説明

気相から基板を被覆するための方法及び装置

【課題】
本発明は、真空被覆設備内で気化すべき材料によって基板1を被覆するための方法に関する。当該気化材料が、中間キャリア3を使用する二重気化によって前記基板1上に蒸着される。前記中間キャリア3が連続して移動される。
【解決手段】
当該課題は、連続被覆設備内での使用を保証する中間キャリアを提供することにある。この課題は、本発明により、シリンダ状の中間キャリア3によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空被覆設備内で気化すべき材料によって基板を被覆するための方法に関する。この場合、当該気化すべき材料が、気化装置内で加熱され、気化され、基板上に蒸着される。この場合、当該気化材料が、中間キャリアを使用する二重気化によって基板上に蒸着される。この場合、この中間キャリアが連続して移動される。
【0002】
さらに、本発明は、真空被覆設備内で気化すべき材料を気化するための気化装置によって基板を気化すべき材料によって被覆するための装置に関する。この場合、気化材料を気化するための気化装置が、第1位置内に配置されている。中間キャリアの気化すべき側に対向して、加熱装置が、基板に空間的に近い第2位置内に配置されている。中間キャリアが、第1位置と第2位置との間に可動に配置されている。この場合、中間キャリアを連続して運動させるための手段が設けられている。
【背景技術】
【0003】
真空被覆設備内の気化すべき材料、特に有機材料による基板の被覆は、通常は複数の点気化源によって実施される。有機材料が、基板に対して大きい距離、例えば50cm離れたこれらの点気化源内で気化される。これによって、蒸着材料の均質な層厚が、基板上に形成される。
【0004】
すなわち、ドイツ連邦共和国特許出願公開第102005013875号明細書は、加熱装置を有する真空被覆設備が有機材料を気化するために適正している点を開示している。
【0005】
しかしながら、特に、多くの場合に数パーセントの範囲内だけで変動する、気化材料の少ない蒸着量が、この場合の欠点である。当該少ない蒸着量は、特に有機発光ダイオード及び有機太陽電池の製造時の主なコスト要因になる有機材料の場合に許容できない。
【0006】
さらに、有機発光ダイオードの製造用の複数の有機材料を協働して気化するための方法及び装置が公知である。
【0007】
生産設備内では、さらに、複数の線気化源が使用される。通常、これらの線気化源は、1つの気化管内の一列に配置された複数のノズルから構成されている。層を均質に蒸着するため、この場合でも、センチメートル範囲の最小距離が、基板と気化源との間で必要である。このため、蒸着量が、一般に50%〜70%の範囲内にある。
【0008】
ドイツ連邦共和国特許第10128091号明細書は、このような線気化源を使用して平坦な基板を被覆するための装置を開示する。
【0009】
有機材料の層を基板上に製造するため、異なる気化源から成る複数の層が連続して基板上に蒸着される装置が公知である。この場合、異なる材料が、異なる気化装置内で気化され、ガス流入口を通じて処理室内に流入される。この処理室内の気相の組成が、不活性ガスを送ることによって又はポンプで排出することによって調整され得る。同様に、特に複数の材料の同時の気化時の、気化源と基板との間の間隔に起因した少ない蒸着量が、この装置及びこの装置に固有の方法の欠点である。
【0010】
米国特許第4,748,313号明細書は、無機材料を気化するための方法を開示する。この場合、2つの回転ドラムが使用される。第1ステップでは、無機材料が、気化されて第1回転ドラムの表面上に蒸着される。第2回転ドラムが、この第1回転ドラムの比較的近くに配置されている。被覆すべき基板、例えばフィルムが、この第2回転ドラム上に配置されている。当該両ドラム間の最短距離の領域内では、電子ビームガンが、第1ドラムの内部に配置されている結果、蒸着される材料が、気化されて第2ドラム上の基板上に蒸着する。この装置の欠点は、特に電子ビームガンの使用にある。この電子ビームガンは、有機材料の気化で使用するのに適していない。さらに、当該米国特許第4,748,313号明細書中で開示された装置によっては、平坦な基板が被覆され得ない。
【0011】
ヨーロッパ特許第1391532号明細書は、有機太陽電池の製造用のコンパクトな有機ペレットを製造するための方法を開示する。この場合、ロール形状のペレットが提供される。その後、当該ペレットが、気化装置内に搬送される。当該ペレットは、この気化装置内で当該ペレットに固有の軸の周りを回転して加熱装置内に配置された複数の加熱器によって加熱されて気化される。次いで、こうして気化した材料が、被覆すべき基板上に蒸着される。この場合、特に、有機材料から成る当該ペレットの経費のかかる製造が欠点である。
【0012】
米国特許出願公開第2005/0281050号明細書は、有機太陽電池を製造するための方法及び装置を開示する。この場合、被覆すべき複数の基板が、搬送経路に沿って複数の被覆室を通過して搬送される。同時に、気化源が、個々の被覆室間の独立した1つの搬送経路上で移動される。このため、複数の基板が、より短期間に被覆され得る。この装置の欠点は、特に、当該米国特許出願公開第2005/0281050号明細書中で提唱されている装置及びこの装置に固有の方法が、必要な搬送速度による連続する被覆を保証するためには適していない点にある。
【0013】
国際公開第2010/045974号パンフレットは、基板を被覆するための方法及び装置を開示する。この場合、有機材料が、気化されてキャリア上に蒸着される。その後、このキャリアが、真空被覆室内に搬入される。有機材料が、この真空被覆室内で2回気化されて被覆すべき基板上に蒸着される。この場合、当該キャリアが、テープ状にフレキシブルな材料から形成されている。テープ状の中間キャリアを使用する場合の欠点は、特に、必要な柔軟性に対して使用可能な材料にある。当該テープ状の中間キャリアを使用する場合、蒸着すべき有機材料が著しく限定される。
【0014】
ドイツ連邦共和国特許出願第102009007587.9号明細書では、方法及び装置が記されている。この場合、気化すべき材料が、中間キャリアを使用して2回気化することによって基板上に蒸着される。このため、気化すべき材料が、気化によって直接基板上に実現されるのではなくて、中間キャリアが使用される。この場合、気化すべき材料が、第1位置内で気化装置によって1回気化されて中間キャリア上に蒸着される。この中間キャリアは、当該気化装置に対して空間的に近くに場所を可変に配置されている。引き続き、当該被覆された中間キャリアが、被覆すべき基板に空間的に近くに存在する第2位置内に搬送され、当該中間キャリア上に蒸着されている材料が、この第2位置内で2回気化されて基板上に蒸着される。この場合、当該中間キャリアは、気化した材料を収容して被覆すべき基板上に蒸着するために使用される。小さい間隔に起因した90%以上の範囲内のより多い蒸着量が、中間キャリアを使用することによって達成され得る。当該高い蒸着量を、公知の線気化源に比べて細い基板と同時に気化した複数の材料とに対しても実現することができる。
【0015】
当該ドイツ連邦共和国特許出願第102009007587.9号明細書では、無限ループのテープ、例えばスチールテープ及び円板状の中間キャリアが、中間キャリアとして記されている。
【0016】
確かに、スチール製の無限ループのテープが、中間キャリアとして使用するために適した形で実現不可能であることが分かっている。当該実現不可能な理由は、特に、蒸着されている有機材料と反応しないであろう化学的に不活性なスチールテープが、非常に加工しにくく、それ故にスチールテープとして実現するのに適さないと考えられる点にある。さらに、連続被覆設備内で使用するための、1mを上回る直径を有する円板状の中間キャリアが、要求された精度で製造できないか又は高い経費をかけたときだけ製造できることが分かっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許出願公開第102005013875号明細書
【特許文献2】ドイツ連邦共和国特許第10128091号明細書
【特許文献3】米国特許第4,748,313号明細書
【特許文献4】ヨーロッパ特許第1391532号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/0281050号明細書
【特許文献6】国際公開第2010/045974号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の課題は、気化すべき材料、特に有機材料によって基板を被覆することを高い蒸着量で可能にする方法及び装置を提供することにある。
【0019】
本発明の別の課題は、1つの基板を気化すべき複数の材料によって同時に被覆することを可能にし、このときに、蒸着される層内の個々の組成成分の、再現可能で且つ一定の化学量論を被覆の全工程中に保証する方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この課題は、独立請求項に記載の方法及び装置によって解決される。本発明の好適な構成は、その他の請求項に記載されている。
【0021】
気化すべき材料が、中間キャリアを使用する二重気化によって基板上に蒸着される。このため、公知の気化装置の気化すべき材料が、気化によって基板上に直接実現されるのではなくて、中間キャリアが使用される。この場合、当該気化すべき材料が、気化装置内で加熱され、気化され、基板上に蒸着される。この場合、当該気化材料が、中間キャリアを使用する二重気化によって基板上に蒸着される。この場合、中間キャリアが連続して運動される。
【0022】
本発明によれば、気化材料が、シリンダ状に形成された中間キャリア上に蒸着される。この場合、当該中間キャリアは、駆動ローラと一緒に駆動システムによって回転方向に回転軸の周りを運動される。この場合、当該中間キャリア上に蒸着されている気化材料が、被覆すべき基板と加熱装置とに対して空間的に近くに存在する位置内に移動される。当該中間キャリア上に蒸着されている気化材料が、当該位置内でこの加熱装置によってもう1回気化され、基板上に蒸着される。小さい間隔に起因した90%以上の範囲内のより多い蒸着量が、中間キャリアを使用することによって達成され得る。当該高い蒸着量を、公知の線気化源に比べて細い基板と同時に気化した複数の材料とに対しても実現することができる。
【0023】
本発明の別の実施の形態では、気化材料が、第1回目に第1位置内で気化装置によって気化されて中間キャリア上に蒸着される。この中間キャリアは、当該気化装置に対して空間的に近くに場所を可変に配置されている。当該被覆された中間キャリアが、被覆すべき基板に対して空間的に近くに存在する第2位置内に移動され、当該中間キャリア上に蒸着されている気化材料が、第2回目にこの第2位置内で気化されて当該基板上に蒸着される。
【0024】
本発明の別の実施の形態では、第1気化材料が、第1回目に第1位置内で気化装置によって加熱され、気化され、中間キャリア上に蒸着される。この中間キャリアは、当該気化装置に対して空間的に近くに場所を可変に配置されている。その後、引き続き、第2気化材料が、第1回目にもう1つの気化装置内で加熱され、気化され、当該中間キャリア上の蒸着されている当該第1気化材料上に蒸着される。この場合、1つの層組織が、第1気化材料と第2気化材料とから構成される。次いで、当該中間キャリアが、第2位置内で、この中間キャリアの蒸着されている気化材料に対向する側の加熱装置によって、基板の領域内で加熱される。この場合、当該蒸着されている気化材料が、第2回目に気化される。これによって、主に気相状態にある当該両気化材料の混合物が発生する。これによって、当該両気化材料の混合物の化学量論的に一定の組成にある蒸着が、基板上で保証される。当該保証は、特に蒸着されている層の最も下の位置から最も上の位置までの化学量論に対して成立する。本発明の目的では、当該第1気化源が、その次に続く第2気化源から独立し且つ場所的に分離されている。その結果、この第1気化源の熱放射が、基板に達し得ない。つまり、基板が加熱され得ない。
【0025】
本発明の実施の形態では、有機材料が、気化すべき材料として、例えば有機太陽電池の製造において使用される。
【0026】
本発明の別の実施の形態では、無機材料が、気化すべき材料として使用される。本発明の目的における気化すべき材料としては、当該材料の沸騰温度が、中間キャリアの溶融温度又は分解温度の下で使用される限り、アルカリ金属又はアルカリ土類金属並びに金属、半金属及び非金属のような全ての無機材料が可能である。
【0027】
別の実施の形態では、中間キャリアが、気化装置の領域内で冷却装置によって冷却される。このため、気化した材料が、冷却された中間キャリア上に定量的に蒸着される。何故なら、気化した材料の蒸着を阻止するため、気化装置の領域内の壁が、気化温度に加熱されるからである。
【0028】
別の実施の形態では、中間キャリア上に蒸着されている有機材料の第2気化が、第2位置内で、当該蒸着されている有機材料に対向する側の加熱装置によって実施される。したがって、当該中間キャリアの気化側に対向する側が、当該加熱装置によって加熱され、当該中間キャリア上に蒸着されている材料が気化される。本発明の目的では、このときに、誘導加熱や熱放射又はレーザービーム若しくは電子ビームによる加熱又はフラッシュランプが、加熱装置として使用され得る。
【0029】
別の実施の形態では、中間キャリア上に蒸着されている有機材料が、第2位置内で加熱装置によって10−5〜10秒の範囲内で気化される。このため、中間キャリア上に蒸着されている材料の迅速な気化が実現される。当該迅速な気化は、特に温度に敏感な基板又は既に蒸着されている温度に敏感な材料つまり有機層組織に対して有益である。
【0030】
本発明の別の構成では、中間キャリア上の蒸着されている気化材料の層厚が調整され得るように、気化装置の気化室の長さが選択される。当該気化室の長さによって発生する、当該気化装置の気化室内の中間キャリアの滞在期間に起因して、蒸着すべき材料の層厚が、当該気化室の長さによって調整され得る。このため、気化室の長さと中間キャリア上の材料の蒸着される層厚とは比例する。この方法は、特に有機材料を使用する場合に、高い蒸着速度を実現するために有益である。何故なら、多くの有機材料の分解温度が、大抵の場合は最低でも気化温度の上にあるからである。
【0031】
本発明の別の実施の形態では、異なる気化温度の材料が、最も高い気化温度を有する気化材料から開始されてこれらの気化材料の気化温度の降順に蒸着される。当該降順の気化材料の蒸着は、別の材料が中間キャリア上に蒸着されなければならない気化室内でこの中間キャリア上に既に蒸着されている材料の気化を阻止するために有益である。さらに、さらに、例えば有機材料の場合に、当該材料の分解温度が当該材料の気化温度より少しだけ上にある当該材料の破損が、阻止されなければならない。より高い温度で新たに曝される場合、当該有機材料が破損しうる。
【0032】
この代わりに、当該中間キャリアは、テープ、例えば無限ループのテープとして又は回転する円板として構成可能である。
【0033】
本発明の課題の装置に関する解決手段では、有機材料を気化するための気化装置が、第1位置内に配置されていて、加熱装置が、中間キャリアの気化すべき側に対向するように基板に空間的に近い第2位置内に配置されていて、中間キャリアが、第1位置と第2位置との間に可動に配置されていることが提唱されている。この場合、当該中間キャリアを連続して運動させるための手段が配置されている。この場合、この中間キャリアは、シリンダとして構成されている。この場合、このシリンダは、回転方向に回転させるための回転軸を有する。
【0034】
別の実施の形態では、中間シリンダが、水晶ドラムとして構成されていて且つ吸収層を有する。この吸収層は、特に熱の迅速な流入、すなわち蒸着されている気化材料の、中間キャリアからの迅速な気化を可能にするために有益である。
【0035】
別の実施の形態では、中間キャリアが、水晶ドラムとして構成されていて且つCrN/SiOから成る吸収層を有する。代わりの吸収層には、モリブデン又はタングステンがある。最後に言及した当該両材料は、そのより高い温度安定性に起因してアルミニウムのような金属を気化させるために使用され得る。
【0036】
別の実施の形態では、中間キャリアと基板との間の距離は、50mm未満、特に5mm未満である。蒸着されている有機材料の高い蒸着量が、当該僅かな間隔によって実現可能である。
【0037】
本発明の別の実施の形態では、中間キャリアを冷却するための冷却装置が、気化装置の領域内に配置されている。このため、中間キャリア上の気化した材料の定量的な蒸着が保証されている。本発明の目的では、気化した材料の蒸着を阻止するため、当該気化装置の壁が、気化温度に加熱されている。この場合、蒸着されている有機材料の層厚は、気化装置の気化室の長さ又は幅及びこの気化室内で支配する気化圧力と中間キャリアの搬送速度との双方に依存する。したがって、高い蒸着速度を実現するためには、必ずしも有機材料の気化圧力又は気化温度を上げる必要はなくて、気化室の長さを大きくすることで十分である。このことは、分解温度が気化温度のほんの少しだけ上にある多くの有機材料で有益である。
【0038】
別の実施の形態では、異なる気化温度を有する複数の有機材料が、中間キャリアを冷却することによって蒸着され得る。この場合、個々の有機材料の気化温度に依存しない蒸着の順序が、中間キャリアを冷却することによって実現され得る。このため、非常に高い気化温度でも個々の成分に関して不安定にならない層組織が実現され得る。
【0039】
本発明の別の実施の形態では、基板を冷却するための冷却装置が配置されている。このため、第2位置内で気化した材料が、僅かに離れて存在する基板上に定量的に蒸着される。当該間隔は、有機材料を気化するために約0.1〜50mmの範囲内にある。複数の材料を気化し、これらの材料を気相中で混ぜ合わせるためには、気化温度、材料の量及び化学量論のような多くの要因に依存する最小距離が確かに必要である。
【0040】
別の実施の形態では、第2有機材料を気化するためのもう1つの気化装置が、第1位置内の気化装置と第2位置内の基板との間に配置されている。このため、複数の有機材料が、層組織として中間キャリア上に連続して被覆され得る。本発明の目的では、第2材料を蒸着させるための第2気化装置に続いて、別の複数の気化装置が配置され得る。これらの気化装置は、さらなる複数の層を中間キャリア上に蒸着させる。形成された当該層組織は、引き続き第2位置内に搬送され、この第2位置内で加熱装置によって気化される。このため、当該複数の有機材料の混合物が発生する。引き続き、当該混合物は、一定の化学量論比で基板上に蒸着する。
【0041】
本発明の目的では、無機材料の気化温度が、中間キャリアの溶融温度又は分解温度の下にあるならば、有機材料の代わりに、無機材料も、気化材料として使用され得る。
【0042】
本発明の別の実施の形態では、加熱装置は、レーザーとして構成されている。
【0043】
本発明の別の実施の形態では、加熱装置は、ハロゲンランプとして構成されている。
【0044】
本発明の別の実施の形態では、加熱装置は、ハロゲンランプとして構成されていて且つ冷却されたシャッタを有する。
【0045】
本発明の別の実施の形態では、加熱装置は、フラッシュランプとして、例えばキセノンフラッシュランプとして構成されている。したがって、基板に向かう熱の流入を最小限にすることができる。その結果、特に温度に敏感な基板も被覆され得る。
【0046】
本発明の別の実施の形態では、第2気化材料を気化させるためのもう1つの気化装置が、第1位置内の気化装置と第2位置内の基板との間に配置されている。このことは、2つ以上の材料を、本発明の装置によって同時に気化させなければならないときに特に有益である。
【0047】
本発明の別の実施の形態では、加熱された気化ブラインドが、第1気化装置の気化管と第2気化装置の気化管との領域内に配置されている。これらの加熱された気化ブラインドは、蒸着される材料の蒸着量を最大にするために特に有益である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】シリンダ状の中間キャリアを有する本発明の実施の形態の概略的な横断面を示す。
【図2】駆動システムを有する本発明のシリンダ状の中間キャリアを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下に、本発明を1つの実施の形態に基づいて詳しく説明する。
【0050】
図1中の連続被覆設備では、基板搬送装置2内で連続して搬送される基板1を被覆するため、シリンダ状の中間キャリア3が、真空気化材料と一緒に使用される。この場合、このシリンダ状の中間キャリア3は、例えば水晶ドラムから形成され得る。この水晶ドラムは、CrN/SiO2から成る吸収層を有する被覆部分を備える。この場合、SiO2層が、CrN層の起こりうる酸化を阻止しなければならない。当該水晶ドラムの外径は、この実施の形態では300mmである。この水晶ドラムの壁厚は、10mmである。当該シリンダ状の中間キャリア3は、回転軸4の周りを一定の速度で且つ回転方向5の方向に回転する。
【0051】
第1気化材料による中間キャリア3の被覆が、第1位置内で第1気化装置の気化管6によって実施される。この場合、当該気化管は、例えばSiCから成り且つ長方形の箱固定具を有する線気化源を備える。当該中間キャリア3を第1位置内で第1気化材料によって被覆した後に、この中間キャリア3の連続する運動に起因して、この中間キャリア3の表面の、当該第1気化材料によって被覆された領域が、第2位置内の第2気化装置の第2気化管7に向かって回転する。同様に、第2気化材料が、この第2位置で被覆される。この場合、この第2気化材料の気化温度を、第1位置内の第1気化材料の気化温度より小さくする必要がある点に留意すべきである。仮に第2気化材料の気化温度が、第1気化材料の気化温度より大きい場合は、より高い気化温度を有する第2材料のより高温の気化管7が、中間キャリア3を強く加熱する結果、気化管6の下で既に被覆されたより低い気化温度を有する材料が、第2位置内で望まない方法で気化されてしまう。第1気化管6と第2気化管7との影響を最小限にするため、放射熱を低減する遮蔽板8が設けられている。これによって、両気化管つまり結果としての蒸着速度の互いに依存しない制御が可能になる。
【0052】
中間キャリア3の連続する回転運動5に起因して、この中間キャリア3の表面の、第1気化材料と第2気化材料とによって被覆された領域が、第3位置に移動するように加熱装置11に向かって移動される。この加熱装置11は、水晶ドラム内部の、中間キャリア3の被覆された表面に対向する側に配置されている。中間キャリア3の当該被覆された表面が、当該第3位置内で基板1に対して空間的に近い距離まで達する。この基板1は、この実施の形態では、水晶ドラムの、当該両気化材料によって被覆された表面から約5mmの間隔で離れていて且つ基板の搬送方向に中間キャリア3を連続して通過して移動される。
【0053】
当該両気化材料を基板2上に蒸着させるため、これらの気化材料が、加熱装置11によって第3位置内で加熱されて気化される。その結果、当該両気化材料が、基板2上に蒸着される。当該両気化材料を基板2上に定量的に蒸着させることを保証するため、好ましくは、当該基板が、加熱装置11の領域内で図示されなかった冷却装置によって冷却されている。この場合、この加熱装置11は、例えば約20W/cmの出力を有する棒状ハロゲンランプとして構成され得る。さらに、図示されなかった冷却されたシャッタが、加熱装置11の前方に設けられ得る。特にこのシャッタは、開口部が中間キャリア3の表面の被覆された領域に対する加熱装置11の熱入射角度を制御して、出力される放射出力が調整され得るように、この加熱装置11の出力を制御するために有益である。目的は、当該気化材料吸着体(中間キャリア)を加熱することだけである。したがって、当該熱出力は、ハロゲンランプの電流供給源を通じて保証してはならない。何故なら、当該電流供給源を通じた熱出力の場合は、発光スペクトルが、赤外線領域内にシフトする結果、水晶ガラスから成る中間キャリア3が、望まない態様で強く加熱されてしまうからである。この場合、冷却されたシャッタの開口部は、加熱装置11の放射出力を粗く調整する可能性のあるものとして使用される。さらに、微調整が、中間キャリア3の回転速度を通じて実施できる。しかし、当該微調整は、必ずしも必要ではない。何故なら、温度が、当該両気化材料の気化温度の上に達するだけでよいからである。
【0054】
当該ハロゲンランプの代わりに、焦点合わせされたレーザービームが、熱源として使用され得る。当該焦点合わせされたレーザービームは、中間キャリア3の長手軸線に沿って位置3内で1本の細い線状に照射される。この場合、両有機材料が、高い温度による迅速な加熱に基づいて当該線上で気化されることが有益である。したがって、基板上に蒸着されている層上の当該両有機材料の化学量論の得られる公差はより小さい。レーザーの波長が、中間キャリア3によって吸収されないように、当該波長は選択される必要がある。ここでは、例えば、約1μmの波長を有する固体レーザーが適している。
【0055】
水晶ドラムの表面上の当該吸着層を冷却するため、中間キャリア3の一部を包囲する水冷面10が設けられている。この場合、この水冷面10は、冷却水が貫流している金属製の構成要素として構成され得る。この水冷面10が、熱放射を吸収することによって水晶ドラムを間接に冷却する。
【0056】
さらに、例えば、水晶ドラムの別の間接冷却の可能性が、冷却装置12から得られる。この冷却装置12は、例えば、設置された冷却水管から構成される。当該冷却水管は、水晶ドラムの内部に配置されていて且つ放熱を吸収する外壁を有する。
【0057】
蒸着される当該両蒸着材料の蒸着量を最大にするため、さらに、加熱された気化ブラインド13が、第1気化装置及び第2気化装置の気化管6,7の領域内の第1位置及び第2位置内に設けられ得る。この場合、水晶ドラムと気化ブラインド13との間の距離は、この気化ブラインド13の長さの半分の1/5である。したがって、水晶ドラムと気化ブラインド13との間の距離が2mmの場合、加熱された気化ブラインド13のブラインド長さは、約20mmである。
【0058】
中間キャリア3は、複数の駆動ローラ9によって駆動される。これらの駆動ローラ9はそれぞれ、図2中に示されたように中間キャリア3の縁領域内に配置されている。これによって、駆動ローラ9と中間キャリア3の表面の被覆された領域との接触が回避されて、層の品質の劣化を阻止する。この場合、駆動ローラ9は、例えばゴムから形成され得る。何故なら、中間キャリアの温度が、当該地点で明らかに100℃より下にあるからである。
【0059】
この場合、蒸着される気化材料の量は、基板搬送速度と気化管6,7を通じて中間キャリア上に蒸着される気化した気化材料の量との協働から決定される。したがって、基板2上に蒸着される気化材料の層厚は、上述したパラメータによって適切に調整され得る。これとは逆に、中間キャリアの回転速度は、蒸着速度に影響しない。
【0060】
上記の真空被覆設備の実施の形態では、有機材料が、気化材料として使用される。
【0061】
上記の真空被覆設備の別の実施の形態では、無機材料が、気化材料として使用される。
【0062】
上記の真空被覆設備の別の実施の形態では、金属が、無機材料として使用される。この金属の気化温度は、中間キャリア3の溶融温度又は分解温度の下にある。
【符号の説明】
【0063】
1 基板
2 基板搬送装置
3 シリンダ状の中間キャリア
4 シリンダ状の中間キャリアの回転軸
5 シリンダ状の中間キャリアの回転方向
6 第1気化装置の気化管
7 第2気化装置の気化管
8 遮蔽版
9 駆動ローラ
10 水冷面
11 加熱装置
12 冷却装置
13 加熱された気化ブラインド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空被覆設備内で基板を被覆するための方法であって、気化すべき材料が、気化装置内で加熱され、気化され、基板上に蒸着され、当該気化材料が、中間キャリア(3)を使用する二重気化によって前記基板(1)上に蒸着され、前記中間キャリア(3)が連続して移動される当該方法において、
前記気化材料が、シリンダ状に形成された中間キャリア(3)上に蒸着され、前記中間キャリア(3)が、駆動ローラ(9)と一緒に駆動システムによって回転方向(5)に回転軸(4)の周りを運動され、
前記中間キャリア(3)上に蒸着されている前記気化材料が、被覆すべき基板(1)と加熱装置(11)とに対して空間的に近くに存在する位置内に移動され、
前記中間キャリア(3)上に蒸着されている前記気化材料が、前記加熱装置(11)によってもう1回気化され、前記基板(1)上に蒸着されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記気化材料が、第1回目に第1位置内で前記気化装置によって気化されて前記中間キャリア(3)上に蒸着され、この中間キャリア(3)は、前記気化装置に対して空間的に近くに場所を可変に配置されていて、
当該被覆された中間キャリア(3)が、被覆すべき基板(1)に対して空間的に近くに存在する第2位置内に移動され、前記中間キャリア(3)上に蒸着されている気化材料が、第2回目にこの第2位置内で気化されて前記基板(1)上に蒸着されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1気化材料が、第1回目に前記第1位置内で前記気化装置によって加熱され、気化され、前記中間キャリア(3)上に蒸着され、この中間キャリア(3)は、前記気化装置に対して空間的に近くに場所を可変に配置されていて、
引き続き、第2気化材料が、第1回目にもう1つの気化装置内で加熱され、気化され、前記中間キャリア(3)上の蒸着されている前記第1気化材料上に蒸着され、1つの層組織が、第1気化材料と第2気化材料とから構成され、
前記中間キャリア(3)が、第2位置内で、この中間キャリア(3)の蒸着されている気化材料に対向する側の加熱装置(11)によって、前記基板(1)の領域内で加熱され、当該蒸着されている気化材料が、第2回目に気化され、
主に気相状態にある当該両気化材料の混合物が発生し、
当該両気化材料の前記混合物の化学量論的に一定の組成にある蒸着が、前記基板(1)上で保証されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
有機材料が、気化材料として気化されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
無機材料が、気化材料として気化されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
金属が、気化材料として気化されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記中間キャリア(1)上の蒸着される気化材料の層厚に比例する前記気化装置の気化室の長さが選択されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
真空被覆設備内で有機材料を気化するための気化装置によって基板を有機材料によって被覆するための装置であって、
気化材料を気化するための前記気化装置が、第1位置内に配置されていて、
中間キャリア(3)の気化すべき側に対向して、加熱装置(11)が、前記基板(1)に空間的に近い第2位置内に配置されていて、
中間キャリア(3)が、第1位置と第2位置との間に可動に配置されていて、前記中間キャリア(3)を連続して運動させるための手段が設けられている当該装置において、
前記中間キャリア(3)は、シリンダとして構成されていて、このシリンダは、回転方向(5)に回転させるための回転軸を有することを特徴とする装置。
【請求項9】
前記中間キャリア(3)は、水晶ドラムとして構成されていて且つ吸収層を有することを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記中間キャリア(3)は、水晶ドラムとして構成されていて且つCrN/SiOから成る吸収層を有することを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記中間キャリア(3)は、水晶ドラムとして構成されていて且つモリブデンから成る吸収層を有することを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記中間キャリア(3)は、水晶ドラムとして構成されていて且つタングステンから成る吸収層を有することを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項13】
中間キャリア(3)と基板(1)との間の距離は、50mm未満であることを特徴とする請求項8〜12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
中間キャリア(3)と基板(1)との間の距離は、5mm未満であることを特徴とする請求項8〜12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記中間キャリア(3)を冷却するための冷却装置(12)が、前記気化装置の領域内に配置されていることを特徴とする請求項8〜14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
前記基板(1)を冷却するための冷却装置(12)が、配置されていることを特徴とする請求項8〜15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
前記加熱装置(11)は、レーザーとして構成されていることを特徴とする請求項8〜16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
前記加熱装置(11)は、ハロゲンランプとして構成されていることを特徴とする請求項11〜17のいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
前記加熱装置(11)は、ハロゲンランプとして構成されていて且つ冷却されたシャッタを有することを特徴とする請求項11〜17のいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
前記加熱装置(11)は、フラッシュランプとして構成されていて且つ冷却されたシャッタを有することを特徴とする請求項11〜17のいずれか1項に記載の装置。
【請求項21】
第2気化材料を気化するためのもう1つの気化装置が、第1位置内の前記気化装置と第2位置内の前記基板(1)との間に配置されていることを特徴とする請求項11〜20のいずれか1項に記載の装置。
【請求項22】
加熱された気化ブラインド(13)が、第1気化装置の気化管(6)と第2気化装置の気化管(7)との領域内に配置されていることを特徴とする請求項18に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−503969(P2013−503969A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527346(P2012−527346)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063031
【国際公開番号】WO2011/026971
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(595160477)フオン・アルデンネ・アンラーゲンテヒニク・ゲゼルシヤフト・ミト・ベシユレンクテル・ハフツング (16)
【Fターム(参考)】