水中カット造粒方法および水中カット造粒装置
【課題】加熱コイル自体の温度がその許容温度を超えるおそれがなくかつダイスの格別の加工が不要な水中カット造粒方法および水中カット造粒装置を提供する。
【解決手段】ダイス2のノズル8から吐出された溶融した材料を回転する切断刃12a,…,12dにより冷却水の中で切断する水中カット造粒方法であって、誘導加熱装置4を切断刃を挟んでノズルの吐出口と対向するように配置し、誘電加熱装置4内の誘導加熱用コイルに通電しジュール発熱によりダイスを加熱する。
【解決手段】ダイス2のノズル8から吐出された溶融した材料を回転する切断刃12a,…,12dにより冷却水の中で切断する水中カット造粒方法であって、誘導加熱装置4を切断刃を挟んでノズルの吐出口と対向するように配置し、誘電加熱装置4内の誘導加熱用コイルに通電しジュール発熱によりダイスを加熱する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂等の水中カット造粒装置におけるダイスの温度低下による目詰まりを防止する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成型機などによる成型加工に使用される樹脂ペレットは、重合および後処理工程を経て得られた樹脂を、用途に応じてフィラーおよび着色剤などを加えて混練および加熱溶融し、ペレタイザ(造粒装置)においてダイスの複数のノズル(細孔)から押し出された棒状の樹脂をカッターで切断して製造される。切断されたペレットは、高温のままでは互いに粘着し易いために強制空冷または水冷される。特に、大容量を処理するギヤポンプ付連続混練機におけるペレタイザ(造粒装置)では、ノズルからの樹脂の押し出しおよびカッターによる樹脂の切断を水中で行う水中カット方式を用いるのが一般的である。
【0003】
このように、水中カット方式は、樹脂がノズルから吐出されると同時に急冷され切断されたペレット間の粘着が生じにくい反面、ノズルの吐出口が水に接しているためにノズル内の溶融樹脂の温度低下が生じやすく、溶融樹脂の粘度が変動してペレットの形状不良を引き起こしたり、場合によりノズル内で樹脂が固化しノズルを閉塞して、造粒装置が操業停止に至るおそれがある。
水中カット方式における上記問題に対して、従来より、ホットオイルやスチームなどの熱媒の流路をダイス内に張り巡らせてダイス全体を加熱することがなされている。また、近年、これらの加熱方式における温度ムラおよび加熱効率の悪さを改善するため、ダイス内に加熱コイルを設けて、誘電加熱によりダイスの温度低下を防止する方式も提案されている(特許文献1〜4)。
【特許文献1】特開平9−201822号
【特許文献2】特開2003−62888号
【特許文献3】特開2003−62889号
【特許文献4】特開2004−66561号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1〜4に提案された誘電加熱方式は、加熱コイルがノズルの周囲を取り巻くように配置されており、熱効率が極めてよく、かつ加熱範囲の設定が可能でノズル毎の温度のバラツキが小さいという利点がある。
しかし、特許文献1〜4に提案された誘電加熱方式では、加熱コイルがダイス内に組み込まれていることから、誘導加熱による発熱によって加熱コイル自体の温度が高温になる。加熱コイルの温度が高温になると電気抵抗が増加して効率が低下し、また加熱コイルの温度が許容温度を超える高温になると導線同士の導通を防止するべく導線に被覆されている絶縁体の温度が上昇して絶縁破壊するおそれがある。そのため、加熱コイル近傍に温度センサーを取り付け、加熱コイルが少なくとも許容温度を越えないように加熱コイルに供給する電流およびその周波数を制御するなどの措置を講ずる必要がある。また、加熱コイルをダイス内に組み込む加工が必要となり、ダイスの製作が煩雑になるという問題もある。
【0005】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、加熱コイル自体の温度がその許容温度を超えるおそれがなくかつダイスの格別の加工が不要な水中カット造粒方法および水中カット造粒装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明に係る水中カット造粒方法は、ダイスのノズルから吐出された溶融した材料を回転する切断刃により冷却水の中で切断する水中カット造粒方法であって、誘導加熱用コイルを前記切断刃を挟んで前記ノズルの吐出口と対向するように配置し、前記誘導加熱用コイルに通電しジュール発熱により前記ダイスを加熱する。
本発明によれば、ダイスに格別の加工を施さなくとも、誘導加熱用コイル自体の温度を過度に上昇させることなくノズル内の樹脂の固化を防止することができる。
【0007】
すなわち、誘導加熱用コイルは、加熱対象であるダイスのノズル吐出口に対向する位置に配置されるため、冷却水を収容する水室内または水室におけるダイスに対向する壁面あるいはその壁面を介した水室外に設けられることになる。そして、加熱対象と誘導加熱用コイルとの間には冷却水が存在するので、誘導加熱用コイルは、高温となった加熱対象からの熱伝導により過熱されることがない。
前記水中カット造粒方法においては、前記誘導加熱用コイルとして、外面が非導電性材料により被覆された誘導加熱用コイルを用い、前記誘導加熱用コイルを前記冷却水に浸漬して冷却することができる。
【0008】
このようにして造粒することにより、誘導加熱用コイル自体が発熱することによる誘導加熱用コイル自体の過熱を防止することができ、また、冷却水として電気的絶縁性の高い純水だけではなく通常の水を使用することもでき、およびランニングコストを低減させることもできる。
好ましくは、前記誘導加熱用コイルとして、外面が非導電性材料により被覆された誘導加熱用コイルを用い、前記誘導加熱用コイルをケーシング内に収容して前記冷却水から電気的に絶縁し、前記ケーシング内において前記誘導加熱用コイルを冷却媒体に浸漬して冷却する。
【0009】
前記誘導加熱用コイルを前記冷却水の水室における前記ノズルに対向する壁面よりも外方に設けて前記冷却水と電気的に絶縁してもよい。
前記誘導加熱用コイルを中空の管で形成し前記管に冷却媒体を流通させてもよい。
このようにすれば、誘導加熱用コイルの過熱のおそれをより減少させることができる。
本発明に係る水中カット造粒装置は、ダイスのノズルから吐出された溶融した材料を切断するための回転する切断刃と、前記ダイスにおける前記ノズルの吐出口を有する面を内面の一部とする水室と、前記切断刃を挟んで前記吐出口と対向するように配置された1つまたは複数の誘導加熱用コイルと、を備え、前記誘導加熱用コイルにより前記ダイスをジュール発熱させて加熱するように構成されてなる。
【0010】
本発明に係る水中カット造粒装置は、稼働中に加熱コイル自体の温度がその許容温度を超えるおそれがなくかつダイスの格別の加工が不要である。
誘導加熱用コイルは、冷却水を収容する水室内または水室におけるダイスに対向する壁面に設けられる。そして、加熱対象と誘導加熱用コイルとの間には冷却水が存在するので、誘導加熱用コイルは、高温となった加熱対象からの熱伝導により過熱されることがない。
好ましくは、前記誘導加熱用コイルは、ケーシングに収容され隔壁により前記冷却水から電気的に絶縁されている。
【0011】
好ましくは、前記誘導加熱用コイルは、前記水室における前記ノズルに対向する壁面よりも外方に設けられる。
また、好ましくは、前記ケーシングは、少なくとも前記吐出口に対向する部分が非導電性材料により形成されまたは前記誘導加熱用コイルによる過電流の発生を抑制するためのスリット加工が施された導電性材料により形成されている。
誘導加熱用コイルにより生ずる磁力線をケーシングに収束させることなくダイスの表面近辺に至らせることができ、ダイスのジュール発熱をより確実なものとすることができる。
【0012】
前記ケーシング内には前記誘導加熱用コイルを冷却するための冷却媒体が収容され、または前記誘導加熱用コイルは、中空の管で形成され管の内部に冷却媒体が流通可能に構成されてなる。
このように構成された水中カット造粒装置は、稼働中の誘導加熱用コイルの過熱のおそれをより減少させることができる。
前記誘導加熱用コイルは、外面が非導電性材料により被覆されている導体により形成されている。
【0013】
このような誘導加熱用コイルを用いた水中カット造粒装置は、冷却水および冷却媒体として電気的絶縁性の高い純水ではなく通常の水を使用することができ、ランニングコストを低減させることができる。
また、好ましくは、前記誘導加熱用コイルは、導体が同一の平面上に渦巻き状に巻かれた平型コイルである。
さらに好ましくは、前記誘導加熱用コイルは、導体が前記ノズルの吐出口を有する面と平行な平面上に渦巻き状に巻かれた平型コイルである。
【0014】
このような平型コイルを使用することにより、誘導加熱用コイルをコンパクトにすることができる。
なお、上に記載された「外方」とは、「ノズルから遠ざかる方向」の意である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、加熱コイル自体の温度がその許容温度を超えるおそれがなくかつダイスの格別の加工が不要な水中カット造粒方法および水中カット造粒装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は本発明に係る水中カット造粒装置1の正面断面図、図2は図1のA−A矢視におけるダイプレート2およびカッター3を示す図、図3は加熱装置4の正面断面図、図4は図3におけるB−B矢視の加熱装置4近辺の断面図、図5はコア材5の斜視図である。
図1において、水中カット造粒装置1は、押出機で溶融された樹脂をペレット状に造粒する装置であり、ダイプレート(平ダイス)2、ハウジング6、カッター3、および加熱装置4などからなる。
ダイプレート2は、略円盤状であって一方の面に環状の凸部7を有する。凸部7には、図2に示されるように、一方の面から他方の面に貫通し断面が円形の多数のノズル8,…,8がほぼ一様に設けられている。ダイプレート2は、上流側の押出機のチャンバー9から送られる溶融樹脂をノズル8,…,8によって一定の断面形状に整えて水室10に吐出する。
【0017】
ダイプレート2の材質は、鋼、または磁性を有するマルテンサイト系などのステンレスであることが好ましい。
ハウジング6は、ダイプレート2とともに、ダイプレート2の凸部7を有する面を内面の一部とする水室10を構成する。ハウジング6は、水室10内に冷却水を流通させるための給水口PT1および排水口PT2を備えている。水室10におけるダイプレート2に対向する側には、回転可能なカッター3を支持する軸受け11がハウジング6に一体化されている。
【0018】
カッター3は、図2を参照して、4つの刃12a,…,12d、ホルダー13、およびカッター軸14などからなる。刃12a,…,12dは、長さに比して幅が狭い略矩形の形状を有しており、略円盤状のホルダー13に互いに90度の間隔をあけて、カッター3の回転方向に適度に傾斜させて固定されている。ホルダー13はカッター軸14に一体化され、カッター軸14はモータおよび減速機などからなる駆動手段15により回転される。カッター3は、刃12a,…,12dがダイプレート2の凸部7の直近に、およびカッター軸14の回転中心が環状の凸部7の中心になるように配置されている。カッター3は、ノズル8,…,8から吐出された円柱状の溶融した樹脂を、回転しながら刃12a,…,12dによって一定長さのペレットに切断する。
【0019】
本発明における「切断刃」は、上記刃12a,…,12dに該当する。
加熱装置4は、誘導加熱用コイル16、保護容器17、および保護容器カバー18などからなる。
誘導加熱用コイル16(以下、「コイル16」ということがある)は、図3および図4を参照して、導線を同一の平面上に渦巻き状に巻いて形成された「平型コイル」と称するものが用いられる。コイル16の導線には電気抵抗の低い材料が好ましく、銅または銅合金が用いられる。導線には、内部に冷媒(水または空気)を通して冷却する中空管、または中実線材が用いられる。コイル16の導線に中実線材を用いる場合には、エナメルで被覆した素線を撚った線材(リッツ線)が適当である。
【0020】
コイル16自身がジュール発熱することによる過熱を防止する方策として、コイル16を中空の銅管で形成した場合には、内部に冷媒(水または空気)を通して強制冷却することができる。また、コイル16を中実線材で形成した場合には、導線の周りを純水などの非導電性の冷媒に浸したり、発熱自体を抑制するために高周波電流を用いて電流振幅を低く抑えてもよい。
保護容器17は、下部のコイル収容部19と上部の蓋部20とからなる。
コイル収容部19は、高さの低い円柱の中心部に孔が貫通し一方の底面に環状の凹部21が設けられたような形状となっている。コイル収容部19は、複数の硅素鋼板製のコア材5,…,5により形成されている。コア材5は、全体として楔形を呈しており、図5に示されるように、先細側の端面35が凹状の円柱周面に、および他端側の端面36が凸状の円柱周面になっている。上面には、環状の凹部21の一部となる溝38が設けられている。コイル収容部19は、硅素鋼板製のコア材5,…,5を、それぞれの側面22aと側面22bとを次々に接着剤により接着してそれぞれの間に電気的絶縁性を維持して一体化されている。接着剤にはエポキシ樹脂系の接着剤が使用される。コイル収容部19に周方向の渦電流が流れないよう各コア材5,…,5の間の電気的絶縁性を完全なものとするために、側面22aと側面22bとの間に非導電性材料のシートを挟み込み接着剤で接合して形成してもよい。
【0021】
コイル収容部19をこのように周方向に分断された複数のコア材5,…,5によって形成することにより、加熱装置4に高周波電流を印加したときに生ずるコイル16に直交する磁力線が発生させるコイル収容部19における渦電流を抑制することができる。このように、電気的絶縁性を維持するべく、コイル16の周方向に分断されたスリット状になすことを本発明においては「スリット加工」と称している。そして、このスリット部分に電気的絶縁性のある接着剤やシート(ゴムや紙など)を設けることができるようにしている。なお、コイル収容部19は、その構成部材に生じる渦電流を抑制することが重要であって、構成部材の形状やスリット加工の数(分割数)は適宜変更することができる。コア材5を、磁性を有する他の材料、例えば軟鉄、パーマロイなどで形成してもよい。また、コイル収容部19を、例えば樹脂などの非導電性材料で形成してもよく、その場合には、コイル収容部を複数のコア材で形成するのではなく当初より一体品として成形しまたは切削するなどして形成することができる。
【0022】
蓋部20は、コイル収容部19と組み合わせて凹部21を密閉するためのものであり、コイル収容部19と同様に高さの低い円柱の中心部に孔が貫通する形状となっている。蓋部20のコイル収容部19と組み合わされる側の底面には、凹部21に嵌合する環状の凸部23が設けられている。蓋部20は非導電性の樹脂により形成される。
保護容器17は、本発明におけるケーシングに該当する。保護容器17の替わりに樹脂でコイル16を封止してもよい。
絶縁材によって被覆されたコイルを用いて、コイル収容部19との間の電気的絶縁を確保してもよい。絶縁材により被覆されて渦巻きの巻きが密にされたコイルを使用してもよい。コイル収容部19における蓋部20との当接面は、複数のOリング24a,…,24dにより密閉され外部からの水の浸入が防止されている。
【0023】
保護容器カバー18は、外蓋部25および内蓋部26からなる。保護容器カバー18は、外蓋部25および内蓋部26を組み合わせることにより保護容器17全体を覆って保護する。外蓋部25および内蓋部26は、図3における上下方向から複数の固定具27,…,27およびボルト28,…,28により一体化される。
保護容器17および保護容器カバー18は、本来、非磁性かつ非導電性材料で形成されるのが好ましい。特に、コイル16と被加熱体(ダイプレート2)との間の部材(本実施形態では蓋部20および外蓋部25)は非磁性かつ非導電性材料で形成されるのが好ましい。しかし、コイル16と被加熱体との間の部材を金属材料で形成する場合には、できるだけ電気伝導度が低い金属を用いるのが好ましい。例えば、蓋部20および外蓋部25をこのような金属材料で形成するときは、これらの平面内に誘導される渦電流の発生を極力抑えられるようにスリット加工が施され、スリットで分断される隙間には樹脂およびゴムなどの絶縁材を挟む必要がある。
【0024】
加熱装置4は、蓋部20の側がカッター3の刃12a,…,12dを挟んでダイプレート2のノズル8,…,8の吐出口と対向するようにして水室10内に配置される(図1および図2参照)。また、加熱装置4におけるコイル16は、加熱装置4がこのように水室10内に配置されたときに、例えば、加熱装置4をカッター軸14に沿ってダイプレート2まで移動したとするとコイル16全体が丁度全てのノズル8,…,8の吐出口と重なるように(コイル16全体の外周からノズル8,…,8がはみ出ないよう)配置されている。
【0025】
加熱装置4では、コイル16に交番電流を供給するための電源供給ケーブル29a,29bが防水処理されて外部に引き出されている。
次に、加熱装置4によってダイプレート2のノズル8,…,8の吐出口近辺が加熱される様子について説明する。
水室10内に図1に示されるように配置された加熱装置4のコイル16(図3、図4参照)に交番電流を印加すると、コイル16の周囲にコイル16の巻きと直角方向の磁力線が発生する。コイル収容部19および蓋部20(コイル16とダイプレート2との間に位置する部材)は磁力線を収束しにくい材料で形成されているので、発生した磁力線は蓋部20および外蓋部25を通過してダイプレート2に達する。ダイプレート2の凸部7は、図2によく示されるように、コイル16に対応するように環状となっているので、凸部7全体に渡ってその表面近くに、磁力線を打ち消す方向に渦電流が発生する。この発生した渦電流によりノズル8,…,8の吐出口近辺がジュール発熱により加熱される。
【0026】
なお、本発明にいう「隔壁」は、コイル収容部19、蓋部20、外蓋部25,または内蓋部26に該当するものであり、非磁性かつ非導電性材料で形成されたものであることが好ましい。
刃12a,…,12dは、周方向についての幅が狭いために、その温度上昇が問題となるほどの渦電流は生じない。
コイル16には、周波数が50Hz〜数十kHzの交番電流が印加される。高周波の交番電流を印加する場合は電流を低くすることができるが、一方で電源供給ケーブルからの高周波ノイズが生ずるので、電源供給ケーブルを短縮するためにコイル16と電源との距離を短くすることが好ましい。ノズル8,…,8内における溶融樹脂の温度低下に起因して生ずるペレットの形状不良やノズル8,…,8詰まりを防止するには、コイル16に供給する電流を増加させる必要があるが、水中カット造粒装置1では、加熱装置4が水室10内に配置され水室10の水により容易に冷却されるので、電流を増加させても加熱装置4が過熱するという問題は生じず、コイル16自体の温度がその許容温度を超えるおそれがない。
【0027】
また、ダイプレート2(ダイス)にコイル16を埋め込む必要がないのでダイプレート2に格別の加工を要しない。
さらに、水中カット造粒装置1は、凸部7の周方向全体に渡って加熱することができるので、ノズル8,…,8の位置によって大きな温度のバラツキを生ずることがない。そのため、ノズル8,…,8を凸部7全体に高密度で設けることができ、水中カット造粒装置1のペレット生産能力を増加させることができる。また、凸部7における温度分布の存在を重要視しなくてもよいため、温度測定点を減少させることができ、温度制御方法も簡便化することができる。
【0028】
なお、加熱装置4においてコイル収容部19に電気的絶縁性を有する液体、例えばシリコン油、または鉱油系の絶縁油などを充填しておき、これらの対流および熱伝導によりコイル16の冷却の促進を図ってもよい。
続いて本発明の他の実施形態による水中カット造粒装置1Bについて説明する。
図6は水中カット造粒装置1Bにおける図1のA−A矢視相当の断面図、図7は加熱装置4Ba,…,4Bfの斜視図、図8は図6における加熱装置4Ba,…,4Bf近辺の拡大図である。
【0029】
図6において、水中カット造粒装置1Bは、水中カット造粒装置1と同様に押出機で溶融された樹脂をペレット状に造粒する装置であり、ダイプレート1B、ハウジング6、カッター3、および6つの加熱装置4Ba,…,4Bfなどからなる。
以下の説明において水中カット造粒装置1と共通する構成については水中カット造粒装置1における符号と同一の符号を付し、また、水中カット造粒装置1Bにおいて特に説明を行わない構成については、水中カット造粒装置1と同一の構成を有するものとする。
さて、ダイプレート2Bは、ダイプレート2と同じく略円盤状の形状であって一方の面に環状の凸部7Bを有する。凸部7Bには、一方の面から他方の面に貫通し断面が円形の複数のノズル8B,…,8Bが6つのブロックに分散されて設けられている(図8参照)。
【0030】
加熱装置4Ba,…,4Bfは、誘導加熱用コイル16Bおよび保護容器17Bなどからなる。
誘導加熱用コイル16B(以下、「コイル16B」ということがある)は、コイル16と同じく銅のリッツ線を同一の平面上に渦巻き状に巻いて形成されたものであり、加熱装置4Ba,…,4Bfにおいて保護容器17Bの中に収容される。
保護容器17Bは、コイル16Bを収容する略直方体のコイル室30Bを有するコイル収容部19B、およびコイル室30Bに蓋をして外部から遮蔽する蓋部20Bなどからなる。
【0031】
コイル収容部19Bは、同一形状の珪素鋼製の収容部材31Bが4つ組み合わされて形成されている。収容部材31Bは、図9に示されるように、上下左右前後の六つの側面がいずれもL字状となる形状、つまり、直方体の原部材からこれよりも小さい直方体を、頂点の1つが共通し3つの側面が共通となるように削り取り、さらに、別の小さい直方体を、原部材の直方体における切り取られた頂点に対角する頂点と切り取られていない3つの側面が共通となるように削り取ったような形状をしている。コイル収容部19Bは、4つの収容部材31Bがボルト32B,…,32Bで一体化されて形成される。
【0032】
コイル収容部19Bを形成する各収容部材31B,…,31Bの間には、コイル16Bに交番電流を印加したときに収容部材31B,…,31Bに発生する渦電流を相互に遮断するための、絶縁性を有する合成ゴム製のシート33Bが挟みこまれている。コイル収容部19Bを、非導電性の樹脂などにより形成してもよく、その場合には、コイル収容部として一体成形することができる。
蓋部20Bは、非導電性の樹脂により形成されており、コイル室30Bにコイル16Bを収容した後、図示しないボルトによってコイル収容部19Bと一体化される。一体化されたコイル収容部19Bと蓋部20Bの間には、コイル室への水の浸入を防止するためのシール材34Bが挟みこまれる。
【0033】
保護容器17Bは、本発明におけるケーシングに該当する。
加熱装置4Ba,…,4Bfにおいては、コイル室30Bの底面および側面とコイル16Bとの間には図示しない樹脂製の絶縁シートが設けられて、両者の間が電気的に絶縁されている。コイル16Bを絶縁材によって被覆し、コイル収容部19Bとの間の電気的絶縁を確保してもよい。絶縁材により被覆され渦巻きの巻きを密にしたコイルを使用して加熱装置4Ba,…,4Bfをコンパクトにしてもよい。
水中カット造粒装置1Bにおいて、加熱装置4Ba,…,4Bfは、蓋部20B側がカッター3の刃12a,…,12dを挟んで、それぞれダイプレート2Bのいずれかのブロック化された一群のノズル8B,…,8Bの吐出口と対向するように水室10内に配置される(図8参照)。したがって、各加熱装置4Ba,…,4Bfのコイル16Bに交番電流が印加されると、コイル16Bに直交するように生じた磁力線を打ち消すようにそれぞれの加熱装置4Ba,…,4Bfに対向するブロック化された一群のノズル8B,…,8Bの表面近くに渦電流が発生し、ノズル8B,…,8Bの吐出口近辺がジュール発熱により加熱される。ブロック化された一群のノズル8B,…,8Bはすべての吐出口近辺がほぼ均等に加熱され、ノズル8B,…,8Bの位置によって大きな温度のバラツキを生ずることがない。また、加熱装置4Ba,…,4Bfは水室10の水により冷却されるので、加熱装置4Ba,…,4Bfが過熱するという問題は生じない。
【0034】
各加熱装置4Ba,…,4Bfにおいてコイル室30Bにシリコン油または鉱油系の絶縁油を充填しておき、これらの対流および熱伝導によりコイル16Bの冷却の促進を図ってもよい。
各加熱装置4Ba,…,4Bfを水室10の軸受け側の内面に埋め込み、それぞれの一部のみを水室10に露出するように構成することができる。
水中カット造粒装置1Bは、上記構成とすることによりコイル16B自体の温度がその許容温度を超えるおそれがなく、かつダイプレート2B(ダイス)にコイルを埋め込む必要がないのでダイプレート2Bに格別の加工を要しない。
【0035】
ダイプレート2Bに環状の凸部7Bを設けるのではなく、加熱装置4Ba,…,4Bfに対向する6つの一定領域のみ水室10に若干突出する凸部を設け、それぞれの凸部に一群のノズルを設けることもできる。また、環状の凸部7Bに対向して配置される加熱装置の数は水中カット造粒装置1Bのような6つに限られず、5つ以下または7つ以上とすることもできる。その場合、各加熱装置に対向する位置に設けられる一群のノズルが集合するブロックは、加熱装置の数に応じた数が選択される。
上述の実施形態において、加熱装置4の凹部21、または加熱装置4Ba,…,4Bfのコイル室30Bに純水を流通させてコイル16,16Bの冷却が促進されるように構成することができる。例えば、図3に示される加熱装置4に、図10に示されるようにコイル収容部19Cに純水を流通させるためのポートPT3およびポートPT4を設け、凹部21C内を流通する純水によりコイル16Cの冷却を行ってもよい。また、水室10内に流通させる水に純水を使用し、誘導加熱用コイルをむき出しのまま、カッターの刃12a,…,12dを挟んでダイプレート2,2Bのノズルの吐出口8,…,8,8B,…,8Bと対向するようにして水室10内に配置してもよい。
【0036】
ただし、純水によりコイルの冷却を行う場合、加熱装置の凹部21Cまたは加熱装置4Ba,…,4Bfのコイル室30Bに純水を流通させてコイル16B,16Cを冷却する方が、純水供給設備への負担が少なく、かかる冷却方法によるコスト増を抑制する上では望ましい。
図11は他の実施形態における加熱装置4Dの正面部分断面図である。本実施の形態に係る加熱装置4Dは、図3に記載の加熱装置4とは保護容器の形態およびそれに収められたコイルの形態が異なる点以外は同様のものである。加熱装置4Dにおいて、保護容器17は、ドーナツ盤状の板の内周部に円筒状の枠部40Dが形成された形状の蓋部20D(以下、「巻枠20D」ということがある)と、ドーナツ盤状の板の外周部に円筒状の枠部40Dが形成された固定枠19Dとからなり、互いの円筒部38D,40Dの端面が相手方のドーナツ盤状の板の表面に当接するように組み合わされることで、内部に空間を形成する。円筒部38D,40Dとドーナツ盤状の板との当接部にはシール部材が設けられており、シール部材は、空間を液密状態に維持する。このシール部材は、この場所以外に設けてもよく、例えば、外蓋部25と内蓋部26との間に介在させてもよい。
【0037】
コイル16Dは、リッツ線39Dを巻枠20Dの内側の枠部40Dに巻き付けて形成されている。具体的には、巻枠20Dに対して径方向へ渦巻状に巻き付けられて平型コイル状となった層が軸方向へ複数層設けられている。平型コイル状の層を連続して軸方向に複数層設けたり、不連続に複数層設ける(個別単層の平型コイルを軸方向に並べて設ける)など、コイルの巻き方は適宜変更してもよい。
加熱装置4Dは、保護容器17および保護容器カバー18が非磁性かつ非導電性材料で形成されている。図11に示される加熱装置4Dにおいて図1に示される加熱装置4と同じ符号の部位は、加熱装置4と同様に構成されている。枠部40Dに巻き付ける代わりに導線自身の剛性で保持するようにしてもよい(空芯構造)。また、空芯構造でコイルを形成し、コイル全体を樹脂で封止してもよい。
【0038】
コイル16,16Bで発生する磁場を効率よく被加熱体に誘導するためには、コイル16,16Bを被加熱物に可能な限り近づけるのが好ましく、加熱装置4では、図1に示されるように水室10内に設けられることによりこの要件を満たしている。
しかし、他の構成でこの要件を満たすことも可能である。図12は他の実施形態における水中カット造粒装置1Eの正面断面図である。水中カット造粒装置1Eにおいては、加熱装置4Eは、ハウジング6Eの軸受け11側に埋め込まれ、実質的に水室10外に配置されている。そこで、水室10はそのカッター軸14E方向の幅が可能な限り狭くなっており、加熱装置4Eがダイプレート2に近づくように配慮されている。水中カット造粒装置1Eでは、加熱装置4Eが埋め込まれた側のハウジング6Eの面に誘導電流が発生しないように、スリット加工などで遮断するか、ハウシング6Eの該当面が非導電性材料により形成される。
【0039】
加熱装置4Eについて、ノズル8,…,8に対向する側に、図5に示されるようなコア材5を多数用いて図3,4に示されるようなスリット加工されたコイル収容部を配し、さらに非磁性かつ非導電性材料で形成された部材(隔壁)によりコイル収容部を水室10Eから電気的に絶縁するようにしてもよい。ノズル8,…,8に対向する側の面を、非磁性かつ非導電性材料で形成された部材(隔壁)により形成し、コイルを水室10Eから電気的に絶縁するようにしてもよい。
加熱装置4Eをハウジング6,6Eと一体化して水室10,10E内に突出するように構成してもよい。
【0040】
水中カット造粒装置において、表面が電気的絶縁性を有する樹脂等で被覆された誘導加熱用コイル自体を、そのまま、カッターの刃12a,…,12dを挟んでダイプレートのノズルの吐出口と対向するようにして水室10内に配置してもよい。このような、樹脂等で被覆され電気的に絶縁されたコイル自体が水室10内に配置される場合、または保護容器17,17Bの凹部21,21B,21Cに収容される場合であって、水室10内の流水では十分なコイルの冷却ができないときは、コイルを中空のパイプで形成し、その内部に冷却エアや冷却水などの冷却媒体を流してコイルを内部から冷却するようにしてもよい。
【0041】
図13は水中カット造粒装置における加熱装置の種々の実施形態を示すものである。
図13において、例えば、中実裸線または中実被覆線とは導体の撚線(リッツ線)および中実棒などにより形成されたコイルをいい、中空裸線または中空被覆線とは内部に流体が流通可能な空洞を有する銅管などにより形成されたコイルをいう。
コイルは、ダイプレート2,2Bの特定の部分、例えば凸部7の表面近傍または凸部7Bの一群のノズル8B,…,8Bの表面近くに渦電流を発生させるものであれば、銅のリッツ線を同一の平面上に渦巻き状に巻いて形成されたいわゆる「平型コイル」だけではなく、例えば棒状の銅をコイル状にしたものまたは四角状に巻いたもの、図11に示されるように巻いたものなど、および他の材質、他の形式のコイルを用いることができる。
【0042】
その他、ダイプレート2,2B、ハウジング6、カッター3、および加熱装置4,4Bなどの全体または各部の構成、材質、形状および寸法などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、樹脂等の押出機における水中カット造粒装置として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る水中カット造粒装置の正面断面図である。
【図2】図1のA−A矢視におけるダイプレートおよびカッターを示す図である。
【図3】加熱装置の正面断面図である。
【図4】図3におけるB−B矢視の加熱装置近辺の断面図である。
【図5】コア材の斜視図である。
【図6】本発明の他の実施形態における図1のA−A矢視相当の断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態における加熱装置の斜視図である。
【図8】図6における加熱装置Ba,…,Bf近辺の拡大図である。
【図9】収容部材の斜視図である。
【図10】コイル収容部Cに純水を流通させる加熱装置の断面図である。
【図11】他の実施形態における加熱装置の正面部分断面図である。
【図12】他の実施形態における水中カット造粒装置の正面断面図である。
【図13】水中カット造粒装置における加熱装置の種々の実施形態である。
【符号の説明】
【0045】
1,1B 水中カット造粒装置
2,2B ダイス(ダイプレート)
8 ノズル
10 水室
12a,…,12d 切断刃(刃)
16 誘導加熱用コイル(コイル)
17,17B ケーシング(保護容器)
19 隔壁(コイル収容部)
20 隔壁(蓋部)
25 隔壁(外蓋部)
26 隔壁(内蓋部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂等の水中カット造粒装置におけるダイスの温度低下による目詰まりを防止する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成型機などによる成型加工に使用される樹脂ペレットは、重合および後処理工程を経て得られた樹脂を、用途に応じてフィラーおよび着色剤などを加えて混練および加熱溶融し、ペレタイザ(造粒装置)においてダイスの複数のノズル(細孔)から押し出された棒状の樹脂をカッターで切断して製造される。切断されたペレットは、高温のままでは互いに粘着し易いために強制空冷または水冷される。特に、大容量を処理するギヤポンプ付連続混練機におけるペレタイザ(造粒装置)では、ノズルからの樹脂の押し出しおよびカッターによる樹脂の切断を水中で行う水中カット方式を用いるのが一般的である。
【0003】
このように、水中カット方式は、樹脂がノズルから吐出されると同時に急冷され切断されたペレット間の粘着が生じにくい反面、ノズルの吐出口が水に接しているためにノズル内の溶融樹脂の温度低下が生じやすく、溶融樹脂の粘度が変動してペレットの形状不良を引き起こしたり、場合によりノズル内で樹脂が固化しノズルを閉塞して、造粒装置が操業停止に至るおそれがある。
水中カット方式における上記問題に対して、従来より、ホットオイルやスチームなどの熱媒の流路をダイス内に張り巡らせてダイス全体を加熱することがなされている。また、近年、これらの加熱方式における温度ムラおよび加熱効率の悪さを改善するため、ダイス内に加熱コイルを設けて、誘電加熱によりダイスの温度低下を防止する方式も提案されている(特許文献1〜4)。
【特許文献1】特開平9−201822号
【特許文献2】特開2003−62888号
【特許文献3】特開2003−62889号
【特許文献4】特開2004−66561号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1〜4に提案された誘電加熱方式は、加熱コイルがノズルの周囲を取り巻くように配置されており、熱効率が極めてよく、かつ加熱範囲の設定が可能でノズル毎の温度のバラツキが小さいという利点がある。
しかし、特許文献1〜4に提案された誘電加熱方式では、加熱コイルがダイス内に組み込まれていることから、誘導加熱による発熱によって加熱コイル自体の温度が高温になる。加熱コイルの温度が高温になると電気抵抗が増加して効率が低下し、また加熱コイルの温度が許容温度を超える高温になると導線同士の導通を防止するべく導線に被覆されている絶縁体の温度が上昇して絶縁破壊するおそれがある。そのため、加熱コイル近傍に温度センサーを取り付け、加熱コイルが少なくとも許容温度を越えないように加熱コイルに供給する電流およびその周波数を制御するなどの措置を講ずる必要がある。また、加熱コイルをダイス内に組み込む加工が必要となり、ダイスの製作が煩雑になるという問題もある。
【0005】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、加熱コイル自体の温度がその許容温度を超えるおそれがなくかつダイスの格別の加工が不要な水中カット造粒方法および水中カット造粒装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明に係る水中カット造粒方法は、ダイスのノズルから吐出された溶融した材料を回転する切断刃により冷却水の中で切断する水中カット造粒方法であって、誘導加熱用コイルを前記切断刃を挟んで前記ノズルの吐出口と対向するように配置し、前記誘導加熱用コイルに通電しジュール発熱により前記ダイスを加熱する。
本発明によれば、ダイスに格別の加工を施さなくとも、誘導加熱用コイル自体の温度を過度に上昇させることなくノズル内の樹脂の固化を防止することができる。
【0007】
すなわち、誘導加熱用コイルは、加熱対象であるダイスのノズル吐出口に対向する位置に配置されるため、冷却水を収容する水室内または水室におけるダイスに対向する壁面あるいはその壁面を介した水室外に設けられることになる。そして、加熱対象と誘導加熱用コイルとの間には冷却水が存在するので、誘導加熱用コイルは、高温となった加熱対象からの熱伝導により過熱されることがない。
前記水中カット造粒方法においては、前記誘導加熱用コイルとして、外面が非導電性材料により被覆された誘導加熱用コイルを用い、前記誘導加熱用コイルを前記冷却水に浸漬して冷却することができる。
【0008】
このようにして造粒することにより、誘導加熱用コイル自体が発熱することによる誘導加熱用コイル自体の過熱を防止することができ、また、冷却水として電気的絶縁性の高い純水だけではなく通常の水を使用することもでき、およびランニングコストを低減させることもできる。
好ましくは、前記誘導加熱用コイルとして、外面が非導電性材料により被覆された誘導加熱用コイルを用い、前記誘導加熱用コイルをケーシング内に収容して前記冷却水から電気的に絶縁し、前記ケーシング内において前記誘導加熱用コイルを冷却媒体に浸漬して冷却する。
【0009】
前記誘導加熱用コイルを前記冷却水の水室における前記ノズルに対向する壁面よりも外方に設けて前記冷却水と電気的に絶縁してもよい。
前記誘導加熱用コイルを中空の管で形成し前記管に冷却媒体を流通させてもよい。
このようにすれば、誘導加熱用コイルの過熱のおそれをより減少させることができる。
本発明に係る水中カット造粒装置は、ダイスのノズルから吐出された溶融した材料を切断するための回転する切断刃と、前記ダイスにおける前記ノズルの吐出口を有する面を内面の一部とする水室と、前記切断刃を挟んで前記吐出口と対向するように配置された1つまたは複数の誘導加熱用コイルと、を備え、前記誘導加熱用コイルにより前記ダイスをジュール発熱させて加熱するように構成されてなる。
【0010】
本発明に係る水中カット造粒装置は、稼働中に加熱コイル自体の温度がその許容温度を超えるおそれがなくかつダイスの格別の加工が不要である。
誘導加熱用コイルは、冷却水を収容する水室内または水室におけるダイスに対向する壁面に設けられる。そして、加熱対象と誘導加熱用コイルとの間には冷却水が存在するので、誘導加熱用コイルは、高温となった加熱対象からの熱伝導により過熱されることがない。
好ましくは、前記誘導加熱用コイルは、ケーシングに収容され隔壁により前記冷却水から電気的に絶縁されている。
【0011】
好ましくは、前記誘導加熱用コイルは、前記水室における前記ノズルに対向する壁面よりも外方に設けられる。
また、好ましくは、前記ケーシングは、少なくとも前記吐出口に対向する部分が非導電性材料により形成されまたは前記誘導加熱用コイルによる過電流の発生を抑制するためのスリット加工が施された導電性材料により形成されている。
誘導加熱用コイルにより生ずる磁力線をケーシングに収束させることなくダイスの表面近辺に至らせることができ、ダイスのジュール発熱をより確実なものとすることができる。
【0012】
前記ケーシング内には前記誘導加熱用コイルを冷却するための冷却媒体が収容され、または前記誘導加熱用コイルは、中空の管で形成され管の内部に冷却媒体が流通可能に構成されてなる。
このように構成された水中カット造粒装置は、稼働中の誘導加熱用コイルの過熱のおそれをより減少させることができる。
前記誘導加熱用コイルは、外面が非導電性材料により被覆されている導体により形成されている。
【0013】
このような誘導加熱用コイルを用いた水中カット造粒装置は、冷却水および冷却媒体として電気的絶縁性の高い純水ではなく通常の水を使用することができ、ランニングコストを低減させることができる。
また、好ましくは、前記誘導加熱用コイルは、導体が同一の平面上に渦巻き状に巻かれた平型コイルである。
さらに好ましくは、前記誘導加熱用コイルは、導体が前記ノズルの吐出口を有する面と平行な平面上に渦巻き状に巻かれた平型コイルである。
【0014】
このような平型コイルを使用することにより、誘導加熱用コイルをコンパクトにすることができる。
なお、上に記載された「外方」とは、「ノズルから遠ざかる方向」の意である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、加熱コイル自体の温度がその許容温度を超えるおそれがなくかつダイスの格別の加工が不要な水中カット造粒方法および水中カット造粒装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は本発明に係る水中カット造粒装置1の正面断面図、図2は図1のA−A矢視におけるダイプレート2およびカッター3を示す図、図3は加熱装置4の正面断面図、図4は図3におけるB−B矢視の加熱装置4近辺の断面図、図5はコア材5の斜視図である。
図1において、水中カット造粒装置1は、押出機で溶融された樹脂をペレット状に造粒する装置であり、ダイプレート(平ダイス)2、ハウジング6、カッター3、および加熱装置4などからなる。
ダイプレート2は、略円盤状であって一方の面に環状の凸部7を有する。凸部7には、図2に示されるように、一方の面から他方の面に貫通し断面が円形の多数のノズル8,…,8がほぼ一様に設けられている。ダイプレート2は、上流側の押出機のチャンバー9から送られる溶融樹脂をノズル8,…,8によって一定の断面形状に整えて水室10に吐出する。
【0017】
ダイプレート2の材質は、鋼、または磁性を有するマルテンサイト系などのステンレスであることが好ましい。
ハウジング6は、ダイプレート2とともに、ダイプレート2の凸部7を有する面を内面の一部とする水室10を構成する。ハウジング6は、水室10内に冷却水を流通させるための給水口PT1および排水口PT2を備えている。水室10におけるダイプレート2に対向する側には、回転可能なカッター3を支持する軸受け11がハウジング6に一体化されている。
【0018】
カッター3は、図2を参照して、4つの刃12a,…,12d、ホルダー13、およびカッター軸14などからなる。刃12a,…,12dは、長さに比して幅が狭い略矩形の形状を有しており、略円盤状のホルダー13に互いに90度の間隔をあけて、カッター3の回転方向に適度に傾斜させて固定されている。ホルダー13はカッター軸14に一体化され、カッター軸14はモータおよび減速機などからなる駆動手段15により回転される。カッター3は、刃12a,…,12dがダイプレート2の凸部7の直近に、およびカッター軸14の回転中心が環状の凸部7の中心になるように配置されている。カッター3は、ノズル8,…,8から吐出された円柱状の溶融した樹脂を、回転しながら刃12a,…,12dによって一定長さのペレットに切断する。
【0019】
本発明における「切断刃」は、上記刃12a,…,12dに該当する。
加熱装置4は、誘導加熱用コイル16、保護容器17、および保護容器カバー18などからなる。
誘導加熱用コイル16(以下、「コイル16」ということがある)は、図3および図4を参照して、導線を同一の平面上に渦巻き状に巻いて形成された「平型コイル」と称するものが用いられる。コイル16の導線には電気抵抗の低い材料が好ましく、銅または銅合金が用いられる。導線には、内部に冷媒(水または空気)を通して冷却する中空管、または中実線材が用いられる。コイル16の導線に中実線材を用いる場合には、エナメルで被覆した素線を撚った線材(リッツ線)が適当である。
【0020】
コイル16自身がジュール発熱することによる過熱を防止する方策として、コイル16を中空の銅管で形成した場合には、内部に冷媒(水または空気)を通して強制冷却することができる。また、コイル16を中実線材で形成した場合には、導線の周りを純水などの非導電性の冷媒に浸したり、発熱自体を抑制するために高周波電流を用いて電流振幅を低く抑えてもよい。
保護容器17は、下部のコイル収容部19と上部の蓋部20とからなる。
コイル収容部19は、高さの低い円柱の中心部に孔が貫通し一方の底面に環状の凹部21が設けられたような形状となっている。コイル収容部19は、複数の硅素鋼板製のコア材5,…,5により形成されている。コア材5は、全体として楔形を呈しており、図5に示されるように、先細側の端面35が凹状の円柱周面に、および他端側の端面36が凸状の円柱周面になっている。上面には、環状の凹部21の一部となる溝38が設けられている。コイル収容部19は、硅素鋼板製のコア材5,…,5を、それぞれの側面22aと側面22bとを次々に接着剤により接着してそれぞれの間に電気的絶縁性を維持して一体化されている。接着剤にはエポキシ樹脂系の接着剤が使用される。コイル収容部19に周方向の渦電流が流れないよう各コア材5,…,5の間の電気的絶縁性を完全なものとするために、側面22aと側面22bとの間に非導電性材料のシートを挟み込み接着剤で接合して形成してもよい。
【0021】
コイル収容部19をこのように周方向に分断された複数のコア材5,…,5によって形成することにより、加熱装置4に高周波電流を印加したときに生ずるコイル16に直交する磁力線が発生させるコイル収容部19における渦電流を抑制することができる。このように、電気的絶縁性を維持するべく、コイル16の周方向に分断されたスリット状になすことを本発明においては「スリット加工」と称している。そして、このスリット部分に電気的絶縁性のある接着剤やシート(ゴムや紙など)を設けることができるようにしている。なお、コイル収容部19は、その構成部材に生じる渦電流を抑制することが重要であって、構成部材の形状やスリット加工の数(分割数)は適宜変更することができる。コア材5を、磁性を有する他の材料、例えば軟鉄、パーマロイなどで形成してもよい。また、コイル収容部19を、例えば樹脂などの非導電性材料で形成してもよく、その場合には、コイル収容部を複数のコア材で形成するのではなく当初より一体品として成形しまたは切削するなどして形成することができる。
【0022】
蓋部20は、コイル収容部19と組み合わせて凹部21を密閉するためのものであり、コイル収容部19と同様に高さの低い円柱の中心部に孔が貫通する形状となっている。蓋部20のコイル収容部19と組み合わされる側の底面には、凹部21に嵌合する環状の凸部23が設けられている。蓋部20は非導電性の樹脂により形成される。
保護容器17は、本発明におけるケーシングに該当する。保護容器17の替わりに樹脂でコイル16を封止してもよい。
絶縁材によって被覆されたコイルを用いて、コイル収容部19との間の電気的絶縁を確保してもよい。絶縁材により被覆されて渦巻きの巻きが密にされたコイルを使用してもよい。コイル収容部19における蓋部20との当接面は、複数のOリング24a,…,24dにより密閉され外部からの水の浸入が防止されている。
【0023】
保護容器カバー18は、外蓋部25および内蓋部26からなる。保護容器カバー18は、外蓋部25および内蓋部26を組み合わせることにより保護容器17全体を覆って保護する。外蓋部25および内蓋部26は、図3における上下方向から複数の固定具27,…,27およびボルト28,…,28により一体化される。
保護容器17および保護容器カバー18は、本来、非磁性かつ非導電性材料で形成されるのが好ましい。特に、コイル16と被加熱体(ダイプレート2)との間の部材(本実施形態では蓋部20および外蓋部25)は非磁性かつ非導電性材料で形成されるのが好ましい。しかし、コイル16と被加熱体との間の部材を金属材料で形成する場合には、できるだけ電気伝導度が低い金属を用いるのが好ましい。例えば、蓋部20および外蓋部25をこのような金属材料で形成するときは、これらの平面内に誘導される渦電流の発生を極力抑えられるようにスリット加工が施され、スリットで分断される隙間には樹脂およびゴムなどの絶縁材を挟む必要がある。
【0024】
加熱装置4は、蓋部20の側がカッター3の刃12a,…,12dを挟んでダイプレート2のノズル8,…,8の吐出口と対向するようにして水室10内に配置される(図1および図2参照)。また、加熱装置4におけるコイル16は、加熱装置4がこのように水室10内に配置されたときに、例えば、加熱装置4をカッター軸14に沿ってダイプレート2まで移動したとするとコイル16全体が丁度全てのノズル8,…,8の吐出口と重なるように(コイル16全体の外周からノズル8,…,8がはみ出ないよう)配置されている。
【0025】
加熱装置4では、コイル16に交番電流を供給するための電源供給ケーブル29a,29bが防水処理されて外部に引き出されている。
次に、加熱装置4によってダイプレート2のノズル8,…,8の吐出口近辺が加熱される様子について説明する。
水室10内に図1に示されるように配置された加熱装置4のコイル16(図3、図4参照)に交番電流を印加すると、コイル16の周囲にコイル16の巻きと直角方向の磁力線が発生する。コイル収容部19および蓋部20(コイル16とダイプレート2との間に位置する部材)は磁力線を収束しにくい材料で形成されているので、発生した磁力線は蓋部20および外蓋部25を通過してダイプレート2に達する。ダイプレート2の凸部7は、図2によく示されるように、コイル16に対応するように環状となっているので、凸部7全体に渡ってその表面近くに、磁力線を打ち消す方向に渦電流が発生する。この発生した渦電流によりノズル8,…,8の吐出口近辺がジュール発熱により加熱される。
【0026】
なお、本発明にいう「隔壁」は、コイル収容部19、蓋部20、外蓋部25,または内蓋部26に該当するものであり、非磁性かつ非導電性材料で形成されたものであることが好ましい。
刃12a,…,12dは、周方向についての幅が狭いために、その温度上昇が問題となるほどの渦電流は生じない。
コイル16には、周波数が50Hz〜数十kHzの交番電流が印加される。高周波の交番電流を印加する場合は電流を低くすることができるが、一方で電源供給ケーブルからの高周波ノイズが生ずるので、電源供給ケーブルを短縮するためにコイル16と電源との距離を短くすることが好ましい。ノズル8,…,8内における溶融樹脂の温度低下に起因して生ずるペレットの形状不良やノズル8,…,8詰まりを防止するには、コイル16に供給する電流を増加させる必要があるが、水中カット造粒装置1では、加熱装置4が水室10内に配置され水室10の水により容易に冷却されるので、電流を増加させても加熱装置4が過熱するという問題は生じず、コイル16自体の温度がその許容温度を超えるおそれがない。
【0027】
また、ダイプレート2(ダイス)にコイル16を埋め込む必要がないのでダイプレート2に格別の加工を要しない。
さらに、水中カット造粒装置1は、凸部7の周方向全体に渡って加熱することができるので、ノズル8,…,8の位置によって大きな温度のバラツキを生ずることがない。そのため、ノズル8,…,8を凸部7全体に高密度で設けることができ、水中カット造粒装置1のペレット生産能力を増加させることができる。また、凸部7における温度分布の存在を重要視しなくてもよいため、温度測定点を減少させることができ、温度制御方法も簡便化することができる。
【0028】
なお、加熱装置4においてコイル収容部19に電気的絶縁性を有する液体、例えばシリコン油、または鉱油系の絶縁油などを充填しておき、これらの対流および熱伝導によりコイル16の冷却の促進を図ってもよい。
続いて本発明の他の実施形態による水中カット造粒装置1Bについて説明する。
図6は水中カット造粒装置1Bにおける図1のA−A矢視相当の断面図、図7は加熱装置4Ba,…,4Bfの斜視図、図8は図6における加熱装置4Ba,…,4Bf近辺の拡大図である。
【0029】
図6において、水中カット造粒装置1Bは、水中カット造粒装置1と同様に押出機で溶融された樹脂をペレット状に造粒する装置であり、ダイプレート1B、ハウジング6、カッター3、および6つの加熱装置4Ba,…,4Bfなどからなる。
以下の説明において水中カット造粒装置1と共通する構成については水中カット造粒装置1における符号と同一の符号を付し、また、水中カット造粒装置1Bにおいて特に説明を行わない構成については、水中カット造粒装置1と同一の構成を有するものとする。
さて、ダイプレート2Bは、ダイプレート2と同じく略円盤状の形状であって一方の面に環状の凸部7Bを有する。凸部7Bには、一方の面から他方の面に貫通し断面が円形の複数のノズル8B,…,8Bが6つのブロックに分散されて設けられている(図8参照)。
【0030】
加熱装置4Ba,…,4Bfは、誘導加熱用コイル16Bおよび保護容器17Bなどからなる。
誘導加熱用コイル16B(以下、「コイル16B」ということがある)は、コイル16と同じく銅のリッツ線を同一の平面上に渦巻き状に巻いて形成されたものであり、加熱装置4Ba,…,4Bfにおいて保護容器17Bの中に収容される。
保護容器17Bは、コイル16Bを収容する略直方体のコイル室30Bを有するコイル収容部19B、およびコイル室30Bに蓋をして外部から遮蔽する蓋部20Bなどからなる。
【0031】
コイル収容部19Bは、同一形状の珪素鋼製の収容部材31Bが4つ組み合わされて形成されている。収容部材31Bは、図9に示されるように、上下左右前後の六つの側面がいずれもL字状となる形状、つまり、直方体の原部材からこれよりも小さい直方体を、頂点の1つが共通し3つの側面が共通となるように削り取り、さらに、別の小さい直方体を、原部材の直方体における切り取られた頂点に対角する頂点と切り取られていない3つの側面が共通となるように削り取ったような形状をしている。コイル収容部19Bは、4つの収容部材31Bがボルト32B,…,32Bで一体化されて形成される。
【0032】
コイル収容部19Bを形成する各収容部材31B,…,31Bの間には、コイル16Bに交番電流を印加したときに収容部材31B,…,31Bに発生する渦電流を相互に遮断するための、絶縁性を有する合成ゴム製のシート33Bが挟みこまれている。コイル収容部19Bを、非導電性の樹脂などにより形成してもよく、その場合には、コイル収容部として一体成形することができる。
蓋部20Bは、非導電性の樹脂により形成されており、コイル室30Bにコイル16Bを収容した後、図示しないボルトによってコイル収容部19Bと一体化される。一体化されたコイル収容部19Bと蓋部20Bの間には、コイル室への水の浸入を防止するためのシール材34Bが挟みこまれる。
【0033】
保護容器17Bは、本発明におけるケーシングに該当する。
加熱装置4Ba,…,4Bfにおいては、コイル室30Bの底面および側面とコイル16Bとの間には図示しない樹脂製の絶縁シートが設けられて、両者の間が電気的に絶縁されている。コイル16Bを絶縁材によって被覆し、コイル収容部19Bとの間の電気的絶縁を確保してもよい。絶縁材により被覆され渦巻きの巻きを密にしたコイルを使用して加熱装置4Ba,…,4Bfをコンパクトにしてもよい。
水中カット造粒装置1Bにおいて、加熱装置4Ba,…,4Bfは、蓋部20B側がカッター3の刃12a,…,12dを挟んで、それぞれダイプレート2Bのいずれかのブロック化された一群のノズル8B,…,8Bの吐出口と対向するように水室10内に配置される(図8参照)。したがって、各加熱装置4Ba,…,4Bfのコイル16Bに交番電流が印加されると、コイル16Bに直交するように生じた磁力線を打ち消すようにそれぞれの加熱装置4Ba,…,4Bfに対向するブロック化された一群のノズル8B,…,8Bの表面近くに渦電流が発生し、ノズル8B,…,8Bの吐出口近辺がジュール発熱により加熱される。ブロック化された一群のノズル8B,…,8Bはすべての吐出口近辺がほぼ均等に加熱され、ノズル8B,…,8Bの位置によって大きな温度のバラツキを生ずることがない。また、加熱装置4Ba,…,4Bfは水室10の水により冷却されるので、加熱装置4Ba,…,4Bfが過熱するという問題は生じない。
【0034】
各加熱装置4Ba,…,4Bfにおいてコイル室30Bにシリコン油または鉱油系の絶縁油を充填しておき、これらの対流および熱伝導によりコイル16Bの冷却の促進を図ってもよい。
各加熱装置4Ba,…,4Bfを水室10の軸受け側の内面に埋め込み、それぞれの一部のみを水室10に露出するように構成することができる。
水中カット造粒装置1Bは、上記構成とすることによりコイル16B自体の温度がその許容温度を超えるおそれがなく、かつダイプレート2B(ダイス)にコイルを埋め込む必要がないのでダイプレート2Bに格別の加工を要しない。
【0035】
ダイプレート2Bに環状の凸部7Bを設けるのではなく、加熱装置4Ba,…,4Bfに対向する6つの一定領域のみ水室10に若干突出する凸部を設け、それぞれの凸部に一群のノズルを設けることもできる。また、環状の凸部7Bに対向して配置される加熱装置の数は水中カット造粒装置1Bのような6つに限られず、5つ以下または7つ以上とすることもできる。その場合、各加熱装置に対向する位置に設けられる一群のノズルが集合するブロックは、加熱装置の数に応じた数が選択される。
上述の実施形態において、加熱装置4の凹部21、または加熱装置4Ba,…,4Bfのコイル室30Bに純水を流通させてコイル16,16Bの冷却が促進されるように構成することができる。例えば、図3に示される加熱装置4に、図10に示されるようにコイル収容部19Cに純水を流通させるためのポートPT3およびポートPT4を設け、凹部21C内を流通する純水によりコイル16Cの冷却を行ってもよい。また、水室10内に流通させる水に純水を使用し、誘導加熱用コイルをむき出しのまま、カッターの刃12a,…,12dを挟んでダイプレート2,2Bのノズルの吐出口8,…,8,8B,…,8Bと対向するようにして水室10内に配置してもよい。
【0036】
ただし、純水によりコイルの冷却を行う場合、加熱装置の凹部21Cまたは加熱装置4Ba,…,4Bfのコイル室30Bに純水を流通させてコイル16B,16Cを冷却する方が、純水供給設備への負担が少なく、かかる冷却方法によるコスト増を抑制する上では望ましい。
図11は他の実施形態における加熱装置4Dの正面部分断面図である。本実施の形態に係る加熱装置4Dは、図3に記載の加熱装置4とは保護容器の形態およびそれに収められたコイルの形態が異なる点以外は同様のものである。加熱装置4Dにおいて、保護容器17は、ドーナツ盤状の板の内周部に円筒状の枠部40Dが形成された形状の蓋部20D(以下、「巻枠20D」ということがある)と、ドーナツ盤状の板の外周部に円筒状の枠部40Dが形成された固定枠19Dとからなり、互いの円筒部38D,40Dの端面が相手方のドーナツ盤状の板の表面に当接するように組み合わされることで、内部に空間を形成する。円筒部38D,40Dとドーナツ盤状の板との当接部にはシール部材が設けられており、シール部材は、空間を液密状態に維持する。このシール部材は、この場所以外に設けてもよく、例えば、外蓋部25と内蓋部26との間に介在させてもよい。
【0037】
コイル16Dは、リッツ線39Dを巻枠20Dの内側の枠部40Dに巻き付けて形成されている。具体的には、巻枠20Dに対して径方向へ渦巻状に巻き付けられて平型コイル状となった層が軸方向へ複数層設けられている。平型コイル状の層を連続して軸方向に複数層設けたり、不連続に複数層設ける(個別単層の平型コイルを軸方向に並べて設ける)など、コイルの巻き方は適宜変更してもよい。
加熱装置4Dは、保護容器17および保護容器カバー18が非磁性かつ非導電性材料で形成されている。図11に示される加熱装置4Dにおいて図1に示される加熱装置4と同じ符号の部位は、加熱装置4と同様に構成されている。枠部40Dに巻き付ける代わりに導線自身の剛性で保持するようにしてもよい(空芯構造)。また、空芯構造でコイルを形成し、コイル全体を樹脂で封止してもよい。
【0038】
コイル16,16Bで発生する磁場を効率よく被加熱体に誘導するためには、コイル16,16Bを被加熱物に可能な限り近づけるのが好ましく、加熱装置4では、図1に示されるように水室10内に設けられることによりこの要件を満たしている。
しかし、他の構成でこの要件を満たすことも可能である。図12は他の実施形態における水中カット造粒装置1Eの正面断面図である。水中カット造粒装置1Eにおいては、加熱装置4Eは、ハウジング6Eの軸受け11側に埋め込まれ、実質的に水室10外に配置されている。そこで、水室10はそのカッター軸14E方向の幅が可能な限り狭くなっており、加熱装置4Eがダイプレート2に近づくように配慮されている。水中カット造粒装置1Eでは、加熱装置4Eが埋め込まれた側のハウジング6Eの面に誘導電流が発生しないように、スリット加工などで遮断するか、ハウシング6Eの該当面が非導電性材料により形成される。
【0039】
加熱装置4Eについて、ノズル8,…,8に対向する側に、図5に示されるようなコア材5を多数用いて図3,4に示されるようなスリット加工されたコイル収容部を配し、さらに非磁性かつ非導電性材料で形成された部材(隔壁)によりコイル収容部を水室10Eから電気的に絶縁するようにしてもよい。ノズル8,…,8に対向する側の面を、非磁性かつ非導電性材料で形成された部材(隔壁)により形成し、コイルを水室10Eから電気的に絶縁するようにしてもよい。
加熱装置4Eをハウジング6,6Eと一体化して水室10,10E内に突出するように構成してもよい。
【0040】
水中カット造粒装置において、表面が電気的絶縁性を有する樹脂等で被覆された誘導加熱用コイル自体を、そのまま、カッターの刃12a,…,12dを挟んでダイプレートのノズルの吐出口と対向するようにして水室10内に配置してもよい。このような、樹脂等で被覆され電気的に絶縁されたコイル自体が水室10内に配置される場合、または保護容器17,17Bの凹部21,21B,21Cに収容される場合であって、水室10内の流水では十分なコイルの冷却ができないときは、コイルを中空のパイプで形成し、その内部に冷却エアや冷却水などの冷却媒体を流してコイルを内部から冷却するようにしてもよい。
【0041】
図13は水中カット造粒装置における加熱装置の種々の実施形態を示すものである。
図13において、例えば、中実裸線または中実被覆線とは導体の撚線(リッツ線)および中実棒などにより形成されたコイルをいい、中空裸線または中空被覆線とは内部に流体が流通可能な空洞を有する銅管などにより形成されたコイルをいう。
コイルは、ダイプレート2,2Bの特定の部分、例えば凸部7の表面近傍または凸部7Bの一群のノズル8B,…,8Bの表面近くに渦電流を発生させるものであれば、銅のリッツ線を同一の平面上に渦巻き状に巻いて形成されたいわゆる「平型コイル」だけではなく、例えば棒状の銅をコイル状にしたものまたは四角状に巻いたもの、図11に示されるように巻いたものなど、および他の材質、他の形式のコイルを用いることができる。
【0042】
その他、ダイプレート2,2B、ハウジング6、カッター3、および加熱装置4,4Bなどの全体または各部の構成、材質、形状および寸法などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、樹脂等の押出機における水中カット造粒装置として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る水中カット造粒装置の正面断面図である。
【図2】図1のA−A矢視におけるダイプレートおよびカッターを示す図である。
【図3】加熱装置の正面断面図である。
【図4】図3におけるB−B矢視の加熱装置近辺の断面図である。
【図5】コア材の斜視図である。
【図6】本発明の他の実施形態における図1のA−A矢視相当の断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態における加熱装置の斜視図である。
【図8】図6における加熱装置Ba,…,Bf近辺の拡大図である。
【図9】収容部材の斜視図である。
【図10】コイル収容部Cに純水を流通させる加熱装置の断面図である。
【図11】他の実施形態における加熱装置の正面部分断面図である。
【図12】他の実施形態における水中カット造粒装置の正面断面図である。
【図13】水中カット造粒装置における加熱装置の種々の実施形態である。
【符号の説明】
【0045】
1,1B 水中カット造粒装置
2,2B ダイス(ダイプレート)
8 ノズル
10 水室
12a,…,12d 切断刃(刃)
16 誘導加熱用コイル(コイル)
17,17B ケーシング(保護容器)
19 隔壁(コイル収容部)
20 隔壁(蓋部)
25 隔壁(外蓋部)
26 隔壁(内蓋部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイスのノズルから吐出された溶融した材料を回転する切断刃により冷却水の中で切断する水中カット造粒方法であって、
誘導加熱用コイルを前記切断刃を挟んで前記ノズルの吐出口と対向するように配置し、
前記誘導加熱用コイルに通電しジュール発熱により前記ダイスを加熱する
ことを特徴とする水中カット造粒方法。
【請求項2】
前記誘導加熱用コイルとして、外面が非導電性材料により被覆された誘導加熱用コイルを用い、前記誘導加熱用コイルを前記冷却水に浸漬して冷却する
請求項1に記載の水中カット造粒方法。
【請求項3】
前記誘導加熱用コイルとして、外面が非導電性材料により被覆された誘導加熱用コイルを用い、前記誘導加熱用コイルをケーシング内に収容して前記冷却水から電気的に絶縁し、
前記ケーシング内において前記誘導加熱用コイルを冷却媒体に浸漬して冷却する
請求項1に記載の水中カット造粒方法。
【請求項4】
前記誘導加熱用コイルを前記冷却水の水室における前記ノズルに対向する壁面よりも外方に設けて前記冷却水と電気的に絶縁する
請求項1に記載の水中カット造粒方法。
【請求項5】
前記誘導加熱用コイルを中空の管で形成し前記管に冷却媒体を流通させる
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の水中カット造粒方法。
【請求項6】
ダイスのノズルから吐出された溶融した材料を切断するための回転する切断刃と、
前記ダイスにおける前記ノズルの吐出口を有する面を内面の一部とする水室と、
前記切断刃を挟んで前記吐出口と対向するように配置された1つまたは複数の誘導加熱用コイルと、を備え、
前記誘導加熱用コイルにより前記ダイスをジュール発熱させて加熱するように構成されてなる
ことを特徴とする水中カット造粒装置。
【請求項7】
前記誘導加熱用コイルは、
ケーシングに収容され隔壁により前記冷却水から電気的に絶縁されている
請求項6に記載の水中カット造粒装置。
【請求項8】
前記誘導加熱用コイルは、
前記水室における前記ノズルに対向する壁面よりも外方に設けられた
請求項6に記載の水中カット造粒装置。
【請求項9】
前記ケーシングは、
少なくとも前記吐出口に対向する部分が非導電性材料により形成されまたは前記誘導加熱用コイルによる過電流の発生を抑制するためのスリット加工が施された導電性材料により形成されている
請求項7に記載の水中カット造粒装置。
【請求項10】
前記ケーシング内には前記誘導加熱用コイルを冷却するための冷却媒体が収容された
請求項7ないし請求項9のいずれかに記載の水中カット造粒装置。
【請求項11】
前記誘導加熱用コイルは、中空の管で形成され管の内部に冷却媒体が流通可能に構成されてなる
請求項7ないし請求項10のいずれかに記載の水中カット造粒装置。
【請求項12】
前記誘導加熱用コイルは、外面が非導電性材料により被覆されている導体により形成されている
請求項6ないし請求項11のいずれかに記載の水中カット造粒装置。
【請求項13】
前記誘導加熱用コイルは、導体が同一の平面上に渦巻き状に巻かれた平型コイルである
請求項6ないし請求項12のいずれかに記載の水中カット造粒装置。
【請求項14】
前記誘導加熱用コイルは、導体が前記ノズルの吐出口を有する面と平行な平面上に渦巻き状に巻かれた平型コイルである
請求項13に記載の水中カット造粒装置。
【請求項1】
ダイスのノズルから吐出された溶融した材料を回転する切断刃により冷却水の中で切断する水中カット造粒方法であって、
誘導加熱用コイルを前記切断刃を挟んで前記ノズルの吐出口と対向するように配置し、
前記誘導加熱用コイルに通電しジュール発熱により前記ダイスを加熱する
ことを特徴とする水中カット造粒方法。
【請求項2】
前記誘導加熱用コイルとして、外面が非導電性材料により被覆された誘導加熱用コイルを用い、前記誘導加熱用コイルを前記冷却水に浸漬して冷却する
請求項1に記載の水中カット造粒方法。
【請求項3】
前記誘導加熱用コイルとして、外面が非導電性材料により被覆された誘導加熱用コイルを用い、前記誘導加熱用コイルをケーシング内に収容して前記冷却水から電気的に絶縁し、
前記ケーシング内において前記誘導加熱用コイルを冷却媒体に浸漬して冷却する
請求項1に記載の水中カット造粒方法。
【請求項4】
前記誘導加熱用コイルを前記冷却水の水室における前記ノズルに対向する壁面よりも外方に設けて前記冷却水と電気的に絶縁する
請求項1に記載の水中カット造粒方法。
【請求項5】
前記誘導加熱用コイルを中空の管で形成し前記管に冷却媒体を流通させる
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の水中カット造粒方法。
【請求項6】
ダイスのノズルから吐出された溶融した材料を切断するための回転する切断刃と、
前記ダイスにおける前記ノズルの吐出口を有する面を内面の一部とする水室と、
前記切断刃を挟んで前記吐出口と対向するように配置された1つまたは複数の誘導加熱用コイルと、を備え、
前記誘導加熱用コイルにより前記ダイスをジュール発熱させて加熱するように構成されてなる
ことを特徴とする水中カット造粒装置。
【請求項7】
前記誘導加熱用コイルは、
ケーシングに収容され隔壁により前記冷却水から電気的に絶縁されている
請求項6に記載の水中カット造粒装置。
【請求項8】
前記誘導加熱用コイルは、
前記水室における前記ノズルに対向する壁面よりも外方に設けられた
請求項6に記載の水中カット造粒装置。
【請求項9】
前記ケーシングは、
少なくとも前記吐出口に対向する部分が非導電性材料により形成されまたは前記誘導加熱用コイルによる過電流の発生を抑制するためのスリット加工が施された導電性材料により形成されている
請求項7に記載の水中カット造粒装置。
【請求項10】
前記ケーシング内には前記誘導加熱用コイルを冷却するための冷却媒体が収容された
請求項7ないし請求項9のいずれかに記載の水中カット造粒装置。
【請求項11】
前記誘導加熱用コイルは、中空の管で形成され管の内部に冷却媒体が流通可能に構成されてなる
請求項7ないし請求項10のいずれかに記載の水中カット造粒装置。
【請求項12】
前記誘導加熱用コイルは、外面が非導電性材料により被覆されている導体により形成されている
請求項6ないし請求項11のいずれかに記載の水中カット造粒装置。
【請求項13】
前記誘導加熱用コイルは、導体が同一の平面上に渦巻き状に巻かれた平型コイルである
請求項6ないし請求項12のいずれかに記載の水中カット造粒装置。
【請求項14】
前記誘導加熱用コイルは、導体が前記ノズルの吐出口を有する面と平行な平面上に渦巻き状に巻かれた平型コイルである
請求項13に記載の水中カット造粒装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−118378(P2007−118378A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−313217(P2005−313217)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
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