説明

水クラスタ、水クラスタを含む製品、およびその製造方法

しっかりと安定した水クラスタを含む製品であって、しっかりと安定した水クラスタは、イオンの内部電界による電気双極子相互作用によって互いに連結された複数の水分子を含み、複数の水分子は永久電気双極子モーメントを含み、しっかりと安定した水クラスタを取り囲む電界が存在する製品が提供される。製品を製造する方法であって、しっかりと安定した水クラスタを形成するべく、物質を希釈水である一定の品質の水で複数回希釈する段階を備え、しっかりと安定した水クラスタは、イオンの内部電界による電気双極子相互作用によって互いに連結された複数の水分子を含み、複数の水分子は永久電気双極子モーメントを含み、しっかりと安定した水クラスタを取り囲む電界が存在する方法も提供され、生成されるしっかりと安定した水クラスタは、更なる材料とともに利用されることで最終製品を生成することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水クラスタ、および、水クラスタを含む製品に係る。さらには水クラスタ、および、水クラスタを含む製品の製造方法に係る。
【背景技術】
【0002】
従来、水クラスタおよびその製造方法および利用方法に関する先行技術が存在する。
【0003】
例えば、1997年ワールドサイエンティフィック、B.Bonavita、S.Y.Loにより編集された安定した水クラスタの物理的、化学的、および生物学的特性に関する第一回国際会議議事録、米国特許第5,800,576号明細書、5,997,590号明細書、米国特許出願公開第2006/0110418号明細書、国際特許公開第WO2009/04912号パンフレット、米国特許出願公開第2005/0270896号明細書、米国特許第6,487,994号明細書、および、米国特許出願公開第2004/0025416号明細書に開示されている。
【0004】
公知の水クラスタおよび水クラスタを含む製品には改良の余地があると考えられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的の1つは、向上した水クラスタ、水クラスタを含む製品、および、その製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下から明らかになるこれら目的およびその他の目的を達成するべく、本発明の1つの特徴は、簡潔にいうと、しっかりと安定した水クラスタを含む製品であって、しっかりと安定した水クラスタは、イオンの内部電界による電気双極子相互作用によって互いに連結された複数の水分子を含み、複数の水分子は永久電気双極子モーメントを含み、しっかりと安定した水クラスタを取り囲む電界が存在する製品である。
【0007】
しっかりと安定した水クラスタは、ナノメートルのサイズである。しっかりと安定した水クラスタは、通常の室温および大気圧において安定している。
【0008】
本発明においては、しっかりと安定した水クラスタを含有する水を含む製品が提供される。製品は、しっかりと安定した水クラスタを含む石油成分を含んでよく、石油成分は、ガス、ディーゼル、および天然ガスからなる群から選択された成分であってよい。製品は、しっかりと安定した水クラスタが含まれるスキンケア成分を含んでよい。
【0009】
本発明においては、製品は、しっかりと安定した水クラスタが含まれる健康効果を生じる成分を含んでよく、健康効果を生じる成分は、ビタミン、ミネラル、ホルモン、およびエキスからなる群から選択された成分であってよい。製品は、しっかりと安定した水クラスタを含む小さな水滴が懸濁しているエマルションの形態のしっかりと安定した水クラスタを含む更なる成分を含んでよい。
【0010】
しっかりと安定した水クラスタは、リング形状の構造を有してよく、リング形状の構造は、5角形、6角形、および矩形からなる群から選択されてよい。しっかりと安定した水クラスタの複数のリング形状の構造が接合されて、しっかりと安定した水クラスタのより大きな構造が形成されてよい。しっかりと安定した水クラスタは、二重螺旋形状に構成されてよい。
【0011】
製品を製造する方法であって、しっかりと安定した水クラスタが形成されるまで、物質を希釈水である一定の品質の水で複数回希釈する段階を備え、しっかりと安定した水クラスタは、イオンの内部電界による電気双極子相互作用によって互いに連結された複数の水分子を含み、複数の水分子は永久電気双極子モーメントを含み、しっかりと安定した水クラスタを取り囲む電界が存在する方法が提供される。
【0012】
希釈する段階で利用される水の水質は、16−20MΩ・cmの範囲であってよい。COを含まない雰囲気において希釈されてよい。COを含まない雰囲気としてアルゴンを利用して、希釈をアルゴンガスが充填されたチャンバ内で行うこともできる。
【0013】
材料として水に溶解した塩化ナトリウムを利用してよい。通常の雰囲気に比べて正のアルゴン圧を提供するために、希釈中にコンテナにアルゴンを流入させ、コンテナからアルゴンを流出させてよい。ベンチュリ・チューブによるベンチュリ効果によって物質をコンテナ内に吸引させてよい。
【0014】
しっかりと安定した水クラスタの製造を強化する第2の材料を溶液に導入してよい。方法では、第2の材料のコロイド状の懸濁液を準備してよく、これを利用して、取り囲んでいる水分子と安定した水クラスタとを付着させて、電荷スポットを生じさせ、新たな安定した水クラスタを成長させ、且つ、第1の材料により既に生成されている安定した水クラスタをより大きく成長させることができる。
【0015】
更なる材料を加えたしっかりと安定した水クラスタを利用して製品を生成してよい。更なる材料は、ガソリン、ディーゼル、天然ガス、ジェット燃料、重油、および石炭からなる群から選択されてよい。製油所、発電所、および製造所からなる群から選択された、石油由来製品を製造する処理施設で利用してもよい。コークス化の低減に利用することもできる。しっかりと安定した水クラスタを有するスキンケア製品を生成するためのスキンケア材料であってもよい。健康製品を生成するための、健康目的で医療される材料であってもよい。ビタミン、ミネラル、ホルモン、エキス、および医薬品からなる群から選択された健康材料であってもよい。
【0016】
窒素肥料を製造する工業処理で利用される更なる材料にしっかりと安定した水クラスタの溶液を導入してもよい。工業処理にしっかりと安定した水クラスタの溶液を導入して、工業処理における、液体、含有液体、化学製品、および炭化水素からなる群から選択された材料の粘度を増加させることもできる。さらに、繊維材料に導入して、繊維を変更または補強することもできる。鉛酸バッテリの材料に導入して、鉛酸バッテリの機能および寿命を向上させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】しっかりと安定した水クラスタの原子間力顕微鏡写真である。
【図2】しっかりと安定した水クラスタの原子間力顕微鏡写真である。
【図3】しっかりと安定した水クラスタを製造するデバイスの概略図である。
【図4】しっかりと安定した水クラスタを製造するための、乾燥塩化ナトリウム溶液からの残留物の原子間力顕微鏡写真である。
【図5】しっかりと安定した水クラスタを製造するための、乾燥塩化ナトリウム溶液からの残留物の原子間力顕微鏡写真である。
【図6】しっかりと安定した水クラスタを製造するための、乾燥塩化ナトリウム溶液からの残留物の原子間力顕微鏡写真である。
【図7】しっかりと安定した水クラスタを製造するための、乾燥塩化ナトリウム溶液からの残留物の原子間力顕微鏡写真である。
【図8】しっかりと安定した水クラスタの小規模製造デバイスの概略図である。
【図9】しっかりと安定した水クラスタを製造するための、別の実施形態における残留物の原子間力顕微鏡写真である。
【図10】しっかりと安定した水クラスタを製造するための、別の実施形態における残留物の原子間力顕微鏡写真である。
【図11】しっかりと安定した水クラスタに基づき石油燃料を触媒と混合する処理の概略図である。
【図12】しっかりと安定した水クラスタに基づき石油燃料を触媒と混合する処理の概略図である。
【図13】塩化ナトリウムの結晶の顕微鏡写真である。
【図14】異なる構造のしっかりと安定した水クラスタの原子間力顕微鏡写真である。
【図15】異なる構造のしっかりと安定した水クラスタの原子間力顕微鏡写真である。
【図16】異なる構造のしっかりと安定した水クラスタの原子間力顕微鏡写真である。
【図17】しっかりと安定した水クラスタの様々な形状を示す。
【図18】しっかりと安定した水クラスタの様々な形状を示す。
【図19】しっかりと安定した水クラスタの様々な形状を示す。
【図20】しっかりと安定した水クラスタの様々な形状を示す。
【図21】二重螺旋構造のDNAの写真である。
【図22】二重螺旋構造のしっかりと安定した水クラスタの原子顕微鏡写真である。
【図23】二重螺旋構造のしっかりと安定した水クラスタの原子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
水クラスタを含む新たな製品、新たなしっかりと安定した水クラスタ、およびこれらを含む製品について、以下で詳述する。
【0019】
通常の水は、水分子からなるクラスタを含むことが分かっている。これら可変の水分子は、熱エネルギーによって水素結合がランダムに破壊された後で再結合することから、フリッカ水クラスタと称されることが多い。本発明は、安定した電界を周囲に持つ、固定された数の水分子からなる、しっかりと安定した水クラスタに係る。
【0020】
本発明では、しっかりと安定した水クラスタを、超純水で可溶性物質を希釈することにより製造することができる。
【0021】
これら固体/安定した/水/クラスタのサイズは、数十ナノメートルから数ミクロンまでの範囲である。これらは、永久電気/双極子/モーメントを有する。これらを取り囲む強力な電界が存在する。
【0022】
図1は、電界を、同じ顕微鏡の電気力モードを利用して撮影した対応する写真(図2)から明示的に計測した、しっかりと安定した水クラスタの原子間力顕微鏡写真のタッピングを示す。サンプルは、高次の熱分解黒鉛に対してしっかりと安定した水クラスタを多数含む超純水からなる。原子間力顕微鏡写真は、走査デバイスの第1パスが物理的に接触しているが、第2のパスでは、先端が表面の上の100ナノメートル離れた位置に保持されており、1ボルトのバイアスを走査先端に印加することで、先端がしっかりと安定した水クラスタの電界により作動(effect)された際に、電気力モード写真を生成する、というタッピングモードで撮影されたものである。
【0023】
最大のしっかりと安定した水クラスタは、ミクロンオーダのサイズであり、数十から数百ナノメートルの範囲のサイズであるより小さいしっかりと安定した水クラスタの組み合わせからなる。これらしっかりと安定した水クラスタのあるサイズにおける分布がこの図に示されている。この、しっかりと安定した水クラスタを含む超純水においては、Lighthouse Model L−S60 Liquid Samplerを利用して、0.1、0.5、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、および0.5ミクロンという各サイズのクラスタを示す。

【0024】
最小のしっかりと安定した水クラスタはナノメートル単位なので、従来利用されてきたエマルション製品とは異なっている。
【0025】
これらしっかりと安定した水クラスタを取り囲む強力な電界により、化学反応速度が増すので、触媒として利用することができる。
【0026】
油と水は自然に混合することができないことが公知である。油と水を安定した製品として結合させる方法は、超音波または激しい振動により乳化させる方法、または化学的結合剤を添加する方法、またはこれらの組み合わせによるもの等、いくつかある。
【0027】
しかし、これらのしっかりと安定した水クラスタを、全ての種類の燃焼エンジンに供給する燃焼性燃料に導入する方法については現実的には問題がある。つまり、最良の触媒効果を得るためには、しっかりと安定した水クラスタを、より小さい成分に分割する必要がある。本明細書が提案するナノ技術による乳化方法では、結合剤および燃焼促進剤等の化学物質の添加なしに、ナノサイズのしっかりと安定した水クラスタを直接、ディーゼル、ガソリン、ジェット燃料等の全石油ベースの燃料に直接懸濁させる。
【0028】
水/クラスタは、ナノ・エマルションを有する石油燃料の一部として生成されておらず、しっかりと安定した水クラスタを含む水3ppm以下が必要とされる。
【0029】
図3は、実際の製造デバイスを示す。1つのタンクが供給であり、ディーゼルが配置される。垂直超音波シャフトによりポンプで処理タンクに供給されて、ナノ・エマルションを生成する。
【0030】
従って、燃料に対する添加物としては、水分子から形成されるしっかりと安定した水クラスタを含む溶液が利用される。この溶液は、サブミクロンのサイズの小さい水滴が懸濁されている特殊なエマルションである。このエマルションは、しっかりと安定した水クラスタを含む水と、ディーゼル燃料、ガソリン、およびジェット燃料等の石油製品とを、超音波デバイスを利用して激しく振動させることにより生成される。このエマルションは、トラック、車両、船舶、飛行機、機関車、または発電所に設けられる燃焼エンジンの燃料(ガソリン、ディーゼル、天然ガス)に添加される。
【0031】
本発明におけるスキンケア製品には、本発明のしっかりと安定した水クラスタを含む溶液が含まれている。溶液は、他の非水溶性液体に、しっかりと安定した水クラスタを含む小さな水滴が懸濁されているエマルションであってよい。この非水溶性液体は、油およびクリームからなる群から選択された液体であってよい。
【0032】
上述したスキンケア製品には化学物質が添加されていてよい。また、本発明におけるスキンケア製品には、化学物質が添加されていなくてもよい。スキン製品のエマルションは、しっかりと安定した水クラスタを含む水を激しく振動させることにより生成されたエマルションであってよく、ここで水滴はサブミクロンのサイズであってよい。
【0033】
本発明によるスキンケア製品は、健康効果を持つ材料を含むこともできる。材料には、ビタミン、ミネラル、ホルモン、天然ハーブエキス等が含まれてよい。
【0034】
本発明における食品には、発明品であるしっかりと安定した水クラスタが含まれる。溶液は、他の非水溶性液体に、しっかりと安定した水クラスタを含む小さな水滴が懸濁されているエマルションであってよい。食品には添加物が含まれていても、いなくてもよい。水滴はサブミクロンのサイズであってよい。上述したエマルションは、しっかりと安定した水クラスタを含む水を激しく振動させることにより生成されてよい。
【0035】
しっかりと安定した水クラスタおよび対応する食品原料を利用することにより、いくつもの食品を生成することができる。発明品であるしっかりと安定した水クラスタを含む飲用水または非飲用水も生成することができる。
【0036】
しっかりと安定した水クラスタは、有機および/または無機材料を超純水で希釈することで製造することができる。安定した水クラスタを形成するには、無機材料を一定の希釈液に希釈する必要がある。さらに、大量の安定した水クラスタを得るには、18.2MΩ・cmの水質の水を、希釈水として利用する必要がある。超純水産業では、水を18.2MΩ・cmの比抵抗にまで精製するための機器が利用可能である。
【0037】
最大品質を得るためには、更なる基準を利用することができる。Light House社製のLS−60レーザパーティクルカウンタにより、単位体積あたりの粒子数の分析を行うことができる。適切なコンテナの利用を徹底することにより、コンテナ自身に存在しうる他の化学物質または粒子からの浸出または汚染を制御することができるようになる。本発明の方法で利用される2つの種類のコンテナは、石英およびポリプロピレンまたはこれらに類似した材料からなる。
【0038】
市販の蒸留水には通常、2mlのサンプルについて、0.1ミクロンの粒子が5万個またはそれ以上含まれている。本発明の方法では、2mlについて、0.1ミクロンを超える粒子を500個未満含む超純水が利用される。以下の表1では、市販の蒸留水を本発明の超純水と比較している。
【0039】
超純水は、「10水(10-water)」として示されており、これが本発明の方法で利用される水である。計測は0.1ミクロンから0.5ミクロンで行われた。
【表1】

【0040】
このように本発明の方法の第1の段階では、蒸留水として利用する「10−水」を生成して、安定した水クラスタを生成する。
【0041】
次に、アルゴンガスを充たしたチャンバで蒸留処理を行う。処理全体は、二酸化炭素のない雰囲気中で行われることが肝要である。通常の雰囲気に曝されると、二酸化炭素が含まれていることから、18.2Mオームの純水は、数秒の単位で急速に1Mオーム以下の水に劣化する。このような超純水を二酸化炭素に曝すことにより炭酸が形成されることで、イオンが生成されて導電される。
【0042】
従って本発明における希釈は、アルゴンを充たしたチャンバ内で、「10−水」に対して少量の材料を添加することにより実行される。以下は、塩化ナトリウムを利用する例である。
【0043】
表2は、10−3mol/Lの濃度の塩化ナトリウムの水溶液の粒径分布を示す。
【表2】

【0044】
表2は、「10水」から10−3mol/Lの濃度の塩化ナトリウムの水溶液の粒径分布を示す。制御された非大気(non-atmosphere)条件下において、「10水」を用いて10−7mol/Lの程度の濃度まで希釈することは、全粒子の粒子数の合計を2.7個にまで線形に減少させることと同一視することができる。
【0045】
同じ溶液を、さらに10−7mol/Lにまで希釈する場合には、10−3mol/Lの場合の計測値を比較して、0.1ミクロンを超える大きさの粒子がはるかに大きいように見えることに留意されたい。これらがイオンであるとは考えられないので、これらは、単に水分子が集合したクラスタに由来し、そのクラスタが検出されたにすぎない。

【0046】
図4に示す原子間力顕微鏡AFM写真(タッピング、形状像、frw)NaCl結晶を示す。図4は、乾燥した10−3molの塩化ナトリウム水溶液からの残留物の画像を示しており、塩化ナトリウムの結晶形態を示している。
【0047】
図4は、液体残留物を蒸発させた後の、溶液Sの残留物の原子間力顕微鏡写真である。溶液Sにおける安定した水クラスタの形状およびサイズを明確に読み取ることができる。
【0048】
図5のNaCl結晶(タッピング、位相像、bkw、EFM)は、図4と同時にとった、10−3mol/Lの塩化ナトリウム水溶液を乾燥させて得られた残留物の電気力顕微鏡写真を示す。Nacl結晶形態が均一の色を有していることは、塩化ナトリウムの表面に電荷がないことを示している。写真の右側の垂直方向のエッジは、顕微鏡のステージの上の汚染から電荷が存在しているが、塩化ナトリウム結晶の上には電荷がないことを示している。
【0049】
図6の1.7×10−7mol/Lの希釈液(タッピング、形状像、Frw)は、1.7×10−7mol/Lの塩化ナトリウム水溶液を乾燥させて得られた残留物の原子間力顕微鏡写真を示し、ここでは安定した水クラスタの形状は示されているものの、塩化ナトリウムの結晶形態の形状は認められない。
【0050】
図7の1.7×10−7mol/Lの希釈液(タッピング、位相、bkw)は、安定した水クラスタの電気力顕微鏡写真を示しており、結晶構造が変化したことが示されている。
【0051】
これらの、上述の方法により非常に希釈された溶液を用いて準備された水クラスタは、所定の日にち、月、および年の間、安定である。水クラスタは特に安定している。
【0052】
安定した水クラスタを生成する希釈プロセスを実行するバッチの規模は、小さくても大きくてもよい。小規模のバッチは、リットルまたはガロン単位のコンテナで実行されてよく、大規模のバッチは、数百ガロン以上のコンテナで実行されてよい。
【0053】
図8は、1ガロンのコンテナにおける安定した水クラスタの小規模の製造を示す。コンテナ、チューブ、ストッパ等を、ポリプロピレンで製造することで、製品の汚染を引き起こす浸出現象を最小限に抑える。コンテナの上部のストッパは、3つのチューブ用に3つの孔を含む。チューブ1は、アルゴンを流入させ、チューブ4は、アルゴンガスを流出させ、これによりアルゴンの圧力を通常の大気より大きくして、空気の流入を防いで溶液と接触させないようにする。これにより、きれいな「10−水」への、または最終生成物である溶液に対する二酸化炭素による汚染が防がれる。
【0054】
デバイスを大規模にして大量生産を可能としたり、連続運用できるよう自動化したりすることもできる。このプロセスは、具体的には、(1)アルゴンをチューブ1から流入させて、ビン内の全ての大気をチューブ4により押し出す、(2)「10水」を中央のチューブ2から、大気がなくアルゴンが充填されたビンへ注入する、(3)「10−水」がビンに入ると、少量の物質Aが、ベンチュリ・チューブ3によるベンチュリ効果によってビンに吸引され、これにより、二酸化炭素がなく、「10水」の純度が保たれる環境において物質Aが希釈される、というように行われる。
【0055】
従ってこの安定した水クラスタの生成プロセスでは、少量の材料Aを水に添加するが、この純度は、比抵抗が18.2MΩ・cmであり、レーザパーティクルカウンタによる計測値において、不純物の量が極小であることに特徴付けられている。希釈プロセスは、二酸化炭素のない雰囲気中で行われる。希釈プロセスは、アルゴンガス等の不活性ガスを含む雰囲気中で行うこともできる。希釈プロセスは、アルゴンガスを充たし、圧力を正にして大気が内部にリークしてこないようにしたビン内で行うこともできる。全てのコンテナには、リークおよび浸出を生じない容器を利用することで、いかなる不純物/汚染物もが、純水または安定した水クラスタが生成されている希釈度の高い溶液を汚染しないようにする。コンテナは上部に3つの出口チューブを含み、うち1つがアルゴンを流入させるチューブであり、1つがアルゴンを流出させるチューブであり、3つ目が純水をコンテナに流入させるチューブである。純水を流入させる3つ目のチューブは、ベンチュリ効果により少量の希釈溶質を吸引することができる。希釈プロセスは、通常空気に接触させないようにして行われる。コンテナ、チューブ、ストッパ等は、ポリプロピレン、石英、またはこれらに類似した汚染を防ぐ材料からなる。材料Aは、人工的に生成された、発見された、または、植物、動物、および人間から分離された有機または無機材料(例えば、ビタミン、アミノ酸、ホルモン、たんぱく質、酵素、ポリペプチド、多糖、DNA、RNA等)であってよい。希釈により得られた水溶液の用途は、燃料燃焼効果の向上、健康効果の向上、生化学的反応の向上、全ての種類の工業触媒処理における利用、ひいては、繊維工業の振興、電気めっき技術または類似したプロセスの向上等、多岐にわたる。
【0056】
材料を高純度の水に希釈することによる安定した水クラスタの大規模製造について以下で説明する。通常は高純度の水に単一の材料を希釈させることにより得られる、大量の安定した水クラスタを含有する濃度の高い溶液を得ることが望ましい場合が多い。本発明は、単位体積あたりのクラスタ数を増やすために、安定した水クラスタの製造方法を向上させる方法を提案する。
【0057】
先ず、ある材料Aの希釈度の高い「溶液S」を準備する。一例としては塩化ナトリウムを材料Aとして利用することができる。材料Aは、上述した厳しい条件下で、高純度の水で希釈して、1.7×10−7molの濃度にする。溶液S内の安定した水クラスタの数を、Lighthouse社製の液中パーティクルカウンタLS−60等のレーザパーティクルカウンタにより計測した結果を以下の表3に示す。
【表3】

【0058】
表3は、以下に示す濃縮方法を行う前の、1.1×10−7molの濃度の塩化ナトリウムの溶液Sからの、0.1ミクロンから0.5ミクロンまでの様々なサイズの粒子計測値を示している。
【0059】
図9は、液体残留物を蒸発させた後の、溶液Sの残留物の原子間力顕微鏡写真である。溶液Sにおける安定した水クラスタの形状およびサイズを明確に読み取ることができる。
【0060】
安定した水クラスタの数は、永久電気双極子モーメントを有する第2の材料を添加することにより、希釈度の高い溶液S内で増加させることができる。1.0×10mol未満にまで希釈された、材料Bと称する第2の材料を数滴、溶液Sに添加する。
【0061】
材料Bは、ビタミンE、オメガ3オイル、あるいは、任意の他の有機または無機材料、または、数多くの異なる種類の材料を混合したものであってもよい。具体例として、オメガ3オイルを材料Bとして利用する。
【0062】
極小量のオメガ3オイルを、好適にはアルゴンガスを環境ガスとして利用する条件下で、高純度の水と混合する。油と水は混ざらないので、油と水を混ぜるための更なる処理が必要である。完全に混合するためには、超音波振動を利用して、材料Bがコロイド状に懸濁するまで粉砕する。最大の効果を生じさせるためには、油の分子を、水の分子に直接接触させる必要がある。油と水とが混合されると、溶液ではなく、エマルションとなる。次いで、材料Bと純水とが完全に混合されたこのエマルションを少量、溶液Sに添加する。最終物である溶液S'における材料Bの最小濃度は1.0×10−7molの範囲であるべきである。
【0063】
新たな有機分子(オメガ3オイル)の表面は、多くの正または負の電荷を帯びたスポットを有する。周囲を取り囲む水分子および安定した水クラスタは、これら電荷を帯びたスポットに付着して、これら電荷を帯びたスポットが、安定した水クラスタの成長サイトを提供する。新たな安定した水クラスタが成長して、材料Aから既に生成されている安定した水クラスタは、より大きく成長する。この結果、一定の体積あたりの安定した水クラスタの濃度がより高くなった溶液が生成される。
【0064】
表4は、本記載に説明する方法で材料Bを添加した溶液S'についてレーザパーティクルカウンタで計測された、安定した水クラスタのサイズ分布を示す。これにより、一定の体積あたりの安定した水クラスタが増加したことが分かる。
【表4】

【0065】
表4は、本記載に説明する強化方法を実行した後の溶液S'における、0.1ミクロンから0.5ミクロンを超える大きさの、様々なサイズの安定した水クラスタの粒子計測値を示す。
【0066】
図10は、強化プロセスの完了後の、脱水された溶液S'(タッピング、形状像、Frw、1.7×3−7希釈)から得られる残留物の原子間力顕微鏡写真である。安定した水分子のサイズおよび分布を明確に読み取ることができる。
【0067】
溶液Sに第2の材料Bを少量添加することにより、より多くの数の安定した水クラスタを有することが見出され、このように本方法では、既存の溶液Sから強化された溶液S'が生成される。材料Bは液相であり、無機材料であっても有機材料であってもよい。石油製品のうちのいずれか(ディーゼル、ガソリン、またはこれらの派生物等)であってもよい。材料Bは先ず、超音波振動等により激しく振動させられることで、高純度の水と完全に混合させられて、均一な混合物(つまりエマルション)を形成する。この均一な混合物を少量、アルゴンガスを含む条件下で、高純度の水に添加する。高純度の水は、抵抗計で計測した値が18MΩ・cm程度の非常に高い純度を有する水を生成する水生成器から得られる。生成プロセスの各ステップにおいて、溶液の全部分を空気中の二酸化炭素に曝さないようにする。全てのコンテナ、チューブ、ストッパ、ジョイントは、高純度の水と接触したときにリークまたは浸出を起こさない材料から作成する。これら材料の例としては石英およびポリプロピレンが挙げられる。安定した水分子の強化された溶液S'は、ガソリン、ディーゼル、天然ガス、ジェット燃料、重油、および石炭等の燃焼性燃料の燃料触媒として利用することができ、これにより、製油所、発電所、石油由来製品を製造する製造工場等の処理施設においてコークス化を低減させることができ、健康目的(例えばサプリメント、医薬品、またはホメオパシー薬等)でも利用可能であり、窒素肥料を製造する工業処理においても利用することができる。ひいては、水を利用して含有される液体または化学物質または炭化水素の粘度を増させる必要があるような工業処理への利用、繊維製品を変更したり補強したりするための利用、あるいは、鉛酸バッテリの機能および寿命を向上させるための利用等も可能である。
【0068】
本発明の更なる実施形態では、以下のデバイスを、安定した水クラスタからなる触媒を含む製品の工業的大量生産に利用することができる。
【0069】
図11は、右側に、ディーゼル燃料を含むフィーダタンクAを含むデバイスを示す。ディーゼル燃料は、超音波振動デバイスが設置されているタンクBにポンプで容れられる。燃料がタンクBに到達するまでに、少量の濃縮触媒CCをタンクCからベンチュリ効果により抽出する。濃縮触媒CCのディーゼル燃料に対する比率Rは、非常に小さく設定されている(例えば、1000のディーゼルに対して1のCCといった比率で)。濃縮触媒CCは、タンクB内で超音波振動によって完全にディーゼル燃料と混合される。タンクBへの流出入の流量は、ディーゼルとCCとが完全に混合されるために必要な一定の超音波振動混合時間が確保されるように制御される。CCとディーゼル燃料との混合物はタンクBから流出して、主要タンクDに到達する。混合されるためには2回以上タンクBを通過する必要がある。二回目の混合は、引き続きディーゼルとCCとの混合物をポンプして主要タンクDからタンクBへと戻し、超音波振動により混合をさらに行ったうえで、主要タンクDに戻す、という処理である。
【0070】
混合が良好に完了すると、ディーゼル燃料には必要な触媒が添加されているとみなすことができるので、格納タンクEへ格納して、これによりディーゼル燃料の利用者への配送準備が整う。同様の手順は、ガソリン、ジェット燃料、ケロシン、その他の液状石油製品にも利用することができる。
【0071】
図11は、化学的結合剤を利用せずに大量の石油燃料を液状の触媒と混合させる処理を示すフロー図であり、図12は、濃縮触媒CCをベンチュリ効果によりタンクCからタンクBに添加するフロー図を示す。
【0072】
濃縮触媒CCはタンクCから流入させられる。ベンチュリメータの弁により、CCは、燃料をタンクBにおける超音波処理へと搬送するチューブに入る。メータチューブは、体積Vのディーゼルと混合されるCCの体積Vを計測する。ディーゼルVの体積は、フィーダタンクAからの弁により制御される。比率R=V/Vは固定されている。1つの方法として、弁によりCCをベンチュリ効果でチューブに流入させ、タンクAからタンクBに向かうディーゼルと混合させる。タンクAからのディーゼルは超音波処理タンクBへ向かう。
【0073】
まとめると、少量の濃縮触媒CCをディーゼルまたはその他の石油系の燃料と激しく混合することにより処理される燃料用の大量の触媒CCを生成する手順は、公式CC+D=CDで表される。ここで、比率Rは、DDに対するCCの量として、R=CC/Dで定義される。一例として比率は、1/1000と選択される。
【0074】
開示する方法および機器は、概して、任意の濃度のCCで利用することができる。CCは、任意の溶液D(例えばディーゼル、ガソリン、油、アルコール製品等)と混合するための、または、ハンドクリーム、フェースクリーム、その他の健康製品等を製造するための、安定した水クラスタをかなり大量に含む。
【0075】
最大の混合効果を得るべく、および、生成される製品の純度を保証するべく、タンクAからタンクB、C、D、およびEまでのシステム全体を、正のアルゴン圧力下に維持して、通常の室内雰囲気に存在する二酸化炭素および酸素からの汚染を防ぐ。
【0076】
濃縮CCを液体Dと混合させることで、より低い密度の安定した水クラスタを含む大量の希釈液CDを生成する幾つかの具体例には、(1)Dがディーゼル燃料であり、CDは、ディーゼル燃料に添加する燃料添加物であり、燃焼効果を上げ、汚染を低減させる、(2)Dがガソリンであり、CDは、ガソリンに添加する燃料添加物であり、燃焼効果を上げ、汚染を低減させる、(3)Dは、ジェット燃料またはケロシン等の任意の燃料であり、CDは、ジェット燃料およびケロシンへの燃料添加物である、(4)Dは油であり、CDは、手や顔等に利用することのできる安定した水クラスタを有する油であり、見栄えを良くさせたり、健康にさせたりする、(5)Dは純水であり、CDは、健康目的に利用することのできる少量の安定した水クラスタを有する水である、(6)Dはワインであり、CDは、より高品質のワインにすることのできる少量の安定した水クラスタを有するワインである、等がある。
【0077】
本実施形態をまとめると、このように生成された大量のCDは、高密度の安定した水クラスタを含む少量の濃縮CCを、ディーゼル、ガソリン、油、水、またはクリームであってよい溶液Dと激しく混合させて、ディーゼル、ガソリン、その他の石油燃料またはクリームのための触媒であってよい希釈溶液CDを生成することにより生成される触媒または油、またはクリームであってよい。混合は超音波により行われ、CCのDに対する混合比率Rは、例えば1/1000といった低い値に設定されてよく、この比率は、第1のバルブがフィーダタンクAからのDの量を制御して、第2のバルブが、メータ領域に入るCCの量を制御して、CCがDとベンチュリ効果により混合されるような、2つの自動制御されるバルブにより維持することができる。混合され希釈された液体CDは、超音波処理を行うタンクから主要タンクへとポンプにより流入させられ、主要タンクの混合CDは、超音波処理を行うタンクへと短期間の間継続してポンプされて、CD混合物が完全に混合されて主要タンクに留まるようにする。完全に混合された液体CDは格納タンクに格納されて、配送を待つ。
【0078】
完全に混合された液体CDは燃料添加物として利用することができ、ここで燃料Dは、ディーゼル、ガソリン、ケロシン、ジェット燃料等であってよく、健康目的に利用する場合には、Dが油であり、CDが、例えば手または顔用の健康目的のエマルションまたは液体形状であってよく、アルコール飲料の場合には、Dがアルコール飲料(例えばワイン、ビール等)であってよく、液体Dが純水であってよく、CCは特定の安定した水クラスタ用の濃縮物であってよく、最終生成物CDは健康目的に利用される(例えば飲用として)。
【0079】
本発明のしっかりと安定した水クラスタは、特定の分子構造を有する。
【0080】
上述したように、安定した水クラスタは希釈により生成することができる。塩化ナトリウムの希釈を一例にとって説明する。有機および無機材料両方を超純水で希釈して水を生成することができ、この水において安定した水クラスタの存在は、安定した水クラスタを水に容れてみることで分かり、あるいは、スライドガラス上でクラスタ水を蒸発させた後の残留物を検査することで分かる。これは、光学顕微鏡および原子間力顕微鏡を利用して行われる。図14は、しっかりと安定した水クラスタの一例を示している。安定した水クラスタには様々な形状がある。一部はコットンボールのように見える。図14では、幾つかのリング形状の構造が示されており、これはより基本的なものであるとみなすことができる。
【0081】
図14では、写真のサイズが7.67ミクロン×7.67ミクロンである。この写真に示されているリング形状の構造のサイズは約1ミクロンである。
【0082】
固体物理では、位相遷移現象を考える際に、規格化は重要な原理である。相互作用は、演算子形式のハミルトニアンで表されるエネルギーであり、規格化される。つまり、オブジェクトのサイズに関らず、同じ種類の相互作用が生じる、ということである。図13は、倍率400xの顕微鏡で見たときの、様々なサイズの塩化ナトリウムの形状を示している。
【0083】
2つの左端の塩化ナトリウムのクラスタに注目されたい。塩化ナトリウムの面心立方構造は、二次元の写真において正方形に見える。矩形形状の塩化ナトリウム構造の最大値と最小値との間には、約100倍の差異が許容されている。塩化ナトリウムの面心立方構造は、ナノメートルサイズ未満に留まっている。比較すると、リング形状の構造のスケーリングもまた、ナノメートルサイズという小さいものである。
【0084】
リング形状の構造が完成しておらず、半分しか完成していないことがある。この腎臓のような形状の構造を図15に示す。図15の写真の寸法は1.66ミクロン×1.66ミクロンである。腎臓のような形状の構造は、約600nmから700nmである。
【0085】
クラスタ水を蒸発させて得られる残留物を、1ミクロン未満のサイズで原子間力顕微鏡を用いて検査することにより、より精細な写真が得られる。図16はこれらの写真のうち1つである。5つの辺を有する5角形のもの、6つの辺を有する6角形のもの、および、4つの辺を有する矩形のものがある。5角形および6角形が合わさって、サッカーボールのような構造になっているものも見られる。図16の写真の寸法は、0.63ミクロン×0.63ミクロンである。数多くの4つの辺、5つの辺、および6つの辺を有するリング構造が見られる。これら構造のサイズは、約30nmから50nmの範囲にある。これら構造が組み合わさって、サッカーボールのような構造が形成されている。
【0086】
図17の孤立電子対においては、水分子が2つの水素原子と1つの酸素原子とからなる。これら3つの原子が、四面体の頂点を占めている。
【0087】
多くの水分子が組み合わさって1つのクラスタを形成する場合、これは多くの四面体を係着しているのに等しい。水クラスタの最低エネルギー状態は、5角形および6角形の構成を指し示しており、ここで酸素分子が5角形および6角形、または時として矩形の頂点を占めている。こうすることにより、これら5角形および6角形が、図18に示すようなサッカーボールのような構造を形成する。数学的には、これは5として表すことができる。ここで、nとmは、サッカーボールのような構造を構成する5角形および6角形の数を示す。小さなサッカーボールのような構造は、2つの線が合流する頂点が酸素原子のサイトである。水素原子は、頂点を接合する線沿いに並ぶ。一般形は、5である。これには、k個の4つの辺を有する矩形が加わっている。さらに、これらはつまるところ、線形形状、螺旋形状等を構成することのできる単位である。
【0088】
図18は、60個の頂点を有するボールを示す。図19は、20個の6角形の白色パッチと、12個の5角形の黒色パッチとを有するサッカーボールを示す(51220と表すことができる)。
【0089】
ごく基本的なリング構造は、図20に示すような、5つの辺を有する5角形、6つの辺を有する6角形、および、4つの辺を有する矩形により表すことができる。最小分子リング構造は、これら多角形の頂点を占める酸素原子それぞれと、これら頂点を接合する線沿いに並んだ水素原子それぞれとからなる。
【0090】
図20は、左から右へ、5角形、6角形、矩形が並んだ安定した水クラスタの象徴的なリング構造を示す。
【0091】
このように本発明の安定した水クラスタは、通常の室温および大気圧では安定しており、リング構造は、数ミクロンから、数百ナノメートル、数十ナノメートルの範囲である。これらリング構造は、5つの辺を有する5角形、6つの辺を有する6角形、4つの辺を有する矩形であってよい。これらリング構造の最小のものは、5つの辺を有する5角形、6つの辺を有する6角形、および4つの辺を有する矩形が、酸素原子および水素原子それぞれからなり、酸素原子が頂点にあり、水素原子が頂点同士を接合する線沿いに並ぶ。これら5角形、6角形、または矩形を組み合わせることで、安定した水クラスタの一部を構成する、より大きな構造が形成される。より大きな構造は、サッカーボールのような構造であり、n辺が5角形であり、m辺が6角形であり、k辺が矩形であり、これは5で表され、n、k、mは0,1,2,3から非常に大きな整数までを含んでよい。サッカーボールのような構造を含むより大きな構造を組み合わせることで、より大きな安定した水クラスタを形成することができ、これらは線形形状、リング形状、腎臓のような形状、または螺旋形状であってよい。
【0092】
遺伝物質の基本構造DNAは、二重螺旋であることが分かっている。DNAの構造は、十億年をかけて徐々に生き残れる生命を決定するコード化された記録として構築されてきた進化的発生期間が悠久であることから、非常に複雑なものとなっている。この長い進化の鎖には開始点というものがあったはずであり、この開始点とは、より大きい進化の鎖にみられるDNAの出現前のもの、つまり、より高度な生物生命体にみられるDNAの出現前のものであり、原始の単細胞組織に存在していたようなものである。今日に至るまで、この形成メカニズムをその形成時の観点から解明した人はいない。生命体が水から生じ、水なしには生命体はない、ということは常識であるが、水とDNA等の錯体との間に直接リンクがあると証明した人はいない。
【0093】
本発明においては、安定した水クラスタは螺旋構造を有し、特に2つの螺旋対が組み合わせられて、DNA構造に類似した二重螺旋を形成することができる。
【0094】
図21は、二重螺旋構造を有するDNAの写真である。図22および図23は、二重螺旋構造を有する本発明の安定した水クラスタの2つの原子間力顕微鏡写真を示す。
【0095】
図21と図22−図23とを比べると、差異および類似点がある。差異は、DNAの二重螺旋はアミノ酸から形成されているが、安定した水クラスタの二重螺旋は水分子から形成されている点である。
【0096】
一方で類似点は、両方とも二重螺旋であり、互いから拡大または縮小された画像である、ということである。安定した水クラスタの二重螺旋の幅は約2ミクロンであり、DNAの二重螺旋の幅は約2ナノメートルであり、これは1000分の1の大きさである。DNA分子を1000倍に拡大すると、ちょうど二重螺旋の安定した水クラスタに類似したものとなる。
【0097】
安定した水クラスタの二重螺旋構造には、ナノメートル、ミクロン、またはこれより大きなサイズのものがある。
【0098】
拡大縮小の対称性の原理を示す。結晶のハミルトニアン(この種類のシステムの多くについて、運動エネルギーとポテンシャルエネルギーとの合計に等しい数学関数)は、規模に関らず同じとなる。これは、規模がナノメートル、マイクロメートル、またはミリメートルであろうと、ハミルトニアン(エネルギー)が同じであるということである。結晶の形状は、最低エネルギー状態により決定されるので、結晶の形状は、規模に関らず同じとなる(物理用語では、結晶の寸法がナノメートル、マイクロメートル、またはミリメートルであろうと、結晶が同じ形状となる、と称する)。塩(NaCl)結晶を検査すると、ミリメートルの立方体形状である(これは単純な拡大鏡を利用することで分かる)。NaCl結晶を原子間力顕微鏡で観察すると、これもミクロンのサイズではあるが立方体形状をしている。NaClと同じサイズがナノメートルのサイズでも維持されており、これは面心立方体と称される。
【0099】
従って、本発明の安定した水クラスタの二重螺旋形状は、ミクロンサイズであろうとナノメートルサイズであろうと、維持されることが予期される。
【0100】
二重螺旋の安定した水クラスタを含む溶液はここに開示する方法で製造することができる。しかしこれはあくまで可能性のある製造方法のうちの1つにすぎない。
【0101】
この溶液の粒子計測値を表に示す。
【表5】

【0102】
安定した水クラスタは、螺旋構造を有しえて、二重螺旋形状に形成されることもある。二重螺旋構造は、DNA分子が形成される前の生命の成長段階における前駆体でありうる。螺旋構造の幅は、数ミクロンであっても、数ナノメートルであってもよい。
【0103】
上述したエレメント各々を、または2以上を組み合わせたものを、上述したものとはまた異なる他の種類の構造で利用すると、利点を生じる場合がある。
【0104】
本発明は、しっかりと安定した水クラスタを含む製品に具現化するものとして説明および図示してきたが、記載されたものに限定はされず、様々な変形例および構造上の変更が、本発明の精神を逸脱せずに可能である。
【0105】
更なる分析を行わずしても、上述した記載と現在の知識とを勘案することで、他の当業者は、先行技術の観点から、本発明の一般的なまたは特殊な態様の本質的な特徴の大部分を構成する特徴を省くことなく、様々な用途に対して容易に適合させうるような本発明の本質を完全に理解するであろう。
【0106】
添付請求項は、新規であるとして特許保護を望む内容である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
しっかりと安定した水クラスタを含む製品であって、
しっかりと安定した前記水クラスタは、イオンの内部電界による電気双極子相互作用によって互いに連結された複数の水分子を含み、前記複数の水分子は永久電気双極子モーメントを含み、しっかりと安定した前記水クラスタを取り囲む電界が存在する製品。
【請求項2】
しっかりと安定した前記水クラスタは、通常の室温および大気圧において安定している請求項1に記載の製品。
【請求項3】
しっかりと安定した前記水クラスタを含有する水を含む請求項1に記載の製品。
【請求項4】
しっかりと安定した前記水クラスタを含む石油成分を含む請求項1に記載の製品。
【請求項5】
前記石油成分は、ガス、ディーゼル、および天然ガスからなる群から選択された成分である請求項4に記載の製品。
【請求項6】
しっかりと安定した前記水クラスタが含まれるスキンケア成分を含む請求項1に記載の製品。
【請求項7】
しっかりと安定した前記水クラスタが含まれる健康効果を生じる成分を含む請求項1に記載の製品。
【請求項8】
前記健康効果を生じる成分は、ビタミン、ミネラル、ホルモン、およびエキスからなる群から選択された成分である請求項7に記載の製品。
【請求項9】
しっかりと安定した前記水クラスタを含む小さな水滴が懸濁しているエマルションの形態のしっかりと安定した前記水クラスタを含む更なる成分を含む請求項1に記載の製品。
【請求項10】
しっかりと安定した前記水クラスタは、リング形状の構造を有する請求項1に記載の製品。
【請求項11】
しっかりと安定した前記水クラスタの前記リング形状の構造は、5角形、6角形、および矩形からなる群から選択される請求項10に記載の製品。
【請求項12】
しっかりと安定した前記水クラスタの複数の前記リング形状の構造が接合されて、しっかりと安定した前記水クラスタのより大きな構造が形成される請求項10に記載の製品。
【請求項13】
しっかりと安定した前記水クラスタの前記より大きな構造は、線形構造、リング形状の構造、腎臓のような形状の構造、および螺旋形状からなる群から選択された形状を有する請求項12に記載の製品。
【請求項14】
しっかりと安定した前記水クラスタは、二重螺旋形状に構成される請求項1に記載の製品。
【請求項15】
しっかりと安定した前記水クラスタは、ナノメートルのサイズである請求項1に記載の製品。
【請求項16】
製品を製造する方法であって、
しっかりと安定した水クラスタが形成されるまで、物質を希釈水である特定の品質の水で複数倍に希釈する段階を備え、
しっかりと安定した前記水クラスタは、イオンの内部電界による電気双極子相互作用によって互いに連結された複数の水分子を含み、前記複数の水分子は永久電気双極子モーメントを含み、しっかりと安定した前記水クラスタを取り囲む電界が存在する方法。
【請求項17】
前記希釈する段階で利用される前記水の品質は、16−20MΩ・cmの範囲である請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記希釈する段階は、COを含まない雰囲気において希釈する段階を含む請求項16に記載の方法。
【請求項19】
COを含まない前記雰囲気としてアルゴンを利用して、前記希釈をアルゴンガスが充填されたチャンバ内で行う段階をさらに備える請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記物質として前記水に溶解した塩化ナトリウムを利用する段階をさらに備える請求項16に記載の方法。
【請求項21】
希釈中にコンテナにアルゴンを流入させ、コンテナから前記アルゴンを流出させて、アルゴンの圧力を通常の大気よりも大きくする段階をさらに備える請求項19に記載の方法。
【請求項22】
ベンチュリ・チューブによるベンチュリ効果によって前記物質をコンテナ内に吸引させる段階をさらに備える請求項16に記載の方法。
【請求項23】
しっかりと安定した前記水クラスタの生成を増進する第2の材料を溶液に導入する段階をさらに備える請求項16に記載の方法。
【請求項24】
前記第2の材料のコロイド状の懸濁液を準備する段階をさらに備え、
前記導入する段階は、前記第2の材料の前記コロイド状の懸濁液を導入し、これにより生じた電荷スポットに、取り囲んでいる水分子および安定した水クラスタを付着させて、新たな安定した水クラスタを成長させ、且つ、第1の材料により既に生成されている安定した水クラスタをより大きく成長させる段階を有する請求項23に記載の方法。
【請求項25】
更なる材料を加えたしっかりと安定した前記水クラスタを利用して前記製品を生成する段階をさらに備える請求項16に記載の方法。
【請求項26】
前記利用する段階は、前記更なる材料中の燃料触媒として、しっかりと安定した前記水クラスタの溶液を利用する段階を有し、
前記更なる材料は、ガソリン、ディーゼル、天然ガス、ジェット燃料、重油、および石炭からなる群から選択された燃焼性燃料である請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記利用する段階は、製油所、発電所、および製造所からなる群から選択された、石油由来製品を製造する処理施設で利用して、コークス化を低減させるのに利用される前記更なる材料とともに、しっかりと安定した前記水クラスタを利用する段階を有する請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記利用する段階は、しっかりと安定した前記水クラスタを有するスキンケア製品を生成するために前記スキンケア製品に利用される前記更なる材料にしっかりと安定した前記水クラスタを導入する段階を有する請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記利用する段階は、健康製品を生成するために健康目的で利用される前記更なる材料にしっかりと安定した前記水クラスタの溶液を導入する段階を有する請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記利用する段階は、ビタミン、ミネラル、ホルモン、エキス、および医薬品からなる群から選択された健康材料である前記更なる材料にしっかりと安定した前記水クラスタを導入する段階を有する請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記利用する段階は、窒素肥料を製造する工業処理で利用される前記更なる材料にしっかりと安定した前記水クラスタの溶液を導入する段階を有する請求項25に記載の方法。
【請求項32】
前記利用する段階は、工業処理にしっかりと安定した前記水クラスタの溶液を導入して、液体、含有液体、化学製品、および炭化水素からなる群から選択された、前記工業処理で用いられる材料の粘度を増加させる段階を有する請求項25に記載の方法。
【請求項33】
前記利用する段階は、しっかりと安定した前記水クラスタを繊維材料に導入して、繊維を変更または補強する段階を有する請求項25に記載の方法。
【請求項34】
前記利用する段階は、しっかりと安定した前記水クラスタを鉛酸バッテリの材料に導入して、前記鉛酸バッテリの機能および寿命を向上させる段階を有する請求項25に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公表番号】特表2012−510892(P2012−510892A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539514(P2011−539514)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際出願番号】PCT/US2009/006400
【国際公開番号】WO2010/065141
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(511134827)ディー アンド ワイ ラボラトリーズ (1)
【Fターム(参考)】