説明

水不溶性の無機リン酸塩結合剤を含む顆粒状物質

以下を含む顆粒状物質を提供する。
(i)顆粒状物質の重量当り少なくとも50重量%の化学式(I)で示されるリン酸塩を結合しうる固体の水不溶性混合金属化合物:
MII1-xMIIIx(OH)2An-y.zH2O (I)
[式中、
MIIはマグネシウム、カルシウム、ランタンおよびセリウムの少なくとも1種であり;
MIIIは少なくとも鉄(III)であり;
An-は少なくとも1種のn価のアニオンであり;
x=Σny;
0<x≦0.67、0<y≦1、および0≦z≦10である]
(ii)顆粒状物質の重量当り少なくとも3重量%から12重量%の非化学的結合水、および
(iii)顆粒状物質の重量当り47重量%以下の賦形剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、水不溶性の無機固体(特に混合金属化合物)を含み、リン酸塩結合剤のような薬剤活性を持つ顆粒に関する。本発明はまた、顆粒の製造法および経口投与用単位用量での使用も含む。
【背景技術】
【0002】
特にヒトのような温血動物においては、様々な病気が血中の高いリン酸塩濃度を引き起こしうる。このことは、リン酸カルシウム沈着のような多くの生理的問題を引き起こしうる。
【0003】
定期的に血液透析の治療を受けている腎機能障害の患者では、血漿中のリン酸塩濃度が劇的に上昇しうり、高リン血症として知られているこの状態は、結果として軟組織におけるリン酸カルシウム沈着をもたらす。血漿のリン酸塩濃度は無機あるいは有機のリン酸塩結合剤の経口摂取により減らすことができる。
【0004】
無機の固体リン酸塩結合剤の類はWO99/15189において発表されている。これらは、アルカリ処理された硫酸カルシウムのような無機の硫酸塩を含み、また、実質的にアルミニウムが存在せず、かつそこに記載されているリン酸塩結合試験によって測定される、pH2から8の範囲にわたって存在しているリン酸塩の総重量の少なくとも30重量%を結合しうる混合金属化合物を含んでいる。無機固体は水不溶性で、主に経口投与を対象としている。
【0005】
概して、そのような混合金属化合物は鉄(III)、そして少なくとも一つのマグネシウム、カルシウム、ランタンおよびセリウムを含みうる。好ましくは、それらはまた少なくとも一つの水酸基および炭酸アニオンも含み、さらに適宜少なくとも一つの硫酸塩や塩化物および酸化物を含有している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
WO99/15189で述べられているように、混合金属化合物はそれらを含有する単位投与量の処方における特別な問題を提起している。ひとつに、これらの問題はその化合物が相対的に大量の投与を必要とされるという事実から生じる。このことは、単位用量を飲み込みやすい大きさにして患者の薬剤服用順守を助けるために、賦形剤の構成部分をとても小さくして有効成分の含有量を極めて高くする必要があることを意味する。
【0007】
さらに物質的安定性と保存安定性を維持する薬剤活性成分を高く含有する無機の固体リン酸塩結合剤を含む単位用量が望まれる。また、胃で固体の無機リン酸塩結合剤を放出して急速にリン酸塩を結合するように崩壊するが、不快な味をもたらしたり患者の薬剤服用順守を難しくすることがないように、口や食道では過度に崩壊しない単位用量であることも必要とされている。また、物質の流動性が乏しいことによる問題がなく、さらに物質に結合するリン酸塩の比率が過度に妨害されない単位用量を、固体の無機リン酸塩結合剤から形成する製造過程も必要とされている。
【発明を解決するための手段】
【0008】
従って、本発明の第1の態様は、
(i)顆粒状物質の重量当り少なくとも50重量%の、化学式(I)で示されるリン酸塩を結合しうる固体の水不溶性混合金属化合物:
MII1-xMIIIx(OH)2An-y.zH2O (I)
[式中、
MIIはマグネシウム、カルシウム、ランタンおよびセリウムの少なくとも1種であり;
MIIIは少なくとも鉄(III)であり;
An-は少なくとも1種のn価のアニオンであり;
x=Σny;
0<x≦0.67、0<y≦1、および0≦z≦10である]
(ii)顆粒状物質の重量当り少なくとも3%から12重量%の非化学的結合水、および
(iii)顆粒状物質の重量当り47重量%以下の賦形剤、
を含む顆粒性物質を提供する。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載された顆粒状物質を含有する耐水カプセルを含む経口投与の単位用量体を提供する。
【0010】
本発明の第3の態様は、第1の態様に記載された顆粒状物質の圧縮錠剤を含む経口投与の単位用量体を提供する。好ましくは、錠剤は耐水コーティングで覆われている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
リン酸塩を結合しうる固体で水不溶性の無機化合物はここでは「無機リン酸塩結合剤」あるいは「結合剤」と呼ぶ。
【0012】
ここで「顆粒」と呼ぶものは本発明の「顆粒状物質」と同じとみなす。
【0013】
驚くべきことに、そのような顆粒を単位用量で使用するにおいて、顆粒および顆粒から形成された単位用量の保存中の物質的安定性を維持するには水の量が重要であることが見いだされている。的確な水分量であると、顆粒から作られた錠剤あるいは顆粒が口中で過剰な崩壊をせずに、顆粒が摂取された際の良好なリン酸塩結合をもたらす。また、そのような顆粒はリン酸塩を急速に結合することも見いだされている。
【0014】
化学式Iの化合物は粉末というよりむしろ顆粒状であることから、粉末の流動性の問題と粉末ベースの錠剤の保存安定性の問題が解決され、その上、急速な崩壊に関するそうした系の利点が維持されていることも見いだされている。例えば粉末で見いだされるような非常に細かい粒子は、錠剤圧縮の失敗(錠剤が柔らかすぎる、および均一でない)、保存安定性の悪さおよび機器への充填の際の問題につながる、粉末の流動性の悪さを引き起こす。驚くべきことに、我々は、賦形剤と化学式Iで示される化合物の混合物の造粒により微細に分割された粒子のサイズを増大させ、水分含量を制御するために顆粒を乾燥させ、そして、より細かく分割された粒子になるように顆粒の大きさを再び縮小することで(表7の粒子サイズ区分「小」のような)、賦形剤の量の大幅な増加を必要としない好ましいリン酸塩結合顆粒を得ることができ、さらに、量産(例えば10,000から150,000錠/時)可能な錠剤圧縮機の稼働と、飲用が難しくない小さなサイズの適切な形状の錠剤に圧縮することが可能であることを最初に見いだした。その一方、ミヤタらのUS4415555あるいはUS4629626に記載のような、ハイドロタルサイト物質の一般的な錠剤処方は、活性化合物が50%未満の組成物であり、また、錠剤の保存安定性を向上させるためにハイドロタルサイトの水温処理を必要とする。
【0015】
本発明の顆粒の水分含有量は顆粒中の非化学的結合水の含有量で表されている。それゆえに、この非化学的結合水は化学的結合水を排除している。化学的結合水は構造水とも呼ばれうる。
【0016】
非化学的結合水の量は、顆粒を粉砕して105℃で4時間加熱したあと、直ちに、減少した重量を測定することで決定される。除かれた非化学的結合水に相当する重量が、顆粒の重量パーセントとして算出される。
【0017】
非化学的結合水の量が顆粒の3重量%未満であると、顆粒から作られる錠剤は不安定で非常に壊れやすくなることが見いだされた。非化学的結合水の量が10重量%を超えると、顆粒および顆粒から作られる錠剤の崩壊時間が増大し、それに伴ってリン酸塩の結合率の低下および錠剤あるいは顆粒の保存安定性が低下し、保存状態において許容しがたい崩壊をもたらす。
【0018】
水不溶性のリン酸塩結合剤は、25℃での蒸留水に対する溶解性が0.5g/リットル以下、好ましくは0.1g/リットル以下、さらに好ましくは0.05g/リットル以下、であることを意味する。
【0019】
発明の第2の態様の耐水カプセルは強固なゼラチンカプセルがふさわしい。耐水カプセル(すなわち発明の第1の態様の顆粒を含むカプセル)の耐水性は、40℃、相対湿度70%で4週間保存において、水分含量変化が好ましくは単位用量の10重量%未満、さらに好ましくは単位用量の5重量%未満であるといわれている。そのようなカプセルは保存中の水分含量の安定性を向上させるという利点を持つ。
【0020】
発明の第3の態様の錠剤は、保存中における錠剤への水分の浸入あるいは錠剤からの水分の喪失を阻止するために、耐水コーティングされていることが好まれる。しかしながら、耐水コーティングは、無機の固体リン酸塩結合剤が患者の腸で有効となりうるように、口からの摂取に続いて適切な時間の後に錠剤の崩壊を可能にしなければならない。耐水性は、40℃、相対湿度70%での4週間保存において、水分含量変化が好ましくは単位用量の10重量%未満、さらに好ましくは単位用量の5重量%未満であるといわれている。耐水性の好ましい性状として、25℃、相対湿度60%での12ヶ月保存において、コーティング錠の水分含量変化が好ましくはコーティング錠の10重量%未満、さらに好ましくは単位用量の5重量%未満であるといわれている。耐水性のさらに好ましい性状として、30℃、相対湿度65%での12ヶ月保存において、コーティング錠の水分含量変化が好ましくはコーティング錠の10重量%未満、さらに好ましくは単位用量の5重量%未満であるといわれている。耐水性の好ましい性状として、40℃、相対湿度75%での6ヶ月保存において、コーティング錠の水分含量変化が好ましくはコーティング錠の10重量%未満、さらに好ましくは単位用量の5重量%未満であるといわれている。
【0021】
(詳細な説明と好ましい態様)
リン酸塩結合剤
リン酸イオンの結合とは、リン酸イオンが溶液から除かれており、また水不溶性の無機固体リン酸塩結合剤の原子構造において固定化されていることを意味する。
【0022】
溶液からのリン酸イオンを結合するのに適した水不溶性の無機の固体物(以下、無機のリン酸塩結合剤あるいは略号として結合剤とも称する)は例えばWO99/15189に表されており、アルカリ処理済みの硫酸カルシウムのような硫酸塩、異なる金属塩の混合物や以下に記すような混合金属化合物を含んでいる。発明の錠剤におけるリン酸塩結合剤として用いるのに好ましい水不溶性の無機固体は混合金属化合物である。
【0023】
それらは水不溶性であるので、発明の錠剤において用いられる無機リン酸塩結合剤が微細に分割された粒子状であるならば、リン酸塩結合あるいは固定化が起こりうる十分な表面積があることが好ましい。ふさわしくは、無機リン酸塩結合剤粒子は1から20マイクロメートル、好ましくは2から11マイクロメートル、の重量平均粒径(d50)である。好ましくは、無機リン酸塩結合剤粒子は100マイクロメートル以下のd90を有する(すなわち、粒子の90重量%がd90より小さい直径を有する)。
【0024】
混合金属結合剤
本発明は、
(i)顆粒状物質の重量当り少なくとも50重量%の化学式(I)で示されるリン酸塩を結合しうる固体の水不溶性混合金属化合物:
MII1-xMIIIx(OH)2An-y.zH2O (I)
[式中、
MIIはマグネシウム、カルシウム、ランタンおよびセリウムの少なくとも1種であり;
MIIIは少なくとも鉄(III)であり;
An-は少なくとも1種のn価のアニオンであり;
x=Σny;
0<x≦0.67、0<y≦1、および0≦z≦10である]
(ii)顆粒状物質の重量当り少なくとも3から12重量%の非化学的結合水、および
(iii)顆粒状物質の重量当り47重量%以下の賦形剤、
を含む顆粒状物質を提供する。本発明はさらに、顆粒状物質を含有する耐水カプセルを含む経口投与の単位用量体を提供する。本発明はさらに顆粒状物質の圧縮錠剤を含む経口投与の単位用量体を提供する。好ましくは、その錠剤は耐水コーティングで覆われている。
【0025】
好ましい無機リン酸塩結合剤は、化学式(I)で示される固体の水不溶性混合化合物である。:
MII1-xMIIIx(OH)2An-y.zH2O (I)
[式中、
MIIは少なくとも一つの二価金属であり;
MIIIは少なくとも一つの三価金属であり;
An-は少なくとも一つのn価のアニオンであり;
x=Σnyであり、x、y、zは0<x≦0.67、0<y≦1、0≦z≦10を満たす。]
【0026】
一つの好ましい態様としては、0.2<x、0.3<x、0.4<x、あるいは0.5<xのように、0.1<x。一つの好ましい態様としては、0<x≦0.5。当然のことながらx=[MIII]/([MII]+[MIII])、ここで[MII]は化学式Iで示される化合物1モルあたりのMIIのモル数であり、[MIII]は化学式Iで示される化合物1モルあたりのMIIIのモル数である。
【0027】
一つの好ましい態様としては、0<y≦1。好ましくは0<y≦0.8。好ましくは0<y≦0.6。好ましくは0<y≦0.4。好ましくは0.05<y≦0.3。好ましくは0.05<y≦0.2。好ましくは0.1<y≦0.2。好ましくは0.15<y≦0.2。
【0028】
一つの好ましい態様としては、0≦z≦10。好ましくは0≦z≦8。好ましくは0≦z≦6。好ましくは0≦z≦4。好ましくは0≦z≦2。好ましくは0.1≦z≦2。好ましくは0.5≦z≦2。好ましくは1≦z≦2。好ましくは1≦z≦1.5。好ましくは1≦z≦1.4。好ましくは1.2≦z≦1.4。好ましくはzはおよそ1.4である。
【0029】
好ましくは、0<x≦0.5、0<y≦1、および0≦z≦10。
【0030】
当然のことながら、x、y、zの各々の好ましい値は連動しうる。従って、以下の表に記載した各々の値のいくつかの組み合わせをここに具体的に公表し、また、それらは本発明により提供されうる。
【表1】

【0031】
上記の化学式(I)において、Aは1以上のアニオンを示し、それぞれの価数(n)は変化しうる。“Σny”はそれぞれの価数を乗じた各アニオンのモル数を合計したものである。
【0032】
化学式(I)において、MIIは好ましくはMg(II)、Zn(II)、Fe(II)、Cu(II)、Ca(II)、La(II)およびNi(II)から選択される。そのうち、Mgが特に好ましい。MIIIは好ましくはMn(III)、Fe(III)、La(III)、Ni(III)およびCe(III)から選択される。そのうち、Fe(III)が特に好ましい。ここで、(II)は二価の状態の金属を意味し、(III)は三価の状態の金属を意味する。
【0033】
An-は1以上の炭酸塩、ヒドロキシカーボネイト、オキソアニオン(例えば硝酸塩、硫酸塩)、金属錯体アニオン(例えばフェロシアニド)、ポリオキソメタレート、有機アニオン、ハロゲン化合物、水酸化物およびそれの混合物から選択される。そのうち、炭酸塩が特に好ましい。
【0034】
その化合物は、化合物の重量に対するアルミニウム金属の重量で表して、好ましくは200g/kg未満、より好ましくは100g/kg未満、さらに好ましくは50g/kg未満のアルミニウムを含む。
【0035】
より好ましくは、10g/kg未満(好ましくは5g/kg)のようなごく低量のアルミニウムのみの存在である。
【0036】
さらに好ましくは、その化合物はアルミニウム(Al)非存在である。「アルミニウム非存在」というのは、「アルミニウム非存在」と呼ばれる物質が、化合物の重量に対する元素アルミニウムの重量で表して、1g/kg未満、より好ましくは500mg/kg未満、さらに好ましくは200mg/kg未満、最も好ましくは120mg/kg未満、含んでいることを意味する。
【0037】
ふさわしくは、その化合物は、鉄(III)および、少なくとも一つのマグネシウム、カルシウム、ランタンあるいはセリウム、より好ましくは少なくとも一つのマグネシウム、ランタンあるいはセリウム、最も好ましくはマグネシウムを含む。
【0038】
好ましくは、その化合物は、化合物の重量に対する元素カルシウムの重量で表して、100g/kg未満、より好ましくは50g/kg未満、さらに好ましくは25g/kg未満のカルシウムを含む。
【0039】
より好ましくは、10g/kg未満、好ましくは5g/kg未満のようなごく低量のカルシウムの存在である。
【0040】
さらに好ましくは、その化合物はカルシウム非存在である。「カルシウム非存在」というのは、「カルシウム非存在」と呼ばれる物質が、化合物の重量に対する元素カルシウムの重量で表して、1g/kg未満、より好ましくは500mg/kg未満、さらに好ましくは200mg/kg未満、最も好ましくは120mg/kg未満、含んでいることを意味する。
【0041】
好ましくは、結合剤化合物はカルシウム非存在かつアルミニウム非存在である。
【0042】
最終単位用量(顆粒、および最終単位用量を構成するその他の物質を含む)もまた、全体としてアルミニウム非存在かつ/あるいはカルシウム非存在であることが好ましい(上述した定義の意味で)。
【0043】
好ましくは、固体の混合金属化合物は、少なくともいくつかの層状2水酸化物(LDH)を含む。より好ましくは、化学式(I)で示される混合金属化合物は層状2水酸化物である。「層状2水酸化物」という用語は、主層およびアニオン種を含む中間層ドメインに二種の異なる金属カチオンを有する合成あるいは天然層状水酸化物を示している。化合物のこの広いファミリーはまたときどき、層間ドメインがカチオン種を含むより通常のカチオン性クレイと比較して、アニオン性クレイをも意味する。LDHはまた、対応する[Mg-Al]ベース無機物の多形の一つを参照することによりハイドロタルサイト様化合物としても報告されている。
【0044】
特に好ましい混合金属化合物は、少なくとも一つの炭酸塩イオンおよび水酸基イオンを含んでいる。
【0045】
特に好ましい混合金属化合物はMIIおよびMIIIとして、マグネシウムおよび鉄(III)をそれぞれ含んでいる。
【0046】
固体の混合金属化合物あるいは化合物は、WO99/15189に記載されているように、溶液からの共沈殿により得られ、続いて遠心分離あるいは濾過され、その後、乾燥、微粉砕そしてふるいにより適切に作ることができる。混合金属化合物はその後、湿式造粒工程において再び濡らされ、得られた顆粒は流動層で乾燥される。流動層における乾燥の度合いが最終錠剤の要求水分含有量を決定する。
【0047】
あるいは、混合金属化合物は、固-固反応が起こりうる温度で微細に分割された単一の金属塩の密な混合物を熱し、混合金属化合物形成を引き起こすことで作られうる。
【0048】
化学式(I)で示される固体の混合金属化合物は、化学式のzの値を減らすために、200℃を超える温度で熱することによりか焼されうる。この場合、か焼の後、顆粒中で固体の混合金属化合物が結合する前に、顆粒の必要な非化学的結合水含有量に達するように水を加える必要がある場合がある。
【0049】
当業者では当然のことながら、化学式(I)のzH2Oにより提供される水は、3から12重量%の非化学的結合水(顆粒状物質の重量に基づいて)を提供する。当業者は標準的な化学的手法に基づいて容易にzの値を決定することができるであろう。本発明の物質は、非化学的結合水の量を提供してきたが、ここに記載した手順に従ってもまた容易に決定できるであろう。
【0050】
混合金属化合物は、化合物の原子構造中にその構造全体に均一に分布している少なくとも2つの異なる金属のカチオンを含んでいる。いわゆる混合金属化合物は2つの塩の結晶を含まず、それぞれの結晶タイプは一つの金属カチオンしか含まない。2つの異なる単一金属塩の単純固体物理的混合物とは対照的に、混合金属化合物は概して異なる単一の金属化合物の溶液からの共沈により生じる。ここで使われている混合金属化合物は、同じ金属タイプだが2つの異なる原子価(例えばFe(II)およびFe(III))の化合物、および2より多い異なる金属タイプを含む化合物を含む。
【0051】
混合金属化合物はまた、非晶質(非結晶)物質も含んでいる。いわゆる非結晶質とは、X線回折技術の検出限界以下の結晶サイズを持つ結晶相あるいは、ある程度の秩序は持っているが結晶回折パターンを示さない結晶相、および/または、短距離秩序を有するが長距離秩序を持たない真の無形性物質のいずれかを意味する。
【0052】
化学式Iの化合物は、大型化した化合物の結晶を除き、リン酸塩結合が可能な高い表面積を維持するために、熟成を行わないあるいは水温処理により作ることが望ましい。熟成していない化学式Iの化合物はまた、良好なリン酸塩結合を維持するために、合成後の処理工程中に微細な粒子サイズに維持することが好ましい。
【0053】
リン酸塩結合
本明細書中でいうリン酸塩結合能力とは、特別に指定がない限り、以下の方法で決定される。
【0054】
40ミリモル/リットルのリン酸ナトリウム溶液(pH4)を調製し、リン酸塩結合剤で処理する。ついで、処理済みのリン酸塩濾過溶液を希釈し、ICP-OESによりリン含有量を分析する。
【0055】
この方法に使う試薬は:
リン酸二水素ナトリウム一水和物(BDH、AnalaRTMグレード)、1M塩酸(AnalaRTM水溶液)、標準リン溶液(10,000μg/ml、Romil Ltd)、塩化ナトリウム(BDH)
である。
【0056】
特別な使用機器は:
回転ハイブリダイゼーションインキュベーター(Grant Boekal HIW7)、10ml採血管、再利用Nalgeneスクリューキャップチューブ(30ml/50ml)、10ml使い捨てシリンジ、0.45μm使い捨てシリンジフィルター、ICP-OES(誘導結合プラズマ-光学発光分光器)
である。
【0057】
リン酸塩溶液は、リン酸二水素ナトリウム5.520g(+/-0.001g)を秤量し、続いてAnalaRTM水を加えて1リットルフラスコに移して調製する。
【0058】
該1リットル容量フラスコに、撹拌しながら1MHClを滴下し、pH4.0(+/-0.1)になるように調整する。その後、AnalaRTM 水を用いて容量を正確に1リットルに調整し、十分に混合する。
【0059】
塩化ナトリウム5.85g(+/-0.02g)を正確に秤量し、定量的に1リットル容量フラスコに移し、その後、AnalaRTM水で容量を調整して十分に攪拌して食塩水を調製する。
【0060】
以下の溶液を100ml容量フラスコにピペットで取り、検定基準を調製する。:
【表2】

【0061】
それらの溶液をAnalaRTM水で容量を調整し十分に攪拌する。その後、これらの溶液はICP-OES装置の検定基準として使用される。その後、リン酸塩結合剤サンプルは、以下に記述した手順に従って用意され、ICP-OESにより測定される。ICP-OESの結果は最初はppmとして表されるが、等式変換を用いてmmolに変換できる。:
mmol=(ppmにおけるICP-OES測定値/検体の分子量)×4(希釈係数)
【0062】
リン酸塩結合剤0.5gを含むそれぞれの試験サンプルのアリコートを30mlスクリュートップナルジーン(Nalgene)チューブに入れる。試験サンプルがリン酸塩結合剤0.5gを含む単位容量であれば、そのように用いられうる。全てのサンプルを2つ用意する。リン酸塩溶液の12.5mlアリコートを、それぞれの試験サンプルの入ったスクリュートップチューブにピペットで取り入れ、スクリューキャップをはめる。その後、用意されたチューブを前もって37℃に温められた回転インキュベーターに入れ、30分のような一定時間(実施例にあるように他の時間を用いている場合もある)全速力で回転させる。続いて、サンプルを回転インキュベーターから取り出し、0.45μmシリンジフィルターで濾過し、そして2.5mlのろ液を採血管に移す。7.5mlのAnalaRTM水をそれぞれの2.5mlアリコートにピペットで取り入れ、十分に攪拌する。その後、溶液をICP-OESで分析する。
【0063】
リン酸塩結合能力は:
リン酸塩結合(%)=100−(T/S×100)
[式中、
T=リン酸塩結合剤と反応後の溶液中のリン酸塩の分析値
S=リン酸塩結合剤と反応前の溶液中のリン酸塩の分析値]
により決定される。
【0064】
ふさわしくは、本発明の顆粒で用いられる水不溶性の無機の固体リン酸塩結合剤は、30分後に少なくとも30%、好ましくは10分後に少なくとも30%、より好ましくは5分後に少なくとも30%の、上記の方法で測定されるその物質のリン酸塩結合能力を提供する。好ましくは、本発明の錠剤に用いられる水不溶性の無機の固体リン酸塩結合剤は、30分後に少なくとも40%、好ましくは10分後に少なくとも30%、より好ましくは5分後に少なくとも30%の、上記の方法で測定されるリン酸塩結合能力を持つ。さらに好ましくは、本発明に用いられる水不溶性の無機の固体リン酸塩結合剤は上記の方法で測定されるリン酸塩結合能力において、30分後に少なくとも50%、好ましくは10分後に少なくとも30%、より好ましくは5分後に少なくとも30%の、上記の方法で測定されるリン酸塩結合能力を持つ。
【0065】
リン酸塩結合測定のpHは、1MHCl溶液あるいは1MNaOH溶液のいずれかの追加使用により変化しうる。そして、その測定結果は各pH値におけるリン酸塩結合能力を評価するのに用いられうる。
【0066】
ふさわしくは、本発明の錠剤に用いられる水不溶性の無機の固体リン酸塩結合剤は、pH3から6において、好ましくはpH3から9において、より好ましくはpH3から10において、最も好ましくはpH2から10において、30分後に少なくとも30%、好ましくは10分後に少なくとも30%、より好ましくは5分後に少なくとも30%の、上記の方法で測定されるリン酸塩結合能力を持つ。
【0067】
好ましくは、本発明の錠剤に用いられる水不溶性の無機の固体リン酸塩結合剤は、pH3から4において、好ましくはpH3から5において、より好ましくはpH3から6において、30分後に少なくとも40%、好ましくは10分後に少なくとも40%、より好ましくは5分後に少なくとも40%の、上記の方法で測定されるリン酸塩結合能力を持つ。
【0068】
さらに好ましくは、本発明の錠剤に用いられる水不溶性の無機の固体リン酸塩結合剤は、pH3から4において、好ましくはpH3から5において、より好ましくはpH3から6において、30分後に少なくとも50%、好ましくは10分後に少なくとも50%、より好ましくは5分後に少なくとも50%の、上記の方法で測定されるリン酸塩結合能力を持つ。
当然のことながら、できるかぎり広いpH領域にわたって高いリン酸塩結合能力を持つことが望ましい。
【0069】
上記の方法を用いたリン酸塩結合能力を表す別法は、結合剤1グラムあたりのリン酸塩結合量mmolとして、結合剤によるリン酸塩結合を表すものである。
【0070】
リン酸塩結合に関するこの記述を用いると、ふさわしくは、本発明の錠剤に用いられる水不溶性の無機の固体リン酸塩結合剤は、pH3から6において、好ましくはpH3から9において、より好ましくはpH3から10において、最も好ましくはpH2から10において、30分後に少なくとも0.3mmol/g、好ましくは10分後に少なくとも0.3mmol/g、より好ましくは5分後に少なくとも0.3mmol/gの、上記の方法で測定されるリン酸塩結合能力を持つ。好ましくは本発明の錠剤に用いられる水不溶性の無機の固体リン酸塩結合剤は、pH3から4において、好ましくはpH3から5において、より好ましくはpH3から6において、30分後に少なくとも0.4mmol/g、好ましくは10分後に少なくとも0.4mmol/g、より好ましくは5分後に少なくとも0.4mmol/gの、上記の方法で測定されるリン酸塩結合能力を持つ。さらに好ましくは、本発明の錠剤に用いられる水不溶性の無機の固体リン酸塩結合剤は、pH3から4において、好ましくはpH3から5において、より好ましくはpH3から6において、30分後に少なくとも0.5mmol/g、好ましくは10分後に少なくとも0.5mmol/g、より好ましくは5分後に少なくとも0.5mmol/gの、上記の方法で測定されるリン酸塩結合能力を持つ。
【0071】
顆粒
本発明の顆粒は、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、最も好ましくは少なくとも75重量%の無機リン酸塩結合剤を含む。
【0072】
本発明の顆粒は、3から12重量%、好ましくは5から10重量%の非化学的結合水を含む。
【0073】
顆粒の残余物は、顆粒の均衡を提供する、主として賦形剤あるいは賦形剤の混合といった、リン酸塩結合剤のための医薬的に許容される担体を含む。従って、顆粒は47重量%以下の賦形剤を含みうる。好ましくは、顆粒は5から47重量%の賦形剤、より好ましくは10から47重量%の賦形剤、より好ましくは15から47重量%の賦形剤を含む。
【0074】
顆粒の粒径
ふさわしくは、少なくとも95重量%の顆粒は、ふるいによる測定において1180マイクロメートルより小さい直径を有する。
【0075】
好ましくは、少なくとも50重量%の顆粒は、ふるいによる測定において710マイクロメートルより小さい直径を有する。
【0076】
より好ましくは、少なくとも50重量%顆粒は、106から1180マイクロメートル、好ましくは106から500マイクロメートルの直径を有する。
【0077】
さらに好ましくは、少なくとも70重量%の顆粒は106から1180マイクロメートル、好ましくは106から500マイクロメートルの直径を有する。
【0078】
好ましくは、顆粒の重量平均粒径は200から400マイクロメートルである。
【0079】
より大きい顆粒は許容できない遅いリン酸塩結合をもたらしうる。直径106マイクロメートルより小さい顆粒の比率が過剰であると、顆粒の流動性が乏しくなる。好ましくは、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも80重量%の顆粒は、ふるいによる測定において106マイクロメートルより大きい直径である。
【0080】
顆粒成分
顆粒に含まれうる好ましい賦形剤は、例えば、ラクトース、デンプン、タルカムのような一般的な固体希釈剤だけでなく、ゼラチン、デキストリンおよび大豆、小麦、オオバコ種子タンパク質のような動物性あるいは植物性タンパク質由来の物質;アカシア、グアー、寒天、およびキサンタンのようなゴム;多糖;アルギン酸塩;カルボキシメチルセルロース;カラギナン;デキストラン;ペクチン;ポリビニルピロリドンのようなポリマー;ポリペプチド/タンパク質あるいはゼラチン-アカシア複合体のような多糖類複合体;マンニトール、ブドウ糖、ガラクトースおよびトレハロースのような糖類;シクロデキストリンのような環状糖;リン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、およびケイ酸アルミニウムのような無機塩類;そして、グリシン、L-アラニン、L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、L-ヒドロキシプロリン、L-イソロイシン、L-ロイシンおよびL-フェニルアラニンのような2から12の炭素原子を持つアミノ酸、を含む。
【0081】
ここにおいて賦形剤という用語は、錠剤の構造化剤あるいは粘着剤、崩壊剤あるいは膨張剤のような補助的な成分もまた含む。
【0082】
錠剤の好ましい構造化剤には、アカシア、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチル・セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、グルコース、グアーガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルトデクトリン(kaltodectrin)、メチルセルロース、ポリエチレン・オキシド、ポビドン、アルギン酸ナトリウムおよび水素添加植物油が含まれる。
【0083】
好ましい崩壊剤には、架橋崩壊剤が含まれる。例えば、好ましい崩壊剤には、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋ヒドロキシプロピルセルロース、高分子ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルアミド、メタクリレートジビニルベンゼンカリウム共重合体、ポリメチルメタクリレート、架橋ポリビニルピロリドン(PVP)および高分子ポリビニルアルコールが含まれる。
【0084】
架橋ポリビニルピロリドン(クロスポビドンとしても知られており、例えばKollidon CL-MTM 旧BASFで入手可能である)は、本発明の錠剤の使用に特に好ましい賦形剤である。ふさわしくは、本発明における錠剤の顆粒は、1から15重量%、好ましくは1から10重量%、より好ましくは2から8重量%の架橋ポリビニルピロリドンを含み、好ましくは、その架橋ポリビニルピロリドンは、50マイクロメートルより小さく顆粒化する前においては、重量平均粒径サイズがd50である(すなわち、いわゆるB-型 架橋PVP)。その物質は、微粉クロスポビドンとしても知られている。これらのレベルの架橋ポリビニルピロリドンは他の賦形剤と比べて、無機のリン酸塩結合剤のリン酸塩結合をほとんど阻害せずに錠剤の良好な崩壊をもたらすことが見いだされている。好ましいサイズの架橋ポリビニルピロリドンは、錠剤が崩壊するときに、形成する粒子の荒さや硬さを軽減する。
【0085】
本発明における錠剤の顆粒中に用いられる、他の望ましい賦形剤はアルファ化デンプン(プレゲル化デンプンとしても知られている)である。好ましくは、その顆粒は、5から20重量%の、より好ましくは10から20重量%の、さらに好ましくは12から18重量%のプレゲル化デンプンを含む。これらの量のアルファ化デンプンは、使用中の錠剤の崩壊あるいはリン酸塩結合を妨げることなく、錠剤の耐久性および凝集を向上させる。そのアルファ化デンプンは適切に完全に予備糊化されており、水分含量が1から15重量%であり、そして重量平均粒径は100から250マイクロメートルである。好ましい物質はLycotabTM(Roquetteから入手可能な完全にアルファ化されたトウモロコシデンプン)である。
【0086】
アルファ化デンプンおよびクロスポビドンの両方を含む複合賦形剤は、特に望ましく、この賦形剤の組み合わせは、本発明の顆粒から、様々な形状、良好な顆粒均一性および良好な崩壊特性を持つ圧縮錠剤を確実に形成する能力を発揮する。
【0087】
その顆粒は、防腐剤、湿潤剤、抗酸化物質、界面活性剤、発泡剤、着色剤、香味剤、pH調整剤、甘味料あるいは矯味剤もまた含みうる。好ましい着色剤には鉄赤、鉄黒および鉄黄および、Ellis&Everardから入手可能なFD&C青No.2およびFD&C赤No.40のようなFD&C染料が含まれる。好ましい香味剤には、ミント、ラスベリー、甘草、オレンジ、レモン、グレープフルーツ、キャラメル、バニラ、チェリーおよびグレープ香味そしてこれらの組み合わせが含まれる。好ましいpH調整剤には、炭酸水素ナトリウム(すなわち重炭酸塩)、クエン酸、酒石酸、塩酸およびマレイン酸が含まれる。好ましい甘味料には、アスパルテーム、アセサルフェームKおよびタウマチンが含まれる。好ましい矯味剤には、炭酸水素ナトリウム、イオン交換樹脂、シクロデキストリン包含化合物および吸着物質が含まれる。好ましい湿潤剤にはラウリル硫酸ナトリウムおよびドキュセートナトリウムが含まれる。好ましい発泡剤あるいはガス発生剤は、重炭酸塩ナトリウムおよびクエン酸の混合物である。
【0088】
造粒
造粒は、:
i)均一混合になるように、一つ以上の賦形剤とリン酸塩結合能力を持つ固体の水不溶性の無機化合物を混合する。
ii)均一混合に適当な液体を添加し、湿顆粒を形成するように造粒機で混合する。
iii)ふるいの大きさより大きい顆粒を取り除くために、適宜、湿顆粒をふるいに通す。
iv)乾燥顆粒になるまで、湿顆粒を乾燥させる。
v)乾燥顆粒を製粉および/あるいはふるいにかける。
の段階を含む工程により行われうる。
【0089】
ふさわしくは、造粒は、;
i)均一混合になるように、無機の固体リン酸塩結合剤と好ましい賦形剤を混合する。
ii)その均一混合に適当な液体を添加し、顆粒を形成するように造粒機で混合する。
iii)ふるいの大きさより大きい顆粒を除くために、適宜、湿顆粒をふるいに通す。
iv)顆粒を乾燥させる。
v)乾燥顆粒を製粉および/あるいはふるいにかける。
の段階を含む湿式造粒による。
【0090】
造粒に適当な液体には、水、エタノール、およびそれらの混合物が含まれる。水が好ましい造粒液体である。
【0091】
上述したように顆粒は、錠剤形成あるいは単位容量として用いるカプセルへ編入する前に、好ましい水分量になるまで乾燥される。
【0092】
滑沢剤
単位容量組成に顆粒が錠剤化される前に、錠剤を形成するための顆粒の圧縮中に、滑沢剤あるいは流動促進剤が顆粒の全体を覆うようにかつ顆粒の間に分布しているように、顆粒は滑沢剤あるいは流動促進剤と混ぜ合わされることが好ましい。
【0093】
概して、滑沢剤の最適量は、滑沢剤粒子サイズおよび顆粒の利用可能な表面積によって決まった。好ましい滑沢剤には、シリカ、タルク、ステアリン酸、カルシウムあるいはステアリン酸マグネシウムおよびステアリルフマル酸ナトリウムおよびそれらの混合物が含まれる。通常は直径40マイクロメートルより大きい粒子のない(ふるいにより通常は保証されている)、微細に分割された形状の顆粒に滑沢剤を加える。滑沢剤は、顆粒の0.1から0.4重量%、好ましくは0.2から0.3重量%の量を顆粒に適切に加える。より低い濃度は錠剤の型の詰まりや引っかかりを引き起こしうり、一方、より高い濃度は、リン酸塩結合率を低下させたり、錠剤の崩壊を妨げうる。カルシウムおよび/あるいはステアリン酸マグネシウムのような脂肪酸の塩は滑沢剤として使用されうる。好ましい滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリルフマル酸ナトリウムおよびそれらの混合物を含むグループから選択される。脂肪酸のようないくつかの滑沢剤は、錠剤のコーティング層におけるへこみや完全性の喪失を引き起こすことが見いだされている。このことは、コーティング層が乾燥されるときに、滑沢剤の部分的な溶解から生じうると考えられる。従って、滑沢剤の融点は55℃より上であることが好ましい。
【0094】
錠剤
発明の第3の態様の錠剤は、包装および流通の間に要求される取り扱いに対する必須の圧壊強度を持つ錠剤を作るために、高い圧力下における顆粒の圧縮により作られうる。粒状の粉末混合物から形成される顆粒の使用は、貯蔵ホッパーから錠剤プレス機への流動性、言い換えると錠剤製造過程の効率的利点、を向上させる。本発明の錠剤に用いられる無機リン酸塩結合剤は、概して、上記に詳述したようなそれらの望ましい粒子サイズにおいて流動性という性質が乏しい。発明の錠剤は錠剤のほぼ50重量%程度あるいはそれ以上の高い濃度の無機のリン酸塩結合剤を含むことが望まれるので、無機のリン酸塩結合剤は錠剤の形成の前に顆粒の形にされなければならない。微細な粉末は、ホッパー、給送管あるいは型において圧縮あるいは“架橋”されやすく、それ故に同等の重量あるいは同等の圧縮の錠剤は得ることが簡単でない。たとえ十分な度合いまで微細な粉末を圧縮することが可能だったとしても、空気が閉じこめられて圧縮されうり、そのことは排出の際の錠剤の分裂を引き起こしうる。顆粒の使用はこれらの問題を解決しうる。顆粒化の他の利点は、微細な粉末からよりもむしろ顆粒から作ったときの最終的な錠剤のかさ密度の増加、最終的な錠剤のサイズの縮小および患者の薬剤服用順守の可能性の向上、である。
【0095】
発明の錠剤は円形でありうるが、より大きな服用量の飲用をしやすいように、概してボーラス型あるいは魚雷型(二重凸状長方形型錠剤としても知られている)すなわち細長い特徴を有しているものが望まれる。例えば、端の丸い円筒あるいは一側面が楕円形および角が円形、あるいは両方が楕円形の形状でありうる。全体の一以上の部位の平坦化もまた可能である。
【0096】
錠剤が“ベリーバンド”を備えている形状である場合には、ベリーバンドの幅は2mm以上であることが好ましい。より小さいベリーバンドは、錠剤の耐水コーティングが不十分あるいは欠失あるいは喪失を引き起こしうることが見いだされている。
【0097】
発明の第2の態様の錠剤は、Holland C50 錠剤硬度検査器を用いた測定で硬度5から30kgfが望ましい。
【0098】
耐水コーティング
発明の第2の態様の錠剤は、いったん発明の第1の態様の顆粒の形状を形成し、耐水コーティングがなされることが好ましい。
【0099】
耐水コーティングは、通常の薬剤のコーティングプロセスおよび装置のいずれかにより錠剤に施されうる。例えば、錠剤は、スプレーノズルあるいは吹きつけ器具あるいはその他のタイプの噴霧器あるいはディッピング法およびより最近の技術を備えた、ニロ・ファルマシステムズ(Niro PharmaSystems)のスーパーセル・タブレット・コーター(Supercell tablet coater:商標)に代表される流動層装置(例えば“Wurster”型流動層乾燥機)コーティングパン(回転、側面排出、複合型など)によりコーティングされうる。利用可能な装置のバリエーションには、サイズ、形状、ノズルの位置および空気吸入口および吐き出し口、空気流動パターンおよび器機操作方法が含まれる。錠剤がいっせいに乾燥されている間ずっと連続噴射が可能な方法により溶射された錠剤は、熱風により乾燥されうる。非連続性のあるいは断続的な噴射もまた使用されうるが、大抵、より長いコーティング周期を必要とする。ノズルの数および位置はコーティング作業上の必要に応じて変化しうり、またノズルは、好ましければ他の照準方向で用いることもできるけれども、土台に対して垂直あるいはほとんど垂直を照準とすることが好ましい。パンは、多数の運転速度から選択した速度で回転しうる。錠剤に塗料を施すことができるいくつかの好ましいシステムが用いられうる。実質的にはいくつかの錠剤はコーティングされる錠剤として許容可能である。用語としての“錠剤”は錠剤、小丸薬あるいは丸薬を含む。概して好ましい錠剤は、何らかの錠剤の動きを伴うシステム(例えば、流動層乾燥機あるいは側面排出コーティングパン、それらの組み合わせおよびそれに類似するものにあるような、流動層)において効率的にコーティングされるように、物理的および化学的に十分に安定な形状をしている。錠剤は、直接的に、すなわち表面を整備するためのサブコートをせずにコーティングが施されうる。サブコートあるいはトップコートはもちろん用いられうる。望まれれば、同じあるいは類似のコーティングシステムが、最初のみならず2番目あるいはそれ以上のコーティングに施されうる。塗料は、可溶性物質が溶解されている、不溶性物質が分散されている、というようなその構成成分の物質的特性により準備される。用いられる混合のタイプもまた構成要素の特性に基づいている。低剪断液体混合は可溶性物質に用いられ、そして高剪断液体混合は不溶性物質に用いられる。通常、コーティング処方は、コロイド重合体懸濁液と色素懸濁液あるいは溶液(例えば弁柄あるいはキノリン黄染料)の2つの部分からなる。これらは別々に準備され、使う前に混合する。
【0100】
幅広い塗料には、例えばセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレングリコール、スチレン-アクリレート共重合体、アクリル酸-メタクリル酸共重合体、メタクリル酸-エチルアクリレート共重合体、メチルメタクリレート-メタクリレート共重合体、メタクリレート-3級アミノアルキルメタクリレート共重合体、エチルアクリレート-メチルメタクリレート-4級アミノアルキルメタクリレート共重合体およびこれらの2以上の組み合わせが用いられうる。好ましくは、メタクリレート共重合体の塩、例えばブチルメタクリレート共重合体(オイドラギット EPOとして市販されている)、が用いられる。
【0101】
コーティングは、ふさわしくはコーティング錠の0.05から10重量%、好ましくは0.5から7重量%である。好ましくは、塗料は弁柄色素(Fe2O3)(乾燥されたコーティング層の1重量%以上、好ましくは2重量%以上)との組み合わせで用いられ、塗料全体に分散され、とても均一な外観を呈する錠剤に、均一な色合いのコーティング層を施す。
【0102】
保存中における水分の喪失あるいは浸入から錠剤の核を保護することに加え、耐水コーティング層はまた、口中における錠剤の急速な崩壊を防ぎ、胃に錠剤が到達するまで崩壊を遅らせるのを助ける。この目的を考慮すると、口中のようなアルカリ性溶液においては低い溶解性を持つが、中性あるいは酸性溶液においてはより高い溶解性を持つ塗料が好ましい。好ましいコーティングポリマーは、メタクリル酸塩共重合体の塩、特にブチルメタクリレート共重合体(オイドラギット EPOとして市販されている)である。好ましくは、コーティング層は少なくとも30重量%、より好ましくは少なくとも40重量%のコーティングポリマーを含む。
【0103】
コーティング錠の水分喪失あるいは吸収は、顆粒の非化学的水含有量の測定について上記に詳述したように適切に測定される。新たに準備されたコーティング錠のセットから、いくつかは準備できたらすぐに非化学的水を測定し、その他は上記に詳述したように保存した後に測定する。
【0104】
もう一つの態様として、発明は、発明の第1の態様に記載した錠剤を作る方法を提供し、その方法には医薬的に許容可能な賦形剤を備えた水不溶性の無機固体リン酸塩結合剤の造粒、および適宜、他の構成要素、圧縮による顆粒からの錠剤の形成および錠剤への耐水コーティングの適宜施術、が含まれる。
【0105】
カプセル
発明の第2の態様に用いられるカプセルは、他の好ましいカプセル膜も使用できるけれども、堅いゼラチンカプセルが好ましい。
【0106】
単位用量の使用
高リン血症の治療と予防において、望ましい結果を得るためには、0.1から500mg/kg体重、好ましくは1から200mg/kg体重の量の無機のリン酸塩結合剤を毎日投与するのが望ましい。それでも、患者の体重、患者の動物種および薬や処方あるいは時間あるいは薬の投与の間隔に対する患者特有の反応によって、ときどき上述した量から逸脱する必要がありうる。特別な場合においては、上記の最小量より少ない使用で足りうる一方、他の場合においては、最大用量を超えなくてはならないことがある。より大きな用量においては、用量をいくつかの小さな単回投与に分けることが賢明でありうる。結局のところ、用量は担当医師の裁量によって決まる。食前投与、例えば食前1時間以内が望ましい。あるいは、食事とともに服用されうる。
【0107】
ヒト成人への投与に対する発明の典型的錠剤は、1mgから5g、好ましくは10mgから2g、より好ましくは100mgから1g(150mgから750mg、200mgから750mgあるいは250mgから750mg)の水不溶性の無機の固体リン酸塩結合剤を含みうる。
【0108】
発明の単位用量は、少なくとも200 mgの水不溶性の固体の無機リン酸塩結合剤を含むことが好ましい。発明の単位用量は少なくとも250mgの水不溶性の固体の無機リン酸塩結合剤を含むことが好ましく、発明の単位用量は少なくとも300mgの水不溶性の固体の無機リン酸塩結合剤を含むことが好ましい。より好ましい単位用量は500mgのリン酸塩結合剤を含む。経口投与における患者の薬剤服用順守を助けるために望ましい単位用量重量は、750mgより少なく、より好ましくは700mgよりも少ない。特に好ましい単位用量は200mg(±20mg)の水不溶性の固体の無機のリン酸塩結合剤を含む。特に好ましい単位用量は250mg(±20mg)の水不溶性の固体の無機のリン酸塩結合剤を含む。特に好ましい単位用量は300mg(±20mg)の水不溶性の固体の無機のリン酸塩結合剤を含む。単位用量が錠剤のとき、好ましい単位用量重量はいくらかの任意のコーティングを含む。
【0109】
錠剤形態は、患者へのガイダンスのために、例えば1服用それぞれに対してほぼ毎日に印をした容器に一緒に詰められる、あるいはホイルストリップ、ブリスター包装あるいはその類似のものに入れられる。
【0110】
以下に詳述した発明のさらなる態様において、顆粒状物質とは発明の第1の態様の顆粒を言う。
【0111】
発明の一つの態様は、ヒトあるいは動物の医薬、特にリン酸塩結合のための医薬、さらに特に高リン血症の治療のための医薬においてあるいは医薬として用いられる顆粒状物質である。
【0112】
別の態様は、有害なリン酸塩濃度を伴う症状または疾病、特に血漿リン酸塩濃度の上昇、特に高リン血症、の対処療法あるいは治療のために動物やヒトで用いられる薬剤の製造における顆粒状物質の使用である。
【0113】
別の態様は、有害なリン酸塩濃度を伴う症状または疾病、特に血漿リン酸塩濃度の上昇、特に高リン血症に対する、顆粒状物質をヒトあるいは動物に経口投与することによる対処療法あるいは治療の方法である。
【0114】
保存
ここで論じられるように、我々は、本発明の方法が摂氏25度/相対湿度60%および摂氏30度/相対湿度65RHにおいて少なくとも12か月間にわたって安定である(小さい顆粒および大きい顆粒の粒子サイズに関する表7を参照)錠剤を提供しうることを見いだした。より極端な保存条件(摂氏40度/相対湿度75%)のもとでは、保存安定性はどちらの顆粒タイプでも少なくとも6か月である。
【0115】
発明のさらなる態様
本発明のさらなる態様は以下の番号付けされた項目に記載されている。:
【0116】
1.少なくとも50重量%の水不溶性の無機固体リン酸塩結合剤、3から12重量%の非化学的結合水および47重量%以下の賦形剤を含む顆粒。
【0117】
2.水不溶性の無機固体リン酸塩結合剤が混合金属化合物である、項目1に記載の顆粒。
【0118】
3.該混合金属化合物が化学式(I)で示される化合物である、項目2に記載の顆粒:
MII1-xMIIIx(OH)2An-y.zH2O (I)
[式中、
MIIは少なくとも一つの二価金属であり;
MIIIは少なくとも一つの三価金属であり;
An-は少なくとも一つのn価のアニオンであり;
x=Σnyかつx、yおよびzは0<x≦0.67、0<y≦1、0≦z≦10を満たす。]
【0119】
4.x=Σnyかつx、yおよびzは0<x≦0.5、0<y≦1、0≦z≦10を満たす、項目3に記載の顆粒。
【0120】
5.該混合金属化合物はアルミニウム非存在で、鉄(III)および少なくとも一つのマグネシウム、カルシウム、ランタンあるいはセリウムを含む、項目2から4のいずれか一つに記載の顆粒。
【0121】
6.化学式(I)で示される混合金属化合物が層状2水酸化物である、項目3から5のいずれか一つに記載の顆粒。
【0122】
7.該混合金属化合物が少なくとも一つの水酸基および炭酸イオン、そして金属として鉄(III)およびマグネシウムを含む、項目3から6のいずれか一つに記載の顆粒。
【0123】
8.5から15重量%のポリビニルピロリドンを賦形剤として含んでいる、項目1から7のいずれか一つに記載の顆粒。
【0124】
9.10から20重量%のアルファ化デンプンを賦形剤として含んでいる、項目1から8のいずれか一つに記載の顆粒。
【0125】
10.1000マイクロメートル未満の直径を有する、項目1から9のいずれか一つに記載の顆粒。
【0126】
11.前述の項目のいずれかに記載の顆粒を含有する耐水カプセルを含む、経口投与の単位用量体。
【0127】
12.項目1から10のいずれか一つに記載の顆粒の圧縮錠剤を含む経口投与の単位用量体。
【0128】
13.さらに顆粒の間に滑沢剤を含む、項目12に記載の単位用量体。
【0129】
14.顆粒の間に滑沢剤としてステアリン酸マグネシウムを含む、項目13に記載の単位用量体。
【0130】
15.耐水コーティングで被覆された、項目12から14のいずれか一つに記載の単位用量体。
【0131】
16.耐水コーティングが少なくとも30重量%のブチルメタクリレート共重合体を含む、項目15に記載の単位用量体。
【0132】
17.該錠剤が2mm以上の幅のベリーバンドを有する、項目12から16のいずれか一つに記載の単位用量体。
【0133】
18.少なくとも300mgの水不溶性の無機固体リン酸塩結合剤を含む、項目11から17のいずれか一つに記載の単位用量体。
【0134】
1A.(i)顆粒状物物質の重量当り少なくとも50重量%の、リン酸塩結合能力のある固体の水不溶性の無機化合物
(ii)顆粒状物質の重量当り3から12重量%の非化学的結合水、および
(iii)顆粒状物質の重量当り47重量%以下の賦形剤、
を含む顆粒状物質。
【0135】
2A.該水不溶性の無機固体リン酸塩結合剤が混合金属化合物である、項目1Aに記載の顆粒状物質。
【0136】
3A.該混合金属化合物が化学式(I)で示される化合物である、項目2Aに記載の顆粒状物質:
MII1-xMIIIx(OH)2An-y.zH2O (I)
[式中、
MIIは少なくとも一つの二価金属であり;
MIIIは少なくとも一つの三価金属であり;
An-は少なくとも一つのn価のアニオンであり;
x=Σny;
0<x≦0.67、0<y≦1、および0≦z≦10]
【0137】
4A.項目3Aに記載された顆粒状物質であってx=Σny;0<x≦0.5、0<y≦1、および0≦z≦10である顆粒状物質。
【0138】
5A.項目3Aあるいは4Aに記載された顆粒状物質であって、化学式(I)の金属混合化合物が層状2水酸化物である顆粒状物質。
【0139】
6A.項目2Aから5Aに記載された顆粒状物質であって、その混合金属化合物が少なくとも一つの水酸基および炭酸イオンを含み、かつ金属として鉄(III)およびマグネシウムを含む顆粒状物質。
【0140】
7A.項目1Aから6Aのいずれか一つに記載された顆粒状物質であって、その水不溶性の無機化合物はアルミニウムをもたない顆粒状物質。
【0141】
8A.項目1Aから7Aのいずれか一つに記載された顆粒状物質であって、その水不溶性の無機化合物が、鉄(III)および少なくとも一つのマグネシウム、カルシウム、ランタンあるいはセリウムを含む顆粒状物質。
【0142】
9A.項目1Aから8Aのいずれか一つに記載された顆粒状物質であって、賦形剤として顆粒状物質の5から20重量%のアルファ化デンプンを含んでいる顆粒状物質。
【0143】
10A.項目1から9Aのいずれか一つに記載された顆粒状物質であって、賦形剤として顆粒状物質の1から15重量%のポリビニルピロリドンを含む顆粒状物質。
【0144】
11A.項目1Aから10Aのいずれか一つに記載された顆粒状物質であって、顆粒状物質の少なくとも95重量%の顆粒が1180マイクロメートル未満の直径である顆粒状物質。
【0145】
12A.項目1Aから11Aのいずれか一つに記載された顆粒状物質を含有する耐水カプセルを含む経口投与の単位用量体。
【0146】
13A.項目1Aから11Aのいずれかに記載された顆粒状物質の圧縮錠剤を含む経口投与の単位用量体。
【0147】
14A.さらに顆粒の間に滑沢剤を含む、項目13Aに記載の単位用量体。
【0148】
15A.該滑沢剤がステアリン酸マグネシウムである、またはそれを含む、項目14Aに記載の単位用量体。
【0149】
16A.耐水コーティングで被覆された、項目13Aから15Aのいずれか一つに記載の単位用量体。
【0150】
17A.該耐水コーティングが少なくとも30重量%のブチルメタクリレート共重合体を含む、項目16Aに記載の単位用量体。
【0151】
18A.該錠剤が2mm以上の幅のベリーバンドを有する、項目16Aから17Aのいずれか一つに記載の単位用量体。
【0152】
19A.リン酸塩を結合しうる該固体の水不溶性無機化合物が少なくとも300mg含まれる、項目12Aから18Aのいずれか一つに記載の単位用量体。
【0153】
20A.項目1Aから11Aのいずれか一つに記載の顆粒状物質の製造方法であって、:
i)リン酸塩を結合しうる固体の水不溶性無機化合物と一つ以上の賦形剤を混合して均一混合物を調製し、
ii)該均一混合物を造粒機内で適切な液体と接触、混合して湿顆粒を形成させ、
iii)適宜、該湿顆粒をふるいに通してふるいのサイズより大きい顆粒を取り除き、
iv)該湿顆粒を乾燥させて乾燥顆粒とし、
v)該乾燥顆粒を微粉砕および/またはふるいにかける
の段階を含む調製工程。
【0154】
21A.該液体が水、エタノール、およびそれらの混合物から選択される、項目20Aに記載の方法。
【0155】
22A.医薬に使用される、項目1Aから11Aのいずれか一つに記載の顆粒状物質。
【0156】
23A.リン酸塩結合薬剤の製造における、項目1Aから11Aのいずれか一つに記載の顆粒状物質の使用。
【0157】
24A.リン酸塩濃度に関係する症状または疾病の治療に用いられる薬剤の製造における、項目1Aから11Aのいずれか一つに記載の顆粒状物質の使用。
【0158】
25A.有害なリン酸塩濃度を伴う症状または疾病の治療に用いられる薬剤の製造における、項目1Aから11Aのいずれか一つに記載の顆粒状物質の使用。
【0159】
26A.血漿リン酸塩濃度の増大を伴う症状または疾病の治療に用いられる薬剤の製造における、項目1Aから11Aのいずれか一つに記載された顆粒状物質の使用。
【0160】
27A.高リン血症の治療に用いられる薬剤の製造における、項目1Aから11Aのいずれか一つに記載された顆粒状物質の使用。
【0161】
本発明は、以下の非限定の実施例においてより詳しく説明されよう。
【実施例】
【0162】
以下の実施例において用いられるリン酸塩結合剤は、水酸化ナトリウムおよび炭酸ナトリウムの存在下における硫酸マグネシウム水溶液と硫酸第二鉄の反応により形成された。その合成反応は:4MgSO4+Fe2(SO4)3+12NaOH+Na2CO3->Mg4Fe2(OH)12CO3nH2O+7Na2SO4によって表される。その沈殿は、およそpH10.3、室温(15-25℃)で実施された。その結果生じた沈殿物は濾過、洗浄、乾燥、製粉され、その後、全ての物質が106ミクロンより小さくなるようにふるいにかけられた。リン酸塩結合剤の化学式は:Mg4Fe2(OH)12CO3nH2Oであり、以下のXRF組成:MgO=29.0%、Fe2O3=28.7%、Mg:Feモル比=2:1を持っていた。そのXRF値はリン酸塩結合剤中に存在する全ての水を考慮する。XRDは、リン酸塩結合剤が不完全な結晶ハイドロタルサイト型構造体の存在により特徴づけられていたことを示した。
【表3】

表中の値は全て重量%である。
【0163】
顆粒は表1に詳述されるような処方を用いて作られた。造粒に先立ち、チューブラ粉末ブレンダーで5分間、構成成分を調合することにより、125mlバッチの乾燥混合物が作られた。125グラムバッチの乾燥粉末混合物は、小さくなるまでプレーナーミキサーにおいて精製水を規則的に添加することで造粒され、特徴的な顆粒が作られた。それぞれの粉末混合物は、造粒するのに異なる量の水を必要とした。造粒に用いられる典型的な水の量は、乾燥粉末重量に対する重量%として、:実施例(1)-106%、実施例(2)-111%、実施例(3)-78%、実施例(4)-83%、実施例(5)-100%、実施例(6)-70-106%、実施例(7)-78%である。それぞれの処方にあう顆粒のバッチは、その後、結合され、大きな顆粒を取り除くために1.18mm目開きメッシュを通す前に、流動層乾燥機で目標水分含量の4-6%w/wになるまで空気吸入口温度40℃で乾燥される。
【0164】
造粒に必要とされる水の量は、リン酸塩結合剤の水分含量、粒子サイズ分布、供給量および分散度(水の液滴直径)に依存して変化した。概して、50%より少ない水が用いられると微小顆粒が得られたが、一方、過度の量の水(110%より多い)は、集合体形成をもたらした。好ましい水分量は70%から100%であった。
【0165】
錠剤は、Holland C50 錠剤硬度検査器による測定で13から29kgFの硬度で作られた。さまざまな圧密圧力が、表2の処方1から4に詳述されているような異なる錠剤硬度(重量キログラムで測定)の錠剤を作るのに用いられ、0.3%ステアリン酸が滑沢剤として用いられた。
【0166】
錠剤の崩壊時間は、崩壊装置(Copley社 DTG 2000 IS:商標)を用いて測定した。
【0167】
表2におけるリン酸塩結合能力は、上記のリン酸塩結合試験に詳述したように、pH=4および時間=30分で測定した。
【0168】
もろさは錠剤脆弱度検査器(Erweka社 TA10)により測定した。
【0169】
表中に示したように、式1、2、3および4の顆粒から3つの異なる粉砕力(錠剤硬度)(a、bおよびc)で作られた素錠における結果を表2に示す。
【表4】

【0170】
表3は、実施例1の処方の顆粒から作られた錠剤にオイドラギット EPOを含む耐水コーティングを付加した効果を示す。
【0171】
そのコーティング処方は:
84.02%精製水、0.81%ドデシル硫酸ナトリウム、8.08%ブチルメタクリレート共重合体(オイドラギット EPO)、1.21%ステアリン酸、2.09%タルク、2.83%ステアリン酸マグネシウム、0.64%二酸化チタン、0.32%弁柄である。そのコーティングは48℃の温風を用いて塗布した後、乾燥される。
【0172】
ここに開示したコーティング量は、塗料の塗布および48℃の温風における乾燥の前と後の錠剤の重量の増加から決定される。
【表5】

【0173】
表3から、コーティングは錠剤の崩壊を遅らせる効果を持つことがわかる。
【0174】
表4は、貯蔵性および、実施例1、5、6および7の顆粒から硬度10から15 kgFにより形成された錠剤の特性に対する、異なるコーティングタイプと滑沢剤の効果を示す。実施例1および5の錠剤は滑沢剤として0.3重量%のステアリン酸を含んでいた。実施例6および7の錠剤は滑沢剤として0.3重量%のステアリン酸マグネシウムを含んでいた。
【表6】

オイドラギットコーティングは上記に記載したとおりである。
【0175】
オパドライ AMBコーティングは、オイドラギット塗料のような他のコーティング成分を備えたコーティングポリマーとして、オイドラギット EPOの代わりにオパグロス 2カルボキシメチルセルロースナトリウムを持つ。
【0176】
表4における水分含量の記載は、完全コーティング錠に対するものであり、顆粒に対するものではない。
【0177】
保存は、錠剤を密閉せずに暴露させる状態で、75℃、相対湿度40%において4週間実施された。
【0178】
表4から、オパドライコーティングは保存中にステアリン酸マグネシウム滑沢剤によるへこみを抑制しないが、オイドラギットは抑制することがわかる。オイドラギットでさえもステアリン酸によるへこみは抑制しない。従って、最適な方法はステアリン酸マグネシウム滑沢剤とオイドラギットコーティングの併用である。
【0179】
表5は、37℃のpH7の水および0.1規定HClにおける素錠の錠剤崩壊時間に対する、顆粒サイズと水分含量の効果を示す。その処方は実施例6にならった(しかしさまざまな水分量を伴う)。その錠剤は10-15Kgfのおよそ同じ硬度に圧縮された。
【表7】

【0180】
高い水分量の顆粒における錠剤表面の異常は、圧縮中に錠剤金型の側面を超えて過度に物質を詰め込むことが原因であった。
全ての顆粒は、106マイクロメートルより小さい直径の顆粒が25重量%より少なくなるようにふるいにかけられた。
【0181】
表5から、顆粒サイズの増大は顆粒水分量が1.19および7.01%のとき崩壊を遅くし、その水分含量は崩壊時間および錠剤の質の両方に著しい効果をもつことがわかる。
【0182】
類似の効果が、リン酸塩結合の遅滞における顆粒サイズの影響について見いだされた。実施例6に記載された1180μmより小さい直径の顆粒から形成される錠剤と、425μmより小さい直径の顆粒から形成される錠剤の、時間関数としてのリン酸塩結合を比較した。その錠剤は両者とも13kg錠剤硬度の強さで圧縮されており、また、4.5%の乾燥されたオイドラギット EPO耐水コーティングを施されていた。より小さい顆粒から作られた錠剤は10分後に80%平衡リン酸塩結合に達したが、一方より大きい顆粒から作られた錠剤は30分を要した。平衡リン酸塩結合は120分後の測定値としている。リン酸塩結合の結果は以下に記載する改良法に従って得られた。
【0183】
表6は、コーティング錠の4.5wt%の量のオイドラギット EPOでコーティングされた、実施例6に記載の425マイクロメートルより小さい直径の顆粒から形成されるコーティング錠のリン酸塩結合を示す。
【0184】
表6、7および8は、結合が測定されたさまざまなpH値の溶液でのリン酸塩結合(固体の無機のリン酸塩結合剤1グラムあたりのリン酸塩結合のmmolで表した)を示す。
【0185】
表6、7および8の結果は、以下の改良を加えた上記に記載したリン酸塩結合の方法により得られた。:0.5gのリン酸塩結合剤を含む1錠剤を、125mlの4mmol/litreリン酸塩溶液(対照として12.5mlの40mmol/litre)に分散させた。その後、サンプルをコック付きポリプロピレン三角フラスコに入れ振盪水浴で37℃および200rpmで、さまざまな時間インキュベートした。リン酸塩溶液のpHは1MNaOHあるいはHCl溶液を用いて変えた。ICP-OECの較正基準は、低いほうのリン酸濃度を考慮して適宜変えられた。
【表8】

【0186】
表7は、さまざまな条件における顆粒の粒子サイズ分布の影響を示す。“移送”とは、ホッパーから打錠機への移送において妨害や架橋による移送の難易性を示す。その顆粒は実施例6に従って形成された。微細な顆粒(A)は乏しかった。
【0187】
表6のpH4に関しては、リン酸塩結合は前述のリン酸塩結合方法を用いて測定された。
【0188】
A、B、CおよびDにおけるリン酸塩結合の結果は錠剤(素錠)から得たが、Eにおける結果は顆粒そのものからであった。
【表9】

【0189】
素錠形態で、1180マイクロメートルより小さい直径の顆粒から作られた錠剤における実施例1-7はまた、表8(pH=4および時間=30分)に示すように、改良したリン酸塩結合試験を用いて測定した。
【表10】

【0190】
表8、および実施例2と3の比較から、実施例3は、微結晶性セルロースの存在によるリン酸塩結合の阻害の影響が実証されている低いリン酸塩結合をもつこと、および、アルファ化デンプンと微粉クロスポビドンの好ましい組み合わせを用いる利点がわかる。この好ましい賦形剤の組み合わせは、良好なリン酸塩結合だけでなく造粒過程の補助および水中における顆粒や錠剤の良好な分散を維持した。
【0191】
実施例6に記載された425マイクロメートルより小さい直径の顆粒から形成されたコーティング錠(0.5gの結合剤を含む)由来の物質は、以下のラングミュア定数:K1(1/mmol)=0.25およびK2(mmol/g)=1.88を持つことがわかった。
【0192】
実施例6に記載された1000マイクロメートルより小さい直径の顆粒から形成されたコーティング錠剤(0.5gの結合剤を含む)由来の物質は、以下のラングミュア定数:K1(1/mmol)=0.19およびK2(mmol/g)=1.88を持つことがわかった。
【0193】
K1は親和定数であり、リン酸塩結合の強度の指標である一方、K2は流量定数であり、結合剤1単位重量に対して結合しうるリン酸塩の上限である。
【0194】
これらのラングミュア定数はリン酸塩濃度を1から40mmol/lに変化させることで決定され、平衡状態で測定した非結合リン酸塩に対する非結合/結合リン酸塩のプロットにおける直線回帰の実行により算出された。最初のリン酸塩溶液のpHはpH=4、温度=摂氏37、および選ばれた均衡点はt=120分であった。
【0195】
上記の明細書に言及された全ての刊行物および特許、特許出願書類は、ここに参照することにより組み込まれる。本発明のさまざまな改良および変化がこの発明の範囲と精神から逸脱することなく当業者にとって明白なものとなるであろう。この発明は特に好ましい実施形態について記載されてきたけれども、当然のことながら、請求された発明はそのような特別な実施形態に必要以上に限定されるべきでない。実際に、化学、生物学あるいは関連分野に精通した者にとっては明らかである、記載した発明の実施方法のさまざまな改良は、請求項の範囲内であることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)顆粒状物質の重量当り少なくとも50重量%の化学式(I)で示されるリン酸塩を結合しうる固体の水不溶性混合金属化合物:
MII1-xMIIIx(OH)2An-y.zH2O (I)
[式中、
MIIはマグネシウム、カルシウム、ランタンおよびセリウムの少なくとも1種であり;
MIIIは少なくとも鉄(III)であり;
An-は少なくとも1種のn価のアニオンであり;
x=Σny;
0<x≦0.67、0<y≦1、および0≦z≦10である]
(ii)顆粒状物質の重量当り少なくとも3から12重量%の非化学的結合水、および
(iii)顆粒状物質の重量当り47重量%以下の賦形剤、
を含む顆粒状物質。
【請求項2】
x=Σny;0<x≦0.5、0<y≦1、および0≦z≦10である請求項1に記載の顆粒状物質。
【請求項3】
化学式(I)で示される混合金属化合物が層状2水酸化物から成る請求項1あるいは2に記載の顆粒状物質。
【請求項4】
該混合金属化合物が、少なくとも一つの水酸化物イオンおよび炭酸イオン、そして金属として鉄(III)およびマグネシウムを含む、請求項1から3のいずれか一つに記載の顆粒状物質。
【請求項5】
賦形剤として顆粒状物質の重量当り5から20重量%のアルファ化澱粉を含む、前述の請求項のいずれかに記載の顆粒状物質。
【請求項6】
賦形剤として顆粒状物質の重量当り1から15重量%の架橋ポリビニルピロリドンを含む、請求項1から5のいずれか一つに記載の顆粒状物質。
【請求項7】
賦形剤が少なくともアルファ化澱粉およびクロスポビドンを含む請求項1から6のいずれか一つに記載の顆粒状物質。
【請求項8】
顆粒状物質の重量当り少なくとも95%の顆粒が1180マイクロメートル未満の直径を有する、前述の請求項のいずれかに記載の顆粒状物質。
【請求項9】
前述の請求項のいずれかに記載の顆粒状物質を含有する耐水カプセルを含む経口投与の単位用量体。
【請求項10】
請求項1から8のいずれかに記載の顆粒状物質の圧縮錠剤を含む経口投与の単位用量体。
【請求項11】
該顆粒の間にさらに滑沢剤を含む請求項10に記載の単位用量体。
【請求項12】
該滑沢剤がステアリン酸マグネシウムであるかまたはそれを含む、請求項11に記載の単位用量体。
【請求項13】
請求項10から12のいずれか一つに記載の、耐水コーティングで被覆された単位用量体。
【請求項14】
該耐水コーティングが少なくとも30重量%のブチルメタクリレート共重合体を含む、請求項13に記載の単位用量体。
【請求項15】
該錠剤が2mm以上の幅のベリーバンドを有する、請求項13あるいは14に記載の単位用量体。
【請求項16】
リン酸塩を結合しうる該固体の水不溶性無機化合物が少なくとも200mg含まれる、請求項9から15のいずれか一つに記載の単位用量体。
【請求項17】
請求項1から8のいずれか一つに記載の顆粒状物質の製造方法であって、下記の工程;
i)式(I)の化合物と一つ以上の賦形剤を混合して均一混合物を調製し、
ii)該均一混合物を造粒機内で適切な液体と接触、混合して湿顆粒を形成させ、
iii)適宜、該湿顆粒をふるいに通してふるいのサイズより大きい顆粒を取り除き、
iv)該湿顆粒を乾燥させて乾燥顆粒とし、
v)該乾燥顆粒を微粉砕および/またはふるいにかける
ことを特徴とする製造方法。
【請求項18】
該液体が水、エタノール、およびその混合物から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
医薬に使用される、請求項1から8のいずれか一つに記載の顆粒状物質。
【請求項20】
リン酸塩を結合する薬剤の製造における、請求項1から8のいずれか一つに記載の顆粒状物質の使用。
【請求項21】
リン酸塩濃度と関連する症状または疾病の治療に用いられる薬剤の製造における、請求項1から8のいずれか一つに記載の顆粒状物質の使用。
【請求項22】
有害なリン酸塩濃度を伴う症状または疾病の治療に用いられる薬剤の製造における、請求項1から8のいずれか一つに記載の顆粒状物質の使用。
【請求項23】
血漿中のリン酸濃度の増大を伴う症状または疾病の治療に用いられる薬剤の製造における、請求項1から8のいずれか一つに記載の顆粒状物質の使用。
【請求項24】
高リン血症の治療に用いられる薬剤の製造における、請求項1から8のいずれか一つに記載の顆粒状物質の使用。
【請求項25】
実施例を参照して実質的に記載される顆粒状物質。
【請求項26】
実施例を参照して実質的に記載される単位用量体。
【請求項27】
実施例を参照して実質的に記載される方法。
【請求項28】
実施例を参照して実質的に記載される使用。

【公表番号】特表2009−525316(P2009−525316A)
【公表日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552877(P2008−552877)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【国際出願番号】PCT/GB2007/000308
【国際公開番号】WO2007/088343
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(507272290)イネオス・ヘルスケア・リミテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】INEOS HEALTHCARE LIMITED
【Fターム(参考)】