説明

気送風力選鉱

【課題】通常の非鉄金属鉱石の選鉱に当っては、微粒に磨鉱した後、選鉱用水を使用して磁力選鉱、比重選鉱、浮遊選鉱等で濃縮するのが現在までの濃縮方法であったが、選鉱用水を使用せずに空気の移動、つまり気送と風力よって選鉱が可能な気送風力選鉱方法を提供する。
【解決手段】乾燥状態で鉄・非鉄金属鉱石を、破砕から磨鉱へと粉砕し、微粉化する。微粉化した鉱石粉を、重力と風力を使って気送で移動させ、移動中に比重差による分離を行い、分離が行われた後、鉱石粉を重力で落下させ、落下途中に真横から風力で飛翔させる。これで比重差で落下の距離と時間の違いを生ぜしめ、これにより更なる選別・濃縮を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非鉄金属鉱物の混合物を夫々の固有の比重の差を利用して、風力により分別する方法である。 比重は自然金の19.3、自然銀の10.5を始め、各種の非鉄金属鉱物は殆どが4以上である。一方、これ等の非鉄金属鉱物と共存する無用な岩石類である砂利や砂となる脈石類の比重は3.0以下である場合が多く、この比重差を利用して分別を行う。
【背景技術】
【0002】
人類が金を始め非鉄金属の利用法を開発して以来、その対象となる鉱物を獲得する為に、その固有の物理的性質の差を利用して必要金属を選別し濃縮する方法を色々と開発してきた。
しかしその殆どが水を使った各種選鉱技術である。世界の金属鉱床からの採掘鉱石を分離、濃縮するには、処理鉱石10倍の選鉱用水が必要であるが、世界で処理している鉱石の量は非鉄金属鉱石だけでも約30億トンである。従って300億トンの選鉱用水が、選鉱工程の後で主として海洋に破棄されているのである。
【0003】
現在、人類が使用している鉄・非鉄金属鉱物を濃縮するための選鉱方法は比重選鉱、浮遊選鉱、磁力選鉱等各種方法があるが、その方法の殆どが大量の水を使用し、水が必要である。
これを選鉱用水という。選鉱には選鉱用水が必要だが、選鉱作業が終了したら、前述の通り300億トンの使用済み選鉱用水が海洋投棄されるのが現状である。この使用済み選鉱用水には有害物質を多く含有する場合があり、環境破壊の大きな問題を提起しているが、必ずしもこれが留意されていない現状が懸念される。 風力選鉱が導入されれば、世界的な環境破壊が大幅に軽減されるであろう。一方、世界各地では、有望な金属鉱床が発見されていながら、選鉱用水が無いために開発されていない鉱床、特に非鉄金属鉱床が多く知られている。特に各地の砂漠地域にその存在が知られている。風力選鉱が開発されれば、この種の未開発鉱山が多く開発され、人類に貢献することになるであろう。 また、選鉱用水はあっても極端な温度低下の厳しい地域では、長期間に亘り、選鉱用水を使った選鉱作業が出来ない地域もある。しかし、凍った水は比重1.0の石と同じであり、たとえ渓流の中の砂金鉱石も凍った水と共に磨鉱処理すれば風力選鉱の対象になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上に述べたとおり、鉄・非鉄金属鉱物の識別、濃縮は選鉱用水が無ければ非常に困難であるが、同時にこれらの鉱物の選鉱が膨大な量の有害物質を含んだ選鉱済みの選鉱用水の膨大な量を海中に投棄していることは関係者熟知の事実であり、環境破壊の大きな原因ともなっている。
風力選鉱は使用済み選鉱用水を海中投棄しないようにして、環境保全に効果が大いにある。
一方、選鉱用水が無くて開発されていない、世界の各地の砂漠地帯の金属鉱床が開発され、特に開発途上国に多く見られるこの種の問題も簡単に解決できることになる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そして本発明は上記目的を達成するために、乾燥状態で鉄・非鉄金属鉱石を各種工程で、破砕から磨鉱へと粉砕し、微粉化していくのである。微粉化した鉱石粉を、重力と風力を使って気送で移動させ、移動中に比重差による分離を行い、分離が行われた後、鉱石粉を重力で落下させ、落下途中に真横から風力で飛翔させる。これで比重差で落下の距離と時間の違いを生ぜしめ、これにより更なる選別・濃縮行う物である。粉砕の程度は、鉱石の種類別に決定すればよいが、通常の浮遊選鉱の際と同様の−200メッシュ90%程度を目安とすればよい。
【0006】
北極圏に近い地域での鉄・非鉄金属開発事業では冬季には周囲環境が零下摂氏50度にも達し選鉱用水が凍結し、通常の浮遊選鉱を実施している選鉱場における常温維持が長期に亘り大きな負担となっている。この種の問題を抱えている鉱山は気送風力選鉱に切り替えれば、この問題は直ちに解消する。同様の地域での含金漂砂鉱床は冬季には水を使った比重選鉱は不可能。
低温環境で、水を比重1.0の脈石を含む鉱石と考えれば、気送風力選鉱の対象になりうる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】気送風力選鉱概要図面である。
【図2】気送風力選鉱の部分符号図
【符号の説明】
10 粗砕・磨鉱工程
11 粗砕鉱石
12 一次破砕
13 二次破砕
14 一次磨鉱
15 二次磨鉱
16 篩別装置
17 篩下磨鉱鉱石
20 気送選鉱関係
21 送風機
22 気送装置
23 気送される磨鉱
24 比重差により気送中に分別された重い磨鉱
25 比重差により気送中に分別された軽い磨鉱
30 風力選鉱関係
31 送風機
32 金・銀精鉱
33 鉛・亜鉛精鉱
34 鉛・亜鉛精鉱
35 銅精鉱
36 選鉱滓
37 選鉱滓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒に粉砕した非鉄金属鉱物の混合物を、各鉱物の固有の比重の差を利用して、気送と風力により比重の異なる鉱物を比重差に基づいて鉱物別に分別する方法である。
【請求項2】
外部の気温が摂氏零下10度以下の場合は、水分を含んだ鉱物の混合物であっても、水分は、氷結し平均比重1.0の鉱物と同様の性質を持つので前述の風力による比重選鉱が可能である。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−41628(P2012−41628A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194858(P2010−194858)
【出願日】平成22年8月16日(2010.8.16)
【出願人】(591092338)
【Fターム(参考)】