水上構造物の修復補強構造
【課題】水底地盤が洗掘を受けた際の対策として、航路の障害とならずに、十分な支持強度を保証することのできる水上構造物の修復補強構造を提供する。
【解決手段】複数の既設杭12の頭部に既設フーチングが支持され、既設フーチングの上部に既設橋脚10が立設され、既設フーチングの周囲の地盤8が水流の影響により洗掘を受けた水上構造物の修復補強構造において、洗掘を受けた地盤8の内部に、既設フーチングの下方に位置させ且つ既設杭12に支持を取って新設フーチング21を構築し、新設フーチングと既設橋脚の下端との間に新設橋脚22を構築し、新設フーチング及び新設橋脚を構築する際にそれらに含まれる部分以外の前記既設杭の上端と既設フーチングの張り出し部とを撤去すると共に、既設橋脚の断面を橋脚長さの増大に応じて補強(補強部分23)した。
【解決手段】複数の既設杭12の頭部に既設フーチングが支持され、既設フーチングの上部に既設橋脚10が立設され、既設フーチングの周囲の地盤8が水流の影響により洗掘を受けた水上構造物の修復補強構造において、洗掘を受けた地盤8の内部に、既設フーチングの下方に位置させ且つ既設杭12に支持を取って新設フーチング21を構築し、新設フーチングと既設橋脚の下端との間に新設橋脚22を構築し、新設フーチング及び新設橋脚を構築する際にそれらに含まれる部分以外の前記既設杭の上端と既設フーチングの張り出し部とを撤去すると共に、既設橋脚の断面を橋脚長さの増大に応じて補強(補強部分23)した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川や海中に構築された橋脚等の水上構造物の修復補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
河川や海上に道路や鉄道等の橋脚を構築する場合、複数の杭を地下の支持層まで打ち込み、それら複数の杭の頭部にフーチングを構築し、フーチングの上部に橋脚を立設するのが一般的である。この場合、フーチングは水底地盤中に埋め込んである。
【0003】
ところで、図12に示すように、経時的に水流による洗掘の作用を受けて、水底地盤8のレベルが低下してしまい、既設フーチング11が水底地盤8から露出した状態になることがある。図12において、10は橋脚、12は既設杭である。既設杭12は、先端12aが地下の支持層7まで打ち込まれており、頭部12bで既設フーチング11を支持している。既設橋脚10は、この既設フーチング11の上部に立設されている。
【0004】
図12に示すように、既設フーチング11が水底地盤8から露出した状態になると、支持力不足となるので、その対策が必要となる。
【0005】
従来の対策工法としては、図13に示すように、既設フーチング11の周囲の地盤8に環状の地中壁20を構築し、その地中壁20の上端と既設フーチング11との間を増しフーチング13で埋めるようにした所謂「井筒工法」が知られている。
【特許文献1】特開平9−143953号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記従来の井筒工法は、橋脚に対する支持力補強の点については満足な結果が得られるものの、水中や水上部にフーチングが突出して残るために、それが航路の障害となるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記事情を考慮し、水底地盤が洗掘を受けた際の対策として、航路の障害とならずに、十分な支持強度を保証することのできる水上構造物の修復補強構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、複数の既設杭の頭部に既設フーチングが支持され、この既設フーチングの上部に既設橋脚が立設された水上構造物であって、前記既設フーチングの周囲の地盤が水流の影響により洗掘を受けた水上構造物の修復補強構造において、前記洗掘を受けた地盤の内部に、前記既設フーチングの下方に位置させ且つ前記既設杭に支持を取って新設フーチングを構築し、該新設フーチングと既設橋脚の下端との間に新設橋脚を構築し、前記新設フーチング及び新設橋脚を構築する際にそれらに含まれる部分以外の前記既設杭の上端と既設フーチングの張り出し部とを撤去すると共に、前記既設橋脚の断面を、橋脚長さの増大に応じて補強したことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1記載の水上構造物の修復補強構造であって、前記既設杭の周囲の前記洗掘を受けた地盤中に増設杭を構築し、前記既設杭及び増設杭に支持を取って新設フーチングを構築したことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1記載の水上構造物の修復補強構造であって、前記既設フーチングの周囲の前記洗掘を受けた地盤中に環状の地中壁を設けると共に、該環状の地中壁に外周部を連結させて前記新設フーチングを構築し、前記環状の地中壁で囲まれた領域の少なくとも外周部に、前記既設杭の水平抵抗に有効な範囲を固化改良した地盤改良部を設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1記載の水上構造物の修復補強構造であって、前記既設フーチングの周囲の前記洗掘を受けた地盤中に環状の地中壁を設けると共に、該環状の地中壁に外周部を連結させて前記新設フーチングを構築し、前記環状の地中壁の内側で前記既設杭の周囲の前記洗掘を受けた地盤中に増設杭を構築し、前記環状の地中壁で囲まれた領域の少なくとも外周部に、前記既設杭及び増設杭の水平抵抗に有効な範囲を固化改良した地盤改良部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、洗掘を受けた地盤の内部に新設フーチングを構築し、新設フーチングと既設橋脚の下端との間に新設橋脚を構築し、新設フーチング及び新設橋脚を構築する際にそれらに含まれる部分以外の既設杭の上端と既設フーチングの張り出し部とを撤去すると共に、既設橋脚の断面を、橋脚長さの増大に応じて補強したので、十分な支持強度を保証することができる。また、フーチングが水上や水中に露出した状態で残らないので、それらが航路の障害となることもない。
【0013】
請求項2の発明によれば、既設杭の周囲の洗掘を受けた地盤中に増設杭を構築し、洗掘を受けた地盤の内部に新設フーチングを構築し、新設フーチングと既設橋脚の下端との間に新設橋脚を構築し、新設フーチング及び新設橋脚を構築する際にそれらに含まれる部分以外の既設杭の上端と既設フーチングの張り出し部とを撤去すると共に、既設橋脚の断面を、橋脚長さの増大に応じて補強したので、十分な支持強度を保証することができる。特に既設杭の周囲に増設杭を設けたので、一層の強度増強を図ることができる。また、フーチングが水上や水中に露出した状態で残らないので、それらが航路の障害となることもない。
【0014】
請求項3の発明によれば、既設フーチングの周囲の洗掘を受けた地盤中に環状の地中壁を設け、環状の地中壁で囲まれた領域の少なくとも外周部に、既設杭の水平抵抗に有効な範囲を固化改良した地盤改良部を設け、洗掘を受けた地盤の内部に既設杭に支持を取ると共に環状の地中壁に外周部を連結させて新設フーチングを構築し、新設フーチングと既設橋脚の下端との間に新設橋脚を構築し、新設フーチング及び新設橋脚を構築する際にそれらに含まれる部分以外の既設杭の上端と既設フーチングの張り出し部とを撤去すると共に、既設橋脚の断面を、橋脚長さの増大に応じて補強したので、十分な支持強度を保証することができる。特に地中壁を新たに設けて、新設フーチングの外周部をその地中壁に連結している上、環状の地中壁で囲まれた領域の少なくとも外周部に地盤改良部を設けているので、一層の強度増強を図ることができる。また、フーチングが水上や水中に露出した状態で残らないので、それらが航路の障害となることもない。
【0015】
請求項4の発明によれば、既設フーチングの周囲の洗掘を受けた地盤中に環状の地中壁を設け、地中壁の内側で既設杭の周囲の洗掘を受けた地盤中に増設杭を構築し、環状の地中壁で囲まれた領域の少なくとも外周部に、既設杭の水平抵抗に有効な範囲を固化改良した地盤改良部を設け、洗掘を受けた地盤の内部に既設杭及び増設杭に支持を取ると共に環状の地中壁に外周部を連結させて新設フーチングを構築し、新設フーチングと既設橋脚の下端との間に新設橋脚を構築し、新設フーチング及び新設橋脚を構築する際にそれらに含まれる部分以外の既設杭の上端と既設フーチングの張り出し部とを撤去すると共に、既設橋脚の断面を、橋脚長さの増大に応じて補強したので、十分な支持強度を保証することができる。特に地中壁を新たに設けて、新設フーチングの外周部をその地中壁に連結している上、その地中壁の内側の既設杭の周囲に増設杭を設け、環状の地中壁で囲まれた領域の少なくとも外周部に地盤改良部を設けているので、一層の強度増強を図ることができる。また、フーチングが水上や水中に露出した状態で残らないので、それらが航路の障害となることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の水上構造物の修復補強構造は、洗掘を受けたことにより水底地盤から露出してしまった既設フーチングの一部を撤去して、新たなフーチングを下方の水底地盤中に設けたこと、つまりフーチングを下方へ移設したことを特徴とするもので、以下に本発明の各実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0017】
<第1実施形態>
図1は本発明の第1実施形態の水上構造物の修復補強構造を示す断面図、図2〜図8はその施工手順を示す図で、図2は同修復補強構造を実現する前の、修復が必要になったときの状態を示す断面図、図3は修復工程の最初の段階として締め切りのための地中壁を既設フーチングの周囲に構築した状態を示す断面図、図4は次の工程として切梁を設置して地中壁の内側の地盤をフーチング移設深度まで掘削した状態を示す断面図、図5は地中壁の内側の地盤の掘削後に新設フーチングを構築した状態を示す断面図、図6は新設フーチングの構築後に既設橋脚の下側に新設橋脚を構築した状態を示す断面図、図7は既設橋脚の断面を補強した状態を示す断面図、図8は図1の構造とするために既設杭や既設フーチングの不要部を撤去した状態を示す断面図である。
【0018】
図1に示す第1実施形態の水上構造物の修復補強構造は、河川6を道路や鉄道が横断する部分に設けられた橋脚(水上構造物)10に適用されている。
【0019】
修復する前の構造では、図2に示すように、地下の支持層7まで先端12aが到達する複数の既設杭12の頭部12bに既設フーチング11が支持され、この既設フーチング11の上部に既設橋脚10が立設されている。そして、既設フーチング11の周囲の地盤8が洗掘を受けて河床低下を来しており、それにより、既設フーチング11が水底地盤8から露出してしまっている。
【0020】
これを修復したのが、図1に示す実施形態の修復補強構造であり、この修復補強構造では、洗掘を受けた地盤8の内部に、既設フーチング11(図2参照)の下方に位置させ且つ既設杭12の新たな頭部12b′に支持を取って新設フーチング21を構築すると共に、新設フーチング21と既設橋脚10の下端との間に新設橋脚22を構築している。また、新設フーチング21及び新設橋脚22を構築する際にそれらに含まれる部分以外の既設杭12の上端と既設フーチング11の張り出し部(図8の一点鎖線で示す部分)とを撤去すると共に、既設橋脚10の断面を橋脚長さの増大に応じて補強している。図中符号23で示す部分が橋脚10の補強部分である。
【0021】
このフーチングの下方への移設(即ち、既設フーチング11から新設フーチング21への変更)に伴い、新設フーチング21は、上端のレベルが下方に変更となった既設杭12の新たな頭部12b′により支持されている。
【0022】
次に、図1の構造を得るまでの施工手順を説明する。
【0023】
まず、図2に示すような、修復補強を必要とする現状の構造に対し、図3に示すように、既設フーチング11の周囲の洗掘を受けた地盤8中に、環状の地中壁20を打ち込む。この場合の環状の地中壁20は、例えば、四角筒状の鋼矢板壁で構成し、下端を複数の既設杭12の水平抵抗に有効な範囲の深度まで埋設する。この際、地中壁20の上端は、河川6の水面より上方に露出させておく。
【0024】
次に、図4に示すように、地中壁20の上部に切梁50を設置し、その状態で、地中壁20の内側の水を抜いて、地盤8を、新設フーチング21(図5参照)を構築するレベルまで掘削する。
【0025】
次に、図5に示すように、既設フーチング11の下方に位置させ、且つ、既設杭12の上部(新たな頭部12b′)に支持を取って、新設フーチング21を構築する。
【0026】
また、図6に示すように、新設フーチング21と既設橋脚10の下端との間に新設橋脚22を構築する。
【0027】
また、図7に示すように、既設橋脚10の断面を、橋脚長さの増大に応じて補強する。補強は、通常の柱の補強と同様に、例えば、橋脚の外周部に鉄筋コンクリート(RC)を巻き立てて断面を大きくしたり、鉄板を巻き締めして断面強度を増大させたりすることで行う。
【0028】
次に、図8に示すように、新設フーチング21及び新設橋脚22を構築する際にそれらに含まれる部分以外の、既設杭12の上端や既設フーチング11の張り出し部などの不要部分(図8中一点鎖線で示す部分)を撤去する。
【0029】
その後は、地中壁20の内側を周囲地盤8と同レベルとなるよう埋め戻す。そうすることにより、洗掘を受けた地盤8の内部に、新設フーチング21が埋設された状態となる。次いで、切梁50を撤去し、地中壁20を撤去することで、図1の修復補強構造が完成する。
【0030】
このように、洗掘を受けた地盤8の内部に新設フーチング21を構築し、新設フーチング21と既設橋脚10の下端との間に新設橋脚22を構築し、新設フーチング21及び新設橋脚22を構築する際にそれらに含まれる部分以外の既設杭12の上端と既設フーチング11の張り出し部とを撤去すると共に、既設橋脚10の断面を、橋脚長さの増大に応じて補強したので、十分な支持強度を保証することができる。また、フーチングが水上や水中に露出した状態で残らないので、それらが航路の障害となることもない。
【0031】
<第2実施形態>
図9は本発明の第2実施形態の水上構造物の修復補強構造を示す断面図である。尚、図2,図3,図4の切梁50及び図8の既設フーチング11の張り出し部は、援用する。
【0032】
図9に示す第2実施形態の水上構造物の修復補強構造は、河川6を道路や鉄道が横断する部分に設けられた橋脚(水上構造物)10に適用されている。
【0033】
修復する前の構造では、図2に示すように、地下の支持層7まで先端12aが到達する複数の既設杭12の頭部12bに既設フーチング11が支持されており、この既設フーチング11の上部に既設橋脚10が立設されている。そして、既設フーチング11の周囲の地盤8が洗掘を受けて河床低下を来しており、それにより、既設フーチング11が水底地盤8から露出してしまっている。
【0034】
これを修復したのが、図9に示す実施形態の修復補強構造であり、この修復補強構造では、既設杭12の周囲の洗掘を受けた地盤8中に、先端24aを支持層7に到達させた増設杭24を構築し、洗掘を受けた地盤8の内部に、既設フーチング11の下方に位置させ、且つ、既設杭12及び増設杭24の頭部24bに支持を取って新設フーチング21を構築すると共に、新設フーチング21と既設橋脚10の下端との間に新設橋脚22を構築している。
【0035】
また、新設フーチング21及び新設橋脚22を構築する際にそれらに含まれる部分以外の既設杭12の上端と既設フーチング11の張り出し部(図8の一点鎖線で示す部分)とを撤去すると共に、既設橋脚10の断面を橋脚長さの増大に応じて補強している。図9中符号23で示す部分が橋脚10の補強部分である。
【0036】
このフーチングの下方への移設(即ち、既設フーチング11から新設フーチング21への変更)に伴い、新設フーチング21は、上端のレベルが下方に変更となった既設杭12の新たな頭部12b′と増設杭24の頭部24bにより支持されている。
【0037】
次に、図9の構造を得るまでの施工手順を説明する。
【0038】
まず、図2に示すような、修復補強を必要とする現状の構造に対し、図3に示すように、既設フーチング11の周囲の洗掘を受けた地盤8中に、環状の地中壁20を打ち込む。この場合の環状の地中壁20は、例えば、四角筒状の鋼矢板壁で構成し、下端を複数の既設杭12の水平抵抗に有効な範囲の深度まで埋設する。この際、地中壁20の上端は、河川6の水面より上方に露出させておく。
【0039】
次に、既設杭12の周囲の洗掘を受けた地盤8中に、先端24aを支持層7に到達するように増設杭24を構築する。この場合の増設杭24の頭部24bの位置は、新設フーチング21を構築するレベルに設定しておく。
【0040】
次に、図4に示すように、地中壁20の上部に切梁50を設置し、その状態で、地中壁20の内側の水を抜いて、地盤8を、新設フーチング21を構築するレベルまで掘削する。
【0041】
次に、既設フーチング11の下方に位置させ、且つ、既設杭12の上部(新たな頭部12b′)及び増設杭24の頭部24bに支持を取って、新設フーチング21を構築する。また、新設フーチング21と既設橋脚10の下端との間に新設橋脚22を構築する。さらに、既設橋脚10の断面を、橋脚長さの増大に応じて補強する。補強は、通常の柱の補強と同様に、例えば、橋脚の外周部に鉄筋コンクリート(RC)を巻き立てて断面を大きくしたり、鉄板を巻き締めして断面強度を増大させたりすることで行う。
【0042】
次に、新設フーチング21及び新設橋脚22を構築する際にそれらに含まれる部分以外の、既設杭12の上端や既設フーチング11の張り出し部などの不要部分を撤去する。
【0043】
その後は、地中壁20の内側を周囲地盤8と同レベルとなるよう埋め戻す。そうすることにより、洗掘を受けた地盤8の内部に、新設フーチング21が埋設された状態となる。次いで、切梁50を撤去し、地中壁20を撤去することで、図9の修復補強構造が完成する。
【0044】
このように、既設杭11の周囲の洗掘を受けた地盤8中に増設杭24を構築し、洗掘を受けた地盤8の内部に新設フーチング21を構築し、新設フーチング21と既設橋脚10の下端との間に新設橋脚22を構築し、新設フーチング21及び新設橋脚22を構築する際にそれらに含まれる部分以外の既設杭12の上端と既設フーチング11の張り出し部とを撤去すると共に、既設橋脚10の断面を、橋脚長さの増大に応じて補強したので、十分な支持強度を保証することができる。特に既設杭12の周囲に増設杭24を設けたので、一層の強度増強を図ることができる。また、フーチングが水上や水中に露出した状態で残らないので、それらが航路の障害となることもない。
【0045】
<第3実施形態>
図10(a)は本発明の第3実施形態の水上構造物の修復補強構造を示す断面図、図10(b)は図10(a)のX−X矢視断面図である。尚、図2,図3,図4の切梁50及び図8の既設フーチング11の張り出し部は、援用する。
【0046】
図10に示す第3実施形態の水上構造物の修復補強構造は、河川6を道路や鉄道が横断する部分に設けられた橋脚(水上構造物)10に適用されている。
【0047】
修復する前の構造では、図2に示すように、地下の支持層7まで先端12aが到達する複数の既設杭12の頭部12bに既設フーチング11が支持され、この既設フーチング11の上部に既設橋脚10が立設されている。そして、既設フーチング11の周囲の地盤8が洗掘を受けて河床低下を来しており、それにより、既設フーチング11が水底地盤8から露出してしまっている。
【0048】
これを修復したのが、図10に示す実施形態の修復補強構造であり、この修復補強構造では、既設フーチング11の周囲の洗掘を受けた地盤8中に環状の地中壁20を設け、その環状の地中壁20で囲まれた領域の少なくとも外周部に、既設杭12の水平抵抗に有効な範囲を固化改良した地盤改良部25を設け、洗掘を受けた地盤8の内部に、既設フーチング11の下方に位置させ、且つ、既設杭12の新たな頭部12b′に支持を取ると共に環状の地中壁20に外周部を連結させて新設フーチング21を構築し、新設フーチング21と既設橋脚10の下端との間に新設橋脚22を構築している。
【0049】
また、新設フーチング21及び新設橋脚22を構築する際にそれらに含まれる部分以外の既設杭12の上端と既設フーチング11の張り出し部(図8の一点鎖線で示す部分)とを撤去すると共に、既設橋脚10の断面を橋脚長さの増大に応じて補強している。図10中符号23で示す部分が橋脚10の補強部分である。
【0050】
このフーチングの下方への移設(即ち、既設フーチング11から新設フーチング21への変更)に伴い、新設フーチング21は、上端のレベルが下方に変更となった既設杭12の新たな頭部12b′と地中壁20により支持されている。
【0051】
次に、図10の構造を得るまでの施工手順を説明する。
【0052】
まず、図2に示すような、修復補強を必要とする現状の構造に対し、図3に示すように、既設フーチング11の周囲の洗掘を受けた地盤8中に、環状の地中壁20を打ち込む。この場合の環状の地中壁20は、例えば、四角筒状の鋼矢板壁で構成し、下端を複数の既設杭12の水平抵抗に有効な範囲の深度まで埋設する。この際、地中壁20の上端は、河川6の水面より上方に露出させておく。
【0053】
次に、図4に示すように、地中壁20の上部に切梁50を設置し、その状態で、地中壁20の内側の水を抜いて、地盤8を、新設フーチング21を構築するレベルまで掘削する。また、環状の地中壁20で囲まれた領域の少なくとも外周部に、既設杭12の水平抵抗に有効な範囲を固化改良した地盤改良部25を設ける。ここで、固化改良は、複数の既設杭12の水平抵抗に有効な範囲の深度まで所定の薬液または固化材を注入すること、または、その上で攪拌混合することで行う。
【0054】
なお、地盤改良部25を設ける範囲は、深さ方向については、地中壁20の内側の全深度であっても、一部の深度であってもよい。また、水平方向については、地中壁20で囲まれた領域の外周部のみであっても、全領域であってもよい。
【0055】
次に、既設フーチング11の下方に位置させ、且つ、既設杭12の上部(新たな頭部12b′)に支持を取って、外周部を地中壁20に連結させながら新設フーチング21を構築する。また、新設フーチング21と既設橋脚10の下端との間に新設橋脚22を構築する。さらに、既設橋脚10の断面を、橋脚長さの増大に応じて補強する。補強は、通常の柱の補強と同様に、例えば、橋脚の外周部に鉄筋コンクリート(RC)を巻き立てて断面を大きくしたり、鉄板を巻き締めして断面強度を増大させたりすることで行う。
【0056】
次に、新設フーチング21及び新設橋脚22を構築する際にそれらに含まれる部分以外の、既設杭12の上端や既設フーチング11の張り出し部などの不要部分(図8中一点鎖線で示す部分)を撤去する。
【0057】
その後は、地中壁20の内側を周囲地盤8と同レベルとなるよう埋め戻す。そうすることにより、洗掘を受けた地盤8の内部に、新設フーチング21が埋設された状態となる。次いで、切梁50を撤去し、地中壁20の上半部、つまり、新設フーチング21の上端の位置から上側の部分を撤去することで、図10の修復補強構造が完成する。
【0058】
このように、既設フーチング11の周囲の洗掘を受けた地盤8中に環状の地中壁20を設け、環状の地中壁20で囲まれた領域の少なくとも外周部に、既設杭12の水平抵抗に有効な範囲を固化改良した地盤改良部25を設け、洗掘を受けた地盤8の内部に既設杭12に支持を取ると共に環状の地中壁20に外周部を連結させて新設フーチング21を構築し、新設フーチング21と既設橋脚10の下端との間に新設橋脚22を構築し、新設フーチング21及び新設橋脚22を構築する際にそれらに含まれる部分以外の既設杭12の上端と既設フーチング11の張り出し部とを撤去すると共に、既設橋脚10の断面を、橋脚長さの増大に応じて補強したので、十分な支持強度を保証することができる。特に環状の地中壁20を新たに設けて、新設フーチング21の外周部をその地中壁20に連結している上、環状の地中壁20で囲まれた領域の少なくとも外周部に地盤改良部25を設けているので、一層の強度増強を図ることができる。また、フーチングが水上や水中に露出した状態で残らないので、それらが航路の障害となることもない。
【0059】
<第4実施形態>
図11(a)は本発明の第4実施形態の水上構造物の修復補強構造を示す断面図、図11(b)は図11(a)のX−X矢視断面図である。尚、図2,図3,図4の切梁50及び図8の既設フーチング11の張り出し部は、援用する。
【0060】
図11に示す第4実施形態の水上構造物の修復補強構造は、河川6を道路や鉄道が横断する部分に設けられた橋脚(水上構造物)10に適用されている。
【0061】
修復する前の構造では、図2に示すように、地下の支持層7まで先端12aが到達する複数の既設杭12の頭部12bに既設フーチング11が支持され、この既設フーチング11の上部に既設橋脚10が立設されている。そして、既設フーチング11の周囲の地盤8が洗掘を受けて河床低下を来しており、それにより、既設フーチング11が水底地盤8から露出してしまっている。
【0062】
これを修復したのが、図11に示す実施形態の修復補強構造であり、この修復補強構造では、既設フーチング11の周囲の洗掘を受けた地盤8中に環状の地中壁20を設け、その環状の地中壁20の内側で既設杭12の周囲の洗掘を受けた地盤8中に、先端24aを支持層7に到達させた増設杭24を構築し、また環状の地中壁20で囲まれた領域の少なくとも外周部に、既設杭12の水平抵抗に有効な範囲を固化改良した地盤改良部25を設け、洗掘を受けた地盤8の内部に、既設フーチング11の下方に位置させ、且つ、既設杭12の新たな頭部12b′及び増設杭24の頭部24bに支持を取ると共に環状の地中壁20に外周部を連結させて新設フーチング21を構築し、新設フーチング21と既設橋脚10の下端との間に新設橋脚22を構築している。
【0063】
また、新設フーチング21及び新設橋脚22を構築する際にそれらに含まれる部分以外の既設杭12の上端と既設フーチング11の張り出し部(図8の一点鎖線で示す部分)とを撤去すると共に、既設橋脚10の断面を橋脚長さの増大に応じて補強している。図中符号23で示す部分が橋脚10の補強部分である。
【0064】
このフーチングの下方への移設(即ち、既設フーチング11から新設フーチング21への変更)に伴い、新設フーチング21は、上端のレベルが下方に変更となった既設杭12の新たな頭部12b′と増設杭24の頭部24bと地中壁20とにより支持されている。
【0065】
次に、図11の構造を得るまでの施工手順を説明する。
【0066】
まず、図2に示すような、修復補強を必要とする現状の構造に対し、図3に示すように、既設フーチング11の周囲の洗掘を受けた地盤8中に、環状の地中壁20を打ち込む。この場合の環状の地中壁20は、例えば、四角筒状の鋼矢板壁で構成し、下端を複数の既設杭12の水平抵抗に有効な範囲の深度まで埋設する。この際、地中壁20の上端は、河川6の水面より上方に露出させておく。
【0067】
次に、地中壁20の内側で既設杭12の周囲の洗掘を受けた地盤8中に、先端24aを支持層7に到達するように増設杭24を構築する。この場合の増設杭24の頭部24bの位置は、新設フーチング21を構築するレベルに設定しておく。また、環状の地中壁20で囲まれた領域の少なくとも外周部に、既設杭12の水平抵抗に有効な範囲を固化改良した地盤改良部25を設ける。ここで、固化改良は、複数の既設杭12の水平抵抗に有効な範囲の深度まで所定の薬液または固化材を注入すること、または、その上で攪拌混合することで行う。
【0068】
なお、地盤改良部25を設ける範囲は、深さ方向については、地中壁20の内側の全深度であっても、一部の深度であってもよい。また、水平方向については、地中壁20で囲まれた領域の外周部のみであっても、全領域であってもよい。
【0069】
次に、地中壁20の上部に切梁50を設置し、その状態で、地中壁20の内側の水を抜いて、地盤8を、新設フーチング21を構築するレベルまで掘削する。
【0070】
次に、既設フーチング11の下方に位置させ、且つ、既設杭12の上部(新たな頭部12b′及び増設杭24の頭部24bに支持を取って、外周部を地中壁20に連結させながら新設フーチング21を構築する。また、新設フーチング21と既設橋脚10の下端との間に新設橋脚22を構築する。さらに、既設橋脚10の断面を、橋脚長さの増大に応じて補強する。補強は、通常の柱の補強と同様に、例えば、橋脚の外周部に鉄筋コンクリート(RC)を巻き立てて断面を大きくしたり、鉄板を巻き締めして断面強度を増大させたりすることで行う。
【0071】
次に、新設フーチング21及び新設橋脚22を構築する際にそれらに含まれる部分以外の、既設杭12の上端や既設フーチング11の張り出し部などの不要部分(図8中一点鎖線で示す部分)を撤去する。
【0072】
その後は、地中壁20の内側を周囲地盤8と同レベルとなるよう埋め戻す。そうすることにより、洗掘を受けた地盤8の内部に、新設フーチング21が埋設された状態となる。次いで、切梁50を撤去し、地中壁20の上半部、つまり、新設フーチング21の上端の位置から上側の部分を撤去することで、図11の修復補強構造が完成する。
【0073】
このように、既設フーチング11の周囲の洗掘を受けた地盤8中に環状の地中壁20を設け、地中壁20の内側で既設杭12の周囲の洗掘を受けた地盤8中に増設杭24を構築し、環状の地中壁20で囲まれた領域の少なくとも外周部に、既設杭12の水平抵抗に有効な範囲を固化改良した地盤改良部25を設け、洗掘を受けた地盤8の内部に既設杭12及び増設杭24に支持を取ると共に環状の地中壁20に外周部を連結させて新設フーチング21を構築し、新設フーチング21と既設橋脚10の下端との間に新設橋脚22を構築し、新設フーチング21及び新設橋脚22を構築する際にそれらに含まれる部分以外の既設杭12の上端と既設フーチング11の張り出し部とを撤去すると共に、既設橋脚10の断面を、橋脚長さの増大に応じて補強したので、十分な支持強度を保証することができる。特に地中壁20を新たに設けて、新設フーチング21の外周部をその地中壁20に連結している上、その地中壁20の内側の既設杭12の周囲に増設杭24を設け、環状の地中壁20で囲まれた領域の少なくとも外周部に地盤改良部25を設けているので、一層の強度増強を図ることができる。また、フーチングが水上や水中に露出した状態で残らないので、それらが航路の障害となることもない。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1実施形態の水上構造物の修復補強構造を示す断面図である。
【図2】同修復補強構造を実現する前の、修復が必要になったときの状態を示す断面図である。
【図3】修復工程の最初の段階として締め切りのための地中壁を既設フーチングの周囲に構築した状態を示す断面図である。
【図4】次の工程として切梁を設置して地中壁の内側の地盤をフーチング移設深度まで掘削した状態を示す断面図である。
【図5】地中壁の内側の地盤の掘削後に新設フーチングを構築した状態を示す断面図である。
【図6】新設フーチングの構築後に既設橋脚の下側に新設橋脚を構築した状態を示す断面図である。
【図7】既設橋脚の断面を補強した状態を示す断面図である。
【図8】図1の構造とするために既設杭や既設フーチングの不要部を撤去した状態を示す断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態の水上構造物の修復補強構造を示す断面図である。
【図10】(a)は本発明の第3実施形態の水上構造物の修復補強構造を示す断面図、(b)は(a)のX−X矢視断面図である。
【図11】(a)は本発明の第4実施形態の水上構造物の修復補強構造を示す断面図、(b)は(a)のX−X矢視断面図である。
【図12】従来の水上構造物に修復すべき問題が発生した状態を示す断面図である。
【図13】従来の対策工法の概要を示す断面図である。
【符号の説明】
【0075】
6 河川
7 支持層
8 水底地盤
10 既設橋脚
11 既設フーチング
12 既設杭
12a 先端
12b,12b’ 頭部
20 地中壁
21 新設フーチング
22 新設橋脚
23 補強部分
24 増設杭
25 地盤改良部
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川や海中に構築された橋脚等の水上構造物の修復補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
河川や海上に道路や鉄道等の橋脚を構築する場合、複数の杭を地下の支持層まで打ち込み、それら複数の杭の頭部にフーチングを構築し、フーチングの上部に橋脚を立設するのが一般的である。この場合、フーチングは水底地盤中に埋め込んである。
【0003】
ところで、図12に示すように、経時的に水流による洗掘の作用を受けて、水底地盤8のレベルが低下してしまい、既設フーチング11が水底地盤8から露出した状態になることがある。図12において、10は橋脚、12は既設杭である。既設杭12は、先端12aが地下の支持層7まで打ち込まれており、頭部12bで既設フーチング11を支持している。既設橋脚10は、この既設フーチング11の上部に立設されている。
【0004】
図12に示すように、既設フーチング11が水底地盤8から露出した状態になると、支持力不足となるので、その対策が必要となる。
【0005】
従来の対策工法としては、図13に示すように、既設フーチング11の周囲の地盤8に環状の地中壁20を構築し、その地中壁20の上端と既設フーチング11との間を増しフーチング13で埋めるようにした所謂「井筒工法」が知られている。
【特許文献1】特開平9−143953号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記従来の井筒工法は、橋脚に対する支持力補強の点については満足な結果が得られるものの、水中や水上部にフーチングが突出して残るために、それが航路の障害となるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記事情を考慮し、水底地盤が洗掘を受けた際の対策として、航路の障害とならずに、十分な支持強度を保証することのできる水上構造物の修復補強構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、複数の既設杭の頭部に既設フーチングが支持され、この既設フーチングの上部に既設橋脚が立設された水上構造物であって、前記既設フーチングの周囲の地盤が水流の影響により洗掘を受けた水上構造物の修復補強構造において、前記洗掘を受けた地盤の内部に、前記既設フーチングの下方に位置させ且つ前記既設杭に支持を取って新設フーチングを構築し、該新設フーチングと既設橋脚の下端との間に新設橋脚を構築し、前記新設フーチング及び新設橋脚を構築する際にそれらに含まれる部分以外の前記既設杭の上端と既設フーチングの張り出し部とを撤去すると共に、前記既設橋脚の断面を、橋脚長さの増大に応じて補強したことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1記載の水上構造物の修復補強構造であって、前記既設杭の周囲の前記洗掘を受けた地盤中に増設杭を構築し、前記既設杭及び増設杭に支持を取って新設フーチングを構築したことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1記載の水上構造物の修復補強構造であって、前記既設フーチングの周囲の前記洗掘を受けた地盤中に環状の地中壁を設けると共に、該環状の地中壁に外周部を連結させて前記新設フーチングを構築し、前記環状の地中壁で囲まれた領域の少なくとも外周部に、前記既設杭の水平抵抗に有効な範囲を固化改良した地盤改良部を設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1記載の水上構造物の修復補強構造であって、前記既設フーチングの周囲の前記洗掘を受けた地盤中に環状の地中壁を設けると共に、該環状の地中壁に外周部を連結させて前記新設フーチングを構築し、前記環状の地中壁の内側で前記既設杭の周囲の前記洗掘を受けた地盤中に増設杭を構築し、前記環状の地中壁で囲まれた領域の少なくとも外周部に、前記既設杭及び増設杭の水平抵抗に有効な範囲を固化改良した地盤改良部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、洗掘を受けた地盤の内部に新設フーチングを構築し、新設フーチングと既設橋脚の下端との間に新設橋脚を構築し、新設フーチング及び新設橋脚を構築する際にそれらに含まれる部分以外の既設杭の上端と既設フーチングの張り出し部とを撤去すると共に、既設橋脚の断面を、橋脚長さの増大に応じて補強したので、十分な支持強度を保証することができる。また、フーチングが水上や水中に露出した状態で残らないので、それらが航路の障害となることもない。
【0013】
請求項2の発明によれば、既設杭の周囲の洗掘を受けた地盤中に増設杭を構築し、洗掘を受けた地盤の内部に新設フーチングを構築し、新設フーチングと既設橋脚の下端との間に新設橋脚を構築し、新設フーチング及び新設橋脚を構築する際にそれらに含まれる部分以外の既設杭の上端と既設フーチングの張り出し部とを撤去すると共に、既設橋脚の断面を、橋脚長さの増大に応じて補強したので、十分な支持強度を保証することができる。特に既設杭の周囲に増設杭を設けたので、一層の強度増強を図ることができる。また、フーチングが水上や水中に露出した状態で残らないので、それらが航路の障害となることもない。
【0014】
請求項3の発明によれば、既設フーチングの周囲の洗掘を受けた地盤中に環状の地中壁を設け、環状の地中壁で囲まれた領域の少なくとも外周部に、既設杭の水平抵抗に有効な範囲を固化改良した地盤改良部を設け、洗掘を受けた地盤の内部に既設杭に支持を取ると共に環状の地中壁に外周部を連結させて新設フーチングを構築し、新設フーチングと既設橋脚の下端との間に新設橋脚を構築し、新設フーチング及び新設橋脚を構築する際にそれらに含まれる部分以外の既設杭の上端と既設フーチングの張り出し部とを撤去すると共に、既設橋脚の断面を、橋脚長さの増大に応じて補強したので、十分な支持強度を保証することができる。特に地中壁を新たに設けて、新設フーチングの外周部をその地中壁に連結している上、環状の地中壁で囲まれた領域の少なくとも外周部に地盤改良部を設けているので、一層の強度増強を図ることができる。また、フーチングが水上や水中に露出した状態で残らないので、それらが航路の障害となることもない。
【0015】
請求項4の発明によれば、既設フーチングの周囲の洗掘を受けた地盤中に環状の地中壁を設け、地中壁の内側で既設杭の周囲の洗掘を受けた地盤中に増設杭を構築し、環状の地中壁で囲まれた領域の少なくとも外周部に、既設杭の水平抵抗に有効な範囲を固化改良した地盤改良部を設け、洗掘を受けた地盤の内部に既設杭及び増設杭に支持を取ると共に環状の地中壁に外周部を連結させて新設フーチングを構築し、新設フーチングと既設橋脚の下端との間に新設橋脚を構築し、新設フーチング及び新設橋脚を構築する際にそれらに含まれる部分以外の既設杭の上端と既設フーチングの張り出し部とを撤去すると共に、既設橋脚の断面を、橋脚長さの増大に応じて補強したので、十分な支持強度を保証することができる。特に地中壁を新たに設けて、新設フーチングの外周部をその地中壁に連結している上、その地中壁の内側の既設杭の周囲に増設杭を設け、環状の地中壁で囲まれた領域の少なくとも外周部に地盤改良部を設けているので、一層の強度増強を図ることができる。また、フーチングが水上や水中に露出した状態で残らないので、それらが航路の障害となることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の水上構造物の修復補強構造は、洗掘を受けたことにより水底地盤から露出してしまった既設フーチングの一部を撤去して、新たなフーチングを下方の水底地盤中に設けたこと、つまりフーチングを下方へ移設したことを特徴とするもので、以下に本発明の各実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0017】
<第1実施形態>
図1は本発明の第1実施形態の水上構造物の修復補強構造を示す断面図、図2〜図8はその施工手順を示す図で、図2は同修復補強構造を実現する前の、修復が必要になったときの状態を示す断面図、図3は修復工程の最初の段階として締め切りのための地中壁を既設フーチングの周囲に構築した状態を示す断面図、図4は次の工程として切梁を設置して地中壁の内側の地盤をフーチング移設深度まで掘削した状態を示す断面図、図5は地中壁の内側の地盤の掘削後に新設フーチングを構築した状態を示す断面図、図6は新設フーチングの構築後に既設橋脚の下側に新設橋脚を構築した状態を示す断面図、図7は既設橋脚の断面を補強した状態を示す断面図、図8は図1の構造とするために既設杭や既設フーチングの不要部を撤去した状態を示す断面図である。
【0018】
図1に示す第1実施形態の水上構造物の修復補強構造は、河川6を道路や鉄道が横断する部分に設けられた橋脚(水上構造物)10に適用されている。
【0019】
修復する前の構造では、図2に示すように、地下の支持層7まで先端12aが到達する複数の既設杭12の頭部12bに既設フーチング11が支持され、この既設フーチング11の上部に既設橋脚10が立設されている。そして、既設フーチング11の周囲の地盤8が洗掘を受けて河床低下を来しており、それにより、既設フーチング11が水底地盤8から露出してしまっている。
【0020】
これを修復したのが、図1に示す実施形態の修復補強構造であり、この修復補強構造では、洗掘を受けた地盤8の内部に、既設フーチング11(図2参照)の下方に位置させ且つ既設杭12の新たな頭部12b′に支持を取って新設フーチング21を構築すると共に、新設フーチング21と既設橋脚10の下端との間に新設橋脚22を構築している。また、新設フーチング21及び新設橋脚22を構築する際にそれらに含まれる部分以外の既設杭12の上端と既設フーチング11の張り出し部(図8の一点鎖線で示す部分)とを撤去すると共に、既設橋脚10の断面を橋脚長さの増大に応じて補強している。図中符号23で示す部分が橋脚10の補強部分である。
【0021】
このフーチングの下方への移設(即ち、既設フーチング11から新設フーチング21への変更)に伴い、新設フーチング21は、上端のレベルが下方に変更となった既設杭12の新たな頭部12b′により支持されている。
【0022】
次に、図1の構造を得るまでの施工手順を説明する。
【0023】
まず、図2に示すような、修復補強を必要とする現状の構造に対し、図3に示すように、既設フーチング11の周囲の洗掘を受けた地盤8中に、環状の地中壁20を打ち込む。この場合の環状の地中壁20は、例えば、四角筒状の鋼矢板壁で構成し、下端を複数の既設杭12の水平抵抗に有効な範囲の深度まで埋設する。この際、地中壁20の上端は、河川6の水面より上方に露出させておく。
【0024】
次に、図4に示すように、地中壁20の上部に切梁50を設置し、その状態で、地中壁20の内側の水を抜いて、地盤8を、新設フーチング21(図5参照)を構築するレベルまで掘削する。
【0025】
次に、図5に示すように、既設フーチング11の下方に位置させ、且つ、既設杭12の上部(新たな頭部12b′)に支持を取って、新設フーチング21を構築する。
【0026】
また、図6に示すように、新設フーチング21と既設橋脚10の下端との間に新設橋脚22を構築する。
【0027】
また、図7に示すように、既設橋脚10の断面を、橋脚長さの増大に応じて補強する。補強は、通常の柱の補強と同様に、例えば、橋脚の外周部に鉄筋コンクリート(RC)を巻き立てて断面を大きくしたり、鉄板を巻き締めして断面強度を増大させたりすることで行う。
【0028】
次に、図8に示すように、新設フーチング21及び新設橋脚22を構築する際にそれらに含まれる部分以外の、既設杭12の上端や既設フーチング11の張り出し部などの不要部分(図8中一点鎖線で示す部分)を撤去する。
【0029】
その後は、地中壁20の内側を周囲地盤8と同レベルとなるよう埋め戻す。そうすることにより、洗掘を受けた地盤8の内部に、新設フーチング21が埋設された状態となる。次いで、切梁50を撤去し、地中壁20を撤去することで、図1の修復補強構造が完成する。
【0030】
このように、洗掘を受けた地盤8の内部に新設フーチング21を構築し、新設フーチング21と既設橋脚10の下端との間に新設橋脚22を構築し、新設フーチング21及び新設橋脚22を構築する際にそれらに含まれる部分以外の既設杭12の上端と既設フーチング11の張り出し部とを撤去すると共に、既設橋脚10の断面を、橋脚長さの増大に応じて補強したので、十分な支持強度を保証することができる。また、フーチングが水上や水中に露出した状態で残らないので、それらが航路の障害となることもない。
【0031】
<第2実施形態>
図9は本発明の第2実施形態の水上構造物の修復補強構造を示す断面図である。尚、図2,図3,図4の切梁50及び図8の既設フーチング11の張り出し部は、援用する。
【0032】
図9に示す第2実施形態の水上構造物の修復補強構造は、河川6を道路や鉄道が横断する部分に設けられた橋脚(水上構造物)10に適用されている。
【0033】
修復する前の構造では、図2に示すように、地下の支持層7まで先端12aが到達する複数の既設杭12の頭部12bに既設フーチング11が支持されており、この既設フーチング11の上部に既設橋脚10が立設されている。そして、既設フーチング11の周囲の地盤8が洗掘を受けて河床低下を来しており、それにより、既設フーチング11が水底地盤8から露出してしまっている。
【0034】
これを修復したのが、図9に示す実施形態の修復補強構造であり、この修復補強構造では、既設杭12の周囲の洗掘を受けた地盤8中に、先端24aを支持層7に到達させた増設杭24を構築し、洗掘を受けた地盤8の内部に、既設フーチング11の下方に位置させ、且つ、既設杭12及び増設杭24の頭部24bに支持を取って新設フーチング21を構築すると共に、新設フーチング21と既設橋脚10の下端との間に新設橋脚22を構築している。
【0035】
また、新設フーチング21及び新設橋脚22を構築する際にそれらに含まれる部分以外の既設杭12の上端と既設フーチング11の張り出し部(図8の一点鎖線で示す部分)とを撤去すると共に、既設橋脚10の断面を橋脚長さの増大に応じて補強している。図9中符号23で示す部分が橋脚10の補強部分である。
【0036】
このフーチングの下方への移設(即ち、既設フーチング11から新設フーチング21への変更)に伴い、新設フーチング21は、上端のレベルが下方に変更となった既設杭12の新たな頭部12b′と増設杭24の頭部24bにより支持されている。
【0037】
次に、図9の構造を得るまでの施工手順を説明する。
【0038】
まず、図2に示すような、修復補強を必要とする現状の構造に対し、図3に示すように、既設フーチング11の周囲の洗掘を受けた地盤8中に、環状の地中壁20を打ち込む。この場合の環状の地中壁20は、例えば、四角筒状の鋼矢板壁で構成し、下端を複数の既設杭12の水平抵抗に有効な範囲の深度まで埋設する。この際、地中壁20の上端は、河川6の水面より上方に露出させておく。
【0039】
次に、既設杭12の周囲の洗掘を受けた地盤8中に、先端24aを支持層7に到達するように増設杭24を構築する。この場合の増設杭24の頭部24bの位置は、新設フーチング21を構築するレベルに設定しておく。
【0040】
次に、図4に示すように、地中壁20の上部に切梁50を設置し、その状態で、地中壁20の内側の水を抜いて、地盤8を、新設フーチング21を構築するレベルまで掘削する。
【0041】
次に、既設フーチング11の下方に位置させ、且つ、既設杭12の上部(新たな頭部12b′)及び増設杭24の頭部24bに支持を取って、新設フーチング21を構築する。また、新設フーチング21と既設橋脚10の下端との間に新設橋脚22を構築する。さらに、既設橋脚10の断面を、橋脚長さの増大に応じて補強する。補強は、通常の柱の補強と同様に、例えば、橋脚の外周部に鉄筋コンクリート(RC)を巻き立てて断面を大きくしたり、鉄板を巻き締めして断面強度を増大させたりすることで行う。
【0042】
次に、新設フーチング21及び新設橋脚22を構築する際にそれらに含まれる部分以外の、既設杭12の上端や既設フーチング11の張り出し部などの不要部分を撤去する。
【0043】
その後は、地中壁20の内側を周囲地盤8と同レベルとなるよう埋め戻す。そうすることにより、洗掘を受けた地盤8の内部に、新設フーチング21が埋設された状態となる。次いで、切梁50を撤去し、地中壁20を撤去することで、図9の修復補強構造が完成する。
【0044】
このように、既設杭11の周囲の洗掘を受けた地盤8中に増設杭24を構築し、洗掘を受けた地盤8の内部に新設フーチング21を構築し、新設フーチング21と既設橋脚10の下端との間に新設橋脚22を構築し、新設フーチング21及び新設橋脚22を構築する際にそれらに含まれる部分以外の既設杭12の上端と既設フーチング11の張り出し部とを撤去すると共に、既設橋脚10の断面を、橋脚長さの増大に応じて補強したので、十分な支持強度を保証することができる。特に既設杭12の周囲に増設杭24を設けたので、一層の強度増強を図ることができる。また、フーチングが水上や水中に露出した状態で残らないので、それらが航路の障害となることもない。
【0045】
<第3実施形態>
図10(a)は本発明の第3実施形態の水上構造物の修復補強構造を示す断面図、図10(b)は図10(a)のX−X矢視断面図である。尚、図2,図3,図4の切梁50及び図8の既設フーチング11の張り出し部は、援用する。
【0046】
図10に示す第3実施形態の水上構造物の修復補強構造は、河川6を道路や鉄道が横断する部分に設けられた橋脚(水上構造物)10に適用されている。
【0047】
修復する前の構造では、図2に示すように、地下の支持層7まで先端12aが到達する複数の既設杭12の頭部12bに既設フーチング11が支持され、この既設フーチング11の上部に既設橋脚10が立設されている。そして、既設フーチング11の周囲の地盤8が洗掘を受けて河床低下を来しており、それにより、既設フーチング11が水底地盤8から露出してしまっている。
【0048】
これを修復したのが、図10に示す実施形態の修復補強構造であり、この修復補強構造では、既設フーチング11の周囲の洗掘を受けた地盤8中に環状の地中壁20を設け、その環状の地中壁20で囲まれた領域の少なくとも外周部に、既設杭12の水平抵抗に有効な範囲を固化改良した地盤改良部25を設け、洗掘を受けた地盤8の内部に、既設フーチング11の下方に位置させ、且つ、既設杭12の新たな頭部12b′に支持を取ると共に環状の地中壁20に外周部を連結させて新設フーチング21を構築し、新設フーチング21と既設橋脚10の下端との間に新設橋脚22を構築している。
【0049】
また、新設フーチング21及び新設橋脚22を構築する際にそれらに含まれる部分以外の既設杭12の上端と既設フーチング11の張り出し部(図8の一点鎖線で示す部分)とを撤去すると共に、既設橋脚10の断面を橋脚長さの増大に応じて補強している。図10中符号23で示す部分が橋脚10の補強部分である。
【0050】
このフーチングの下方への移設(即ち、既設フーチング11から新設フーチング21への変更)に伴い、新設フーチング21は、上端のレベルが下方に変更となった既設杭12の新たな頭部12b′と地中壁20により支持されている。
【0051】
次に、図10の構造を得るまでの施工手順を説明する。
【0052】
まず、図2に示すような、修復補強を必要とする現状の構造に対し、図3に示すように、既設フーチング11の周囲の洗掘を受けた地盤8中に、環状の地中壁20を打ち込む。この場合の環状の地中壁20は、例えば、四角筒状の鋼矢板壁で構成し、下端を複数の既設杭12の水平抵抗に有効な範囲の深度まで埋設する。この際、地中壁20の上端は、河川6の水面より上方に露出させておく。
【0053】
次に、図4に示すように、地中壁20の上部に切梁50を設置し、その状態で、地中壁20の内側の水を抜いて、地盤8を、新設フーチング21を構築するレベルまで掘削する。また、環状の地中壁20で囲まれた領域の少なくとも外周部に、既設杭12の水平抵抗に有効な範囲を固化改良した地盤改良部25を設ける。ここで、固化改良は、複数の既設杭12の水平抵抗に有効な範囲の深度まで所定の薬液または固化材を注入すること、または、その上で攪拌混合することで行う。
【0054】
なお、地盤改良部25を設ける範囲は、深さ方向については、地中壁20の内側の全深度であっても、一部の深度であってもよい。また、水平方向については、地中壁20で囲まれた領域の外周部のみであっても、全領域であってもよい。
【0055】
次に、既設フーチング11の下方に位置させ、且つ、既設杭12の上部(新たな頭部12b′)に支持を取って、外周部を地中壁20に連結させながら新設フーチング21を構築する。また、新設フーチング21と既設橋脚10の下端との間に新設橋脚22を構築する。さらに、既設橋脚10の断面を、橋脚長さの増大に応じて補強する。補強は、通常の柱の補強と同様に、例えば、橋脚の外周部に鉄筋コンクリート(RC)を巻き立てて断面を大きくしたり、鉄板を巻き締めして断面強度を増大させたりすることで行う。
【0056】
次に、新設フーチング21及び新設橋脚22を構築する際にそれらに含まれる部分以外の、既設杭12の上端や既設フーチング11の張り出し部などの不要部分(図8中一点鎖線で示す部分)を撤去する。
【0057】
その後は、地中壁20の内側を周囲地盤8と同レベルとなるよう埋め戻す。そうすることにより、洗掘を受けた地盤8の内部に、新設フーチング21が埋設された状態となる。次いで、切梁50を撤去し、地中壁20の上半部、つまり、新設フーチング21の上端の位置から上側の部分を撤去することで、図10の修復補強構造が完成する。
【0058】
このように、既設フーチング11の周囲の洗掘を受けた地盤8中に環状の地中壁20を設け、環状の地中壁20で囲まれた領域の少なくとも外周部に、既設杭12の水平抵抗に有効な範囲を固化改良した地盤改良部25を設け、洗掘を受けた地盤8の内部に既設杭12に支持を取ると共に環状の地中壁20に外周部を連結させて新設フーチング21を構築し、新設フーチング21と既設橋脚10の下端との間に新設橋脚22を構築し、新設フーチング21及び新設橋脚22を構築する際にそれらに含まれる部分以外の既設杭12の上端と既設フーチング11の張り出し部とを撤去すると共に、既設橋脚10の断面を、橋脚長さの増大に応じて補強したので、十分な支持強度を保証することができる。特に環状の地中壁20を新たに設けて、新設フーチング21の外周部をその地中壁20に連結している上、環状の地中壁20で囲まれた領域の少なくとも外周部に地盤改良部25を設けているので、一層の強度増強を図ることができる。また、フーチングが水上や水中に露出した状態で残らないので、それらが航路の障害となることもない。
【0059】
<第4実施形態>
図11(a)は本発明の第4実施形態の水上構造物の修復補強構造を示す断面図、図11(b)は図11(a)のX−X矢視断面図である。尚、図2,図3,図4の切梁50及び図8の既設フーチング11の張り出し部は、援用する。
【0060】
図11に示す第4実施形態の水上構造物の修復補強構造は、河川6を道路や鉄道が横断する部分に設けられた橋脚(水上構造物)10に適用されている。
【0061】
修復する前の構造では、図2に示すように、地下の支持層7まで先端12aが到達する複数の既設杭12の頭部12bに既設フーチング11が支持され、この既設フーチング11の上部に既設橋脚10が立設されている。そして、既設フーチング11の周囲の地盤8が洗掘を受けて河床低下を来しており、それにより、既設フーチング11が水底地盤8から露出してしまっている。
【0062】
これを修復したのが、図11に示す実施形態の修復補強構造であり、この修復補強構造では、既設フーチング11の周囲の洗掘を受けた地盤8中に環状の地中壁20を設け、その環状の地中壁20の内側で既設杭12の周囲の洗掘を受けた地盤8中に、先端24aを支持層7に到達させた増設杭24を構築し、また環状の地中壁20で囲まれた領域の少なくとも外周部に、既設杭12の水平抵抗に有効な範囲を固化改良した地盤改良部25を設け、洗掘を受けた地盤8の内部に、既設フーチング11の下方に位置させ、且つ、既設杭12の新たな頭部12b′及び増設杭24の頭部24bに支持を取ると共に環状の地中壁20に外周部を連結させて新設フーチング21を構築し、新設フーチング21と既設橋脚10の下端との間に新設橋脚22を構築している。
【0063】
また、新設フーチング21及び新設橋脚22を構築する際にそれらに含まれる部分以外の既設杭12の上端と既設フーチング11の張り出し部(図8の一点鎖線で示す部分)とを撤去すると共に、既設橋脚10の断面を橋脚長さの増大に応じて補強している。図中符号23で示す部分が橋脚10の補強部分である。
【0064】
このフーチングの下方への移設(即ち、既設フーチング11から新設フーチング21への変更)に伴い、新設フーチング21は、上端のレベルが下方に変更となった既設杭12の新たな頭部12b′と増設杭24の頭部24bと地中壁20とにより支持されている。
【0065】
次に、図11の構造を得るまでの施工手順を説明する。
【0066】
まず、図2に示すような、修復補強を必要とする現状の構造に対し、図3に示すように、既設フーチング11の周囲の洗掘を受けた地盤8中に、環状の地中壁20を打ち込む。この場合の環状の地中壁20は、例えば、四角筒状の鋼矢板壁で構成し、下端を複数の既設杭12の水平抵抗に有効な範囲の深度まで埋設する。この際、地中壁20の上端は、河川6の水面より上方に露出させておく。
【0067】
次に、地中壁20の内側で既設杭12の周囲の洗掘を受けた地盤8中に、先端24aを支持層7に到達するように増設杭24を構築する。この場合の増設杭24の頭部24bの位置は、新設フーチング21を構築するレベルに設定しておく。また、環状の地中壁20で囲まれた領域の少なくとも外周部に、既設杭12の水平抵抗に有効な範囲を固化改良した地盤改良部25を設ける。ここで、固化改良は、複数の既設杭12の水平抵抗に有効な範囲の深度まで所定の薬液または固化材を注入すること、または、その上で攪拌混合することで行う。
【0068】
なお、地盤改良部25を設ける範囲は、深さ方向については、地中壁20の内側の全深度であっても、一部の深度であってもよい。また、水平方向については、地中壁20で囲まれた領域の外周部のみであっても、全領域であってもよい。
【0069】
次に、地中壁20の上部に切梁50を設置し、その状態で、地中壁20の内側の水を抜いて、地盤8を、新設フーチング21を構築するレベルまで掘削する。
【0070】
次に、既設フーチング11の下方に位置させ、且つ、既設杭12の上部(新たな頭部12b′及び増設杭24の頭部24bに支持を取って、外周部を地中壁20に連結させながら新設フーチング21を構築する。また、新設フーチング21と既設橋脚10の下端との間に新設橋脚22を構築する。さらに、既設橋脚10の断面を、橋脚長さの増大に応じて補強する。補強は、通常の柱の補強と同様に、例えば、橋脚の外周部に鉄筋コンクリート(RC)を巻き立てて断面を大きくしたり、鉄板を巻き締めして断面強度を増大させたりすることで行う。
【0071】
次に、新設フーチング21及び新設橋脚22を構築する際にそれらに含まれる部分以外の、既設杭12の上端や既設フーチング11の張り出し部などの不要部分(図8中一点鎖線で示す部分)を撤去する。
【0072】
その後は、地中壁20の内側を周囲地盤8と同レベルとなるよう埋め戻す。そうすることにより、洗掘を受けた地盤8の内部に、新設フーチング21が埋設された状態となる。次いで、切梁50を撤去し、地中壁20の上半部、つまり、新設フーチング21の上端の位置から上側の部分を撤去することで、図11の修復補強構造が完成する。
【0073】
このように、既設フーチング11の周囲の洗掘を受けた地盤8中に環状の地中壁20を設け、地中壁20の内側で既設杭12の周囲の洗掘を受けた地盤8中に増設杭24を構築し、環状の地中壁20で囲まれた領域の少なくとも外周部に、既設杭12の水平抵抗に有効な範囲を固化改良した地盤改良部25を設け、洗掘を受けた地盤8の内部に既設杭12及び増設杭24に支持を取ると共に環状の地中壁20に外周部を連結させて新設フーチング21を構築し、新設フーチング21と既設橋脚10の下端との間に新設橋脚22を構築し、新設フーチング21及び新設橋脚22を構築する際にそれらに含まれる部分以外の既設杭12の上端と既設フーチング11の張り出し部とを撤去すると共に、既設橋脚10の断面を、橋脚長さの増大に応じて補強したので、十分な支持強度を保証することができる。特に地中壁20を新たに設けて、新設フーチング21の外周部をその地中壁20に連結している上、その地中壁20の内側の既設杭12の周囲に増設杭24を設け、環状の地中壁20で囲まれた領域の少なくとも外周部に地盤改良部25を設けているので、一層の強度増強を図ることができる。また、フーチングが水上や水中に露出した状態で残らないので、それらが航路の障害となることもない。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1実施形態の水上構造物の修復補強構造を示す断面図である。
【図2】同修復補強構造を実現する前の、修復が必要になったときの状態を示す断面図である。
【図3】修復工程の最初の段階として締め切りのための地中壁を既設フーチングの周囲に構築した状態を示す断面図である。
【図4】次の工程として切梁を設置して地中壁の内側の地盤をフーチング移設深度まで掘削した状態を示す断面図である。
【図5】地中壁の内側の地盤の掘削後に新設フーチングを構築した状態を示す断面図である。
【図6】新設フーチングの構築後に既設橋脚の下側に新設橋脚を構築した状態を示す断面図である。
【図7】既設橋脚の断面を補強した状態を示す断面図である。
【図8】図1の構造とするために既設杭や既設フーチングの不要部を撤去した状態を示す断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態の水上構造物の修復補強構造を示す断面図である。
【図10】(a)は本発明の第3実施形態の水上構造物の修復補強構造を示す断面図、(b)は(a)のX−X矢視断面図である。
【図11】(a)は本発明の第4実施形態の水上構造物の修復補強構造を示す断面図、(b)は(a)のX−X矢視断面図である。
【図12】従来の水上構造物に修復すべき問題が発生した状態を示す断面図である。
【図13】従来の対策工法の概要を示す断面図である。
【符号の説明】
【0075】
6 河川
7 支持層
8 水底地盤
10 既設橋脚
11 既設フーチング
12 既設杭
12a 先端
12b,12b’ 頭部
20 地中壁
21 新設フーチング
22 新設橋脚
23 補強部分
24 増設杭
25 地盤改良部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の既設杭の頭部に既設フーチングが支持され、この既設フーチングの上部に既設橋脚が立設された水上構造物であって、前記既設フーチングの周囲の地盤が水流の影響により洗掘を受けた水上構造物の修復補強構造において、
前記洗掘を受けた地盤の内部に、前記既設フーチングの下方に位置させ且つ前記既設杭に支持を取って新設フーチングを構築し、該新設フーチングと既設橋脚の下端との間に新設橋脚を構築し、前記新設フーチング及び新設橋脚を構築する際にそれらに含まれる部分以外の前記既設杭の上端と既設フーチングの張り出し部とを撤去すると共に、前記既設橋脚の断面を、橋脚長さの増大に応じて補強したことを特徴とする水上構造物の修復補強構造。
【請求項2】
請求項1記載の水上構造物の修復補強構造であって、
前記既設杭の周囲の前記洗掘を受けた地盤中に増設杭を構築し、前記既設杭及び増設杭に支持を取って新設フーチングを構築したことを特徴とする水上構造物の修復補強構造。
【請求項3】
請求項1記載の水上構造物の修復補強構造であって、
前記既設フーチングの周囲の前記洗掘を受けた地盤中に環状の地中壁を設けると共に、該環状の地中壁に外周部を連結させて前記新設フーチングを構築し、前記環状の地中壁で囲まれた領域の少なくとも外周部に、前記既設杭の水平抵抗に有効な範囲を固化改良した地盤改良部を設けたことを特徴とする水上構造物の修復補強構造。
【請求項4】
請求項1記載の水上構造物の修復補強構造であって、
前記既設フーチングの周囲の前記洗掘を受けた地盤中に環状の地中壁を設けると共に、該環状の地中壁に外周部を連結させて前記新設フーチングを構築し、前記環状の地中壁の内側で前記既設杭の周囲の前記洗掘を受けた地盤中に増設杭を構築し、前記環状の地中壁で囲まれた領域の少なくとも外周部に、前記既設杭及び増設杭の水平抵抗に有効な範囲を固化改良した地盤改良部を設けたことを特徴とする水上構造物の修復補強構造。
【請求項1】
複数の既設杭の頭部に既設フーチングが支持され、この既設フーチングの上部に既設橋脚が立設された水上構造物であって、前記既設フーチングの周囲の地盤が水流の影響により洗掘を受けた水上構造物の修復補強構造において、
前記洗掘を受けた地盤の内部に、前記既設フーチングの下方に位置させ且つ前記既設杭に支持を取って新設フーチングを構築し、該新設フーチングと既設橋脚の下端との間に新設橋脚を構築し、前記新設フーチング及び新設橋脚を構築する際にそれらに含まれる部分以外の前記既設杭の上端と既設フーチングの張り出し部とを撤去すると共に、前記既設橋脚の断面を、橋脚長さの増大に応じて補強したことを特徴とする水上構造物の修復補強構造。
【請求項2】
請求項1記載の水上構造物の修復補強構造であって、
前記既設杭の周囲の前記洗掘を受けた地盤中に増設杭を構築し、前記既設杭及び増設杭に支持を取って新設フーチングを構築したことを特徴とする水上構造物の修復補強構造。
【請求項3】
請求項1記載の水上構造物の修復補強構造であって、
前記既設フーチングの周囲の前記洗掘を受けた地盤中に環状の地中壁を設けると共に、該環状の地中壁に外周部を連結させて前記新設フーチングを構築し、前記環状の地中壁で囲まれた領域の少なくとも外周部に、前記既設杭の水平抵抗に有効な範囲を固化改良した地盤改良部を設けたことを特徴とする水上構造物の修復補強構造。
【請求項4】
請求項1記載の水上構造物の修復補強構造であって、
前記既設フーチングの周囲の前記洗掘を受けた地盤中に環状の地中壁を設けると共に、該環状の地中壁に外周部を連結させて前記新設フーチングを構築し、前記環状の地中壁の内側で前記既設杭の周囲の前記洗掘を受けた地盤中に増設杭を構築し、前記環状の地中壁で囲まれた領域の少なくとも外周部に、前記既設杭及び増設杭の水平抵抗に有効な範囲を固化改良した地盤改良部を設けたことを特徴とする水上構造物の修復補強構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−114721(P2009−114721A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−288247(P2007−288247)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【出願人】(000236610)株式会社不動テトラ (136)
【出願人】(390036504)日特建設株式会社 (99)
【出願人】(000103769)オリエンタル白石株式会社 (136)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【出願人】(000236610)株式会社不動テトラ (136)
【出願人】(390036504)日特建設株式会社 (99)
【出願人】(000103769)オリエンタル白石株式会社 (136)
【Fターム(参考)】
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