説明

水に浸漬される前の溶解に対し耐性を有する水溶性基材

水溶性基材、より具体的には溶解に対し耐性がある水溶性基材、及びその製造方法が開示される。この水溶性基材は第1と第2の表面を有する。水不溶性の粒子は前記第1及び第2の表面の少なくとも1つに塗布され、部分的に埋め込まれ、それにより前記第1及び/又は第2の表面に突出部を形成する。突出部は10ナノメートル〜100マイクロメートルの平均高さ、及び前記突出部の隣接ピーク間の平均距離が10ナノメートル〜200マイクロメートルである。水溶性基材で製造された、パウチなどの物品もまた、本明細書に開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水溶性基材に関し、より具体的には水に浸漬される前の溶解に対し改良された耐性を有する水溶性基材に関し、及びそれを製造する方法に関する。本発明はまた、その水溶性基材で製造される、パウチなどの物品にも関する。
【背景技術】
【0002】
水溶性基材は包装材料としての使用に対して幅広い支持を得ている。包装材料には、フィルム、シート、吹き込み又は成形中空体(即ち、サッシェ、パウチ、及びタブレット)、瓶、容器などが挙げられる。水溶性基材をサッシェ及びパウチなどの特定のタイプのこれら物品の調製に使用すると、少量の水や高湿度に曝露した場合、漏洩及び/又はベタツキの発生が多い。これらを、組成物を中に入れて包装及び充填に使用することは不適切になる可能性がある。
【0003】
水溶性パウチに対する最も一般的な消費者の不満は、パウチが偶然少量の水に曝露された時の、例えば、濡れた手、高湿度、保存中の水漏れする流し台又はパイプなどから、パウチが販売され及び購入後に保存される外部包装内部に水が入る時の、望ましくないパウチの溶解に関連する。これにより、水溶性パウチは、使用前に漏れたり、及び/又は互いに粘着する場合がある。2番目に多いよくある不満は、使用の際に水溶性パウチが完全に溶解しないことである。このように水溶性基材、及びサッシェやパウチのようなそれらの基材から製造された物品で、少量の水の曝露に対する改善された溶解耐性を有し、それにもかかわらず、その後のすすぎ水及び/又は洗浄水などの水溶液に浸漬された時に非常に素早く溶解できる物品に関して未達成の需要が依然として存在する。
【0004】
水溶性基材の溶解を遅延させる様々な方法が当業界において既知であり、典型的には水不溶性である材料で水溶性基材をコーティングすることを含む。例えば、米国特許第6,509,072号は、バリアコーティングを有する水溶性基材を記載している。バリアコーティングは、水溶性基材の上に連続フィルムを形成するポリマーフィルムである。
【0005】
これらのコーティングされた水溶性基材が包装材料として使用するために加工される場合、これらは典型的には延伸される。特定の分野では、基材は200%以上までに延伸される可能性がある。これによりコーティングは破断され、従って水が水溶性基材の表面と接触することが可能になり、上記の問題に至る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、水に浸漬される前の溶解に対し改善された耐性を有する水溶性基材を提供することであり、これらの基材は延伸されてパウチ及びサッシェなどの物品に成形された場合でさえも、それにもかかわらず、その後に、すすぎ水や洗浄水などの水溶液に浸漬された時に非常に素早く溶解できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1の表面及び前記第1の表面の反対側の第2の表面を有し、前記第1及び第2の表面の少なくとも1つに塗布された水不溶性粒子を有し、前記水不溶性粒子は前記水溶性基材の中に部分的に埋め込まれ前記第1又は第2の表面に突出部を形成している、水溶性基材に関する。前記突出部は10ナノメートル〜100マイクロメートルの平均高さを有し、前記突出部の隣接ピーク間の平均距離は10ナノメートル〜200マイクロメートルである。
【0008】
本発明はまた、この水溶性基材を含む物品、及びその水溶性基材を製造する方法にも関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は水溶性基材に関し、より具体的には水に浸漬される前の溶解に対し改良された耐性を有する水溶性基材、及びそれを製造する方法に関する。本発明はまた、本明細書に記載される水溶性基材を含む物品に関する。
【0010】
水溶性基材
図1は水溶性基材10に断面図を示す。水溶性基材10は、第1の表面12、第1の表面の反対側の第2の表面14、及び第1の基材12と第2の基材14との間の厚さ16を有する。水溶性基材10は、フィルム、シート又は発泡体の形態であることができ、織布及び不織布の構造を包含する。
【0011】
水溶性基材はポリマー材料で製造され、本明細書において後に述べる20ミクロンの最大孔径を有するガラスフィルタを使用する方法で測定した時に、少なくとも50重量%の水溶解度を有する。好ましくは基材の水溶解度は少なくとも75重量%であり、又はさらに好ましくは少なくとも95重量%である。
【0012】
基材材料50グラム±0.1グラムが事前秤量した400mLビーカーに添加され、25℃の蒸留水245mL±1mLが添加される。これは、600rpmに設定された磁性攪拌器で、30分間激しく攪拌される。次に混合物は、以上に定義されたような孔径(最大20ミクロン)を有する折り畳み定性焼結ガラスフィルターを通して濾過される。収集されたろ液からいずれかの従来の方法によって水が蒸発され、残存する材料の重量が測定される(それは溶解された画分である)。次いで溶解度%が計算できる。
【0013】
典型的には、水溶性基材10は平方メートル当たり0.33グラム〜1,667グラム、好ましくは平方メートル当たり33グラム〜167グラムの坪量を有する。第1の表面12と第2の表面14との間の水溶性基材10の厚さは、約0.75マイクロメートル〜約1,250マイクロメートル、好ましくは約10マイクロメートル〜約250マイクロメートル、より好ましくは約25マイクロメートル〜125マイクロメートルの範囲にあることができる。
【0014】
基材材料で用いるのに好適な好ましいポリマー、コポリマー又はこれらの誘導体は、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレンオキシド、アクリルアミド、アクリル酸、セルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、セルロースアミド、ポリビニルアセテート、ポリカルボン酸及び塩、ポリアミノ酸又はペプチド、ポリアミド、ポリアクリルアミド、マレイン酸/アクリル酸のコポリマー、デンプン及びゼラチンを含む多糖、キサンタム及びカラガム(carragum)のような天然ゴム、ポリクリレート及び水溶性アクリレートコポリマー、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストリン、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マルトデキストリン、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコールコポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC),並びにこれらの混合物、から選択される。最も好ましいポリマーはポリビニルアルコールである。好ましくは、基材中のポリマーのレベルは少なくとも60%である。
【0015】
市販の水溶性フィルムの例は、クリス−クラフト・インダストリアル・プロダクツ(Chris-Craft Industrial Products){米国インディアナ州ゲーリー(Gary)}から販売されている、商品照会名モノゾル(Monosol)M8630として知られるPVAフィルム、及び対応する溶解度及び変形特質のPVAフィルムである。本明細書で用いるのに好適な他のフィルムとしては、アイセロ(Aicello)により供給される商品照会名PTフィルム若しくはフィルムのK−シリーズとして既知のフィルム、又はクラレ(Kuraray)により供給されるVF−HPフィルムとして既知のフィルムが挙げられる。
【0016】
水不溶性粒子
図2に示されるように、水不溶性の粒子20は、第1又は第2表面12、14の少なくとも1つに適用され、水溶性基材10の中に部分的に埋め込まれる。「水不溶性材料」により、前記した方法によって測定された時に、50重量%未満の溶解度を有する材料が意味される。好ましくは水不溶性材料は40重量%未満、より好ましくは30重量%未満、並びに最も好ましくは10重量%未満の溶解度を有する。
【0017】
図3に示されるように、粒子20は水溶性基材10の中に部分的に埋め込まれ、粒子20は前記第1及び/又は第2の表面の上に突出部30を形成する。粒子はこのように、水溶性基材の中に完全に埋め込まれない。突出部は10ナノメートル〜100マイクロメートルの平均高さ31を有し、前記突出部の隣接ピーク33間の平均距離32は10ナノメートル〜200マイクロメートルである。
【0018】
粒子は球形、円形であってよく、又は不規則形状を有してもよい。便宜的に、粒子は図中で球形粒子として示される。突出部のピークは、その突出部の上で決定できる単一の最高点である。最高の点が平坦部である場合には平坦部の中心がピークであると見なされる。突出部が同じ高さを有する2つ以上のピークを有する場合には、それらのピークの間で中央にあるピークがピークであると見なされる。突出部の高さは、突出部のピークと、突出部が形成される水溶性基材の表面との間の距離である。突出部のピーク及び高さは当該技術分野において周知の、例えば走査電子顕微鏡(「SEM」)のような、従来の顕微鏡技術によって測定できる。
【0019】
突出部の平均高さ31は、好ましくは10ナノメートル〜50マイクロメートル、より好ましくは50ナノメートル〜3マイクロメートル、さらに好ましくは100ナノメートル〜2マイクロメートルである。突出部の隣接ピーク33の間の平均距離32は、好ましくは10ナノメートル〜100マイクロメートル、より好ましくは100ナノメートル〜10マイクロメートル、さらに好ましくは200ナノメートル〜2マイクロメートルである。
【0020】
粒子20が水不溶性であること、及び形成された突出部30が上記の特性を有するという事実によって、水溶性基材のモルホロジーが変化され、ハスの葉(leafs of the lotus-flower)の撥水性に類似した独特な特性が基材にもたらされる。このことはまた、当業界ではロータス(登録商標)効果として知られる。突出部30は、偶然的な水滴が水溶性基材の表面に到達できないことを確実にし、これにより基材の溶解に対し耐性が増加される。本発明のコーティングは水溶性基材10の表面12、14の全体を被覆しないため、より少ないコーティング材料が使用されるので、従来技術のコーティングよりも安価である追加的利益がもたらされる。
【0021】
水不溶性粒子20は、好ましくは0.001マイクロメートル〜1マイクロメートル、より好ましくは0.01マイクロメートル〜0.1マイクロメートルの平均粒径のナノサイズ範囲である。ナノサイズ粒子による水溶性基材10のコーティングは、コーティングが透明であるという利点をさらにもたらし、これは審美的に好まれる。
【0022】
好ましい粒子20は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリウレタン及び/又はその架橋生成物、ポリ(メタ)クリル酸ナトリウム、ポリ(メタ)クリル酸エステル及び/又はその架橋生成物、エチレンゴム、プロピレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、シリコーンゴムなどのようなゴム及び/又はその架橋生成物、などのような合成材料で製造される粒子などのポリマー粒子である。他の好ましい粒子はガラスビーズである。最も好ましい粒子は、ポリエチレン系ナノ粒子、ポリプロピレン系ナノ粒子、ワックス系ナノ粒子、シリコーン系ナノ粒子、又はポリテトラフルオロエチレン系ナノ粒子である。
【0023】
水溶性基材10を含む、パウチのような物品を製造する場合、基材10は典型的には延伸される。基材10の特定の領域では、基材10は200%以上までにも伸長されてもよい。従来技術のコーティングであれば、これによりコーティングの破断が引き起こされる可能性があり、従って水が水溶性基材の表面に接触できるようになる。本発明のコーティングであれば、その基材撥水性を変化させること無しに少なくとも200%まで伸長されてもよく、延伸によって破断しがちな従来技術のコーティングを上回る改善がもたらされる。
【0024】
しかし、本発明による水溶性基材が水に浸漬されると(即ち、基材が設計された使用用途で、溶解することが必要とされる用途において)、そのコーティングは水接触に対して十分な耐性はなく、基材が急速に溶解することを確実にする。
【0025】
任意成分
特定の用途では、基材の溶解速度(浸漬された時)が増加されることが求められる場合がある。水溶性基材10が水に浸漬される時の溶解を早める目的で、崩壊剤は、粒子が塗布される表面と反対側の水溶性基材10の表面へ適用されてもよく、又は水溶性基材10の中へ一体化して適用されてもよく、又はそれらのいずれかの組み合わせが適用されてもよい。崩壊剤が存在する場合、その濃度は前記水溶性基材の重量で、0.1〜30%、好ましくは1〜15%である。当該技術分野において既知の任意の好適な崩壊剤が使用できる。本明細書に用いるのに好ましい崩壊剤としては、トウモロコシ/ジャガイモデンプン、メチルセルロース/セルロース、鉱物質粘土粉末、クロスカルメロース(架橋セルロース)、クロスポビドン(crospovidine)(架橋ポリマー)、グリコール酸ナトリウムデンプン(架橋デンプン)が挙げられる。
【0026】
水溶性基材を形成する組成物及びそれらから形成される水溶性基材10はまた、1つ以上の添加剤又は補助成分を含むことができる。例えば、水溶性基材を形成する組成物及び水溶性基材10には、可塑剤、潤滑剤、離型剤、充填剤、増量剤、ブロッキング防止剤、粘着性除去剤、消泡剤、又はその他の機能性成分が含まれてよい。洗浄用組成物を含有する物品の場合には、後者には、洗浄水に送達されるための機能的洗剤添加物、例えば有機ポリマー分散剤、又は他の洗剤添加物を挙げてもよいが、これらに限定されない。
【0027】
好適な可塑剤には、グリセロール、グリセリン、ジグリセリン、ヒドロキシプロピルグリセリン、ソルビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ポリエーテルポリオール、エタノールアミン、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。可塑剤は、水溶性基材10の中に、約5重量%〜約30重量%の範囲、又は約12重量%〜約20重量%の範囲の量などの任意の好適な量で組み込まれることができる。
【0028】
好適な界面活性剤には、非イオン性、カチオン性、アニオン性、及び双極性の部類を挙げてもよい。好適な界面活性剤には、ポリオキシエチレン化ポリオキシプロピレングリコール、アルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、第三級アセチレングリコール及びアルカノールアミド(非イオン性物質)、ポリオキシエチレン化アミン、第四級アンモニウム塩、及び四級化されたポリオキシエチレン化アミン(カチオン性物質)、及びアミンオキシド、N−アルキルベタイン及びスルホベタイン(双極性物質)が挙げられるが、これらに限定されない。界面活性剤は、水溶性基材10の中に、約0.01重量%〜約1重量%の範囲、又は約0.1重量%〜約0.6重量%の範囲の量などの任意の好適な量で組み込まれることができる。
【0029】
好適な潤滑剤/離型剤には、脂肪酸及びそれらの塩、脂肪族アルコール、脂肪酸エステル、脂肪族アミン、脂肪族アミンアセテート、及び脂肪酸アミドが挙げられるが、これらに限定されない。潤滑剤/離型剤は、水溶性基材10の中に、約0.02重量%〜約1.5重量%の範囲、又は約0.04重量%〜約0.15重量%の範囲の量などの任意の好適な量で組み込まれることができる。
【0030】
好適な充填剤、増量剤、粘着防止剤、粘着性除去剤には、デンプン、加工デンプン、架橋ポリビニルピロリドン、架橋セルロース、微結晶セルロース、シリカ、金属酸化物、炭酸カルシウム、タルク及び雲母が挙げられるが、これらに限定されない。充填剤、増量剤、消泡剤、粘着性除去剤は、水溶性基材10の中に、約0.1重量%〜約25重量%の範囲、好ましくは約1重量%〜約15重量%の範囲の量などの任意の好適な量で存在できる。デンプンが無い場合には、充填剤、増量剤、ブロッキング防止剤、粘着性除去剤は、約1重量%〜約5重量%の範囲で存在することが望ましいことがある。
【0031】
好適な消泡剤には、ポリジメチルシロキサン及び炭化水素のブレンドに基づくものが挙げられるが、これに限定されない。消泡剤は、水溶性基材10の中に、約0.001重量%〜約0.5重量%の範囲、好ましくは約0.01重量%〜約0.1重量%の範囲の量などの任意の好適な量で存在できる。
【0032】
水溶性基材組成物は材料を混合し、温度を約21℃(約70°F)から約90℃(195°F)まで昇温しながら溶液が完成するまで攪拌することによって調製される。基材形成する組成物は任意の形態に製造でき(例えば、フィルム又はシート)、続いて任意の好適な製品(例えば、単一又は複数区画のパウチ、サッシェ、バッグなど)に成形できる。
【0033】
水溶性基材の製造方法
この方法は、前もって成形された水溶性基材10を提供すること、及び前もって成形された水溶性基材10の表面12、14の少なくとも1つに水不溶性粒子20を塗布すること、を含む。水不溶性粒子20は、多数の異なった方法で前もって成形された水溶性基材10に塗布できる。
【0034】
1つの非限定の実施形態では、水不溶性粒子20は、前もって成形された水溶性基材10の表面12、14の少なくとも1つに、粉末の形態で噴射によって塗布される。噴射の高速度ゆえに、粉末は基材の中に埋め込まれる。この実施形態ではまた、水不溶性粒子20を前もって成形された水溶性基材10に塗布する前に、水溶性基材10の表面12、14の少なくとも1つの少なくとも一部分に最初の湿潤処理工程を含んでもよい。水溶性基材10の表面12、14の少なくとも1つにおける湿潤処理は、基材10の表面12、14の外側部分を少なくとも部分的に(即ち、基材の厚さの中への工程の一部を)溶解又は可溶化するために使用されてよい。水溶性基材10は、そのコーティングを基材の中に部分的に埋め込むために任意の好適な深さに、少なくとも部分的に可溶化されてよい。好適な深さとしては、それらに限定されないが、基材16の全体厚さの、約1%〜約40%又は約45%、約1%〜約30%、約1%〜約20%、約1%〜約15%、及び或いは、約1%〜約10%、が挙げられる。次いで、水不溶性粒子20は、基材10の表面12、14の少なくとも1つの部分的に溶解された箇所に塗布される。これにより、水不溶性粒子20が基材10の表面12、14の外側部分の中へ埋め込まれること、及び、基材10のより永続的な部分となることが確保される。中に水不溶性粒子20を埋め込んである基材10の湿潤処理された表面12、14は、次に乾燥される。本方法のこのような実施形態はまた、水溶性基材10が乾燥された後のその表面に残存する、より少ない水溶性材料のあらゆるほぐれたもの又は過剰のものの少なくとも一部を取り除く工程、例えば、基材10の表面のふき取り又は除粉を含んでもよい。
【0035】
本方法の別の、非限定的であるが、より好ましい実施形態では、水不溶性粒子20は、その粒子を含む溶液の形態で提供され、その溶液は水溶性基材10の表面12、14の少なくとも1つの上に塗布され、そして乾燥されるか、又は乾燥処理を受ける。その溶液は、水不溶性粒子20と湿潤処理できるキャリア(例えば、水)とを含み、従って、上記のように、水溶性基材10の表面12、14の少なくとも1つにおいて部分的溶解又は可溶化できる。溶液は、スプレー、ナイフ、ロッド、キス、スロット、塗装、印刷及びこれらの混合などのあらゆるコーティング方法によってフィルム上に塗布することができる。印刷は、本明細書に用いるのに好ましい。印刷は、よく確立された経済的な方法である。印刷は通常、インクと染料で行われ、基材に模様と色を付与するために使用されるが、本発明の場合では、印刷は水溶性基材の上により少ない水溶性の材料を付着させるために使用される。輪転グラビア、石版印刷、フレキソ印刷、多孔印刷及びスクリーン印刷、インクジェット印刷、凸版印刷、タンポグラフィ及びこれらの組み合わせなどの、任意の種類の印刷方法も使用できる。
【0036】
本方法の別の非制限的実施形態では、粒子20は、上記の任意の方法によって第1シリーズの粒子を塗布し、続いて上記の方法によって第2の、及び所望によりさらなるシリーズの粒子を塗布することを含む多段塗布工程で塗布される。
【0037】
水溶性パウチを製造する方法
本明細書に記載の水溶性基材10は、水溶性基材10が包装材料に使用されるものなどの物品に成形できるが、これらには限定されない。そのような物品には、水溶性パウチ、水溶性サッシェ、及びその他の容器が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
本明細書に記載の水溶性基材10を組み入れた水溶性パウチ及びその他のそのような容器は、当該技術分野において既知の任意の好適な方式で製造できる。水溶性基材10は、それを最終製品に成形する前又は後のどちらにでも溶解に対する改善された耐性を備えることができる。いずれにしても、特定の実施形態では、そのような物品を製造する場合、粒子が配置された、基材10の表面12、14が物品の外表面を形成することが望ましい。
【0039】
水溶性パウチを製造するための多くのプロセスが存在する。これらには、垂直型充填シールプロセス、水平型充填シールプロセス、及び円形ドラム表面上の金型中でのパウチ成形として当該技術分野において既知のプロセスが挙げられるが、これらに限定されない。垂直型充填シールプロセスでは、垂直な管が基材の折り畳みによって形成される。管の底末端部がシールされて、開放型パウチが成形される。このパウチは、部分的に充填されて、ヘッドスペースを可能にする。開放型パウチの最上部は、その後共にシールされてパウチを閉じ、次の開放型パウチを成形する。第1のパウチがその後切り取られ、及びプロセスが繰り返される。こうしたやり方で成形されたパウチは、通常はピロー形状を有する。水平型充填シールプロセスは、一連の金型をその中に有するダイを用いる。水平型充填シールプロセスでは、基材はダイに設置され、これらの金型の中で開放型パウチが成形され、次いで充填され、基材の別の層で被覆されシールされることが可能である。第3のプロセス(円形ドラムの表面上の金型内でパウチを成形)では、基材はドラムを覆って循環され、ポケットが形成され、充填機の下を通過して開放型ポケットを充填する。充填及びシールは、ドラムにより描かれる円の最高点(最上部)において行われ、例えば典型的には、充填は回転ドラムが下向きの円運動を始める直前に行われ、シールはドラムがその下向きの運動を始めた直後に行われる。
【0040】
開放型パウチの成形工程を伴ういずれの方法でも、基材は最初に熱成形、真空成形又はその両方を使用して開放型パウチの形状に金型成形又は成形されることができる。熱成形は、金型に発熱体を接触させること、又は熱い空気を吹き込むことにより、又は金型及び/若しくは基材を加熱するために加熱ランプを用いることによるなど、いずれかの既知方法で熱を適用することによって、金型及び/又は基材を加熱することを伴う。真空成形では、真空は基材を金型に送ることを支援するために採用される。他の実施形態では、この2つの技法は組み合わされてパウチを成形でき、例えば、基材は真空成形によって開放型パウチに成形されることができ、熱が加工を促進するために提供され得る。開放型パウチは、次にその中に収容されるべき組成物により充填される。
【0041】
充填された開放型パウチは次に閉鎖されるが、これはいかなる方法によっても行うことができる。一部の場合では、水平式パウチ成形プロセスでのように、閉鎖は、水溶性基材のような第2の材料又は基材を開放型パウチのウェブの一面及び上に連続的に供給し、次いで第1の基材と第2の基材を一緒にシールすることによって実行される。第2の材料又は基材は本明細書に記載の水溶性基材10を含むことができる。粒子が塗布される第2基材の表面は、その表面がパウチの外側面を形成するように配向されることが望ましいであろう。
【0042】
そのような方法では、第1及び第2の基材は、典型的には金型の間、従って隣接する金型の中で成形されるパウチの間の領域においてシールされる。シーリングは、いかなる方法によっても行うことができる。シールの方法には、ヒートシーリング、溶解溶接、及び溶解シーリング又は湿潤処理シーリングが挙げられる。シールされたパウチのウェブは次に切断装置により切断されることができ、この切断装置は、ウェブ中のパウチを、別個のパウチに互いに切り離す。水溶性パウチを形成するプロセスは、米国特許出願第09/994,533号、公報番号(Publication No.)US2002/0169092A1号{カトリン(Catlin)らの名前により公開}にさらに記載されている。
【0043】
製造品
図4に示されるように、本発明は、製品組成物40と、製品組成物を保持するためのパウチ、サッシェ、カプセル、バッグ等のような容器50に成形されてもよい水溶性基材10とを含む物品も含む。水不溶性粒子(表示せず)が塗布されている水溶性基材10の表面は、容器30の外側表面を形成するように使用できる。水溶性基材10は、1回用量の製品組成物40を提供する容器30の少なくとも一部分を形成できる。
【0044】
本明細書における論議はまた他の種類の容器にも当てはまることは理解されるべきであるが、簡単にするため、本明細書において関心のある物品は、水溶性パウチに関して記載される。
【0045】
前述の方法で成形されたパウチ50は、水溶性パウチ30を水中に浸漬することなどによって、水溶性パウチ50から組成物40の放出が所望されるようになるまで、その中に収容された組成物40を保持するのに好適ないかなる形態及び形状であることもできる。パウチ50は、1区画、又は2つ以上の区画を含むことができる(即ち、パウチは多区画パウチであることができる)。1つの実施形態では、水溶性パウチ50は、ほぼ重ねておかれる関係にある2つ以上の区画を有してよく、並びにパウチ50は、上方及び下方のほぼ反対側の外壁、パウチ50の側壁を形成するスカート状側壁、並びに異なる区画を互いに分離する1つ以上の内部隔壁を含む。パウチ50に収容される組成物40が異なる形態又は成分を含む場合、組成物40の異なる成分は水溶性パウチ50の異なる区画に収容されてもよく、水溶性材料の障壁によって互いから分離されてもよい。
【0046】
本パウチ又は他の容器50は、1回用量の1つ以上の組成物40を、洗濯洗剤組成物、自動食器洗浄用洗剤組成物、硬質表面クリーナー、しみ抜き剤、布地強化剤及び/若しくは布地柔軟剤、食品及び飲料、並びに少量の水との接触が早すぎるパウチの溶解、望ましくないパウチ漏洩、及び/若しくは望ましくないパウチとパウチの粘着を生み出す可能性がある新製品形態において、又はこれらとして、使用するために収容できる。パウチ50の中の組成物40は、液体、リキゲル、ゲル、ペースト、クリーム、固形物、顆粒、粉末などが挙げられるが、これらに限定されない、いかなる好適な形態であることもできる。多区画パウチ50の異なる区画は、適合性のない成分を分離するために使用できる。例えば、漂白剤と酵素を別の区画内に分離することは望ましい場合がある。多区画の実施形態の他の形態には、液体含有区画と組み合わされた粉末含有区画を挙げてもよい。多区画水溶性パウチの追加の実施例は、米国特許第6,670,314B2号{スミス(Smith)ら}に開示される。
【0047】
水溶性パウチ50は、任意の好適な水溶液(熱い又は冷たい水など)の中に投入されてもよく、すぐに水溶性パウチ50を形成する水溶性フィルム10が溶解してパウチの内容物を放出する。
【0048】
本明細書に記載される水溶性基材10はまた、コーティング製品及び他の物品に使用できる。そのような製品の非限定的な例は、洗濯洗剤タブレット又は自動食器洗浄用洗剤タブレットである。他の例には、少量の水との接触が早すぎるパウチの溶解、望ましくない漏洩及び/又は望ましくない粘着を生み出す可能性がある食品及び飲料分類製品におけるコーティング製品が挙げられる。
【実施例】
【0049】
商標名ナノフロン(NanoFlon)W50Cでシャムロックテクノロジー社(Shamrock Technologies){ニュージャージー州、ニューアーク(Newark)}から供給される、ナノサイズ(約0.1ミクロンサイズ)PTFEコーティング材を水に分散し(15%ナノフロンW50C、85%水)、モノゾル社(Monosol)から供給される標準的な0.08mm(3ミル)ポリビニルアルコール系水溶性基材に印刷した。ナノ粒子は入射光を屈折させないのに十分なほど小さく、従ってコーティングした水溶性基材は未コーティングの水溶性基材(完全に透明、ヘイズ性なし)と同じ外観を有する。
【0050】
液滴試験方法
基材が偶然的な水接触に対して耐性であるか否かを判定するために液滴試験方法が開発されている。この試験では、パウチ{約5.1cm×5.1cm(2インチ×2インチ)}が空洞に成形され、室温の水0.2mLがパウチの成形された側に添加される。そのフィルムが空洞成形時に薄型にされるため、成形された側は、この試験では応力がかかった事例である。水がパウチに接触すると同時にストップウォッチをスタートし、パウチ本体に有意なフィルム変形が観察される時間を記録する。この時間は「変形までの時間」と呼ばれ、フィルム破壊の前兆である。
【0051】
【表1】

【0052】
重要なことには、疎水性ナノサイズ材料は極度に低い濃度(0.2g/m2)でコーティングされ、総合的なフィルム溶解性{全体浸漬試験(full bath test)}に影響を及ぼさない。非常に低濃度であっても、ナノサイズの特質によって、曝露される表面積は非常に大きい。
【0053】
全体溶解性(全体浸漬)
フィルムを23℃の攪拌された水浴に浸漬し、フィルムが完全に溶解(目視で)するまでの時間を記録する。
【0054】
【表2】

【0055】
本明細書に開示されている寸法及び値は、列挙した正確な数値に厳しく制限されるものとして理解するべきではない。それよりむしろ、特に規定がない限り、こうした各寸法は、列挙された値とその値周辺の機能的に同等の範囲の両方を意味することが意図される。例えば、「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】非コートの水溶性基材の断面図。
【図2】水不溶性粒子が塗布され、部分的に基材に埋め込まれた、本発明による水溶性基材の断面図。
【図3】水不溶性粒子が塗布され、部分的に基材に埋め込まれた、本発明による水溶性基材の断面図。
【図4】本発明による水溶性基材からなる物品の断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面(12)及び前記第1の表面(12)の反対側の第2の表面(14)を有するとともに、前記第1又は第2の表面(12,14)の少なくとも1つに塗布された水不溶性粒子(20)を有する水溶性基材(10)であって、前記水不溶性粒子(20)は、前記水溶性基材(10)に部分的に埋め込まれるとともに前記第1及び/又は第2の表面(12,14)上に突出部(30)を形成し、前記突出部(30)は、10ナノメートル〜100マイクロメートルの平均高さ(31)を有し、前記突出部(30)の隣接したピーク(33)間の平均距離(32)が10ナノメートル〜200マイクロメートルであることを特徴とする、水溶性基材(10)。
【請求項2】
前記突出部(30)の前記平均高さ(31)が、10ナノメートル〜50マイクロメートル、好ましくは50ナノメートル〜3マイクロメートルである、請求項1に記載の水溶性基材(10)。
【請求項3】
前記突出部(30)の隣接したピーク(33)間の平均距離(32)が、10ナノメートル〜100マイクロメートル、好ましくは100ナノメートル〜10マイクロメートルである、請求項1又は2に記載の水溶性基材(30)。
【請求項4】
前記水不溶性粒子(20)が、0.001〜1マイクロメートルの平均直径を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の水溶性基材(10)。
【請求項5】
前記水不溶性粒子(20)がポリマー粒子を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の水溶性基材(10)。
【請求項6】
前記水不溶性粒子(20)が、ポリエチレン粒子、ポリプロピレン粒子、ワックス粒子、シリコ−ン粒子、ポリテトラフルオロエチレン粒子、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の水溶性基材(10)。
【請求項7】
塗布された前記水不溶性粒子(20)を有する前記第1及び/又は第2の表面(12,14)の少なくとも1つが、物品(50)の外側表面を形成する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の水溶性基材(10)を含む物品(50)。
【請求項8】
前記水溶性基材(10)が、製品組成物を含む容器の少なくとも一部分を形成する、請求項7に記載の物品(50)。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の水溶性基材(10)を製造するための方法であって、前記水溶性基材(10)が前記第1の表面(12)及び前記第2の表面(14)を有し、前記方法は、前記水不溶性粒子(20)を前記水溶性基材(10)の中に部分的に埋め込み、それにより前記第1又は第2の表面(12,14)に突出部(30)を形成させる工程を含み、前記突出部(30)が10ナノメートル〜100マイクロメートルの平均高さ(31)を有し、前記突出部(30)の隣接したピーク(33)間の平均距離(32)が10ナノメートル〜200マイクロメートルであることを特徴とする方法。
【請求項10】
前記粒子(20)が、粉末の形態であり、噴射によって前記第1又は第2の表面(12,14)の前記少なくとも1つに塗布される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が、前記水不溶性粒子(20)を塗布する前に前記水溶性基材(10)の前記表面(12,14)の少なくとも1つの少なくとも一部分を湿潤させる工程を最初に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記粒子が、前記粒子(20)と、前記水溶性基材(10)の前記表面(12,14)の少なくとも1つの少なくとも一部分を湿潤可能なキャリアとを含む溶液を使用して塗布される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記溶液が、前記水溶性基材(10)の前記表面(12,14)の前記少なくとも1つの上に印刷される、請求項12に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−541102(P2009−541102A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517589(P2009−517589)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際出願番号】PCT/IB2007/052646
【国際公開番号】WO2008/004198
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】