説明

気相成長装置

【課題】サセプタ上の複数の領域毎に材料ガスの混合比および流量を調整する。
【解決手段】被処理基板10が載置され、上面に複数の領域を有するサセプタ120と、サセプタ120と対向し、上記複数の領域の各々に複数の材料ガスを供給するシャワーヘッド130とを備える。また、複数の材料ガスを上記複数の領域の数だけ所定の分岐比率で分岐して所定の流量でシャワーヘッド130に導入するための複数のガス分岐機構と、複数の材料ガスのうちの所定の複数の材料ガスを混合し、複数のガス分岐機構とそれぞれ接続された複数の混合配管と、複数のガス分岐機構を制御する制御部190とを備える。制御部190は、複数のガス分岐機構の各々の上記所定の分岐比率を設定することにより、上記複数の領域のそれぞれにおいて供給される複数の材料ガスの流量を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の材料ガスを用いて被処理基板上に成膜する気相成長装置に関する。
【背景技術】
【0002】
化合物半導体材料を用いたMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法により、発光ダイオード、半導体レーザ、宇宙用ソーラーパワーデバイス、および、高速デバイスなどが製造されている。
【0003】
MOCVD法においては、トリメチルガリウム(TMG)またはトリメチルアルミニウム(TMA)などの有機金属ガスと、アンモニア(NH3)、ホスフィン(PH3)またはアルシン(AsH3)などの水素化合物ガスとを成膜に寄与する材料ガスとして用いる。
【0004】
MOCVD法は、上記の材料ガスをキャリアガスと共に成膜室内に導入して加熱し、被処理基板上で気相反応させることにより、被処理基板上に化合物半導体結晶を成長させる方法である。
【0005】
MOCVD法によって所望の薄膜を形成する際、反応性を有する材料ガスによって被処理基板表面で生起される表面反応は、極めて複雑なメカニズムを有することが知られている。すなわち、材料ガスの温度、流速、圧力、材料ガスに含まれる活性化学種の種類、反応系における残留ガス成分、および、被処理基板の温度など、多数のパラメータが、上記表面反応に寄与する。そのため、MOCVD法でこれらのパラメータを制御して所望の薄膜を形成させることは極めて難しい。
【0006】
MOCVD法に用いられる反応器の構成を開示した先行文献として、特表2007−521633号公報(特許文献1)がある。特許文献1に記載された反応器においては、回転ディスクの回転軸から異なる半径方向距離にある基板に向かうガスが、実質的に同一の速度を有する。軸から離れたディスクの部分に向かうガスは、軸に近い部分に向かうガスよりも高濃度の反応ガスを含む。
【0007】
化合物半導体製造装置を開示した先行文献として、特開平6−295862号公報(特許文献2)がある。特許文献2に記載された化合物半導体製造装置においては、V族ガス、III族ガス、不純物ガスをそれぞれ独立した配管を用いて反応管に導入するとともに、ニードルバルブによってその流量を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2007−521633号公報
【特許文献2】特開平6−295862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
MOCVD法により処理する気相成長装置には、化合物半導体結晶の品質を向上しつつ製造コストを抑えるために、材料の歩留まりおよび処理能力を向上することが求められる。そのため、可能な限り多くの大口径の被処理基板を一括して高品質に処理可能なように、気相成長装置の大型化が図られている。
【0010】
大型の気相成長装置においては、大口径の被処理基板を多く処理するために、被処理基板を載置するサセプタが大型となる。また、処理能力を向上するために、大型のサセプタの中心部から端部まで被処理基板が敷き詰められて処理される。そのため、大型のサセプタ上に載置された複数の被処理基板の各々において、均一な膜厚および膜特性を有する化合物半導体結晶を成長させる必要がある。
【0011】
均一な膜厚および膜特性を有する化合物半導体結晶を成長させるためには、大型のサセプタ上の複数の領域毎に材料ガスの混合比および流量を調整することが必要である。
【0012】
本発明は上記の問題点に鑑みなされたものであって、サセプタ上の複数の領域毎に材料ガスの混合比および流量を調整できる気相成長装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に基づく気相成長装置は、被処理基板が載置され、上面に複数の領域を有するサセプタと、サセプタと対向し、上記複数の領域の各々に複数の材料ガスを供給するガス供給部とを備える。また、気相成長装置は、複数の材料ガスを上記複数の領域の数だけ所定の分岐比率で分岐して所定の流量でガス供給部に導入するための複数のガス分岐機構と、複数の材料ガスのうちの所定の複数の材料ガスを混合し、複数のガス分岐機構とそれぞれ接続された複数の混合配管と、複数のガス分岐機構を制御する制御部とを備える。制御部は、複数のガス分岐機構の各々の上記所定の分岐比率を設定することにより、上記複数の領域のそれぞれにおいて供給される複数の材料ガスの流量を調整する。
【0014】
本発明の一形態においては、制御部は、上記複数の領域のそれぞれにおいて供給される複数の材料ガスの流量と複数の材料ガスのうちの一部の材料ガスの流量とから複数の材料ガスのうちの残部の材料ガスの流量を算出する演算部を有する。制御部が、演算部の算出結果に基づいて、複数のガス分岐機構の各々により上記残部の材料ガスの流量を調整して、上記複数の領域のそれぞれに供給される複数の材料ガスの流量を所定の流量に維持する。
【0015】
本発明の一形態においては、気相成長装置は、被処理基板上に形成された膜の膜厚を検出する膜厚検出手段をさらに備える。制御部は、膜厚検出手段から入力された膜厚検出信号に基づいて、複数のガス分岐機構の各々の上記所定の分岐比率を調節し、かつ、上記所定の流量を調整する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、サセプタ上の複数の領域毎に材料ガスの混合比および流量を調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るMOCVD装置の構成の一部を示す断面図である。
【図2】シャワープレートを下方から見た図である。
【図3】同実施形態に係るMOCVD装置の混合配管およびガス分岐機構の構成を示す系統図である。
【図4】同実施形態に係るMOCVD装置の制御部に関するブロック図である。
【図5】制御部の演算部によるガス分岐機構A5における流量算出過程を示すフロー図である。
【図6】制御部の演算部によるガス分岐機構B5における流量算出過程を示すフロー図である。
【図7】制御部の演算部によるガス分岐機構G5における流量算出過程を示すフロー図である。
【図8】制御部の演算部によるガス分岐機構H5における流量算出過程を示すフロー図である。
【図9】制御部の演算部によるガス分岐機構C5における流量算出過程を示すフロー図である。
【図10】制御部の演算部によるガス分岐機構D5における流量算出過程を示すフロー図である。
【図11】制御部の演算部によるマスフローコントローラE1における流量算出過程を示すフロー図である。
【図12】制御部の演算部によるマスフローコントローラE2における流量算出過程を示すフロー図である。
【図13】制御部の演算部によるマスフローコントローラF1における流量算出過程を示すフロー図である。
【図14】制御部の演算部によるマスフローコントローラF2における流量算出過程を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る気相成長装置について説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。また、気相成長装置の一例として、縦型シャワーヘッド型のMOCVD装置について説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係るMOCVD装置の構成の一部を示す断面図である。図2は、シャワープレートを下方から見た図である。図3は、本実施形態に係るMOCVD装置の混合配管およびガス分岐機構の構成を示す系統図である。
【0020】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るMOCVD装置100は、被処理基板10が内部で処理される成膜室110を備えている。成膜室110内には、被処理基板10が載置される平面視円形状のサセプタ120が配置されている。
【0021】
サセプタ120上は、複数の領域に規定される。本実施形態においては、後述するシャワーヘッド130から図1の矢印20で示すように混合ガスを噴き付けられるサセプタ120の中心側領域と、矢印30で示すように混合ガスを噴き付けられるサセプタ120の縁側領域との2つの領域が規定されている。
【0022】
ただし、複数の領域はこれに限られず、サセプタ120の大きさ、サセプタ120に載置される複数の被処理基板10の配置、および、後述するガス排気部141の位置などの種々の条件により、被処理基板10上における化合物半導体の結晶成長を考慮して適宜規定される。
【0023】
サセプタ120の下方には、平面視円形状のヒータ121が配置されている。ヒータ121は、平面視円形状の支持台151上に配置されている。支持台151の中心の下部に回転軸150の一端が接続されている。回転軸150の他端には、図示しないアクチュエータが接続されており、回転軸150は軸中心に回転可能にされている。回転軸150の中心軸上に、サセプタ120、ヒータ121および支持台151の中心が位置している。
【0024】
サセプタ120、ヒータ121および支持台151の周側面を覆うように、ヒータカバー152が設けられている。MOCVD装置100は、サセプタ120、ヒータ121、支持台151およびヒータカバー152を含む。
【0025】
成膜室110の上部には、サセプタ120と対向し、被処理基板10上に複数の材料ガスを供給するガス供給部であるシャワーヘッド130が設けられている。シャワーヘッド130は、シャワープレート131、水冷部132および中空部133を含む。
【0026】
図2に示すように、シャワープレート131は、被処理基板10上に混合ガスを噴き付けるための複数の開口131aを有している。複数の開口131aのうち、シャワープレート131の中心側領域20aに位置する開口131aから、上述したサセプタ120上の中心側領域に混合ガスが噴き付けられる。また、複数の開口131aのうち、シャワープレート131の縁側領域30aに位置する開口131aから、上述したサセプタ120上の縁側領域に混合ガスが噴き付けられる。図1に示すように、シャワープレート131の下面は、サセプタ120の上面と平行に対向している。
【0027】
水冷部132は、シャワーヘッド130を水冷するための冷却水が循環する部位である。水冷部132には、ポンプ、水供給源および冷却源を含む水冷装置160から冷却用配管161を通じて冷却水が供給される。
【0028】
中空部133には、後述する複数の混合配管が接続されている。中空部133の内部は、複数の混合配管内およびシャワープレート131の複数の開口131aと連通している。MOCVD装置100は、シャワーヘッド130を含む。
【0029】
また、MOCVD装置100は、成膜室110の内部を排気するためのガス排気部141と、ガス排気部141に接続されたパージライン142と、パージライン142に接続された排ガス処理装置140とを含む。
【0030】
これらにより、成膜室110の内部に導入された混合ガスはガス排気部141によって成膜室110の外部に排気され、排気された混合ガスはパージライン142を通って排ガス処理装置140に送られ、排ガス処理装置140において無害化される。
【0031】
本実施形態に係るMOCVD装置100により被処理基板10に薄膜を形成する際には、混合ガスをシャワーヘッド130から成膜室110内へ供給する。このとき、回転しているサセプタ120を介してヒータ121により被処理基板10を加熱する。加熱された被処理基板10上で化学反応が起こることにより、被処理基板10上に薄膜が形成される。被処理基板10上を通過した混合ガスは、ガス排気部141から排気される。
【0032】
以下、MOCVD装置100に含まれる、シャワーヘッド130に複数の混合ガスを送る配管系統について説明する。
【0033】
本実施形態に係るMOCVD装置100においては、被処理基板10上に化合物半導体の薄膜を形成するための複数の材料ガスとして、III族元素を含むIII族材料ガス、V族元素を含むV族材料ガス、および、不純物元素を含むドーピング材料ガスを用いる。ただし、複数の材料ガスはこれに限られず、たとえば、II族元素を含むII族材料ガス、VI族元素を含むVI族材料ガス、および、不純物元素を含むドーピング材料ガスを用いてもよい。
【0034】
III族元素としては、たとえば、Ga(ガリウム)、Al(アルミニウム)またはIn(インジウム)などがある。III族材料ガスとしては、たとえば、トリメチルガリウム(TMG)またはトリメチルアルミニウム(TMA)などの有機金属ガスを用いることができる。
【0035】
V族元素としては、たとえば、N(窒素)、P(リン)またはAs(ヒ素)などがある。V族材料ガスとしては、たとえば、アンモニア(NH3)、ホスフィン(PH3)またはアルシン(AsH3)などの水素化合物ガスを用いることができる。
【0036】
不純物元素としては、Mg(マグネシウム)またはSi(シリコン)などがある。ドーピング材料ガスとしては、Cp2Mg(bis-cyclopentadienyl Mg)ガスまたはSiH4ガスなどを用いることができる。
【0037】
図1に示すように、MOCVD装置100は、サセプタ120の縁側領域にIII族材料ガスを含むIII族系混合ガスの供給源となるIII族系混合ガス縁側供給源170を備えている。また、MOCVD装置100は、サセプタ120の縁側領域にV族材料ガスを含むV族系混合ガスの供給源となるV族系混合ガス縁側供給源171を備えている。
【0038】
また、MOCVD装置100は、サセプタ120の中心側領域にIII族材料ガスを含むIII族系混合ガスの供給源となるIII族系混合ガス縁側供給源172を備えている。また、MOCVD装置100は、サセプタ120の中心側領域にV族材料ガスを含むV族系混合ガスの供給源となるV族系混合ガス縁側供給源173を備えている。
【0039】
III族系混合ガス縁側供給源170は、流量調節機構であるマスフローコントローラ170cが接続されたIII族系縁側混合配管170aによりシャワーヘッド130に接続されている。V族系混合ガス縁側供給源171は、マスフローコントローラ171cが接続されたV族系縁側混合配管171aによりシャワーヘッド130に接続されている。
【0040】
III族系混合ガス中心側供給源172は、マスフローコントローラ172cが接続されたIII族系中心側混合配管172aによりシャワーヘッド130に接続されている。V族系混合ガス中心側供給源173は、マスフローコントローラ173cが接続されたV族系中心側混合配管173aによりシャワーヘッド130に接続されている。
【0041】
MOCVD装置100は、MOCVD装置100に含まれる全てのマスフローコントローラを制御する制御部190を備えている。制御部190は、配線191によりIII族系混合ガス縁側供給源170と接続され、配線192によりV族系混合ガス縁側供給源171と接続され、配線193によりIII族系混合ガス中心側供給源172と接続され、配線194によりV族系混合ガス中心側供給源173と接続されている。
【0042】
III族系混合ガス縁側供給源170における混合ガスの流量を調整する全てのマスフローコントローラは、III族系混合ガス縁側供給源170を介して図示しない配線により制御部190と接続されている。
【0043】
V族系混合ガス縁側供給源171における混合ガスの流量を調整する全てのマスフローコントローラは、V族系混合ガス縁側供給源171を介して図示しない配線により制御部190と接続されている。
【0044】
III族系混合ガス中心側供給源172における混合ガスの流量を調整する全てのマスフローコントローラは、III族系混合ガス中心側供給源172を介して図示しない配線により制御部190と接続されている。
【0045】
V族系混合ガス中心側供給源173における混合ガスの流量を調整する全てのマスフローコントローラは、V族系混合ガス中心側供給源173を介して図示しない配線により制御部190と接続されている。
【0046】
また、本実施形態に係るMOCVD装置100は、被処理基板10上に形成された膜の膜厚を検出する膜厚検出手段である膜厚センサー196を備える。膜厚センサー196は、配線195により制御部190と接続されている。
【0047】
図3に示すように、MOCVD装置100は、キャリアガス供給源180、第1III族材料ガス供給源181、第2III族材料ガス供給源182、第1V族材料ガス供給源183、第2V族材料ガス供給源184、第1ドーピング材料ガス供給源185、および、第2ドーピング材料ガス供給源186を備えている。
【0048】
キャリアガス供給源180は、キャリアガスとして、たとえば、H2ガスを供給する。キャリアガス供給源180は、キャリアライン180aに接続されている。キャリアライン180aは、マスフローコントローラA1,A2,B1,B2,C2,D2,G1,G2,H1,H2と接続されている。
【0049】
また、キャリアライン180aは、キャリアライン180bおよびキャリアライン180cと接続されている。キャリアライン180bは、マスフローコントローラE1が接続されたIII族系縁側混合配管170bと、マスフローコントローラE2が接続されたIII族系中心側混合配管172bとに分岐されている。
【0050】
キャリアライン180cは、マスフローコントローラF1が接続されたV族系縁側混合配管171bと、マスフローコントローラF2が接続されたV族系中心側混合配管173bとに分岐されている。
【0051】
第1III族材料ガス供給源181は、たとえば、TMGガスを供給する。第1III族材料ガス供給源181は、バブリング装置に接続されている。このバブリング装置の導入側は、バルブを介して、マスフローコントローラA1が接続されたキャリアラインと接続されている。このバブリング装置の導出側は、バルブを介して、マスフローコントローラA2が接続されたキャリアラインと接続されている。
【0052】
マスフローコントローラA2が接続されたキャリアラインは、微差圧仕様のマスフローコントローラA3およびマスフローコントローラA4を備えたガス分岐機構A5により分岐されている。マスフローコントローラA3が接続されている側は、III族系縁側混合配管170bに接続されている。マスフローコントローラA4が接続されている側は、III族系中心側混合配管172bに接続されている。
【0053】
第2III族材料ガス供給源182は、たとえば、TMAガスを供給する。第2III族材料ガス供給源182は、バブリング装置に接続されている。このバブリング装置の導入側は、バルブを介して、マスフローコントローラB1が接続されたキャリアラインと接続されている。このバブリング装置の導出側は、バルブを介して、マスフローコントローラB2が接続されたキャリアラインと接続されている。
【0054】
マスフローコントローラB2が接続されたキャリアラインは、微差圧仕様のマスフローコントローラB3およびマスフローコントローラB4を備えたガス分岐機構B5により分岐されている。マスフローコントローラB3が接続されている側は、III族系縁側混合配管170bに接続されている。マスフローコントローラB4が接続されている側は、III族系中心側混合配管172bに接続されている。
【0055】
第1ドーピング材料ガス供給源185は、たとえば、Cp2Mgガスを供給する。第1ドーピング材料ガス供給源185は、バブリング装置に接続されている。このバブリング装置の導入側は、バルブを介して、マスフローコントローラG1が接続されたキャリアラインと接続されている。このバブリング装置の導出側は、バルブを介して、マスフローコントローラG2が接続されたキャリアラインと接続されている。
【0056】
マスフローコントローラG2が接続されたキャリアラインは、微差圧仕様のマスフローコントローラG3およびマスフローコントローラG4を備えたガス分岐機構G5により分岐されている。マスフローコントローラG3が接続されている側は、III族系縁側混合配管170bに接続されている。マスフローコントローラG4が接続されている側は、III族系中心側混合配管172bに接続されている。
【0057】
第2ドーピング材料ガス供給源186は、たとえば、SiH4ガスを供給する。第2ドーピング材料ガス供給源186は、バブリング装置に接続されている。このバブリング装置の導入側は、バルブを介して、マスフローコントローラH1が接続されたキャリアラインと接続されている。このバブリング装置の導出側は、バルブを介して、マスフローコントローラH2が接続されたキャリアラインと接続されている。
【0058】
マスフローコントローラH2が接続されたキャリアラインは、微差圧仕様のマスフローコントローラH3およびマスフローコントローラH4を備えたガス分岐機構H5により分岐されている。マスフローコントローラH3が接続されている側は、III族系縁側混合配管170bに接続されている。マスフローコントローラH4が接続されている側は、III族系中心側混合配管172bに接続されている。
【0059】
第1V族材料ガス供給源183は、たとえば、NH3ガスを供給する。第1V族材料ガス供給源183は、マスフローコントローラC1が接続された配管の一端と接続されている。この配管の他端側は、マスフローコントローラC2が接続されたキャリアラインに接続されている。
【0060】
マスフローコントローラC2が接続されたキャリアラインは、微差圧仕様のマスフローコントローラC3およびマスフローコントローラC4を備えたガス分岐機構C5により分岐されている。マスフローコントローラC3が接続されている側は、V族系縁側混合配管171bに接続されている。マスフローコントローラC4が接続されている側は、V族系中心側混合配管173bに接続されている。
【0061】
第2V族材料ガス供給源184は、たとえば、AsH3ガスを供給する。第2V族材料ガス供給源184は、マスフローコントローラD1が接続された配管の一端と接続されている。この配管の他端側は、マスフローコントローラD2が接続されたキャリアラインに接続されている。
【0062】
マスフローコントローラD2が接続されたキャリアラインは、微差圧仕様のマスフローコントローラD3およびマスフローコントローラD4を備えたガス分岐機構D5により分岐されている。マスフローコントローラD3が接続されている側は、V族系縁側混合配管171bに接続されている。マスフローコントローラD4が接続されている側は、V族系中心側混合配管173bに接続されている。
【0063】
以下に、各材料ガスの供給方法および流量調整方法について説明する。図4は、本実施形態に係るMOCVD装置の制御部に関するブロック図である。図5は、制御部の演算部によるガス分岐機構A5における流量算出過程を示すフロー図である。図6は、制御部の演算部によるガス分岐機構B5における流量算出過程を示すフロー図である。図7は、制御部の演算部によるガス分岐機構G5における流量算出過程を示すフロー図である。
【0064】
図8は、制御部の演算部によるガス分岐機構H5における流量算出過程を示すフロー図である。図9は、制御部の演算部によるガス分岐機構C5における流量算出過程を示すフロー図である。図10は、制御部の演算部によるガス分岐機構D5における流量算出過程を示すフロー図である。
【0065】
図4に示すように、制御部190には、膜厚センサー196などの外部装置から送られた信号が入力される入力部190Aと、ガス流量を算出する演算部190Bとを含む。制御部190は、ガス流量設定用の結晶成長シーケンス作成用プログラムが記録された記憶部190Cから適宜プログラムを読み込んで、演算部190Bにおいてガス流量を算出する。
【0066】
制御部190は、演算部190Bの算出結果に基づいて各マスフローコントローラA1〜H4に流量調整信号を出力することにより、ガス分岐機構A5,B5,C5,D5,G5,H5を制御してガス流量を調整する。
【0067】
図3に示すように、マスフローコントローラA1にてキャリアガスをバブリング装置内に導入し、シリンダ内でバブリングさせてTMGガスを発生させる。マスフローコントローラA1から導入されるキャリアガスの流量により、TMGガスの発生量が決定される。
【0068】
発生したTMGガスは、マスフローコントローラA2から送られたキャリアガスと混合される。マスフローコントローラA2から送られるキャリアガスの流量により、TMGガスの濃度および総流量が決定される。
【0069】
キャリアガスと混合されたTMGガスの一部は、マスフローコントローラA3にて流量制御されてIII族系縁側混合配管170bに送られる。キャリアガスと混合されたTMGガスの残部は、マスフローコントローラA4にて流量制御されてIII族系中心側混合配管172bに送られる。
【0070】
TMGガスに関する流量調整は次のように行なわれる。図5に示すように、演算部190Bは、ガス分岐機構A5へのガス流入量を所定の固定値Sa5(slm)に設定する(T10)。次に、マスフローメータA1における流量をSa1(slm)に設定する(T11)。その結果、マスフローメータA2における流量Sa2(slm)をSa5−Sa1として算出する(T12)。この算出結果に基づいて、マスフローメータA2による流量調整が行なわれる。
【0071】
同様に、キャリアガスと混合されたTMAガスの一部は、マスフローコントローラB3にて流量制御されてIII族系縁側混合配管170bに送られる。キャリアガスと混合されたTMAガスの残部は、マスフローコントローラB4にて流量制御されてIII族系中心側混合配管172bに送られる。
【0072】
TMAガスに関する流量調整は次のように行なわれる。図6に示すように、演算部190Bは、ガス分岐機構B5へのガス流入量を所定の固定値Sb5(slm)に設定する(T20)。次に、マスフローメータB1における流量をSb1(slm)に設定する(T21)。その結果、マスフローメータB2における流量Sb2(slm)をSb5−Sb1として算出する(T22)。この算出結果に基づいて、マスフローメータB2による流量調整が行なわれる。
【0073】
キャリアガスと混合されたCp2Mgガスの一部は、マスフローコントローラG3にて流量制御されてIII族系縁側混合配管170bに送られる。キャリアガスと混合されたCp2Mgガスの残部は、マスフローコントローラG4にて流量制御されてIII族系中心側混合配管172bに送られる。
【0074】
Cp2Mgガスに関する流量調整は次のように行なわれる。図7に示すように、演算部190Bは、ガス分岐機構G5へのガス流入量を所定の固定値Sg5(slm)に設定する(T30)。次に、マスフローメータG1における流量をSg1(slm)に設定する(T31)。その結果、マスフローメータG2における流量Sg2(slm)をSg5−Sg1として算出する(T32)。この算出結果に基づいて、マスフローメータG2による流量調整が行なわれる。
【0075】
キャリアガスと混合されたSiH4ガスの一部は、マスフローコントローラH3にて流量制御されてIII族系縁側混合配管170bに送られる。キャリアガスと混合されたSiH4ガスの残部は、マスフローコントローラH4にて流量制御されてIII族系中心側混合配管172bに送られる。
【0076】
SiH4ガスに関する流量調整は次のように行なわれる。図8に示すように、演算部190Bは、ガス分岐機構H5へのガス流入量を所定の固定値Sh5(slm)に設定する(T40)。次に、マスフローメータH1における流量をSh1(slm)に設定する(T41)。その結果、マスフローメータH2における流量Sh2(slm)をSh5−Sh1として算出する(T42)。この算出結果に基づいて、マスフローメータH2による流量調整が行なわれる。
【0077】
このように、III族系縁側混合配管170bおよびIII族系中心側混合配管172bの各々において、複数のIII族系材料ガスおよび複数のドーピング材料ガスが混合される。
【0078】
さらに、マスフローコントローラE1にてキャリアガスが流量制御されてIII族系縁側混合配管170bに送られる。マスフローコントローラE1から送られるキャリアガスの流量により、III族系混合ガス縁側供給源170に到達する混合ガスの総流量が決定される。
【0079】
マスフローコントローラE2にてキャリアガスが流量制御されてIII族系中心側混合配管172bに送られる。マスフローコントローラE2から送られるキャリアガスの流量により、III族系混合ガス中心側供給源172に到達する混合ガスの総流量が決定される。
【0080】
図11は、制御部の演算部によるマスフローコントローラE1における流量算出過程を示すフロー図である。図12は、制御部の演算部によるマスフローコントローラE2における流量算出過程を示すフロー図である。
【0081】
マスフローコントローラE1における流量調整は次のように行なわれる。図11に示すように、演算部190Bは、III族系混合ガス縁側供給源170の総流量を所定の固定値S30(slm)に設定する(T100)。次に、演算部190Bは、各ガス分岐機構における材料ガスの分岐比率を所定の分岐比率に設定する。演算部190Bは、その分岐比率に従って分岐された各材料ガスの合計流量からキャリアガス流量を算出する。なお、分岐比率とは、縁側混合配管に送られる割合とする。
【0082】
具体的には、演算部190Bは、ガス分岐機構A5の分岐比率をRa5(%)に設定する(T110)。演算部190Bは、既にT10工程で設定されたガス分岐機構A5へのガス流入量Sa5(slm)を用いて、III族系縁側混合配管170bに送られるTMGガスの流量Sa3(slm)をSa5×Ra5/100として算出する(T111)。
【0083】
同様に、演算部190Bは、ガス分岐機構B5の分岐比率をRb5(%)に設定する(T120)。演算部190Bは、既にT20工程で設定されたガス分岐機構B5へのガス流入量Sb5(slm)を用いて、III族系縁側混合配管170bに送られるTMAガスの流量Sb3(slm)をSb5×Rb5/100として算出する(T121)。
【0084】
同様に、演算部190Bは、ガス分岐機構G5の分岐比率をRg5(%)に設定する(T130)。演算部190Bは、既にT30工程で設定されたガス分岐機構G5へのガス流入量Sg5(slm)を用いて、III族系縁側混合配管170bに送られるCp2Mgガスの流量Sg3(slm)をSg5×Rg5/100として算出する(T131)。
【0085】
同様に、演算部190Bは、ガス分岐機構H5の分岐比率をRh5(%)に設定する(T140)。演算部190Bは、既にT40工程で設定されたガス分岐機構H5へのガス流入量Sh5(slm)を用いて、III族系縁側混合配管170bに送られるSiH4ガスの流量Sh3(slm)をSh5×Rh5/100として算出する(T141)。
【0086】
演算部190Bは、算出した各材料ガスの流量の合計流量(Sa3+Sb3+Sg3+Sh3)を用いて、マスフローメータE1における流量Se1(slm)をS30−(Sa3+Sb3+Sg3+Sh3)として算出する(T150)。この算出結果に基づいて、マスフローメータE1による流量調整が行なわれる。
【0087】
同様に、マスフローコントローラE2における流量調整は次のように行なわれる。図12に示すように、演算部190Bは、III族系混合ガス中心側供給源172の総流量を所定の固定値S30a(slm)に設定する(T200)。
【0088】
演算部190Bは、上記T110工程で設定されたガス分岐機構A5の分岐比率と、既にT10工程で設定されたガス分岐機構A5へのガス流入量Sa5(slm)を用いて、III族系中心側混合配管172bに送られるTMGガスの流量Sa4(slm)をSa5×(1−Ra5/100)として算出する(T211)。
【0089】
同様に、演算部190Bは、上記T120工程で設定されたガス分岐機構B5の分岐比率と、既にT20工程で設定されたガス分岐機構B5へのガス流入量Sb5(slm)を用いて、III族系中心側混合配管172bに送られるTMAガスの流量Sb4(slm)をSb5×(1−Rb5/100)として算出する(T221)。
【0090】
同様に、演算部190Bは、上記T130工程で設定されたガス分岐機構G5の分岐比率と、既にT30工程で設定されたガス分岐機構G5へのガス流入量Sg5(slm)を用いて、III族系中心側混合配管172bに送られるCp2Mgガスの流量Sg4(slm)をSg5×(1−Rg5/100)として算出する(T231)。
【0091】
同様に、演算部190Bは、上記T140工程で設定されたガス分岐機構H5の分岐比率と、既にT40工程で設定されたガス分岐機構H5へのガス流入量Sh5(slm)を用いて、III族系中心側混合配管172bに送られるSiH4ガスの流量Sh4(slm)をSh5×(1−Rh5/100)として算出する(T241)。
【0092】
演算部190Bは、算出した各材料ガスの流量の合計流量(Sa4+Sb4+Sg4+Sh4)を用いて、マスフローメータE2における流量Se2(slm)をS30a−(Sa4+Sb4+Sg4+Sh4)として算出する(T250)。この算出結果に基づいて、マスフローメータE2による流量調整が行なわれる。
【0093】
図3に示すように、マスフローコントローラC1にて流量を調整して第1V族材料ガス供給源183からNH3ガスを送出する。NH3ガスは、マスフローコントローラC2から送られたキャリアガスと混合される。マスフローコントローラC2から送られるキャリアガスの流量により、NH3ガスの濃度および総流量が決定される。
【0094】
キャリアガスと混合されたNH3ガスの一部は、マスフローコントローラC3にて流量制御されてV族系縁側混合配管171bに送られる。キャリアガスと混合されたNH3ガスの残部は、マスフローコントローラC4にて流量制御されてV族系中央側混合配管173bに送られる。
【0095】
NH3ガスに関する流量調整は次のように行なわれる。図9に示すように、演算部190Bは、ガス分岐機構C5へのガス流入量を所定の固定値Sc5(slm)に設定する(T50)。次に、マスフローメータC1における流量をSc1(slm)に設定する(T51)。その結果、マスフローメータC2における流量Sc2(slm)をSc5−Sc1として算出する(T52)。この算出結果に基づいて、マスフローメータC2による流量調整が行なわれる。
【0096】
同様に、キャリアガスと混合されたAsH3ガスの一部は、マスフローコントローラD3にて流量制御されてV族系縁側混合配管171bに送られる。キャリアガスと混合されたAsH3ガスの残部は、マスフローコントローラD4にて流量制御されてV族系中央側混合配管173bに送られる。
【0097】
AsH3ガスに関する流量調整は次のように行なわれる。図10に示すように、演算部190Bは、ガス分岐機構D5へのガス流入量を所定の固定値Sd5(slm)に設定する(T60)。次に、マスフローメータD1における流量をSd1(slm)に設定する(T61)。その結果、マスフローメータD2における流量Sd2(slm)をSd5−Sd1として算出する(T62)。この算出結果に基づいて、マスフローメータD2による流量調整が行なわれる。
【0098】
このように、V族系縁側混合配管171bおよびV族系中央側混合配管173bの各々において、複数のV族系材料ガスが混合される。
【0099】
さらに、マスフローコントローラF1にてキャリアガスが流量制御されてV族系縁側混合配管171bに送られる。マスフローコントローラF1から送られるキャリアガスの流量により、V族系混合ガス縁側供給源171に到達する混合ガスの総流量が決定される。
【0100】
マスフローコントローラF2にてキャリアガスが流量制御されてV族系中心側混合配管173bに送られる。マスフローコントローラF2から送られるキャリアガスの流量により、V族系混合ガス中心側供給源173に到達する混合ガスの総流量が決定される。
【0101】
図13は、制御部の演算部によるマスフローコントローラF1における流量算出過程を示すフロー図である。図14は、制御部の演算部によるマスフローコントローラF2における流量算出過程を示すフロー図である。
【0102】
マスフローコントローラF1における流量調整は次のように行なわれる。図13に示すように、演算部190Bは、V族系混合ガス縁側供給源171の総流量を所定の固定値S31(slm)に設定する(T300)。次に、演算部190Bは、各ガス分岐機構における材料ガスの分岐比率を所定の分岐比率に設定する。演算部190Bは、その分岐比率に従って分岐された各材料ガスの合計流量からキャリアガス流量を算出する。
【0103】
具体的には、演算部190Bは、ガス分岐機構C5の分岐比率をRc5(%)に設定する(T310)。演算部190Bは、既にT50工程で設定されたガス分岐機構C5へのガス流入量Sc5(slm)を用いて、V族系縁側混合配管171bに送られるTMGガスの流量Sc3(slm)をSc5×Rc5/100として算出する(T311)。
【0104】
同様に、演算部190Bは、ガス分岐機構D5の分岐比率をRd5(%)に設定する(T320)。演算部190Bは、既にT60工程で設定されたガス分岐機構D5へのガス流入量Sd5(slm)を用いて、V族系縁側混合配管171bに送られるTMAガスの流量Sd3(slm)をSd5×Rd5/100として算出する(T321)。
【0105】
演算部190Bは、算出した各材料ガスの流量の合計流量(Sc3+Sd3)を用いて、マスフローメータF1における流量Sf1(slm)をS31−(Sc3+Sd3)として算出する(T350)。この算出結果に基づいて、マスフローメータF1による流量調整が行なわれる。
【0106】
同様に、マスフローコントローラF2における流量調整は次のように行なわれる。図14に示すように、演算部190Bは、V族系混合ガス中心側供給源173の総流量を所定の固定値S31a(slm)に設定する(T400)。
【0107】
演算部190Bは、上記T310工程で設定されたガス分岐機構C5の分岐比率と、既にT50工程で設定されたガス分岐機構C5へのガス流入量Sc5(slm)を用いて、V族系中心側混合配管173bに送られるNH3ガスの流量Sc4(slm)をSc5×(1−Rc5/100)として算出する(T411)。
【0108】
同様に、演算部190Bは、上記T320工程で設定されたガス分岐機構D5の分岐比率と、既にT60工程で設定されたガス分岐機構D5へのガス流入量Sd5(slm)を用いて、V族系中心側混合配管173bに送られるAsH3ガスの流量Sd4(slm)をSd5×(1−Rd5/100)として算出する(T421)。
【0109】
演算部190Bは、算出した各材料ガスの流量の合計流量(Sc4+Sd4)を用いて、マスフローメータF2における流量Sf2(slm)をS31a−(Sc4+Sd4)として算出する(T450)。この算出結果に基づいて、マスフローメータF2による流量調整が行なわれる。
【0110】
上記のように、MOCVD装置100は、シャワーヘッド130に複数の材料ガスのうちの所定の複数の材料ガスを混合してそれぞれ導入する複数の混合配管を備えている。また、MOCVD装置100は、複数の材料ガスをサセプタ120上の複数の領域の数だけ所定の分岐比率で分岐して所定の流量でシャワーヘッド130に導入するための複数のガス分岐機構A5,B5,C5,D5,G5,H5を備えている。
【0111】
複数のガス分岐機構A5,B5,C5,D5,G5,H5の各々は、複数の材料ガスの各々の分岐比率を個別に調節する。すなわち、制御部190により複数のガス分岐機構A5,B5,C5,D5,G5,H5の各々が互いに独立して制御される。
【0112】
制御部190は、複数のガス分岐機構A5,B5,C5,D5,G5,H5の各々の所定の分岐比率を設定することにより、サセプタ120上の複数の領域のそれぞれにおいて供給される複数の材料ガスの流量を調整する。
【0113】
上記のように、制御部190は、サセプタ120上の複数の領域のそれぞれにおいて供給される複数の材料ガスの流量と複数の材料ガスのうちの一部の材料ガスの流量とから複数の材料ガスのうちの残部の材料ガスの流量を算出する演算部190Bを有している。
【0114】
制御部190が、演算部190Bの算出結果に基づいて、複数のガス分岐機構A5,B5,C5,D5,G5,H5の各々により上記残部の材料ガスの流量を調整することにより、サセプタ120上の複数の領域のそれぞれに供給される複数の材料ガスの流量を上記所定の流量に維持することができる。
【0115】
また、制御部190が、マスフローコントローラE1,E2,F1,F2における流量を調整することにより、各混合ガス供給源170〜173における総流量を所定の流量に維持することができる。
【0116】
本実施形態においては、複数のガス分岐機構A5,B5,C5,D5,G5,H5の各々は、2つの微差圧仕様のマスフローコントローラにより構成されているが、ガス分岐機構はフロースプリッタで構成されていてもよい。
【0117】
シャワーヘッド130は、複数の混合配管のそれぞれで混合された複数の混合ガスをサセプタ120上の複数の領域にそれぞれ噴き付ける。複数の混合ガスの各々においては、所定の複数の材料ガスの各々の濃度および流量が調節されている。
【0118】
具体的には、たとえば、マスフローコントローラA3とマスフローコントローラA4との流量比と、マスフローコントローラB3とマスフローコントローラB4との流量比とを、異なるように設定することにより、III族系混合ガス縁側供給源170とIII族系混合ガス中心側供給源172とにおける複数のIII族材料ガスの混合比を調整できる。同様に、V族系混合ガス縁側供給源171とV族系混合ガス中心側供給源173とにおける複数のV族材料ガスの混合比を調整できる。
【0119】
また、複数のIII族材料ガスの混合比を一定にした状態で、サセプタ120の縁側領域に噴き付けられる混合ガス中のIII族系混合ガスとV族系混合ガスとの流量比と、中心側領域に噴き付けられる混合ガス中のIII族系混合ガスとV族系混合ガスとの流量比とを調整することができる。
【0120】
具体的には、たとえば、マスフローコントローラA3,A4,B3,B4,C3,C4の流量をそれぞれ、LA3,LA4,LB3,LB4,LC3,LC4とする。LA3:LA4=LB3:LB4を満たしつつ、LC3/(LA3+LB3)=LC4/(LA4+LB4)を満たすようにすれば、サセプタ120の縁側領域と中心側領域とにおいて、噴き付けられるIII族系混合ガスとV族系混合ガスとの流量比を同一にすることができる。
【0121】
逆に、LC3およびLC4が上記の関係を満たさないように設定することにより、サセプタ120の縁側領域と中心側領域とにおいて、噴き付けられるIII族系混合ガスとV族系混合ガスとの流量比を異なるようにすることができる。なお、上記の関係式は、V族材料ガスを一種類のみ使用している場合を規定している。
【0122】
上記のように、本実施形態に係るMOCVD装置100においては、サセプタ120上の複数の領域毎に材料ガスの混合比および流量を調整できる。その結果、多数枚、大面積の被処理基板10を処理する場合に、成長した結晶の層厚、組成、不純物添加量の均一性の全てを被処理基板10上で充分なものとすることができる。すなわち、複数の被処理基板10の各々において、均一な膜厚および膜特性を有する化合物半導体結晶を成長させることができる。
【0123】
また、本実施形態に係るMOCVD装置100は、膜厚センサー196を備えている。制御部190は、膜厚センサー196から入力された膜厚検出信号に基づいて、複数のガス分岐機構A5,B5,C5,D5,G5,H5の各々の上記所定の分岐比率を調節し、かつ、上記所定の流量を調整する。
【0124】
被処理基板10上に形成される膜の膜厚は、供給されるIII族材料の量に依存する。そのため、膜厚センサー196により検出された膜厚量が設定値より小さい場合、マスフローコントローラA1における流量を大きくしてTMGの発生量を多くする。このとき、マスフローコントローラA2における流量は、マスフローコントローラA1において大きくした流量分だけ小さくなるように制御部190により調整される。
【0125】
このように調整することにより、ガス分岐機構A5に流入するTMGガスの流量は変化せず、ガス分岐機構A5における分岐比率も変化させないため、III族系縁側混合配管170bおよびIII族系中心側混合配管172bに送られるTMGガスの合計流量は維持される。すなわち、TMGの量を多くしつつTMGガスの流量を維持することができる。
【0126】
上記の場合は、サセプタ120上の縁側領域および中心側領域の両方でTMGの量を変更した場合であるが、いずれか一方のみにおいてTMGの量を変更する場合について以下に説明する。
【0127】
たとえば、サセプタ120上の縁側領域のみにおいて、供給されるTMGの量を低くする場合について説明する。マスフローコントローラA1における流量を小さくしつつ、サセプタ120上の中心側領域に供給されるTMGの量を維持するために、ガス分岐機構A5における分岐比率を変更する。具体的には、III族系中心側混合配管172bに送られるTMGガスの割合を多くして、サセプタ120上の中心側領域に供給されるTMG量が変化しないようにする。よって、サセプタ120上の縁側領域に供給されるTMG量のみが低下する。
【0128】
このとき、マスフローコントローラA2における流量は、マスフローコントローラA1において大きくした流量分だけ小さくなるように制御部190により調整される。また、ガス分岐機構A5における分岐比率の変更により、III族系縁側混合配管170bおよびIII族系中心側混合配管172bに送られるTMGガスの合計流量が変化しなしように、マスフローコントローラE1、E2における流量が制御部190により調整される。
【0129】
上記の構成により、サセプタ120上の複数の領域に供給される複数の材料ガスの流量を維持して安定した成膜条件で処理しつつ、各領域毎に所望の混合比で混合された複数の材料ガスを供給できる。その結果、複数の被処理基板10の各々において、均一な膜厚および膜特性を有する化合物半導体結晶を成長させることができる。
【0130】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0131】
10 被処理基板、20a 中心側領域、30a 縁側領域、100 MOCVD装置、110 成膜室、120 サセプタ、121 ヒータ、130 シャワーヘッド、131 シャワープレート、131a 開口、132 水冷部、133 中空部、140 排ガス処理装置、141 ガス排気部、142 パージライン、150 回転軸、151 支持台、152 ヒータカバー、160 水冷装置、161 冷却用配管、170 III族系混合ガス縁側供給源、171 V族系混合ガス縁側供給源、172 III族系混合ガス中心側供給源、173 V族系混合ガス中心側供給源、170a,170b III族系縁側混合配管、171a,171b V族系縁側混合配管、170c,171c,172c,173c,A1,A2,A3,A4,B1,B2,B3,B4,C1,C2,C3,C4,D1,D2,D3,D4,E1,E2,F1,F2,G1,G2,G3,G4,H1,H2,H3,H4 マスフローコントローラ、172a,172b III族系中心側混合配管、173a,173b V族系中心側混合配管、180 キャリアガス供給源、180a,180b,180c キャリアライン、181 第1III族材料ガス供給源、182 第2III族材料ガス供給源、183 第1V族材料ガス供給源、184 第2V族材料ガス供給源、185 第1ドーピング材料ガス供給源、186 第2ドーピング材料ガス供給源、190 制御部、190A 入力部、190B 演算部、190C 記憶部、191,192,193,194,195 配線、196 膜厚センサー、A5,B5,C5,D5,G5,H5 ガス分岐機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板が載置され、上面に複数の領域を有するサセプタと、
前記サセプタと対向し、前記複数の領域の各々に複数の材料ガスを供給するガス供給部と、
前記複数の材料ガスを前記複数の領域の数だけ所定の分岐比率で分岐して所定の流量で前記ガス供給部に導入するための複数のガス分岐機構と、
前記複数の材料ガスのうちの所定の複数の材料ガスを混合し、前記複数のガス分岐機構とそれぞれ接続された複数の混合配管と、
前記複数のガス分岐機構を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、前記複数のガス分岐機構の各々の前記所定の分岐比率を設定することにより、前記複数の領域のそれぞれにおいて供給される前記複数の材料ガスの流量を調整する、気相成長装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記複数の領域のそれぞれにおいて供給される前記複数の材料ガスの流量と前記複数の材料ガスのうちの一部の材料ガスの流量とから前記複数の材料ガスのうちの残部の材料ガスの流量を算出する演算部を有し、
前記制御部が、前記演算部の算出結果に基づいて、前記複数のガス分岐機構の各々により前記残部の材料ガスの流量を調整して、前記複数の領域のそれぞれに供給される前記複数の材料ガスの流量を前記所定の流量に維持する、請求項1に記載の気相成長装置。
【請求項3】
被処理基板上に形成された膜の膜厚を検出する膜厚検出手段をさらに備え、
前記制御部は、前記膜厚検出手段から入力された膜厚検出信号に基づいて、前記複数のガス分岐機構の各々の前記所定の分岐比率を調節し、かつ、前記所定の流量を調整する、請求項1または2に記載の気相成長装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−98233(P2013−98233A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237413(P2011−237413)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】