気管挿管装置
【課題】施術者の熟練度合いが低くても、チューブを狙いとする位置に確実、かつ、安全に挿管できる。
【解決手段】気管へ挿管されるチューブ10と、チューブ10を気管へ案内する挿管支援装置30とを備えた気管挿管装置1において、挿管支援装置30は、口腔から喉頭部へ挿入されてチューブ10の案内となる案内部33と、案内部33の先端側に設けられた支援装置側カメラ34とを有し、チューブ10は、チューブ10の先端側に設けられたチューブ側カメラ14を有し、支援装置側カメラ34及びチューブ側カメラ14により撮影された画像を映すモニター部37を備えている。
【解決手段】気管へ挿管されるチューブ10と、チューブ10を気管へ案内する挿管支援装置30とを備えた気管挿管装置1において、挿管支援装置30は、口腔から喉頭部へ挿入されてチューブ10の案内となる案内部33と、案内部33の先端側に設けられた支援装置側カメラ34とを有し、チューブ10は、チューブ10の先端側に設けられたチューブ側カメラ14を有し、支援装置側カメラ34及びチューブ側カメラ14により撮影された画像を映すモニター部37を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の気道を確保する気管挿管処置時に用いられる気管挿管装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
気管挿管処置時にはマッキントッシュ型ブレードと呼ばれる金属製の器具を用いてチューブの挿入及び留置を行う場合が多い。
【0003】
気管挿管処置は、麻酔を導入する手術時以外にも救急領域においても行われている。救急領域における気管挿管処置は非常に難易度の高い手技であり、日本版救急蘇生ガイドラインでは、マッキントッシュ型ブレードを用いた手技は熟練者が行うことを推奨している。
【0004】
上記した気管挿管処置時には合併症が想定される。想定される合併症のうち、絶対に避けなければならないものとして、施術者がチューブを食道へ気付かずに挿入してしまう、いわゆる「気付かれない食道挿管」が挙げられる。
【0005】
そこで、例えば喉頭を撮影するカメラと、カメラで撮影された映像を映し出すモニターとを備えたビデオ喉頭鏡を用いて気管挿管の補助を行うことが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このビデオ喉頭鏡を用いれば、モニターに映し出された声門を見ながらチューブを進めていけばよいので、従来のマッキントッシュ型ブレードを用いる場合に比べて、熟練度が比較的低い者であっても気管挿管処置を安全に行うことが可能になると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−117116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、救急領域のように一刻を争う現場では、合併症を伴わない確実な気管挿管処置を素早く行うことが望まれている。
【0008】
また、気管挿管処置は、ダブルルーメンチューブを用いて例えば左気管支に挿管する場合があるが、この場合は、誤って右気管支に挿管しないようにしなければならない。
【0009】
さらに、シングルルーメンチューブを気管に挿管する場合もあり、特に、小児の場合、気管が短いことから、チューブの先端部を留置しておく適正範囲は狭く、チューブの先端部を気管支内の適正位置に置くこと自体が困難である。
【0010】
ここで、上記特許文献1のビデオ喉頭鏡を用いて挿管処置を行う場合を想定すると、カメラで喉頭内を撮影できるとはいえ、あくまでも喉頭鏡であるので、声門よりも奥に挿入することはできず、撮影できるのは声門までであり、声門よりも奥の気管を撮影することはできない。
【0011】
このため、声門よりも奥ではチューブの先端部がどこにあるか分からず、上記したダブルルーメンチューブ及びシングルルーメンチューブのいずれの場合も、狙い通りに確実、かつ、安全に気管挿管処置を終わらせるには不十分であった。
【0012】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、施術者の熟練度合いが低くても、チューブを狙いとする位置に確実、かつ、安全に挿管できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明では、挿管支援装置及びチューブの両方に撮像部を設け、これら撮像部で撮影された画像をモニター部に映すことができるようにした。
【0014】
第1の発明は、気管へ挿管されるチューブと、上記チューブを気管へ案内する挿管支援装置とを備えた気管挿管装置において、上記挿管支援装置は、口腔から喉頭部へ挿入されて上記チューブの案内となる案内部と、該案内部の先端側に設けられた支援装置側撮像部とを有し、上記チューブは、該チューブの先端側に設けられたチューブ側撮像部を有し、上記支援装置側撮像部及び上記チューブ側撮像部により撮影された画像を映すモニター部を備えていることを特徴とするものである。
【0015】
この構成によれば、挿管支援装置の案内部の先端側に設けられた支援装置側撮像部の画像をモニター部に映し出すことが可能なので、施術者は、喉頭内、例えば声門を見ながらチューブを声門へ確実に進めていくことが可能になる。
【0016】
そして、チューブが声門を通過して気管内に挿入されると、チューブの先端側に設けられたチューブ側撮像部の画像をモニター部に映し出すことが可能となる。これにより、声門よりも奥においてチューブの先端部の位置を把握することができる。従って、例えば左気管支に挿管しなければならない場合に誤って右気管支に挿管してしまうのが回避され、また、例えば小児等のように気管が短い場合でもチューブの先端部を適正位置に置くことが可能になる。
【0017】
第2の発明は、第1の発明において、上記支援装置側撮像部、上記チューブ側撮像部及び上記モニター部が接続された制御部を備え、上記制御部は、上記支援装置側撮像部により撮影された支援装置側画像と、チューブ側撮像部により撮影されたチューブ側画像とを、施術者の手によらず、所定のタイミングで自動的に選択して上記モニター部に映すことができるように構成されていることを特徴とするものである。
【0018】
この構成によれば、支援装置側画像とチューブ側画像とが自動的に選択されてモニター部に映し出されるので、施術者による一方の画像を選択する行為が不要になる。
【0019】
第3の発明は、第2の発明において、上記制御部は、上記チューブ内の二酸化炭素濃度が所定値以上上昇したか否か判定し、所定値以上上昇したと判定する前は、支援装置側画像を上記モニター部に映し、所定値以上上昇したと判定した後は、チューブ側画像を上記モニター部に映すように構成されていることを特徴とするものである。
【0020】
すなわち、チューブの先端部が声門を通過して気管内に挿管されると、肺からの空気がチューブ内に入り込んで二酸化炭素濃度が上昇する。本発明によれば、チューブ内の二酸化炭素濃度が所定値以上上昇する前、即ち、チューブの先端部が声門を通過していないときには、支援装置側画像をモニター部に映し出すことで、チューブの先端部を声門へ確実に進めていくことが可能になる。一方、チューブ内の二酸化炭素濃度が所定値以上上昇した後、即ち、チューブの先端部が声門を通過したときには、チューブ側画像をモニター部に映し出すことで声門よりも奥においてチューブの先端部の位置を把握することができる。
【0021】
第4の発明は、第2の発明において、上記制御部は、上記チューブの先端側に設けられた発光体から発せられる光の強度を声門よりも口腔側で検出して光の強度が所定値以上低下したか否か判定し、所定値以上低下したと判定する前は、支援装置側画像を上記モニター部に映し、所定値以上低下したと判定した後は、チューブ側画像を上記モニター部に映すように構成されていることを特徴とするものである。
【0022】
この構成によれば、チューブ先端側の発光体が声門を通過して気管内に挿入されると、声門の存在によって発光体の光が声門よりも口腔側へ届きにくくなる。本発明によれば、声門よりも口腔側で検出されるチューブ先端側の発光体の光の強度が所定以下となる前、即ち、チューブの先端部が声門を通過していないときには、支援装置側画像をモニター部に映し出すことで、チューブの先端部を声門へ確実に進めていくことが可能になる。一方、声門よりも口腔側で検出されるチューブ先端側の発光体の光の強度が所定以下となった後、即ち、チューブの先端部が声門を通過したときには、チューブ側画像をモニター部に映し出すことで声門よりも奥においてチューブの先端部の位置を把握することができる。
【0023】
第5の発明は、第4の発明において、上記チューブの先端側には、上記チューブ側撮像部による撮像範囲内を照明する照明部が設けられ、上記制御部は、上記照明部から発せられる光の強度が所定値以上低下したか否か判定するように構成されていることを特徴とするものである。
【0024】
この構成によれば、チューブ側撮像部用の照明部を発光体として利用するようにしたので、発光体を別途設けることなく、チューブが声門を通過した否かを検出できる。
【0025】
第6の発明は、第2の発明において、上記チューブには、先端部よりも基端寄りの部位に被検出部が設けられ、上記挿管支援装置の案内部には、上記被検出部を検出する検出手段が設けられ、上記検出手段は、上記チューブの先端部が声門を通過するまで該チューブが移動したときに上記被検出部を検出するように配置され、上記制御部は、上記検出手段が上記被検出部を検出する前は、支援装置側画像を上記モニター部に映し、上記検出手段が上記被検出部を検出した後は、チューブ側画像を上記モニター部に映すように構成されていることを特徴とするものである。
【0026】
この構成によれば、チューブの先端部が声門を通過するまでは被検出部が検出手段により検出されないので、支援装置側画像をモニター部に映し出すことになり、チューブの先端部を声門へ確実に進めていくことが可能になる。一方、チューブの先端部が声門を通過すると被検出部が検出手段により検出されるので、チューブ側画像をモニター部に映し出すことになり、声門よりも奥においてチューブの先端部の位置を把握することができる。
【発明の効果】
【0027】
第1の発明によれば、挿管支援装置に設けられた支援装置側撮像部と、チューブに設けられたチューブ側撮像部との画像をモニター部に映し出すようにしたので、施術者はチューブを声門へ確実に進めていくことができるとともに、声門よりも奥の気管や気管支内でチューブの位置を確認できる。これにより、施術者の熟練度合いが低くても、チューブを狙いとする位置に確実、かつ、安全に挿管できる。
【0028】
第2の発明によれば、支援装置側画像とチューブ側画像とを自動的に選択してモニター部に映すようにしたので、施術者の負担を軽減しながら、両画像の確認ができる。
【0029】
第3の発明によれば、チューブ内の二酸化炭素濃度が所定値以上上昇したと判定する前は、支援装置側画像をモニター部に映し、所定値以上上昇したと判定した後は、チューブ側画像をモニター部に映すようにしている。これにより、チューブの先端部の位置に応じて必要な画像をモニター部に映し出すことができるので、施術者の負担軽減と安全な挿管処置とを両立できる。
【0030】
第4の発明によれば、声門よりも口腔側で検出されるチューブ先端側の発光体の光の強度が所定以下となる前には、支援装置側画像をモニター部に映し出し、所定以下となった後には、チューブ側画像をモニター部に映し出すことができるので、施術者の負担軽減と安全な挿管処置とを両立できる。
【0031】
第5の発明によれば、チューブ側撮像部による撮像範囲内を照明する照明部を利用してチューブが声門を通過した否かを検出できる。これにより、発光体を別途設けずに済むので、低コスト化を図ることができる。
【0032】
第6の発明によれば、挿管支援装置に設けた検出手段とチューブが有する被検出部とを用いてチューブが声門を通過したか否かを確実に検出することができるので、施術者の負担軽減と安全な挿管処置とを両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施形態1にかかる気管挿管装置の斜視図である。
【図2】チューブを挿管支援装置に保持する前の状態の図1相当図である。
【図3】挿管支援装置を患者への挿入側から見た斜視図である。
【図4】チューブを患者への挿入側から見た斜視図である。
【図5】チューブの先端側の部分断面図である。
【図6】気管挿管装置のブロック図である。
【図7】支援装置側カメラの画像を表示したモニター部を示す図である。
【図8】第1チューブ側カメラの画像を表示したモニター部を示す図である。
【図9】支援装置側カメラ及び第1チューブ側カメラの画像を表示したモニター部を示すである。
【図10】チューブを気管支分岐部まで進めた場合の図8相当図である。
【図11】チューブを左気管支まで進めた場合の図8相当図である。
【図12】チューブを左気管支まで進めた場合の第2チューブ側カメラの画像を表示したモニター部を示す図である。
【図13】第1チューブ側カメラ及び第2チューブ側カメラの画像を表示したモニター部を示す図である。
【図14】気管挿管の手順を示すフローチャートである。
【図15】挿管支援装置の案内部を喉頭部に挿入した状態を説明する図である。
【図16】チューブを声門付近まで進めた状態を説明する図である。
【図17】チューブを声門よりも奥へ進めた状態を説明する図である。
【図18】声門よりも奥へ進めたチューブの位置を説明する図である。
【図19】左気管支へ進めたチューブの位置を説明する図である。
【図20】実施形態2にかかる図1相当図である。
【図21】実施形態2にかかる図4相当図である。
【図22】実施形態2にかかる図3相当図である。
【図23】実施形態3にかかる図3相当図である。
【図24】実施形態4にかかる図3相当図である。
【図25】実施形態4にかかるチューブの拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0035】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1にかかる気管挿管装置1を示すものである。気管挿管装置1は、例えば救命救急領域において意識を失った患者の気道を確保する気管挿管処置を行う際等に使用される。
【0036】
気管挿管装置1は、図2や図3にも示すように、気管へ挿管されるチューブ10と、チューブ10を気管へ案内する挿管支援装置30とを備えている。
【0037】
図4に示すように、チューブ10は、気管支換気用の第1及び第2ルーメン11,12を有するダブルルーメンチューブからなるチューブ本体13と、チューブ本体13の先端部に設けられた第1チューブ側カメラ14及び第1照明用LED15(図5参照)と、チューブ本体13の第1チューブ側カメラ14よりも基端側に設けられた第2チューブ側カメラ16及び第2照明用LED17とを備えている。
【0038】
チューブ本体13の先端部には、気管支シール用カフ18が設けられている。また、チューブ本体13の先端側において気管支シール用カフ18よりもチューブ本体13の基端寄りには、気管シール用カフ19が設けられている。
【0039】
チューブ本体13の基端側には、気管支シール用カフ18に繋がる気管支シール用パイロットバルーン20と、気管シール用カフ19に繋がる気管シール用パイロットバルーン21とが設けられている。また、チューブ本体13の第1及び第2ルーメン11,12の基端部には、人工呼吸器が接続される。
【0040】
また、チューブ本体13には、第1、第2チューブ側カメラ14、16及び第1、第2照明用LED15、17に電力を供給するとともに、チューブ側カメラ14、16から出力される画像信号が流れる配線22が設けられている。配線22は、後述するが、挿管支援装置30の制御装置(制御部)38に接続されるようになっている。
【0041】
図5に示すように、第1チューブ側カメラ(チューブ側撮像部)14及び第1照明用LED15は、一体化されており、チューブ本体13の先端部の内面に固定されて該チューブ本体13の先端部から該先端部の中心線に沿って外方に向いている。従って、第1チューブ側カメラ14の撮影範囲は、チューブ本体13の先端開口部に対向し、かつ、先端開口部よりも広い範囲である。第1照明用LED15は、第1チューブ側カメラ14の撮影範囲に光を照射するためのものである。
【0042】
第2チューブ側カメラ16及び第2照明用LED17も一体化されている。第2チューブ側カメラ16及び第2照明用LED17は、チューブ本体13における気管支シールカフ18と気管シール用カフ19との間において外面に固定されている。第2チューブ側カメラ16及び第2照明用LED17の向きは、チューブ本体13外に向き、かつ、チューブ本体13の中心線に対して斜め先端側である。従って、第2チューブ側カメラ16の撮影範囲は、チューブ本体13の斜め側方である。第2照明用LED17は、第2チューブ側カメラ16の撮影範囲に光を照射するためのものである。
【0043】
また、図1に示すように、チューブ10の第1ルーメン11の基端部には、二酸化炭素センサAが取り付けられる。二酸化炭素センサAは、内部を流通する呼気及び吸気に所定波長のレーザー光を透過させ、受光部での波長の減衰度合いを検出して二酸化炭素の濃度をリアルタイムで測定することができる周知のものである。二酸化炭素センサAからは接続線A1が延びている。この接続線A1は、後述するが、挿管支援装置30の制御装置38に接続されるようになっている。挿管支援装置30の電源がONにされると、挿管支援装置30から二酸化炭素センサAに電力が供給されて二酸化炭素センサAが作動し、二酸化炭素濃度に関する信号が制御装置38に送信される。
【0044】
挿管支援装置30は、装置本体31と、口腔から喉頭部へ挿入されてチューブ10の案内となる案内部33と、支援装置側カメラ(支援装置側撮像部)34(図3に示す)と、支援装置側照明用LED35とを備えている。
【0045】
装置本体31は、モニター部37と、制御装置38(図6に示す)と、制御装置38を収容するケース39とを備えている。モニター部37は、ケース39の外面に対し、回動軸(図示せず)を介して取り付けられており、施術者の要求に応じて角度調整が可能となっている。モニター部37は周知のカラー液晶パネルを有している。尚、モニター部37の角度調整機構は必須なものではなく、省略してもよい。
【0046】
この実施形態では、モニター部37を縦長形状としているが、これに限らず、例えば、横長形状であってもよい。
【0047】
また、モニター部37はケース39に対して着脱可能にしてもよい。この場合、施術者が見やすい場所で挿管処置の邪魔にならない場所にモニター部37を置くことが可能になる。ケース39内には、制御装置38の他に、電源としての電池41が収容されている。
【0048】
モニター部37をケース39に対して着脱可能にする場合、モニター部37に電源を内蔵してモニター部37と制御装置38とは無線通信とするのが好ましい。
【0049】
ケース39には、案内部33が着脱可能に取り付けられている。案内部33は、例えば上記特許文献1に開示されている挿管支援具と同様に構成することができる。すなわち、案内部33は、側面視で、ケース39側(基端側)から先端側へ向かって中途部が湾曲しながら延びており、全体として厚肉板状に形成されている。図2に示すように、案内部33の幅方向側部には、上記チューブ10を挿入するためのチューブ挿入溝33aが形成されている。チューブ挿入溝33aは、案内部33の一側面に開放するとともに案内部33の先端面にも開放されている。チューブ挿入溝33aに挿入されたチューブ10は案内部33の延びる方向に沿って相対移動可能となっている。
【0050】
チューブ挿入溝33aの基端は案内部33の長手方向中央部近傍に位置している。さらに、案内部33の一側面には、チューブ挿入溝33aよりも基端側に、チューブホルダ33b,33bが該側面から突出するように設けられている。従って、図1に示すように、チューブ10は、その先端部から気管支シール用カフ18及び気管シール用カフ19の形成部分に亘ってチューブ挿入溝33aに挿入されて保持される。
【0051】
図3に示すように、支援装置側カメラ34及び支援装置側照明用LED35は一体化されている。支援装置側カメラ34及び支援装置側照明用LED35は、案内部33の先端部においてチューブ挿入溝33aの開放部分の側方に位置するように設けられている。支援装置側カメラ34及び支援装置側照明用LED35の向きは、案内部33の先端側の延びる方向と略一致している。従って、支援装置側カメラ34の撮影範囲は、案内部33の先端部に対向し、かつ、該先端部の投影面積よりも広い範囲である。支援装置側照明用LED35は、支援装置側カメラ34の撮影範囲に光を照射するためのものである。
【0052】
制御装置38は、周知の中央演算処理装置や、メモリ等を有しており、第1チューブ側カメラ14で撮像したチューブ側画像と、支援装置側カメラ34で撮像した支援装置側画像とを、施術者の手によらず、自動的に選択してモニター部37に表示させることができるように構成されている。
【0053】
図6に示すように、制御装置38には、モニター部37、第1チューブ側カメラ14及び支援装置側カメラ34の他、二酸化炭素センサA、第2チューブ側カメラ16、第1、第2照明用LED15、17、支援装置側照明用LED35、ON/OFFスイッチ45及びカメラ切替スイッチ46が接続されている。
【0054】
制御装置38は、ON/OFFスイッチ45の操作によってONとされると、モニター部37、第1チューブ側カメラ14、支援装置側カメラ34、二酸化炭素センサA、第2チューブ側カメラ16、第1、第2照明用LED15、17、支援装置側照明用LED35、二酸化炭素センサAに電力を供給する。
【0055】
制御装置38は、二酸化炭素センサAからの出力信号を検出して、電源がONにされた直後に比べて二酸化炭素濃度が所定値以上上昇したか否かを検出し、所定値以上上昇したと判定する前は、支援装置側画像をモニター部37に全画面表示させ(図7)、所定値以上上昇したと判定した後は、チューブ側画像を上記モニター部37に全画面表示させる(図8)ように構成されている。
【0056】
すなわち、チューブ10が声門を通過して気管へ挿入されると、チューブ10内に肺からの空気が流入することになるので、チューブ10内の空気の二酸化炭素濃度が急に上昇することになる。このときの二酸化炭素濃度の上昇度合いを上記所定値として制御装置38に予め記憶させておく。この所定値は、余裕を持たせる意味で、実際の値よりも若干低めに設定してもよい。そして、この記憶されている値と二酸化炭素センサAからの出力信号とを比較して上記判定を行う。
【0057】
尚、支援装置側画像やチューブ側画像は、全画面表示させることなく、図9に示すようにモニター部37の一部にのみ表示させるようにしてもよい。
【0058】
また、図7等に示すように、制御装置38は、モニター部37に二酸化炭素センサAの出力信号から得られた二酸化炭素濃度を常時表示するようにしている。モニター部37の下部に、二酸化炭素濃度表示領域37aを設け、この領域37aに、具体的な数値と、バーグラフ形式との2種類の表示形態を用いて二酸化炭素濃度を表示するようにしている。バーグラフの表示形式では、バーの本数が多いほど二酸化炭素濃度が濃いことを表すようにしている。
【0059】
図7に示すように、施術者の選択によってターゲットマークMの表示及び非表示を切り替えることができるようになっている。ターゲットマークMは、そのマークMを声門に合わせると、チューブ10の先端部の延長線が声門と一致したことを示すためのものである。
【0060】
制御装置38は、モニター部37にどのカメラで撮像された画像であるかを表示するように構成されている。第1チューブ側カメラ14で撮像された画像をモニター部37に表示している場合には、モニター部37の上部に、「第1チューブ側カメラ」(図8参照)と表示し、第2チューブ側カメラ16で撮像された画像を表示している場合には、「第2チューブ側カメラ」(図12参照)と表示し、支援装置側カメラ34で撮像された画像を表示している場合には、「支援装置側カメラ」(図7参照)と表示する。
【0061】
図6に示すカメラ切替スイッチ46は、自動モードとマニュアルモードとの切替を行うためのスイッチである。自動モードとは、手技開始時には図7に示す支援装置側画像をモニター部37に表示させ、後に、二酸化炭素濃度が所定値以上上昇した場合に図8に示すチューブ側画像に自動的に切り替えて表示させるモードである。画像の切替の代わりに、図9に示すように、支援装置側画像及びチューブ側画像の両方を表示させるようにしてもよい。
【0062】
一方、マニュアルモードとは、施術者や助手の者が、当該スイッチ操作により、第1,第2チューブ側カメラ14,16及び支援装置側カメラ34のうちから任意のカメラを選択して、選択したカメラで撮像された画像をモニター部37に表示させるモードである。
【0063】
次に、上記のように構成された気管挿管装置1を使用する場合について図14に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0064】
まず、フローチャートのスタート後のステップS1では準備を行う。すなわち、図1及び図3に示すように、挿管支援装置30のチューブ挿入溝33aにチューブ10を挿入するとともに、チューブホルダ33b,33bにチューブ10を保持させる。このとき、チューブ10の先端部は挿管支援装置30の案内部33の先端部よりも若干基端よりに位置付けておき、第1チューブ側カメラ14と支援装置側カメラ34とは略同じ方向を向いている。また、ON/OFFスイッチをONにすると、モニター部37には、支援装置側カメラ34で撮像された画像が表示される。
【0065】
準備が終わるとステップS2に進み、挿管支援装置30の案内部33の先端側を口腔から喉頭部へ挿入していく。
【0066】
その後、ステップS3に進み、喉頭展開的手技に移り、案内部33を喉頭部へ深く挿入していく(図15参照)。
【0067】
すると、支援装置側カメラ34が案内部33の先端部に設けられているので、喉頭内が撮像されてモニター部37に映し出される(図7参照)。
【0068】
ステップS4では、声門付近がモニター部37に映し出されたか否かを、図7に示す画像に基づいて判断し、映し出されなければ、ステップS3に戻り、案内部33を動かして喉頭展開的手技を継続する。
【0069】
声門付近が映し出されれば、施術者はその声門とターゲットマークMとが合うように挿管支援装置30を動かしてステップS5に進む。
【0070】
ターゲットマークMが声門と合ったら、ステップS5に進み、モニター部37を見ながらチューブ10を挿入方向へ移動させる(図16参照)。チューブ10を挿入方向へ移動させていくと、図7に示すようにチューブ10の先端部が支援装置側カメラ34の撮像範囲に入ってチューブ10の先端部がモニター部37に映し出される。このモニター部37を見ながらチューブ10を進めていくことで、チューブ10の先端部を声門に確実に挿入することができる。
【0071】
ステップS5に続くステップS6ではチューブ10の先端部が声門を通過した否かを、二酸化炭素センサAの検出結果に基づいて判定する。これは、制御装置38が行うステップである。
【0072】
すなわち、図17及び図18に示すように、チューブ10の先端部が声門を通過すると肺からの空気がチューブ10内に流入する。すると、チューブ10内の空気の二酸化炭素濃度が、チューブ10を声門へ挿入する前に比べて明確に上昇する。二酸化炭素センサAは、チューブ10内の空気の二酸化炭素濃度をリアルタイムで検出しているので、制御装置38は、二酸化炭素センサAの検出結果に基づいてチューブ10内の空気の二酸化炭素濃度が所定値以上上昇したと判定し、ステップS6ではYESとなる。
【0073】
一方、ステップS5においてチューブ10の先端部が声門を通過していなければ、チューブ10内の空気の二酸化炭素濃度は大きく変化しないので、チューブ10内の空気の二酸化炭素濃度が所定値以上上昇していないと判定し、ステップS6ではNOとなり、ステップS5に戻る。
【0074】
ステップS6においてYESと判定されて進んだステップS7では、制御装置38が、モニター部37に表示する画像を支援装置側画像からチューブ側画像に切り替える処理を行う。これにより、モニター部37に表示される画像が施術者の手によらず自動的に切り替えられることになる。
【0075】
尚、このときカメラ切替スイッチ46の操作により、図9に示すように、支援装置側画像及びチューブ側画像の両方をモニター部37に表示してもよい。また、モニター部37に表示する画像の切替は、施術者がカメラ切替スイッチ46を操作して行うようにしてもよい。
【0076】
図8に示すように、モニター部37にチューブ側画像が表示されることで、施術者は声門よりも奥の気管内を見ることができるとともに、声門よりも深いところにおいてチューブ10の先端部の位置を把握することができる。
【0077】
そして、ステップS8に進み、施術者は図8に示すモニター部37に映し出されるチューブ側画像を確認しながら、チューブ10を左右気管支分岐部まで進めていく。図10に示すように、分岐部はモニター部37に映し出されるので、チューブ10を狙いとする気管支(左または右気管支)に向けて確実に進めていくことができる。
【0078】
このとき、施術者はカメラ切替スイッチ46を操作して第2チューブ側カメラ16で撮像された画像をモニター部37に表示させて(図12参照)、分岐部に到達したか否か判定するようにしてもよい(ステップS9)。第2チューブ側カメラ16の気管支シール用カフ18と気管シール用カフ19との間でチューブ10の外側へ向いているので、図18に示すように分岐部に達するまでは気管内壁を撮像することになる。そして、図19に示すようにチューブ10の先端部が分岐部を経て左気管支へ挿入されて第2チューブ側カメラ16が分岐部に差し掛かると、気管内壁が撮像されなくなり、右気管支内壁が撮像される(図12参照)。このときには、第1チューブ側カメラ14の画像は、図11に示すように、左気管支内壁を撮像したものとなる。これを施術者が確認することで、チューブ10の先端部が左気管支に確実に挿入されたことが分かる。
【0079】
尚、図13に示すように、第1チューブ側カメラ14と第2チューブ側カメラ16の両方の画像をモニター部37に表示させてもよい。
【0080】
また、ステップS9は省略してもよい。
【0081】
その後、ステップS10に進んで気管支シール用パイロットバルーン20及び気管シール用パイロットバルーン21を操作して気管支シール用カフ18及び気管シール用カフ19を膨らませ、チューブ10を挿管状態で気管及び気管支に固定する。
【0082】
以上説明したように、実施形態1にかかる気管挿管装置1によれば、チューブ10を声門へ挿入するまでの間に、挿管支援装置30に設けられた支援装置側カメラ34の画像をモニター部37に映し出すことが可能なので、施術者は、図7に示すように喉頭内、例えば声門を見ながらチューブ10を声門へ確実に進めていくことができる。
【0083】
そして、チューブ10が声門を通過して気管内に挿入されると、図8や図9に示すようにチューブ10の先端側に設けられた第1チューブ側カメラ14の画像をモニター部37に映し出すことが可能となる。これにより、声門よりも奥においてチューブ10の先端部の位置を把握することができる。従って、例えば左気管支に挿管しなければならない場合に誤って右気管支に挿管してしまうのが回避される。
【0084】
したがって、実施形態1にかかる気管挿管装置1を使用することで、施術者の熟練度合いが低くても、チューブ10を狙いとする位置に確実、かつ、安全に挿管できる。
【0085】
また、二酸化炭素濃度がモニター部37に常時表示されているので、施術者は、施術中、二酸化炭素濃度の変化を具体的に把握することができる。このことによっても、チューブ10が声門を通過したか否かを正確に判断できる。また、挿管後も二酸化炭素濃度の変化を把握できるので、適正に人工呼吸が行われているか否かを判断できる。
【0086】
また、チューブ10が声門を通過したか否かをチューブ10内の二酸化炭素濃度を検出して判定することができる。そして、チューブ10内の二酸化炭素濃度が所定値以上上昇したと判定する前、即ちチューブ10が声門を通過する前は、支援装置側画像をモニター部37に映し、所定値以上上昇したと判定した後、即ち、チューブ10が声門を通過した後は、チューブ側画像をモニター部37に映すようにしている。これにより、チューブ10の先端部の位置に応じて施術者が必要な画像をモニター部37に映し出すことができるので、施術者の負担軽減と安全な挿管処置とを両立できる。
【0087】
また、支援装置側画像とチューブ側画像とを自動的に選択してモニター部37に映すようにしたので、施術者の負担を軽減しながら、両画像の確認ができる。
【0088】
上記実施形態では、支援装置側カメラ34の画像及び第1、第2チューブ側カメラ14,16の画像をモニター部37に全画面表示するようにしているが、これに限らず、例えば、画面を2分割して支援装置側カメラ34の画像と第1チューブ側カメラ14の画像とを表示するようにしてもよいし、第1チューブ側カメラ14の画像と第2チューブ側カメラ16の画像とを表示するようにしてもよい。
【0089】
支援装置側カメラ34の画像と第1チューブ側カメラ14の画像とを同時に表示させるタイミングとしては、チューブ10の先端部が声門を通過したタイミングとするのが好ましいが、例えばカメラ切替スイッチ46の操作によって施術者が2画面表示を選択できるようにしてもよい。
【0090】
第1チューブ側カメラ14の画像と第2チューブ側カメラ16の画像とを同時に表示させるタイミングとしては、チューブ10の先端部が声門を通過したタイミングとするのが好ましいが、例えばカメラ切替スイッチ46の操作によって施術者が2画面表示を選択できるようにしてもよい。
【0091】
(実施形態2)
図20は、本発明の実施形態2にかかる気管挿管装置1を示すものである。実施形態2の気管挿管装置1は、チューブ50の構成が異なるだけで挿管支援装置30の構成は実施形態1のものと同じであるため、以下、チューブ50の構成について詳細に説明する。
【0092】
図21及び図22に示すように、チューブ50は、シングルルーメンチューブからなるチューブ本体51と、チューブ本体51の先端部に設けられたチューブ側カメラ52及び照明用LED53とを備えている。
【0093】
チューブ本体51には、チューブ側カメラ52及び照明用LED53に電力を供給するとともに、チューブ側カメラ52から出力される画像信号が流れる配線55が設けられている。配線55は、挿管支援装置30の制御装置38に接続されるようになっている。
【0094】
チューブ側カメラ(チューブ側撮像部)52及び照明用LED53は、一体化されており、実施形態1の第1チューブ側カメラ14及び第1照明用LED15と同様に、チューブ本体51の先端部の内面に固定されている。
【0095】
図示しないが、実施形態2のチューブ50にも二酸化炭素センサが取り付けられるようになっている。
【0096】
次に、実施形態2にかかる気管挿管装置1を使用する場合について説明する。
【0097】
図14に示すフローチャート中、ステップS1〜S8まで実施形態2で行う。つまり、実施形態2のチューブ50は、左右気管支に挿入するのではなく、気管に留置する。
【0098】
実施形態2のものにおいても、チューブ50を声門へ挿入するまでの間に、挿管支援装置30に設けられた支援装置側カメラ34の画像をモニター部37に映し出すことが可能なので、施術者は、喉頭内、例えば声門を見ながらチューブ50を声門へ確実に進めていくことができる。
【0099】
そして、チューブ50が声門を通過して気管内に挿入されると、チューブ50の先端側に設けられたチューブ側カメラ52の画像をモニター部37に映し出すことが可能となる。これにより、声門よりも深いところにおいてチューブ50を先端部の位置を把握することができる。従って、例えば小児等のように気管支が短い場合でもチューブ50の先端部を適正位置に置くことが可能になる。
【0100】
したがって、実施形態2にかかる気管挿管装置1を使用することで、施術者の熟練度合いが低くても、チューブ10を狙いとする位置に確実、かつ、安全に挿管できる。
【0101】
(実施形態3)
上記実施形態1、2では、チューブ10,50内の二酸化炭素濃度を検出することによってチューブ10,50が声門を通過したか否か判定するようにしているが、実施形態3では、チューブ10,50の先端部に設けられた発光体から発せられる光の強度を声門よりも口腔側で検出することによってチューブ10,50が声門を通過したか否か判定するようにして構成されている。
【0102】
図23に示すように、挿管支援装置30の案内部33の先端部には、光の強度を検出することができる光センサ56が設けられている。この光センサ56は制御装置38に接続されており、光の強度に関する信号が制御装置38に入力されるようになっている。案内部33は声門よりも奥へ挿入されることはないので、光センサ56は発光体としての照明用LED15,53から発せられる光の強度を声門よりも口腔側で検出することができる。
【0103】
そして、チューブ10,50の先端部の照明用LED15,53が声門を通過する前は光が声門で遮られないので光センサ56で検出される光の強度が強く、一方、声門を通過すると、照明用LED15,53から発せられる光が声門で遮られて口腔側へ届きにくくなり、光センサ56で検出される光の強度が弱くなる。
【0104】
制御装置38は、光の強度が所定値以上低下したか否か判定し、所定値以上低下したと判定する前は、支援装置側画像をモニター部37に映し、所定値以上低下したと判定した後は、チューブ側画像をモニター部37に映すように構成されたものとする。この所定値とは、照明用LED15,53が声門へ挿入される前と挿入された後とで検出された光の強度変化量に相当する値である。
【0105】
これにより、チューブ10,50を声門へ挿入するまでの間に、支援装置側カメラ34の画像をモニター部37に映し出すことが可能なので、施術者は、喉頭内、例えば声門を見ながらチューブ10を声門へ確実に進めていくことができ、その後、チューブ10が声門を通過して気管内に挿入されると、チューブ10の先端側に設けられた第1チューブ側カメラ14の画像をモニター部37に映し出すことが可能となる。これにより、声門よりも深いところにおいてチューブ10の先端部の位置を把握することができる。
【0106】
よって、実施形態3にかかる気管挿管装置1を使用することで、施術者の熟練度合いが低くても、チューブ10を狙いとする位置に確実、かつ、安全に挿管できる。
【0107】
また、照明用LED15,53を発光体として利用しているので、発光体を別途設ける場合に比べてチューブ10の構造を簡素化することができるとともに、低コスト化を図ることができる。
【0108】
尚、発光体は、照明用LED15,53とは別のLED等で構成してもよい。
【0109】
また、実施形態3では、二酸化炭素センサAを設けてもよいし、設けなくてもよい。
【0110】
また、照明用LED15,53の光の強度の検出方法としては、例えばモニター部37に表示される支援装置側カメラ34の画像の明るさを基準にして制御装置38が検出するようにしてもよい。この場合、支援装置側カメラ34の画像が明るい状態から暗くなると光の強度が所定値以上低下したと判定する。
【0111】
(実施形態4)
図24は、実施形態4にかかる気管挿管装置1を示すものである。上記実施形態1、2では、チューブ10,50内の二酸化炭素濃度を検出することによってチューブ10,50が声門を通過したか否か判定するようにしているが、実施形態4では、チューブ10,50に設けた被検出部と、挿管支援装置30の案内部33に設けた検出手段とを利用してチューブ10,50が声門を通過したか否か判定するように構成されている。
【0112】
すなわち、図25に示すように、チューブ10,50には、先端部よりも基端寄りの部位に被検出部としてのICタグ60が設けられている。図24に示すように、挿管支援装置30の案内部33の先端部には、ICタグ60を検出する検出手段としてのICタグリーダ61が設けられている。
【0113】
ICタグ60の位置は、チューブ10,50が挿管支援装置30に保持された状態でICタグリーダ61の検出範囲よりも案内部33の基端側で、かつ、チューブ10,50を案内部33の先端部よりも突出するまで挿入方向に移動させるとICタグリーダ61の検出範囲に入るようになっている。このときの突出量は、チューブ10の先端部が声門を通過する程度の量とされている。
【0114】
制御装置38は、ICタグリーダ61がICタグ60を検出する前、即ち挿管支援装置30に保持されたチューブ10,50を挿入方向に移動させる前は、支援装置側画像をモニター部37に映し、ICタグリーダ61がICタグ60を検出した後、即ち、チューブ10を挿入方向へ移動させて声門を通過させた後は、チューブ側画像をモニター部37に映すように構成されている。
【0115】
これにより、チューブ10,50を声門へ挿入するまでの間に、支援装置側カメラ34の画像をモニター部37に映し出すことが可能なので、施術者は、喉頭内、例えば声門を見ながらチューブ10を声門へ確実に進めていくことができ、その後、チューブ10が声門を通過して気管内に挿入されると、チューブ10の先端側に設けられた第1チューブ側カメラ14,52の画像をモニター部37に映し出すことが可能となる。これにより、声門よりも奥においてチューブ10を先端部の位置を把握することができる。
【0116】
よって、実施形態3にかかる気管挿管装置1を使用することで、施術者の熟練度合いが低くても、チューブ10を狙いとする位置に確実、かつ、安全に挿管できる。
【0117】
被検出部としては、ICタグ60以外にも、例えば、カメラ撮影可能な文字、記号等であってもよく、この場合、検出手段は、カメラ(例えば支援装置側カメラ34)とすればよい。
【0118】
尚、上記実施形態では、第1及び第2チューブ側カメラ14,16と制御装置38とを有線接続しているが、無線接続するようにしてもよい。支援装置側カメラ34も同様に無線接続してもよい。
【0119】
また、第1、第2チューブ側カメラ14,16及び支援装置側カメラ34の画像を、挿管処置を行っている場所から離れた場所に送信するようにしてもよい。この場合、制御装置38に入力された画像を周知の無線送信装置を用いて、例えば携帯電話通信網を介して送信すればよい。このシステムの利用方法としては、例えば、救急車やドクターヘリ内で挿管処置を行いながら、その状態を、病院等の医療機関に送信する方法がある。
【0120】
また、挿管支援装置30の内部に記憶媒体を設けておき、第1、第2チューブ側カメラ14,16及び支援装置側カメラ34の画像を記憶媒体に記憶させるようにしてもよい。また、挿管支援装置30に外部出力端子を設けておき、第1、第2チューブ側カメラ14,16及び支援装置側カメラ34の画像を外部モニターに映し出すようにしてもよい。
【0121】
また、外部モニターへの出力は無線によって行うようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0122】
以上説明したように、本発明にかかる気管挿管装置は、例えば救命救急領域における気管挿管処置を行う場合に特に有用である。
【符号の説明】
【0123】
1 挿管支援装置
10 チューブ(ダブルルーメン)
14 第1チューブ側カメラ(チューブ側撮像部)
15 第1照明用LED(照明部、発光体)
16 第2チューブ側カメラ
17 第2照明用LED
30 挿管支援装置
33 案内部
34 支援装置側カメラ(支援装置側撮像部)
35 支援装置側照明用LED
37 モニター部
38 制御装置(制御部)
50 チューブ(シングルルーメン)
60 ICタグ(被検出部)
61 ICタグリーダ(検出手段)
A 二酸化炭素センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の気道を確保する気管挿管処置時に用いられる気管挿管装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
気管挿管処置時にはマッキントッシュ型ブレードと呼ばれる金属製の器具を用いてチューブの挿入及び留置を行う場合が多い。
【0003】
気管挿管処置は、麻酔を導入する手術時以外にも救急領域においても行われている。救急領域における気管挿管処置は非常に難易度の高い手技であり、日本版救急蘇生ガイドラインでは、マッキントッシュ型ブレードを用いた手技は熟練者が行うことを推奨している。
【0004】
上記した気管挿管処置時には合併症が想定される。想定される合併症のうち、絶対に避けなければならないものとして、施術者がチューブを食道へ気付かずに挿入してしまう、いわゆる「気付かれない食道挿管」が挙げられる。
【0005】
そこで、例えば喉頭を撮影するカメラと、カメラで撮影された映像を映し出すモニターとを備えたビデオ喉頭鏡を用いて気管挿管の補助を行うことが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このビデオ喉頭鏡を用いれば、モニターに映し出された声門を見ながらチューブを進めていけばよいので、従来のマッキントッシュ型ブレードを用いる場合に比べて、熟練度が比較的低い者であっても気管挿管処置を安全に行うことが可能になると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−117116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、救急領域のように一刻を争う現場では、合併症を伴わない確実な気管挿管処置を素早く行うことが望まれている。
【0008】
また、気管挿管処置は、ダブルルーメンチューブを用いて例えば左気管支に挿管する場合があるが、この場合は、誤って右気管支に挿管しないようにしなければならない。
【0009】
さらに、シングルルーメンチューブを気管に挿管する場合もあり、特に、小児の場合、気管が短いことから、チューブの先端部を留置しておく適正範囲は狭く、チューブの先端部を気管支内の適正位置に置くこと自体が困難である。
【0010】
ここで、上記特許文献1のビデオ喉頭鏡を用いて挿管処置を行う場合を想定すると、カメラで喉頭内を撮影できるとはいえ、あくまでも喉頭鏡であるので、声門よりも奥に挿入することはできず、撮影できるのは声門までであり、声門よりも奥の気管を撮影することはできない。
【0011】
このため、声門よりも奥ではチューブの先端部がどこにあるか分からず、上記したダブルルーメンチューブ及びシングルルーメンチューブのいずれの場合も、狙い通りに確実、かつ、安全に気管挿管処置を終わらせるには不十分であった。
【0012】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、施術者の熟練度合いが低くても、チューブを狙いとする位置に確実、かつ、安全に挿管できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明では、挿管支援装置及びチューブの両方に撮像部を設け、これら撮像部で撮影された画像をモニター部に映すことができるようにした。
【0014】
第1の発明は、気管へ挿管されるチューブと、上記チューブを気管へ案内する挿管支援装置とを備えた気管挿管装置において、上記挿管支援装置は、口腔から喉頭部へ挿入されて上記チューブの案内となる案内部と、該案内部の先端側に設けられた支援装置側撮像部とを有し、上記チューブは、該チューブの先端側に設けられたチューブ側撮像部を有し、上記支援装置側撮像部及び上記チューブ側撮像部により撮影された画像を映すモニター部を備えていることを特徴とするものである。
【0015】
この構成によれば、挿管支援装置の案内部の先端側に設けられた支援装置側撮像部の画像をモニター部に映し出すことが可能なので、施術者は、喉頭内、例えば声門を見ながらチューブを声門へ確実に進めていくことが可能になる。
【0016】
そして、チューブが声門を通過して気管内に挿入されると、チューブの先端側に設けられたチューブ側撮像部の画像をモニター部に映し出すことが可能となる。これにより、声門よりも奥においてチューブの先端部の位置を把握することができる。従って、例えば左気管支に挿管しなければならない場合に誤って右気管支に挿管してしまうのが回避され、また、例えば小児等のように気管が短い場合でもチューブの先端部を適正位置に置くことが可能になる。
【0017】
第2の発明は、第1の発明において、上記支援装置側撮像部、上記チューブ側撮像部及び上記モニター部が接続された制御部を備え、上記制御部は、上記支援装置側撮像部により撮影された支援装置側画像と、チューブ側撮像部により撮影されたチューブ側画像とを、施術者の手によらず、所定のタイミングで自動的に選択して上記モニター部に映すことができるように構成されていることを特徴とするものである。
【0018】
この構成によれば、支援装置側画像とチューブ側画像とが自動的に選択されてモニター部に映し出されるので、施術者による一方の画像を選択する行為が不要になる。
【0019】
第3の発明は、第2の発明において、上記制御部は、上記チューブ内の二酸化炭素濃度が所定値以上上昇したか否か判定し、所定値以上上昇したと判定する前は、支援装置側画像を上記モニター部に映し、所定値以上上昇したと判定した後は、チューブ側画像を上記モニター部に映すように構成されていることを特徴とするものである。
【0020】
すなわち、チューブの先端部が声門を通過して気管内に挿管されると、肺からの空気がチューブ内に入り込んで二酸化炭素濃度が上昇する。本発明によれば、チューブ内の二酸化炭素濃度が所定値以上上昇する前、即ち、チューブの先端部が声門を通過していないときには、支援装置側画像をモニター部に映し出すことで、チューブの先端部を声門へ確実に進めていくことが可能になる。一方、チューブ内の二酸化炭素濃度が所定値以上上昇した後、即ち、チューブの先端部が声門を通過したときには、チューブ側画像をモニター部に映し出すことで声門よりも奥においてチューブの先端部の位置を把握することができる。
【0021】
第4の発明は、第2の発明において、上記制御部は、上記チューブの先端側に設けられた発光体から発せられる光の強度を声門よりも口腔側で検出して光の強度が所定値以上低下したか否か判定し、所定値以上低下したと判定する前は、支援装置側画像を上記モニター部に映し、所定値以上低下したと判定した後は、チューブ側画像を上記モニター部に映すように構成されていることを特徴とするものである。
【0022】
この構成によれば、チューブ先端側の発光体が声門を通過して気管内に挿入されると、声門の存在によって発光体の光が声門よりも口腔側へ届きにくくなる。本発明によれば、声門よりも口腔側で検出されるチューブ先端側の発光体の光の強度が所定以下となる前、即ち、チューブの先端部が声門を通過していないときには、支援装置側画像をモニター部に映し出すことで、チューブの先端部を声門へ確実に進めていくことが可能になる。一方、声門よりも口腔側で検出されるチューブ先端側の発光体の光の強度が所定以下となった後、即ち、チューブの先端部が声門を通過したときには、チューブ側画像をモニター部に映し出すことで声門よりも奥においてチューブの先端部の位置を把握することができる。
【0023】
第5の発明は、第4の発明において、上記チューブの先端側には、上記チューブ側撮像部による撮像範囲内を照明する照明部が設けられ、上記制御部は、上記照明部から発せられる光の強度が所定値以上低下したか否か判定するように構成されていることを特徴とするものである。
【0024】
この構成によれば、チューブ側撮像部用の照明部を発光体として利用するようにしたので、発光体を別途設けることなく、チューブが声門を通過した否かを検出できる。
【0025】
第6の発明は、第2の発明において、上記チューブには、先端部よりも基端寄りの部位に被検出部が設けられ、上記挿管支援装置の案内部には、上記被検出部を検出する検出手段が設けられ、上記検出手段は、上記チューブの先端部が声門を通過するまで該チューブが移動したときに上記被検出部を検出するように配置され、上記制御部は、上記検出手段が上記被検出部を検出する前は、支援装置側画像を上記モニター部に映し、上記検出手段が上記被検出部を検出した後は、チューブ側画像を上記モニター部に映すように構成されていることを特徴とするものである。
【0026】
この構成によれば、チューブの先端部が声門を通過するまでは被検出部が検出手段により検出されないので、支援装置側画像をモニター部に映し出すことになり、チューブの先端部を声門へ確実に進めていくことが可能になる。一方、チューブの先端部が声門を通過すると被検出部が検出手段により検出されるので、チューブ側画像をモニター部に映し出すことになり、声門よりも奥においてチューブの先端部の位置を把握することができる。
【発明の効果】
【0027】
第1の発明によれば、挿管支援装置に設けられた支援装置側撮像部と、チューブに設けられたチューブ側撮像部との画像をモニター部に映し出すようにしたので、施術者はチューブを声門へ確実に進めていくことができるとともに、声門よりも奥の気管や気管支内でチューブの位置を確認できる。これにより、施術者の熟練度合いが低くても、チューブを狙いとする位置に確実、かつ、安全に挿管できる。
【0028】
第2の発明によれば、支援装置側画像とチューブ側画像とを自動的に選択してモニター部に映すようにしたので、施術者の負担を軽減しながら、両画像の確認ができる。
【0029】
第3の発明によれば、チューブ内の二酸化炭素濃度が所定値以上上昇したと判定する前は、支援装置側画像をモニター部に映し、所定値以上上昇したと判定した後は、チューブ側画像をモニター部に映すようにしている。これにより、チューブの先端部の位置に応じて必要な画像をモニター部に映し出すことができるので、施術者の負担軽減と安全な挿管処置とを両立できる。
【0030】
第4の発明によれば、声門よりも口腔側で検出されるチューブ先端側の発光体の光の強度が所定以下となる前には、支援装置側画像をモニター部に映し出し、所定以下となった後には、チューブ側画像をモニター部に映し出すことができるので、施術者の負担軽減と安全な挿管処置とを両立できる。
【0031】
第5の発明によれば、チューブ側撮像部による撮像範囲内を照明する照明部を利用してチューブが声門を通過した否かを検出できる。これにより、発光体を別途設けずに済むので、低コスト化を図ることができる。
【0032】
第6の発明によれば、挿管支援装置に設けた検出手段とチューブが有する被検出部とを用いてチューブが声門を通過したか否かを確実に検出することができるので、施術者の負担軽減と安全な挿管処置とを両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施形態1にかかる気管挿管装置の斜視図である。
【図2】チューブを挿管支援装置に保持する前の状態の図1相当図である。
【図3】挿管支援装置を患者への挿入側から見た斜視図である。
【図4】チューブを患者への挿入側から見た斜視図である。
【図5】チューブの先端側の部分断面図である。
【図6】気管挿管装置のブロック図である。
【図7】支援装置側カメラの画像を表示したモニター部を示す図である。
【図8】第1チューブ側カメラの画像を表示したモニター部を示す図である。
【図9】支援装置側カメラ及び第1チューブ側カメラの画像を表示したモニター部を示すである。
【図10】チューブを気管支分岐部まで進めた場合の図8相当図である。
【図11】チューブを左気管支まで進めた場合の図8相当図である。
【図12】チューブを左気管支まで進めた場合の第2チューブ側カメラの画像を表示したモニター部を示す図である。
【図13】第1チューブ側カメラ及び第2チューブ側カメラの画像を表示したモニター部を示す図である。
【図14】気管挿管の手順を示すフローチャートである。
【図15】挿管支援装置の案内部を喉頭部に挿入した状態を説明する図である。
【図16】チューブを声門付近まで進めた状態を説明する図である。
【図17】チューブを声門よりも奥へ進めた状態を説明する図である。
【図18】声門よりも奥へ進めたチューブの位置を説明する図である。
【図19】左気管支へ進めたチューブの位置を説明する図である。
【図20】実施形態2にかかる図1相当図である。
【図21】実施形態2にかかる図4相当図である。
【図22】実施形態2にかかる図3相当図である。
【図23】実施形態3にかかる図3相当図である。
【図24】実施形態4にかかる図3相当図である。
【図25】実施形態4にかかるチューブの拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0035】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1にかかる気管挿管装置1を示すものである。気管挿管装置1は、例えば救命救急領域において意識を失った患者の気道を確保する気管挿管処置を行う際等に使用される。
【0036】
気管挿管装置1は、図2や図3にも示すように、気管へ挿管されるチューブ10と、チューブ10を気管へ案内する挿管支援装置30とを備えている。
【0037】
図4に示すように、チューブ10は、気管支換気用の第1及び第2ルーメン11,12を有するダブルルーメンチューブからなるチューブ本体13と、チューブ本体13の先端部に設けられた第1チューブ側カメラ14及び第1照明用LED15(図5参照)と、チューブ本体13の第1チューブ側カメラ14よりも基端側に設けられた第2チューブ側カメラ16及び第2照明用LED17とを備えている。
【0038】
チューブ本体13の先端部には、気管支シール用カフ18が設けられている。また、チューブ本体13の先端側において気管支シール用カフ18よりもチューブ本体13の基端寄りには、気管シール用カフ19が設けられている。
【0039】
チューブ本体13の基端側には、気管支シール用カフ18に繋がる気管支シール用パイロットバルーン20と、気管シール用カフ19に繋がる気管シール用パイロットバルーン21とが設けられている。また、チューブ本体13の第1及び第2ルーメン11,12の基端部には、人工呼吸器が接続される。
【0040】
また、チューブ本体13には、第1、第2チューブ側カメラ14、16及び第1、第2照明用LED15、17に電力を供給するとともに、チューブ側カメラ14、16から出力される画像信号が流れる配線22が設けられている。配線22は、後述するが、挿管支援装置30の制御装置(制御部)38に接続されるようになっている。
【0041】
図5に示すように、第1チューブ側カメラ(チューブ側撮像部)14及び第1照明用LED15は、一体化されており、チューブ本体13の先端部の内面に固定されて該チューブ本体13の先端部から該先端部の中心線に沿って外方に向いている。従って、第1チューブ側カメラ14の撮影範囲は、チューブ本体13の先端開口部に対向し、かつ、先端開口部よりも広い範囲である。第1照明用LED15は、第1チューブ側カメラ14の撮影範囲に光を照射するためのものである。
【0042】
第2チューブ側カメラ16及び第2照明用LED17も一体化されている。第2チューブ側カメラ16及び第2照明用LED17は、チューブ本体13における気管支シールカフ18と気管シール用カフ19との間において外面に固定されている。第2チューブ側カメラ16及び第2照明用LED17の向きは、チューブ本体13外に向き、かつ、チューブ本体13の中心線に対して斜め先端側である。従って、第2チューブ側カメラ16の撮影範囲は、チューブ本体13の斜め側方である。第2照明用LED17は、第2チューブ側カメラ16の撮影範囲に光を照射するためのものである。
【0043】
また、図1に示すように、チューブ10の第1ルーメン11の基端部には、二酸化炭素センサAが取り付けられる。二酸化炭素センサAは、内部を流通する呼気及び吸気に所定波長のレーザー光を透過させ、受光部での波長の減衰度合いを検出して二酸化炭素の濃度をリアルタイムで測定することができる周知のものである。二酸化炭素センサAからは接続線A1が延びている。この接続線A1は、後述するが、挿管支援装置30の制御装置38に接続されるようになっている。挿管支援装置30の電源がONにされると、挿管支援装置30から二酸化炭素センサAに電力が供給されて二酸化炭素センサAが作動し、二酸化炭素濃度に関する信号が制御装置38に送信される。
【0044】
挿管支援装置30は、装置本体31と、口腔から喉頭部へ挿入されてチューブ10の案内となる案内部33と、支援装置側カメラ(支援装置側撮像部)34(図3に示す)と、支援装置側照明用LED35とを備えている。
【0045】
装置本体31は、モニター部37と、制御装置38(図6に示す)と、制御装置38を収容するケース39とを備えている。モニター部37は、ケース39の外面に対し、回動軸(図示せず)を介して取り付けられており、施術者の要求に応じて角度調整が可能となっている。モニター部37は周知のカラー液晶パネルを有している。尚、モニター部37の角度調整機構は必須なものではなく、省略してもよい。
【0046】
この実施形態では、モニター部37を縦長形状としているが、これに限らず、例えば、横長形状であってもよい。
【0047】
また、モニター部37はケース39に対して着脱可能にしてもよい。この場合、施術者が見やすい場所で挿管処置の邪魔にならない場所にモニター部37を置くことが可能になる。ケース39内には、制御装置38の他に、電源としての電池41が収容されている。
【0048】
モニター部37をケース39に対して着脱可能にする場合、モニター部37に電源を内蔵してモニター部37と制御装置38とは無線通信とするのが好ましい。
【0049】
ケース39には、案内部33が着脱可能に取り付けられている。案内部33は、例えば上記特許文献1に開示されている挿管支援具と同様に構成することができる。すなわち、案内部33は、側面視で、ケース39側(基端側)から先端側へ向かって中途部が湾曲しながら延びており、全体として厚肉板状に形成されている。図2に示すように、案内部33の幅方向側部には、上記チューブ10を挿入するためのチューブ挿入溝33aが形成されている。チューブ挿入溝33aは、案内部33の一側面に開放するとともに案内部33の先端面にも開放されている。チューブ挿入溝33aに挿入されたチューブ10は案内部33の延びる方向に沿って相対移動可能となっている。
【0050】
チューブ挿入溝33aの基端は案内部33の長手方向中央部近傍に位置している。さらに、案内部33の一側面には、チューブ挿入溝33aよりも基端側に、チューブホルダ33b,33bが該側面から突出するように設けられている。従って、図1に示すように、チューブ10は、その先端部から気管支シール用カフ18及び気管シール用カフ19の形成部分に亘ってチューブ挿入溝33aに挿入されて保持される。
【0051】
図3に示すように、支援装置側カメラ34及び支援装置側照明用LED35は一体化されている。支援装置側カメラ34及び支援装置側照明用LED35は、案内部33の先端部においてチューブ挿入溝33aの開放部分の側方に位置するように設けられている。支援装置側カメラ34及び支援装置側照明用LED35の向きは、案内部33の先端側の延びる方向と略一致している。従って、支援装置側カメラ34の撮影範囲は、案内部33の先端部に対向し、かつ、該先端部の投影面積よりも広い範囲である。支援装置側照明用LED35は、支援装置側カメラ34の撮影範囲に光を照射するためのものである。
【0052】
制御装置38は、周知の中央演算処理装置や、メモリ等を有しており、第1チューブ側カメラ14で撮像したチューブ側画像と、支援装置側カメラ34で撮像した支援装置側画像とを、施術者の手によらず、自動的に選択してモニター部37に表示させることができるように構成されている。
【0053】
図6に示すように、制御装置38には、モニター部37、第1チューブ側カメラ14及び支援装置側カメラ34の他、二酸化炭素センサA、第2チューブ側カメラ16、第1、第2照明用LED15、17、支援装置側照明用LED35、ON/OFFスイッチ45及びカメラ切替スイッチ46が接続されている。
【0054】
制御装置38は、ON/OFFスイッチ45の操作によってONとされると、モニター部37、第1チューブ側カメラ14、支援装置側カメラ34、二酸化炭素センサA、第2チューブ側カメラ16、第1、第2照明用LED15、17、支援装置側照明用LED35、二酸化炭素センサAに電力を供給する。
【0055】
制御装置38は、二酸化炭素センサAからの出力信号を検出して、電源がONにされた直後に比べて二酸化炭素濃度が所定値以上上昇したか否かを検出し、所定値以上上昇したと判定する前は、支援装置側画像をモニター部37に全画面表示させ(図7)、所定値以上上昇したと判定した後は、チューブ側画像を上記モニター部37に全画面表示させる(図8)ように構成されている。
【0056】
すなわち、チューブ10が声門を通過して気管へ挿入されると、チューブ10内に肺からの空気が流入することになるので、チューブ10内の空気の二酸化炭素濃度が急に上昇することになる。このときの二酸化炭素濃度の上昇度合いを上記所定値として制御装置38に予め記憶させておく。この所定値は、余裕を持たせる意味で、実際の値よりも若干低めに設定してもよい。そして、この記憶されている値と二酸化炭素センサAからの出力信号とを比較して上記判定を行う。
【0057】
尚、支援装置側画像やチューブ側画像は、全画面表示させることなく、図9に示すようにモニター部37の一部にのみ表示させるようにしてもよい。
【0058】
また、図7等に示すように、制御装置38は、モニター部37に二酸化炭素センサAの出力信号から得られた二酸化炭素濃度を常時表示するようにしている。モニター部37の下部に、二酸化炭素濃度表示領域37aを設け、この領域37aに、具体的な数値と、バーグラフ形式との2種類の表示形態を用いて二酸化炭素濃度を表示するようにしている。バーグラフの表示形式では、バーの本数が多いほど二酸化炭素濃度が濃いことを表すようにしている。
【0059】
図7に示すように、施術者の選択によってターゲットマークMの表示及び非表示を切り替えることができるようになっている。ターゲットマークMは、そのマークMを声門に合わせると、チューブ10の先端部の延長線が声門と一致したことを示すためのものである。
【0060】
制御装置38は、モニター部37にどのカメラで撮像された画像であるかを表示するように構成されている。第1チューブ側カメラ14で撮像された画像をモニター部37に表示している場合には、モニター部37の上部に、「第1チューブ側カメラ」(図8参照)と表示し、第2チューブ側カメラ16で撮像された画像を表示している場合には、「第2チューブ側カメラ」(図12参照)と表示し、支援装置側カメラ34で撮像された画像を表示している場合には、「支援装置側カメラ」(図7参照)と表示する。
【0061】
図6に示すカメラ切替スイッチ46は、自動モードとマニュアルモードとの切替を行うためのスイッチである。自動モードとは、手技開始時には図7に示す支援装置側画像をモニター部37に表示させ、後に、二酸化炭素濃度が所定値以上上昇した場合に図8に示すチューブ側画像に自動的に切り替えて表示させるモードである。画像の切替の代わりに、図9に示すように、支援装置側画像及びチューブ側画像の両方を表示させるようにしてもよい。
【0062】
一方、マニュアルモードとは、施術者や助手の者が、当該スイッチ操作により、第1,第2チューブ側カメラ14,16及び支援装置側カメラ34のうちから任意のカメラを選択して、選択したカメラで撮像された画像をモニター部37に表示させるモードである。
【0063】
次に、上記のように構成された気管挿管装置1を使用する場合について図14に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0064】
まず、フローチャートのスタート後のステップS1では準備を行う。すなわち、図1及び図3に示すように、挿管支援装置30のチューブ挿入溝33aにチューブ10を挿入するとともに、チューブホルダ33b,33bにチューブ10を保持させる。このとき、チューブ10の先端部は挿管支援装置30の案内部33の先端部よりも若干基端よりに位置付けておき、第1チューブ側カメラ14と支援装置側カメラ34とは略同じ方向を向いている。また、ON/OFFスイッチをONにすると、モニター部37には、支援装置側カメラ34で撮像された画像が表示される。
【0065】
準備が終わるとステップS2に進み、挿管支援装置30の案内部33の先端側を口腔から喉頭部へ挿入していく。
【0066】
その後、ステップS3に進み、喉頭展開的手技に移り、案内部33を喉頭部へ深く挿入していく(図15参照)。
【0067】
すると、支援装置側カメラ34が案内部33の先端部に設けられているので、喉頭内が撮像されてモニター部37に映し出される(図7参照)。
【0068】
ステップS4では、声門付近がモニター部37に映し出されたか否かを、図7に示す画像に基づいて判断し、映し出されなければ、ステップS3に戻り、案内部33を動かして喉頭展開的手技を継続する。
【0069】
声門付近が映し出されれば、施術者はその声門とターゲットマークMとが合うように挿管支援装置30を動かしてステップS5に進む。
【0070】
ターゲットマークMが声門と合ったら、ステップS5に進み、モニター部37を見ながらチューブ10を挿入方向へ移動させる(図16参照)。チューブ10を挿入方向へ移動させていくと、図7に示すようにチューブ10の先端部が支援装置側カメラ34の撮像範囲に入ってチューブ10の先端部がモニター部37に映し出される。このモニター部37を見ながらチューブ10を進めていくことで、チューブ10の先端部を声門に確実に挿入することができる。
【0071】
ステップS5に続くステップS6ではチューブ10の先端部が声門を通過した否かを、二酸化炭素センサAの検出結果に基づいて判定する。これは、制御装置38が行うステップである。
【0072】
すなわち、図17及び図18に示すように、チューブ10の先端部が声門を通過すると肺からの空気がチューブ10内に流入する。すると、チューブ10内の空気の二酸化炭素濃度が、チューブ10を声門へ挿入する前に比べて明確に上昇する。二酸化炭素センサAは、チューブ10内の空気の二酸化炭素濃度をリアルタイムで検出しているので、制御装置38は、二酸化炭素センサAの検出結果に基づいてチューブ10内の空気の二酸化炭素濃度が所定値以上上昇したと判定し、ステップS6ではYESとなる。
【0073】
一方、ステップS5においてチューブ10の先端部が声門を通過していなければ、チューブ10内の空気の二酸化炭素濃度は大きく変化しないので、チューブ10内の空気の二酸化炭素濃度が所定値以上上昇していないと判定し、ステップS6ではNOとなり、ステップS5に戻る。
【0074】
ステップS6においてYESと判定されて進んだステップS7では、制御装置38が、モニター部37に表示する画像を支援装置側画像からチューブ側画像に切り替える処理を行う。これにより、モニター部37に表示される画像が施術者の手によらず自動的に切り替えられることになる。
【0075】
尚、このときカメラ切替スイッチ46の操作により、図9に示すように、支援装置側画像及びチューブ側画像の両方をモニター部37に表示してもよい。また、モニター部37に表示する画像の切替は、施術者がカメラ切替スイッチ46を操作して行うようにしてもよい。
【0076】
図8に示すように、モニター部37にチューブ側画像が表示されることで、施術者は声門よりも奥の気管内を見ることができるとともに、声門よりも深いところにおいてチューブ10の先端部の位置を把握することができる。
【0077】
そして、ステップS8に進み、施術者は図8に示すモニター部37に映し出されるチューブ側画像を確認しながら、チューブ10を左右気管支分岐部まで進めていく。図10に示すように、分岐部はモニター部37に映し出されるので、チューブ10を狙いとする気管支(左または右気管支)に向けて確実に進めていくことができる。
【0078】
このとき、施術者はカメラ切替スイッチ46を操作して第2チューブ側カメラ16で撮像された画像をモニター部37に表示させて(図12参照)、分岐部に到達したか否か判定するようにしてもよい(ステップS9)。第2チューブ側カメラ16の気管支シール用カフ18と気管シール用カフ19との間でチューブ10の外側へ向いているので、図18に示すように分岐部に達するまでは気管内壁を撮像することになる。そして、図19に示すようにチューブ10の先端部が分岐部を経て左気管支へ挿入されて第2チューブ側カメラ16が分岐部に差し掛かると、気管内壁が撮像されなくなり、右気管支内壁が撮像される(図12参照)。このときには、第1チューブ側カメラ14の画像は、図11に示すように、左気管支内壁を撮像したものとなる。これを施術者が確認することで、チューブ10の先端部が左気管支に確実に挿入されたことが分かる。
【0079】
尚、図13に示すように、第1チューブ側カメラ14と第2チューブ側カメラ16の両方の画像をモニター部37に表示させてもよい。
【0080】
また、ステップS9は省略してもよい。
【0081】
その後、ステップS10に進んで気管支シール用パイロットバルーン20及び気管シール用パイロットバルーン21を操作して気管支シール用カフ18及び気管シール用カフ19を膨らませ、チューブ10を挿管状態で気管及び気管支に固定する。
【0082】
以上説明したように、実施形態1にかかる気管挿管装置1によれば、チューブ10を声門へ挿入するまでの間に、挿管支援装置30に設けられた支援装置側カメラ34の画像をモニター部37に映し出すことが可能なので、施術者は、図7に示すように喉頭内、例えば声門を見ながらチューブ10を声門へ確実に進めていくことができる。
【0083】
そして、チューブ10が声門を通過して気管内に挿入されると、図8や図9に示すようにチューブ10の先端側に設けられた第1チューブ側カメラ14の画像をモニター部37に映し出すことが可能となる。これにより、声門よりも奥においてチューブ10の先端部の位置を把握することができる。従って、例えば左気管支に挿管しなければならない場合に誤って右気管支に挿管してしまうのが回避される。
【0084】
したがって、実施形態1にかかる気管挿管装置1を使用することで、施術者の熟練度合いが低くても、チューブ10を狙いとする位置に確実、かつ、安全に挿管できる。
【0085】
また、二酸化炭素濃度がモニター部37に常時表示されているので、施術者は、施術中、二酸化炭素濃度の変化を具体的に把握することができる。このことによっても、チューブ10が声門を通過したか否かを正確に判断できる。また、挿管後も二酸化炭素濃度の変化を把握できるので、適正に人工呼吸が行われているか否かを判断できる。
【0086】
また、チューブ10が声門を通過したか否かをチューブ10内の二酸化炭素濃度を検出して判定することができる。そして、チューブ10内の二酸化炭素濃度が所定値以上上昇したと判定する前、即ちチューブ10が声門を通過する前は、支援装置側画像をモニター部37に映し、所定値以上上昇したと判定した後、即ち、チューブ10が声門を通過した後は、チューブ側画像をモニター部37に映すようにしている。これにより、チューブ10の先端部の位置に応じて施術者が必要な画像をモニター部37に映し出すことができるので、施術者の負担軽減と安全な挿管処置とを両立できる。
【0087】
また、支援装置側画像とチューブ側画像とを自動的に選択してモニター部37に映すようにしたので、施術者の負担を軽減しながら、両画像の確認ができる。
【0088】
上記実施形態では、支援装置側カメラ34の画像及び第1、第2チューブ側カメラ14,16の画像をモニター部37に全画面表示するようにしているが、これに限らず、例えば、画面を2分割して支援装置側カメラ34の画像と第1チューブ側カメラ14の画像とを表示するようにしてもよいし、第1チューブ側カメラ14の画像と第2チューブ側カメラ16の画像とを表示するようにしてもよい。
【0089】
支援装置側カメラ34の画像と第1チューブ側カメラ14の画像とを同時に表示させるタイミングとしては、チューブ10の先端部が声門を通過したタイミングとするのが好ましいが、例えばカメラ切替スイッチ46の操作によって施術者が2画面表示を選択できるようにしてもよい。
【0090】
第1チューブ側カメラ14の画像と第2チューブ側カメラ16の画像とを同時に表示させるタイミングとしては、チューブ10の先端部が声門を通過したタイミングとするのが好ましいが、例えばカメラ切替スイッチ46の操作によって施術者が2画面表示を選択できるようにしてもよい。
【0091】
(実施形態2)
図20は、本発明の実施形態2にかかる気管挿管装置1を示すものである。実施形態2の気管挿管装置1は、チューブ50の構成が異なるだけで挿管支援装置30の構成は実施形態1のものと同じであるため、以下、チューブ50の構成について詳細に説明する。
【0092】
図21及び図22に示すように、チューブ50は、シングルルーメンチューブからなるチューブ本体51と、チューブ本体51の先端部に設けられたチューブ側カメラ52及び照明用LED53とを備えている。
【0093】
チューブ本体51には、チューブ側カメラ52及び照明用LED53に電力を供給するとともに、チューブ側カメラ52から出力される画像信号が流れる配線55が設けられている。配線55は、挿管支援装置30の制御装置38に接続されるようになっている。
【0094】
チューブ側カメラ(チューブ側撮像部)52及び照明用LED53は、一体化されており、実施形態1の第1チューブ側カメラ14及び第1照明用LED15と同様に、チューブ本体51の先端部の内面に固定されている。
【0095】
図示しないが、実施形態2のチューブ50にも二酸化炭素センサが取り付けられるようになっている。
【0096】
次に、実施形態2にかかる気管挿管装置1を使用する場合について説明する。
【0097】
図14に示すフローチャート中、ステップS1〜S8まで実施形態2で行う。つまり、実施形態2のチューブ50は、左右気管支に挿入するのではなく、気管に留置する。
【0098】
実施形態2のものにおいても、チューブ50を声門へ挿入するまでの間に、挿管支援装置30に設けられた支援装置側カメラ34の画像をモニター部37に映し出すことが可能なので、施術者は、喉頭内、例えば声門を見ながらチューブ50を声門へ確実に進めていくことができる。
【0099】
そして、チューブ50が声門を通過して気管内に挿入されると、チューブ50の先端側に設けられたチューブ側カメラ52の画像をモニター部37に映し出すことが可能となる。これにより、声門よりも深いところにおいてチューブ50を先端部の位置を把握することができる。従って、例えば小児等のように気管支が短い場合でもチューブ50の先端部を適正位置に置くことが可能になる。
【0100】
したがって、実施形態2にかかる気管挿管装置1を使用することで、施術者の熟練度合いが低くても、チューブ10を狙いとする位置に確実、かつ、安全に挿管できる。
【0101】
(実施形態3)
上記実施形態1、2では、チューブ10,50内の二酸化炭素濃度を検出することによってチューブ10,50が声門を通過したか否か判定するようにしているが、実施形態3では、チューブ10,50の先端部に設けられた発光体から発せられる光の強度を声門よりも口腔側で検出することによってチューブ10,50が声門を通過したか否か判定するようにして構成されている。
【0102】
図23に示すように、挿管支援装置30の案内部33の先端部には、光の強度を検出することができる光センサ56が設けられている。この光センサ56は制御装置38に接続されており、光の強度に関する信号が制御装置38に入力されるようになっている。案内部33は声門よりも奥へ挿入されることはないので、光センサ56は発光体としての照明用LED15,53から発せられる光の強度を声門よりも口腔側で検出することができる。
【0103】
そして、チューブ10,50の先端部の照明用LED15,53が声門を通過する前は光が声門で遮られないので光センサ56で検出される光の強度が強く、一方、声門を通過すると、照明用LED15,53から発せられる光が声門で遮られて口腔側へ届きにくくなり、光センサ56で検出される光の強度が弱くなる。
【0104】
制御装置38は、光の強度が所定値以上低下したか否か判定し、所定値以上低下したと判定する前は、支援装置側画像をモニター部37に映し、所定値以上低下したと判定した後は、チューブ側画像をモニター部37に映すように構成されたものとする。この所定値とは、照明用LED15,53が声門へ挿入される前と挿入された後とで検出された光の強度変化量に相当する値である。
【0105】
これにより、チューブ10,50を声門へ挿入するまでの間に、支援装置側カメラ34の画像をモニター部37に映し出すことが可能なので、施術者は、喉頭内、例えば声門を見ながらチューブ10を声門へ確実に進めていくことができ、その後、チューブ10が声門を通過して気管内に挿入されると、チューブ10の先端側に設けられた第1チューブ側カメラ14の画像をモニター部37に映し出すことが可能となる。これにより、声門よりも深いところにおいてチューブ10の先端部の位置を把握することができる。
【0106】
よって、実施形態3にかかる気管挿管装置1を使用することで、施術者の熟練度合いが低くても、チューブ10を狙いとする位置に確実、かつ、安全に挿管できる。
【0107】
また、照明用LED15,53を発光体として利用しているので、発光体を別途設ける場合に比べてチューブ10の構造を簡素化することができるとともに、低コスト化を図ることができる。
【0108】
尚、発光体は、照明用LED15,53とは別のLED等で構成してもよい。
【0109】
また、実施形態3では、二酸化炭素センサAを設けてもよいし、設けなくてもよい。
【0110】
また、照明用LED15,53の光の強度の検出方法としては、例えばモニター部37に表示される支援装置側カメラ34の画像の明るさを基準にして制御装置38が検出するようにしてもよい。この場合、支援装置側カメラ34の画像が明るい状態から暗くなると光の強度が所定値以上低下したと判定する。
【0111】
(実施形態4)
図24は、実施形態4にかかる気管挿管装置1を示すものである。上記実施形態1、2では、チューブ10,50内の二酸化炭素濃度を検出することによってチューブ10,50が声門を通過したか否か判定するようにしているが、実施形態4では、チューブ10,50に設けた被検出部と、挿管支援装置30の案内部33に設けた検出手段とを利用してチューブ10,50が声門を通過したか否か判定するように構成されている。
【0112】
すなわち、図25に示すように、チューブ10,50には、先端部よりも基端寄りの部位に被検出部としてのICタグ60が設けられている。図24に示すように、挿管支援装置30の案内部33の先端部には、ICタグ60を検出する検出手段としてのICタグリーダ61が設けられている。
【0113】
ICタグ60の位置は、チューブ10,50が挿管支援装置30に保持された状態でICタグリーダ61の検出範囲よりも案内部33の基端側で、かつ、チューブ10,50を案内部33の先端部よりも突出するまで挿入方向に移動させるとICタグリーダ61の検出範囲に入るようになっている。このときの突出量は、チューブ10の先端部が声門を通過する程度の量とされている。
【0114】
制御装置38は、ICタグリーダ61がICタグ60を検出する前、即ち挿管支援装置30に保持されたチューブ10,50を挿入方向に移動させる前は、支援装置側画像をモニター部37に映し、ICタグリーダ61がICタグ60を検出した後、即ち、チューブ10を挿入方向へ移動させて声門を通過させた後は、チューブ側画像をモニター部37に映すように構成されている。
【0115】
これにより、チューブ10,50を声門へ挿入するまでの間に、支援装置側カメラ34の画像をモニター部37に映し出すことが可能なので、施術者は、喉頭内、例えば声門を見ながらチューブ10を声門へ確実に進めていくことができ、その後、チューブ10が声門を通過して気管内に挿入されると、チューブ10の先端側に設けられた第1チューブ側カメラ14,52の画像をモニター部37に映し出すことが可能となる。これにより、声門よりも奥においてチューブ10を先端部の位置を把握することができる。
【0116】
よって、実施形態3にかかる気管挿管装置1を使用することで、施術者の熟練度合いが低くても、チューブ10を狙いとする位置に確実、かつ、安全に挿管できる。
【0117】
被検出部としては、ICタグ60以外にも、例えば、カメラ撮影可能な文字、記号等であってもよく、この場合、検出手段は、カメラ(例えば支援装置側カメラ34)とすればよい。
【0118】
尚、上記実施形態では、第1及び第2チューブ側カメラ14,16と制御装置38とを有線接続しているが、無線接続するようにしてもよい。支援装置側カメラ34も同様に無線接続してもよい。
【0119】
また、第1、第2チューブ側カメラ14,16及び支援装置側カメラ34の画像を、挿管処置を行っている場所から離れた場所に送信するようにしてもよい。この場合、制御装置38に入力された画像を周知の無線送信装置を用いて、例えば携帯電話通信網を介して送信すればよい。このシステムの利用方法としては、例えば、救急車やドクターヘリ内で挿管処置を行いながら、その状態を、病院等の医療機関に送信する方法がある。
【0120】
また、挿管支援装置30の内部に記憶媒体を設けておき、第1、第2チューブ側カメラ14,16及び支援装置側カメラ34の画像を記憶媒体に記憶させるようにしてもよい。また、挿管支援装置30に外部出力端子を設けておき、第1、第2チューブ側カメラ14,16及び支援装置側カメラ34の画像を外部モニターに映し出すようにしてもよい。
【0121】
また、外部モニターへの出力は無線によって行うようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0122】
以上説明したように、本発明にかかる気管挿管装置は、例えば救命救急領域における気管挿管処置を行う場合に特に有用である。
【符号の説明】
【0123】
1 挿管支援装置
10 チューブ(ダブルルーメン)
14 第1チューブ側カメラ(チューブ側撮像部)
15 第1照明用LED(照明部、発光体)
16 第2チューブ側カメラ
17 第2照明用LED
30 挿管支援装置
33 案内部
34 支援装置側カメラ(支援装置側撮像部)
35 支援装置側照明用LED
37 モニター部
38 制御装置(制御部)
50 チューブ(シングルルーメン)
60 ICタグ(被検出部)
61 ICタグリーダ(検出手段)
A 二酸化炭素センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気管へ挿管されるチューブと、
上記チューブを気管へ案内する挿管支援装置とを備えた気管挿管装置において、
上記挿管支援装置は、口腔から喉頭部へ挿入されて上記チューブの案内となる案内部と、該案内部の先端側に設けられた支援装置側撮像部とを有し、
上記チューブは、該チューブの先端側に設けられたチューブ側撮像部を有し、
上記支援装置側撮像部及び上記チューブ側撮像部により撮影された画像を映すモニター部を備えていることを特徴とする気管挿管装置。
【請求項2】
請求項1に記載の気管挿管装置において、
上記支援装置側撮像部、上記チューブ側撮像部及び上記モニター部が接続された制御部を備え、
上記制御部は、上記支援装置側撮像部により撮影された支援装置側画像と、チューブ側撮像部により撮影されたチューブ側画像とを、施術者の手によらず、所定のタイミングで自動的に選択して上記モニター部に映すことができるように構成されていることを特徴とする気管挿管装置。
【請求項3】
請求項2に記載の気管挿管装置において、
上記制御部は、上記チューブ内の二酸化炭素濃度が所定値以上上昇したか否か判定し、所定値以上上昇したと判定する前は、支援装置側画像を上記モニター部に映し、所定値以上上昇したと判定した後は、チューブ側画像を上記モニター部に映すように構成されていることを特徴とする気管挿管装置。
【請求項4】
請求項2に記載の気管挿管装置において、
上記制御部は、上記チューブの先端側に設けられた発光体から発せられる光の強度を声門よりも口腔側で検出して光の強度が所定値以上低下したか否か判定し、所定値以上低下したと判定する前は、支援装置側画像を上記モニター部に映し、所定値以上低下したと判定した後は、チューブ側画像を上記モニター部に映すように構成されていることを特徴とする気管挿管装置。
【請求項5】
請求項4に記載の気管挿管装置において、
上記チューブの先端側には、上記チューブ側撮像部による撮像範囲内を照明する照明部が設けられ、
上記制御部は、上記照明部から発せられる光の強度が所定値以上低下したか否か判定するように構成されていることを特徴とする気管挿管装置。
【請求項6】
請求項2に記載の気管挿管装置において、
上記チューブには、先端部よりも基端寄りの部位に被検出部が設けられ、
上記挿管支援装置の案内部には、上記被検出部を検出する検出手段が設けられ、
上記検出手段は、上記チューブの先端部が声門を通過するまで該チューブが移動したときに上記被検出部を検出するように配置され、
上記制御部は、上記検出手段が上記被検出部を検出する前は、支援装置側画像を上記モニター部に映し、上記検出手段が上記被検出部を検出した後は、チューブ側画像を上記モニター部に映すように構成されていることを特徴とする気管挿管装置。
【請求項1】
気管へ挿管されるチューブと、
上記チューブを気管へ案内する挿管支援装置とを備えた気管挿管装置において、
上記挿管支援装置は、口腔から喉頭部へ挿入されて上記チューブの案内となる案内部と、該案内部の先端側に設けられた支援装置側撮像部とを有し、
上記チューブは、該チューブの先端側に設けられたチューブ側撮像部を有し、
上記支援装置側撮像部及び上記チューブ側撮像部により撮影された画像を映すモニター部を備えていることを特徴とする気管挿管装置。
【請求項2】
請求項1に記載の気管挿管装置において、
上記支援装置側撮像部、上記チューブ側撮像部及び上記モニター部が接続された制御部を備え、
上記制御部は、上記支援装置側撮像部により撮影された支援装置側画像と、チューブ側撮像部により撮影されたチューブ側画像とを、施術者の手によらず、所定のタイミングで自動的に選択して上記モニター部に映すことができるように構成されていることを特徴とする気管挿管装置。
【請求項3】
請求項2に記載の気管挿管装置において、
上記制御部は、上記チューブ内の二酸化炭素濃度が所定値以上上昇したか否か判定し、所定値以上上昇したと判定する前は、支援装置側画像を上記モニター部に映し、所定値以上上昇したと判定した後は、チューブ側画像を上記モニター部に映すように構成されていることを特徴とする気管挿管装置。
【請求項4】
請求項2に記載の気管挿管装置において、
上記制御部は、上記チューブの先端側に設けられた発光体から発せられる光の強度を声門よりも口腔側で検出して光の強度が所定値以上低下したか否か判定し、所定値以上低下したと判定する前は、支援装置側画像を上記モニター部に映し、所定値以上低下したと判定した後は、チューブ側画像を上記モニター部に映すように構成されていることを特徴とする気管挿管装置。
【請求項5】
請求項4に記載の気管挿管装置において、
上記チューブの先端側には、上記チューブ側撮像部による撮像範囲内を照明する照明部が設けられ、
上記制御部は、上記照明部から発せられる光の強度が所定値以上低下したか否か判定するように構成されていることを特徴とする気管挿管装置。
【請求項6】
請求項2に記載の気管挿管装置において、
上記チューブには、先端部よりも基端寄りの部位に被検出部が設けられ、
上記挿管支援装置の案内部には、上記被検出部を検出する検出手段が設けられ、
上記検出手段は、上記チューブの先端部が声門を通過するまで該チューブが移動したときに上記被検出部を検出するように配置され、
上記制御部は、上記検出手段が上記被検出部を検出する前は、支援装置側画像を上記モニター部に映し、上記検出手段が上記被検出部を検出した後は、チューブ側画像を上記モニター部に映すように構成されていることを特徴とする気管挿管装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2013−85880(P2013−85880A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231729(P2011−231729)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【出願人】(396015541)HOYAサービス株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【出願人】(396015541)HOYAサービス株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]