説明

気相成長装置

【課題】オイルバブラーのオイル量の調節をすることなく、グローブボックス内の圧力を簡単に制御することができる気相成長装置を提供する。
【解決手段】グローブボックスは、不活性ガスの導入管と導出管とを備え、該導出管にオイルバブラー26を接続する。該オイルバブラー26は、導出管に接続されオイルバブラー26の蓋部材28に上下位置調節可能に装着されるノズル管29と、該ノズル管29の先端開口部29aが浸漬するオイルOLと、排気口27aとを備え、オイルOLの液面からノズルの先端開口部29aまでの距離Dを調節することにより、グローブボックス13内の圧力を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相成長装置に係り、詳しくは、気相成長処理を行う成膜室にグローブボックスを連設した気相成長装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオードやレーザダイオード等の発光デバイス、電子デバイスに用いられる化合物半導体等の薄膜を製造するための気相成長装置は、成膜室(チャンバー)に設置したサセプタを介して基板を加熱するとともに、成膜室に配置したフローチャンネル内に気相原料を供給することにより、基板上に半導体薄膜を成長させている。
【0003】
このような気相成長装置は、サセプタ上への基板の搬入・搬出作業を行ったり、成膜室内の機器に付着堆積した反応生成物や分解生成物を除去するメンテナンス作業を行うために、成膜室にグローブボックスを連設したものがある。グローブボックスには、該グローブボックス内での基板交換等の作業を行うためのグローブが設けられるとともに、該グローブボックスを内をパージするために不活性ガスを導入する導入管と、該不活性ガスを排気する導出管とが設けられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、グローブボックス内での作業時に、グローブボックス内を不活性ガスで充満させる際には、グローブボックス内の圧力を常時大気圧よりも若干高い圧力で安定に保つ必要があるとともに、グローブボックスが破損しないように、105kPa(ゲージ圧)以下の圧力に制御しなければならなかった。グローブボックス内の圧力制御には、オイルバブラーを用いるのが一般的で、このオイルバブラーは、例えば図3に示されるように、オイルOLを貯留する円筒状の密閉容器50と、該密閉容器50の天井壁50aに一体に取り付けられ、基端側がグローブボックスの導出管に接続され、先端開口部51aを前記オイルOL中に開口させたノズル管51と、密閉容器50のオイルOLの液面より高位置に形成される排気口50bとを備えている。
【0005】
グローブボックスから排気されたガスは、ノズル管51を通ってオイルOLでバブリングされ、排気口50bから排出される。ノズル管51内の圧力は、オイルOLの液面からノズル管51の先端開口部51aまでの距離Dが長ければ高くなり、距離Dが短ければ低くなることから、オイルOLの液面の高さを調節することによりグローブボックス内の圧力を制御することができる。
【特許文献1】特開2005−236093号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のオイルバブラーでは、密閉容器内のオイルの液面高さ、すなわち、グローブボックス内の圧力を制御する際に、オイルバブラーを装置系統から取り外してオイル量を調節した後、再度装置系統に組み込まなければならず、非常に手間が掛かっていた。
【0007】
そこで本発明は、オイルバブラーのオイル量を調節することなく、グローブボックス内の圧力を簡単に制御することができる気相成長装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の気相成長装置は、気相成長処理を行う成膜室にグローブボックスを連設した気相成長装置において、前記グローブボックスは、不活性ガスの導入管と導出管とを備え、該導出管にオイルバブラーを接続するとともに、該オイルバブラーは、オイルを貯留する密閉容器と、前記導出管に接続されて先端が前記密閉容器に貯留されたオイル中に開口したノズル管と、前記密閉容器に貯留されたオイルの液面より高位置から密閉容器内のガスを排気する排気口とを備えるとともに、前記ノズル管は、前記密閉容器に上下位置調節可能に装着されていることを特徴とし、前記ノズル管は、前記密閉容器内の前記オイルの液面より高位置に大径部を備えていると好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の気相成長装置によれば、ノズル管の上下位置を調節することにより、オイルの液面からノズル管の先端開口部までの距離を調節できるので、オイルバブラーを装置系統から取り外すことなく、簡単にグローブボックスの圧力を制御することができる。また、ノズル管に大径部を設けることにより、オイルバブラーの排気口側から圧力が掛かり、オイルがノズル管の先端開口部からノズル管内を逆流することがあっても、逆流したオイルを大径部に溜めることができることから、グローブボックス内にオイルが流入することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1及び図2は、本発明の気相成長装置の一形態例を示すもので、図1は気相成長装置の説明図、図2はオイルバブラーの断面図である。まず、図1に示すように、本形態例に示す気相成長装置11は、成膜室12と基板交換用のグローブボックス13とを開閉可能な操作口14aを備えた仕切壁14を介して連設したものであって、成膜室12内には基板を支持して加熱しながら回転させるサセプタ15や、原料導入管16から導入される気相原料を基板上にガイドするとともに、余剰の原料や反応生成物等を排出する排気管17を備えたフローチャンネル18が着脱可能な状態で設けられている。原料導入管16には、原料導入弁19及びマスフローコントローラ20を有する複数の原料供給系が接続されており、排気管17には、トラップ21と排気弁22とが設けられている。
【0011】
グローブボックス13には、該グローブボックス13内での基板交換等の作業を行うための複数のグローブ23が設けられるとともに、不活性ガスの導入管24と導出管25とを備えており、該導出管25にオイルバブラー26が接続されている。オイルバブラー26は、円筒状の容器本体27及び該容器本体27の上部開口を閉塞する蓋部材28とからなる密閉容器と、前記蓋部材28に挿通されるノズル管29と、該ノズル管29の先端開口部29aが浸漬する液面高さまで容器本体27内に貯留されたオイルOLと、該オイルOLの液面より上方位置の容器本体27の周壁に形成された排気口27aとを備えている。蓋部材28の中心部には、ノズル管29を上下方向(軸線方向)に移動可能に収納する連結管28aが突設され、該連結管28aの上端部に、ノズル管29の上下方向の位置決めを行うための位置決め部材30が固着されている。
【0012】
位置決め部材30は、前記連結管28aの上端部に固着される雄ねじ部材31と、該雄ねじ部材31の内周部とノズル管29の外周面との間に配設される環状シール部材32と、該環状シール部材32の上方に配置されて環状シール部材32を押圧する押え部材33と、前記雄ねじ部材31に螺合して前記押え部材33を下方に押圧する雌ねじ部材34とを備えている。
【0013】
雄ねじ部材31は、中心部にノズル管挿通孔31aを備えた円筒状で、上半部内周には前記環状シール部材32及び押え部材33を収容するための上方が開口した円形の凹部31bが形成されるとともに、凹部31bの底面内周部には上方が拡径した円錐面31cが形成されている。押え部材33は、中心部にノズル管挿通孔33aを備え、雄ねじ部材31の凹部31b内に上下動可能に収容される円筒状に形成され、上部外周にフランジ部33bが形成されている。雌ねじ部材34は、雌ねじ部34aの上部に、前記押え部材33を押圧する押圧部34bを備えており、該押圧部34bの中心部にノズル管挿通孔34cが形成されている。
【0014】
ノズル管29は、先端側小径部29bと中間大径部29cと基端側小径部29dとを有し、基端側小径部29dの外周面には目盛り29eが形成されている。このノズル管29は、先端側小径部29bを前記容器本体27内に挿入し、基端側小径部29dを蓋部材28の連結管28aに挿通した後、前記蓋部材28を容器本体27に装着し、中間大径部29cを容器本体27の中間部に配置させる。前記連結管28aから前記位置決め部材30を通って上方に突出する基端側小径部29dには、フレキシブルパイプ35を介して前記導出管25が接続される。
【0015】
位置決め部材30は、それぞれノズル管29の基端側小径部29dを挿通した状態で、連結管28aに固着した雄ねじ部材31の凹部31b内に前記環状シール部材32を配置し、該環状シール部材32の上方に押え部材33を配置するとともに、雄ねじ部材31の雄ねじ部31dに雌ねじ部材34の雌ねじ部34aを螺合させて使用される。
【0016】
この状態で、雌ねじ部材34を雄ねじ部材31に強く締め付けると、雌ねじ部材34の押圧部34bの下面が押え部材33の上面を下方に押圧し、押え部材33の下端面が環状シール部材32を雄ねじ部材31の円錐面31cとノズル管29の基端側小径部29dとの間に押し込み、環状シール部材32を基端側小径部29dの外周面に圧着させることにより、ノズル管29の位置決めが行われるとともに気密性が確保される。
【0017】
また、雌ねじ部材34を緩めると、環状シール部材32が自身の弾性復元力によって押え部材33を押し上げながら円錐面31cの上方の初期の状態に復元することにより、ノズル管29は、フレキシブルパイプ35を伸縮させることで上下方向の位置を調節可能な状態となり、ノズル管29の先端開口部29aがオイルOL中に浸漬する寸法Dを調節することができる。
【0018】
このように形成した気相成長装置11では、サセプタ15上への基板の搬入・搬出作業を行ったり、サセプタ15やフローチャンネル18等の成膜構成部材に反応生成物や分解生成物がある程度付着したときに、グローブボックス13に窒素ガス等の不活性ガスを導入するとともに、オイルバブラー26によってグローブボックス13内の圧力を大気圧よりも若干高い圧力で、且つ、グローブボックス13が破損しないように105kPa以下の圧力に保った状態とし、成膜操作を一時中断して操作口14aを開き、基板やサセプタ15やフローチャンネル18をグローブボックス13内に取り込み、操作口14aを閉じた状態で所定の作業を行う。
【0019】
このとき、グローブボックス13内の圧力制御は、従来のように、オイルバブラー26を用いて行われるが、この圧力制御は、位置決め部材30の雌ねじ部材34を緩めてノズル管29を上下位置調節し、オイルOLの液面からノズル管29の先端開口部29aまでの距離Dを調節することにより、オイルバブラー26を装置系統から取り外すことなく簡単に行うことができ、作業時間の短縮を図ることができる。また、ノズル管29の基端側小径部29dの外周面に目盛り29eを設けたことにより、ノズル管29の先端開口部29aの位置を外部から確認することができ、圧力制御を簡単且つ確実に行うことができる。さらに、ノズル管29に中間大径部29cを設けたことにより、オイルバブラー26の排気口27a側から圧力が掛かり、オイルOLが先端開口部29aからノズル管29内を逆流することがあっても、前記中間大径部29cに逆流したオイルOLを溜めることができ、グローブボックス13内にオイルOLが逆流することを防止できる。
【0020】
なお、ノズル管29は、中間大径部29cを設けずに直管を用いることもできる。また、位置決め部材30は、ノズル管29の上下位置調節を行えれば適宜な構成を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一形態例を示す気相成長装置の説明図である。
【図2】同じくオイルバブラーを示す断面図である。
【図3】従来のオイルバブラーを示す断面図である。
【符号の説明】
【0022】
11…気相成長装置、12…成膜室、13…グローブボックス、14…仕切壁、14a…操作口、15…サセプタ、16…原料導入管、17…排気管、18…フローチャンネル、19…原料導入弁、20…マスフローコントローラ、21…トラップ、22…排気弁、23…グローブ、24…導入管、25…導出管、26…オイルバブラー、27…容器本体、27a…排気口、28…蓋部材、28a…連結管、29…ノズル管、29a…先端開口部、29b…先端側小径部、29c…中間大径部、29d…基端側小径部、30…位置決め部材、31…雄ねじ部材、31a…ノズル管挿通孔、31b…凹部、31c…円錐面、31d…雄ねじ部、32…環状シール部材、33…押え部材、33a…ノズル管挿通孔、33b…フランジ部、34…雌ねじ部材、34a…雌ねじ部、34b…押圧部、34c…ノズル管挿通孔、35…フレキシブルパイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気相成長処理を行う成膜室にグローブボックスを連設した気相成長装置において、前記グローブボックスは、不活性ガスの導入管と導出管とを備え、該導出管にオイルバブラーを接続するとともに、該オイルバブラーは、オイルを貯留する密閉容器と、前記導出管に接続されて先端が前記密閉容器に貯留されたオイル中に開口したノズル管と、前記密閉容器に貯留されたオイルの液面より高位置から密閉容器内のガスを排気する排気口とを備えるとともに、前記ノズル管は、前記密閉容器に上下位置調節可能に装着されていることを特徴とする気相成長装置。
【請求項2】
前記ノズル管は、前記密閉容器内の前記オイルの液面より高位置に大径部を備えていることを特徴とする請求項1記載の気相成長装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−231418(P2009−231418A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−73079(P2008−73079)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【Fターム(参考)】