説明

水不溶性色材分散体、水不溶性色材含有物の製造方法、水不溶性色材の微粒子、水不溶性色材用分散剤、並びにこれらを用いた記録液、インクセット、印画物、画像形成方法、及び画像形成装置

【課題】微細かつ均一な粒子径を有するナノメートルサイズの水不溶性色材の微粒子を含有する分散体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】水を含む媒体に、水不溶性色材の微粒子と、下記一般式(I)〜(IV)のいずれかで表される電子求引性基もしくはこれを含む原子群の1種類以上を親水性部分として有する高分子化合物もしくは界面活性剤とを含有させた水不溶性色材分散体。
【化1】


(一般式(I)および(II)中、XおよびXの少なくとも一方は電子求引性の連結基を表し、XおよびXの一方が該連結基でないときその基は電子求引性の置換基を表す。Rは水素原子または置換基を表す。一般式(IV)中、Mは水素原子または金属原子を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水不溶性色材分散体、水不溶性色材含有物の製造方法、水不溶性色材の微粒子、水不溶性色材用分散剤、並びにこれらを用いた記録液、インクセット、印画物、画像形成方法、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法は、高速記録が可能であり、描画パターンの自由度が高く、記録時の騒音が少ない。また、低コストで画像記録が可能であり、さらにはカラー記録が容易である等の利点がある。そのため今日においては急速に普及しさらに発展しつつある。この記録液として従来、水溶性染料を水性媒体に溶解させた染料インクが広く用いられてきた。しかし、染料インクは印刷物の耐水性や耐候性に劣るため、これを改善しうる顔料インクが検討されている。
【0003】
顔料インクは、通常水に不溶性の顔料を水性媒体に分散して得られる。そして一般的には、顔料および各種界面活性剤や水溶性高分子などを分散剤として、それらを単独あるいは併用して水性溶媒に添加し、サンドミル、ビーズミル、ボールミルなどの分散機を使用して粉砕し、顔料粒子径を微細化する方法が採用されている(特許文献1、2参照)。また、着色力や耐候性の向上を考慮し顔料を固溶体化することが提案されている(特許文献3参照)。その他、アルカリ存在下の非プロトン性有機溶媒中に、有機顔料と高分子分散剤、または分散剤として高分子化合物を溶解させた後、この溶液と水とを混合させ顔料分散液を調製する方法(以下、前記方法をビルドアップ法という。)、またそこに用いられる所定の高分子化合物等の検討がなされている(特許文献4〜8参照)。粒子の分散安定性について開示したものがあるが(例えば非特許文献1参照)、さらなる改良開発が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−57044号公報
【特許文献2】特開2006−328262号公報
【特許文献3】特開昭60−35055号公報
【特許文献4】特開2003−113341号公報
【特許文献5】特開2003−26972号公報
【特許文献6】特開2004−43776号公報
【特許文献7】特開2006−342316号公報
【特許文献8】特開2007−119586号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】技術情報協会発行「最新 顔料分散 実務ノウハウ・事例集」2005年10月発刊,208〜211頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、微細かつ均一な粒子径を有するナノメートルサイズの水不溶性色材の微粒子を含有する分散体およびその製造方法の提供を目的とする。さらには、水不溶性色材を安定に分散させる高分子化合物の種類を豊富化し、特にインクとしたときの保存性、吐出性、透明性を高めることができる水不溶性色材分散体、水不溶性色材含有物の製造方法、水不溶性色材の微粒子、水不溶性色材用分散剤、並びにこれらを用いた記録液、インクセット、印画物、画像形成方法、及び画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記特許文献6は具体的に顔料の水系分散体にアクリル酸系ポリマーを含有させたものを開示する。これは高分子化合物がもつカルボキシル基やスルホン酸基に代表される酸性解離性基による電荷反発を利用し、顔料粒子の分散性を確保するものである。これに対し、本発明者らは鋭意検討した結果、特定の電子求引性基を有する高分子化合物もしくは界面活性剤が水不溶性色材分散体に優れた分散性を付与することを見出した。本発明は上記知見に基づきなされたものであり、すなわち上記の課題は以下の手段により達成された。
(1)水を含む媒体に、水不溶性色材の微粒子と、下記一般式(I)〜(IV)のいずれかで表される電子求引性基もしくはこれを含む原子群の1種類以上を親水性部分として有する高分子化合物もしくは界面活性剤とを含有することを特徴とする水不溶性色材分散体。
【化1】

(一般式(I)および(II)中、XおよびXの少なくとも一方は電子求引性の連結基を表し、X1およびX2の一方が該連結基でないときその基は電子求引性の置換基を表す。Rは水素原子または置換基を表す。一般式(IV)中、Mは水素原子または金属原子を表す。)
(2)前記一般式(I)または一般式(II)におけるXおよびXがハメットの置換基定数におけるσ値が0以上である電子求引性の連結基または置換基であることを特徴とする(1)に記載の分散体。
(3)前記一般式(I)または一般式(II)におけるXおよびXが、−CO−、−SO−、−SO−、−CN、−NO、−NO、−OH、−PO−、ハロゲン原子、アリール基、およびヘテロ環基よりなる群から選択されることを特徴とする(1)または(2)に記載の分散体。
(4)前記一般式(I)が下記一般式(V)で表される原子群であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の分散体。
【化2】

(式中、YおよびYはそれぞれ独立に−CO−または−SO−であり、Zはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。)
(5)前記一般式(I)で表される原子群を親水性部分として有する高分子化合物が、下記一般式(VI)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の分散体。
【化3】

(式中、Rは水素原子または置換基を表す。Lは単結合または2価の連結基を表す。Y、Y、およびZは一般式(V)でのY、Y、およびZと同じ意味を表す。)
(6)前記一般式(I)で表される原子群を親水性部分として有する高分子化合物が、下記一般式(VII)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の分散体。
【化4】

(式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。RおよびLは一般式(VI)でのRおよびLと同じ意味を表す。Y、Y、およびZは一般式(V)でのY、Y、およびZと同じ意味を表す。m、nは共重合比を表す。)
(7)前記一般式(I)で表される原子群を親水性部分として有する高分子化合物が、下記一般式(VIII)、一般式(IX)、一般式(X)あるいは一般式(XI)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の分散体。
【化5】

[一般式(VIII)において、Rは水素原子または置換基を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR17−、−OCO−、またはメチレン基を表す。Lは単結合または2価の連結基を表す。Aはヘテロ環基を表す。R、L、m、n、Y、Y、およびZは一般式(VI)と同じ意味を表す。]
[一般式(IX)において、Rは水素原子または置換基を表す。R10〜R13は、それぞれ独立に単結合、水素原子または置換基を表す。R10〜R13が置換基を表す場合、互いに結合し、環を形成してもよい。Qは、−C=C−とともに環を形成する原子群を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR17−、−OCO−、またはメチレン基を表す。Lは単結合または2価の連結基を表す。R、L、m、n、Y、YおよびZは一般式(VI)と同じ意味を表す。]
[一般式(X)において、Rは水素原子または置換基を表す。R14〜R16は、それぞれ独立に置換あるいは無置換のアルキル基またはアリール基を表し、R14〜R16が互いに結合し、飽和あるいは不飽和の環を形成してもよい。Jは−CO−、−COO−、−CONR17−、−OCO−、またはメチレン基を表す。Lは単結合または2価の連結基を表す。Xは窒素上のカチオン電荷と釣り合うアニオン基である。R、L、m、n、Y、YおよびZは一般式(VI)と同じ意味を表す。]
[一般式(XI)において、Rは水素原子または置換基を表す。R17は水素原子または置換基を表す。Qは、−N=C(R17)−とともに不飽和環を形成する原子群を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR17−、−OCO−、またはメチレン基を表す。Lは単結合または2価の連結基を表す。R、L、m、n、Y、YおよびZは一般式(VI)と同じ意味を表す。Xは窒素上のカチオン電荷と釣り合うアニオン基である。]
(8)前記水不溶性色材の微粒子の平均粒子径が150nm以下である(1)〜(7)のいずれか1項に記載の分散体。
(9)該水不溶性色材が顔料である(1)〜(8)のいずれか1項に記載の分散体。
(10)前記微粒子は該微粒子を構成する水不溶性色材が結晶状態で示す色と同色を示し、前記分散体の可視光領域の吸光度ピークを1とした際に、光散乱強度が30000cps以下であることを特徴とする(1)〜(9)のいずれか1項に記載の分散体。
(11)下記一般式(VII)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする水不溶性色材用高分子分散剤。
【化6】

(式中、YおよびYはそれぞれ独立に−CO−または−SO−である。Zは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。Rは水素原子または置換基を表す。Lは単結合または2価の連結基を表す。R〜Rはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。m、nは共重合比を表す。)
(12)一般式(VII)が、下記一般式(XII)、(XIII)、(XIV)、又は一般式(XV)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする(11)に記載の水不溶性色材用高分子分散剤。
【化6−2】

[一般式(XII)において、l、m、nは共重合比を表す。Rは水素原子または置換基を表す。Lは単結合または2価の連結基を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR17−、−OCO−、またはメチレン基を表す。Aはヘテロ環基を表す。R〜R、L、m、n、Y、Y、およびZは一般式(VII)と同じ意味を表す。]
[一般式(XIII)において、l、m、nは共重合比を表す。R10〜R13は、それぞれ独立に単結合、水素原子または置換基を表す。R10〜R13が置換基を表す場合、互いに結合し、環を形成してもよい。Qは、−C=C−とともに環を形成する原子群を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR17−、−OCO−、またはメチレン基を表す。Lは単結合または2価の連結基を表す。R、L、m、n、Y、YおよびZは一般式(VII)と同じ意味を表す。]
[一般式(XIV)において、l、m、nは共重合比を表す。R14〜R16は、それぞれ独立に置換あるいは無置換のアルキル基またはアリール基を表し、R14〜R16が互いに結合し、飽和あるいは不飽和の環を形成してもよい。Jは−CO−、−COO−、−CONR17−、−OCO−、またはメチレン基を表す。Lは単結合または2価の連結基を表す。Xは窒素上のカチオン電荷と釣り合うアニオン基である。R、L、m、n、Y、YおよびZは一般式(VII)と同じ意味を表す。]
[一般式(XV)において、l、m、nは共重合比を表す。R17は水素原子または置換基を表す。Qは、−N=C(R17)−とともに不飽和環を形成する原子群を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR17−、−OCO−、またはメチレン基を表す。Lは単結合または2価の連結基を表す。R、L、m、n、Y、YおよびZは一般式(VII)と同じ意味を表す。Xは窒素上のカチオン電荷と釣り合うアニオン基である。]
(13)水不溶性色材と、下記一般式(I)〜(IV)で表される電子求引性基もしくはこれを含む原子群の1種類以上を親水性部分として有する高分子化合物もしくは界面活性剤とを有してなることを特徴とする水不溶性色材の微粒子。
【化7】

(一般式(I)および(II)中、XおよびXの少なくとも一方は電子求引性の連結基を表し、XおよびXの一方が該連結基でないときその基は電子求引性の置換基を表す。Rは水素原子または置換基を表す。一般式(IV)中、Mは水素原子または金属原子を表す。)
(14)水不溶性色材をアルカリ存在下の非プロトン性水溶性有機溶剤に溶解させ、その溶液と水性媒体とを接触させて、前記水不溶性色材を微粒子として生成させた分散体を調製するに当たり、下記一般式(I)〜(IV)のいずれかで表される電子求引性基もしくはこれを含む原子群の1種類以上を親水性部分として有する高分子化合物もしくは界面活性剤を前記水不溶性色材の溶液および/または水性媒体に含有させ、前記水不溶性色材微粒子と該高分子化合物もしくは界面活性剤とを含有する分散体とすることを特徴とする水不溶性色材含有物の製造方法。
【化8】

(一般式(I)および(II)中、XおよびXの少なくとも一方は電子求引性の連結基を表し、XおよびXの一方が該連結基でないときその基は電子求引性の置換基を表す。Rは水素原子または置換基を表す。一般式(IV)中、Mは水素原子または金属原子を表す。)
(15)前記一般式(I)〜(IV)で表される原子群の1種類以上を親水性部分として有する高分子化合物もしくは界面活性剤を、前記水性媒体に含有させることを特徴とする(14)に記載の製造方法。
(16)前記非プロトン性水溶性有機溶剤の水に対する溶解度が5質量%以上である(14)または(15)に記載の製造方法。
(17)前記アルカリが、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属のアルコキシド、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ土類金属のアルコキシド、および有機強塩基からなる群より選ばれる1種類以上のアルカリである(14)〜(16)のいずれか1項に記載の製造方法。
(18)前記分散体に含まれる前記水不溶性色材の微粒子を軟凝集させ、そこから前記水不溶性色材微粒子の凝集体を分離し、該凝集体を構成する微粒子に水に対する再分散性を付与することを特徴とする(14)〜(17)のいずれか1項に記載の製造方法。
(19)前凝集体の形成を酸の添加により行い、前記凝集体への再分散性への付与をアルカリの添加により行う(14)〜(18)のいずれか1項に記載の製造方法。
(20)前記分散体または凝集体を加熱する工程を含むことを特徴とする前記(14〜19のいずれか1項に記載の製造方法。
(21)水を含む媒体に前記凝集体の凝集を解き再分散させることを特徴とする(14)〜(20)のいずれか1項に記載の製造方法。
(22)前記(14)〜(21)に記載の製造方法により得られることを特徴とする水不溶性色材分散体。
(23)前記水不溶性色材が、キナクリドン有機顔料、ジケトピロロピロール有機顔料、ペリレン有機顔料、モノアゾイエロー有機顔料、縮合アゾ有機顔料、キノフタロン有機顔料、ベンズイミダゾロン有機顔料、ジスアゾイエロー顔料、及びフタロシアニン顔料からなる群より選ばれる有機顔料であることを特徴とする(1)〜(10)及び(22)のいずれか1項に記載の水不溶性色材分散体。
(24)(1)〜(9)、(22)、及び(23)のいずれか1項に記載の分散体を用いて作製される記録液であって、前記水不溶性色材を、記録液全質量の0.1〜20質量%含むことを特徴とする記録液。
(25)前記記録液がインクジェット用記録液である(24)に記載の記録液。
(26)(25)に記載のインクジェット用記録液を用いたインクセット。
(27)(24)もしくは(25)に記載の記録液、または(26)に記載のインクセットを用いて記録液を媒体に付与する手段により画像が記録された印画物であって、前記手段が記録液の付与量もしくは濃度を調整する機能を有し、該手段により印画物の濃淡が調整された印画物。
(28)(24)もしくは(25)に記載の記録液、又は(26)に記載のインクセットを用いて記録液を媒体に付与することにより、画像を記録する工程を有することを特徴とする画像形成方法。
(29)(24)もしくは(25)に記載の記録液、又は(26)に記載のインクセットを用いて記録液を媒体に付与することにより、画像を記録させるための手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の分散体は、水不溶性色材の微粒子がナノメートルサイズにまで微細化され、しかもその粒径がそろっており、さらに該微粒子の凝集が抑えられ良好な分散性が長期間にわたって維持されるという優れた作用効果を奏する。さらに本発明の高分子分散剤は水不溶性色材の微粒子を安定に分散させることができる。さらにまた本発明によれば、水不溶性色材を分散させる高分子化合物の種類を豊富化し、水不溶性色材を含有する分散体をインクとしたときの保存性、吐出性、透明性を高めることができる。また、本発明の水不溶性色材分散体を用いた記録液、インクセット、それを用いた印画物は高い透明性と耐光性とを両立し、また吐出性に優れる。さらに上記本発明の記録液又はインクセットを用いた画像形成方法及び画像形成装置によれば精度および品質の高い画像を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に本発明について詳しく説明するが、本発明は下記の具体的構成例に限定されるものではない。
【0010】
本発明の水不溶性色材分散体は、水不溶性色材の微粒子と、前記一般式(I)〜(IV)のいずれかで表される電子求引性基もしくはこれを含む原子群の1種類以上を親水性部分として有する高分子化合物もしくは界面活性剤(低分子化合物)とを含有する。
【0011】
一般式(I)について詳しく説明する。式中、XおよびXの少なくとも一方は電子求引性の連結基を表し、XおよびXの一方が該連結基でないときその基は電子求引性の置換基を表す。本発明においては、電子密度を減弱させる効果を持つ置換基の性質を「電子求引性」といい、逆に増加させる効果を持つ場合の性質を「電子供与性」という。このような効果を持つ置換基を「電子求引性基」あるいは「電子供与性基」という。置換基の効果の指標として、パラおよびメタ置換安息香酸の酸解離定数をもとに、定量的に評価、予測する経験則として、ハメット則が知られている(野依良治・柴崎正勝、鈴木啓介、玉尾皓平、中筋一弘、奈良坂紘一編集 大学院講義有機化学I 174−179;Hammett, L. P. ”The Effect of Structure upon the Reactions of Organic Compounds. Benzene Derivatives”. J. Am. Chem. Soc. 1937, 59, 96−103参照)。
【0012】
ハメットの置換基定数におけるσ値が0以上であれば、代表的な電子求引性の置換基として挙げられ、下記文献に詳しく記載されている(C. Hansch, A. Leo, and R. W. Taft, ”A Survey of Hammett Substituent Constants and Resonance and Field Parameters”. Chem. Rev. 1991, 91, 165−195参照)。
【0013】
およびXとしては、−CO−、−SO−、−SO−、−CN、−NO、−NO、−OH、−PO−、ハロゲン原子、アリール基、およびヘテロ環基よりなる群から選択される基が挙げられる。
【0014】
およびXが電子求引性の連結基を表す場合、その連結基としては、−CO−、−SO−、−SO−、−PO−、アリーレン基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜15のアリーレン基であり、例えば、フェニレン、クメニレン、メシチレン、トリレン、キシリレンなどが挙げられる。)、または複素環連結基が好ましく、−CO−、−SO−、アリーレン基がより好ましく、−CO−、−SO−が特に好ましい。これらはさらに下記「置換基群A」より選択されるいずれか1つ以上の置換基を有していてもよい。
【0015】
およびXが電子求引性の置換基を表す場合、その電子求引性の置換基の例としては、例えば、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、スルファモイル基、カルバモイル基、ヘテロ環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、オキソ基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基などが挙げられ、その好ましい範囲も前記置換基群Aで説明した好ましい範囲と同義である。これらの置換基は、更に下記「置換基群A」より選択されるいずれか1つ以上の置換基により置換されてもよい。
【0016】
置換基群Aとしては下記のものを挙げることができる。アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数3〜10のシクロアルキル基であり、例えばシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10のアルケニル基であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10のアルキニル基であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニルなどが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜10のアミノ基であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10のアルコキシ基であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールオキシ基であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のヘテロ環オキシ基であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、
【0017】
アシル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のアシル基であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12のアリールオキシカルボニル基であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10のアシルオキシ基であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10のアシルアミノ基であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、
【0018】
アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニルアミノ基であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12のアリールオキシカルボニルアミノ基であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜12のスルファモイル基であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、
【0019】
カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のカルバモイル基であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のアルキルチオ基であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールチオ基であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のヘテロ環チオ基であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、
【0020】
スルホニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のスルホニル基であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のスルフィニル基であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のウレイド基であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のリン酸アミド基であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、より好ましくはフッ素原子が挙げられる)、
【0021】
シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、オキソ基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12のヘテロ環基であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、カルバゾリル基、アゼピニル基などが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24のシリル基であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24のシリルオキシ基であり、例えばトリメチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシなどが挙げられる。)などが挙げられる。これらの置換基は、更に上記置換基群Aより選択されるいずれか1つ以上の置換基により置換されてもよい。
【0022】
次に一般式(II)について説明する。一般式(II)において、XおよびXは一般式(I)におけるXおよびXと同じ意味を表す。Rは水素原子または置換基を表し、置換基の例としては前記置換基群Aより選択される。
【0023】
一般式(II)において、XおよびXの好ましい範囲は前記一般式(I)におけるXおよびXで説明した好ましい範囲と同じである。Rは好ましくは、水素原子またはアリール基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、スルホニル基、スルフィニル基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、ヘテロ環基であり、さらに好ましくは、水素原子、アリール基、アシル基、スルホニル基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ヒドロキサム酸基、ヘテロ環基であり、より好ましくは、水素原子、ハロゲン原子あるいはシアノ基である。
【0024】
一般式(I)で表される原子群は、一般式(V)で表される原子群であることが好ましい。一般式(V)においてYおよびYはそれぞれ独立に−CO−あるいは−SO−であり、Zはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。Zがアルキル基であるときハロゲン原子で置換されたハロゲン化アルキル基であってもよく、特にフッ素原子で置換されたフルオロアルキル基であってもよい。アルキル基としては、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシルが好ましい。シクロアルキル基としては、好ましくは炭素数3〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数3〜10のシクロアルキル基であり、例えばシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルが好ましい。アリール基としては、好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニルが好ましい。ヘテロ環基としては、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12のヘテロ環基であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子が好ましく、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、カルバゾリル基、アゼピニル基が好ましい。
【0025】
一般式(V)で表される原子群を親水性部分として有する高分子化合物は、該原子群を含む一般式(VI)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物であることが好ましい。本発明において親水性部分とは、水と親和性のある極性基、これを含む原子群、及びこれらを含む繰り返し単位の総称として用いる。一般式(VI)において、Rは水素原子または置換基を表す。置換基としては前記置換基群Aで説明した置換基群と同じ意味を表す。一般式(VI)で表される繰り返し単位の高分子化合物における含有率(重合比)は特に限定されないが0.05〜0.8であることが好ましい。
【0026】
は単結合または2価の連結基を表す。一般式(VI)におけるLで表される2価の連結基としては、例えば、直鎖、分岐若しくは環状のアルキレン基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12、さらに好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基であり、例えばメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、へキシレン、オクチレン、デシレンなどが挙げられる。)、アラルキレン基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜13のアラルキレン基であり、例えばベンジリデン、シンナミリデンなどが挙げられる。)、アリーレン基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜15のアリーレン基であり、例えば、フェニレン、クメニレン、メシチレン、トリレン、キシリレンなどが挙げられる。)などが挙げられる。これらはさらに置換基を有していてもよい。
【0027】
、YおよびZは一般式(V)でのY、YおよびZと同じ意味を表す。なお、本発明において高分子化合物を繰り返し単位の構造式で表すとき、その末端は特に限定されず、例えば水素原子であっても、重合停止剤残基であってもよい。
【0028】
一般式(VI)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物は、一般式(VII)、一般式(VIII)、一般式(IX)、一般式(X)あるいは一般式(XI)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物であることが好ましい。一般式(VII)において、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。この置換基は前記置換基群Aより選択されることが好ましく、互いに結合して環を形成してもよい。
【0029】
およびLは一般式(VI)でRおよびLと同じ意味を表す。Y、YおよびZは一般式(V)でのY、YおよびZと同じ意味を表す。m、nは共重合比を表し、他の共重合成分がない場合、m+n=1である。特に限定されるものではないが、例えばmは0.2〜0.95であることが好ましい。
【0030】
次に一般式(VII)の好ましい範囲について説明する。一般式(VII)においてR〜Rは好ましくは、それぞれ独立に水素原子またはアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、オキソ基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基、シリル基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、ヘテロ環チオ基、スルホニル基、ウレイド基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドラジノ基、ヘテロ環基であり、さらに好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、ヘテロ環チオ基、スルホニル基、ウレイド基、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基である。
【0031】
は、好ましくは単結合、アルキレン基、またはアリーレン基であり、より好ましくは単結合またはアルキレン基であり、さらに好ましくは単結合であり、Yは好ましくは−CO−であり、Yは好ましくは−SO−である。Rは好ましくは水素原子またはアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であり、より好ましくは水素原子またはアルキル基である。
【0032】
一般式(VII)中、−Y−NH−Y−Zで表わされる基、つまり上記一般式(V)で合わされる原子群としていえば、−CO−NH−SO−Z又は−SO−NH−CO−Zが好ましい。
【0033】
一般式(VII)で表される繰り返し単位を有する高分子分散剤は、前記一般式(XII)、(XIII)、(XIV)、又は一般式(XV)で表される繰り返し単位を有するものであることが好ましい。
一般式(XII)において、l、m、nは共重合比を表す。Rは水素原子または置換基を表す。Lは単結合または2価の連結基を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR17−、−OCO−、またはメチレン基を表す。Aはヘテロ環基を表す。R〜R、L、m、n、Y、Y、およびZは一般式(VII)と同じ意味を表す。
一般式(XIII)において、l、m、nは共重合比を表す。R10〜R13は、それぞれ独立に単結合、水素原子または置換基を表す。R10〜R13が置換基を表す場合、互いに結合し、環を形成してもよい。Qは、−C=C−とともに環を形成する原子群を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR17−、−OCO−、またはメチレン基を表す。Lは単結合または2価の連結基を表す。R、L、m、n、Y、YおよびZは一般式(VII)と同じ意味を表す。
一般式(XIV)において、l、m、nは共重合比を表す。R14〜R16は、それぞれ独立に置換あるいは無置換のアルキル基またはアリール基を表し、R14〜R16が互いに結合し、飽和あるいは不飽和の環を形成してもよい。Jは−CO−、−COO−、−CONR17−、−OCO−、またはメチレン基を表す。Lは単結合または2価の連結基を表す。Xは窒素上のカチオン電荷と釣り合うアニオン基である。R、L、m、n、Y、YおよびZは一般式(VII)と同じ意味を表す。
一般式(XV)において、l、m、nは共重合比を表す。R17は水素原子または置換基を表す。Qは、−N=C(R17)−とともに不飽和環を形成する原子群を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR17−、−OCO−、またはメチレン基を表す。Lは単結合または2価の連結基を表す。R、L、m、n、Y、YおよびZは一般式(VII)と同じ意味を表す。Xは窒素上のカチオン電荷と釣り合うアニオン基である。
【0034】
次に一般式(VIII)の好ましい範囲について説明する。Rは水素原子または置換基を表し、その置換基としては前記置換基群Aで説明した基を表し、好ましくは水素原子、アルキル基またはアリール基であり、さらに好ましくは水素原子又はアルキル基である。
【0035】
Jは−CO−、−COO−、−CONR18−、−OCO−、またはメチレン基を表す。これらのうち、Jとしては−CO−、−CONR18−が好ましい。R18は水素原子、アルキル基、アリール基、またはアラルキル基を表し、水素原子、アルキル基、アリール基が好ましく、その好ましい範囲は置換基Aで説明したアルキル基、アリール基の好ましい範囲と同義である。
【0036】
はヘテロ環基を表し、そのヘテロ環基としては前記置換基群Aで説明したヘテロ環基と同じ意味を表し、その好ましい範囲も同義である。
【0037】
は単結合または2価の連結基を表す。一般式(VIII)におけるLで表される2価の連結基としては、例えば、直鎖、分岐若しくは環状のアルキレン基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12、さらに好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基であり、例えばメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、へキシレン、オクチレン、デシレンなどが挙げられる。)、アラルキレン基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜13のアラルキレン基であり、例えばベンジリデン、シンナミリデンなどが挙げられる。)、アリーレン基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜15のアリーレン基であり、例えば、フェニレン、クメニレン、メシチレン、トリレン、キシリレンなどが挙げられる。)などが挙げられる。これらはさらに置換基を有していてもよい。分子内にエーテル結合を有していることも好ましい。
【0038】
前記Lは、好ましくは、単結合、アルキレン基、またはアリーレン基であり、より好ましくは単結合、アルキレン基である。さらに好ましくは単結合である。
【0039】
、L、Y、YおよびZは一般式(VI)でのR、L、m、n、Y、YおよびZと同じ意味を表し、その好ましい範囲も同義である。
【0040】
次に一般式(IX)の好ましい範囲について説明する。R、J、Lは前記一般式(VIII)で説明したR、J、Lと同じ意味を表し、その好ましい範囲も同義である。
【0041】
10〜R13は、それぞれ独立に単結合、水素原子または置換基を表し、好ましくは単結合、水素原子またはアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、オキソ基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基、シリル基であり、
【0042】
より好ましくは単結合、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、ヘテロ環チオ基、スルホニル基、ウレイド基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドラジノ基、ヘテロ環基であり、
【0043】
さらに好ましくは、単結合、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、ヘテロ環チオ基、スルホニル基、ウレイド基、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基である。R10〜R13のうち、一つは単結合である。R10〜R13が置換基を表す場合、互いに結合し、環を形成してもよい。
【0044】
は、炭素原子とともに環を形成するのに必要な原子群を表す。その原子群としては炭素、窒素、酸素、珪素、リンあるいは硫黄によって構成される環であり、好ましくは炭素、窒素、酸素、あるいは硫黄であり、さらに好ましくは、炭素、窒素あるいは酸素であり、より好ましくは炭素あるいは窒素である。これらの原子群により構成されるQは飽和であっても不飽和であってもよく、置換可能である場合、置換基を有していてもよい。その置換基としては前記Aに説明した基と同義である。
【0045】
、L、m、n、Y、YおよびZは一般式(VI)でのR、L、m、n、Y、YおよびZと同じ意味を表す。
【0046】
次に、一般式(X)の好ましい範囲について説明する。R14〜R16は、それぞれ独立に置換あるいは無置換のアルキル基またはアリール基を表し、好ましくはアルキル基である。R14〜R16が置換基を表す場合、互いに結合し、飽和あるいは不飽和の環を形成してもよい。
【0047】
Xは窒素上のカチオン電荷と釣り合うアニオン基であり、好ましくはF、Cl、Br、I、BF、PF、SbF、カルボン酸アニオン(例えば酢酸アニオン、安息香酸アニオン)、スルホン酸アニオン(例えばメタンスルホン酸アニオン、p−トルエンスルホン酸アニオン)、リン酸アニオンからなる群から選択され、さらに好ましくは、F、Cl、Br、I、BF、PF、SbFであり、より好ましくはCl、Br、BF、PF、SbFである。
【0048】
、J、Lは前記一般式(VIII)で説明したR、J、Lと同じ意味を表し、その好ましい範囲も同義である。
【0049】
、L、m、n、Y、YおよびZは一般式(VI)でのR、L、m、n、Y、YおよびZと同じ意味を表す。
【0050】
次に一般式(XI)の好ましい範囲について説明する。Qは、炭素原子および窒素原子とともに不飽和環を形成するのに必要な原子群を表す。その原子群としては炭素、窒素、酸素、珪素、リンあるいは硫黄によって構成される環であり、好ましくは炭素、窒素、酸素、あるいは硫黄であり、さらに好ましくは、炭素、窒素あるいは酸素であり、より好ましくは炭素あるいは窒素である。これらの原子群により構成されるQは飽和であっても不飽和であってもよく、置換可能である場合、置換基を有していてもよい。その置換基としては前記Aに説明した基と同義である。
17は水素原子または置換基を表わし、その好ましい範囲は上記R18と同様である
【0051】
、J、Lは前記一般式(VIII)で説明したR、J、Lと同じ意味を表し、その好ましい範囲も同義である。
【0052】
、L、m、n、Y、YおよびZは一般式(VI)でのR、L、m、n、Y、YおよびZと同じ意味を表し、その好ましい範囲も同義である。
【0053】
Xは一般式(X)でのXと同じ意味を表し、その好ましい範囲も同義である。
【0054】
前記一般式(VII)、(VIII)、(IX)、(X)および(XI)で表される繰り返し単位以外に、スチレン、4−メチルスチレン、4−エチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体といった炭素数8〜20のα−オレフィン性芳香族炭化水素類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルといった炭素数3〜20のビニルエステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−エチルへキシル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル等の炭素数4〜20のオレフィンカルボン酸エステル類、4−ビニルピリジン、4−ビニルアニリン等の炭素数8〜20のビニル系芳香族アミン類、アクリルアミド、メタクリルアミド、ベンジルメタクリルアミド等の炭素数3〜20のビニル系アミド化合物、4−ビニルフェノール等の炭素数8〜20のオレフィンフェノール類、ブタジエン、イソプレン等の炭素数4〜20のジエン系化合物といったモノマーに加えて、多官能性モノマーやマクロモノマー、その他のモノマーおよびその誘導体から適宜選択されたモノマーとの組み合わせの結果得られる高分子化合物も本発明において好ましく用いられる。
【0055】
本発明の分散体は、上記とは別の好ましい実施態様として、前記一般式(III)で表される電子求引性基を親水性部分として有する高分子化合物もしくは界面活性剤を含有することが好ましい。一般式(III)で表される基を有する繰り返し単位の、高分子化合物中での重合比は特に限定されないが、0.05〜0.8であることが好ましい。
本発明の分散体は、さらにまた別の好ましい実施態様として、前記一般式(IV)で表される電子求引性基を親水性部分として有する高分子化合物もしくは界面活性剤を含有することが好ましい。一般式(IV)で表される基を有する繰り返し単位の、高分子化合物中での重合比は特に限定されないが、0.05〜0.8であることが好ましい。
【0056】
本発明において、上記一般式(I)〜(IV)のいずれかで表される電子求引性基もしくはこれを含む原子群よりなる親水性部分を有する高分子化合物もしくは界面活性剤は、その親水性部分がpH8〜14のアルカリ条件下で解離するものであることが好ましく、該高分子化合物もしくは界面活性剤はあらかじめアルカリ条件下で解離させた溶液あるいは、その塩として単離し使用してもよい。また本発明において、上記の高分子化合物ないし界面活性剤を分散剤として作用させるには、アルカリ条件下で解離させた溶液あるいは、その塩として用いる実施形態が好ましい。なかでも、一般式(IV)で表される基は−SO2−とカチオン(金属陽イオン)とが塩を形成していることが安定性の点で実際的であり好ましい。このような観点から、一般式(IV)中、Mはアルカリ金属原子もしくはアルカリ土類金属原子であることが好ましく、ナトリウム原子であることがより好ましい。このように上記高分子化合物もしくは界面活性剤を塩として用いるか否かは、分散剤としての機能や安定性、分散体に求められる性質や用途、水不溶性色材の物性やこれとの親和性等に応じて適宜定めればよい。
【0057】
次に、一般式(I)〜(IV)のいずれかで表される原子群(式1〜120)、この原子群を有する繰り返し単位(式121〜140)、この繰り返し単位を有する高分子化合物(式141〜180)、上記原子群を有する界面活性剤(式181〜190)の具体例を示すが、本発明は下記に限定されるものではない。
【0058】
【化9】

【0059】
【化10】

【0060】
【化11】

【0061】
【化12】

【0062】
【化13】

【0063】
【化14】

【0064】
【化15】

【0065】
【化17】

【0066】
【化18】

【0067】
【化19】

【0068】
【化20】

【0069】
【化21】

【0070】
【化22】

【0071】
【化23】

【0072】
【化24】

【0073】
【化25】

【0074】
【化26】

【0075】
【化27】

【0076】
【化28】

【0077】
【化29】

【0078】
本発明の分散体において上記電子求引性基を有する特定の高分子化合物もしくは界面活性剤の含有量は特に限定されないが、分散体全量に対して5〜90質量%であることが好ましく、10〜80質量%であることがより好ましい。また、上記特定の高分子化合物もしくは界面活性剤の分子量は特に限定されないが、これが高分子化合物であるとき、質量平均分子量が1000〜100000であることが好ましく、5000〜50000であることがより好ましい。他方、界面活性剤(低分子化合物)であるときには、その質量平均分子量が150〜900であることが実際的である。
上記電子求引基を有する特定の高分子化合物もしくは界面活性剤の分散体中における含有形態は特に限定されず、その他の成分とは独立して含まれていても、その他の成分と集合して含まれていてもよい。すなわち本発明において「水不溶性色材の微粒子と上記特定の高分子化合物もしくは界面活性剤とを含有させた分散体」とは、分散体中の水不溶性色材の微粒子の中に上記高分子化合物等が含まれていても、分散体中で微粒子とは別に上記高分子化合物等が共存していてもよい。したがって、上記高分子化合物等の一部が微粒子に吸着し、解離平衡状態になっているような含有形態も上記概念に含まれる。
上記電子求引性基をもつ特定の高分子化合物の酸価は特に限定されないが65〜300であることが好ましく、150〜250であることがより好ましい。
【0079】
本発明の分散体において水不溶性色材を構成する有機顔料としては、色相ないし構造について特に限定されるものではなく、例えば、ペリレン有機顔料有機顔料、ペリノン有機顔料有機顔料、キナクリドン有機顔料有機顔料、キナクリドンキノン有機顔料有機顔料、アントラキノン有機顔料有機顔料、アントアントロン有機顔料有機顔料、ベンズイミダゾロン有機顔料有機顔料、ジスアゾ縮合有機顔料、ジスアゾ有機顔料、アゾ有機顔料、インダントロン有機顔料、インダンスレン有機顔料、キノフタロン有機顔料、キノキサリンジオン有機顔料、金属錯体アゾ有機顔料、フタロシアニン有機顔料、トリアリールカルボニウム有機顔料、ジオキサジン有機顔料、アミノアントラキノン有機顔料、ジケトピロロピロール有機顔料、ナフトールAS有機顔料、チオインジゴ有機顔料、イソインドリン有機顔料、イソインドリノン有機顔料、ピラントロン有機顔料、イソビオラントロン有機顔料、またはそれらの混合物などが挙げられる。
【0080】
更に詳しくは、例えば、C.I.ピグメントレッド179、C.I.ピグメントレッド190、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントバイオレット29等のペリレン有機顔料、C.I.ピグメントオレンジ43、もしくはC.I.ピグメントレッド194等のペリノン有機顔料、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット42、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド192、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド207、もしくはC.I.ピグメントレッド209のキナクリドン有機顔料、C.I.ピグメントレッド206、C.I.ピグメントオレンジ48、もしくはC.I.ピグメントオレンジ49等のキナクリドンキノン有機顔料、C.I.ピグメントイエロー147等のアントラキノン有機顔料、C.I.ピグメントレッド168等のアントアントロン有機顔料、C.I.ピグメントブラウン25、C.I.ピグメントバイオレット32、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー181、C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントオレンジ62、もしくはC.I.ピグメントレッド185等のベンズイミダゾロン有機顔料、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー128)、C.I.ピグメントイエロー166、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントレッド144(C.I.番号20735)、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントイエロー219、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド221、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド248、C.I.ピグメントレッド262、もしくはC.I.ピグメントブラウン23等のジスアゾ縮合有機顔料、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー155、もしくはC.I.ピグメントイエロー188等のジスアゾ有機顔料、C.I.ピグメントレッド187、C.I.ピグメントレッド170、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントレッド48、C.I.ピグメントレッド53、C.I.ピグメントオレンジ64、もしくはC.I.ピグメントレッド247等のアゾ有機顔料、C.I.ピグメントブルー60等のインダントロン有機顔料、C.I.ピグメントブルー60等のインダンスレン有機顔料、C.I.ピグメントイエロー138等のキノフタロン有機顔料、C.I.ピグメントイエロー213等のキノキサリンジオン有機顔料、C.I.ピグメントイエロー129、もしくはC.I.ピグメントイエロー150等の金属錯体アゾ有機顔料、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントグリーン37、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー75、もしくはC.I.ピグメントブルー15(15:1、15:6等を含む)等のフタロシアニン有機顔料、C.I.ピグメントブルー56、もしくはC.I.ピグメントブルー61等のトリアリールカルボニウム有機顔料、C.I.ピグメントバイオレット23、もしくはC.I.ピグメントバイオレット37等のジオキサジン有機顔料、C.I.ピグメントレッド177等のアミノアントラキノン有機顔料、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド272、C.I.ピグメントオレンジ71、もしくはC.I.ピグメントオレンジ73等のジケトピロロピロール有機顔料、C.I.ピグメントレッド187、もしくはC.I.ピグメントレッド170等のナフトールAS有機顔料、C.I.ピグメントレッド88等のチオインジゴ有機顔料、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントオレンジ66等のイソインドリン有機顔料、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、もしくはC.I.ピグメントオレンジ61等のイソインドリノン有機顔料、C.I.ピグメントオレンジ40、もしくはC.I.ピグメントレッド216等のピラントロン有機顔料、またはC.I.ピグメントバイオレット31等のイソビオラントロン有機顔料が挙げられる。
【0081】
本発明の分散体において、分散体中の水不溶性色材の含有量は特に限定されず、インクとしての利用を考慮したとき例えば0.01〜30質量%であることが好ましく、1.0〜20質量%であることがより好ましく、1.1〜15%であることが最も好ましい。
【0082】
本発明における分散体は高濃度であっても色味の変化が小さく、且つ分散体の低粘度が維持される。例えば記録液として用いる場合、記録液に使用できる添加剤の種類や添加量の自由度が増すため、上記の範囲で好適に用いることができる。
【0083】
本発明の分散体に含まれる水不溶性色材は1種類単独でも2種以上の顔料を併用して用いてもよい。その有機顔料の組合せとしては特に限定はされないが、例えばアゾ有機顔料どうし、ジケトピロロピロール有機顔料どうしのように顔料化合物種が同一である、換言すれば類似の化合物骨格を有する組合せが好ましく、C.I.ピグメントバイオレット19とC.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントバイオレット19とC.I.ピグメントレッド122とC.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントイエロー128とC.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー128とC.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントイエロー128とC.I.ピグメントオレンジ13等の組み合わせが好ましい。また、2種以上の有機顔料成分としては、用いる1種の有機顔料の最大吸収波長(λmax)が10〜200nm異なる有機顔料を1種以上含有させることが好ましく、前記最大吸収波長(λmax)が10〜100nm異なる有機顔料を1種以上含有させることが特に好ましい。なお本発明における顔料の吸収波長は、粒子を形成した状態における吸収波長、すなわち媒体に塗布したり練りこんだりした状態における吸収波長を意味し、アルカリや酸などの特殊な媒体に溶解した溶液状態の吸収波長ではない。
【0084】
主成分有機顔料の最大吸収波長(λmax)の値は特に限定されないが可視光領域に最大吸収波長を有するものを用いることが着色用途において実際的であり、例えば、300〜750nmに最大吸収波長を有するものを用いることが好ましい。
【0085】
本発明の分散体は、水不溶性色材をアルカリ存在下の非プロトン性水溶性有機溶剤に溶解させ、その溶液と水性媒体とを接触させて、前記水不溶性色材を微粒子として生成させた分散体を調製するに当たり、下記一般式(I)〜(IV)のいずれかで表される電子求引性基もしくはこれを含む原子群の1種類以上を親水性部分として有する高分子化合物もしくは界面活性剤を前記水不溶性色材の溶液および/または水性媒体に含有させ、前記水不溶性色材微粒子と該高分子化合物もしくは界面活性剤とを含有する分散体として製造することが好ましい。中でも、前記一般式(I)〜(IV)で表される原子群の1種類以上を親水性部分として有する高分子化合物もしくは界面活性剤を、前記水性媒体に含有させることが好ましい。
【0086】
電子求引性基を有する上記特定の高分子化合物もしくは界面活性剤は主として水不溶性色材の粒子形成制御ないし分散性を向上させるものとして作用させることができる。上記特定の高分子化合物もしくは界面活性剤を水不溶性色材の溶液及び/又は水性媒体に添加する量は水不溶性色材に対して0.001〜10000質量部であることが好ましく、0.05〜1000質量部であることがより好ましく、0.05〜500質量部であることがさらに好ましく、特に好ましくは0.1〜200質量部である。
【0087】
本発明の分散体においては上記電子求引性基を有する特定の高分子化合物もしくは界面活性剤以外にも、さらに別の高分子化合物または低分子化合物を併用して用いてもよい。用いる別の高分子化合物としては、アルカリ存在下の非プロトン性有機溶剤に可溶であって、水不溶性色材と前記分散剤を溶解した溶液と水性媒体とを混合した際に、水性媒体中で顔料含有粒子を形成することで分散効果を得ることができるものが適宜使用可能である。例えばカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基から選ばれる1種類以上の親水性部分として有する高分子化合物であって、前記親水性部分と疎水性部分を同一分子内に有する高分子化合物であり、本発明の目的を達成できるものであれば特に限定されるものではないが、親水性部分としては(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマール酸、β−CEA、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、4−ビニルベンゼンスルホン酸、アリルスルホン酸、3−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、2−メチルアリルスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびそれらの塩、モノ{2−(メタ)アクリロイルオキシエチル}アシッドホスフェート、2−メタクリルオキシエチルホスホン酸に代表されるモノマーと、スチレン、4−メチルスチレン、4−エチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体といった炭素数8〜20のα−オレフィン性芳香族炭化水素類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルといった炭素数3〜20のビニルエステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−エチルへキシル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル等の炭素数4〜20のオレフィンカルボン酸エステル類、4−ビニルピリジン、4−ビニルアニリン等の炭素数8〜20のビニル系芳香族アミン類、アクリルアミド、メタクリルアミド、ベンジルメタクリルアミド等の炭素数3〜20のビニル系アミド化合物、4−ビニルフェノール等の炭素数8〜20のオレフィンフェノール類、ブタジエン、イソプレン等の炭素数4〜20のジエン系化合物といったモノマーに加えて、多官能性モノマーやマクロモノマー、その他従来公知であるモノマーおよびその誘導体から適宜選択されたモノマーとの組み合わせの結果得られる高分子化合物を好適に用いることができる。これらの別の高分子化合物は分散剤として機能し、1種類単独でまたは2種類以上を併用して用いることができる。
【0088】
更に、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基から選ばれる1種類以上の親水性部分として有する高分子化合物で、それら酸性基の塩を構成成分とするモノマーや、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルのような各ポリエーテル鎖を側鎖に有するビニルエーテル類、アリルエーテル類のような親水性モノマー成分も共重合させた高分子化合物を用いることも好ましい。重合方法については一般的なラジカル重合、イオン重合、リビング重合、配位重合、媒体として溶液、バルク、乳化などの手段において特に限定されないが溶液でのラジカル重合が操作の簡便さの観点から好ましい。
【0089】
上記別の高分子化合物を得る上での重合体については、ブロック共重合体、或いはランダム共重合体、グラフト共重合体などのいずれの形態を有する共重合体でも良いが、特にブロック共重合体やグラフト共重合体を用いる場合には、水不溶性色材に良好な分散性を付与しやすいため好ましい。
【0090】
上記別の高分子化合物の使用割合は本発明の目的を達成できる範囲で特に限定されるものではないが、水不溶性色材微粒子の分散安定性をさらに向上させ、または水性分散体とした際の色濃度をより良好なものとするうえで、水不溶性色材1質量部に対して、0.001〜10質量部の範囲内で使用することが好ましく、0.01〜4質量部の範囲がより好ましく、0.1〜2質量部であることが特に好ましい。
【0091】
前記親水性部分と疎水性部分の比の範囲は、アルカリ存在下の非プロトン性有機溶剤に有機顔料と共に安定に溶解を達成できる範囲で特に限定されるものではないが、疎水性モノマー成分の多い重合体である高分子化合物を用いる場合には水不溶性色材に良好な分散安定性を付与することが困難なことがある。なお、親水性とは水に対する親和性が大きく水に溶解しやすい性質であり、疎水性とは水に対する親和性が小さく水に溶解しにくい性質である。分散剤の親水性部分が第一、第二、第三級のアミノ基、第四級アンモニウム基など上記以外のものから選ばれるもののみで構成されている場合はアルカリを含む有機顔料の水性分散体において十分ではあるが分散安定化の程度が相対的に低くなる場合がある。また、従来の顔料分散法では、媒体中で分散状態にある顔料表面と効率良く接触可能な分散剤を選択するなどの工夫が必要があるが、本発明においては、分散剤と顔料がともに溶解状態で媒体中に存在し、これらの間での所望とする作用が容易に得られるので、従来の顔料分散法におるような顔料表面への接触効率に基づく分散剤の制限がなく、広範な分散剤を使用することができる。
【0092】
本発明に用いられる非プロトン性有機溶剤としては、水不溶性色材および高分子化合物を溶解させるもので、いかなるものでも使用可能である。また、水に対する溶解度が5質量%以上であるものが好ましく用いられ、さらには水に対して自由に混合するものが好ましい。
【0093】
具体的には、ジメチルスルホキシド、ジメチルイミダゾリジノン、スルホラン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、アセトン、ジオキサン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルアミド、ヘキサメチルホスホロトリアミド、ピリジン、プロピオニトリル、ブタノン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、エチレングリコールジアセテート、γ−ブチロラクトン等が好ましい溶剤として挙げられ、中でもジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルイミダゾリジノン、スルホラン、アセトン又はアセトニトリル、テトラヒドロフランが好ましく、より好ましくは、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンである。また、これらは1種類単独でまたは2種類以上を併用して用いることができる。
上記非プロトン性溶剤の使用割合は特に限定されないが、水不溶性色材のより良好な溶解状態と、所望とする微粒子径の形成の容易性、更に水性分散体の色濃度をより良好なものとするために、水不溶性色材1質量部に対して2〜500質量部、さらには5〜100質量部の範囲で用いるのが好ましい。
【0094】
水不溶性色材を可溶化するアルカリとしては、本発明の目的を達成できるものであればいかなるものでも使用可能であるが、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属のアルコキシド、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ土類金属のアルコキシド及び有機強塩基が、有機顔料の可溶化能力の高さから好ましい。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどの無機塩基、トリアルキルアミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ナトリウムメトキシド、tert−ブトキシナトリウム、tert−ブトキシカリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、コリンヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム化合物、グアニジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,8−ジアザビシクロ[4,3,0]−7−ノネンなどの無機塩基、有機塩基を併せて用いることができる。
上記アルカリとして、なかでも、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、コリンヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム化合物が好ましい。
また、これらのアルカリは、1種類単独でまたは2種類以上を併用して用いることができる。上記のアルカリの使用割合は特に限定されるものではないが、水不溶性色材1質量部に対して、0.1〜10質量部用いるのが好ましく、さらに好ましくは0.5〜5質量部であり、より好ましくは1〜4質量部である。
【0095】
本発明において、水性媒体とは、水単独または水と水に可溶な有機溶媒との混合溶媒である。このとき有機溶媒の添加は、顔料や分散剤を均一に溶解するために水のみでは不十分な場合、および流路中を流通するのに必要な粘性を得るのに水のみで不十分な場合などに用いることが好ましい。有機溶媒として例えば、アルカリ性の場合はアミド系溶媒または含イオウ系溶媒であることが好ましく、含イオウ系溶媒であることがより好ましく、ジメチルスルホキシド(DMSO)であることが特に好ましい。酸性の場合はカルボン酸系溶媒、イオウ系溶媒、またはスルホン酸系溶媒であることが好ましく、スルホン酸系溶媒であることがより好ましく、メタンスルホン酸であることが特に好ましい。なお、水性媒体には必要に応じて無機化合物塩や後述する分散剤等を溶解させてもよい。
【0096】
このとき水不溶性色材を均一に溶解した溶液と水性媒体とを混合する実施態様は特に限定されない。例えば、水性媒体を撹拌しておきそこに水不溶性色材の溶液を添加する実施態様、該溶液及び水性媒体をそれぞれ長さのある流路に同一の長手方向に送りこみ、その流路を通過する間に両液を接触させ有機顔料微粒子を析出させる実施態様等が挙げられる。前者(撹拌混合する実施態様)については、特に水性媒体中に供給管等を導入しそこから水不溶性色材の溶液を添加する液中添加による実施態様が好ましい。さらに具体的には、国際公開WO2006/121018号パンフレットの段落0036〜0047に記載の装置を用いて液中添加を行うことができる。後者(流路を用いて両者を混合する実施態様)については、例えば、特開2005−307154号公報の段落0049〜52及び図1〜図4、特願2006−78637号公報の段落0044〜0050に記載のマイクロリアクターを用いることができる。
【0097】
水不溶性色材の粒子を析出生成させる際の条件に特に制限はなく、常圧から亜臨界、超臨界条件の範囲を選択できる。常圧での温度は−30〜100℃が好ましく、−10〜60℃がより好ましく、0〜30℃が特に好ましい。水不溶性色材の溶液と水性媒体との混合比は体積比で1/50〜2/3が好ましく、1/40〜1/2がより好ましく、1/20〜3/8が特に好ましい。粒子を析出させたときの混合液中の粒子濃度は特に制限されないが、溶媒1000mlに対して水不溶性色材の粒子が10〜40000mgの範囲であることが好ましく、より好ましくは20〜30000mgの範囲であり、特に好ましくは50〜25000mgの範囲である。
【0098】
本発明の分散体の安定性をさらに高めるうえでさらに分散剤(界面活性剤、高分子分散剤)を加えることも可能である。界面活性剤の具体例としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩、高級アルコールエーテルのスルホン酸塩、高級アルキルスルホンアミドのアルキルカルボン酸塩、アルキルリン酸塩などのアニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物、グリセリンのエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤、また、この他にもアルキルベタインやアミドベタインなどの両性界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッソ系界面活性剤などを含めて、従来公知である界面活性剤およびその誘導体から適宜選ぶことができる。
【0099】
高分子分散剤として、具体的にはポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリルアミド等が挙げられ、中でもポリビニルピロリドンを用いることも好ましい。
【0100】
また、その他の分散剤として用いられる高分子分散剤としては、アルブミン、ゼラチン、ロジン、シェラック、デンプン、アラビアゴム、アルギン酸ソーダ等の天然高分子化合物、およびこれらの変性物も好ましく使用することが出来る。また、これらの分散剤は、1種類単独でまたは2種類以上を併用して用いることができる。上記分散剤の使用割合は特に限定されるものではないが、水不溶性色材1質量部に対して0.05質量部以上、非プロトン性有機溶剤100質量部に対して50質量部以下の範囲で用いるのが好ましい。分散剤が非プロトン性有機溶剤に対して多すぎると分散剤を完全に溶解させるのが困難な場合があり、水不溶性色材に対して少なすぎると、十分な分散効果を得ることが難しい場合がある。
【0101】
本発明の分散体においては、後述するインクとして用いるときの耐候性の向上を考慮するとき、上述した高分子化合物、界面活性剤あるいは分散剤を好適に使用することができるが、耐候性を向上し、且つ分散体を高濃度化した場合でも低粘度を維持する観点から、後述する洗浄処理に用いられる特定の有機溶媒に対して可溶もしくは分散可能である高分子化合物、または高分子分散剤を用いることが特に好ましい。この高分子分散剤、または高分子化合物の分子量は特に限定されないが質量平均量が500〜1000000であることが好ましく、1000〜1000000であることがより好ましい。500未満の場合は分子量が小さく、1000000を超えると高分子鎖間の絡まりが大きくなりすぎ、分散剤としての機能を発揮しにくくなるため、良好な分散状態を保てない場合がある。なお、本発明において単に分子量というときには質量平均分子量を意味し、また質量平均分子量は、特に断らない限り、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(キャリア:テトラヒドロフラン)により測定されるポリスチレン換算の平均分子量である。なお本発明において「分散体」とは、所定の微粒子が分散した組成物をいい、その形態は特に限定されず、液状の組成物(分散液)、ペースト状の組成物、及び固体状の組成物を含む意味に用いる。
【0102】
上記インクとしたときの性能を向上させる分散剤を、分散体の調製時に用いる水不溶性色材を溶解した溶液中に含有させる量は、水不溶性色材の均一分散性および保存安定性をより一層向上させるために、顔料100質量部に対して0.1〜1000質量部の範囲であることが好ましく、1〜500質量部の範囲であることがより好ましく、10〜250質量部の範囲であることが特に好ましい。この量が少なすぎると有機顔料微粒子の分散安定性が向上しないことがある。本発明の分散体に含まれる上記インクとしたときの性能を向上させる分散剤の量は特に限定されないが、水不溶性色材100質量部に対して10〜1000質量部であることが実際的である。
【0103】
〔電子顕微鏡観察による平均粒径〕
本発明において、分散体に含まれる水不溶性色材は、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により粒子の形状を観察し、平均粒径を以下のようにして算出することができる。TEMについては、水溶性色材の微粒子を含む分散体をカーボン膜を貼り付けたCu200メッシュに希釈し、これを載せて乾燥させ、TEM(日本電子製1200EX)で10万倍で撮影した画像から粒子300個の径を測定して平均値を求める。この際、上記のように分散体を前記Cu200メッシュ上で乾燥させるため、前記分散体中に水不溶性色材が良好に分散した状態であっても、乾燥の過程で水不溶性色材粒子が見かけ上凝集してしまい、正確な粒子径が判別しにくい場合がある。このような場合には、重なっていない独立した粒子300個の径を測定して平均値を求める。また、水不溶性色材が球状でない場合は、粒子の長径(粒子の最も長い径)を測定する。
【0104】
本発明においては、その一実施態様において、水不溶性色材の微粒子の平均粒径は150nm以下であることが好ましく、5〜60nmであることがより好ましい。とくに透過型電子顕微鏡観察(TEM観察)により算出した水不溶性色材の平均粒子径が、5〜50nmであることが好ましく、5〜45nmであることがより好ましく、5〜40nmであることが分散体の透明性、分散体中での分散安定性、及び耐光性の両立の観点から特に好ましい。この平均粒径が小さすぎると、分散体中の安定な分散状態を長期間保つことが難しい場合があり、また良好な耐光性が得られない場合がある。一方で、大きすぎると、分散体の透明性が得られない場合がある。本発明において水不溶性色材の微粒子は顔料等の水不溶性色材のみからなるものであっても、水不溶性色材以外の化合物、例えば前記電子求引性基を有する特定の高分子化合物が含まれていてもよい。このとき、2種以上の顔料の固溶体が粒子を構成しているものであてもよい。ただし、粒子中に結晶構造を有する部分と結晶構造を有さない部分が混在していてもよい。また、顔料及び/又はその他の化合物が粒子の核をなし、そこに前記分散剤(高分子化合物、界面活性剤等)が被覆するように吸着して粒子をなしていてもよい。
【0105】
また、本発明の水不溶性色材は、樹脂微粒子や無機微粒子に含まれていてもよい。このとき、本発明の水不溶性色材の色味を損なわないため、前記樹脂微粒子及び無機微粒子は非着色成分であることが好ましい。前記樹脂微粒子及び無機微粒子の平均粒子径は6〜200nmであることが好ましく、インクジェット用記録液として用いる場合には良好な吐出安定性を得る観点から6〜150nmであることがさらに好ましく、6〜100nmであることが特に好ましい。
【0106】
〔動的光散乱法による平均粒径〕
本発明において、水不溶性色材の分散状態は動的散乱法により評価することもでき、これにより平均粒径を算出することができる。その原理は次のとおりである。粒径が約1nm〜5μmの範囲にある粒子は、液中で並進・回転等のブラウン運動により、その位置・方位を時々刻々と変えている。したがって、これらの粒子にレーザー光を照射し、出てくる散乱光を検出すると、ブラウン運動に依存した散乱光強度の揺らぎが観測される。この散乱光強度の時間の揺らぎを観測することで、粒子のブラウン運動の速度(拡散係数)が得られ、さらには粒子の大きさを知ることができる。
【0107】
この原理を用いて、水不溶性色材の平均粒径の測定を行い、その測定値が電子顕微鏡、特にTEM観察で得られた平均粒径に近い場合には、液中の粒子が単分散していること(粒子同士が接合したり凝集したりしていないこと)を意味する。すなわち、分散媒中において各粒子は互いに間隔をあけて分散しており、単独で独立して動くことができる状態にある。
【0108】
分散媒中の水不溶性色材に対して行った動的光散乱法による算術平均粒径が、TEM観察による平均粒径に対して近いものであることが好ましい。すなわち、分散媒中で水不溶色材の微粒子が単分散した状態が実現できることが好ましい。分散媒中の動的光散乱法による算術平均粒径は、50nm以下であることが好ましく、45nm以下であることがより好ましく、40nm以下であることが特に好ましい。このように平均粒径の好ましい範囲は前記したTEM観察のそれとは大きくは異ならない。本発明においては、特に断らない限り、単に平均粒径というときTEMにより測定した平均粒径をいう。
【0109】
本発明において分散体中に分散している水不溶性色材微粒子の粒径は単分散であることが好ましい。単分散であることにより、粒径が大きい粒子の光散乱等の影響が軽減できるほか、例えば分散体を用いて印字、記録等で凝集体形成する際には形成する凝集体の充填形態の制御等に有利である。分散体の分散性を評価する指標としては、例えば動的光散乱法で得られる算術平均粒径において、粒子の粒径分布関数
dG=f(D)xdD(Gは粒子数、Dは一次粒径を表す)
の積分式における、全粒子数の90個数%を占める粒子の粒径(D90)と10固数%を占める粒子の粒径(D10)との差を用いることができる。本発明においては、前記D90とD10の差が45nm以下であることが好ましく、1〜30nmであることがより好ましく、1〜20nmであることが特に好ましい。なおこの方法は、前述した電子顕微鏡により観察される粒子径を用いて作製する粒径分布曲線でも適用することができる。
【0110】
また、もう1つの分散性を示す指標の例としては、動的散乱法により得られる体積平均粒径(Mv)及び個数平均粒径(Mn)の比(Mv/Mn)を用いることもできる。本発明の分散体は前記Mv/Mnの値が1.7以下であることが好ましく、1.6以下であることがより好ましく、1.5以下であることがさらに好ましい。
【0111】
本発明の分散体は、水不溶性色材微粒子が水を含んでいる媒体に対して分散している分散体であって、その一実施態様において、該分散体の可視光領域(例えば380〜700nm程度)の光の吸光度ピーク値を1としたときの光散乱強度が30,000cps以下である。このことは、可視光領域の光の吸光度ピークが1となる程度に水不溶性色材を含んでいるにも関らず、その光散乱強度が30,000cps以下と極めて低いことを意味しているものである。この光散乱強度が低いと、前記分散体、またはこの分散体を用いた記録液において高い透明性が視認できる。従来の顔料インクにおいては、可視光領域の光の吸光度ピークが1のときの光散乱強度は、例えばインク中の色材粒子の平均粒径がいずれも150nm程度であった場合には、150,000〜250,000cps程度であり、このことから目視による透明性の高さが理解される。
【0112】
本発明においては、水不溶性色材の溶液及び/又は水性媒体中に前記電子求引性基を有する特定の高分子化合物もしくは界面活性剤を含有させ、該溶液と水性媒体とを混合して、前記水不溶性色材の微粒子を水を含む媒体中に分散させた分散体とし、この分散体の前記水不溶性色材の微粒子を再分散可能に凝集させた軟凝集体とし、該軟凝集体を前記分散体から分離することが好ましく、さらに前記軟凝集体に再分散性を付与し、その凝集を解き再分散媒体に再分散させることが好ましい。これにより、必要により前記再分散媒体を所望の水を含む媒体とし、前記再分散後の分散体を所望の性質を付与した水分散体とすることができ、好ましい。
【0113】
本発明においては、粒子析出時に空気や酸素などの気体を共存させてもよく、例えばそれらを酸化剤として用いることができる。共存させる態様は特に限定されず、気体を水不溶性色材の溶液及び/又は水性媒体にあらかじめ溶解させる、あるいは上記両液とは別に上記の気体を導入して接触させてもよい。
【0114】
本発明の分散体を作製するにあたり、加熱する工程を導入することが好ましい。加熱工程を導入する意義については、特許公報第3936558号公報に記載の効果やいわゆるオストワルド熟成に代表されるものである。上記加熱は30〜110℃で行うことが好ましく、加熱時間は10〜360分であることが好ましい。この加熱処理は上記水不溶性色材溶液と水性媒体とを混合して微粒子を生成させた分散体とした後に行うことが好ましい。
【0115】
本発明の分散体の製造方法において、前記の水不溶性色材の粒子を再分散可能に凝集させた軟凝集体とし、該軟凝集体を前記分散体から分離する工程について詳しく説明する。以下に具体的に述べるように、水不溶性色材の粒子を析出させた混合液を酸処理し、好ましくは凝集体の形成に酸を添加して処理し、粒子の凝集体を形成させることが好ましい。酸を用いた処理は、好ましくは、粒子を酸で凝集させてこれを溶剤(分散媒)と分離し、濃縮、脱溶剤および脱塩(脱酸)を行う工程を含む。系を酸性にすることで酸性の親水性部分による静電反発力を低下させ、粒子を凝集させることができる。
【0116】
ここで用いる酸としては、沈殿し難い微粒子となっているものを凝集させて、スラリー、ペースト、粉状、粒状、ケーキ状(塊状)、シート状、短繊維状、フレーク状などにして通常の分離法によって効率よく溶剤と分離できる状態にするものであれば、いかなるものでも使用できる。さらに好ましくは、アルカリと水溶性の塩を形成する酸を利用するのがよく、酸自体も水への溶解度が高いものが好ましい。また脱塩を効率よく行うために、加える酸の量は粒子が凝集する範囲でできるだけ少ない方がよい。具体的には塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、リン酸、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、メタンスルホン酸などが挙げられるが、塩酸、酢酸および硫酸が特に好ましい。酸によって容易に分離可能な状態にされた顔料粒子の水性分散液は遠心分離装置や濾過装置またはスラリー固液分離装置などで容易に分離することができる。この際、希釈水の添加、またはデカンテーションおよび水洗の回数を増やすことで脱塩、脱溶剤の程度を調節することができる。凝集方法としては、さらにミョウバンなどの無機化合物や高分子凝集剤を合わせて用いることも可能である。
【0117】
ここで得られた凝集体は、含水率の高いペーストやスラリーのままで用いることもできるが、必要に応じてスプレードライ法、遠心分離乾燥法、濾過乾燥法または凍結乾燥法などのような乾燥法により、微粉末として用いることもできる。
【0118】
本発明の製造方法において、前記の軟凝集体の凝集を解き再分散媒体に再分散する工程について詳しく説明する。本発明の分散体においては、さらに凝集体を再分散することが好ましい。この再分散処理としてアルカリ処理を挙げることができる。すなわち、酸を用いて凝集させた粒子をアルカリで中和し、粒子の析出時の一次粒子径で水等に再分散させることが好ましい。すでに脱塩および脱溶剤が行われているため、不純物の少ないコンクベースを得ることができる。ここで使用するアルカリは、酸性の親水性部分を持つ分散剤の中和剤として働き、水への溶解性が高まるもので、いかなるものでも使用できる。具体的にはアミノメチルプロパノール、ジメチルアミノプロパノール、ジメチルエタノールアミン、ジエチルトリアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン、モルホリン等の各種有機アミン、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、アンモニアが挙げられる。これらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0119】
上記のアルカリの使用量は、凝集した粒子を水に安定に再分散できる範囲であれば特に限定されるものではないが、印刷インキやインクジェットプリンタ用インクなどの用途に用いる場合は各種部材の腐食の原因になる場合があるため、pHが6〜12、さらに好ましくは7〜11の範囲になる量を使用するのがよい。
【0120】
また、粒子析出時に用いる分散剤に応じて、上記のアルカリ処理とは異なる方法を用いてもよい。例えば、先に述べた低分子分散剤や高分子分散を使用した再分散処理があげられる。また、この際には従来公知の分散処理の手段を用いてもよく、例えばサンドミル、ビーズミル、ボールミル、ディゾルバーなどの分散機や、超音波分散も好ましく使用される。これらの再分散処理は前述したアルカリ処理と併用してもよい。
【0121】
また、凝集した粒子を再分散する際に、再分散用媒体として水溶性の有機溶剤を添加して、再分散しやすくすることができる。具体的に使用できる有機溶剤としては特に限定されるものではないが、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール等の低級アルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール等の脂肪族ケトン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルまたはモノエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルまたはモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルまたはモノエチルエーテル、N−メチルピロリドン、2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。これらは、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、顔料粒子を再分散させて水性分散液とするとき、ここにおける水の量は99〜20質量%であることが好ましく、95〜30質量%とすることがより好ましい。上記の水溶性有機溶剤の量は50〜0.1質量%であることが好ましく、30〜0.05質量%とすることがより好ましい。
【0122】
凝集した粒子に水、上記アルカリおよび水溶性の有機溶剤を加える際には、必要に応じて撹拌、混合、サンドミル、ビーズミル、ボールミル、ディゾルバーなどの分散機や超音波分散装置を用いることができる。特に含水率の高い有機顔料のペースト、スラリーを用いる際は水を加えなくてもよい。さらに、再分散の効率を高める目的、および不用となった水溶性有機溶剤または過剰なアルカリ等を除去する目的で加熱、冷却、または蒸留などを行うことができる。
【0123】
本発明の記録液は、上記本発明の分散体を用い、例えば所定の高分子化合物、界面活性剤、水性溶剤等の各成分を混合し均一に溶解又は分散することにより調製することができる。本発明の記録液においては、前記水不溶性色材を0.1〜15質量%含有することが好ましい。また、調製したインクに過剰量のポリマー化合物や添加剤が含有される場合には、遠心分離や透析などの方法によって、それらを適宜除去し、インク組成物を再調製することができる。また本発明の記録液は単独で用いてもよいが、これとは別のインクと組み合わせて、本発明のインクセットとしてもよい。
【0124】
本発明の記録液は、各種印刷法、インクジェット法、電子写真法等の様々な画像形成方法および装置に使用でき、この装置を用いた画像形成方法により描画することができる。また、このインクジェット法により微細パターンを形成したり、薬物の投与を行ったりすることができる。
【0125】
本発明の記録液はインクジェット用記録液とすることが好ましく、これを用いたインクセットとすることが好ましい。また、本発明の記録液又はインクセットを用いて、記録液を媒体に付与する手段により画像が記録された印画物とすることが好ましく、前記手段が記録液の付与量もしくは濃度を調整する機能を有し、該手段により印画物の濃淡が調整された印画物とすることが好ましい。さらに上記の記録液又はインクセットは、記録液を媒体に付与することにより、画像を記録する工程を有する画像形成方法に用いることが好ましい。さらに本発明においては、上記記録液又はインクセットを用いて記録液を媒体に付与することにより、画像を記録させるための手段を有する画像形成装置とすることができる。
【0126】
上記の優れた特性を有する本発明の分散体は、インクとして用い高品位・高精彩な画像記録を実現しうるものである。また、その他にカラーフィルタを形成する材料としても好適に用いることができる。
【実施例】
【0127】
以下に実施例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、文中「部」及び「%」とあるのは特に示さない限り質量基準とする。また、各分散体の動的散乱法による平均粒子径はイオン交換水で希釈した後、堀場製作所(株)社製のLB−500(商品名)を用いて測定を行った。このとき、料屈折率を1.600、分散媒のイオン交換水の屈折率を1.333として入力し、各分散体の体積平均粒径Mv、個数平均粒径Mnの測定も行った。さらに、透過型電子顕微鏡(TEM)観察による平均粒径評価は、カーボン膜を貼り付けたCu200メッシュに希釈した分散体を滴下した後乾燥させ、TEM(日本電子社製、1200EX(商品名))で10万倍に拡大した画像から、重なっていない独立した粒子300個の長径を測定して平均値を平均粒径として算出した(以下、TEM観察により算出した平均粒径をTEM平均粒径と記述する。)。
【0128】
【化29】

【0129】
モノマー1の合成
2Lの三口フラスコにメタンスルホンアミド95.1g(1.0 mol)、アセトニトリル500ml、トリエチルアミン308ml(2.40mol)、4−ジメチルアミノピリジン12.2g(0.010mol)を加え、氷冷、窒素気流下で攪拌しているところに、メタクリル酸クロリド120g(1.15mol)を1時間かけて滴下した。滴下終了後、そのまま5時間攪拌したのち、生じたトリエチルアミン塩酸塩をろ過して除いた。得られたろ液に水、濃塩酸を加えて系内を酸性にしたのち、酢酸エチルで抽出した。集めた有機層を水、飽和食塩水で洗浄したのち、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。無機塩をろ別したのち、ロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた残渣に2−プロパノールを500ml加えると白色結晶が析出した。ろ過したのち、2−プロパノールで洗浄して白色結晶としてモノマー1を51.4g(収率31%)で得た。
H−NMR (300 MHz, CDCl) δ = 2.0 (br.s, 3H), 3.38 (s, 3H), 5.68−5.71 (m, 1H), 5.92 (br.s, 1H), 8.4−8.6 (br.1H).
【0130】
モノマー2の合成
前記、モノマー1の合成と同様にして、p−トルエンスルホンアミド47g(0.27mol)から、モノマー2を23g得た。(収率35%)
H−NMR (300 MHz, in CDCl) δ = 1.91 (br.s, 3H), 2.48 (s, 3H), 5.57−5.5.61 (m, 1H), 5.82−5.85 (m, 1H), 7.37 (br.d, J = 9.3 Hz, 2H), 8.0 (br.d, J = 9.3 Hz, 2H).
【0131】
モノマー3の合成
文献(分析化学.vol56, No.9, 721−728(2007))に従って合成した。モノマー3は単離することなく速やかに次の重合反応に用いた。
【0132】
モノマー4は市販品として東京化成社より入手した4−ビニルベンゼンスルフィン酸ナトリウム(製品コード:V0074)(商品名)を用いた。
【0133】
【化30】

【0134】
モノマー5の合成
500mLの三口フラスコにp−アミノスチレン20.0g(0.168 mol)、アセトニトリル100ml、トリエチルアミン28.2ml(0.201mol)を加え、氷冷、窒素気流下で攪拌しているところに、メタクリル酸クロリド21.1g(0.184mol)を30分かけて滴下した。滴下終了後、そのまま5時間攪拌したのち、一晩放置した。生じたトリエチルアミン塩酸塩をろ過して除いた。得られたろ液に水、濃塩酸を加えて系内を酸性にしたのち、酢酸エチルで抽出した。集めた有機層を水、飽和食塩水で洗浄したのち、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。無機塩をろ別したのち、ロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた残渣にヘキサン、酢酸エチルを加えると白色結晶が析出した。ろ過したのち、白色結晶としてモノマー5を22.0g(収率67%)で得た。
H−NMR (300 MHz, dmso−d6) δ = 3.01 (br.s, 3H), 5.22 (br.d, 1H、J=11.7Hz), 5.76 (br。d, 1H、J=18.0Hz), 6.75 (br.dd, 1H、J=11.7、18.0Hz),7.20(br.d、2H,J=9.0Hz)、7.46(br.d、2H,9.0Hz)、9.84 (br.s、1H).
【0135】
モノマー6の合成
【化31】

200mlの三口フラスコに4−ビニル安息香酸16.6g(0.112mol)、トルエン80ml、N,N−ジメチルホルムアミド2滴を入れて室温下で攪拌しているところに、塩化チオニル9.7ml(0.14mol)を加えて60℃で2時間加熱攪拌した。その後、系内を40℃付近まで冷却して減圧下でトルエンおよび過剰の塩化チオニルを除去して化合物(B)を得た。この化合物(B)はこれ以上精製することなく、速やかに次の反応に用いた。
500mlの三口フラスコに2−アミノアントラキノン22.5g(0.101mol)、ピリジン110mlを加えて、氷冷下で攪拌しているところに(B)を滴下ロートでゆっくりと滴下した。氷冷下で30分攪拌した後、60℃で3時間加熱攪拌した。その後、室温下まで冷却し、反応混合物を攪拌しながら水を加えた。生じた粗結晶を濾別し、水、メタノールでかけ洗いしたのち、集めた粗結晶を500mlの三口フラスコに入れ、メタノール500mlを加えて60℃で加熱攪拌した。その後、結晶を濾別し、メタノールで洗浄、乾燥することでモノマー6(化合物(C))21.5gを得た。(収率:75%)
H−NMR (300 MHz, CDCl) δ = 5.48 (br.d, 1H、J=12.0Hz), 6.07 (br.d、1H、J=17.4Hz), 6.89(br.dd、1H、J=12.0、17.4Hz)、7.78(br.d、2H、J=8.4Hz)、7.94−8.05(m、4H)、8.08(br.d、2H、J=8.4Hz)、8.19−8.24(m、1H)、8.29−8.34(m、1H)、9.19(dd、1H、J=1.5、6.9Hz)、13.1(br.s、1H).
【0136】
モノマー7の合成
前記モノマー6の合成と同様にして、1−アミノアントラキノン22.5g(0.101mol)から、モノマー7を20.2g得た。(収率71%)
H−NMR (300 MHz, CDCl) δ = 5.46 (br.d, 1H、J=12.0Hz), 6.04 (br.d、1H、J=17.7Hz), 6.92(br.dd、1H、J=12.0、17.7Hz)、7.72(br.d、2H、J=9.0Hz)、7.92−8.03(m、2H)、8.14(br.d、2H、J=9.0Hz)、8.34(br.d、2H、J=9.0Hz)、8.49(br.d、2H、J=9.0Hz) 、8.80(br.d、2H、J=9.0Hz)、10.1(br.s、1H).
【0137】
モノマー8の合成
前記モノマー6の合成と同様にして、モノマー8を合成した。
H−NMR (300 MHz, dmso−d) δ = 5.40(d,1H,J=11.4Hz),5.97(d,1H,J=17.7Hz),6.81(dd,1H,J=10.9,17.4Hz),7.33−7.41(m,1H),7.58(d,2H,J=8.4Hz),7.68−7.76(m,1H),7.84(d,1H,J=8.4Hz),7.92(d,2H,J=8.4Hz),8.44(d,2H,J=8.4Hz).
【0138】
モノマー9の合成
前記モノマー6の合成と同様にして、モノマー9を合成した。
H−NMR (300 MHz, dmso−d) δ =5.39(d,1H,J=11.7Hz),5.98(d,1H,J=17.7Hz),6.82(dd,1H,J=11.7,17.7Hz),6.88(d,1H,J=8.4Hz),7.24−7.29(m,1H),7.55−7.61(m,1H),7.62(d,2H,J=8.4Hz),7.94(d,2H,J=8.4Hz),10.1(s,1H),10.54(s,1H),10.62(s,1H).
【0139】
モノマー10の合成
前記モノマー6の合成と同様にして、モノマー10を合成した。
H−NMR (300 MHz, dmso−d) δ = 5.42(d,1H,J=11.7Hz),6.02(d,1H,J=17.7Hz),6.85(dd,1H,J=11.7,17.7Hz),7.11(d,1H,J=8.4Hz),7.46(d,1H,J=8.4Hz),7.69(dd,1J,J=11.7,17.7Hz),7.66(br.d,2H,J=8.4Hz),8.06(d,2H,J=8.4Hz),8.06(d,2H,J=8.4Hz),8.18−8.29(m,1H),8.87−8.91(m,1H).
【0140】
モノマー11の合成
前記モノマー6の合成と同様にして、モノマー11を合成した。
H−NMR (300 MHz, dmso−d) δ = 5.42(d,1H,J=11.7Hz),6.01(d,1H,J=17.7Hz),6.84(dd,1H,J=11.7,17.7Hz),7.10−7.18(m,1H),7.28−7.40(m,1H),7.43−7.50(m,1H),7.63(d,2H,J=8.4Hz),8.13(d,2H,J=8.4Hz),12.3(br.s,1H).
【0141】
モノマー12及び13の合成
【化32】

2Lの三口フラスコにアクリドン150g(0.77mol)、ジメチルスルホキシド840ml、水酸化ナトリウム33.9g(0.85mol)を入れて室温下で攪拌しているところに、CMS−P176g(1.15mol)を10分以上かけて滴下した。その後、反応混合物を60℃で8時間加熱攪拌した。その後、系内を室温付近まで冷却したあと、メタノール・水の1:1混合溶液600mlを加え、さらに1時間攪拌した。生じた粗結晶を濾別し、メタノール・水の1:1混合溶液1Lでかけ洗いしたのち、さらにメタノール1Lでかけ洗いして乾燥することで化合物モノマー12を175gを得た。(収率:74%)
H−NMR (300 MHz, dmso−d) δ = 5.24(dd,1H,J=5.4,11.7Hz),5.72−5.8(m,1H),5.82(br.s,2H),6.69(dd,1H,J=10.8,17.4Hz),6.95(br.d,J=8.4Hz),7.14(br.d,J=7.2Hz),7.23−7.46(m,4H),7.65(br.d,2H,J=9.8Hz),7.72−7.82(m,2H),8.39(br.d,8.4Hz)..
【0142】
500mlの三口フラスコにCMS−P 50g(0.33mol)、トリメチルアミン30%水溶液71g(0.36mol)を加えた後、反応混合物を80℃で4時間加熱攪拌した。その後、減圧条件下で溶媒を除去したのち、酢酸エチル200mlを加えて室温下で攪拌した。生じた粗結晶を濾別し、酢酸エチルでかけ洗いしたのち、モノマー13を35gを得た。(収率:51%)
モノマー(14)の合成
H−NMR (300 MHz, dmso−d) δ = 3.06(s,9H),4.60(s,2H),5.38(d,1H,J=11.7Hz),5.97(d,1H,J=17.4Hz),6.81(dd,1H,J=11.7,17.4Hz),7.54(d,2H,J=8.4Hz),7.62(d,2H,J=8.4Hz).
【0143】
(高分子化合物の合成)
スチレン/メタクリル酸共重合体の合成
500mlの三口フラスコにジメチルスルホキシド75gを加え、窒素気流下、80℃の内温で加熱しているところに、スチレン70g(0.67mol)、メタクリル酸(MAA)30g(0.35mol)、V−601(商品名、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)1.77g(7.67 mmol)、ジメチルスルホキシド150gの混合溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃でそのまま2時間加熱攪拌したのち、V−601(ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.88g(3.8 mmol)、ジメチルスルホキシド2g溶液を追加し、さらに90℃で1時間攪拌した。得られた混合物にジメチルスルホキシドを148gを加え、放冷しスチレン/メタクリル酸の共重合体(酸価200、質量平均分子量33000)のジメチルスルホキシド溶液を得た。
【0144】
高分子化合物1
100mlの三口フラスコにジメチルスルホキシド1gを加え、窒素気流下、80℃の内温で加熱しているところに、スチレン7.35g(70.3mmol)、モノマー1 7.65g(46.9 mmol)、V−601(ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.32g(1.39mmol)、ジメチルスルホキシド20gの混合溶液を2.5時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃でそのまま2時間加熱攪拌したのち、V−601(ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.14g(0.61 mmol)、ジメチルスルホキシド0.5g溶液を追加し、さらに90℃で1時間攪拌した。得られた混合物にジメチルスルホキシドを22gを加え、放冷しスチレン/モノマー1の共重合体(酸価175、質量平均分子量39000)のジメチルスルホキシド溶液を得た。このようにして一般式(I)で表される原子群を有する繰り返し単位を有する高分子化合物1を得た。
【0145】
高分子化合物2
高分子化合物1の合成と同様にしてスチレンモノマーとモノマー2から、スチレン/モノマー2の共重合体(酸価175、分子量40000)のジメチルスルホキシド溶液を得た。このようにして一般式(I)で表される原子群を有する高分子化合物1を得た。
【0146】
高分子化合物3
高分子化合物1の合成と同様にしてスチレンモノマーとモノマー3から、スチレン/モノマー3の共重合体(酸価175、質量平均分子量32000)のジメチルスルホキシド溶液を得た。このようにして一般式(I)で表される原子群を有する高分子化合物3を得た。
【0147】
高分子化合物4
高分子化合物1の合成と同様にしてスチレンモノマーとモノマー4から、スチレン/モノマー4の共重合体(酸価175、質量平均分子量18000)のジメチルスルホキシド溶液を得た。このようにして一般式(IV)で表される原子群を有する高分子化合物を得た。
【0148】
高分子化合物5
高分子化合物1の合成と同様にしてスチレンモノマーとモノマー5から、スチレン/モノマー5の共重合体(酸価175、質量平均分子量12000)のジメチルスルホキシド溶液を得た。
【0149】
【化33】

【0150】
高分子化合物6
200mlの三口フラスコに、窒素気流下、tert−ブチルスチレン3.36g(21.0mmol)、モノマー1 7.65g(46.9 mmol)、モノマー6 5.00g(14.1 mmol)、N−メチルピロリドン80gを加えて、80℃の内温で加熱しているところに、V−601(ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.27g(1.17mmol)を加えた。そのまま80℃で攪拌したのち、2時間おきにV−601(ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.27g(1.17 mmol)を3回追加で加え、さらに90℃で2時間攪拌し、tert−ブチルスチレン/モノマー5/モノマー1の共重合体である高分子化合物6(酸価175、質量平均分子量39000)のジメチルスルホキシド溶液を得た。
【0151】
高分子化合物1の合成と同様にしてtert−ブチルスチレンモノマーとモノマー8、モノマー1から、高分子化合物7(酸価175、質量平均分子量25000)を得た。
【0152】
高分子化合物1の合成と同様にしてtert−ブチルスチレンモノマーとモノマー12、モノマー1から、高分子化合物8(酸価175、質量平均分子量25000)を得た。
【0153】
高分子化合物1の合成と同様にしてtert−ブチルスチレンモノマーとモノマー13、モノマー1から、高分子化合物9(酸価175、質量平均分子量25000)を得た。このようにして一般式(I)で表される原子群を有する高分子化合物を得た。
【0154】
平沼産業株式会社の自動滴定装置COM−2500(商品名)を用いて、テトラヒドロフラン−水=6:4の系において、中和滴定法により各モノマーのpKaを算出した。
[表1]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
モノマー pKa
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
比較例 メタクリル酸 3.98
本発明 モノマー1 3.96
本発明 モノマー2 3.96
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
上記結果より、モノマー1及び2の解離性部位のpKaはカルボン酸を有するメタクリル酸と同等であることを確認した。
【0155】
【化34】

【0156】
低分子分散剤1の合成
500mLの三口フラスコにメタンスルホンアミド15.0g(0.158 mol)、アセトニトリル150ml、トリエチルアミン48.6ml(0.347mol)、4−ジメチルアミノピリジン1.93g(0.016mol)を加え、氷冷、窒素気流下で攪拌しているところに、オレイン酸クロリド(約85%)61.4g(0.173mol)を1時間かけて滴下した。滴下終了後、そのまま5時間加熱攪拌したのち、生じたトリエチルアミン塩酸塩をろ過して除いた。得られたろ液に水、濃塩酸を加えて系内を酸性にしたのち、酢酸エチルで抽出した。集めた有機層を水、飽和食塩水で洗浄したのち、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。無機塩をろ別したのち、ロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた残渣に2−プロパノールを100ml加えると白色結晶が析出した。ろ過したのち、2−プロパノールで洗浄して白色結晶として低分子分散剤1を38.08g(収率67%)で得た。
H−NMR (300 MHz, CDCl) δ = 0.84(br.t,3H),1.15−1.34(br,20H),1.38−1.52(m,2H),1.86−2.02,(m,4H),2.24(br.t、2H),、3.20(br.s、3H),5.26−5.34(m、2H),11.6(br.s、1H).
【0157】
(実施例1)
顔料C.I.ピグメントイエロー74(以下、PY74と略す)あるいはC.I.ピグメントイエロー128(以下、PY128と略す)の0.1gを10mlバイエル瓶にいれ、さらにジメチルスルホキシド、2.6g、アルカリとしてベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(以下、BnMeNOH、40%メタノール溶液、東京化成(株)製)0.38g、前記の高分子化合物1(25重量%ジメチルスルホキシド溶液)を0.4g加え、40℃に加熱攪拌し、完全に溶解させた。溶液の色は濃赤色であった。100mlバイエル瓶にイオン交換水30gをいれ、スターラーで攪拌しているところに、前記のC.I.ピグメントイエロー74の顔料アルカリ溶液をテルモ株式会社製のテルモシリンジ(商品名)5ml、テルモニードル(商品名、口径0.80mm×長さ38mm)にて吸い上げ、一気に吐出した。得られた顔料分散液は非常に透明であった。粒径は動的光散乱装置(堀場製作所製 LB−500[商品名])にて測定した。
【0158】
(実施例2〜7,比較例1)
実施例1で高分子化合物1を前記の高分子化合物1のモノマーの組成比を変えた高分子化合物あるいは高分子化合物2〜4、上記スチレン/メタクリル酸共重合体(St/MAA)に変えた以外は同様の操作を実施して顔料分散体を得た。比較例1および実施例2〜6における顔料分散体の粒子径の測定結果を以下の表2に示す。
【0159】
【表2】

本発明の分散体は、電子求引性基を有する特定の高分子化合物(高分子化合物1〜5)の作用により、そこに含まれる顔料微粒子がナノメートルサイズのものでありながらその沈降等はみられず良好な分散性を示していた。
【0160】
(実施例8〜11)
実施例1で顔料C.I.ピグメントイエロー74をC.I.ピグメントイエロー、138、155、C.I.ピグメントレッド122、254に変えた以外は同様の操作を実施して顔料分散体を得た。前述のピグメントイエロー74、128と同様に粒子径が小さい顔料微粒子を含有する顔料分散体を得ることができた。
[表3]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
顔料 ポリマー 粒径(nm)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
実施例8(本発明) PY138 高分子化合物1 43
実施例9(本発明) PY155 高分子化合物1 47
実施例10(本発明) PR122 高分子化合物1 44
実施例11(本発明) PR254 高分子化合物1 53
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0161】
(比較例2)
顔料C.I.ピグメントイエロー74(以下、PY74と略す)0.1gを10mlバイエル瓶にいれ、さらにジメチルスルホキシド、2.6g、アルカリとしてベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(以下、BnMeNOH、40%メタノール溶液、東京化成(株)製)0.38gを加え、40℃に加熱攪拌し、完全に溶解させた。溶液の色は濃赤色であった。この顔料溶解液をI液とする。次に、100mlバイエル瓶にイオン交換水30g、スチレン/メタクリル酸共重合体(25重量%ジメチルスルホキシド溶液)を0.4g、BnMeNOH、40%メタノール溶液、東京化成(株)製)0.14g加え、攪拌し、完全に溶解させた。これをII液とする。このII液をスターラーで攪拌しているところに、前記のC.I.ピグメントイエロー74の顔料アルカリ溶液I液をテルモ株式会社製のテルモシリンジ5ml、テルモニードル(口径0.80mm×長さ38mm)にて吸い上げ、一気に吐出した。得られた顔料分散液は非常に透明であった。
【0162】
(実施例12)
次に前記比較例2においてスチレン/メタクリル酸共重合体に変えて、本発明の高分子化合物1に変更した以外は同様にして実施し、顔料分散体を同様に得た。
【0163】
[表4]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
粒径(Mv;nm) 粒径(Mn;nm) Mv/Mn
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
比較例2 43 28 1.5
実施例12 40 27 1.5
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
一般式(I)ないし(V)で表される原子群を有し、一般式(VI)ないし一般式(VII)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物1を貧溶媒(水性媒体)側に添加しても、十分に粒径の小さいナノメートルサイズでしかも粒径のそろった顔料微粒子を含有する顔料分散体を得ることができた。
【0164】
比較例1、2および実施例1、12で作製した顔料分散体を室温で放置し、経時での粒径変動を測定した。
【表5】

上記高分子化合物1を用いて調製した本発明の顔料分散体は、その顔料微粒子の分散安定性が高く、長期間にわたり粒径が大きくならず安定であることがわかる。
(実施例13)
C.I.ピグメントレッド122 4.0gをジメチルスルホキシド109.6g、アルカリとしてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(以下、MeNOH、25%メタノール溶液)を11.73g、前記の高分子化合物1(25重量%ジメチルスルホキシド溶液)を8.00g加え、40℃にて加熱攪拌し完全に溶解させ濃青紫色の顔料溶解液を得た。
【0165】
5Lのビーカーにイオン交換水1200gを加え氷冷却下で攪拌しているところに、前記の顔料溶解液を日本精密科学株式会社製の無脈流送液ポンプNP−KX−500(商品名)を用いて100ml/minで速やかに吐出し、顔料分散体を得た。氷冷却下で30分攪拌したのち、2Lの三口フラスコに移し、外温設定50℃で4時間加熱した。その後、室温まで冷却した後、この顔料分散体に塩酸を滴下してpHを3.5に調整し、顔料の分散体から顔料粒子を凝集させた。得られた凝集物を平均孔径0.2μmのメンブレンフィルターを用いて減圧濾過し、イオン交換水で2回水洗した。得られた顔料粉体をアセトン100mlを加えて攪拌、ろ過し、脱塩及び脱溶剤された顔料粒子の分散体粉体aを得た。
【0166】
次に、この粉体0.97gに顔料分10%になるようにイオン交換水3.92g、15%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を0.83g加え、株式会社日本精機製作所製の超音波ホモジナイザーUS−150Tで超音波分散処理を9時間行い、高濃度顔料分散体Aを得た。この顔料分散液Aの動的光散乱法による平均粒径は22nm(TEM平均粒径:20nm)であり、粘度は3.78mPa・sであった。
【0167】
(実施例14,15)
実施例13で用いた顔料を、それぞれC.I.ピグメントレッド254及びC.I.ピグメントバイオレット19に変えた以外は同様にし、脱塩及び脱溶剤された顔料粒子の分散体の粉体b、cを得た。そののち、粉体b及びcをそれぞれ前記実施例12と同様にイオン交換水、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドからなる媒体に添加混合し超音波分散して顔料分10%の顔料分散液B及び顔料分散液Cを得た。この顔料分散液B中の微粒子の動的光散乱法による平均粒径は58nm(TEM平均粒径:39nm)であり、顔料分散液C中の微粒子の平均粒径は48nm(TEM平均粒径:40nm)であった。
【0168】
(比較例3)
C.I.ピグメントレッド122 20g、オレイン酸ナトリウム1.3g、イオン交換水78.7gを混合して、ビーズミルを用いて4時間分散を行い、顔料分散体Dを得た。顔料分散液Dの動的光散乱法による平均粒径は80.1nm(TEM平均粒径:79.2nm)であった。
【0169】
(比較例4,5)
比較例3におけるC.I.ピグメントレッド122の代わりにC.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントバイオレット19に変えた以外は同様にしてビーズミルを用いて4時間分散を行い、顔料分散体Eおよび顔料分散体Fを得た。顔料分散液Eの動的光散乱法による平均粒径は87.5nm(TEM平均粒径:84.9nm)であり、顔料分散液Fの動的光散乱法による平均粒径は85.0nm(TEM平均粒径:93.4nm)であった。
【0170】
(実施例16)
顔料C.I.ピグメントイエロー74(以下、PY74と略す)0.1gを10mlバイエル瓶にいれ、さらにジメチルスルホキシド、3.0g、アルカリとしてベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(以下、BnMeNOH、40%メタノール溶液、東京化成(株)製)0.11g、ポリビニルピロリドン0.20gを加え、40℃に加熱攪拌し、完全に溶解させた。溶液の色は濃赤色であった。この顔料溶解液をI液とする。次に、50mlバイエル瓶にイオン交換水29.7g、前記界面活性剤(低分子分散剤1)を0.1g、BnMeNOH、40%メタノール溶液、東京化成(株)製)0.12g加え、攪拌し、完全に溶解させた。これをII液とする。このII液をスターラーで攪拌しているところに、前記のC.I.ピグメントイエロー74の顔料アルカリ溶液I液をテルモ株式会社製のテルモシリンジ5ml、テルモニードル(口径0.80mm×長さ38mm)にて吸い上げ、一気に吐出した。得られた顔料分散液は非常に透明度の高いものであった。
【0171】
(実施例17〜19)
次に前記実施例においてPY74をPY128,PR122,PR254に、アルカリをテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(25%メタノール溶液)0.10gに変えた以外は同様にして実施し、顔料分散体を同様に得た。動的光散乱による平均粒子径を測定した。以下の表6に示す。
【0172】
[表6]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
顔料 粒子径(nm)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
実施例16 PY74 42
実施例17 PY128 20
実施例18 PR122 25
実施例19 PR254 23
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0173】
上記の結果より、本発明の分散体に含まれる微粒子の粒径は非常に小さく、透明度の高いものであることがわかる。
【0174】
(比較例6)
実施例12での高分子化合物1の代わりにスチレン−メタクリル酸共重合体(酸価200、質量平均分子量33000)を用いた以外は同様にして、比較顔料分散液Gを得た。動的光散乱法による平均粒径は28nm(TEM平均粒径:25nm)であった。
【0175】
(インク組成物の調整)
(実施例20)
前記顔料分散体A(実施例13)を50質量部用い、ジエチレングリコール7.5質量部、グリセリン5質量部、トリメチロールプロパン5質量部、アセチレノールEH(商品名、川研ファインケミカル社製)0.2質量部、及びイオン交換水32.3質量部と混合した後超音波処理し、インク組成物αを得た。
【0176】
(比較例7)
比較例6で得られた分散液Gを顔料分散液を50質量部、ジエチレングリコール7.5質量部、グリセリン5質量部、トリメチロールプロパン5質量部、アセチレノールEH0.2質量部、イオン交換水32.3質量部を混合した後超音波処理し、インク組成物βを得た。
【0177】
(実施例21〜24)
実施例13での高分子化合物1の代わりに表7に記載の高分子化合物(実施例21)〜(実施例24)を用いた以外は同様にして、顔料分散液を得た。さらにその顔料分散液を実施例20と同様にしてインク組成物γ〜ζを得た。
【0178】
〔保存安定性の評価〕
得られたインク組成物α〜ζについて、まず調製当日の動的光散乱平均粒子径を測定した。次に、該インク組成物を外部温度設定60℃での加熱条件にて経時保存した後、再度動的光散乱による平均粒子径を測定した。このときの経時粒子径変動を表7に示す。
【0179】
[表7]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
顔料 分散剤 初期粒子径 経時粒子径
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
実施例20 PR122 高分子化合物1 22nm 35nm
実施例21 PR122 高分子化合物6 33nm 35nm
実施例22 PR122 高分子化合物7 35nm 40nm
実施例23 PR122 高分子化合物8 39nm 43nm
実施例24 PR122 高分子化合物9 34nm 39nm
比較例7 PR122 スチレン 28nm 64nm
−メタクリル酸共重合体
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0180】
表の結果が示すように、本発明の高分子化合物1、6、7、8、9より得られた分散体から作製されたインク組成物の保存安定性が極めて高いことが示された。
【0181】
(インク組成物の調整)
(実施例13a〜15a)
顔料分散液A〜Cをそれぞれ50g用い、ジエチレングリコール7.5g、グリセリン5g、トリメチロールプロパン5g、アセチレノールEH(商品名、川研ファインケミカル社製)0.2g、及びイオン交換水32.3gと混合してインク組成物A〜Cをそれぞれ得た。
【0182】
(比較例3a〜5a)
顔料分散液D〜Fをそれぞれ用い、イオン交換水で希釈し顔料分10質量%の濃縮液を得た。この濃縮液を50g、ジエチレングリコール7.5g、グリセリン5g、トリメチロールプロパン5g、アセチレノールEH0.2g、イオン交換水32.3gを混合した後超音波処理し、インク組成物D〜Fをそれぞれ得た。
【0183】
〔耐光性の評価〕
インク組成物Aをガラス基板上にスピンコートし、これを退色試験機にセットし、キセノンランプを照度170,000ルクスで4日間照射して耐光性の試験を行った。UVフィルタとしてTEMPAXフィルタ(商品名)(イーグルエンジニアリング社製、材質はSCHOTT社製TEMPAX(商品名)ガラス)を光源と試料の間に配置した。インク組成物Aの、照射前の吸光度(Abs.)、照射後の吸光度を測定し、吸光度の残存率(照射後の吸光度÷照射前の吸光度×100)は82.1%であった。
【0184】
同様にしてインク組成物Dをガラス基板上にスピンコートし、退色試験を行った。インク組成物Dの吸光度の残存率は68.5%であった。この結果から、本発明によれば、インクの耐光性が高められることがわかる。
【0185】
〔透明性の評価〕
実施例12a〜14aで得られたインク組成物A〜Cおよび比較例3a〜5aで得られたインク組成物D〜Fの透明性を、下記の基準に則り目視にて評価した。また、前記インク組成物を厚さ60μmのポリエチレンテレフタレート(PET)シート(商品名:PPL/レーザープリンター用ゼロックスフィルム OHP FILM,富士ゼロックス社製)上にバーコーターで塗工し、乾燥させ印画物を作製した後、印画部の透明性を下記の基準に則り目視にて評価した。(2:良好、1:不良)
【0186】
〔吐出性の評価〕
上記作製したインク組成物A〜Fをインクジェットプリンタ(PX−G930(商品名)、エプソン(株)製)のカートリッジに詰め、インクジェットペーパー(写真用紙<光沢>エプソン(株)製)にベタ画像(反射濃度が1.0)を全面に印字して、白スジの発生数を計測し、下記の基準に則り吐出性の評価を行った。
【0187】
3:印字面全体で全く未印字部である白スジが発生していない
2:僅かに白スジの発生は認められるが、実用上許容範囲にある
1:印字面全体に亘り白スジが多発し、実用上不可の品質である
評価結果を下表に示す。
表に示す。
【0188】
[表8]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
インク組成物 インク組成物の透明性 印画部の透明性 インクの吐出性
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
実施例13a 2 2 3
実施例14a 2 2 2
実施例15a 2 2 3
比較例3a 1 1 1
比較例4a 1 2 1
比較例5a 1 1 1
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0189】
表8から分かるように、本発明の分散体から作製したインク組成物(記録液)、及び該インク組成物を用いた印画物は非常に高い透明性を有し、また吐出性、耐光性に優れることがわかる。
【0190】
〔顔料ペーストの作製〕
前記実施例13における顔料粉体aに対して、中和に必要な量のテトラメチルヒドロキシドを少量添加し、新日本石油(株)製の5号ソルベント(以下、溶剤と表記する)を少量加え、スーパーミキサーARE−250((商品名)シンキー(株)社製)で混練した後、顔料ペーストaを得た。同様にして実施例13および14の顔料粉末b、cを用い顔料ペーストb、顔料ペーストcを得た。それぞれ、中和に必要な量のテトラメチルヒドロキシド及び溶剤を少量加え、スーパーミキサーARE−250(シンキー(株)製)で混練した後、ここで使用する顔料ペーストb及びcを得た。
【0191】
前記比較例3〜5の分散体D〜Fに塩酸を滴下してpHを3.5に調整し、顔料の分散体から顔料粒子を凝集させた。得られた凝集物を平均孔径0.2μmのメンブレンフィルターを用いて減圧濾過し、イオン交換水で2回水洗し、脱塩及び脱溶剤された顔料粒子の分散体d〜fを得た。
【0192】
(樹脂ワニスの作製)
ロジン変性フェノール樹脂(日立化成ポリマー(株)製、テスポール1355)をアマニ油と5号ソルベントの混合溶剤中に加熱溶解し、樹脂ワニスA(樹脂濃度55質量%)を得た。また、ロジン変性フェノール樹脂(日立化成ポリマー(株)製、テスポール1304(商品名))をアマニ油と5号ソルベントの混合溶剤中に加熱溶解し、樹脂ワニスB(樹脂濃度55質量%)を得た。
【0193】
(顔料分散用樹脂の作製)
冷却管、水分分離管、温度計、窒素導入管を備えたセパラブルフラスコに12−ヒドロキシステアリン酸100部、キシレン10部、テトラ−n−ブチルチタネート0.1部の混合物を入れ、180〜200℃で6時間加熱撹拌した。このとき窒素気流下に生成する水を水分分離管に分離しながら行った。次いでキシレンを減圧留去して質量平均分子量4,000、酸価30の淡褐色重合物であるカルボキシル基を有するポリエステル樹脂(以下、顔料分散用樹脂と表記する)を得た。
【0194】
(インク組成物)
以下に示す処方によりインクベース1〜3を作製した。なお、最初に顔料ペーストa〜fにそれぞれ溶剤を加え超音波処理を十分に行った後に他の成分を加え攪拌し、3本ロールにて練肉を行った。
【0195】
【表9】

【0196】
これを用いて以下の配合によりインク組成物1〜6を調製した。なお、インクベース1がインク組成物1に、同様にインクベース2〜6がインク組成物2〜6に対応する。
【0197】
(インクの処方)
−−−−−−−−−−−−−−−−−
成分 部
−−−−−−−−−−−−−−−−−
インクベース 40
樹脂ワニスB 50
ワックス 5
溶剤 5
−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0198】
上記の処方において、ワックスとしては、シャムロック社製のポリエチレンワックスコンパウンドを用いた。樹脂ワニスBは、ロジン変性フェノール樹脂(日立化成ポリマー(株)製、テスポール1304(商品名))とアマニ油と前記溶剤とを混合し、過熱溶解したもの(樹脂濃度55質量%)を用いた。
【0199】
またインク組成物調製の際には溶剤を上記インクベースに加え、十分に超音波処理をした後に他の成分を加え攪拌し、最終的に顔料分15%になるように溶剤をさらに加え、インク組成物を調製した。
【0200】
〔透明性の評価〕
インク組成物1〜3を厚さ60μmのポリエチレンテレフタレート(PET)シート上にバーコーターで塗工し、乾燥させた後、透明性を目視で評価した。
2:良好
1:不良
【0201】
〔耐光性の評価〕
インク組成物1〜4をPremium Glossy Photo Paper((商品名)セイコーエプソン社製)にバーコーターで塗工し、乾燥させた後、初期反射濃度(I)を測定した。その後キセノンランプを照度170,000ルクスで4日間照射し、再び反射濃度(I)を測定した。I/I(%)の比を計算し以下のごとく評価した。
【0202】
3:95%〜100%
2:90%以上〜95%未満
1:90%未満
【0203】
各評価結果を表10に示す。
【0204】
[表10]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
透明性 耐光性
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
インク組成物1(本発明) 2 3
インク組成物2(本発明) 2 3
インク組成物3(本発明) 2 2
インク組成物4(比較例) 1 2
インク組成物5(比較例) 1 2
インク組成物6(比較例) 1 1
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0205】
表10から分かるように本発明のインク組成物を用いた印画物は高濃度であっても透明性に優れ、且つ耐光性に優れる。
【0206】
上記の結果より、本発明の分散体は、水不溶性色材の粒子がナノメートルサイズにまで微細化されており、さらにその凝集が抑えられ良好な分散性が維持される。さらに本発明によれば上記の優れた特性を有する分散体を効率良くかつ純度良く製造することができる。さらに本発明の分散液から作製したインク組成物、及び該インク組成物を用いた印画物は非常に高い透明性を有し、また粒径が小さく吐出性に優れるのでインクジェト記録方式等、印画物の濃淡をインクの打滴量で調整する場合のインクとして好適に用いることができる。本発明の分散体から作製したインク組成物は透明性かつ耐光性に優れることにより精度および品質の高い記録液、画像形成方法、画像形成装置を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を含む媒体に、水不溶性色材の微粒子と、下記一般式(I)〜(IV)のいずれかで表される電子求引性基もしくはこれを含む原子群の1種類以上を親水性部分として有する高分子化合物もしくは界面活性剤とを含有することを特徴とする水不溶性色材分散体。
【化1】

(一般式(I)および(II)中、XおよびXの少なくとも一方は電子求引性の連結基を表し、XおよびXの一方が該連結基でないときその基は電子求引性の置換基を表す。Rは水素原子または置換基を表す。一般式(IV)中、Mは水素原子または金属原子を表す。)
【請求項2】
前記一般式(I)または一般式(II)におけるXおよびXがハメットの置換基定数におけるσ値が0以上である電子求引性の連結基または置換基であることを特徴とする請求項1に記載の分散体。
【請求項3】
前記一般式(I)または一般式(II)におけるXおよびXが、−CO−、−SO−、−SO−、−CN、−NO、−NO、−OH、−PO−、ハロゲン原子、アリール基、およびヘテロ環基よりなる群から選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の分散体。
【請求項4】
前記一般式(I)が下記一般式(V)で表される原子群であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の分散体。
【化2】

(式中、YおよびYはそれぞれ独立に−CO−または−SO−である。Zは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。)
【請求項5】
前記一般式(I)で表される原子群を親水性部分として有する高分子化合物が、下記一般式(VI)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の分散体。
【化3】

(式中、Rは水素原子または置換基を表す。Lは単結合または2価の連結基を表す。Y、Y、およびZは一般式(V)でのY、Y、およびZと同じ意味を表す。)
【請求項6】
前記一般式(I)で表される原子群を親水性部分として有する高分子化合物が、下記一般式(VII)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の分散体。
【化4】

(式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。RおよびLは一般式(VI)でのRおよびLと同じ意味を表す。Y、Y、およびZは一般式(V)でのY、Y、およびZと同じ意味を表す。m、nは共重合比を表す。)
【請求項7】
前記一般式(I)で表される原子群を親水性部分として有する高分子化合物が、下記一般式(VIII)、一般式(IX)、一般式(X)、又は一般式(XI)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の分散体。
【化5】

[一般式(VIII)において、Rは水素原子または置換基を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR17−、−OCO−、またはメチレン基を表す。Aはヘテロ環基を表す。Lは単結合または2価の連結基を表す。R、L、m、n、Y、Y、およびZは一般式(VI)と同じ意味を表す。]
[一般式(IX)において、Rは水素原子または置換基を表す。R10〜R13は、それぞれ独立に単結合、水素原子または置換基を表す。R10〜R13が置換基を表す場合、互いに結合し、環を形成してもよい。Qは、−C=C−とともに環を形成する原子群を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR17−、−OCO−、またはメチレン基を表す。Lは単結合または2価の連結基を表す。R、L、m、n、Y、YおよびZは一般式(VI)と同じ意味を表す。]
[一般式(X)において、Rは水素原子または置換基を表す。R14〜R16は、それぞれ独立に置換あるいは無置換のアルキル基またはアリール基を表し、R14〜R16が互いに結合し、飽和あるいは不飽和の環を形成してもよい。Jは−CO−、−COO−、−CONR17−、−OCO−、またはメチレン基を表す。Lは単結合または2価の連結基を表す。Xは窒素上のカチオン電荷と釣り合うアニオン基である。R、L、m、n、Y、YおよびZは一般式(VI)と同じ意味を表す。]
[一般式(XI)において、Rは水素原子または置換基を表す。R17は水素原子または置換基を表す。Qは、−N=C(R17)−とともに不飽和環を形成する原子群を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR17−、−OCO−、またはメチレン基を表す。Lは単結合または2価の連結基を表す。R、L、m、n、Y、YおよびZは一般式(VI)と同じ意味を表す。Xは窒素上のカチオン電荷と釣り合うアニオン基である。]
【請求項8】
前記水不溶性色材の微粒子の平均粒子径が150nm以下である請求項1〜7のいずれか1項に記載の分散体。
【請求項9】
該水不溶性色材が顔料である請求項1〜8のいずれか1項に記載の分散体。
【請求項10】
前記微粒子は該微粒子を構成する水不溶性色材が結晶状態で示す色と同色を示し、前記分散体の可視光領域の吸光度ピークを1とした際に、光散乱強度が30000cps以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の分散体。
【請求項11】
下記一般式(VII)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする水不溶性色材用高分子分散剤。
【化6】

(式中、YおよびYはそれぞれ独立に−CO−または−SO−である。Zは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。Rは水素原子または置換基を表す。Lは単結合または2価の連結基を表す。R〜Rはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。m、nは共重合比を表す。)
【請求項12】
水不溶性色材と、下記一般式(I)〜(IV)で表される原子群の1種類以上を親水性部分として有する高分子化合物もしくは界面活性剤とを有してなることを特徴とする水不溶性色材の微粒子。
【化7】

(一般式(I)および(II)中、XおよびXの少なくとも一方は電子求引性の連結基を表し、XおよびXの一方が該連結基でないときその基は電子求引性の置換基を表す。Rは水素原子または置換基を表す。一般式(IV)中、Mは水素原子または金属原子を表す。)
【請求項13】
水不溶性色材をアルカリ存在下の非プロトン性水溶性有機溶剤に溶解させ、その溶液と水性媒体とを接触させて、前記水不溶性色材を微粒子として生成させた分散体を調製するに当たり、下記一般式(I)〜(IV)のいずれかで表される電子求引性基もしくはこれを含む原子群の1種類以上を親水性部分として有する高分子化合物もしくは界面活性剤を前記水不溶性色材の溶液および/または水性媒体に含有させ、前記水不溶性色材微粒子と該高分子化合物もしくは界面活性剤とを含有する分散体とすることを特徴とする水不溶性色材含有物の製造方法。
【化8】

(一般式(I)および(II)中、XおよびXの少なくとも一方は電子求引性の連結基を表し、XおよびXの一方が該連結基でないときその基は電子求引性の置換基を表す。Rは水素原子または置換基を表す。一般式(IV)中、Mは水素原子または金属原子を表す。)
【請求項14】
前記一般式(I)〜(IV)で表される原子群の1種類以上を親水性部分として有する高分子化合物もしくは界面活性剤を、前記水性媒体に含有させることを特徴とする請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記非プロトン性水溶性有機溶剤の水に対する溶解度が5質量%以上である請求項13または14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記アルカリが、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属のアルコキシド、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ土類金属のアルコキシド、および有機強塩基からなる群より選ばれる1種類以上のアルカリである請求項13〜15のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項17】
前記分散体に含まれる前記水不溶性色材の微粒子を軟凝集させ、そこから前記水不溶性色材微粒子の凝集体を分離し、該凝集体を構成する微粒子に水に対する再分散性を付与することを特徴とする請求項13〜16のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項18】
前凝集体の形成を酸の添加により行い、前記凝集体への再分散性への付与をアルカリの添加により行う請求項13〜17のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項19】
前記分散体または凝集体を加熱する工程を含むことを特徴とする請求項13〜18のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項20】
水を含む媒体に前記凝集体の凝集を解き再分散させることを特徴とする請求項13〜19のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項21】
請求項13〜20に記載の製造方法により得られることを特徴とする水不溶性色材分散体。
【請求項22】
前記水不溶性色材が、キナクリドン有機顔料、ジケトピロロピロール有機顔料、ペリレン有機顔料、モノアゾイエロー有機顔料、縮合アゾ有機顔料、キノフタロン有機顔料、ベンズイミダゾロン有機顔料、ジスアゾイエロー顔料、及びフタロシアニン顔料からなる群より選ばれる有機顔料であることを特徴とする請求項1〜10及び21のいずれか1項に記載の水不溶性色材分散体。
【請求項23】
請求項1〜8、20、及び21のいずれか1項に記載の分散体を用いて作製される記録液であって、前記水不溶性色材を、記録液全質量の0.1〜20質量%含むことを特徴とする記録液。
【請求項24】
前記記録液がインクジェット用記録液である請求項23に記載の記録液。
【請求項25】
請求項24に記載のインクジェット用記録液を用いたインクセット。
【請求項26】
請求項23もしくは24に記載の記録液、または請求項25に記載のインクセットを用いて記録液を媒体に付与する手段により画像が記録された印画物であって、前記手段が記録液の付与量もしくは濃度を調整する機能を有し、該手段により印画物の濃淡が調整された印画物。
【請求項27】
請求項23もしくは24に記載の記録液、又は請求項25に記載のインクセットを用いて記録液を媒体に付与することにより、画像を記録する工程を有することを特徴とする画像形成方法。
【請求項28】
請求項23もしくは24に記載の記録液、又は請求項25に記載のインクセットを用いて記録液を媒体に付与することにより、画像を記録させるための手段を有することを特徴とする画像形成装置。

【公開番号】特開2009−256595(P2009−256595A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−24320(P2009−24320)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成17年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 ナノテクノロジープログラム「ナノテク・先端部材実用化研究開発」/「有機顔料ナノ結晶の新規製造プロセスの研究開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】