説明

水中に分散させた粉粒体の回収・再生装置

【課題】水中に分散させたMAP、ゼオライトなどの粉粒体の回収・再生を効率よく行うことができる装置を提供する。
【解決手段】外胴4の内部に、周面が濾材により構成された円筒状の有底内筒12を回転可能かつ着脱可能に支持する。有底内筒12の蓋13の中心には外胴4の蓋8を貫通する中空管11が接続され、粉粒体を含有する水が内部に供給される。粉粒体は水から分離されて有底内筒12の内部に残留するので、この有底内筒12をヒータを備えた粉粒体再生用の第2の外胴に移動し、中空管11の内部に加熱ガスを供給して加熱し、粉粒体を再生する。このとき吸着されていた成分は脱離される。粉粒体を有底内筒12に収納したまま再生することができるので搬送の手数が軽減され、回収と再生とを効率よく行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば排水中のアンモニアからの水素回収システムの一部に使用される水中に分散させた粉粒体の回収・再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、排水中に含まれるアンモニアを回収し、アンモニア分解、水素転換触媒により水素として回収するシステム(特許文献1)が開発されている。また最近では、排水中に含まれるアンモニアをMAP、ゼオライトなどのアンモニア吸着剤により選択的に吸着させ、加熱再生によりアンモニア吸着剤から脱離させたアンモニアガスを触媒により水素ガスとするシステムが開発されている。
【0003】
このシステムにおいては、MAP、ゼオライトなどのアンモニア吸着剤は粉粒体であり、水中に分散させて用いられる。従って水中に分散させた粉粒体を回収したうえ、乾燥、加熱などの再生工程へ送る装置が必要となる。しかし粉粒体の回収、搬送、再生を効率よく行える装置は未だ開発されていない。
【特許文献1】特開2004−195454号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記した従来の問題点を解決し、水中に分散させたMAP、ゼオライトなどの粉粒体の回収及び再生を効率よく行うことができる粉粒体の回収・再生装置を提供するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するためになされた本発明の水中に分散させた粉粒体の回収・再生装置は、少なくともその周面が濾材により構成された円筒状の有底内筒を、外胴の内部に回転可能かつ着脱可能に支持するとともに、この有底内筒の蓋の中心に外胴の蓋を貫通する中空管を接続したことを特徴とするものである。
【0006】
なお外胴は単一とすることもできるが、請求項2の発明のように、排水口を備えた粉粒体回収用の第1の外胴と、ヒータを備えた粉粒体再生用の第2の外胴とを備え、円筒状の有底内筒を第1の外胴から第2の外胴に移動できるようにすることが好ましい。この場合、第1の外胴には中空管の内部に粉粒体含有水を供給する手段を付設し、第2の外胴には中空管の内部に加熱ガスを供給する手段を付設する。また何れの場合にも、外胴を有底内筒とともに、水平姿勢と垂直姿勢との間で回転可能としておくことが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の装置によれば、少なくともその周面が濾材により構成された円筒状の有底内筒を外胴の内部で回転させながら、中空管を通じて有底内筒の内部に粉粒体含有水を供給し、粉粒体を水中から効率よく分離回収することができる。また回収された粉粒体を有底内筒の内部に収納したまま、外胴を加熱するとともに中空管を通じて有底内筒の内部に加熱ガスを供給すれば、粉粒体を再生させることができる。この操作は同一の外胴を用いて行っても、あるいは第2の外胴を用いて行ってもよい。いずれの場合にも回収された粉粒体を有底内筒の内部に収納したままで再生が可能であるから、粉粒体の搬送工程が不要となり、粉粒体の回収、搬送、再生を効率よく行うことができる。なお、外胴を有底内筒とともに水平姿勢と垂直姿勢との間で回転可能としておけば、外胴への有底内筒の着脱を垂直方向から容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。この実施形態では粉粒体はアンモニア吸着剤であるMAPであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、水中に分散させて水中に含有される特定物質を吸着し、加熱により吸着物質を放出できる各種の粉粒体に適用できるものである。また、本発明は粒径1μm〜10mmの粉流体に対して好適であり、とりわけ5μm〜100μmのものに対して好適である。
【0009】
図1は本発明の装置が用いられる排水中のアンモニアからの水素回収システムの概略図である。1は反応槽であり、アンモニア含有排水とアンモニア吸着剤である粉粒体(MAP)とが投入され、必要に応じて撹拌を行いMAPにアンモニアを吸着させる。2は沈殿槽であり、反応槽1の内部に含まれる粉粒体を沈殿させ、アンモニアが吸着された上澄水は処理水として抜き出される。
【0010】
沈殿槽2の槽底にはバルブ3を介して本発明の回収・再生装置が接続されている。その詳細構造は後述するが、この実施形態では粉粒体回収用の第1の外胴4と、粉粒体再生用の第2の外胴5とを別個に設置してある。バルブ3を通じて沈殿槽2の槽底から供給される粉粒体含有水中の粉流体は、第1の外胴4の内部で水中から回収され、第2の外胴5の内部で加熱され再生される。粉流体に吸着されていたアンモニアは加熱により脱離し、触媒反応塔6で水素に転換される。
【0011】
以下に本発明の回収・再生装置の詳細を説明する。図2に示すように、第1の外胴4は下部に排水口7を備えた円筒であり、図2の右側の端面には外胴の蓋8が設けられている。図3に示すように外胴4の両側面には水平な回転軸9,9を突設してあり、これらの回転軸9,9はガイド10に沿ってスライドできるとともに、水平姿勢と垂直姿勢との間で回転できるようになっている。ただし図4、図5に示すように回転するのは外胴4であり、外胴の蓋8は一定位置に固定されている。図1の状態では外胴4の端面と外胴の蓋8とは図示を略したパッキンによりシールされている。また外胴の蓋8の中心には、中空管11が貫通している。
【0012】
外胴4の内部には、円筒状の有底内筒12が配置されている。この有底内筒12は少なくともその周面が濾材により構成されたものである。濾材としては耐熱性、耐食性のある金属製あるいはセラミック製の濾材が好ましいが、MAPのように粉粒体再生時の加熱温度が比較的低い場合には、濾布を使用することもできる。有底内筒12の図2の左側部分には円盤状の蓋13が固定されており、この蓋13を貫通して接続管14が突設されている。図2にようにこの接続管14は外胴の蓋8の中空管11に接続されるものである。また外胴4の内周には円盤状の蓋13を受ける円形レール15が設けられているとともに、外胴の蓋8の内面には接続管14の外周を支持するローラ16が設けられている。このため円筒状の有底内筒12の左側部分は外胴4の内部に回転自在に支持される。
【0013】
また、外胴4の右側端面には内部に回転駆動軸17を備えた支持軸18が設けられており、回転駆動軸17の先端は非円形部24となっている。一方、有底内筒12の右側端面にはこの非円形部24が嵌合される中空軸19が突設されている。このため円筒状の有底内筒12の右側部分は回転駆動軸17によって支持されることとなる。しかも円筒状の有底内筒12の左右両端ともに差込み方式により外胴4に取り付けられているため、有底内筒12は外胴4の内部に回転可能かつ着脱可能に支持されていることとなる。
【0014】
図6は第2の外胴5を示すものである。その内部に前記したものと同一の有底内筒12を回転可能かつ着脱可能に支持できること、水平姿勢と垂直姿勢との間で回転できることは第1の外胴4と同じであるが、外周にヒータ21と保温層22が設けられている点が第1の外胴4と相違する。なお保温層22も、蓋8の部分と本体部分との間で分離できるように構成されている。以下に述べるように、有底内筒12は第1の外胴4から粉粒体再生用の第2の外胴5に容易に移動させることができるようになっている。
【0015】
以下に本発明の装置の使用方法を説明する。
先ず図2のように第1の外胴4の内部に有底内筒12をセットし、回転駆動軸17により有底内筒12を回転させる。第1の外胴4には中空管11の内部に粉粒体含有水を供給する手段が付設されており、粉粒体含有水を中空管11を通じて有底内筒12の内部に導入する。有底内筒12はその周面が濾材により構成されているので、粉粒体は濾過されて水と分離され、水は外胴4の排水口7から排水され、粉粒体は有底内筒12の内部に残留する。有底内筒12は回転されることにより全周面が有効に濾過面として機能し、効率よく粉粒体を水中から回収することができる。
【0016】
このようにして有底内筒12の内部に所定量の粉粒体が蓄積されたら、図4に示すようにガイド10に沿って外胴4をスライドさせ、外胴の蓋8から外胴4及び有底内筒12を分離する。これと同時に中空管11から接続管14が外れる。次に図5に示すように外胴4及び有底内筒12を垂直姿勢になるように回転させる。そして有底内筒12を垂直上方に持ち上げれば、内部に粉粒体が蓄積された有底内筒12を外胴4から容易に取り外すことができる。
【0017】
取り外した有底内筒12はそのまま、隣接する第2の外胴5の内部にセットされる。このとき第2の外胴5は図5に示されたと同様の垂直姿勢にあり、有底内筒12をその内部に垂直に下降させれば、有底内筒12の中空軸19が外胴5の回転駆動軸17の先端に形成された非円形部24に嵌り込み、また円盤状の蓋13が円形レール15に支持される。その後、全体を水平に倒すとともに外胴の蓋8に外胴5を密着させ、図6に示す状態とする。
【0018】
第2の外胴5には中空管11の内部に加熱ガスを供給する手段を付設してあり、有底内筒12を回転させながら中空管11を通じて加熱ガスを有底内筒12の内部に供給する。またこれと同時にヒータ21で外胴5を外周から加熱する。この結果、有底内筒12の内部の粉粒体は回転運動によって撹拌されつつ効率よく乾燥されるとともに所定温度まで加熱され、吸着されていたアンモニアが脱離されて排気管23から取り出される。また加熱により粉粒体は再生されて再び吸着能力を取り戻す。このため、所定時間後に第2の外胴5から有底内筒12を取り外し、吸着能力を取り戻した粉粒体を有底内筒12の接続管14から図1に示す反応槽1に投入すればよい。また空になった有底内筒12は再び第1の外胴4の内部にセットし、以下同様のサイクルが繰り返される。
【0019】
以上に説明した実施形態では、第1の外胴4と第2の外胴5とを使用したが、第1の外胴4のみを用いることも可能である。この場合は、内部に粉粒体が蓄積された有底内筒12を外胴4に入れたままで回転させ、その内部に加熱ガスを供給するとともにヒータで外周から加熱すればよい。このようにすれば装置構成をより単純化できるが、1サイクルに要する時間が長くなるので、システム全体の効率を考慮して何れを採用すべきかを決定すればよい。また第1の外胴4と第2の外胴5とを複数個配置し、連続運転に近づけることも可能である。
【0020】
以上に説明したように、本発明の粉粒体の回収・再生装置によれば、水中から回収したMAP、ゼオライトなどの粉粒体を有底内筒12に収納したまま再生することができるので搬送の手数が軽減され、回収と再生とを効率よく行うことができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の装置が用いられる排水中のアンモニアからの水素回収システムの概略図である。
【図2】第1の外胴をその内部の有底内筒とともに示す断面図である。
【図3】図2の側面図である。
【図4】蓋から外胴を分離させた状態を示す断面図である。
【図5】第1の外胴をその内部の有底内筒とともに垂直姿勢に回転させた状態を示す断面図である。
【図6】第2の外胴をその内部の有底内筒とともに示す断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 反応槽
2 沈殿槽
3 バルブ
4 第1の外胴
5 第2の外胴
6 触媒反応塔
7 排水口
8 外胴の蓋
9 回転軸
10 ガイド
11 中空管
12 有底内筒
13 蓋
14 接続管
15 円形レール
16 ローラ
17 回転軸
18 支持軸
19 非円形部
20 中空軸
21 ヒータ
22 保温層
23 排気管
24 非円形部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともその周面が濾材により構成された円筒状の有底内筒を、外胴の内部に回転可能かつ着脱可能に支持するとともに、この有底内筒の蓋の中心に外胴の蓋を貫通する中空管を接続したことを特徴とする水中に分散させた粉粒体の回収・再生装置。
【請求項2】
排水口を備えた粉粒体回収用の第1の外胴と、ヒータを備えた粉粒体再生用の第2の外胴とを備え、円筒状の有底内筒を第1の外胴から第2の外胴に移動できるようにしたことを特徴とする請求項1記載の粉粒体の回収・再生装置。
【請求項3】
第1の外胴には中空管の内部に粉粒体含有水を供給する手段を付設し、第2の外胴には中空管の内部に加熱ガスを供給する手段を付設したことを特徴とする請求項2記載の粉粒体の回収・再生装置。
【請求項4】
外胴を有底内筒とともに、水平姿勢と垂直姿勢との間で回転可能とした請求項1または2記載の粉粒体の回収・再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−224004(P2006−224004A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−41620(P2005−41620)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成16年度新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】