説明

水中分散性化粧料用粉体

【課題】 水中分散性に優れた化粧料用粉体及びこれを配合した化粧料を提供すること。
【解決手段】 下記式(1)で示されるホスホリルコリン基が粉体表面に直接的に共有結合していることを特徴とする水中分散性化粧料用粉体及びこれを配合した化粧料。さらに、粉体表面に直接的にアミノ基を導入し、次にグリセロホスホリルコリンの酸化的解裂反応により得られるアルデヒド体を含有する化合物を該アミノ基に反応させることを特徴とする水中分散性化粧料粉体の製造法。


(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧料用粉体に関する。さらに詳しくは、ホスホリルコリン基が粉体表面に直接的に共有結合し、水中分散性に優れた化粧料用粉体及びこれを配合した化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
ホスホリルコリン基を有する重合体は生体適合性高分子として検討されており、この重合体を各種基剤に被覆させた生体適合性材料が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、2−メタクロイルオキシエチルホスホリルコリンの単独重合体及び共重合体で被覆した粉末を、化粧料用粉末として利用して保湿性や皮膚密着性を改善した化粧料が開示されている。
【0004】
また、特許文献2及び特許文献3には、ホスホリルコリン基を有する重合体で被覆した医療用材料や分離剤が開示されている。
【0005】
上記の材料は、主に水酸基を有するアクリル系モノマーと2−クロロ−1,3,2−ジオキサホスホラン−2−オキシドを反応させ、更にトリメチルアミンにより4級アンモニウムとすることによりホスホリルコリン構造を有するモノマーを合成しこれを重合して得られる重合体により、その表面が被覆されたものである(重合体の製造方法に関しては特許文献4及び5を参照)。
【0006】
特許文献4には、2−メタクロイルオキシエチルホスホリルコリンとメタクリル酸エステルの共重合体が製造され、特許文献5には2−メタクロイルオキシエチルホスホリルコリンの単独重合体が製造されている。
【0007】
一方、従来、顔料を水に分散させようとする場合、金属酸化物のような無機顔料では、一般的に親水性が高いにも関わらず水中で顔料粒子同士が凝縮しすぐに沈降してしまう。
そこで、さらに親水性を上げ分散安定性を向上させるために、等電点がアルカリ性側にあるアルミナや等電点が酸性側にあるシリカで顔料粒子表面を被覆するという方法が一般的に採られている。
【0008】
また、水に対して分散性の良好な粉体と混合して顆粒状にしたり、界面活性剤で処理して水に対する分散性を高めたりしている(特許文献6)。
一方、白濁性の入浴剤に使用される二酸化チタンでは、アシル化アミノ酸系界面活性剤や、ポリエチレングリコールのような分散性非イオン界面活性剤と脂肪酸石ケンで被覆するという方法が採られている。(特許文献7、8)。
【0009】
また、カーボンブラックのような疎水性が強い無機粉体は水には容易に分散されないため、水分散液を調整することはきわめて難しい。そのため、カーボンブラックではその親水性を上げるため、酸化反応により水酸基やカルボキシル基を導入する試みや(特許文献9)、プラズマ照射により水酸基のような親水性の官能基を導入する試み(特許文献10)が採用されていた。
【0010】
【特許文献1】特開平7−118123号公報
【特許文献2】特開2000−279512号公報
【特許文献3】特開2002−98676号公報
【特許文献4】特開平9−3132号公報
【特許文献5】特開平10−298240号公報
【特許文献6】特開平7−196435号公報
【特許文献7】特公平7−17494号公報
【特許文献8】特開平3−294220号公報
【特許文献9】特開平11−148027号公報
【特許文献10】特開2000−044829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、ホスホリルコリン基を有する重合体により、粉体の表面を被覆して改質する方法では、表面全体を効果的に被覆することは難しい。また、被覆した重合体が粉体から剥離するため、耐久性に問題が生じる場合がある。さらには、粉体の表面が重合体により被覆されるため、ホスホリルコリン基による生体適合性等の目的とする機能を付与する目的から逸脱して、化粧料用粉体自体に要求されている基本的性質が失われる場合もある。
【0012】
また、粉体の分散性を改良するための上記の方法は、適用できる粉体の種類が限定されるだけでなく、化粧料用粉体に要求される、水中にて経時で安定的に分散性を保つ方法ではなかった。
【0013】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされた発明であり、ホスホリルコリン基を粉体表面に直接的に共有結合させて、水中分散性に優れた化粧料用粉体及びこれを配合した化粧料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
すなわち、本発明は、下記式(1)で示されるホスホリルコリン基が粉体表面に直接的に共有結合していることを特徴とする水中分散性化粧料用粉体を提供するものである。
【化4】

(1)
【0015】
また、本発明は、前記粉体が、表面に水酸基を有する粉体であることを特徴とする上記の化粧料用粉体を提供するものである。
【0016】
さらに、本発明は、粉体表面に直接的にアミノ基を導入し、次にグリセロホスホリルコリンの酸化的解裂反応により得られるアルデヒド体を含有する化合物を該アミノ基に反応させることを特徴とする上記の化粧料用粉体の製造方法を提供するものである。
【0017】
また、本発明は、粉体表面に直接的にアミノ基を導入し、次にグリセロホスホリルコリンの酸化的解裂反応により得られるカルボキシル体を含有する化合物を該アミノ基に反応させることを特徴とする上記の化粧料用粉体の製造方法を提供するものである。
【0018】
さらに、本発明は、粉体表面に直接的に下記式(2)及び/又は(3)で示される化合物を反応させて得られることを特徴とする上記の化粧料用粉体の製造方法を提供するものである。
【化5】

(2)

【化6】

(3)
式中、mは2〜6、nは1〜4である。X1、X2、X3は、それぞれ単独に、メトキシ基、エトキシ基またはハロゲンである。ただし、X1、X2、X3のうち、2つまではメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基のいずれでも良い。
【0019】
さらに、本発明は、上記の水中分散性化粧料用粉体を含有することを特徴とする化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の化粧料用粉体は水中分散性の効果に優れた粉体であり、専ら化粧料の配合原料として使用される粉体である。特に高分散性粉体として、各種の粉体配合化粧料原料として極めて有用である。
【0021】
本発明の化粧料用粉体は、ホスホリルコリン基を有する重合体で被覆することによりホスホリルコリン基を導入した粉体と比較して、重合体の剥れによりホスホリルコリン基を失うことがないという利点を有する。また、重合体で被覆されていないので、粉体自体の表面特性をすべて殺すことがないという利点を有する。例えば、粉体表面が有する立体的な数nm程度の微細構造(微細孔など)を埋めることなく表面をホスホリルコリン基で被覆することが可能である。また、本発明の化粧料用粉体は、化粧料中に分散させておきたいタンパク質や脂質等の配合原料がある場合には、粉体への吸着を防止して吸着変性を防止する効果をも有する。
【0022】
本発明の製造方法によれば、化粧料に配合を希望する各種化粧料用粉体の表面を、簡便な反応によって、希望する任意の量のホスホリルコリン基を付与することが可能である。その結果、ホスホリルコリン基により希望する機能を有する化粧料用改質粉体が容易に提供できる。
このように製造された本発明の化粧料用粉体は各種化粧料に有効に配合される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の化粧料用粉体において、式(1)のホスホリルコリン基が化粧料用粉体表面に直接的に共有結合しているとは、ホスホリルコリン基が化粧料用粉体表面の官能基に化学的な結合状態によって導入されていることを意味し、ホスホリルコリン基を有する重合体で被覆することによりホスホリルコリン基を導入した化粧料用粉体表面は含まないという意味である。
なお、式(1)のホスホリルコリン基が、素材表面と官能基に共有結合により導入されている限り、ホスホリルコリン基との官能基の間に任意のスペーサーが入っていてもかまわない。
【0024】
粉体は化粧料に使用される粉体であれば限定されない。用いる粉体は特に制限されない。
粉体とは一般に平均粒径0.01〜100μm程度の任意の物体を意味する。具体的な粉体としては、例えば、無機粉末(例えば、タルク、カオリン、雲母、絹雲母(セリサイト)、白雲母、金雲母、合成雲母、紅雲母、黒雲母、パーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、マグネシウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、弗素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、金属石鹸(例えば、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム)、窒化ホウ素、酸化セリウム等);有機粉末(例えば、ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末)、ポリエチレン粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、ポリ四弗化エチレン粉末、ポリメチルシルセスキオキサン粉末、シリコーンエラストマー粉末、セルロース粉末等);無機白色顔料(例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛等);無機赤色系顔料(例えば、酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄等);無機褐色系顔料(例えば、γ−酸化鉄等);無機黄色系顔料(例えば、黄酸化鉄、黄土等);無機黒色系顔料(例えば、黒酸化鉄、低次酸化チタン等);無機紫色系顔料(例えば、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット等);無機緑色系顔料(例えば、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等);無機青色系顔料(例えば、群青、紺青等);パール顔料(例えば、酸化チタンコーテッドマイカ、酸化チタンコーテッドオキシ塩化ビスマス、酸化チタンコーテッドタルク、着色酸化チタンコーテッドマイカ、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等);金属粉末顔料(例えば、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等);ジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料(例えば、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号、及び青色404号などの有機顔料、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号及び青色1号等);天然色素(例えば、クロロフィル、β−カロチン等)等が挙げられる。
本発明においては表面に水酸基を有する粉体が好ましい。好ましく使用される粉体は、シリカ、タルク、カリオン、雲母、絹雲母(セリサイト)、白雲母、金雲母、合成雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、パーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、マグネシウム、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、弗素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、窒化ホウ素等の化粧料用顔料粉体、二酸化チタン、酸化亜鉛等の化粧料用白色顔料、酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄、γ−酸化鉄、黄酸化鉄、黄土、黒酸化鉄、カーボンブラック、低次酸化チタン、マンゴバイオレット、コバルトバイオレット、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト、群青、紺青等の着色顔料、酸化チタンコーテッドマイカ、酸化チタンコーテッドオキシ塩化ビスマス、酸化チタンコーテッドタルク、着色酸化チタンコーテッドマイカ、オキシ塩化ビスマス等のパール顔料、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等の金属粉末顔料等が挙げられる。
【0025】
「粉体表面に直接的にアミノ基を導入し、次にグリセロホスホリルコリンの酸化的解裂反応により得られるアルデヒド体を含有する化合物を該アミノ基に反応させる、或いは粉体表面に直接的にアミノ基を導入し、グリセロホスホリルコリンの酸化的解裂反応により得られるカルボキシル体を含有する化合物を該アミノ基に反応させることによる、水中高分散性化粧料用粉体の製造方法」
例えば、下記のステップにより製造される。すでに化粧料用粉体表面にアミノ基を有しており、それ以上のアミノ基を導入する必要がない場合は、ステップ1は省略される。
【0026】
ステップ1:任意の化粧料用粉体に、公知の方法若しくは今後開発される方法にてアミノ基を導入する。アミノ基は粉体表面に直接的に導入される。直接的とは、アミノ基を有する重合体で被覆する方法は含まないことを意味する。アミノ基は一級アミン若しくは二級アミンである。
ステップ2:アミノ基を有する粉体に対し、グリセロホスホリルコリンの酸化的解裂反応により得られたアルデヒド体あるいはハイドレート体あるいはカルボキシル体を、還元的アミノ化反応またはアミド化によって、ホスホリルコリン基を化粧料用粉体表面に直接的に付加させる。グリセロホスホリルコリンの酸化的解裂反応により得られたカルボキシル体を用いる場合は、表面の水酸基とエステル化によって、ホスホリルコリン基を化粧料用粉体表面に直接的に付加させることも可能である。
これらの粉体にアミノ基または水酸基を導入する公知の方法(ステップ1)としては、下記が挙げられる。
【0027】
1.プラズマ処理の表面反応によるアミノ基の導入
窒素ガス雰囲気下で低温プラズマにより粉体表面にアミノ基を導入する。具体的には粉体をプラズマ反応容器内に収容し、反応容器内を真空ポンプで真空にした後、窒素ガスを導入する。続いてグロー放電により、粉体表面にアミノ基を導入できる。
また、酸素ガス雰囲気下または酸素ガス、水素ガス雰囲気下で低温プラズマにより粉体表面に水酸基を導入することも可能である。具体的には、粉体をプラズマ反応容器内に収容し、反応容器内を真空ポンプで真空にした後、酸素ガスまたは酸素ガス、水素ガスを導入する。続いてグロー放電により、粉体表面に水酸基を導入できる。
プラズマ処理した粉体を機械的に粉体化することも可能である。プラズマ処理に関する文献を下記に示す。
1. M. Muller, C. oehr
Plasma aminofunctionalisation of PVDF microfiltration membranes: comparison of the in plasma modifications with a grafting method using ESCA and an amino-selective fluorescent probe
Surface and Coatings Technology 116-119 (1999) 802-807
2. Lidija Tusek, Mirko Nitschke, Carsten Werner, Karin Stana-Kleinschek, Volker Ribitsch
Surface characterization of NH3 plasma treated polyamide 6 foils
Colloids and Surfaces A: Physicochem. Eng. Aspects 195 (2001) 81-95
3. Fabienne Poncin-Epaillard, Jean-Claude Brosse, Thierry Falher
Reactivity of surface groups formed onto a plasma treated poly (propylene) film
Macromol. Chem. Phys. 200. 989-996 (1999)
【0028】
2.表面改質剤によるアミノ基の導入
アミノ基を有するアルコキシシラン、クロロシラン、シラザンなどの表面改質剤を用いて、水酸基含有化粧料用粉体表面を処理する。
例えば、1級アミノ基を有する3−アミノプロピルトリメトキシシランにより、二酸化ケイ素を処理してアミノ基を導入する。具体的には、シリカを水−2−プロパノール混合液中に浸し、3−アミノプロピルトリメトキシシランを添加後、100℃に加熱し6時間反応させる。室温に冷却後、シリカをメタノールで洗浄し、乾燥してアミノ基がシリカ表面に直接導入されたシリカ粉体が得られる。
本方法に好ましく使用される粉体は、シリカ、タルク、カリオン、雲母、絹雲母(セリサイト)、白雲母、金雲母、合成雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、パーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、マグネシウム、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、弗素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、窒化ホウ素等の化粧料用顔料粉体、二酸化チタン、酸化亜鉛等の化粧料用白色顔料、酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄、γ−酸化鉄、黄酸化鉄、黄土、黒酸化鉄、カーボンブラック、低次酸化チタン、マンゴバイオレット、コバルトバイオレット、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト、群青、紺青等の着色顔料、酸化チタンコーテッドマイカ、酸化チタンコーテッドオキシ塩化ビスマス、酸化チタンコーテッドタルク、着色酸化チタンコーテッドマイカ、オキシ塩化ビスマス等のパール顔料、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等の金属粉末顔料等が挙げられる。
【0029】
次に、アミノ化された粉体表面にホスホリルコリン基を導入する方法(ステップ2)を以下に示す。
ステップ1で得られた化粧料用粉体をメタノール中に浸漬し、ホスファチジルグリセロアルデヒドを添加後、室温で6時間放置する。そして、シアノホウ素酸ナトリウムを0℃で添加、一晩加熱攪拌し、アミノ基にホスホリルコリン基を付加させる。化粧料用粉体をメタノールで洗浄後、乾燥し、ホスホリルコリン基を表面に直接有する化粧料用粉体が得られる。反応溶媒はメタノール以外にも水、エタノール、2−プロパノール等プロトン性溶媒であれば使用可能であるが、メタノールを用いた場合の導入率が高い傾向にある。
または、ホスホリルコリン基を有するカルボキシル体をアセトニトリル中で塩化チオニルやオキザリルクロライドと一定時間反応させて生成したカルボン酸塩化物に、ステップ1で得られた化粧料用粉体を添加し、室温で6時間攪拌し、アミノ基にホスホリルコリン基を付加させる。
【0030】
表面改質剤に3−アミノプロピルトリメトキシシランを用いて、ホスホリルコリン基を導入する方法のスキームをシリカの例にとって下記に示す。
ステップ1「シリカ表面のアミノプロピル化(一般的な手法)」
【化7】


ステップ2「ホスホリルコリン基の導入(アルデヒド経由)」
【化8】




ステップ2「ホスホリルコリン基の導入(カルボン酸経由)」
【化9】

【0031】
上記で説明したように、アミノ基を有する化粧料用粉体を調製し、グリセロホスホリルコリンの酸化的解裂反応により得られたアルデヒド体あるいはハイドレート体との還元的アミノ化反応によりホスホリルコリン基が化粧料用粉体表面に直接付加した化粧料用粉体を製造する方法よって、本発明の化粧料用粉体が容易に得られ、かつ様々な化粧料用粉体の表面を修飾できるという大きな利点がある。
また、アミノ基を有する化粧料用粉体を調製し、グリセロホスホリルコリンの酸化的解裂反応により得られたカルボキシル体とのアミド化反応によって、同様にホスホリルコリン基が化粧料用粉体表面に直接付加した化粧料用粉体を製造することも可能である。
上記の製造方法において、グリセロホスホリルコリンの酸化的解裂反応により得られるアルデヒド体を含有する化合物は、公知のグリセロホスホリルコリン基を、公知の方法により酸化的解裂を行わせるもので、極めて簡単なステップである。例えば、1,2−ジオールを過ヨウ素酸、或いは過ヨウ素酸塩を用いて酸化することにより結合を解裂させ、アルデヒド体が得られる。反応は通常水中または水を含む有機溶媒中で行われる。反応温度は0度から室温である。アルデヒド体は水中で平衡反応を経てハイドレートとなることもあるが、続くアミンとの反応には影響しない。下記にホスホリルコリン基を含有する一官能のアルデヒド体を調製するスキームの一例を示す。
【化10】

【0032】
「粉体表面に直接的に式(2)で示される化合物を反応させることによる、水中分散性化粧料用粉体の製造方法」
下記式(4)に示したホスホリルコリン誘導体を蒸留水に溶解させる。下記式(4)のホスホリルコリン誘導体は公知の化合物であり市販品を入手できる。
【化11】

(4)
【0033】
式(4)の化合物の水溶液を氷水浴中で冷却し、過ヨウ素酸ナトリウムを添加し、5時間攪拌した。反応液を減圧濃縮、減圧乾燥し、メタノールにより下記式(5)に示すアルデヒド基を有するホスホリルコリン誘導体を抽出する。

【化12】

(5)
【0034】
次に、式(5)のメタノール溶液に3−アミノプロピルトリメトキシシランを0.9当量添加する。この混合溶液を室温で所定時間撹拌したのち、氷冷し、シアノヒドロホウ素化ナトリウムを適量添加し、室温に戻して16時間撹拌する。この間も反応容器には乾燥窒素を流し続ける。沈殿をろ過した後、式(6)のメタノール溶液を得る。なお、このメタノール溶液には、式(7)の化合物も副生成物として含まれる。
【化13】

(6)

【化14】

(7)
【0035】
次に、式(6)の化合物を含有する0.3mmol/mL程度の濃度のメタノール溶液20mLに、蒸留水20mLを加え、改質したい粉体を添加する。粉体の質量はその比表面積によって調整する必要がある。例えば、100m2/gの粉体の場合、その添加量は10g程度が適当である。この粉体分散液をオイルバス中80℃で還流し、5時間後に粉体をろ過し、メタノールで洗浄し、80℃で3時間減圧乾燥することで、本発明の水中高分散性化粧料用粉体が得られる。
【0036】
「粉体表面に直接的に式(3)で示される化合物を反応させることによる、水中分散性化粧料用粉体の製造方法」
下記式(4)に示したホスホリルコリン誘導体を蒸留水に溶解させる。下記式(4)のホスホリルコリン誘導体は公知の化合物であり市販品を入手できる。
【化15】

(4)
式(4)の化合物の水溶液を氷水浴中で冷却し、過ヨウ素酸ナトリウム、三塩化ルテニウムを添加し、3時間攪拌した。反応液をろ過、減圧濃縮、減圧乾燥し、メタノールにより下記式(8)に示すカルボキシル基を有するホスホリルコリン誘導体を抽出する。
【化16】

(8)
次に、アセトニトリルに式(8)及び塩化チオニルを添加、所定時間攪拌した後、2当量のトリエチルアミンと3−アミノプロピルトリメトキシシランを0.9当量添加する。この混合溶液を室温で所定時間撹拌する。この間も反応容器には乾燥窒素を流し続ける。沈殿をろ過した後、式(7)のアセトニトリル溶液を得る。
【化17】

(7)
次に式(7)を含有する0.3mmol/mL程度の濃度のアセトニトリル溶液20mLに、蒸留水10mL、メタノール10mlを加え、改質したい粉体を添加する。粉体の質量はその比表面積によって調整する必要がある。例えば、100m2/gの粉体の場合、その添加量は10g程度が適当である。この粉体分散液をオイルバス中80℃で還流し、5時間後に粉体をろ過し、メタノールで洗浄し、80℃で3時間減圧乾燥することで、本発明の水中高分散性化粧料用粉体が得られる。
【0037】
本発明の水中高分散性化粧料用粉体は任意の化粧料に配合される。化粧料は限定されないが、特に、O/W乳化化粧料、化粧水などの、粉体を水中に高分散させる化粧料や製造過程に粉体を高分散させる工程を有する製品に配合することが好ましい。
その配合量は、化粧料の種類、目的によって適宜決定され、特に限定されないが、化粧料全量に対して通常0.1〜95質量%程度の範囲である。製品の種類に応じて、例えば、粉末2層化粧水の場合は0.1〜10質量%、O/W型乳化ファンデーションや粉体含有クリーム、O/W型乳化サンスクリーンの場合は1〜50質量%、パウダリーファンデーション、スティックファンデーションの場合は10〜95質量%の配合量が好ましい場合もある。
【0038】
本発明の化粧料は、水中高分散性化粧料用粉体の他に、通常化粧品に用いられる他の成分を配合して製造される。例えば、通常の粉体成分、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油、シリコーン油、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子、増粘剤、皮膜剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料、水等を必要に応じて適宜配合し、目的とする剤形に応じて常法により製造することが出来る。
【実施例】
【0039】
次に本発明を実施例に基づきさらに詳しく説明する。なお、本発明はこれらの実施例に
限定されるものではない。配合量は特に断わりのない限り、全量に対する質量%である。
【0040】
「合成例1 ホスホリルコリン基を含有するアルデヒド化合物」
1−α−グリセロホスホリルコリン(450mg)を蒸留水15mlに溶解し、氷水浴中で冷却した。過ヨウ素酸ナトリウム(750mg)を添加し、5時間攪拌した。反応液を減圧濃縮、減圧乾燥し、メタノールにより目的物を抽出した。下記化合物(5)に構造を示す。式(5)の化合物の1H NMRスペクトルを図1に示す。
【化18】

(5)
【0041】
「合成例2 式(2)のホスホリルコリン基含有化合物」
合成例1の化合物7.5gを含むメタノール溶液を脱水したメタノール30mLに溶解させ、容器内を乾燥窒素で置換する。次に、化合物1のメタノール溶液に3-アミノプロピルトリメトキシシランを5.4g添加した。この混合溶液を、室温で5時間撹拌したのち、氷冷し、シアノヒドロホウ素化ナトリウム2.5gを添加し、室温に戻して16時間撹拌した。この間も反応容器には乾燥窒素を流し続けた。沈殿をろ過し目的物質である下記式(6)の化合物{式(2)でm=3、n=2}のメタノール溶液を得た。
【化19】

(6)
【0042】
「合成例3 ホスホリルコリン基を含有するカルボキシ化合物」
1−α−グリセロホスホリルコリン5gを水70ml−アセトニトリル30mlに溶解した。氷冷下、過ヨウ素酸ナトリウム17gと三塩化ルテニウム80mgを添加し、一晩攪拌した。沈殿物をろ過し、減圧濃縮、メタノール抽出により目的とするカルボキシメチルホスホリルコリン(8)3.86g(収率82%)を得た。式(8)の化合物の1H−NMRを図2に示す。
【化20】

(8)
【0043】
「合成例4 式(3)のホスホリルコリン基含有化合物」
化学式(8)に示すカルボキシメチルホスホリルコリン化合物3.86g及び塩化チオニル3gをアセトニトリルに氷冷下で添加、30分間攪拌し、3−アミノプロピルトリメトキシシラン3.8gを及びトリエチルアミン3g添加、反応容器には乾燥窒素を流し続け、3時間室温で攪拌して目的とする式(7)の化合物{{式(3)でm=3、n=2}のアセトニトリル溶液を得た。




【化21】

(7)
【0044】
「実施例1:粉体表面に直接的にアミノ基を導入し、次にグリセロホスホリルコリンの酸化的解裂反応により得られるアルデヒド体を含有する化合物を該アミノ基に反応させることにより、水中高分散性化粧料用粉体の製造方法:2段階製造法」
500mL三角フラスコに100gのイオン交換水、100gの2−プロパノール、5gの3−アミノプロピルトリメトキシシランを入れ、かき混ぜた。
これに微粒子酸化亜鉛(粒径:0.02〜0.05μm)10gを添加後、80℃に加熱し5時間還流煮沸した。室温に冷却後、微粒子酸化亜鉛粉末をメタノール100mLで3回ろ過、洗浄し、減圧乾燥してアミノプロピル基の導入された微粒子酸化亜鉛粉体を得た。
次にアミノプロピル基が導入された微粒子酸化亜鉛粉末10g100mlのメタノールに入れ、合成例1により得られた化合物1gを含むメタノール溶液を混合し室温で5時間静置した。続いてこの混合液を氷浴中で冷却し、シアノヒドロホウ酸ナトリウム0.3gを添加し、室温で一晩撹拌した後、フィルターをろ過、メタノール100mLで3回洗浄、減圧乾燥して、式(1)のホスホリルコリン基を表面に直接有する微粒子酸化亜鉛粉体からなる、本発明の化粧料用粉体を得た。
【0045】
「実施例2:粉体表面に直接的に式(2)で示される化合物を反応させることによる、水中分散性化粧料用粉体の製造方法:1段階製造法」
合成例2で製造した式(6)の化合物約1mmolを含むメタノール溶液50mLに蒸留水50mLを加え微粒子酸化亜鉛粉末10gを添加した。この粉体分散溶液を80℃で5h還流させ反応させた。還流後、メタノール100mLで3回ろ過、洗浄した後、乾燥することにより、本発明の式(1)のホスホリルコリン基を表面に直接有する微粒子酸化亜鉛粉体からなる、本発明の化粧料用粉体を得た。
【0046】
「水中分散性の効果実験1」
実施例1、2の化粧料用粉体、式(1)のホスホリルコリン基で修飾していない微粒子酸化亜鉛粉体(比較例1)各1.0gを99.0gのイオン交換水に十分懸濁させたあと、沈降容積管に入れ沈降容積が50%になる時間を比較した。結果を下記[表1]に示す。
[表1]
――――――――――――――――――――――
実施例1の化粧料用粉体: 約7日後
実施例2の化粧料用粉体: 約7日後
比較例1の化粧料用粉体: 約3分後
――――――――――――――――――――――
【0047】
これにより、本発明の化粧料用粉体は、式(1)のホスホリルコリン基で直接的に修飾することにより、大幅に水中での分散安定性が向上することが分った。
また、微粒子酸化亜鉛本来の性能(紫外線防御性能、色調等)は損なわれていないことも分った。
【0048】
「実施例3:粉体表面に直接的にアミノ基を導入し、次にグリセロホスホリルコリンの酸化的解裂反応により得られるカルボキシル体を含有する化合物を該アミノ基に反応させることによる、水中高分散性化粧料用粉体の製造方法:2段階製造法」
500mL三角フラスコに100gのイオン交換水、100gの2−プロパノール、5gの3−アミノプロピルトリメトキシシランを入れ、かき混ぜた。
これに微粒子二酸化チタン(粒径:0.02〜0.05μm)10gを添加後、80℃に加熱し5時間還流煮沸した。室温に冷却後、微粒子二酸化チタン粉末をメタノール100mLで3回ろ過、洗浄し、減圧乾燥してアミノプロピル基の導入された微粒子二酸化チタン粉体を得た。
次にアミノプロピル基が導入された微粒子二酸化チタン粉末10gと、合成例3により得られた化合物1g及び塩化チオニル0.7gを1時間反応させたアセトニトリル溶液30ml、トリエチルアミン0.5gを混合し室温で5時間攪拌した。続いてこの混合液をメタノール100mLで3回洗浄、減圧乾燥して、式(1)のホスホリルコリン基を表面に直接有する微粒子二酸化チタンからなる、本発明の化粧料用粉体を得た。
【0049】
「実施例4:粉体表面に直接的に式(7)で示される化合物を反応させることによる、水中分散性化粧料用粉体の製造方法:1段階製造法」
合成例4で製造した式(7)の化合物約1mmolを含むアセトニトリル溶液20mLにメタノール30mlと蒸留水10mLを加え微粒子二酸化チタン粉末10gを添加した。この粉体分散溶液を80℃で5h還流させ反応させた。還流後、メタノール100mLで3回ろ過、洗浄した後、乾燥することにより、本発明の式(1)のホスホリルコリン基を表面に直接有する微粒子二酸化チタン粉体からなる、本発明の化粧料用粉体を得た。
【0050】
「水中分散性の効果実験2」
実施例3、4の化粧料用粉体、式(1)のホスホリルコリン基で修飾していない微粒子二酸化チタン粉体(比較例2)各1.0gを99.0gのイオン交換水に十分懸濁させたあと、沈降容積管に入れ沈降容積が50%になる時間を比較した。結果を下記[表2]に示す。
[表2]
――――――――――――――――――――――
実施例3の化粧料用粉体: 約10日後
実施例4の化粧料用粉体: 約10日後
比較例2の化粧料用粉体: 約30分後
――――――――――――――――――――――
【0051】
これにより、本発明の化粧料用粉体は、式(1)のホスホリルコリン基で直接的に修飾することにより、大幅に水中での分散安定性が向上することが分った。
また、微粒子二酸化チタン本来の性能(紫外線防御性能、色調等)は損なわれていないことも分った。
【0052】
「実施例5〜12」
実施例1と同様の方法で、式(1)のホスホリルコリン基を導入する粉体を、シリカ(実施例5)、セリサイト(実施例6)、マイカ(実施例7)、タルク(実施例8)、カオリン(実施例9)、べンガラ(実施例10)、黄酸化鉄(実施例11)、黒酸化鉄(実施例12)に変更して、式(1)のホスホリルコリン基修飾粉体を製造した。いずれの粉体も、本発明の製造方法により、式(1)のホスホリルコリン基を粉体表面に直接的に共有結合にて導入可能であることが分った。
【0053】
「実施例13〜20」
実施例2と同様の方法で、式(1)のホスホリルコリン基を導入する粉体を、シリカ(実施例13)、セリサイト(実施例14)、マイカ(実施例15)、タルク(実施例16)、カオリン(実施例17)、べンガラ(実施例18)、黄酸化鉄(実施例19)、黒酸化鉄(実施例20)に変更して、ホスホリルコリン基修飾反応を行った。いずれの粉体も、本発明の製造方法で、式(1)のホスホリルコリン基を粉体表面に直接的に共有結合にて導入可能であることが分った。
【0054】
<化粧料における性能確認>
「実施例21 O/W型乳化ファンデーション」
(処方)
1)ホスホリルコリン基修飾酸化セリサイト(実施例6) 17.0
2)ホスホリルコリン基修飾酸化マイカ(実施例7) 20.0
3)ホスホリルコリン基修飾酸化亜鉛(実施例1) 8.0
4)ホスホリルコリン基修飾ベンガラ(実施例10) 0.3
5)ホスホリルコリン基修飾黄酸化鉄(実施例11) 1.2
6)ホスホリルコリン基修飾黒酸化鉄(実施例12) 0.6
7)球状ポリエチレン粉体 6.0
8)スクワラン 10.0
9)オリーブ油 10.0
10)ステアリン酸 2.0
11)グリセリルモノステアレート 2.0
12)POE(40)モノステアリン酸ソルビタン 2.0
13)グリセリン 5.0
14)トリエタノールアミン 0.8
15)pH調整剤 適量
16)防腐剤 適量
17)イオン交換水 残部
(製法)
1)〜12)を85℃に加熱溶解する(油相)。17)に13)〜15)を添加し均一に分散する(水相)。水相中に油相を添加し、85℃で100分間保持して攪拌した後、16)を加え、攪拌冷却して45℃とする。
上記のホスホリルコリン基を修飾した粉体を配合した化粧料は、粉体分散性の経時安定性が高く、使用性に優れるものであった。
【0055】
「実施例22 O/W型乳化化粧下地」
(処方)
1)イオン交換水 残部
2)グリセリン 20.0
3)1,2−ペンタンジオール 3.0
4)1,3−ブチレングリコール 1.0
5)流動パラフィン 7.5
6)イソステアリン酸 0.5
7)アスコルビン酸(美白剤) 0.2
8)カミツレエキス(美白剤) 0.1
9)ユキノシタエキス(美白剤) 0.3
10)フタル酸ジ2−エチルヘキシル 0.3
11)ホスホリルコリン基修飾球状シリカ(実施例5) 4.0
12)ホスホリルコリン基修飾酸化亜鉛(実施例1) 5.0
13)ホスホリルコリン基修飾タルク(実施例8) 5.0
14)安定化剤 適量
15)香料 適量
(製法)
5)〜14)を85℃に加熱溶解する(油相)。1)に2)〜4)を添加し均一に分散する(水相)。水相中に油相を添加し、85℃で100分間保持して攪拌した後、15)を加え、攪拌冷却して45℃とする。
上記のホスホリルコリン基を修飾した粉体を配合した化粧料は、粉体分散性の経時安定性が高く、使用性に優れるものであった。
【0056】
「実施例23 2層化粧水」
(処方)
1)グリセリン 4.0
2)ポリエチレングリコール(分子量1500) 3.0
3)エタノール(95%) 15.0
4)カンファー 0.1
5)液状フェノール(95%) 0.3
6)ホスホリルコリン基修飾酸化亜鉛(実施例2) 2.0
7)ホスホリルコリン基修飾カオリン(実施例17) 2.0
8)ベントナイト 1.5
9)ポリメチルシルセスキオキサン 0.01
10)ジカプリン酸ネオペンチルグリコール 0.8
11)香料 0.01
12)エデント酸三ナトリウム 0.1
13)精製水 残部
(製法)
6)、7)、8)、9)を室温にて湿潤し同じく室温溶解した3)、4)、5)、10)、12)を同じく室温溶解した1)、2)、11)、13)の中へ均一混合した。
上記のホスホリルコリン基を修飾した粉体を配合した化粧料製品は粉体層の再分散性が良好で使用性に優れるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の化粧料用粉体は水分散性に優れているので、粉体の分散安定性に優れた粉体配合化粧料に好ましく使用される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】合成例1の構造式及びNMRスペクトルである。
【図2】合成例3の構造式及びNMRスペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示されるホスホリルコリン基が粉体表面に直接的に共有結合していることを特徴とする水中分散性化粧料用粉体。
【化1】

(1)
【請求項2】
前記粉体が、表面に水酸基を有する粉体であることを特徴とする請求項1記載の化粧料用粉体。
【請求項3】
粉体表面に直接的にアミノ基を導入し、次にグリセロホスホリルコリンの酸化的解裂反応により得られるアルデヒド体を含有する化合物を該アミノ基に反応させることを特徴とする請求項1または2記載の化粧料用粉体の製造方法。
【請求項4】
粉体表面に直接的にアミノ基を導入し、次にグリセロホスホリルコリンの酸化的解裂反応により得られるカルボキシル体を含有する化合物を該アミノ基に反応させることを特徴とする請求項1または2記載の化粧料用粉体の製造方法。
【請求項5】
粉体表面に直接的に下記式(2)及び/又は(3)で示される化合物を反応させて得られることを特徴とする請求項1または2記載の化粧料用粉体の製造方法。
【化2】

(2)

【化3】

(3)
式中、mは2〜6、nは1〜4である。X1、X2、X3は、それぞれ単独に、メトキシ基、エトキシ基またはハロゲンである。ただし、X1、X2、X3のうち、2つまではメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基のいずれでも良い。
【請求項6】
請求項1または2記載の水中分散性化粧料用粉体を含有することを特徴とする化粧料。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体表面に直接的にアミノ基を導入し、次にグリセロホスホリルコリンの酸化的解裂反応により得られるカルボキシル体を含有する化合物を該アミノ基に反応させることによって、下記式(1)で示されるホスホリルコリン基が粉体表面に直接的に共有結合していることを特徴とする水中分散性化粧料用粉体。
【化1】

(1)
【請求項2】
粉体表面に直接的にアミノ基を導入し、次にグリセロホスホリルコリンの酸化的解裂反応により得られるカルボキシル体を含有する化合物を該アミノ基に反応させることを特徴とする請求項1記載の水中分散性化粧料用粉体の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の水中分散性化粧料用粉体を含有することを特徴とする化粧料。
【請求項4】
粉体表面に直接的に下記式(2)及び/又は(3)で示される化合物を反応させて得られることを特徴とする水中分散性化粧料用粉体を配合することを特徴とする化粧料。
【化2】

(2)
【化3】

(3)
式中、mは2〜6、nは1〜4である。X1、X2、X3は、それぞれ単独に、メトキシ基、エトキシ基またはハロゲンである。ただし、X1、X2、X3のうち、2つまではメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基のいずれでも良い。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−8661(P2006−8661A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−136838(P2005−136838)
【出願日】平成17年5月10日(2005.5.10)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】