮手段への運動済み水蒸気の供給を制御する凝縮用水蒸気制御手段を備え、
処理水の温度が予め設定された規定の温度以下である場合か、処理水の流量が予め規定された流量以上である場合、或いは、両方の条件を満たす場合に、前記水蒸気駆動手段への水蒸気の供給、若しくは運動済み水蒸気の処理水への凝縮を行う
ことを特徴とする気液接触方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の気液接触方法において、
前記気液接触装置は、
処理水の流路若しくは前記気液接触部に、温度を検出できる温度検出手段と、処理水の流量を検出できる流量検出手段と、を備え、さらに、
水蒸気を使用する場合には、処理設備への供給蒸気の蒸気検出手段、循環対象ガス流量検出手段、及び凝縮蒸気流量検出手段のうちの少なくとも一つから判断されるシステム動作正常検出手段と、
前記温度検出手段からの信号から飽和酸素濃度を求める飽和酸素濃度演算手段と、
前記飽和酸素濃度、気液接触の処理段数、対象ガス純度、及び、システムの動作が正常である場合の気液接触処理効率から単位流量当たりに必要な対象ガス量を演算する必要対象ガス量演算手段と、
該必要対象ガス量演算手段からの信号と、前記流量検出手段からの信号により処理水流量に応じて対象ガスの必要量を演算する比例演算手段と、
該比例演算手段からの信号により、処理水流量に応じた対象ガス流量に調整する対象ガス流量調整手段と、を備え、
処理水の流量、温度、処理段数、システム状態、ガス純度に応じて、対象ガス流量を自動調整する
ことを特徴とする気液接触方法。
【請求項8】
請求項7に記載の気液接触方法において、
前記システム動作正常検出手段からの信号により前記処理(i)の効果を期待出来ない場合には、前記処理(ii)および(iii)の効果のみで対応できる単位時間当たりの処理水量に応じて、前記必要対象ガス量演算手段の気液接触効率の値をシステムが正常な場合より少ない値に調整する
ことを特徴とする気液接触方法。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の気液接触方法において、
前記気液接触装置は、
垂直に配置された気液接触部と、該気液接触部の最上部よりも低い液面を持つ貯留槽から構成される気液接触手段において、該気液接触部処理水立下り部と貯留槽の気室を連通させたガス循環管路を備え、
後段の気液接触手段若しくは処理水利用設備へ処理水を供給する処理水供給手段出口に、該処理水供給手段の処理水出口と気液接触手段への処理水入口を連通させる切替手段を備えるか、
気液接触手段に処理水を供給する処理水供給手段の入口に、前段の気液接触手段からの処理水若しくは原水入口と、気液接触手段からの処理水出口を連通させる切替手段を備え、
前記システム動作正常検出手段からの信号により蒸気供給が無い場合や、処理水の温度や流量が少なく、蒸気動力を遮断する場合には、前記切替手段により前記処理水供給手段の液体移送能力を利用して前記気液接触手段内の処理水を循環させ、且つ各段の気室圧力を前段からの切替手段及び後段への切替手段の調整により気圧変動を行い、気液接触部の立下り部に形成されるサイホン作用により分離済み処理ガスを循環させる
ことを特徴とする気液接触方法。
【請求項10】
請求項7から請求項9のいずれか一項に記載の気液接触方法において、
前記気液接触装置は、
原水入口から処理水出口までが連通した流路を備え、
該連通流路の上流側に液体循環手段入口を連通し、気液接触部を経由して処理水槽に貯留した処理水を、該液体移送手段入口の下流側に戻す循環流路を備え、
該気液接触装置の最大給水の流量より移送能力の大きい液体循環手段を備えた循環型気液接触装置を一段とし、該循環型気液接触装置を多段に構成し、
該処理水槽の少なくとも一つに、液面検出手段を備え、該連通流路の再上流に流量制御手段を備える
ことを特徴とする気液接触方法。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の気液接触方法において、
前記対象ガスとして不活性ガスを用い、前記処理水中のガス組成を前記不活性ガスのガス組成に置換させる
ことを特徴とする水の脱酸素方法。
【請求項12】
請求項11に記載の水の脱酸素方法において、
前段の処理単位から次段の処理単位に供給される排ガス若しくは大気に排出される排ガスの酸素濃度を計測する酸素濃度検出手段と、
前記必要対象ガス量演算手段に、予想される処理ガス中の酸素濃度演算回路を少なくとも一段分を備え、該酸素濃度検出手段の酸素濃度値と、同一場所の予想される酸素濃度演算値の比較を行う酸素濃度比較演算回路とを備え、
該酸素濃度比較演算回路で、酸素濃度が高すぎる場合、酸素濃度が低すぎる場合に、何れか一方、若しくは両方の警報を出力する
ことを特徴とする水の脱酸素方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図2e】
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【図2f】
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【図2g】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図4e】
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【図4f】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図6d】
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【図6e】
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【図6f】
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【図6g】
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【公開番号】特開2013−13847(P2013−13847A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147584(P2011−147584)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(592029289)株式会社関口 (4)
【Fターム(参考)】