説明

気相オレフィン重合方法

方法が、1以上のα−オレフィンモノマーを含む気流を、反応性条件下、重合触媒の存在下に連続的に流動床に通過させ、重合生成物および未反応の流体を反応器から回収し、気体および凝縮した液体の2相混合物を形成するために、前記未反応の流体の部分を露点以下に冷却し、かつ前記2相混合物を反応器に再導入することからなり、
前記2相混合物が反応器の分配板の下部に再導入され、ゆえに凝縮した液体の部分が気体から分離され、かつ反応器の底部とポリマー粒子の流動床の上端の上に位置する点を連結する外管を経て、流動床の上に連続的に供給されることで特徴付けられる、流動床反応器中でのオレフィン重合の連続方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動床反応器におけるオレフィンの気相重合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チーグラー−ナッタタイプの、つい最近ではメタロセンタイプの高い活性および選択性を有する触媒の発展が、オレフィン重合が気体媒体中、固体触媒の存在下で行われる工業規模の方法において広く受け入れられてきた。前記気相重合方法の例は、ポリマー粒子の床が気体モノマーの上昇流により流動状態に維持される流動床反応器の使用を含む。重合の間、新たなポリマーがモノマーの触媒重合により生成され、床を一定容量に維持するために、連続してポリマー生成物が回収される。工業的な方法は、流動化気体を床に分配し、気体の供給を中断したときに、床の支持体としての役割を果たす分配板(distribution plate)を使用する。一般に、ポリマー生成物は、分配板に近い反応器の下部に配置された排出管(discharge conduit)を介して反応器から回収される。流動床は、成長するポリマー粒子の床と触媒粒子からなる。この反応混合物は、回収気体とモノマー構成からなる流動化気体の連続する上昇流により流動状態を維持する。流動化気体は、反応器の底部に入り、流動床に向い分配板を通過する。
【0003】
オレフィンの重合は発熱反応であり、したがって、重合熱を除去するために、床の冷却手段を備える必要がある。このような冷却がない場合、床は、例えば、触媒が不活性になるか、あるいはポリマー粒子が部分的に溶けるまで温度が上がるだろう。流動床重合において、重合熱を除去する好ましい方法は、望ましい重合温度より低い温度で、再循環気流を重合反応器に供給することによる。このような気流は、流動床を通過する間に、重合熱を離れた所に導く。再循環気流は、反応器の上部の区画から回収され、外部の熱交換器の通過により冷却され、次いで反応器に再循環される。再循環気体の温度は、流動床を望ましい重合温度に維持するために、熱交換器で調整される。この反応器冷却の方法によれば、一般的に再循環気流は、気体モノマーに加えて、プロパンのような不活性でかつ希釈気体、および水素のような気体状の連鎖移動剤も含む。このようにして、再循環気流は、床にモノマーを供給し、床を流動化し、かつまた床を望ましい温度に維持するのに役立つ。重合反応により消費されるモノマーは、通常、構成気体に再循環気流を加えることにより置換される。
【0004】
市販の気体流動床反応器における、反応器の単位容量当たりおよび単位時間当たりに生成されるポリマーの重量に関する空間時間率(space time yield)は、重合熱を反応器から除去することができる最大速度により限定されることが知られている。熱除去の速度は、例えば、再循環気体の速度を増加させる、および/または再循環気体の温度を下げることにより、増加させることができる。しかしながら、工業的方法に採用し得る再循環気体の速度には限界がある。この限界を越えると、床を不安定にさせるか、気流を反応器に沿って取り除いても、再循環ラインの閉塞および再循環気体コンプレッサーの損傷を導く。また、実際には再循環気体を冷却し得る範囲に限界がある。これは、第1に経済上の考慮により決定され、実際には、通常、現場で入手できる工業用冷却水の温度により決定される。冷却は、必要に応じて行えるが、これは生産コストを付加する。
【0005】
このように、工業用の方法では、気体流動床反応器から重合熱を除去するのみの、冷却された再循環気体の使用は、最大生成速度に限界があるという不利点がある。この不利点を克服するために、流動床重合方法から重合熱を除去する、異なる方法が示唆された。
【0006】
EP89691は、オレフィン重合の連続的な気体流動床方法において空間時間率を増加させる方法に関する。この特許によれば、再循環気流は、2相気体/液体混合物の液相が前記混合物の気相の流れに乗って残るような条件下で、前記混合物を生成する再循環気流の露点以下の温度に意図的に冷却される。重合熱は、反応器に、反応器のより低い領域の点、最も好ましくは流動床を上方に通過する均一の流動性気流を確保するために、反応器の底部に、前記2相混合物を導入することにより除去される。液相の揮発は、重合床の内部で起こり、これは、重合熱のより効果的な除去を確保する。この技術は、「凝縮モード(condensing mode)」での操作といわれる。「凝縮モード」で操作することにより、再循環気流の冷却能力は、再循環気流に乗る凝縮された液体の蒸発、およびその結果としての、入る再循環気流と反応器の間のより大きな温度勾配の両方により増加する。EP89691の明細書は、気相に含まれる凝縮した液体の量は、2相再循環気流の速度が気体中で懸濁液中の液相を保持し、かつ反応器中で流動床を支持するために十分に高いことを提供する、約20重量%を越えないべきであり、より好ましくは約10重量%を越えないべきであると記載する。この特許に記載されている再循環気流は、このように全体の凝縮した液体が流動床のより低い領域に導入されることである。その結果として、流動床のより上の領域における再循環気流の冷却能力は、非常に悪い。
【0007】
また、US4,588,790は、「凝縮モード」で操作することによる流動床反応器でのオレフィンの重合方法に関する。この特許は、再循環気流中での固体粒子のキャリオーバーの問題を取り扱う。また「微粉」と呼ばれる最小のポリマー粒子は、気流によって持ち越され、かつ液相と共に反応器に再循環され、ゆえに流動床内部で望ましくない(undesiderable)「マッド(mud)」を作り出す。この「マッド」は、微粉、それらの凝集、および系、例えば気体分配板近傍での相対的に低い速度の領域での「チャンク(chunks)」のような蓄積の湿潤により形成し得る。「マッド」の形成を最小限にするために、US4,588,790の明細書は、再循環気流中の固体に対する液体の重量比が約2:1以下であるべきと記載している。より高くは前記比率であり、より低くは、「凝縮モード」を採用したとき、チャンクを形成し得る。流動床内部への凝縮した液体の導入に関しては、この特許は、より分離された気流中における2相混合物および流動床に直接導入し得るそれらの一部を分割する可能性を開示する。しかしながら、流動床の下部に導入する気体は、十分に、流動床を支持し、かつ流動化条件を維持しなければならない。したがって、2相気体/液体混合物の主要部分は、必ず流動床下部に供給されなければならならず:この限定は、流動床の上部領域における再循環気流の冷却能力を無効にさせる。
【0008】
EP699213は、凝縮モードで操作するオレフィンの連続流動床重合方法に関する。この特許によれば、再循環気流をその露点以下の温度に冷却した後、少なくとも凝縮した液体の部分は、気相によって分離され、流動床に直接導入される。流動床の冷却に関して最大の利益を得るために、分離された液体は、反応器に残る気流の温度に実質的に到達した床の領域に導入されなければならない。分離された液体の導入は、流動床のこの領域内の複数の点で行ってもよく、これらの点はこの領域内で異なる高さであってもよい。例えば、流動床中への液体の導入点は、流動化格子(grid)の上、約50〜70cmであってもよい。注入手段は、好ましくはそれらが流動床中に実質的に垂直に突き出すように配置された、もしくはそれらが実質的に水平方向に反応器の壁に突き出していてもよいノズルが必要とされる。前記注入手段の存在は、ノズルまたは同様の注入手段の近傍にデッド・スポットを形成するために、好ましくない乱気流および付着物の重大なリスクの原因となり得る。この方法のもう1つの欠点は、追加装置、特にサイクロン分離器、デミスタタイプの気体−液体分離器または液体スクラバーが、再循環ラインにおいて、気相から凝縮した液体を分離するために必要とされる事実に起因する。さらに、流動床の方向に沿って分離した液体を注入させるために、分離器の下流にポンプを提供しなければならない。その結果として、この特許に記載された再循環系は、設備コストおよび設備設定の複雑さを増加させる。
【0009】
また、US6,306,981の方法は、少なくとも凝縮した液体の部分を分離手段により気相から分離する分離工程が必要とされる。この特許の教示によれば、分離された液体は、ポンプにより反応器に移送され、反応器壁の近傍の位置で流動床の上方部周辺に導入される。液体被膜は、反応器壁に沿って下方に流れて形成される。前記液体被膜の蒸発は、流動床の中核領域で望ましくない乱気流を引き起こすことなしに、流動床の上方領域で冷却される。この特許に記載された方法は、流動床の冷却レベルを改善するが、この場合には、気体/液体分離器と再循環ラインに沿ったポンプの両方が設備コストおよび設備設定の複雑さを増加させる。
【0010】
EP825204によれば、再循環系を冷却することにより得られる気体/液体混合物は、凝縮した液体が流動床反応器と一体の(integral)分離器で気流から分離される、流動床反応器の底部に移送される。その液体は、前記一体(integral)分離器の底部から回収され、流動床のより低い部分に導入される。また、この方法は、注入手段、好ましくは流動床中に実質的に垂直に突き出すか、もしくは実質的に水平方向に反応器の壁に突き出すように配置されたノズルの使用を必要とする。前記注入手段の存在は、ノズルまたは他の注入手段の近傍にデッド・スポットを形成するために、好ましくない乱気流および付着物の重大なリスクの原因となり得る。さらにまた、この方法は、一体分離器の下流に、流動床内部に凝縮した液体を導入し、かつ一体分離器の底部に液体の連続循環と撹拌とを維持するためのポンプの存在を必要とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ポリマー粒子の流動床に直接突き出す液体注入手段の使用を避け、かつ同時に再循環ラインに関係する装置を簡略化することにより、EP825204に記載された方法を改善することが望まれている。そこで、気体/液体混合物の再循環ラインにおける特定の配置が、設備設定の複雑さを軽減し、かつ流動床に直接突き出す液体注入手段の使用を避けるという利点を有すると共に、流動床反応器のより効果的な冷却が得られることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、方法が、1以上のα−オレフィンモノマーを含む気流を、反応性条件下、重合触媒の存在下に連続的に流動床に通過させ、重合生成物および未反応の流体を反応器から回収し、気体および凝縮した液体の2相混合物を形成するために、前記未反応の流体の部分を露点以下に冷却し、かつ前記2相混合物を反応器に再導入することからなり、
前記2相混合物が反応器の分配板の下部に再導入され、ゆえに凝縮した液体の部分が気体から分離され、かつ反応器の底部とポリマー粒子の流動床の上端の上に位置する点を連結する外管を経て、流動床の上に連続的に供給されることで特徴付けられる、流動床反応器中でのオレフィン重合の連続方法である。
【0013】
本発明において、用語「外管」は、その配管の入口が反応器の元口(bottom end)に設置され、その配管の出口がポリマー粒子の流動床の上部に設置された、流動床反応器の外側に延びる配管に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施態様によれば、未反応の流体を露点以下の温度に冷却することにより形成される2相混合物は、反応器壁に接する方向に沿って、流動床反応器に再導入される。この接する入口によって、凝縮した液体部分が、分離板の下にある区画に関係する「遠心効果(centrifugal effect)」により気体から分離される。一般に、反応器中の2相混合物の入口点は、上記の分離を行うために分配板の下にある全体の空間を利用するために、分配板に近接し、かつ真下に位置する。
【0015】
他の実施態様によれば、上記の分離は、反応器中の2相混合物の再導入の点の近くの位置にある、1以上の邪魔板(baffles)によって達成される。この場合、凝縮した液体の部分は、前記邪魔板上での液滴の凝集およびその結果として生じる重力による落下により気体から分離される。
【0016】
両実施態様において、分離された液体は、外管に入る前に、分配板の下にある区画の底部に集められる。外管に入る液体は、一般に全体の凝縮した液体の20〜50重量%の範囲からなる。他方、凝縮した液体の残りの部分は、一般に全体の凝縮した液体の50〜80重量%の間からなり、分配板の溝(slots)を通過し流動床に入る。
【0017】
気体からの、部分的でかつ粗い液体の分離は、分配板の下部にある反応器の区画で行われ、ゆえに液体中に濃縮された2相混合物が、外管の入口近傍に集められ、かつ前記配管を通過し、一方、気体中に濃縮された2相混合物が、分配板を通過する。後者は、流動化状態でポリマー床を保持するために必要な流動化気体を提供する。
【0018】
本発明の方法を実施することにより、多くの利点を達成することができる。まず第一に、流動床の上への凝縮した液体の導入は、どんな乱気流も起こすことなしに、流動床の上部領域の冷却およびポリマー床の流動化条件の障害を改善する。同時に、凝縮した液体の残部は、床のより低い領域の良好な冷却を達成するために、分配板を通過し上方に移動する。これらの利点を得るためには、反応器の底部と流動床の上に位置する反応器の領域とを接続する配管を配置することが欠かせない。
【0019】
本発明によれば、液体は、ポンプ装置を必要とせず、外管中を上方に流れる。実際、分配板の下にある区画とポリマー流動床を覆う区画との間にある圧力勾配Δpは、流体を支障なく前記配管に沿って上方に流れさせる。ある意味で、従来技術の実施態様で知られているように、再循環コンプレッサーによって得られる前記の圧力勾配は、追加のポンプまたは同様の装置を用いることなしに、反応器中に凝縮した液体を導入することに利用できる。
【0020】
公知のように、流動床反応器は、一般に反応器の流動床部分の直径と比較して大きな直径の減速区画をその最上部に含む。外管の出口において、好ましくは、液体は、流動床反応器に、流動床の上端の上で、減速区画の下に位置する点に導入される。液体は、複数のノズルのような噴射装置により、流動床の上面に単に放射することができるか、または流動床の上面に噴霧することができる。流動床を覆う周囲に沿って位置する1以上の供給点を提供することができる。
【0021】
液体の環状流が外管内側に定着するような方法で操作するのが好ましく、その上、その中央部分が気体の上方流によって占有されるのが好ましい。そのような操作により、液体は、配管の閉塞の可能性を軽減するように、完全に配管の壁に付着する。前記の液体環状被膜を形成するために、外管の直径は、液体流速および外管の入口と出口の間にある圧力勾配Δpを考慮して適宜選択すべきである。外管に入る液体が前記配管に入る気体の量に対して10〜20重量%からなる量であるときに、前記の液体環状流の形成が好ましいことを見出した。外管の直径に関して、このパラメータは、一般に、0.15DR以下(ここで、DRは、流動床反応器の直径である)の数値で選択される。この上限を超過して過剰量の気体が外管に入り、その結果として、分配板を通過する気体は、ポリマーの流動床を十分に支持しない。外管の直径の好ましい範囲は、0.01〜0.15DR、好ましくは0.02〜0.08DRである。
【0022】
本発明のさらなる利点は、再循環気流に接する入口に関係する遠心効果が、反応器の底部において、再循環される「微粉」の濃度を有利に働かせ、ゆえに、ほとんどの微粉は強制的に外管に流れることである。その結果として、本発明の方法は、流動床反応器のより高い領域まで「微粉」を迂回させ、それにより、最小量の微粉が、流動床反応器の底部の領域に位置する生成物排出バルブを介して排出される。そのようにすることにより、触媒収率を増加させることができる
【0023】
本発明によれば、連続的に流動床を通過する気流は、1以上のα−オレフィンモノマーを含む。適するα−オレフィンモノマーは、式CH2=CHR(ここで、Rは、水素または1〜12の炭素原子を有する炭化水素基である)のものである。前記気流は、不活性凝縮性気体として1以上のアルカンまたはシクロアルカンをさらに含む。好ましくは、C48アルカンまたはシクロアルカン、特にブタン、ペンタンまたはヘキサンが不活性凝縮性気体として用いられる。
【0024】
一般に、再循環気流は、液体と気体の合計量の20重量%を超えない量の凝縮した液体を形成する程度に露点以下の温度に冷却される。好ましくは、凝縮した液体の量は、液体と気体の合計量の12重量%を超えない。凝縮した液体は、凝縮性モノマー、例えば、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテンおよび不活性凝縮性気体、例えば、プロパン、ブタン、ペンタンまたはヘキサンに由来する。
【0025】
ところで、本発明の適用範囲を限定しないことを意図し、説明するために与えられる、添付の図1〜2を参照して本発明を詳細に説明する。
【0026】
図1は、ポリマーの流動床2、流動化板(fluidization plate)3および減速区画(velocity reduction zone)4を含む反応器本体1からなる流動床反応器を示す。減速区画4は、一般に反応器の流動床部分の直径と比較して大きな直径である。減速区画4の表面から離れる気流は、未反応モノマーに加えて、窒素のような不活性非凝縮性気体のみならず、イソペンタンのような不活性凝縮性気体をさらに含む。前記気流は、減速区画4の表面から気流が再循環ライン5を介して、コンプレッサー7および次いで熱交換器8に移送され、圧縮され、冷却され、かつ流動床反応器の底部に再循環される。適切な場合、再循環ライン5は、モノマー供給用ライン6、分子量調整器、および任意に不活性気体を備える。熱交換器8を通過し、気流は、気体と凝縮した液体の2相混合物を形成するために、その露点以下に冷却される。熱交換器8の出口で得られる前記2相混合物は、ライン9を介して流動床の底部に移送される。反応器におけるライン9の入口の点は、分配板3の真下に配置され、かつ前記ライン9の入口の方向は、反応器壁に対して接する方向である。前記接する入口は、分配板3を覆う区画で「遠心効果」を助け、ゆえに2相混合物に含まれる液体部分が前記区画の底部に集められる。結果として、液体中に濃縮された液体/気体混合物は、外管10に流通し、一方、気流中に濃縮された液体/気体混合物は、分配板3の溝を通過する。このような方法で、流動化条件で床に維持されるのに十分な量の上方に流れる気体を確保する。
【0027】
外管10の入口は、流動床反応器の元口に配置され、一方、配管10の出口は、流動床2の上限で、かつ減速区画4の下部に配置される。外管中を上方に流れ凝縮した液体を確保するために、ポンプ装置は必要とされない。配管10の出口において、液体は、噴霧装置(図示せず)により流動床2の上面に噴霧される。
【0028】
一般に、種々の触媒成分が、流動床2のより低い部分に配置されるのが好ましいライン11を介して反応器に供給される。ポリマーは、流動床2の底部に配置されるライン12を介して排出することができる。また、構成モノマーは、ライン13を介して液体または気体のいずれかを形成する反応器中に導入することができる。
【0029】
図2は、反応器におけるライン9の入口点に対応する分配板3の真下に水平に位置する反応器本体1の断面図である:示されるように、ライン9の入口の方向は、反応器壁に接する方向である。
【0030】
本発明の方法は、床の流動化のために必要とされるより大きいか、等しい流動床での気体速度で操作される。重合は、40〜100cm/秒、より好ましくは50〜80cm/秒の範囲の気体流速を用いて行う。分配板3は、従来の設計、例えば、その表面を横断しておおよそ均一に分布する複数の溝により穴の開いた平坦な、または皿状の板を用いることができる。四角で大きな開口を有する溝、例えば、12×40mmは、本発明において好ましく採用される:これらの溝は、噴流液体の液滴を含む気流の通過を助ける。
【0031】
図1に示される実施態様から容易に理解できるように、反応器冷却に関する本発明の方法の注目すべき利点は、コンプレッサーおよび熱交換器のみからなり、かつ流動床中に直接突き出す、凝縮した液体の噴霧手段の使用を避けた、再循環ラインに沿って配置された装置の簡略化が得られることである。
【0032】
本発明による方法は、高密度エチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレンとプロピレンの、およびエチレンかプロピレンと他のα−オレフィンのランダムコポリマー類(RACO)、エチレン−プロピレンゴム類(EPR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム類(EPDM)、ヘテロファジックコポリマー類(heterophasic copolymers)(HFCO)のようなα−オレフィン類のポリマー類またはコポリマー類の製造に特に適する。
【0033】
重合は、一般に、0.5〜6MPaの間の圧力で、30〜130℃の間の温度で行われる。例えば、LLDPE製造用の温度は、80〜90℃の間が適し、HDPE用の温度は、触媒系の活性に応じて、通常は85〜105℃である。
【0034】
ここに記載の重合方法は、重合触媒の特定の群の使用に限定されない。本発明は、担持されていても担持されていなくても、予備重合形成であろうがなかろうが、どのような触媒を使用する発熱重合反応にも有利である。
【0035】
重合反応は、チーグラー−ナッタタイプの触媒系の存在下で行われてもよい。チーグラー−ナッタ触媒系は:
A)活性形態でのマグネシウムハライドに担持されたチタニウム化合物および任意に電子供与化合物(内部供与体)を含む固体成分;
B)任意に電子供与化合物(外部供与体)の存在中のアルキルアルミニウム化合物
の反応生成物を含む固体触媒系である。
【0036】
適するチタニウム化合物は、Tiハライド類(TiCl4、TiCl3のような)、Tiアルコレート類、Tiハロアルコレート類である。適する高活性触媒系類は、ポリマーから触媒残渣を除去する工程を欠き、比較的短時間で多量のポリマーを製造し得る。
【0037】
他の有用な触媒類は、任意にハロゲン化有機化合物の存在下でのバナジウム化合物とアルミニウム化合物との反応生成物を含むバナジウムベースの触媒類である。任意に、バナジウム化合物は、シリカ、アルミナ、マグネシウムクロリドのような無機担体上に担持させることができる。適するバナジウム化合物類は、VCl4、VCl3、VOCl3、バナジウムアセチルアセトネートである。
【0038】
他の適する触媒類は、シングルサイト触媒類、すなわち、希土類元素の族に属する元素を含み、1以上のシクロペンタジエニルタイプの環とπ結合で結合し、適する活性化合物、一般にEP129368に記載されているようなアルモキサンと用いられる、元素の周期律表のIIIA〜VIIIA族(IUPAC表記)に属する金属の化合物である。シングルサイト触媒類の例として、EP416815に記載されているような「強制された幾何学(constrained geometry)」触媒を用いることができる。公知の強制された幾何学触媒は、EP−A−0416815、EP−A−0420436、EP−A−0671404、EP−A−0643066およびWO−A−91/04257に記載されている。また、メタロセン錯体類は、シングルサイト触媒類としてWO98/22486、WO99/58539、WO99/24446、USP5,556,928、WO96/22995、EP−485822、EP−485820、USP5,324,800およびEP−A−0129368に記載されているようなものを引用することができる。また、WO98/22486およびWO99/24446に記載されているような複素環式メタロセン類を用いることができる。
【0039】
他の有用な触媒類は、フィリップス触媒類(Phillips catalysts)のような公知の、シリカ上のクロムオキシドのようなクロム化合物ベースのものである。
【0040】
触媒は、上記のような触媒を用いて予備重合工程中に予め準備したプレポリマー粉末の形成において、適宜使用してもよい。予備重合は、どのような適する方法、例えば、バッチ工程、半連続的または連続工程を用いる、液体炭化水素希釈剤中または気相中での重合によって行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、ポリマーの流動床2、流動化板3および減速区画4を含む反応器本体1からなる流動床反応器を示す。
【図2】図2は、反応器におけるライン9の入口点に対応する分配板3の真下に水平に位置する反応器本体1の断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 反応器本体
2 ポリマーの流動床
3 流動化板(分配板)
4 減速区画
5 再循環ライン
6 モノマー供給用ライン
7 コンプレッサー
8 熱交換器
9 反応器におけるライン
10 外管
11、12、13 ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法が、1以上のα−オレフィンモノマーを含む気流を、反応性条件下、重合触媒の存在下に連続的に流動床に通過させ、重合生成物および未反応の流体を反応器から回収し、気体および凝縮した液体の2相混合物を形成するために、前記未反応の流体の部分を露点以下に冷却し、かつ前記2相混合物を反応器に再導入することからなり、
前記2相混合物が反応器の分配板の下部に再導入され、ゆえに凝縮した液体の部分が気体から分離され、かつ反応器の底部とポリマー粒子の流動床の上端の上に位置する点を連結する外管を経て、流動床の上に連続的に供給されることで特徴付けられる、流動床反応器中でのオレフィン重合の連続方法。
【請求項2】
前記2相混合物が、反応器壁に接する方向に沿って、分配板の下部に再導入される請求項1による方法。
【請求項3】
前記凝縮した液体の部分が、遠心効果により気体から分離される請求項1〜2による方法。
【請求項4】
前記凝縮した液体の部分が、液滴の凝集およびその結果として生じる重力による落下により気体から分離される請求項1による方法。
【請求項5】
分離された液体が、前記外管に入る前に、分配板の下にある区画の底部で集められる請求項1〜4による方法。
【請求項6】
外管に入る液体が、全体の凝縮した液体の20〜50重量%の範囲からなる請求項1〜5による方法。
【請求項7】
前記液体が、ポンプ装置を必要とせず、外管中を上方に流れる請求項6による方法。
【請求項8】
前記液体が、流動床反応器に、流動床の上端の上で、減速区画の下に位置する点に導入される請求項6〜7による方法。
【請求項9】
前記液体が、噴射装置により流動床の上面に噴霧される請求項6〜8による方法。
【請求項10】
前記液体が、外管に入る気体の量に対して10〜20重量%からなる量である請求項6〜9による方法。
【請求項11】
前記外管の直径が、0.01〜0.15DR(ここで、DRは、流動床反応器の直径である)である請求項1〜10による方法。
【請求項12】
凝縮した液体の残存部が、分配板を通過して流動床に入る請求項1〜11による方法。
【請求項13】
連続的に流動床を通過する気流が、式CH2=CHR(ここで、Rは、水素または1〜12の炭素原子を有する炭化水素基である)の1以上のモノマーを含む請求項1による方法。
【請求項14】
前記気流が、不活性凝縮性気体として、1以上のC48アルカンまたはシクロアルカンをさらに含む請求項13による方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−523736(P2006−523736A)
【公表日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505013(P2006−505013)
【出願日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【国際出願番号】PCT/EP2004/003638
【国際公開番号】WO2004/092228
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(501468046)バセル ポリオレフィン イタリア エス.アール.エル. (33)
【住所又は居所原語表記】Via Pergolesi 25,20124 Milano,Italy
【Fターム(参考)】