説明

気管支拡張剤

【課題】 安全かつ有用な慢性閉塞性肺疾患治療剤が切望されている。
【解決手段】 一般式(I)
【化1】


(式中、すべての記号は明細書中と同じ意味を表わす。)で示される化合物、その塩、その溶媒和物またはそのシクロデキストリン包接化合物またはそれらのプロドラッグは、強い気管支拡張作用を有する。さらに、一般式(I)で示される化合物は抗炎症作用を有する。したがって、一般式(I)で示される化合物は呼吸器疾患、例えば慢性閉塞性肺疾患、成人呼吸促迫症候群気腫、嚢胞性線維症または慢性気管支炎等の治療に有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(1)一般式(I)
【0002】
【化1】

【0003】
(式中、すべての記号は後記と同じ意味を表す。)で示される化合物、その塩、その溶媒和物またはシクロデキストリン包接化合物、またはそのプロドラッグを含有する気管支拡張剤、および(2)一般式(I)で示される化合物、その塩、その溶媒和物またはそのプロドラッグ、またはそのシクロデキストリン包接化合物を含有してなる気管支拡張作用を有する吸入剤に関する。
【背景技術】
【0004】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、呼吸器系疾患のひとつで、慢性気管支炎、肺気腫、または両者の併発に気流閉塞が伴った疾患であり、完全に可逆的でない気流制限を特徴とする疾患である。喫煙等が原因となって、気管支の炎症や肺胞の破壊が起こる。その結果、咳、痰、息切れ等の症状を呈し、進行すると低酸素血症を来す。COPDの治療薬としては、気管支拡張薬(例えば抗コリン薬、β刺激薬、またはテオフィリン製剤)、去痰薬、ステロイド薬、抗生物質が用いられている。しかし、気管支拡張薬や去痰剤は症状の改善は期待できるが、根本的な病態を改善させる薬ではない。また、ステロイド薬の長期服用は副作用などの点から望ましくない。したがって、安全かつ有用なCOPD治療剤が切望されている。
【0005】
後記一般式(I)で表される化合物はEP2アゴニスト作用を有することが知られており、免疫疾患(自己免疫疾患、臓器移植等)、喘息、骨形成異常、神経細胞死、肝障害、早産、流産、緑内障等の網膜神経障害等に対する予防及び/または治療に有用であることが開示されている(特許文献1参照。)。しかし、一般式(I)で示される化合物が、COPD治療に有効であることは記載も示唆もされていない。
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第860430号明細書。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、医薬として安全かつ有用な、COPDを治療しうる気管支拡張作用および抗炎症作用を有する薬剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、一般式(I)で示される化合物が、驚くべきことに強い気管支拡張作用を有することを見出した。したがって、一般式(I)で示される化合物は例えば、慢性閉塞性肺疾患、成人呼吸促迫症候群気腫、嚢胞性線維症または慢性気管支炎等の呼吸器疾患治療に有効であることを見出した。さらに、一般式(I)で示される化合物は抗炎症作用も併せ持つため、単に症状を改善するだけではなく、慢性閉塞性肺疾患の原因となる気管支の炎症も抑えることができる。また、一般式(I)で示される化合物を吸入投与することで、気管支拡張作用および抗炎症作用を局所的に発揮し、EP2アゴニストによる目的の作用以外の作用、例えば循環器に対する作用を回避し、より副作用の少ない、安全な薬剤として用いることができる。さらに、生体内分解性重合物を組み合わせることで、気管支拡張作用が持続し、本発明の剤が有用な呼吸器疾患治療剤となりうることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、
1. 一般式(I)
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、Rはカルボキシ基またはヒドロキシメチル基を表わし、RI−1はオキソ基、メチレン基またはハロゲン原子を表わし、RI−2は水素原子、水酸基、またはC1〜4のアルコキシ基を表わし、RI−3は水素原子、C1〜8のアルキル基、C2〜8のアルケニル基、C2〜8のアルキニル基、または1〜3個の以下の(1)〜(5)の基で置換されているC1〜8のアルキル基、C2〜8のアルケニル基またはC2〜8のアルキニル基を表わし:(1)ハロゲン原子、(2)C1〜4のアルコキシ基、(3)C3〜7のシクロアルキル基、(4)フェニル基、または(5)1〜3個のハロゲン原子、C1〜4のアルキル基、C1〜4のアルコキシ基、ニトロ基またはトリフルオロメチル基で置換されているフェニル基;nは0〜4を表わし、
【0012】
【化3】

【0013】
は一重結合または二重結合を表わし、
【0014】
【化4】

【0015】
は二重結合または三重結合を表わし、
【0016】
【化5】

【0017】
は一重結合、二重結合または三重結合を表わし、
【0018】
【化6】

【0019】
は紙面の向こう側(すなわちα−配置)に結合していることを表わし、
【0020】
【化7】

【0021】
は紙面の手前側(すなわちβ−配置)に結合していることを表わし、
【0022】
【化8】

【0023】
はα−配置、β−配置またはそれらの任意の割合の混合物であることを表わす。ただし、13−14位が二重結合を表わすとき、その二重結合はE体、Z体またはEZ体の任意の割合の混合物を表わす。)で示される化合物、その塩、その溶媒和物またはそのプロドラッグ、またはそのシクロデキストリン包接化合物を含有してなる気管支拡張剤、
2. (5Z)−7−{(1R,2R,3R,5R)−5−クロロ−2−[(1E,4S)−4−(1−エチルシクロブチル)−4−ヒドロキシブタ−1−エン−1−イル]−3−ヒドロキシシクロペンチル}ヘプタ−5−エン酸またはそのリジン塩を含有してなる前記1記載の剤、
3. 呼吸器疾患予防および/または治療剤である前記1記載の剤、
4. 呼吸器疾患が慢性閉塞性肺疾患である前記3記載の剤、
5. 前記1記載の一般式(I)で示される化合物、その塩、その溶媒和物またはそのプロドラッグ、またはそのシクロデキストリン包接化合物と4型ホスホジエステラーゼ阻害薬、ステロイド薬、β作動薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬、トロンボキサン合成酵素阻害薬、トロンボキサンA受容体拮抗薬、メディエーター遊離抑制薬、抗ヒスタミン薬、キサンチン誘導体、抗コリン薬、サイトカイン阻害薬、プロスタグランジン類、フォルスコリン製剤、エラスターゼ阻害薬、メタロプロテアーゼ阻害薬、去痰薬、抗生物質および免疫抑制薬から選択される1種以上とを組み合わせてなる医薬、
6. 前記1記載の一般式(I)で示される化合物、その塩、その溶媒和物またはそのプロドラッグ、またはそのシクロデキストリン包接化合物を含有してなる気管支拡張作用を有する吸入剤、
7. さらに生体内分解性重合物を含有する前記6記載の剤、
8. 生体内分解性重合物が乳酸−グリコール酸共重合体である前記7記載の剤、
9. マイクロスフェアまたはナノスフェアである前記7記載の剤、
10. 前記1記載の一般式(I)で示される化合物、その塩、その溶媒和物またはそのプロドラッグ、またはそのシクロデキストリン包接化合物を含有してなる慢性閉塞性肺疾患予防および/または治療剤、
11. (1)前記1記載の一般式(I)で示される化合物、その塩、その溶媒和物またはそのプロドラッグ、またはそのシクロデキストリン包接化合物、および(2)生体内分解性重合物を含有してなる慢性閉塞性肺疾患予防および/または治療のための吸入用医薬組成物、
12. (1)EP2アゴニスト、および(2)生体内分解性重合物を含有してなる慢性閉塞性肺疾患予防および/または治療のための吸入用医薬組成物、
13. 一般式(I)
【0024】
【化9】

【0025】
(式中、すべての記号は前記1と同じ意味を表わす。)で示される化合物、その塩、その溶媒和物またはそのプロドラッグ、またはそのシクロデキストリン包接化合物の有効量を哺乳動物に投与することを特徴とする、哺乳動物における呼吸器疾患予防および/または治療方法、
14. 呼吸器疾患予防および/または治療剤を製造するための、一般式(I)
【0026】
【化10】

【0027】
(式中、すべての記号は前記1と同じ意味を表わす。)で示される化合物、その塩、その溶媒和物またはそのプロドラッグ、またはそのシクロデキストリン包接化合物の使用に関する。
【0028】
一般式(I)中、C1〜4のアルキル基とは、メチル、エチル、プロピル、ブチルおよびそれらの分枝型異性体基を意味する。一般式(I)中、C1〜8のアルキル基とは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルおよびそれらの分枝型異性体基を意味する。一般式(I)中、C2〜8のアルケニル基とは、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニルおよびそれらの分枝型異性体基を意味する。一般式(I)中、C2〜8のアルキニル基とは、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、へプチニル、オクチニルおよびそれらの分枝型異性体基を意味する。一般式(I)中、C1〜4のアルコキシ基とは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシおよびそれらの分枝型異性体基を意味する。一般式(I)中、C3〜7のシクロアルキル基とは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチル基を意味する。一般式(I)中、ハロゲン原子とは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を意味する。
【0029】
本発明においては、特に断わらない限り、当業者にとって明らかなように記号
【0030】
【化11】

【0031】
は紙面の向こう側(すなわちα−配置)に結合していることを表わし、
【0032】
【化12】

【0033】
は紙面の手前側(すなわちβ−配置)に結合していることを表わし、
【0034】
【化13】

【0035】
はα−配置、β−配置またはそれらの任意の割合の混合物であることを表わし、
【0036】
【化14】

【0037】
は、α−配置とβ−配置の任意の割合の混合物であることを表わす。
【0038】
本発明においては、特に指示しない限り異性体はこれをすべて包含する。例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基には直鎖のものおよび分枝鎖のものが含まれる。さらに、二重結合、環、縮合環における異性体(E、Z、シス、トランス体)、不斉炭素の存在等による異性体(R、S体、α、β配置、エナンチオマー、ジアステレオマー)、旋光性を有する光学活性体(D、L、d、l体)、クロマトグラフ分離による極性体(高極性体、低極性体)、平衡化合物、回転異性体、これらの任意の割合の混合物、ラセミ混合物は、すべて本発明に含まれる。
【0039】
一般式(I)で示される化合物は、公知の方法で塩に変換される。塩としては薬理学的に許容される塩が好ましい。
【0040】
塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、酸付加塩等が挙げられる。
【0041】
塩は、水溶性のものが好ましい。適当な塩としては、アルカリ金属(カリウム、ナトリウム等)の塩、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)の塩、アンモニウム塩、薬学的に許容される有機アミン(テトラメチルアンモニウム、トリエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、シクロペンチルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、ピペリジン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、リジン、アルギニン、N−メチル−D−グルカミン等)の塩が挙げられる。特にリジン塩が好ましい。
【0042】
酸付加塩は水溶性であることが好ましい。適当な酸付加塩としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩のような無機酸塩、または酢酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、グルクロン酸塩、グルコン酸塩のような有機酸塩が挙げられる。
【0043】
一般式(I)で示される化合物およびその塩は、溶媒和物に変換することもできる。
【0044】
溶媒和物は非毒性かつ水溶性であることが好ましい。適当な溶媒和物としては、例えば水、アルコール系の溶媒(例えば、エタノール等)のような溶媒和物が挙げられる。
【0045】
本発明化合物は、α−、β−あるいはγ−シクロデキストリン、あるいはこれらの混合物を用いて、特公昭50-3362号、同52-31404号または同61-52146号明細書記載の方法を用いることによりシクロデキストリン包接化合物に変換することができる。シクロデキストリン包接化合物に変換することにより、安定性が増大し、また水溶性が大きくなるため、薬剤として使用する際好都合である。
【0046】
また、一般式(I)で示される化合物のプロドラッグは、生体内において酵素や胃酸等による反応により本発明化合物に変換する化合物をいう。本発明化合物のプロドラッグとしては、本発明化合物がアミノ基を有する場合、該アミノ基がアシル化、アルキル化、リン酸化された化合物(例、本発明化合物のアミノ基がエイコサノイル化、アラニル化、ペンチルアミノカルボニル化、(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メトキシカルボニル化、テトラヒドロフラニル化、ピロリジルメチル化、ピバロイルオキシメチル化、アセトキシメチル化、tert−ブチル化された化合物など);本発明化合物が水酸基を有する場合、該水酸基がアシル化、アルキル化、リン酸化、ホウ酸化された化合物(例、本発明化合物の水酸基がアセチル化、パルミトイル化、プロパノイル化、ピバロイル化、サクシニル化、フマリル化、アラニル化、ジメチルアミノメチルカルボニル化された化合物など);本発明化合物がカルボキシ基を有する場合該カルボキシ基がエステル化、アミド化された化合物(例、本発明化合物のカルボキシ基がメチルエステル化、エチルエステル化、プロピルエステル化、イソプロピルエステル化、ブチルエステル化、イソブチルエステル化、sec−ブチルエステル化、tert−ブチルエステル化、ペンチルエステル化、イソペンチルエステル化、ネオペンチルエステル化、シクロペンチルエステル化、ヘキシルエステル化、シクロヘキシルエステル化、トリフルオロエチルエステル化、フェニルエステル化、カルボキシメチルエステル化、ジメチルアミノメチルエステル化、ピバロイルオキシメチルエステル化、エトキシカルボニルオキシエチルエステル化、フタリジルエステル化、(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メチルエステル化、シクロヘキシルオキシカルボニルエチルエステル化、メチルアミド化された化合物など);等が挙げられる。これらの化合物は自体公知の方法によって製造することができる。また、本発明化合物のプロドラッグは水和物および非水和物のいずれであってもよい。
【0047】
一般式(I)で示される化合物、その塩、その溶媒和物またはそのプロドラッグ、またはそのシクロデキストリン包接化合物のうち、好ましくは、例えば(5Z)−7−{(1R,2R,3R,5R)−5−クロロ−2−[(1E,4S)−4−(1−エチルシクロブチル)−4−ヒドロキシブタ−1−エン−1−イル]−3−ヒドロキシシクロペンチル}ヘプタ−5−エン酸、またはそのリジン塩である(2S)−2,6−ジアミノヘキサン酸 (5Z)−7−{(1R,2R,3R,5R)−5−クロロ−2−[(1E,4S)−4−(1−エチルシクロブチル)−4−ヒドロキシブタ−1−エン−1−イル]−3−ヒドロキシシクロペンチル}ヘプタ−5−エノエート等が挙げられる。
【0048】
本発明に用いられるEP2アゴニストとしては、EP2アゴニスト作用を有するものならどのような化合物でもよく、また既知のEP2アゴニスト作用を有する化合物だけでなく新規に見出されるEP2アゴニスト作用を有する化合物をすべて包含する。例えば、EP2アゴニストとしては、欧州特許出願公開第860430号に記載の化合物、国際公開第99/33794号に記載の化合物、欧州特許出願公開第974580号に記載の化合物、国際公開第95/19964号に記載の化合物、米国特許第5698598号に記載の化合物、米国特許第6376533号に記載の化合物、国際公開第98/28264号に記載の化合物、国際公開第99/19300号に記載の化合物、欧州特許出願公開第0911321号に記載の化合物、国際公開第98/58911号に記載された化合物、国際公開第2003/74483号に記載された化合物およびAH−13205、CP−533536、ブタプロスト、リオプロスト、ミソプロストール、AY23626等が挙げられる。
【0049】
[本発明化合物の製造方法]
一般式(I)で示される本発明化合物は、欧州特許出願公開第860430号に記載された方法か、それに準じた方法等を適宜改良し、組み合わせて用いることで製造することができる。
【0050】
[毒性]
一般式(I)で示される化合物の毒性は非常に低いものであり、医薬として使用するために十分安全である。
【0051】
[医薬品への適用]
一般式(I)で示される化合物は、気管支拡張作用および抗炎症作用を有するので、呼吸器疾患、例えば、慢性閉塞性肺疾患、成人呼吸促迫症候群気腫、嚢胞性線維症または慢性気管支炎等の予防および/または治療に有効である。
【0052】
一般式(I)で示される化合物は、1)該化合物の治療効果の補完および/または増強、2)該化合物の動態・吸収改善、投与量の低減、および/または3)該化合物の副作用の軽減のために他の薬剤と組み合わせて、併用剤として投与してもよい。
【0053】
一般式(I)で示される化合物と他の薬剤の併用剤は、1つの製剤中に両成分を配合した配合剤の形態で投与してもよく、また別々の製剤にして投与する形態をとってもよい。この別々の製剤にして投与する場合には、同時投与および時間差による投与が含まれる。また、時間差による投与は、本発明の剤を先に投与し、他の薬剤を後に投与してもよいし、他の薬剤を先に投与し、本発明の剤を後に投与してもかまわず、それぞれの投与方法は同じでも異なっていてもよい。
【0054】
該他の薬剤は、低分子化合物であってもよく、また高分子の蛋白、ポリペプチド、ポリヌクレオチド(DNA、RNA、遺伝子)、アンチセンス、デコイ、抗体であるか、またはワクチン等であってもよい。他の薬剤の投与量は、臨床上用いられている用量を基準として適宜選択することができる。また、本発明の剤と他の薬剤の配合比は、投与対象の年齢および体重、投与方法、投与時間などにより適宜選択することができる。例えば、本発明の剤1重量部に対し、他の薬剤を0.01乃至100重量部用いればよい。他の薬剤は、例えば以下に示す同種群および異種群から任意の1種または2種以上を適宜の割合で組み合わせて投与してもよい。また、一般式(I)で示される化合物の治療効果を補完および/または増強する他の薬剤には、上記したメカニズムに基づいて、現在までに見出されているものだけでなく今後見出されるものも含まれる。
【0055】
該他の薬剤としては、例えば、4型ホスホジエステラーゼ阻害薬、ステロイド薬、β作動薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬、トロンボキサン合成酵素阻害薬、トロンボキサンA受容体拮抗薬、メディエーター遊離抑制薬、抗ヒスタミン薬、キサンチン誘導体、抗コリン薬、サイトカイン阻害薬、プロスタグランジン類、フォルスコリン製剤、エラスターゼ阻害薬、メタロプロテアーゼ阻害薬、去痰薬、抗生物質または免疫抑制薬等が挙げられる。
【0056】
4型ホスホジエステラーゼ阻害薬としては、例えば、ロリプラム、シロミラスト、Bay19−8004、NIK−616、ロフルミラスト(BY−217)、シパムフィリン(BRL−61063)、アチゾラム(CP−80633)、SCH−351591、YM−976、V−11294A、PD−168787、D−4396、IC−485等が挙げられる。
【0057】
ステロイド薬としては、内服薬、注射薬としては、例えば、酢酸コルチゾン、ヒドロコルチゾン、リン酸ヒドロコルチゾンナトリウム、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、酢酸フルドロコルチゾン、プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、コハク酸プレドニゾロンナトリウム、ブチル酢酸プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、酢酸ハロプレドン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、トリアムシノロン、酢酸トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、デキサメサゾン、酢酸デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、パルミチン酸デキサメタゾン、酢酸パラメサゾン、ベタメタゾン等、吸入剤としては、例えば、プロピオン酸ベクロメタゾン、プロピオン酸フルチカゾン、ブデソニド、フルニソリド、トリアムシノロン、ST−126P、シクレソニド、デキサメタゾンパロミチオネート、モメタゾンフランカルボネート、プラステロンスルホネート、デフラザコート、メチルプレドニゾロンスレプタネート、メチルプレドニゾロンナトリウムスクシネート等が挙げられる。
【0058】
β作動薬としては、例えば、臭化水素酸フェノテロール、硫酸サルブタモール、硫酸テルブタリン、フマル酸フォルモテロール、キシナホ酸サルメテロール、硫酸イソプロテレノール、硫酸オルシプレナリン、硫酸クロルプレナリン、エピネフリン、塩酸トリメトキノール、硫酸ヘキソプレナリンメシル、塩酸プロカテロール、塩酸ツロブテロール、ツロブテロール、塩酸ピルブテロール、塩酸クレンブテロール、塩酸マブテロール、塩酸リトドリン、バンブテロール、塩酸ドペキサミン、酒石酸メルアドリン、AR−C68397、レボサルブタモール、KUR−1246、KUL−7211、AR−C89855、S−1319等が挙げられる。
【0059】
ロイコトリエン受容体拮抗薬としては、例えば、プランルカスト水和物、モンテルカスト、ザフィルルカスト、セラトロダスト、MCC−847、KCA−757、CS−615、YM−158、L−740515、CP−195494、LM−1484、RS−635、A−93178、S−36496、BIIL−284、ONO−4057等が挙げられる。
【0060】
トロンボキサンA受容体拮抗薬としては、例えば、セラトロダスト、ラマトロバン、ドミトロバンカルシウム水和物、KT−2−962等が挙げられる。
【0061】
メディエーター遊離抑制薬としては、例えば、トラニラスト、クロモグリク酸ナトリウム、アンレキサノクス、レピリナスト、イブジラスト、ダザノラスト、ペミロラストカリウム等が挙げられる。
【0062】
抗ヒスタミン薬としては、例えば、フマル酸ケトチフェン、メキタジン、塩酸アゼラスチン、オキサトミド、テルフェナジン、フマル酸エメダスチン、塩酸エピナスチン、アステミゾール、エバスチン、塩酸セチリジン、ベポタスチン、フェキソフェナジン、ロラタジン、デスロラタジン、塩酸オロパタジン、TAK−427、ZCR−2060、NIP−530、モメタゾンフロエート、ミゾラスチン、BP−294、アンドラスト、オーラノフィン、アクリバスチン等が挙げられる。
【0063】
キサンチン誘導体としては、例えば、アミノフィリン、テオフィリン、ドキソフィリン、シパムフィリン、ジプロフィリン等が挙げられる。
【0064】
抗コリン薬としては、例えば、臭化イプラトロピウム、臭化オキシトロピウム、臭化フルトロピウム、臭化シメトロピウム、テミベリン、臭化チオトロピウム、レバトロペート(UK−112166)等が挙げられる。
【0065】
サイトカイン阻害薬としては、例えばトシル酸スプラタスト等が挙げられる。
【0066】
エラスターゼ阻害薬としては、例えば、シベレスタット、ONO−6818、MR−889、PBI−1101、EPI−HNE−4、R−665等が挙げられる。
【0067】
去痰薬としては、例えば、アンモニアウイキョウ精、炭酸水素ナトリウム、塩酸ブロムヘキシン、カルボシステイン、塩酸アンブロキソール、塩酸アンブロキゾール徐放剤、メチルシステイン塩酸塩、アセチルシステイン、塩酸L−エチルシステイン、チロキサポール等が挙げられる。
【0068】
抗生物質としては、例えば、セフロキシムナトリウム、メロペネム三水和物、硫酸ネチルマイシン、硫酸シソマイシン、セフチブテン、PA−1806、IB−367、トブラマイシン、PA−1420、ドキソルビシン、硫酸アストロマイシン、塩酸セフェタメトピボキシル等が挙げられる。吸入の抗生剤としては、例えば、PA−1806、IB−367、トブラマイシン、PA−1420、ドキソルビシン、硫酸アストロマイシン、塩酸セフェタメトピボキシル等が挙げられる。
【0069】
免疫抑制薬としては、例えば、シクロスポリン、タクロリムス、アザチオプリン、メトトレキサート、シクロホスファミド等が挙げられる。
【0070】
また、一般式(I)で示される化合物の予防および/または治療効果を補完および/または増強する他の薬剤には、上記したメカニズムに基づいて、現在までに見出されているものだけでなく今後見出されるものも含まれる。
【0071】
一般式(I)で示される化合物は、必要に応じて、医薬として許容される添加剤を加え、単独製剤または配合製剤として汎用されている技術を用いて製剤化することができる。
【0072】
本発明で用いる一般式(I)で示される化合物、または一般式(I)で示される化合物と他の薬剤の併用剤を上記の目的で用いるには、通常、全身的または局所的に、経口または非経口の形で投与される。
【0073】
投与量は、年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により異なるが、通常、成人一人あたり、1回につき、1ngから100mgの範囲で、1日1回から数回経口投与されるか、または成人一人あたり、1回につき、0.1ngから100mgの範囲で、1日1回から数回非経口投与されるか、または1日1時間から24時間の範囲で静脈内に持続投与される。
【0074】
もちろん前記したように、投与量は、種々の条件によって変動するので、上記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、また範囲を越えて必要な場合もある。
【0075】
経口剤としては、例えば、内服用液剤(例えば、エリキシル剤、シロップ剤、薬剤的に許容される水剤、懸濁剤、乳剤)、内服用固形剤(例えば、錠剤(舌下錠、口腔内崩壊錠を含む)、丸剤、カプセル剤(ハードカプセル、ソフトカプセル、ゼラチンカプセル、マイクロカプセル等を含む)、散剤、顆粒剤、トローチ剤等)が挙げられる。
【0076】
非経口剤としては、例えば、液剤(例えば、注射剤(皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤、点滴剤等)、吸入剤、経鼻剤、点眼剤、経皮製剤、軟膏剤、坐剤等が挙げられる。これらの製剤は、速放性製剤、徐放性製剤などの放出制御剤であってもよい。これらの製剤は公知の方法、例えば日本薬局方に記載の方法等により製造することができる。
【0077】
経口剤としての内服用液剤は、例えば、有効成分を一般的に用いられる希釈剤(例えば、精製水、エタノールまたはそれらの混液等)に溶解、懸濁または乳化されることにより製造される。さらにこの液剤は、湿潤剤、懸濁化剤、乳化剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、保存剤、緩衝剤等を含有していてもよい。
【0078】
経口投与のための内服用固形剤には、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤等が含まれる。カプセル剤には、ハードカプセルおよびソフトカプセルが含まれる。また錠剤には舌下錠、口腔内貼付錠、口腔内速崩壊錠などが含まれる。
【0079】
このような内服用固形剤においては、ひとつまたはそれ以上の活性物質はそのままか、または賦形剤(ラクトース、マンニトール、グルコース、微結晶セルロース、デンプン等)、結合剤(ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)、崩壊剤(繊維素グリコール酸カルシウム等)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム等)、安定剤、溶解補助剤(グルタミン酸、アスパラギン酸等)等と混合され、常法に従って製剤化して用いられる。また、必要によりコーティング剤(白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)で被覆していてもよいし、また2以上の層で被覆していてもよい。さらにゼラチンのような吸収されうる物質のカプセルも包含される。
【0080】
舌下錠は公知の方法に準じて製造、調製される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質に賦形剤(ラクトース、マンニトール、グルコース、微結晶セルロース、コロイダルシリカ、デンプン等)、結合剤(ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)、崩壊剤(デンプン、L−ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、繊維素グリコール酸カルシウム等)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム等)、膨潤剤(ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カーボポール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、キサンタンガム、グアーガム等)、膨潤補助剤(グルコース、フルクトース、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルトース、トレハロース、リン酸塩、クエン酸塩、ケイ酸塩、グリシン、グルタミン酸、アルギニン等)安定剤、溶解補助剤(ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グルタミン酸、アスパラギン酸等)、香味料(オレンジ、ストロベリー、ミント、レモン、バニラ等)等と混合され、常法に従って製剤化して用いられる。また、必要によりコーティング剤(白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)で被覆していてもよいし、また2以上の層で被覆していてもよい。また、必要に応じて常用される防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の添加物を加えることもできる。口腔内貼付錠は公知の方法に準じて製造、調製される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質に賦形剤(ラクトース、マンニトール、グルコース、微結晶セルロース、コロイダルシリカ、デンプン等)、結合剤(ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)、崩壊剤(デンプン、L−ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、繊維素グリコール酸カルシウム等)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム等)、付着剤(ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カーボポール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、キサンタンガム、グアーガム等)、付着補助剤(グルコース、フルクトース、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルトース、トレハロース、リン酸塩、クエン酸塩、ケイ酸塩、グリシン、グルタミン酸、アルギニン等)安定剤、溶解補助剤(ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グルタミン酸、アスパラギン酸等)、香味料(オレンジ、ストロベリー、ミント、レモン、バニラ等)等と混合され、常法に従って製剤化して用いられる。また、必要によりコーティング剤(白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)で被覆していてもよいし、また2以上の層で被覆していてもよい。また、必要に応じて常用される防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の添加物を加えることもできる。
【0081】
口腔内速崩壊錠は公知の方法に準じて製造、調製される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質をそのまま、あるいは原末もしくは造粒原末粒子に適当なコーティング剤(エチルセルロース、ヒドキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アクリル酸メタクリル酸コポリマー等)、可塑剤(ポリエチレングリコール、クエン酸トリエチル等)を用いて被覆を施した活性物質に賦形剤(ラクトース、マンニトール、グルコース、微結晶セルロース、コロイダルシリカ、デンプン等)、結合剤(ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)、崩壊剤(デンプン、L−ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、繊維素グリコール酸カルシウム等)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム等)、分散補助剤(グルコース、フルクトース、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルトース、トレハロース、リン酸塩、クエン酸塩、ケイ酸塩、グリシン、グルタミン酸、アルギニン等)安定剤、溶解補助剤(ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グルタミン酸、アスパラギン酸等)、香味料(オレンジ、ストロベリー、ミント、レモン、バニラ等)等と混合され、常法に従って製剤化して用いられる。また、必要によりコーティング剤(白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)で被覆していてもよいし、また2以上の層で被覆していてもよい。また、必要に応じて常用される防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の添加物を加えることもできる。
【0082】
経口投与のための内服用液剤は、薬剤的に許容される水剤、懸濁剤・乳剤、シロップ剤、エリキシル剤等を含む。このような液剤においては、ひとつまたはそれ以上の活性物質が、一般的に用いられる希釈剤(精製水、エタノールまたはそれらの混液等)に溶解、懸濁または乳化される。さらにこの液剤は、湿潤剤、懸濁化剤、乳化剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、保存剤、緩衝剤等を含有していてもよい。
【0083】
非経口投与のための注射剤としては、溶液、懸濁液、乳濁液および用時溶剤に溶解または懸濁して用いる固形の注射剤を包含する。注射剤は、ひとつまたはそれ以上の活性物質を溶剤に溶解、懸濁または乳化させて用いられる。溶剤として、例えば注射用蒸留水、生理食塩液、植物油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノールのようなアルコール類等およびそれらの組み合わせが用いられる。さらにこの注射剤は、安定剤、溶解補助剤(グルタミン酸、アスパラギン酸、ポリソルベート80(登録商標)等)、懸濁化剤、乳化剤、無痛化剤、緩衝剤、保存剤等を含んでいてもよい。これらは最終工程において滅菌するか無菌操作法によって製造、調製される。また無菌の固形剤、例えば凍結乾燥品を製造し、その使用前に無菌化または無菌の注射用蒸留水または他の溶剤に溶解して使用することもできる。
【0084】
非経口投与のための外用剤の剤形には、例えば、軟膏剤、ゲル剤、クリーム剤、湿布剤、貼付剤、リニメント剤、噴霧剤(スプレー剤)、エアゾール剤、吸入剤、経鼻剤および点眼剤等が含まれる。これらはひとつまたはそれ以上の活性物質を含み、公知の方法または通常使用されている処方により製造、調製される。
【0085】
軟膏剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質を基剤に研和、または溶融させて製造、調製される。軟膏基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、高級脂肪酸または高級脂肪酸エステル(アジピン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アジピン酸エステル、ミリスチン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、オレイン酸エステル等)、ロウ類(ミツロウ、鯨ロウ、セレシン等)、界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル等)、高級アルコール(セタノール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール等)、シリコン油(ジメチルポリシロキサン等)、炭化水素類(親水ワセリン、白色ワセリン、精製ラノリン、流動パラフィン等)、グリコール類(エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、マクロゴール等)、植物油(ヒマシ油、オリーブ油、ごま油、テレピン油等)、動物油(ミンク油、卵黄油、スクワラン、スクワレン等)、水、吸収促進剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保湿剤、保存剤、安定化剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0086】
ゲル剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質を基剤に溶融させて製造、調製される。ゲル基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、低級アルコール(エタノール、イソプロピルアルコール等)、ゲル化剤(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース等)、中和剤(トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等)、界面活性剤(モノステアリン酸ポリエチレングリコール等)、ガム類、水、吸収促進剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保存剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0087】
クリーム剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質を基剤に溶融または乳化させて製造、調製される。クリーム基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、高級脂肪酸エステル、低級アルコール、炭化水素類、多価アルコール(プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等)、高級アルコール(2−ヘキシルデカノール、セタノール等)、乳化剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、脂肪酸エステル類等)、水、吸収促進剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保存剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0088】
湿布剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質を基剤に溶融させ、練合物とし支持体上に展延塗布して製造される。湿布基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、増粘剤(ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、デンプン、ゼラチン、メチルセルロース等)、湿潤剤(尿素、グリセリン、プロピレングリコール等)、充填剤(カオリン、酸化亜鉛、タルク、カルシウム、マグネシウム等)、水、溶解補助剤、粘着付与剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保存剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0089】
貼付剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質を基剤に溶融させ、支持体上に展延塗布して製造される。貼付剤用基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、高分子基剤、油脂、高級脂肪酸、粘着付与剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保存剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0090】
リニメント剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物を水、アルコール(エタノール、ポリエチレングリコール等)、高級脂肪酸、グリセリン、セッケン、乳化剤、懸濁化剤等から選ばれるもの単独または2種以上に溶解、懸濁または乳化させて製造、調製される。さらに、保存剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0091】
非経口投与のための吸入剤としては、エアゾール剤、吸入用粉末剤、吸入用液剤(例えば、吸入用溶液、吸入用懸濁剤等)、またはカプセル状吸入剤が含まれ、当該吸入用液剤は用時に水又は他の適当な媒体に溶解又は懸濁させて使用する形態であってもよい。これらの吸入剤は適当な吸入容器を用いて適用することができ、例えば、吸入用液剤を投与する際には、噴霧器(アトマイザー、ネブライザー)等を、吸入用粉末剤を投与する際には粉末薬剤用吸入投与器等を使用することができる。
【0092】
これらの吸入剤は公知の方法に準じて製造される。例えば、一般式(I)で示される化合物を粉末または液状にして、吸入噴射剤および/または担体中に配合し、適当な吸入容器に充填することにより製造される。一般式(I)で示される化合物を粉末化する場合、常法に従って粉末化される。例えば、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム等とともに微粉末にし、均一な混合物にするか、造粒して粉末剤を調製する。また、一般式(I)で示される化合物を液状化する場合、例えば該化合物を水、生理食塩液または有機溶剤等の液状担体に溶解すればよい。噴射剤としては、従来公知の噴射剤、例えば、代替フロン、液化ガス噴射剤(例えば、フッ化炭化水素、液化石油、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル等)、圧縮ガス(例えば、可溶性ガス(例えば、炭酸ガス、亜酸化窒素ガス等)、不溶性ガス(例えば、窒素ガス等)等が用いられる。
【0093】
吸入剤には、さらに、必要に応じて添加剤を適宜配合してもよい。添加剤としては、一般に使用されている添加剤であれば何でもよく、例えば、固形賦形剤(例えば、白糖、乳糖、ブドウ糖、マンニット、ソルビット、マルトース、セルロース等)、液状賦形剤(例えば、プロピレングリコール等)、結合剤(デンプン、デキストリン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、白糖等)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム等)、矯味剤(例えば、クエン酸、メントール、グリチルリチンアンモニウム塩、グリシン、オレンジ粉末等)、保存剤(例えば、安息香酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン等)、安定化剤(例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム等)、懸濁化剤または乳化剤(例えば、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、レシチン、トリオレイン酸ソルビタン等)、分散剤(例えば、界面活性剤等)、溶剤(例えば、水等)、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム、濃グリセリン等)、pH調節剤(例えば、塩酸、硫酸等)可溶化剤(例えば、エタノール等)、防腐剤(塩化ベンザルコニウム、パラベン等)、着色剤、緩衝化剤(リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等)、増粘剤(カリボキシビニルポリマー等)、吸収促進剤等が用いられる。例えば、吸入用液剤の場合には、防腐剤、着色剤、緩衝化剤、等張化剤、増粘剤、吸収促進剤などを必要に応じて適宜選択して調製される。また、例えば吸入用粉末剤の場合には、滑沢剤、結合剤、賦形剤、着色剤、防腐剤、吸収促進剤(胆汁酸塩、キトサン等)などを必要に応じて適宜選択して調製される。
【0094】
さらに、一般式(I)で示される化合物を徐放性とするため、吸入剤においては生体内分解性重合物を含有していてもよい。生体内分解性重合物とは、脂肪酸エステル重合体またはその共重合体、ポリアクリル酸エステル類、ポリヒドロキシ酪酸類、ポリアルキレンオキサレート類、ポリオルソエステル、ポリカーボネートおよびポリアミノ酸類が挙げられ、これらは1種類またはそれ以上混合して使用することができる。また、卵黄レシチン等のリン脂質、キトサン等を用いてもよい。脂肪酸エステル重合体またはその共重合体とは、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリクエン酸、ポリリンゴ酸および乳酸−グリコール酸共重合体が挙げられ、これらは1種類またはそれ以上混合して使用することができる。その他に、ポリα−シアノアクリル酸エステル、ポリβ−ヒドロキシ酪酸、ポリトリメチレンオキサート、ポリオルソエステル、ポリオルソカーボネート、ポリエチレンカーボネート、ポリγ−ベンジル−L−グルタミン酸およびポリL−アラニンの1種類またはそれ以上混合も使用することができる。好ましくは、ポリ乳酸、ポリグルコール酸または乳酸−グリコール酸共重合体であり、より好ましくは、乳酸−グリコール酸共重合体である。また、乳酸−グリコール酸共重合体等の生体内分解性重合物を用いて薬物を封入したマイクロカプセル、マイクロスフェアまたはナノスフェアを調製してもよい。
【0095】
非経口投与のためその他の組成物としては、ひとつまたはそれ以上の活性物質を含み、常法により処方される直腸内投与のための坐剤および腟内投与のためのペッサリー等が含まれる。
【0096】
本発明の剤は、気管支拡張作用を有するため、気管支、または気管、肺などの気管周辺組織で特異的に作用することが好ましい。本発明の剤の形態として好ましくは、例えば吸入剤が挙げられる。
【発明の効果】
【0097】
一般式(I)で示される化合物は強い気管支拡張作用および抗炎症作用を有する。したがって、呼吸器疾患(例えば、慢性閉塞性肺疾患、成人呼吸促迫症候群気腫、嚢胞性線維症または慢性気管支炎等)の予防および/または治療に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0098】
[生物学的実施例]
(1)メタコリン惹起モルモット気道収縮反応に対する本発明化合物の静脈内持続投与での作用
ペントバルビタールナトリウム(75 mg/kg,i.p.)で麻酔したモルモットにガラミン(10 mg/kg, i.v.)を処置し、人工呼吸管理下で実験を行った。気道収縮惹起物質としてメタコリン(10μg/kg,i.v.)を使用し、気道収縮反応は、Konzett & Roessler法(Konzett H, Roessler R. Versuchsanordnung zu untersuchungen an der Bronchial-muskulatur. Arch Exp Pathol Pharmacol 1940;195:71-74)により測定した。本発明化合物である(2S)−2,6−ジアミノヘキサン酸 (5Z)−7−{(1R,2R,3R,5R)−5−クロロ−2−[(1E,4S)−4−(1−エチルシクロブチル)−4−ヒドロキシブタ−1−エン−1−イル]−3−ヒドロキシシクロペンチル}ヘプタ−5−エノエート(以下、化合物Aと略記する。)および対照物質であるサルブタモールをインフュージョンポンプを用いて45分間静脈内持続投与した。メタコリンの惹起は薬液静脈内持続投与開始10分前(pre)および投与開始15分、30分、45分後および投与終了15分、30分後に行なった。コントロール群(Control)には生理食塩液を静脈内持続投与した。気道収縮は、投与開始前のメタコリン惹起気道収縮を100%として気道収縮率(% of pre)を算出した。結果を図1に示す。化合物Aはメタコリン惹起の気道収縮を用量に応じて抑制した。これより、本発明化合物は気道拡張作用を有することが示された。
(2)本発明化合物のTNF−α産生抑制作用
ヘパリン採血(終濃度は10 U/mL)したヒトの全血に化合物Aを添加し、37℃で10分間プレインキュベートした後、リポポリサッカライド(以下、LPSと略記する。終濃度:100 ng/mL)を添加した。LPS添加6時間後、血液を遠心分離し、血漿中TNF−αをELISA法により測定した。結果を図2に示す。化合物Aは濃度に応じてTNF−α産生を抑制した。これより、本発明化合物は抗炎症作用を有することが示された。
(3)本発明化合物の好中球エラスターゼ遊離抑制作用
ヘパリン採血(終濃度は10 U/mL)したヒト血液から密度勾配法で得た好中球を実験に用いた。単離した好中球はハンクス緩衝液に再懸濁した。化合物Aを添加して37℃で10分間プレインキュベートした後、N−ホルミルメチオニル−ロイシル−フェニルアラニン(fMLP)/サイトカラシンB(終濃度:0.1 μmol/L/1 μmol/L)を添加した。15分後に氷冷により反応を停止し、遠心分離後の上清中のエラスターゼ活性を測定した。結果を図3に示す。化合物Aは、濃度に応じてfMLP/サイトカラシンB惹起による好中球エラスターゼ遊離を抑制した。これより、本発明化合物は抗炎症作用を有することが示された。
(4)メタコリン惹起モルモット気道収縮反応に対する本発明化合物の吸入投与での作用
ペントバルビタールナトリウム(75 mg/kg,i.p.)で麻酔したモルモットにガラミン(10 mg/kg,i.v.)を処置し、人工呼吸管理下で実験を行った。気道収縮惹起物質としてメタコリン(10 μg/kg,i.v.)を使用し、気道収縮反応はKonzett & Roessler法により測定した。超音波ネブライザーを用いて化合物A溶液(100 μg/mL)または生理食塩液を霧化し、人工呼吸器にて気管内に直接5分間吸入投与した。その後、メタコリンを化合物吸入終了5、10、15、25、35、45および55分後に投与し、気道収縮を惹起した。モルモットの気管に挿入したカニューレの上部に取り付けた三方活栓を閉塞して得られる気道反応を100%として、気道収縮率(% of maximum)を算出した。結果を図4に示す。化合物Aはメタコリンによる気道収縮を抑制した。
(5)メタコリン惹起モルモット気道収縮反応に対する本発明化合物を含有する持続性製剤の気管内投与での作用
<気道収縮率の測定>
GOI(笑気:酸素=3:1、3%イソフルラン)で麻酔したモルモットに、被検物質を気管内投与用ゾンデを用いて気管内投与した。一定時間後、モルモットをペントバルビタールナトリウム(50 mg/kg、i.p.)で麻酔し、ガラミン(10 mg/kg、i.v.)を処置して人工呼吸管理下で気道収縮反応を測定した。気道収縮惹起物質としてメタコリン(10μg/kg、i.v.)を使用し、気道収縮反応はKonzett & Roessler法により測定した。モルモットの気管に挿入したカニューレの上部に取り付けた三方活栓を閉塞して得られる気道反応を100%として、気道収縮率(% of maximum)を算出した。
【0099】
結果を図5に示す。化合物Aを含有するマイクロスフェア製剤(100μg/kg、後記の製剤例7。以下、製剤Aと略記する。)は、メタコリンによる気管支収縮を抑制し、その効果は6時間以上持続した。
<肺中薬物残存量の測定>
メタコリン惹起モルモット気道収縮反応評価直後に脱血致死させ、気管支を含む肺を摘出し、液体窒素で凍結させた。氷冷下、臓器重量の5倍量のアセトニトリルを添加し、ハサミで細分化した後、ホモジナイザーにて破砕した(15000rpm、2分)。このホモジネート液をアセトニトリルで適宜希釈を行った後、遠心分離により上清を回収した。上清100〜1000μLに内標準物質溶液10〜20μLを添加後、遠心濃縮器にて濃縮乾固したものをLC/MS/MS又はHPLC移動相150μLで再溶解してLC/MS/MS又はHPLC測定用のサンプルとした。薬物量の測定は、LC/MS/MS又はHPLCを用い、測定試料と同日に前処理を行った添加検量線(n=1)を用い、機器附属ソフトウェアを用いて算出した。
【0100】
結果を図6に示す。製剤Aを投与した場合、化合物Aを含有する生理食塩液(10μg/kg、以下、製剤Bと略記する。)投与時と比較して、薬物が長時間肺中に残存した。
[製剤例]
本発明に用いられる代表的な製剤例を以下に示す。
【0101】
製剤例1
化合物A2.8gおよびマルトース400gを蒸留水に溶解した後、リン酸水素2ナトリウム12水和物20gを加え、蒸留水にて全量を4000mLとした。濾塵フィルターで除塵後、溶液を0.2μm除菌フィルターを用いて滅菌し、1mLずつアンプルに充填し、1アンプル中化合物A0.7mgを含有する注射剤4000本を得た。
【0102】
製剤例2
化合物A5.6gおよびマルトース400gを蒸留水に溶解した後、リン酸水素2ナトリウム12水和物20gを加え、蒸留水にて全量を4000mLとした。濾塵フィルターで除塵後、溶液を0.2μm除菌フィルターを用いて滅菌し、1mLずつバイアルに充填し、常法により凍結乾燥し、1バイアル中化合物A1.4mgを含有する注射剤4000本を得た。
【0103】
製剤例3
以下の各成分を常法により混合したのち、打錠して、1錠中に化合物A5mgを含有する直径6.5mm、厚さ3mm、重量100mgの錠剤1000錠を得た。
・化合物A 5g
・カルボキシメチルセルロース カルシウム 15g
・ステアリン酸マグネシウム 10g
・乳糖 70g
製剤例4
以下の各成分を混合して吸入用溶液を得た。
・化合物A 40mg
・精製水 1000g
製剤例5
化合物A5.6gおよびマルトース400gを蒸留水に溶解した後、リン酸水素2ナトリウム12水和物20gを加え、蒸留水にて全量を4000mLとした。常法により凍結乾燥し、粉砕して、吸入用粉末剤を得た。
【0104】
製剤例6
化合物A4.6mgを蒸留水8.4μLに溶解した。これに別に溶解した乳酸―グリコール酸共重合体(以下、PLGAと略記)〔乳酸/グリコール酸=50/50(モル%)、重量平均分子量:10000〕を含むジクロロメタン溶液1mLを添加し、20秒間超音波照射で乳化した。これを予め溶解した0.1%ポリビニルアルコール(PVA)水溶液300mLに加えて再び乳化した。この場合、ホモミキサー(特殊機化)を用い、ミキサーの回転数は約4000rpmで乳化した。このW/O/Wエマルションを軽く攪拌しながら約3時間脱溶媒した(水中乾燥法)。得られたマイクロスフェアを濾過あるいは遠心分離によって分離した。これを蒸留水で洗浄し、遊離薬物、PVAを除去した後、凍結乾燥し、篩過粉砕してマイクロスフェア末を得た。この粉末に精製水を加えて混合し、吸入用懸濁剤を得た。
【0105】
製剤例7
化合物A9.2mgを蒸留水16.8μLに溶解した。これに別に溶解した乳酸―グリコール酸共重合体(以下、PLGAと略記)〔乳酸/グリコール酸=50/50(モル%)、重量平均分子量:10000〕を含むジクロロメタン溶液2mLを添加し、15秒間超音波照射で乳化した。これを予め溶解した1.0%ポリビニルアルコール(PVA)、2.0%塩化ナトリウム、2.0%結晶マルトース水溶液600mLに加えて再び乳化した。この場合、ホモミキサー(エム・テクニック株式会社)を用い、ミキサーの回転数は約15000rpmで乳化した。このW/O/Wエマルションを軽く攪拌しながら約3時間脱溶媒した(水中乾燥法)。得られたマイクロスフェアを濾過あるいは遠心分離によって分離した。これを0.2%ポリソルベート80水溶液又は蒸留水で洗浄し、遊離薬物、PVAを除去した後、凍結乾燥し、篩過粉砕してマイクロスフェア末を得た。この粉末に生理食塩液を加えて混合し、懸濁剤を得た。
【産業上の利用可能性】
【0106】
一般式(I)で示される化合物は強い気管支拡張作用および抗炎症作用を有するため、呼吸器疾患、例えば、慢性閉塞性肺疾患、成人呼吸促迫症候群気腫、嚢胞性線維症または慢性気管支炎等の予防および/または治療に有効である。また、一般式(I)で示される化合物を吸入投与することによって、局所で気管支拡張作用および抗炎症作用を発揮し、その他の作用に基づく副作用を回避することができる。さらに、生体内分解性重合物を組み合わせることによって、気管支拡張作用が持続する。したがって、一般式(I)で示される化合物を含有してなる吸入剤も大変有用である。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】化合物Aの静脈内持続投与における気道収縮抑制作用を示す。
【図2】化合物AのTNF−α産生抑制作用を示す。
【図3】化合物Aのエラスターゼ遊離抑制作用を示す。
【図4】化合物Aの吸入投与における気道収縮抑制作用を示す。
【図5】製剤A(製剤例7)の気管内投与における気道収縮抑制作用を示す。
【図6】製剤A(製剤例7)および製剤Bの気管内投与における経時的な肺中薬物残存率を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

(式中、Rはカルボキシ基またはヒドロキシメチル基を表わし、RI−1はオキソ基、メチレン基またはハロゲン原子を表わし、RI−2は水素原子、水酸基、またはC1〜4のアルコキシ基を表わし、RI−3は水素原子、C1〜8のアルキル基、C2〜8のアルケニル基、C2〜8のアルキニル基、または1〜3個の以下の(1)〜(5)の基で置換されているC1〜8のアルキル基、C2〜8のアルケニル基またはC2〜8のアルキニル基を表わし:(1)ハロゲン原子、(2)C1〜4のアルコキシ基、(3)C3〜7のシクロアルキル基、(4)フェニル基、または(5)1〜3個のハロゲン原子、C1〜4のアルキル基、C1〜4のアルコキシ基、ニトロ基またはトリフルオロメチル基で置換されているフェニル基;nは0〜4を表わし、
【化2】

は一重結合または二重結合を表わし、
【化3】

は二重結合または三重結合を表わし、
【化4】

は一重結合、二重結合または三重結合を表わし、
【化5】

は紙面の向こう側(すなわちα−配置)に結合していることを表わし、
【化6】

は紙面の手前側(すなわちβ−配置)に結合していることを表わし、
【化7】

はα−配置、β−配置またはそれらの任意の割合の混合物であることを表わす。ただし、13−14位が二重結合を表わすとき、その二重結合はE体、Z体またはEZ体の任意の割合の混合物を表わす。)で示される化合物、その塩、その溶媒和物またはそのプロドラッグ、またはそのシクロデキストリン包接化合物を含有してなる気管支拡張剤。
【請求項2】
(5Z)−7−{(1R,2R,3R,5R)−5−クロロ−2−[(1E,4S)−4−(1−エチルシクロブチル)−4−ヒドロキシブタ−1−エン−1−イル]−3−ヒドロキシシクロペンチル}ヘプタ−5−エン酸またはそのリジン塩を含有してなる請求項1記載の剤。
【請求項3】
呼吸器疾患予防および/または治療剤である請求項1記載の剤。
【請求項4】
呼吸器疾患が慢性閉塞性肺疾患である請求項3記載の剤。
【請求項5】
請求項1記載の一般式(I)で示される化合物、その塩、その溶媒和物またはそのプロドラッグ、またはそのシクロデキストリン包接化合物と4型ホスホジエステラーゼ阻害薬、ステロイド薬、β作動薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬、トロンボキサン合成酵素阻害薬、トロンボキサンA受容体拮抗薬、メディエーター遊離抑制薬、抗ヒスタミン薬、キサンチン誘導体、抗コリン薬、サイトカイン阻害薬、プロスタグランジン類、フォルスコリン製剤、エラスターゼ阻害薬、メタロプロテアーゼ阻害薬、去痰薬、抗生物質および免疫抑制薬から選択される1種以上とを組み合わせてなる医薬。
【請求項6】
請求項1記載の一般式(I)で示される化合物、その塩、その溶媒和物またはそのプロドラッグ、またはそのシクロデキストリン包接化合物を含有してなる気管支拡張作用を有する吸入剤。
【請求項7】
さらに生体内分解性重合物を含有する請求項6記載の剤。
【請求項8】
生体内分解性重合物が乳酸−グリコール酸共重合体である請求項7記載の剤。
【請求項9】
マイクロスフェアまたはナノスフェアである請求項7記載の剤。
【請求項10】
請求項1記載の一般式(I)で示される化合物、その塩、その溶媒和物またはそのプロドラッグ、またはそのシクロデキストリン包接化合物を含有してなる慢性閉塞性肺疾患予防および/または治療剤。
【請求項11】
(1)請求項1記載の一般式(I)で示される化合物、その塩、その溶媒和物またはそのプロドラッグ、またはそのシクロデキストリン包接化合物、および(2)生体内分解性重合物を含有してなる慢性閉塞性肺疾患予防および/または治療のための吸入用医薬組成物。
【請求項12】
(1)EP2アゴニスト、および(2)生体内分解性重合物を含有してなる慢性閉塞性肺疾患予防および/または治療のための吸入用医薬組成物。
【請求項13】
一般式(I)
【化8】

(式中、すべての記号は請求項1と同じ意味を表わす。)で示される化合物、その塩、その溶媒和物またはそのプロドラッグ、またはそのシクロデキストリン包接化合物の有効量を哺乳動物に投与することを特徴とする、哺乳動物における呼吸器疾患予防および/または治療方法。
【請求項14】
呼吸器疾患予防および/または治療剤を製造するための、一般式(I)
【化9】

(式中、すべての記号は請求項1と同じ意味を表わす。)で示される化合物、その塩、その溶媒和物またはそのプロドラッグ、またはそのシクロデキストリン包接化合物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−186424(P2007−186424A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−342546(P2004−342546)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(000185983)小野薬品工業株式会社 (180)
【Fターム(参考)】