説明

気相腐食防止剤組成物、その製造方法および腐食に対する一時的な保護のためのその使用

【課題】気相を介して作用する通常の揮発性腐食防止剤の不利益が改善された、蒸発または昇華可能な腐食防止物質および物質の配合物を提供する。
【解決手段】(1)少なくとも1種の多置換ピリミジンと、(2)少なくとも1種のモノアルキル尿素と、(3)少なくとも1種のC〜Cアミノアルキルジオールと、任意に(4)好ましくはベンゼン環が置換されている少なくとも1種のベンゾトリアゾールを含む腐食防止物質配合物である。前記成分は、一緒に混合されるか、または水中に分散した形態で存在するか、またはフェニルアルキルアルコールおよび/またはアルキルフェノールのような鉱油および合成油と任意の割合で混和可能な可溶化剤中に予め混合された形態で存在する。そのような物質配合物は、鉄、クロム、ニッケル、スズ、亜鉛、アルミニウム、銅、およびこれらの合金のような一般的な実用金属を大気腐食から保護する気相腐食防止剤である。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、一般的な実用金属(例えば、鉄、クロム、ニッケル、スズ、亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウムおよびこれらの合金)を湿潤雰囲気における腐食から保護するための気相腐食防止剤(vapour phase corrosion inhibitors(VCI);蒸発または昇華することができる腐食防止剤)としての物質の配合物に関する。
【0002】
既に数十年間、例えば、パッケージ、開閉キャビネットまたは陳列ケース内のような閉鎖された空間内の金属体の一時的な防食のために、通常の条件下においても蒸発または昇華する傾向を有することにより、気相を介して保護されるべき金属表面上を通過することができる腐食防止剤が使用されてきた。貯蔵および輸送の間の腐食に対してこの方法で金属部品を保護することは、油、グリースまたはワックスを用いた一時的な防食に完全に代わるものであることが知られている。
【0003】
気相を介して好ましく作用するこれらの腐食防止剤は、通常、保護されるべき金属の種類に応じて選択され、気体のVCIに対して透過性のある材料から作られたバッグに包まれた粉末として使用される(例えば、E. Vuorinen, E. Kalman, W. Focke, Introduction to vapour phase corrosion inhibitors in metal packaging, Surface Engng. 29(2004) 281 pp.; US 6,752,934 B2を参照されたい)。
【0004】
防食のための最新のパッケージ材料(packaging material)には、粉末または錠剤のVCIを内部に含むガス透過性の容器(例えば、ペーパーバッグ、プラスチックカプセル)、紙、ボール紙、発泡体または不織布の上にコーティングする、あるいは高分子キャリア材料内に直接組み込むことが含まれる。例えば、US 3,836,077、US 3,967,926、US 5,332,525、US 5,393,457、US 4,124,549、US 4,290,912、US 5,209,869、JP 4,124,549、EP 0,639,657、EP 1,219,727、US 6,752,934 B2、US 2009/0111901 A1およびDE-OS 102007059 726 A1は、VCIをカプセル、コーティングまたはガス透過性のプラスチックフィルムに導入するための種々の方法を提案しており、それぞれの場合において、VCI成分が継続的に蒸発または昇華し得る製品が得られる。
【0005】
VCI成分を適切な溶媒に溶解し、適切なキャリア材料に適用することによるVCI含有パッケージ材料の製造は、特に自明であり、既に長年実施されてきた。異なる活性物質および溶媒を使用するこのタイプの方法は、例えば、JP 61,227,188、JP 62,063,686、JP 63,028,888、JP 63,183,182、JP 63,210,285、US 3,887,481およびUS 5,958,115に記載されている。
【0006】
最後に、VCI含有油を提供することに対する必要性が増大している。この場合、蒸気を介して油から放出されるVCI成分が閉じられた空間(例えば、パッケージ、容器、空隙)内の油が存在しない表面領域を通過し、その上に腐食から保護するための吸着フィルムを形成するため、金属表面に塗布される油のフィルムは、問題となる金属基板の腐食だけでなく、その形状(例えば、穴、狭いノッチ、折りたたまれた金属シート層)により油のフィルムで被覆することができない問題となる金属の表面領域における腐食からも保護することが意図されている。
【0007】
そのようなVCI油は、例えば、US 919,778、US 1,224,500、US 3,398,095、US 3,785,975およびJP 07145490 Aに記載されている。これらのVCI油は、揮発性の腐食防止剤を放出し、油で被覆されていない金属表面の領域までも気相を介して腐食から保護するため、防食の特性が不揮発性の腐食防止剤を組み込むことにより改善され、それ故直接的な接触によってのみ効果的である保存油とは大きく異なる。そのような腐食保護油は、例えば、US 5,681,506およびUS 7,014,694 B1に記載されている。
【0008】
中性の水性媒質または凝縮水(condensed water)膜の影響による腐食から金属を一時的に保護するための全ての方法は、通常大気との最初の接触後に実用金属上に存在する初期酸化被膜(primary oxide layer:POL)を化学的および機械的分解から保護することを目的としている(例えば、US 6,752,934 B2およびDE-OS 102007059 726 A1を参照されたい)。
【0009】
多くのアミンは、既に、通常の条件下で相対的に高い蒸気圧または昇華圧を有し、特にPOLで被覆された鉄材料上に吸着されるため、それらは既にVCIとしての初期の使用に向けられ、その使用は多くの特許文献に記載されている。主に、環状アミンであるジシクロヘキシルアミンおよびシクロヘキシルアミンについて言及されている。しかしながら、例として引用されているUS 600,328、US 2,419,327、US 2,432,840、US 4,051,066およびUS 4,275,835においては、信頼できる一時的な防食が、アミンのみを用いることによっては得られないという事実が既に説明されており、それ故、アミンは、さらなる揮発性の活性物質と組み合わせて使用される。このために使用される物質の1つのグループには、不動態化剤(passivator)として作用し得る酸化剤が含まれる。そのような不動態化剤を使用することにより、部分的な化学的分解または局所的な機械的除去(摩耗、侵食)により破壊された場合に、POLが金属物質上の酸化物表層として自然に再構築されるという状況を達成することができる(例えば、E. Vuorinen et al., loc. cit.およびUS 6,752,934 B2を参照されたい)。
【0010】
そのような不動態化酸化剤として、亜硝酸の塩としての亜硝酸塩が実用的な防食において有用であることが示されている。それ故、それらは、VCIとして既に長い間使用されてきた。特に、比較的容易に揮発するジシクロヘキシルアンモニウム亜硝酸塩は、VCIとして既に60年以上の間使用されており(例えば、Vuorinen et al., loc. cit.を参照されたい)、多数の特許においてVCI組成物の成分として言及されている(例えば、US 2,419,327、US 2,432,840、US 2,534,201、US 4,290,912、JP 62109987、JP 63210285 AおよびUS 6,752,934 B2)。
【0011】
しかしながら、その効果は鉄材料の保護にほぼ限定され、一方、亜鉛およびアルミニウム材料の受動的酸化層の安定性がしばしば障害される。
【0012】
鉄材料だけでなく少なくとも亜鉛めっき鋼およびアルミニウム材料に対しても使用できるVCIパッケージ材料を作ることを目的として、亜硝酸塩/アミン混合物と、例えば、中程度〜弱い酸である飽和または不飽和のカルボン酸の塩のような塩昇華可能なさらなる物質とを組み合わせることが提案されている(例えば、US 2,419,327、US 2,432,840を参照されたい)。結果として、これらが水性媒質または凝縮水フィルムと接触した場合に、一般的なAlおよびZn材料の改善された保護が得られるが、同時に、亜硝酸塩の不動態化剤としての性質は、これらの化学種により低減する。
【0013】
問題となるカルボン酸塩は、それぞれ存在するカルボン酸/塩の系に依存して、アミンが同時に存在するか存在しない、金属表面上の水性媒質または凝縮水膜において、相対的に高い緩衝能を有するpH緩衝系を増大させることが知られている。そのため、不動態化効果は、問題となる酸化剤の濃縮物を、他の活性物質よりもずっと多い量になるように長期間置いた場合にのみ達成され得る。
【0014】
今日までに、前記酸化剤の実用的な用途は、程度の差はあれそれらが人および環境に悪影響を与えることがわかってきたために制限されており、調製物中の濃度に関して遵守すべき職業曝露限界値(OELs)(例えば、年1回の更新を含むEC指令67/548/EECによる物質および調製物の分類を参照されたい)があるため、過剰量の不動態化剤を含有するVCI配合は、もはや使用することができない。
【0015】
現在既知のVCI系のほとんどは、亜硝酸塩およびアミンを同時に含み、それらは化学反応を介して互いに消費するため、必要な信頼性を提供することは不可能である。例えば、それまでに、特に、VCI成分として導入される2級アミンおよび環状の窒素含有化合物(例えば、モルフォリンおよびピペリジン)が容易にN−ニトロソ化合物に変換されることが見出された。これらのN−ニトロソアミンは、通常、弱い酸化剤として作用し、金属の腐食を促進する。しかしながら、さらにずっと悪いことはそれらの発癌作用であり、これらVCI系が工業的スケールで使用されるのを妨げる。
【0016】
特に、VCI配合を鉱油または合成油に組み込む場合、亜硝酸塩のような酸化剤は、問題となる基油の相対的に早い酸化的分解を引き起こし得るため、不適切な場合がある。さらに、VCIとして既知の慣例的な脂肪族および芳香族カルボン酸の塩も、油に十分に溶解しない。それ故、今日まで、既知のVCIの油性製剤(oil preparation)は、VCI成分として主にアミンを使用することに制限されてきた(例えば、US 919,778、US 1,224,500、US 3,398,095、US 3,785,975およびJP 07145490 Aを参照されたい)。例えば、US 3,398,095では、硫酸化オレイン酸、C6〜C12アルキルカルボン酸およびC20〜C22アルキルコハク酸の他に、さらにジシクロヘキシルアミン、モルフォリン、ピペリジン、ヘキシルアミンおよび/またはフェニル-α-ナフチルアミンも含む混合物について権利請求しているが、US 3,785,975では、腐食防止添加剤としてのアルケニル置換コハク酸と組み合わされたオルトリン酸ジエステル、不飽和脂肪酸エステル、オクタン酸のようなアルキルカルボン酸およびモルフォリンのアミン塩について強調している。最後に、JP 07145490 Aでは、エタノールアミン、カルボキシレート、モルフォリン、シクロヘキシルアミンおよび種々のスルホン酸塩を含む製剤について権利請求している。しかしながら、脂肪酸エステルおよびスルホン酸塩のような前記長鎖カルボン酸は、通常の条件下、80℃未満の温度では、慣例的な鉱油および合成油から蒸発しないことが現在では確実であるため、アミンのみがそのような製剤から放出され、VCI成分として活性を有するようになる。
【0017】
しかしながら、問題となる80℃以下の温度範囲でアミンのみを放出するVCI油は、鉄ベースの材料のVCI防食に対してのみ適している。亜鉛およびアルミニウムの場合、凝縮水といっしょに、通常、表面の過剰なアルカリ化を引き起こすことが知られており、その結果として、亜鉛酸塩またはアルミン酸塩の形成と共にかなりの腐食が生じ、最終的には水酸化物および塩基性カルボン酸塩が生じ、これは通常、「白錆(white rust)」と呼ばれる。それに対し、アミンの影響下にある銅材料は、しばしば、Cu−アミン複合体の形成による腐食に悩まされる。
【0018】
デザインにより誘起される小さな空洞を含む鉄および非鉄金属の一時的な防食を管理するためのVCIを含む油に対する要求を満たすために、アミンおよび酸化剤を含まないVCI系が必要とされている。特に興味深いのは、加工されてVCI油が作られるだけでなく、VCIディスペンサー(バッグまたはカプセル中のVCI成分の混合物)および被覆されたVCIパッケージ材料(例えば、紙、ボール紙、発泡体)も作ることができる製剤である。そのようなVCI製品を組み合わせて使用することにより(それぞれの場合において、同一の活性物質を含み、そのため限定しなくても相互に適合性である)、例えば、内蓋で覆われたトレー(inside lid-covered tray)がVCIで処理されたエンジンブロックのための保存パッケージのような、特に効果的であり、長く持続するVCI防食パッケージを製造することができ、それには、VCIを放出するバッグ、カプセルまたはVCIで被覆された紙もしくは発泡体原反(foam blank)が付加的に組み込まれ、長期間の保存の場合であっても、VCI防食を維持するための条件として、問題となるトレーの気体空間(gas space)をVCI成分で確実に飽和させる。
【0019】
本発明の目的は、気相を介して作用する通常の揮発性腐食防止剤の上述した不利益が改善された、蒸発または昇華可能な腐食防止物質および物質の配合物を提供することであり、前記物質および物質の配合物は、粉末混合物の形態ならびにコーティングおよび特に油に組み込まれた形態の両方において、実施において重要となる雰囲気条件下で、工業用パッケージおよび同様の閉じられた空間内で、十分な速度で、対応する徐放性製剤(depot;例えば、VCI成分を含むバッグ、紙、ボール紙もしくは発泡体のようなキャリア上のVCI成分を含むコーティング、またはVCI成分を含む油)から蒸発または昇華し、この空間内にある金属の表面に吸着および/または凝縮された後、一般的な実用金属が大気による腐食から確実に保護される状態を保証する。本発明の目的は、改善されたVCIパッケージ材料の製造のための、そのような物質および物質の配合物の製造方法および加工方法も提供することである。
【0020】
驚くべきことに、これらの目的は、特に、請求項1および2に記載の物質の配合物を提供することにより達成することができる。本発明のより具体的な側面および好ましい実施形態は、さらなる請求項の発明特定事項を形成する。
【0021】
本発明による物質の配合物は、以下の成分を含む:
(1)少なくとも1種の置換、特に多置換のピリミジンと、
(2)少なくとも1種のモノアルキル尿素と、
(3)少なくとも1種のC〜Cアミノアルキルジオール。
【0022】
本発明によると、上記成分(1)〜(3)を含む配合物により、結果として多くの金属に対する優れた腐食防止効果が得られることが見出された。
【0023】
本発明による腐食防止物質の配合物は、好ましくは、さらなる成分(4)、すなわちベンゾトリアゾール、好ましくはベンゼン環に置換基を有するベンゾトリアゾールを含む。この成分は、銅および銅合金を保護するのに特に有用であるが、他の実用金属を保護するためにも有用である。
【0024】
種々の成分の重量比は、具体的な適用分野に依存して変化してよく、適切な組成は、当該分野における当業者であれば、慣例的な実験により難なく確認することができる。
【0025】
本発明の1つの好ましい実施形態において、腐食防止物質の配合物は、前記(1)〜(4)全ての成分を含み、成分(1)は0.1〜5重量%、成分(2)は0.2〜12重量%、成分(3)は1〜15重量%、成分(4)は0.4〜10重量%含まれる。
【0026】
多置換ピリミジンのいくつかの非限定的な例は、2,4-ジヒドロキシ-5-メチルピリミジン(チミン)、2-アミノ-4-メチルピリミジン、2-アミノ-4-メトキシ-6-メチルピリミジン、2-アミノ-4,6-ジメチルピリミジン(シトシン)またはこれらの混合物である。さらなる適切なピリミジンは、当該分野における当業者であれば、慣例的な実験により難なく決定することができる。「多置換」という用語は、ここで使用する場合、2以上の置換を意味する。
【0027】
多置換ピリミジンの代わりにまたは多置換ピリミジンに加えて、一置換ピリミジンも、本発明による物質の配合物において使用することができる。しかしながら、その防食効果は、多置換ピリミジンの防食効果に比べて一般的にずっと低い。
【0028】
モノアルキル尿素のいくつかの適切な非限定的な例は、N−ブチル尿素、N−ヘキシル尿素、N−ベンジル尿素、N−シクロヘキシル尿素またはこれらの混合物である。上記例から分かるように、「モノアルキル尿素」という用語は、ここで使用する場合、シクロアルキルおよびアラルキル−一置換尿素をも包含する。しかしながら、本発明により使用されるモノアルキル尿素と対照的に、非置換または二置換の尿素の使用は、ずっと悪い結果を導き、満足のいくVCI防食を提供しない。
【0029】
〜Cアミノアルキルジオールのいくつかの適切な非限定的な例は、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-3-メチル-1,4-ブタンジオール、2-アミノ-2-メチル-1,4-ブタンジオール、またはこれらの組み合わせである。さらなる適切なアミノアルキルジオールは、当該分野における当業者であれば、慣例的な実験により難なく決定することができる。
【0030】
ベンゾトリアゾールのいくつかの適切な非限定的な例は、非置換ベンゾトリアゾール、ベンゼン環においてアルキル化、好ましくはメチル化されたベンゾトリアゾール、好ましくは5−メチルベンゾトリアゾール、またはメチルベンゾトリアゾールの混合物(ここではトリルトリアゾールと称する)である。本発明による腐食防止物質の配合物において、成分(1)〜(3)または(1)〜(4)は、混合された形態で存在するか、水中に分散した形態で存在するか、または鉱油および合成油と任意の割合で混和可能な可溶化剤中に予め混合された形態で存在する。
【0031】
好ましくは、可溶化剤は、フェニルアルキルアルコールおよび/またはアルキルフェノールであり、その中の成分は、溶解形態または分散形態で存在する。
【0032】
フェニルアルキルアルコールのいくつかの適切な非限定的な例は、ベンジルアルコール、2−フェニルエタノール、メチルフェニルカルビノール、3−フェニルプロパノールまたはこれらの混合物である。
【0033】
アルキルフェノールのいくつかの適切な非限定的な例は、ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メトキシフェノール、2,6-ジ-オクタデシル-4-メチルフェノール、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノールまたはこれらの混合物である。
【0034】
本発明による腐食防止物質の配合物は、本発明による成分(1)〜(3)または(1)〜(4)および任意に含まれる可溶化剤の他に、気相腐食防止剤として既知の物質も、単独または混合物としてさらに含有してよい。
【0035】
本発明による物質の配合物は、例えば、成分(1)〜(3)または(1)〜(4)(+いずれかのさらなる成分)が、望ましい割合で相互に混合されるように製造されてよい。
【0036】
1つの好ましい実施形態において、0.1〜5重量%の成分(1)、0.2〜12重量%の成分(2)、1〜15重量%の成分(3)および0〜10重量%、好ましくは0.4〜10重量%の成分(4)が、この方法において相互に混合される。
【0037】
蒸発または昇華可能な腐食防止物質の配合物を製造するためのさらなる方法において、腐食防止成分(1)〜(3)または(1)〜(4)は、最初に相互に混合され、その後、水または鉱油および合成油と任意の割合で混和可能な可溶化剤中に溶解または分散される。
【0038】
本発明による腐食防止物質の配合物の組成は、好ましくは、全ての成分が、70℃以下の温度、98%以下の相対湿度(RH)において、気相腐食保護に十分な量と速度で昇華するように設定される。
【0039】
本発明によると、これらの物質の配合物は、適切な混合物の形態で直接使用されるか、またはVCIパッケージ材料および油性製剤の製造の間に既知の方法で組み込まれ、これらのパッケージ材料または油がVCI徐放性製剤として作用し、本発明による物質の配合物の防食特性が特に有利な態様で発揮される。
【0040】
VCI徐放性製剤またはそのように作用するパッケージ材料および油に、本発明による物質の配合物を組み込むためには、最初に、既知の方法を用いて、個々の物質を無水状態でできるだけ激しく相互に混合することが有利である。
【0041】
1つの実施形態において、腐食防止物質の配合物は、細かい粉末の形態で、金属材料のパッケージ、貯蔵または輸送において、気相腐食防止剤(VPCI、VCI)として使用される。
【0042】
しかしながら、腐食防止物質の配合物は、コーティング物質およびコーティング溶液、好ましくは水性/有機性の媒質、および/またはコロイド性複合材料中に組み込まれてもよく、紙、ボール紙、発泡体(foams)、織布、不織布およびVCI放出パッケージ材料の製造と関連する同様の2次元延伸の物または布のようなキャリア材料を被覆し、パッケージ、貯蔵および輸送のプロセスにおいて使用される。
【0043】
他の実施形態において、腐食防止物質の配合物は、VCI防食油を製造するために使用され、気相腐食防止剤(VPCI、VCI)がそこから放出される。
【0044】
好ましくは、そのようなVCI防食油は、鉱油または合成油および油相に対して2〜10重量%の可溶化剤中の本発明による腐食防止物質の配合物を含み、この組成は、全ての腐食防止剤成分が、70℃以下の温度、98質量%以下の相対湿度(RH)において、気相腐食保護に十分な量と速度でVCI油から蒸発または昇華するように設定される。
【0045】
本発明による物質の配合物およびそれを含有するVCI油は、主に、鉄、クロム、ニッケル、スズ、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムおよび銅ならびにこれらの合金を含む広い範囲の一般的な実用金属を、閉じられた空間における貯蔵および輸送の間に大気による腐食から保護するために使用される。この場合において、好都合に保護されるべき金属部分は、それぞれの物質の配合物または油で直接被覆される必要はない。
【0046】
本発明による物質の配合物は、亜硝酸塩およびシクロアルキルアミンを含まず、好ましくは、既知の方法により容易にリスクなく加工することができ、使用される量では環境に対して毒性がなく、危険もないと分類することができる物質のみからなる。それ故、それらは、大規模で安価に使用でき、潜在的なリスクのない抗腐食パッケージ材料を製造するのに特に適している。
【0047】
本願の発明特定事項を、以下に示す実施例により、より詳細に説明する。それからも明らかなように、本発明による混合物における個々の成分の種類および量ならびに個々のVCI徐放性製剤における混合物の量は、問題となるVCI放出製品が製造される条件のみに依存し、腐食から保護されるべき金属の種類には依存しない。
【0048】
例1:
以下の物質配合物であるVCI(1)は、無水物質から調製された:
2.0重量% 2−アミノ−4−メトキシ−6−メチルピリミジン
12.0重量% シクロヘキシル尿素
15.0重量% 2−アミノ−2−メチル−1,4−ブタンジオール
6.0重量% トリルトリアゾール(メチルベンゾトリアゾールの異性体混合物)
15.0重量% 2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール
50.0重量% 不活性充填剤(シリカゲル)
各場合において、この混合物5gを、25mLのガラスビーカーの底に広く分布させ、それをガラス瓶(容量1L)中に入れた。10mlの脱イオン水を含む第2のガラスビーカーを、第1のガラスビーカーの隣に置いた。その後、PMMAから作られた試験体フレーム(test body frame)を導入し、その上に、各場合について4つの洗浄された試験体を水平方向に対して45°傾けて置いた。各バッチにおいて、これらの試験体は、低合金鋼100Cr6、鋳鉄GGG25、17μmの亜鉛層を含む亜鉛の微粒子でメッキされた鋼、および電解銅(E−Cu)で構成され、変色皮膜および沈着物を含まなかった。
【0049】
金属サンプル、脱イオン水および本発明による物質の配合物を含むガラス瓶をしっかりと閉め、各場合について、封止リングおよびテンションクリップを有する蓋を用いた。室温で16時間置いた後、容器内のVCI成分のいわゆる堆積(build-up)相が完成したものとみなされた。個々のガラス瓶は、その後、加熱キャビネット中で16時間、40℃に曝され、その後、さらに8時間室温に置かれた。この繰り返し負荷(1サイクル=24時間)は、ガラス壁を通して試験体に視覚的変化が見られるまで、または最大40サイクルの負荷が達成されるまで繰り返された。
【0050】
試験が終わった後、ガラス瓶の外で、試験体を視覚的に詳細に評価した。
【0051】
本発明による物質混合物VCI(1)に対する対照として、5g分の商業的に入手可能なVCI粉末を同じ方法で試験した。この対照VCI粉末(R1)は、
54.0重量% モノエタノールアミンベンゾエート
23.0重量% 1H−ベンゾトリアゾール
23.0重量% 充填剤(シリカゲル)
で構成される。
【0052】
試験結果:
本発明による物質混合物VCI(1)と共に使用された試験体は、全部で4つの平行バッチにおいて、40サイクルの後でも変化が見られなかった。
【0053】
商業的に入手可能な対照系R1を使用したバッチにおいては、GGG25から作られた試験体は、8〜10サイクル後に錆の第1スポットが見られ、これらのスポットは、試験を続けるにつれて大きさが急速に大きくなった。鋼リングについては、端部における錆が、11〜12サイクル後に観察された。
【0054】
亜鉛メッキされた鋼から作られた試験体は、42サイクルの後、端部領域および表面の両方において、白錆の明確な徴候が見られ、これは、FTIR顕微鏡検査(ダイヤモンドセルと組み合わせたオートイメージ顕微鏡システムを備えた、パーキンエルマーFTIR measuring station Spectrum One FTIR)により、塩基性亜鉛カルボネート(2 ZnCO3×3 Zn(OH)2)であると確認することができた。
【0055】
それ故、対照系R1は、Cuベースの材料のVCI防食に対してのみ適している。それに対して、一般的な実用金属における本発明による物質の配合物VCI(1)のVCI効果は、記載した例において、大きな利点が示されている。
【0056】
例2:
本発明による以下の物質配合物100gを、無水物質:
5.0重量% 2−アミノ−4−メチルピリミジン
10.0重量% N−ブチル尿素
15.0重量% 2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール
25.0重量% ベンゾトリアゾール
5.0重量% アンモニウムベンゾエート
40.0重量% ナトリウムベンゾエート
から調製し、撹拌し、700gの脱イオン水と200gのテクニカルグレードのエタノールからなる900gの水性エタノール溶液中で、45±5℃にわずかに加温することにより分散させた。
【0057】
この調製物を紙ストリップ(クラフト紙70g/cm)に、15g/mのウエット塗りを用いてコーティングした。本発明によるVCI紙であるVCI(2)の空気乾燥の直後に、この紙を、対照系(R2)である商業的に入手可能な防食紙と比較した、その防食効果について試験した。化学分析によれば、対照系(R2)は、活性物質であるエタノールアミンベンゾエート、ナトリウムベンゾエート/安息香酸、ベンゾトリアゾールおよび尿素を含み、総量は本発明による物質配合物の約2倍であった。
【0058】
例1と同様に、低合金鋼100Cr6、鋳鉄GGG25、17μmの亜鉛層を含む亜鉛の微粒子でメッキされた鋼、および電解銅(E−Cu)から作製される試験体をここでも使用し、試験手順も例1に記載したものと同様であった。唯一異なる点は、VCI粉末混合物の代わりに、個々のガラス瓶に今度はVCI紙を貼り付け、それぞれの場合に、底にφ8cmの円形ブランク、13×28cmの外側面、および上面にφ9cmの他の円形ブランクを設けた。試験体フレームと、脱イオン水を含むガラスビーカーを所定の位置に置き、ガラス瓶を閉じ、例1に記載した雰囲気負荷(climate loading)を行った。
【0059】
しかしながら、試験体の状態をここではガラス壁を通して観察することができないため、この目的のために、室温段階の間に毎5サイクル後にバッチを手短に開いた。視覚的に変化が見られない場合には、雰囲気負荷を記載した方法で続けた。
【0060】
試験結果:
本発明による物質混合物に基づいて作製したVCI紙であるVCI(2)と共に使用した種々の試験体は、全部で3つの平行バッチにおいて、40サイクル後も変化が見られなかった。
【0061】
商業的に入手可能な対照系R2を使用したバッチにおいては、GGG25から作製された試験体は、10サイクル後の検査時に錆の第1のスポットを示し、このスポットは、試験を続けるにつれて急速に大きくなった。鋼リングについては、端部における錆を15サイクル後に観察することができた。
【0062】
亜鉛メッキされた鋼から作製された試験体は、15サイクル後に端部に白錆の最初の徴候を示し、これは負荷を続けるにつれてかなり大きくなり、42サイクル後には試験体は完全に被覆された。42サイクル後、Cu−SFから作製された試験体は、わずかにダークグレーの変色皮膜により被覆され、これは拭い取ることができなかった。
【0063】
従って、対照系R2は、Cuベースの材料のVCI防食に対してのみ適している一方で、本発明による物質配合物に基づいて作製されたVCI紙であるVCI(2)は、厳しい湿性条件下での長期間の負荷の場合であっても、例に示す通り、一般的な実用金属において信頼できるVCI特性を示す。
【0064】
例3:
本発明による以下の物質配合物を、無水物質
0.3重量部の2−アミノ−4−メチルピリミジン
2.5重量部のN−ベンジル尿素
3.5重量部の2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール
1.7重量部の5−メチルベンゾトリアゾール
から調製し、52重量部のベンジルアルコール中、60±5℃の温度で撹拌し、これら腐食防止剤の油混和性の濃縮物を作製した。得られる透明な溶液に、最後に、940重量部の商業的に入手可能な鉱油を加え、平均粘度35±10mm/s(40℃)により特徴付けられる、本発明によるVCI油であるVCI(3)を得た。
【0065】
効果を試験するために、低合金鋼100Cr6、鋳鉄GGG25、17μmの亜鉛層を含む亜鉛の微粒子でメッキされた鋼、および電解銅から作製される試験体をここでも例1と同様に使用し、試験手順も例1に記載したものと同様であった。
【0066】
主な相違点は、PMMAから作製される試験体フレームが、ここでは1つおよび同じ種類の試験体を3個備えており、中央に置かれた試験シートは、その両側面が本発明によるVCI油で被覆されている一方、その各側面から約1cmの距離に配置された試験体は、油で被覆されない状態で使用したことである。
【0067】
各ガラス瓶(容量1L)は、前記3つの試験体に加え、ここでも10mlの脱イオン水を充填したガラスビーカーを含んでいた。それぞれのガラス瓶を閉じた後、例1で記載したような雰囲気負荷をここでも行った。
【0068】
それぞれのバッチは、各場合において、室温段階の間に毎5サイクル後に手短に開き、試験体の状態を視覚的に評価した。視覚的に変化が見られない場合には、雰囲気負荷を記載した方法で続けた。
【0069】
室温段階の間に毎5サイクル後にバッチを手短に開いた。視覚的に変化が見られない場合には、雰囲気負荷を記載した方法で続けた。
【0070】
本発明によるVCI油であるVCI(3)に対する対照として、およそ同じ平均粘度の商業的に入手可能なVCI油を、同様の方法で試験した。化学的分析によれば、この対照VCI油R3は、同様に鉱油をベースとして配合され、以下の活性物質を含んでいた:
11.5g/kg ジシクロヘキシルアミン
15.0g/kg ジエチルアミノエタノール
35.5g/kg 3,5−トリメチルヘキサン酸。
【0071】
これを使用した場合も、同じ方法で行った。それぞれの場合において、中央に配置された試験体は、この対照VCI油R3で被覆され、試験体フレーム内の同じであるが油で被覆されていない2つの試験体と共にガラス瓶に導入された。
【0072】
試験結果:
本発明によるVCI油であるVCI(3)で被覆された1つの試験体と、それと同じであるが油で被覆されていない、それから一定距離にある2つの試験体という配置で湿潤雰囲気サイクルに曝された種々の試験体は、2つの平行バッチのそれぞれにおいて、40サイクル後も変化が見られなかった。それ故、本発明によるVCI油であるVCI(3)は、前記金属物質が直接接触する場合と試験体が油で処理されない場合の両方において、良好な防食を提供した(VCI成分が気相を介して放出されるため)。
【0073】
商業的に入手可能な対照系R3を用いたバッチにおいて、低合金鋼100Cから作製された試験体は、油で被覆した場合と被覆しない場合の両方において、40サイクル後も腐食現象を示さなかった。対照的に、GGG25から作製された試験体は、油で被覆した場合には40サイクルの間に錆が見られないままであったが、試験体の油で被覆されていない表面は、特に中央に置かれた油で被覆された試験体から離れた方を向いている面において、錆の現象を示した。10サイクル後にそこに見られた錆のスポットは、試験が終了するときには数も大きさも増大していた。
【0074】
電解銅から作製され、対照油R3で被覆された試験体は、40サイクル後に視覚的に認知できる変化はなかったが、油で被覆されていない試験体は、相対的に一様にダークグレーの変色皮膜で覆われ、これはぬぐい取ることができなかった。
【0075】
17μmの亜鉛層を含む亜鉛の微粒子でメッキされた鋼から作製された試験体において湿気に曝される間に観察された変化は、最も明確であった。油で被覆されたシートが15サイクル後に端部領域で白錆を明らかに示し始めた一方、油で被覆されていない試験体は、10サイクル後にマットグレーの皮膜で既に覆われ、ライトグレー〜白の白錆の被膜が、湿気に曝され続けるにつれて形成され、実施例1と同様にここでもFTIR顕微鏡検査を用いて検出した。
【0076】
それ故、対照系R3は、鋼のVCI防食に対してのみ適している一方、本発明によるVCI油(3)は、厳しい湿性条件下での長期間の負荷の場合であっても、例に示す通り、全ての一般的な実用金属において信頼できるVCI特性を示す。
【0077】
例4:
本発明による以下の物質配合物を、無水物質
0.5重量部の2−アミノ−4−メトキシ−6−メチルピリミジン
3.1重量部のシクロヘキシル尿素
4.0重量部の2−アミノ−3−メチル−1,4−ブタンジオール
1.4重量部の5−メチルベンゾトリアゾール
31.0重量部の2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール
から調製し、激しく混合することにより、個体の均一な混合物を作成した。得られた混合物を、55±5℃において、960重量部の商業的に入手可能な鉱油にゆっくりと加えた。混合物を75℃まで簡潔に加熱し、室温まで冷却した後、本発明によるVCI油であるVCI(4)を、35±10平均粘度mm/s(40℃)により同様に特徴づけられる透明な液体として得た。
【0078】
効果は例3と同様に試験し、低合金鋼100Cr6、鋳鉄GGG25、17μmの亜鉛層を含む亜鉛の微粒子でメッキされた鋼、および電解銅から作製される試験体をここでも例3と同様に使用し、試験手順も例3に記載したものと同様であった。本発明によるVCI油であるVCI(4)に対する対照として、およそ同じ平均粘度の商業的に入手可能なVCI油を、同様の方法で試験した。この対照VCI油R4は同様に鉱油をベースとして配合されていたが、化学的分析によれば、以下の活性物質を含んでいた:
96.0g/kg モルフォリン
15.0g/kg ジエチルアミノエタノール
65.0g/kg オレイン酸
23.0g/kg ベンゾトリアゾール
これを使用した場合も、同じ方法で行った。それぞれの場合において、中央に配置された試験体は、この対照VCI油(R4)で被覆され、試験体フレーム内の同じであるが油で被覆されていない2つの試験体と共にガラス瓶に導入された。
【0079】
試験結果:
本発明によるVCI油であるVCI(4)で被覆された1つの試験体と、それと同じであるが油で被覆されていない、それから一定距離にある2つの試験体という配置で湿潤雰囲気サイクルに曝された種々の試験体は、2つの平行バッチのそれぞれにおいて、40サイクル後も変化が見られなかった。それ故、本発明によるVCI油であるVCI(4)は、本発明によるVCI油であるVCI(3)と同様、前記金属物質が直接接触する場合と試験体が油で処理されない場合の両方において、良好な防食を提供した(VCI成分が気相を介して放出されるため)。
【0080】
商業的に入手可能な対照系R4を用いたバッチにおいて、低合金鋼100Cから作製された試験体および鋳鉄GGG2から作製された試験体は、同様に、油で被覆した場合と被覆しない場合の両方において、40サイクル後も腐食現象を示さなかった。
【0081】
電解銅から作製され、対照油R4で被覆された試験体は、40サイクル後に視覚的に認知できる変化はなかったが、油で被覆されていない試験体は、相対的に均一にダークカラーの変色皮膜で覆われ、これはぬぐい取ることができなかった。
【0082】
17μmの亜鉛層を含む亜鉛の微粒子でメッキされた鋼から作製された試験体は、湿気に曝す間に、その見た目が著しく変化した。油で被覆されたシートと被覆されていないシートの両方で、10サイクル後には既に白錆の徴候が見られ、40サイクル後には、相対的に均一な白い被膜となった。
【0083】
それ故、対照系R4は、鉄ベースの材料のVCI防食に対してのみ適している一方、本発明によるVCI油(4)は、厳しい湿性条件下での長期間の負荷の場合であっても、例に示す通り、全ての一般的な実用金属において信頼できるVCI特性を示すことにより、明白に複数金属の保護を保証する。
【0084】
例5:
本発明による以下の物質配合物を、無水物質
10重量部の2−アミノ−4−メチルピリミジン
40重量部のN−ブチル尿素
50重量部の2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール
から調製した。
【0085】
これを用いて、以下の成分からなるコーティング溶液を調製した:
15重量部の前記物質配合物
65重量部の脱イオン水
20重量部のテクニカルグレードのエタノール。
【0086】
綿繊維で構成され、厚さ3mmの平らな不織材料(いわゆる吸収性ボール紙)を、50g/mのウェット塗布によりこのコーティング溶液で被覆した。
【0087】
乾燥後の本発明によるVCI不織綿であるVCI(5)の化学分析を以下に示す:
2−アミノ−4−メチルピリミジン:1.9g/kg=75μg/cm
N−ブチル尿素:7.5g/kg=300μg/cm
2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール:9.4g/kg=375μg/cm
本発明による物質配合物を用いてコーティングすることにより作製したこのVCI不織綿VCI(5)から、測定断片(30×30×3)mmを切った。材料の炭素鋼DC03、冷延(90×50×1)mm(Q-Panel, Q-Panel Lab Products, Cleveland, Ohio 44145 USA)、18μmの亜鉛層を含む亜鉛の微粒子でメッキされた鋼(ZnSt)、およびアルミニウム合金Al7055のシートであって、いずれの場合にもDC03シートと同じ大きさのシートを、化学的に不活性なプラスチックPMMA(ポリメチルメタクリレート)から作られたスペーサーフレーム内に、平行に互いに約1cm離して配置し、その両側にVCIのfoam皮膜の断片であるVCI(5)を置き、これらを配置したものを、予め製造された100μmの層の厚さのPER−LDから作られたバッグ内に各場合について別々に入れて、重ねた端の合わせ目(side seam)を溶接することによりしっかりと閉じた。プラスチック製のスペーサーフレームにおける種々の試験シートの位置決めは、2つの発泡体原反から放出されるVCI成分が、閉じられたバッグ内の気相を介してのみ意図されたその効果を発揮できることを保証する。
【0088】
対照系(R5)として、厚さ3mmのコットンセルロースで構成される商業的に入手可能なVCIチップ材料を使用し、化学分析によると、以下の活性物質を含んでいた:
10.7g/kg 亜硝酸ナトリウム
16.5g/kg エタノールアミン(2−アミノエタノール)
66.1g/kg カプリル酸(n−オクタン酸)
32.6g/kg 尿素
この活性物質の全量は、本発明による物質配合物VCI(5)におけるVCI成分の6倍以上である。
【0089】
このVCIチップ材料(R5)の断片を使用して、ここでもスペーサーフレームにおける前記金属の組み合わせを配置し、その両側に、同様に(30×30×3)mmのチップ材料(R5)の生地板(blank)を置き、それを100μmのPE−LDフィルムから作られたバッグに溶接することにより、各本発明によるVCI不織綿であるVCI(5)と同様のパッケージを作った。
【0090】
作製した全てのモデルパッケージを室温でさらに約5時間緩衝保存し、VCI成分で飽和した大気をVCIチップ断片によりパッケージ内に確実に設定した(堆積相)。それらを、タイプVC4033(VOTSCH Industrie-technik GmbH, D-72304 Balingen)の種々の環境制御試験キャビネットに移し、DIN EN 60068−2−30に従って、湿度/温度環境を変化させるように設定した。試験対象であるVCI(5)およびR5を用いたサンプルに対して、別々の環境制御試験キャビネットを各場合において使用し、暴露されるサンプルのいずれの相互作用をも防止する。
【0091】
適用される雰囲気負荷において、1の24時間サイクルは、以下の段階からなることが既知である:6 h 25℃,(RH) = 98%、3 h 加熱相(25〜55℃),(RH) = 95%、9 h 55℃,(RH) = 93%ならびに6 h 冷却相(55〜25℃),(RH) = 98%および3 h 25℃,(RH) = 98%。
【0092】
経験的に、この変化する湿度/温度負荷は、海外輸送の環境条件を加速様式で模倣することが示されている。
【0093】
フィルムパッケージ内の試験シートの表面は、各サイクル後(安定な25℃の相内)に、透明フィルム材料を介して調べた。各試験シート上に腐食の徴候が見られるとすぐ、完了したサイクル数が記録され、その後、モデルパッケージの全ての試験シートが影響を受けるまで、または各試験シートの腐食の程度がもはやフィルム壁を通して目視検査による評価ができなくなるまで雰囲気負荷を続けた。試験の終了後、パッケージ材料を取り除き、各試験シートの表面状態を最終的に評価した。
【表1】

【0094】
この例は、本発明による物質配合物の、一般的な実用金属の防食についての高性能なVCIチップ材料としての有意性を立証し、一方で、対照系R5は、ずっと高い活性物質濃度であるにもかかわらず、鋼についてのみ十分な保護効果を提供することができ、他方で、非鉄金属サンプルについては、100μmの一般的なPE−LDフィルムを含むパッケージからなるVCIを含まない対照系R5’と比較して、ほとんど差が見られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分を含む、蒸発または昇華可能な腐食防止物質配合物:
(1)少なくとも1種の多置換ピリミジンと、
(2)少なくとも1種のモノアルキル尿素と、
(3)少なくとも1種のC〜Cアミノアルキルジオール。
【請求項2】
請求項1に記載の腐食防止物質配合物であって、さらに
(4)ベンゼン環が置換されていないか、または置換されている少なくとも1種のベンゾトリアゾール
を含む腐食防止物質配合物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の腐食防止物質配合物であって、前記多置換ピリミジンは、
2,4−ジヒドロキシ−5−メチルピリミジン(チミン)、
2−アミノ−4−メチルピリミジン、
2−アミノ−4−メトキシ−6−メチルピリミジン、
2−アミノ−4,6−ジメチルピリミジン(シトシン)、または
これらの混合物
から選択される腐食防止物質配合物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の腐食防止物質配合物であって、前記モノアルキル尿素は、
N−ブチル尿素、
N−ヘキシル尿素、
N−ベンジル尿素、
N−シクロヘキシル尿素、または
これらの組み合わせ
から選択される腐食防止物質配合物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の腐食防止物質配合物であって、前記C〜Cアミノアルキルジオールは、
2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、
2−アミノ−3−メチル−1,4−ブタンジオール、
2−アミノ−2−メチル−1,4−ブタンジオール、または
これらの組み合わせ
から選択される腐食防止物質配合物。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1項に記載の腐食防止物質配合物であって、前記ベンゾトリアゾールは、5−メチルベンゾトリアゾールのようなベンゼン環がメチル化されたベンゾトリアゾールまたはメチルベンゾトリアゾールの混合物から選択される腐食防止物質配合物。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれか1項に記載の腐食防止物質配合物であって、0.1〜5重量%の前記成分(1)、0.2〜12重量%の前記成分(2)、1〜15重量%の前記成分(3)および0.4〜10重量%の前記成分(4)を含む腐食防止物質配合物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の腐食防止物質配合物であって、前記成分(1)〜(3)または(1)〜(4)は、混合された形態で存在するか、水中に分散した形態で存在するか、または鉱油および合成油と任意の割合で混和可能な可溶化剤中に予め混合された形態で存在する腐食防止物質配合物。
【請求項9】
請求項8に記載の腐食防止物質配合物であって、鉱油および合成油と任意の割合で混和可能なフェニルアルキルアルコールおよび/またはアルキルフェノール中に溶解形態または分散形態で存在する腐食防止物質配合物。
【請求項10】
請求項9に記載の腐食防止物質配合物であって、前記フェニルアルキルアルコールは、ベンジルアルコール、2−フェニルエタノール、メチルフェニルカルビノール、3−フェニルプロパノールおよびこれらの混合物からなる群より選択され、前記アルキルフェノールは、ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メトキシフェノール、2,6−ジ−オクタデシル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノールおよびこれらの混合物からなる群より選択される腐食防止物質配合物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の腐食防止物質配合物であって、全ての成分が、70℃以下の温度、98%以下の相対湿度(RH)において、気相腐食保護に十分な量と速度で昇華する腐食防止物質配合物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の腐食防止物質配合物であって、本発明による成分(1)〜(3)または(1)〜(4)の他に、気相腐食防止剤として既知の物質も、単独または混合物としてさらに含有する腐食防止物質配合物。
【請求項13】
紙、ボール紙、織布、不織布または発泡体のような2次元延伸のキャリア材料に固定するための、請求項1〜12のいずれか1項に記載の腐食防止物質配合物を含有する水性有機性コーティング溶液。
【請求項14】
鉱油または合成油および前記油相に対して2〜10重量%の可溶化剤中の請求項1〜12のいずれか1項に記載の腐食防止物質配合物を含み、全ての腐食防止剤成分が、70℃以下の温度、98質量%以下の相対湿度(RH)において、気相腐食保護に十分な量と速度でVCI油から蒸発または昇華するVCI防食油。
【請求項15】
蒸発または昇華可能な腐食防止物質配合物の製造方法であって、(1)少なくとも1種の多置換ピリミジンと、(2)少なくとも1種のモノアルキル尿素と、(3)少なくとも1種のC〜Cアミノアルキルジオールと、任意に(4)ベンゼン環が置換されていないか、または置換されている少なくとも1種のベンゾトリアゾールを含む腐食防止成分を相互に混合し、水または鉱油および合成油と任意の割合で混和可能な可溶化剤中に溶解または分散させることを含む、腐食防止物質配合物の製造方法。
【請求項16】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の腐食防止物質配合物の使用であって、細かい粉末の形態での、金属材料のパッケージ、貯蔵または輸送における気相腐食防止剤(VPCI、VCI)としての使用。
【請求項17】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の腐食防止物質配合物の使用であって、コーティング物質およびコーティング溶液および/またはコロイド性複合材料中に組み込むための使用。
【請求項18】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の腐食防止物質配合物の使用であって、気相腐食防止剤(VPCI、VCI)が放出されるVCI防食油を製造するための使用。
【請求項19】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の腐食防止物質配合物またはそれを含むVCI防食油の使用であって、鉄、クロム、ニッケル、スズ、亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウムおよびこれらの合金のような一般的な実用金属を腐食から保護するための使用。

【公開番号】特開2011−179115(P2011−179115A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−13729(P2011−13729)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(599105986)エクスコール・コロジオンスフォルシュング・ゲーエムベーハー (3)
【氏名又は名称原語表記】Excor Korrosionsforschung GmbH
【Fターム(参考)】