気道感染症を治療するための医薬製剤および方法
本発明は、カルシウム塩およびナトリウム塩を含みCa+2とNa+の比が約4:1(モル:モル)から約16:1(モル:モル)である、個体の気道感染症または肺疾患を治療するための医薬製剤に関する。本発明はまた、カルシウム塩およびナトリウム塩を含む医薬製剤の投与を含む、気道感染症を治療(予防的治療を含む)し伝播を低減する方法、 肺疾患または肺疾患の急性増悪の治療(予防的治療を含む)する方法、および肺疾患の急性増悪の伝播を低減する方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2009年3月26日に出願された米国特許仮出願第61/163,772号明細書、2009年3月26日に出願された米国特許仮出願第61/163,763号明細書、2009年3月26日に出願された米国特許仮出願第61/163,767号明細書、2009年10月28日に出願された米国特許仮出願第61/255,764号明細書、2010年1月25日に出願された米国特許仮出願第61/298,092号明細書、および2010年2月18日に出願された第61/305,819号明細書の利益を主張する。上記の出願の全教示は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
気道感染症は、上気道(例えば鼻、耳、鼻腔および喉)および下気道(例えば気管、気管支および肺)のありふれた感染症である。気道感染症は一次または二次感染症であってよい。
【0003】
上気道感染症の症候は鼻水または鼻づまり、過敏性、情動不安、食欲低下、活動レベル低下、咳および発熱を包含する。上気道のウイルス感染は、例えば咽喉痛、風邪、クループおよび流感をもたらす、またはこれらに関係している。上気道感染症を引き起こすウイルスの例は、ライノウイルスおよびインフルエンザウイルスを包含する。上気道の細菌感染は、例えば百日咳および敗血性咽頭炎をもたらす、またはこれらに関係している。上気道感染症を引き起こす例示の細菌は、ストレプトコックス・ピュオゲネス(Streptococcus pyogenes)およびボルダテッラ・ペルトゥッシス(Bordatella pertussis)を包含する。
【0004】
下気道感染症の臨床症状は、肺中に痰、発熱および呼吸困難を起こす、浅い咳を包含する。下気道のウイルス感染症の例は、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス(「PIV」)感染症、呼吸器合胞体ウイルス(「RSV」)感染症および細気管支炎を包含する。下気道感染症を引き起こす細菌の例は、ストレプトコックス・ニューモニアエ(Streptococcus pneumoniae)(肺炎球菌性肺炎を引き起こす)およびミュコバクテリウム・トゥベルクロシス(Mycobacterium tuberculosis)(結核を引き起こす)を包含する。
【0005】
真菌によって引き起こされる気道感染症は、全身性カンジダ症、ブラストミセス症、クリプトコックス症(crytococcosis)、コクシジオイデス症およびアスペルギルス症を包含する。
【0006】
流感として一般に知られているインフルエンザは、オルソミクソウイルス科(インフルエンザウイルス)のRNAウイルスによって引き起こされる鳥および哺乳動物の感染症である。通常、インフルエンザは、感染した哺乳動物から空中に浮かんでいるウイルスを含有する飛沫およびエアロゾルを経由して、また感染した鳥からそれらの糞便を通して感染する。インフルエンザはまた、唾液、鼻からの分泌、糞および血液によって感染し得る。感染は、これらの体液または汚染表面との接触によって生じる。
【0007】
ヒトパラインフルエンザウイルス(hPIV)は、パラミクソウイルス科のものである一本鎖RNAウイルスの4つの別個の血清型の群である。これらは、より幼い子どもの下気道感染の2番目に一般的な原因である。また、パラインフルエンザウイルスは、クループの症例の約75%を引き起こす。宿主の寿命の全体にわたる反復感染症は珍しくない。後期の突発的発生の症候は、風邪および咽喉痛のような上気道疾病を包含する。臓器移植患者などの免疫抑制された人々において、パラインフルエンザウイルス感染症は重症肺炎を引き起こす場合があり、時には致命的になり得る。
【0008】
ヒトライノウイルスはピコルナウイルス科の一属で、普通の風邪感染症の30%から50%の原因であると考えられている。100を超える血清型が別個のヒトライノウイルスの菌種が同定された。血清型間に干渉効果がほとんどないので、全血清型ワクチン剤は利用できない。ライノウイルスまたは、中耳炎および喘息の増悪の病因に著しい役割を果たす。ライノウイルスによる感染は、炎症性仲介物質の放出および気管支応答性の増大をもたらす。
【0009】
ヒト呼吸器合胞体ウイルス(RSV)は気道感染を引き起こすウイルスである。それは、乳児および小児期の下気道感染症および受診の主要な原因である。RSV用のワクチンはなく、治療は、支持療法(疾病が自然の経過をたどるまで、液および酸素を用いる)に限定されている。
【0010】
肺炎は、極めて様々な感染因子によって引き起こされるありふれた疾患であるが、世界的に非常に高い罹患率および死亡率の原因である。肺炎は、世界中で第3の死因であり、また工業先進国では、感染症による第1の死因である。細菌は成人の肺炎の最も一般的な原因である。ほとんどの市中感染性肺炎はS.ニューモニアエ(S.pneumoniae)、ハエモフィルス・インフルエンザエ(Haemophilus influenzae)およびミュコプラスマ・ニューモニアエ(Mycoplasma pneumoniae)による感染による。Lancet.,362:1991−200(2003);Curr Opin Pulm Med、6:226−233(2000)。遅い発症の人工呼吸器関連肺炎の大半は、耐抗生物質性の亜型、プセウドモナス属種(Pseudomonas spp.)、クレブシェッラ属種(Klebsiella spp.)、ならびにアキテノバクテル属種(Acitenobacter spp.)を包含するS.アウレウス(S.aureus)によって引き起こされる。Crit Care.,9:459−464(2005)。
【0011】
気道感染症の現在の療法は、ウイルスの気道感染症、細菌の気道感染症および真菌の気道感染症の治療、予防または回復のための抗ウイルス剤、抗細菌剤または抗真菌剤の投与をそれぞれ含む。不幸にして、ある場合には、利用可能な療法はないか、または、感染症は、治療困難であり、または副作用の出現が治療剤の投与の恩恵を上回るとわかった。細菌の気道感染症を治療する抗細菌剤の使用はまた、副作用を生じるか、または耐性の細菌株をもたらす恐れがある。抗真菌剤の投与は腎不全または骨髄機能障害を引き起こし、抑制免疫系の患者の真菌感染症に対して有効ではないことがある。さらに、感染を引き起こす微生物(例えばウイルス、細菌または真菌)が耐性であるか、または投与された治療剤または治療剤の組合せに対する耐性を発現することがある。実際に、投与される治療剤に対する耐性を発現する微生物は、しばしば多形質発現性薬物または多剤耐性、すなわち投与される薬剤が作用するメカニズムと異なるメカニズムによって作用する治療剤に対する耐性を発現する。したがって、薬物耐性の結果、多くの感染症が、幅広い標準治療プロトコルに抵抗性があることが分かる。そのため、気道感染症およびその症候の治療、予防、管理および/または回復のための新規の療法が必要である。
【0012】
米国特許出願公開第2007/0053844号明細書は、食塩水中にカルシウム塩を含む導電性製剤(例えば、0.9%NaClに溶解した1.29%CaCl2)を記載している。この製剤は、気道粘膜壁の物性(気道粘膜壁の表面張力、表面弾性およびバルク粘度など)を変えて、吐き出される粒子を抑制することができる。例えば、0.9%等張食塩水に溶解された1.29%CaCl2からなる製剤は、吐き出される粒子の抑制が1000倍を越えた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
【課題を解決するための手段】
【0014】
一態様において、本発明は、Ca+2対Na+の比が約4:1(モル:モル)から約16:1(モル:モル)であるカルシウム塩およびナトリウム塩を含む、個体の気道感染症または肺疾患を治療するのに有用な医薬製剤に関する。Ca+2対Na+の比が約4:1(モル:モル)から約16:1(モル:モル)である場合、2種の塩の組合せは、インフルエンザ感染の細胞培養モデルのウイルス複製を低減するにおいて優れた相乗効果を与えることを本明細書において提供されるデータは示す。さらに、本製剤は、インフルエンザ(例えばインフルエンザA型H1N1、インフルエンザA型H3N2、インフルエンザB型)の多くの株のウイルス複製を低減するのに非常に有効である。続いてインビボの検討によると、本製剤が(1)発症を遅らせ発熱の重症度を低減する、(2)体重損失を阻止する、(3)インフルエンザのフェレットモデルで鼻の炎症細胞数を低減すると示されたように、Ca+2対Na+が8:1の比の製剤がインフルエンザ感染症を治療するのに非常に有効であることを確証する。同様に、インフルエンザのインビボマウスモデルで、本製剤は動物の生存率を改善することが示された。さらに、本明細書において記載される医薬製剤の治療活性は病原体に依存せず、本製剤が(1)細胞培養モデルでヒトパラインフルエンザウイルス(hPIV)感染力を低減する、(2)細胞培養モデルでライノウイルス感染力を低減する、および(3)マウスモデルでストレプトコックス・ニューモニアエ感染症を治療することに有効であることが示された。
【0015】
特定の実施形態において、Ca+2対Na+の比は約4:1(モル:モル)、約4.5:1(モル:モル)、約5:1(モル:モル)、約5.5:1(モル:モル)、約6:1(モル:モル)、約6.5:1(モル:モル)、約7:1(モル:モル)、約7.5:1(モル:モル)、約8:1(モル:モル)、約8.5:1(モル:モル)、約9:1(モル:モル)、約9.5:1(モル:モル)、約10:1(モル:モル)、約10.5:1(モル:モル)、約11:1(モル:モル)、約11.5:1(モル:モル)、約12:1(モル:モル)、約12.5:1(モル:モル)、約13:1(モル:モル)、約13.5:1(モル:モル)、約14:1(モル:モル)、約14.5:1(モル:モル)、約15:1(モル:モル)、約15.5:1(モル:モル)、または約16:1(モル:モル)である。
【0016】
特定の実施形態において、本医薬製剤は液剤である。特定の実施形態において、液剤中のCa2+イオンの濃度は、約0.115Mから約1.15M、または約0.575Mから約1.15Mである。
【0017】
特定の実施形態において、本液剤中のNa+イオンの濃度は、約0.053Mから約0.3M、または約0.075Mから約0.3Mである。
【0018】
本明細書において記載される医薬製剤は、要望により低張性、等張性または高張性であってよい。例えば、本明細書において記載される医薬製剤のいずれかは、約0.1倍張度、約0.25倍張度、約0.5倍張度、約1倍張度、約2倍張度、約3倍張度、約4倍張度、約5倍張度、約6倍張度、約7倍張度、約8倍張度、約9倍張度、約10倍張度、少なくとも約1倍張度、少なくとも約2倍張度、少なくとも約3倍張度、少なくとも約4倍張度、少なくとも約5倍張度、少なくとも約6倍張度、少なくとも約7倍張度、少なくとも約8倍張度、少なくとも約9倍張度、少なくとも約10倍張度、約0.1倍から約1倍の間、約0.1倍から約0.5倍の間、約0.5倍から約2倍の間、約1倍から約4倍の間、約1倍から約2倍の間、約2倍から約10倍の間、または約4倍から約8倍の間であってよい。
【0019】
特定の実施形態において、本医薬製剤は、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム、リン酸カルシウム、アルギン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ソルビン酸カルシウム、硫酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウムおよびクエン酸カルシウムからなる群から選択されるカルシウム塩を含む。例示の実施形態において、カルシウム塩は塩化カルシウムまたは乳酸カルシウムである。別の例示の実施形態において、カルシウム塩はクエン酸カルシウム、乳酸カルシウムまたは硫酸カルシウムである。
【0020】
特定の実施形態において、本医薬製剤は、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウムおよび乳酸ナトリウムからなる群から選択されるナトリウム塩を含む。例示の実施形態において、ナトリウム塩は塩化ナトリウムである。別の例示の実施形態において、ナトリウム塩はクエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウムまたは硫酸ナトリウムである。
【0021】
特定の実施形態において、本医薬製剤は乾燥粉末製剤である。特定の実施形態において、カルシウム塩は約19.5%(重量/重量)から約90%(重量/重量)の量で乾燥粉末製剤中に存在する。
【0022】
例示の実施形態において、乾燥粉末製剤のカルシウム塩は、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウムまたはこれらの組合せである。
【0023】
例示の実施形態において、乾燥粉末製剤のナトリウム塩は、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウムまたはこれらの組合せである。
【0024】
特定の実施形態において、本医薬製剤は、約0.001mg/kg体重/用量から約10mg/kg体重/用量のカルシウム用量を肺に送達するように製剤化される。特定の実施形態において、本医薬製剤は、約0.001mg/kg体重/用量から約10mg/kg体重/用量のナトリウム用量を肺に送達するように製剤化される。特定の実施形態において、本医薬製剤は、約0.001mg/kg体重/用量から約10mg/kg体重/用量のカルシウム用量を鼻腔に送達するように製剤化される。特定の実施形態において、本医薬製剤は、約0.001mg/kg体重/用量から約10mg/kg体重/用量のナトリウム用量を鼻腔に送達するように製剤化される。
【0025】
特定の実施形態において、本医薬製剤は追加の治療剤をさらに含む。
【0026】
特定の実施形態において、本医薬製剤は賦形剤をさらに含む。例示の賦形剤はラクトースおよびグリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン(isolucine)、トレハロース、ジパルミトイルホスファチジルコリン、(DPPC)ジホスファチジルグリセロール(DPPG)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−L−セリン(DPPS)、1,2−ジパルミトイル−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DSPE)、1−パルミトイル−2−オレオイルホスファチジルコリン(POPC)、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、ソルビタントリオレエート(Span 85)、グリココール酸塩、サーファクチン、チロキサポール、リン酸ナトリウム、デキストラン、デキストリン、マンニトール、マルトデキストリン、ヒト血清アルブミン、組み換えヒト血清アルブミンまたは生分解性ポリマーを包含する。
【0027】
特定の実施形態において、本医薬製剤は単位用量製剤である。
【0028】
別の態様において、本発明は、Ca+2対Na+の比が約4:1(モル:モル)から約16:1(モル:モル)であるカルシウム塩およびナトリウム塩を含む医薬製剤の有効量を、気道感染症を有する、気道感染症の症候を示す、または気道感染症に罹る危険がある個体に投与することを含む、気道感染症を治療する(予防的治療を含む)方法を提供する。
【0029】
別の態様において、本発明は、Ca+2対Na+の比が約4:1(モル:モル)から約16:1(モル:モル)であるカルシウム塩およびナトリウム塩を含む医薬製剤の有効量を、気道感染症を有する、気道感染症の症候を示す、または気道感染症に罹る危険がある個体に投与することを含む、気道感染症の伝播を低減する方法を提供する。
【0030】
特定の実施形態において、気道感染症は細菌性肺炎などの細菌感染症である。特定の実施形態において、細菌感染はスタピュロコックス・ニューモニアエ(Streptococcus pneumoniae)(肺炎双球菌とも呼ばれる)、スタピュロコックス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、スタピュロコックス・アガラクティアエ(Streptococcus agalactiae)、スタピュロコックス・ピュオゲネス(Streptococcus pyogenes)、ハエモピィルス・インフルエンザエ(Haemophilus influenzae)、ハエモピィルス・パラインフルエンザエ(Haemophilus parainfluenzae)、クレブシェッラ・ニューモニアエ(Klebsiella pneumoniae)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、プセウドモナス・アエルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)、モラクセラ・カタッラリス(Moraxella catarrhalis)、クラミュドピラ・ニューモニアエ(Chlamydophila pneumoniae)、ミュコプラスマ・ニューモニアエ、レジオネッラ・ニューモピラ(Legionella pneumophila)、セッラティア・マルケセンス(Serratia marcescens)、ブルクホリデリア・ケパキア(Burkholderia cepacia)、ブルクホリデリア・プセウドマッレイ(Burkholderia pseudomallei)、バキッルス・アントラキス(Bacillus anthracis)、バキッルス・ケレウス(Bacillus cereus)、ボルダテッラ・ペルトゥッシス、ステノトロポモナス・マルトピリア(Stenotrophomonas maltophilia)、シトロバクター科からの細菌、アシネトバクター(ecinetobacter)科からの細菌、およびミュコバクテリウム・トゥベルクロシスからなる群から選択される細菌によって引き起こされる。
【0031】
特定の実施形態において、気道感染は、インフルエンザまたはウイルス性肺炎などのウイルス感染症である。特定の実施形態において、ウイルス感染は、インフルエンザウイルス(例えばインフルエンザウイルスA型、インフルエンザウイルスB型)、呼吸器合胞体ウイルス、アデノウイルス、メタニューモウイルス、サイトメガロウイルス、パラインフルエンザウイルス(例えばhPIV−1、hPIV−2、hPIV−3、hPIV−4)、ライノウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、コロナウイルス、単純性疱疹ウイルス、SARSコロナウイルスおよび天然痘からなる群から選択されるウイルスによって引き起こされる。
【0032】
特定の実施形態において、気道感染症は真菌感染症である。特定の実施形態において、真菌感染症は、ヒストプラスマ・カプスラトゥム(Histoplasma capsulatum)、クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ニューモキュスティス・イロウェキ(Pneumocystis jiroveci)、コッキディオイデス・インミティス(Coccidioides immitis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、およびニューモキュスティス・イロウェキイ(Pneumocystis jirovecii)(これはニューモシスチス症とも呼ばれるニューモキュスティス肺炎(PCP)を引き起こす)からなる群から選択される真菌によって引き起こされる。
【0033】
特定の実施形態において、気道感染症は寄生虫感染症である。特定の実施形態において、寄生虫感染症は、トキソプラスマ・ゴンディ(Toxoplasmagondii)およびストロンギュロイデス・ステルコラリス(Strongyloides stercoralis)からなる群から選択される寄生虫によって引き起こされる。
【0034】
別の態様において、本発明は、Ca+2対Na+の比が約4:1(モル:モル)から約16:1(モル:モル)であるカルシウム塩およびナトリウム塩を含む医薬製剤の有効量を、個体の気道に投与することを含む、肺疾患を有する個体(例えば、肺疾患の症候を示す、または肺疾患に罹りやすい個体)を治療する(予防的治療を含む)方法を提供する。
【0035】
別の態様において、本発明は、Ca+2対Na+の比が約4:1(モル:モル)から約16:1(モル:モル)であるカルシウム塩およびナトリウム塩を含む医薬製剤の有効量を、それを必要とする個体(例えば、肺疾患の急性増悪を有する、肺疾患の急性増悪の症候を示す、または肺疾患の急性増悪に罹りやすい個体)の気道に投与することを含む、個体の慢性肺疾患の急性増悪を治療する(予防的治療を含む)方法を提供する。例示の肺疾患は、喘息(例えば、アレルギー性/アトピー性、小児性、遅発症性、咳型または慢性閉塞性)、気道過敏性、アレルギー性鼻炎(季節性または非季節性)、気管支拡張症、慢性気管支炎、肺気腫、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性繊維症、若年性喘鳴などを包含する。
【0036】
本発明はまた、治療に使用するための本明細書において記載される医薬製剤、および、気道感染症を治療するための、気道感染症の伝播を低減するための、肺疾患を治療するための、または慢性肺疾患の急性増悪を治療するための医薬を製造するための、本明細書において記載される医薬製剤の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】インフルエンザA型/WSN/33/1ウイルス複製への、ナトリウムおよびカルシウム濃度を変化させた影響を示す等高線プロットである。いくつかの試験からのデータを規格化するために、各処理条件のウイルス複製速度の変化は、ゼロ塩条件と比較して、試験ごとに求めた。X軸は増加するCaCl2濃度を表し、Y軸は増加するNaCl濃度を表す。各点は、1試験当たり少なくとも3回繰り返して試験した製剤を表す。ウイルス感染力の減少は、黒さの増加により示される。(すなわち、より大きい数字およびより暗い色調は、インフルエンザウイルス複製の低減により大きい効果を有する製剤を表す)。
【図2A】Ca2+:Na+比が8:1(モル:モル)の液剤の用量応答効果を示す図である。
【図2B】Ca2+:Na+比が16:1(モル:モル)の液剤の用量応答効果を示す図である。両方の場合において、細胞は感染の1時間前に液剤で処理した。
【図3】本製剤が、正常ヒト気管支上皮(NHBE)細胞のインフルエンザ感染力を減少させたことを示す図である。4つの異なるドナーからのNHBE細胞は示した製剤を用いて処理し、インフルエンザA型/Panama/2007/99に感染させた。ウイルス価は感染の24時間後に先端の洗浄液から求めた。データは未処理(空気)対照に対して規格化し、対照からのTCID50/mLのlog10変化として表示した。データは、1条件当たり2から3回繰り返した平均±SDである。N.D.=測定せず
【図4】本製剤がCalu−3細胞のインフルエンザウイルスの多くの株の感染力を用量依存的に減少させたことを示す図である。Calu−3細胞は、0.5倍、2倍および8倍の張度(1倍=等張)である、Ca2+:Na+が8:1モル比の製剤で処理した。処理24時間後ウイルス価を求め、未処理対照に対するウイルス価の減少倍数を、各ウイルス株について算定した。この実施例において試験したインフルエンザウイルス株は、凡例および表2に示される。
【図5A】カルシウムナトリウム製剤を用いる処理が、インフルエンザに感染したフェレットの発熱を遅延させ体温を低下させたことを示す図である。対照フェレット(黒丸)、製剤A処理フェレット(白丸)、4倍処理フェレット(黒四角)または8倍処理フェレット(白四角)の体温変化平均(±SEM)を表す。 検討の過程にわたって処理フェレットが発熱を遅延させ体温が低下したことを示す図である。(p<0.0001、二元配置分散分析(Two−way ANOVA))。
【図5B】処理フェレットが対照動物のピーク発熱の時間に体温を低下させたことを示す図である。(感染後36時間;*p<0.05、**p<0.01マン・ウィットニーU検定;対照のn数は9、処理製剤Aのn数は9、および4倍処理および8倍処理のn数は10)。
【図6A】カルシウムナトリウム製剤を用いた処理がインフルエンザに感染したフェレットの体重損失を阻止したことを示す図である。対照フェレット(黒丸)、製剤A処理フェレット(白丸)、4倍処理フェレット(黒四角)または8倍処理フェレット(白四角)の時間ゼロからのパーセント体重損失が表されている。 処理フェレットが、検討の過程にわたり、体重損失が減ったことを示す図である。(p<0.0001、二元配置分散分析)。
【図6B】処理フェレットが対照動物のピーク損失の時間に体重損失を減少させたことを示す図である。(感染後48時間;*p<0.05、**p<0.01マン・ウィットニーU検定;群のn数はすべて10、ただし、処理製剤Aのn数は9)。
【図7A】カルシウムナトリウム製剤を用いた処理がフェレットのインフルエンザ感染に対する炎症反応を弱めたことを示す図である。鼻洗を毎日1回示された時間に実施し、各鼻洗の炎症細胞数を数えた。顕著な量の血液を含む鼻洗試料は各時点で分析のために廃棄した。平均(±SEM)対照フェレット(黒丸)、製剤A処理フェレット(白丸)、4倍処理フェレット(黒四角)または8倍処理フェレット(白四角)が表されている。 カルシウムナトリウム製剤を用いた処理が、鼻洗試料中の炎症細胞数を、統計的に有意なレベルに経時的に減少させたことを示す図である。(p<0.0001、二元配置分散分析)
【図7B】対照動物と比較して、処理動物の炎症性細胞浸潤のピークが低下したことを示す図である。(72時間;**p<0.01、および***p<0.001マン・ウィットニーU検定;72時間の時点で対照のn数は5、製剤Aおよび4倍処理のn数は6、および8倍処理のn数は7)。
【図7C】感染120時間後の処理動物の炎症細胞の減少を示す図である。(*p<0.05、マン・ウィットニーU検定;対照のn数は6、製剤A処理のn数は5、4倍処理のn数は6、および8倍処理のn数は7)。
【図8】カルシウムナトリウム製剤が、Calu−3または正常ヒト気管支上皮(NHBE)細胞のhPIV−3感染を用量依存的に減少させたことを示す図である。Calu−3(黒丸)またはNHBE(白丸)細胞はヒト3型パラインフルエンザウイルス(hPIV−3)による感染の1時間前にカルシウムナトリウム製剤で処理した(0.5倍、2倍または8倍張度;Ca2+:Na+モル比は8:1)。感染の24時間後の細胞の先端洗浄液中のウイルス価を、MK−2細胞を使用してTCID50アッセイによって求めた。先端洗浄液のパラインフルエンザ価は用量依存的に減少した。各細胞型からのデータは一元配置分散分析およびテューキー多重比較検定を使用して解析した。
【図9】カルシウムナトリウム製剤がCalu−3細胞のライノウィルス(rhinorivus)感染を減少させたことを示す図である。Calu−3細胞をカルシウムナトリウム製剤で処理した(8倍張度;Ca2+:Na+モル比は8:1)。1時間後、細胞はライノウイルスに感染させ、3時間後に、独立ウイルスを除去するために細胞を洗浄した。ウイルス価は、感染24時間後に培養物の先端面からTCID50アッセイによって求めた。各データ点は2回繰り返しウェルの平均+SDで、2つの独立した試験を代表する。
【図10】カルシウムナトリウム製剤(8:1のCa2+:Na+モル比)が用量依存的に肺細菌性負荷を減少させたことを示す図である。マウスは、PariLC Sprint nebulizerを使用し表示した製剤で処理し、続いて、S.ニューモニアエに感染させた。各動物の肺細菌性負荷を示す。各丸は、1個の動物からのデータを表し、バーは95%信頼区間の幾何平均を表す。NaCl、0.5倍および1倍の群のデータを2または3の独立した試験から合わせてある。2倍および4倍の群からのデータは単一試験からである。
【図11】より長い噴霧時間でカルシウム用量を増加させることが治療活性に有意な影響を与えないことを示す図である。Pari LC Sprint nebulizerを使用して食塩水(NaCl)またはカルシウムナトリウム製剤(1倍張度=等張;8:1のCa2+:Na+モル比)でマウスを処理し、続いて、S.ニューモニアエに感染させた。各動物の肺細菌負荷を示す。各丸は、1個の動物からのデータを表し、バーは幾何平均を表す。3分以上の投薬時間は細菌負荷を対照に対して著しく減少させた(一元配置分散分析;テューキー多重比較事後検定)。
【図12】カルシウムナトリウム製剤がマウスインフルエンザモデルのインフルエンザウイルス感染症を治療するのに有効であったことを示す図である。BALB/cマウス(1群当たりのn数は7−8)は、インフルエンザA型/PR/8(H1N1)による感染の3時間前に示した各製剤で処理した。マウスは続いて、感染の3時間後、次いで、合計11日間に1日2回処理した。動物生存率、動物体温の変化および体重の変化を、21日間追跡記録した。95°F未満の体温を示した動物は安楽死させた。
【発明を実施するための形態】
【0038】
1. 概観
本明細書において記載されるように、カルシウム塩およびナトリウム塩を含む吸入された塩製剤の治療活性のインビボおよびインビトロの検討を行った。これらの検討の過程で、塩製剤中のカルシウム対ナトリウムの相対比が製剤の治療活性に影響することが発見された。インビトロおよびインビボの検討の結果によると、狭い範囲のカルシウム対ナトリウム比が優れた治療活性を与えた。詳細には、約4:1から約16:1(モル:モル)のカルシウム対ナトリウムの比が優れた治療活性を与えることが発見された。
【0039】
本明細書において記載されるように、カルシウム:ナトリウム比約4:1から約16:1(モル:モル)を有する製剤の治療活性がいくつかの臨床前モデルにおいて実証された。例えば、本製剤は、とりわけ、インフルエンザの細胞培養モデルのウイルス複製を減少させることに優れた効果があり、インフルエンザ(例えばインフルエンザA型H1N1、インフルエンザA型H3N2、インフルエンザB型)の多くの株のウイルス複製を減少させ、インビボフェレットインフルエンザモデルにおいて発熱の重症度および鼻の炎症細胞数を低減し、インビボマウスインフルエンザモデルにおいて動物生存率を改善し、細胞培養モデルにおいてヒトパラインフルエンザウイルス(hPIV)のウイルス複製を減少させ、細胞培養モデルにおいてライノウイルスのウイルス複製を減少させる、また、マウス肺炎モデルにおいてストレプトコックス・ニューモニアエの肺細菌負荷を減少させることが示された。これらの検討から得られたデータは、本製剤が広範囲の病原体(例えばインフルエンザウイルス、ヒトパラインフルエンザウイルス、S.ニューモニアエの多くの株)によって引き起こされる気道感染症を治療する(予防的治療を含む)のに有用であることを実証する。また、本製剤は、気道感染症の伝播を減少させる、肺疾患を治療する、または慢性肺疾患の急性増悪を治療するのに有用である。
【0040】
2.定義
本明細書中で使用される場合、語句「空気動力学的に軽い粒子」とは、約0.4g/cm3未満のタップ密度を有する粒子を指す。乾燥粉末粒子のタップ密度は、標準的なUSPタップ密度測定によって得ることができる。タップ密度は外膜密度(envelope mass density)の普通の測定である。等方性粒子の外膜密度は、粒子の質量を、それが封入され得る最小球外膜体積で除したものとして定義される。低タップ密度の一因となる特徴としては、不規則な表面テクスチャーおよび多孔性構造が挙げられる。
【0041】
本明細書中で使用される場合、用語「エアロゾル」は、液体および非液体粒子を含む粒子の微細なミスト、例えば、典型的には、約0.1から約30ミクロン体積メジアン幾何学的直径、または約0.5から約10ミクロンの間の質量メジアン空気動力学的直径の乾燥粉末の任意の調製物を指す。好ましくはエアロゾル粒子の体積メジアン幾何学的直径は約10ミクロン未満である。エアロゾル粒子の好ましい体積メジアン幾何学的直径は約5ミクロンである。例えば、エアロゾルは、約0.1から約30ミクロンの間の、約0.5から約20ミクロン間の、約0.5から約10ミクロンの間の、約1.0から約3.0ミクロンの間の、約1.0から5.0ミクロンの間の、約1.0から10.0ミクロンの間の、約5.0から15.0ミクロンの間の体積メジアン幾何学的直径を有する粒子を含むことができる。好ましくは、質量メジアン空気動力学的直径は、約0.5から約10ミクロンの間に、約1.0から約3.0ミクロンの間に、または約1.0から5.0ミクロン間にある。
【0042】
用語「肺炎」は、肺の炎症性疾病を指す技術用語である。肺炎は、肺への細菌、ウイルス、真菌または寄生虫による感染および化学的または物理的な損傷を包含する様々な原因の結果として生じ得る。肺炎に関係する典型的な症候は、咳、胸痛、発熱および呼吸困難を包含する。肺炎の臨床診断は当業界で周知であり、X線および/または喀痰検査を包含してもよい。
【0043】
用語「細菌性肺炎」は、例えば、ストレプトコックス・ニューモニアエ、スタピュロコックス・アウレウス、スタピュロコックス・アガラクティアエ、ハエモピルス・インフルエンザエ、クレブシェッラ・ニューモニアエ、エシェリキア・コリ、プセウドモナス・アエルギノサ、モラクセッラ・カタッラリス、クラミュドピラ・ニューモニアエ、ミュコプラスマ・ニューモニアエまたはレジオネッラ・ニューモピラによる気道の感染を含む細菌感染によって引き起こされる肺炎を指す。
【0044】
用語「ウイルス性肺炎」は、ウイルス感染によって引き起こされる肺炎を指す。一般にウイルス性肺炎を引き起こすウイルスは例えば、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、アデノウイルスおよびメタニューモウイルスを包含する。単純ヘルペスウイルスは、一般人口の肺炎の原因としては稀であるが、新生児においてより一般的である。弱体化した免疫系を有する人々はまたサイトメガロウイルス(CMV)によって引き起こされる肺炎の危険がある。
【0045】
本明細書において使用される場合、用語「気道」は上気道(例えば、鼻通路、鼻腔、喉、咽頭)、呼吸気道(例えば、喉頭、気管(tranchea)、気管支、細気管支)および肺(例えば、呼吸細気管支、肺胞管、肺胞嚢、肺胞)を包含する。
【0046】
用語「気道感染」は、上気道感染(例えば、鼻腔、咽頭、喉頭の感染)および下気道感染(例えば、気管、一次気管支、肺の感染)およびこれらの組合せを指す技術用語である。気道感染に関係する典型的な症候は鼻閉、咳、流鼻汁、咽喉痛、発熱、顔面圧迫感、くしゃみ、胸痛および呼吸困難を包含する。
【0047】
本明細書において使用される場合、「1倍」張度は、正常なヒト血液および細胞に対して等張の溶液を指す。正常なヒト血液および細胞と比較して低張性か高張性の溶液は適切な乗数を使用して、1倍溶液に対して記載される。例えば、低張液は0.1倍、0.25倍または0.5倍の張度を有していてよく、高張液は2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍または10倍の張度を有していてもよい。
【0048】
本明細書において使用される場合、用語「乾燥粉末」は、吸入用具内で分散され、続いて、対象によって吸入され得る、細かく分散した呼吸に適した乾燥粒子を含む組成物を指す。そのような乾燥粉末または乾燥粒子は、最大約15%の水もしくは他の溶媒を含むか、または水もしくは他の溶媒を実質的に含まない、または無水であってもよい。
【0049】
3.医薬製剤
一態様において、本発明は、Ca+2対Na+の比が約4:1(モル:モル)から約16:1(モル:モル)である、カルシウム塩およびナトリウム塩を含む医薬製剤に関する。医薬製剤は吸入に適切であり、それを必要とする個体の、気道感染症を治療する、気道感染症の伝播を減少させる、肺疾患を治療する、または慢性肺疾患の急性増悪を治療するために使用することができる。何らかの特定の理論に束縛されることは欲しないが、本明細書において記載される塩製剤によって与えられる治療上の利益は、塩製剤の投与の後に気道(例えば、肺粘液、気道壁液)内で陽イオン(Ca2+、Na+またはCa2+とNa+)の量が増加することに起因すると考えられる。
【0050】
本医薬製剤は、約4:1(モル:モル)から約16:1(モル:モル)のCa+2対Na+の比を含むことができる。例えば、本製剤は、約5:1(モル:モル)から約16:1(モル:モル)、約6:1(モル:モル)から約16:1(モル:モル)、約7:1(モル:モル)から約16:1(モル:モル)、約8:1(モル:モル)から約16:1(モル:モル)、約9:1(モル:モル)から約16:1(モル:モル)、約10:1(モル:モル)から約16:1(モル:モル)、約11:1(モル:モル)から約16:1(モル:モル)、約12:1(モル:モル)から約16:1(モル:モル)、約13:1(モル:モル)から約16:1(モル:モル)、約14:1(モル:モル)から約16:1(モル:モル)、約15:1(モル:モル)から約16:1(モル:モル)のCa+2対Na+の比を含むことができる。
【0051】
代替としてまたはさらに、本製剤は、約4:1(モル:モル)から約5:1(モル:モル)、約4:1(モル:モル)から約6:1(モル:モル)、約4:1(モル:モル)から約7:1(モル:モル)、約4:1(モル:モル)から約8:1(モル:モル)、約4:1(モル:モル)から約9:1(モル:モル)、約4:1(モル:モル)から約10:1(モル:モル)、約4:1(モル:モル)から約11:1(モル:モル)、約4:1(モル:モル)から約12:1(モル:モル)、約4:1(モル:モル)から約13:1(モル:モル)、約4:1(モル:モル)から約14:1(モル:モル)、約4:1(モル:モル)から約15:1(モル:モル)のCa+2対Na+の比を含むことができる。
【0052】
代替としてまたはさらに、本製剤は、約4:1(モル:モル)から約12:1(モル:モル)、約5:1(モル:モル)から約11:1(モル:モル)、約6:1(モル:モル)から約10:1(モル:モル)、約7:1(モル:モル)から約9:1(モル:モル)のCa+2対Na+の比を含むことができる
【0053】
代替としてまたはさらに、Ca+2対Na+の比は、約4:1(モル:モル)、約4.5:1(モル:モル)、約5:1(モル:モル)、約5.5:1(モル:モル)、約6:1(モル:モル)、約6.5:1(モル:モル)、7:1(モル:モル)、約7.5:1(モル:モル)、約8:1(モル:モル)、約8.5:1(モル:モル)、約9:1(モル:モル)、約9.5:1(モル:モル)、約10:1(モル:モル)、約10.5:1(モル:モル)、約11:1(モル:モル)、約11.5:1(モル:モル)、約12:1(モル:モル)、約12.5:1(モル:モル)、約13:1(モル:モル)、約13.5:1(モル:モル)、約14:1(モル:モル)、約14.5:1(モル:モル)、約15:1(モル:モル)、約15.5:1(モル:モル)または約16:1(モル:モル)である。
【0054】
例示の実施形態において、Ca+2対Na+の比は約8:1(モル:モル)または約16:1(モル:モル)である。
【0055】
適切なカルシウム塩は、例えば、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム、リン酸カルシウム、アルギン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ソルビン酸カルシウム、硫酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、乳酸カルシウムなど、またはこれらの組合せを包含する。
【0056】
特定のカルシウム塩は、溶解するとカルシウム塩の1モル当たり2モル以上のCa2+を与える。そのようなカルシウム塩はカルシウムが濃厚であり、そのため、陽イオン(例えばCa2+、Na+、またはCa2+とNa+)の有効量を送達することができる液剤または乾燥粉末製剤を製造するのに特に適切であり得る。例えば、クエン酸カルシウムの1モルは、溶解すると3モルのCa2+を与える。カルシウム塩が低分子量の塩である、および/または低分子量陰イオンを含んでいることは、また、一般に好ましい。カルシウムイオンおよび低分子量陰イオンを含むカルシウム塩などの低分子量カルシウム塩は、高分子の塩および高分子量陰イオンを含むカルシウム塩と比較してカルシウムが濃厚である。カルシウム塩は、約1000g/モル未満、約950g/モル未満、約900g/モル未満、約850g/モル未満、約800g/モル未満、約750g/モル未満、約700g/モル未満、約650g/モル未満、約600g/モル未満、約550g/モル未満、約510g/モル未満、約500g/モル未満、約450g/モル未満、約400g/モル未満、約350g/モル未満、約300g/モル未満、約250g/モル未満、約200g/モル未満、約150g/モル未満、約125g/モル、または約100g/モル未満の分子量を有していることが一般に好ましい。さらにまたは代替として、カルシウム塩の全重量に対してカルシウムイオンは重量のかなりの部分に寄与することが一般に好ましい。カルシウムイオンは、カルシウム塩全体の少なくとも10%、少なくとも16%、少なくとも20%、少なくとも24.5%、少なくとも26%、少なくとも31%、少なくとも35%、またはカルシウム塩全体の少なくとも38%の重量を占めることが一般に好ましい。
【0057】
代替としてまたはさらに、本医薬製剤は、前記カルシウム塩の全重量に対するカルシウムの重量比が約0.1から約0.5の間であるカルシウムを与える適切なカルシウム塩を包含する。例えば、前記カルシウム塩の全重量に対するカルシウムの重量比は、約0.15から約0.5の間、約0.18から約0.5の間、約0.2から約5の間、約0.25から約0.5の間、約0.27から約0.5の間、約0.3から約5の間、約0.35から約0.5の間、約0.37から約0.5、または約0.4から約0.5の間にある。
【0058】
適切なナトリウム塩は、例えば、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウムなどまたはこれらの組合せを包含する。
【0059】
カルシウム塩およびナトリウム塩に加えて、本発明の医薬製剤は、元素ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、シリコン、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、コバルト、ニッケル、銅、マンガン、亜鉛、スズ、銀および類似の元素の何らかの無毒な塩の形態も包含することができる。適切なマグネシウム塩は、例えば、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、三珪酸マグネシウム、塩化マグネシウムなどを包含する。適切なカリウム塩は例えば、炭酸水素カリウム、塩化カリウム、クエン酸カリウム、カリウムホウ酸塩、亜硫酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム、アルギン酸カリウム、安息香酸カリウムなどを包含する。さらなる適切な塩は硫酸銅、塩化クロム、塩化第一スズおよび類似の塩を包含する。他の適切な塩は塩化亜鉛、塩化アルミニウムおよび塩化銀を包含する。
【0060】
本医薬製剤は、溶液、乳濁液、懸濁液または乾燥粉末などの任意の所望の形態であってよい。
【0061】
本医薬製剤は、一般に、生理学的に許容される担体または賦形剤中で調製されるか、または生理学的に許容される担体または賦形剤を含む。溶液、懸濁液または乳濁液の形態の製剤のための、適切な担体は、水、食塩水、エタノール/水溶液、エタノール溶液、緩衝媒体、噴霧剤などを含む溶液、乳濁液または懸濁液を包含する、例えば、水性、アルコール性/水性、およびアルコール溶液、乳濁液または懸濁液を包含する。乾燥粉末の形態の製剤のための、適切な担体または賦形剤は、例えば、糖(例えば、ラクトース、トレハロース)、糖アルコール(例えばマンニトール、キシリトール、ソルビトール)、アミノ酸(例えば、グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジホスファチジルグリセロール、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−L−セリン(DPPG)、1,2−ジパルミトイル−グリセロ−3−ホスホコリン、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、1−パルミトイル−2−オレオイルホスファチジルコリン、脂肪族アルコール、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、界面活性脂肪酸、ソルビタントリオレエート(Span 85)、グリココール酸塩、サーファクチン、ポロキソマー、ソルビタン脂肪酸エステル、チロキサポール、リン脂質、アルキル化糖、リン酸ナトリウム、マルトデキストリン、ヒト血清アルブミン((例えば(組み換えヒト血清アルブミン)))、生体分解性ポリマー(e.g、PLGA)、デキストラン、デキストリンなどを包含する。所望の場合、塩製剤はまた、添加剤、防腐剤または液、栄養素または電解質補充薬を含むことができる(概論としては、Remington's Pharmaceutical Sciences,17th Edition,Mack Publishing Co.,PA,1985を参照)。
【0062】
本医薬製剤は、好ましくは、例えばエアロゾルとして気道への投与のために製剤化される。
【0063】
本医薬製剤は、要望により、複数回投与を含むか、または単位用量組成物であってもよい。
【0064】
本医薬製剤は、好ましくは、有効量の製剤の気道への都合のよい投与を可能にするカルシウムおよびナトリウムの濃度を含む。例えば、液体の製剤は、対象の気道に有効量を送達するために霧状にする製剤を大量に必要としないように、希釈しすぎないことが一般に望ましい。長い投与期間は嫌われ、また、一般に、有効量が気道(例えば、霧状液体またはアエロゾル化乾燥粉末などのアエロゾル化製剤の吸入によって)または鼻腔に、最長約120分、最長約90分、最長約60分、最長約45分、最長約30分、最長約25分、最長約20分、最長約15分、最長約10分、最長約7.5分、最長約5分、最長約4分、最長約3分、最長約2分、最長約1分、最長約45秒、最長約30秒で投与されるように製剤は十分に濃厚であるべきである。
【0065】
例えば、液体医薬製剤は、約0.115Mから1.15MのCa2+イオン、約0.116Mから1.15MのCa2+イオン、約0.23Mから1.15MCa2+のCa2+イオン、約0.345Mから1.15MCa2+のCa2+イオン、約0.424Mから1.15MCa2+のCa2+イオン、約0.46Mから1.15MのCa2+イオン、約0.575Mから1.15MのCa2+イオン、約0.69Mから1.15MのCa2+イオン、約0.805Mから1.15MのCa2+イオン、約0.849Mから1.15MのCa2+イオン、または約1.035Mから1.15MのCa2+イオンを含んでいてもよい。特定のカルシウム塩(例えば炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム)の溶解性が、溶液の調製を制限することがある。そのような状況において、液剤は、所望のモル濃度を達成するために必要なカルシウム塩の対応量を含む懸濁液の形態をしていてもよい。
【0066】
液体医薬製剤中のNa+イオンの濃度は、液剤中のCa2+イオンの濃度および所望のCa2+対Na+比に依存する。例えば、液剤は、約0.053Mから0.3MのNa+イオン、約0.075Mから0.3MのNa+イオン、約0.106Mから0.3MのNa+イオン、約0.15Mから0.3MのNa+イオン、約0.225Mから0.3MのNa+イオン、約0.008Mから0.3MのNa+イオン、約0.015Mから0.3MのNa+イオン、約0.016Mから0.3MのNa+イオン、約0.03Mから0.3MのNa+イオン、約0.04Mから0.3MのNa+イオン、約0.08Mから0.3MのNa+イオン、約0.01875Mから0.3MのNa+イオン、約0.0375Mから0.3MのNa+イオン、約0.075Mから0.6MのNa+イオン、約0.015Mから0.6MのNa+イオン、または約0.3Mから0.6MのNa+イオンを含んでいてもよい。
【0067】
本明細書において記載される医薬製剤は、要望により低張性、等張性または高張性であってよい。水性液剤は、張度、ならびに製剤中に存在するカルシウム塩およびナトリウム塩の濃度が変動してもよい。
【0068】
本明細書において記載される医薬製剤は、要望により低張性、等張性または高張性であってよい。例えば、本明細書において記載された医薬製剤のいずれかは、約0.1倍張度、約0.25倍張度、約0.5倍張度、約1倍張度、約2倍張度、約3倍張度、約4倍張度、約5倍張度、約6倍張度、約7倍張度、約8倍張度、約9倍張度、約10倍張度、少なくとも約1倍張度、少なくとも約2倍張度、少なくとも約3倍張度、少なくとも約4倍張度、少なくとも約5倍張度、少なくとも約6倍張度、少なくとも約7倍張度、少なくとも約8倍張度、少なくとも約9倍張度、少なくとも約10倍張度、約0.1倍から約1倍の間、約0.1倍から約0.5倍の間、約0.5倍から約2倍の間、約1倍から約4倍の間、約1倍から約2倍の間、約2倍から約10倍の間、または約4倍から約8倍の間であってよい。例えば、例示の医薬製剤は、約0.053MCaCl2および約0.0066MNaCl(0.5倍張度、8:1のCa2+:Na+比で)、約0.106MCaCl2および約0.013MNaCl(1倍張度(等張)、8:1のCa2+:Na+比で)、約0.212MCaCl2および約0.0265MNaCl(2倍張度、8:1のCa2+:Na+比で)、約0.424MCaCl2および約0.053MNaCl(4倍張度、8:1のCa2+:Na+比で)、または約0.849MCaCl2および約0.106MNaCl(8倍張度、8:1Ca2+:Na+比で)を含んでいてもよい。
【0069】
液剤のための好ましいカルシウム塩は、例えば、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム、硫酸カルシウムを包含する。液剤のための好ましいナトリウム塩は、例えば塩化ナトリウム、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、硫酸ナトリウムを包含する。
【0070】
乾燥粉末医薬製剤は、少なくとも約5重量%のカルシウム塩、10重量%のカルシウム塩、約15重量%のカルシウム塩、少なくとも約19.5重量%のカルシウム塩、少なくとも約20重量%のカルシウム塩、少なくとも約22重量%のカルシウム塩、少なくとも約25.5重量%のカルシウム塩、少なくとも約30重量%のカルシウム塩、少なくとも約37重量%のカルシウム塩、少なくとも約40重量%のカルシウム塩、少なくとも約48.4重量%のカルシウム塩、少なくとも約50重量%のカルシウム塩、少なくとも約60重量%のカルシウム塩、少なくとも約70重量%のカルシウム塩、少なくとも約75重量%のカルシウム塩、少なくとも約80重量%のカルシウム塩、少なくとも約85重量%のカルシウム塩、少なくとも約90重量%のカルシウム塩、または少なくとも約95重量%のカルシウム塩を一般に含む。
【0071】
代替としてまたはさらに、乾燥粉末製剤は、少なくとも約5重量%のCa+2、少なくとも約7重量%のCa+2、少なくとも約10重量%のCa+2、少なくとも約11重量%のCa+2、少なくとも約12重量%のCa+2、少なくとも約13重量%のCa+2、少なくとも約14重量%のCa+2、少なくとも約15重量%のCa+2、少なくとも約17重量%のCa+2、少なくとも約20重量%のCa+2、少なくとも約25重量%のCa+2、少なくとも約30重量%のCa+2、少なくとも約35重量%のCa+2、少なくとも約40重量%のCa+2、少なくとも約50重量%のCa+2、少なくとも約45重量%のCa+2、少なくとも約55重量%のCa+2、少なくとも約60重量%のCa+2、少なくとも約65重量%のCa+2、または少なくとも約70重量%のCa+2の量のCa+2を与えるカルシウム塩を含んでいてもよい。
【0072】
乾燥粉末医薬製剤中のナトリウム塩の量は、製剤中のカルシウム塩の量および所望のカルシウム:ナトリウム比に依存する。例えば、乾燥粉末製剤は、少なくとも約1.6重量%のナトリウム塩、少なくとも約5重量%のナトリウム塩、少なくとも約10重量%のナトリウム塩、少なくとも約13重量%のナトリウム塩、少なくとも約15重量%のナトリウム塩、少なくとも約20重量%のナトリウム塩、少なくとも約24.4重量%のナトリウム塩、少なくとも約28重量%のナトリウム塩、少なくとも約30重量%のナトリウム塩、少なくとも約30.5重量%のナトリウム塩、少なくとも約35重量%のナトリウム塩、少なくとも約40重量%のナトリウム塩、少なくとも約45重量%のナトリウム塩、少なくとも約50重量%のナトリウム塩、少なくとも約55重量%のナトリウム塩、少なくとも約60重量%のナトリウム塩を含んでいてもよい。
【0073】
代替としてまたはさらに、乾燥粉末医薬製剤は、少なくとも約0.1重量%のNa+、少なくとも約0.5重量%のNa+、少なくとも約1重量%のNa+、少なくとも約2重量%のNa+、少なくとも3重量%のNa+、少なくとも約4重量%のNa+、少なくとも約5重量%のNa+、少なくとも約6重量%のNa+、少なくとも約7重量%のNa+、少なくとも約8重量%のNa+、少なくとも約9重量%のNa+、少なくとも約10重量%のNa+、少なくとも約11重量%のNa+、少なくとも約12重量%のNa+、少なくとも約14重量%のNa+、少なくとも約16重量%のNa+、少なくとも約18重量%のNa+、少なくとも約20重量%のNa+、少なくとも約22重量%のNa+、少なくとも約25重量%のNa+、少なくとも約27重量%のNa+、少なくとも約29重量%のNa+、少なくとも約32重量%のNa+、少なくとも約35重量%のNa+、少なくとも約40重量%のNa+、少なくとも約45重量%のNa+、少なくとも約50重量%のNa+、または少なくとも約55% Na+の量のNa+を与えるナトリウム塩を含んでいてもよい。
【0074】
乾燥粉末製剤のための好ましいカルシウム塩は、例えば、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム、硫酸カルシウムを包含する。乾燥粉末製剤のための好ましいナトリウム塩は、例えば、塩化ナトリウム、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、硫酸ナトリウムを包含する。
【0075】
乾燥粉末医薬製剤のための好ましい賦形剤(疎水性アミノ酸ロイシンなどの)は、約50重量/重量%以下の量で製剤中に存在することができる。例えば、乾燥粉末製剤は、約50重量%以下、約45重量%以下、約40重量%以下、約35重量%以下、約30重量%以下、約25重量%以下、約20重量%以下、約18重量%以下、約16重量%以下、約15重量%以下、約14重量%以下、約13重量%以下、約12重量%以下、約11重量%以下、約10重量%以下、約9重量%以下、約8重量%以下、約7重量%以下、約6重量%以下、約5重量%以下、約4重量%以下、約3重量%以下、約2重量%以下または約1重量%以下の量のアミノ酸ロイシンを含んでいてもよい。例示の賦形剤は、本明細書に開示されるまたは当業界で一般に使用される、ロイシン、マルトデキストリン、マンニトール、ロイシン、マルトデキストリンおよびマンニトールの任意の組合せまたは他の賦形剤を包含してもよい。
【0076】
気道の選択領域への局所的な送達のために、適切な粒子直径、表面粗度およびタップ密度を有する乾燥粉末製剤が調製される。例えば、上気道送達のためにより高い密度またはより大きい粒子を使用することができる。同様に、異なるサイズの粒子の混合物を投与して、1度の投与で肺の異なる領域を標的にすることができる。例えば、空気動力学的に軽い粒子を含む乾燥粉末は、肺への吸入に適切であることが見出された。
【0077】
大きい粒子サイズの乾燥粉末製剤(「DPF」)は、流動特性が改善されている(例えば、より凝集しにくい(Visser,J.,Powder Technology 58:1−10(1989))、エアロゾル化しやすく潜在的に食作用を受けにくい。Rudt,S.および R.H.Muller,J.Controlled Release,22:263−272(1992);Tabata,Y.,およびY.Ikada,J.Biomed.Mater.Res.,22:837−858(1988))。吸入治療のための乾燥粉末エアロゾルは、一般に、主に5ミクロン未満の範囲の平均直径で製造されるが、空気動力学的直径で任意の所望の範囲の乾燥粉末を製造することができる。Ganderton,D.,J.Biopharmaceutical Sciences,3:101−105(1992);Gonda,I.「アエロゾル送達の物理化学的原理」(Physico−Chemical Principles in Aerosol Delivery)、Topics in Pharmaceutical Sciences 1991,Crommelin,D.J.およびK.K.Midha編、Medpharm Scientific Publishers,Stuttgart,pp.95−115(1992)。他の考えられる利点の中で、大きい「担体」粒子(医薬製剤を含まない)は、治療用エアロゾルとともに同時送達されて、効率的なエアロゾル化を達成するように補助することができる。French,D.L.,Edwards,D.A.およびNiven,R.W.,J.Aerosol Sci.,27:769−783(1996)。数秒〜数ヶ月の範囲の分解速度および放出速度を有する粒子が、当分野で確立された方法によって設計および製造することができる。
【0078】
一般に、乾燥粉末である医薬製剤は、噴霧乾燥、真空凍結乾燥、ジェット粉砕する、単一および二重乳液溶媒蒸発および超臨界流体によって製造することができる。好ましくは、乾燥粉末製剤は、製剤の塩および他の成分を含有する溶液を調製すること、密閉室へ溶液を噴霧すること、および加熱ガス、水蒸気を用いて溶媒を除去することを伴う、噴霧乾燥によって製造される。
【0079】
塩化カルシウム、乳酸カルシウムおよび塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどの水または水性溶媒に十分な溶解度を有するカルシウムおよびナトリウム塩を含む噴霧乾燥粉末は、従来法を使用して容易に調製することができる。クエン酸カルシウムおよび硫酸カルシウムなどのいくつかの塩は、水および他の水性溶媒中の溶解度が低い。そのような塩を含む噴霧乾燥粉は任意の適切な方法を使用して調製することができる。1つの適切な方法は、溶液中のより可溶性の塩を混ぜ合わせて反応(沈降反応)させ、乾燥粉末製剤用の所望の塩を製造するものである。例えば、クエン酸カルシウムおよび塩化ナトリウムを含む乾燥粉末製剤が所望の場合、高溶解度の塩である塩化カルシウムおよびクエン酸ナトリウムを含有する溶液を調製することができる。クエン酸カルシウムを生成する沈降反応は、3 CaCl2 + 2 Na3Cit → Ca3Cit2 + 6 NaClである。さらに、例えば、硫酸カルシウムおよび塩化ナトリウムを含む乾燥粉末製剤が所望の場合、高い溶解度の塩である塩化カルシウムおよび硫酸ナトリウムを含有する溶液を調製することができる。硫酸カルシウムを生成する沈降反応は、CaCl2 + Na2SO4 → CaSO4 + 2 NaClである。カルシウム塩を加える前に、ナトリウム塩が完全に溶解され、溶液が間断なく撹拌されることが好ましい。要望により、沈降反応を完了させるか、または、例えば溶液を噴霧乾燥することによって完了の前に停止することができる。
【0080】
代替として、スタティック混合後の飽和または過飽和溶液を得るために、2つの飽和または亜飽和溶液がスタティックミキサーへ供給される。好ましくは、噴霧乾燥後溶液は過飽和である。2つの溶液は水性または有機性であってもよいが、実質的に水性であることが好ましい。次いで、スタティック混合後溶液は噴霧乾燥器の微粒化装置へ供給される。好ましい実施形態において、スタティック混合後溶液は、微粒化装置へ直ちに供給される。微粒化装置のいくつかの例は、二流体ノズル、回転式微粒化装置または加圧ノズルを包含する。好ましくは、微粒化装置は二流体ノズルである。一実施形態において、二流体ノズルは最外部オリフィスに出る前に、ガスが液体供給に衝突することを意味する、内部混合ノズルである。別の実施形態において、二流体ノズルは最外部オリフィスに出る前に、ガスが液体供給に衝突することを意味する、外部混合ノズルである。
【0081】
結果として得られる溶液は完全に溶解された塩で透明に見えてもよく、または、沈殿物を形成してもよい。反応条件に応じて、沈殿物が急速にまたは経時的に形成してもよい。安定な均質の懸濁液の形成をもたらす軽い沈殿物を含む溶液は、噴霧乾燥することができる。
【0082】
乾燥粉末製剤はまた、個々の成分をブレンドすることにより最終医薬製剤に調製することができる。例えば、カルシウム塩を含む第1の乾燥粉末は、ナトリウム塩を含む第2の乾燥粉末とブレンドし、カルシウム塩およびナトリウム塩を含む医薬製剤を製造することができる。所望の場合、賦形剤(例えばラクトース)および/または他の活性成分(例えば、抗生物質、抗ウイルス剤)を含む追加の乾燥粉末をブレンド中に含有することができる。ブレンドは任意の所望の相対量または比のカルシウム塩、ナトリウム塩、賦形剤および他の原料(例えば抗生物質、抗ウイルス剤)を含むことができる。
【0083】
所望の場合、乾燥粉末は以下を包含する粒子特性を最適化するように適合させたポリマーを使用して調製することができる:i)送達される薬剤(例えば塩、抗生物質または抗ウイルス剤などの他の活性成分)と薬剤の安定化および送達時の活性の保持を与えるポリマーとの間の相互作用;ii)ポリマー分解の速度およびそれによる薬剤放出プロフィール;iii)化学修飾による界面特性および標的到達性能;およびiv)粒子細孔率。ポリマー粒子は、単一および二重乳液溶媒蒸発、噴霧乾燥、溶媒抽出、溶媒蒸発、相分離、単純コアセルベーションおよび複雑コアセルベーション、界面重合、ジェット粉砕ならびに当業界で周知の他の方法を使用して調製することができる。粒子は、当業界で公知の微小球体またはマイクロカプセルを製造する方法を使用して製造することができる。
【0084】
所望の場合、本医薬製剤は、粘液活性剤または粘液溶解剤、界面活性剤、抗生物質、抗ウイルス剤、抗ヒスタミン剤、鎮咳薬、気管支拡張薬、抗炎症剤、ステロイド、ワクチン剤、アジュバント、去痰薬、高分子、CFの長期維持に役立つ治療剤などの1種または複数の追加の薬剤を包含することができる。
【0085】
適切な粘液活性剤または粘液溶解剤の例は、MUC5ACおよびMUC5Bムチン、DNA酵素、N−アセチルシステイン(NAC)、システイン、ナシステリン、ドルナーゼアルファ、ゲルゾリン、ヘパリン、ヘパリン硫酸塩、P2Y2作動薬(例えばUTP、INS365)、高張生理食塩水およびマンニトールを包含する。
【0086】
適切な界面活性剤は、L−アルファ−ホスファチジルコリン二パルミトイル、ジホスファチジルグリセロール(DPPG)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−L−セリン(DPPS)、1,2−ジパルミトイル−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DSPE)、1−パルミトイル−2−オレオイルホスファチジルコリン、脂肪族アルコール、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、界面活性脂肪酸、ソルビタントリオレエート(Span 85)、グリココール酸塩、サーファクチン、ポロキソマー、ソルビタン脂肪酸エステル、チロキサポール、リン脂質およびアルキル化糖を包含する。
【0087】
所望の場合、塩製剤は抗生物質を含むことができる。例えば、細菌性肺炎またはVATを治療するための塩製剤は、抗生物質、例えば、マクロライド(例えばアジスロマイシン、クラリスロマイシンおよびエリスロマイシン)、テトラサイクリン(例えばドキシサイクリン、チゲサイクリン)、フルオロキノロン(例えばゲミフロキサシン、レボフロキサシン、シプロフロキサシンおよびモキシフロキサシン)、セファロスポリン(例えばセフトリアキソン、セファタキシム(defotaxime)、セフタジジム、セフェピム)、アンピシリン−スルバクタム、ピペラシリン−タゾバクタムおよびクラブラン酸塩を含むチカルシリンなどの、β−ラクタマーゼ阻害剤(例えばスルバクタム、タゾバクタムおよびクラブラン酸)を場合によって含むペニシリン(例えばアモキシシリン、クラブラン酸塩を含むアモキシシリン、アンピシリン、ピペラシリンおよびチカルシリン)、アミノグリコシド(例えばアミカシン、アルベカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ロードストレプトマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシンおよびアプラマイシン)、ペネムまたは、カルバペネム(例えばドリペネム、エルタペネム、イミペネムおよびメロペネム)、モノバクタム(例えばアズトレオナム)、オキサゾリジノン(例えばリネゾリド)、バンコマイシンおよび糖ペプチド抗生物質(例えばテラバンシン)、結核ミコバクテリウム抗生物質などをさらに含むことができる。
【0088】
所望の場合、塩製剤は、ミュコバクテリウム・トゥベルクロシスなどのミコバクテリアによる感染症を治療する薬剤を含むことができる。ミコバクテリア(例えばM.トゥベルクロシス)による感染症を治療する適切な薬剤は、アミノグリコシド(例えばカプレオマイシン、カナマイシン、ストレプトマイシン)、フルオロキノロン(例えばシプロフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン)、イソジアニドおよびイソジアニド類似体(例えばエチオナミド)、アミノサリチル酸塩、シクロセリン、ジアリールキノリン、エタンブトール、ピラジンアミド、プロチオンアミド、リファンピンなどを包含する。
【0089】
所望の場合、塩製剤は、オセルタミビル、ザナマビルアマンチジンまたはリマンタジン、リバビリン、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、ホスカビル、Cytogam(登録商標)(サイトメガロウイルス免疫グロブリン)、プレコナリル、ルピントリビル、パリビズマブ、モタビズマブ、シタラビン、ドコサノール、デノチビル、シドフォビルおよびアシクロビルなどの適切な抗ウイルス剤を含むことができる。塩製剤は、ザナミビル、オセルタミビル、アマンタジンまたはリマンタジンなどの適切な抗インフルエンザ剤を含むことができる。
【0090】
適切な抗ヒスタミン剤はクレマスチン、アサラスチン、ロラタジン、フェキソフェナジンなどを包含する。
【0091】
適切な鎮咳薬はベンゾナテート、ベンプロペリン、クロブチナール、ジフェンヒドラミン、デキストロメトルファン、ジブネート、フェドリレート、グラウシン、オキサラミン、ピペツジbb(piperidione)、コデイン(codine)などのオピオイド(opiods)などを包含する。
【0092】
適切な気管支拡張剤(brochodilators)は短時間作用性ベータ2作動薬、長時間作用性beta2作動薬(LABA)、長時間作用性ムスカリンのアンタゴニスト(anagonists)(LAMA)、LABAおよびLAMAの組合せ、メチルキサンチンおよびなどを包含する。適切な短時間活性ベータ2作動薬は、アルブテロール、エピネフリン、ピルブテロール、レバルブテロール、メタプロテロノール、マキサイルなどを包含する。適切なLABAはサルメテロール、ホルモテロールおよび異性体(例えばアルホルモテロール)、クレンブテロール、ツロブテロール、ビランテロール(Revolair(商標))、インダカテロールなどを包含する。LAMAの例は、チオトロピウム(tiotroprium)、グリコピロレート、アクリジニウム、イプラトロピウムなどを包含する。LABAおよびLAMAの組合せの例は、グリコピロレートを含むインダカテロール、チオトロピウムを含むインダカテロールなどを包含する。メチルキサンチンの例はテオフィリンなどを包含する。
【0093】
適切な抗炎症剤は、ロイコトリエン拮抗薬、PDE4拮抗薬、他の抗炎症剤などを包含する。適切なロイコトリエン拮抗薬は、モンテルカスト(シスチニルロイコトリエン拮抗薬)、マシルカスト、ザフィルルカスト(zafirleukast)(ロイコトリエンD4およびE4受容体拮抗薬)、ジロイトン(5−リポキシゲナーゼ拮抗薬)などを包含する。適切なPDE4阻害剤はシロミラスト、ロフルミラストなどを包含する。他の抗炎症剤は、オマリズマブ(抗IgE免疫グロブリン)、IL−13およびIL−13受容体阻害剤(AMG−317、MILR1444A、CAT−354、QAX576、IMA−638、アンルキンズマブ、IMA−026、MK−6105、DOM−0910などの)、IL−4およびIL−4受容体阻害剤(ピトラキンラ、AER−003,AIR−645、APG−201、DOM−0919などの)、カナキヌマブなどのIL−1阻害剤、AZD1981(AstraZenecaからの)などのCRTh2受容体拮抗薬、AZD9668(AstraZenecaからの)などの好中球エラスターゼ阻害剤、ロスマピメドなどのP38キナーゼ阻害剤を包含する。
【0094】
適切なステロイドは、コルチコステロイド、コルチコステロイドおよびLABAの組合せ、コルチコステロイドおよびLAMAの組合せなどを包含する。適切なコルチコステロイドはブデソニド、フルチカゾン、フルニソリド、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、モメタゾン、シクレソニド、デキサメタゾンなどを包含する。コルチコステロイドおよびLABAの組合せは、フルチカゾンを含むサルメテロール、ブデソニドを含むホルモテロール、フルチカゾンを含むホルモテロール、モメタゾンを含むホルモテロール、モメタゾンを含むインダカテロールなどを包含する。
【0095】
適切な去痰薬はグアイフェネシン、グアイアコールスルファネート(guaiacolculfonate)、塩化アンモニウム、ヨウ化カリウム、チロキサポール、硫化アンチモン(V)などを包含する。
【0096】
鼻から吸入されるインフルエンザワクチンなどの適切なワクチン剤。
【0097】
適切な高分子は、治療活性、予防活性または診断活性を有するタンパク質および大きいペプチド、多糖類およびオリゴ糖、ならびにDNARNA核酸分子およびこれらの類似体を包含する。タンパク質は、モノクローナル抗体などの抗体を包含することができる。核酸分子は、相補的DNA、RNAまたはリボソームに結合して転写またはトランスレーションを阻止するsiRNAsなどの遺伝子、アンチセンス分子を包含する。
【0098】
嚢胞性繊維症の長期維持に役立つ選択された治療は、抗生物質/マクロライド系抗生物質、気管支拡張薬、吸入LABAおよび気道分泌除去を促進する薬剤を包含する。抗生物質/マクロライド系抗生物質の好適例はトブラマイシン、アジスロマイシン、シプロフロキサシン、コリスチンなどを包含する。気管支拡張薬の好適例は、アルブテロールなどの吸入短時間作用型のbeta2作動薬などを包含する。吸入LABAの好適例はサルメテロール、ホルモテロールなどを包含する。気道分泌除去を促進する薬剤の好適例はドルナーゼアルファ、高張生理食塩水などを包含する。
【0099】
本発明の医薬製剤のいくつかの限定されない例は、表1に見ることができる。
【0100】
【表1】
【0101】
4.肺疾患または気道感染症の治療
本発明は、例えば、喘息(例えば、アレルギー性/アトピー性、小児、遅発症性、咳型または慢性閉塞性)、気道過敏性、アレルギー性鼻炎(季節性または非季節性)、気管支拡張(brochiectasis)、慢性気管支炎、肺気腫、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性繊維症、若年性喘鳴などの肺疾患の治療(予防療法を含む)、およびこれらの成人病の急性増悪の治療(予防療法を含む)の方法を提供する。この増悪を引き起こす原因は、ウイルス感染(例えば、インフルエンザウイルスA型またはインフルエンザウイルスB型などのインフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、メタニューモウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、コロナウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルスなど)、細菌感染(例えば、一般には肺炎球菌と呼ばれるスタピュロコックス・ニューモニアエ)スタピュロコックス・アウレウス、スタピュロコックス・アガラクティアエ、スタピュロコックス・ピオゲネス、ハエモフィルス・インフルエンザエ、ハエモピルス・パラインフルエンザエ、クレブシェッラ・ニューモニアエ、エシェリキア・コリ、プセウドモナス・アエルギノサ、モラクセラ・カタッラリス、クラミュドピラ・ニューモニアエ、ミュコプラスマ・ニューモニアエ、レジオネッラ・ニューモピラ、セラティア・マルケスセンス、ブルクホリデリア・ケパキア、ブルクホリデリア・プセウドマッレイ、バキッルス・アントラキス、バキッルス・ケレウス、ステノトロポモナス・マルトピリア、シトロバクター科からの細菌、ecinetobacter科からの細菌、ミュコバクテリウム・トゥベルクロシス、ボルデテッラ・ペルトゥッシス(Bordetella pertussis)などの)、真菌感染(例えばヒストプラスマ・カプスラトゥム、クリプトコックス・ネオフォルマンス、ニューモキュスティス・イロウェキ、コッキディオイデス・インミティス、カンジダ・アルビカンス、ニューモキュスティス・イロウェキイ(これはニューモキュスティス症とも呼ばれるニューモキュスティス肺炎(PCP)を引き起こす)など)、寄生虫感染(例えばトキソプラスマ・ゴンディ、ストロンギュロイデス・ステルコラリスなど)、または環境アレルゲン、および刺激物(例えば花粉、チリダニ、ネコのふけなどの動物ふけ、かび、ゴキブリ、浮遊微小粒子などを包含する空気アレルゲン)である。
【0102】
本発明は、気道、例えばウイルス感染、気道の細菌感染の感染症の治療(予防療法を含む)のための方法をさらに提供する。
【0103】
例示の気道感染症は、肺炎(市中感染性肺炎、院内肺炎(院内感染の肺炎、HAP;医療ケア関連肺炎、HCAP)、人工呼吸器関連肺炎(VAP)を含む)、人工呼吸器関連気管気管支炎(trachebronchitis)(VAT)、気管支炎、クループ(例えば挿管後クループおよび感染性クループ)、結核、インフルエンザ、普通風邪およびウイルス感染症(例えばインフルエンザウイルス(例えばインフルエンザウイルスA型、インフルエンザウイルスB型)およびパラインフルエンザウイルス(例えばhPIV−1、hPIV−2、hPIV−3、hPIV−4)、呼吸器合胞体ウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、メタニューモウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、コロナウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、腸内ウイルス、SARSコロナウイルスおよび天然痘など)、細菌感染症(例えばスタピュロコックス・ニューモニアエ(一般には肺炎球菌と呼ばれる))スタピュロコックス・アウレウス、スタピュロコックス・ピオゲネス、スタピュロコックス・アガラクティアエ、ハエモフィルス・インフルエンザエ、ハエモピルス・パラインフルエンザエ、クレブシェッラ・ニューモニアエ、エシェリキア・コリ、プセウドモナス・アエルギノサ、モラクセラ・カタッラリス、クラミュドピラ・ニューモニアエ、ミュコプラスマ・ニューモニアエ、レジオネッラ・ニューモピラ、セラティア・マルケスセンス、ミュコバクテリウム・トゥベルクロシス、ボルデテッラ・ペルトゥッシス、バークホリデリア・セパシア、ブルクホリデリア・プセウドマッレイ、バキッルス・アントラキス、バキッルス・ケレウス、ステノトロポモナス・マルトピリア、シトロバクター科からの細菌、ecinetobacter科からの細菌などの)、真菌感染症(例えばヒストプラスマ・カプスラトゥム、クリプトコックス・ネオフォルマンス、ニューモキュスティス・イロウェキ、コッキディオイデス・インミティス、カンジダ・アルビカンス、ニューモキュスティス・イロウェキイ(これはニューモシスチス症とも呼ばれるニューモキュスティス肺炎(PCP)を引き起こす)など)、または寄生虫感染症(例えばトキソプラスマ・ゴンディ、ストロンギュロイデス・ステルコラリスなど)を包含する
【0104】
特定の実施形態において、細菌性肺炎などの気道感染症は細菌感染症である。特定の実施形態において、ストレプトコックス・ニューモニアエ(肺炎球菌とも呼ばれる)、スタピュロコックス・アウレウス、ストレプトコックス・アガラクティアエ、ストレプトコックス・ピュオゲネス、ハエモピルス・インフルエンザエ、ハエモピルス・パラインフルエンザエ、クレブシェッラ・ニューモニアエ、エシェリキア・コリ、プセウドモナス・アエルギノサ、モラクセラ・カタッラリス、クラミュドピラ・ニューモニアエ、ミュコプラスマ・ニューモニアエ、レジオネッラ・ニューモピラ、セラティア・マルケスセンス、ブルクホリデリア・ケパキア、ブルクホリデリア・プセウドマッレイおよびバキッルス・アントラキス、バキッルス・ケレウス、ボルダテッラ・ペルトゥッシス、ステノトロポモナス・マルトピリア、シトロバクター科からの細菌、ecinetobacter科からの細菌、およびミュコバクテリウム・トゥベルクロシスからなる群から選択される細菌によって、細菌感染は引き起こされる。
【0105】
特定の実施形態において、気道感染症は、インフルエンザまたはウイルス性肺炎などのウイルス感染症である。特定の実施形態において、ウイルス感染症は、インフルエンザウイルス(例えばインフルエンザウイルスA型、インフルエンザウイルスB型)、呼吸器合胞体ウイルス、アデノウイルス、メタニューモウイルス、サイトメガロウイルス、パラインフルエンザウイルス(例えばhPIV−1、hPIV−2、hPIV−3、hPIV−4)、ライノウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、コロナウイルス、単純ヘルペスウイルス、SARSコロナウイルスおよび天然痘からなる群から選択されるウイルスによって引き起こされる。
【0106】
特定の実施形態において、気道感染症は真菌感染症である。特定の実施形態において、真菌感染症は、ヒストプラスマ・カプスラトゥム、クリプトコックス・ネオフォルマンス、ニューモキュスティス・イロウェキ、コッキディオイデス・インミティス、カンジダ・アルビカンスおよびニューモキュスティス・イロウェキイ(ニューモキュスティス肺炎(PCP)(ニューモシスチス症とも呼ばれる)を引き起こす)からなる群から選択される菌によって引き起こされる。
【0107】
特定の実施形態において、気道感染症は寄生虫感染症である。特定の実施形態において、寄生虫感染症は、トキソプラスマ・ゴンディおよびストロンギロイデス・ステルコラリスからなる群から選択される寄生虫によって引き起こされる。
【0108】
別の態様において、本発明は、Ca+2対Na+の比が約4:1(モル数:モル数)から約16:1(モル:モル)であるカルシウム塩およびナトリウム塩を活性成分として含む医薬製剤の有効量を、個体の気道に投与することを含む、肺疾患の個体(例えば、肺疾患を有する、肺疾患の症候を示す、または肺疾患に罹りやすい個体)を治療する(予防的治療を包含する)方法を提供する。
【0109】
別の態様において、本発明は、Ca+2対Na+の比が約4:1(モル数: モル数)から約16:1(モル:モル)であるカルシウム塩およびナトリウム塩を活性成分として含む医薬製剤の有効量を、それを必要とする個体(例えば、肺疾患の急性増悪を有する、肺疾患の急性増悪の症候を示す、または肺疾患の急性増悪に罹りやすい個体)の気道に投与することを含む、個体の慢性肺疾患の急性増悪を治療する(予防的治療を包含する)方法を提供する。例示の肺疾患は、喘息(例えば、アレルギー性/アトピー性、小児、遅発症性、咳型または慢性閉塞性)、気道過敏性、アレルギー性鼻炎(季節性または非季節性)、気管支拡張症、慢性気管支炎、肺気腫、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性繊維症、若年性喘鳴などを包含する。
【0110】
特定の実施形態において、インフルエンザはインフルエンザA型またはインフルエンザB型ウイルスのいずれかによって引き起こされる。
【0111】
特定の実施形態において、インフルエンザ様疾患は、RSV、ライノウイルス、アデノウイルス、パラインフルエンザ、ヒトコロナウイルス(重症急性呼吸器症候群を引き起こすウイルスを含む)およびメタニューモウイルスによって引き起こされる。
【0112】
特定の実施形態において、人工呼吸器関連肺炎(VAP)、人工呼吸器関連気管気管支炎(VAT)または院内感染の肺炎(HAP)は、ニューモニアエ、S.ニューモニアエ、S.アウレウス、分類不可能なハエモピルス・インフルエンザエ(NTHI)、シュードミナス(psuedominas)・アエルギノサ、アシネトバクター属種(Acinetobacter spp.)、E.コリ(E.coli)、カンジダ属種(Candida spp)(真菌)、セラティア、エンテロバクター属種(Enterobacter spp)およびステノトロポモナスによって引き起こされる。代替として、VAPまたはVATは、原因となる肺炎に関連するグラム陽性またはグラム陰性細菌によって引き起こされる場合がある。
【0113】
特定の実施形態において、市中感染性肺炎(CAP)は、以下の細菌の少なくとも1種によって引き起こされる:モラクセラ・カタラーリス(catarralis)、ミュコプラスマ・ニューモニアエ、クラミュドピリア・ニューモニア(Chlamydophilia pneumonia)、またはクラミュディア・ニューモニアエ(Chlamydia pneumoniae)、ストレプ・ニューモニア(strep pneumonia)、ハエモピルス・インフルエンザエ、クラミュドピア、ミュコプラスマおよびレジオネッラ。代替として、または以前に述べた細菌に加えて、CAPはまた真菌コクシジオイデス症(Coccidiomycosis)、ヒストプラスマシスおよびクリプトコッカス(cryptococcocus)の少なくとも1種の原因であり得る。代替として、CAPは、引き起こす肺炎に関係するグラム陽性またはグラム陰性細菌によって引き起こされる場合がある。
【0114】
特定の実施形態において、喘息の患者の急性増悪は、上気道ウイルス感染またはCAPを包含する肺炎に関連するグラム陽性またはグラム陰性細菌によって引き起こされる。代替としてまたはさらに、急性増悪は、チリダニ、卵または花粉などのアレルゲンまたは環境要因によって引き起こされる場合がある。COPDの患者の急性増悪は、喘息と同一の原因、さらにハエモピルス・インフルエンザエ、肺炎球菌およびモラクセラ属によって引き起こされる。CFの穏やかな増悪は、上記のすべてによって、さらに例えば、プセウドモナス・アエルギノサ、ブルクホリデリア・ケパキア、ブルクホリデリア・プセウドマッレイなどの、CF気道コロニー形成を特徴とする日和見的(opportunitistic)な病原菌、およびまた非定型マイコバクテリアおよびステノトロポモナスによって引き起こされる場合がある。
【0115】
本明細書において記載される医薬製剤の有効量は、それを必要とする個体(例えばヒトまたは他の霊長動物などの哺乳動物、またはブタ、雌牛、ヒツジ、ニワトリなどの飼育動物)の気道に投与される。好ましくは、医薬製剤はエアロゾルの吸入によって投与される。
【0116】
本医薬製剤を投与して、気道(例えば気道壁液)および基礎をなす組織(例えば気道上皮)の粘膜壁の生物物理学的および/または生物学的な特性を変えることができる。これらの特性は例えば、粘膜界面でのゲル化、粘膜壁の界面張力、粘膜壁の界面弾性および/または粘性、粘膜壁のバルク弾性および/または粘性、気道水和または繊毛搏動を包含する。
【0117】
一態様において、本発明は、気道の細菌感染症に罹った個体を治療する(予防的治療を含む)方法であって、個体は気道の細菌感染症の症候を示すか、または、気道の細菌感染症に罹る危険があり、本明細書において記載される医薬製剤の有効量を個体の気道に投与することを含む方法を提供する。
【0118】
特定の実施形態において、治療される個体は、以下(そのすべてが肺炎を引き起こし得る)からなる群から選択される細菌に感染している、または感染する危険がある:ストレプトコックス・ニューモニアエ、スタピュロコックス・アウレウス、ストレプトコックス・アガラクティアエ、ストレプトコックス・ピュオゲネス、ハエモピルス・インフルエンザエ、クレブシェラ・ニューモニアエ、エシェリキア・コリ、プセウドモナス・アエルギノサ、モラクセラ・カタッラリス、クラミュドピラ・ニューモニアエ、ミュコプラスマ・ニューモニアエ、およびレジオネッラ・ニューモピラ。特定の実施形態において、個体は、スタピュロコックス・ニューモニアエ、クレブシェラ・ニューモニアエまたはプセウドモナス・アエルギノサに感染している、または感染する危険がある。さらに特定の実施形態において、個体は、スタピュロコックス・ニューモニアエに感染している、または感染する危険がある。
【0119】
別の態様において、本発明は、気道のウイルス感染症に罹った個体を治療する(予防的治療を含む)方法であって、個体は気道のウイルス感染症の症候を示すか、または、気道のウイルス感染症に罹る危険があり、本明細書において記載される医薬製剤の有効量を個体の気道に投与することを含む方法を提供する。
【0120】
いくつかの実施形態において、治療される個体は、以下からなる群から選択されるウイルスに感染している、または感染する危険がある:インフルエンザウイルス(例えばインフルエンザウイルスA型、インフルエンザウイルスB型)、呼吸器合胞体ウイルス、アデノウイルス、メタニューモウイルス、サイトメガロウイルス、パラインフルエンザウイルス(例えばhPIV−1、hPIV−2、hPIV−3、hPIV−4)、ライノウイルス、コロナウイルス(例えば、SARSコロナウイルス、ポックスウイルス(例えば天然痘)、腸内ウイルスおよび単純ヘルペスウイルス。
【0121】
病原体(例えば細菌、ウイルス)による気道感染の危険がある個体は、本明細書において記載される医薬製剤の有効量の投与によって予防的に治療することができる。本方法を使用して、気道感染を引き起こす病原体(例えば細菌、ウイルス)に感染する速度または発生率を妨害する、または減少させることができる。
【0122】
一般に、個体は、病原体(例えばウイルス、細菌)に一般人口より頻繁にさらされる、または感染に耐える能力が小さくなった場合、気道感染症を引き起こす病原体に感染する危険がある。そのような感染の危険がある個体は例えば、保健従事者、免疫抑制された個体(例えば医学的に、他の感染により、または他の理由のために)、高齢および若年(例えば乳児)の個体、および感染した人の介護者および家族を包含する。
【0123】
例示の実施形態において、気道感染症を治療する(予防的治療を含む)ために使用される医薬製剤は、Ca+2対Na+の比が約8:1(モル:モル)、または約16:1(モル:モル)であるカルシウム塩およびナトリウム塩を含む。
【0124】
別の態様において、本発明は、本明細書において記載される医薬製剤の有効量を個体の気道に投与することを含む、気道の肺疾患に罹った個体(例えば、肺疾患を有する、肺疾患の症候を示す、または肺疾患に対して罹りやすい個体)を治療する(予防的治療を含む)方法を提供する。治療することができる例示の肺疾患は、喘息(例えば、アレルギー性/アトピー性、小児、遅発症性、咳型または慢性閉塞性)、若年性喘鳴、アレルギー性鼻炎(季節性または非季節性)、気道過敏性、気管支拡張症、慢性気管支炎、肺気腫、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性繊維症などを包含する。
【0125】
別の態様において、本発明は、個体の慢性肺疾患の急性増悪を治療する(予防的治療を含む)方法であって、それを必要とする個体(例えば、肺疾患の急性増悪を有する、肺疾患の急性増悪の症候を示す、または肺疾患の急性増悪に罹りやすい個体)の気道に、本明細書において記載される医薬製剤の有効量を投与することを含む方法を提供する。治療することができる例示の肺疾患は、喘息(例えば、喘息(例えば、アレルギー性/アトピー性、小児、遅発症性、咳型または慢性閉塞性)、若年性喘鳴、アレルギー性鼻炎(季節性または非季節性)、気道過敏性、気管支拡張症、慢性気管支炎、肺気腫、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性繊維症などを包含する。
【0126】
一般に、例えば、肺疾患の発症もしくは再発または肺疾患の急性増悪の正常より有意の高い確率を有すると、個体もしくは家族歴または遺伝子検査によって判断された場合、または、肺または呼吸器(repiratory)病原体に一般人口より頻繁にさらされるか、または感染に耐える能力が小さくなった場合、個体は肺疾患または肺疾患の急性増悪に罹りやすい。そのような病原体に感染する危険がある個体は、例えば、保健従事者、免疫抑制された個体(例えば医学的に、他の感染により、または他の理由のために)、集中治療室の患者、高齢および若年(例えば乳児)の個体、慢性的に内在する呼吸器疾患(例えば喘息、慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性の繊維症)の個体、手術または外傷を受けた個体ならびに介護者および感染した人の家族を包含する。
【0127】
本明細書において記載される治療の方法のいずれかに従って投与される医薬製剤は、要望により低張性、等張性または高張性であってよい。例えば、本明細書において記載される任意の方法に従って投与される医薬製剤は、約0.1倍張度、約0.25倍張度、約0.5倍張度、約1倍張度、約2倍張度、約3倍張度、約4倍張度、約5倍張度、約6倍張度、約7倍張度、約8倍張度、約9倍張度、約10倍張度、少なくとも約1倍張度、少なくとも約2倍張度、少なくとも約3倍張度、少なくとも約4倍張度、少なくとも約5倍張度、少なくとも約6倍張度、少なくとも約7倍張度、少なくとも約8倍張度、少なくとも約9倍張度、少なくとも約10倍張度、約0.1倍から約1倍の間、約0.1倍から約0.5倍の間、約0.5倍から約2倍の間,約1倍から約4倍の間、約1倍から約2倍の間、約2倍から約10倍の間、または約4倍から約8倍の間であってよい。
【0128】
5.伝染の減少
別の態様において、本発明は、気道感染(例えばウイルス感染、細菌感染)の伝染(例えば伝達または伝播を減少させる)を減少させる方法であって、気道感染症を引き起こす病原体に感染した、気道感染症の症候を示す、または病原体(例えば細菌、ウイルス)によって気道感染症に罹る危険がある個体の気道(例えば肺、鼻腔)に、本明細書において記載される医薬製剤の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0129】
いくつかの実施形態において、個体は、本明細書において記載される細菌によって気道感染を引き起こし、細菌によって引き起こされる気道感染症の症候を示す、またはそのような感染の危険があり得る。例えば、個体は、ストレプトコックス・ニューモニアエ、スタピュロコックス・アウレウス、ストレプトコックス・ピュオゲネス、ストレプトコックス・アガラクティアエ、ハエモピルス・インフルエンザエ、クレブシェラ・ニューモニアエ、エシェリキア・コリ、プセウドモナス・アエルギノサ、モラクセラ・カタッラリス、クラミュドピラ・ニューモニアエ、ミュコプラスマ・ニューモニアエ、レジオネッラ・ニューモピラ、バキッルス・アントラキス、ミュコバクテリウム・トゥベルクロシス、ボルデテッラ・ペルトゥッシス、ブルクホリデリア・ケパキア、ブルクホリデリア・プセウドマッレイ、バキッルス・アントラキス、バキッルス・ケレウス、ステノトロポモナス・マルトピリア、シトロバクター科からの細菌およびecinetobacter科からの細菌からなる群から選択される細菌によって、感染するまたは感染の危険があり得る。特定の実施形態において、個体は、ストレプトコックス・ニューモニアエ、クレブシェラ・ニューモニアエまたはプセウドモナス・アエルギノサによって感染する、または感染の危険がある。さらに特定の実施形態において、個体は、ストレプトコックス・ニューモニアエに感染するまたは感染の危険がある。
【0130】
他の実施形態において、個体は、インフルエンザウイルス(例えばインフルエンザウイルスA型、インフルエンザウイルスB型)、呼吸器合胞体ウイルス、アデノウイルス、メタニューモウイルス、サイトメガロウイルス、パラインフルエンザウイルス(例えばhPIV−1、hPIV−2、hPIV−3、hPIV−4)、ライノウイルス、coronoaviruses(例えばSARSコロナウイルス)、ポックスウイルス(例えば天然痘)、腸内ウイルスおよび単純ヘルペスウイルスからなる群から選択されるウイルスに感染する、または感染の危険があり得る。
【0131】
例示の実施形態において、気道感染症の伝染/伝播を減少させるために使用される医薬製剤は、Ca+2対Na+の比が約8:1(モル:モル)、または約16:1(モル:モル)であるカルシウム塩およびナトリウム塩を含む。
【0132】
本明細書において記載される伝染を減少させる方法のいずれかに従って投与される医薬製剤は、要望により低張性、等張性または高張性であってよい。例えば、本明細書において記載される任意の方法に従って投与される医薬製剤は、約0.1倍張度、約0.25倍張度、約0.5倍張度、約1倍張度、約2倍張度、約3倍張度、約4倍張度、約5倍張度、約6倍張度、約7倍張度、約8倍張度、約9倍張度、約10倍張度、少なくとも約1倍張度、少なくとも約2倍張度、少なくとも約3倍張度、少なくとも約4倍張度、少なくとも約5倍張度、少なくとも約6倍張度、少なくとも約7倍張度、少なくとも約8倍張度、少なくとも約9倍張度、少なくとも約10倍張度、約0.1倍から約1倍の間、約0.1倍から約0.5倍の間、約0.5倍から約2倍の間、約1倍から約4倍の間、約1倍から約2倍の間、約2倍から約10倍の間または約4倍から約8倍の間である。
【0133】
6.医薬製剤の投与
本明細書において記載される医薬製剤は、気道への(例えば気道の粘膜表面への)投与を意図し、溶液、懸濁液、噴霧、ミスト、泡沫、ゲル、蒸気、液滴、粒子または乾燥粉末の形態などのいずれかの適切な形態で投与することができる。好ましくは、本明細書において記載される医薬製剤は投与のためにアエロゾル化される。当業界で従来からの、また周知の多くの適切な方法および装置を、製剤をアエロゾル化するために使用することができる。
【0134】
例えば、本医薬製剤は口腔経由の投与のために、スペーサーまたは保持チャンバーを備えるまたは備えない定量用量吸入器(例えば、HFA噴霧剤または非HFA噴霧剤を含む加圧式定量吸入器(pMDI))、ネブライザー、アトマイザー、連続式噴霧器、経口噴霧または乾燥粉末吸入器(DPI)を用いて、アエロゾル化することができる。医薬製剤は、鼻気道経由の投与のために、鼻用ポンプまたは噴霧器、スペーサーまたは保持チャンバーを備えるまたは備えない定量用量吸入器(例えばHFA噴霧剤または非HFA噴霧剤を含む加圧式定量吸入器(pMDI))、鼻用のアダプターまたは熊手を備えるまたは備えないネブライザー、アトマイザー、連続噴霧器または乾燥粉末吸入器(DPI)を使用してアエロゾル化することができる。医薬製剤はまた、例えば、鼻洗による鼻の粘膜表面および、例えば、口洗浄による口粘膜表面に送達することができる。医薬製剤は、例えば、鼻用アダプターを備えるネブライザー、および振動気流または拍動性気流を用いる鼻用ネブライザーを経由して、鼻腔の粘膜表面に送達することができる。
【0135】
本医薬製剤のエアロゾルの製造および肺への送達のために適切な方法を選択する場合、気道の幾何形状は重要な考慮事項である。肺は、塵などの、中で呼吸する異物の粒子を捕捉するように設計されている。堆積には、埋伏、沈降およびブラウン運動という3つの基本的メカニズムが存在する(J.M.Padfield,1987:D.GandertonおよびT.Jones編、「気道への薬物送達」(Drug Delivery to the Respiratory Tract),Ellis Harwood,Chicherster,U.K.)。埋伏は、粒子が特に気道の枝において、気流内にとどまることができない場合に生じる。埋伏した粒子は、気管支壁を覆う粘膜層の上に吸着され、粘液線毛性作用によって最終的に肺から除去される。上気道の埋伏は、空気動力学的直径が5μmより大きい粒子の場合に主として生じる。より小さい粒子(空気動力学的直径が約3μm未満のもの)は、気流中にとどまり、沈降によって肺へ深く移流される傾向がある。沈降は、多くの場合、気流がより遅い下部呼吸器系において生じる。非常に小さい粒子(約0.6μm未満のもの)は、ブラウン運動によって堆積し得る。
【0136】
投与のために、適切な方法(例えば噴霧化、乾燥粉末吸入器)が選択され、肺深部(一般に直径約0.6ミクロンから5ミクロンの間の粒子)、上気道(一般に約3ミクロン以上の直径の粒子)または肺深部および上気道などの気道の所望の領域への優先的送達のための適切な粒子サイズを有するエアロゾルを製造する。
【0137】
本明細書において記載される医薬製剤の有効量は、気道感染症を有する、気道感染症の症候を示す、または気道感染症に罹る危険がある、それを必要とする個体に投与される。入院している個体、および特に人工呼吸を施される個体は、気道感染を引き起こす病原体による感染の危険がある。
【0138】
「有効量」とは所望の治療または予防する効果を達成するのに十分な量であって、例えば、感染症(例えば発熱、咳、くしゃみ、鼻汁、下痢など)の症候を軽減する、回復への時間を短縮する、個体中の病原体を減少させる、病原体が肺粘膜または気道壁液を通過することを阻止する、気道の感染を引き起こす病原体の感染の発生率または感染率低下させる、および/または気道感染症を引き起こす病原体を含有する吐き出された粒子の発散を減少させるのに十分な量である。より詳細には、有効量は、気道粘膜(例えば気道壁液)の表面および/またはバルク粘弾性(viscoelasticy)を上げる、気道粘膜のゲル化(例えば、界面および/またはバルクゲル化)を高める、気道粘膜の表面張力を上げる、気道粘膜の弾性(例えば、表面弾性および/またはバルク弾性)を上げる、気道粘膜の表面粘性(例えば表面粘性および/またはバルク粘性)を上げる、吐き出される粒子の量を減少させる、病原体(例えば、ウイルス、細菌)負荷を減少させるのに十分な量であり得る(例えば、身体への病原体取り込みを減少させること、身体に見出された既存の病原体を殺すまたは不活性化すること、気道水和を高めることなどによって身体からの病原体の除去を高めること、繊毛搏動を高めること、粘液線毛除去を高めることによって)(Grothら、Thorax、43(5):360−365(1988)など)。医薬製剤は気道に、一般的には吸入によって、投与されるので、投与される用量は、製剤の組成物(例えば、カルシウム塩濃度、ナトリウム塩濃度)、エアロゾル化の速度および効率(例えば噴霧化速度および効率)、および被曝の時間(例えば噴霧化時間)と関係がある。例えば、実質的に等価な用量は、濃縮液体医薬製剤かつ短い噴霧化時間(例えば5分)を使用する、希薄な液体医薬製剤かつ長い噴霧化時間(例えば30分以上)を使用する、または乾燥粉末製剤および乾燥粉末吸入器を使用して投与することができる。通常の技術の臨床医は、これらの考慮すべき点および他の因子、例えば、個体の年齢、感応性、許容量および全般的健康状態に基づいて適切な量を判断することができる、本明細書において記載される医薬製剤は、一回量または表示される複数回投与において投与することができる。
【0139】
得られる陽イオンの量は、選択される特定のカルシウム塩またはナトリウム塩に応じて変動し得るので、用量は、肺に送達される所望の量の陽イオンに基づくことができる。例えば、1モルの塩化カルシウム(CaCl2)は解離してCa2+1モルを与えるが、リン酸三カルシウム(Ca3(PO4)2)1モルは、Ca2+3モルを与えることができる。
【0140】
一般に、医薬製剤の有効量は、約0.001mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.002mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.005mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約60mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約50mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約40mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約30mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約20mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約10mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約5mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.02mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.03mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.04mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.05mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.1mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.1mgCa+2/kg体重/用量から約1mgCa+2/kg体重/用量、約0.1mgCa+2/kg体重/用量から約0.5mgCa+2/kg体重/用量、約0.2mgCa+2/kg体重/用量から約0.5mgCa+2/kg体重/用量、約0.18mgCa+2/kg体重/用量、約0.001mgCa+2/kg体重/用量、約0.005mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量、約0.02mgCa+2/kg体重/用量または約0.5mgCa+2/kg体重/用量の用量を送達する。
【0141】
気道に送達されるナトリウムの量は、本製剤中に存在するカルシウム塩の量および所望のカルシウム:ナトリウム比に依存する。いくつかの実施形態において、気道に送達されるナトリウムの量は、約0.001mgNa+/kg体重/用量から約10mgNa+/kg体重/用量、または約0.01mgNa+/kg体重/用量から約10mgNa+/kg体重/用量、または約0.1mgNa+/kg体重/用量から約10mgNa+/kg体重/用量、または約1.0mgNa+/kg体重/用量から約10mgNa+/kg体重/用量、または約0.001mgNa+/kg体重/用量から約1mgNa+/kg体重/用量、または約0.01mgNa+/kg体重/用量から約1mgNa+/kg体重/用量、約0.1mgNa+/kg体重/用量から約1mgNa+/kg体重/用量、約0.2mgNa+/kg体重/用量から約0.8mgNa+/kg体重/用量、約0.3mgNa+/kg体重/用量から約0.7mgNa+/kg体重/用量、または約0.4mgNa+/kg体重/用量から約0.6mgNa+/kg体重/用量である。
【0142】
いくつかの実施形態において、気道(例えば肺および呼吸気道)に送達されるカルシウムの量は、約0.001mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.002mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.005mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約60mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約50mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約40mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約30mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約20mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約10mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約5mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.02mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.03mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.04mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.05mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.1mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.1mgCa+2/kg体重/用量から約1mgCa+2/kg体重/用量、約0.1mgCa+2/kg体重/用量から約0.5mgCa+2/kg体重/用量、約0.2mgCa+2/kg体重/用量から約0.5mgCa+2/kg体重/用量、約0.18mgCa+2/kg体重/用量、約0.001mgCa+2/kg体重/用量、約0.005mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量、約0.02mgCa+2/kg体重/用量または約0.5mgCa+2/kg体重/用量である。
【0143】
他の実施形態において、上気道(例えば鼻腔)に送達されるカルシウムの量は、約0.001mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.002mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.005mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約60mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約50mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約40mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約30mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約20mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約10mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約5mgCa+2/kg体重/用量および約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.02mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.03mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.04mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.05mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.1mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.1mgCa+2/kg体重/用量から約1mgCa+2/kg体重/用量、約0.1mgCa+2/kg体重/用量から約0.5mgCa+2/kg体重/用量、約0.2mgCa+2/kg体重/用量から約0.5mgCa+2/kg体重/用量、約0.18mgCa+2/kg体重/用量、約0.001mgCa+2/kg体重/用量、約0.005mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量、約0.02mgCa+2/kg体重/用量または約0.5mgCa+2/kg体重/用量の量である。
【0144】
いくつかの実施形態において、気道(例えば肺および呼吸気道)に送達されるナトリウムの量は、約0.001mgNa+/kg体重/用量から約10mgNa+/kg体重/用量、約0.01mgNa+/kg体重/用量から約10mgNa+/kg体重/用量、または約0.1mgNa+/kg体重/用量から約10mgNa+/kg体重/用量、または約1.0mgNa+/kg体重/用量から約10mgNa+/kg体重/用量)、または約0.001mgNa+/kg体重/用量から約1mgNa+/kg体重/用量、または約0.01mgNa+/kg体重/用量から約1mgNa+/kg体重/用量、約0.1mgNa+/kg体重/用量から約1mgNa+/kg体重/用量、約0.2mgNa+/kg体重/用量から約0.8mgNa+/kg体重/用量、約0.3mgNa+/kg体重/用量から約0.7mgNa+/kg体重/用量、または約0.4mgNa+/kg体重/用量から約0.6mgNa+/kg体重/用量である。
【0145】
他の実施形態において、上気道(例えば鼻腔)に送達されるナトリウムの量は、約0.001mgNa+/kg体重/用量から約10mgNa+/kg体重/用量、約0.01mgNa+/kg体重/用量から約10mgNa+/kg体重/用量、または約0.1mgNa+/kg体重/用量から約10mgNa+/kg体重/用量、または約1.0mgNa+/kg体重/用量から約10mgNa+/kg体重/用量、または約0.001mgNa+/kg体重/用量から約1mgNa+/kg体重/用量)、または約0.01mgNa+/kg体重/用量から約1mgNa+/kg体重/用量、約0.1mgNa+/kg体重/用量から約1mgNa+/kg体重/用量、約0.2mgNa+/kg体重/用量から約0.8mgNa+/kg体重/用量、約0.3mgNa+/kg体重/用量から約0.7mgNa+/kg体重/用量または約0.4mgNa+/kg体重/用量から約0.6mgNa+/kg体重/用量である。
【0146】
本医薬製剤は、上気道(例えば鼻通路、鼻腔、喉、咽頭)、呼吸気道(例えば喉頭、気管(tranchea)、気管支、細気管支)または肺(例えば呼吸細気管支、肺胞管、肺胞嚢、肺胞)に送達することができる。
【0147】
一般に、吸入装置(例えばDPI)は、本明細書において記載される組成物の治療有効量を単一の吸入で送達することができなければならない。ある場合にはしかし、意図する治療結果を達成するために、多数回の吸入および/または頻繁な投与を必要とすることがある。例えば、カルシウムおよびナトリウムの所望の用量は、2回以上の吸入(例えばカプセル型またはブリスター型吸入器からの)で送達されてもよい。好ましくは、それを必要とする対象に投与される各用量は、本明細書に記載される組成物の有効量を含んでおり、最高約4回の吸入を用いて投与される。例えば、本明細書において記載される組成物の各用量は、単一の吸入または2、3または4回の吸入で投与することができる。組成物は、好ましくは、呼吸活性化DPIを使用して、単一の呼吸活性化ステップで投与される。
【0148】
所望の治療効果を提供する用量の適切な間隔は、症状(例えば感染症)の重症度、対象の全般的な健康状態、および対象の医薬製剤に対する許容量および他の考慮事項に基づいて判断することができる。これらおよび他の考慮事項に基づいて、臨床医は、用量の適切な間隔を判断することができる。一般に、医薬製剤は、必要により、1日1回、2回または3回投与される。
【0149】
所望されたまたは指示された場合、本医薬製剤は1種または複数の他の治療剤とともに投与することができる。他の治療剤は、例えば、経口的に、非経口的に(例えば、静脈内、動脈内、筋肉内または皮下注射)、局所に、吸入(例えば気管支内、鼻腔内または経口吸入、鼻腔内の液滴)によって、直腸に、膣などの任意の適切な経路によって投与することができる。本医薬製剤は、他の治療剤の投与の前に、実質的に同時に、または後に投与することができる。好ましくは、本医薬製剤および他の治療剤は、これらの薬理学的活性が実質的に重複するように投与される。
【0150】
例証
本発明は、ここまで概論的に記載されているが、以下の実施例を参照することによってより容易に理解されよう。これは、本発明の特定の態様および実施形態の単なる例証の目的のために包含されており、本発明を限定するようには意図されない。
【0151】
実施例1:カルシウムとナトリウムの比
この実施例において、異なる比のカルシウムおよびナトリウムを含む製剤を、特定の濃度および比が優れた治療活性(例えばウイルス価の減少)を与えるかどうか判断するために試験した。約4:1から約16:1(モル:モル)のCa+2:Na+比の製剤が優れた治療活性を有すると確認された。
【0152】
方法:
インフルエンザ感染の細胞培養モデルを、ウイルス感染に対する種々の霧状溶液の効果を検討するために使用した。集密的(膜は完全に細胞で覆われている)および気相液相界面(ALI)培養物が、先端の培地を除去し37°C/5%CO2で培養することにより確立されるまで、Calu−3細胞を、透過性膜(12mmのTranswells;0.4μm孔サイズ、Corning Lowell,MA)上で培養した。細胞は各試験の前に2週間を超えてALIで培養した。
【0153】
各試験に先立って、各Transwellの先端面をPBSを用いて3回洗浄した。細胞は続いて、Sedimentation chamberおよびSeries 8900 nebulizerを使用して、霧状製剤にさらした。暴露直後に、基底外側の培地(Transwellの底部側の培地)を、新鮮な培地と置き換えた。3回繰り返しのウェルを各試験の各製剤にさらした。第2の細胞培養皿を同一の製剤にさらし、全塩またはカルシウムの細胞への送達を定量した。
【0154】
暴露の1時間後、細胞を、0.1−0.01(細胞当たり0.1−0.01ビリオン)の感染多重度でインフルエンザA型/WSN/33/1の10μLに感染させた。エアロゾル処理の4時間後に、先端面を洗浄して過剰の製剤および独立ウイルスを除去し、細胞は5%CO2、37°Cでさらに20時間培養した。翌日(感染の24時間後)感染細胞の先端面上に放出されたウイルスは、培地またはPBSに収集し、先端の洗浄液中のウイルスの濃度はTCID50(50%培養細胞感染量)アッセイによって定量した。TCID50アッセイは、試料中のウイルスを定量するために使用される標準終点稀釈アッセイである。
【0155】
結果:
(a)カルシウム対ナトリウム比
先のインビトロの検討は、ナトリウム塩およびカルシウム塩を含む製剤が吐き出される粒子を抑制することができることを示した。特定の濃度および/または比の2種の陽イオンおよび/または塩が優れた治療活性を与えることができるか決定するために、様々な濃度の塩化カルシウムおよび塩化ナトリウムを含む一揃いの製剤を、インフルエンザウイルス複製を減少させるそれぞれの活性に関して試験した。試験した製剤中の塩の合計濃度は0.115Mから1.3Mの範囲であった。未処理の(空気)対照は各検討に包含されており、処理したウェルからのウイルス価(LogTCID50/mL)は各検討から空気対照に対して規格化した。
【0156】
図1は、ウイルス複製に対する様々なナトリウムおよびカルシウム濃度の効果を示す。すべての試験からのデータを規格化するために、各処理条件のウイルス複製の変化率は、ゼロ塩条件と比較して、各試験で求めた。ウイルス複製が等式Nt=N0*e(kt)(式中、N0は時間0でのウイルス粒子のもとの数であり、kは複製速度定数であり、Ntは時間tでのウイルス粒子の数である。)によって進むと仮定すると、t(k−k')を求めることができる。ただし、tは一定(tですべての試験が終了する)であり、k'は新規の複製速度定数(例えば特定の塩製剤の存在下での複製速度定数)である。この分析によって、より高い値はより小さいk'、およびそれによりウイルス感染力の速度のより大きい減少(またはウイルス感染を減少させるより大きい活性)を表す。等高線プロットはJMP分析ソフトウェアで作成した。X軸はCaCl2濃度の増加を表し、Y軸はNaCl濃度の増加を表す。各点は、1試験当たり少なくとも3つのウェルで試験した製剤を表す。ウイルス感染力の減少は、黒さの増加により示される(すなわち、より高い数字およびより暗い色調は、インフルエンザウイルス複製の減少に対するより大きい効果をもつ製剤を表す)。
【0157】
カルシウムの濃度が増加するにつれて、ウイルス感染力の対応する減少が観察されたが、これはこのモデルのカルシウムの用量反応効果を実証した先の検討と矛盾しない。さらに、これらの検討は、優れた抗ウイルス活性を示すカルシウム対ナトリウム濃度の範囲を強調している。カルシウム濃度は0.575Mから1.15Mの範囲であり、ナトリウム濃度は0.075Mから0.3Mの範囲であった。その結果、カルシウム対ナトリウム比は約4:1から約16:1(モル:モル)の間であり、中間点は8:1(モル:モル)であった。
【0158】
(b)カルシウム対ナトリウムの8:1比または16:1比の製剤が用量反応法でウイルス感染力を減少させた
相異なる比のカルシウムおよびナトリウムを含む、いくつかの異なる製剤の試験から、
ウイルス複製を減少させるのに特に有効なものとして、Ca+2:Na+比が8:1または16:1(モル:モル)の製剤が確認された。これらの比の製剤が塩濃度の範囲にわたって有効であるか判断するために、用量反応検討を実施した。塩化カルシウムの濃縮溶液を、塩化ナトリウムに対して8:1比または16:1比で製剤化し、続いて水で希釈した。この手法によって、カルシウム対ナトリウムの比は一定に保持されたが、各イオンの濃度は減少した。両者の比の製剤は、用量依存的にウイルス感染を減少させ(図2A、2B)、カルシウムの類似した濃度では互いに同等の効果を示した。どちらの場合においても、用量時間を一定を保ちながら、液剤の張度を増加することによって用量を増加させた。
【0159】
実施例2:カルシウム:ナトリウム製剤はインビトロの多くのインフルエンザ株の感染力を減少させた
この実施例において、カルシウムナトリウム製剤(8:1(モル:モル)のCa2+:Na+比の)のインビトロ治療活性を、インフルエンザウイルスの多くの株を使用して試験した。製剤の張度を変動させた(等張液の張度に対し0.5倍、2倍または8倍)。製剤は幅広いインフルエンザウイルスの感染力を事実上減少させることが示された。
【0160】
方法:
集密的(膜は完全に細胞で覆われている)および気相液相界面(ALI)培養物が、先端の培地を除去し37°C/5%CO2で培養することにより確立されるまで、Calu−3細胞を、透過性膜(12mmのTranswell;0.4μm孔サイズ、Corning Lowell,MA)上で培養した。細胞は各試験の前に2週間を超えてALIで培養した。正常ヒト気管支上皮(NHBE)細胞を透過性膜(12mmのMillicell、0.4μm孔サイズ;Millipore Billerica、MA)上の通路2に植えつけ、液体で覆われた培養状態の下で集密的になるまでインキュベートした(37°C、5%CO2、95%RH)。集密的になると、先端の培地を除去し、ALI培養を確立した。細胞は各試験までに4週間以上のALIで培養した。
【0161】
各試験に先立って、各細胞型の先端面をPBSを用いて3回洗浄した。細胞は続いて、Sedimentation chamberおよびSeries 8900 nebulizerを用いて霧状製剤にさらした。Calu−3細胞で実施した試験において、Transwellは3回繰り返して8:1モル比(0.5倍、2倍および8倍張度;1倍=等張)カルシウムナトリウム製剤にさらした。
【0162】
NHBE細胞について実施した試験は、8:1モル比(0.5倍、2倍または8倍張度;1倍=等張)の霧状カルシウムナトリウム製剤へのMillicellsの暴露を含んでいた。暴露直後に、基底外側の培地(TranswellまたはMillicellの底部側の培地)は、新鮮な培地と置き換えた。
【0163】
Calu−3細胞およびNHBE細胞の両方に実施された試験では、細胞型ごとに3回繰り返しのウェルを各試験において各製剤にさらした。塩合計またはカルシウムの細胞への送達を定量するために、第2の細胞培養皿を同一の製剤にさらした。暴露の1時間後、細胞を、0.1−0.001(1細胞当たり0.1−0.001ビリオン)の感染多重度でインフルエンザウイルスの5−10μLに感染させた。エアロゾル処理の4時間後に、先端面を洗浄して過剰の製剤および独立ウイルスを除去し、細胞は5%CO2、37°Cでさらに20時間培養した。翌日、感染細胞の先端面上に放出されたウイルスは、培地またはPBSに収集し、先端の洗浄液中のウイルスの濃度はTCID50(50%培養細胞感染量)アッセイ(ウイルス価を定量するために使用される標準終点稀釈アッセイ)によって定量した。この検討において使用されるインフルエンザ株は、表2中にリスト化されている。
【0164】
【表2】
【0165】
結果
(a) カルシウムナトリウム製剤は、インビトロでH3N2インフルエンザ株の感染力を減少させた。
実施例1は、カルシウムナトリウム製剤がインフルエンザ株A/WSN/33/1(H1N1)のウイルス複製を効果的に減少させたことを示す。この実施例において、本発明者らは異なるインフルエンザ株A/Panama/2007/99 (H3N2)について製剤の活性を試験した。さらに、Calu−3細胞が肺起源の永久増殖細胞であるので、本発明者らはまた、初代正常ヒト気管支上皮(NHBE)細胞培養物を試験した。これらの培養物は多細胞で、試験に先立ってインビトロで、最小限に継代する。
【0166】
NHBE細胞は相異なる張度カルシウムナトリウム製剤(Ca:Naの8:1比)にさらし、次いで、インフルエンザA型/Panama/2007/99に感染させた。NHBE細胞は初代細胞であるので、この培養物には、Calu−3培養物中には存在しないドナー間のばらつきがあった。このばらつきを説明するために、4つの異なるドナーからのNHBE培養物を試験した。NHBE細胞培養物の処理は、結果として、各ケースで100倍より大きい最大の減少(図3)を含む、試験したすべてのドナーのインフルエンザ価を減少させた。したがって、カルシウムナトリウム製剤は、Calu−3細胞ならびに初代NHBE細胞培養物のウイルス感染力を減少させるのに有効であり、さらに、インフルエンザ感染症を治療する(予防的治療を含む)製剤の治療上の価値を支持している。
【0167】
(b) カルシウムナトリウム製剤は、多くのインフルエンザ株の感染力をインビトロで減少させた。
8:1Ca2+:Na+モル比のカルシウムナトリウム製剤は多くのH1N1インフルエンザ株および1つのH3N2インフルエンザ株(実施例1および2(a)、追加のデータは示さず)の感染力を減少させることを示した。次いで、本発明者らは2つの追加のH3N2株および1つのインフルエンザB型株を試験した。さらに、発明者らは豚から単離されたものを含む、4種の追加のH1N1株を試験した。本発明者らは、カルシウムナトリウム製剤が、用量依存的に試験したすべてのウイルスの感染力を減少させることを見出した(図4)。8倍製剤を使用すると、ウイルス価の最大の減少が観察され、特定のウイルス株に応じて、32から12,589倍の間でウイルス価を減少させた。したがってカルシウムナトリウム製剤(8:1のCa2+:Na+モル比)は、幅広いインフルエンザウイルスの感染力を効果的に減少させることができる。
【0168】
実施例3:
フェレットインフルエンザモデルでインフルエンザウイルスの感染力を減少させるカルシウムナトリウム製剤のインビボ治療活性
この実施例において、Ca2+:Na+比が8:1(モル:モル)である2種の液剤のインビボ治療活性を、インフルエンザのフェレットモデルを使用して試験した。製剤は高張性であった(等張液の張度に対し4倍または8倍のいずれか)。その処理はインフルエンザ感染症の臨床経過を改善し、かつフェレットのインフルエンザ感染への炎症反応を弱めることが示された。
【0169】
方法:
インフルエンザのフェレットモデルは、インフルエンザワクチンまたは抗ウイルス剤の評価の標準モデルである。このモデルを使用して、本発明者らは、インビトロのインフルエンザ複製に対する活性を高めていた製剤Aおよび2種の8:1モル比製剤の治療活性を試験した。試験製剤は、表3に示される。対照フェレットは、同一の持続時間(6.5分)の、および同一の暴露条件下で吸入等級水にさらした。エアロゾル製剤を2つのPariLC Sprint nebulizerから作製し、フェレットはFlowPast暴露システム(TSEシステム)を使用して、霧状製剤にさらした。感染の1時間前、感染の4時間後、次いで6日間1日2回、検討の終了までフェレットに投薬した。鼻洗試料は、検討の第1日から始めて毎日1回収集し、体温および体重を検討の第0日から始めて1日2回求めた。炎症細胞の数および鼻洗試料のウイルス価を求めた。
【0170】
【表3】
【0171】
結果:
(a) カルシウムナトリウム製剤は、発症を阻止し発熱の重症度を低減した。
対照フェレットと比較すると、対照群と比較して、4倍および8倍処理フェレットは発熱を遅延しピーク体温を下げた(図5)。ピーク発熱(感染の36時間後)の時間に、対照群と比較して、4倍処理群は体温が著しく低下した。(4倍群の0.4°Cと比較して、対照群の3.4°Cの平均上昇;p<0.05およびp<0.01、それぞれマン・ウィットニーU検定;図5)。8倍処理群はまた対照動物と比較して、体温の低下を示した(平均上昇は1.45°C)。これらのデータは、カルシウムナトリウム製剤が、フェレットのインフルエンザ感染の後、重症度を低減し発熱を遅延させたことを示す。
【0172】
(b)カルシウムナトリウム製剤は体重損失を阻止した
対照フェレットは、処理した動物と比較して、重量をより急速に失い、感染の48時間後、体重損失のより大きい百分率を示した。(図6)4倍および8倍の群と対照群との間の体重損失の差は、統計的に有意であった(4倍および8倍の群のそれぞれ、3.1%および2.4%と比較して対照群の4.0%の重量損失;図6)。*データはまた、8倍処理動物は最少量の重量損失で、重量損失の用量反応的阻止を示した。
【0173】
(c)カルシウムナトリウム製剤は鼻炎症細胞数を減少させた
上気道のインフルエンザ感染症は、炎症細胞の浸潤に関係している。この炎症はまた感染に関連した臨床症候の根本原因である。カルシウムナトリウム製剤を用いる治療がインフルエンザ感染に続く炎症を減少させることができるか判断するために、対照または処理フェレットからの各鼻洗中の炎症細胞の数を求めた。炎症細胞数は、検討の経過にわたり対照群と比較して、処理群において有意に低かった。(図7;p<0.0001、二元配置分散分析)。4倍および8倍処理フェレットから回収された炎症細胞の合計数は、感染の72時間後、対照フェレットのそれより有意に低かった。(4倍処理でp<0.01;8倍処理でp<0.001;マン・ウィットニーU検定)。さらに、4倍および8倍の処理によって、結果として感染の120時間後で炎症細胞数が統計的に有意な差を生じた。(p<0.05、マン・ウィットニーU検定)。対照的に、製剤Aは、感染の120時間後で炎症細胞の数を減少させるのにそれほど有効ではなかった。(図7C)結果は、より高用量では、より長い時間の間炎症を阻止することができることを示す。まとめると、これらのデータは、カルシウムナトリウム製剤は臨床症候を低減し、インフルエンザ感染に関連した炎症反応を弱めたことを実証している。
【0174】
これらのインビボデータは、カルシウムナトリウム製剤処理が、インフルエンザ感染症の臨床経過を改善し、フェレットのインフルエンザ感染への炎症反応を弱めることを示した。(例えば体重損失の低減、炎症細胞数の低減など)。
【0175】
インフルエンザ感染症は、インフルエンザの特定の抗ウイルス薬/薬剤によって通常治療されるか、またはインフルエンザワクチンによって予防的に治療される普通の気道感染症である。抗ウイルス剤はインフルエンザの特定の診断を必要とするという点で限定的であり、治療が有効であるためには、感染または症候発症直後に始めなければならない。さらに、正確な診断を困難にするインフルエンザ感染症と類似した総体症状を引き起こす他のウイルスによって引き起こされるインフルエンザ様疾患(ILI)と総称されるいくつかの気道感染症がある。インフルエンザワクチンは、ある年に集団内に循環するインフルエンザウイルスのサブセットのみを標的にするので、毎年の適用範囲は限定的である。抗ウイルス剤およびワクチン剤の両方にとって、治療に抵抗性のある耐性ウイルスの出現もまた重要である。
【0176】
本明細書において記載される製剤は、感染因子の正確な診断をしないで、気道感染への被曝の危険がある対象に、症候の最初の発症で投与し、および/または予防的に投与することができよう。
【0177】
実施例4:hPIV感染力を減少させるカルシウムナトリウム製剤の活性
この実施例において、ヒトパラインフルエンザウイルス(hPIV)感染力を低減する8:1カルシウムナトリウム製剤の有効性を吟味した。データでは、8:1カルシウムナトリウム製剤がCalu−3およびNHBE細胞の両方でhPIV−3ウイルス複製を減少させることを示した。
【0178】
ヒトパラインフルエンザウイルスは、インフルエンザとは異なる一本鎖RNA外膜ウイルスである。これらのウイルスは直径150−300nmで、赤血球凝集素ノイラミニダーゼ(HN)スパイクおよび融合蛋白質に覆われている。インフルエンザウイルスと異なり、ゲノムは未分節であり、HN四量体による標的細胞へのウイルスの付着の後、ウイルスは原形質膜と直接融合すると考えられている。(Moscona、A.(2005)。「小児期呼吸器疾患に割り込む標的としての細胞へのパラインフルエンザウイルスの侵入」(Entry of parainfluenza virus into cells as a target for interrupting childhood respiratory disease)J Clin Invest 115:1688−98(7))。hPIV−3は上および下気道疾患、ならびにしばしばインフルエンザ様疾患(ILI)の原因に関係している。
【0179】
方法:
ヒトパラインフルエンザウイルス3(hPIV−3)感染の細胞培養モデルを、ウイルス感染についての相異なる霧状溶液の効果を検討するために使用した。集密的(膜は完全に細胞で覆われている)かつ気相液相界面(ALI)培養物が、先端の培地を除去し37°C/5%CO2で培養することにより確立されるまで、Calu−3細胞を、透過性膜(12mmのTranswell;0.4μm孔サイズ、Corning Lowell,MA)上で培養した。細胞は各試験の前にALIで2週間を超えて培養した。正常ヒト気管支上皮(NHBE)細胞を透過性膜(12mmのMillicell、0.4μm孔サイズ;Millipore Billerica、MA)上の通路2に植えつけ、液体で覆われた培養状態の下で集密的になるまでインキュベートした(37°C、5%CO2、95%RH)。集密的になると、先端の培地を除去し、ALI培養を確立した。細胞は各試験までに4週間以上のALIで培養した。各試験に先立って、各細胞型の先端面はPBSを用いて3回洗浄した。
【0180】
続いて、細胞を、Sedimentation chamberおよびSeries 8900 nebulizerを使用して、霧状製剤にさらした。Calu−3細胞に実施した試験において、Transwellを、8:1モル比(0.5倍、2倍および8倍)で霧状Ca2+:Na+製剤に対して3回繰り返してさらした。NHBE細胞に実施した試験は、8:1モル比(0.5倍、2倍および8倍)の霧状Ca2+:Na+製剤にMillicellsを2回繰り返してさらすものであった。暴露直後に、基底外側の培地(Transwellの底部側の培地)は、新鮮な培地と置き換えた。3回繰り返しのウェルを、各試験で各製剤にさらした。第2の細胞培養皿を同一の製剤にさらし、全体の塩またはカルシウムの細胞への送達を定量した。暴露の1時間後、細胞は、10μLのhPIV−3(C242株)に0.3−0.1(1細胞当たり0.3−0.1ビリオン)の感染多重度で感染させた。エアロゾル処理の4時間後に、先端面は過剰な製剤および独立ウイルスを除去するために洗浄した。翌日(製剤暴露の24時間後)感染細胞の先端面に放出されたウイルスを培地またはPBSに収集し、先端の洗浄液中のウイルス濃度をTCID50(50%培養細胞感染量)アッセイによって定量した。
【0181】
結果
先の実施例は、インフルエンザウイルスの複製がカルシウムナトリウム製剤によって用量依存的に有意に減少し、好ましいCa+2:Na+モル比を8:1と確認したことを示す。ウイルス価を減少させるカルシウムナトリウム製剤の治療活性をさらに吟味しインビトロ治療の広範囲の性質を求めるために、ヒトパラインフルエンザウイルス3(hPIV−3)の複製に対するカルシウムナトリウム製剤の効果を試験した。
【0182】
カルシウムナトリウム製剤がhPIV−3感染を有効に減少させるか判断するために、Calu−3細胞またはNHBE細胞を相異なる張度(0.5倍、2倍および8倍)の8:1カルシウムナトリウム製剤にさらした。未処理の細胞を対照として使用した。インフルエンザでの調査結果と同様に、hPIV−3感染は、カルシウムナトリウム製剤によって用量依存的に減少した(図8)。Calu−3およびNHBE細胞の両方において、未処理の対照と比較して、8倍Ca2+:Na+製剤を用いる治療が価の最大の減少を結果としてもたらした(p<0.001、各未処理対照と比較して;テューキー多重比較事後検定を用いる一元配置分散分析)、しかしながら、3つの処理はすべて感染に有意な影響を及ぼした。Calu−3およびNHBE細胞において、0.5倍製剤は、hPIV−3感染をそれぞれ15.8および79.4倍減少させ、また2倍製剤はhPIV−3感染をそれぞれ631および5011倍減少させた。
【0183】
これらのデータは、インフルエンザで得られた調査結果を拡張し、カルシウムナトリウム製剤が無関係なウイルスによって引き起こされるウイルス感染を減少させるのに広く有効であることを実証する。
【0184】
実施例5:
ライノウイルス感染力を減少させるカルシウムナトリウム製剤の活性
先の実施例は、インフルエンザウイルスおよびパラインフルエンザウイルス(hPIV)の複製がカルシウムナトリウム製剤によって用量依存的に有意に減少し、好ましいCa+2:Na+モル比を8:1と確認したことを示す。ウイルス価を減少させるカルシウムナトリウム製剤の治療活性をさらに吟味し、インビトロ治療の広範囲の性質を求めるために、ヒトライノウイルス感染力を減少させるカルシウムナトリウム製剤の有効性を試験した。データは8:1カルシウムナトリウム製剤が、Calu−3細胞のライノウィルス(rhinovrius)の複製を減少させることを示した。
【0185】
Calu−3細胞を8倍カルシウムナトリウム製剤(8:1のCa2+:Na+モル比)にさらした。未処理細胞を対照として使用した。未処理対照と比較して、8倍製剤を用いた細胞の処理は、Log10TCID50/mLで1.5、ライノウイルス感染を減少させた。(図9;p<0.01、未処理対照と比較;t検定)。
【0186】
これらのデータは、インフルエンザおよびパラインフルエンザで得られた調査結果を拡張し、カルシウムナトリウム製剤がまた、ライノウイルスなどの非外膜ウイルスによって引き起こされるウイルス感染を減少させるのに有効であることを実証する。インフルエンザおよびパラインフルエンザのモデルでカルシウムナトリウム製剤を用いて得られたデータとともに、この結果はカルシウムナトリウム製剤が、多数の無関係な呼吸系ウイルスの感染力を減少させるのに広く有効であることを実証する。
【0187】
実施例6:
細菌感染症を治療するカルシウムナトリウム製剤の治療活性
この実施例において、細菌感染症を治療するカルシウムナトリウム製剤の治療活性は、マウスモデルを使用して吟味した。データは、カルシウムナトリウム製剤がマウスモデルのストレプトコックス・ニューモニアエ感染症を治療するのに有効であることを示した。
【0188】
方法:
細菌は、37°C、5%CO2で、トリプシン大豆寒天(TSA)血液平板上で培養物を終夜成長させることにより調製した。単一コロニーを、無菌のPBS中で約0.3のOD600に再懸濁し、続いて無菌のPBS中で1:4に希釈した(約2x107コロニー形成単位(CFU)/mL)。マウスを麻酔にかけながら、気管内滴下によって50μLの細菌懸濁液(約1x106CFU)に感染させた。
【0189】
C57BL6マウスを、最大11匹の動物を別々に保持するパイ型ケージに結合したPari LC Sprint nebulizerを使用する全身被曝方式で、アエロゾル化液剤にさらした。処理は血清型3ストレプトコックス・ニューモニアエの感染の2時間前に実施した。他に明言しない限り、暴露時間は3分の継続であった。感染の24時間後、マウスはペントバルビタール注入によって安楽死させ、肺を集め、無菌PBSで均質化した。肺ホモジェネート試料を、無菌PBSで連続的に希釈し、TSA血液寒天平板で平板培養した。翌日CFUを数えた。
【0190】
結果:
(a)カルシウムナトリウム製剤(Ca2+:Na+、8:1モル比)は用量依存的に細菌負荷を減少させた
カルシウムナトリウム製剤の治療活性を、同一のモデルで、広い用量範囲にわたり評価した。噴霧投薬時間を一定に保持しつつ、相異なる濃度のCa2+:Na+およびしたがって相異なる張度からなる製剤を使用することにより、相異なる用量を送達した。8:1Ca2+:Na+製剤は細菌性負荷を用量依存的に減少させ、より低用量のカルシウムで最大の減少が観察された。(0.32mgのCa2+/kgの用量および0.5倍張度で約4倍の減少、および0.72mgのCa2+/kgの用量および1.0倍の張度で約5倍の減少(図10))。しかしながら、興味深いことには、これらの減少は、かなりより低用量で製剤Aに見られた減少と同程度であった。製剤Aの張度と同等である2倍張度製剤は、1.58mgのCa2+/kgの用量で投与した場合、細菌価を減少させることに比較的控え目な効果(約1.6倍の減少)が見られた。
【0191】
(b) より長い噴霧化によって用量を上げても、カルシウムナトリウム製剤の治療活性への有意な影響は見られなかった
図10は、カルシウムとナトリウムが8:1モル比のカルシウムナトリウム製剤が、1.58mg未満のCa2+/kgの用量で細菌感染症の重症度を低減したことを示す。特に、試験した製剤がすべて効果的だったが、最も高い治療活性を示したのは1倍製剤(約0.72mgCa2+/kg)であった。結果を図10に示した検討では、3分の投薬時間を試験した。用量の効果をさらに吟味するために、本発明者らは投薬の期間を延ばすことによりCa2+の用量範囲を試験した。異なる長さの時間(1.5分から12分)の間、Ca2+:Na+製剤(1倍張度=等張;8:1モル比)を用いて動物を処理した。それぞれ1.5、3、6および12分の投薬時間に対し、結果として0.36、0.72、1.44および2.88mgのCa2+/kgのCa2+用量となった。図11中に示すように、最小の投薬時間では対照動物(食塩水を3分投薬した)と比較して、細菌価の減少は観察されなかったが、3、6および12分投薬はそれぞれ、細菌価を統計的に有意なレベルに減少させた。
【0192】
実施例7:
マウスインフルエンザモデルのインフルエンザウイルスの感染力を減少させるカルシウムナトリウム製剤のインビボ治療活性
この実施例において、Ca2+:Na+比が8:1(モル:モル)の4種の液剤のインビボ治療活性をインフルエンザのマウスモデルを使用して試験した。製剤は等張性は高張性であった(等張液の張度に対し1倍、また2倍、4倍または8倍)。その処理はマウスのインフルエンザ感染症の臨床経過を改善することを示した。
【0193】
方法:
マウス(Balb/c)を、感染の3時間前から始めて、感染の3時間後に、次いで、毎日2回最大11日間、示した製剤で処理した。インフルエンザに感染させるために、マウスは、ケタミン/キシラジンを用いて軽く麻酔をかけ、ウイルス(インフルエンザA型/PR/8)の致死量を鼻腔内に送達した。この検討の主要評価指標は、感染後、動物が最大21日間生存することであった。動物体温および体重を検討の間じゅうモニターした。95°F未満の体温の動物は安楽死させた。
【0194】
結果
実施例3および6は、本明細書において記載されるカルシウムナトリウム製剤が、マウスモデルの細菌性肺炎およびフェレットモデルのインフルエンザを治療するのに効果的であることを実証した。細菌モデルにおいて、1倍製剤かつ1.5mgのCa2+/kg未満の用量が最も効果的であることが見出された。フェレットインフルエンザモデルにおいて、高用量であればあるほど感染経過を改善するのに効果的であった。そこで、本発明者らはインフルエンザのマウスモデルにおいて、8:1のCa2+:Na+モル比でそれぞれ1倍、2倍、4倍または8倍製剤の用量範囲を試験した。
【0195】
インフルエンザ感染へのカルシウムナトリウム製剤の効果を検討するために、生存率の検討を実施した。マウスに致死量のインフルエンザウイルスを用いて投与し、相異なる張度のカルシウムナトリウム製剤で処理した。各製剤の投薬時間は一定としたので、製剤の張度が増加するにつれて、カルシウムの用量は増加した。生理食塩水処理動物を対照として使用した。図12は、各群の生存データを経時的に示す。この検討において、対照動物の75%は、検討終了の21日目の前に死んだ。対照的に、4倍処理動物の50%、および8倍処理動物の42.9%が死に、4倍および8倍製剤を用いた処理が動物生存率を改善することを実証した。
【0196】
本明細書は、明細書中で引用された参考文献の教示に照らして最も完全に理解される。本明細書内の実施形態は、本発明の実施形態の例証を与え、本発明の範囲を限定するように解釈されるべきでない。当業者は、他の多くの実施形態が本発明によって包含されることを容易に認識する。この開示において引用された刊行物および特許はすべて、それらの全体が参照によって組み込まれる。参照によって組み込まれた内容がこの明細書を否定するか、または矛盾している程度によっては、本明細書はいかなるそのような内容にも取って代わる。任意の参考文献の引用は、本明細書においてそのような参考文献が本発明への先行技術であるということを承認するものではない。
【0197】
当業者は、単なるルーチン実験を用いて、本明細書において記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識するまたは確認することができよう。そのような等価物は、以下の実施形態によって包含されるように意図される。
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2009年3月26日に出願された米国特許仮出願第61/163,772号明細書、2009年3月26日に出願された米国特許仮出願第61/163,763号明細書、2009年3月26日に出願された米国特許仮出願第61/163,767号明細書、2009年10月28日に出願された米国特許仮出願第61/255,764号明細書、2010年1月25日に出願された米国特許仮出願第61/298,092号明細書、および2010年2月18日に出願された第61/305,819号明細書の利益を主張する。上記の出願の全教示は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
気道感染症は、上気道(例えば鼻、耳、鼻腔および喉)および下気道(例えば気管、気管支および肺)のありふれた感染症である。気道感染症は一次または二次感染症であってよい。
【0003】
上気道感染症の症候は鼻水または鼻づまり、過敏性、情動不安、食欲低下、活動レベル低下、咳および発熱を包含する。上気道のウイルス感染は、例えば咽喉痛、風邪、クループおよび流感をもたらす、またはこれらに関係している。上気道感染症を引き起こすウイルスの例は、ライノウイルスおよびインフルエンザウイルスを包含する。上気道の細菌感染は、例えば百日咳および敗血性咽頭炎をもたらす、またはこれらに関係している。上気道感染症を引き起こす例示の細菌は、ストレプトコックス・ピュオゲネス(Streptococcus pyogenes)およびボルダテッラ・ペルトゥッシス(Bordatella pertussis)を包含する。
【0004】
下気道感染症の臨床症状は、肺中に痰、発熱および呼吸困難を起こす、浅い咳を包含する。下気道のウイルス感染症の例は、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス(「PIV」)感染症、呼吸器合胞体ウイルス(「RSV」)感染症および細気管支炎を包含する。下気道感染症を引き起こす細菌の例は、ストレプトコックス・ニューモニアエ(Streptococcus pneumoniae)(肺炎球菌性肺炎を引き起こす)およびミュコバクテリウム・トゥベルクロシス(Mycobacterium tuberculosis)(結核を引き起こす)を包含する。
【0005】
真菌によって引き起こされる気道感染症は、全身性カンジダ症、ブラストミセス症、クリプトコックス症(crytococcosis)、コクシジオイデス症およびアスペルギルス症を包含する。
【0006】
流感として一般に知られているインフルエンザは、オルソミクソウイルス科(インフルエンザウイルス)のRNAウイルスによって引き起こされる鳥および哺乳動物の感染症である。通常、インフルエンザは、感染した哺乳動物から空中に浮かんでいるウイルスを含有する飛沫およびエアロゾルを経由して、また感染した鳥からそれらの糞便を通して感染する。インフルエンザはまた、唾液、鼻からの分泌、糞および血液によって感染し得る。感染は、これらの体液または汚染表面との接触によって生じる。
【0007】
ヒトパラインフルエンザウイルス(hPIV)は、パラミクソウイルス科のものである一本鎖RNAウイルスの4つの別個の血清型の群である。これらは、より幼い子どもの下気道感染の2番目に一般的な原因である。また、パラインフルエンザウイルスは、クループの症例の約75%を引き起こす。宿主の寿命の全体にわたる反復感染症は珍しくない。後期の突発的発生の症候は、風邪および咽喉痛のような上気道疾病を包含する。臓器移植患者などの免疫抑制された人々において、パラインフルエンザウイルス感染症は重症肺炎を引き起こす場合があり、時には致命的になり得る。
【0008】
ヒトライノウイルスはピコルナウイルス科の一属で、普通の風邪感染症の30%から50%の原因であると考えられている。100を超える血清型が別個のヒトライノウイルスの菌種が同定された。血清型間に干渉効果がほとんどないので、全血清型ワクチン剤は利用できない。ライノウイルスまたは、中耳炎および喘息の増悪の病因に著しい役割を果たす。ライノウイルスによる感染は、炎症性仲介物質の放出および気管支応答性の増大をもたらす。
【0009】
ヒト呼吸器合胞体ウイルス(RSV)は気道感染を引き起こすウイルスである。それは、乳児および小児期の下気道感染症および受診の主要な原因である。RSV用のワクチンはなく、治療は、支持療法(疾病が自然の経過をたどるまで、液および酸素を用いる)に限定されている。
【0010】
肺炎は、極めて様々な感染因子によって引き起こされるありふれた疾患であるが、世界的に非常に高い罹患率および死亡率の原因である。肺炎は、世界中で第3の死因であり、また工業先進国では、感染症による第1の死因である。細菌は成人の肺炎の最も一般的な原因である。ほとんどの市中感染性肺炎はS.ニューモニアエ(S.pneumoniae)、ハエモフィルス・インフルエンザエ(Haemophilus influenzae)およびミュコプラスマ・ニューモニアエ(Mycoplasma pneumoniae)による感染による。Lancet.,362:1991−200(2003);Curr Opin Pulm Med、6:226−233(2000)。遅い発症の人工呼吸器関連肺炎の大半は、耐抗生物質性の亜型、プセウドモナス属種(Pseudomonas spp.)、クレブシェッラ属種(Klebsiella spp.)、ならびにアキテノバクテル属種(Acitenobacter spp.)を包含するS.アウレウス(S.aureus)によって引き起こされる。Crit Care.,9:459−464(2005)。
【0011】
気道感染症の現在の療法は、ウイルスの気道感染症、細菌の気道感染症および真菌の気道感染症の治療、予防または回復のための抗ウイルス剤、抗細菌剤または抗真菌剤の投与をそれぞれ含む。不幸にして、ある場合には、利用可能な療法はないか、または、感染症は、治療困難であり、または副作用の出現が治療剤の投与の恩恵を上回るとわかった。細菌の気道感染症を治療する抗細菌剤の使用はまた、副作用を生じるか、または耐性の細菌株をもたらす恐れがある。抗真菌剤の投与は腎不全または骨髄機能障害を引き起こし、抑制免疫系の患者の真菌感染症に対して有効ではないことがある。さらに、感染を引き起こす微生物(例えばウイルス、細菌または真菌)が耐性であるか、または投与された治療剤または治療剤の組合せに対する耐性を発現することがある。実際に、投与される治療剤に対する耐性を発現する微生物は、しばしば多形質発現性薬物または多剤耐性、すなわち投与される薬剤が作用するメカニズムと異なるメカニズムによって作用する治療剤に対する耐性を発現する。したがって、薬物耐性の結果、多くの感染症が、幅広い標準治療プロトコルに抵抗性があることが分かる。そのため、気道感染症およびその症候の治療、予防、管理および/または回復のための新規の療法が必要である。
【0012】
米国特許出願公開第2007/0053844号明細書は、食塩水中にカルシウム塩を含む導電性製剤(例えば、0.9%NaClに溶解した1.29%CaCl2)を記載している。この製剤は、気道粘膜壁の物性(気道粘膜壁の表面張力、表面弾性およびバルク粘度など)を変えて、吐き出される粒子を抑制することができる。例えば、0.9%等張食塩水に溶解された1.29%CaCl2からなる製剤は、吐き出される粒子の抑制が1000倍を越えた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
【課題を解決するための手段】
【0014】
一態様において、本発明は、Ca+2対Na+の比が約4:1(モル:モル)から約16:1(モル:モル)であるカルシウム塩およびナトリウム塩を含む、個体の気道感染症または肺疾患を治療するのに有用な医薬製剤に関する。Ca+2対Na+の比が約4:1(モル:モル)から約16:1(モル:モル)である場合、2種の塩の組合せは、インフルエンザ感染の細胞培養モデルのウイルス複製を低減するにおいて優れた相乗効果を与えることを本明細書において提供されるデータは示す。さらに、本製剤は、インフルエンザ(例えばインフルエンザA型H1N1、インフルエンザA型H3N2、インフルエンザB型)の多くの株のウイルス複製を低減するのに非常に有効である。続いてインビボの検討によると、本製剤が(1)発症を遅らせ発熱の重症度を低減する、(2)体重損失を阻止する、(3)インフルエンザのフェレットモデルで鼻の炎症細胞数を低減すると示されたように、Ca+2対Na+が8:1の比の製剤がインフルエンザ感染症を治療するのに非常に有効であることを確証する。同様に、インフルエンザのインビボマウスモデルで、本製剤は動物の生存率を改善することが示された。さらに、本明細書において記載される医薬製剤の治療活性は病原体に依存せず、本製剤が(1)細胞培養モデルでヒトパラインフルエンザウイルス(hPIV)感染力を低減する、(2)細胞培養モデルでライノウイルス感染力を低減する、および(3)マウスモデルでストレプトコックス・ニューモニアエ感染症を治療することに有効であることが示された。
【0015】
特定の実施形態において、Ca+2対Na+の比は約4:1(モル:モル)、約4.5:1(モル:モル)、約5:1(モル:モル)、約5.5:1(モル:モル)、約6:1(モル:モル)、約6.5:1(モル:モル)、約7:1(モル:モル)、約7.5:1(モル:モル)、約8:1(モル:モル)、約8.5:1(モル:モル)、約9:1(モル:モル)、約9.5:1(モル:モル)、約10:1(モル:モル)、約10.5:1(モル:モル)、約11:1(モル:モル)、約11.5:1(モル:モル)、約12:1(モル:モル)、約12.5:1(モル:モル)、約13:1(モル:モル)、約13.5:1(モル:モル)、約14:1(モル:モル)、約14.5:1(モル:モル)、約15:1(モル:モル)、約15.5:1(モル:モル)、または約16:1(モル:モル)である。
【0016】
特定の実施形態において、本医薬製剤は液剤である。特定の実施形態において、液剤中のCa2+イオンの濃度は、約0.115Mから約1.15M、または約0.575Mから約1.15Mである。
【0017】
特定の実施形態において、本液剤中のNa+イオンの濃度は、約0.053Mから約0.3M、または約0.075Mから約0.3Mである。
【0018】
本明細書において記載される医薬製剤は、要望により低張性、等張性または高張性であってよい。例えば、本明細書において記載される医薬製剤のいずれかは、約0.1倍張度、約0.25倍張度、約0.5倍張度、約1倍張度、約2倍張度、約3倍張度、約4倍張度、約5倍張度、約6倍張度、約7倍張度、約8倍張度、約9倍張度、約10倍張度、少なくとも約1倍張度、少なくとも約2倍張度、少なくとも約3倍張度、少なくとも約4倍張度、少なくとも約5倍張度、少なくとも約6倍張度、少なくとも約7倍張度、少なくとも約8倍張度、少なくとも約9倍張度、少なくとも約10倍張度、約0.1倍から約1倍の間、約0.1倍から約0.5倍の間、約0.5倍から約2倍の間、約1倍から約4倍の間、約1倍から約2倍の間、約2倍から約10倍の間、または約4倍から約8倍の間であってよい。
【0019】
特定の実施形態において、本医薬製剤は、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム、リン酸カルシウム、アルギン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ソルビン酸カルシウム、硫酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウムおよびクエン酸カルシウムからなる群から選択されるカルシウム塩を含む。例示の実施形態において、カルシウム塩は塩化カルシウムまたは乳酸カルシウムである。別の例示の実施形態において、カルシウム塩はクエン酸カルシウム、乳酸カルシウムまたは硫酸カルシウムである。
【0020】
特定の実施形態において、本医薬製剤は、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウムおよび乳酸ナトリウムからなる群から選択されるナトリウム塩を含む。例示の実施形態において、ナトリウム塩は塩化ナトリウムである。別の例示の実施形態において、ナトリウム塩はクエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウムまたは硫酸ナトリウムである。
【0021】
特定の実施形態において、本医薬製剤は乾燥粉末製剤である。特定の実施形態において、カルシウム塩は約19.5%(重量/重量)から約90%(重量/重量)の量で乾燥粉末製剤中に存在する。
【0022】
例示の実施形態において、乾燥粉末製剤のカルシウム塩は、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウムまたはこれらの組合せである。
【0023】
例示の実施形態において、乾燥粉末製剤のナトリウム塩は、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウムまたはこれらの組合せである。
【0024】
特定の実施形態において、本医薬製剤は、約0.001mg/kg体重/用量から約10mg/kg体重/用量のカルシウム用量を肺に送達するように製剤化される。特定の実施形態において、本医薬製剤は、約0.001mg/kg体重/用量から約10mg/kg体重/用量のナトリウム用量を肺に送達するように製剤化される。特定の実施形態において、本医薬製剤は、約0.001mg/kg体重/用量から約10mg/kg体重/用量のカルシウム用量を鼻腔に送達するように製剤化される。特定の実施形態において、本医薬製剤は、約0.001mg/kg体重/用量から約10mg/kg体重/用量のナトリウム用量を鼻腔に送達するように製剤化される。
【0025】
特定の実施形態において、本医薬製剤は追加の治療剤をさらに含む。
【0026】
特定の実施形態において、本医薬製剤は賦形剤をさらに含む。例示の賦形剤はラクトースおよびグリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン(isolucine)、トレハロース、ジパルミトイルホスファチジルコリン、(DPPC)ジホスファチジルグリセロール(DPPG)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−L−セリン(DPPS)、1,2−ジパルミトイル−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DSPE)、1−パルミトイル−2−オレオイルホスファチジルコリン(POPC)、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、ソルビタントリオレエート(Span 85)、グリココール酸塩、サーファクチン、チロキサポール、リン酸ナトリウム、デキストラン、デキストリン、マンニトール、マルトデキストリン、ヒト血清アルブミン、組み換えヒト血清アルブミンまたは生分解性ポリマーを包含する。
【0027】
特定の実施形態において、本医薬製剤は単位用量製剤である。
【0028】
別の態様において、本発明は、Ca+2対Na+の比が約4:1(モル:モル)から約16:1(モル:モル)であるカルシウム塩およびナトリウム塩を含む医薬製剤の有効量を、気道感染症を有する、気道感染症の症候を示す、または気道感染症に罹る危険がある個体に投与することを含む、気道感染症を治療する(予防的治療を含む)方法を提供する。
【0029】
別の態様において、本発明は、Ca+2対Na+の比が約4:1(モル:モル)から約16:1(モル:モル)であるカルシウム塩およびナトリウム塩を含む医薬製剤の有効量を、気道感染症を有する、気道感染症の症候を示す、または気道感染症に罹る危険がある個体に投与することを含む、気道感染症の伝播を低減する方法を提供する。
【0030】
特定の実施形態において、気道感染症は細菌性肺炎などの細菌感染症である。特定の実施形態において、細菌感染はスタピュロコックス・ニューモニアエ(Streptococcus pneumoniae)(肺炎双球菌とも呼ばれる)、スタピュロコックス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、スタピュロコックス・アガラクティアエ(Streptococcus agalactiae)、スタピュロコックス・ピュオゲネス(Streptococcus pyogenes)、ハエモピィルス・インフルエンザエ(Haemophilus influenzae)、ハエモピィルス・パラインフルエンザエ(Haemophilus parainfluenzae)、クレブシェッラ・ニューモニアエ(Klebsiella pneumoniae)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、プセウドモナス・アエルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)、モラクセラ・カタッラリス(Moraxella catarrhalis)、クラミュドピラ・ニューモニアエ(Chlamydophila pneumoniae)、ミュコプラスマ・ニューモニアエ、レジオネッラ・ニューモピラ(Legionella pneumophila)、セッラティア・マルケセンス(Serratia marcescens)、ブルクホリデリア・ケパキア(Burkholderia cepacia)、ブルクホリデリア・プセウドマッレイ(Burkholderia pseudomallei)、バキッルス・アントラキス(Bacillus anthracis)、バキッルス・ケレウス(Bacillus cereus)、ボルダテッラ・ペルトゥッシス、ステノトロポモナス・マルトピリア(Stenotrophomonas maltophilia)、シトロバクター科からの細菌、アシネトバクター(ecinetobacter)科からの細菌、およびミュコバクテリウム・トゥベルクロシスからなる群から選択される細菌によって引き起こされる。
【0031】
特定の実施形態において、気道感染は、インフルエンザまたはウイルス性肺炎などのウイルス感染症である。特定の実施形態において、ウイルス感染は、インフルエンザウイルス(例えばインフルエンザウイルスA型、インフルエンザウイルスB型)、呼吸器合胞体ウイルス、アデノウイルス、メタニューモウイルス、サイトメガロウイルス、パラインフルエンザウイルス(例えばhPIV−1、hPIV−2、hPIV−3、hPIV−4)、ライノウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、コロナウイルス、単純性疱疹ウイルス、SARSコロナウイルスおよび天然痘からなる群から選択されるウイルスによって引き起こされる。
【0032】
特定の実施形態において、気道感染症は真菌感染症である。特定の実施形態において、真菌感染症は、ヒストプラスマ・カプスラトゥム(Histoplasma capsulatum)、クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ニューモキュスティス・イロウェキ(Pneumocystis jiroveci)、コッキディオイデス・インミティス(Coccidioides immitis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、およびニューモキュスティス・イロウェキイ(Pneumocystis jirovecii)(これはニューモシスチス症とも呼ばれるニューモキュスティス肺炎(PCP)を引き起こす)からなる群から選択される真菌によって引き起こされる。
【0033】
特定の実施形態において、気道感染症は寄生虫感染症である。特定の実施形態において、寄生虫感染症は、トキソプラスマ・ゴンディ(Toxoplasmagondii)およびストロンギュロイデス・ステルコラリス(Strongyloides stercoralis)からなる群から選択される寄生虫によって引き起こされる。
【0034】
別の態様において、本発明は、Ca+2対Na+の比が約4:1(モル:モル)から約16:1(モル:モル)であるカルシウム塩およびナトリウム塩を含む医薬製剤の有効量を、個体の気道に投与することを含む、肺疾患を有する個体(例えば、肺疾患の症候を示す、または肺疾患に罹りやすい個体)を治療する(予防的治療を含む)方法を提供する。
【0035】
別の態様において、本発明は、Ca+2対Na+の比が約4:1(モル:モル)から約16:1(モル:モル)であるカルシウム塩およびナトリウム塩を含む医薬製剤の有効量を、それを必要とする個体(例えば、肺疾患の急性増悪を有する、肺疾患の急性増悪の症候を示す、または肺疾患の急性増悪に罹りやすい個体)の気道に投与することを含む、個体の慢性肺疾患の急性増悪を治療する(予防的治療を含む)方法を提供する。例示の肺疾患は、喘息(例えば、アレルギー性/アトピー性、小児性、遅発症性、咳型または慢性閉塞性)、気道過敏性、アレルギー性鼻炎(季節性または非季節性)、気管支拡張症、慢性気管支炎、肺気腫、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性繊維症、若年性喘鳴などを包含する。
【0036】
本発明はまた、治療に使用するための本明細書において記載される医薬製剤、および、気道感染症を治療するための、気道感染症の伝播を低減するための、肺疾患を治療するための、または慢性肺疾患の急性増悪を治療するための医薬を製造するための、本明細書において記載される医薬製剤の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】インフルエンザA型/WSN/33/1ウイルス複製への、ナトリウムおよびカルシウム濃度を変化させた影響を示す等高線プロットである。いくつかの試験からのデータを規格化するために、各処理条件のウイルス複製速度の変化は、ゼロ塩条件と比較して、試験ごとに求めた。X軸は増加するCaCl2濃度を表し、Y軸は増加するNaCl濃度を表す。各点は、1試験当たり少なくとも3回繰り返して試験した製剤を表す。ウイルス感染力の減少は、黒さの増加により示される。(すなわち、より大きい数字およびより暗い色調は、インフルエンザウイルス複製の低減により大きい効果を有する製剤を表す)。
【図2A】Ca2+:Na+比が8:1(モル:モル)の液剤の用量応答効果を示す図である。
【図2B】Ca2+:Na+比が16:1(モル:モル)の液剤の用量応答効果を示す図である。両方の場合において、細胞は感染の1時間前に液剤で処理した。
【図3】本製剤が、正常ヒト気管支上皮(NHBE)細胞のインフルエンザ感染力を減少させたことを示す図である。4つの異なるドナーからのNHBE細胞は示した製剤を用いて処理し、インフルエンザA型/Panama/2007/99に感染させた。ウイルス価は感染の24時間後に先端の洗浄液から求めた。データは未処理(空気)対照に対して規格化し、対照からのTCID50/mLのlog10変化として表示した。データは、1条件当たり2から3回繰り返した平均±SDである。N.D.=測定せず
【図4】本製剤がCalu−3細胞のインフルエンザウイルスの多くの株の感染力を用量依存的に減少させたことを示す図である。Calu−3細胞は、0.5倍、2倍および8倍の張度(1倍=等張)である、Ca2+:Na+が8:1モル比の製剤で処理した。処理24時間後ウイルス価を求め、未処理対照に対するウイルス価の減少倍数を、各ウイルス株について算定した。この実施例において試験したインフルエンザウイルス株は、凡例および表2に示される。
【図5A】カルシウムナトリウム製剤を用いる処理が、インフルエンザに感染したフェレットの発熱を遅延させ体温を低下させたことを示す図である。対照フェレット(黒丸)、製剤A処理フェレット(白丸)、4倍処理フェレット(黒四角)または8倍処理フェレット(白四角)の体温変化平均(±SEM)を表す。 検討の過程にわたって処理フェレットが発熱を遅延させ体温が低下したことを示す図である。(p<0.0001、二元配置分散分析(Two−way ANOVA))。
【図5B】処理フェレットが対照動物のピーク発熱の時間に体温を低下させたことを示す図である。(感染後36時間;*p<0.05、**p<0.01マン・ウィットニーU検定;対照のn数は9、処理製剤Aのn数は9、および4倍処理および8倍処理のn数は10)。
【図6A】カルシウムナトリウム製剤を用いた処理がインフルエンザに感染したフェレットの体重損失を阻止したことを示す図である。対照フェレット(黒丸)、製剤A処理フェレット(白丸)、4倍処理フェレット(黒四角)または8倍処理フェレット(白四角)の時間ゼロからのパーセント体重損失が表されている。 処理フェレットが、検討の過程にわたり、体重損失が減ったことを示す図である。(p<0.0001、二元配置分散分析)。
【図6B】処理フェレットが対照動物のピーク損失の時間に体重損失を減少させたことを示す図である。(感染後48時間;*p<0.05、**p<0.01マン・ウィットニーU検定;群のn数はすべて10、ただし、処理製剤Aのn数は9)。
【図7A】カルシウムナトリウム製剤を用いた処理がフェレットのインフルエンザ感染に対する炎症反応を弱めたことを示す図である。鼻洗を毎日1回示された時間に実施し、各鼻洗の炎症細胞数を数えた。顕著な量の血液を含む鼻洗試料は各時点で分析のために廃棄した。平均(±SEM)対照フェレット(黒丸)、製剤A処理フェレット(白丸)、4倍処理フェレット(黒四角)または8倍処理フェレット(白四角)が表されている。 カルシウムナトリウム製剤を用いた処理が、鼻洗試料中の炎症細胞数を、統計的に有意なレベルに経時的に減少させたことを示す図である。(p<0.0001、二元配置分散分析)
【図7B】対照動物と比較して、処理動物の炎症性細胞浸潤のピークが低下したことを示す図である。(72時間;**p<0.01、および***p<0.001マン・ウィットニーU検定;72時間の時点で対照のn数は5、製剤Aおよび4倍処理のn数は6、および8倍処理のn数は7)。
【図7C】感染120時間後の処理動物の炎症細胞の減少を示す図である。(*p<0.05、マン・ウィットニーU検定;対照のn数は6、製剤A処理のn数は5、4倍処理のn数は6、および8倍処理のn数は7)。
【図8】カルシウムナトリウム製剤が、Calu−3または正常ヒト気管支上皮(NHBE)細胞のhPIV−3感染を用量依存的に減少させたことを示す図である。Calu−3(黒丸)またはNHBE(白丸)細胞はヒト3型パラインフルエンザウイルス(hPIV−3)による感染の1時間前にカルシウムナトリウム製剤で処理した(0.5倍、2倍または8倍張度;Ca2+:Na+モル比は8:1)。感染の24時間後の細胞の先端洗浄液中のウイルス価を、MK−2細胞を使用してTCID50アッセイによって求めた。先端洗浄液のパラインフルエンザ価は用量依存的に減少した。各細胞型からのデータは一元配置分散分析およびテューキー多重比較検定を使用して解析した。
【図9】カルシウムナトリウム製剤がCalu−3細胞のライノウィルス(rhinorivus)感染を減少させたことを示す図である。Calu−3細胞をカルシウムナトリウム製剤で処理した(8倍張度;Ca2+:Na+モル比は8:1)。1時間後、細胞はライノウイルスに感染させ、3時間後に、独立ウイルスを除去するために細胞を洗浄した。ウイルス価は、感染24時間後に培養物の先端面からTCID50アッセイによって求めた。各データ点は2回繰り返しウェルの平均+SDで、2つの独立した試験を代表する。
【図10】カルシウムナトリウム製剤(8:1のCa2+:Na+モル比)が用量依存的に肺細菌性負荷を減少させたことを示す図である。マウスは、PariLC Sprint nebulizerを使用し表示した製剤で処理し、続いて、S.ニューモニアエに感染させた。各動物の肺細菌性負荷を示す。各丸は、1個の動物からのデータを表し、バーは95%信頼区間の幾何平均を表す。NaCl、0.5倍および1倍の群のデータを2または3の独立した試験から合わせてある。2倍および4倍の群からのデータは単一試験からである。
【図11】より長い噴霧時間でカルシウム用量を増加させることが治療活性に有意な影響を与えないことを示す図である。Pari LC Sprint nebulizerを使用して食塩水(NaCl)またはカルシウムナトリウム製剤(1倍張度=等張;8:1のCa2+:Na+モル比)でマウスを処理し、続いて、S.ニューモニアエに感染させた。各動物の肺細菌負荷を示す。各丸は、1個の動物からのデータを表し、バーは幾何平均を表す。3分以上の投薬時間は細菌負荷を対照に対して著しく減少させた(一元配置分散分析;テューキー多重比較事後検定)。
【図12】カルシウムナトリウム製剤がマウスインフルエンザモデルのインフルエンザウイルス感染症を治療するのに有効であったことを示す図である。BALB/cマウス(1群当たりのn数は7−8)は、インフルエンザA型/PR/8(H1N1)による感染の3時間前に示した各製剤で処理した。マウスは続いて、感染の3時間後、次いで、合計11日間に1日2回処理した。動物生存率、動物体温の変化および体重の変化を、21日間追跡記録した。95°F未満の体温を示した動物は安楽死させた。
【発明を実施するための形態】
【0038】
1. 概観
本明細書において記載されるように、カルシウム塩およびナトリウム塩を含む吸入された塩製剤の治療活性のインビボおよびインビトロの検討を行った。これらの検討の過程で、塩製剤中のカルシウム対ナトリウムの相対比が製剤の治療活性に影響することが発見された。インビトロおよびインビボの検討の結果によると、狭い範囲のカルシウム対ナトリウム比が優れた治療活性を与えた。詳細には、約4:1から約16:1(モル:モル)のカルシウム対ナトリウムの比が優れた治療活性を与えることが発見された。
【0039】
本明細書において記載されるように、カルシウム:ナトリウム比約4:1から約16:1(モル:モル)を有する製剤の治療活性がいくつかの臨床前モデルにおいて実証された。例えば、本製剤は、とりわけ、インフルエンザの細胞培養モデルのウイルス複製を減少させることに優れた効果があり、インフルエンザ(例えばインフルエンザA型H1N1、インフルエンザA型H3N2、インフルエンザB型)の多くの株のウイルス複製を減少させ、インビボフェレットインフルエンザモデルにおいて発熱の重症度および鼻の炎症細胞数を低減し、インビボマウスインフルエンザモデルにおいて動物生存率を改善し、細胞培養モデルにおいてヒトパラインフルエンザウイルス(hPIV)のウイルス複製を減少させ、細胞培養モデルにおいてライノウイルスのウイルス複製を減少させる、また、マウス肺炎モデルにおいてストレプトコックス・ニューモニアエの肺細菌負荷を減少させることが示された。これらの検討から得られたデータは、本製剤が広範囲の病原体(例えばインフルエンザウイルス、ヒトパラインフルエンザウイルス、S.ニューモニアエの多くの株)によって引き起こされる気道感染症を治療する(予防的治療を含む)のに有用であることを実証する。また、本製剤は、気道感染症の伝播を減少させる、肺疾患を治療する、または慢性肺疾患の急性増悪を治療するのに有用である。
【0040】
2.定義
本明細書中で使用される場合、語句「空気動力学的に軽い粒子」とは、約0.4g/cm3未満のタップ密度を有する粒子を指す。乾燥粉末粒子のタップ密度は、標準的なUSPタップ密度測定によって得ることができる。タップ密度は外膜密度(envelope mass density)の普通の測定である。等方性粒子の外膜密度は、粒子の質量を、それが封入され得る最小球外膜体積で除したものとして定義される。低タップ密度の一因となる特徴としては、不規則な表面テクスチャーおよび多孔性構造が挙げられる。
【0041】
本明細書中で使用される場合、用語「エアロゾル」は、液体および非液体粒子を含む粒子の微細なミスト、例えば、典型的には、約0.1から約30ミクロン体積メジアン幾何学的直径、または約0.5から約10ミクロンの間の質量メジアン空気動力学的直径の乾燥粉末の任意の調製物を指す。好ましくはエアロゾル粒子の体積メジアン幾何学的直径は約10ミクロン未満である。エアロゾル粒子の好ましい体積メジアン幾何学的直径は約5ミクロンである。例えば、エアロゾルは、約0.1から約30ミクロンの間の、約0.5から約20ミクロン間の、約0.5から約10ミクロンの間の、約1.0から約3.0ミクロンの間の、約1.0から5.0ミクロンの間の、約1.0から10.0ミクロンの間の、約5.0から15.0ミクロンの間の体積メジアン幾何学的直径を有する粒子を含むことができる。好ましくは、質量メジアン空気動力学的直径は、約0.5から約10ミクロンの間に、約1.0から約3.0ミクロンの間に、または約1.0から5.0ミクロン間にある。
【0042】
用語「肺炎」は、肺の炎症性疾病を指す技術用語である。肺炎は、肺への細菌、ウイルス、真菌または寄生虫による感染および化学的または物理的な損傷を包含する様々な原因の結果として生じ得る。肺炎に関係する典型的な症候は、咳、胸痛、発熱および呼吸困難を包含する。肺炎の臨床診断は当業界で周知であり、X線および/または喀痰検査を包含してもよい。
【0043】
用語「細菌性肺炎」は、例えば、ストレプトコックス・ニューモニアエ、スタピュロコックス・アウレウス、スタピュロコックス・アガラクティアエ、ハエモピルス・インフルエンザエ、クレブシェッラ・ニューモニアエ、エシェリキア・コリ、プセウドモナス・アエルギノサ、モラクセッラ・カタッラリス、クラミュドピラ・ニューモニアエ、ミュコプラスマ・ニューモニアエまたはレジオネッラ・ニューモピラによる気道の感染を含む細菌感染によって引き起こされる肺炎を指す。
【0044】
用語「ウイルス性肺炎」は、ウイルス感染によって引き起こされる肺炎を指す。一般にウイルス性肺炎を引き起こすウイルスは例えば、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、アデノウイルスおよびメタニューモウイルスを包含する。単純ヘルペスウイルスは、一般人口の肺炎の原因としては稀であるが、新生児においてより一般的である。弱体化した免疫系を有する人々はまたサイトメガロウイルス(CMV)によって引き起こされる肺炎の危険がある。
【0045】
本明細書において使用される場合、用語「気道」は上気道(例えば、鼻通路、鼻腔、喉、咽頭)、呼吸気道(例えば、喉頭、気管(tranchea)、気管支、細気管支)および肺(例えば、呼吸細気管支、肺胞管、肺胞嚢、肺胞)を包含する。
【0046】
用語「気道感染」は、上気道感染(例えば、鼻腔、咽頭、喉頭の感染)および下気道感染(例えば、気管、一次気管支、肺の感染)およびこれらの組合せを指す技術用語である。気道感染に関係する典型的な症候は鼻閉、咳、流鼻汁、咽喉痛、発熱、顔面圧迫感、くしゃみ、胸痛および呼吸困難を包含する。
【0047】
本明細書において使用される場合、「1倍」張度は、正常なヒト血液および細胞に対して等張の溶液を指す。正常なヒト血液および細胞と比較して低張性か高張性の溶液は適切な乗数を使用して、1倍溶液に対して記載される。例えば、低張液は0.1倍、0.25倍または0.5倍の張度を有していてよく、高張液は2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍または10倍の張度を有していてもよい。
【0048】
本明細書において使用される場合、用語「乾燥粉末」は、吸入用具内で分散され、続いて、対象によって吸入され得る、細かく分散した呼吸に適した乾燥粒子を含む組成物を指す。そのような乾燥粉末または乾燥粒子は、最大約15%の水もしくは他の溶媒を含むか、または水もしくは他の溶媒を実質的に含まない、または無水であってもよい。
【0049】
3.医薬製剤
一態様において、本発明は、Ca+2対Na+の比が約4:1(モル:モル)から約16:1(モル:モル)である、カルシウム塩およびナトリウム塩を含む医薬製剤に関する。医薬製剤は吸入に適切であり、それを必要とする個体の、気道感染症を治療する、気道感染症の伝播を減少させる、肺疾患を治療する、または慢性肺疾患の急性増悪を治療するために使用することができる。何らかの特定の理論に束縛されることは欲しないが、本明細書において記載される塩製剤によって与えられる治療上の利益は、塩製剤の投与の後に気道(例えば、肺粘液、気道壁液)内で陽イオン(Ca2+、Na+またはCa2+とNa+)の量が増加することに起因すると考えられる。
【0050】
本医薬製剤は、約4:1(モル:モル)から約16:1(モル:モル)のCa+2対Na+の比を含むことができる。例えば、本製剤は、約5:1(モル:モル)から約16:1(モル:モル)、約6:1(モル:モル)から約16:1(モル:モル)、約7:1(モル:モル)から約16:1(モル:モル)、約8:1(モル:モル)から約16:1(モル:モル)、約9:1(モル:モル)から約16:1(モル:モル)、約10:1(モル:モル)から約16:1(モル:モル)、約11:1(モル:モル)から約16:1(モル:モル)、約12:1(モル:モル)から約16:1(モル:モル)、約13:1(モル:モル)から約16:1(モル:モル)、約14:1(モル:モル)から約16:1(モル:モル)、約15:1(モル:モル)から約16:1(モル:モル)のCa+2対Na+の比を含むことができる。
【0051】
代替としてまたはさらに、本製剤は、約4:1(モル:モル)から約5:1(モル:モル)、約4:1(モル:モル)から約6:1(モル:モル)、約4:1(モル:モル)から約7:1(モル:モル)、約4:1(モル:モル)から約8:1(モル:モル)、約4:1(モル:モル)から約9:1(モル:モル)、約4:1(モル:モル)から約10:1(モル:モル)、約4:1(モル:モル)から約11:1(モル:モル)、約4:1(モル:モル)から約12:1(モル:モル)、約4:1(モル:モル)から約13:1(モル:モル)、約4:1(モル:モル)から約14:1(モル:モル)、約4:1(モル:モル)から約15:1(モル:モル)のCa+2対Na+の比を含むことができる。
【0052】
代替としてまたはさらに、本製剤は、約4:1(モル:モル)から約12:1(モル:モル)、約5:1(モル:モル)から約11:1(モル:モル)、約6:1(モル:モル)から約10:1(モル:モル)、約7:1(モル:モル)から約9:1(モル:モル)のCa+2対Na+の比を含むことができる
【0053】
代替としてまたはさらに、Ca+2対Na+の比は、約4:1(モル:モル)、約4.5:1(モル:モル)、約5:1(モル:モル)、約5.5:1(モル:モル)、約6:1(モル:モル)、約6.5:1(モル:モル)、7:1(モル:モル)、約7.5:1(モル:モル)、約8:1(モル:モル)、約8.5:1(モル:モル)、約9:1(モル:モル)、約9.5:1(モル:モル)、約10:1(モル:モル)、約10.5:1(モル:モル)、約11:1(モル:モル)、約11.5:1(モル:モル)、約12:1(モル:モル)、約12.5:1(モル:モル)、約13:1(モル:モル)、約13.5:1(モル:モル)、約14:1(モル:モル)、約14.5:1(モル:モル)、約15:1(モル:モル)、約15.5:1(モル:モル)または約16:1(モル:モル)である。
【0054】
例示の実施形態において、Ca+2対Na+の比は約8:1(モル:モル)または約16:1(モル:モル)である。
【0055】
適切なカルシウム塩は、例えば、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム、リン酸カルシウム、アルギン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ソルビン酸カルシウム、硫酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、乳酸カルシウムなど、またはこれらの組合せを包含する。
【0056】
特定のカルシウム塩は、溶解するとカルシウム塩の1モル当たり2モル以上のCa2+を与える。そのようなカルシウム塩はカルシウムが濃厚であり、そのため、陽イオン(例えばCa2+、Na+、またはCa2+とNa+)の有効量を送達することができる液剤または乾燥粉末製剤を製造するのに特に適切であり得る。例えば、クエン酸カルシウムの1モルは、溶解すると3モルのCa2+を与える。カルシウム塩が低分子量の塩である、および/または低分子量陰イオンを含んでいることは、また、一般に好ましい。カルシウムイオンおよび低分子量陰イオンを含むカルシウム塩などの低分子量カルシウム塩は、高分子の塩および高分子量陰イオンを含むカルシウム塩と比較してカルシウムが濃厚である。カルシウム塩は、約1000g/モル未満、約950g/モル未満、約900g/モル未満、約850g/モル未満、約800g/モル未満、約750g/モル未満、約700g/モル未満、約650g/モル未満、約600g/モル未満、約550g/モル未満、約510g/モル未満、約500g/モル未満、約450g/モル未満、約400g/モル未満、約350g/モル未満、約300g/モル未満、約250g/モル未満、約200g/モル未満、約150g/モル未満、約125g/モル、または約100g/モル未満の分子量を有していることが一般に好ましい。さらにまたは代替として、カルシウム塩の全重量に対してカルシウムイオンは重量のかなりの部分に寄与することが一般に好ましい。カルシウムイオンは、カルシウム塩全体の少なくとも10%、少なくとも16%、少なくとも20%、少なくとも24.5%、少なくとも26%、少なくとも31%、少なくとも35%、またはカルシウム塩全体の少なくとも38%の重量を占めることが一般に好ましい。
【0057】
代替としてまたはさらに、本医薬製剤は、前記カルシウム塩の全重量に対するカルシウムの重量比が約0.1から約0.5の間であるカルシウムを与える適切なカルシウム塩を包含する。例えば、前記カルシウム塩の全重量に対するカルシウムの重量比は、約0.15から約0.5の間、約0.18から約0.5の間、約0.2から約5の間、約0.25から約0.5の間、約0.27から約0.5の間、約0.3から約5の間、約0.35から約0.5の間、約0.37から約0.5、または約0.4から約0.5の間にある。
【0058】
適切なナトリウム塩は、例えば、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウムなどまたはこれらの組合せを包含する。
【0059】
カルシウム塩およびナトリウム塩に加えて、本発明の医薬製剤は、元素ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、シリコン、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、コバルト、ニッケル、銅、マンガン、亜鉛、スズ、銀および類似の元素の何らかの無毒な塩の形態も包含することができる。適切なマグネシウム塩は、例えば、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、三珪酸マグネシウム、塩化マグネシウムなどを包含する。適切なカリウム塩は例えば、炭酸水素カリウム、塩化カリウム、クエン酸カリウム、カリウムホウ酸塩、亜硫酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム、アルギン酸カリウム、安息香酸カリウムなどを包含する。さらなる適切な塩は硫酸銅、塩化クロム、塩化第一スズおよび類似の塩を包含する。他の適切な塩は塩化亜鉛、塩化アルミニウムおよび塩化銀を包含する。
【0060】
本医薬製剤は、溶液、乳濁液、懸濁液または乾燥粉末などの任意の所望の形態であってよい。
【0061】
本医薬製剤は、一般に、生理学的に許容される担体または賦形剤中で調製されるか、または生理学的に許容される担体または賦形剤を含む。溶液、懸濁液または乳濁液の形態の製剤のための、適切な担体は、水、食塩水、エタノール/水溶液、エタノール溶液、緩衝媒体、噴霧剤などを含む溶液、乳濁液または懸濁液を包含する、例えば、水性、アルコール性/水性、およびアルコール溶液、乳濁液または懸濁液を包含する。乾燥粉末の形態の製剤のための、適切な担体または賦形剤は、例えば、糖(例えば、ラクトース、トレハロース)、糖アルコール(例えばマンニトール、キシリトール、ソルビトール)、アミノ酸(例えば、グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジホスファチジルグリセロール、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−L−セリン(DPPG)、1,2−ジパルミトイル−グリセロ−3−ホスホコリン、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、1−パルミトイル−2−オレオイルホスファチジルコリン、脂肪族アルコール、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、界面活性脂肪酸、ソルビタントリオレエート(Span 85)、グリココール酸塩、サーファクチン、ポロキソマー、ソルビタン脂肪酸エステル、チロキサポール、リン脂質、アルキル化糖、リン酸ナトリウム、マルトデキストリン、ヒト血清アルブミン((例えば(組み換えヒト血清アルブミン)))、生体分解性ポリマー(e.g、PLGA)、デキストラン、デキストリンなどを包含する。所望の場合、塩製剤はまた、添加剤、防腐剤または液、栄養素または電解質補充薬を含むことができる(概論としては、Remington's Pharmaceutical Sciences,17th Edition,Mack Publishing Co.,PA,1985を参照)。
【0062】
本医薬製剤は、好ましくは、例えばエアロゾルとして気道への投与のために製剤化される。
【0063】
本医薬製剤は、要望により、複数回投与を含むか、または単位用量組成物であってもよい。
【0064】
本医薬製剤は、好ましくは、有効量の製剤の気道への都合のよい投与を可能にするカルシウムおよびナトリウムの濃度を含む。例えば、液体の製剤は、対象の気道に有効量を送達するために霧状にする製剤を大量に必要としないように、希釈しすぎないことが一般に望ましい。長い投与期間は嫌われ、また、一般に、有効量が気道(例えば、霧状液体またはアエロゾル化乾燥粉末などのアエロゾル化製剤の吸入によって)または鼻腔に、最長約120分、最長約90分、最長約60分、最長約45分、最長約30分、最長約25分、最長約20分、最長約15分、最長約10分、最長約7.5分、最長約5分、最長約4分、最長約3分、最長約2分、最長約1分、最長約45秒、最長約30秒で投与されるように製剤は十分に濃厚であるべきである。
【0065】
例えば、液体医薬製剤は、約0.115Mから1.15MのCa2+イオン、約0.116Mから1.15MのCa2+イオン、約0.23Mから1.15MCa2+のCa2+イオン、約0.345Mから1.15MCa2+のCa2+イオン、約0.424Mから1.15MCa2+のCa2+イオン、約0.46Mから1.15MのCa2+イオン、約0.575Mから1.15MのCa2+イオン、約0.69Mから1.15MのCa2+イオン、約0.805Mから1.15MのCa2+イオン、約0.849Mから1.15MのCa2+イオン、または約1.035Mから1.15MのCa2+イオンを含んでいてもよい。特定のカルシウム塩(例えば炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム)の溶解性が、溶液の調製を制限することがある。そのような状況において、液剤は、所望のモル濃度を達成するために必要なカルシウム塩の対応量を含む懸濁液の形態をしていてもよい。
【0066】
液体医薬製剤中のNa+イオンの濃度は、液剤中のCa2+イオンの濃度および所望のCa2+対Na+比に依存する。例えば、液剤は、約0.053Mから0.3MのNa+イオン、約0.075Mから0.3MのNa+イオン、約0.106Mから0.3MのNa+イオン、約0.15Mから0.3MのNa+イオン、約0.225Mから0.3MのNa+イオン、約0.008Mから0.3MのNa+イオン、約0.015Mから0.3MのNa+イオン、約0.016Mから0.3MのNa+イオン、約0.03Mから0.3MのNa+イオン、約0.04Mから0.3MのNa+イオン、約0.08Mから0.3MのNa+イオン、約0.01875Mから0.3MのNa+イオン、約0.0375Mから0.3MのNa+イオン、約0.075Mから0.6MのNa+イオン、約0.015Mから0.6MのNa+イオン、または約0.3Mから0.6MのNa+イオンを含んでいてもよい。
【0067】
本明細書において記載される医薬製剤は、要望により低張性、等張性または高張性であってよい。水性液剤は、張度、ならびに製剤中に存在するカルシウム塩およびナトリウム塩の濃度が変動してもよい。
【0068】
本明細書において記載される医薬製剤は、要望により低張性、等張性または高張性であってよい。例えば、本明細書において記載された医薬製剤のいずれかは、約0.1倍張度、約0.25倍張度、約0.5倍張度、約1倍張度、約2倍張度、約3倍張度、約4倍張度、約5倍張度、約6倍張度、約7倍張度、約8倍張度、約9倍張度、約10倍張度、少なくとも約1倍張度、少なくとも約2倍張度、少なくとも約3倍張度、少なくとも約4倍張度、少なくとも約5倍張度、少なくとも約6倍張度、少なくとも約7倍張度、少なくとも約8倍張度、少なくとも約9倍張度、少なくとも約10倍張度、約0.1倍から約1倍の間、約0.1倍から約0.5倍の間、約0.5倍から約2倍の間、約1倍から約4倍の間、約1倍から約2倍の間、約2倍から約10倍の間、または約4倍から約8倍の間であってよい。例えば、例示の医薬製剤は、約0.053MCaCl2および約0.0066MNaCl(0.5倍張度、8:1のCa2+:Na+比で)、約0.106MCaCl2および約0.013MNaCl(1倍張度(等張)、8:1のCa2+:Na+比で)、約0.212MCaCl2および約0.0265MNaCl(2倍張度、8:1のCa2+:Na+比で)、約0.424MCaCl2および約0.053MNaCl(4倍張度、8:1のCa2+:Na+比で)、または約0.849MCaCl2および約0.106MNaCl(8倍張度、8:1Ca2+:Na+比で)を含んでいてもよい。
【0069】
液剤のための好ましいカルシウム塩は、例えば、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム、硫酸カルシウムを包含する。液剤のための好ましいナトリウム塩は、例えば塩化ナトリウム、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、硫酸ナトリウムを包含する。
【0070】
乾燥粉末医薬製剤は、少なくとも約5重量%のカルシウム塩、10重量%のカルシウム塩、約15重量%のカルシウム塩、少なくとも約19.5重量%のカルシウム塩、少なくとも約20重量%のカルシウム塩、少なくとも約22重量%のカルシウム塩、少なくとも約25.5重量%のカルシウム塩、少なくとも約30重量%のカルシウム塩、少なくとも約37重量%のカルシウム塩、少なくとも約40重量%のカルシウム塩、少なくとも約48.4重量%のカルシウム塩、少なくとも約50重量%のカルシウム塩、少なくとも約60重量%のカルシウム塩、少なくとも約70重量%のカルシウム塩、少なくとも約75重量%のカルシウム塩、少なくとも約80重量%のカルシウム塩、少なくとも約85重量%のカルシウム塩、少なくとも約90重量%のカルシウム塩、または少なくとも約95重量%のカルシウム塩を一般に含む。
【0071】
代替としてまたはさらに、乾燥粉末製剤は、少なくとも約5重量%のCa+2、少なくとも約7重量%のCa+2、少なくとも約10重量%のCa+2、少なくとも約11重量%のCa+2、少なくとも約12重量%のCa+2、少なくとも約13重量%のCa+2、少なくとも約14重量%のCa+2、少なくとも約15重量%のCa+2、少なくとも約17重量%のCa+2、少なくとも約20重量%のCa+2、少なくとも約25重量%のCa+2、少なくとも約30重量%のCa+2、少なくとも約35重量%のCa+2、少なくとも約40重量%のCa+2、少なくとも約50重量%のCa+2、少なくとも約45重量%のCa+2、少なくとも約55重量%のCa+2、少なくとも約60重量%のCa+2、少なくとも約65重量%のCa+2、または少なくとも約70重量%のCa+2の量のCa+2を与えるカルシウム塩を含んでいてもよい。
【0072】
乾燥粉末医薬製剤中のナトリウム塩の量は、製剤中のカルシウム塩の量および所望のカルシウム:ナトリウム比に依存する。例えば、乾燥粉末製剤は、少なくとも約1.6重量%のナトリウム塩、少なくとも約5重量%のナトリウム塩、少なくとも約10重量%のナトリウム塩、少なくとも約13重量%のナトリウム塩、少なくとも約15重量%のナトリウム塩、少なくとも約20重量%のナトリウム塩、少なくとも約24.4重量%のナトリウム塩、少なくとも約28重量%のナトリウム塩、少なくとも約30重量%のナトリウム塩、少なくとも約30.5重量%のナトリウム塩、少なくとも約35重量%のナトリウム塩、少なくとも約40重量%のナトリウム塩、少なくとも約45重量%のナトリウム塩、少なくとも約50重量%のナトリウム塩、少なくとも約55重量%のナトリウム塩、少なくとも約60重量%のナトリウム塩を含んでいてもよい。
【0073】
代替としてまたはさらに、乾燥粉末医薬製剤は、少なくとも約0.1重量%のNa+、少なくとも約0.5重量%のNa+、少なくとも約1重量%のNa+、少なくとも約2重量%のNa+、少なくとも3重量%のNa+、少なくとも約4重量%のNa+、少なくとも約5重量%のNa+、少なくとも約6重量%のNa+、少なくとも約7重量%のNa+、少なくとも約8重量%のNa+、少なくとも約9重量%のNa+、少なくとも約10重量%のNa+、少なくとも約11重量%のNa+、少なくとも約12重量%のNa+、少なくとも約14重量%のNa+、少なくとも約16重量%のNa+、少なくとも約18重量%のNa+、少なくとも約20重量%のNa+、少なくとも約22重量%のNa+、少なくとも約25重量%のNa+、少なくとも約27重量%のNa+、少なくとも約29重量%のNa+、少なくとも約32重量%のNa+、少なくとも約35重量%のNa+、少なくとも約40重量%のNa+、少なくとも約45重量%のNa+、少なくとも約50重量%のNa+、または少なくとも約55% Na+の量のNa+を与えるナトリウム塩を含んでいてもよい。
【0074】
乾燥粉末製剤のための好ましいカルシウム塩は、例えば、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム、硫酸カルシウムを包含する。乾燥粉末製剤のための好ましいナトリウム塩は、例えば、塩化ナトリウム、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、硫酸ナトリウムを包含する。
【0075】
乾燥粉末医薬製剤のための好ましい賦形剤(疎水性アミノ酸ロイシンなどの)は、約50重量/重量%以下の量で製剤中に存在することができる。例えば、乾燥粉末製剤は、約50重量%以下、約45重量%以下、約40重量%以下、約35重量%以下、約30重量%以下、約25重量%以下、約20重量%以下、約18重量%以下、約16重量%以下、約15重量%以下、約14重量%以下、約13重量%以下、約12重量%以下、約11重量%以下、約10重量%以下、約9重量%以下、約8重量%以下、約7重量%以下、約6重量%以下、約5重量%以下、約4重量%以下、約3重量%以下、約2重量%以下または約1重量%以下の量のアミノ酸ロイシンを含んでいてもよい。例示の賦形剤は、本明細書に開示されるまたは当業界で一般に使用される、ロイシン、マルトデキストリン、マンニトール、ロイシン、マルトデキストリンおよびマンニトールの任意の組合せまたは他の賦形剤を包含してもよい。
【0076】
気道の選択領域への局所的な送達のために、適切な粒子直径、表面粗度およびタップ密度を有する乾燥粉末製剤が調製される。例えば、上気道送達のためにより高い密度またはより大きい粒子を使用することができる。同様に、異なるサイズの粒子の混合物を投与して、1度の投与で肺の異なる領域を標的にすることができる。例えば、空気動力学的に軽い粒子を含む乾燥粉末は、肺への吸入に適切であることが見出された。
【0077】
大きい粒子サイズの乾燥粉末製剤(「DPF」)は、流動特性が改善されている(例えば、より凝集しにくい(Visser,J.,Powder Technology 58:1−10(1989))、エアロゾル化しやすく潜在的に食作用を受けにくい。Rudt,S.および R.H.Muller,J.Controlled Release,22:263−272(1992);Tabata,Y.,およびY.Ikada,J.Biomed.Mater.Res.,22:837−858(1988))。吸入治療のための乾燥粉末エアロゾルは、一般に、主に5ミクロン未満の範囲の平均直径で製造されるが、空気動力学的直径で任意の所望の範囲の乾燥粉末を製造することができる。Ganderton,D.,J.Biopharmaceutical Sciences,3:101−105(1992);Gonda,I.「アエロゾル送達の物理化学的原理」(Physico−Chemical Principles in Aerosol Delivery)、Topics in Pharmaceutical Sciences 1991,Crommelin,D.J.およびK.K.Midha編、Medpharm Scientific Publishers,Stuttgart,pp.95−115(1992)。他の考えられる利点の中で、大きい「担体」粒子(医薬製剤を含まない)は、治療用エアロゾルとともに同時送達されて、効率的なエアロゾル化を達成するように補助することができる。French,D.L.,Edwards,D.A.およびNiven,R.W.,J.Aerosol Sci.,27:769−783(1996)。数秒〜数ヶ月の範囲の分解速度および放出速度を有する粒子が、当分野で確立された方法によって設計および製造することができる。
【0078】
一般に、乾燥粉末である医薬製剤は、噴霧乾燥、真空凍結乾燥、ジェット粉砕する、単一および二重乳液溶媒蒸発および超臨界流体によって製造することができる。好ましくは、乾燥粉末製剤は、製剤の塩および他の成分を含有する溶液を調製すること、密閉室へ溶液を噴霧すること、および加熱ガス、水蒸気を用いて溶媒を除去することを伴う、噴霧乾燥によって製造される。
【0079】
塩化カルシウム、乳酸カルシウムおよび塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどの水または水性溶媒に十分な溶解度を有するカルシウムおよびナトリウム塩を含む噴霧乾燥粉末は、従来法を使用して容易に調製することができる。クエン酸カルシウムおよび硫酸カルシウムなどのいくつかの塩は、水および他の水性溶媒中の溶解度が低い。そのような塩を含む噴霧乾燥粉は任意の適切な方法を使用して調製することができる。1つの適切な方法は、溶液中のより可溶性の塩を混ぜ合わせて反応(沈降反応)させ、乾燥粉末製剤用の所望の塩を製造するものである。例えば、クエン酸カルシウムおよび塩化ナトリウムを含む乾燥粉末製剤が所望の場合、高溶解度の塩である塩化カルシウムおよびクエン酸ナトリウムを含有する溶液を調製することができる。クエン酸カルシウムを生成する沈降反応は、3 CaCl2 + 2 Na3Cit → Ca3Cit2 + 6 NaClである。さらに、例えば、硫酸カルシウムおよび塩化ナトリウムを含む乾燥粉末製剤が所望の場合、高い溶解度の塩である塩化カルシウムおよび硫酸ナトリウムを含有する溶液を調製することができる。硫酸カルシウムを生成する沈降反応は、CaCl2 + Na2SO4 → CaSO4 + 2 NaClである。カルシウム塩を加える前に、ナトリウム塩が完全に溶解され、溶液が間断なく撹拌されることが好ましい。要望により、沈降反応を完了させるか、または、例えば溶液を噴霧乾燥することによって完了の前に停止することができる。
【0080】
代替として、スタティック混合後の飽和または過飽和溶液を得るために、2つの飽和または亜飽和溶液がスタティックミキサーへ供給される。好ましくは、噴霧乾燥後溶液は過飽和である。2つの溶液は水性または有機性であってもよいが、実質的に水性であることが好ましい。次いで、スタティック混合後溶液は噴霧乾燥器の微粒化装置へ供給される。好ましい実施形態において、スタティック混合後溶液は、微粒化装置へ直ちに供給される。微粒化装置のいくつかの例は、二流体ノズル、回転式微粒化装置または加圧ノズルを包含する。好ましくは、微粒化装置は二流体ノズルである。一実施形態において、二流体ノズルは最外部オリフィスに出る前に、ガスが液体供給に衝突することを意味する、内部混合ノズルである。別の実施形態において、二流体ノズルは最外部オリフィスに出る前に、ガスが液体供給に衝突することを意味する、外部混合ノズルである。
【0081】
結果として得られる溶液は完全に溶解された塩で透明に見えてもよく、または、沈殿物を形成してもよい。反応条件に応じて、沈殿物が急速にまたは経時的に形成してもよい。安定な均質の懸濁液の形成をもたらす軽い沈殿物を含む溶液は、噴霧乾燥することができる。
【0082】
乾燥粉末製剤はまた、個々の成分をブレンドすることにより最終医薬製剤に調製することができる。例えば、カルシウム塩を含む第1の乾燥粉末は、ナトリウム塩を含む第2の乾燥粉末とブレンドし、カルシウム塩およびナトリウム塩を含む医薬製剤を製造することができる。所望の場合、賦形剤(例えばラクトース)および/または他の活性成分(例えば、抗生物質、抗ウイルス剤)を含む追加の乾燥粉末をブレンド中に含有することができる。ブレンドは任意の所望の相対量または比のカルシウム塩、ナトリウム塩、賦形剤および他の原料(例えば抗生物質、抗ウイルス剤)を含むことができる。
【0083】
所望の場合、乾燥粉末は以下を包含する粒子特性を最適化するように適合させたポリマーを使用して調製することができる:i)送達される薬剤(例えば塩、抗生物質または抗ウイルス剤などの他の活性成分)と薬剤の安定化および送達時の活性の保持を与えるポリマーとの間の相互作用;ii)ポリマー分解の速度およびそれによる薬剤放出プロフィール;iii)化学修飾による界面特性および標的到達性能;およびiv)粒子細孔率。ポリマー粒子は、単一および二重乳液溶媒蒸発、噴霧乾燥、溶媒抽出、溶媒蒸発、相分離、単純コアセルベーションおよび複雑コアセルベーション、界面重合、ジェット粉砕ならびに当業界で周知の他の方法を使用して調製することができる。粒子は、当業界で公知の微小球体またはマイクロカプセルを製造する方法を使用して製造することができる。
【0084】
所望の場合、本医薬製剤は、粘液活性剤または粘液溶解剤、界面活性剤、抗生物質、抗ウイルス剤、抗ヒスタミン剤、鎮咳薬、気管支拡張薬、抗炎症剤、ステロイド、ワクチン剤、アジュバント、去痰薬、高分子、CFの長期維持に役立つ治療剤などの1種または複数の追加の薬剤を包含することができる。
【0085】
適切な粘液活性剤または粘液溶解剤の例は、MUC5ACおよびMUC5Bムチン、DNA酵素、N−アセチルシステイン(NAC)、システイン、ナシステリン、ドルナーゼアルファ、ゲルゾリン、ヘパリン、ヘパリン硫酸塩、P2Y2作動薬(例えばUTP、INS365)、高張生理食塩水およびマンニトールを包含する。
【0086】
適切な界面活性剤は、L−アルファ−ホスファチジルコリン二パルミトイル、ジホスファチジルグリセロール(DPPG)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−L−セリン(DPPS)、1,2−ジパルミトイル−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DSPE)、1−パルミトイル−2−オレオイルホスファチジルコリン、脂肪族アルコール、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、界面活性脂肪酸、ソルビタントリオレエート(Span 85)、グリココール酸塩、サーファクチン、ポロキソマー、ソルビタン脂肪酸エステル、チロキサポール、リン脂質およびアルキル化糖を包含する。
【0087】
所望の場合、塩製剤は抗生物質を含むことができる。例えば、細菌性肺炎またはVATを治療するための塩製剤は、抗生物質、例えば、マクロライド(例えばアジスロマイシン、クラリスロマイシンおよびエリスロマイシン)、テトラサイクリン(例えばドキシサイクリン、チゲサイクリン)、フルオロキノロン(例えばゲミフロキサシン、レボフロキサシン、シプロフロキサシンおよびモキシフロキサシン)、セファロスポリン(例えばセフトリアキソン、セファタキシム(defotaxime)、セフタジジム、セフェピム)、アンピシリン−スルバクタム、ピペラシリン−タゾバクタムおよびクラブラン酸塩を含むチカルシリンなどの、β−ラクタマーゼ阻害剤(例えばスルバクタム、タゾバクタムおよびクラブラン酸)を場合によって含むペニシリン(例えばアモキシシリン、クラブラン酸塩を含むアモキシシリン、アンピシリン、ピペラシリンおよびチカルシリン)、アミノグリコシド(例えばアミカシン、アルベカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ロードストレプトマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシンおよびアプラマイシン)、ペネムまたは、カルバペネム(例えばドリペネム、エルタペネム、イミペネムおよびメロペネム)、モノバクタム(例えばアズトレオナム)、オキサゾリジノン(例えばリネゾリド)、バンコマイシンおよび糖ペプチド抗生物質(例えばテラバンシン)、結核ミコバクテリウム抗生物質などをさらに含むことができる。
【0088】
所望の場合、塩製剤は、ミュコバクテリウム・トゥベルクロシスなどのミコバクテリアによる感染症を治療する薬剤を含むことができる。ミコバクテリア(例えばM.トゥベルクロシス)による感染症を治療する適切な薬剤は、アミノグリコシド(例えばカプレオマイシン、カナマイシン、ストレプトマイシン)、フルオロキノロン(例えばシプロフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン)、イソジアニドおよびイソジアニド類似体(例えばエチオナミド)、アミノサリチル酸塩、シクロセリン、ジアリールキノリン、エタンブトール、ピラジンアミド、プロチオンアミド、リファンピンなどを包含する。
【0089】
所望の場合、塩製剤は、オセルタミビル、ザナマビルアマンチジンまたはリマンタジン、リバビリン、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、ホスカビル、Cytogam(登録商標)(サイトメガロウイルス免疫グロブリン)、プレコナリル、ルピントリビル、パリビズマブ、モタビズマブ、シタラビン、ドコサノール、デノチビル、シドフォビルおよびアシクロビルなどの適切な抗ウイルス剤を含むことができる。塩製剤は、ザナミビル、オセルタミビル、アマンタジンまたはリマンタジンなどの適切な抗インフルエンザ剤を含むことができる。
【0090】
適切な抗ヒスタミン剤はクレマスチン、アサラスチン、ロラタジン、フェキソフェナジンなどを包含する。
【0091】
適切な鎮咳薬はベンゾナテート、ベンプロペリン、クロブチナール、ジフェンヒドラミン、デキストロメトルファン、ジブネート、フェドリレート、グラウシン、オキサラミン、ピペツジbb(piperidione)、コデイン(codine)などのオピオイド(opiods)などを包含する。
【0092】
適切な気管支拡張剤(brochodilators)は短時間作用性ベータ2作動薬、長時間作用性beta2作動薬(LABA)、長時間作用性ムスカリンのアンタゴニスト(anagonists)(LAMA)、LABAおよびLAMAの組合せ、メチルキサンチンおよびなどを包含する。適切な短時間活性ベータ2作動薬は、アルブテロール、エピネフリン、ピルブテロール、レバルブテロール、メタプロテロノール、マキサイルなどを包含する。適切なLABAはサルメテロール、ホルモテロールおよび異性体(例えばアルホルモテロール)、クレンブテロール、ツロブテロール、ビランテロール(Revolair(商標))、インダカテロールなどを包含する。LAMAの例は、チオトロピウム(tiotroprium)、グリコピロレート、アクリジニウム、イプラトロピウムなどを包含する。LABAおよびLAMAの組合せの例は、グリコピロレートを含むインダカテロール、チオトロピウムを含むインダカテロールなどを包含する。メチルキサンチンの例はテオフィリンなどを包含する。
【0093】
適切な抗炎症剤は、ロイコトリエン拮抗薬、PDE4拮抗薬、他の抗炎症剤などを包含する。適切なロイコトリエン拮抗薬は、モンテルカスト(シスチニルロイコトリエン拮抗薬)、マシルカスト、ザフィルルカスト(zafirleukast)(ロイコトリエンD4およびE4受容体拮抗薬)、ジロイトン(5−リポキシゲナーゼ拮抗薬)などを包含する。適切なPDE4阻害剤はシロミラスト、ロフルミラストなどを包含する。他の抗炎症剤は、オマリズマブ(抗IgE免疫グロブリン)、IL−13およびIL−13受容体阻害剤(AMG−317、MILR1444A、CAT−354、QAX576、IMA−638、アンルキンズマブ、IMA−026、MK−6105、DOM−0910などの)、IL−4およびIL−4受容体阻害剤(ピトラキンラ、AER−003,AIR−645、APG−201、DOM−0919などの)、カナキヌマブなどのIL−1阻害剤、AZD1981(AstraZenecaからの)などのCRTh2受容体拮抗薬、AZD9668(AstraZenecaからの)などの好中球エラスターゼ阻害剤、ロスマピメドなどのP38キナーゼ阻害剤を包含する。
【0094】
適切なステロイドは、コルチコステロイド、コルチコステロイドおよびLABAの組合せ、コルチコステロイドおよびLAMAの組合せなどを包含する。適切なコルチコステロイドはブデソニド、フルチカゾン、フルニソリド、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、モメタゾン、シクレソニド、デキサメタゾンなどを包含する。コルチコステロイドおよびLABAの組合せは、フルチカゾンを含むサルメテロール、ブデソニドを含むホルモテロール、フルチカゾンを含むホルモテロール、モメタゾンを含むホルモテロール、モメタゾンを含むインダカテロールなどを包含する。
【0095】
適切な去痰薬はグアイフェネシン、グアイアコールスルファネート(guaiacolculfonate)、塩化アンモニウム、ヨウ化カリウム、チロキサポール、硫化アンチモン(V)などを包含する。
【0096】
鼻から吸入されるインフルエンザワクチンなどの適切なワクチン剤。
【0097】
適切な高分子は、治療活性、予防活性または診断活性を有するタンパク質および大きいペプチド、多糖類およびオリゴ糖、ならびにDNARNA核酸分子およびこれらの類似体を包含する。タンパク質は、モノクローナル抗体などの抗体を包含することができる。核酸分子は、相補的DNA、RNAまたはリボソームに結合して転写またはトランスレーションを阻止するsiRNAsなどの遺伝子、アンチセンス分子を包含する。
【0098】
嚢胞性繊維症の長期維持に役立つ選択された治療は、抗生物質/マクロライド系抗生物質、気管支拡張薬、吸入LABAおよび気道分泌除去を促進する薬剤を包含する。抗生物質/マクロライド系抗生物質の好適例はトブラマイシン、アジスロマイシン、シプロフロキサシン、コリスチンなどを包含する。気管支拡張薬の好適例は、アルブテロールなどの吸入短時間作用型のbeta2作動薬などを包含する。吸入LABAの好適例はサルメテロール、ホルモテロールなどを包含する。気道分泌除去を促進する薬剤の好適例はドルナーゼアルファ、高張生理食塩水などを包含する。
【0099】
本発明の医薬製剤のいくつかの限定されない例は、表1に見ることができる。
【0100】
【表1】
【0101】
4.肺疾患または気道感染症の治療
本発明は、例えば、喘息(例えば、アレルギー性/アトピー性、小児、遅発症性、咳型または慢性閉塞性)、気道過敏性、アレルギー性鼻炎(季節性または非季節性)、気管支拡張(brochiectasis)、慢性気管支炎、肺気腫、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性繊維症、若年性喘鳴などの肺疾患の治療(予防療法を含む)、およびこれらの成人病の急性増悪の治療(予防療法を含む)の方法を提供する。この増悪を引き起こす原因は、ウイルス感染(例えば、インフルエンザウイルスA型またはインフルエンザウイルスB型などのインフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、メタニューモウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、コロナウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルスなど)、細菌感染(例えば、一般には肺炎球菌と呼ばれるスタピュロコックス・ニューモニアエ)スタピュロコックス・アウレウス、スタピュロコックス・アガラクティアエ、スタピュロコックス・ピオゲネス、ハエモフィルス・インフルエンザエ、ハエモピルス・パラインフルエンザエ、クレブシェッラ・ニューモニアエ、エシェリキア・コリ、プセウドモナス・アエルギノサ、モラクセラ・カタッラリス、クラミュドピラ・ニューモニアエ、ミュコプラスマ・ニューモニアエ、レジオネッラ・ニューモピラ、セラティア・マルケスセンス、ブルクホリデリア・ケパキア、ブルクホリデリア・プセウドマッレイ、バキッルス・アントラキス、バキッルス・ケレウス、ステノトロポモナス・マルトピリア、シトロバクター科からの細菌、ecinetobacter科からの細菌、ミュコバクテリウム・トゥベルクロシス、ボルデテッラ・ペルトゥッシス(Bordetella pertussis)などの)、真菌感染(例えばヒストプラスマ・カプスラトゥム、クリプトコックス・ネオフォルマンス、ニューモキュスティス・イロウェキ、コッキディオイデス・インミティス、カンジダ・アルビカンス、ニューモキュスティス・イロウェキイ(これはニューモキュスティス症とも呼ばれるニューモキュスティス肺炎(PCP)を引き起こす)など)、寄生虫感染(例えばトキソプラスマ・ゴンディ、ストロンギュロイデス・ステルコラリスなど)、または環境アレルゲン、および刺激物(例えば花粉、チリダニ、ネコのふけなどの動物ふけ、かび、ゴキブリ、浮遊微小粒子などを包含する空気アレルゲン)である。
【0102】
本発明は、気道、例えばウイルス感染、気道の細菌感染の感染症の治療(予防療法を含む)のための方法をさらに提供する。
【0103】
例示の気道感染症は、肺炎(市中感染性肺炎、院内肺炎(院内感染の肺炎、HAP;医療ケア関連肺炎、HCAP)、人工呼吸器関連肺炎(VAP)を含む)、人工呼吸器関連気管気管支炎(trachebronchitis)(VAT)、気管支炎、クループ(例えば挿管後クループおよび感染性クループ)、結核、インフルエンザ、普通風邪およびウイルス感染症(例えばインフルエンザウイルス(例えばインフルエンザウイルスA型、インフルエンザウイルスB型)およびパラインフルエンザウイルス(例えばhPIV−1、hPIV−2、hPIV−3、hPIV−4)、呼吸器合胞体ウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、メタニューモウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、コロナウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、腸内ウイルス、SARSコロナウイルスおよび天然痘など)、細菌感染症(例えばスタピュロコックス・ニューモニアエ(一般には肺炎球菌と呼ばれる))スタピュロコックス・アウレウス、スタピュロコックス・ピオゲネス、スタピュロコックス・アガラクティアエ、ハエモフィルス・インフルエンザエ、ハエモピルス・パラインフルエンザエ、クレブシェッラ・ニューモニアエ、エシェリキア・コリ、プセウドモナス・アエルギノサ、モラクセラ・カタッラリス、クラミュドピラ・ニューモニアエ、ミュコプラスマ・ニューモニアエ、レジオネッラ・ニューモピラ、セラティア・マルケスセンス、ミュコバクテリウム・トゥベルクロシス、ボルデテッラ・ペルトゥッシス、バークホリデリア・セパシア、ブルクホリデリア・プセウドマッレイ、バキッルス・アントラキス、バキッルス・ケレウス、ステノトロポモナス・マルトピリア、シトロバクター科からの細菌、ecinetobacter科からの細菌などの)、真菌感染症(例えばヒストプラスマ・カプスラトゥム、クリプトコックス・ネオフォルマンス、ニューモキュスティス・イロウェキ、コッキディオイデス・インミティス、カンジダ・アルビカンス、ニューモキュスティス・イロウェキイ(これはニューモシスチス症とも呼ばれるニューモキュスティス肺炎(PCP)を引き起こす)など)、または寄生虫感染症(例えばトキソプラスマ・ゴンディ、ストロンギュロイデス・ステルコラリスなど)を包含する
【0104】
特定の実施形態において、細菌性肺炎などの気道感染症は細菌感染症である。特定の実施形態において、ストレプトコックス・ニューモニアエ(肺炎球菌とも呼ばれる)、スタピュロコックス・アウレウス、ストレプトコックス・アガラクティアエ、ストレプトコックス・ピュオゲネス、ハエモピルス・インフルエンザエ、ハエモピルス・パラインフルエンザエ、クレブシェッラ・ニューモニアエ、エシェリキア・コリ、プセウドモナス・アエルギノサ、モラクセラ・カタッラリス、クラミュドピラ・ニューモニアエ、ミュコプラスマ・ニューモニアエ、レジオネッラ・ニューモピラ、セラティア・マルケスセンス、ブルクホリデリア・ケパキア、ブルクホリデリア・プセウドマッレイおよびバキッルス・アントラキス、バキッルス・ケレウス、ボルダテッラ・ペルトゥッシス、ステノトロポモナス・マルトピリア、シトロバクター科からの細菌、ecinetobacter科からの細菌、およびミュコバクテリウム・トゥベルクロシスからなる群から選択される細菌によって、細菌感染は引き起こされる。
【0105】
特定の実施形態において、気道感染症は、インフルエンザまたはウイルス性肺炎などのウイルス感染症である。特定の実施形態において、ウイルス感染症は、インフルエンザウイルス(例えばインフルエンザウイルスA型、インフルエンザウイルスB型)、呼吸器合胞体ウイルス、アデノウイルス、メタニューモウイルス、サイトメガロウイルス、パラインフルエンザウイルス(例えばhPIV−1、hPIV−2、hPIV−3、hPIV−4)、ライノウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、コロナウイルス、単純ヘルペスウイルス、SARSコロナウイルスおよび天然痘からなる群から選択されるウイルスによって引き起こされる。
【0106】
特定の実施形態において、気道感染症は真菌感染症である。特定の実施形態において、真菌感染症は、ヒストプラスマ・カプスラトゥム、クリプトコックス・ネオフォルマンス、ニューモキュスティス・イロウェキ、コッキディオイデス・インミティス、カンジダ・アルビカンスおよびニューモキュスティス・イロウェキイ(ニューモキュスティス肺炎(PCP)(ニューモシスチス症とも呼ばれる)を引き起こす)からなる群から選択される菌によって引き起こされる。
【0107】
特定の実施形態において、気道感染症は寄生虫感染症である。特定の実施形態において、寄生虫感染症は、トキソプラスマ・ゴンディおよびストロンギロイデス・ステルコラリスからなる群から選択される寄生虫によって引き起こされる。
【0108】
別の態様において、本発明は、Ca+2対Na+の比が約4:1(モル数:モル数)から約16:1(モル:モル)であるカルシウム塩およびナトリウム塩を活性成分として含む医薬製剤の有効量を、個体の気道に投与することを含む、肺疾患の個体(例えば、肺疾患を有する、肺疾患の症候を示す、または肺疾患に罹りやすい個体)を治療する(予防的治療を包含する)方法を提供する。
【0109】
別の態様において、本発明は、Ca+2対Na+の比が約4:1(モル数: モル数)から約16:1(モル:モル)であるカルシウム塩およびナトリウム塩を活性成分として含む医薬製剤の有効量を、それを必要とする個体(例えば、肺疾患の急性増悪を有する、肺疾患の急性増悪の症候を示す、または肺疾患の急性増悪に罹りやすい個体)の気道に投与することを含む、個体の慢性肺疾患の急性増悪を治療する(予防的治療を包含する)方法を提供する。例示の肺疾患は、喘息(例えば、アレルギー性/アトピー性、小児、遅発症性、咳型または慢性閉塞性)、気道過敏性、アレルギー性鼻炎(季節性または非季節性)、気管支拡張症、慢性気管支炎、肺気腫、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性繊維症、若年性喘鳴などを包含する。
【0110】
特定の実施形態において、インフルエンザはインフルエンザA型またはインフルエンザB型ウイルスのいずれかによって引き起こされる。
【0111】
特定の実施形態において、インフルエンザ様疾患は、RSV、ライノウイルス、アデノウイルス、パラインフルエンザ、ヒトコロナウイルス(重症急性呼吸器症候群を引き起こすウイルスを含む)およびメタニューモウイルスによって引き起こされる。
【0112】
特定の実施形態において、人工呼吸器関連肺炎(VAP)、人工呼吸器関連気管気管支炎(VAT)または院内感染の肺炎(HAP)は、ニューモニアエ、S.ニューモニアエ、S.アウレウス、分類不可能なハエモピルス・インフルエンザエ(NTHI)、シュードミナス(psuedominas)・アエルギノサ、アシネトバクター属種(Acinetobacter spp.)、E.コリ(E.coli)、カンジダ属種(Candida spp)(真菌)、セラティア、エンテロバクター属種(Enterobacter spp)およびステノトロポモナスによって引き起こされる。代替として、VAPまたはVATは、原因となる肺炎に関連するグラム陽性またはグラム陰性細菌によって引き起こされる場合がある。
【0113】
特定の実施形態において、市中感染性肺炎(CAP)は、以下の細菌の少なくとも1種によって引き起こされる:モラクセラ・カタラーリス(catarralis)、ミュコプラスマ・ニューモニアエ、クラミュドピリア・ニューモニア(Chlamydophilia pneumonia)、またはクラミュディア・ニューモニアエ(Chlamydia pneumoniae)、ストレプ・ニューモニア(strep pneumonia)、ハエモピルス・インフルエンザエ、クラミュドピア、ミュコプラスマおよびレジオネッラ。代替として、または以前に述べた細菌に加えて、CAPはまた真菌コクシジオイデス症(Coccidiomycosis)、ヒストプラスマシスおよびクリプトコッカス(cryptococcocus)の少なくとも1種の原因であり得る。代替として、CAPは、引き起こす肺炎に関係するグラム陽性またはグラム陰性細菌によって引き起こされる場合がある。
【0114】
特定の実施形態において、喘息の患者の急性増悪は、上気道ウイルス感染またはCAPを包含する肺炎に関連するグラム陽性またはグラム陰性細菌によって引き起こされる。代替としてまたはさらに、急性増悪は、チリダニ、卵または花粉などのアレルゲンまたは環境要因によって引き起こされる場合がある。COPDの患者の急性増悪は、喘息と同一の原因、さらにハエモピルス・インフルエンザエ、肺炎球菌およびモラクセラ属によって引き起こされる。CFの穏やかな増悪は、上記のすべてによって、さらに例えば、プセウドモナス・アエルギノサ、ブルクホリデリア・ケパキア、ブルクホリデリア・プセウドマッレイなどの、CF気道コロニー形成を特徴とする日和見的(opportunitistic)な病原菌、およびまた非定型マイコバクテリアおよびステノトロポモナスによって引き起こされる場合がある。
【0115】
本明細書において記載される医薬製剤の有効量は、それを必要とする個体(例えばヒトまたは他の霊長動物などの哺乳動物、またはブタ、雌牛、ヒツジ、ニワトリなどの飼育動物)の気道に投与される。好ましくは、医薬製剤はエアロゾルの吸入によって投与される。
【0116】
本医薬製剤を投与して、気道(例えば気道壁液)および基礎をなす組織(例えば気道上皮)の粘膜壁の生物物理学的および/または生物学的な特性を変えることができる。これらの特性は例えば、粘膜界面でのゲル化、粘膜壁の界面張力、粘膜壁の界面弾性および/または粘性、粘膜壁のバルク弾性および/または粘性、気道水和または繊毛搏動を包含する。
【0117】
一態様において、本発明は、気道の細菌感染症に罹った個体を治療する(予防的治療を含む)方法であって、個体は気道の細菌感染症の症候を示すか、または、気道の細菌感染症に罹る危険があり、本明細書において記載される医薬製剤の有効量を個体の気道に投与することを含む方法を提供する。
【0118】
特定の実施形態において、治療される個体は、以下(そのすべてが肺炎を引き起こし得る)からなる群から選択される細菌に感染している、または感染する危険がある:ストレプトコックス・ニューモニアエ、スタピュロコックス・アウレウス、ストレプトコックス・アガラクティアエ、ストレプトコックス・ピュオゲネス、ハエモピルス・インフルエンザエ、クレブシェラ・ニューモニアエ、エシェリキア・コリ、プセウドモナス・アエルギノサ、モラクセラ・カタッラリス、クラミュドピラ・ニューモニアエ、ミュコプラスマ・ニューモニアエ、およびレジオネッラ・ニューモピラ。特定の実施形態において、個体は、スタピュロコックス・ニューモニアエ、クレブシェラ・ニューモニアエまたはプセウドモナス・アエルギノサに感染している、または感染する危険がある。さらに特定の実施形態において、個体は、スタピュロコックス・ニューモニアエに感染している、または感染する危険がある。
【0119】
別の態様において、本発明は、気道のウイルス感染症に罹った個体を治療する(予防的治療を含む)方法であって、個体は気道のウイルス感染症の症候を示すか、または、気道のウイルス感染症に罹る危険があり、本明細書において記載される医薬製剤の有効量を個体の気道に投与することを含む方法を提供する。
【0120】
いくつかの実施形態において、治療される個体は、以下からなる群から選択されるウイルスに感染している、または感染する危険がある:インフルエンザウイルス(例えばインフルエンザウイルスA型、インフルエンザウイルスB型)、呼吸器合胞体ウイルス、アデノウイルス、メタニューモウイルス、サイトメガロウイルス、パラインフルエンザウイルス(例えばhPIV−1、hPIV−2、hPIV−3、hPIV−4)、ライノウイルス、コロナウイルス(例えば、SARSコロナウイルス、ポックスウイルス(例えば天然痘)、腸内ウイルスおよび単純ヘルペスウイルス。
【0121】
病原体(例えば細菌、ウイルス)による気道感染の危険がある個体は、本明細書において記載される医薬製剤の有効量の投与によって予防的に治療することができる。本方法を使用して、気道感染を引き起こす病原体(例えば細菌、ウイルス)に感染する速度または発生率を妨害する、または減少させることができる。
【0122】
一般に、個体は、病原体(例えばウイルス、細菌)に一般人口より頻繁にさらされる、または感染に耐える能力が小さくなった場合、気道感染症を引き起こす病原体に感染する危険がある。そのような感染の危険がある個体は例えば、保健従事者、免疫抑制された個体(例えば医学的に、他の感染により、または他の理由のために)、高齢および若年(例えば乳児)の個体、および感染した人の介護者および家族を包含する。
【0123】
例示の実施形態において、気道感染症を治療する(予防的治療を含む)ために使用される医薬製剤は、Ca+2対Na+の比が約8:1(モル:モル)、または約16:1(モル:モル)であるカルシウム塩およびナトリウム塩を含む。
【0124】
別の態様において、本発明は、本明細書において記載される医薬製剤の有効量を個体の気道に投与することを含む、気道の肺疾患に罹った個体(例えば、肺疾患を有する、肺疾患の症候を示す、または肺疾患に対して罹りやすい個体)を治療する(予防的治療を含む)方法を提供する。治療することができる例示の肺疾患は、喘息(例えば、アレルギー性/アトピー性、小児、遅発症性、咳型または慢性閉塞性)、若年性喘鳴、アレルギー性鼻炎(季節性または非季節性)、気道過敏性、気管支拡張症、慢性気管支炎、肺気腫、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性繊維症などを包含する。
【0125】
別の態様において、本発明は、個体の慢性肺疾患の急性増悪を治療する(予防的治療を含む)方法であって、それを必要とする個体(例えば、肺疾患の急性増悪を有する、肺疾患の急性増悪の症候を示す、または肺疾患の急性増悪に罹りやすい個体)の気道に、本明細書において記載される医薬製剤の有効量を投与することを含む方法を提供する。治療することができる例示の肺疾患は、喘息(例えば、喘息(例えば、アレルギー性/アトピー性、小児、遅発症性、咳型または慢性閉塞性)、若年性喘鳴、アレルギー性鼻炎(季節性または非季節性)、気道過敏性、気管支拡張症、慢性気管支炎、肺気腫、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性繊維症などを包含する。
【0126】
一般に、例えば、肺疾患の発症もしくは再発または肺疾患の急性増悪の正常より有意の高い確率を有すると、個体もしくは家族歴または遺伝子検査によって判断された場合、または、肺または呼吸器(repiratory)病原体に一般人口より頻繁にさらされるか、または感染に耐える能力が小さくなった場合、個体は肺疾患または肺疾患の急性増悪に罹りやすい。そのような病原体に感染する危険がある個体は、例えば、保健従事者、免疫抑制された個体(例えば医学的に、他の感染により、または他の理由のために)、集中治療室の患者、高齢および若年(例えば乳児)の個体、慢性的に内在する呼吸器疾患(例えば喘息、慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性の繊維症)の個体、手術または外傷を受けた個体ならびに介護者および感染した人の家族を包含する。
【0127】
本明細書において記載される治療の方法のいずれかに従って投与される医薬製剤は、要望により低張性、等張性または高張性であってよい。例えば、本明細書において記載される任意の方法に従って投与される医薬製剤は、約0.1倍張度、約0.25倍張度、約0.5倍張度、約1倍張度、約2倍張度、約3倍張度、約4倍張度、約5倍張度、約6倍張度、約7倍張度、約8倍張度、約9倍張度、約10倍張度、少なくとも約1倍張度、少なくとも約2倍張度、少なくとも約3倍張度、少なくとも約4倍張度、少なくとも約5倍張度、少なくとも約6倍張度、少なくとも約7倍張度、少なくとも約8倍張度、少なくとも約9倍張度、少なくとも約10倍張度、約0.1倍から約1倍の間、約0.1倍から約0.5倍の間、約0.5倍から約2倍の間,約1倍から約4倍の間、約1倍から約2倍の間、約2倍から約10倍の間、または約4倍から約8倍の間であってよい。
【0128】
5.伝染の減少
別の態様において、本発明は、気道感染(例えばウイルス感染、細菌感染)の伝染(例えば伝達または伝播を減少させる)を減少させる方法であって、気道感染症を引き起こす病原体に感染した、気道感染症の症候を示す、または病原体(例えば細菌、ウイルス)によって気道感染症に罹る危険がある個体の気道(例えば肺、鼻腔)に、本明細書において記載される医薬製剤の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0129】
いくつかの実施形態において、個体は、本明細書において記載される細菌によって気道感染を引き起こし、細菌によって引き起こされる気道感染症の症候を示す、またはそのような感染の危険があり得る。例えば、個体は、ストレプトコックス・ニューモニアエ、スタピュロコックス・アウレウス、ストレプトコックス・ピュオゲネス、ストレプトコックス・アガラクティアエ、ハエモピルス・インフルエンザエ、クレブシェラ・ニューモニアエ、エシェリキア・コリ、プセウドモナス・アエルギノサ、モラクセラ・カタッラリス、クラミュドピラ・ニューモニアエ、ミュコプラスマ・ニューモニアエ、レジオネッラ・ニューモピラ、バキッルス・アントラキス、ミュコバクテリウム・トゥベルクロシス、ボルデテッラ・ペルトゥッシス、ブルクホリデリア・ケパキア、ブルクホリデリア・プセウドマッレイ、バキッルス・アントラキス、バキッルス・ケレウス、ステノトロポモナス・マルトピリア、シトロバクター科からの細菌およびecinetobacter科からの細菌からなる群から選択される細菌によって、感染するまたは感染の危険があり得る。特定の実施形態において、個体は、ストレプトコックス・ニューモニアエ、クレブシェラ・ニューモニアエまたはプセウドモナス・アエルギノサによって感染する、または感染の危険がある。さらに特定の実施形態において、個体は、ストレプトコックス・ニューモニアエに感染するまたは感染の危険がある。
【0130】
他の実施形態において、個体は、インフルエンザウイルス(例えばインフルエンザウイルスA型、インフルエンザウイルスB型)、呼吸器合胞体ウイルス、アデノウイルス、メタニューモウイルス、サイトメガロウイルス、パラインフルエンザウイルス(例えばhPIV−1、hPIV−2、hPIV−3、hPIV−4)、ライノウイルス、coronoaviruses(例えばSARSコロナウイルス)、ポックスウイルス(例えば天然痘)、腸内ウイルスおよび単純ヘルペスウイルスからなる群から選択されるウイルスに感染する、または感染の危険があり得る。
【0131】
例示の実施形態において、気道感染症の伝染/伝播を減少させるために使用される医薬製剤は、Ca+2対Na+の比が約8:1(モル:モル)、または約16:1(モル:モル)であるカルシウム塩およびナトリウム塩を含む。
【0132】
本明細書において記載される伝染を減少させる方法のいずれかに従って投与される医薬製剤は、要望により低張性、等張性または高張性であってよい。例えば、本明細書において記載される任意の方法に従って投与される医薬製剤は、約0.1倍張度、約0.25倍張度、約0.5倍張度、約1倍張度、約2倍張度、約3倍張度、約4倍張度、約5倍張度、約6倍張度、約7倍張度、約8倍張度、約9倍張度、約10倍張度、少なくとも約1倍張度、少なくとも約2倍張度、少なくとも約3倍張度、少なくとも約4倍張度、少なくとも約5倍張度、少なくとも約6倍張度、少なくとも約7倍張度、少なくとも約8倍張度、少なくとも約9倍張度、少なくとも約10倍張度、約0.1倍から約1倍の間、約0.1倍から約0.5倍の間、約0.5倍から約2倍の間、約1倍から約4倍の間、約1倍から約2倍の間、約2倍から約10倍の間または約4倍から約8倍の間である。
【0133】
6.医薬製剤の投与
本明細書において記載される医薬製剤は、気道への(例えば気道の粘膜表面への)投与を意図し、溶液、懸濁液、噴霧、ミスト、泡沫、ゲル、蒸気、液滴、粒子または乾燥粉末の形態などのいずれかの適切な形態で投与することができる。好ましくは、本明細書において記載される医薬製剤は投与のためにアエロゾル化される。当業界で従来からの、また周知の多くの適切な方法および装置を、製剤をアエロゾル化するために使用することができる。
【0134】
例えば、本医薬製剤は口腔経由の投与のために、スペーサーまたは保持チャンバーを備えるまたは備えない定量用量吸入器(例えば、HFA噴霧剤または非HFA噴霧剤を含む加圧式定量吸入器(pMDI))、ネブライザー、アトマイザー、連続式噴霧器、経口噴霧または乾燥粉末吸入器(DPI)を用いて、アエロゾル化することができる。医薬製剤は、鼻気道経由の投与のために、鼻用ポンプまたは噴霧器、スペーサーまたは保持チャンバーを備えるまたは備えない定量用量吸入器(例えばHFA噴霧剤または非HFA噴霧剤を含む加圧式定量吸入器(pMDI))、鼻用のアダプターまたは熊手を備えるまたは備えないネブライザー、アトマイザー、連続噴霧器または乾燥粉末吸入器(DPI)を使用してアエロゾル化することができる。医薬製剤はまた、例えば、鼻洗による鼻の粘膜表面および、例えば、口洗浄による口粘膜表面に送達することができる。医薬製剤は、例えば、鼻用アダプターを備えるネブライザー、および振動気流または拍動性気流を用いる鼻用ネブライザーを経由して、鼻腔の粘膜表面に送達することができる。
【0135】
本医薬製剤のエアロゾルの製造および肺への送達のために適切な方法を選択する場合、気道の幾何形状は重要な考慮事項である。肺は、塵などの、中で呼吸する異物の粒子を捕捉するように設計されている。堆積には、埋伏、沈降およびブラウン運動という3つの基本的メカニズムが存在する(J.M.Padfield,1987:D.GandertonおよびT.Jones編、「気道への薬物送達」(Drug Delivery to the Respiratory Tract),Ellis Harwood,Chicherster,U.K.)。埋伏は、粒子が特に気道の枝において、気流内にとどまることができない場合に生じる。埋伏した粒子は、気管支壁を覆う粘膜層の上に吸着され、粘液線毛性作用によって最終的に肺から除去される。上気道の埋伏は、空気動力学的直径が5μmより大きい粒子の場合に主として生じる。より小さい粒子(空気動力学的直径が約3μm未満のもの)は、気流中にとどまり、沈降によって肺へ深く移流される傾向がある。沈降は、多くの場合、気流がより遅い下部呼吸器系において生じる。非常に小さい粒子(約0.6μm未満のもの)は、ブラウン運動によって堆積し得る。
【0136】
投与のために、適切な方法(例えば噴霧化、乾燥粉末吸入器)が選択され、肺深部(一般に直径約0.6ミクロンから5ミクロンの間の粒子)、上気道(一般に約3ミクロン以上の直径の粒子)または肺深部および上気道などの気道の所望の領域への優先的送達のための適切な粒子サイズを有するエアロゾルを製造する。
【0137】
本明細書において記載される医薬製剤の有効量は、気道感染症を有する、気道感染症の症候を示す、または気道感染症に罹る危険がある、それを必要とする個体に投与される。入院している個体、および特に人工呼吸を施される個体は、気道感染を引き起こす病原体による感染の危険がある。
【0138】
「有効量」とは所望の治療または予防する効果を達成するのに十分な量であって、例えば、感染症(例えば発熱、咳、くしゃみ、鼻汁、下痢など)の症候を軽減する、回復への時間を短縮する、個体中の病原体を減少させる、病原体が肺粘膜または気道壁液を通過することを阻止する、気道の感染を引き起こす病原体の感染の発生率または感染率低下させる、および/または気道感染症を引き起こす病原体を含有する吐き出された粒子の発散を減少させるのに十分な量である。より詳細には、有効量は、気道粘膜(例えば気道壁液)の表面および/またはバルク粘弾性(viscoelasticy)を上げる、気道粘膜のゲル化(例えば、界面および/またはバルクゲル化)を高める、気道粘膜の表面張力を上げる、気道粘膜の弾性(例えば、表面弾性および/またはバルク弾性)を上げる、気道粘膜の表面粘性(例えば表面粘性および/またはバルク粘性)を上げる、吐き出される粒子の量を減少させる、病原体(例えば、ウイルス、細菌)負荷を減少させるのに十分な量であり得る(例えば、身体への病原体取り込みを減少させること、身体に見出された既存の病原体を殺すまたは不活性化すること、気道水和を高めることなどによって身体からの病原体の除去を高めること、繊毛搏動を高めること、粘液線毛除去を高めることによって)(Grothら、Thorax、43(5):360−365(1988)など)。医薬製剤は気道に、一般的には吸入によって、投与されるので、投与される用量は、製剤の組成物(例えば、カルシウム塩濃度、ナトリウム塩濃度)、エアロゾル化の速度および効率(例えば噴霧化速度および効率)、および被曝の時間(例えば噴霧化時間)と関係がある。例えば、実質的に等価な用量は、濃縮液体医薬製剤かつ短い噴霧化時間(例えば5分)を使用する、希薄な液体医薬製剤かつ長い噴霧化時間(例えば30分以上)を使用する、または乾燥粉末製剤および乾燥粉末吸入器を使用して投与することができる。通常の技術の臨床医は、これらの考慮すべき点および他の因子、例えば、個体の年齢、感応性、許容量および全般的健康状態に基づいて適切な量を判断することができる、本明細書において記載される医薬製剤は、一回量または表示される複数回投与において投与することができる。
【0139】
得られる陽イオンの量は、選択される特定のカルシウム塩またはナトリウム塩に応じて変動し得るので、用量は、肺に送達される所望の量の陽イオンに基づくことができる。例えば、1モルの塩化カルシウム(CaCl2)は解離してCa2+1モルを与えるが、リン酸三カルシウム(Ca3(PO4)2)1モルは、Ca2+3モルを与えることができる。
【0140】
一般に、医薬製剤の有効量は、約0.001mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.002mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.005mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約60mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約50mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約40mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約30mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約20mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約10mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約5mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.02mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.03mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.04mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.05mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.1mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.1mgCa+2/kg体重/用量から約1mgCa+2/kg体重/用量、約0.1mgCa+2/kg体重/用量から約0.5mgCa+2/kg体重/用量、約0.2mgCa+2/kg体重/用量から約0.5mgCa+2/kg体重/用量、約0.18mgCa+2/kg体重/用量、約0.001mgCa+2/kg体重/用量、約0.005mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量、約0.02mgCa+2/kg体重/用量または約0.5mgCa+2/kg体重/用量の用量を送達する。
【0141】
気道に送達されるナトリウムの量は、本製剤中に存在するカルシウム塩の量および所望のカルシウム:ナトリウム比に依存する。いくつかの実施形態において、気道に送達されるナトリウムの量は、約0.001mgNa+/kg体重/用量から約10mgNa+/kg体重/用量、または約0.01mgNa+/kg体重/用量から約10mgNa+/kg体重/用量、または約0.1mgNa+/kg体重/用量から約10mgNa+/kg体重/用量、または約1.0mgNa+/kg体重/用量から約10mgNa+/kg体重/用量、または約0.001mgNa+/kg体重/用量から約1mgNa+/kg体重/用量、または約0.01mgNa+/kg体重/用量から約1mgNa+/kg体重/用量、約0.1mgNa+/kg体重/用量から約1mgNa+/kg体重/用量、約0.2mgNa+/kg体重/用量から約0.8mgNa+/kg体重/用量、約0.3mgNa+/kg体重/用量から約0.7mgNa+/kg体重/用量、または約0.4mgNa+/kg体重/用量から約0.6mgNa+/kg体重/用量である。
【0142】
いくつかの実施形態において、気道(例えば肺および呼吸気道)に送達されるカルシウムの量は、約0.001mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.002mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.005mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約60mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約50mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約40mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約30mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約20mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約10mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約5mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.02mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.03mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.04mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.05mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.1mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.1mgCa+2/kg体重/用量から約1mgCa+2/kg体重/用量、約0.1mgCa+2/kg体重/用量から約0.5mgCa+2/kg体重/用量、約0.2mgCa+2/kg体重/用量から約0.5mgCa+2/kg体重/用量、約0.18mgCa+2/kg体重/用量、約0.001mgCa+2/kg体重/用量、約0.005mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量、約0.02mgCa+2/kg体重/用量または約0.5mgCa+2/kg体重/用量である。
【0143】
他の実施形態において、上気道(例えば鼻腔)に送達されるカルシウムの量は、約0.001mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.002mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.005mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約60mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約50mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約40mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約30mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約20mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約10mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約5mgCa+2/kg体重/用量および約0.01mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.02mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.03mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.04mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.05mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.1mgCa+2/kg体重/用量から約2mgCa+2/kg体重/用量、約0.1mgCa+2/kg体重/用量から約1mgCa+2/kg体重/用量、約0.1mgCa+2/kg体重/用量から約0.5mgCa+2/kg体重/用量、約0.2mgCa+2/kg体重/用量から約0.5mgCa+2/kg体重/用量、約0.18mgCa+2/kg体重/用量、約0.001mgCa+2/kg体重/用量、約0.005mgCa+2/kg体重/用量、約0.01mgCa+2/kg体重/用量、約0.02mgCa+2/kg体重/用量または約0.5mgCa+2/kg体重/用量の量である。
【0144】
いくつかの実施形態において、気道(例えば肺および呼吸気道)に送達されるナトリウムの量は、約0.001mgNa+/kg体重/用量から約10mgNa+/kg体重/用量、約0.01mgNa+/kg体重/用量から約10mgNa+/kg体重/用量、または約0.1mgNa+/kg体重/用量から約10mgNa+/kg体重/用量、または約1.0mgNa+/kg体重/用量から約10mgNa+/kg体重/用量)、または約0.001mgNa+/kg体重/用量から約1mgNa+/kg体重/用量、または約0.01mgNa+/kg体重/用量から約1mgNa+/kg体重/用量、約0.1mgNa+/kg体重/用量から約1mgNa+/kg体重/用量、約0.2mgNa+/kg体重/用量から約0.8mgNa+/kg体重/用量、約0.3mgNa+/kg体重/用量から約0.7mgNa+/kg体重/用量、または約0.4mgNa+/kg体重/用量から約0.6mgNa+/kg体重/用量である。
【0145】
他の実施形態において、上気道(例えば鼻腔)に送達されるナトリウムの量は、約0.001mgNa+/kg体重/用量から約10mgNa+/kg体重/用量、約0.01mgNa+/kg体重/用量から約10mgNa+/kg体重/用量、または約0.1mgNa+/kg体重/用量から約10mgNa+/kg体重/用量、または約1.0mgNa+/kg体重/用量から約10mgNa+/kg体重/用量、または約0.001mgNa+/kg体重/用量から約1mgNa+/kg体重/用量)、または約0.01mgNa+/kg体重/用量から約1mgNa+/kg体重/用量、約0.1mgNa+/kg体重/用量から約1mgNa+/kg体重/用量、約0.2mgNa+/kg体重/用量から約0.8mgNa+/kg体重/用量、約0.3mgNa+/kg体重/用量から約0.7mgNa+/kg体重/用量または約0.4mgNa+/kg体重/用量から約0.6mgNa+/kg体重/用量である。
【0146】
本医薬製剤は、上気道(例えば鼻通路、鼻腔、喉、咽頭)、呼吸気道(例えば喉頭、気管(tranchea)、気管支、細気管支)または肺(例えば呼吸細気管支、肺胞管、肺胞嚢、肺胞)に送達することができる。
【0147】
一般に、吸入装置(例えばDPI)は、本明細書において記載される組成物の治療有効量を単一の吸入で送達することができなければならない。ある場合にはしかし、意図する治療結果を達成するために、多数回の吸入および/または頻繁な投与を必要とすることがある。例えば、カルシウムおよびナトリウムの所望の用量は、2回以上の吸入(例えばカプセル型またはブリスター型吸入器からの)で送達されてもよい。好ましくは、それを必要とする対象に投与される各用量は、本明細書に記載される組成物の有効量を含んでおり、最高約4回の吸入を用いて投与される。例えば、本明細書において記載される組成物の各用量は、単一の吸入または2、3または4回の吸入で投与することができる。組成物は、好ましくは、呼吸活性化DPIを使用して、単一の呼吸活性化ステップで投与される。
【0148】
所望の治療効果を提供する用量の適切な間隔は、症状(例えば感染症)の重症度、対象の全般的な健康状態、および対象の医薬製剤に対する許容量および他の考慮事項に基づいて判断することができる。これらおよび他の考慮事項に基づいて、臨床医は、用量の適切な間隔を判断することができる。一般に、医薬製剤は、必要により、1日1回、2回または3回投与される。
【0149】
所望されたまたは指示された場合、本医薬製剤は1種または複数の他の治療剤とともに投与することができる。他の治療剤は、例えば、経口的に、非経口的に(例えば、静脈内、動脈内、筋肉内または皮下注射)、局所に、吸入(例えば気管支内、鼻腔内または経口吸入、鼻腔内の液滴)によって、直腸に、膣などの任意の適切な経路によって投与することができる。本医薬製剤は、他の治療剤の投与の前に、実質的に同時に、または後に投与することができる。好ましくは、本医薬製剤および他の治療剤は、これらの薬理学的活性が実質的に重複するように投与される。
【0150】
例証
本発明は、ここまで概論的に記載されているが、以下の実施例を参照することによってより容易に理解されよう。これは、本発明の特定の態様および実施形態の単なる例証の目的のために包含されており、本発明を限定するようには意図されない。
【0151】
実施例1:カルシウムとナトリウムの比
この実施例において、異なる比のカルシウムおよびナトリウムを含む製剤を、特定の濃度および比が優れた治療活性(例えばウイルス価の減少)を与えるかどうか判断するために試験した。約4:1から約16:1(モル:モル)のCa+2:Na+比の製剤が優れた治療活性を有すると確認された。
【0152】
方法:
インフルエンザ感染の細胞培養モデルを、ウイルス感染に対する種々の霧状溶液の効果を検討するために使用した。集密的(膜は完全に細胞で覆われている)および気相液相界面(ALI)培養物が、先端の培地を除去し37°C/5%CO2で培養することにより確立されるまで、Calu−3細胞を、透過性膜(12mmのTranswells;0.4μm孔サイズ、Corning Lowell,MA)上で培養した。細胞は各試験の前に2週間を超えてALIで培養した。
【0153】
各試験に先立って、各Transwellの先端面をPBSを用いて3回洗浄した。細胞は続いて、Sedimentation chamberおよびSeries 8900 nebulizerを使用して、霧状製剤にさらした。暴露直後に、基底外側の培地(Transwellの底部側の培地)を、新鮮な培地と置き換えた。3回繰り返しのウェルを各試験の各製剤にさらした。第2の細胞培養皿を同一の製剤にさらし、全塩またはカルシウムの細胞への送達を定量した。
【0154】
暴露の1時間後、細胞を、0.1−0.01(細胞当たり0.1−0.01ビリオン)の感染多重度でインフルエンザA型/WSN/33/1の10μLに感染させた。エアロゾル処理の4時間後に、先端面を洗浄して過剰の製剤および独立ウイルスを除去し、細胞は5%CO2、37°Cでさらに20時間培養した。翌日(感染の24時間後)感染細胞の先端面上に放出されたウイルスは、培地またはPBSに収集し、先端の洗浄液中のウイルスの濃度はTCID50(50%培養細胞感染量)アッセイによって定量した。TCID50アッセイは、試料中のウイルスを定量するために使用される標準終点稀釈アッセイである。
【0155】
結果:
(a)カルシウム対ナトリウム比
先のインビトロの検討は、ナトリウム塩およびカルシウム塩を含む製剤が吐き出される粒子を抑制することができることを示した。特定の濃度および/または比の2種の陽イオンおよび/または塩が優れた治療活性を与えることができるか決定するために、様々な濃度の塩化カルシウムおよび塩化ナトリウムを含む一揃いの製剤を、インフルエンザウイルス複製を減少させるそれぞれの活性に関して試験した。試験した製剤中の塩の合計濃度は0.115Mから1.3Mの範囲であった。未処理の(空気)対照は各検討に包含されており、処理したウェルからのウイルス価(LogTCID50/mL)は各検討から空気対照に対して規格化した。
【0156】
図1は、ウイルス複製に対する様々なナトリウムおよびカルシウム濃度の効果を示す。すべての試験からのデータを規格化するために、各処理条件のウイルス複製の変化率は、ゼロ塩条件と比較して、各試験で求めた。ウイルス複製が等式Nt=N0*e(kt)(式中、N0は時間0でのウイルス粒子のもとの数であり、kは複製速度定数であり、Ntは時間tでのウイルス粒子の数である。)によって進むと仮定すると、t(k−k')を求めることができる。ただし、tは一定(tですべての試験が終了する)であり、k'は新規の複製速度定数(例えば特定の塩製剤の存在下での複製速度定数)である。この分析によって、より高い値はより小さいk'、およびそれによりウイルス感染力の速度のより大きい減少(またはウイルス感染を減少させるより大きい活性)を表す。等高線プロットはJMP分析ソフトウェアで作成した。X軸はCaCl2濃度の増加を表し、Y軸はNaCl濃度の増加を表す。各点は、1試験当たり少なくとも3つのウェルで試験した製剤を表す。ウイルス感染力の減少は、黒さの増加により示される(すなわち、より高い数字およびより暗い色調は、インフルエンザウイルス複製の減少に対するより大きい効果をもつ製剤を表す)。
【0157】
カルシウムの濃度が増加するにつれて、ウイルス感染力の対応する減少が観察されたが、これはこのモデルのカルシウムの用量反応効果を実証した先の検討と矛盾しない。さらに、これらの検討は、優れた抗ウイルス活性を示すカルシウム対ナトリウム濃度の範囲を強調している。カルシウム濃度は0.575Mから1.15Mの範囲であり、ナトリウム濃度は0.075Mから0.3Mの範囲であった。その結果、カルシウム対ナトリウム比は約4:1から約16:1(モル:モル)の間であり、中間点は8:1(モル:モル)であった。
【0158】
(b)カルシウム対ナトリウムの8:1比または16:1比の製剤が用量反応法でウイルス感染力を減少させた
相異なる比のカルシウムおよびナトリウムを含む、いくつかの異なる製剤の試験から、
ウイルス複製を減少させるのに特に有効なものとして、Ca+2:Na+比が8:1または16:1(モル:モル)の製剤が確認された。これらの比の製剤が塩濃度の範囲にわたって有効であるか判断するために、用量反応検討を実施した。塩化カルシウムの濃縮溶液を、塩化ナトリウムに対して8:1比または16:1比で製剤化し、続いて水で希釈した。この手法によって、カルシウム対ナトリウムの比は一定に保持されたが、各イオンの濃度は減少した。両者の比の製剤は、用量依存的にウイルス感染を減少させ(図2A、2B)、カルシウムの類似した濃度では互いに同等の効果を示した。どちらの場合においても、用量時間を一定を保ちながら、液剤の張度を増加することによって用量を増加させた。
【0159】
実施例2:カルシウム:ナトリウム製剤はインビトロの多くのインフルエンザ株の感染力を減少させた
この実施例において、カルシウムナトリウム製剤(8:1(モル:モル)のCa2+:Na+比の)のインビトロ治療活性を、インフルエンザウイルスの多くの株を使用して試験した。製剤の張度を変動させた(等張液の張度に対し0.5倍、2倍または8倍)。製剤は幅広いインフルエンザウイルスの感染力を事実上減少させることが示された。
【0160】
方法:
集密的(膜は完全に細胞で覆われている)および気相液相界面(ALI)培養物が、先端の培地を除去し37°C/5%CO2で培養することにより確立されるまで、Calu−3細胞を、透過性膜(12mmのTranswell;0.4μm孔サイズ、Corning Lowell,MA)上で培養した。細胞は各試験の前に2週間を超えてALIで培養した。正常ヒト気管支上皮(NHBE)細胞を透過性膜(12mmのMillicell、0.4μm孔サイズ;Millipore Billerica、MA)上の通路2に植えつけ、液体で覆われた培養状態の下で集密的になるまでインキュベートした(37°C、5%CO2、95%RH)。集密的になると、先端の培地を除去し、ALI培養を確立した。細胞は各試験までに4週間以上のALIで培養した。
【0161】
各試験に先立って、各細胞型の先端面をPBSを用いて3回洗浄した。細胞は続いて、Sedimentation chamberおよびSeries 8900 nebulizerを用いて霧状製剤にさらした。Calu−3細胞で実施した試験において、Transwellは3回繰り返して8:1モル比(0.5倍、2倍および8倍張度;1倍=等張)カルシウムナトリウム製剤にさらした。
【0162】
NHBE細胞について実施した試験は、8:1モル比(0.5倍、2倍または8倍張度;1倍=等張)の霧状カルシウムナトリウム製剤へのMillicellsの暴露を含んでいた。暴露直後に、基底外側の培地(TranswellまたはMillicellの底部側の培地)は、新鮮な培地と置き換えた。
【0163】
Calu−3細胞およびNHBE細胞の両方に実施された試験では、細胞型ごとに3回繰り返しのウェルを各試験において各製剤にさらした。塩合計またはカルシウムの細胞への送達を定量するために、第2の細胞培養皿を同一の製剤にさらした。暴露の1時間後、細胞を、0.1−0.001(1細胞当たり0.1−0.001ビリオン)の感染多重度でインフルエンザウイルスの5−10μLに感染させた。エアロゾル処理の4時間後に、先端面を洗浄して過剰の製剤および独立ウイルスを除去し、細胞は5%CO2、37°Cでさらに20時間培養した。翌日、感染細胞の先端面上に放出されたウイルスは、培地またはPBSに収集し、先端の洗浄液中のウイルスの濃度はTCID50(50%培養細胞感染量)アッセイ(ウイルス価を定量するために使用される標準終点稀釈アッセイ)によって定量した。この検討において使用されるインフルエンザ株は、表2中にリスト化されている。
【0164】
【表2】
【0165】
結果
(a) カルシウムナトリウム製剤は、インビトロでH3N2インフルエンザ株の感染力を減少させた。
実施例1は、カルシウムナトリウム製剤がインフルエンザ株A/WSN/33/1(H1N1)のウイルス複製を効果的に減少させたことを示す。この実施例において、本発明者らは異なるインフルエンザ株A/Panama/2007/99 (H3N2)について製剤の活性を試験した。さらに、Calu−3細胞が肺起源の永久増殖細胞であるので、本発明者らはまた、初代正常ヒト気管支上皮(NHBE)細胞培養物を試験した。これらの培養物は多細胞で、試験に先立ってインビトロで、最小限に継代する。
【0166】
NHBE細胞は相異なる張度カルシウムナトリウム製剤(Ca:Naの8:1比)にさらし、次いで、インフルエンザA型/Panama/2007/99に感染させた。NHBE細胞は初代細胞であるので、この培養物には、Calu−3培養物中には存在しないドナー間のばらつきがあった。このばらつきを説明するために、4つの異なるドナーからのNHBE培養物を試験した。NHBE細胞培養物の処理は、結果として、各ケースで100倍より大きい最大の減少(図3)を含む、試験したすべてのドナーのインフルエンザ価を減少させた。したがって、カルシウムナトリウム製剤は、Calu−3細胞ならびに初代NHBE細胞培養物のウイルス感染力を減少させるのに有効であり、さらに、インフルエンザ感染症を治療する(予防的治療を含む)製剤の治療上の価値を支持している。
【0167】
(b) カルシウムナトリウム製剤は、多くのインフルエンザ株の感染力をインビトロで減少させた。
8:1Ca2+:Na+モル比のカルシウムナトリウム製剤は多くのH1N1インフルエンザ株および1つのH3N2インフルエンザ株(実施例1および2(a)、追加のデータは示さず)の感染力を減少させることを示した。次いで、本発明者らは2つの追加のH3N2株および1つのインフルエンザB型株を試験した。さらに、発明者らは豚から単離されたものを含む、4種の追加のH1N1株を試験した。本発明者らは、カルシウムナトリウム製剤が、用量依存的に試験したすべてのウイルスの感染力を減少させることを見出した(図4)。8倍製剤を使用すると、ウイルス価の最大の減少が観察され、特定のウイルス株に応じて、32から12,589倍の間でウイルス価を減少させた。したがってカルシウムナトリウム製剤(8:1のCa2+:Na+モル比)は、幅広いインフルエンザウイルスの感染力を効果的に減少させることができる。
【0168】
実施例3:
フェレットインフルエンザモデルでインフルエンザウイルスの感染力を減少させるカルシウムナトリウム製剤のインビボ治療活性
この実施例において、Ca2+:Na+比が8:1(モル:モル)である2種の液剤のインビボ治療活性を、インフルエンザのフェレットモデルを使用して試験した。製剤は高張性であった(等張液の張度に対し4倍または8倍のいずれか)。その処理はインフルエンザ感染症の臨床経過を改善し、かつフェレットのインフルエンザ感染への炎症反応を弱めることが示された。
【0169】
方法:
インフルエンザのフェレットモデルは、インフルエンザワクチンまたは抗ウイルス剤の評価の標準モデルである。このモデルを使用して、本発明者らは、インビトロのインフルエンザ複製に対する活性を高めていた製剤Aおよび2種の8:1モル比製剤の治療活性を試験した。試験製剤は、表3に示される。対照フェレットは、同一の持続時間(6.5分)の、および同一の暴露条件下で吸入等級水にさらした。エアロゾル製剤を2つのPariLC Sprint nebulizerから作製し、フェレットはFlowPast暴露システム(TSEシステム)を使用して、霧状製剤にさらした。感染の1時間前、感染の4時間後、次いで6日間1日2回、検討の終了までフェレットに投薬した。鼻洗試料は、検討の第1日から始めて毎日1回収集し、体温および体重を検討の第0日から始めて1日2回求めた。炎症細胞の数および鼻洗試料のウイルス価を求めた。
【0170】
【表3】
【0171】
結果:
(a) カルシウムナトリウム製剤は、発症を阻止し発熱の重症度を低減した。
対照フェレットと比較すると、対照群と比較して、4倍および8倍処理フェレットは発熱を遅延しピーク体温を下げた(図5)。ピーク発熱(感染の36時間後)の時間に、対照群と比較して、4倍処理群は体温が著しく低下した。(4倍群の0.4°Cと比較して、対照群の3.4°Cの平均上昇;p<0.05およびp<0.01、それぞれマン・ウィットニーU検定;図5)。8倍処理群はまた対照動物と比較して、体温の低下を示した(平均上昇は1.45°C)。これらのデータは、カルシウムナトリウム製剤が、フェレットのインフルエンザ感染の後、重症度を低減し発熱を遅延させたことを示す。
【0172】
(b)カルシウムナトリウム製剤は体重損失を阻止した
対照フェレットは、処理した動物と比較して、重量をより急速に失い、感染の48時間後、体重損失のより大きい百分率を示した。(図6)4倍および8倍の群と対照群との間の体重損失の差は、統計的に有意であった(4倍および8倍の群のそれぞれ、3.1%および2.4%と比較して対照群の4.0%の重量損失;図6)。*データはまた、8倍処理動物は最少量の重量損失で、重量損失の用量反応的阻止を示した。
【0173】
(c)カルシウムナトリウム製剤は鼻炎症細胞数を減少させた
上気道のインフルエンザ感染症は、炎症細胞の浸潤に関係している。この炎症はまた感染に関連した臨床症候の根本原因である。カルシウムナトリウム製剤を用いる治療がインフルエンザ感染に続く炎症を減少させることができるか判断するために、対照または処理フェレットからの各鼻洗中の炎症細胞の数を求めた。炎症細胞数は、検討の経過にわたり対照群と比較して、処理群において有意に低かった。(図7;p<0.0001、二元配置分散分析)。4倍および8倍処理フェレットから回収された炎症細胞の合計数は、感染の72時間後、対照フェレットのそれより有意に低かった。(4倍処理でp<0.01;8倍処理でp<0.001;マン・ウィットニーU検定)。さらに、4倍および8倍の処理によって、結果として感染の120時間後で炎症細胞数が統計的に有意な差を生じた。(p<0.05、マン・ウィットニーU検定)。対照的に、製剤Aは、感染の120時間後で炎症細胞の数を減少させるのにそれほど有効ではなかった。(図7C)結果は、より高用量では、より長い時間の間炎症を阻止することができることを示す。まとめると、これらのデータは、カルシウムナトリウム製剤は臨床症候を低減し、インフルエンザ感染に関連した炎症反応を弱めたことを実証している。
【0174】
これらのインビボデータは、カルシウムナトリウム製剤処理が、インフルエンザ感染症の臨床経過を改善し、フェレットのインフルエンザ感染への炎症反応を弱めることを示した。(例えば体重損失の低減、炎症細胞数の低減など)。
【0175】
インフルエンザ感染症は、インフルエンザの特定の抗ウイルス薬/薬剤によって通常治療されるか、またはインフルエンザワクチンによって予防的に治療される普通の気道感染症である。抗ウイルス剤はインフルエンザの特定の診断を必要とするという点で限定的であり、治療が有効であるためには、感染または症候発症直後に始めなければならない。さらに、正確な診断を困難にするインフルエンザ感染症と類似した総体症状を引き起こす他のウイルスによって引き起こされるインフルエンザ様疾患(ILI)と総称されるいくつかの気道感染症がある。インフルエンザワクチンは、ある年に集団内に循環するインフルエンザウイルスのサブセットのみを標的にするので、毎年の適用範囲は限定的である。抗ウイルス剤およびワクチン剤の両方にとって、治療に抵抗性のある耐性ウイルスの出現もまた重要である。
【0176】
本明細書において記載される製剤は、感染因子の正確な診断をしないで、気道感染への被曝の危険がある対象に、症候の最初の発症で投与し、および/または予防的に投与することができよう。
【0177】
実施例4:hPIV感染力を減少させるカルシウムナトリウム製剤の活性
この実施例において、ヒトパラインフルエンザウイルス(hPIV)感染力を低減する8:1カルシウムナトリウム製剤の有効性を吟味した。データでは、8:1カルシウムナトリウム製剤がCalu−3およびNHBE細胞の両方でhPIV−3ウイルス複製を減少させることを示した。
【0178】
ヒトパラインフルエンザウイルスは、インフルエンザとは異なる一本鎖RNA外膜ウイルスである。これらのウイルスは直径150−300nmで、赤血球凝集素ノイラミニダーゼ(HN)スパイクおよび融合蛋白質に覆われている。インフルエンザウイルスと異なり、ゲノムは未分節であり、HN四量体による標的細胞へのウイルスの付着の後、ウイルスは原形質膜と直接融合すると考えられている。(Moscona、A.(2005)。「小児期呼吸器疾患に割り込む標的としての細胞へのパラインフルエンザウイルスの侵入」(Entry of parainfluenza virus into cells as a target for interrupting childhood respiratory disease)J Clin Invest 115:1688−98(7))。hPIV−3は上および下気道疾患、ならびにしばしばインフルエンザ様疾患(ILI)の原因に関係している。
【0179】
方法:
ヒトパラインフルエンザウイルス3(hPIV−3)感染の細胞培養モデルを、ウイルス感染についての相異なる霧状溶液の効果を検討するために使用した。集密的(膜は完全に細胞で覆われている)かつ気相液相界面(ALI)培養物が、先端の培地を除去し37°C/5%CO2で培養することにより確立されるまで、Calu−3細胞を、透過性膜(12mmのTranswell;0.4μm孔サイズ、Corning Lowell,MA)上で培養した。細胞は各試験の前にALIで2週間を超えて培養した。正常ヒト気管支上皮(NHBE)細胞を透過性膜(12mmのMillicell、0.4μm孔サイズ;Millipore Billerica、MA)上の通路2に植えつけ、液体で覆われた培養状態の下で集密的になるまでインキュベートした(37°C、5%CO2、95%RH)。集密的になると、先端の培地を除去し、ALI培養を確立した。細胞は各試験までに4週間以上のALIで培養した。各試験に先立って、各細胞型の先端面はPBSを用いて3回洗浄した。
【0180】
続いて、細胞を、Sedimentation chamberおよびSeries 8900 nebulizerを使用して、霧状製剤にさらした。Calu−3細胞に実施した試験において、Transwellを、8:1モル比(0.5倍、2倍および8倍)で霧状Ca2+:Na+製剤に対して3回繰り返してさらした。NHBE細胞に実施した試験は、8:1モル比(0.5倍、2倍および8倍)の霧状Ca2+:Na+製剤にMillicellsを2回繰り返してさらすものであった。暴露直後に、基底外側の培地(Transwellの底部側の培地)は、新鮮な培地と置き換えた。3回繰り返しのウェルを、各試験で各製剤にさらした。第2の細胞培養皿を同一の製剤にさらし、全体の塩またはカルシウムの細胞への送達を定量した。暴露の1時間後、細胞は、10μLのhPIV−3(C242株)に0.3−0.1(1細胞当たり0.3−0.1ビリオン)の感染多重度で感染させた。エアロゾル処理の4時間後に、先端面は過剰な製剤および独立ウイルスを除去するために洗浄した。翌日(製剤暴露の24時間後)感染細胞の先端面に放出されたウイルスを培地またはPBSに収集し、先端の洗浄液中のウイルス濃度をTCID50(50%培養細胞感染量)アッセイによって定量した。
【0181】
結果
先の実施例は、インフルエンザウイルスの複製がカルシウムナトリウム製剤によって用量依存的に有意に減少し、好ましいCa+2:Na+モル比を8:1と確認したことを示す。ウイルス価を減少させるカルシウムナトリウム製剤の治療活性をさらに吟味しインビトロ治療の広範囲の性質を求めるために、ヒトパラインフルエンザウイルス3(hPIV−3)の複製に対するカルシウムナトリウム製剤の効果を試験した。
【0182】
カルシウムナトリウム製剤がhPIV−3感染を有効に減少させるか判断するために、Calu−3細胞またはNHBE細胞を相異なる張度(0.5倍、2倍および8倍)の8:1カルシウムナトリウム製剤にさらした。未処理の細胞を対照として使用した。インフルエンザでの調査結果と同様に、hPIV−3感染は、カルシウムナトリウム製剤によって用量依存的に減少した(図8)。Calu−3およびNHBE細胞の両方において、未処理の対照と比較して、8倍Ca2+:Na+製剤を用いる治療が価の最大の減少を結果としてもたらした(p<0.001、各未処理対照と比較して;テューキー多重比較事後検定を用いる一元配置分散分析)、しかしながら、3つの処理はすべて感染に有意な影響を及ぼした。Calu−3およびNHBE細胞において、0.5倍製剤は、hPIV−3感染をそれぞれ15.8および79.4倍減少させ、また2倍製剤はhPIV−3感染をそれぞれ631および5011倍減少させた。
【0183】
これらのデータは、インフルエンザで得られた調査結果を拡張し、カルシウムナトリウム製剤が無関係なウイルスによって引き起こされるウイルス感染を減少させるのに広く有効であることを実証する。
【0184】
実施例5:
ライノウイルス感染力を減少させるカルシウムナトリウム製剤の活性
先の実施例は、インフルエンザウイルスおよびパラインフルエンザウイルス(hPIV)の複製がカルシウムナトリウム製剤によって用量依存的に有意に減少し、好ましいCa+2:Na+モル比を8:1と確認したことを示す。ウイルス価を減少させるカルシウムナトリウム製剤の治療活性をさらに吟味し、インビトロ治療の広範囲の性質を求めるために、ヒトライノウイルス感染力を減少させるカルシウムナトリウム製剤の有効性を試験した。データは8:1カルシウムナトリウム製剤が、Calu−3細胞のライノウィルス(rhinovrius)の複製を減少させることを示した。
【0185】
Calu−3細胞を8倍カルシウムナトリウム製剤(8:1のCa2+:Na+モル比)にさらした。未処理細胞を対照として使用した。未処理対照と比較して、8倍製剤を用いた細胞の処理は、Log10TCID50/mLで1.5、ライノウイルス感染を減少させた。(図9;p<0.01、未処理対照と比較;t検定)。
【0186】
これらのデータは、インフルエンザおよびパラインフルエンザで得られた調査結果を拡張し、カルシウムナトリウム製剤がまた、ライノウイルスなどの非外膜ウイルスによって引き起こされるウイルス感染を減少させるのに有効であることを実証する。インフルエンザおよびパラインフルエンザのモデルでカルシウムナトリウム製剤を用いて得られたデータとともに、この結果はカルシウムナトリウム製剤が、多数の無関係な呼吸系ウイルスの感染力を減少させるのに広く有効であることを実証する。
【0187】
実施例6:
細菌感染症を治療するカルシウムナトリウム製剤の治療活性
この実施例において、細菌感染症を治療するカルシウムナトリウム製剤の治療活性は、マウスモデルを使用して吟味した。データは、カルシウムナトリウム製剤がマウスモデルのストレプトコックス・ニューモニアエ感染症を治療するのに有効であることを示した。
【0188】
方法:
細菌は、37°C、5%CO2で、トリプシン大豆寒天(TSA)血液平板上で培養物を終夜成長させることにより調製した。単一コロニーを、無菌のPBS中で約0.3のOD600に再懸濁し、続いて無菌のPBS中で1:4に希釈した(約2x107コロニー形成単位(CFU)/mL)。マウスを麻酔にかけながら、気管内滴下によって50μLの細菌懸濁液(約1x106CFU)に感染させた。
【0189】
C57BL6マウスを、最大11匹の動物を別々に保持するパイ型ケージに結合したPari LC Sprint nebulizerを使用する全身被曝方式で、アエロゾル化液剤にさらした。処理は血清型3ストレプトコックス・ニューモニアエの感染の2時間前に実施した。他に明言しない限り、暴露時間は3分の継続であった。感染の24時間後、マウスはペントバルビタール注入によって安楽死させ、肺を集め、無菌PBSで均質化した。肺ホモジェネート試料を、無菌PBSで連続的に希釈し、TSA血液寒天平板で平板培養した。翌日CFUを数えた。
【0190】
結果:
(a)カルシウムナトリウム製剤(Ca2+:Na+、8:1モル比)は用量依存的に細菌負荷を減少させた
カルシウムナトリウム製剤の治療活性を、同一のモデルで、広い用量範囲にわたり評価した。噴霧投薬時間を一定に保持しつつ、相異なる濃度のCa2+:Na+およびしたがって相異なる張度からなる製剤を使用することにより、相異なる用量を送達した。8:1Ca2+:Na+製剤は細菌性負荷を用量依存的に減少させ、より低用量のカルシウムで最大の減少が観察された。(0.32mgのCa2+/kgの用量および0.5倍張度で約4倍の減少、および0.72mgのCa2+/kgの用量および1.0倍の張度で約5倍の減少(図10))。しかしながら、興味深いことには、これらの減少は、かなりより低用量で製剤Aに見られた減少と同程度であった。製剤Aの張度と同等である2倍張度製剤は、1.58mgのCa2+/kgの用量で投与した場合、細菌価を減少させることに比較的控え目な効果(約1.6倍の減少)が見られた。
【0191】
(b) より長い噴霧化によって用量を上げても、カルシウムナトリウム製剤の治療活性への有意な影響は見られなかった
図10は、カルシウムとナトリウムが8:1モル比のカルシウムナトリウム製剤が、1.58mg未満のCa2+/kgの用量で細菌感染症の重症度を低減したことを示す。特に、試験した製剤がすべて効果的だったが、最も高い治療活性を示したのは1倍製剤(約0.72mgCa2+/kg)であった。結果を図10に示した検討では、3分の投薬時間を試験した。用量の効果をさらに吟味するために、本発明者らは投薬の期間を延ばすことによりCa2+の用量範囲を試験した。異なる長さの時間(1.5分から12分)の間、Ca2+:Na+製剤(1倍張度=等張;8:1モル比)を用いて動物を処理した。それぞれ1.5、3、6および12分の投薬時間に対し、結果として0.36、0.72、1.44および2.88mgのCa2+/kgのCa2+用量となった。図11中に示すように、最小の投薬時間では対照動物(食塩水を3分投薬した)と比較して、細菌価の減少は観察されなかったが、3、6および12分投薬はそれぞれ、細菌価を統計的に有意なレベルに減少させた。
【0192】
実施例7:
マウスインフルエンザモデルのインフルエンザウイルスの感染力を減少させるカルシウムナトリウム製剤のインビボ治療活性
この実施例において、Ca2+:Na+比が8:1(モル:モル)の4種の液剤のインビボ治療活性をインフルエンザのマウスモデルを使用して試験した。製剤は等張性は高張性であった(等張液の張度に対し1倍、また2倍、4倍または8倍)。その処理はマウスのインフルエンザ感染症の臨床経過を改善することを示した。
【0193】
方法:
マウス(Balb/c)を、感染の3時間前から始めて、感染の3時間後に、次いで、毎日2回最大11日間、示した製剤で処理した。インフルエンザに感染させるために、マウスは、ケタミン/キシラジンを用いて軽く麻酔をかけ、ウイルス(インフルエンザA型/PR/8)の致死量を鼻腔内に送達した。この検討の主要評価指標は、感染後、動物が最大21日間生存することであった。動物体温および体重を検討の間じゅうモニターした。95°F未満の体温の動物は安楽死させた。
【0194】
結果
実施例3および6は、本明細書において記載されるカルシウムナトリウム製剤が、マウスモデルの細菌性肺炎およびフェレットモデルのインフルエンザを治療するのに効果的であることを実証した。細菌モデルにおいて、1倍製剤かつ1.5mgのCa2+/kg未満の用量が最も効果的であることが見出された。フェレットインフルエンザモデルにおいて、高用量であればあるほど感染経過を改善するのに効果的であった。そこで、本発明者らはインフルエンザのマウスモデルにおいて、8:1のCa2+:Na+モル比でそれぞれ1倍、2倍、4倍または8倍製剤の用量範囲を試験した。
【0195】
インフルエンザ感染へのカルシウムナトリウム製剤の効果を検討するために、生存率の検討を実施した。マウスに致死量のインフルエンザウイルスを用いて投与し、相異なる張度のカルシウムナトリウム製剤で処理した。各製剤の投薬時間は一定としたので、製剤の張度が増加するにつれて、カルシウムの用量は増加した。生理食塩水処理動物を対照として使用した。図12は、各群の生存データを経時的に示す。この検討において、対照動物の75%は、検討終了の21日目の前に死んだ。対照的に、4倍処理動物の50%、および8倍処理動物の42.9%が死に、4倍および8倍製剤を用いた処理が動物生存率を改善することを実証した。
【0196】
本明細書は、明細書中で引用された参考文献の教示に照らして最も完全に理解される。本明細書内の実施形態は、本発明の実施形態の例証を与え、本発明の範囲を限定するように解釈されるべきでない。当業者は、他の多くの実施形態が本発明によって包含されることを容易に認識する。この開示において引用された刊行物および特許はすべて、それらの全体が参照によって組み込まれる。参照によって組み込まれた内容がこの明細書を否定するか、または矛盾している程度によっては、本明細書はいかなるそのような内容にも取って代わる。任意の参考文献の引用は、本明細書においてそのような参考文献が本発明への先行技術であるということを承認するものではない。
【0197】
当業者は、単なるルーチン実験を用いて、本明細書において記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識するまたは確認することができよう。そのような等価物は、以下の実施形態によって包含されるように意図される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウム塩およびナトリウム塩を含み、Ca+2とNa+の比が約4:1(モル:モル)から約16:1(モル:モル)である医薬製剤。
【請求項2】
Ca+2対Na+の比が約4:1(モル:モル)である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
Ca+2対Na+の比が約5:1(モル:モル)である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項4】
Ca+2対Na+の比が約6:1(モル:モル)である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項5】
Ca+2対Na+の比が約7:1(モル:モル)である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項6】
Ca+2対Na+の比が約8:1(モル:モル)である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項7】
Ca+2対Na+の比が約9:1(モル:モル)である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項8】
Ca+2対Na+の比が約10:1(モル:モル)である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項9】
Ca+2対Na+の比が約11:1(モル:モル)である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項10】
Ca+2対Na+の比が約12:1(モル:モル)である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項11】
Ca+2対Na+の比が約13:1(モル:モル)である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項12】
Ca+2対Na+の比が約14:1(モル:モル)である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項13】
Ca+2対Na+の比が約15:1(モル:モル)である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項14】
Ca+2対Na+の比が約16:1(モル:モル)である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項15】
液剤である、請求項1−14のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項16】
Ca2+イオンが約0.115Mから約1.15Mの濃度で存在する、請求項15に記載の医薬製剤。
【請求項17】
Ca2+イオンが約0.575Mから約1.15Mの濃度で存在する、請求項15に記載の医薬製剤。
【請求項18】
Na+イオンが約0.053Mから約0.3Mの濃度で存在する、請求15−17のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項19】
Na+イオンが約0.075Mから約0.3Mの濃度で存在する、請求項15−17のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項20】
カルシウム塩が、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム、リン酸カルシウム、アルギン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ソルビン酸カルシウム、硫酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウムおよびクエン酸カルシウムからなる群から選択される、請求項15−19のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項21】
カルシウム塩が、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウムまたは硫酸カルシウムである、請求項20に記載の医薬製剤。
【請求項22】
カルシウム塩が塩化カルシウムまたは乳酸カルシウムである、請求項20に記載の医薬製剤。
【請求項23】
ナトリウム塩が、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムおよび乳酸ナトリウムからなる群から選択される、請求項15−22のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項24】
ナトリウム塩が塩化ナトリウムである、請求項23に記載の医薬製剤。
【請求項25】
ナトリウム塩が、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムまたは硫酸ナトリウムである、請求項23に記載の医薬製剤。
【請求項26】
乾燥粉末製剤である、請求項1−14および請求項16−25のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項27】
カルシウム塩が約19.5%(重量/重量)から約90%(重量/重量)の量で存在する、請求項26に記載の医薬製剤。
【請求項28】
カルシウム塩が、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム、リン酸カルシウム、アルギン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ソルビン酸カルシウム、硫酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウムおよびクエン酸カルシウムからなる群から選択される、請求項26または27に記載の医薬製剤。
【請求項29】
カルシウム塩が、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム、硫酸カルシウムまたは塩化カルシウムである、請求項28に記載の医薬製剤。
【請求項30】
ナトリウム塩が、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムおよび乳酸ナトリウムからなる群から選択される、請求項26−29のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項31】
ナトリウム塩が塩化ナトリウムである、請求項30に記載の医薬製剤。
【請求項32】
ナトリウム塩が、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムまたは硫酸ナトリウムである、請求項30に記載の医薬製剤。
【請求項33】
約10mg/kg体重/用量から約0.001mg/kg体重/用量のCa+2用量を気道に送達するために製剤化される、請求項1−32のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項34】
追加の治療剤をさらに含む、請求項1−33のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項35】
賦形剤をさらに含む、請求項1−34のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項36】
賦形剤が、ラクトース、グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン(isolucine)、トレハロース、ジパルミトイルホスホスファチジルコリン(DPPC)、ジホスファチジルグリセロール(DPPG)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−L−セリン(DPPS)、1,2−ジパルミトイル−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DSPE)、1−パルミトイル−2−オレオイルホスホスファチジルコリン(POPC)、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、トリオレイン酸ソルビタン(Span 85)、グリココール酸塩、サーファクチン、チロキサポール、リン酸ナトリウム、デキストラン、デキストリン、マンニトール、マルトデキストリン、ヒト血清アルブミン、組み換えヒト血清アルブミンおよび生分解性高分子からなる群から選択される、請求項35に記載の医薬製剤。
【請求項37】
賦形剤が、ロイシン、マルトデキストリンまたはマンニトールである、請求項36に記載の医薬製剤。
【請求項38】
医薬製剤が単位用量製剤である、請求項1−37のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項39】
気道感染症を有する、気道感染症の症候を示す、または気道感染症に罹る危険がある患者に、請求項1−38のいずれか一項に記載の有効量の医薬製剤を投与することを含む、気道感染症を治療する方法。
【請求項40】
気道感染症を有する、気道感染症の症候を示す、または気道感染症に罹る危険がある患者に、請求項1−38のいずれか一項に記載の有効量の医薬製剤を投与することを含む、気道感染症の伝播を低減する方法。
【請求項41】
気道感染症がインフルエンザである、請求項39または40に記載の方法。
【請求項42】
インフルエンザがインフルエンザウイルスA型またはインフルエンザウイルスB型によって引き起こされる、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
気道感染症がヒトパラインフルエンザウイルスによって引き起こされる、請求項39または40に記載の方法。
【請求項44】
ヒトパラインフルエンザウイルスがヒトパラインフルエンザウイルス3(hPIV−3)である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
気道感染症がライノウイルスによって引き起こされる、請求項39または40に記載の方法。
【請求項46】
気道感染症が呼吸器合胞体ウイルス(RSV)によって引き起こされる、請求項39または40に記載の方法。
【請求項47】
気道感染症が肺炎である、請求項39または40に記載の方法。
【請求項48】
肺炎が細菌性肺炎である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
細菌性肺炎が、S.ニューモニアエによって引き起こされる、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
肺疾患を有する、肺疾患の症候を示す、または肺疾患に罹りやすい個体に、請求項1−38のいずれか一項に記載の有効量の医薬製剤を投与することを含む、肺疾患を治療する方法。
【請求項51】
肺疾患の急性増悪を有する、肺疾患の急性増悪の症候を示す、または肺疾患の急性増悪に罹りやすい個体に、有効量の請求項1−38のいずれか一項に記載の医薬製剤を投与することを含む、肺疾患の急性増悪を治療する方法。
【請求項52】
肺疾患が、喘息、気道過敏性、季節性アレルギー性アレルギー、気管支拡張症、慢性気管支炎、肺気腫、慢性閉塞性肺疾患、または嚢胞性繊維症である、請求項50または51に記載の方法。
【請求項53】
慢性肺疾患の急性増悪が、ウイルス感染、細菌感染、真菌感染、寄生虫感染、環境性アレルゲン、または環境性刺激物によって引き起こされる、請求項52に記載の方法。
【請求項1】
カルシウム塩およびナトリウム塩を含み、Ca+2とNa+の比が約4:1(モル:モル)から約16:1(モル:モル)である医薬製剤。
【請求項2】
Ca+2対Na+の比が約4:1(モル:モル)である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
Ca+2対Na+の比が約5:1(モル:モル)である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項4】
Ca+2対Na+の比が約6:1(モル:モル)である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項5】
Ca+2対Na+の比が約7:1(モル:モル)である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項6】
Ca+2対Na+の比が約8:1(モル:モル)である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項7】
Ca+2対Na+の比が約9:1(モル:モル)である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項8】
Ca+2対Na+の比が約10:1(モル:モル)である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項9】
Ca+2対Na+の比が約11:1(モル:モル)である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項10】
Ca+2対Na+の比が約12:1(モル:モル)である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項11】
Ca+2対Na+の比が約13:1(モル:モル)である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項12】
Ca+2対Na+の比が約14:1(モル:モル)である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項13】
Ca+2対Na+の比が約15:1(モル:モル)である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項14】
Ca+2対Na+の比が約16:1(モル:モル)である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項15】
液剤である、請求項1−14のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項16】
Ca2+イオンが約0.115Mから約1.15Mの濃度で存在する、請求項15に記載の医薬製剤。
【請求項17】
Ca2+イオンが約0.575Mから約1.15Mの濃度で存在する、請求項15に記載の医薬製剤。
【請求項18】
Na+イオンが約0.053Mから約0.3Mの濃度で存在する、請求15−17のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項19】
Na+イオンが約0.075Mから約0.3Mの濃度で存在する、請求項15−17のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項20】
カルシウム塩が、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム、リン酸カルシウム、アルギン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ソルビン酸カルシウム、硫酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウムおよびクエン酸カルシウムからなる群から選択される、請求項15−19のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項21】
カルシウム塩が、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウムまたは硫酸カルシウムである、請求項20に記載の医薬製剤。
【請求項22】
カルシウム塩が塩化カルシウムまたは乳酸カルシウムである、請求項20に記載の医薬製剤。
【請求項23】
ナトリウム塩が、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムおよび乳酸ナトリウムからなる群から選択される、請求項15−22のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項24】
ナトリウム塩が塩化ナトリウムである、請求項23に記載の医薬製剤。
【請求項25】
ナトリウム塩が、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムまたは硫酸ナトリウムである、請求項23に記載の医薬製剤。
【請求項26】
乾燥粉末製剤である、請求項1−14および請求項16−25のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項27】
カルシウム塩が約19.5%(重量/重量)から約90%(重量/重量)の量で存在する、請求項26に記載の医薬製剤。
【請求項28】
カルシウム塩が、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム、リン酸カルシウム、アルギン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ソルビン酸カルシウム、硫酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウムおよびクエン酸カルシウムからなる群から選択される、請求項26または27に記載の医薬製剤。
【請求項29】
カルシウム塩が、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム、硫酸カルシウムまたは塩化カルシウムである、請求項28に記載の医薬製剤。
【請求項30】
ナトリウム塩が、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムおよび乳酸ナトリウムからなる群から選択される、請求項26−29のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項31】
ナトリウム塩が塩化ナトリウムである、請求項30に記載の医薬製剤。
【請求項32】
ナトリウム塩が、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムまたは硫酸ナトリウムである、請求項30に記載の医薬製剤。
【請求項33】
約10mg/kg体重/用量から約0.001mg/kg体重/用量のCa+2用量を気道に送達するために製剤化される、請求項1−32のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項34】
追加の治療剤をさらに含む、請求項1−33のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項35】
賦形剤をさらに含む、請求項1−34のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項36】
賦形剤が、ラクトース、グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン(isolucine)、トレハロース、ジパルミトイルホスホスファチジルコリン(DPPC)、ジホスファチジルグリセロール(DPPG)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−L−セリン(DPPS)、1,2−ジパルミトイル−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DSPE)、1−パルミトイル−2−オレオイルホスホスファチジルコリン(POPC)、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、トリオレイン酸ソルビタン(Span 85)、グリココール酸塩、サーファクチン、チロキサポール、リン酸ナトリウム、デキストラン、デキストリン、マンニトール、マルトデキストリン、ヒト血清アルブミン、組み換えヒト血清アルブミンおよび生分解性高分子からなる群から選択される、請求項35に記載の医薬製剤。
【請求項37】
賦形剤が、ロイシン、マルトデキストリンまたはマンニトールである、請求項36に記載の医薬製剤。
【請求項38】
医薬製剤が単位用量製剤である、請求項1−37のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項39】
気道感染症を有する、気道感染症の症候を示す、または気道感染症に罹る危険がある患者に、請求項1−38のいずれか一項に記載の有効量の医薬製剤を投与することを含む、気道感染症を治療する方法。
【請求項40】
気道感染症を有する、気道感染症の症候を示す、または気道感染症に罹る危険がある患者に、請求項1−38のいずれか一項に記載の有効量の医薬製剤を投与することを含む、気道感染症の伝播を低減する方法。
【請求項41】
気道感染症がインフルエンザである、請求項39または40に記載の方法。
【請求項42】
インフルエンザがインフルエンザウイルスA型またはインフルエンザウイルスB型によって引き起こされる、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
気道感染症がヒトパラインフルエンザウイルスによって引き起こされる、請求項39または40に記載の方法。
【請求項44】
ヒトパラインフルエンザウイルスがヒトパラインフルエンザウイルス3(hPIV−3)である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
気道感染症がライノウイルスによって引き起こされる、請求項39または40に記載の方法。
【請求項46】
気道感染症が呼吸器合胞体ウイルス(RSV)によって引き起こされる、請求項39または40に記載の方法。
【請求項47】
気道感染症が肺炎である、請求項39または40に記載の方法。
【請求項48】
肺炎が細菌性肺炎である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
細菌性肺炎が、S.ニューモニアエによって引き起こされる、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
肺疾患を有する、肺疾患の症候を示す、または肺疾患に罹りやすい個体に、請求項1−38のいずれか一項に記載の有効量の医薬製剤を投与することを含む、肺疾患を治療する方法。
【請求項51】
肺疾患の急性増悪を有する、肺疾患の急性増悪の症候を示す、または肺疾患の急性増悪に罹りやすい個体に、有効量の請求項1−38のいずれか一項に記載の医薬製剤を投与することを含む、肺疾患の急性増悪を治療する方法。
【請求項52】
肺疾患が、喘息、気道過敏性、季節性アレルギー性アレルギー、気管支拡張症、慢性気管支炎、肺気腫、慢性閉塞性肺疾患、または嚢胞性繊維症である、請求項50または51に記載の方法。
【請求項53】
慢性肺疾患の急性増悪が、ウイルス感染、細菌感染、真菌感染、寄生虫感染、環境性アレルゲン、または環境性刺激物によって引き起こされる、請求項52に記載の方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2012−522011(P2012−522011A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502304(P2012−502304)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/028906
【国際公開番号】WO2010/111644
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(511229455)パルマトリックス,インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/028906
【国際公開番号】WO2010/111644
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(511229455)パルマトリックス,インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
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