説明

気液混合ノズル、およびこの気液混合ノズルを用いたエマルジョン燃料燃焼システムならびに環境浄化液体噴霧システム

【課題】気体と液体とを効率よく混合することができ、液体のしずくの発生を抑えてより微細な粒子を生成することができる気液混合ノズルを実現する。
【解決手段】気液混合ノズル10は、ノズル吐出口18の中心部に向けて空気を吐出させる内方側空気吐出経路Aと、ノズル吐出口18の外縁部から空気を吐出させる外方側空気吐出経路Dと、内方側空気吐出経路Aと外方側空気吐出経路Dとの間に配置され水および/又は燃料を主成分とする液体をノズル吐出口18に導入するための少なくとも1つの液体導入経路B,Cと、内方側空気吐出経路A及び液体導入経路B,Cの出口で混合された空気及び液体の混合体が衝突する衝撃部材22とを備える。内方側空気吐出経路Aの出口及び液体導入経路の出口は、ノズル吐出口18よりもノズルの内側に配置される。衝撃部材22は、内方側空気吐出経路A及び液体導入経路B,Cの出口とノズル吐出口18との間に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、気体と液体とを効率よく混合することができる気液混合ノズルに関するものであり、さらに、この気液混合ノズルを用いたエマルジョン燃料燃焼システムならびに環境浄化液体噴霧システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題についての関心の高まりから、例えばディーゼル機関の排気ガスの浄化を実現するための技術等が種々提案されている。この種の排気ガス浄化技術におけるアプローチは、例えばエンジン燃焼の改良や後処理技術の改良、あるいは燃料の改良等といった観点から行われている。
【0003】
このうち、上記エンジン燃焼の改良については、燃料噴射系の改良が最も重視されており、例えばディーゼル乗用車の燃料噴射系として主力になりつつあるコモンレールシステムを用いた高圧噴射と多段噴射を実現・改良するための技術が提案されてきている(例えば、下記非特許文献1参照)。
【0004】
また、上記燃料の改良については、エマルジョン燃料を用いた技術が開発されており、一定の成果が得られている。さらに、ディーゼルエンジンの排ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を低減する方法として、燃料中に水を混入する方法、燃料とは別に燃焼室に水を噴射させる方法等が有効であることが、従来から知られている。このような方法は、燃料に水を混入することにより燃焼温度が下がってNOxを低減すること、および水蒸気に含まれる酸素によって燃焼効率が上がることを利用しようとするものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】伊藤昇平、中村兼二、「コモンレールによるディーゼル排気ガスの浄化」、デンソーテクニカルレビュー、株式会社デンソー、2002年5月、Vol.7、No.1、p.20−28
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、ディーゼルエンジンの技術分野では、燃料の完全燃焼を確立することを目的として、燃料の噴射圧を極度に向上させ、その噴出粒子を極細にしてガス化を行うという思想に基づき排気ガス浄化を実現することが行われている。しかしながら、ディーゼルエンジンの燃焼室内での空気(酸素)と燃料の混合については、従来技術では物理的に完全な混合を実現することは不可能である。
【0007】
また、上述したエマルジョン燃料については、別途燃料製造装置が必要であり、安定的なエマルジョンを形成するために乳化剤(emulsifier)を用意したり、エマルジョン燃料の最適な状態を確保するための維持・管理技術が必要となったりするなど、コストや管理の面での問題を有している。
【0008】
さらに、上述した水の混合については、例えば燃焼室に水を噴射するためには、燃料噴射とは別に水噴射装置が必要となる。そして、この水噴射装置の性能によっては、NOx低減効果が十分に得られなかったり、水がノズルの先端に付着してしずくが発生したり、排出黒煙の増加や燃料消費率の悪化をもたらしたりするため、水噴射装置の設計の最適化は容易ではない。
【0009】
この発明は、上述した課題の存在に鑑みてなされたものであり、その目的は、気体と液体とを効率よく混合することができ、液体のしずくの発生を抑えてより微細な粒子を生成することができる気液混合ノズルを実現するとともに、さらにこの気液混合ノズルを利用したエマルジョン燃料燃焼システムならびに環境浄化液体噴霧システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係る第1の気液混合ノズルは、ノズル吐出口の中心部に向けて空気を吐出させる内方側空気吐出経路と、ノズル吐出口の外縁部から空気を吐出させる外方側空気吐出経路と、前記内方側空気吐出経路と前記外方側空気吐出経路との間に配置され水および/又は燃料を主成分とする液体をノズル吐出口に導入するための少なくとも1つの液体導入経路と、前記内方側空気吐出経路及び液体導入経路の出口で混合された空気及び液体の混合体が衝突する衝撃部材とを備え、前記内方側空気吐出経路の出口及び液体導入経路の出口は前記ノズル吐出口よりもノズルの内側に配置され、前記衝撃部材は、前記内方側空気吐出経路及び液体導入経路の出口と前記ノズル吐出口との間に配置されていることを特徴とする。
【0011】
また、この発明に係る第2の気液混合ノズルは、ノズル吐出口の中心部に向けて空気を吐出させる内方側空気吐出経路と、ノズル吐出口の外縁部から空気を吐出させる外方側空気吐出経路と、前記内方側空気吐出経路と前記外方側空気吐出経路との間に配置され水および/又は燃料を主成分とする液体をノズル吐出口に導入するための少なくとも1つの液体導入経路と、前記内方側空気吐出経路及び液体導入経路の出口で混合された空気及び液体の混合体が衝突する衝撃部材とを備え、前記衝撃部材は、前記内方側空気吐出経路の出口側から前記衝撃部材の先端部にかけて貫通する貫通孔を有することを特徴とする。
【0012】
さらに、この発明に係る第3の気液混合ノズルは、ノズル吐出口の中心部に向けて空気を吐出させる内方側空気吐出経路と、ノズル吐出口の外縁部から空気を吐出させる外方側空気吐出経路と、前記内方側空気吐出経路と前記外方側空気吐出経路との間に配置され水および/又は燃料を主成分とする液体をノズル吐出口に導入するための少なくとも1つの液体導入経路と、前記内方側空気吐出経路及び液体導入経路の出口で混合された空気及び液体の混合体が衝突する衝撃部材とを備え、前記衝撃部材は、前記空気及び液体の混合体の風力によってノズル中心軸を中心として回転することを特徴とする。
【0013】
この発明に係る第1の気液混合ノズルにおいて、前記衝撃部材は、前記内方側空気吐出経路の出口に対向する端部が前記出口側を頂点とする円錐形状であり、側面に前記内方側空気吐出経路および液体導入経路の出口で混合された空気及び液体の混合体を導入し回転力を付与するように中心軸に対して傾斜した誘導溝が形成されるように構成することができる。
【0014】
この発明に係る第2の気液混合ノズルにおいて、前記衝撃部材は、前記ノズル吐出口に向けてテーパ状に狭くなる側面と、この側面にノズルの中心軸方向に延びる誘導溝を有し、前記内方側空気吐出経路および液体導入経路の出口で混合された空気及び液体の混合体が、前記側面の誘導溝に沿って流れるように構成することができる。
【0015】
この発明に係る第3の気液混合ノズルにおいて、前記衝撃部材は、前記ノズル吐出口に向けてテーパ状に狭くなる側面と、この側面にノズルの中心軸に対して傾斜する方向に延びる誘導溝を有し、前記内方側空気吐出経路および液体導入経路の出口で混合された空気及び液体の混合体を前記誘導溝に導入することにより前記混合体から回転力を付与されるように構成することができる。
【0016】
この発明に係るエマルジョン燃料燃焼システムは、空気を供給する空気供給源と、燃料を供給する燃料供給源と、水を主成分とする燃焼温度低減のための液体を供給する燃焼温度低減液体供給源と、上記したこの発明に係る気液混合ノズルとを備え、前記気液混合ノズルが、バーナー装置本体に組み込まれることで構成されることを特徴とする。
【0017】
この発明に係る別のエマルジョン燃料燃焼システムは、空気を供給する空気供給源と、燃料を供給する燃料供給源と、水を主成分とする燃焼温度低減のための液体を供給する燃焼温度低減液体供給源と、上記したこの発明に係る気液混合ノズルとを備え、前記気液混合ノズルが、内燃機関の燃料噴射装置に組み込まれ、前記空気供給源、前記燃料供給源および前記燃焼温度低減液体供給源から前記空気、前記燃料および前記液体がそれぞれ導入され、前記内燃機関の燃焼室内で完全燃焼可能な混合気を形成するための前記空気、前記燃料および前記液体を吐出することを特徴とする。
【0018】
本発明に係る環境浄化液体噴霧システムは、空気を供給する空気供給源と、水を主成分とする環境浄化のための液体を供給する環境浄化液体供給源と、上記したこの発明に係る気液混合ノズルと、前記気液混合ノズルからの噴霧物に紫外線を照射するための紫外線照射手段と、前記紫外線照射手段により紫外線が照射された噴霧物を大気中に拡散するための拡散手段と、を備えることを特徴とする。
【0019】
この発明に係る環境浄化液体噴霧システムにおいて、好ましくは、前記液体には、炭素、カテキン、テアニン、セルフィール(登録商標:ニチリンケミカル株式会社)、桑の葉乳液、除虫菊のナノ粒子を含む殺虫殺菌効果を有する分子・元素を含有させている。
【0020】
また、この発明に係る環境浄化液体噴霧システムにおいて、好ましくは、前記空気には、オゾン(O)を含有させている。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、気体と液体とを効率よく混合することができ、且つ液体のしずくの発生を抑えてより微細な粒子を生成することができる気液混合ノズルを提供することができる。また、この発明に係る気液混合ノズルを利用することで、従来にない新たなエマルジョン燃料燃焼システムならびに環境浄化液体噴霧システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る気液混合ノズルを断面で示した、バーナー装置として構成されるエマルジョン燃料燃焼システムを示す図である。
【図2】同気液混合ノズルの衝撃部材を示す図で、同図(a)は断面図、同図(b)は正面図である。
【図3】同気液混合ノズルの衝撃部材の外観斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る気液混合ノズルの断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る気液混合ノズルの断面図である。
【図6】同気液混合ノズルの衝撃部材を示す図であり、同図(a)は側面図、同図(b)は断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る環境浄化液体噴霧システムを示す図であり、同図(a)は側面図、同図(b)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、添付の図面を参照して、この発明に係る気液混合ノズル、およびこの気液混合ノズルを用いたエマルジョン燃料燃焼システムならびに環境浄化液体噴霧システムの好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0024】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る気液混合ノズルを用いたエマルジョン燃料燃焼システムを示す図である。
【0025】
この気液混合ノズル10は、例えばバーナー装置としてのエマルジョン燃料燃焼システム100にて利用されている。具体的には、エマルジョン燃料燃焼システム100は、図示しない公知のバーナー装置の本体に組み込まれた気液混合ノズル10と、この気液混合ノズル10に対して空気、燃料、および水を供給する手段とを備えている。
【0026】
気液混合ノズル10は、図1に断面で示すように、外径がほぼ等しく、内径がそれぞれ異なる円筒状の前方部材11、中間部材12及び後方部材13を有して構成されている。これらの部材11〜13は、鉄系、あるいは鉄−銅系などの金属材料にて構成されて、互いの接続箇所に設けられた雄ねじと雌ねじとを螺合することで相互に接続されている。
【0027】
前方部材11は、先端部に、前方に広がるすり鉢状のノズル吐出口18が形成され、内側空間21aに円筒状の衝撃部材支持筒20を同軸的に収容している。前方部材11のノズル吐出口18の後方側は、後方に広がるすり鉢状に形成され、衝撃部材支持筒20の円錐状の先端が所定の隙間を介して対向している。衝撃部材支持筒20の内側には、中筒19が同軸配置されている。この中筒19の後端は、中間部材12の先端側にOリング19dを介して液密に螺合固定されている。中筒19の先端は衝撃部材支持筒20の先端部まで延び、中筒19及び衝撃部材支持筒20の先端部に、後述する衝撃部材22が装着されている。前方部材11の対向する2つの側面には、内側空間21aに連通する前方エア継手21が装着されている。中筒19の内側空間19aには、パイプ16bが同軸的に配置されている。パイプ16bは、先端側が衝撃部材22の近傍まで延び、後端側は中間部材12に圧入されている。このパイプ16bの内側に、更にパイプ16aが同軸配置されている。このパイプ16aは、先端側がパイプ16bの先端部近傍まで延び、後端側が後方部材13の内部まで延びている。
【0028】
中間部材12は、先端側に、その内径がパイプ16bの外径よりも大きい内側空間12dが形成され、この内側空間12dが中筒19の内側空間19aと連通している。中間部材12の側面に形成された水導入孔12cには、内側空間12dと連通する水ノズル継手12eが装着されている。
【0029】
後方部材13は、側面に形成された燃料導入孔13bに、内側空間13cと連通する燃料ノズル継手13dを装着し、後端部に、Oリング14d及び継手ジョイント部14bを介して後方エア継手14を装着してなる。後方エア継手14は、内部にパイプ14cを圧入している。このパイプ14cの先端側は、パイプ16aの後端側と連結されている。
【0030】
そして、後方エア継手14、パイプ14cの内側空間14a及びパイプ16aの内側空間18aで内方側空気吐出経路Aが形成され、燃料ノズル継手13d、燃料導入孔13b、内側空間13c、パイプ16a,16bの間の空間12bによって燃料導入経路Bが形成され、水ノズル継手12e、水導入孔12c、内側空間12d及び内側空間19aで水導入経路Cが形成され、前方エア継手21、内側空間21a及び衝撃部材支持筒20と前方部材11の間の隙間によって外方側空気吐出経路Dが形成されている。
【0031】
次に衝撃部材22について説明する。図2は、衝撃部材22の断面図(a)及び正面図(b)、図3は、外観斜視図である。これらの図に示すように、衝撃部材22は、中筒19に圧入されるため後端側が小径に形成された円柱形からなり、側面に中心軸に対して僅かに傾斜した方向若しくは螺旋状に延びる複数の誘導溝22aを周方向に所定間隔で形成し、円錐状の後端部22bを有している。誘導溝22aは、後端側から衝突する混合気体を導入する過程で、混合気体に回転力を付与するためのものである。
【0032】
以上のように構成された気液混合ノズル10に対し、コントローラ55の制御のもと、空気を供給する空気供給源としてのエアポンプ52a,52bによって供給された空気が前方エア継手21及び後方エア継手14をそれぞれ介して内方側空気導入経路A及び外方側空気導入経路Dに空気を導入すると共に、燃料供給源としての燃料タンク53からポンプ53aによって供給されるガソリンやディーゼル燃料、石油などの燃料が、燃料ノズル継手13dを介して燃料導入経路Bに導入され、更に水供給源としての水タンク54からポンプ54aによって供給される水が水ノズル継手12eを介して水導入経路Cに導入されるようになっている。
【0033】
以上の構成のエマルジョン燃料燃焼システムによれば、内方側空気吐出経路Aに導入された空気は、パイプ16aの先端で、その外側の燃料導入経路Bを通流する燃料と混合されて霧状になり、更に、その混合体が水導入経路Cと合流する部分で水と混合される。これとほぼ同時に、水、燃料及び空気の混合体は、衝撃部材22に衝突して更に微細な粒子からなる霧状となる。衝撃部材22に衝突した混合体は、衝撃部材22の誘導溝22aを通過して、回転力を付与され、更に、外方側空気吐出経路Dから吐出された空気と混合される。前方部材11と衝撃部材支持筒20の先端との間の45°の角度の円錐状の吐出口を有する外方側空気吐出経路Dから吐出される空気は、ノズル吐出口18のすり鉢状の側面に沿って約45°の角度で円錐状に回転しながら拡がって吐出される。このように、本実施形態に係る気液混合ノズル10によれば、空気、燃料および水の混合体が衝撃部材22に衝突することにより、極めて細かな粒子のエマルジョン燃料が生成される。
【0034】
なお、各ポンプ52a,52b,53a,54aは、CPU等を備えたコントローラ55によりその動作が制御されているため、気液混合ノズル10から最適な混合比や吐出量を考慮して空気、燃料、水を吐出することができるようになっている。また、水タンク54には、図示しないマグネシウムタンクからマグネシウム(Mg)を混合可能とするようにしても良い。
【0035】
さらに、燃料タンク53から供給される燃料やエアポンプ52a,52bから供給される空気には、図示しない炭素タンクから炭素を混合可能としても良い。燃料には、上述したものを含めて、灯油や軽油、A重油、食用油などを使用することができる。水については、水道水を使用することができるが、例えばフィルタを通過させることで塩素除去などを施したものを使用することが好ましい。
【0036】
空気については、空気圧が最高1kgf/cmの圧搾空気を用いればよく、流量については、例えばエマルジョン燃料燃焼システム100においては70l/min〜100l/minとした。ただし、この空気量については、バーナーの排気量や熱量等によって、任意に変更すればよい。
【0037】
また、気液混合ノズル10から吐出される空気、すなわち内方側空気吐出経路Aおよび外方側空気吐出経路Dから吐出される空気には、例えばミクロンオーダーもしくはナノオーダーの径を有するように形成された炭素を含有させることもできる。このように炭素を空気に混合して吐出させることにより、化石燃料の消費をできる限り低減することができるので、高い熱量を確保することが可能となる。
【0038】
さらに、エアポンプ52a,52bに図示しないオゾン発生器を隣接配置して、供給する空気にオゾン(O)を混合することにより、燃焼効率の向上に寄与することも可能となる。また、水タンク54から気液混合ノズル10に対して供給される水に対しては、より効率的な燃焼と爆発力を維持するために、マグネシウムを混合することとした。
【0039】
このマグネシウムは、海水から製造することができ、しかも化石燃料の使用量を低減させることに寄与するので、環境にとっては好ましい材料である。ただし、水に混合する元素材料については、マグネシウムに限定されるものではなく、酸化促進効果を有する他の元素を混合することも可能である。
【0040】
ここで、燃料と水の消費割合については、灯油の場合が灯油五割に対して水五割、もしくは灯油四割に対して水六割の配分にて実施することが好適であった。ただし、この燃料と水の混合比率についても、使用条件などに応じて任意に決定することができるので、これに限定されるものではない。
【0041】
以上の実施条件にて図1に示すエマルジョン燃料燃焼システム100を稼働したところ、従来のバーナー装置と比較して約15%程度の燃料削減効果が得られた。また、COの排出量についても、約15%程度の削減効果が得られた。このことから、第1の実施形態にかかる気液混合ノズル10を用いたバーナー装置を有するエマルジョン燃料燃焼システム100によれば、環境面に良好な燃料燃焼システムを構築することが可能となる。
【0042】
そして、第1の実施形態に係る気液混合ノズル10は、以上説明した構成により形成されているので、ノズルの内部であらかじめ空気と燃料と水とが混合され、吐出方向に対して所定の角度を持って円錐状に拡がりながら前方へとこれらを吐出することとなる。つまり、ノズル吐出口18にて初めてこれらが混合されるのではなく、ノズルの内部において最適な状態でのエマルジョン燃料が生成されることとなる。
【0043】
さらに、衝撃部材22がノズル吐出口18の内側に配置されており、外方側空気吐出経路Dによって混合体をさらに吐出する構造を有しているため、衝撃部材22の先端面に混合体のしずくが付着することがなく、しずくの発生が無いという効果を有する。
【0044】
したがって、第1の実施形態に係る気液混合ノズル10によれば、従来技術では困難であった燃料と空気と水の完全な混合、およびこれらの吐出が可能となり、また、エマルジョン燃料の最適な状態を確保するための維持・管理技術は不要となる。さらに、第1の実施形態にかかる気液混合ノズル10では、水を混合する際に従来技術で必要であった水噴射装置が不要となり、安価且つ簡単な構成の気液混合ノズルを実現することができる。
【0045】
なお、第1の実施形態に係る気液混合ノズル10を用いて空気と燃料、水を最適に混合する場合の条件としては、例えば内方側空気吐出経路Aから吐出される空気の空気圧をP、外方側空気吐出経路Dから吐出される空気の空気圧をP、としたときに、P≧Pなる不等式が成り立つように構成されていることが好適である。
【0046】
基本的に、内方側空気吐出経路Aから吐出される空気は、前方に向かって直進方向に吐出されるので、燃料と十分混合されてさらに水と混合され、かつこれらを前方に運ぶキャリアとしても機能することとなる。一方、外方側空気吐出経路Dから吐出される空気は、所定の角度方向で円錐形状を描きながら吐出されるので、混合体を好適に吐出させる機能を発揮することになる。これらそれぞれの機能を好適に発揮させる空気圧条件を発明者が研究した結果、P≧Pなる不等式が成り立つようにすることが望ましいことを確認している。
【0047】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記第1の実施形態に記載の範囲には限定されない。上記第1の実施形態には、多様な変更または改良を加えることが可能である。例えば、内方側空気吐出経路Aと外方側空気吐出経路Dとの間に吐出されて導入される燃料と水は、上記第1の実施形態ではそれぞれ一層ずつとしていたが、燃料や水の導入経路を複雑化し、多重層構造にて吐出することにより、より高い混合比率を実現することも可能である。
【0048】
また、気液混合ノズル10の内部において、空気、燃料、水の順番に混合される構成としたが、空気、水、燃料の順番に混合されるように構成したり、その他の順番にて混合されるように構成することもできる。この場合は、ノズル内部に導入される空気、燃料、水の経路を変更すれば容易に対応することができる。
【0049】
さらに、混合される空気、燃料、水のノズル吐出口18の内部での距離、および吐出される空気、燃料、水の混合体と空気とのノズル吐出口18での距離については、任意の変更が可能であり、理論的にはこれらの間隔が近ければ近いほど混合効率を高めることができる。このような気体と液体のノズル吐出口18での距離などは、使用条件に応じて任意に変更が可能である。
【0050】
さらに、上記第1の実施形態では、衝撃部材22の誘導溝22aを斜めに配置した場合は、ノズル吐出口18の端部から吐出される混合体が誘導溝22aの作用によって回転力を有して吐出されるとしたが、誘導溝22aをノズル中心軸方向と平行に配置したり、また、例えば外方側空気吐出経路Dの経路内に旋回状の溝構造を設けることにより、空気にさらに回転力を付与することもできる。
【0051】
このような場合は、空気、燃料、水などの液体の混合をさらに効率化することができ、より効果的な気液混合を実現することが可能となる。また、さらに、混合体や空気の吐出角度については任意に変更することができ、気液混合ノズル10の使用条件等に応じて最適な角度に変更することが可能である。
【0052】
なお、上記第1の実施形態では、ノズル吐出口18よりも内側の内方側空気吐出経路Aのノズル吐出口18側の端部近傍に、頂点がこの端部に向けられた円錐形状を含む衝撃部材22がノズル吐出口18の内部に設置されている場合を例示して説明した。しかし、この衝撃部材22については、高速の圧力でと吐出される空気や液体が衝突することによって衝撃力を与え、これら空気や液体が混ざり合う際により細かな混合状態にすることができる衝撃部材であればよい。
【0053】
そして、この衝撃部材の取り得る形状については、円錐形状を含むものには限られず、上記の衝撃付与・混合といった作用効果を発揮できる条件として、あらゆる形状を採用することができる。また、空気の空気圧については、高圧であればある程、燃料や水との混合効率が向上して微細にガス化し、燃焼効率の向上を図ることが可能となる。
【0054】
なお、これらの条件値の制御は、空燃比制御と同時にマイコン制御などを行うことによって可能となり、本発明の気液混合ノズルによって、エマルジョン燃料の完全燃焼技術を確立することが可能となった。ここで、第1の実施形態に係る気液混合ノズル10を用いたエマルジョン燃料燃焼システム100は、上述したようにバーナー装置に適用した場合を例に挙げて説明したが、このエマルジョン燃料燃焼システム100は、バーナー装置のようなオープンな開放系で用いられるものばかりではなく、内燃機関のようなクローズな閉鎖系でも適用することが可能である。
【0055】
すなわち、第1の実施形態に係る気液混合ノズル10を公知の内燃機関の燃料噴射装置に組み込み、空気供給源、燃料供給源および燃焼温度低減液体供給源から空気、燃料および液体をそれぞれ導入し、内燃機関の燃焼室内で完全燃焼可能な混合気を形成するための空気、燃料および液体を吐出するように構成すればよい。
【0056】
なお、内燃機関の運転条件については、内燃機関の使用条件や仕様等によって任意に設定すればよい。本発明に係る気液混合ノズル10を用いた内燃機関としてのエマルジョン燃料燃焼システムが有する優位な点としては、水を霧状で吐出し、しずくの発生を抑えることができるので燃焼温度を確実に抑制でき、特に水量の調整を行うことによって燃焼室内(エンジン室内)の浄化を行うことができるところである。
【0057】
この効果は、窒素酸化物(NOx)の抑制にも作用し、排気ガス中のNOx量を削減することに寄与する。さらに、エンジン室内に水を導入することによるエンジンの劣化を防止することについては、水の吐出をエンジン停止の数秒間前に停止させることにより解決することができる。この制御については、マイコン制御を行うことで容易に実施することが可能である。
【0058】
(第2の実施形態)
図4は、本発明の第2の実施形態に係る気液混合ノズルの一例を示す断面図である。
気液混合ノズル60は、図4に示すように、外径がほぼ等しく、内径がそれぞれ異なる円筒状の前方部材61、中間部材62及び後方部材63を有して構成されている。これらの部材61〜63は、鉄系、あるいは鉄−銅系などの金属材料にて構成されて、互いの接続箇所に設けられた雄ねじと雌ねじとを螺合することでOリング62c,63a及び70aを介して相互に接続されている。
【0059】
前方部材61は、先端部に、前方に広がるすり鉢状のノズル吐出口68が形成され、内側空間61aに円筒状の中筒70を同軸的に収容している。前方部材61のノズル吐出口68の後方側は、後方に広がるすり鉢状に形成され、中筒70の円錐状の先端が所定の隙間を介して対向している。中筒70の内側には、中筒69が同軸配置されている。この中筒69の後端は、中間部材62の先端側に螺合固定されている。中筒69の先端は中筒70の先端部まで延びている。前方部材61の側面には、内側空間61aに連通する前方エア継手73が装着されている。中筒69の内側空間69aには、パイプ66が同軸的に配置されている。パイプ66は、先端側が中筒69及び70の先端部まで延び、先端部に後述する衝撃部材72を支持している。パイプ66の後端側は後方部材63の先端部に螺合結合されている。
【0060】
中間部材62は、先端側に、その内径がパイプ66の外径よりも大きい内側空間67aが形成され、この内側空間67aが中筒69の内側空間69aと連通している。中間部材62の側面には、内側空間67aと連通する燃料ノズル継手67がOリング67bを介して装着されている。
【0061】
後方部材63は、側面に形成された後方空気導入孔64aに、パイプ66の内側空間68aと連通する後方エア継手64がOリング64bを介して装着され、後端部に、水ノズル継手63aを装着してなる。
【0062】
ノズル先端に装着される衝撃部材72は、円錐状の先端面72dと、この先端面72dと連続し、先端面72dと逆向きに頂点を有する円錐状の衝撃面72cと、側面に形成された中心軸方向に延びる複数本の誘導溝72bと、中心軸に沿って形成された中心孔72aとにより構成されている。中心孔72aは、その後端がパイプ66の内側空間68aと連通している。
【0063】
そして、後方エア継手64、後方空気導入孔64a、パイプ66の内側空間68a及び衝撃部材72の誘導溝72bで内方側空気吐出経路Aが形成され、燃料ノズル継手67及び内側空間67a,69aによって燃料導入経路Bが形成され、水ノズル継手63a及び内側空間63b,62b,70bで水導入経路Cが形成され、前方エア継手73及び内側空間61aによって外方側空気吐出経路Dが形成されている。
【0064】
このように構成された気液混合ノズル60によれば、内方側空気吐出経路Aに導入された空気と、その外側の燃料導入路Bに導入された燃料と、水導入経路Cに導入された水と、外方側空気吐出経路Dに導入された空気とが、衝撃部材72の衝撃面72cの手前で混合された後、衝撃面72cに衝突する。このとき、外方側空気吐出経路Dからは、ほぼ45°のテーパをなす衝撃面72cに対して垂直に衝突する角度で空気が吐出されるので、混合体はより微細な粒子となる。
【0065】
また、内方側空気吐出経路Aに導入された空気は、衝撃部材72の中心孔72aを介してノズル先端側に吐出されるので、衝撃部材72の先端にしずくが残留することがなく、しずくの発生を防止することができる。
【0066】
したがって、第2の実施形態に係る気液混合ノズル60によっても、従来技術では困難であった燃料と空気と水の完全な混合が可能となり、また、エマルジョン燃料の最適な状態を確保するための維持・管理技術は不要となる。さらに、第2の実施形態に係る気液混合ノズル60においても、従来の水噴射装置は不要となるため、安価且つ簡単な構成の気液混合ノズルを実現することができる。
【0067】
なお、第2の実施形態に係る気液混合ノズル60を用いて空気と燃料、水を最適に混合する場合の空気圧の条件としては、内方側空気吐出経路Aから吐出される空気の空気圧をP、外方側空気吐出経路Dから吐出される空気の空気圧をP、としたときに、上述した気液混合ノズル10と同様にP≧Pなる不等式が成り立つように構成されていることが好適である。
【0068】
基本的に、内方側空気吐出経路Aから吐出される空気は、前方斜め45°の角度方向で円錐形状を描きながら直進方向に吐出されるので、混合された燃料と水を前方に運ぶキャリアとして機能することとなる。一方、外方側空気吐出経路Dから吐出される空気は、前方斜め45°の角度方向で円錐形状を描きながら吐出しつつも、螺旋状の溝が形成されていれば、回転しながら吐出されるので、燃料と水を好適に混合させる機能を更に発揮することになる。
【0069】
なお、本発明の技術的範囲は上記第2の実施形態に記載の範囲には限定されない。上記第2の実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。例えば、内方側空気吐出経路Aと外方側空気吐出経路Dから並行方向に吐出される空気層の間に導入される燃料と水は、上記第2の実施形態ではそれぞれ一層ずつとしていたが、燃料や水の導入経路を複雑化し、多重層構造にて吐出することにより、より高い混合効率を実現することも可能である。
【0070】
また、気液混合ノズル60において、中心部から空気、燃料、水の順番に混合される構成としたが、空気、水、燃料の順番に混合されるように構成したり、その他の順番にて混合されるように構成することもできる。この場合は、ノズル内部に導入される空気、燃料、水の経路を変更すれば容易に対応することができる。
【0071】
さらに、吐出される空気と燃料、空気と水のノズル吐出口での距離については、任意に変更が可能であり、論理的にはこれらの間隔が近ければ近いほど混合効率を高めることができる。このような気体と液体のノズル吐出口での距離については、使用条件等に応じて任意に変更が可能である。
【0072】
また、上記第2の実施形態では、外方側空気吐出経路Dから吐出される空気が誘導溝の作用によって回転力を有して吐出されていたが、例えば外方側空気吐出経路Dの経路内に旋回状の溝構造を設けることにより、空気に回転力を付与することができる。かかる構造を付加することによって、燃料と液体の混合をさらに効率化することができ、より効果的な気液混合を実現することが可能となる。
【0073】
またさらに、上記第2の実施形態では、吐出される空気が前方斜め45°の角度方向で円錐形状を描きながら吐出するように形成した。ただし、この吐出角度については任意に変更が可能であり、気液混合ノズル60の使用条件等に応じて最適な角度に変更することが可能である。
【0074】
なお、上記第2の実施形態では、内方側空気吐出経路Aのノズル吐出口68の端部における空気吐出方向に、衝撃面72cがノズル吐出口68に向けてテーパ状に狭くなる衝撃部材72が設置されている場合を例示して説明した。しかし、この衝撃部材72については、高速の強い圧力で吐出される空気や液体が衝突することによって衝撃力を与え、これら空気や液体が飛散する際により微小の霧状体にすることができる衝撃部材であればよい。
【0075】
(第3の実施形態)
図5は、本発明の第3の実施形態に係る気液混合ノズルの一例を示す断面図である。また、図6は、同気液混合ノズルの衝撃部材の一例を説明するための説明図であり、同図(a)は側面図を、同図(b)は断面図を示している。なお、この第3の実施形態に係る気液混合ノズルは、上記第2の実施形態に係る気液混合ノズル60と重複する構成で形成することができるので、既に説明した部分と重複する箇所には同一の符号を附して説明を省略する。
【0076】
第3の実施形態に係る気液混合ノズル60Aは、図5に示すように、上記第2の実施形態に係る気液混合ノズル60と同様に前方部材61、中間部材62、後方部材63という三つの部材を有して構成され、これら各部材61〜63に形成された経路などの構成や、接続される継手などの部品、あるいはノズルの作用効果や適用範囲などは共通しているため、ここでは説明を省略する。
【0077】
一方、気液混合ノズル60Aは、内方側空気吐出経路Aのノズル吐出口68の端部における空気吐出方向に設置された衝撃部材72Aの構造が、先の例の気液混合ノズル60の衝撃部材72と相違している。すなわち、図6(a)に示すように、気液混合ノズル60Aに取り付けられる衝撃部材72Aは、回転部75と、軸支部74と、留め部76とから構成されている。
【0078】
この衝撃部材72Aは、後端側の軸支部74の断面十字状に形成された取付部74aが中央エアパイプ66の先端側の内側に圧入嵌合されるとともに、軸支部74の軸部74bに回転自在なコマ状の回転部75が取り付けられ、さらに軸部74bの先端側に回転部75の脱落を防止する留め部76が圧入されて、ノズル吐出口68の端部に取り付けられている。
【0079】
回転部75は、ノズル吐出口68に向けてこの衝撃部材72Aに衝突した空気および燃料、水の混合体を空気吐出方向に円錐状でかつ回転させながら吐出するような誘導溝75aを側面に有している。回転部75は、側面72Adがノズル吐出口68に向けてテーパ状に狭くなり、側面72Aeが先端側に向けてテーパ状に狭くなる(すなわち、後端側および先端側が先細となる)コマ状の外形を有し、ノズル吐出口68の中心部を回転軸としている。
【0080】
誘導溝75aは、図6(a),(b)に示すように、ノズル吐出口68の近傍で螺旋状に例えば30°程度の角度を有してよじれた状態で形成されている。また、軸支部74の取付部74aの十字部分の厚みは、それぞれ異なるように形成されている。これにより、内方側空気吐出経路Aから吐出される空気の流速に変化をつけ、回転部75の旋回力を向上させるとともに、液体と液体、気体と液体、気体と気体などの混合を促進して霧状化を向上させることができる。
【0081】
軸支部74は、回転部75を回転可能に軸支するとともに、内方側空気吐出経路Aと連通して空気を回転部75の先端側に吐出させるための第1衝撃部材側空気吐出経路72Aaを中心部に有している。また、軸支部74は、取付部74aとパイプ66との嵌合時に、これらの間に形成されて内方側空気吐出経路Aと連通する十字部分間の扇状の空間からなる第2衝撃部材側空気吐出経路72Abをその周囲に有している。この第2衝撃部材側空気吐出経路72Abにより、内方側空気吐出経路Aからの空気が回転部75の誘導溝75a側に吐出される。
【0082】
留め部76は、軸支部74の軸部74bの先端側にて、回転部75をノズル吐出口68の端部側で回動自在に固定し、第1衝撃部材側空気吐出経路72Aaと連通する第3衝撃部材側空気吐出経路72Acをその中心部に有している。したがって、衝撃部材72Aに衝突して側面72Ad,72Aeや誘導溝75aに沿って混合体のしずくが先端側に溜まったとしても、回転部75が回転することによって、このしずくを外部に吹き飛ばすことができる。このように、第3の実施形態に係る気液混合ノズル60Aにおいても、上述した気液混合ノズル10,60と同様に、しずくによる問題が発生することはない。
【0083】
(第1〜第3の実施形態に係る気液混合ノズルを用いた環境浄化液体噴霧システムの実施例)
以上説明した第1〜第3の実施形態に関連する気液混合ノズル10,60,60Aは、エマルジョン燃料を効率よく生成し燃焼させるために用いられるものであった。これらの気液混合ノズル10,60,60Aは、その他にも、環境浄化のための液体を供給する環境浄化液体噴霧システムに好適に用いることもできる。図7は、環境浄化液体噴霧システムに用いられる環境浄化液体噴霧装置の一例を説明するための説明図であり、同図(a)は側面図を、同図(b)は正面図を示している。
【0084】
上述した第1〜第3の実施形態に係る気液混合ノズル10,60,60Aは、空気と燃料および水の三種類の物質を混合するものであったが、環境浄化液体噴霧システムに適用する場合は、環境浄化のために用いられる液体と空気とを混合するために用いられるように構成される。
【0085】
例えば、上記気液混合ノズル10,60,60Aの燃料に関する構成を廃止し、あるいはこの燃料に関する構成を環境浄化のための液体を導通・吐出する構成に変換すれば、環境浄化液体噴霧システムに適用することが可能となる。そして、これらの気液混合ノズル10,60,60Aを環境浄化液体噴霧システムに適用した場合も、上述した作用効果と同様の作用効果を有し、最適な状態で環境浄化物質を生成し、噴霧することが可能となる。
【0086】
具体的には、図7に示すように、環境浄化液体噴霧システムを構成する環境浄化液体噴霧装置200は、水を貯留する水タンク201と、この水タンク201に貯留された水に浸されて、ミネラル成分を供給するための第1ミネラル容器202と、水タンク201からのミネラル水溶液を第2ミネラル容器209に供給するための電磁弁203aと、同じく水タンク201からのミネラル水溶液を気液混合ノズル10,60,60Aに供給するための電磁弁203bとを備える。
【0087】
また、環境浄化液体噴霧装置200は、第2ミネラル容器209に供給されたミネラル水溶液を空気中に放出するためのファン205と、気液混合ノズル10,60,60Aに空気を圧力を加えて供給するためのエアポンプ206とを備える。さらに、環境浄化液体噴霧装置200は、環境浄化液体噴霧装置200の全体の制御を司るとともに、電磁弁203a,203bや各部の動作を制御する制御装置207と、気液混合ノズル10,60,60Aおよびファン205によりそれぞれ放出される霧状体に紫外線を照射するための紫外線ランプ208とを備える。
【0088】
また、環境浄化液体噴霧装置200は、フィルタ211を介して外部から空気を内部に取り入れるためのファン210と、エアポンプ206から気液混合ノズル10,60,60Aに供給される空気の少なくとも一部にオゾン(O)を付与するオゾン発生装置212とを備える。なお、気液混合ノズル10,60,60A、エアポンプ206、オゾン発生装置212等の各部は、配管213によって互いに接続されている。
【0089】
第1ミネラル容器202に蓄えられる環境浄化物質としては、炭、カテキン、テアニン、セルフィール(登録商標:ニチリンケミカル株式会社)、桑の葉乳液などが挙げられる。炭は、大地から養分を水分とともに吸い上げて原木から成長する樹木等を炭焼き(炭化処理)することにより得られ、成長過程で吸い上げられる養分はミネラル成分を有し、Mg(マグネシウム)、Na(ナトリウム)、Ge(ゲルマニウム)、K(カリウム)、Ca(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)、Fe(鉄)、Mn(マンガン)、Si(ケイ素)、P(リン)などが含まれている。カテキンは、水溶液(溶出液)を直接空気中に放出することによりウィルスを不活性化する。
【0090】
このミネラル成分中のナトリウム、カリウムはアルカリ金属であり、カルシウムは土類金属であって、比較的含有比率が高く、水タンク201の水に溶出しやすい性質を有している。この第1ミネラル容器202からのミネラル成分により、水タンク201内の水はアルカリ水溶液となり、アルカリイオン水となる。
【0091】
なお、カリウム、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウムの順番にイオン化傾向の強い金属であり、水への溶出反応の強い金属が含有されているアルカリ水溶液は、例えば炭を水に浸すことにより生成することができる。すなわち、水であるHOは、H+OH⇔HOであり、酸から出る水素イオンと塩基(アルカリ)から出る水酸化物イオンとが結びついてHOという水になることは知られており、これは酸と塩基との中和であるといえる。
【0092】
そして、上述した炭から水に溶出するアルカリ金属のミネラルは塩基(アルカリ)であるので、水酸化物イオンOHとなる。環境浄化液体噴霧装置200は、この水酸化物イオンOHによるマイナスイオン水を水タンク201から気液混合ノズル10,60,60Aに供給して空気中に噴霧するので、細かい水分子の粒子の集まりであるその霧状体は、マイナスイオンの性質を有することとなる。
【0093】
このように、上述した環境浄化物質を水に混ぜて噴霧することにより、殺虫効果や有機物質の分解効果を良好に得ることができる。また、これらの環境浄化物質は、分解を終えると水や酸素などの環境中に戻る特性を有しており、非常に環境に優しい物質となっている。
【0094】
さらに、これらの環境浄化物質には、例えば緑茶のカテキンやテアニン等の水溶性食物繊維を、また害虫を退治するニームの木の実や葉の溶出液エキスを含めることもでき、これらを水タンク201内の水に混ぜて噴霧することにより、人体に対して毒性・有害性なく空気清浄効果を得ることができる。またさらに、除虫菊のナノ粒子には殺虫効果があり、このナノ粒子を用いることで環境浄化液体噴霧装置200を有する環境浄化液体噴霧システムを殺虫システムとして利用することもできる。
【0095】
また、エアポンプ206に隣接配置したオゾン発生装置212によって、気液混合ノズル10,60,60Aに供給する空気にオゾンを含有させて、ノズル内でこのオゾンと水を混合させることもできる。ここで、水にオゾンを含有させる従来技術では、含有効率が極めて悪く、オゾンが霧散してしまうという問題を抱えていた。
【0096】
しかしながら、第1〜第3の実施形態にかかる気液混合ノズル10,60,60Aによれば、水がクラスター状の霧となってオゾンを安定的に吸着し、長時間にわたって搬送することが可能であることが確認できている。これは、吐出する水に強い圧力で空気を吹き付けることでクラスター状の水が細分化され、その際にマイナスイオンが発生し、オゾンを安定的に吸着することができる効果によるものだと考えられる。
【0097】
このように、気液混合ノズル10,60,60Aからオゾンを圧力のかかった空気と含有させて同時に噴霧することにより、マイナスイオンの霧状体の粒にオゾンが付着した状態で空気中に放出することができる。なお、紫外線ランプ208は、184.9nmの波長と、253.7nmの波長の二種類の波長の紫外線を照射することができる構造となっている。
【0098】
そして、環境浄化液体噴霧装置200は、紫外線ランプ208によって、気液混合ノズル10,60,60Aから空気中に噴霧されるオゾンを含むマイナスイオン水と、ファン205により空気中に噴霧されるマイナスイオン水とを含む空気の流れに上述した紫外線を照射することができる構造となっている。
【0099】
具体的には、184.9nmの波長の紫外線は、空気中の酸素の一部を酸素原子に解離し、オゾンを生成させる効果があることが分かっている。したがって、このオゾンを生成させる紫外線を、紫外線ランプ208により照射して、気液混合ノズル10,60,60Aから噴霧するマイナスイオン水の霧状体にのせて空気中に放出することにより、空気中でヒドロキシラジカル(OH)を生成し、ウィルス細胞を酸化して破壊することができる。
【0100】
ヒドロキシラジカルは、水分子があるためにオゾンが分解して発生した酸素原子との反応により発生する。水タンク201内の水溶液には、カリウムなどヒドロキシラジカル生成に有効なミネラルが溶出されていることから、オゾンの濃度を安全な0.1ppm以内にしても、十分にヒドロキシラジカルを生成させることができる。マイナス電荷を有するこの霧状体は、空気中のゴミやホコリ等の物質に取り付きやすく吸い寄せられる性質を有するので、空気中の細菌などにも取り付く。そして、細菌等の細胞壁の周囲でヒドロキシラジカルが作られることにもなり、これにより細胞壁を破壊することができる。
【0101】
水タンク201内のアルカリイオン水を気液混合ノズル10,60,60Aにより噴霧してなる霧状体は、マイナスイオンの霧であり、プラス電位のものに吸い寄せられ付着する性質を有している。例えばpH11程度の濃アルカリは、特性として殺虫や除虫効果があるだけでなく、オゾンの酸化力やさらに酸化力の強いヒドロキシラジカルの効力も得ることができるので、これらの相乗効果を得ることが可能となる。
【0102】
また、253.7nmの波長の紫外線は、ファン205により放出される霧状体に紫外線ランプ208によって照射することにより、細菌の細胞内にエネルギーの大きい紫外線が吸収され、核タンパク構造に変化をもたらし、細胞を死滅させることが判明している。このような殺菌効果のある紫外線の波長特性は、菌種によってほぼ同一の波長であり、250nm〜260nmの波長が最も殺菌効果が高いとされている。このような紫外線を、環境浄化液体噴霧装置200から噴霧されるマイナスイオン水の霧状体に照射して空気中に放出することにより、昼夜を問わず高い殺菌効果を得ることができる。
【0103】
また、水タンク201内のマイナスイオン水中に比較的含有率の高いカリウムは、気液混合ノズル10,60,60Aからの噴霧の際に水分子に働きかけ、ヒドロキシラジカルと過酸化水素を生成することが知られている。なお、マイナスイオン水中の遷移元素である鉄(Fe)やマンガン(Mn)などによる反応によっても、ヒドロキシラジカルが生成される。
【0104】
このように、環境浄化液体噴霧装置200を用いた環境浄化液体噴霧システムによれば、第1〜第3の実施形態にかかる気液混合ノズル10,60,60Aを用いた環境浄化物質の散布、紫外線ランプ208による紫外線の照射等により、従来では困難であった殺菌、殺虫、空気中の病原菌の浄化、脱臭、鮮度保持等の効果を安定的に得ることが可能となった。
【0105】
すなわち、環境浄化液体噴霧装置200によれば、気液混合ノズル10,60,60Aにより、木炭や竹炭などの炭に含まれる天然ミネラルの恵みであり、有害物質を分解・酸化する酸化力の強いヒドロキシラジカル分子をオゾンの濃度を高くすることなく生成する仕組みを実現している。また、ミネラル成分を有する圧力のかかった水溶液(水道水などの浄水)と圧縮空気とを空気中に噴霧し、この水溶液をオゾン含有空気と同時に空気中に噴霧することにより、脱臭、殺虫、殺菌を行う仕組みを実現している。
【0106】
なお、気液混合ノズル10,60,60Aに供給する空気中に、例えば殺虫力の強い桑の葉粉末、除虫菊粉末、ニームの葉粉末等を含有させることにより、薬剤を使わない殺虫を行うことや、これらの粉末の成分を溶出させた水溶液を霧状体として噴霧することにより殺虫を行うことなどもできる。これらの成分を溶出した水溶液は、人体には無害である。
【0107】
また、気液混合ノズル10,60,60Aへ供給する水へのミネラル成分の溶出方法は、上述したものの他、例えば第1および第2ミネラル容器202,209内に水タンク201から水を供給してミネラル成分を溶出させた水を得るようにしてもよい。その他、環境浄化液体噴霧装置200は、上述した気液混合ノズル10,60,60Aによらず、従来から採用されている気液混合方式のノズルを用いたとしても、十分に上述したような殺菌・殺虫効果を得ることができるように形成されている。
【0108】
なお、オゾンの濃度や紫外線の波長、あるいは霧状体の噴霧条件等については、上述したものに限定されず、使用環境や使用目的によって任意に設定することが可能である。さらに、上述したマイナスイオンの発生を利用して、あらかじめ水に香料を混入させておくことにより、芳香による癒し効果と消臭効果を高次元で両立させて発揮させることも可能である。
【0109】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記各実施形態に記載の範囲には限定されない。上記各実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0110】
例えば、気液混合ノズル10,60,60Aにおいては、水をオゾンナノバブル水に置き換えることが可能である。このオゾンナノバブル水を使うことで、混合させる炭素やマグネシウムなどの酸化燃焼効果が促進されることとなる。このことは、炭素やマグネシウムなどの燃焼爆発力の強い元素・分子の水に対する混合率を増加させることで、従来使用していた燃料を低減する効果を発揮できることを示している。
【0111】
また、環境浄化液体噴霧装置200に適用する気液混合ノズル10,60,60Aにおいて、噴霧する水をオゾンナノバブル水とすることにより、殺菌効果を発揮させることができる。マイクロバブルは水中で消滅するが、ナノバブルは持続し、塩素の数倍の殺菌効果を持つ。このようなオゾンナノバブル水を利用することにより、殺菌、殺虫、消毒、消臭などの多方面にわたる効果を得ることが可能となる。
【0112】
以上のような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0113】
10,60,60A…気液混合ノズル、11,61…前方部材、12,62…中間部材、12e,63a…水ノズル継手、13,63…後方部材、13d,67…燃料ノズル継手、14,64…後方エア継手、21,73…前方エア継手、22,72,72A…衝撃部材、200…環境浄化液体噴霧装置、201…水タンク、202…第1ミネラル容器、205…ファン、206…エアポンプ、207…制御装置、208…紫外線ランプ、209…第2ミネラル容器、210…ファン、211…フィルタ、212…オゾン発生装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル吐出口の中心部に向けて空気を吐出させる内方側空気吐出経路と、
ノズル吐出口の外縁部から空気を吐出させる外方側空気吐出経路と、
前記内方側空気吐出経路と前記外方側空気吐出経路との間に配置され水および/又は燃料を主成分とする液体をノズル吐出口に導入するための少なくとも1つの液体導入経路と、
前記内方側空気吐出経路及び液体導入経路の出口で混合された空気及び液体の混合体が衝突する衝撃部材と
を備え、
前記内方側空気吐出経路の出口及び液体導入経路の出口は前記ノズル吐出口よりもノズルの内側に配置され、
前記衝撃部材は、前記内方側空気吐出経路及び液体導入経路の出口と前記ノズル吐出口との間に配置されている
ことを特徴とする気液混合ノズル。
【請求項2】
ノズル吐出口の中心部に向けて空気を吐出させる内方側空気吐出経路と、
ノズル吐出口の外縁部から空気を吐出させる外方側空気吐出経路と、
前記内方側空気吐出経路と前記外方側空気吐出経路との間に配置され水および/又は燃料を主成分とする液体をノズル吐出口に導入するための少なくとも1つの液体導入経路と、
前記内方側空気吐出経路及び液体導入経路の出口で混合された空気及び液体の混合体が衝突する衝撃部材と
を備え、
前記衝撃部材は、前記内方側空気吐出経路の出口側から前記衝撃部材の先端部にかけて貫通する貫通孔を有する
ことを特徴とする気液混合ノズル。
【請求項3】
ノズル吐出口の中心部に向けて空気を吐出させる内方側空気吐出経路と、
ノズル吐出口の外縁部から空気を吐出させる外方側空気吐出経路と、
前記内方側空気吐出経路と前記外方側空気吐出経路との間に配置され水および/又は燃料を主成分とする液体をノズル吐出口に導入するための少なくとも1つの液体導入経路と、
前記内方側空気吐出経路及び液体導入経路の出口で混合された空気及び液体の混合体が衝突する衝撃部材と
を備え、
前記衝撃部材は、前記空気及び液体の混合体の風力によってノズル中心軸を中心として回転する
ことを特徴とする気液混合ノズル。
【請求項4】
空気を供給する空気供給源と、
燃料を供給する燃料供給源と、
水を主成分とする燃焼温度低減のための液体を供給する燃焼温度低減液体供給源と、
請求項1〜3のいずれか1項記載の気液混合ノズルと、
を備え、
前記気液混合ノズルが、バーナー装置本体に組み込まれることで構成されることを特徴とするエマルジョン燃料燃焼システム。
【請求項5】
空気を供給する空気供給源と、
燃料を供給する燃料供給源と、
水を主成分とする燃焼温度低減のための液体を供給する燃焼温度低減液体供給源と、
請求項1〜3のいずれか1項記載の気液混合ノズルと、
を備え、
前記気液混合ノズルが、
内燃機関の燃料噴射装置に組み込まれ、前記空気供給源、前記燃料供給源および前記燃焼温度低減液体供給源から前記空気、前記燃料および前記液体がそれぞれ導入され、前記内燃機関の燃焼室内で完全燃焼可能な混合気を形成するための前記空気、前記燃料および前記液体を吐出することを特徴とするエマルジョン燃料燃焼システム。
【請求項6】
空気を供給する空気供給源と、
水を主成分とする環境浄化のための液体を供給する環境浄化液体供給源と、
請求項1〜3のいずれか1項記載の気液混合ノズルと、
前記気液混合ノズルからの噴霧物に紫外線を照射するための紫外線照射手段と、
前記紫外線照射手段により紫外線が照射された噴霧物を大気中に拡散するための拡散手段と、
を備えることを特徴とする環境浄化液体噴霧システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−92889(P2011−92889A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250355(P2009−250355)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(595065839)リード工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】