説明

気象レーダのビームシャープニング及び逆量子化

【課題】より小さい大きさのレーダ気象システムの距離気象データの表示品質を改善するシステム及び方法を提供する。
【解決手段】プロセッサは、アンテナと関連する量子化反射率データのカラムを気象レーダシステムから受信する。プロセッサは、受信した量子化反射率データのカラムと関連するアンテナよりも大きなアンテナのためのビームパターンと関連する推定される量子化反射率データに基づいて、この量子化反射率データのカラムを調整する。本発明は、制約を緩和するために、概念上の「所望のアンテナ」を利用している。これにより、アルゴリズムが最適解により速やかに収束させ、一方でメモリ要求を低減する。また、所望のアンテナ応答に整合する平滑な摂動関数を利用して最適な平滑出力を提供し、アルゴリズムの収束をより速やかにし、メモリ要求を低減し、かつ出力をスメアーすることなしに量子化に対応する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気象レーダのビームシャープニング及び逆量子化に関する。
【背景技術】
【0002】
[0001]航空機搭載用気象レーダアンテナの物理的な最大サイズの制限により、希望する狭いアンテナビームが得られないことが頻繁にあり、そのために、表示される気象データの希望より詳細でない結果となる。これは特に垂直表示(この業界では比較的新しい)で明白であり、小型のアンテナ(例えば、ビジネスジェットで使用されるもの)ではさらに悪化する。
【0003】
[0002]周知のドップラービームシャープニング技術は、航空機の直前または垂直方向ではうまく機能しない。また、気象の自然のドップラーノイズは別の挑戦であろう。
[0003]小型航空機は小型の広ビームアンテナにのみ適合し、このためビームシャープニング能力を制限する。
【発明の概要】
【発明が解決しょうとする課題】
【0004】
[0004]図1及び図2は、15:1拡大垂直スケールのために、垂直表示でいくつかの問題を明白に示している。問題は以下の通りである。
[0005]-アンテナビーム幅により、低分解能:
[0006]-三次元データの量子化により、濃淡むらのある外観、及び
[0007]-表示のための出力を滑らにする試みは、平滑さ間のトレードオフおよびさらに分解能損失となる。
【0005】
[0008]周波数領域に変換し、そして逆のビームパターン(実際のアンテナ及び“ソフト化された”概念上のアンテナのいずれか)により乗算する直接の方策は、実際のデータに対しては動作しない。これは非常に小さな数に分割することを含むためにデータが不安定になるためである。
【発明を解決するための手段】
【0006】
[0009]プロセッサは、アンテナに関連する量子化された反射率データのカラムをレーダシステムから受信する。プロセッサは、この量子化反射率データのカラムを、受信した量子化反射率データのカラムに関するアンテナよりも大きなアンテナのビームパターンに関連する推定される量子化反射率データに基づいて調整する。
【0007】
[0010]本発明は、制約を緩和するために、概念上の「所望のアンテナ」を利用している(すなわち、より狭いビームにより「より大きのアンテナ」をシミュレートする)。これにより、アルゴリズムが最適解により速やかに収束させ、一方でメモリ要求を低減する。本発明はまた、所望のアンテナ応答に整合する平滑な(例えば、ガウス)摂動関数を利用する。これは最適な平滑出力を提供し、アルゴリズムの収束をより速やかにし、メモリ要求を低減し、かつ出力をスメアーすることなしに量子化に対応する。
本発明の実施形態を以下の図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】従来技術の航空機搭載用気象レーダアンテナによって生成された結果を示す。
【図2】従来技術の航空機搭載用気象レーダアンテナによって生成された結果を示す。
【図3】本発明により構成されたシステム例を示す。
【図4】三次元バッファからの理想的なデータの縦カラムを示す。
【図5】図4に示されたデータの反射率値を示す。
【図6】従来技術のシステムのモデルを例示する。
【図7】本発明により構成されたシステムのモデルを例示する。
【図8】本発明により構成されたプロセス例のフローチャートを例示する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[0019]本発明は、レンジにおける気象レーダ表示の細部を改善するためのシステム、方法、及びコンピュータプログラム製品である。図3は、本発明により構成された例示のシステム30を示したものである。システム30は、気象レーダシステム40、プロセッサ42、メモリ43、表示装置44、他の航空機システム46、ユーザインターフェース48を含む。プロセッサ42は、気象レーダシステム40、表示装置44、他の航空機システム46、ユーザインターフェース48、及びメモリ43と電気的に結合されている。例示の気象レーダシステム40は、レーダコントローラ50、トランスミッタ52、レシーバ54、及びアンテナ56を含む。レーダコントローラ50は、1又は複数の他の航空機システム46から受信した航空機データ(例えば、位置、方位、ロール、ヨー、ピッチ、等)に基づいて、アンテナ56を介して信号の送受信を実行するために、トランスミッタ52及びレシーバ54を制御する。
【0010】
[0020]気象レーダシステム40は、主に気象及び地形を含む外部環境によって送信パルスの散乱から生じる信号を受信する。受信信号はプロセッサ42に渡され、プロセッサ42は受信信号を用いて、メモリ43(すなわち、三次元(3D)バッファ)に含まれる気象反射率の推定を更新する。プロセッサ42は、ユーザインターフェース48から送信された任意の制御信号又はプロセッサ42内の設定に基づいて、表示装置44上の提示のための画像を生成する。
【0011】
[0021]本発明は、三次元気象バッファからの反射率の1次元縦カラム、及びこのカラムデータに関連する最適曲線に焦点を当てている。図4及び図5を参照されたい。
[0022]図6は、従来技術のシステムのモデルを示している。三次元バッファの最適出力は、高度の関数である「生の」反射率データ(ビーム関数r (x))である。生の反射率データr (x)は、ビームパターン関数B(x)で畳み込みされる。それから、a(x)を作成するためにノイズが追加される。a(x)信号は、高度-量子化反射率であるq(n)を生成するために量子化される。高度-量子化反射率信号q(n)は測定可能であり、かつメモリ43内の3Dバッファに記憶されるものである。
[0023]図7は、本発明により創作されたビームシャープニングモデルを示している。実際のアンテナのビーム関数B(x)は、次の2つの部分BL(x)、Bc(x)に分けられる。
【0012】
−この2つの部分の畳み込みは元のビーム関数B(x)と等しい、そして
−第1の部分は所望量のビームシャープニングと等しい(例えば、「60インチ(152.4cm)」アンテナ)。
【0013】
[0024]疑似真理信号t(x)は、「実真理」生の反射率データ(最適)r(x)を、半分のビーム幅(あるいは等価的には直径の2倍)をもつアンテナに対応するビーム形重み付け関数BL(x)で畳み込みすることによって決定される。他の大きさのアンテナに対応する重み付け関数を使用してもよい。BL(x)は、より小さな(しかし無限に小さくはない)ビーム幅をもつ概念上は「より大きい」アンテナのビーム幅関数である。「生の」反射率がBL(x)で畳み込まれると、「より滑らかな」(詳細ではなく)関数が生成される。シャープニング処理(図8)は、この畳み込みされた関数t(x)上で収束を試みる。これはより迅速な収束を可能にする。r(x)は論理上の反射率データに基づいている。
【0014】
[0025]そして、図7のモデルは図6のモデルと同じことを実行する。Bc(x)は「補償」ビーム幅関数であり、これは「より大きな」(例えば60インチ(152.4cm))アンテナからデータを取り出し、かつ畳み込みにより、より小さな「実」(例えば30インチ(76.2cm))アンテナで達成されるものと論理上同一である偶(詳細にではなく)関数を提供する。
【0015】
[0026]図8に示すように、反復平均平方誤差(MSE)技術が使用されて、モデル出力と、3次元バッファ内にある実際の量子化データとの間のMSEを最小化する。図7に示すように、連続的な「ガウス」t^(x)(^はtの頭上に付されている)は、t(x)に対して行われている。t^(x)は、3つの異なる方法でBc(x)により畳み込みされる。一般的なB(x)関数の例は、
【0016】
【数1】

【0017】
であり、ここで、
k=4ln√2
θa=ビーム幅
θ30=3度
θ60L=1.5度
θc=2.6度
であり、
-第1に、加算シフト摂動関数により、
-第2に、減算シフト摂動関数により、
-第3に、シフト摂動関数なしに、畳み込みされる。
【0018】
[0027]畳み込みはそれぞれ、q^(n)(^はqの頭上に付されている)を得るためにN高度レベルに量子化される。Nは、「平滑さ」に対してボクセル数(メモリロケーション)をトレードオフする設計上の決定に基づいて選択される。ハネウェル・インコーポレーテッド社製のRDR−4000では、Nはレンジの関数として決定され、N高度レベルを0〜60,000フィート(18、000m)のレンジに合わせている。例えば、
20NMバッファ:N=32
40NMバッファ:N=16
80NMバッファ:N=8
160NMバッファ:N=4
320NMバッファ:N=2、である。
【0019】
[0034]それから、量子化結果q^(n)のそれぞれのMSE及び反射率信号q(n)が決定される。ガウス摂動関数は、どのガウスq^(n)が最低のMESを持つかに基づいてシフトされる。シフトされたガウス関数は、デルタファクタと結合される。この結合により、t^(x)に加えられた又はt^(x)から差し引かれた値が、次の反復のために調整される。所定の反復回数又は「目標」MSEが達成されると、処理は完了する。
【0020】
[0034]以下に要約される経験的な変分法のアプローチが取られる。
-t(x)の最新推定を摂動し、
-MSEが減少する場合は摂動された関数を維持し、そうでなければ以前の低いMSEに戻る。
【0021】
[0035]反射率データ(図5参照)の所望のビーム形と整合する平滑摂動関数、すなわちガウスが使用される。ガウス関数は、連続する推測上の独立変数に沿ってシフトされる。
【0022】
[0036]推定t^(x)は、理想r(x)と完全には一致しないが、推定t^(x)は、量子化又は非量子化バージョンの結果よりも真に確実により近い。同等の最適化が用いられてもよい。
[0037]本発明はさらに、移動型、平均化型、又は補間型の平滑動作から、さらなる「広がり」なしに、最適に平滑な出力を提供する。
【0023】
[0038]図8の処理が完了と決定された後、最低MSEをもつq^(n)に基づいて、q(n)が変えられる(3Dバッファに記憶される)。新しいq(n)データから、垂直プロファイルビューディスプレイに対して画像が生成されると、その画像はより大きなアンテナから生成された画像に匹敵する。このため、30インチ(76.2cm)アンテナを持つシステムは、より大きな60インチ(152.4cm)アンテナにt(x)が関連付けられている場合は、60インチ(152.4cm)アンテナのシステムに近い働きをする。
【0024】
[0039]一実施形態では、図8に示した反復処理は、所定の距離を超えたq(n)データ上のみで実行される。この所定の距離は、アンテナの大きさに基づいている。例えば、システムが30インチ(76.2cm)アンテナを備えている場合は、反復処理は40nmを超えたデータ上でのみ実行される。しかし、システムが20インチ(50.8cm)アンテナを備えていれば、反復処理は、より近いレンジを超えるデータ上で実行される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサ(42)において、
アンテナ(56)によってサンプリングされた量子反射率データのカラムを受信するステップと、
前記受信された量子化反射率データのカラムに関する前記アンテナよりも大きなアンテナのビームパターンに関連する推定される反射率データに基づいて、前記量子化反射率データのカラムを調整するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記調整するステップは、
a) より大きいアンテナに関連する第1のビーム幅関数による、推定される最適な生の反射率信号の畳み込みに基づいて、推定される大きなアンテナの生の反射率信号を提供するステップと、前記推定されるアンテナの生の反射率信号は第1の値であり、
b) 所定の調整値を前記推定される大きなアンテナの生の反射率信号に加えることによって、第2の値を作成するステップと、
c) 前記推定される大きなアンテナの生の反射率信号から所定の調整値を引くことにより、第3の値を作成するステップと、
d) 前記第1から第3の値を、より小さいアンテナと関連する第2のビーム幅関数により畳み込むステップと、
e) 前記第1から第3の値の畳み込みの結果を、前以て画定した数の高度レベルに量子化することにより、第1、第2、及び第3の量子化反射率推定値を生成するステップと、
f) 前記第1、第2、及び第3の量子化反射率推定値を、前記受信された量子化反射率値と比較するステップと、
g) 比較結果のいずれが最良の結果であるかを決定するステップと、
h) 決定された結果に基づいて、前記第1、第2、及び第3の値を調整するステップと、
i) 最適な結果が達成されるまで、d)からh)を反復するステップと、
j) 3次元メモリに前記最良の結果を記憶するステップと、
を含み、
前記比較するステップは、各前記第1、第2、及び第3の量子化反射率推定値と前記受信された量子化反射率値の間の平均平方誤差(MSE)を計算するステップを含み、前記決定するステップは、いずれのMSE計算が前記最低MSE値となるかを決定するステップを含み、
前記最適な結果は、所定レベルを又はd)-h)の所定反復回数より下のMSE結果を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
アンテナによってサンプリングされた量子化反射率データのカラムを生成するよう構成されたレーダシステム(40)と、
3次元バッファを備えたメモリ(43)と、
前記レーダシステム及び前記メモリと信号通信し、受信した量子化反射率データのカラムに関連するアンテナよりも大きなアンテナのビームパターンに関連する推定された反射率データに基づいて、前記量子化反射率データのカラムを調整するよう構成されるプロセッサ(42)と、
を備え、
前記プロセッサはさらに、
a) 大きい方のアンテナに関する第1のビーム幅関数による、推定される最適な生の反射率信号の畳み込みに基づいて、推定される大きなアンテナの反射率信号を提供し、前記推定されるアンテナの生の反射率信号は第1の値であり、
b) 所定の調整値を前記推定される大きなアンテナの生の反射率信号に加えることによって、第2の値を作成し、
c) 前記推定される大きなアンテナの生の反射率信号から所定の調整値を差し引くことによって、第3の値を作成し、
d) 前記第1から第3の値を、より小さいアンテナと関連する第2のビーム幅関数により畳み込み、
e) 前記第1から第3の値の畳み込みの結果を、前以て画定した数の高度レベルに量子化することにより、第1、第2、及び第3の量子化反射率推定値を生成し、
f) 前記第1、第2、及び第3の量子化反射率推定値を、前記受信された量子化反射率値と比較し、
g) 比較結果のいずれが最良の結果であるかを決定し
h) 決定された結果に基づいて、第1、第2、及び第3の値を調整し、
i) 最適な結果が達成されるまで、d)からh)を反復し、そして
j) 3次元メモリに最良の結果を記憶する、
ように構成され、
前記プロセッサは、各第1、第2、及び第3の量子化反射率推定値と前記受信された量子反射率値の間の平均平方誤差(MSE)を計算することによって比較し、前記プロセッサはいずれのMSE計算が前記最低MSE値となるかを決定することによって決定し、
前記最適な結果は、所定レベルを又はd)-h)の所定反復回数より下のMSE結果を含み、前記プロセッサは、所定レンジを超える量子化反射率データ上でのみ調整をすることによって調整をする、
システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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