説明

気相成長装置および成膜方法

【課題】製造効率良く成膜することができる気相成長装置および成膜方法を提供すること。
【解決手段】気相成長装置1は、内部に基板Sが配置され、この基板S上に膜を成膜するための成膜室4と、この成膜室4内にハロゲン元素を含むガスおよびこのガスと反応して基板S上に膜を成膜するための反応性ガスを供給する第一供給管21と、成膜室4内に有機金属を含むガスおよびこの有機金属を含むガスと反応して基板S上に膜を成膜するための反応性ガスを供給する第二供給管31とを備え、成膜室4に、第一供給管21および第二供給管31が接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相成長装置および成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光ダイオード素子や半導体レーザ素子等の発光素子は、たとえば、以下のようにして製造されている。基板としてサファイアやSiC、GaN、AlN等を用い、その上に有機金属気相化学反応法(MOCVD法)を用いて半導体層を積層する。半導体層としては、たとえば、アンドープGaN層等の下地層、n型半導体層、発光層およびp型半導体層を成長させる。
【0003】
近年、格子不整合から生じる結晶成長時の欠陥を低減させ、更にサファイア基板等の基板を除去するために、アンドープGaN層等の下地層の厚みを、たとえば、30μm〜50μmと厚くすることが求められている。
しかしながら、MOCVD法における成膜速度は、一般に1μm/時間〜3μm/時間であり、成膜速度が遅いため、厚みの厚い下地層を形成しようとすると、非常に時間がかかる。
【0004】
そこで、成長速度が速いHVPE法(ハイドライド気相成長法)により、厚みの厚い下地層を形成し、その後、MOCVD法により上層の半導体層を形成する方法が考えられる。
HVPE法における成膜速度は、一般に100μm/時間〜300μm/時間程度であり、HVPE法を使用することで、素子の製造速度が格段に速くなると考えられる。
【0005】
このような要求に対応するために、特許文献1には、図7に示すようなHVPEチャンバー901と、MOCVDチャンバー902とを備えた装置900が開示されている。
この装置900ではHVPEチャンバー901で第一層(たとえば、アンドープGaN層等の下地層)を形成した後、HVPEチャンバー901から基板を取り出し、MOCVDチャンバー902に移動させることで、第二層(下地層よりも上層の半導体層)を形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US2009/0194026A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された装置900では、以下のような課題がある。
一般にHVPE法では、チャンバーを加熱するホットウォール法が使用される。従って、HVPE法による成膜が終了した後、MOCVD法で上層を成膜するためには、HVPEチャンバー901を冷却してから、基板を取り出し、MOCVDチャンバーに移動させる必要がある。
HVPEチャンバー901の冷却には、少なくとも2〜3時間程度の時間を要するため、HVPE法を使用しても、製造効率良く発光素子等の半導体装置を製造することが困難となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、内部に基板が配置され、この基板上に膜を成膜するための成膜室と、この成膜室内にハロゲン元素を含むガスおよびこのガスと反応して前記基板上に膜を成膜するための反応性ガスを供給する第一供給管と、前記成膜室内に有機金属を含むガスおよびこの有機金属を含むガスと反応して前記基板上に膜を成膜するための反応性ガスを供給する第二供給管とを備え、前記成膜室に、前記第一供給管および前記第二供給管が接続されている気相成長装置が提供される。
【0009】
この発明では、同一の成膜室内にハイドライド気相成長を行うための第一供給管、有機金属気相成長を行うための第二供給管それぞれが接続されている。
従って、たとえば、有機金属気相成長を行うための第二供給管からのガスの供給を停止した状態で、ハイドライド気相成長を行うための第一供給管からのガスの供給を行い基板上に成膜した後、ハイドライド気相成長を行うための第一供給管からのガスの供給を停止し、第一供給管の冷却をまたずに、有機金属気相成長を行うための第二供給管からのガスの供給を開始して、基板上に成膜することができる。
【0010】
また、本発明によれば、上述した気相成長装置を使用した成膜方法も提供できる。
すなわち、本発明によれば、基板上に気相成長装置を使用して成膜を行う成膜方法であって、前記気相成長装置は、上述した気相成長装置であり、前記第一供給管から、ハロゲン元素を含むガスと、前記反応性ガスとを成膜室の基板上に供給して成膜する工程と、前記第二供給管から、有機金属を含むガスと、前記反応性ガスとを成膜室の基板上に供給して成膜する工程とを含む成膜方法も提供できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、製造効率良く成膜することができる気相成長装置および成膜方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態にかかる気相成長装置の断面図である。
【図2】気相成長装置の平面図である。
【図3】気相成長装置の要部を示す断面図である。
【図4】気相成長装置の要部を示す平面図である。
【図5】気相成長装置の変形例である。
【図6】気相成長装置の変形例である。
【図7】従来の気相成長装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
はじめに図1〜図4に基づいて、本実施形態の気相成長装置1の概要について説明する。
本実施形態の気相成長装置1は、内部に基板Sが配置され、この基板S上に膜を成膜するための成膜室4と、この成膜室4内にハロゲン元素を含むガスおよびこのガスと反応して基板S上に膜を成膜するための反応性ガスを供給する第一供給管21と、成膜室4内に有機金属を含むガスおよびこの有機金属を含むガスと反応して基板S上に膜を成膜するための反応性ガスを供給する第二供給管31とを備え、成膜室4に、第一供給管21および第二供給管31が接続されている。
【0014】
次に、本実施形態の気相成長装置1について詳細に説明する。
図1を参照して説明する。図1は、図2のA−A方向、B−B方向の断面を合わせた変位断面図である。
気相成長装置1は、成膜室4内でハイドライド気相成長を実施するためのハイドライド気相成長用ガス供給部2を備える。
このハイドライド気相成長用ガス供給部2は、前述した第一供給管21と、この第一供給管21の外側に配置された遮熱手段22とを備える。
この第一供給管21は、3本の管(外管211、第一の内管212、第二の内管213)を含んで構成されている。
【0015】
外管211は、ハロゲン元素を含むガスと反応して基板S上に膜を成膜するための反応性ガスを成膜室4に供給するための管であり、たとえば、本実施形態では、V族元素を含むガスであるアンモニアガスを成膜室4に供給する。
【0016】
第一の内管212は、外管211よりも内径が小さく、外管211内に挿入される。第一の内管212内には、前記反応性ガスおよびハロゲン元素を含むガスと反応しない非反応性ガスが供給される。たとえば、水素ガスである。
【0017】
第二の内管213は、第一の内管212よりも内径が小さく、第一の内管212内に挿入される。外管211から排出される反応性ガスと反応して基板S上に膜を形成するためのガスであり、ハロゲン元素を含むガスが、第二の内管213から成膜室4内に供給される。
このハロゲン元素を含むガスは、III族元素のハロゲン化ガスであることが好ましく、たとえば、GaClガスである。
第二の内管213内部には、前記ハロゲン元素を含むガスの原料となる原料ソース、たとえば、III族元素を含む原料(たとえば、Ga)を収容した容器(ソースボート)24が配置されている。
【0018】
この容器24には、配管25および配管26が接続されている。ハロゲン元素を含むガスを生成するための原料ガス(たとえば、HClガス)が配管25により容器24内に供給され、容器24内の原料と反応してハロゲン元素を含むガス(たとえば、GaClガス)が生成される。生成したハロゲン元素を含むガスは、配管26から排出され、第二の内管213の供給口から成膜室4内に供給される。
なお、外管211からハロゲン元素を含むガスを供給し、第二の内管213から反応性ガスを供給してもよい。

【0019】
第一供給管21の周囲、特に、容器24の周囲となる位置には、第一供給管21内部を加熱するための加熱手段、たとえば、ヒータが配置されている(図示略)。
さらに、このヒータの周囲(外周)には、遮熱手段22が配置されている。
本実施形態では、遮熱手段22は、第一供給管21の周囲、特に容器24の周囲を囲むように設けられた複数の管状の金属部材223と、この金属部材223の周囲に配置された冷却手段224とを含んで構成される。
金属部材223は、たとえば、3重構造の筒である。
金属部材223の周囲には、冷却手段224を構成する管が配置され、この管内部を冷却用の流体W(たとえば、水等の液体)が通り、加熱手段で発生した熱を遮熱する(図3の模式図参照)。
【0020】
一方、有機金属気相成長用ガス供給部3は、成膜室4内で有機金属気相成長を実施するためのものであり、有機金属を含むガスと、このガスと反応する反応性ガスとを成膜室4内の基板Sに供給する第二供給管31を含む。
第二供給管31の供給口には、複数の孔を有するガス供給部としてのシャワーヘッド32が取り付けられており、このシャワーヘッド32の孔を介して有機金属を含むガスと、このガスと反応する反応性ガスとが成膜室4内に供給される。
有機金属を含むガスとしては、たとえば、III族元素を含む有機金属ガス、たとえば、トリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム等の有機金属ガスが挙げられ、反応性ガスとしては、たとえば、V族元素を含むガス、たとえば、アンモニア、ホスフィン、アルシン等があげられる。
有機金属を含むガスと、反応性ガスとはシャワーヘッド32の異なる孔を介して、成膜室4に供給される。
【0021】
本実施形態では、図2に示すように、有機金属気相成長用ガス供給部3は、複数、たとえば、2つの第二供給管31を備え、装置1上面からの平面視において対向配置されている。
また、上述したハイドライド気相成長用ガス供給部2も、複数、たとえば、2つの第一供給管21を備え、図2に示すように、装置上面からの平面視において対向配置されている。
換言すると、一つの円周上に、第一供給管21,第二供給管31がそれぞれ交互に配置されている。
上述した複数の第一供給管21、複数の第二供給管31はすべて平行配置されており、各供給管21,31からは、成膜室4内に同じ方向からガスが供給される。
【0022】
成膜室4は、たとえば、ステンレス等の等のチャンバーで構成されている。この成膜室4内には、基板Sを保持するための基板保持部5が配置されている。
この基板保持部5は、基板Sを保持するサセプタ51と、サセプタ51を回転駆動する回転手段52とを備える。
サセプタ51は、円盤状のものであり、一方の面(表面)で基板Sを保持する。サセプタ51の基板を保持する面は、サセプタ51の回転軸Lと直交する面であり、回転手段52が接続される面と反対側の面である。基板Sは基板面が供給管21,31側に向くように、保持される。換言すると、基板Sの基板面と、供給管21,31からのガスの供給方向とが直交するように基板Sが配置される。
本実施形態では、サセプタ51は、複数枚の基板Sを保持し、この基板Sはサセプタ51の回転中心を中心とした同一円上に配置される。
【0023】
回転手段52は、サセプタ51に接続されている。
サセプタ51の回転軸Lに沿った方向からの平面視において、第一供給管21の成膜室4へのガスの供給口および第二供給管31の成膜室4へのガスの供給口は、サセプタ51を回転駆動することで基板Sが描く円周上に位置している。(図4参照)。
なお、図4は、気相成長装置1の平面図であり、第一供給管21、第二供給管31側からサセプタ51をみた図である。
ここで、サセプタ51は、回転手段52により、自転することとなる。そして、サセプタ51に保持された基板Sは、サセプタ51の回転軸Lを中心とした、一つの円周上を移動し、サセプタ51の回転軸Lを中心として、公転することとなる。サセプタ51の回転軸Lを中心として、公転する基板Sは、第一供給管21の供給口、第二供給管31の供給口と順次対向し、基板Sが第一供給管21の供給口と対向する状態、基板Sが第二供給管31の供給口と対向する状態とが切り替わることとなる。
【0024】
また、図4に示すように、サセプタ51に保持された基板Sと、第一供給管21の供給口とを対向配置させた場合、第一供給管21の供給口の径は、基板Sの径よりもわずかに大きく、装置上面側からの平面視(第一供給管21側からの平面視)において、供給口内に一枚の基板Sが収まるようになっている。ただし、上面側からの平面視において、供給口内には、一枚の基板Sが収まるが、供給口内には、複数枚の基板Sは収まらない。
【0025】
同様に、サセプタ51に保持された基板Sと、第二供給管31の供給口とを対向配置させた場合、第二供給管31の供給口の径は、基板Sの径よりもわずかに大きく、上面側からの平面視において、供給口内に基板Sが収まるようになっている。ただし、上面側からの平面視において、供給口内には、一枚の基板Sが収まるが、供給口内には、複数枚の基板Sは収まらない。
なお、図1に示すように、サセプタ51の裏面側には、複数のヒータ53が配置されている。この各ヒータ53は、成膜時に、各基板Sを裏面側から加熱する。
【0026】
また、成膜室4には、成膜室4内の雰囲気を第一供給管21から供給される反応性ガスと同じガスの雰囲気とするために、成膜室4内に反応性ガスを供給するための配管(図示略)も接続されている。
さらに、成膜室4には、成膜室4内のガスを排気するための配管6も接続されている。
【0027】
次に、以上のような気相成長装置1を使用した半導体層の成膜方法について説明する。
はじめに基板Sをサセプタ51上に設置する。
次に、ヒータにより基板Sを裏面側から加熱するとともに、成膜室4内に外管211から供給される反応性ガス(たとえばアンモニアガス)と同じガスを供給し、成膜室4内を反応性ガス雰囲気とする。基板Sの温度は、1040℃程度となることが好ましい。
なお成膜室4内は、V族を含むガス雰囲気(たとえば、窒素ガス雰囲気)であってもよい。
【0028】
また、容器24内の原料の温度が所定の温度、たとえば、850℃程度となるまで加熱する。その後、配管25により、キャリアガスと反応性ガスを生成するための原料ガス(たとえば、HClガス)とを容器24内に供給し、原料ガスと、容器24内の原料とを反応させ、ハロゲン元素を含むガス、たとえば、塩化ガリウム(GaCl)ガスを生成する。
このハロゲン元素を含むガスは、配管26を介して容器24から排出され、第二の内管213の供給口から成膜室4内に供給される。
また、外管211からは、ハロゲン元素を含むガスと反応する反応性ガスが成膜室4内に供給される。このとき、第一の内管212から、ハロゲン元素を含むガスおよび反応性ガスと反応しない非反応性ガスが排出され、第一供給管21の供給口付近での外管211からの反応性ガスと、第二の内管213からの、ハロゲン元素を含むガスとの接触が抑制される。
【0029】
なお、第一供給管21から、ハロゲン元素を含むガス、反応性ガスが成膜室4内に供給される際には、成膜室4内のサセプタ51は回転手段52により回転駆動する。従って、ハイドライド気相成長法による成膜中、サセプタ51上の基板Sは、サセプタ51の回転軸Lを中心として、公転した状態となる。サセプタ51上の複数の基板Sは、サセプタ51が回転することで順次、第一供給管21の供給口に対向することとなる。
【0030】
成膜時のサセプタ51の回転数は100rpm以上であることが好ましい。
サセプタ51の回転数を100rpm以上、特に300rpm以上とすることで、基板Sから第一供給管21の供給口側にむかって上昇するようなガスの流れを抑制できる。
第一供給管21の供給口から供給された反応性ガスと、ハロゲン元素を含むガスとは、供給口と対向する状態となる基板S上で反応し、基板Sの基板面上に膜が形成されることとなる。
【0031】
以上のようにして、基板S上に膜が形成された後、ハイドライド気相成長用ガス供給部2を停止し、次に、有機金属気相成長用ガス供給部3を駆動する。このとき、ハイドライド気相成長用ガス供給部2の第一供給管21を冷却することなく、有機金属気相成長用ガス供給部3を駆動することができる。
第二供給管31の供給口のシャワーヘッド32介して有機金属を含むガスと、このガスと反応する反応性ガスとを成膜室4内に供給する。なお、このとき成膜室4内を有機金属を含むガスと反応する反応性ガス雰囲気(たとえば、アンモニアガス雰囲気)とする。成膜室4内は、V族を含むガス雰囲気(たとえば、窒素ガス雰囲気)であってもよい。
また、有機金属気相成長による成膜中には、成膜室4内のサセプタ51は回転手段52により回転駆動する。成膜中、サセプタ51上の基板Sは、回転駆動した状態となる。従って、サセプタ51上の複数の基板Sは、順次、第二供給管31の供給口に対向することとなる。
【0032】
成膜時のサセプタ51の回転数は100rpm以上であることが好ましい。
サセプタ51の回転数を100rpm以上、特に300rpm以上とすることで、基板Sから供給口側にむかって上昇するようなガスの流れを抑制できる。
第二供給管31の供給口から供給された有機金属を含むガスと、反応性ガスとは、供給口と対向する状態となる基板S上で反応し、基板S上に膜が形成されることとなる。
【0033】
このように気相成長装置1を使用して、基板S上に、たとえば、レーザ、発光ダイオード等の半導体発光素子等の半導体装置を形成することができる。
【0034】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
気相成長装置1は、同一の成膜室4内にハイドライド気相成長用ガス供給部2の第一供給管21、有機金属気相成長用ガス供給部3の第二供給管31それぞれが接続されており、成膜室4内に、ハイドライド気相成長用ガス供給部2、有機金属気相成長用ガス供給部3それぞれからガスが供給される構成である。
従って、たとえば、有機金属気相成長用ガス供給部3からのガスの供給を停止した状態で、ハイドライド気相成長用ガス供給部2からのガスの供給を行い基板S上に成膜した後、ハイドライド気相成長用ガス供給部2からのガスの供給を停止し、ハイドライド気相成長用ガス供給部2の冷却をまたずに、有機金属気相成長用ガス供給部3からのガスの供給を開始して、基板S上に成膜することができる。
図7に示したような装置を使用した場合、HVPEチャンバーで基板上に下地層を形成することができるがHVPEチャンバーから基板を取り出すためには、たとえば、2〜3時間の冷却時間を要する。
本実施形態の気相成長装置1ではこのような冷却時間が不要であり、効率よく成膜を行うことができる。
【0035】
さらに、本実施形態では、基板保持部5の回転手段52に沿った方向からの平面視において、第一供給管21の成膜室4へのガスの供給口および第二供給管31の成膜室4へのガスの供給口は、サセプタ51を回転駆動することで基板Sが描く円周上に配置されている。
従って、サセプタ51を回転駆動するだけで、第一供給管21の供給口、第二供給管31の供給口からのガスにより基板S上に膜を形成することができる。
【0036】
また、本実施形態では、成膜中に、サセプタ51を回転駆動している。成膜中には基板S周辺の温度よりも、第一供給管21の供給口(あるいは第二供給管31の供給口)付近の温度の方が低く、基板S側から供給口側にむかって上昇するようなガスの流れが生じることがある。このようなガスの流れが強い場合、供給口から基板Sへ供給されるガスの流れを妨げることとなるが、成膜中にサセプタを回転させて、サセプタ面上のガスに遠心力を与えることで、基板Sから供給口側にむかって上昇するようなガスの流れを弱めることができる。これにより、基板S上に効率よく成膜することが可能となる。特にサセプタ51の回転数を100rpm以上とすることでこのような効果を確実に得ることができる。
【0037】
さらに、本実施形態では、サセプタ51は複数枚の基板Sを保持している。そして、複数枚の基板Sを保持したサセプタ51を高速で回転させ、各基板Sを順次、第一供給管21の供給口(あるいは第二供給管31の供給口)と対向させながら、各基板S上に成膜している。
このように、サセプタ51を回転させながら複数の基板S上に成膜することで、第一供給管21の供給口(あるいは第二供給管31の供給口)からの位置の違いにより、各基板S上に形成される膜の膜質が異なってしまうことが抑制される。
【0038】
また、本実施形態では、ハイドライド気相成長用ガス供給部2からガスの供給を行う際、ハロゲン元素を含むガスを第二の内管213から供給するとともに、外管211からは、反応性ガスを供給し、さらに、第一の内管212から、ハロゲン元素を含むガスおよび反応性ガスと反応しない非反応性ガスを供給している。これにより、第一供給管21の供給口付近での外管211からの反応性ガスと、第二の内管213からのハロゲン元素を含むガスとの接触が抑制される。
【0039】
さらに、本実施形態では、ハイドライド気相成長用ガス供給部2および有機金属気相成長用ガス供給部3をからガスの供給を行う際、成膜室4内の雰囲気を第一供給管21から供給される反応性ガスと同じ反応性ガス、第二供給管31から供給される反応性ガスの雰囲気としている。これにより、膜の分解を抑制し、成膜性を向上させることができる。
【0040】
また、本実施形態では、第一供給管21の周囲には、第一供給管21内を加熱する加熱手段が配置され、加熱手段の周囲には、加熱手段からの熱を遮断する遮熱手段22が配置されている。このようにすることで、有機金属気相成長用ガス供給部3への熱の影響を抑制することができる。
さらに、遮熱手段22として冷却手段224を使用することで、より確実に熱を遮断することができる。
【0041】
また、本実施形態では、ハイドライド気相成長用ガス供給部2を使用してHVPE法で成膜処理できる基板Sの枚数と、有機金属気相成長用ガス供給部3を使用してMOCVD法で成膜処理することができる基板Sの枚数とが同じである。
従って、たとえば、ハイドライド気相成長用ガス供給部を使用してHVPE法で成膜処理した基板Sすべてを、有機金属気相成長用ガス供給部3を使用してMOCVD法で成膜処理することができるので、製造効率がよい。
さらに、基板Sを成膜室4から取り出すことなく、HVPE法およびMOCVD法で成膜処理することができるので、HVPE法で成膜処理した後、MOCVD法で成膜処理を開始するまでの間に、基板Sが汚れてしまうこと等を抑制することができる。
【0042】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
たとえば、前記実施形態では、気相成長装置1は、複数の第一供給管21、第二供給管31を備えていたが、第一供給管21、第二供給管31はそれぞれ一つであってもよい。
さらに、前記実施形態では、ハイドライド気相成長用ガス供給部2を使用してハイドライド気相成長を実施した後、有機金属気相成長用ガス供給部3を使用して有機金属気相成成長を実施したが、これに限られるものではない。たとえば、有機金属気相成長用ガス供給部3を使用した後、ハイドライド気相成長用ガス供給部2を使用してもよい。
【0043】
また、前記実施形態では、第一供給管21、第二供給管31が基板Sの上方に位置し、第一供給管21、第二供給管31からガスが上方側から下方側に向かって流れるとしたが、構造の上下を反転し、ガスを下方側から上方側に向かって流しても良い。
また、第一供給管21、第二供給管31をその長手方向が水平方向に沿うように配置してもよい(図1における左右方向に第一供給管21,第二供給管31を配置してもよい)。
【0044】
さらに、前記実施形態では、基板Sの基板面が第一供給管21の供給口側に向くように、すなわち、基板Sの基板面が水平方向となるように配置したが、これに限らず、たとえば、基板Sの基板面が垂直方向となるように配置してもよい。ただし、基板S上への成膜のしやすさの観点からは、基板Sの基板面が第一供給管21の供給口側に向くように、配置することが好ましい。
【0045】
さらに、前記実施形態では、サセプタ51が回転駆動することで、第一供給管21の供給口や、第二供給管31の供給口と基板Sとが対向する状態となっていたが、これに限られるものではない。
たとえば、図5に示すように、基板Sを保持する基板保持部50をテーブルT上で移動させて、第一供給管21の供給口と基板Sとが対向する状態、第二供給管31の供給口と基板Sとが対向する状態とが切り替わるものとしてもよい。
また、前記実施形態では、第一供給管21の成膜室4へのガスの供給口および第二供給管31の成膜室4へのガスの供給口は、サセプタ51を回転駆動することで基板Sが描く円周上に位置し、供給口内には、一枚の基板Sが収まるとしたが、図6に示すように、供給口に、基板Sが収まらなくてもよい。この場合にも、第一供給管21の成膜室4へのガスの供給口および第二供給管31の成膜室4へのガスの供給口は、サセプタ51を回転駆動することで基板Sが描く円周上に位置するので、基板S上に確実に成膜を行うことができる。
【0046】
また、前記実施形態では、気相成長装置1により、III−V族半導体膜を成膜したが、これに限らず、II−VI族半導体等の成膜に本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0047】
1 気相成長装置
2 ハイドライド気相成長用ガス供給部
3 有機金属気相成長用ガス供給部
4 成膜室
5 基板保持部
6 配管
21 第一供給管
22 遮熱手段
24 容器
25 配管
26 配管
31 第二供給管
32 シャワーヘッド
50 基板保持部
51 サセプタ
52 回転手段
53 ヒータ
211 外管
212 第一の内管
213 第二の内管
223 金属部材
224 冷却手段
900 装置
901 HVPEチャンバー
902 MOCVDチャンバー
S 基板
T テーブル
W 流体
L 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に基板が配置され、この基板上に膜を成膜するための成膜室と、
この成膜室内にハロゲン元素を含むガスおよびこのガスと反応して前記基板上に膜を成膜するための反応性ガスを供給する第一供給管と、
前記成膜室内に有機金属を含むガスおよびこの有機金属を含むガスと反応して前記基板上に膜を成膜するための反応性ガスを供給する第二供給管とを備え、
前記成膜室に、前記第一供給管および前記第二供給管が接続されている気相成長装置。
【請求項2】
請求項1に記載の気相成長装置において、
前記成膜室内には、前記基板を保持するための基板保持部が配置され、
前記基板保持部は、前記基板を保持するサセプタと、
前記サセプタを回転駆動する回転手段とを備え、
前記サセプタを前記回転手段により駆動することで、前記サセプタに保持された前記基板は、前記サセプタの回転軸を中心とした円周上を移動し、
前記基板を前記円周上で移動させることで、前記第一供給管の前記成膜室へのガスの供給口と前記基板とが対向する状態、前記第二供給管の前記成膜室へのガスの供給口と前記基板とが対向する状態とが切り替わる気相成長装置。
【請求項3】
請求項2に記載の気相成長装置において、
前記サセプタは、前記サセプタの回転軸と直交する面で前記基板を保持し、
前記サセプタの回転軸に沿った方向からの平面視において、前記第一供給管の前記成膜室へのガスの供給口および前記第二供給管の前記成膜室へのガスの供給口は、前記サセプタを回転駆動することで前記基板が描く円周上に位置する気相成長装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の気相成長装置において、
前記第一供給管から、ハロゲン元素を含むガスおよびこのガスと反応する反応性ガスを供給する際、あるいは、
前記第二供給管から、有機金属を含むガスおよびこの有機金属を含むガスと反応する反応性ガスを供給する際に、
前記回転手段により、前記サセプタを回転させ、前記サセプタの回転中心を中心として前記基板を公転させながら、前記基板上に成膜を行う気相成長装置。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれかに記載の気相成長装置において、
前記サセプタは、回転中心を中心とした同一円周上に複数枚の前記基板を保持し、
前記第一供給管から、ハロゲン元素を含むガスおよびこのガスと反応する反応性ガスを供給する際、あるいは、
前記第二供給管から、有機金属を含むガスおよびこの有機金属を含むガスと反応する反応性ガスを供給する際に、
前記回転手段で前記サセプタを回転させながら、前記サセプタ上の複数枚の前記基板を順次、前記第一供給管の成膜室へのガスの供給口または第二供給管の成膜室へのガスの供給口に対向させて成膜する気相成長装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の気相成長装置において、
前記第一供給管は、
前記ハロゲン元素を含むガスおよびこのガスと反応する前記反応性ガスのうち、いずれか一方を供給する外管と、
前記外管の内に挿入され、前記ハロゲン元素を含むガスおよびこのガスと反応する前記反応性ガスのいずれとも反応しない非反応性ガスを供給する第一の内管と、
この第一の内管の内に挿入され、前記ハロゲン元素を含むガスおよびこのガスと反応する前記反応性ガスのうち、いずれか他方を供給する第二の内管とを備える気相成長装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の気相成長装置において、
前記第一供給管から、ハロゲン元素を含むガスおよびこのガスと反応する反応性ガスを供給する際に、前記成膜室内をハロゲン元素を含むガスと反応する反応性ガスの雰囲気とする気相成長装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の気相成長装置において、
前記第一供給管の周囲には、前記第一供給管内を加熱する加熱手段が配置され、
前記加熱手段の周囲には、前記加熱手段からの熱を遮断する遮熱手段が配置されている気相成長装置。
【請求項9】
請求項8に記載の気相成長装置において、
前記遮熱手段は、冷却装置を含んで構成される気相成長装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の気相成長装置において、
第一供給管からは、III族元素と前記ハロゲン元素とを含むガスおよびV族元素を含む前記反応性ガスが供給され、
第二供給管からは、III族元素を含む前記有機金属を含むガスおよび前記反応性ガスとしてV族元素を含むガスが供給される気相成長装置。
【請求項11】
基板上に気相成長装置を使用して成膜を行う成膜方法であって、
前記気相成長装置は、請求項1乃至10に記載の気相成長装置であり、
前記第一供給管から、ハロゲン元素を含むガスと、前記反応性ガスとを成膜室の基板上に供給して成膜する工程と、
前記第二供給管から、有機金属を含むガスと、前記反応性ガスとを成膜室の基板上に供給して成膜する工程とを含む成膜方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−114196(P2011−114196A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269821(P2009−269821)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000165974)古河機械金属株式会社 (211)
【Fターム(参考)】