説明

気道異物除去剤及び気道異物除去用組成物

【課題】ウイルスや、ほこり、雑菌、花粉等のアレルゲン等の異物に対して、粘膜繊毛運動を活性化させ、これらの異物を除去する気道異物除去剤及び気道異物除去用組成物を提供する。
【解決手段】2−トリデセン−1−オール、テトラハイドロゲラニオール、デュピカル、イソシクレモン、シトラールジメチルアセタール、アセトフェノン、カルボン、ヘキシルシクロペンタノン、メントフラン、ブルボーネン、β−メチル−デカラクトン、ムスコン、イソオイゲノール、γ−ドデカラクトン又はγ−ヘキサデカラクトンからなる気道異物除去剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気道異物除去剤及び気道異物に対する除去用組成物に関するものである。より詳細には、ウイルス、ほこり、雑菌、花粉等のアレルゲン等の異物に対して、粘膜繊毛運動を活性化させ、これらの異物を除去する気道異物除去剤及び気道異物除去用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
風邪等の感染症や花粉症等のアレルギー疾患は、外部からの異物侵入によって生じるが、こうした侵入した異物を気道から除去する役割を、粘膜繊毛運動が担っている。すなわち、気道粘膜の表面に分泌される粘液のゲル層に捕捉された異物は、その下側の粘液ゾル層内で毎分900〜1000回の鞭打ち運動する繊毛により、粘液と共に喉頭方向へ輸送され、痰として口腔外へ、あるいは、食道へと排出される。この異物が輸送される速度は、繊毛運動の鞭打ち運動の周波数(CBF)が高いほど速い。例えば、交感神経β受容体刺激薬はCBFを上昇させる薬剤であるが、CBFを上昇させることにより粘膜繊毛運動による移送を促進する(非特許文献1参照)。ところが、エアコン空調による室内空気の乾燥化及び冬季の室内外大気の温度低下によって、繊毛運動が低下する。また、ディーゼル排気等が繊毛運動の低下した状態を加速化する。このことから、粘膜繊毛運動を活性化させ、簡便に気道に付着した異物を除去することができ、感染症、花粉症、アレルギーから身体を保護する技術が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2001−526635号公報
【特許文献2】特表2001−505553号公報
【特許文献3】特表2000−512289号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】玉置淳、呼吸器科、11(6):587−594、2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、ウイルス、ほこり、雑菌、花粉等のアレルゲン等の異物に対して、粘膜繊毛運動を活性化させ、これらの異物を除去する気道異物除去剤及び気道異物除去用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、特定の成分が、ウイルス、ほこり、雑菌、花粉等のアレルゲン等の異物に対して、粘膜繊毛運動を活性化させ、これらの異物を除去する顕著な効果を有することを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0007】
従って、本発明は下記気道異物除去剤及び気道異物除去用組成物を提供する。
[1].2−トリデセン−1−オール、テトラハイドロゲラニオール、デュピカル、イソシクレモン、シトラールジメチルアセタール、アセトフェノン、カルボン、ヘキシルシクロペンタノン、メントフラン、ブルボーネン、β−メチル−デカラクトン、ムスコン、イソオイゲノール、γ−ドデカラクトン又はγ−ヘキサデカラクトンからなる気道異物除去剤。
[2].2−トリデセン−1−オール、デュピカル、イソシクレモン、ヘキシルシクロペンタノン又はブルボーネンからなる気道異物除去剤。
[3].2−トリデセン−1−オール、テトラハイドロゲラニオール、デュピカル、イソシクレモン、シトラールジメチルアセタール、アセトフェノン、カルボン、ヘキシルシクロペンタノン、メントフラン、ブルボーネン、β−メチル−デカラクトン、ムスコン、イソオイゲノール、γ−ドデカラクトン又はγ−ヘキサデカラクトンを有効成分として含有する気道異物除去用組成物。
[4].2−トリデセン−1−オール、デュピカル、イソシクレモン、ヘキシルシクロペンタノン又はブルボーネンを有効成分として含有する気道異物除去用組成物。
[5].浸透圧が308mOsM未満である[3]又は[4]記載の気道異物除去用組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ウイルス、ほこり、雑菌、花粉等のアレルゲン等の異物に対して、粘膜繊毛運動を活性化させ、これらの異物を簡便に除去する気道異物除去剤及び気道異物除去用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の気道異物除去剤は、2−トリデセン−1−オール、テトラハイドロゲラニオール、デュピカル、イソシクレモン、シトラールジメチルアセタール、アセトフェノン、カルボン、ヘキシルシクロペンタノン、メントフラン、ブルボーネン、β−メチル−デカラクトン、ムスコン、イソオイゲノール、γ−ドデカラクトン又はγ−ヘキサデカラクトンからなるものである。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。この中でも、2−トリデセン−1−オール、デュピカル、イソシクレモン、ヘキシルシクロペンタノン、ブルボーネンが好ましい。本発明は、上記成分を粘膜繊毛運動活性化用途に用いるものである。これらは、後述する試験例で示されたように、現在一般に風邪薬等に配合されている去痰剤(l−メントール、キキョウ、キョウニン、カンゾウ等)より作用の強い粘膜繊毛運動活性効果を示すものである。
【0010】
本発明の気道異物除去剤は下記成分からなるものである。
(1)2−トリデセン−1−オール(CASNo.68480−25−1、別名:トリデカ−2−エン−1−オール、トリデセノール、トリデセニルアルコール)。
(2)テトラハイドロゲラニオール(CASNo.106−21−8、別名:テトラヒドロゲラニオール、ジヒドロシトロネロール、3,7−dimethyl−1−octanol)。
(3)デュピカル(CASNo.30168−23−1、別名:デュピカール、ドゥピカル、ドゥピカール、(4−(tricyclo[5,2,1,0]−decylidene−8)butanal)。
(4)イソシクレモン(CASNo.54464−57−2、別名:イソサイクレモン、イソEスーパー、1−(tetramethyl−hexahydronaphthalen−2−yl)ethanone)。
(5)シトラールジメチルアセタール(CASNo.7549−37−3、別名:geranial dimethyl acetal、(2E)−1,1−dimethoxy−3,7−dimethylocta−2,6−diene)。
(6)アセトフェノン(CASNo.98−86−2、別名:メチルフェニルケトン、1−Phenylethanone、Acetylbenzene)。
(7)カルボン(CASNo.6485−40−1、別名:l−カルボン、カルボール、2−methyl−5−prop−1−en−2−ylcyclohex−2−en−1−one)。
(8)ヘキシルシクロペンタノン(CASNo.13074−65−2、別名:2−hexylcyclopentan−1−one)。
(9)メントフラン(CASNo.494−90−6、別名:メンソフラン、3,9−epoxy−p−Mentha−3,8−diene、3,6−dimethyl−4,5,6,7−tetrahydro−1−benzofuran)。
(10)ブルボーネン(CASNo.5208−59−3、別名:β−ブルボネン、β−ブルボーネン)。
(11)β−メチル−デカラクトン(CASNo.7011−83−8、別名:β−メチル−γ−デカラクトン、5−hexyl−4−methyloxolan−2−one、5−hexyl−4−methyldihydro−2(3H)−furanone)。
(12)ムスコン(CASNo.541−91−3、別名:3−methylcyclopentadecan−1−one)。
(13)イソオイゲノール(CASNo.97−54−1、別名:2−methoxy−4−[(E)−prop−1−enyl]phenol)。
(14)γ−ドデカラクトン(CASNo.2305−05−7、別名:4−ドデカノライド)。
(15)γ−ヘキサデカラクトン(CASNo.730−46−1、別名:4−ヘキサデカノライド)。
【0011】
一般に、鼻、喉といった気道の粘膜は常に外気に接していることから、いろいろなトラブルのリスクに曝されている。気道異物除去剤は、ウイルスや、ほこり、雑菌、花粉等のアレルゲン等の異物に対して、粘膜繊毛運動を活性化させて異物を除去する。粘膜繊毛運動活性化効果は、繊毛を含む気道粘膜層を用いた培養系での繊毛運動周波数(CBF値)において、例えば、生理食塩水、浸透圧200mOsMの塩化ナトリウム溶液等に対し、これに試料を添加したものが、繊毛運動活性が向上することにより確認することができる。本発明の上記特定の成分が、いかなる作用機序で粘膜繊毛運動を活性化させ、気道異物の除去効果を示すかは明確ではないが、気道リスクの低減効果に対して有効である。
【0012】
上記繊毛を含む気道粘膜層を用いた培養系での繊毛運動周波数(CBF値)とは、後述の試験例において示すように、ウサギから摘出、調製した粘膜層を10質量%子牛血清、ペニシリン、ストレプトマイシンを含むダルベッコイーグルMEM(シグマ社製D6046)で培養し、この培養物の繊毛部分を顕微鏡観察し、その画像情報の輝度変化を数値データとして保存した後、フーリエ変換することで繊毛の運動周波数(CBF値)を解析し、算出したものである。
【0013】
気道異物除去剤の処理量は、気道異物除去剤の有効量であり適宜選定される。例えば、1回の処理量は通常0.1〜10mgであり、1日1〜5回である。処理の方法としては、気道異物除去剤を気道へ導入し、気道に接触できればよい。
【0014】
2−トリデセン−1−オール、テトラハイドロゲラニオール、デュピカル、イソシクレモン、シトラールジメチルアセタール、アセトフェノン、カルボン、ヘキシルシクロペンタノン、メントフラン、ブルボーネン、β−メチル−デカラクトン、ムスコン、イソオイゲノール、γ−ドデカラクトン又はγ−ヘキサデカラクトンは、粘膜繊毛運動活性化効果を有することから、粘膜繊毛運動活性化剤として用いることもできる。また、2−トリデセン−1−オール、テトラハイドロゲラニオール、デュピカル、イソシクレモン、シトラールジメチルアセタール、アセトフェノン、カルボン、ヘキシルシクロペンタノン、メントフラン、ブルボーネン、β−メチル−デカラクトン、ムスコン、イソオイゲノール、γ−ドデカラクトン又はγ−ヘキサデカラクトンを配合してなる気道異物除去用組成物とすることができる。
【0015】
気道異物除去用組成物としては、医薬品、化粧品、食品、日用品等の広範囲な分野の製剤が挙げられ、具体的には、鼻・喉洗浄剤(うがい薬)、点鼻薬、点喉薬等が挙げられる。特に本発明の成分は揮発性成分であることから、肌等に塗布し、呼吸することにより気道に導入される揮発性製剤、上記成分を含む水溶液を蒸気にして鼻・喉から吸引する蒸気吸引性製剤とすることもできる。また、キャンディー、グミ、飲料水等の食品、上記成分を含浸させたマスク、ティッシュ、手袋等の日用品とすることもできる。
【0016】
また、2−トリデセン−1−オール、テトラハイドロゲラニオール、デュピカル、イソシクレモン、シトラールジメチルアセタール、アセトフェノン、カルボン、ヘキシルシクロペンタノン、メントフラン、ブルボーネン、β−メチル−デカラクトン、ムスコン、イソオイゲノール、γ−ドデカラクトン又はγ−ヘキサデカラクトンを含有し、粘膜繊毛運動活性化作用を有するもので、気道異物除去のために用いられるものである旨の表示を付した医薬品、化粧品、食品又は日用品とすることもできる。なお、本発明において、気道とは、鼻から鼻腔、鼻咽腔、咽頭及び喉頭等の上気道、ならびに肺側の気管、気管支等の下気道をいう。
【0017】
上記成分の気道異物除去用組成物中の配合濃度は特に限定されるものではなく、製剤の設計に影響がなければ任意の濃度の配合が可能であるが、気道異物の除去効果の点から、粘膜に直接適用する液体製剤の場合では、0.0001〜0.1質量%が好ましく、0.001〜0.05質量%がより好ましい。成分を気化させて吸入して作用させる場合には、揮発させる空間の体積や揮発させる手段にもよるが、製剤中に0.001〜10質量%、あるいは気相中に0.001〜100ppm(体積)となることが好ましく、0.005〜100ppmがより好ましく、0.01〜50ppmがより好ましく、0.1〜10ppmが特に好ましい。成分濃度が高すぎると、臭いを不快に感じて使用感が損なわれるおそれがある。
【0018】
気道異物除去用組成物が液体水溶液の場合、気道異物の除去効果の点から低張液であることが好ましい。低張液とは、生理食塩水の浸透圧である308mOsM未満(溶質濃度(電解質の場合イオン濃度が308mM未満)の水溶液であり、浸透圧150〜270mOsMがより好ましい。溶質としては、無機塩類、有機塩類、アミノ酸、糖類、アルコール類等、水溶性物質であれば限定されないが、無機塩類、単糖類、多価アルコール類が好適に利用できる。なお、浸透圧は、上記溶質量を調整することにより、調整することができ、凝固点降下法の原理に基づく浸透圧計測装置による値である。
【0019】
本発明の気道異物除去用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、既知の薬効成分や通常製剤に配合される任意成分を必要に応じて適宜配合することができ、これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて、適量用いることができる。これらの成分としては、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤、油分、アルコール類、ポリオール類、殺菌剤、抗炎症剤、鎮咳去痰薬、鎮痛剤、保湿剤、増粘剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、pH調整剤、香料、色素、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、糖類、ビタミン類、アミノ酸類、生薬類、水等が挙げられる。
【実施例】
【0020】
以下、試験例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0021】
[試験例1]
[繊毛運動機能評価試験]
(1)被検液の調製:
コントロール溶液:塩化ナトリウム溶液を用い、浸透圧200mOsMの水溶液を調製した。
被検液:コントロール溶液0.99gに対し、あるいは他の水溶性溶質を用いて調製した浸透圧200mOsMの水溶液0.99gに対し、試験物質を0.1質量%含有するエタノール溶液0.01gを添加して被検液(試験物質濃度は0.001質量%)とした。なお、植物抽出エキスの場合(比較例3〜5)、エタノールの代わりに水を用い同様に調製した。植物抽出エキスは、各植物粉末を50体積%エタノールにて3回抽出し、3回分の抽出液をまとめて濃縮乾固した。
【0022】
(2)粘膜片調製
ウサギ(NZW、16−21週齢、オス)から摘出した気管を生理食塩水中でシート状に切り開き、ピンセットを用いて粘膜片を剥離した。得られた粘膜片を、メスを用いて適度な大きさに細片化し、10質量%子牛血清、ペニシリン、ストレプトマイシンを含むダルベッコイーグルMEM(シグマ社製:D6046)の中に入れ、5体積%炭酸ガス条件にて、37℃でインキュベートした。
【0023】
(3)繊毛運動解析:
粘膜片を35mmシャーレに移し、生理食塩水(イオン濃度308mM)中に30℃のステージ上で約10分馴化させた。その後、20倍の対物レンズを用いた透過型倒立顕微鏡(オリンパスIX70)にて繊毛部分を観察し、アクアコスモス(浜松ホトニクス製)を用いて一定区画の画像情報を70Hz程度の頻度で連続的にコンピューターに取り込んだ。すなわちアクアコスモス(浜松ホトニクス製)は、カメラ(C−4742−95(浜松ホトニクス製))をオリンパスIX70に取り付けたものであり、以下の設定で観察した。
露光時間:0.0005〜0.001秒
ゲイン:255(最大)
サブアレイ:64×64(最小)
サブアレイ内ビニング:1×1
サンプリング間隔:0.014sec(約71Hz)
サンプリング数:1024(約15秒間)
周波数解析用ROI:25ヵ所(サイズ:3×3pixel)
1024点の画像情報の輝度変化を数値データとして保存した後、フーリエ変換することで繊毛の運動周波数(CBF値)を測定した。まずコントロール溶液にて測定し(コントロールCBF)、続いて被検液に交換し、10分間静置した後、同様にCBFを測定した(被検液CBF)。
【0024】
(4)繊毛運動活性比の算出
コントロールCBFに対する被検液CBFの比率を繊毛運動活性比(繊毛運動活性比=被検液CBF/コントロールCBF)とした。得られた繊毛運動活性比を表中に示す。
【0025】
【表1】

【0026】
[試験例2]
[繊毛運動機能評価試験(揮発性)]
試験例1(2)と同様に粘膜片調製を行なった。
得られた前培養した粘膜片を6穴培養皿の連続する2つのウェルの片側に入れ、気相と粘膜片が接するように量を調整しながら、10質量%子牛血清、ペニシリン、ストレプトマイシンを含むダルベッコイーグルMEM(シグマ社製:D6046)を加え密封し、30℃で10分程度馴化させた。6穴培養皿のウェルのうち、空の4つのウェルはポリエチレンフィルムで蓋をした。その後、試験例1(3)と同様の方法で繊毛の運動周波数(CBF値)を測定した(試験物質滴下前のCBF)。続いて、粘膜片の隣のウェルに、密封状態のまま試験物質をエタノールに1質量%(2−トリデセン−1−オールに関しては、0.0001〜10質量%)溶解させた溶液を50mg滴下した。試験物質を気化させ、粘膜片を入れたウェルまで充満させた。本試験例における培養皿内の空間体積は、約50mLであることから、エタノールに溶解した試験物質がすべて気化した場合の濃度は、例えばエタノールに1質量%溶解した場合には10ppmである。15分後、同様に繊毛の運動周波数(CBF値)を測定した(試験物質滴下後のCBF)。
試験物質を滴下する前のCBF値に対する滴下後のCBFの比率を繊毛運動活性比(揮発)とした。結果を表2に示す。
繊毛運動活性比(揮発)=試験物質滴下後のCBF/試験物質滴下前のCBF
【0027】
【表2】

【0028】
上記結果からも明らかであるように、本発明の成分は揮発によっても繊毛運動活性効果が確認された。
【0029】
以下に、本発明の気道異物除去剤を配合した実施例39(点鼻薬)、40(うがい薬)を示す。いずれも繊毛運動活性化効果が確認された。
【0030】
【表3】

【0031】
【表4】

【0032】
[試験例3]
[繊毛運動機能評価試験(薄葉紙)]
実施例41、ならびに比較例14及び15について、下記試験を行った。
試験例1(2)と同様に粘膜片調製を行なった。
6穴培養皿の連続する2つのウェルの片側に培地(10質量%子牛血清、ペニシリン、ストレプトマイシンを含むダルベッコイーグルMEM(シグマ社製:D6046))2mLと、カルチャーインサート(FALCON 353090)をセットし、前培養した粘膜片を入れ、カルチャーインサートのメンブレンを介して培地と粘膜片が接し、上部の気相と粘膜片が接する条件で培養した。30℃で10分間程度馴化させた後、試験例1(3)と同様の方法で繊毛の運動周波数(CBF値)を測定した(薄葉紙設置前のCBF)。続いて、6穴培養皿の蓋を開け、粘膜片の隣のウェルに、2−トリデセン−1−オールを0.1質量%含浸させた薄葉紙(スコッティフェイシャルティッシュ、日本製紙クレシア(株)製、20cm×20cm、1枚(0.93g))を入れた後、速やかに6穴培養皿の蓋を閉めた。30分後、同様に繊毛の運動周波数(CBF値)を測定した(薄葉紙設置後のCBF)。薄葉紙設置前のCBFに対する設置後のCBFの比率を繊毛運動活性化比(薄葉紙)とした。結果を表5に示す。
繊毛運動活性化比(薄葉紙)=薄葉紙設置後のCBF/薄葉紙設置前のCBF
【0033】
【表5】

【0034】
表5からも明らかなように、本発明の成分を含浸させたティッシュを、粘膜片の隣のウェルに設置することにより、ティッシュからの揮発によって、粘膜片の繊毛運動の活性化効果が確認された。
【0035】
[実施例42]
上記知見を元に、表6に示す組成の薄葉紙処理剤を調製した。未処理のティッシュペーパー(基紙)に対して20質量%となるように均一にスプレー塗布し、温度25℃、湿度65%RHの恒温恒湿室内で24時間放置して、気道異物除去剤を配合した薄葉紙を得た。
【0036】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2−トリデセン−1−オール、テトラハイドロゲラニオール、デュピカル、イソシクレモン、シトラールジメチルアセタール、アセトフェノン、カルボン、ヘキシルシクロペンタノン、メントフラン、ブルボーネン、β−メチル−デカラクトン、ムスコン、イソオイゲノール、γ−ドデカラクトン又はγ−ヘキサデカラクトンからなる気道異物除去剤。
【請求項2】
2−トリデセン−1−オール、デュピカル、イソシクレモン、ヘキシルシクロペンタノン又はブルボーネンからなる気道異物除去剤。
【請求項3】
2−トリデセン−1−オール、テトラハイドロゲラニオール、デュピカル、イソシクレモン、シトラールジメチルアセタール、アセトフェノン、カルボン、ヘキシルシクロペンタノン、メントフラン、ブルボーネン、β−メチル−デカラクトン、ムスコン、イソオイゲノール、γ−ドデカラクトン又はγ−ヘキサデカラクトンを有効成分として含有する気道異物除去用組成物。
【請求項4】
2−トリデセン−1−オール、デュピカル、イソシクレモン、ヘキシルシクロペンタノン又はブルボーネンを有効成分として含有する気道異物除去用組成物。
【請求項5】
浸透圧が308mOsM未満である請求項3又は4記載の気道異物除去用組成物。

【公開番号】特開2010−260855(P2010−260855A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88433(P2010−88433)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】