説明

水中到達による推進工法

【課題】水中部であってもその先導機を容易に回収することができ、これにより到達立坑の構築が不要となり、工事費の低減を図ることができる。
【解決手段】発進側においてケーシング4と地山Gとの間を坑口止水部20によって止水してから先導機10を推進させ、水中部W内に先導機10を到達させ、その後、ピンチ弁14を閉じるとともに、ケーシング4内部の開口をケーシング内止水部材30によって閉塞し、先導機10を水中でケーシング4から切り離し、先導機10が切り離されたケーシング先端4aの開口を止水蓋で閉止するようにした推進工法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中到達による推進工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、推進工法により地山から水中部に貫通する小口径の長尺管路を構築する場合、削孔完了後に水中で先導機を回収する必要性が生じることに加え、発進坑側から削孔内に本管を挿入し、また、孔内をグラウト注入で固める際、先端部より削孔内(発進坑内)に水が流入するために作業が困難となる。そのため、一般的には、図20に示すように、水中部に到達立坑100を設置し、推進した先導機101を到達立坑100内に到達させて搬出している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−64978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、水中に到達立坑を構築して、その到達立坑に先導機を到達させる従来の施工にあっては、先導機が到達する位置の水深が深い場合や地盤が硬質な場合、或いは急峻地形な場合など、施工条件によっては、その到達立坑の構築にかかるコストが増大するという問題があった。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、水中部であってもその先導機を容易に回収することができ、これにより到達立坑の構築が不要となり、工事費の低減を図ることができる水中到達による推進工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る水中到達による推進工法では、排泥管に排泥止水バルブを設けた先導機を地中から水中部へ向けて推進させつつ、その先導機の後方にケーシングを構築する水中到達による推進工法であって、発進側においてケーシングと地山との間を止水する工程と、水中部に先導機を到達させる工程と、排泥止水バルブを閉じるとともに、ケーシング内部の開口を閉塞する工程と、先導機を水中でケーシングから切り離す工程と、先導機が切り離されたケーシングの先端の開口を止水蓋で閉止する工程とを有し、止水蓋を水中部の水圧によりケーシングの先端に吸着させていることを特徴としている。
【0007】
本発明では、発進側においてケーシングと地山との間を止水しながら先導機を推進させ、水中部内に先導機を到達させ、排泥止水バルブを閉じるとともに、ケーシング内部の開口を閉塞した後、先導機を水中でケーシングから切り離し、先導機が切り離されたケーシング先端の開口を止水蓋で閉止する推進施工を行うことができる。つまり、先導機をケーシング先端に対して分離して回収する前に、ケーシング内部の開口、及び排泥管が確実に止水されるので、この状態において先導機をケーシングから切り離したときに、水中部の水が発進側へ流出するのを防止することができる。
【0008】
さらに、先導機が切り離されたケーシング先端に止水蓋を水中部の水圧により吸着させて取り付けることで、ケーシングの水中部側の開口が閉止され、ケーシング内への水の流入を防ぐことができる。これにより、先導機の回収後におけるケーシング内での作業を水の無い環境で行うことができるうえ、先導機回収後のケーシング内に設置する設備も水に曝すことがなく、品質を確保できるという利点がある。
そして、水中での先導機の回収作業を行うことが可能となるので、先導機の到達部が水中部である場合であっても到達立坑を水中部に構築しておく必要がなくなり、大幅なコストの低減を図ることができる。
【0009】
また、本発明に係る水中到達による推進工法では、内部の開口が閉塞されたケーシングから先導機を切り離す前に、ケーシング内に水を充填して加圧し、ケーシング内部と水中部との水圧の平衡を保つようにしたことが好ましい。
【0010】
本発明では、ケーシング内に水を充填し、そのケーシング内部と水中部との水圧の平衡が保たれた状態とすることにより、水中部の水圧が作用する先導機に対してケーシング内部の水圧で抵抗することになるため、ケーシングに対して先導機を容易に離脱させることができる。つまり、分離作業に大掛かりな装置が不要となることから、工事費の低減を図ることが可能となる。
【0011】
また、本発明に係る水中到達による推進工法では、止水蓋をケーシングの先端に位置させた後、ケーシング内の水を排水することがより好ましい。
【0012】
この場合、先導機を回収した後、ケーシング内部の開口における止水状態を解除し、先導機を取り外した際にケーシング内に流入した水を発進側に排水することで、止水蓋を外水圧(水中部の水圧)によりケーシング先端に対して液密な状態で吸い付けることができる。
【0013】
また、本発明に係る水中到達による推進工法では、ケーシング内部の開口の閉塞工程において、ケーシングよりも大径で、両面側から補強板で挟持されるとともに、排泥管及び先導機による推進に伴う設備配管類を通過可能な挿通孔を有するケーシング内止水部材が設けられ、ケーシング内止水部材がケーシングの内面に液密に接触した状態で介挿されることが好ましい。
【0014】
本発明では、ケーシング内止水部材がケーシングの内面に液密に接触するとともに、設備配管類に対しても液密に接触するので、ケーシング内部の開口をより確実に止水することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の水中到達による推進工法によれば、先導機をケーシング先端から切り離して回収する前に、発進側への水の流出を防止することができるので、先導機が水中部であってもその先導機を容易に回収することができ、これにより到達立坑の構築が不要となり、工事費の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態による推進工法の概要を示す側面図であって、先導機が水中部に到達した状態であり、先導機を切り離す前の状態の図である。
【図2】推進工法の概要を示す側面図であって、ケーシング先端に止水蓋を設けた状態の図である。
【図3】図1に示す坑口止水部及びケーシング内止水部材の拡大図である。
【図4】図3に示すA−A線断面図であって、ケーシング内止水部材の正面図である。
【図5】ケーシング内止水部材の詳細構成を示す側断面図である。
【図6】図2に示す止水蓋の側断面図である。
【図7】図6に示すB−B線矢視図である。
【図8】推進工法の施工手順を示す図であって、推進前の状態の図である。
【図9】推進工法の施工手順を示す図であって、推進中の状態の図である。
【図10】推進工法の施工手順を示す図であって、水中到達時の状態の図である。
【図11】推進工法の施工手順を示す図であって、先導機を切り離す直前の状態の図である。
【図12】推進工法の施工手順を示す図であって、ケーシング先端に止水蓋を設けた状態の図である。
【図13】推進工法の施工手順を示す図であって、ケーシングと地盤との間に止水グラウトを行う状態の図である。
【図14】推進工法の施工手順を示す図であって、本設管を設置した状態の図である。
【図15】図14に示すケーシング先端部の拡大図である。
【図16】推進工法の施工手順を示す図であって、本設管とケーシングとの間にモルタルを充填した状態の図である。
【図17】本設管と水中管との接合部の構造を示す側面図である。
【図18】図17に示すC−C線矢視図であって、(a)はリングフランジを本設管に係合させた状態の図、(b)は係合前の状態の図である。
【図19】変形例による本設管と水中管との接合部の構造を示す側面図である。
【図20】従来における水中部に到達立坑を構築した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態による水中到達による推進工法について、図面に基づいて説明する。
【0018】
図1に示すように、本実施の形態による水中到達による推進工法は、汎用の削孔機(以下、先導機10という)を使用して、例えば深層水を取水するための管路(図14に示す本設管6)が設置される推進坑1を発進坑2から地中を推進させて水中部W内まで貫通させて構築する推進工法であって、到達する水中部Wに到達立坑を設けずに施工できる工法となっている。
ここで、推進坑1には先導機10の後方にケーシング4が構築され、そのケーシング4は推進時において先導機10の推進とともに発進坑2より前方(到達側)へ押し込まれていく。
【0019】
すなわち、図1に示すように、本推進工法は、発進側においてケーシング4と地山Gとの間を坑口止水部20によって止水してから先導機10を推進させ、水中部W内に先導機10を到達させ、その後、ピンチ弁14(後述する)を閉じるとともに、ケーシング4内部の開口をケーシング内止水部材30によって閉塞し、先導機10を水中でケーシング4から切り離し、図2に示すように、先導機10が切り離されたケーシング先端4aの開口を止水蓋40で閉止する工程を有している。
【0020】
図1に示す発進坑2は、地山Gに設けられる立坑であり、先導機10の発進基地となるとともに、先導機10の推進時には元押しジャッキ5(図8参照)を配置してケーシング4を到達側へ継ぎ足して延長する作業が行われる。
ここで、先導機10の推進方向において、到達側を「前方」、「前側」といい、発進側を「後方」、「後側」という。
【0021】
発進坑2には、推進坑1の坑口2Aにおけるケーシング4と地山Gとの間からの水の流入を防止するための坑口止水部20が設けられている。
坑口止水部20は、図3に示すように、発進坑2の推進坑1の坑口2Aに固定されるリング状の口元金物21と、この口元金物21とケーシング4との間の間隙部に押し込まれて装填される止水パッカー22と、その止水パッカー22より前側(先導機10側)に設けられたリングパッキン23と、からなる。口元金物21は、ケーシング4よりも大径をなし、坑口2Aの外周部分の壁面に対して液密な状態で固定されている。リングパッキン23は、例えば水圧が数kg/cm以上になる場合に水圧作動するものである。このように構成される坑口止水部20は、止水パッカー22とリングパッキン23の二重の止水部材を有しているので、坑口2Aにおける高い止水機能を有している。
【0022】
先導機10は、切削ビットを有する回転可能な先端カッタ11を備え、スキンプレート後端内面に周方向全周にわたって延びるテール部リングパッキン12が複数段設けられている。先導機10のスキンプレートとケーシング先端4aとがテール部リングパッキン12を介して液密に接した状態となり、地山Gからの水のケーシング4内への流入が防止されている。
【0023】
先導機10には、先端カッタ11で切削した土砂を搬出するための排泥管13が発進坑2側まで延設されている。排泥管13には、先導機10に接続する位置において、圧搾空気で開閉するとともに、ゴムチューブを押し挟んで開閉制御が可能なピンチ弁14(排泥止水バルブ)が設けられている。このピンチ弁14によって排泥管13内の圧力と土砂の流入量が制御される。
【0024】
ケーシング4の発進坑2側の後方端部4bには、先導機10による推進が完了したとき、すなわち先導機10が水中部Wに到達した状態において、先導機10を切り離すに当たりケーシング4の内部の開口を閉塞するためのケーシング内止水部材30が設けられている。つまり、ケーシング内止水部材30は、発進坑2とケーシング4の内部空間の連通状態を遮断する機能を有している。
【0025】
図4及び図5に示すように、ケーシング内止水部材30は、ケーシング4の内径寸法よりも大径の多層・円板状のゴムパッキン31がその両面側から鉄板32(補強板)によって挟持された構成となっている。さらにケーシング内止水部材30には、排泥管13、エアー管、動力ケーブル等の設備配管類15を通過させるための挿通孔33が厚さ方向に貫通している。この挿通孔33は、これら配管(排泥管13、設備配管類15)の外径寸法よりも小径となっている。そのため、ケーシング4内に配置されたケーシング内止水部材30は、ケーシング4の内面に対して液密に接触した状態で介挿され、さらに、設備配管類15に対しても挿通孔33が密着した状態で設けられる。さらに、排泥管13及び設備配管類15と鉄板32とは、全周溶接により接合されている。
【0026】
このようなケーシング内止水部材30は、1ロッド毎に接続されるケーシング短管と同じ長さで製作される排泥管13と設備配管類15とが組み込まれた1ロッドに仕込まれており、推進が完了した時点で最も発進坑2側の位置に配置させるケーシング短管(ロット)と一体として接続、設置される。なお、ケーシング内止水部材30は、作用する水圧に応じてゴムパッキン31の硬さや厚さ寸法を適宜設定することができる。
【0027】
図6及び図7に示すように、止水蓋40は、ケーシング4の外径寸法よりも大きな外径の面板41と、面板41の外周部から延ばされた蓋周縁部42と、面板41の内面に接着されたゴム製の止水板43と、からなる。この止水蓋40は、潜水作業員によって止水板43をケーシング先端4aに当接させて配置させ、ケーシング内止水部材30に挿通孔状に配置されたコック弁を開きケーシング4内の水を排水することで、水中部Wの水圧によりケーシング先端4aに吸着される構成となっている。そのため、止水蓋40とケーシング先端4aとの固定には、特別な固着手段は不要である。ケーシング先端4aに止水蓋40を取り付けることで、ケーシング先端4aの開口を閉鎖し、ケーシング4を止水する構成となっている。
なお、面板41及び止水板43の材質、厚さ寸法は、これに作用する水圧の大きさや、先導機10の外径寸法などの条件に応じて適宜設定することができる。
【0028】
次に、水中到達による推進工法について、図面に基づいて詳細に説明する。ここでは、水中部Wで先導機10を回収し、さらに推進坑1に本設管6を設置して、その本設管6に水中部Wに配設される水中管7を接続する施工手順を説明する。
【0029】
図8に示すように、先ず、発進坑2においてケーシング4と地山Gとの間を止水する。具体的には、坑口2A付近の地山Gに止水グラウトPを施工しておき、ボーリングした口元部に止水用の口元金物21を取り付け、坑口部を切り開いた後に、先導機10を坑口2Aに設置する。このとき、先導機10の後方には適宜な本数のケーシング4を配置し、そのケーシング4の後端には元押しジャッキ5を設ける。
また、ケーシング4と口元金物21との間には、リングパッキン23及び止水パッカー22を押し込んで取り付ける。これにより、ケーシング4と地山Gとの間から発進坑2内へ水が流入するのを防止することができる。
【0030】
次に、図9に示すように、先導機10を推進させつつ、ケーシング4を発進坑2から継ぎ足しながら延長する。先導機10による推進は、元押しジャッキ5によって推進坑1内に挿入したケーシング4及び先導機10に推力を与えて、先導機10を前進させつつ先端カッタ11で切羽側の地山Gを砕岩し、破砕土は排泥管13より発進坑2側へ排出する。なお、排泥管13からの泥水圧力を制御することによって、削孔時の孔壁の保持と摩擦の低減を図っている。
【0031】
なお、先導機10の後端内側には図1に示すテール部リングパッキン12が設けられ、ケーシング先端4aの外周面に対して液密な状態で接触しているので、先導機10のテール部からケーシング4内への水の流入が防止されている。
また、排泥管13にはピンチ弁14(図1参照)が設けられているので、排泥管13内の圧力と先端カッタ11から機内に取り込んだ土砂の流入量が制御され、排泥管13の後方(発進側)への水の流出も防ぐことができる。
【0032】
そして、図10に示すように、先導機10を地山G内で推進させて水中部W内に到達させた後、ピンチ弁14を閉じるとともに、ケーシング4の内部の開口を閉塞し、先導機10を水中でケーシング4から切り離して回収する。
具体的には、図10に示すように、先導機10を水中部Wの回収位置まで押し出した後、図11に示すようにケーシング内止水部材30をケーシング4の後方端部4bに設置し、ケーシング4内の開口を塞いだ状態にする。これにより、ケーシング4の内部と発進坑2とがケーシング内止水部材30によって隔離されることになる。
【0033】
そして、ケーシング内止水部材30によって内部の開口が閉塞されたケーシング4から先導機10を切り離す前に、ケーシング4内のケーシング内止水部材30より前方の部分に水を充填して加圧し、水中部Wの水圧との平衡を保つ状態にする。その後、元押しジャッキ5を作動させ排泥管13のみを数十cm程度前側に押すことで先導機10がケーシング先端4aから切り離されるとともに、水中部W側から潜水作業員により排泥管13と先導機10を切り離して先導機10を回収する。このとき、ケーシング4内への水の充填は、ケーシング内止水部材30に挿通孔状に取付けられた開閉コック弁を用いて、発進坑2より注水(ピンチ弁14を開き排泥管13の水をコック弁に流入させる場合もある)することでケーシング4内に水中部Wの水を流入させるようにする。
なお、回収した先導機10は、適宜、オーバーホールすることで再利用することが可能となる。
【0034】
続いて、図12に示すように、潜水作業員により、先導機10が切り離されたケーシング先端4aに止水蓋40を水圧により吸着させることで取り付ける。これにより、ケーシング4の水中部W側の開口が閉止され、ケーシング4内への水の流入が防止される。この場合、ケーシング先端4aに止水蓋40を当接するようにして配置し、その後、ケーシング内止水部材30を発進坑2側に引き抜いて止水状態を解除し、先導機10を取り外す際にケーシング4内に流入した水を発進坑2側に排水することで、止水蓋40は外水圧(水中部Wの水圧)によりケーシング先端4aに対して液密な状態で吸い付けることができる。
そして、水の無い環境でケーシング4内に残っている送泥管13やその他の設備配管類15(図4及び図5参照)を発進坑2側へ引き出して撤去する。
【0035】
次に、必要に応じて、図13に示すように、ケーシング4の内空側より地山Gへ向けて裏込め材を注入し、ケーシング4の周囲に止水グラウト(図13示す符号Rの領域)を施す。このとき、グラウト材の製造は、発進坑2内に設置した図示しないモルタルプラントやグラウトポンプにより行う。
【0036】
続いて、図14に示すように、ケーシング4の内部に硬質ポリエチレン管や鋼管等による本設管6を挿入する。このとき、本設管6の発進坑部分には開閉弁8を閉じた状態で設けておき、図15に示すように、本設管6の前方端部6aには閉止キャップ61を被せ、さらに後に行われるケーシング4内モルタル充填に伴い、閉止キャップ61部が固化しないよう発泡材やウェス等でカバーしておく。
【0037】
その後、図16に示すように、ケーシング4の内部、すなわち挿入した本設管6とケーシング4との間の隙間にモルタルを充填する。この場合、発進坑2内にモルタル圧送管Mを推進坑1の先端付近まで延ばして配設し、モルタル圧送管Mを発進坑2側に引き込みながら打設することで、到達側から発進坑2側に向けて打設することができる。なお、本設管6の先端の開口が閉止キャップ61によって閉塞されているので、打設したモルタルが本設管6内に流入するのが防止されている。
【0038】
そして、前記モルタルが硬化した後に、潜水作業員によりケーシング4の先端部における数十cm程度は止水蓋40の取り外しも含めて取り壊し、本設管6の先端をむき出しにする。
このとき、ケーシング4内にはモルタルが硬化した状態で充填されているので、ケーシング4と本設管6との間から水中部Wの水が発進坑2内に流入することはない。
【0039】
次に、本設管6の先端6aに設けられている閉止キャップ61を除去して、図17に示す本設管側フランジ62を露出させ、この本設管側フランジ62のある先端6aに水中管側フランジ71を接続し、その後、閉じた状態の本設管6の開閉弁8(図14参照)を適宜な開度で開く。
【0040】
図17及び図18(a)、(b)に示すように、本設管6の先端6aには、通常のフランジに比べて突出長の短い鍔程度の本設管側フランジ62が設けられている。本設管6には、本設管側フランジ62より後側の位置にこの本設管側フランジ62よりも大径の一対のリングフランジ63A、63Bが二重に設けられている。これらリングフランジ63A、63Bには、それぞれ周方向に沿って複数のボルト孔63a、63a、…が設けられている。
【0041】
水中管7は、本設管6に接続され、例えば水中の底部付近に先端開口を配置させて、水底付近で取水するものであり、その水中管側フランジ71は本設管側フランジ62と同径をなしている。さらに、水中管7には、この水中管側フランジ71よりも大径で、本設管6に設けられるリングフランジ63A、63Bと略同径のリングフランジ72が設けられている。このリングフランジ72には、本設管6のリングフランジ63A、63Bのボルト孔63aに対応する位置に複数のボルト孔72a、72a、…が設けられている。
【0042】
本設管6側の一対のリングフランジ63A、63Bは、それぞれ半割りにされており、本設管6に対して外側から挟み込むようにして係合され、その一対のうち前側に位置するリングフランジ63Aが本設管側フランジ62の後端面62aに接するようにして配置されている。一方、水中管7側のリングフランジ72も半割りにされており、水中管7に対して外側から挟み込むようにして係合され、水中管側フランジ71の前端面71aに接するようにして配置されている。
そして、一対のリングフランジ63A、63Bは、互いの分割位置を周方向に各90°ずらした状態で本設管6を挟持するようにして係合させ、水中管7のリングフランジ72とボルト9で接合する。
【0043】
つまり、本設管側フランジ62が水中管側フランジ71にボルトで固定される構成ではないので、本設管側フランジ62の外径寸法を小さくすることができる。それにより、本設管6を挿通させるためのケーシング4の外径寸法を小さくすることができ、すなわち推進坑1の掘削断面を小径にすることが可能となるので、工事費を低減することが可能となる。
【0044】
なお、図19に示すように、水中管7の水中管側フランジ73を本設管6のリングフランジ63A、63Bと略同径とし、上述した水中管7側のリングフランジ72(図17)を省略することも可能である。つまり、水中管側フランジ73の周方向には複数のボルト孔73a、73a、…を設ける構成とし、本設管6の一対のリングフランジ63A、63Bと水中管側フランジ73とをボルト9で接合するようにしても良い。
【0045】
このように本推進工法では、先導機10をケーシング先端4aに対して分離して回収する前に、ケーシング内部の開口、及び排泥管13が確実に止水されるので、この状態において先導機10をケーシング4から切り離したときに、水中部Wの水が発進側へ流出するのを防止することができる。
【0046】
さらに、先導機10が切り離されたケーシング先端4aに止水蓋40を水中部Wの水圧により吸着させて取り付けることで、ケーシング4の水中部W側の開口が閉止され、ケーシング4内への水の流入を防ぐことができる。これにより、先導機10の回収後におけるケーシング4内での作業を水の無い環境で行うことができるうえ、回収後のケーシング4内に設置する設備も水に曝すことがなく、品質を確保できるという利点がある。
そして、水中での先導機10の回収作業を行うことが可能となるので、本実施の形態のように先導機10の到達部が水中部Wである場合であっても到達立坑を水中部Wに構築しておく必要がなくなり、大幅なコストの低減を図ることができる。
【0047】
また、ケーシング4内に水を充填し、そのケーシング4の内部と水中部Wとの水圧の平衡が保たれた状態とすることにより、水中部Wの水圧が作用する先導機10に対してケーシング内部の水圧で抵抗することになるため、ケーシング4に対して先導機10を容易に離脱させることができる。つまり、分離作業に大掛かりな装置が不要となることから、工事費の低減を図ることが可能となる。
【0048】
上述のように本実施の形態による水中到達による推進工法では、先導機10をケーシング先端4aから切り離して回収する前に、発進側への水の流出を防止することができるので、先導機10が水中部Wであってもその先導機10を容易に回収することができ、これにより到達立坑の構築が不要となり、工事費の低減を図ることができる。
【0049】
以上、本発明による水中到達による推進工法の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、発進坑2に設けた坑口止水部20及びケーシング内止水部材30の構成は、本実施の形態に限定されることはなく、他の形態であってもかまわない。例えば本実施の形態では止水パッカー22の前方にリングパッキン23を配置させた二重構造としているが、このリングパッキン23を省略することも可能である。
また、本設管6の先端部にリングフランジ63A、63Bを2枚設けて、水中管7のフランジ71と固定させる構成としているが、リングフランジの枚数は限定されることはなく、1枚であっても良い。さらに、リングフランジ63A、63Bの分割位置や分割数も任意に設定することができる。
【0050】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 推進坑
2 発進坑
4 ケーシング
4a ケーシング先端
5 元押しジャッキ
6 本設管
7 水中管
10 先導機
12 テール部リングパッキン
13 排泥管
14 ピッチ弁(排泥止水バルブ)
15 設備配管類
20 坑口止水部
21 口元金物
22 止水パッキン
23 リングパッキン
30 ケーシング内止水部材
31 ゴムパッキン
32 鉄板
33 挿通孔
40 止水蓋
63A、63B、72 リングフランジ
62 本設管側フランジ
71 水中管側フランジ
G 地山
W 水中部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排泥管に排泥止水バルブを設けた先導機を地中から水中部へ向けて推進させつつ、その先導機の後方にケーシングを構築する水中到達による推進工法であって、
発進側において前記ケーシングと地山との間を止水する工程と、
前記水中部に前記先導機を到達させる工程と、
前記排泥止水バルブを閉じるとともに、前記ケーシング内部の開口を閉塞する工程と、
前記先導機を水中で前記ケーシングから切り離す工程と、
前記先導機が切り離された前記ケーシングの先端の開口を止水蓋で閉止する工程と、
を有し、
前記止水蓋を水中部の水圧により前記ケーシングの先端に吸着させていることを特徴とする水中到達による推進工法。
【請求項2】
内部の開口が閉塞された前記ケーシングから前記先導機を切り離す前に、前記ケーシング内に水を充填して加圧し、前記ケーシング内部と水中部との水圧の平衡を保つようにしたことを特徴とする請求項1に記載の水中到達による推進工法。
【請求項3】
前記止水蓋を前記ケーシングの先端に位置させた後、前記ケーシング内の水を排水することを特徴とする請求項1または2に記載の水中到達による推進工法。
【請求項4】
前記ケーシング内部の開口の閉塞工程において、
前記ケーシングよりも大径で、両面側から補強板で挟持されるとともに、前記排泥管及び前記先導機による推進に伴う設備配管類を通過可能な挿通孔を有するケーシング内止水部材が設けられ、
該ケーシング内止水部材が前記ケーシングの内面に液密に接触した状態で介挿されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水中到達による推進工法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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