説明

水中に浸漬される前は溶解耐性を有する水溶性基材

水溶性基材、より具体的には中性pHにおいて溶解耐性を改善する水溶性基材、及びその製造方法が開示される。水溶性基材から製造されるパウチのような物品もまた本明細書に開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性基材、より具体的には中性pHにおいて改善された溶解耐性を有する水溶性基材、及びその製造方法に関する。本発明はまた、水溶性基材から製造される、パウチのような物品にも関する。
【背景技術】
【0002】
水溶性基材は、包装材料としての使用に幅広い支持を得ている。包装材料としては、フィルム、シート、吹き込み又は成形中空体(即ち、サッシェ、パウチ、及びタブレット)、瓶、容器などが挙げられる。しばしば、水溶性基材は、サッシェ及びパウチのような特定の種類のこれらの物品の調製に用いられるとき、少量の水又は高湿度への曝露により、崩壊する及び/又はべたっとする。これにより、その中に収容される組成物を包装し保存する際に使用するのに不適当となり得る。
【0003】
水溶性パウチに対する消費者の最も一般的な不満は、水溶性パウチが偶然少量の水にさらされたとき、例えば、パウチが販売され、購入された後、保管中に濡れた手、高湿度、水漏れする流し台、又はパイプから、外部包装の内部に水が入ると、望ましくないパウチの溶解につながることである。これにより、水溶性パウチは、使用前に漏れたり及び/又は互いに貼り付いたりする場合がある。2番目のよくある不満は、使用の際に水溶性パウチが完全に溶解しないことである。このように水溶性基材、及びサッシェやパウチのようなそれらの基材から製造された物品で、少量の水の曝露に対する改善された溶解耐性を有し、それにもかかわらず、その後のすすぎ水及び/又は洗浄水などの水溶液に浸漬される場合に非常に素早く溶解できる物品に関して未達成の需要が依然として存在する。
【0004】
水溶性基材の溶解を遅延させる様々な方法が当業界において既知であり、典型的には非水溶性である材料で水溶性基材をコーティングすることを含む。例えば、米国特許第6,509,072号には、バリアコーティングを含む水溶性基材が記載されている。バリアコーティングは、水溶性基材上に連続フィルムを形成するポリマーフィルムである。バリアコーティングの別の例がPCT国際公開特許第01/23460号(花王株式会社(Kao Corporation)に譲渡)に記載されており、水溶性基材の表面は粒子状又は繊維性の非水溶性材料でコーティングされ、使用される非水溶性材料の量は、水溶性フィルム100重量部毎に0.1〜80重量部である。しかしながら、使用する際には(典型的には、水溶液に水溶性基材を浸漬することを含む)、コーティングが迅速に分解することが望ましい。水溶性基材の使用により、基材又は基材を含む物品が浸漬される水溶液は、酸性又はアルカリ性であるpHを有し得る。先行技術のコーティングは偶発的な水との接触(中性pHにおいて)に対しては十分な耐性を提供し得るが、酸性又はアルカリ性溶液に浸漬される場合、これらは迅速に分解又は溶解できない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,509,072号
【特許文献2】PCT国際公開特許第01/23460号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、中性pHにおいて溶解耐性を改善しながらも、酸性又はアルカリ性のpHを有する水溶液中に浸漬される場合には非常に迅速に溶解できる水溶性基材を提供することが、本発明の1つの態様である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1の表面及び第1の表面の反対側の第2の表面を有し、前記第1及び第2の表面のうちの少なくとも1つに塗布されたコーティングを有する水溶性基材に関し、前記コーティングが、6〜7のpHにおいて水溶性である材料を含むと共に更に、6未満のpH又は7より大きいpHのいずれかにおいて水溶性である材料を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明はまた、水溶性基材を含む物品、及び水溶性基材の製造方法にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】コーティングされていない水溶性基材の断面。
【図2】本発明による水溶性基材の1つの実施形態の断面。
【図3A】本発明による水溶性基材の別の実施形態の断面。
【図3B】本発明による水溶性基材の別の実施形態の断面。
【図3C】本発明による水溶性基材の別の実施形態の断面。
【図3D】本発明による水溶性基材の別の実施形態の断面。
【図3E】本発明による水溶性基材の別の実施形態の断面。
【図4】本発明による水溶性基材を含む物品の断面。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、水溶性基材、より具体的には中性pHにおいて改善された溶解耐性を有する水溶性基材、及びその製造方法に関する。しかしながら、この水溶性基材は、酸性又はアルカリ性のpHを有する水溶液に浸漬される場合、水溶性である。本発明はまた、本明細書に記載される水溶性基材を含む物品にも関する。
【0011】
水溶性基材
図1は、水溶性基材10の断面を示す。水溶性基材10は、第1の表面12、第1の表面の反対側の第2の表面14、及び第1の表面12と第2の表面14との間の厚さ16を有する。水溶性基材10は、フィルム、シート、又は発泡体の形態であることができ、織布及び不織布構造を含む。
【0012】
水溶性基材はポリマー材料で製造され、本明細書において後に述べる20ミクロンの最大孔径を有するガラスフィルターを使用する方法で測定したときに、少なくとも50重量%の水溶解度を有する。好ましくは、基材の水溶解度は少なくとも75重量%であり、更に好ましくは少なくとも95重量%である。
【0013】
基材材料50グラム±0.1グラムが事前秤量した400mLビーカーに添加され、25℃の蒸留水245mL±1mLが添加される。これを、600rpmに設定された電磁攪拌器上で、30分間激しく攪拌する。次に、混合物を、上記で定義したような孔径(最大20ミクロン)を有する折り畳み定性焼結ガラスフィルターを通して濾過する。任意の従来の方法によって収集した濾液から水を蒸発させ、残った物質の重量を測定する(これが溶解画分である)。次いで、溶解度(%)を算出することができる。
【0014】
典型的には、水溶性基材10は、0.33〜1,667g/平方メートル、好ましくは33〜167g/平方メートルの坪量を有する。第1表面12と第2表面14との間の水溶性基材10の厚さは、約0.75マイクロメートル〜約1,250マイクロメートル、好ましくは約10マイクロメートル〜約250マイクロメートル、より好ましくは約25マイクロメートル〜約125マイクロメートルの範囲であることができる。
【0015】
基材材料として使用するのに好適な、好ましいポリマー、コポリマー又はその誘導体は、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレンオキシド、アクリルアミド、アクリル酸、セルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、セルロースアミド、ポリビニルアセテート、ポリカルボン酸及び塩類、ポリアミノ酸又はペプチド、ポリアミド、ポリアクリルアミド、マレイン酸/アクリル酸のコポリマー、デンプン及びゼラチンを含む多糖類、キサンタン(xanthum)及びカラガム(carragum)のような天然ガム、ポリアクリレート及び水溶性アクリレートコポリマー、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストリン、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マルトデキストリン、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコールコポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、並びにこれらの混合物から選択される。最も好ましいポリマーは、ポリビニルアルコールである。好ましくは、基材中のポリマー濃度は少なくとも60%である。
【0016】
市販の水溶性フィルムの例は、モノゾル社(MonoSol LLC)(米国インディアナ州ゲーリー(Gary))から販売されている、商品照会名モノゾル(MonoSol)M8630として知られるPVAフィルム、並びに対応する溶解度及び変形特性を有するPVAフィルムである。本明細書で用いるのに好適な他のフィルムとしては、アイセロ(Aicello)により供給される商品照会名PTフィルム若しくはK−シリーズのフィルムとして既知のフィルム、又はクラレ(Kuraray)により供給されるVF−HPフィルムが挙げられる。
【0017】
pH感受性コーティング
図2に示されるように、コーティング20は、水溶性基材10の第1の表面12又は第2の表面14の少なくとも1つに塗布され、好ましくはそれをほぼ覆う。「ほぼ覆う」とは、第1の表面12又は第2の表面14の少なくとも95%、好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは100%が、コーティング20によって覆われることを意味する。これは、偶発的な水との接触時に、水が水溶性基材10の第1表面12又は第2表面14に到達することができないか、あるいは、この表面に到達する水の量が、水溶性基材10を完全に溶解するのに不十分であるかのいずれかを保証する。
【0018】
コーティング20は、水溶性基材に対するコーティングの重量比が0.1〜100、好ましくは0.1〜10、更に好ましくは0.2〜2で塗布されるのが好ましい。
【0019】
コーティング20は、6〜7のpHにおいて非水溶性であり、6未満のpH又は7より大きいpHのいずれかにおいて水溶性である材料(「pH感受性材料」とも呼ばれる)を含む。偶発的に水溶性基材に接触する可能性がある水、例えば、漏水パイプからの水又は濡れた手との接触による水などは、中性のpHを有する。したがって、本発明のコーティングは、水溶性基材を保護する。水溶性基材で製造された物品には、例えば、洗剤で充填されたパウチが挙げられる。これらのパウチが使用される水性環境は、多くの場合、酸性又はアルカリ性のpHを有する。したがって、本発明のコーティングは、これらの環境で迅速に溶解し、水溶性基材が迅速に溶解することを確実にする。
【0020】
用語「6〜7のpHにおいて水溶性である」とは、材料が6〜7のpHにおいて少なくとも50重量%の水溶解度を有することを意味する。好ましくは、水溶解度は、本明細書で前述した方法により測定されるとき、少なくとも75重量%、更に好ましくは少なくとも95重量%である。
【0021】
用語「6未満のpHにおいて非水溶性である」又は「7より大きいpHにおいて非水溶性である」とは、材料が6未満のpHにおいて又は7より大きいpHにおいて50重量%未満の水溶解度を有することを意味する。水溶解度は、40重量%未満、更に好ましくは30重量%未満であるのが好ましい。特定のpHにおける水溶解度を測定するために、本明細書で前述した方法において使用される蒸留水のpHが適宜調整される。
【0022】
このようなコーティング20は、濡れた手との接触などの偶発的な水との接触の際に、コーティング20が十分な耐性を有することで水が水溶性基材10の表面に至ることができないという利点を提供する。水溶性基材10が使用される環境(酸性又はアルカリ性)により、コーティングは迅速に溶解又は分解することができ、それゆえに過剰な水を水溶性基材10に至らせることができる。
【0023】
1つの実施形態では、コーティング20は、6未満のpHにおいて、好ましくは1〜5.9のpHにおいて、より好ましくは1.5〜5.5のpHにおいて、更に好ましくは2〜5のpHにおいて水溶性である材料を含む。酸性環境で可溶性である好適な材料の例には、2.0のpHにおいて可溶性であるが2.0より大きいpHにおいては不溶性であるビニルピリジン(vinylpyrridrine)/スチレンコポリマー材料(アディッセオ社(Adisseo)(ジョージア州アルファレッタ(Alpharetta))により供給)、3.0より大きいpHにおいて可溶性であるSQZゲル(SQZgel)pH感受性ポリマー混合物(マクロメド社(MacroMed Inc.)(ユタ州サンディ(Sandy))により供給)、4.5より大きいpHにおいて可溶性であるメタ−アクリル酸及びコポリマー材料(ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(Bristol Myers Squibb)(ニューヨーク州ニューヨーク(New York))により供給)、5.5より大きいpHにおいて可溶性であるオイドラギット(Eudragit)L30D(ローム・ファーマ/デグサ社(Rhom Pharma/Degussa)(ニュージャージー州ロッカウェイ(Rockaway))により供給)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
別の実施形態では、コーティング20は、7より大きいpHにおいて、好ましくは7.5〜15のpHにおいて、より好ましくは8〜14.5のpHにおいて、更に好ましくは8.5〜14のpHにおいて水溶性である材料を含む。アルカリ性環境で可溶性である好適な材料の例には、7.0より大きいpHにおいて可溶性であるオイドラギット(Eudragit)S100(ローム・ファーマ/デグサ社(Rhom Pharma/Degussa)(ニュージャージー州ロッカウェイ(Rockaway))により供給)、8.0より大きいpHにおいて可溶性であるスチレン(又はアクリル酸)/p−ヒドロキシスチレンコポリマー材料(サンドス(Sandoz)(ニュージャージー州プリンストン(Princeton))により供給)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
コーティング20は、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、更に好ましくは少なくとも70重量%、更に一層好ましくは少なくとも80重量%、更により一層好ましくは少なくとも90重量%のpH感受性材料を含むのが好ましい。最も好ましくは、コーティング20は、ほぼ全体がpH感受性材料からなる。
【0026】
特定の用途では、(浸漬される場合の)コーティング20そのものの溶解率は、(酸性pH感受性コーティングに対しては)酸性材料の分離性領域に塗布することで、又は(アルカリ性pH感受性コーティングに対しては)アルカリ性材料の分離性領域に塗布することで、増大する。本明細書で使用するとき、「分離性領域」とは、好ましくは0.1mm2〜400mm2、より好ましくは1mm2〜200mm2、更に好ましくは10mm2〜100mm2の比較的小さな露出表面積を有し、互いに接触せず、ランダム又は非ランダムであることができる模様を有し得る領域を意味する。これらの分離性領域は、表面積が組み合わせられるとき、第1表面12又は第2表面14の表面積の、10%から、好ましくは20%から、より好ましくは30%から、更に好ましくは40%から、70%まで、好ましくは80%まで、より好ましくは90%までに相当する。浸漬される場合、酸性又はアルカリ性材料のこれらの分離性領域は、pHが局所的に減少又は増加することを確かにし、それゆえにコーティング20の分解に対する促進効果を有する。酸性又はアルカリ性材料は様々な方法で塗布され得る。
【0027】
1つの実施形態では、図3Aに示されるように、酸性又はアルカリ性材料は、コーティング20の中に塗布される。より具体的には、pH感受性コーティング20がまず不連続な形式で塗布され、次に酸性/アルカリ性材料がpH感受性コーティングによって被覆されていない領域25に塗布される。別の方法としては、酸性/アルカリ性材料がまず分離性領域に塗布され、その後にpH感受性コーティング20が塗布される。偶発的な水との接触によりpH感受性コーティング20が分解するのを実際に誘発する可能性を避けるために、該水溶性基材10よりも低い水溶性を有する材料のコーティング26が酸性/アルカリ性材料の分離性領域25に塗布されることが好ましい。
【0028】
別の実施形態では、図3Bに示されるように、酸性又はアルカリ性材料は、pH感受性コーティング上に塗布される。偶発的な水との接触によりpH感受性コーティング20が分解するのを実際に誘発する可能性を避けるために、該水溶性基材10よりも低い水溶性を有する材料のコーティング26が酸性/アルカリ性材料の分離性領域25に、及び所望によりpH誘発型コーティング20の上部に塗布されることが好ましい。
【0029】
別の実施形態では、図3Cに示されるように、酸性又はアルカリ性材料は、水溶性基材の表面とpH感受性コーティング20との間に塗布される。
【0030】
更に別の実施形態では、図3Dに示されるように、酸性又はアルカリ性材料は、水溶性基材10の中に組み込まれる。
【0031】
更に別の実施形態では、図3Eに示されるように、酸性又はアルカリ性材料は、pH感受性コーティング20が塗布される表面の反対側の水溶性基材の表面に塗布される。
【0032】
酸性又はアルカリ性材料の分離性領域25は、好ましくは該水溶性基材10の20重量%未満に相当する。酸性材料の例には、強酸と弱塩基により形成される塩(塩化アンモニウムなど)、酸性のpKa(加水分解)を有する弱酸と弱塩基により形成される塩、有機酸及び無機酸、これらの塩、酸前駆体、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。有機酸化合物には、カルボン酸、フェノール酸、アスコルビン酸(食品用途のビタミンC)、フミン酸、木酢液、酢酸、安息香酸、酪酸、クエン酸、ギ酸、乳酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンチオール、プロピオン酸、ピルビン酸、吉草酸が挙げられる。無機酸化合物には、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、過塩素酸、ホウ酸、炭酸、塩素酸、フッ化水素酸、リン酸、ピロリン酸が挙げられる。
【0033】
好ましいアルカリ性材料は、弱酸と強塩基により形成される塩(酢酸ナトリウムなど)及び塩基性のpKa(加水分解)を有する弱酸と弱塩基により形成される塩、炭酸塩及び重炭酸塩、金属水酸化物、アンモニア及びアミン、モノエタノールアミン、金属酸化物、ピリジン、これらの塩、並びにこれらの組み合わせであるが、これらに限定されない。
【0034】
コーティング20は、偶発的な水との接触に耐性であると共に水溶性基材10よりも低い水溶性の他の成分を更に含んでもよい。
【0035】
このような成分の1つの例は、高い加水分解度を有するポリビニルアルコールである。好ましくは、コーティングに使用されるポリビニルアルコールの加水分解度は、97%より大きい。
【0036】
このような成分の別の例は、無機又は有機材料である。無機材料は、ゼオライト、ベントナイト、タルク、雲母、カオリン、海泡石、シリカ、炭酸カルシウム、酸化チタン、無水ケイ酸、カルシウムヒドロキシアパタイト、フタロシアニンブルー、ヘリンドンピンク、ハンザオレンジ、真珠光沢材などであってよいが、ゼオライト、ベントナイト、タルク、雲母、カオリン、シリカ、酸化チタン、シリコーンなどが好ましい。有機材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリウレタン及び/又はその架橋産物、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリル酸エステル及び/又はその架橋産物、エチレンゴム、プロピレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、シリコーンゴムなどのゴム及び/又はその架橋産物から選択される合成ポリマー、あるいは、セルロース及び/又はその誘導体、デンプン及び/又はその誘導体、種子の外皮及び/又はその誘導体などの天然ポリマーであってよい。ポリエチレン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、セルロース及び/又はその誘導体、デンプンなどが好ましい。ただし、ポリ(メタ)アクリル酸は、ポリアクリル酸及びポリメタクリル酸の両方を意味する。
【0037】
本発明によるコーティングは不透明であることもできるが、好ましくは透明又は半透明である。触知性(接触)効果又は視覚効果(例えば、図形、漫画、ロゴ、ブランド、ユーザー使用説明など)のような目立つ効果を作製するために、着色された又は三次元のコーティングもまた好ましい。
【0038】
任意成分
特定の用途に対しては、水溶性基材10の(浸漬される場合の)溶解率が増大することが必要とされる場合がある。水溶性基材を水に浸漬させた場合の溶解を加速するため、崩壊剤がコーティング20に添加されてもよい。存在する場合、該コーティング20中の崩壊剤の濃度は、コーティング20の0.1〜30重量%、好ましくは1〜15重量%である。別の方法としては、崩壊剤はまた、水溶性基材10の表面、コーティング20が塗布される表面と反対側に塗布されてもよく、又は水溶性基材10の両方の表面に塗布されてもよく、あるいは水溶性フィルム10に組み込まれてもよく、あるいはこれらの任意の組み合わせでもよい。任意の好適な崩壊剤を使用することができる。本明細書に用いるのに好ましい崩壊剤は、トウモロコシ/ジャガイモデンプン、メチルセルロース/セルロース、鉱物粘土粉末、クロスカルメロース(架橋セルロース)、クロスポビドン(crospovidine)(架橋ポリマー)、グリコール酸ナトリウムデンプン(架橋デンプン)である。
【0039】
例えばリトマスなどの染料指標が、pH感受性コーティング20の中若しくは上で、又はこれらの組み合わせで、水溶性基材10に所望により塗布されてもよい。このような指標は、pH感受性コーティングが活性化されていることを視覚的に示すことができ、それにより消費者にシステムが機能しているという信号を提供できる。
【0040】
水溶性基材形成組成物及びそれから形成される水溶性基材10はまた、1つ以上の添加剤又は補助剤成分を含むことができる。例えば、水溶性基材形成組成物及び水溶性基材10は、可塑剤、潤滑剤、離型剤、充填剤、増量剤、ブロッキング防止剤、粘着性除去剤、消泡剤、又は他の機能成分を含有してよい。洗浄用組成物を含有する物品の場合、後者としては、洗浄水に送達される機能的洗剤添加物、例えば有機ポリマー分散剤、又は他の洗剤添加剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
好適な可塑剤としては、グリセロール、グリセリン、ジグリセリン、ヒドロキシプロピルグリセリン、ソルビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ポリエーテルポリオール、エタノールアミン、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。可塑剤は、約5重量%〜約30重量%の範囲、又は約12重量%〜約20重量%の範囲の量の好適な量で(ただし、これらの量に限定されない)、水溶性基材10に組み込むことができる。
【0042】
好適な界面活性剤としては、非イオン性、カチオン性、アニオン性、及び双極性の部類を挙げることができる。好適な界面活性剤としては、ポリオキシエチレン化ポリオキシプロピレングリコール、アルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、第三級アセチレングリコール及びアルカノールアミド(非イオン性物質)、ポリオキシエチレン化アミン、第四級アンモニウム塩及び四級化されたポリオキシエチレン化アミン(カチオン性物質)、並びにアミンオキシド、N−アルキルベタイン及びスルホベタイン(双極性物質)が挙げられるが、これらに限定されない。界面活性剤を、約0.01重量%〜約1重量%の範囲、又は約0.1重量%〜約0.6重量%の範囲の量を含む、任意の好適な量で水溶性基材10に組み込むことができる。
【0043】
好適な潤滑剤/離型剤としては、脂肪酸及びそれらの塩、脂肪族アルコール、脂肪酸エステル、脂肪族アミン、脂肪族アミンアセテート、並びに脂肪酸アミドが挙げられるが、これらに限定されない。潤滑剤/離型剤を、約0.02重量%〜約1.5重量%の範囲、又は約0.04重量%〜約0.15重量%の範囲の量を含む、任意の好適な量で水溶性基材10に組み込むことができる。
【0044】
好適な充填剤、増量剤、ブロッキング防止剤、粘着性除去剤としては、デンプン、変性デンプン、架橋ポリビニルピロリドン、架橋セルロース、微結晶セルロース、シリカ、金属酸化物、炭酸カルシウム、タルク及び雲母が挙げられるが、これらに限定されない。充填剤、増量剤、消泡剤、粘着性除去剤は、水溶性基材10の中に、約0.1重量%〜約25重量%の範囲、好ましくは約1重量%〜約15重量%の範囲の量などの任意の好適な量で存在できる。デンプンの非存在下では、充填剤、増量剤、ブロッキング防止剤、粘着性除去剤が、約1重量%〜約5重量%の範囲で存在することが望ましい場合がある。
【0045】
好適な消泡剤としては、ポリジメチルシロキサン及び炭化水素のブレンドに基づくものが挙げられるが、これに限定されない。消泡剤は、水溶性基材10の中に、約0.001重量%〜約0.5重量%の範囲、好ましくは約0.01重量%〜約0.1重量%の範囲の量などの任意の好適な量で存在できる。
【0046】
水溶性基材形成組成物は、材料を混合し、温度を約21℃(約70°F)から約90℃(195°F)まで昇温しながら溶液が完成するまで混合物を攪拌することによって調製される。基材形成組成物は、任意の好適な形態(例えば、フィルム又はシート)にしてよく、その後任意の好適な製品(例えば、単一及び多区画のパウチ、サッシェ、バッグなど)を形成してよい。
【0047】
水溶性基材の製造方法
本明細書に記載される水溶性基材10の製造方法の多数の非限定的な実施形態が存在する。
【0048】
一実施形態では、本方法は、先に形成された水溶性基材10を供給する工程、並びに、先に形成された水溶性基材10の表面12、14の少なくとも1つにコーティング20を塗布する工程を含む。
【0049】
コーティング20は、多数の異なる手法で、先に形成された水溶性基材10に塗布することができる。1つの非限定的な実施形態では、コーティング20は、先に形成された水溶性基材10の表面12、14の少なくとも1つに、粒子又は粉末の形態で塗布される。好ましくは、粒子又は粉末は、ジェットを介して、又は静電的に水溶性基材10に塗布される。ジェットの高速のために、一部の粒子/粉末は基材に埋め込まれ、それによって結合剤を使用する必要が減少、又は解消されさえする。同様に、粒子又は粉末が静電的に塗布されるとき、一般に結合剤は必要でない。それでもなお、結合剤を使用してよい。粒子又は粉末を塗布する前に、結合剤が水溶性基材10に最初に塗布されてもよい。あるいは、別の方法としては、結合剤は、粒子又は粉末と混合されてもよく、その後、混合物は水溶性基材10に加えられる。
【0050】
本発明の別の非限定的な実施形態では、コーティング20は、水溶性基材10の表面12、14の少なくとも1つに塗布される溶液の形態で提供され、乾燥させるか、又は乾燥プロセスを施される。溶液は、スプレー、ナイフ、ロッド、キス、スロット、塗装、印刷及びこれらの混合などの任意のコーティング方法によってフィルム上に塗布することができる。本明細書に用いるには、印刷が好ましい。印刷は、よく確立された経済的なプロセスである。印刷は通常、インクと染料で行われ、基材に模様と色を付与するために使用されるが、本発明の場合では、印刷は水溶性基材の上により少ない水溶性の材料を付着させるために使用される。あらゆる種類の印刷方法を使用することができ、輪転グラビア、石版印刷、フレキソ印刷、ポーラス及びスクリーン印刷、インクジェット印刷、凸版印刷、タンポグラフィー、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0051】
これらの実施形態はまた、先に形成された水溶性基材10にコーティング20を塗布する前に、水溶性基材10の表面12、14の少なくとも1つの少なくとも一部を湿潤させる工程を含んでもよい。水溶性基材10の表面12、14のうちの少なくとも1つの湿潤を使用して、基材10の表面12、14の外部を少なくとも部分的に(つまり、基材の厚さの途中まで)溶解又は可溶化してよい。コーティングを基材に部分的に埋め込むために、水溶性基材10を任意の好適な深さに少なくとも部分的に可溶化してよい。好適な深さとしては、基材全体の厚さ16の約1%〜約40%又は約45%、約1%〜約30%、約1%〜約20%、約1%〜約15%、あるいは約1%〜約10%が挙げられるが、これらに限定されない。次いで、水溶性のより低い材料20が、基材10の表面12、14のうちの少なくとも1つの部分的に溶解された箇所に塗布される。これにより、コーティング20が基材10の表面12、14の外側部分に埋め込まれ、基材10のより恒久的な部分となることが可能になる。次に、コーティング20が埋め込まれた、基材10の湿潤した表面12、14を、乾燥させる。本方法のそのような実施形態はまた、基材10の表面を拭う、又はダスティングすることなどによって、水溶性基材10が乾燥した後、その表面上に残っているコーティング20の遊離分又は過剰分の少なくとも一部を除去する工程を含んでもよい。
【0052】
別の実施形態では、コーティング20は、基材10が製品の形に製造された後に、水溶性基材10に加えることができる。例えば、水溶性基材10が、組成物を収容する水溶性パウチを形成するのに使用される場合、水溶性パウチの表面の少なくとも一部の上で基材10にコーティング20を加えることができる。
【0053】
本方法の別の非限定的な実施形態では、コーティング20は、複数の塗布工程で塗布される。コーティング20の第1層は、上記方法のいずれかに従って水溶性基材10に塗布され、所望により乾燥させる。続いて、所望のコーティング厚さが得られるまで、1つ以上の追加のコーティング層が加えられてもよい(それぞれ所望により乾燥工程を含む)。このように、比較的厚いコーティングを薄い水溶性基材上に作製することができる。
【0054】
本方法の別の非限定的な実施形態では、コーティング層は別個に形成されてよく、その後、水溶性基材の表面にコーティング層として塗布される。
【0055】
水溶性パウチの製造方法
本明細書に記載される水溶性基材10から、水溶性基材10が包装材料として用いられるものが挙げられるがこれらに限定されない物品を形成することができる。かかる物品としては、水溶性パウチ、サッシェ、及び他の容器が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
本明細書に記載される水溶性基材10を組み込む水溶性パウチ及び他のかかる容器を、当該技術分野において既知の任意の好適な方式で製造することができる。水溶性基材10は、それを最終製品に形成する前又は後のいずれかにおいて、改善された溶解耐性を備えることができる。いずれの場合も、特定の実施形態では、そのような物品を製造するとき、コーティングが塗布される基材10の表面12、14が、物品の外面を形成することが望ましい。
【0057】
水溶性パウチを製造するための多数のプロセスが存在する。これらとしては、垂直型充填シールプロセス、水平型充填シールプロセス、及び円形ドラム表面上の型内でのパウチ形成として当該技術分野において既知のプロセスが挙げられるが、これらに限定されない。垂直型充填シールプロセスでは、基材を折り畳むことにより垂直管を形成する。管の底末端部を封止し、開放型パウチを形成する。このパウチは、ヘッドスペースを考慮し、部分的に充填される。次いで、開放型パウチの最上部を共に封止してパウチを閉じ、次の開放型パウチを形成する。次いで、第1パウチが切断され、該プロセスを繰り返す。かかる方法で形成されたパウチは、通常は枕形状(pillow shape)を有する。水平型充填シールプロセスは、一連の型をその中に有するダイを用いる。水平型充填シールプロセスでは、基材をダイの中に設置し、これらの型内で開放型パウチを形成し、これらを次いで充填し、基材の別の層により被覆し、封止することができる。第3プロセス(円形ドラム表面上の型内でのパウチの形成)では、基材はドラムの上を循環し、ポケットを形成し、これは充填機の下を通過して開放型ポケットを充填する。充填及び封止を、ドラムにより描かれる円の最高点(最上部)において行ない、例えば典型的には、充填を回転ドラムが下向きの円運動を始める直前に、また封止をドラムがその下向きの運動を始めた直後に行う。
【0058】
開放型パウチを形成する工程を伴うプロセスのいずれにおいても、基材を初めに、熱形成、真空形成、又は両方を用いて、開放型パウチの形状に、成形又は形成することができる。熱形成は、型に加熱要素を接触させる、又は熱い空気を吹き込む、又は加熱ランプを用いて型及び/若しくは基材を加熱するような、任意の既知の方法で熱を適用することによって、型及び/又は基材を加熱することを伴う。真空形成の場合には、基材を型の中に入れるのを助けるために、真空による補助を使用する。他の実施形態では、2つの技術を組み合わせてパウチを形成することができ、例えば基材を、真空形成によって開放型パウチに形成することができ、プロセスを促進するために熱を提供することができる。次に、開放型パウチを、中に収容される組成物で充填する。
【0059】
充填された開放型パウチを次に閉鎖するが、これは任意の方法で行うことができる。水平型パウチ形成プロセスのような場合には、水溶性基材のような第2材料又は基材を開放型パウチのウェブの上方及び上に連続的に供給し、次いで第1基材と第2基材を共に封止することにより、閉鎖を行う。第2材料又は基材は、本明細書に記載される水溶性基材10を含むことができる。コーティングが上に塗布される第2の基材の表面は、パウチの外面を形成するように配向されることが望ましい場合がある。
【0060】
かかるプロセスでは、第1及び第2基材を、典型的には、型の間、したがって隣接する型の中で形成されるパウチの間の領域において、封止する。任意の方法で封止を行うことができる。封止の方法としては、熱封止、溶媒接着、及び溶媒又は湿潤封止が挙げられる。封止されたパウチのウェブを、次に、切断装置により切断することができるが、この切断装置は、ウェブ中のパウチを、別個のパウチに互いに切り離す。水溶性パウチを形成するプロセスは、米国特許出願第09/994,533号、米国特許出願公開第2002/0169092 A1号(カトリン(Catlin)らの名前により公開)に更に記載されている。
【0061】
製造物品
図4に示されるように、本発明は、製品組成物40と、製品組成物を保持するためのパウチ、サッシェ、カプセル、バッグなどのような容器30に形成されてもよい水溶性基材10とを含む物品も含む。コーティング20が塗布された水溶性基材10の表面は、容器30の外面を形成するのに使用されてもよい。水溶性基材10は、製品組成物40の単位用量を提供する、容器30の少なくとも一部を形成し得る。
【0062】
簡略化のため、本明細書において関心のある物品は、水溶性パウチの観点で記載されるが、本明細書における論議はまた他の種類の容器にも当てはまることが理解されるべきである。
【0063】
前述の方法により形成されたパウチ30は、水溶性パウチ30の水への浸漬によるような、水溶性パウチ30から組成物40を放出することが望まれるまで、その中に収容される組成物40を保持するために好適な任意の形態及び形状であることができる。パウチ30は、1つの区画又は2つ若しくはそれ以上の区画を含むことができる(つまり、パウチは多区画パウチであることができる)。1つの実施形態では、水溶性パウチ30は、ほぼ重なり合う関係にある2つ又はそれ以上の区画を有してよく、パウチ30は、上方及び下方のほぼ反対側にある外壁、パウチ30の側面を形成するスカート様の側壁、並びに異なる区画を互いに分離する1つ以上の内部隔壁を含む。パウチ30内に収容される組成物40が異なる形態又は構成成分を含む場合、組成物40の異なる構成成分は、水溶性パウチ30の異なる区画内に収容し得て、水溶性材料の障壁により互いに分離し得る。
【0064】
パウチ又は他の容器30は、洗濯洗剤組成物、自動食器洗い用洗剤組成物、硬質表面クリーナー、染み除去剤、布地強化剤及び/又は柔軟仕上げ剤、食品及び飲料、並びに、少量の水との接触が、早過ぎるパウチの溶解、望ましくないパウチの漏れ、及び/又は望ましくないパウチ間の粘着を生じさせる可能性がある、新しい製品形態として、あるいはその中に使用するための、1つ以上の組成物40の単位用量を含有してもよい。パウチ30内の組成物40は、液体、液体ゲル、ゲル、ペースト、クリーム、固体、顆粒、粉末などが挙げられるが、それらに限定されないいかなる好適な形態であることもできる。多区画パウチ30の異なる区画を用いて、適合性のない成分を分離することができる。例えば、漂白剤と酵素を別の区画内に分離することが望ましい場合がある。多区画の実施形態の他の形態としては、液体含有区画と組み合わせた粉末含有区画を挙げることができる。多区画水溶性パウチの追加の実施例は、米国特許第6,670,314 B2号(スミス(Smith)ら)に開示されている。
【0065】
水溶性パウチ30は、いかなる好適な水溶液(温水又は冷水など)中に投入されてもよく、そうするとすぐに水溶性パウチ30を形成している水溶性基材材料10は溶解して、パウチの内容物を放出する。
【0066】
本明細書に記載される水溶性基材10はまた、コーティング製品及び他の物品に使用できる。そのような製品の非限定的な例は、洗濯洗剤タブレット又は自動食器洗浄用洗剤タブレットである。他の例には、少量の水との接触が早過ぎるパウチの溶解、望ましくない漏洩及び/又は望ましくない粘着を生み出す可能性がある食品及び飲料の部類におけるコーティング製品が挙げられる。
【実施例】
【0067】
7〜8のpHの水道水の存在下で水溶性/分散性基材の溶解を誘発するpH誘発型コーティングを使用する例が以下に記載される。
3.0のpHにおいて溶解するSQXゲル(SQXgel)(商標)(マクロメド社(MacroMed)(ユタ州サンディ(Sandy))により供給)などのpH誘発型コーティングが、水溶性基材にまず塗布される。次に、酸性材料(クエン酸など)の小さな分離性領域(点など)がpH誘発型コーティングされた基材の上に塗布される。酸性材料の塗布の際の少ない量、及び迅速な乾燥により、pH誘発型コーティングは実質的に可溶化/崩解しない。耐水コーティング(例えば、タルク)の第3層が基材の上に塗布されて、酸性材料及びpH誘発型コーティングの両方を被覆する。少量の水の存在下(濡れた手、雨滴、こぼれた水との偶発的な接触)で、コーティングされた基材は可溶化/崩解しない。槽いっぱいの6〜7のpHの水道水に必要時間にわたって浸漬された場合(消費者用途で使用する際など)、最も外側の耐水コーティング層が可溶化する。次に、水と接触している酸性材料は、コーティングの残部又はその下にある水溶性基材が溶解するのを誘発する、局部的な低pH(2.0〜2.5のpH)領域を基材上に作る。
【0068】
本明細書で開示した寸法及び値は、列挙した厳密な数値に狭義に限定されるものとして解釈されるべきではない。それよりむしろ、特に指定されない限り、こうした寸法はそれぞれ、列挙された値とその値周辺の機能的に同等の範囲との両方を意味するものとする。例えば、「40mm」として開示した寸法は、「約40mm」を意味することを意図したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面(12)及び前記第1の表面(12)の反対側の第2の表面(14)を有し、前記第1の表面(12)及び第2の表面(14)のうちの少なくとも1つに塗布されたコーティング(20)を有する水溶性基材(10)であって、前記コーティング(20)が、(A)6〜7のpHにおいて水溶性である酸性材料を含む分離性領域(25)、及び、(B)6未満のpHにおいて水溶性であるpH感受性材料を含むことを特徴とする、水溶性基材(10)。
【請求項2】
第1の表面(12)及び前記第1の表面(12)の反対側の第2の表面(14)を有し、前記第1の表面(12)及び第2の表面(14)のうちの少なくとも1つに塗布されたコーティング(20)を有する水溶性基材(10)であって、前記コーティング(20)が、(A)6〜7のpHにおいて水溶性であるアルカリ性材料を含む分離性領域(25)、及び、(B)7より大きいpHにおいて水溶性であるpH感受性材料を含むことを特徴とする、水溶性基材(10)。
【請求項3】
前記コーティング(20)が1〜5.9のpHにおいて水溶性である、請求項1に記載の水溶性基材(10)。
【請求項4】
前記コーティング(20)が7.5〜15のpHにおいて水溶性である、請求項2に記載の水溶性基材(10)。
【請求項5】
前記酸性基材が有機酸、無機酸、酸前駆体、アセテート又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の水溶性基材(10)。
【請求項6】
前記アルカリ性材料が、弱酸と強塩基により形成される塩、弱酸と塩基性のpKaを有する弱塩基により形成される塩、炭酸塩及び重炭酸塩、金属水酸化物、アンモニア及びアミン、モノエタノールアミン、金属酸化物、ピリジン、これらの塩並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項2に記載の水溶性基材(10)。
【請求項7】
前記分離性領域(25)が、前記コーティング(20)内、前記コーティング(20)上、前記コーティング(20)と前記少なくとも1つの表面(12、14)との間、前記水溶性基材(10)内、前記コーティング(20)が塗布された表面の反対側の前記水溶性基材(10)の表面、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される部位で形成される、請求項1又は2に記載の水溶性基材(10)。
【請求項8】
前記分離性領域(25)及び前記pH感受性材料が、前記水溶性基材(10)の20重量%未満に相当する、請求項1又は2に記載の水溶性基材(10)。
【請求項9】
前記コーティング(20)が塗布された前記第1の表面(12)及び第2の表面(14)の少なくとも1つが、外側表面を形成する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の前記水溶性基材(10)を備えた物品(30)。
【請求項10】
前記水溶性基材(10)が、製品組成物を含む容器の少なくとも一部を形成する、請求項9に記載の物品(30)。
【請求項11】
水性環境に浸漬される前は溶解耐性を有する水溶性基材(10)を製造する方法であって、該方法は、前記水溶性基材(10)の少なくとも1つの表面にコーティング(20)を塗布する工程を含み、前記コーティング(20)が、6〜7のpHにおいて水溶性である酸性材料を含む分離性領域(25)及び(B)6未満のpHにおいて水溶性であるpH感受性材料を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
水性環境に浸漬される前は溶解耐性を有する水溶性基材(10)を製造する方法であって、前記水溶性基材(10)の少なくとも1つの表面にコーティング(20)を塗布する工程を含み、前記コーティング(20)が、6〜7のpHにおいて水溶性であるアルカリ性材料を含む分離性領域(25)及び(B)7より大きいpHにおいて水溶性であるpH感受性材料を含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−507507(P2010−507507A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533989(P2009−533989)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際出願番号】PCT/IB2007/052647
【国際公開番号】WO2008/053380
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】