説明

水中の重金属イオンを検出する方法及び装置

【課題】本発明は水中の重金属イオンを検出する方法及び装置について開示したものである。
【解決手段】当該方法は、以下のステップを含むものである。(a)検出用材料を提供するステップ、上記検出用材料は親水層を備え、上記親水層の少なくとも一部は疎水層によって覆われ、上記疎水層は長鎖チオール、長鎖脂肪酸及びそれらの組み合わせから選択される長鎖化合物によって形成され、上記疎水層によって覆われた領域を検出区域とし、上記検出区域の表面と水との初期接触角は約120°以上であり、(b)上記検出用材料の検出区域と検出対象水溶液とを接触させるステップ、(c)検出対象水溶液と接触した後の上記検出用材料の検出区域の表面に疎水性―親水性変化が起きているかを判断するステップ、及び(d)上記判断に基づき検出対象水溶液中において重金属イオンが存在するかを判断するステップ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水中の重金属イオンを検出する方法及び装置に係るものである。具体的には、本発明は水溶液中における鉛(Pb)、水銀(Hg)、カドミウム(Cd)またはその他の種類の重金属イオンを検出用材料を用いて検出する方法、及び当該方法に基づいて水中の重金属イオンを検出する装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
一定の濃度の重金属イオンは重金属中毒を引き起こし、重金属中毒は人体の健康を損ね、または人体に対して毒害を与える。例えば神経系統の機能を乱し、血液成分を改変させ、心血管疾病を引き起こすなどが考えられる。近年では、重金属汚染を鑑定するための分析方法及び分離技術がいくつか開発されている。
【0003】
従来技術において、微量または痕跡量の重金属イオンを定量する様々な方法が使われており、これらの方法としては、例えば、原子吸光分析法、誘導結合プラズマ質量分析法、分光光度法(例えば、重金属―ジチゾンのキレート効果によるもの)及び電気化学法(例えばアノードストリッピング分析)が挙げられる。しかしながら、これらの方法の大半は、例えば、高価な機器、実験室装置、高い操作コストを必要とする及び/または作業者に熟練した分析スキルを要求するなど、使用の際には制限を受けることになる。
【0004】
ストライプ試験紙法は現時点でのもっとも簡単且つ経済的な、水溶液中の重金属イオンを半定量的に検出する方法の一つである。その原理は、重金属顕色剤(例えばジチゾンなど)は異なる種類の重金属イオンと配位化合物を形成し、異なる色を示し、且つ色の濃さの変化の度合は重金属イオンの濃度と関連するものである。例えばジチゾン法に基づくストライプ試験紙は半定量的にCd2+(本明細書においては「Cd(II)」とも言う)、Pb2+(本明細書においては「Pb(II)」とも言う)及びHg2+(「本明細書においてHg(II)とも言う)などを検出することができる。しかしながら、重金属顕色剤は重金属イオンとの間にキレート反応を起こすだけではなく、その他のイオン、例えばCa2+(「本明細書においてCa(II)とも言う」)、Mg2+(「本明細書においてMg(II)とも言う」)またはFe3+/Fe2+(「本明細書においてFe(III)/Fe(II)とも言う」)などの金属イオンも重金属顕色剤と配位反応を起こす可能性がある。よって、Cd(II)、Pb(II)及びHg(II)などの重金属イオンを検出する際には、多種類の隠蔽剤を使用してジチゾンと系中の非重金属イオンとの間の反応を防止する必要があり、実験操作の複雑さを増すことになる。さらに、これらの隠蔽剤のいくつか(例えばシアン化カリウム)は劇毒化学薬品である。
【0005】
よって、実際においては、効果の優れた検出システムの開発が切実に望まれている。この検出システムは感度と信頼性に優れ、簡単で便利であり、経済的で実用的であり、且つ、該システムは水環境においてよく見られる重金属イオンのオンサイト検出に適したものであるべきである。従来技術よりも安全且つ簡単に、水溶液中における重金属イオンを検出するために用いる新規な方法または材料の発展が切実に望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は水溶液サンプル中における重金属イオンを検出できる、低コストで簡単、且つ安全な検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は水溶液中における重金属イオンを検出する方法を提供した。当該方法には、以下のステップが含まれている。
(a)検出用材料を提供するステップ、上記検出用材料は親水層を備え、上記親水層の少なくとも一部は疎水層によって覆われ、上記疎水層は長鎖チオール、長鎖脂肪酸及びそれらの組み合わせから選択される長鎖化合物によって形成され、上記疎水層によって覆われた区域を検出区域とし、上記検出区域の表面と水との初期接触角は約120°以上であり、
(b)上記検出用材料の検出区域と検出対象水溶液とを接触させるステップ、
(c)検出対象水溶液と接触した後の上記検出用材料の検出区域の表面に、疎水性―親水性変化が起きているかを判断するステップ、及び
(d)上記判断に基づき検出対象水溶液中において重金属イオンが存在するかを判断するステップ。
【0008】
本発明の方法によれば、複雑な前処理を行わなくても、多種類の重金属イオンを検出することが可能である。上記重金属イオンはZn2+、Cu2+(本明細書においては「Cu(II)」とも言う)、Cd2+、Pb2+、Ag+ 、Hg2+及びHg2 2+(本明細書においては「Hg2 (II)」とも言う)を含むが、これらに限定されない。特に、人体に対して危害の大きい通常の重金属イオン、例えば、鉛(Pb)、水銀(Hg)、カドミウム(Cd)のイオンを検出できる。15分以内に、Hg(II)(最小検出限界は少なくとも約1×10-7M)、Hg2 (II)(最小検出限界は少なくとも約1×10-7M)、Pb(II)(最小検出限界は少なくとも約1×10-6M)、Cd(II)(最小検出限界は少なくとも約1×10-6M)、Cu(II)(最小検出限界は少なくとも約1×10- 5 M)Zn(II)(最小検出限界は少なくとも約1×10-5M)を検出でき、また、数種類の重金属イオン(全体濃度≧〜1×10-6M)に対し、複雑な前処理を行うことなく同時に検出することができる。さらに、水溶液中においてK+ (本明細書においてはK(I)ともいう)、Na+ (本明細書においてはNa(I)ともいう)、Mg(II)、Ca(II)のような非重金属イオンが存在する場合でも検出可能である。
【0009】
また、本発明は水溶液中における重金属イオンを検出する装置を提供した。上記装置は本体と検出用材料とを備え、上記検出用材料は親水層を備え、上記親水層の少なくとも一部は疎水層によって覆われ、上記疎水層は長鎖チオール、長鎖脂肪酸及びそれらの組み合わせから選択される長鎖化合物によって形成され、上記疎水層によって覆われた区域を検出区域とし、上記検出区域の表面と水との初期接触角は約120°以上であり、
上記検出用材料の検出区域は上記本体の外部に露出することができ、上記水溶液と接触するために用いられる。
【0010】
また、本発明は検出ユニットを提供した。上記検出ユニットは、本発明の装置と、着色剤溶液が入っている容器とを含むものである。
【0011】
本発明はさらに、水溶液中の重金属イオンの検出における検出用材料の応用を提供した。上記検出用材料は親水層を備え、上記親水層の少なくとも一部は疎水層によって覆われ、上記疎水層は長鎖チオール、長鎖脂肪酸及びそれらの組み合わせから選択される長鎖化合物によって形成され、上記疎水層によって覆われた区域を検出区域とし、上記検出区域の表面と水との初期接触角は約120°以上である。
【0012】
よって、本出願は以下のものを含む。
1.水溶液中の重金属イオンを検出する方法であって、
(a)検出用材料を提供するステップ、上記検出用材料は親水層を備え、上記親水層の少なくとも一部は疎水層によって覆われ、上記疎水層は長鎖チオール、長鎖脂肪酸及びそれらの組み合わせから選択される長鎖化合物によって形成され、上記疎水層によって覆われた区域を検出区域とし、上記検出区域の表面と水との初期接触角は約120°以上であり、
(b)上記検出用材料の検出区域と検出対象水溶液とを接触させるステップ、
(c)検出対象水溶液と接触した後の上記検出用材料の検出区域の表面に、疎水性―親水性変化が起きているかを判断するステップ、及び
(d)上記判断に基づき検出対象水溶液中において重金属イオンが存在するかを判断するステップ、
を備える、水溶液中の重金属イオンを検出する方法。
2.上記親水層はナノ材料層を含む、1に記載の方法。
3.上記親水層は金属酸化物によって形成され、好ましくは酸化亜鉛によって形成されている、1または2に記載の方法。
4.上記検出用材料はさらに基材を備え、上記基材の少なくとも一部は上記親水層によって覆われ、好ましくは上記基材の全部が上記親水層によって覆われている、1〜3のいずれかに記載の方法。
5.上記基材は導電基材である、4に記載の方法。
6.上記親水層の全部が上記疎水層によって覆われている、1〜5のいずれかに記載の方法。
7.上記検出用材料は金属基材と、上記金属基材の少なくとも一部を覆っている親水層を含むものであり、上記親水層の少なくとも一部は疎水層によって覆われ、上記親水層は金属酸化物によって形成され、上記疎水層は長鎖チオール、長鎖脂肪酸及びそれらの組み合わせから選択される長鎖化合物によって形成され、上記疎水層によって覆われた区域を検出区域とし、上記検出区域の表面と水との初期接触角は約120°以上である、1に記載の方法。
8.上記金属基材は金属亜鉛基材である、7に記載の方法。
9.上記金属酸化物は酸化亜鉛である、7または8に記載の方法。
10.上記親水層の全部が上記疎水層によって覆われている、7〜9のいずれかに記載の方法。
11.上記金属基材の全部が上記親水層によって覆われている、7〜10のいずれかに記載の方法。
12.上記検出区域の表面と水との初期接触角は約150°以上である、1〜11のいずれかに記載の方法。
13.上記長鎖化合物は、8−20個の炭素原子を有する長鎖チオールから選択される一種類または複数種類である、1〜12のいずれかに記載の方法。
14.上記長鎖化合物は、8−20個の炭素原子を有する長鎖n−アルキルチオールから選択される一種類または複数種類である、1〜13のいずれかに記載の方法。
15.上記長鎖化合物は、1−オクタンチオール、1−ドデカンチオール、1−ヘキサデカンチオール、1−オクタデカンチオールから選択される一種類または複数種類である、1〜14のいずれかに記載の方法。
16.上記方法は、さらにステップ(b)を行う前に及び/またはステップ(b)を行う間において、検出対象水溶液中に可溶化剤を添加する、1〜15のいずれかに記載の方法。
17.上記可溶化剤は、水溶性アルコールを含む、16に記載の方法。
18.上記可溶化剤は、メタノール、エタノール及びプロパノールから選択される一種類または複数種類である、16に記載の方法。
19.さらに、上記ステップ(b)を行う間において、上記検出用材料に対して電圧を印加して処理を行い、上記検出用材料は導電性を有する、1〜18のいずれかに記載の方法。
20.検出対象水溶液と接触した後の上記検出材料の検出区域を着色剤溶液中に浸し、上記検出区域の表面に色の変化が現れるかを観測することによりステップ(c)を行う、1〜19のいずれかに記載の方法。
21.上記重金属イオンは、Zn2+、Cu2+、Cd2+、Pb2+、Ag+ 、Hg2+及びHg2 2+から選択される一種類または複数種類を含む、1〜20のいずれかに記載の方法。
22.水溶液中の重金属イオンを検出する装置であって、本体と検出用材料とを備え、上記検出用材料は親水層を備え、上記親水層の少なくとも一部は疎水層によって覆われ、上記疎水層は長鎖チオール、長鎖脂肪酸及びそれらの組み合わせから選択される長鎖化合物によって形成され、上記疎水層によって覆われた区域を検出区域とし、上記検出区域の表面と水との初期接触角は約120°以上であり、上記検出用材料の検出区域は上記本体の外部に露出することができ、上記水溶液と接触するために用いられる、水溶液中の重金属イオンを検出する装置。
23.上記検出用材料は金属基材と、上記金属基材の少なくとも一部を覆う親水層とを備え、上記親水層の少なくとも一部は疎水層によって覆われ、上記親水層は金属酸化物によって形成され、上記疎水層は長鎖チオール、長鎖脂肪酸及びそれらの組み合わせから選択される長鎖化合物によって形成され、上記疎水層によって覆われた区域を検出区域とし、上記検出区域の表面と水との初期接触角は約120°以上である、22に記載の装置。
24.上記検出区域の表面と水との初期接触角は約150°以上である、22または23に記載の装置。
25.22〜24のいずれかに記載の装置と、着色剤溶液が入っている容器とを含む、検出ユニット。
26.電気分解装置及び/または可溶化剤が入っている容器を、さらに備える、25に記載の検出ユニット。
27.水溶液中の重金属イオンの検出における検出用材料の応用であって、上記検出用材料は親水層を備え、上記親水層の少なくとも一部は疎水層によって覆われ、上記疎水層は長鎖チオール、長鎖脂肪酸及びそれらの組み合わせから選択される長鎖化合物によって形成され、上記疎水層によって覆われた区域を検出区域とし、上記検出区域の表面と水との初期接触角は約120°以上である、検出用材料の応用。
【発明の効果】
【0013】
本発明はオンサイトで水中の重金属イオンを検出できる低コスト、簡単且つ実用的なルートを提供した。下文においては具体的な実施形態及び図面を参照し、本発明の上記特徴及びその他の特徴について説明を行う。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】超疎水性亜鉛片を用いてPb(II)またはその他の種類の重金属イオンを検出する原理を示している。
【図2】亜鉛片におけるZnOナノロッドのSEM画像とDCT−ZnO−ZnのXPSスペクトルである。
【図3】亜鉛片、酸化処理された亜鉛片、酸化およびそれに続く超疎水処理とがされた亜鉛片、及び異なる金属イオン水溶液によって処理された超疎水性亜鉛片の表面上の水滴の様子を捉えた写真である。(a)は純亜鉛片であり、(b)は酸化された亜鉛片、ZnO−Zn(c)はDCTが自己組織化したZnO−Zn、(d)は純水で60分以上処理されたDCT−ZnO−Zn、(e)は濃度5×10-5MのKCl水溶液で60分以上処理したDCT−ZnO−Zn、及び(f)は濃度1×10-5MのPb(NO3 2 水溶液で60分以上処理したDCT−ZnO−Znである。
【図4】DCT−ZnO−ZnのXPSスペクトルの硫黄元素区域の画像であり、(a)は重金属イオンで処理されていないDCT−ZnO−Zn片のXPSスペクトルの硫黄元素区域の画像であり、(b)はPb(II)で処理された後のDCT−ZnO−Zn片のXPSスペクトルの硫黄元素区域の画像である。
【図5】適切な着色剤の補助のもとで、異なる検出条件下において、超疎水性亜鉛片の色の変化に基づいて水中のPb(II)について検出を行った結果である。
【図6】超疎水性表面の疎水性―親水性変化と金属イオンの種類及び濃度が関連していることを説明した図であり、Pb(II)、Cu(II)、Zn(II)、Ca(II)及びMg(II)に対する超疎水性亜鉛片の応答能力は、Pb(II)>Cu(II)、Zn(II)>Ca(II)、 Mg(II)の順である。
【図7】Mg(II)存在下において、超疎水性亜鉛片でPb(II)を検出した結果を示したイメージ図である。
【図8】Mg(II)存在下において、超疎水性亜鉛片でCd(II)を検出した結果を示したイメージ図である。
【図9】Mg(II)存在下において、超疎水性亜鉛片でHg(II)を検出した結果を示したイメージ図である。
【図10】Mg(II)存在下において、超疎水性亜鉛片でHg2 (II)を検出した結果を示したイメージ図である。
【図11】Mg(II)存在下において、超疎水性亜鉛片でCd(II)とPb(II)とを同時に検出した結果を示したイメージ図である。
【図12】Mg(II)存在下において、超疎水性亜鉛片でHg(II)とPb(II)とを同時に検出した結果を示したイメージ図である。
【図13】一つの実施形態における検出用材料のイメージ図である。
【図14】もう一つの実施形態における検出用材料のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
前後の文章で特に明記しない限り、本文中の名詞はすべて単数および複数のいずれにも限らない。
【0016】
同じ特徴または同じ組成を示すすべての範囲の終端点は、それぞれ独立に組み合わせることができ、また終端点を含むことができる。本明細書中において用語「第一」、「第二」は順序、数量または重要性のいずれをも示すものではなく、単に一つの要素ともう一つの要素を区別するために用いられる。
【0017】
<水溶液中における重金属イオンを検出する方法>
本発明は一つの局面においては、水溶液中における重金属イオンを検出する方法に係るものであるが、当該方法は以下のステップを含む。
(a)検出用材料を提供するステップ、上記検出用材料は親水層を備え、上記親水層の少なくとも一部は疎水層によって覆われ、上記疎水層は長鎖チオール、長鎖脂肪酸及びそれらの組み合わせから選択される長鎖化合物によって形成され、上記疎水層によって覆われた区域を検出区域とし、上記検出区域の表面と水との初期接触角は約120°以上であり、
(b)上記検出用材料の検出区域と検出対象水溶液とを接触させるステップ、
(c)検出対象水溶液と接触した後の上記検出用材料の検出区域の表面に、疎水性―親水性変化が起きているかを判断するステップ、及び
(d)上記判断に基づき検出対象水溶液中において重金属イオンが存在するかを判断するステップ。
【0018】
本願の方法は検出用材料の検出区域と検出対象水溶液中における重金属イオンとの間の相互作用に基づくものであり、該検出区域表面において疎水性―親水性変化を起こし、この変化を検出することによって行われる。以下において本願の方法を詳細に説明する。
【0019】
<ステップ(a)検出用材料を提供する>
固体材料の疎水性または親水性は当該材料表面に対する液体の浸潤性を示すものであり、水との接触角CA(contact angle,CA)によって評価することができる。通常、接触角の範囲は0°〜180°の間である。一般的には、水との接触角が0°〜90°の表面を親水性表面、水との接触角が90°を超える表面を疎水表面と呼ぶ。水との接触角が150°を越える表面を超疎水性表面と呼ぶ。
【0020】
本願の検出用材料は親水層を含み、上記親水層の少なくとも一部は疎水層によって覆われ、上記疎水層によって覆われた区域を検出区域とし、上記検出区域の表面と水との初期接触角は約120°以上である。本願の検出用材料において、該検出区域は疎水層によって覆われた区域であり、疎水層によって覆われた親水層と、当該親水層を覆っている疎水層を含む。当該疎水層は当該検出区域の表面であり、検出時において検出対象水溶液と接触させるためのものである。本明細書において使用する用語「検出区域の表面と水との初期接触角」とは、本願の方法によって検出を行う前の、当該検出区域の疎水性表面と水との接触角を意味している。
【0021】
本願の方法を実施する際、当該検出区域の疎水層は水溶液中に存在する重金属イオンによって破壊され、これによって該検出区域において疎水性―親水性変化を引き起こす。当該検出区域において疎水性―親水性変化が検出されたのであれば、検出対象水溶液中において一定濃度の重金属イオンが存在することを確認することができる。逆に、疎水性―親水性変化が検出されないのであれば、水溶液中に重金属イオンが存在しないか、または重金属イオンの濃度が非常に低い(たとえば、最小検出限界を下回る)ことを示している。
【0022】
図13は一つの実施形態における検出用材料のイメージ図である。図13に示すように、検出用材料1は親水層11を含み、当該親水層11の少なくとも一部が疎水層13によって覆われ、検出区域12は疎水層13及び当該疎水層13によって覆われた親水層区域を含み、疎水層13は検出区域12の表面である。
【0023】
本願検出用材料の親水層は少なくともその一部が疎水層によって覆われている。本明細書中に使用されている用語「少なくとも一部が〜によって覆われている」は「一部が〜よって覆われている」及び「全部が〜によって覆われている」を含むものである。
【0024】
一つの実施形態において、本願の検出用材料において、親水層の一部が疎水層によって覆われている。
【0025】
もう一つの実施形態において、親水層の全部が疎水層によって覆われている。本明細書において使用されている用語「親水層の全部が疎水層によって覆われている」とは、「検出用材料の親水層の少なくとも一つの面の全部が疎水層によって覆われている」ことを含むことができ、この際親水層のすべてを覆う少なくとも一つの面の疎水層は検出区域の表面となる。本明細書において使用している用語「親水層の全部が疎水層によって覆われている」はさらに「検出用材料の親水層のすべての面がいずれも全部疎水層によって覆われている」を含むことができる、この際には親水層を覆っているすべての面の疎水層が検出区域の表面となる。
【0026】
一つの実施形態において、本願の検出用材料の親水層はナノ材料層を含む。本明細書において使用する用語「ナノ材料層」は少なくとも一つのサイズがnm級範囲の材料によって形成された層である。当該ナノ材料の少なくとも一つのサイズは数nmから数百nmである。当該ナノ材料層はナノワイヤーまたはナノロッドなどによって形成されるアレイ(ナノアレイ)とすることができ、中においてナノワイヤーまたはナノロッドの直径は約2nm〜500nmであり、好ましくは約20nm〜300nmであり、さらに好ましくは約30nm〜200nmである。または、当該ナノ材料層はナノ粒子によって形成した層とすることができる。得られたナノ材料層は親水的であれば、本分野のすでに知られている任意のナノ材料によって当該ナノ材料層を形成することができる。本願に使用できるナノ材料の実例は、ナノ金属酸化物、親水性金属材料などを含むが、これらに限定されない。
【0027】
一つの実施形態において、親水層は金属酸化物によって形成する。当該酸化物によって形成する層は親水的であれば、本分野においてすでに知られている任意の金属酸化物を選択することができる。金属酸化物は、単一金属の酸化物及び金属合金の酸化物を含むことができる。一つの実施形態において、単一の金属酸化物の実例は、酸化亜鉛、酸化銅などを含むことができるが、これらに限定されない。もう一つの実施形態において、金属合金の酸化物の実例は亜鉛―銅の酸化物などを含むが、これらに限定されない。一つの実施形態において、金属酸化物はナノ金属酸化物であり、例えば直径は約2nm〜500nmであり、好ましくは約20nm〜300nmであり、さらに好ましくは約30nm〜200nmの金属酸化物ナノワイヤーまたはナノロッドである。
【0028】
必要によって親水層の厚さを選択することが必要である。一つの実施形態において、親水層の厚さは約20nm〜20μmである。もう一つの実施形態において、当該親水層の厚さは約100nm〜10μmである。もう一つの実施形態において、当該親水層の厚さは約1μm〜5μmである。
【0029】
もう一つの実施形態において、本願の検出用材料はさらに基材を含み、上記親水層は少なくとも部分的に上記基材を覆うものである。当該基材は親水層を支持し、必要であれば、検出用材料に導電通路を提供し、当該検出用材料の製作を簡単化することができる。
【0030】
本明細書において使用する用語「基材の少なくとも一部が〜によって覆われる」とは「基材の一部が〜によって覆われる」及び「基材の全部が〜によって覆われる」を含む。
【0031】
一つの実施形態において、本願の検出用材料において、基材のみが親水層によって覆われている。
【0032】
もう一つの実施形態において、基材の全部が親水層によって覆われている。本明細書において使用している用語「基材の全部が親水層によって覆われる」は、「基材の少なくとも一つの表面の全部が親水層によって覆われる」ことを含むことができる。本明細書において使用する用語「基材の全部が親水層によって覆われる」はさらに「基材のすべての表面がいずれも親水層によって覆われる」を含むことができる。
【0033】
基材として使用できる材料は導電できる材料と導電しない材料を含む。一つに実施方式において、基材として使用できる導電性材料は導電できる金属材料及び導電できる非金属材料を含む。一つの実施形態において、導電できる非金属材料は例えば、ITO(酸化インジウムスズ)などを含むことができるが、これに限定されない。もう一つの実施形態においては、金属材料は金、銀、白金、パラジウム、銅、チタン、アルミニウム、スズ、亜鉛またはこれらの合金などを含むが、これらに限定されない。導電性基材を使用する必要がある際は、金属を基材として使用することができ、または非金属基材の表面に導電的な金属膜(例えば金膜など)を被覆し、導電性基材として使用することができる。
【0034】
もう一つの実施形態において、基材として使用できる導電しない材料とは、例えば、シリコン、石英、またはPET、テフロン、高密度ポリエチレン、有機ケイ素、フッ素含有ポリマーのような高分子材料などを使用することができる。
【0035】
本願のもう一つの好ましい実施形態において、基材は導電性材料によって製作され、以下に説明するように、通電処理を行うことによって検出過程を加速させ、または検出感度を向上させることができる。
【0036】
図14はもう一つの実施形態における検出用材料のイメージ図を示している。図14に示されているように、検出用材料2は基材24と、少なくとも当該基材24の一部を覆っている親水層21とを備え、当該親水層21の少なくとも一部が疎水層23によって覆われ、検出区域22は、疎水層23及び当該疎水層23によって覆われている親水層区域を含み、疎水層23は検出区域22の表面である。
【0037】
図13と図14は当該検出用材料が二つの検出区域(12)と(22)を備えることを示している。しかしながら、当業者は、本願の検出用材料は一つまたは複数の当該検出区域を備えることができると理解すべきである。
【0038】
一つの実施形態において、当該検出区域は一つである。当該一つの検出区域は検出用材料の端部または辺縁部に位置し、当該検出用材料の検出区域と検出対象水溶液とが接触しやすいようにする。また、要求によっては、当該一つの検出区域は検出用材料の他の部位に位置することもできる。
【0039】
もう一つの実施形態において、当該検出区域は複数個とすることができ、例えば少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、または5個以上である。検出用材料において複数個の検出区域を配置することで、一回の検出過程において、検出対象水溶液に対する複数回の検出を実現することができ、これによって検出結果の正確性を確保することができる。検出用材料において複数の検出区域を配置することで、当該検出用材料を複数回使用させることができ、検出用材料を節約することができる。様々な方式で複数個の検出区域を配置することができる。例えば、アレイ形式で複数の検出区域を配置させることができる。また、ストライプ形式で複数の検出区域を配置させることもできる。
【0040】
検出用材料の検出区域が複数個である実施形態において、各検出区域の表面と水との初期接触角は同じ、または異なるものである。例えば、各検出区域の表面と水との初期接触角は同じである(または、初期接触角の差が約10%以内であり、または約5%以内であり、または約2%以内である)。各検出区域の表面と水との初期接触角は異なるものとすることができる(例えば、初期接触角の間の差は約2%より大きい、または約5%より大きい、あるいは約10%より大きい)。あるいは、水との初期接触角の違いによって検出区域をグループ分けすることができ、グループごとの検出区域の表面と水との接触角は同じ(または、初期接触角の差が約10%以内であり、または約5%以内であり、または約2%以内である)とすることができ、異なるグループの検出区域の表面と水との初期接触角は異なるもの(例えば、初期接触角の間の差は約2%より大きい、または約5%より大きい、或いは約10%より大きい)とすることができる。需要によっては、複数個の検出区域は互いに隣り合うこともできるが、互いに一定の距離を開けることもできる。
【0041】
図13及び14において、検出用材料の検出区域(12)及び(22)は平面の四角形で例示している。しかしながら、当業者は、当該区域はその他のいかなる形状も可能であると理解すべきである。当業者は、要求によって当該検出区域の大きさ及び/または形状を決めることができ、当該検出区域の大きさ及び形状が本願方法に用いることができれば可能である。例えば、当該検出区域は四角形、正方形、円形、楕円形、短冊状、不規則形状、または曲面形状とすることができる。
【0042】
一つの実施形態において、当該検出用材料は片状部材に設計され、検出用材料は親水片状部材を備え、親水片状部材の二つの面とも少なくとも部分的に疎水層によって覆われている。よって、当該検出用材料の二つの面上において、いずれも疎水層によって覆われた区域を形成し、すなわち検出区域を形成する。
【0043】
もう一つの実施形態において、当該検出用材料は片状に設計され、当該検出用材料は基材となる片状部材及び親水層を備え、当該親水層は少なくとも部分的に(好ましくは全部が)当該基材片状部材の一つまたは複数の表面を覆う。当該親水層は少なくとも部分的に疎水層によって覆われ、これによって疎水層によって覆われている区域を形成し、即ち検出区域を検出する。
【0044】
一つの実施形態において、当該検出用材料を棒状に設計することができる。当該検出用材料は棒状の親水性材料を含み、当該棒状の親水性材料は少なくとも部分的に疎水層によって覆われている、よって、疎水層によって覆われている区域、即ち検出区域を形成する。
【0045】
もう一つの実施形態において、当該検出用材料は棒状に設計され、当該検出用材料は棒状芯材と、少なくとも部分的に上記棒状芯材を覆っている親水層を含み、上記親水層は少なくとも部分的に疎水層によって覆われ、よって、疎水層によって覆われている区域を形成し、即ち検出区域を形成する。
【0046】
本願の検出用材料は要求によっては球体、楕球体及びその他の形状、例えばくし型などに設計することができる。
【0047】
応用の便利性などの要素を考慮した場合、本願の検出用材料を片状または棒状に設計することができる。
【0048】
本願の一つの実施形態において、本願の検出用材料は基材と、少なくとも部分的に(好ましくは全部)上記基材を覆っている親水層とを含み、当該親水層は少なくとも部分的に疎水層によって覆われ(好ましくは、親水層の全部が疎水層によって覆われ)、上記疎水層によって覆われている区域を検出区域とし、上記検出区域の表面と水との初期接触角は約120°以上である。その中、当該疎水層は長鎖チオール、長鎖脂肪酸及びそれらの組み合わせから選択される長鎖化合物によって形成されている。
【0049】
一つの実施形態において、上記検出用材料は金属基材、上記金属基材を少なくとも部分的に覆っている(好ましくは全部を覆っている)親水層とを含み、上記親水層は少なくとも部分的に疎水層によって覆われ(好ましくは、当該親水層の全部が疎水層によって覆われている)、上記親水層は金属酸化物によって形成され、上記疎水層は長鎖チオール、長鎖脂肪酸及びそれらの組み合わせから選択される長鎖化合物によって形成され、上記疎水層によって覆われている区域は検出区域と呼ばれ、上記検出区域の表面と水との初期接触角は約120°以上である。好ましくは、検出区域の表面と水との初期接触角は約150°以上である。当該実施形態において、上記金属酸化物の金属は、金属基材中の金属と同じまたは異なるものである。好ましくは、当該金属酸化物は金属基材の金属の酸化物である。
【0050】
一つの実施形態において、金属酸化物によって形成された当該親水層の厚さは約20nm〜20μmであり、好ましくは約100nm〜10μmであり、さらに好ましくは約0.5μm〜5μmである。
【0051】
少なくとも部分的に基材(特に金属基材)を覆っている親水層を形成する方法は、当業者に知られている方法を使用することができ、例えばエッチング法、ゾルゲル法、テンプレート法、熱分解法、化学気相析出法、電気化学法、化学法、自己組織化法、気相輸送法、熱蒸発法などによって形成することができる。当業者は需要によって適切な方法を選択することができる。
【0052】
一つの実施形態において、酸化法によって、金属基材を少なくとも部分的に覆っている親水層を形成し、特に金属基材の全部を覆っている親水層を形成し、当該親水層は金属酸化物によって形成される。好ましくは、当該金属酸化物はナノ金属酸化物である。
【0053】
もう一つの実施形態において、化学気相析出法によって、少なくとも基材(特に金属基材)を部分的に覆っている親水層を形成する。好ましくは、この親水層は金属酸化物によって形成される。
【0054】
好ましい実施形態において、本願方法の検出用材料は金属亜鉛基材と、少なくとも部分的に上記金属亜鉛基材の表面を覆っている親水層と、上記親水層の表面を少なくとも部分的に覆っている疎水層とを備え、上記親水層は酸化亜鉛によって形成され、上記疎水層は長鎖チオール、長鎖脂肪酸及びそれらの組み合わせから選択される長鎖化合物によって形成され、上記疎水層によって覆われている区域を検出区域と呼ぶ、上記検出区域の表面と水との初期接触角は約120°以上であり、好ましくは検出区域の表面と水との初期接触角は約150°以上である。
【0055】
本願の検出用材料において、親水層を少なくとも部分的に覆っている疎水層は長鎖チオール、長鎖脂肪酸及びそれらの組み合わせから選択される長鎖化合物によって形成されている。本明細書において使用する用語「長鎖チオール」とは鎖長が約6つ以上の炭素原子を含むチオールを指している。本明細書において使用する用語「長鎖脂肪酸」は鎖長が約6つ以上の炭素原子を含む脂肪族カルボン酸を指している。
【0056】
好ましい実施形態中においては、長鎖チオールは鎖長が炭素原子約8〜20個、好ましくは炭素原子約10〜20個、さらに好ましくは炭素原子約12〜18個の長鎖チオールである。
【0057】
好ましい実施形態中においては、長鎖脂肪酸は鎖長が炭素原子約8〜20個、好ましくは炭素原子約10〜20個、さらに好ましくは炭素原子約12〜18個の長鎖脂肪酸である。
【0058】
好ましい実施形態において、上記長鎖化合物は約8〜20個の炭素原子を有し、好ましくは約10〜20個の炭素原子を有し、さらに好ましくは約12〜18個の炭素原子を有する長鎖チオール中から選択される一種または複数種類である。これは、チオールと重金属イオンの配位能力がより強く、本願方法の検出感度と検出スピードを向上させることができるからである。本願の好ましい実施形態において、該長鎖チオールは約8〜20個の炭素原子を有する長鎖n-アルキルチオールから選択される一種または複数種類であり、例えば1−オクタンチオール、1−ドデカンチオール、1−ヘキサデカンチオール及び1−オクタデカンチオールから選択することができるが、これらに限定されない。
【0059】
上記長鎖化合物によって疎水層を形成するには、自己組織化法、スピンコート法、キャスト法などの方法を使用することができ、上記長鎖化合物は長鎖チオール、長鎖脂肪酸及びそれらの組み合わせから選択されるものである。
【0060】
一つの実施形態において、自己組織法によって長鎖化合物から疎水層を形成させ、本願の検出用材料を製作する。上記長鎖化合物は長鎖チオール、長鎖脂肪酸及びこれらの組み合わせから選択されるものである。例えば、下記のように自己組織化法を実施することができる。親水層と任意の基材を備える材料(上記親水層は少なくとも上記任意の基材の表面を部分的に覆っている)を上記長鎖化合物の溶液(上記長鎖化合物は長鎖チオール、長鎖脂肪酸及びそれらの組み合わせから選択されるもの)中に浸し、一定時間保持した後、上記親水層を覆った疎水層を形成し、上記疎水層によって覆われた区域を検出区域とする。上記長鎖化合物の溶液で使用されている溶媒は本分野ですでに知られた溶媒を含み、例えばアルコール類(例えばエタノール、メタノール、プロパノール)などである。
【0061】
本願で使用している検出用材料において、上記検出区域の表面と水との初期接触角CAは約120°以上である。もう一つの実施形態において、上記検出区域の表面と水との初期接触角CAは約130°以上であり、好ましくは約140°以上である。好ましい実施形態において、上記検出区域の表面と水との初期接触角CAは約150°以上であり、このとき該検出区域は超疎水性を備えるものである。
【0062】
当業者は検出区域の必要とする表面疎水性(即ち、水との初期接触角の大きさ)から、使用する上記長鎖化合物の種類と濃度、溶媒の種類、及び自己組織化する条件を選択することができる。上記長鎖化合物は長鎖チオール、長鎖脂肪酸及びそれらの組み合わせから選択されるものである。
【0063】
一つの実施形態において、上記長鎖化合物の濃度は約0.1〜100mmol/Lである。もう一つの実施形態において,上記長鎖化合物の濃度は約0.5〜50mmol/Lである。
【0064】
一つの実施形態において、通常は室温下において自己組織化を行う。もう一つの実施形態において,当該自己組織化は1〜200時間行うものであり、例えば、5〜100時間行うものである。
【0065】
本願の検出用材料の製作は以下のステップを含むことができる。第一ステップ、親水層と任意に選択した基材とを含む材料(上記親水層は少なくとも上記任意に選択した基材の一部を覆う)を提供する、第二ステップ、上記長鎖化合物は少なくとも当該親水層の一部を覆う疎水層を形成するステップ、上記長鎖化合物は長鎖チオール、長鎖脂肪酸及びそれらの組み合わせから選択される。得られた本願の検出用材料において、上記疎水層によって覆われた区域は検出区域であって、検出区域の表面と水との初期接触角は約120°以上であり、好ましくは約150°以上である。
【0066】
一つの実施形態において、親水層と基材とを含む材料を提供する。上記親水層は少なくとも上記基材の一部を覆っている。上記のように、当業者に知られている方法によって少なくとも部分的に上記基材を覆う親水層を形成し、上記方法とは、例えばエッチング法、ゾルゲル法、テンプレート法、熱分解法、化学気相析出法、電気化学方法、化学法、自己組織化法、気相輸送法、熱蒸発法などである。一つの実施形態において、該親水層は酸化法によって金属酸化物によって形成され、好ましくは酸化亜鉛によって形成される。
【0067】
一つの実施形態において、下記のように親水層と基材とを含む材料を構築することができる。非金属基材(例えば酸化インジウムスズ(ITO)など)をZn(NO3 2 、(CH2 6 4 または尿素の混合体系中にて加熱し、非金属基材(例えば酸化インジウムスズ(ITO)など)上にZnOナノ結晶を形成し、親水性と基材とを含む材料を得る。
【0068】
該検出用材料を製造する第二のステップは、上記長鎖化合物によって当該親水層を少なくとも部分的に覆う疎水層を形成し、上記長鎖化合物は長鎖チオール、長鎖脂肪酸及びそれらの組み合わせから選択されるものである。上述のように、自己組織化によって上記疎水層を形成し、上記疎水層は上記長鎖化合物の自己組織化単層膜(SAM)であり、上記長鎖化合物は長鎖チオール、長鎖脂肪酸及びそれらの組み合わせから選択されるものである。上記長鎖化合物は約8−20個の炭素原子を有するものから選択されるものであり、好ましくは約10−20個の炭素原子を有するものであり、さらに好ましくは約12−18個の炭素原子を有する長鎖チオール中の一種または複数種類である。さらに好ましくは、上記長鎖化合物は約8−20個の炭素原子を有する一種または複数種類の長鎖アルキルチオールであり、さらに好ましくは上記長鎖化合物は1−オクタンチオール、1−ドデカンチオール、1−ヘキサデカンチオール及び1−オクタデカンチオールから選択される一種または複数種類である。
【0069】
一つの実施形態において、下記のように本願の検出用材料の(超)疎水性亜鉛片を製作することができる。
(1)亜鉛片を酸化液中に浸して酸化を行い、亜鉛片の周辺において当該亜鉛片を覆うZnO層を形成し、該ZnO層は親水的である。
(2)次に、得られた材料のZnO層を一種または多数種の上記長鎖化合物の溶液中に浸し、一種または複数種類の上記長鎖化合物の自己組織化単層膜(疎水層)を形成し、該自己組織化単層膜は(超)疎水性を示し、且つ少なくとも部分的に当該親水層(ZnO層)を覆い、上記疎水層に覆われた区域を検出区域とし、検出区域の表面と水との接触角は約120°以上であり、好ましくは約150°以上であり、これによって本願の検出用材料の(超)疎水性亜鉛片を得る。
【0070】
上記実施形態において、ステップ(1)において、「亜鉛片を酸化液に浸して酸化を行う」は、「亜鉛片の全部を酸化液に浸して酸化を行う」と「亜鉛片の一部を酸化液に浸して酸化を行う」を含む。上記亜鉛片の全部を酸化液に浸した場合、亜鉛片の全部を覆っているZnO層を得ることができる。亜鉛片の一部を酸化液に浸した場合、金属亜鉛片を部分的に覆っているZnO層を得ることができる。
【0071】
上記実施形態において、ステップ(2)において、「得られた材料のZnO層を一種または複数種類の上記長鎖化合物の溶液中に浸す」は「得られた材料のZnO層の全部を一種または複数種類の上記長鎖化合物の溶液中に浸す」または「得られた材料のZnO層の一部を一種または複数種類の上記長鎖化合物の溶液中に浸す」ことを含む。得られた材料のZnO層の全部を該溶液中に浸した際、親水層の全部を覆う疎水層を形成することができる。得られた材料のZnO層の一部を該溶液中に浸した際、親水層の一部を覆う疎水層を形成することができる。
【0072】
一つの実施形態において、上記酸化液は、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド−水混合物、ホルムアミド−水混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。もう一つの実施形態において、酸化液として0.5%〜20%(体積)のN,N−ジメチルアセトアミド―水混合物を使用し、好ましくは2%〜15%(体積)のN,N−ジメチルアセトアミド―水混合物を使用する。もう一つの実施形態において、酸化液として0.5%〜20%(体積)のホルムアミド−水混合物を使用し、好ましくは2%〜15%(体積)のホルムアミド−水混合物を使用する。当業者は要求によって適切な酸化条件を選択することができる。一つの実施形態において、20〜100℃、特に30〜80℃の温度において酸化を行う。もう一つの実施形態において、酸化を行う時間は0.5時間〜100時間、特に2時間〜50時間である。
【0073】
上記のように、上記長鎖化合物は約8〜20個の炭素原子を有する長鎖チオールから選択される一種または複数種類であり、さらに好ましくは、上記長鎖化合物は約8〜20個の炭素原子を有する長鎖n−アルキルチオールから選択される一種類または複数種類であり、さらに好ましくは、上記長鎖化合物は1−オクタンチオール、1−ドデカンチオール、1−ヘキサデカンチオール及び1−オクタデカンチオールから選択される一種または複数種類である。上記溶媒は本分野において知られている溶媒であり、例えばアルコール類(例えばエタノール、メタノール、プロパノール)などである。
【0074】
もう一つの実施形態において、適切な厚さの亜鉛片及び酸化条件(例えば酸化液の種類及び/または濃度、温度、時間など)を選択することにより、浸された亜鉛片の全部をZnOに酸化することができ、これによって親水的なZnO材料を得ることができる。次に、上記ステップ(2)を行い、得られた材料(親水的なZnO材料)の全部または一部を一種類または複数種類の長鎖化合物の溶液中に浸し、一種類または複数種類の長鎖化合物の自己組織化単層膜(疎水層)を形成し、上記自己組織化単分子層は(超)疎水性を示し、且つ少なくとも部分的該ZnO材料(親水層)の表面を覆っている。疎水層によって覆われている区域を検出区域とし、検出区域の表面と水との初期接触角は約120°以上であり、好ましくは約150°以上である。これによって本願の検出用材料の(超)疎水性亜鉛片を得ることができる。該実施方式において、得られた材料(ZnO材料)の全部を該溶液中に浸した際、親水層の全部を覆う疎水層を形成することができる。得られた材料(ZnO材料)の一部を該溶液中に浸した際、親水層の一部を覆う疎水層を形成することができる。
【0075】
もう一つの実施形態において,上記ステップ(2)を行う前に、得られた材料の表面にマスクを形成し、ZnO層(親水層)上において一個または複数個のマスクによって覆われていない区域を形成する。次にステップ(2)を行い、一種類または複数種類の長鎖化合物の溶液中に浸し、マスクによって覆われている部分は疎水層を形成せず、一個または複数個のマスクによって覆われていない区域は疎水層を形成し、これによって一個または複数個の上記検出区域を形成する。
【0076】
一つの実施形態において、長鎖化合物として1−ドデカンチオール(DCT)を使用し、超疎水性亜鉛片DCT−ZnO−Znを得ることができる。もう一つの実施形態において、該長鎖化合物として1−オクタデカンチオール(ODT)を使用し、これによって超疎水性亜鉛片ODT−ZnO−Znを得ることができる。
【0077】
一つの実施形態において、金属亜鉛棒状材を選択し、上述に従って(超)疎水性亜鉛片と同じ方式にて(超)疎水性亜鉛棒状材を製造することができる。
【0078】
好ましくは、本願の検出用材料は本願の(超)疎水性亜鉛片及び(超)疎水性亜鉛棒状材から選択されたものである。
【0079】
上記のように、当業者は要求によって適切な方式及び条件を選択し、本願の検出用材料を製作することができる。
【0080】
<ステップ(b)上記検出用材料の検出区域と検出対象水溶液とを接触させる>
図1は超疎水性亜鉛片(例えばDCT−ZnO−Zn)を用いてPb(II)またはその他の種類の重金属イオンを検出する原理を示している。超疎水性DCT−ZnO−Znを水溶液中に浸して、一定時間(例えば約60分間)静置する。図1に示すように、水溶液中にPb(II)またはその他の重金属イオン[M(n+ )、例えばCd(II)、Hg(II)など]が含まれるのであれば、重金属イオンと−SH基との間の相互作用が、ZnOと−SH基との間の相互作用より強いため、該DCTの自己組織化単層膜はZnO−Znの表面から離脱し、Pb(II)またはその他の重金属イオンM(n+ )と反応し、これによって超疎水性亜鉛片の表面が超疎水性から親水性に変わるものである。逆に、水溶液中に重金属イオンが含まれていない(または重金属イオンの濃度が低くて、例えば最小検出限界より低い)のであれば、当該表面は依然超疎水性を維持する。これによって、疎水性―親水性の変化に基づき、当該超疎水性亜鉛片DCT−ZnO−Znによって水中の重金属イオンを検出することができる。
【0081】
これによって、本願の検出用材料の検出区域と、検出対象水溶液とを接触させた場合、水溶液中に一定量の重金属イオンが存在するのであれば、該検出区域の疎水層(長鎖チオール、長鎖脂肪酸及びそれらの組み合わせから選択される長鎖化合物によって形成される)は疎水性―親水性変化を引き起こす。上記疎水性―親水性変化を検出することによって、検出対象水溶液中に重金属イオンが存在するかを判断することができる。
【0082】
一つの実施形態において、検出用材料の検出区域を検出対象水溶液中に浸して、検出用材料の検出区域と検出対象水溶液との接触を実現する。一つの実施形態において、該疎水性材料と検出対象水溶液との接触時間は約1分間〜約5時間である。もう一つの実施形態において、該疎水性材料と検出対象水溶液との接触時間は約5分間〜約3時間である。
【0083】
一つの実施形態において、本願の方法はステップ(b)の前に及び/またはステップ(b)を行う間において、検出対象水溶液中において可溶化剤を入れてもよい。及び/または、上記ステップ(b)を行う間において、上記検出用材料に対して電圧を印加して処理を行ってもよい。これによって、検出時間を短縮し、最小検出限界を小さくし、検出感度を向上させることができる。
【0084】
一つの実施形態において、本願の方法はステップ(b)の前に及び/またはステップ(b)を行う間において、検出対象水溶液中において可溶化剤を入れてもよい。検出用材料の検出区域と検出対象水溶液とが接触する前に、水溶液中に可溶化剤を入れることもできる。あるいは、検出用材料の検出区域と検出対象水溶液とが接触している間において、検出対象水溶液に可溶化剤を添加することもできる。
【0085】
一つの実施形態において、水溶性可溶化剤は例えば水溶性アルコール類、例えばC1 −C4 脂肪族アルコール(例えばメタノール、エタノール、プロパノールなど)を含む。水溶性可溶化剤を単独で使用し、または水溶性可溶化剤の組み合わせを使用することができる。理論によって束縛されないのであれば、検出対象水溶液中において水溶性可溶化剤を添加することによって、上記検出区域の疎水層を形成する上記長鎖化合物(長鎖チオール、長鎖脂肪酸及びそれらの組み合わせから選択されるもの)の−SH基あるいは−OH基と重金属イオンとの遭遇する確率を顕著に増加させ、これによって応答速度を高め、検出感度を向上させる。該水溶性可溶化剤の種類及び添加量は、当該検出用材料の検出区域の表面に疎水性―親水性の変化を引き起こすのに足りない量とすべきである。一つの実施形態において、検出対象水溶液の体積に対して、水溶性可溶化剤の添加量は約10%(体積)以下であり、好ましくは約1%〜8%(体積)であり、さらに好ましくは約2%〜6%(体積)である。
【0086】
もう一つの実施形態において、本願の方法はさらに、上記ステップ(b)を行う間において(即ち検出用材料の検出区域と検出対象水溶液とが接触している期間中において)、上記検出用材料に対して電圧を印加して通電処理を行い、これによって検出時間を短縮し、最小検出限界を小さくし、検出速度を向上させる。当該実施方式中において、使用される検出用材料は導電できるものとすべきである。一つの実施形態において、上記検出用材料に対して負の電圧を印加して通電処理を行うことにより、これによって最小検出限界を小さくし、検出時間を短縮する。いかなる理論による制限も受けたくないものの、検出用材料に対して負の電位を印加して通電処理を行うことで、当該検出用材料の検出区域の表面に負の電荷を凝集させ、これによって正の電気を帯びた重金属イオンを吸引し、検出区域付近に凝集させる。これによって検出区域の疎水層を形成する上記長鎖化合物(長鎖チオール、長鎖脂肪酸及びこれらの組み合わせから選択されるもの)と重金属イオンとの間の相互作用を起こし、これによって当該検出区域の表面の疎水性―親水性変化を加速させ、検出速度を向上させ、同時にさらに検出感度を向上させる。要求によって上記検出用材料に対して印加する電圧の大きさ及び通電処理の時間を決めることができる。一つの実施形態において、検出用材料に対して−0.5〜−20Vの電圧を印加し、より好ましくは−1〜−15Vの電圧を印加し、さらに好ましくは−2〜−8Vの電圧を印加する。一つの実施形態において、通電処理の時間は1〜40分間、好ましくは3〜30分間、さらに好ましくは5〜20分間である。
【0087】
一つの実施形態において、上記検出用材料に対して電圧を印加して通電処理を行う際、上記検出用材料と検出対象水溶液との接触部分は好ましくは大部分(さらに好ましくは全部)が疎水層によって覆われる。これによって疎水層によって覆われていない金属酸化物(例えばZnO)が水溶液と接触する際に起こり得る還元または水の電解を回避することができる。
【0088】
もう一つの実施形態において、さらにステップ(b)の前に、またはステップ(b)を行う間において、検出対象水溶液中において可溶化剤を添加し、同時に、ステップ(b)を行う間において、上記検出用材料に対して電圧を印加して通電処理を行う。これによってさらに検出時間を短縮し、最小検出限界を小さくし、検出速度を向上させる。上述のように、当該実施形態中において、上記検出用材料は導電できるものである。上記水溶性溶化剤は例えば水溶性アルコール類(例えばC1 −C4 の脂肪族アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノールなど)を含むが、これらに限定されない。水溶性可溶化剤を単独で使用できるし、または水溶性可溶化剤の組み合わせを使用することができる。一つの実施形態において、検出対象水溶液の体積に対して、水溶性可溶化剤の添加量は約10%(体積)以下であり、好ましくは約1%〜8%(体積)、さらに好ましくは約2%〜6%(体積)である。もう一つの実施形態において、検出用材料に対して−0.5〜−20Vの電圧を印加し、特に−1〜−15Vの電圧、さらに好ましくは−2〜−8Vの電圧を印加する。もう一つの実施形態において、通電処理の時間は1〜40分間とすることができるが、好ましくは3〜30分間、さらに好ましくは5〜20分間である。
【0089】
<ステップ(c)及び(d)>
本願の方法はステップ(c)検出対象水溶液と接触した後、上記検出用材料の検出区域の表面に疎水性―親水性変化が起きているか、及びステップ(d)上記判断によって、上記検出対象水溶液中に重金属イオンが存在するかを判定することを含む。
【0090】
ステップ(c)において、検出対象水溶液と接触した後の上記検出区域に、疎水性―親水性変化が起きているのであれば、ステップ(d)では検出対象水溶液中に一定量の重金属イオンが存在することを確認できる。一方で、ステップ(c)において、水溶液と接触した後の上記検出用材料の検出区域に疎水性―親水性変化が起きていないのであれば、ステップ(d)では検出対象水溶液中に重金属イオンが存在しない、または重金属イオンの濃度が低い(例えば、最小検出限界より低い)ことを確認することができる。
【0091】
通常、材料の疎水性―親水性変化は物理的な方法または化学的な方法によって判断することができる。これらの方法は材料の疎水性―親水性の変化に基づいて引き起こされる物理的、化学的変化によって実現するものである。例えば、水との接触角の変化を測量または観察することによって疎水性―親水性の変化を判断する。
【0092】
一つの実施形態において、上記検出用材料の検出区域の表面と水との初期接触角と比較した場合、検出対象水溶液と接触した後の上記検出用材料の検出区域の表面と水との接触角は少なくとも約20°小さくなり、例えば少なくとも約25°小さくなり、特に約30°小さくなる際、検出用材料の検出区域に疎水性―親水性変化が起きていると考えることができる。もう一つの実施形態において、検出対象水溶液と接触した後の上記検出用材料の検出区域が親水的になった場合、即ち水との接触角が約90°より小さい場合、特に約80°または80°より小さい場合、さらには70°または70°より小さい場合、検出用材料の検出区域が疎水性―親水性変化が起きていると考えることもできる。
【0093】
もう一つの実施形態において、例えば下記方法によって検出区域の表面に疎水性―親水性変化が起きているかを判断することもできる。
(1)着色剤を使用して判断する。使用する着色剤は重金属成分を含まない水溶性の且つ親水性表面によって吸着され得るものである。疎水性材料は該着色剤と接触する際、着色剤を吸着しないため、色の変化を示さない。材料表面が疎水的から親水的に変わる際、着色剤は材料表面に吸着され、材料は色を示すようになる。逆に、疎水性―親水性変化がなければ、材料表面は着色剤を吸着せず、よって色の変化を示さない。
(2)電気抵抗及び/または電流を測量する。(超)疎水性材料を構築する金属酸化物(例えばZnOなど)は湿度応答型電気抵抗の特性を有する。(超)疎水性材料は乾燥時(疎水時)には電気抵抗が大きいが、検出対象水溶液と接触した後、材料表面が疎水性から親水性に変化したのであれば、水によって湿潤されやすく、湿潤(親水)した後、電気抵抗は急速に低下する。よって、電気抵抗の急激な変化は材料表面に疎水性―親水性の変化が起きていることを示している。
【0094】
一つの実施形態において、着色剤によって上記検出用材料の検出区域の表面に疎水性―親水性変化が起きているかを判断することである。当該着色剤の例は水溶性着色剤、例えば水溶性染料であり、例えば、赤インク、青インクなどの水性インクまたはその他の重金属成分を含まない水性染料を含むが、これらに限定されない。上記方法によって、非常に簡単に、直観的に判断することができる。
【0095】
一つの実施形態において、本願の方法はステップ(b)の前に及び/またはステップ(b)を行う間において、検出対象水溶液中に着色剤を添加してもよい。上記検出用材料の検出区域と検出対象水溶液とが一定時間接触した後、検出用材料の検出区域が着色剤を吸着し且つ色を示したのであれば、その表面に疎水性―親水性変化が起きていると判断することができる。これによって、検出対象水溶液中において、一定量の重金属イオンが存在することを確認できる。逆であれば、検出対象水溶液中に重金属イオンが存在しない(または重金属イオンの濃度が非常に低く、例えば最小検出限界より小さい)と判断することができる。
【0096】
もう一つの実施形態において、本願の方法はさらに、検出対象水溶液と接触した後の上記検出用材料の検出区域を着色剤溶液中に浸し、観察によって上記検出区域の表面に色の変化が起きているかによってステップ(c)の判断を行ってもよい。検出用材料の検出区域が着色剤を吸着し色を示すのであれば、その表面に疎水性―親水性変化が起きていると判断し、これによって検出対象水溶液中において一定量の重金属イオンが存在することを確認することができる。逆であれば、検出対象水溶液中において重金属イオンが存在せず(または重金属イオンの濃度が非常に低く、例えば最小検出限界より小さい)と判断することができる。
【0097】
本願において使用する用語「重金属イオン」とは、密度が4.5g/cm3 より大きい金属元素のイオンを指している。本願の方法はほとんどの重金属イオンを検出することができる。主にZn(II)、Cu(II)、Cd(II)、Pb(II)、Ag(I)、Hg(II)及びHg2 (II)を検出でき、特に人体に対して危害の大きい、通常の重金属イオンである例えばCd(II)、Pb(II)、Hg(II)などのイオンを検出できる。
【0098】
本願の方法では、非重金属イオンの存在は重金属イオンの検出を干渉することはなく、非常に強い抗干渉能力を有する。下記実施例によって証明されているように、超疎水性亜鉛片を使用すれば、水溶液中に非重金属イオン(例えばK+ 、Na+ 、Mg2+、Ca2+などのイオン)が存在する状況下において、短時間(例えば15分間)内において重金属イオン(例えばHg2+、Hg2 2+、Pb2+、Cd2+、Cu2+及びZn2+)中の一種類または複数種類を検出することができ、複雑な前処理を必要とすることなく、且つ高い検出感度を有する。例えば、本願の方法によれば、Hg2+(約10-7M以上)、Hg2 2+(約10-7M以上)、Pb2+(約10- 6 M以上)、Cd2+(約10- 6 M以上)、Cu2+(約10- 5 M以上)、Zn2+(約10- 5 M以上)を検出することができる。または、これらの数種類の重金属イオン(合計濃度が約10- 6 M以上)を同時に検出することができる。
【0099】
<水溶液中における重金属イオンを検出する装置及び検出ユニット>
本発明はもう一つの局面において、水溶液中の重金属イオンを検出する装置に係るものであり、上記装置は本体と検出用材料とを備え、上記検出用材料は親水層を備え、上記親水層の少なくとも一部は疎水層によって覆われ、上記疎水層は長鎖チオール、長鎖脂肪酸及びそれらの組み合わせから選択される長鎖化合物によって形成され、上記疎水層によって覆われた領域を検出区域とし、上記検出区域の表面と水との初期接触角は約120°以上であり、上記検出用材料の検出区域は上記本体の外部に露出することができ、上記水溶液と接触するために用いられる。
【0100】
例えば、検出用材料を直接上記装置の本体上に固定することができ、且つ、上記検出用材料の検出区域を当該本体の外部に露出させ、検出対象水溶液と接触するために用いられる。
【0101】
或いは、検出用材料を該装置の本体の内部に設置させ、且つ該検出用材料の検出区域を該装置の本体の内部から外部に移動させ、検出対象水溶液と接触するために用いられる。
【0102】
また或いは、本願の装置は携帯に便利なポータブル型検出装置に設計することが可能である。例えば、一つの実施形態において、該ポータブル型検出装置は開口部を有する筐体を備え、筐体内部には該検出用材料を収納するための通路があり、該検出用材料は該通路中で移動でき、よって当該材料の検出区域は開口部から筐体の外まで延伸できる。該装置はさらに移動できるスライダを備えることができ、上記検出用材料を取り外し可能に該スライダに固定し、上記スライダを移動させることによって、上記検出用材料を上記通路に沿って移動させ、該検出用材料の検出区域を開口部から該筐体の外まで延伸させる。一つの実施形態において、ポータブル型検出装置をペン型に設定でき、ポータブル型ペン式検出装置となる。該ポータブル型ペン式検出装置はペン型筐体を備え、該開口部はペン型筐体の端部に設置されている。検出用材料はペン型筐体の内部に収納され、該検出用材料の検出区域は開口部から該ペン型筐体の外部まで延伸する。
【0103】
一つの実施形態において、該スライダはレール上に設置され、当該レールに沿ってスライドすることによって検出用材料も移動する。該レールと筐体によって当該検出用材料を収納する通路を形成する。
【0104】
もう一つの実施形態において、当該検出用材料を保存するために、該装置はさらに、該開口部を密閉させるための密閉部材を備える。保存期間において、該密閉部材は該開口部を密閉させる。該装置を使用して検出を行う際、密閉部材を取り除き、スライダを移動させて、検出用材料の検出区域を筐体の外まで延伸させる。スライダの移動距離を制御することにより、筐体から延伸する検出用材料の検出区域の延伸の度合いを制御する。
【0105】
一つの実施形態において、通電処理を行うことにより検出過程を加速させる際、スライダとして導電的なものを配置させることができる。さらには、導電できるスライダ上に、電圧を印加しやすいように配線端子を設置し、これによって上記配線端子と電源とを連結させ、検出用材料に対して電圧を印加する。
【0106】
本明細書における「水溶液中の重金属イオンを検出する方法」部分における検出用材料の各実施形態についての説明は、同様に本願の装置にも適用できる。
【0107】
一つの実施形態において、該装置が使用している検出用材料は金属基材と、少なくとも部分的に上記金属基材を覆っている親水層を備え、上記親水層の少なくとも一部は疎水層によって覆われ、上記親水層は金属酸化物によって形成され、上記疎水層は長鎖チオール、長鎖脂肪酸及びそれらの組み合わせから選択される長鎖化合物によって形成され、上記疎水層によって覆われている区域を検出区域とし、上記検出区域の表面と水との初期接触角は約120°以上である。好ましくは、上記検出区域の表面と水との初期接触角は約150°以上である。
【0108】
もう一つの実施形態において、該装置が使用している検出用材料は、本願の(超)疎水性亜鉛片、(超)疎水性亜鉛棒及びそれらの組み合わせから選択されるものである。
【0109】
本願はもう一つの局面において、本願の装置を検出ユニットに組み立てることができる。当該検出ユニットは本願の装置及び着色剤溶液が入っている容器を備えている。上記装置の検出用材料の検出区域と検出対象水溶液とが接触した後、検出区域を着色剤溶液中に挿入し、オンサイトで(現場で)判断できるため、検出過程の便利化につながる。上記着色剤は水溶性着色剤とすることができ、水溶性染料、例えば赤インク、青インクなどを含む。
【0110】
もう一つの実施形態において、当該検出ユニットはさら水溶性可溶化剤が入っている容器を備え、及び/または電気分解設備を備えるものである。上記のように、水溶性可溶化剤および/または通電処置を行うことにより検出時間を短縮させ、検出感度を向上させる。当該水溶性促進剤は水溶性アルコール類を含み、例えばC1 −C4 脂肪族アルコールであり、好ましくはエタノールなどである。該電解設備を使用することにより検出時において通電処理を行い、該電解設備は電解槽、参照電極、対電極及び電源を備えることができる。
【0111】
該検出ユニットを用いて以下のように検出を行うことができる。検出対象水溶液を採取し、電解設備の電解槽に注入し、任意に一定量の水溶性可溶化剤を添加し、検出用材料の検出区域を検出対象水溶液中に浸し、それから電解設備と連結させ、検出用材料に対して負の電圧を印加して通電処理を行う。それから検出用材料を取り出し、検出対象水溶液と接触した後の上記検出用材料の検出区域を着色剤溶液中に浸し、該区域が該着色剤溶液を吸着するか否か(即ち色の変化を示すかどうか)によって、検出対象水溶液中において重金属イオンが存在するかどうかを判断する。
【0112】
上記のように、本願の装置及び検出ユニットは低コストで、オンサイトで水中の重金属イオンを検出することができる。これらの重金属イオンは主に、カドミウム(Cd)、鉛(Pb)、水銀(Hg)、銅(Cu)及び亜鉛(Zn)イオンを含むことができ、特に人体に対して危害の大きいカドミウム(Cd)、鉛(Pd)、水銀(Hg)などのイオンを含む。さらに、本願の装置及び検出ユニットの使用は簡単であって、環境条件による制限を受けない。
【0113】
下文において、超疎水性亜鉛片を検出用材料の実例として、本願の水溶液中における重金属イオンを検出する方法について説明する。これらの具体的な説明は、当業者が本発明を行うにあたりおそらく必要であろう助言または教示を具体的に説明したものであり、いかなる方式によって本発明を制限するものではない。下文において、実施例を通じて本発明に対してさらに詳細に説明するが、ただこれらの実施例は例示に過ぎず、制限性のあるものではないと理解すべきである。特に説明がないであれば、使用されている各原料はいずれも市販のものである。
【実施例】
【0114】
<実施例1>
下記ステップによって超疎水性亜鉛片を製作する。亜鉛片を8%(v/v)N,N−ジメチルアセトアミド−水溶液中において、65°において72時間酸化させ、取り出して脱イオン水にて洗浄し、室温において5mM DCT溶液(溶媒はエタノール)中に浸して24時間保持することで自己組織化処理を行い、超疎水性亜鉛片(DCT−ZnO−Zn)を得た。該超疎水性亜鉛片の表面の全体が検出区域である。
【0115】
上記製作過程において、走査型電子顕微鏡(SEM)及びX線光電子分光スペクトル(XPS)を用いて、得られた材料に対して分析を行った。図2は亜鉛片が8%N,N−ジメチルアセトアミド−水溶液中において酸化された後、形成されたZnOナノ層のSEM画像及び超疎水性亜鉛片のXPSスペクトルである。結果は、酸化されたZnの表面は高度に配向し、緊密に配置した六角形のZnO結晶ナノロッドアレイであることを示している。1−ドデカンチオール(DCT)が自己組織化した後、XPSからわかるように、亜鉛片の表面における組成はZn、O、C、S元素であり、これはDCTが成功的にZnO−Zn表面上に自己組織化していることを示している。
【0116】
以下の亜鉛片(a)純亜鉛片(Zn)、(b)酸化された亜鉛片(ZnO−Zn)、(c)DCTが自己組織化したZnO−Zn(DCT−ZnO−Zn)を選び、水滴をこれらの亜鉛片上に滴下する。
【0117】
同時に、室温において、三本の超疎水性亜鉛片DCT−ZnO−Znを用意し、それぞれ下記溶液中に60分間以上浸し、取り出した後各表面に水滴を滴下して、水滴の様子を観察した。(d)は純水、(e)は5×10-5M KCl水溶液、(f)は1×10-5MPb(NO3 2 水溶液である。
【0118】
図3a〜fは異なる亜鉛片上の水滴を示した写真である。(a)は純亜鉛片(Zn)上における水滴の写真である、(b)は酸化された亜鉛片(ZnO−Zn)上における水滴の写真である、(c)はDCTが自己組織化したZnO−Zn(DCT−ZnO−Zn)上における水滴の写真である、(d)は純水で60分間以上処理したDCT−ZnO−Zn上の水滴を示した写真である、(e)は濃度5×10-5MのKCl水溶液で60分間以上処理したDCT−ZnO−Zn上における水滴の写真である、(f)は濃度が1×10-5のPb(NO3 2 水溶液で60分間以上処理したDCT−ZnO−Zn上における水滴の様子を示した写真である。
【0119】
図3a〜cからわかるように、酸化した後、純亜鉛片に比べ、ZnO−Znはより親水的な表面を有している。長鎖チオールDCTまたはODTによって改性されたZnO表面は超疎水性を示し、水との接触角はCA>150°であり、これは超疎水性の亜鉛片が得られたことを示している。
【0120】
図3d〜fは異なる処理の後の超疎水性亜鉛片上における水滴の様子を示した写真である。これらの処理されたDCT−ZnO−Zn上の水滴の写真は明確に以下のことを示している。Pb(II)によって処理されたDCT−ZnO−Znのみ明確な表面変化を示し、その接触角は約70°であり、純水及びK(I)によって処理されたDCT−ZnO−Znは依然超疎水性を維持している。一部のDCTがPb(II)の助けを借りてZnO−Zn上から脱離し、しかしDCTはK(I)または純水によって除去されることはない。即ち、純水、K(I)及び重金属イオンPb(II)三者の間において、重金属イオンPb(II)のみが、超疎水性亜鉛片表面の疎水性−親水性変化を引起こしたことを示している。これによって、DCT−ZnO−Zn表面の疎水性−親水性変化によって水中の重金属イオンを検出することができる。
【0121】
また、XPS分析を用いて濃度1×10-5MのPb(NO3 2 水溶液で処理する前後のDCT−ZnO−Znについて分析を行った。
【0122】
図4はPb(II)で処理する前後のDCT−ZnO−Zn上におけるS元素の相対強度の変化を示している。図4(a)はPb(II)で処理する前のDCT−ZnO−Zn表面のXPSスペクトルのS元素スペクトルであって、図4(b)はPb(II)で処理した後のDCT−ZnO−Zn表面のXPSスペクトルのS元素スペクトルである。図中からでも明らかなように、Pb(II)で処理を行った後、XPSスペクトル上のS元素区域の相対強度は小さくなり、これらはさらに、超疎水性亜鉛片と水中のPb(II)が遭遇した際、DCTが部分的に脱離することを示している。結果からわかるように、超疎水性亜鉛片の表面の疎水性−親水性変化は、長鎖チオール(DCT)が表面から離脱したことによるものである。
【0123】
<実施例2>
前記のように、検出対象水溶液中に有機物を添加し及び/ または通電処理を行うことにより、検出時間を短縮し、最小検出限界を小さくし、検出速度を向上させることができる。
【0124】
本実施例において、エタノール(EtOH)を添加及び/ または通電処理する状況下において、実施例1で製作した超疎水性亜鉛片DCT−ZnO−Znで水溶液中の重金属イオンを検出することについて考査した。
【0125】
本実施例において、5%体積(検出対象水溶液の体積に対して)のEtOHを水溶性可溶化剤として検出対象水溶液中に添加した。下記のように通電処理を行う。超疎水性亜鉛片を作用極、Ptワイヤーを対電極、Ag/AgCl電極を参照電極として、疎水性亜鉛片に対して負の電圧(−3V)を印加する。
【0126】
また、さらによく観察するために、異なる処理をした後に、超疎水性亜鉛片を赤色着色剤(赤インク)に浸して判断を補助する。超疎水性亜鉛片が超疎水性を示す時、赤色着色剤は超疎水性亜鉛片上に吸着することはなく、よって色の変化を示さない。該超疎水性亜鉛片が疎水性−親水性変化を起こし、一定の親水性を示した際、赤色着色剤はその上に付着し、よって色の変化を示す。疎水性−親水性の変化が大きければ大きいほど、色の変化はより明らかになる。超疎水性亜鉛片の色の変化を観察することによって、該超疎水性亜鉛片に疎水性−親水性変化が起きているかを判断する。
【0127】
図5は赤インク(水溶液)の助けのもと、異なる検出条件下において、超疎水性亜鉛片の色の変化によって水中のPb(II)を検出する結果を示したものである。
【0128】
図5(a )はEtOHを添加せず、通電処理を行っていない状況下において、超疎水性亜鉛片をそれぞれ純水、1×10-5M Pb(NO3 2 水溶液と1×10-6M Pb(NO3 2 水溶液中において、60分以上処理した結果である。結果が示すように、1×10-5M Pb(NO3 2 水溶液によって処理された超疎水性亜鉛片のみ比較的浅い色の変化を示し、純水及び1×10-6M Pb(NO3 2 水溶液で処理した超疎水性亜鉛片は色の変化を示さない。
【0129】
図5(b)はEtOHを添加せず、−3V電圧下において超疎水性亜鉛片をそれぞれ1×10-6M Pb(NO3 2 水溶液及び純水中に浸し、20分間通電処理した後の結果である。結果からわかるように、通電処理のもと、1×10-6M Pb(NO3 2 水溶液で20分間処理した後の超疎水性亜鉛片は顕著な色の変化を示し、水によって処理された超疎水性亜鉛片は色の変化を示していない。
【0130】
図5(c)はEtOHを添加せず、超疎水性亜鉛片をそれぞれ1×10-6M Pb(NO3 2 水溶液中に浸し、−3V電圧下において20分間通電処理をするのと、通電処理しないのを比較したものである。結果からわかるように、通電処理した後の超疎水性亜鉛片は顕著な色の変化を示し、通電処理していない超疎水性亜鉛片は色の変化を示していない。
【0131】
図5(a)〜5(c)の結果は、水溶性可溶化剤(EtOH)を入れてない状況で通電処理を行うことで、検出時間は大いに短縮され、かつ重金属イオン(Pb(II))の最小検出限界小さく(例えば少なくとも1桁)できることを証明している。
【0132】
図5(d)は5%体積のEtOHを添加した水溶液の場合、−3V電圧下で通電処理を行い、または通電処理をしていない状況下において、超疎水性亜鉛片をそれぞれ1×10-6M Pb(NO3 2 水溶液中で10分間処理した後の結果である。結果が示すように、EtOHを添加した時、通電処理をした場合、該超疎水性亜鉛片は10分間で明らかな色の変化を示した。通電処理を行っていない場合、該疎水性亜鉛片は色の変化を示していない。
【0133】
図5(e )は5%体積のEtOHを添加した水溶液の場合、−3V電圧下で通電処理を行い、超疎水性亜鉛片をそれぞれ純水と1×10-6M Pb(NO3 2 水溶液中で10分間処理した後の結果である。結果が示すように、1×10-6M Pb(NO3 2 水溶液中で処理した超疎水性亜鉛片は明らかな色の変化を示し、純水で処理した超疎水性亜鉛片は色の変化を示していない。
【0134】
図5(d)〜5(e)の結果は、水溶性可溶化剤(例えばEtOH)を添加し且つ通電処理を行った場合、最小検出限界を小さくするのと同時に検出時間を短縮できることを証明した。
【0135】
図5(f)は5%体積のEtOH―水溶液を添加し、−3V電圧下で通電処理を行い、超疎水性亜鉛片をそれぞれ1×10-6M Pb(NO3 2 +1×10-6M KCl水溶液及び1×10-6M KCl水溶液中で10分間処理した後の結果である。結果が示すように、1×10-6M Pb(NO3 2 +1×10-6M KCl水溶液で処理した超疎水性亜鉛片は明らかな色の変化を示し、1×10-6M KCl水溶液で処理した超疎水性亜鉛片は明らかな色の変化を示していない。この結果から、K(I)の存在はPb(II)の検出を干渉しないことを証明した。
【0136】
図5(a )〜図5(f)の結果は、本願の方法を使用する際、水溶性可溶化剤を使用及び/ または検出用材料に対して電圧を印加して通電処理を行うことで、最小検出限界を顕著に小さくし(例えば一桁を小さく)及び検出時間を顕著に短縮させる(例えば、おおよそ10分間以内に明らかな疎水性―親水性変化が起きる)ことができることを示している。また、超疎水性亜鉛片を純水または非重金属イオン溶液中に浸した際、5%EtOHを添加し通電処理を行ったとしても、超疎水性亜鉛片の疎水性―親水性変化を引き起こすことはない。これは非金属イオンの存在は本願方法による重金属イオンの検出を干渉しないことを示している。
【0137】
<実施例3 水溶液中においてZn(II)、Cu(II)或いはPb(II)を検出する>
下記ステップによって超疎水性亜鉛片を製作する。亜鉛片を8%(v/v)N,N−ジメチルアセトアミド−水溶液中において、65°において72時間酸化させ、取り出して脱イオン水にて洗浄し、室温において5mM DCT溶液(溶媒はエタノール)中に浸して24時間保持することで自己組織化処理を行い、超疎水性亜鉛片(DCT−ZnO−Zn)を得た。該超疎水性亜鉛片の表面の全体が検出区域である。
【0138】
超疎水性亜鉛片をそれぞれ、5%EtOHを含有する20mL MgSO4 (1×10- 5 M)の水溶液、CaCl2 (1×10-5M)の水溶液、ZnCl2 (1×10-5M)の水溶液、Cu(NO3 2 (1×10-5Mの)水溶液及びPb(NO3 2 (1×10-6M)の水溶液中に浸し、該超疎水性亜鉛片を作用極とし、Ptワイヤーを対電極とし、Ag/AgCl電極を参照電極とする。超疎水性亜鉛片に対して−3Vの電圧を印加して、10分間通電処理を行い、次にこれを赤インク水溶液中に浸してその表面変化を観察する。
【0139】
図6は本実施例によって得られた超疎水性亜鉛片がそれぞれ、1×10-6M Pb(II)、1×10-5M Mg(II)、1×10-5M Ca(II)、1×10-5M Zn(II)及び1×10-5M Cu(II)の水溶液中において通電処理を行った後の写真である。ここで、図6aは該超疎水性亜鉛片が1×10-6M Pb(II)及び1×10-5M Mg(II)の水溶液中において通電処理した後の写真を示している、図6bは該超疎水性亜鉛片が1×10-5M Ca(II)及び1×10-6 M Pb(II)の水溶液中で通電処理した後の写真である、図6cはそれぞれ超疎水性亜鉛片が1×10-5
Zn(II)及び1×10-6M Pb(II)の水溶液中において通電処理をした後の写真である、図6dはそれぞれ、超疎水性亜鉛片が1×10-5M Cu(II)及び1×10-6M Pb(II)の水溶液中において通電処理を行った後の写真である。
【0140】
図6(a)〜6(d)から明らかなように、1×10-6M Pb(II)、1×10- 5 M Zn(II)或いは1×10-5M Cu(II)の水溶液で処理した後、超疎水性亜鉛片は明らかな色の変化を示し、これは疎水性―親水性変化が起きていることを示している。1×10-5M Mg(II)+1×10-5M Ca(II)の水溶液で処理した後の超疎水性亜鉛片はほとんど色の変化を示していない。これは本願の検出用材料(超疎水性亜鉛片)は重金属イオン、例えばPb(II)、Zn(II)及びCu(II)を検出することができ、最小検出限界はそれぞれ少なくとも1×10-6M Pb(II)、1×10-5M Zn(II)及び1×10-5M Cu(II)である。非重金属イオンCa(II)またはMg(II)は本出願検出用材料の検出区域の表面疎水性を改変することはなく、本願の方法を干渉しない。
【0141】
<実施例4 Mg(II)存在下において水溶液中のPb(II)を検出する>
下記ステップによって超疎水性亜鉛片を製作する。亜鉛片を8%(v/v)N,N−ジメチルアセトアミド−水溶液中において、65°において72時間酸化させ、取り出して脱オン水にて洗浄し、室温において5mM DCT溶液(溶媒はエタノール)中に浸して24時間保持することで自己組織化処理を行い、超疎水性亜鉛片(DCT−ZnO−Zn)を得た。該超疎水性亜鉛片の表面の全体が検出区域である。
【0142】
超疎水性亜鉛片をそれぞれ、5%EtOHを含有する20mL MgSO4 (5×10- 5 M)の水溶液及びPb(NO3 2 (1×10-6M)とMgSO4 (5×10-5M)を含む水溶液中に浸し、該超疎水性亜鉛片を作用極とし、Ptワイヤーを対電極とし、Ag/AgCl電極を参照電極として検出を行う。超疎水性亜鉛片に対して−3Vの電圧を印加して、10分間通電処理を行い、次にこれを赤インク水溶液中に浸してその表面変化を観察する。
【0143】
図7は超疎水性亜鉛片がそれぞれ、5×10-5M Mg(II)水溶液、及び5×10-5M Mg(II)+1×10-6M Pb(II)を含む水溶液中において、通電処理を行った後の写真である。明らかに、Pb(II)+Mg(II)の水溶液で処理をした後に、超疎水性亜鉛片は色の変化を示し、疎水性―親水性変化が起きていることを示している。またMg(II)水溶液で処理した超疎水性亜鉛片は色の変化を示さず、Mg(II)が超疎水性亜鉛の表面疎水性を改変させていないことを示している。これは、本願の方法を使用すれば、Mg(II)の存在はPb(II)の検出を干渉せず、Mg(II)の存在下においてPb(II)を検出でき、最小検出限界は少なくとも1×10-6M Pb(II)であることを意味している。
【0144】
<実施例5 Mg(II)存在下において水溶液中のCd(II)を検出する>
下記ステップによって超疎水性亜鉛片を製作する。亜鉛片を8%(v/v)N,N−ジメチルアセトアミド−水溶液中において、65°において72時間酸化させ、取り出して脱イオン水にて洗浄し、室温において5mM DCT溶液(溶媒はエタノール)中に浸して24時間保持することで自己組織化処理を行い、超疎水性亜鉛片(DCT−ZnO−Zn)を得た。該超疎水性亜鉛片の表面の全体が検出区域である。
【0145】
超疎水性亜鉛片をそれぞれ、5%EtOHを含有する20mL MgSO4 (5×10- 5 M)の水溶液及びCdCl2 (1×10-6M)とMgSO4 (5×10-5M)を含む水溶液中に浸し、該超疎水性亜鉛片を作用極とし、Ptワイヤーを対電極とし、Ag/AgCl電極を参照電極として、検出を行う。超疎水性亜鉛片に対して−3Vの電圧を印加して、10分間通電処理を行い、次にこれを赤インク水溶液中に浸してその表面変化を観察する。
【0146】
図8は超疎水性亜鉛片がそれぞれ、5×10-5M Mg(II)の水溶液、及び5×10-5M Mg(II)+1×10-6M Cd(II)を含む水溶液中において、通電処理を行った後の写真である。明らかに、Cd(II)+Mg(II)の水溶液の処理をした後に、超疎水性亜鉛片は色の変化を示し、疎水性―親水性変化が起きていることを示している。またMg(II)水溶液で処理した超疎水性亜鉛片は色の変化を示さず、Mg(II)が超疎水性亜鉛の表面疎水性を改変させていないことを示している。これは、本出願の方法を使用すれば、Mg(II)の存在はCd(II)の検出を干渉せず、Mg(II)の存在下においてCd(II)を検出でき、最小検出限界は少なくとも1×10-6
Cd(II)であることを意味している。
【0147】
<実施例6 Mg(II)存在下において水溶液中のHg(II)を検出する>
下記ステップによって超疎水性亜鉛片を製作する。亜鉛片を8%(v/v)N,N−ジメチルアセトアミド−水溶液中において、65°において72時間酸化させ、取り出して脱イオン水にて洗浄し、室温において5mM DCT溶液(溶媒はエタノール)中に浸して24時間保持することで自己組織化処理を行い、超疎水性亜鉛片(DCT−ZnO−Zn)を得た。該超疎水性亜鉛片の表面の全体が検出区域である。
【0148】
超疎水性亜鉛片をそれぞれ、5%EtOHを含有する20mL MgSO4 (5×10- 5 M)の水溶液、及び、HgSO4 (1×10-7M)とMgSO4 (5×10-5M)を含む水溶液中に浸し、該超疎水性亜鉛片を作用極とし、Ptワイヤーを対電極とし、Ag/AgCl電極を参照電極として、検出を行う。超疎水性亜鉛片に対して−3Vの電圧を印加して、10分間通電処理を行い、次にこれを赤インク水溶液中に浸してその表面変化を観察する。
【0149】
図9は超疎水性亜鉛片がそれぞれ、5×10-5M Mg(II)の水溶液、及び5×10-5M Mg(II)+1×10-7M Hg(II)を含む水溶液中において、通電処理を行った後の写真である。明らかに、Hg(II)+Mg(II)の水溶液で処理をした後に、超疎水性亜鉛片は明らかな色の変化を示し、大きな疎水性―親水性変化が起きていることを示している。またMg(II)水溶液で処理した超疎水性亜鉛片は色の変化を示さず、Mg(II)が超疎水性亜鉛の表面疎水性を改変させていないことを示している。これは、本願の方法を使用すれば、Mg(II)の存在はHg(II)の検出を干渉せず、Mg(II)の存在下においてHg(II)を検出でき、最小検出限界は少なくとも1×10-7M Hg(II)であることを意味している。
【0150】
<実施例7 Mg(II)存在下において水溶液中のHg2 (II)を検出する>
下記ステップによって超疎水性亜鉛片を製作する。亜鉛片を8%(v/v)N,N−ジメチルアセトアミド−水溶液中において、65°において72時間酸化させ、取り出して脱イオン水にて洗浄し、室温において5mM DCT溶液(溶媒はエタノール)中に浸して24時間保持することで自己組織化処理を行い、超疎水性亜鉛片(DCT−ZnO−Zn )を得た。該超疎水性亜鉛片の表面の全体が検出区域である。
【0151】
超疎水性亜鉛片をそれぞれ、5%EtOHを含有する20mL MgSO4 (5×10- 5 M)の水溶液、及び、Hg2 Cl2 (1×10-7M)とMgSO4 (5×10-5M)を含む水溶液中に浸し、該超疎水性亜鉛片を作用極とし、Ptワイヤーを対電極とし、Ag/AgCl電極を参照電極として、検出を行う。超疎水性亜鉛片に対して−3Vの電圧を印加して、10分間通電処理を行い、次にこれを赤インク水溶液中に浸してその表面変化を観察する。
【0152】
図10は超疎水性亜鉛片がそれぞれ、5×10-5M Mg(II)水溶液、及び5×10-5M Mg(II)+1×10-7M Hg(II)を含む水溶液中において、通電処理を行った後の写真である。明らかに、Hg2 (II)+Mg(II)の水溶液で処理をした後に、超疎水性亜鉛片は明らかな色の変化を示し、疎水性―親水性変化が起きていることを示している。またMg(II)水溶液で処理した超疎水性亜鉛片は色の変化を示さず、Mg(II)が超疎水性亜鉛の表面疎水性を改変させていないことを示している。これは、本願の方法を使用すれば、Mg(II)の存在はHg2 (II)の検出を干渉せず、Mg(II)の存在下においてHg2 (II)を検出でき、最小検出限界は少なくとも1×10-7M Hg2 (II)であることを示している。
【0153】
<実施例8 Mg(II)存在下において水溶液中のPb(II)及びCd(II)を同時に検出する>
下記ステップによって超疎水性亜鉛片を製作する。亜鉛片を8%(v/v)N,N−ジメチルアセトアミド−水溶液中において、65°において72時間酸化させ、取り出して脱イオン水にて洗浄し、室温において5mM DCT溶液(溶媒はエタノール)中に浸して24時間保持することで自己組織化処理を行い、超疎水性亜鉛片(DCT−ZnO−Zn)を得た。該超疎水性亜鉛片の表面の全体が検出区域である。
【0154】
超疎水性亜鉛片をそれぞれ、5%EtOHを含有する20mL MgSO4 (5×10- 5 M)の水溶液また、Pb(NO3 2 (8×10-7M)、CdCl2 (4×10-7M)とMgSO4 (5×10-5M)を含む水溶液中に浸し、該超疎水性亜鉛片を作用極とし、Ptワイヤーを対電極とし、Ag/AgCl電極を参照電極として、検出を行う。超疎水性亜鉛片に対して−3Vの電圧を印加して、10分間通電処理を行い、次にこれを赤インク水溶液中に浸してその表面変化を観察する。
【0155】
図11は超疎水性亜鉛片がそれぞれ5×10-5M Mg(II)水溶液、及び5×10-5M Mg(II)+8×10-7M Hg(II)+4×10-7M Cd(II)を含む水溶液中において、通電処理を行った後の写真である。明らかに、Pb(II)+Cd(II)の水溶液で処理をした後、超疎水性亜鉛片は明らかな色の変化を示し、大きな疎水性―親水性変化が起きていることを示している。またMg(II)水溶液で処理した超疎水性亜鉛片は色の変化を示さず、Mg(II)が超疎水性亜鉛の表面疎水性を改変させていないことを示している。これは、本願の方法を使用すれば、Mg(II)の存在はPb(II)、Cd(II)の検出を干渉せず、Mg(II)の存在下においてPb(II)及びCd(II)を同時に検出でき、最小検出限界は少なくとも重金属イオンの合計濃度が1.2×10-6Mであることを示している。
【0156】
<実施例9 Ca(II)存在下において水溶液中のHg(II)及びPb(II)を同時に検出する>
下記ステップによって超疎水性亜鉛片を製作する。亜鉛片を8%(v/v)N,N−ジメチルアセトアミド−水溶液中において、65°において72時間酸化させ、取り出して脱イオン水にて洗浄し、室温において5mM DCT溶液(溶媒はエタノール)中に浸して24時間保持することで自己組織化処理を行い、超疎水性亜鉛片(DCT−ZnO−Zn)を得た。該超疎水性亜鉛片の表面の全体が検出区域である。
【0157】
超疎水性亜鉛片をそれぞれ、5%EtOHを含有する20mL CaCl2 (5×10- 5 M)の水溶液また、Pb(NO3 2 (5×10-7M)、HgSO4 (5×10-8M)とCaCl2 (5×10-5M)を含む水溶液中に浸し、該超疎水性亜鉛片を作用極とし、Ptワイヤーを対電極とし、Ag/AgCl電極を参照電極として、検出を行う。超疎水性亜鉛片に対して−3Vの電圧を印加して、10分間通電処理を行い、次にこれを赤インク水溶液中に浸してその表面変化を観察する。
【0158】
図12は超疎水性亜鉛片がそれぞれ、5×10-5M Ca(II)水溶液、及び5×10-5M Ca(II)+5×10-7M Pb(II)+5×10-8M Hg(II )を含む水溶液中において、通電処理を行った後の写真である。明らかに、Hg(II)+Pb(II)の水溶液で処理をした後に、超疎水性亜鉛片は明らかな色の変化を示し、大きな疎水性―親水性変化が起きていることを示している。またCa(II)水溶液で処理した超疎水性亜鉛片は色の変化を示さず、Ca(II)が超疎水性亜鉛の表面疎水性を改変させていないことを示している。これは、本願の方法を使用すれば、Ca(II)の存在はHg(II)、Pb(II)の検出を干渉せず、Ca(II)の存在下においてHg(II)、Pb(II)を同時に検出でき、最小検出限界は少なくとも重金属イオンの合計濃度が5.5×10-7Mであることを意味している。
【0159】
本願はいくつかの理論を挙げ、これらのうちの幾つかを用いて本願について解釈をしているが、本願はこれらの理論によって制限を受けるものではないと当業者は理解すべきである。
【0160】
本願の方法における番号付け、例えば(a )、(b)は、互いに区別することを意図しているのであって、これらの間にその他のステップが存在しないことを意味する訳ではない。例えば、ステップ(a )若しくは(b)及び/ または(b)若しくは(c)との間に、追加のステップが存在する可能性がある。これらの追加ステップは本分野の通常のステップであることができ、これらが本発明の効果に対して害を及ぼさなければよい。
【0161】
本明細書中において使用している用語「任意に選択する」、「任意に選択された」とは、その後の事件または項目(例えば処理ステップ)は存在しても存在しなくてもよいことを示している。本発明は当該事件または項目が存在する、または存在しない、この両方の場合を含む。
【0162】
ここにおいて引用しているすべての文献を本出願に併合する。
【0163】
具体的な実施例を参照して発明を説明しているが、実施例によって本発明が制限される訳ではない。当業者は本発明によって公開されている教示によって、特定の状況または材料に適応するように様々な変更を行うことができ、本発明の趣旨及び範囲から離脱しなければよい。よって、本発明の保護範囲は特許請求の範囲によって限定された範囲を基準とする。
【産業上の利用可能性】
【0164】
本発明は水中の重金属イオンの検出に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶液中の重金属イオンを検出する方法であって、
(a)検出用材料を提供するステップ、上記検出用材料は親水層を備え、上記親水層の少なくとも一部は疎水層によって覆われ、上記疎水層は長鎖チオール、長鎖脂肪酸及びそれらの組み合わせから選択される長鎖化合物によって形成され、上記疎水層によって覆われた区域を検出区域とし、上記検出区域の表面と水との初期接触角は約120°以上であり、
(b)上記検出用材料の検出区域と検出対象水溶液とを接触させるステップ、
(c)検出対象水溶液と接触した後の上記検出用材料の検出区域の表面に、疎水性―親水性変化が起きているかを判断するステップ、及び
(d)上記判断に基づき検出対象水溶液中において重金属イオンが存在するかを判断するステップ、
を備えることを特徴とする、水溶液中の重金属イオンを検出する方法。
【請求項2】
上記親水層はナノ材料層を含むことを特徴とする、上記請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記親水層は金属酸化物によって形成され、好ましくは酸化亜鉛によって形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
上記検出用材料はさらに基材を備え、上記基材の少なくとも一部は上記親水層によって覆われ、好ましくは上記基材の全部が上記親水層によって覆われていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
上記基材は導電基材であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
上記親水層の全部が上記疎水層によって覆われていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
上記検出用材料は金属基材と、上記金属基材の少なくとも一部を覆っている親水層を含むものであり、上記親水層の少なくとも一部は疎水層によって覆われ、上記親水層は金属酸化物によって形成され、上記疎水層は長鎖チオール、長鎖脂肪酸及びそれらの組み合わせから選択される長鎖化合物によって形成され、上記疎水層によって覆われた区域を検出区域とし、上記検出区域の表面と水との初期接触角は約120°以上であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
上記金属基材は金属亜鉛基材であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
上記金属酸化物は酸化亜鉛であることを特徴とする、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
上記親水層の全部が上記疎水層によって覆われていることを特徴とする、請求項7〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
上記金属基材の全部が上記親水層によって覆われていることを特徴とする、請求項7〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
上記検出区域の表面と水との初期接触角は約150°以上であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
上記長鎖化合物は、8−20個の炭素原子を有する長鎖チオールから選択される一種類または複数種類であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
上記長鎖化合物は、8−20個の炭素原子を有する長鎖n−アルキルチオールから選択される一種類または複数種類であることを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
上記長鎖化合物は、1−オクタンチオール、1−ドデカンチオール、1−ヘキサデカンチオール、1−オクタデカンチオールから選択される一種類または複数種類であることを特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
上記方法は、さらにステップ(b)を行う前に及び/またはステップ(b)を行う間において、検出対象水溶液中に可溶化剤を添加することを特徴とする、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
上記可溶化剤は、水溶性アルコールを含むことを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
上記可溶化剤は、メタノール、エタノール及びプロパノールから選択される一種類または複数種類であることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
さらに、上記ステップ(b)を行う間において、上記検出用材料に対して電圧を印加して処理を行い、上記検出用材料は導電性を有することを特徴とする、請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
検出対象水溶液と接触した後の上記検出材料の検出区域を着色剤溶液中に浸し、上記検出区域の表面に色の変化が現れるかを観測することによりステップ(c)を行うことを特徴とする、請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
上記重金属は、Zn2+、Cu2+、Cd2+、Pb2+、Ag+ 、Hg2+及びHg2 2+から選択される一種類または複数種類を含むことを特徴とする、請求項1〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
水溶液中の重金属イオンを検出する装置であって、
本体と検出用材料とを備え、
上記検出用材料は親水層を備え、上記親水層の少なくとも一部は疎水層によって覆われ、上記疎水層は長鎖チオール、長鎖脂肪酸及びそれらの組み合わせから選択される長鎖化合物によって形成され、上記疎水層によって覆われた区域を検出区域とし、上記検出区域の表面と水との初期接触角は約120°以上であり、
上記検出用材料の検出区域は上記本体の外部に露出することができ、上記水溶液と接触するために用いられることを特徴とする、水溶液中の重金属イオンを検出する装置。
【請求項23】
上記検出用材料は金属基材と、上記金属基材の少なくとも一部を覆う親水層とを備え、上記親水層の少なくとも一部は疎水層によって覆われ、上記親水層は金属酸化物によって形成され、上記疎水層は長鎖チオール、長鎖脂肪酸及びそれらの組み合わせから選択される長鎖化合物によって形成され、上記疎水層によって覆われた区域を検出区域とし、上記検出区域の表面と水との初期接触角は約120°以上であることを特徴とする、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
上記検出区域の表面と水との初期接触角は約150°以上であることを特徴とする、請求項22または23に記載の装置。
【請求項25】
請求項22〜24のいずれかに記載の装置と、着色剤溶液が入っている容器とを含むことを特徴とする、検出ユニット。
【請求項26】
電気分解装置及び/または可溶化剤が入っている容器を、さらに備えることを特徴とする、請求項25に記載の検出ユニット。
【請求項27】
水溶液中の重金属イオンの検出における検出用材料の応用であって、
上記検出用材料は親水層を備え、上記親水層の少なくとも一部は疎水層によって覆われ、上記疎水層は長鎖チオール、長鎖脂肪酸及びそれらの組み合わせから選択される長鎖化合物によって形成され、上記疎水層によって覆われた区域を検出区域とし、上記検出区域の表面と水との初期接触角は約120°以上であることを特徴とする、検出用材料の応用。

【図4】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−150102(P2012−150102A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−275426(P2011−275426)
【出願日】平成23年12月16日(2011.12.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】