説明

水中微生物の分離濃縮方法

【課題】
本発明は、クリプトスポリジウム等の水系感染微生物を、短時間かつ高効率で、大量の試料水中から分離・濃縮するための、水中微生物の分離濃縮方法を提供する。
【解決手段】
試料水に、塩化カルシウム溶液と、炭酸水素ナトリウム溶液とを添加し分散させる第1工程と、炭酸カルシウム粒子を析出させるために、第1工程後の試料水に水酸化ナトリウム溶液を添加する第2工程と、炭酸カルシウム粒子を凝集沈殿分離させるために、さらに塩化第二鉄を添加し攪拌する第3工程と、第3工程後の試料水から上澄み液を取り除き、得られた凝集沈殿物を酸により溶解させ濃縮試料水として回収する第4工程とを含むこととした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川及び湖沼等の環境水や上下水道の各処理プロセスの処理水等水中に存在する原虫、細菌、ウイルスといった水中微生物(水系感染性微生物)の分離濃縮方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境中には多種多様な化学物質が存在するため、水道原水となる河川や湖沼等の環境水も様々な化学物質で汚染されていると考えられる。しかし、このような水環境の水質問題のほかにクリプトスポリジウム等の原虫類、腸管出血性大腸菌O157やレジオネラ菌等の細菌、ウイルス等による水系感染症の発生が大きな社会問題となっている。
【0003】
これらの水系感染症の集団発生を防ぐためには水処理プロセスにおける原因微生物を高頻度にモニタリングすることが必要不可欠である。しかし、試料中から微生物を効率よく分離濃縮する技術が確立されておらず、環境中にわずかにしか含まれていない病原微生物を分離濃縮するためには、高度な熟練と時間を要するという問題がある。
【0004】
特に新興の水系感染症の原因となっているものとして、クリプトスポリジウムやジアルジア等が知られている。これらの原虫の検査方法として、例えば、非特許文献1及び非特許文献2では、クリプトスポリジウムの検査手順は大きく分けて、試料採取、ろ過濃縮、剥離懸濁、分離精製、免疫蛍光染色、顕微鏡観察の各ステップから成るものとされている。
【0005】
試料採取ステップでは、容量10〜20Lのポリエチレン容器に、河川水等の水道原水の場合は10L、浄水・水道水の場合は40Lを採取する。
ろ過濃縮ステップでは、直径47mm又は90mm、ポアサイズ5μmの親水性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ディスクフィルターを用い、加圧又は吸引式のフィルターホルダーに取付け試料をろ過する。
【0006】
剥離懸濁ステップでは、濁質を捕捉したディスクフィルターを50mLの遠心管に入れ0.02%ピロリン酸ナトリウム、0.03%EDTA−3Na、0.01%Tween80からなる誘出液を添加し、激しく攪拌することでクリプトスポリジウムを含む濁質をディスクフィルターから剥離させる。
【0007】
分離精製ステップでは、クリプトスポリジウムを認識する抗体が結合した免疫磁気ビーズにより懸濁液からクリプトスポリジウムを回収する。
免疫蛍光染色、顕微鏡観察では、蛍光標識した抗クリプトスポリジウム抗体でクリプトスポリジウムを染色し、蛍光顕微鏡で観察する。
【0008】
上記のクリプトスポリジウム検査方法では、クリプトスポリジウムの存在は確認できるが、クリプトスポリジウムが生存しているか、又は死滅しているか、ヒトに対して感染性を有しているかもしくは有していないかを判定することはできない。そこで、より詳細な検査結果を得るため上記のクリプトスポリジウム検査のほかに生育活性試験や感染性試験が行われることがある。
【0009】
クリプトスポリジウムの生育活性試験には、クリプトスポリジウムのオーシスト(嚢)からスポロゾイト(生命体)の放出の有無から生死を判定する脱嚢試験、DAPI(4,6−ジアミノ−2−フェニルインドール)とPI(プロピジウムインドール)の2重染色から生死を判定する生体染色試験等がある。
【0010】
クリプトスポリジウムの感染性試験では、マウス等の実験動物に対する感染性で評価する方法やヒト小腸由来の培養細胞に対する感染性で評価する方法等がある。
【0011】
【非特許文献1】厚生労働省告示「クリプトスポリジウム暫定対策指針」(1998年に指針の改正)
【非特許文献2】日本水道協会「クリプトスポリジウム 解説と試験方法」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
浄水処理プロセスにおいて、環境中に存在する水系感染性微生物を適切に除去又は消毒殺菌し、安全な水道水を供給するためには、検出対象微生物を高頻度に測定し、その測定結果を処理プロセスにフィードバックする必要がある。
【0013】
クリプトスポリジウム等の原虫類、腸管出血性大腸菌O157やレジオネラ菌等の細菌、ウイルスの検査方法、特に前述のクリプトスポリジウムの検査方法は、クリプトスポリジウムを捕捉し回収する際に、試料の濁質によりディスクフィルターが目詰まりを起こすことがある。
【0014】
そして、このため、短時間でろ過速度が低下するため全試験工程にかかる時間が長くなり迅速な測定ができず、大量の試料を効率よく処理できないという問題がある。
【0015】
さらに、上述のろ過濃縮及び剥離懸濁にけるクリプトスポリジウムの回収率は数十%、最大でも80%前後と低く、バラツキも大きく、検出誤差も陰性と判断される可能性があり改善すべき問題点が多い。
【0016】
本発明は、上述の問題点を鑑み、クリプトスポリジウム等の水系感染微生物を、短時間かつ高効率で、大量の試料水中から分離・濃縮するための、水中微生物の分離濃縮方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、試料水に、塩化カルシウム溶液と、炭酸水素ナトリウム溶液とを添加し分散させる第1工程と、炭酸カルシウム粒子を析出させるために、第1工程後の試料水に水酸化ナトリウム溶液を添加する第2工程と、炭酸カルシウム粒子を凝集沈殿分離させるために、さらに凝集剤を添加し攪拌する第3工程と、第3工程後の試料水から上澄み液を取り除き、得られた凝集沈殿物を酸により溶解させ濃縮試料水として回収する第4工程とを含み、炭酸カルシウム粒子に試料水中の微生物を吸着させることを特徴とする水中微生物の分離濃縮方法を提供するものである。
上記凝集剤は、鉄系凝集剤が好適であり、塩化第二鉄が特に好適である。
また、試料水の水温条件は第1工程から第3工程にわたって20℃から25℃の範囲に調節することが好適である。この範囲であれば、第3工程後の試料水から上澄み液を取り除きやすい大きさの体積でフロックを得ることができ、また、試料水中の水中微生物を効率よく回収することができる。
さらに、凝集沈殿物を溶解させる酸としては、塩酸が好適である。
【0018】
本発明は、例えば、検出対象微生物を自動的に検出するための微生物検出システムであって、試料水中の検出対象微生物を分離・濃縮し、濃縮試料を得るための分離濃縮部と、上記濃縮試料の塩濃度を下げ、pHを中性付近に調製し、検出対象微生物と検出対象微生物を標識する標識抗体との結合反応に適した試料状態に調整する試料精製部と、検出対象微生物に特異的に結合し、かつそれぞれ蛍光波長の異なる蛍光物質を結合させた複数種の標識抗体を供給し、検出対象微生物と複数の標識抗体とを反応させ結合させる抗体反応部と、蛍光波長の異なる複数の蛍光標識抗体が結合した検出対象微生物の各蛍光波長の蛍光強度を測定する蛍光散乱光計測器を備える計測部と、上記計測部での測定データをもとに、分取した試料を保存する保存手段を有する試料保存部とを備える微生物検出システムに採用することができる。すなわち、本発明による分離濃縮方法を、上記分離濃縮部に適用することができる。
【0019】
また、本発明は、例えば、検出対象微生物を自動的に検出するための微生物検出システムであって、試料水の温度を上昇させ一定温度とするための加温手段を備え、試料水中の検出対象微生物を酸可溶性担体に吸着させた後、さらに凝集剤を添加して沈殿させ、濃縮試料とするようにして、試料水中の検出対象微生物を分離・濃縮するための分離濃縮部と、上記検出対象微生物が吸着凝集された濃縮試料濃縮から検出対象微生物を精製するための試料精製部であって、吸着担体を溶解するとともに、濃縮試料の塩濃度を下げ、pHを中性付近とし、検出対象微生物と検出対象微生物を標識する標識抗体との結合反応に適した試料状態に調整する試料調製部と、検出対象微生物に特異的に結合し、かつそれぞれ蛍光波長の異なる蛍光物質を結合させた標識抗体を複数種供給し、検出対象微生物と複数の標識抗体とを反応させ結合させる抗体反応部と、蛍光波長の異なる複数の蛍光標識抗体が結合した検出対象微生物の各蛍光波長の蛍光強度を測定する蛍光散乱光計測器を備える計測部と、上記計測部での測定データをもとに、分取した試料を保存する保存手段を有する試料保存部とを備える微生物検出システムに採用することができる。すなわち、本発明による分離濃縮方法を、上記分離濃縮に適用することができる。
【0020】
また、上記微生物検出システムにおいて、その実施の形態で、計測部が検出対象微生物の検出精度を高めるため、試料を上記計測部内に循環させ、検出対象微生物を繰返し測定し測定データを積分させる手段を備えるようにすることもできる。
【0021】
さらに、上記微生物検出システムにおいて、その実施の形態で、試料保存部が検出対象微生物の検出結果をもとに分取した試料を再度上記計測部に送液し、測定データの再現性を確認する手段を備えるようにすることもできる。
【0022】
またさらに、上記微生物検出システムにおいて、その実施の形態で、検出対象微生物が検出された場合、試料の保存の判定を行い、上記計測部から排出された試料を保存容器に受け、保存し、検出した検出対象微生物が生存しているかの判定及び/又は検出した検出対象微生物に感染性があるかどうかの判定についての試験を行う手段を備えるようにすることもできる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の分離濃縮方法により、クリプトスポリジウム等の耐塩素性病原虫をはじめとした細菌、ウイルスのような水系感染微生物である検出対象微生物を短時間で大量の試料水から高効率で分離濃縮できる。
また、本発明の分離濃縮方法を、上記のような微生物検出システムの分離濃縮部に適用し、濃縮試料中の検出対象微生物と特異的に結合する蛍光標識抗体と反応させ、蛍光強度を測定することで検出感度を高め、作業の自動化・省力化を図ることができ、水質の安全性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
まず、本発明に係る水中微生物の分離濃縮方法を用いる水中微生物の分離濃縮処理手順の一般的な形態を説明する。
分離濃縮処理手順
工程A:試料水中の100μm以上のゴミを除去する。
工程B:試料水の水温を分離濃縮処理に適した温度20〜25℃に調整する。
工程C:試料水中のクリプトスポリジウム等の水中微生物を炭酸カルシウム析出粒子中に包括固定する。
工程D:凝集剤を用いて炭酸カルシウムを核とした急速凝集沈殿を行い沈殿分離濃縮する。
工程E:上澄み液を除去し、沈殿物を酸により溶解する。
工程F:容器に回収する。
工程G:上澄み液の容器回収と中和処理を行う(廃液処理)。
【0025】
工程Aにおいて、100μm以上のゴミの除去は、当業者においていかなる既知の方法も使用することができるが、好適には、樹脂製又は金属製の網あるいはネット、メッシュ、ストレーナ、又はスクリーンである。
工程Bにおいて、試料水の水温を20〜25℃に調整するのは、この範囲であれば、凝集沈殿後の上澄み液を取り除きやすい大きさの体積でフロックを得ることができ、また、試料水中の水中微生物を効率よく回収することができるからである。
工程Cでは、試料水に、塩化カルシウム溶液と、炭酸水素ナトリウム溶液とを添加し分散させる第1工程と、第1工程後の試料水に水酸化ナトリウム溶液を添加する第2工程とによって、析出する炭酸カルシウム粒子中にクリプトスポリジウム等の水中微生物を包括固定する。
工程Dでは、凝集剤を添加し、これによって、炭酸カルシウムの粒径を大きくし沈殿の沈降速度を上げ、短時間で上清と沈殿物を分離することできる。凝集剤としては、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化鉄、ポリ硫酸鉄等の無機系凝集剤、アルギン酸、ポリアクリル酸等の有機系凝集剤等を挙げることができるが、鉄系凝集剤が好適であり、塩化第二鉄が特に好適である。
次に、炭酸カルシウムを核とした急速凝集沈殿を行うが、凝集剤を添加した後、急速攪拌や、緩速攪拌を行うことが好ましい。
急速撹拌では凝集剤を試料中に短時間で均一に分散させ、試料中の夾雑物の表面の負電荷を中和し、表面電荷を中和された夾雑物同士が集塊を形成できるようにする必要がある。緩速撹拌では集塊を形成できるようになった夾雑物同士の接触を促し、フロックを成長させ沈降しやすくする。かつ、成長したフロックを崩壊させないような撹拌強度で撹拌する必要があるからである。
工程Eでは、水中微生物が吸着した沈殿物を酸で溶解し、担体のみを溶解する。
ここで、用いられる酸としては、スルファミン酸、塩酸等を挙げることができ、塩酸が好適である。
【0026】
さらに、添付図面を参照しながら、本発明に係る分離濃縮方法を微生物検出システムに適用させた実施の形態の一つについて説明する。
まず、図1に、上記微生物検出システムについて、その概要を示す。
【0027】
図1によると、まず、試料水100を分離濃縮部102に供給し、検出対象微生物を濃縮する。
検出対象微生物を分離濃縮する方法として、中空糸膜、メンブレンフィルター等のろ過による濃縮方法、抗体を結合させた免疫磁気ビーズによる濃縮方法等を挙げることができる。本実施の形態では、酸可溶性の担体に試料水中の検出対象微生物を吸着、凝集させ沈殿させている。すなわち、本発明に係る水中微生物の分離濃縮方法を適用している。
これにより、従来のメンブレンフィルターによるろ過や免疫磁気ビーズによる濃縮方法に比べ処理時間が短縮できる。また、特別な技能を必要とせず、試験者の負荷を低減し省力化でき、試料ごとの回収率の変動が小さいと考えられ、迅速な測定ができ、大量の試料を効率よく処理することができる。
酸可溶性の担体としては、酸可溶性の無機物質の微粒子が一般的である。このような無機物質としては、炭酸塩があり、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウムを挙げることができる。炭酸バリウムは毒性があり、炭酸マグネシウム及び炭酸ストロンチウムはそれらを生成させるためのマグネシウム塩類及びストロンチウム塩類の価格がカルシウム塩類のそれよりも高いため、炭酸カルシウムが最も好適である。
【0028】
分離濃縮部102には、試料水の水温を上げ、一定温度に保つ加温手段を設けることが好適である。
対象となる試料水としては、河川、湖沼等の環境水も含まれる。これらの環境水は、気候の変動によりその水温も変動する。このため、このような温度変化が酸可溶性担体の生成反応、検出対象微生物と酸可溶性担体との吸着反応、沈殿の沈降速度等の変動要因となる。これによって、検出対象微生物の回収率に影響を及ぼすおそれがある。特に、冬季のように水温が低い場合、酸可溶性担体の生成反応速度が低下し、検出対象微生物の回収率が低下するおそれがある。このため、上記した加温手段を設けることが好適である。
このような加温手段としては、最も一般的にはヒーターである。
なお、水温は20〜25℃に調整することが好適である。
【0029】
分離濃縮部102では、試料水中の検出対象微生物を酸可溶性担体に吸着させた後、さらに、凝集剤を添加して沈殿物として回収する。
凝集剤としては、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化鉄、ポリ硫酸鉄等の無機系凝集剤、アルギン酸、ポリアクリル酸等の有機系凝集剤等を挙げることができ、鉄系凝集剤が好適であり、塩化第二鉄が最も好適である。
【0030】
分離濃縮部102によって分離濃縮された濃縮試料(上記沈殿物)は、その担体のみを溶解する工程が必要となる。この場合には、分離濃縮部102内で、検出対象微生物が吸着した濃縮試料(上記沈殿物)を酸で溶解し、担体のみを溶解する。
ここで、用いられる酸としては、スルファミン酸、塩酸等を挙げることができ、塩酸が好適である。
【0031】
また、沈殿物(濃縮試料)を酸で溶解して得られる試料液中には、高濃度の塩類、気泡が含まれている。これらは、後に実施する検出対象微生物と検出対象微生物を標識する標識抗体との結合の妨害となる。すなわち、検出対象微生物と蛍光標識抗体との結合、及び計測器による蛍光測定の妨害となるおそれがある。このため、試料液中に含まれる塩類、気泡を取り除くことが望ましい。
そこで、酸で溶解して得られる試料液は、濃縮試料の塩濃度を下げる脱塩、及び/又は泡を取り除く脱泡を実施することができるように構成されている試料精製部104に送られる。
【0032】
脱塩及び/又は脱泡の方法としては、例えば、検出対象微生物が通過でき、検出対象微生物よりも大きい夾雑物を捕捉できる夾雑物除去フィルターと、検出対象微生物を捕捉でき、高濃度の塩類を含む溶液を透過する捕捉フィルターとを用い、2段階で高濃度の塩類を含む溶液を除去する方法を採用することができる。しかし、脱塩及び/又は脱泡の方法はこれに限らず、限外ろ過による方法や透析膜による透析等によって実施することもできる。
【0033】
なお、試料精製部104は、濃縮試料を、検出対象微生物と検出対象微生物を標識する標識抗体との結合反応に適した試料状態に調整するので、試料調整部としての機能も果たしている。
【0034】
試料精製部104で精製(調整)された試料は、抗体反応部106に送られる。
抗体反応部106では、検出対象微生物に特異的に結合し、かつ蛍光物質を結合させた蛍光標識抗体108と、濃縮試料中の検出対象微生物を抗原抗体反応により結合させる。このとき、1種類の蛍光標識抗体を用いる場合、夾雑物に非特異的に結合した蛍光標識抗体を擬陽性として判定してしまうおそれがある。このため、本発明に係る微生物検出システムでは、抗原認識部位の異なる複数の抗体を用意し、そのそれぞれに蛍光波長の異なる蛍光物質を結合した蛍光標識抗体108で検出対象微生物を多重標識(染色)する。これによって、検出対象微生物の検出精度を向上させるようにしている。
なお、抗体自体は、当業者にとって公知の手法によって得ることができる。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体などその種類を問わず、計数目定の特定微生物に特異性を有するものであれば用いることができるが、一般にモノクローナル抗体は特異性に優れているので好ましい。
また、抗体の蛍光標識に用いられる色素としては、蛍光を示す公知のものを使用することができる。
【0035】
次に、蛍光標識抗体108で標識した濃縮試料を計測部110に送る。
計測部110は、蛍光散乱光強度を測定するための蛍光散乱光計測器を備えている。計測部110では、該蛍光散乱光計測器によって、蛍光標識抗体が結合した検出対象微生物の蛍光散乱光強度を測定する。測定データは、判定部112に送られる。
【0036】
計測部110では、複数の蛍光標識抗体を用いる多重標識を行う。そこで、計測部110は、複数の蛍光波長を同時に測定できるように構成することが好適である。
【0037】
また、通常、検出対象微生物は試料中にごく僅かにしか存在しないため、1回の計測では検出できないおそれもある。そこで、試料を計測部に循環させ、測定データを積分することにより、より精度よく検出対象微生物を検出することができる(図1中114)。
【0038】
また、図1の実施の形態に係る微生物検出システムは、試料保存部116を備える。試料保存部116では、計測部110によって検出された測定データをもとに、判定部112で、測定した試料を保存するかどうかの判定を行う。分取した試料の再現性を確認する場合、保存した試料を再度上記計測部110に送液し、検出対象微生物の検出を行う(図中118)。
一方、検出対象微生物が検出された場合、計測部110から排出された試料を保存容器に受け、保存する(図中120)。保存した試料は、混入している検出対象微生物が生存しているかの判定を行う試験及び/又は感染性があるかを判定する試験に供与することができる。なお、不要な試料は、排液として廃棄される(図中122)。
【0039】
次に、本発明の水中微生物の分離濃縮方法を採用し、特にクリプトスポリジウムを検出する微生物検出システムの実施の形態1(以下、システム形態その1)を図2に示す。
【0040】
システム形態その1
図2のシステム形態その1の分離濃縮部において、本発明の分離濃縮方法を適用できる。すなわち、システム形態その1では、以下の第1工程〜第4工程を、その順に従って実施する。
第1工程:試料水に塩化カルシウム溶液と、炭酸水素ナトリウム溶液とを添加し分散させる。
第2工程:炭酸カルシウム粒子を析出させるために、第1工程後の試料水に水酸化ナトリウム溶液を添加する。
第3工程:炭酸カルシウム粒子を凝集沈殿分離させるために、さらに凝集剤を添加し攪拌する。
第4工程:第3工程後の試料水から上澄み液を取り除き、得られた凝集沈殿物を酸により溶解させ濃縮試料水として回収する。
上記凝集剤は、鉄系凝集剤が好適であり、塩化第二鉄が特に好適である。
また、試料水の水温条件は、第1工程から第3工程にわたって20℃から25℃の範囲に調節することが好適である。
さらに、凝集沈殿物を溶解させる酸としては、塩酸が好適である。
【0041】
以下、システム形態その1を図2について、各構成要素の構成及び機能を明らかにしながら、さらに説明する。
本システム形態その1では、試料水1を試料水供給ポンプ2で濃縮タンク13に供給する。試料水1は、濃縮タンクへ供給される前にヒーター39により温度調整がなされ、冬期等で試料水の水温が低い場合、加温され一定温度に保たれる。水温は20〜25℃であることが好適である。もっとも、このような構成に限らず、濃縮タンクにヒーターを設置し、濃縮タンク内を加温し、一定温度に保つような構成を採用することもできる。加温された試料水を攪拌機14で攪拌しながら、続いて塩化カルシウム溶液3を塩化カルシウム供給ポンプ4で濃縮タンク13に供給する。そして、炭酸水素ナトリウム溶液5を炭酸水素ナトリウム供給ポンプ6で濃縮タンク13に供給する。
【0042】
さらに、水酸化ナトリウム溶液7を水酸化ナトリウム供給ポンプ8で濃縮タンク13に供給する。これによって、pHを10に上げ、炭酸カルシウムを生成させる。
【0043】
このとき、クリプトスポリジウムと炭酸カルシウムの微粒子の吸着効果、及び沈殿効果を高めるため、更に凝集剤として、塩化第二鉄溶液9を塩化第二鉄供給ポンプ10により濃縮タンク13に注入し、フロックを形成させ沈殿をより容易に分離させることができる。
【0044】
その後、本システム形態その1では、攪拌機14を停止し、沈殿を自然沈降させ、バルブ20を開くことによって排水を行い、上清と分離する。もっとも、このような構成に限らず、連続遠心機を用いクリプトスポリジウムが吸着した沈殿物を連続的に回収するような構成を採用することもできる。
【0045】
次に、本システム形態その1において、濃縮タンク13の底に沈殿したクリプトスポリジウムが吸着した炭酸カルシウムの沈殿物から炭酸カルシウムのみを溶解し、クリプトスポリジウムが濃縮された濃縮試料液を調整する。
【0046】
すなわち、濃縮タンク13に塩酸17を塩酸供給ポンプ18により注入し、炭酸カルシウムを溶解する。このとき、炭酸カルシウムを溶解する酸としては塩酸の他にスルファミン酸等も使用できるが、塩酸が好適である。
試料液中にはカルシウムイオン等の塩類が含まれ、塩酸によりpHが低下した状態にあるため、クリプトスポリジウムとクリプトスポリジウムを標識する蛍光標識抗体との結合の妨害になる。そこで、試料液を後の抗体反応部25に供給する前に、バルブ15を経由して、脱塩脱泡槽21に供給する。
なお、濃縮タンク13内は、洗浄水11を洗浄水供給ポンプ12で供給することによって洗浄することができるように構成されている。
【0047】
脱塩脱泡槽21の構成としては、夾雑物除去フィルターと、捕捉フィルターとを備えたものを例示することができる。
【0048】
夾雑物除去フィルターとしては、クリプトスポリジウム(直径5μm)が通過でき、クリプトスポリジウムよりも大きい夾雑物を捕捉できるポアサイズ10μm程度以上のフィルターが好適である。
捕捉フィルターとしては、クリプトスポリジウムを捕捉でき、高濃度の塩類を含む溶液を透過するポアサイズ1μm程度以下のフィルターが好適である。
これらのフィルターを用い、2段階で高濃度の塩類を含む溶液を除去する方法が好適である。
【0049】
もっとも、脱塩脱泡を実施する構成としては、このようなものに限らず、他に限外ろ過によるろ過、透析膜による透析等も好適なものとして挙げることができる。
本システム形態その1では脱塩脱泡槽21に捕捉されたクリプトスポリジウムを、洗浄水22をポンプ23で供給することによって洗い流し、バルブ24を経由して抗体反応部25に供給する。
【0050】
本システム形態その1の抗体反応部25は、クリプトスポリジウムを含む試料とクリプトスポリジウム標識蛍光抗体とを混合する抗体混合槽26、及び抗原抗体反応を行う抗体反応槽27から構成される。
抗体混合槽26ではクリプトスポリジウムを特異的に認識する蛍光標識抗体28を、バルブ30を経由して蛍光標識抗体供給ポンプ29により注入し、試料と混合する。
【0051】
このとき、1種類の蛍光標識抗体を用いる場合、夾雑物に非特結合した蛍光標識抗体を擬陽性として判定してしまう恐れがあるため、抗原認識部位の異なる複数の抗体を用意し、そのそれぞれに蛍光波長の異なる蛍光物質を結合した蛍光標識抗体でクリプトスポリジウムを多重標識するようにすることが、クリプトスポリジウムの検出精度を向上させるために好ましい。
【0052】
多くの市販品の抗体による抗原抗体反応は、37℃では20〜30分、室温条件では1時間以上とされており、より高頻度に測定を行うためには試料と標識抗体を混合した後、混合液を別の容器に移し、次の試料を供給できるような構造とすることが好ましい。
【0053】
さらに、クリプトスポリジウムを高頻度に測定するため、抗体反応槽27は、図示のように複数用意し、バルブ34の切換えで試料ごとに別の抗体反応槽を供給することが好ましい。
本システム形態その1では1番目の試料と標識抗体が混合された後、洗浄水31をポンプ32によってバルブ33を経由して供給し、混合水として押し流し、抗体反応槽27に供給する。
【0054】
次いで、バルブ36が開き、洗浄水で抗体反応槽を洗浄した後、抗体反応槽に2番目の試料が供給され、1番目の試料と同様に標識抗体が供給される。2番目の試料と標識抗体の混合液も、同様に洗浄水で押し流され抗体反応槽27に送られる。このとき、バルブ34の切換えにより1番目の混合液と別の抗体反応槽に2番目の試料の混合液が供給される。
【0055】
抗原抗体反応を効率よく進めるため、抗体反応部25及び/又は抗体反応槽27には試料温度を37℃に保つ恒温器を備え付けていることが好ましい。抗原抗体反応が終了した試料は、ポンプ35によって、計測部37に供給される。
【0056】
計測部37では、バルブ41を経由して、計測器38に蛍光標識抗体が結合したクリプトスポリジウムが送られる。そして、クリプトスポリジウムの蛍光強度を計測器38で測定する。計測器38は、蛍光散乱光計測器で構成されている。計測器38により、蛍光標識抗体が結合したクリプトスポリジウムの蛍光散乱光強度を測定する。
次いで、その測定データを判定部40に送る。複数の蛍光標識抗体を用いる多重標識(染色)を行う場合、複数の蛍光波長を同時に測定できる計測部であることが好ましい。
判定部40では、計測器38によって検出された測定データをもとに試料保存の要否を判定する。
さらに、測定データをもとに環境水中に含まれるクリプトスポリジウムの混入レベルを把握し、この環境水を原水とする浄水プロセスにフィードバック制御を行うことができる。このときのクリプトスポリジウムの混入レベルに対する制御としては、取水停止や取水先切換え、配水池洗浄があり、凝集プロセスでは凝集剤添加量の変更や凝集助剤の添加、撹拌強度の変更が挙げられ、クリプトスポリジウムに対する浄水処理を適切に運用可能となる。
【0057】
計測器38による計測終了後、ポンプ42によって試料保存部43に試料を送る。
試料保存部43ではクリプトスポリジウムが検出された場合、計測部37から排出された試料を、分離器45で分離して保存容器44に受け、保存する。保存した試料は、混入しているクリプトスポリジウムが生存しているかどうかの判定及び/又は感染性があるかの判定を行うために、試験に供与することができる。保存の不要な試料は、排液として排出される。
【0058】
システム形態その2
次に、本発明の水中微生物の分離濃縮方法を採用し、特にクリプトスポリジウムを検出する微生物検出システムの実施の形態について、さらに別の形態(以下、システム形態その2)を図3に示す。
【0059】
図3のシステム形態その2では、蛍光標識したクリプトスポリジウムの検出精度をさらに向上させるようにしている。
このため、試料をポンプ35にて計測器38に送り、測定を行った後、試料循環流路切換えリザーバー48に試料を一時貯留する。
次に、バルブ41を切替え、ポンプ42により試料水を、試料循環流路47をバイパスにして計測器38に循環させて、繰返し蛍光測定を行う。これによって、測定データを積分し、個数濃度の低い蛍光微粒子の検出確率を向上させる。
なお、本システム形態その2は、図2のシステム形態その1と他の構成は同様のものとすることができ、図3中、図2と同一参照番号の構成要素は、図2と同様の作用・効果を持つ。
【0060】
システム形態その3
次に、本発明の水中微生物の分離濃縮方法を採用し、特にクリプトスポリジウムを検出する微生物検出システムの実施の形態について、さらに別の形態(以下、システム形態その3)を図4に示す。
【0061】
本システム形態その3は、計測器38によって検出された測定データをもとに、測定した試料の保存の判定を行うための別の形態を備えている。
本システム形態その3では、測定データに基づいた判定部40の制御のもとバルブ45が動作し、オートサンプラー49に備えられた保存容器44に試料が順次保存される。オートサンプラー49は、図中の矢印Aの方向に回転しながら、複数の保存容器44に試料を順次分取する。
【0062】
分取した試料の再現性を確認する場合、目的の試料を保存試料供給ポンプ50により、計測部37のリザーバー48にポンプ50で送液し、前述のように計測器38に循環する。
【0063】
一方、クリプトスポリジウムが検出された場合、計測部37から排出された試料を保存容器44に受け、保存する。保存した試料は混入している検出対象微生物が生存しているかの判定及び/又は感染性があるかの判定についての試験に供与することができる。このとき、試料保存部43は試料中に雑菌等が繁殖しないようにするため4℃等で冷蔵保存することが好ましい。
【0064】
なお、本システム形態その3は、図3のシステム形態その2と他の構成は同様のものとすることができ、図4中、図3と同一参照番号の構成要素は、図2と同様の作用・効果を持つ。
【実施例】
【0065】
以下に、実施例により、本発明の効果を詳細に説明するが、本発明の効果はかかる実施例に限定されるものではない。
【0066】
実施例1(水温条件の検討)
純水及び河川水の水温を10〜30℃まで5℃刻みで設定し、分離濃縮工程で形成されるフロックの体積とクリプトスポリジウムの回収率を比較した。フロック体積は、分離濃縮工程で生成した沈殿をメスシリンダーに移し、沈殿の体積を測定することで求めた。クリプトスポリジウムの回収率は、試料に一定個数のクリプトスポリジウムを添加し、分離濃縮工程、試料調整工程後に試料をクリプトスポリジウム標識抗体で染色し、蛍光顕微鏡で回収されたクリプトスポリジウムを計数することにより求めた。結果を図5に示す。
【0067】
上清排水を行う方式では、生成するフロック体積が小さく、凝集沈殿後の沈殿量が少ないほうが好ましい。図5によると、温度上昇とともにフロック体積は低下するが、水温が25℃を超えるとクリプトスポリジウム回収率が低下する傾向が認められた。これより、水温を20〜25℃に調整することで、回収率が高く、かつ、フロック体積の小さな凝集沈殿物を得ることができる。
【0068】
実施例2〜実施例7(沈殿溶解用酸の検討)
クリプトスポリジウムを含む沈殿を溶解する酸の検討では、クリプトスポリジウムの回収率とクリプトスポリジウム標識抗体によるクリプトスポリジウムの標識性能を比較し、回収率と標識性の観点から評価を行った。クリプトスポリジウムの回収率は、試料に一定個数のクリプトスポリジウムを添加し、分離濃縮工程、試料調整工程後に試料をクリプトスポリジウム標識抗体で染色し、蛍光顕微鏡で回収されたクリプトスポリジウムを計数することにより求めた。また、標識性は純水中で標識したクリプトスポリジウムの蛍光強度と比較し、それに近い蛍光強度を有する条件ほど標識性が良好と判断した。酸の濃度は1モル/L(1M)、又は1価の酸では1規定(1N)とし、濃度を統一した。結果を表1に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
実施例2ではスルファミン酸の添加量20mLとしたが、溶解が不十分であり沈殿が残留した。このため、沈殿中にクリプトスポリジウムが残留し、クリプトスポリジウムの低回収率の原因と予想された。そこで、実施例3ではスルファミン酸の添加量を30mLとし、さらに沈殿を完全に溶解させるため10分間の溶解時間を設けた。しかし、この条件でもクリプトスポリジウムの回収率は低いままであった。
凝集剤の塩化第二鉄がクリプトスポリジウムの回収において残留し、回収の妨害になっていると考え、無機の強酸及び有機酸による沈殿溶解の検討を行った。実施例4では塩酸を用い、添加量は30mLとしさらに沈殿を完全に溶解させるため10分間の溶解時間を設けた。その結果、クリプトスポリジウムの回収率は90%となり、また標識抗体の標識性も良好であることがわかった。実施例5では硝酸を用いたところ、標識性は良好であったがクリプトスポリジウムの回収率は41%となり、実施例4よりも低くなった。実施例6では硫酸を用いたが沈殿溶解時にカルシウムと結合し、不溶性の硫酸カルシウムが生成したため、回収率及び標識性ともに測定できず、沈殿溶解に適しないことがわかった。実施例7では有機酸で一般的に使用されているクエン酸を用いた。クリプトスポリジウムの回収率は77%と比較的高い値となったが、標識抗体で標識したクリプトスポリジウムの蛍光強度が低下することがわかり、沈殿溶解に適しないと判断した。以上の結果より、沈殿溶解用酸として塩酸が好適であることがわかった。
【0071】
実施例8(攪拌条件の検討)
急速撹拌では凝集剤を試料中に短時間で均一に分散させ、試料中の夾雑物の表面の負電荷を中和し、表面電荷を中和された夾雑物同士が集塊を形成できるようにする必要がある。そのため、凝集沈殿において撹拌強度は重要な因子であるため、本発明において適している撹拌強度の検討を行った。純水1Lに塩化カルシウムと炭酸水素ナトリウムを所定量添加し、撹拌後、水酸化ナトリウムを添加し炭酸カルシウムを生成させた。ここに凝集剤の塩化第二鉄を所定量添加し、200rpm(撹拌強度310/秒)から400rpm(撹拌強度700/秒)まで変化させ、1分間撹拌した。緩速撹拌の条件は、集塊を形成できるようになった夾雑物同士の接触を促し、フロックを成長させ沈降しやすくし、かつ、成長したフロックを崩壊させないようにするため、水処理の凝集沈殿プロセスで一般的に適用されている条件を採用し、68rpm(撹拌強度70/秒)で10分間とした。
凝集沈殿後の上清の濁度を測定し、沈殿の沈降性を比較した結果、急速撹拌は300rpm(撹拌強度430/秒)以上で良好であり、400rpm(撹拌強度700/秒)の条件が適していることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の分離濃縮方法を適用した微生物検出システムの概要を示す概念図である。
【図2】本発明の分離濃縮方法を適用した微生物検出システムについて、実施の形態その1を説明する概念図である。
【図3】本発明の分離濃縮方法を適用した微生物検出システムについて、実施の形態その2を説明する概念図である。
【図4】本発明の分離濃縮方法を適用した微生物検出システムについて、実施の形態その3を説明する概念図である。
【図5】純水と河川水における、水温とクリプトスポリジウム回収率及びフロック体積との関係を示したものである。
【符号の説明】
【0073】
1 試料水
2 試料水供給ポンプ
3 塩化カルシウム溶液
4 塩化カルシウム供給ポンプ
5 炭酸水素ナトリウム溶液
6 炭酸水素ナトリウム供給ポンプ
7 水酸化ナトリウム溶液
8 水酸化ナトリウム供給ポンプ
9 凝集剤
10 凝集剤供給ポンプ
11 洗浄水
12 洗浄水供給ポンプ
13 濃縮タンク
14 攪拌機
15 バルブ
16 試料精製部
17 塩酸溶液
18 塩酸供給ポンプ
19 バルブ
20 バルブ
21 脱塩脱泡槽
22 洗浄水
23 洗浄水供給ポンプ
24 バルブ
25 抗体反応部
26 抗体混合槽
27 抗体反応槽
28 蛍光標識抗体
29 蛍光標識抗体供給ポンプ
31 洗浄水
32 洗浄水供給ポンプ
37 計測部
38 計測器
39 ヒーター
40 判定部
41 バルブ
42 ポンプ
43 試料保存部
44 試料保存容器
45 流路切換えバルブ
46 試料循環流路切換えバルブ
47 試料循環流路
48 リザーバー
49 オートサンプラー
50 保存試料供給ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料水に、塩化カルシウム溶液と、炭酸水素ナトリウム溶液とを添加し分散させる第1工程と、
炭酸カルシウム粒子を析出させるために、上記第1工程を経た試料水に水酸化ナトリウム溶液を添加する第2工程と、
炭酸カルシウム粒子を凝集沈殿分離させるために、さらに凝集剤を添加し攪拌する第3工程と、
第3工程後の試料水から上澄み液を取り除き、得られた凝集沈殿物を酸により溶解させ濃縮試料水として回収する第4工程と
を含み、炭酸カルシウム粒子に試料水中の微生物を吸着させることを特徴とする水中微生物の分離濃縮方法。
【請求項2】
上記凝集剤が塩化第二鉄であることを特徴とする請求項1に記載の水中微生物の分離濃縮方法。
【請求項3】
上記試料水の水温条件が20℃から25℃の範囲であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水中微生物の分離濃縮方法。
【請求項4】
上記第3工程で用いる酸が塩酸であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水中微生物の分離濃縮方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−224271(P2008−224271A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−59638(P2007−59638)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(507214083)メタウォーター株式会社 (277)
【Fターム(参考)】