説明

水中スーツ用素材及びそれを使用した水中スーツ

【課題】保温効果及び浮力の高い水中スーツ用素材及びそれを使用した水中スーツを提供することを目的とする。
【解決手段】 弾性発泡体からなり、少なくとも一面に複数の凹部1が形成された弾性発泡体層2を有することを特徴とする水中スーツ用素材である。弾性発泡体層2の凹部開口が身体側に面するようにしてウエットスーツとして用いれば、凹部1内に水が溜まるので身体とスーツとの間に水の膜が形成されやすい。また、凹部1は弾性発泡体層2を貫通していないので、温まった水が外部に排出されにくいと共に、外部からの冷たい水も侵入しにくい。したがって、保温効果の高いものとなる。また、ドライスーツとして用いれば、凹部1内に空気を保持できるので保温効果及び浮力が高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中スーツ用素材及びそれを使用した水中スーツに関するものである。
【背景技術】
【0002】
水中スーツとしてはウエットスーツとドライスーツがあり、それぞれについてダイビング用スーツ、サーフィン用スーツ、トライアスロン用スーツがある。ウエットスーツは、スーツ内に水を入れて使用することにより保温効果を得るものである。すなわち、身体とウエットスーツとの間に水が溜められ、その水が体温により温められることにより保温効果を発揮する。逆に、ドライスーツは、スーツ内に海水を浸入させない構造とし、スーツ内を乾燥状態に保つことで保温効果を得るものである。
【0003】
これらの水中スーツの素材としては、一般的に、天然または合成ゴム等の弾性発泡体の表面にジャージ布等の伸縮性布帛を貼着したものが使用されている。例えば、特許文献1には、発泡性ゴム材料の表裏面に伸縮性を有する織編物が貼着された生地材料から構成され、浸水によって該生地材料と着用者との身体との間隙に水が湿潤されてなるウエットスーツにおいて、発泡性ゴム材料の一部分又は全部分に孔部が設けられたウエットスーツが開示されている。
【0004】
発泡性ゴム材料に設けられた孔部により通気性がよいため、ウエットスーツを着用したまま陸上で運動するトライアスロン等の競技の場合に、着用者に暑苦しさやむさ苦しさ等の不快感を与えることがない。また、水中から地上に移動した際に、浸水によってウエットスーツ内部に浸潤された水が空気とともに瞬時に外部に排出されるので、運動性に支障を及ぼすことなく好適に着用できるとしている。
【特許文献1】特開平6−312692号公報(請求項1、段落0017参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載のウエットスーツは、発泡性ゴム材料に設けられた孔部が貫通しているために、陸上において通気性がよいという利点はあるが、水中においてはスーツ内でせっかく温まった水が孔部を通ってスーツ外へ排出されると共に、外部の冷たい水が孔部を通ってスーツ内へ流入してきてしまう。したがって、保温効果が低い。
【0006】
また、特許文献1記載のウエットスーツは、発泡性ゴム材料により保温性及び浮力をもたせているが、発泡性ゴム材料により保持できる空気は少量であるため、その効果は十分でない。孔部内に空気が存在したとしても、上述のように孔部が発泡性ゴム材料を貫通して形成されているので、排出されてしまい保持することができない。したがって、十分な保温性及び浮力をもたせることができない。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、保温効果及び浮力の高い水中スーツ用素材及びそれを使用した水中スーツを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、少なくとも一面に複数の凹部が形成された弾性発泡体層を有することを特徴とする水中スーツ用素材である。弾性発泡体層の凹部が身体側に開口するようにしてウエットスーツとして用いれば、凹部内に水が溜まるので多量の水を保持することができ、身体とスーツとの間に水の膜が形成されやすくなる。さらに、凹部は弾性発泡体層を貫通していないので、温まった水が外部に排出されにくいと共に、外部からの冷たい水も侵入しにくい。したがって、保温効果の高いものとなる。
【0009】
また、弾性発泡体層の凹部が身体側に開口するようにしてドライスーツとして用いれば、凹部内に多量の空気を溜めることができる。その空気は凹部が貫通していないために外部に排出されにくい。したがって、凹部内に溜まった空気と、弾性発泡体の有する気泡との相乗効果により、十分な保温性及び浮力を発揮することができる。
【0010】
なお、「弾性発泡体層を有する水中スーツ用素材」とは、弾性発泡体層のみからなる単層素材と、弾性発泡体層に他の層を積層した積層素材との両方を含む概念である。また、凹部は、弾性発泡体層の両面に形成してもよい。
【0011】
凹部の開口の大きさとしては、たとえば直径2〜6mm、好ましくは直径4mmである。また、凹部の深さとしては、たとえば0.5〜5mm、好ましくは1〜4mmである。上記範囲外であると、良好な保温効果及び浮力を得ることができない。
【0012】
弾性発泡体層には、他の層を積層させてもよく、凹部が形成されていない側の面(以下、凹部非形成面とする)に積層させてもよいし、凹部形成面に積層してもよい。他の層としては、弾性発泡体、ジャージ布などの伸縮性布帛や、コーティング剤による層や金属箔等のコーティング層が例示できるが、これに限定されるものではない。
【0013】
凹部形成面に他の層を積層させる場合は、他の層により凹部開口部を閉塞することになるので、凹部内に空気を保持させて水中スーツの保温性及び浮力を高めたい場合に好適である。具体的には、弾性発泡体層の凹部形成面に、非通気性および非透水性を有する閉塞層を直接または他の層を介して積層し、凹部開口部を閉塞する。このとき、凹部内部の全体が閉塞層や他の層で埋められないようにする。凹部は弾性発泡体層を貫通していないと共に、その開口が非通気性及び非透水性を有する閉塞層で閉塞されているので、空気が凹部外へ漏れにくく、かつ、水が凹部内に侵入しにくい。したがって、凹部内に空気を保持することができ、安定的な浮力をもたすことができる。この場合、水中時に浮力が必要なトライアスロン用スーツに好適である。
【0014】
閉塞層の素材は、非通気性及び非透水性を有する素材であれば限定されるものではないが、独立気泡を有する弾性発泡体が好ましい。弾性発泡体であれば、内部に含有している気泡により、保温性及び浮力を補強することができる。
【0015】
また、閉塞層は、弾性発泡体層に直接積層してもよいし、その間に他の層を介在させて積層してもよい。すなわち、閉塞層は、弾性発泡体層の凹部開口部を直接又は間接的に閉塞することができればよい。他の層としては、ジャージ布などの伸縮性布帛や、コーティング剤による層や金属箔等のコーティング層が例示できるが、これに限定されるものではない。
【0016】
弾性発泡体層及び閉塞層を構成する弾性発泡体としては、ネオプレンゴム(登録商標、以下省略)が好ましいが、その他天然ゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム等の合成ゴム、合成樹脂を用いてもよい。
【0017】
弾性発泡体層の少なくとも一面に、中空状のマイクロカプセル又はナノカプセルを含有するコーティング層を積層するのが好ましい。または、弾性発泡体層及び/又は閉塞層を有する積層体である場合には、積層体の少なくとも一方の表面または積層体の任意の層間に、中空状のマイクロカプセル又はナノカプセルを含有するコーティング層を存在させてもよい。コーティング層やマイクロカプセル又はナノカプセルの素材は限定されるものではない。コーティング層に中空状のマイクロカプセル又はナノカプセルを含有させることにより、気泡を含有することになるため、保温性及び浮力を高めることができる。
【0018】
上記構成の水中スーツ用素材は、種々の水中スーツに適用することができ、たとえば、ウエットスーツ、セミドライスーツ、ドライスーツに適用できる。さらに詳しくは、ダイビング用、サーフィン用、トライアスロン用に好適である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、弾性発泡体層の凹部が身体側に開口するようにしてウエットスーツとして用いれば、凹部内に水が溜まるため、多量の水を保持でき、身体とスーツとの間に水の膜が形成されやすくなる。また、凹部が弾性発泡体層を貫通していないので、温まった水が外部に排出されにくいと共に、外部からの冷たい水も侵入しにくい。したがって、保温効果の高い水中スーツとできる。
【0020】
また、弾性発泡体層の凹部が身体側に開口するようにしてドライスーツとして用いれば、凹部内に多量の空気が溜まり、その空気は凹部が貫通していないために外部に排出されにくい。したがって、凹部内に溜まった空気と、弾性発泡体の有する気泡との相乗効果により、十分な保温性及び浮力を発揮することができる。
【0021】
さらにまた、弾性発泡体層の凹部形成面に閉塞層を直接又は他の層を介して積層して凹部開口部を閉塞すれば、空気が凹部外へ漏れにくく、かつ、水が凹部内に侵入しにくい。したがって、ウエットスーツ、ドライスーツのいずれに用いても、凹部内に空気を保持することができ、安定的な浮力をもたすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施形態の水中スーツを構成する素材の断面図
【図2】第1の実施形態の変形例を示す素材の断面図
【図3】第2の実施形態の水中スーツを構成する素材の断面図
【図4】ダイビング用のウエットスーツに用いる素材の一実施例を示す断面図
【図5】サーフィン用のウエットスーツに用いる素材の一実施例を示す断面図
【図6】トライアスロン用のウエットスーツに用いる素材の一実施例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
<第1の実施形態>
図1は第1の実施形態の水中スーツを構成する素材の断面図である。図1に示すように、本実施形態の水中スーツを構成する素材は、一方の面に複数の凹部1が形成された弾性発泡体層2と、弾性発泡体層2の凹部非形成面に積層された伸縮性布帛3と、弾性発泡体層2の凹部形成面に形成されたコーティング層4とから構成される。弾性発泡体層2と伸縮性布帛3との積層は、適宜任意の接着剤により固定されるが、その他の手段により固定してもよい。また、コーティング層4の積層は、コーティング層4自身が粘着力などの接着力を有する場合にはその接着力により積層させればよい。このように形成された水中スーツ用素材を凹部形成面が身体側に面するように配置して、身体に沿うように立体的に縫製など施すことにより、水中スーツが形成される。
【0025】
弾性発泡体層2は、独立気泡を有する弾性発泡体からなる。その弾性発泡体としては、ネオプレンゴムが使用されるが、その他の天然若しくは合成ゴム、合成樹脂を使用してもよい。弾性発泡体層2の厚みは約1〜10mm、好ましくは1〜8mm、さらに好ましくは4〜5mmとされるが、これに限定されるものではない。
【0026】
弾性発泡体層2の一面には、複数の円形断面を有する凹部1が形成される。凹部1は、開口直径3mm、深さ1mmとされ、隣接する凹部周縁の最短距離は約4mmとされるが、これに限定されるものではない。凹部1は、2〜3個/cm2形成すれば、十分な保温性、浮力を持たせることができるので好ましい。凹部1は、弾性発泡体層2の一面上を縦横に規則正しく配列されている。なお、弾性発泡体層2は、一体的に形成してもよいし、図2に示すように、板状の弾性発泡体2aに、多数の貫通孔を有する弾性発泡体2bを積層させて形成してもよい。貫通孔と板状の弾性発泡体2aとで囲まれた部分が凹部1となる。
【0027】
伸縮性布帛3としては、ナイロン又はポリエステル製のジャージ布が使用されるが、その他、通気性のよい合成繊維若しくは天然繊維を用いた織物又は編物を用いてもよい。ジャージ布3は、その伸縮性により身体の動きに追従できるので好ましい。伸縮性布帛3の厚みは0.2〜1.5mm、好ましくは約0.5mmとされる。
【0028】
コーティング層4は、中空状のナノカプセル又はマイクロカプセルを含有する。ナノカプセル又はマイクロカプセルが包含する空気により、コーティング層4は気泡を含有することになり、保温効果および浮力が向上する。弾性発泡体層2の凹部形成面に被覆されるコーティング層4は、図1に示すように凹部1以外の部分のみに積層させてもよいし、凹部1が全部埋まらないように凹部1内面に沿ってコーティングしてもよい。
【0029】
ナノカプセル又はマイクロカプセルは、殻内に芯物質を包含しない中空状のカプセルであって、その殻壁の素材としては、ポリウレタン樹脂が好適であるが、その他、ポリアミド、ポリブタジエン、アクリロニトリル、メタクリル酸メチルおよび塩化ビニリデン樹脂の群から選ばれる熱可塑性物質、またはこれらを混合した熱可塑性物質から構成してもよい。ナノカプセル又はマイクロカプセルの配合量としては、コーティング層に対し、1〜10重量%含有させるのが好ましい。
【0030】
コーティング層4としては、コーティング剤による層や金属箔が挙げられるがこれに限定されるものではなく、ナノカプセル又はマイクロカプセルを含有することが可能であれば公知のものを採用可能である。コーティング剤としては、例えば、ウレタン樹脂系、フッ素樹脂系、オレフィン樹脂系、シリコン樹脂系等のコーティング剤が挙げられるがこれに限定されるものではない。なお、コーティング層4を水中スーツ生地の表面に設ける場合は、親水性及び疎水性を有する両親媒性のコーティング剤が好ましい。そのような物としては、界面活性剤を含むコーティング剤が例示できる。空気中では水をはじき、水中では水になじんで流水抵抗を低下させることのできる水中スーツとすることができる。
【0031】
また、金属箔は、金属素材をフィルム状にしたものである。この金属箔を接着剤等で他の層に貼着して使用すればよい。フィルム状の金属箔は、厚さ約70ミクロンの超極薄のフイルムであって、効果的な断熱性、保温性を発揮する。着用者は、ヒートロスによる疲労を軽減できる。なお、金属箔の素材としては、チタンが好ましいが、その他、金、銀、アルミニウム、鉛などを使用してもよい。これらの素材の金属箔の表面に、ナノカプセル又はマイクロカプセルがドット状に配置されるようにコーティング剤を用いてコーティングする。
【0032】
以上の構成によると、弾性発泡体層2の凹部形成面を身体側に面するようにして水中スーツとして使用すれば、凹部1内に水が溜まるので、多量の水を保持できると共に身体とスーツとの間に水の膜が形成されやすい。また、凹部1は弾性発泡体層2を貫通していないので、温まった水が外部に排出されにくいと共に、外部からの冷たい水も侵入しにくい。したがって、保温効果の高いものとなる。
【0033】
また、ドライスーツとして用いれば、凹部1内に多量の空気を溜めることができる。凹部1が貫通していないために凹部1内の空気が外部に排出されにくい。したがって、凹部1内に溜まった空気と、弾性発泡体層2の有する独立気泡との相乗効果により、十分な保温性及び浮力を発揮することができる。
【0034】
<第2の実施形態>
図3は第2の実施形態の水中スーツを構成する素材の断面図である。図3に示すように、本実施形態においては、弾性発泡体層2の凹部形成側の面に、弾性発泡体からなる閉塞層5を積層し、凹部1の開口を閉塞したことを特徴とするもので、その他の基本的な構成は上記第1の実施形態と同様である。弾性発泡体層2と閉塞層5との積層は、適宜任意の接着剤により固定されるが、その他の手段により固定してもよい。
【0035】
詳しくは、第2の実施形態の水中スーツを構成する素材は、一面に複数の凹部1が形成された弾性発泡体層2と、弾性発泡体層2の凹部非形成面に積層された伸縮性布帛3と、弾性発泡体層2の凹部形成面に積層された閉塞層5と、閉塞層5の表面に積層されたコーティング層4から構成される。図3に示すように、コーティング層4側が身体側となるように配置される。なお、弾性発泡体層2を反転させて閉塞層5を外側方向に位置させてもよい。すなわち、身体側から、コーティング層4、弾性発泡体層2、弾性発泡体層2の凹部形成面に積層された閉塞層5、伸縮性布帛3の順に積層してもよい。このように形成された水中スーツ用素材を人体に沿うように立体的に縫製など施すことにより、水中スーツが形成される。
【0036】
閉塞層5は、板状の弾性発泡体からなる。弾性発泡体としては、弾性発泡体層2と同様に、ネオプレンゴムが使用されるが、その他の天然若しくは合成ゴム、合成樹脂を使用してもよい。また、弾性発泡体は、独立気泡を有する。閉塞層5の厚みは、約1〜10mm、好ましくは約4〜5mmとされるが、これに限定されるものではない。
【0037】
弾性発泡体層2に形成された凹部1の開口が閉塞層5で閉塞されるため、凹部1内に空気を溜め込むことができる。凹部1内の空気は漏れ難い。したがって、水中スーツに安定的な保温性及び浮力をもたすことができる。この実施形態は、浮力が必要なトライアスロン用スーツに好適である。
【実施例】
【0038】
以下、この発明を実施例により詳細に説明する。
【0039】
<実施例1>
図4は、ダイビング用のウエットスーツに用いる素材の一実施例を示す断面図である。図示するように、本実施例における素材は、身体側から、コーティング層4a、弾性発泡体層2、弾性発泡体層2の凹部非形成面に積層されたコーティング層4b、板状の第二弾性発泡体層6、コーティング層4b、ジャージ布3の順に積層される。弾性発泡体層2の厚みは5mm、第二弾性発泡体層6の厚みは5mm、ジャージ布3の厚みは0.5mmとされる。なお、弾性発泡体層2の厚みは1〜10mm、第二弾性発泡体層6の厚みは1〜10mm、ジャージ布3の厚みは0.2〜1.5mmの範囲で変更してもよい。
【0040】
第二弾性発泡体層6は、独立気泡を有する弾性発泡体からなる。その弾性発泡体としては、ネオプレンゴムが使用されるが、その他の天然若しくは合成ゴム、合成樹脂を使用してもよい。
【0041】
コーティング層4はナノカプセルを含有する。ナノカプセルとしては、野村貿易社製のNC948を使用するが、これに限定されるものではない。弾性発泡体層2の凹部形成面側のコーティング層4aには、両親媒性のコーティング剤が使用される。両親媒性のコーティング剤は、ポリウレタン系ポリマー13重量部、ポリ四フッ化エチレン微粉末7重量部、シリコンオイル2重量部及び硫酸ドデシルナトリウム2重量部を、以下の溶剤、アセトン2重量部、メチルイソブチレンケトン(MIBK)3重量部、トルエン55重量部、酢酸ブチル5重量部、ジアセトンアルコール11重量部に、均一に混合したものである。なお、ポリウレタン系ポリマーは8〜18重量部、ポリ四フッ化エチレン微粉末は2〜12重量部、シリコンオイルは1〜7重量部及び硫酸ドデシルナトリウムは1〜7重量部、アセトンは1〜7重量部、メチルイソブチレンケトン(MIBK)は1〜8重量部、トルエンは50〜60重量部、酢酸ブチルは1〜10重量部、ジアセトンアルコールは6〜16重量部の間で変更してもよい。また、弾性発泡体層2と第二弾性発泡体層6との間、及び第二弾性発泡体層6とジャージ布3との間のコーティング層4bには、それぞれチタンの金属箔が使用される。
【0042】
弾性発泡体層2の凹部形成面が身体側に面するようにしてウエットスーツとして使用すれば、凹部1内に水が溜まるので、身体とスーツとの間に水の膜が形成されやすい。また、凹部1は弾性発泡体層2を貫通していないので、温まった水が外部に排出されにくいと共に、外部からの冷たい水も侵入しにくい。したがって、保温効果の高いものとなる。
【0043】
また、弾性発泡体層2の凹部形成面が身体側に面するようにしてドライスーツとして用いれば、凹部1内に多量の空気を溜めることができる。凹部1が貫通していないために空気が外部に排出されにくい。したがって、凹部1内に溜まった空気と、弾性発泡体層2の有する独立気泡との相乗効果により、十分な保温性及び浮力を発揮することができる。
【0044】
<実施例2>
図5は、サーフィン用のウエットスーツに用いる素材の一実施例を示す断面図である。図示するように、本実施例における素材は、身体側から、コーティング層4a、弾性発泡体層2、弾性発泡体層2の凹部非形成面に積層されたコーティング層4b、ジャージ布3、コーティング層4b、板状の第二弾性発泡体層6、コーティング層4aの順に積層される。ジャージ布3は弾性発泡体層2と第二弾性発泡体層6との間に位置するので吸水しにくい。したがって、素材全体としての重量変化が少なくてすむ。弾性発泡体層2の厚みは5mm、第二弾性発泡体層6の厚みは5mm、ジャージ布3の厚みは0.5mmとされる。なお、弾性発泡体層2の厚みは1〜10mm、第二弾性発泡体層6の厚みは1〜10mm、ジャージ布3の厚みは0.2〜1.5mmの範囲で変更してもよい。
【0045】
コーティング層4bはナノカプセルを含有する。ナノカプセルとしては、野村貿易社製のNC948を使用するが、これに限定されるものではない。弾性発泡体層2の凹部形成面、及び第二弾性発泡体層6の表面のコーティング層4aには、両親媒性のコーティング剤が使用される。両親媒性のコーティング剤は、ポリウレタン系ポリマー13重量部、ポリ四フッ化エチレン微粉末7重量部、シリコンオイル2重量部及び硫酸ドデシルナトリウム2重量部を、以下の溶剤、アセトン2重量部、メチルイソブチレンケトン(MIBK)3重量部、トルエン55重量部、酢酸ブチル5重量部、ジアセトンアルコール11重量部に、均一に混合したものである。なお、ポリウレタン系ポリマーは8〜18重量部、ポリ四フッ化エチレン微粉末は2〜12重量部、シリコンオイルは1〜7重量部及び硫酸ドデシルナトリウムは1〜7重量部、アセトンは1〜7重量部、メチルイソブチレンケトン(MIBK)は1〜8重量部、トルエンは50〜60重量部、酢酸ブチルは1〜10重量部、ジアセトンアルコールは6〜16重量部の間で変更してもよい。また、弾性発泡体層2とジャージ布3との間及びジャージ布3と第二弾性発泡体層6との間のコーティング層4bには、それぞれチタンの金属箔が使用される。
【0046】
弾性発泡体層2の凹部形成面が身体側に面するようにしてウエットスーツとして使用すれば、凹部1内に水が溜まるので、身体とスーツとの間に水の膜が形成されやすい。また、凹部1は弾性発泡体層2を貫通していないので、温まった水が外部に排出されにくいと共に、外部からの冷たい水も侵入しにくい。したがって、保温効果の高いものとなる。
【0047】
また、弾性発泡体層2の凹部形成面が身体側に面するようにしてドライスーツとして用いれば、凹部1内に多量の空気を溜めることができる。凹部1が貫通していないために空気が外部に排出されにくい。したがって、凹部1内に溜まった空気と、弾性発泡体層2の有する独立気泡との相乗効果により、十分な保温性及び浮力を発揮することができる。
【0048】
<実施例3>
図6は、トライアスロン用のウエットスーツに用いる素材の一実施例を示す断面図である。図示するように、本実施例における素材は、身体側から、コーティング層4a、閉塞層5、ジャージ布3、弾性発泡体層2、第二弾性発泡体層6、コーティング層4aの順に積層される。ジャージ布3は弾性発泡体層2及び第二弾性発泡体層6と閉塞層5との間に位置するので、吸水しにくい。したがって、素材全体としての重量変化が少なくてすむ。閉塞層5の厚みは5mm、ジャージ布3の厚みは0.5mm、弾性発泡体層2の厚みは5mm、第二弾性発泡体層6の厚みは5mmとされる。なお、閉塞層5の厚みは1〜10mm、ジャージ布3の厚みは0.2〜1.5mm、弾性発泡体層2の厚みは1〜10mm、第二弾性発泡体層6の厚みは1〜10mmの範囲で変更してもよい。
【0049】
コーティング層4aはナノカプセルを含有する。ナノカプセルとしては、野村貿易社製のNC948を使用するが、これに限定されるものではない。閉塞層5の表面及び第二弾性発泡体層6の表面のコーティング層4aには、両親媒性のコーティング剤が使用される。両親媒性のコーティング剤は、ポリウレタン系ポリマー13重量部、ポリ四フッ化エチレン微粉末7重量部、シリコンオイル2重量部及び硫酸ドデシルナトリウム2重量部を、以下の溶剤、アセトン2重量部、メチルイソブチレンケトン(MIBK)3重量部、トルエン55重量部、酢酸ブチル5重量部、ジアセトンアルコール11重量部に、均一に混合したものである。なお、ポリウレタン系ポリマーは8〜18重量部、ポリ四フッ化エチレン微粉末は2〜12重量部、シリコンオイルは1〜7重量部及び硫酸ドデシルナトリウムは1〜7重量部、アセトンは1〜7重量部、メチルイソブチレンケトン(MIBK)は1〜8重量部、トルエンは50〜60重量部、酢酸ブチルは1〜10重量部、ジアセトンアルコールは6〜16重量部の間で変更してもよい。
【0050】
弾性発泡体層2の凹部1の開口が閉塞層5で閉塞されるため、凹部1内に空気を溜め込むことができる。したがって、水中スーツに安定的な保温性及び浮力をもたすことができる。この場合、浮力が必要なトライアスロン用スーツに好適である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によると、弾性発泡体層の凹部が身体側に開口するようにしてウエットスーツとして用いれば、凹部内に水が溜まるため、多量の水を保持でき、身体とスーツとの間に水の膜が形成されやすくなる。また、凹部が弾性発泡体層を貫通していないので、温まった水が外部に排出されにくいと共に、外部からの冷たい水も侵入しにくい。したがって、保温効果の高い水中スーツとできる。
【0052】
また、弾性発泡体層の凹部が身体側に開口するようにしてドライスーツとして用いれば、凹部内に多量の空気が溜まり、その空気は凹部が貫通していないために外部に排出されにくい。したがって、凹部内に溜まった空気と、弾性発泡体の有する気泡との相乗効果により、十分な保温性及び浮力を発揮することができる。
【0053】
さらにまた、弾性発泡体層の凹部形成面に閉塞層を直接又は他の層を介して積層して凹部開口部を閉塞すれば、空気が凹部外へ漏れにくく、かつ、水が凹部内に侵入しにくい。したがって、ウエットスーツ、ドライスーツのいずれに用いても、凹部内に空気を保持することができ、安定的な浮力をもたすことができる。
【符号の説明】
【0054】
1 凹部
2 弾性発泡体層
3 伸縮性布帛
4 コーティング層
5 閉塞層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一面に直径2〜6mm、深さ0.5〜5mmの複数の独立した孔状の凹部が形成された弾性発泡体層を有し、前記弾性発泡体層の凹部形成面に、非通気性及び非透水性を有する閉塞層が直接又は他の層を介して積層されて凹部開口部を閉塞し、前記弾性発泡体層及び前記閉塞層を有する積層体の少なくとも一方の表面にコーティング層が形成され、前記コーティング層は中空状のマイクロカプセル又はナノカプセルを含有していることを特徴とする水中スーツ用素材。
【請求項2】
前記弾性発泡体層と閉塞層との間に伸縮性布帛が積層されたことを特徴とする請求項1に記載の水中スーツ用素材。
【請求項3】
前記コーティング層として第一コーティング層及び第二コーティング層が設けられ、第一コーティング層、閉塞層、伸縮性布帛、弾性発泡体層、凹部が形成されていない第二の弾性発泡体層、第二コーティング層の順に積層されたことを特徴とする請求項2に記載の水中スーツ用素材。
【請求項4】
前記コーティング層が親水性及び疎水性を有する両親媒性のコーティング剤からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水中スーツ用素材。
【請求項5】
前記コーティング剤は、界面活性剤を含むことを特徴とする請求項4に記載の水中スーツ素材。
【請求項6】
前記コーティング剤は、さらにポリウレタン系ポリマー、ポリ四フッ化エチレン及びシリコンオイルを含有することを特徴とする請求項4又は5に記載の水中スーツ用素材。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の水中スーツ用素材を用いたことを特徴とする水中スーツ。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の水中スーツ用素材を用いたことを特徴とするトライアスロン用スーツ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−83036(P2013−83036A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−264456(P2012−264456)
【出願日】平成24年12月3日(2012.12.3)
【分割の表示】特願2007−533068(P2007−533068)の分割
【原出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 朝日新聞大阪本社が2005年4月6日に発行した朝日新聞2005年4月6日付朝刊。 毎日新聞大阪本社が2005年4月15日に発行した朝日新聞2005年4月15日付夕刊。 2005年4月4日に掲載されたhttp://www.yamamoto−bio.com/yamamoto_j/index.html、http://www.yamamoto−bio.com/yamamoto_j/whats.html http://www.yamamoto−bio.com/yamamoto_j/New050404.pdf
【出願人】(390000055)
【Fターム(参考)】