説明

水中不分離性水硬性組成物用流動化剤

【課題】流動性保持時間が長く、且つ優れた初期強度を発現する水硬性組成物にする水中不分離性水硬性組成物用流動化剤を提供する。
【解決手段】(A)ポリカルボン酸系セメント分散剤及び(B)硫酸リチウムを含有する水中不分離性水硬性組成物用流動化剤とする。(A)ポリカルボン酸系セメント分散剤中の不揮発成分に対する(B)硫酸リチウムのLi2SO4換算の質量比が0.1〜10である水中不分離性水硬性組成物用流動化剤とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中不分離性水硬性組成物用流動化剤に関し、より詳しくは、添加量が少なくとも、水硬性組成物の流動性保持時間を長くし、且つ優れた初期強度が得られる水中不分離性水硬性組成物用流動化剤及びこれを含有する水中不分離性水硬性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、海洋中又は河川中の橋脚基礎など、コンクリートを水中に打設する場合には、構造体としての満足なコンクリートの品質を確保するため、プレパックドコンクリート工法,トレミー管や底開き容器を用いる水中コンクリートが用いられてきた。一方、これらの工法は、施工段取りが特に重要であり、海洋工事の大型化に伴う打設水深、流動距離、水質汚濁、コンクリート品質等の施工条件を満足することが厳しく、制約を受ける場合が増えてきた。
【0003】
このような状況を受け、ヨーロッパの技術である水中不分離性コンクリートが導入されるようになった。これはコンクリート自身の性質を未硬化な状態で水の洗い作用を受けても材料分離を生じ難いように改良したコンクリートである。このコンクリートは、流動性・充填性を高めた設計のため、薄くて広い面積の水中コンクリートの施工、鉄筋コンクリート部材など高品質を要求される構造物の施工、水質汚濁防止が要求される施工、災害復旧の応急工事など、従来の水中コンクリートでは施工が難しい用途にも用いられるようになっている。
【0004】
水中不分離性コンクリートは、通常の未硬化のコンクリートに、水中不分離性混和剤という特殊な増粘剤及び流動化剤を加えることにより製造される。水中不分離性混和剤としては主にセルロース系、あるいはアクリル系の水溶性高分子が用いられるが、これらは凝結・強度発現の遅延が著しいのが欠点である。この水中不分離性混和剤の欠点を克服するために硬化促進剤を添加すると、経時での流動性の低下が著しく、施工可能時間が大幅に制約されてしまう。
そこで、カルシウムアルミネートやアルミノケイ酸カルシウムガラス(以下合わせて「カルシウムアルミネート類」という。)等を水中不分離性コンクリートに添加することが提案されている(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。
しかし、カルシウムアルミネート類を水中不分離性コンクリートに添加する場合、その添加量は水中不分離性コンクリート中のセメント100質量部に対し5質量部以上必要である。このため、コンクリート打設現場において、充分な効果を得る量のカルシウムアルミネート類及び水中不分離性混和剤を添加することは困難であり、所謂「生コン工場」と呼ばれているコンクリート製造工場におけるコンクリート製造時に、カルシウムアルミネート類及び水中不分離性混和剤を添加しなければならない。また、カルシウムアルミネート類を多く含有する水中不分離性コンクリートを海中の施工に用いると、海中の硫酸イオンとの反応で、異常膨張が起こる虞がある。
また、最近、アニオン系・カチオン系の界面活性剤の相互作用により増粘し、凝結及び強度発現への影響の少ない水中不分離混和剤が開発されたが、双方の界面活性剤のバランスが敏感で、コンクリート中のその他の原料の影響や温度の影響を受け易く、しばしば意図した水中不分離性が得られないという問題があった(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2820953号公報
【特許文献2】特許第2975421号公報
【特許文献3】特開2008−230914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、配合計算時に体積を無視できる程少ない添加量であっても、添加した水硬性組成物の流動性保持時間が長く、且つ優れた初期強度が得られる水中不分離性水硬性組成物用流動化剤及びこれを含有する水中不分離性水硬性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、前記課題解決のため鋭意検討した結果、特定のセメント分散剤と硫酸リチウムを配合することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、(A)ポリカルボン酸系セメント分散剤及び(B)硫酸リチウムを含有する水中不分離性水硬性組成物用流動化剤を提供するものである。
また、本発明は、水硬性物質、水中不分離性混和剤及びこの水中不分離性水硬性組成物用流動化剤を含有する水中不分離性水硬性組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の水中不分離性水硬性組成物用流動化剤によれば、配合計算時に体積を無視できる程少ない添加量であっても、添加した水硬性組成物は流動性保持時間が長く、且つ優れた初期強度を発現する。また、本発明の水中不分離性水硬性組成物用流動化剤はコンクリート打設現場においても添加可能である。また、本発明の水中不分離性水硬性組成物は海中の施工に用いた場合においても、海中の硫酸イオンとの反応で異常膨張が起こる虞がない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において、水中不分離性水硬性組成物とは、ポルトランドセメント、アルミナセメント、コロイドセメント、フライアッシュセメント、高炉セメント、エコセメント、半水石膏等の広義の水硬性セメント或いは高炉スラグ等の潜在水硬性物質等の水硬性物質と、水中不分離性混和剤と、必要により更に添加される他の混和材料或いは骨材を含有する水硬性の組成物をいう。
【0010】
本発明の流動化剤に用いる(A)ポリカルボン酸系セメント分散剤は、ポリカルボン酸系水溶性高分子を含有しセメント粒子を水中に分散させる効果を有するものであればよく、例えば、ポリカルボン酸系減水剤,ポリカルボン酸系AE減水剤,ポリカルボン酸系高性能減水剤,ポリカルボン酸系高性能AE減水剤が挙げられるが、ポリカルボン酸系高性能減水剤又はポリカルボン酸系高性能AE減水剤が好ましい。これらは液体状のもの、粉末状のもの何れも使用可能である。用いるポリカルボン酸系セメント分散剤が粉末状のものであれば、水分が含まれないのでより添加量を少なくできることから好ましい。また、グラフト共重合体のポリカルボン酸系水溶性高分子を含有するセメント分散剤も、セメント分散剤の添加量を少なくできることから好ましい。更に、分子内に下式(1)及び(2)で表される構成単位を有するポリカルボン酸系水溶性高分子を含有するものがより好ましい。
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、R1、R2及びR3は同一又は異なって水素原子又はメチル基を示し、R4は炭素数1〜3のアルキル基を示し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アミンを示し、Yは−CH2O−又は−COO−を示し、nは20〜109の数を示す。)
式(1)及び(2)で表される構成単位を有するポリカルボン酸系水溶性高分子を含有するポリカルボン酸系セメント分散剤は、太平洋マテリアル社製ポリカルボン酸系高性能減水剤(商品名「コアフロー200L」)等の市販されているものを使用することができる。
【0013】
本発明に用いる(B)硫酸リチウムは、無水物でも水和物でもよく、他のイオンを含有していてもよい。また、水溶液でも粉末状でもよい。粉末状のものであれば、水分が含まれないのでより添加量を少なくできることから好ましい。より好ましくは、硫酸リチウムの無水物(Li2SO4)又は一水和物(Li2SO4・H2O)である。
【0014】
本発明に含まれる硫酸リチウムとポリカルボン酸系セメント分散剤との割合は、少ない添加量で本発明の効果を得る観点から、(A)ポリカルボン酸系セメント分散剤中の不揮発成分(本発明において105℃における不揮発成分を意味する)に対する(B)硫酸リチウムのLi2SO4換算の質量比(B/A)を0.1〜10とすることが好ましく、更に0.3〜8とすることが好ましく、特に0.5〜7とすることが好ましい。
【0015】
本発明の水中不分離性水硬性組成物用流動化剤に、更に、(C)硫酸リチウム以外のアルカリ金属硫酸塩及び/または石膏を配合すると、本発明の効果をあまり損なうことなく高価な硫酸リチウムの使用量を抑制し得ることが可能となることから好ましい。すなわち、硫酸リチウム以外のアルカリ金属硫酸塩及び石膏は、硫酸リチウムの一部代用となる。硫酸リチウム以外のアルカリ金属硫酸塩としては、例えば、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸水素カリウム又は硫酸水素ナトリウム、或いはこれらの水和物が挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いることができる。また、石膏としては、ニ水石膏、半水石膏、無水石膏が挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いることができる。
硫酸リチウム以外のアルカリ金属硫酸塩及び/または石膏を含有させる場合は、硫酸リチウムのLi2SO4に対するアルカリ金属硫酸塩及び石膏の合計の質量比を、0.01〜1.0とすることが好ましく、0.01〜0.5とすることがより好ましい。
【0016】
本発明の水中不分離性水硬性組成物用流動化剤には、上記(A)、(B)及び(C)以外の混和材料の一種又は二種以上を本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。このような混和材料としては、例えばセメント用ポリマー、発泡剤、起泡剤、防水材、防錆剤、収縮低減剤、保水剤、顔料、繊維、撥水剤、白華防止剤、膨張材(剤)、急結剤(材)、急硬剤(材)、消泡剤、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、石粉、シリカフューム、表面硬化剤、ナフタレン系セメント分散剤、メラミン系セメント分散剤、リグニン系セメント分散剤及びポリオール系セメント分散剤等が挙げられる。
【0017】
本発明の水中不分離性水硬性組成物用流動化剤を製造する方法は、特に限定されず、例えば、V型混合機や可傾式コンクリートミキサ等の重力式ミキサ、ヘンシェル式ミキサ、リボンミキサ等のミキサにより、上記(A)、(B)及びその他の任意成分を混合することで製造することができる。このとき用いるミキサは、連続式ミキサでもバッチ式ミキサでも良い。各材料のミキサ内への投入順序は特に限定されず、一種ずつ投入してもよく、一部又は全部を同時に投入してもよい。また、袋やポリエチレン製容器等の容器に各材料を計り取り投入する方法により、本発明の水中不分離性水硬性組成物用流動化剤を製造することもできる。
【0018】
本発明の水中不分離性水硬性組成物は、上記の水中不分離性水硬性組成物用流動化剤、水硬性物質及び水中不分離性混和剤を含有するものである。
【0019】
本発明に用いる水硬性物質としては、特に限定されず、例えば、ポルトランドセメント、アルミナセメント、コロイドセメント、フライアッシュセメントや高炉セメント等の混合セメント、太平洋セメント社製「ジェットセメント」(商品名)や住友大阪セメント社製「ジェットセメント」(商品名)等の超速硬セメント、エコセメント、半水石膏等の広義の水硬性セメント或いは高炉スラグ等の潜在水硬性物質から選ばれる一種又は二種以上を挙げることができる。
【0020】
また、本発明に用いる水中不分離性混和剤としては、例えばヒドロキシメチルセルロースやヒドロキシプロピルセルロース等の水溶性セルロースからなるセルロース系水中不分離性混和剤、アクリル樹脂やメタクリル樹脂等のアクリル系水中不分離性混和剤、アルギン酸、β-1,3グルカン、プルラン、ウェランガム等の多糖類からなる中不分離性混和剤等が挙げられ、これらの一種又は二種以上の使用が可能であるが、少量で水中不分離性が高いセルロース系水中不分離性混和剤が好ましい。
水中不分離性混和剤の添加量は施工目的に必要とされる水中不分離性の程度によって適宜決定すればよいが、水中不分離性水硬性組成物の混練物1m3当り0.5〜10 kgが好ましく、1〜5 kgが更に好ましい。0.5kg未満では水中不分離性が得られず、10kgを超えると硬化遅延が著しく、もはや本流動化剤の使用を以ってしても回復は難しい、或いは粘性が高過ぎ施工に支障をきたす虞がある。
【0021】
水中不分離性水硬性組成物に含まれる(A)ポリカルボン酸系セメント分散剤の量は、水中不分離性水硬性組成物中の水硬性物質の量に対し、不揮発成分換算で0.05〜1.0質量%となる量が好ましく、0.2〜0.6質量%となる量が更に好ましい。0.05質量%となる量未満では流動性が不足し、1.0質量%となる量を超えると凝結遅延が著しくなることがある。
【0022】
また、本発明の水中不分離性水硬性組成物に含まれる(B)硫酸リチウムの量は、水中不分離性水硬性組成物中の水硬性物質の量に対し、硫酸リチウム一水和物固形分換算で,0.05〜3質量%となる量が好ましく、0.3〜2質量%となる量が更に好ましい。0.05質量%となる量未満では凝結遅延を防ぐ効果が充分ではなく、また流動性の保持時間も充分ではない。3質量%となる量を超えると高価な硫酸リチウムを多量に使用すること、またポリカルボン酸系セメント分散剤が多量に必要となることから経済的に得策でない。
【0023】
本発明の水中不分離性水硬性組成物に、(C)石膏を用いる場合の該石膏の量は、水中不分離性水硬性組成物中の水硬性物質の量に対し、0.1〜1.5質量%となる量とすることが好ましい。1.5質量%となる量を超えると、ポリカルボン酸系セメント分散剤が多量に必要となることから経済的に得策でない。
【0024】
本発明の水中不分離性水硬性組成物には、水硬性物質、水中不分離性混和剤及び本発明の流動化剤以外の他の成分を本発明の効果を損なわない範囲で併用することができる。このような成分としては、例えば、骨材、セメント用ポリマー、発泡剤、起泡剤、防水材、防錆剤、収縮低減剤、保水剤、顔料、繊維、撥水剤、白華防止剤、膨張材(剤)、急結剤(材)、急硬剤(材)、消泡剤、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、石粉、シリカフューム、表面硬化剤、ナフタレン系セメント分散剤、メラミン系セメント分散剤、リグニン系セメント分散剤、ポリオール系セメント分散剤等が挙げられる。また、骨材としては、例えば川砂、海砂、山砂、砕砂、人工細骨材、スラグ細骨材、再生細骨材、スラグ細骨材、珪砂、石粉、川砂利、陸砂利、砕石、人工粗骨材、スラグ粗骨材、再生粗骨材、スラグ粗骨材等が挙げられる。
【0025】
本発明の水中不分離性水硬性組成物を製造する方法としては、V型混合機や可傾式コンクリートミキサ等の重力式ミキサ、ヘンシェル式ミキサ、リボンミキサ等のミキサにより、流動化剤以外の所定量の本発明の水中不分離性水硬性組成物の各材料を混合した後、流動化剤を添加し更に混練する方法が好ましい。このとき用いるミキサは、連続式ミキサでもバッチ式ミキサでも良い。流動化剤以外の各材料のミキサ内への投入順序は特に限定されない。一種ずつ添加してもよく、一部又は全部を同時に添加してもよい。また、袋やポリエチレン製容器等の容器に各材料を計り取り投入する方法により、本発明の水中不分離性水硬性組成物を製造することもできる。
【0026】
本発明の水中不分離性水硬性組成物は、流動化剤添加前に水と混練して用いる。このときの水/結合材比は特に限定されるものではないが、20〜70%が好ましく、25〜65%が更に好ましい。単位水量も特に限定されるものではないが、コンクリートにおいては1m3当たり140〜300kgが好ましく、150〜250kgがさらに好ましい。モルタルにおいては1m3当たり160〜580kg好ましく、180〜500kgが更に好ましい。
【0027】
流動化剤添加前に水中不分離性水硬性組成物と水とを混練する方法は特に限定されず、例えば水に水中不分離性水硬性組成物を全量加え混練する方法、水に水中不分離性水硬性組成物を混練しながら加え更に混練する方法、水中不分離性水硬性組成物に水を全量加え混練する方法、水中不分離性水硬性組成物に水を混練しながら加え更に混練する方法、水及び水中不分離性水硬性組成物のそれぞれ一部ずつを2以上に分けて混練し、混練したものを合わせて更に混練する方法等がある。また、混練に用いる器具や混練装置も特に限定されないが、ミキサを用いることが量を多く混練できるので好ましい。用いることのできるミキサとしては連続式ミキサでもバッチ式ミキサでも良く、例えばパン型コンクリートミキサ、パグミル型コンクリートミキサ、重力式コンクリートミキサ、グラウトミキサ、ハンドミキサ、左官ミキサ等が挙げられる。
【0028】
本発明の水中不分離性水硬性組成物用流動化剤は、コンクリート製造工場等における水中不分離性水硬性組成物の混練物の製造後、当該混練物の打設現場おけるトラックアジテータ又はミキサに投入しても良い。
【実施例】
【0029】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
実施例に用いた材料は次の通りである。
セメント: 太平洋セメント社製 普通ポルトランドセメント,比重3.16
太平洋セメント社製 早強ポルトランドセメント,比重3.12
AE減水剤: BASFポゾリス社製 (商品名「ポゾリスNo.70」)
(リグニンスルホン酸化合物とポリオールの複合体)
粗骨材: 茨城県桜川市産 砕石2005及び1305,比重2.64
細骨材: 静岡県菊川市産 山砂,比重2.60,F.M.2.78
消泡剤: サンノプコ社製 (商品名「SNデフォーマーAHP」)
水中不分離性混和剤: 太平洋マテリアル社製 (商品名「太平洋エルコン」)
メラミン系流動化剤: 太平洋マテリアル社製 (商品名「LC−1000」)
ポリカルボン酸系分散剤: 太平洋マテリアル社製ポリカルボン酸系高性能減水剤
(商品名「コアフローNF−200L」)
硫酸リチウム一水和物: 関東化学社製 一級試薬
無水硫酸ナトリウム: 関東化学社製 一級試薬
II型無水石こう: セントラル硝子社製 ブレーン比表面積 8000cm2/gに調整
【0031】
実施例1〜6/比較例1〜3 (モルタル、AE減水剤あり、流動化剤後添加)
表1に示す配合割合(表1中の各材料欄の単位は質量部)で、水及びAE減水剤をペール缶(内容量20リットル)に計りとり、更にセメント、砂、水中不分離性混和剤及び消泡剤を投入し、ハンドミキサ(撹拌羽根の直径15cm,1100R.P.M.)で90秒間混練した。
15分間静置の後、メラミン系流動化剤又は本発明の流動化剤(ポリカルボン酸系分散剤、硫酸リチウム一水和物)を添加して90秒間混練した。このようにして得られた水硬性組成物ついて下記の方法により評価した。結果を表1に示す。
【0032】
テーブルフロー:アクリル板上でJIS R 5201に規定されるフローコーンにモルタルを詰め、静かに上方に引抜き、モルタルの動きが止まった後、その拡がりの長径と短径を測り、その平均を以ってテーブルフロー値とした。流動化剤添加・混練直後及び2,4時間後に計測し、経時での計測の折には計測前に上記ハンドミキサで30秒間練り返してから行った。
(流動性の指標。流動化剤添加・混練直後の目標225±10 mmとし、4時間後の保持率80%以上を合格とした)。
密度:JIS A 1171に規定する単位容積質量試験に従って計測した。
pH:JSCE-D 104の附属書2「水中不分離性コンクリートの水中分離度試験」に準じて実施した。但し、水中落下させるモルタル試料は300 gとした。
(水中不分離性の指標。ここではpH12以下を合格とした)。
圧縮強度:JIS A 1108に従って実施した。
(ここでは24時間強度≧3 N/mm2を目標とした)。
【0033】
【表1】

【0034】
実施例7〜11/比較例4〜6(コンクリート、AE減水剤あり、流動化剤後添加)
2軸強制練り(パグミル型)コンクリートミキサ(公称容量60リットル)に、表2に示す配合割合(表2中の各材料欄の単位は質量部)で40リットルとなる量の、セメント、砂、粗骨材、水中不分離混和剤及び消泡剤を投入、水及びAE減水剤を加えた後、90秒間混練した。30分間静置の後、メラミン系流動化剤又は本発明の流動化剤(ポリカルボン酸系分散剤、硫酸リチウム一水和物)を添加して60秒間混練した。このようにして得られた水硬性組成物ついて下記の方法により評価した。結果を表2に示す。
【0035】
スランプフロー: JIS A 1150に従って実施。
流動化剤添加・混練直後及び2,4時間後に計測し、経時の間は可傾式(重力式)コンクリートミキサ(公称容量50リットル)で低速で攪拌した。
(流動性の指標。流動化剤添加・混練直後の目標60.0±5 cmとし、4時間後の保持率80%以上を合格とした)。
空気量:JIS A 1118に従って実施した。
pH:JSCE-D 104の附属書2「水中不分離性コンクリートの水中分離度試験」に準じて実施した。規定通り、水中落下させるコンクリート試料は500 gとした。
(水中不分離性の指標。ここではpH12以下を合格とした)。
圧縮強度:JIS A 1108に従って実施。
(ここでは24時間強度≧3 N/mm2を目標とした)。
【0036】
【表2】

【0037】
以上の実施例の結果から、本発明品は、流動性保持時間が長く、且優れた初期強度が得られることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリカルボン酸系セメント分散剤及び(B)硫酸リチウムを含有する水中不分離性水硬性組成物用流動化剤。
【請求項2】
(A)ポリカルボン酸系セメント分散剤中の不揮発成分に対する(B)硫酸リチウムのLi2SO4換算の質量比が0.1〜10である請求項1記載の水中不分離性水硬性組成物用流動化剤。
【請求項3】
更に、(C)硫酸リチウム以外のアルカリ金属硫酸塩及び/または石膏を含有する請求項1又は2記載の水中不分離性水硬性組成物用流動化剤。
【請求項4】
水硬性物質、水中不分離性混和剤及び請求項1〜3の何れか1項記載の水中不分離性水硬性組成物用流動化剤を含有する水中不分離性水硬性組成物。

【公開番号】特開2011−132039(P2011−132039A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290375(P2009−290375)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(501173461)太平洋マテリアル株式会社 (307)
【Fターム(参考)】